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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】パターン付繊維基材
(51)【国際特許分類】
   D06M 10/00 20060101AFI20230620BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20230620BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20230620BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230620BHJP
   H05B 3/34 20060101ALI20230620BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
D06M10/00 K
D06M11/83
D06M15/59
H05K1/03 670
H05B3/34
H05B3/10 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020563135
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2019049616
(87)【国際公開番号】W WO2020137742
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2018243509
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019093650
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「スマートテキスタイルに向けた高屈曲性・高排熱性を有する不織布配線素子の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】林 公平
(72)【発明者】
【氏名】小畑 創一
(72)【発明者】
【氏名】城谷 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】二谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真由美
(72)【発明者】
【氏名】前田 和紀
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0044429(KR,A)
【文献】国際公開第2009/075550(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/115441(WO,A1)
【文献】特開2003-221783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0147404(US,A1)
【文献】中国実用新案第204697317(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144131(US,A1)
【文献】特開平09-087964(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108654709(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00-23/18
D04H 1/00-18/04
H05K 1/03
H05B 3/34
H05B 3/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材と、繊維基材上に形成された機能性材料からなるパターンとを含んでなるパターン付繊維基材であって、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在しており、繊維基材表面の純水に対する接触角は100~170°であり、パターンの最も細い線幅は1~3000μmであり、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は、繊維基材の表面から1μm以上の深さに達している、パターン付繊維基材。
【請求項2】
繊維基材の通気度は400cm/cm・s以下である、請求項1に記載のパターン付繊維基材。
【請求項3】
繊維基材を構成する繊維の平均繊維径は0.1~20μmである、請求項1または2に記載のパターン付繊維基材。
【請求項4】
繊維基材は不織布である、請求項1~3のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
【請求項5】
パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は、繊維基材の表面からμm以上の深さに達している、請求項1~4のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
【請求項6】
繊維基材表面はダブルラフネス構造を有する、請求項1~5のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
【請求項7】
パターンは導電パターンである、請求項1~6のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
【請求項8】
パターン付繊維基材の一面に形成された2つ以上の導電パターンを含んでなる、請求項7に記載のパターン付繊維基材であって、当該導電パターンの少なくとも2つは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材。
【請求項9】
パターン付繊維基材の一面に形成された1つ以上の導電パターン(A)と、パターン付繊維基材の他面に形成された1つ以上の導電パターン(B)とを含んでなる、請求項7に記載のパターン付繊維基材であって、前記導電パターン(A)の少なくとも1つと前記導電パターン(B)の少なくとも1つとは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材。
【請求項10】
複数のパターン付繊維基材から構成されるパターン付繊維基材積層体であって、当該複数のパターン付繊維基材の少なくとも2つは請求項7に記載のパターン付繊維基材であり、当該少なくとも2つのパターン付繊維基材はそれぞれ、パターン付繊維基材の一面に形成された1つ以上の導電パターン若しくはパターン付繊維基材の両面にそれぞれ形成された1つ以上の導電パターンを含んでなり、別々のパターン付繊維基材に含まれる少なくとも2つの導電パターンは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材積層体。
【請求項11】
パターン付繊維基材の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有する、請求項1~9のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
【請求項12】
パターン付繊維基材積層体の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有する、請求項10に記載のパターン付繊維基材積層体。
【請求項13】
(i)親液化領域を繊維基材上および繊維基材内部に形成する工程、
(ii)形成された親液化領域に、機能性材料の溶液または分散体を付与する工程、および
(iii)付与された溶液または分散体から、溶媒または分散媒を除去する工程
を含む、請求項1~9のいずれかに記載のパターン付繊維基材の製造方法。
【請求項14】
工程(i)において、繊維基材上および繊維基材内部に紫外光を照射することにより親液化領域を形成する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程(i)において、撥液化処理が施されていない繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成する、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
(iv)工程(iii)で得たパターン付繊維基材の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を形成する工程
をさらに含む、請求項13~15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
工程(iv)において、シート状保護材のパターン付繊維基材との貼り合わせ、保護材の溶液若しくは分散体のパターン付繊維基材に対する適用若しくは電着および続く溶媒若しくは分散媒の除去、または保護材の溶液若しくは分散体へのパターン付繊維基材の浸漬および続く溶媒若しくは分散媒の除去により、保護材を形成する、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン付繊維基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材(例えば繊維基材またはフィルム基材)に種々の機能(例えば、導電性、発熱性および撥水性等)を付与するため、その表面に機能性材料からなる薄膜またはパターンを形成することが行われている。
例えば特許文献1には、布帛の一方の面に、膜厚0.1~10μmの金属被膜からなる独立した2以上のパターン状電極と、前記2以上のパターン状電極間を接続する発熱膜とを有し、平均通気性が3~50cm/(cm・s)である、面状発熱体が開示されている。また、布帛上に導電性インクをスクリーン印刷することにより、導電性配線付布帛を製造することも提案されている。しかし、このような方法では、基材上に精細な配線パターンを形成することは困難である。この課題を解決するために、例えば特許文献2には、繊維状多孔質基材と、前記繊維状多孔質基材の一の面に形成された第1の下地層と、前記第1の下地層の上に設けられると共に、前記繊維状多孔質基材を貫通する貫通接続部を有する第1の導電層と、を備えた配線構造が開示されている。また、繊維基材に導電性糸を織り込むことも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-147085号公報
【文献】特開2017-208492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載の配線構造では、導電性インクの広がりを防ぐための下地層の存在等に起因して、製造方法が複雑であり、薄葉性(軽量性)が損なわれるといった問題がある。また、繊維基材に導電性糸を織り込む方法では、パターン設計の自由度が低い。さらに、精細な配線パターンを形成するために、にじみが生じ難い高粘度の導電性インクを用いてスクリーン印刷を行うと、導電性インクの広がりが若干改善され得るものの、基材表面または基材表面付近のみに配線パターンが形成されやすいため、耐屈曲性が低いといった問題がある。
従って、本発明が解決しようとする課題は、広い範囲の機能性材料溶液または分散体を用いて、より簡単な方法で製造でき、精細なパターンも有することができ、耐屈曲性に優れたパターン付繊維基材を提供することである。
また、従来一般的に用いられている多層回路基板においては、基板に対して垂直な方向にビアホールを作製し、このビアホールを介して多層間を電気的に接続させる必要があるが、この場合、ビアホールを作製するための工程が必要であり、かつ寸法制限の厳しい多層回路基板においては非常に小さいビアホールの内面に導電性材料(例えば金属粉含有材料)を均一に適用することが必要であった。特に、大きいアスペクト比(ビアホールの深さ/ビアホールの直径)を有するビアホールの内面に導電性材料を適用することには複雑な工程が必要とされ、そのための高度な技術が求められていた。
従って、本発明が解決しようとする課題はまた、そのような従来の課題を解決できる多層回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために、パターン付繊維基材について詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕繊維基材と、繊維基材上に形成された機能性材料からなるパターンとを含んでなるパターン付繊維基材であって、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在しており、繊維基材表面の純水に対する接触角は100~170°であり、パターンの最も細い線幅は1~3000μmである、パターン付繊維基材。
〔2〕繊維基材の通気度は400cm/cm・s以下である、上記〔1〕に記載のパターン付繊維基材。
〔3〕繊維基材を構成する繊維の平均繊維径は0.1~20μmである、上記〔1〕または〔2〕に記載のパターン付繊維基材。
〔4〕繊維基材は不織布である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
〔5〕パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は、繊維基材の表面から1μm以上の深さに達している、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
〔6〕繊維基材表面はダブルラフネス構造を有する、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
〔7〕パターンは導電パターンである、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
〔8〕パターン付繊維基材の一面に形成された2つ以上の導電パターンを含んでなる、上記〔7〕に記載のパターン付繊維基材であって、当該導電パターンの少なくとも2つは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材。
〔9〕パターン付繊維基材の一面に形成された1つ以上の導電パターン(A)と、パターン付繊維基材の他面に形成された1つ以上の導電パターン(B)とを含んでなる、上記〔7〕に記載のパターン付繊維基材であって、前記導電パターン(A)の少なくとも1つと前記導電パターン(B)の少なくとも1つとは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材。
〔10〕複数のパターン付繊維基材から構成されるパターン付繊維基材積層体であって、当該複数のパターン付繊維基材の少なくとも2つは上記〔7〕に記載のパターン付繊維基材であり、当該少なくとも2つのパターン付繊維基材はそれぞれ、パターン付繊維基材の一面に形成された1つ以上の導電パターン若しくはパターン付繊維基材の両面にそれぞれ形成された1つ以上の導電パターンを含んでなり、別々のパターン付繊維基材に含まれる少なくとも2つの導電パターンは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材積層体。
〔11〕パターン付繊維基材の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有する、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のパターン付繊維基材。
〔12〕パターン付繊維基材積層体の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有する、上記〔10〕に記載のパターン付繊維基材積層体。
〔13〕(i)親液化領域を繊維基材上および繊維基材内部に形成する工程、
(ii)形成された親液化領域に、機能性材料の溶液または分散体を付与する工程、および
(iii)付与された溶液または分散体から、溶媒または分散媒を除去する工程
を含む、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のパターン付繊維基材の製造方法。
〔14〕工程(i)において、繊維基材上および繊維基材内部に紫外光を照射することにより親液化領域を形成する、上記〔13〕に記載の製造方法。
〔15〕工程(i)において、撥液化処理が施されていない繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成する、上記〔13〕または〔14〕に記載の製造方法。
〔16〕(iv)工程(iii)で得たパターン付繊維基材の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を形成する工程をさらに含む、上記〔13〕~〔15〕のいずれかに記載の製造方法。
〔17〕工程(iv)において、シート状保護材のパターン付繊維基材との貼り合わせ、保護材の溶液若しくは分散体のパターン付繊維基材に対する適用若しくは電着および続く溶媒若しくは分散媒の除去、または保護材の溶液若しくは分散体へのパターン付繊維基材の浸漬および続く溶媒若しくは分散媒の除去により、保護材を形成する、上記〔16〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、広い範囲の機能性材料溶液または分散体を用いて、より簡単な方法で製造でき、精細なパターンも有することができ、耐屈曲性に優れたパターン付繊維基材を提供することができる。また、本発明によれば、従来の課題を解決できる多層回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1で製造したパターン付繊維基材の導電パターンの一部の実体顕微鏡像である。
図2】実施例1のパターン付繊維基材に対応する耐屈曲性試験用試験片の断面の走査型電子顕微鏡像である。
図3】比較例2のパターン付基材に対応する耐屈曲性試験用試験片の断面の走査型電子顕微鏡像である。
図4】本発明のパターン付繊維基材の一態様である構成の一部の断面模式図である。
図5】本発明のパターン付繊維基材の一態様である構成の一部の断面模式図である。
図6】実施例5のパターン付繊維基材の構成の一部の断面模式図である。
図7】本発明のパターン付繊維基材の一態様である構成の一部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は、本実施態様に限定されない。
【0009】
[パターン付繊維基材]
本発明のパターン付繊維基材は、繊維基材と、繊維基材上に形成された機能性材料からなるパターンとを含んでなる。本発明のパターン付繊維基材において、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在しており、繊維基材表面の純水に対する接触角は100~170°であり、パターンの最も細い線幅は1~3000μmである。
【0010】
<繊維基材>
本発明において、繊維基材は、繊維基材表面の純水に対する接触角が100~170°である限り、いずれの繊維基材であってもよい。繊維基材表面の前記接触角が100°以上170°以下であることから、繊維基材表面は撥液性を有する。また、繊維基材表面も繊維基材内部も同じ繊維で同じ繊維基材形態で構成されていることから、繊維基材内部も、精細なパターンをもたらすのに十分な程度の撥液性を有する。本発明において、「精細なパターン」とは、にじみがほとんどまたは全く見られないパターンを意味する。前記接触角が100°より小さいと、パターン付繊維基材が精細なパターンを有することは困難であり、前記接触角が170°より大きい繊維基材の調製は困難である。より精細なパターンを形成しやすい観点から、前記接触角は、好ましくは105°以上、より好ましくは115°以上、特に好ましくは120°以上であり、例えば、160°以下、150°以下、140°以下である。前記接触角は、基材を構成する繊維の種類若しくは平均繊維径、繊維基材の製造方法または繊維基材に対する加工処理等により、上記範囲内に調整できる。前記接触角は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0011】
繊維基材を構成する繊維としては、非親水性繊維、例えば、ポリオレフィン系繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ポリエステル系繊維〔例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、液晶ポリエステル(液晶ポリマー)繊維等〕、ポリアミド系繊維(例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維等)、ポリウレタン系繊維(例えば、ポリエステルポリオール型ウレタン系繊維等)およびこれらの組み合わせであってよい。また、親水性繊維〔例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系繊維、ポリ乳酸等のポリ乳酸系繊維、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体繊維、パルプ、レーヨン繊維、アセテート繊維等のセルロース系繊維、およびこれらの組み合わせ〕を公知の技術により(例えばフッ素化合物若しくはシリコーン等を用いて)疎水化したものであってもよい。この疎水化は、繊維に対する疎水化でもよいし、繊維基材に対する疎水化でもよい。
これらのうち、生産性が高く、より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点から、非親水性繊維を単独でまたは組み合わせて使用することが好ましく、より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点から、ポリブチレンテレフタレート繊維、液晶ポリマー繊維およびこれらの組み合わせがより好ましい。
【0012】
繊維の形態としては、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、紡績糸およびカバーリング糸等が挙げられる。より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点および生産性の観点から、マルチフィラメントが好ましい。
【0013】
繊維の平均繊維径は、より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点から、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは1~8μmである。繊維の平均繊維径が20μm以下と細いと、繊維基材表面が後述するダブルラフネス構造を有しやすく、その結果、繊維基材表面が高い撥液性を有しやすい。前記接触角が比較的小さい値(例えば115°未満の値)であっても繊維の平均繊維径が上記範囲内であると、より精細なパターンを繊維基材に形成することができ、従って、パターン付繊維基材はより精細なパターンも有することができる。繊維の平均繊維径は、JIS L 1015「化学繊維ステープル試験方法(8.5.1)」に準拠して求めることができる。
【0014】
繊維基材の形態としては、例えば、織物、編物、不織布、フェルトおよびスポンジ等が挙げられる。より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点から、繊維基材は好ましくは不織布である。
【0015】
繊維基材の通気度は、より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点から、好ましくは400cm/cm・s以下、より好ましくは200cm/cm・s以下、特に好ましくは100cm/cm・s以下である。繊維基材の通気度は、通常1cm/cm・s以上、好ましくは5cm/cm・s以上である。繊維基材の通気度が400cm/cm・s以下と小さいと、後述するパターン付繊維基材の製造方法において繊維基材の親液化領域に付与された機能性材料の溶液または分散体が広がり難い。よって、前記接触角が比較的小さい値(例えば115°未満の値)であっても繊維基材の通気度が前記上限値以下であると、繊維基材により精細なパターンを形成することができ、従って、パターン付繊維基材はより精細なパターンも有することができる。繊維基材の通気度は、繊維基材を構成する繊維の形態若しくは平均繊維径の選択、または繊維基材に対する加工処理等により、上記範囲内に調整できる。通気度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法 通気性」のフラジール法に準拠して測定できる。
【0016】
繊維基材の目付けは、例えば1~100g/mであってよく、好ましくは2~50g/mである。目付けが上記範囲内であると、より高い前記接触角若しくはより高い撥液性、好ましい前記通気度、または柔軟性を得やすい。繊維基材の目付けは、繊維基材を構成する繊維の形態若しくは平均繊維径の選択、または繊維基材に対する加工処理等により、上記範囲内に調整できる。目付けは、JIS P 8124「紙のメートル坪量測定方法」に準拠して測定できる。
【0017】
繊維基材の厚さは、例えば20~1000μmであってよく、好ましくは40~1000μmである。厚さが上記範囲内であると、軽量性または柔軟性を得やすい。厚さは、厚み計を用いて測定できる。
【0018】
繊維基材には、必要に応じて、公知の後加工若しくは後処理の1つ以上、例えば、カレンダー加工、エンボス加工、スパンレース(ウォーターニードル)処理、染色加工、起毛加工、(撥水処理を包含する)撥液化処理、防炎加工、難燃加工またはマイナスイオン発生加工等の1つ以上が施されていてもよい。より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点からは、起毛加工または撥液化処理が施されていることが好ましい一方で、カレンダー加工は施されていないことが好ましい。繊維基材の形態または繊維基材を構成する繊維の種類若しくは平均繊維径等を選択することによって、十分な若しくはより高い前記接触角若しくは撥液性が既に得られた場合は、生産性の観点から、繊維基材は、起毛加工または撥液化処理が施されていないことが好ましい。
【0019】
前記接触角は、上記の通り、繊維基材の形態または繊維基材を構成する繊維の種類若しくは平均繊維径等の選択により所望の値に調整できる一方で、繊維基材表面の構造に依存し得る。従って、より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点から、本発明の好ましい一態様では、繊維基材表面はダブルラフネス構造を有する。本発明においてダブルラフネス構造とは、いわゆるロータス効果を発現できる周期的な微細構造を意味する。繊維基材表面の微細構造および化学的特性によってもたらされるロータス効果により、この態様では、繊維基材表面は、純水に対するより高い接触角またはより高い撥液性を有することができる。繊維基材表面がダブルラフネス構造を有することは、例えば、繊維基材表面の純水に対する接触角が、繊維基材を構成する繊維本来の純水に対する接触角より有意に高い(例えば5°以上高い)ことにより、間接的に確認することができる。繊維基材を構成する繊維の平均繊維径等の選択、繊維基材の製造方法の選択、または後加工若しくは後処理の選択等により、繊維基材表面はダブルラフネス構造を有することができる。
【0020】
繊維基材は、公知または慣用の方法で製造することができる。
繊維基材が不織布である場合、不織布は、例えば、1種または2種以上の上記繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、静電紡糸法、カード法、熱融着法、水流交絡法または溶剤接着法により製造できる。これらのうち、繊維基材を構成する繊維の平均繊維径を好ましい範囲に調整しやすい観点からは、静電紡糸法またはメルトブローン法を採用することが好ましく、より高い前記接触角またはより高い撥液性を得やすい観点からは、メルトブローン法を採用することがより好ましい。得られた不織布には、必要に応じて、先に記載したような公知の後加工若しくは後処理を施してもよい。
【0021】
繊維基材として市販品を使用することもでき、その例としては、クラレクラフレックス株式会社製のベクルス(登録商標)等が挙げられる。
【0022】
<パターン>
本発明のパターン付繊維基材は、繊維基材上に形成された機能性材料からなるパターンを含んでなる。パターンの最も細い線幅は1~3000μmである。パターンの少なくとも一部がこのように非常に細い線幅を有することから、本発明のパターン付繊維基材においてパターン設計の自由度は制限されず、本発明のパターン付繊維基材は精細なパターンも有することができる。パターンの最も細い線幅は、好ましくは3~2000μm、より好ましくは5~1000μmである。線幅は、後述するパターン付繊維基材の製造方法において繊維基材上および繊維基材内部に形成する親液化領域の幅(パターニングされたフォトマスクにおける遮光膜除去部の幅)を調整することにより調整できる。パターンの線幅は、実態顕微鏡を用いた観察により測定できる。
【0023】
また、本発明において、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在している。これは、基材が繊維基材であるため、基材が例えばフィルムである場合とは異なり、パターンを繊維基材上に形成する際に、機能性材料の少なくとも一部が繊維基材の内部に浸透できるためである。機能性材料の少なくとも一部が繊維基材の内部に存在していることにより、本発明のパターン付繊維基材は、優れた耐屈曲性を有することができる。また、この優れた耐屈曲性は、パターンの線幅が細い部分においても良好に発現され得る。
好ましい一態様では、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部は、繊維基材の表面から1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上(例えば、20μm以上、40μm以上、100μm以上、180μm以上)の深さに達している。機能性材料が繊維基材表面からより深い深さに達しているほど、より優れた耐屈曲性を得やすい。上記深さの上限値は、繊維基材の厚さと一致する。上記深さは、後述するパターン付繊維基材の製造方法において繊維基材内部に形成する親液化領域の深さ(繊維基材の厚さ方向における親液化領域の深さ)を調整することにより調整できる。上記深さは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0024】
本発明におけるパターンの種類は、後述するパターン付繊維基材の製造方法において記載するように、溶媒に溶解して溶液を形成できるかまたは分散媒に分散して分散体を形成できる機能性材料からなるパターンである限り、特に限定されない。そのような機能性材料の例としては、導電性材料、半導電性材料、触媒材料、顔料、染料、磁性材料、静電シールド材料、蛍光性材料、吸光性材料、誘電性材料、強誘電性材料、圧電材料およびそれらの組み合わせが挙げられる。また、そのような機能性材料に対応して、本発明におけるパターンの種類としては、例えば、導電パターン、半導電パターン、触媒パターン、着色パターン、染色パターン、磁性パターン、静電シールドパターン、蛍光性パターン、吸光性パターン、誘電性パターン、強誘電性パターン、圧電パターンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。即ち、本発明のパターン付繊維基材は、非常に広い範囲の多種多様なパターンを有することができる。
【0025】
パターンが導電パターンである場合、パターンを構成する機能性材料は導電性材料である。導電性材料は、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PPS)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS)およびp-トルエンスルホン酸(TsO)をドープしたPEDOT(PEDOT-TsO)等の導電性ポリマー、銀ナノ粒子および銅ナノ粒子等の金属ナノ粒子、銀ナノワイヤーおよび銅ナノワイヤー等の金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびグラファイト等のカーボン材料、金属めっきポリマー粒子若しくは金属めっきガラス繊維のような金属被覆粒子若しくは金属被覆繊維、またはこれらの混合材料に基づく。これらのうち、良好な導電性を得やすい観点から、導電性材料は、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤー、またはこれらの混合材料に基づくことが好ましく、経済性の観点から、銅ナノ粒子、銅ナノワイヤー、またはこれらの混合材料に基づくことがより好ましい。
また、導電パターンは、上記したような導電性材料を用いて形成された導電パターンの表面に、無電解めっき等の手法により金属めっきが施されたものであってもよい。
【0026】
本発明の一態様において、パターン付繊維基材は、パターン付繊維基材の一面に形成された2つ以上の導電パターンを含んでなり、当該導電パターンの少なくとも2つは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている。
【0027】
また、本発明の別の一態様において、パターン付繊維基材は、パターン付繊維基材の一面に形成された1つ以上の導電パターン(A)と、パターン付繊維基材の他面に形成された1つ以上の導電パターン(B)とを含んでなり、前記導電パターン(A)の少なくとも1つと前記導電パターン(B)の少なくとも1つとは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている。このような態様のパターン付繊維基材を、以下、「表裏の電気的導通が確保されたパターン付繊維基材」とも称する。当該態様において、前記導電パターン(A)と導電パターン(B)とは、アイドリング状態(力若しくは変形を加えない状態)では電気的に接続されていないが、繊維基材へ力若しくは変形を加えた場合のみ、電気的な接続が得られる形態としてもよい。例えば、繊維基材を折り曲げることで導電パターン(A)の少なくとも1つと導電パターン(B)の少なくとも1つとが互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより、導電パターン(A)と導電パターン(B)の電気的な接続を得るといった、いわゆる「折り曲げ式スイッチ」を構成してもよい。
【0028】
本発明はまた、複数のパターン付繊維基材から構成されるパターン付繊維基材積層体であって、当該複数のパターン付繊維基材の少なくとも2つは、パターンが導電パターンである上記パターン付繊維基材であり、当該少なくとも2つのパターン付繊維基材はそれぞれ、パターン付繊維基材の一面に形成された1つ以上の導電パターン若しくはパターン付繊維基材の両面にそれぞれ形成された1つ以上の導電パターンを含んでなり、別々のパターン付繊維基材に含まれる少なくとも2つの導電パターンは互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている、パターン付繊維基材積層体も対象とする。
パターンが導電パターンであるパターン付繊維基材は、隣接して積層されていてもよいし、または隣接せずに積層されていてもよい。
【0029】
本発明の一態様では、パターン付繊維基材積層体を構成する複数のパターン付繊維基材は全て、パターンが導電パターンであるパターン付繊維基材から構成される。
【0030】
パターン付繊維基材積層体を構成するパターン付繊維基材の1つ以上は、後述の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有するパターン付繊維基材であってもよい。
【0031】
後述するように、パターンが導電パターンであるパターン付繊維基材の製造方法では、繊維基材に導電性インクを浸透させるという非常に簡便な手法で導電パターン(A)と導電パターン(B)との電気的接続部を形成することができる。また、ビアホールのように穴を形成しなくてもパターン付繊維基材の表裏で電気的導通を得ることができる。さらに、この構成では、ビアホールの穴部分の面積が不要となるため、電気的接続部の必要スペースが低減し、より効率的な回路設計が可能となる。
【0032】
本発明のパターン付繊維基材における導電パターンには、電子部品を電気的に接続することができる。そのような電子部品は特に制限されず、その例としては、トランジスタ、ダイオード、オペアンプ、抵抗、キャパシタ、コイル、コンデンサ、集積回路、発光素子、通信素子、バッテリー若しくは発電素子等の電力供給素子、およびセンサ等が挙げられる。
【0033】
パターンが触媒パターンである場合、パターンを構成する機能性材料は触媒材料である。触媒材料は、例えば、パラジウム/スズ混合コロイドおよび銀/スズ混合コロイド等の無電解めっき触媒等に基づく。これらのうち、良好なめっき被覆を得やすい観点から、触媒材料は、パラジウム/スズ混合コロイド液に基づくことが好ましい。
【0034】
<保護材>
パターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体の表面の少なくとも機能性材料がむき出しになっている部分については、機能性材料の剥離、摩耗および酸化等の物理的若しくは化学的変化を防止する観点から、保護材を設けることが好ましい。従って、本発明の好ましい一態様では、パターン付繊維基材は、少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有する。また、本発明の好ましい一態様では、パターン付繊維基材積層体は、少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有する。
パターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体が両面とも全面に保護材を有する場合、そのようなパターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体を屈曲させた際に、曲げ応力に対する応力中心にパターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体が位置するよう設計することがより容易になるため、耐曲げ特性を向上させることができる。特に、フレキシブル回路基板での応用といった曲げ応力が生じやすい用途にパターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体を用いる場合は、このような構成とすることが好ましい。
【0035】
また、パターンが、導電性材料または半導電性材料といった電気伝導性を有する材料からなる場合、少なくとも当該パターンが形成されている面の少なくとも一部(即ち、当該パターン、当該パターンを含む面の一部、若しくは当該パターンが形成されている面の全面)の上に、絶縁性を有する保護材を設けることが、安定した電気特性を得る観点から好ましい。
【0036】
保護材の材料としては、例えば、不織布、織布および編布等の繊維基材;PET、PENおよびPI等の各種ポリマー材料;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、紫外線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂等の各種樹脂;ワニス;ゴム材料;繊維基材にポリマー材料が含侵された複合材料;炭素繊維強化プラスチック;セルロースナノファイバー等の植物由来材料等を用いることができる。これらの材料に基づくシートを保護材として使用できる。パターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体と保護材との間には、接着層が存在してもよい。そのような接着層を構成する接着剤の種類は、パターンが発現する機能性に悪影響を及ぼさない限り特に限定されず、その例としては、エポキシ樹脂系、ビニル樹脂系、ゴム系、シリコーン樹脂系、でんぷん系およびセルロース系等の接着剤が挙げられる。
【0037】
必要に応じて少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有してよいパターン付繊維基材は、例えば、センシング素子、スイッチ素子、ディスプレイ等の表示素子、発電素子、発光素子、電池若しくは発電素子等の電気的エネルギー供給素子、顔料若しくは染料等を用いて意匠を施した素子、圧電素子、配線素子等、およびそれらの組み合わせにおいて使用することができる。
【0038】
このような素子において、上記パターン付繊維基材は単独で、または2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記パターン付繊維基材を単独で使用する場合とは、例えば、圧電素子に含まれる第1パターンと配線素子に含まれる第2パターンとを有する上記パターン付繊維基材を使用する場合を包含する。或いは、繊維基材が少なくとも1つの導電パターンを含み、基材の両面に保護材を有する、フレキシブルプリント基板回路(Flexible printed circuits: FPC)を構成する場合を包含する。このような場合、繊維基材の特長を活かした、軽量かつ可撓性に優れた圧電素子若しくはアクチュエータ等を構成することができる。
【0040】
また、上記パターン付繊維基材を2つ以上組み合わせて使用する場合とは、例えば、センシング素子若しくは表示素子において第1のパターン付繊維基材を使用し、発電素子若しくは電気的エネルギー供給素子において第2のパターン付繊維基材を使用し、これらのセンシング素子若しくは表示素子と発電素子若しくは電気的エネルギー供給素子とを組み合わせて使用する場合、或いは、意匠を施した素子に第1のパターン付繊維基材を使用し、発光素子に含まれる第1パターンと配線素子に含まれる第2パターンとを有する第2のパターン付繊維基材を使用し、これらの意匠を施した素子と発光素子および配線素子とを組み合わせて使用する場合を包含する。後者の例では、デザイン性に優れた素子を得ることができる。
組み合わせて使用する2つ以上のパターン付繊維基材を積層し、先に述べたパターン付繊維基材積層体として用いてもよい。即ち、例えば、第1のパターン付繊維基材と第2のパターン付繊維基材と第3のパターン付繊維基材とを任意の順で積層してパターン付繊維基材積層体としてもよい。本発明の一態様では、このとき、別々のパターン付繊維基材に含まれる少なくとも2つの導電パターンは、例えば、第1のパターン付繊維基材に含まれる少なくとも1つの導電パターンと第2のパターン付繊維基材に含まれる少なくとも1つの導電パターンとは、互いに部分的に接することにより若しくは別の導電パターンにより電気的に接続されている。
【0041】
[パターン付繊維基材の製造方法]
本発明のパターン付繊維基材は、
(i)親液化領域を繊維基材上および繊維基材内部に形成する工程、
(ii)形成された親液化領域に、機能性材料の溶液または分散体を付与する工程、および
(iii)付与された溶液または分散体から、溶媒または分散媒を除去する工程
を含む方法によって製造できる。
【0042】
<工程(i)>
工程(i)では、繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を有する繊維基材が得られる。
繊維基材としては、<繊維基材>の段落で例示した繊維基材を使用できる。本発明における繊維基材は、繊維基材の形態または繊維基材を構成する繊維の種類若しくは平均繊維径等を選択することにより、十分な前記接触角または撥液性を有することができる。この場合、繊維基材には起毛加工または撥液化処理が施されていなくてよく、これにより生産性を向上することができる。従って、本発明の好ましい一態様では、工程(i)において、撥液化処理が施されていない繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成する。
【0043】
親液化領域の形成は、好ましくは、透明基材(例えばソーダライムガラスまたは合成石英)上に所望のパターンで遮光膜となる薄膜(例えばクロム薄膜)がパターニングされたフォトマスクを繊維基材上に配置し、フォトマスクの上方から、電磁波、プラズマまたはオゾン(以下において「電磁波等」とも称する)を照射することにより実施される。撥液性を有する繊維基材に電磁波等を照射すると、照射領域のみが酸化作用により光分解して親液性になる。このように、照射部は親液化され、非照射部(遮光膜で電磁波等が遮断された領域)では繊維基材の撥液性が保たれるため、同一の繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域と撥液性領域とが存在することができる。
【0044】
表裏の電気的導通が確保されたパターン付繊維基材を製造する場合は、繊維基材の両面に上記照射を実施すればよい。或いは、繊維基材の厚さが薄い場合(例えば50μm以下の場合)では、繊維基材片面からの照射でもよい。繊維基材の両面から照射を行う際は、導電パターン(A)を形成するための照射〔照射(A)〕、導電パターン(B)を形成するための照射〔照射(B)〕、および両者を電気的に接続する導電パターンを形成するための照射〔照射(C)〕は、任意の順で行うことができる。ここで、照射(A)および照射(B)の実施により、導電パターン(A)と導電パターン(B)とを電気的に接続する導電パターンが形成された場合(例えば図7の場合)、照射(C)は実施しなくてよい。
照射(A)、照射(B)および照射(C)は別個に実施してよいが、所望の親液化領域の深さに応じて、照射(A)と照射(C)、または照射(B)と照射(C)とは、少なくとも一部の時間、同時に実施することもできる。後者の場合、生産性を向上させることができる。
【0045】
フォトマスクの製造は公知の方法で行うことができる。例えば、フォトマスクの材料であるブランクス(一般的には、透明基材上に遮光膜となるクロム薄膜が成膜され、レジストが塗布されたもの)に所望のパターンを描画し、レジストを現像処理により除去し、レジストが除去された部分のクロム薄膜をエッチングにより除去し、不要になったレジストを剥離した後、洗浄することにより、所望の通りパターニングされたフォトマスクを製造できる。フォトマスクには、所望通りに精細なパターンを形成できる。また、パターン設計の自由度も制限されない。このようなフォトマスクを用いて、所望通りに精細な親液化領域を、パターン設計の制限を伴わずに形成できる。
【0046】
本発明において繊維基材に照射する電磁波等が電磁波である場合、電磁波は波長1~400nmの紫外光であってよい。従って、本発明の好ましい一態様では、工程(i)において、繊維基材上および繊維基材内部に紫外光を照射することにより親液化領域を形成する。
【0047】
紫外光の例としては、極端紫外光(1~10nm)、真空紫外光(波長10~220nm)、中紫外光(波長220~320nm)、近紫外光(波長320~400nm)等が挙げられる。真空紫外光を照射する場合、光源として、波長172nmの真空紫外光を発光できる市販のキセノンエキシマランプを使用できる。中紫外光または近紫外光を照射する場合、光源として、水銀キセノンランプ、水銀ランプ、キセノンランプまたはキセノンエキシマランプを使用できる。さらに、波長248nmの紫外光を発光できるKrFエキシマレーザー、波長193nmの紫外光を発光できるArFエキシマレーザー、または波長157nmの紫外光を発光できるF2エキシマレーザーを使用してもよい。
【0048】
紫外光の積算光量は、形成する親液化領域における繊維基材表面の純水に対する接触角、または繊維基材内部に形成する親液化領域の深さに応じて、適宜決定できる。積算光量は、通常0.01~12J/cm、特に0.5~5J/cmであってよい。
【0049】
電磁波等の照射前または照射後に、繊維基材に対して50~150℃程度の熱処理を施してもよい。酸素により親液化が阻害される場合は、窒素またはアルゴンのような不活性ガスの雰囲気下で電磁波等を照射してもよい。
【0050】
<工程(ii)>
工程(ii)では、工程(i)で形成した繊維基材の親液化領域に、機能性材料の溶液または分散体が付与された繊維基材が得られる。この工程は、工程(i)の終了直後に実施してもよいし、一定の時間経過した後(通常数時間以内、例えば1時間以内)に実施してもよい。
【0051】
この工程では、先に述べたような広い範囲の機能性材料溶液または分散体を使用できる。そのような機能性材料の溶液または分散体の調製は、機能性材料と溶媒若しくは分散媒とを、公知の混合機(例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することにより実施できる。溶媒または分散媒としては、機能性材料の安定な溶液または分散体をもたらし、工程(iii)で除去できる溶媒または分散媒であればよい。例えば、水、水と水混和性の有機溶媒若しくは有機分散媒との混合物、水を含まない有機溶媒若しくは有機分散媒のいずれであってもよい。
【0052】
水混和性の有機溶媒若しくは有機分散媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール若しくはそれらのエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ブチルジエチレングリコールアセタート等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらの有機溶媒若しくは有機分散媒は、単独で若しくは複数を混合して用いることができる。水混和性の有機溶媒若しくは有機分散媒と水との質量比は、99:1~1:99であってよく、好ましくは2:1~1:6である。
【0053】
水を含まない有機溶媒若しくは有機分散媒としては、例えば、上記において水混和性の有機溶媒若しくは有機分散媒として例示したものが挙げられる。これらの有機溶媒若しくは有機分散媒を、水と混和せずに単独で若しくは複数を混合して用いればよい。
また、水と混合しない有機溶媒若しくは有機分散媒も使用できる。その例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロブタン、シクロオクタン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコールが挙げられる。これらの有機溶媒若しくは有機分散媒を、単独で若しくは複数を混合して用いることができる。
【0054】
溶媒または分散媒は、工程(iii)における溶媒または分散媒の易除去性、および環境上の理由から、好ましくは水である。
【0055】
機能性材料の溶液または分散体における濃度は、機能性材料に応じて適宜決定でき、例えば0.01~50質量%であってよい。
【0056】
機能性材料の溶液または分散体には、必要に応じて常套の添加剤(例えば、界面活性剤または各種高分子材料のような分散剤)が含まれていてもよい。
【0057】
機能性材料が導電性材料である場合、市販の導電性インクまたは導電性ポリマー溶液を使用することもできる。そのような市販品の例としては、株式会社C-INK製のドライキュアAg-J 0410B、および株式会社メルク製のPEDOT:PSS水溶液Orgacon S315が挙げられる。
【0058】
親液化領域への機能性材料の溶液または分散体の付与は、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷、凹版印刷、ディップニップ法、毛細管現象を利用したディッピング法、液圧転写法、水圧転写法、バーコート法またはスリットコート法等により実施できる。
本発明における繊維基材は、それ自体、本来撥液性であるため、例えば液圧転写法において繊維基材全面に機能性材料の溶液または分散体を付与した場合でも、もっぱら親液化領域にのみ、機能性材料の溶液または分散体を付与することができる。また、例えば毛細管現象を利用したディッピング法において、親液化領域の一部を機能性材料の溶液または分散体と接触させた場合でも、毛細管現象により、もっぱら親液化領域にのみ、機能性材料の溶液または分散体を付与することができる。もちろん、インクジェット法若しくはスクリーン印刷法等によって繊維基材表面の親液化領域にのみ機能性材料の溶液または分散体を付与した場合でも、もっぱら親液化領域にのみ、機能性材料の溶液または分散体を付与することができる。
【0059】
表裏の電気的導通が確保されたパターン付繊維基材を製造する場合は、繊維基材の両面または片面に上記付与を実施すればよい。両面に上記付与を実施する場合、各々の面における付与方法は同じであっても異なっていてもよい。
【0060】
片面に上記付与を実施する場合、親液化領域への機能性材料の溶液または分散体の付与を促進するために、当該溶液または分散体を適用した機能性材料表面と逆の表面に減圧を印加してもよい。
【0061】
親液化領域に付与された機能性材料の溶液または分散体は、親液化領域以外の領域(即ち撥液性の領域)にほとんどまたは全く広がらない。しかもこの現象は、機能性材料の種類、または機能性材料の溶液若しくは分散体の粘度若しくは濃度等に依存せずに発現できる。即ち、パターン設計の制限を伴わずに形成された精細な親液化領域に、多種多様な機能性材料の溶液または分散体を簡単かつ精確に付与することができる。また、親液化領域は、繊維基材上だけでなく繊維基材内部にも形成されているため、機能性材料の溶液または分散体は、所望の繊維基材の深さまで簡単かつ精確に浸透できる。
先述の通り、表裏の電気的導通が確保されたパターン付繊維基材の製造において、片面のみに上記付与を実施した場合であっても、驚くべきことに、もっぱら親液化領域にのみ、機能性材料の溶液または分散体を付与することができる。これにより、大幅な生産性の向上をもたらすことができる。また、ビアホールのように穴を作製することなく、簡単かつ精確に表裏の電気的導通を確保することができる。さらに、この構成では、ビアホールの穴部分の面積が不要となるため、電気的接続部の必要スペースが低減し、より効率的な回路設計が可能となる。
【0062】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(ii)で作製した繊維基材に含まれている溶液または分散体から、溶媒または分散媒が除去され、これによりパターン付繊維基材が得られる。この工程は、工程(ii)の終了直後に実施してもよいし、一定の時間経過した後(通常数時間以内、例えば1時間以内)に実施してもよい。
【0063】
溶媒または分散媒の除去は、蒸発により、例えば工程(ii)で機能性材料の溶液または分散体が付与された繊維基材を(例えば50~200℃に)加熱することにより、実施できる。溶媒または分散媒の除去は減圧下(例えば1×10-4~1×10Pa)で行ってもよい。
【0064】
工程(ii)で繊維基材の親液化領域にのみ精確に付与された機能性材料の溶液または分散体から、単純に溶媒または分散媒を除去することにより、繊維基材上に精細なパターンが形成される。このように、本発明の方法では、広い範囲の機能性材料溶液または分散体を用いて、より簡単な方法で、精細なパターンも有するパターン付繊維基材を製造できる。
【0065】
また、溶媒または分散媒の除去により得られたパターン付繊維基材では、パターンを構成する機能性材料の少なくとも一部が繊維基材の内部に存在する。内部に存在する機能性材料が、いわゆるアンカーの役割を果たすことにより、パターン付繊維基材は優れた耐屈曲性を有することができる。
【0066】
機能性材料が金属ナノ粒子または金属ナノワイヤーである場合、例えば60~250℃(好ましくは80~160℃)で例えば5~1200分間(好ましくは20~180分間)の加熱を実施することによって、分散媒が除去されると同時に、金属ナノ粒子同士または金属ナノワイヤー同士が融着できる。これにより、分散媒が保持されていた繊維基材の表面では、少なくとも部分的に金属薄膜が形成され、さらに分散媒が保持されていた繊維基材内部では、繊維基材を構成する繊維の少なくとも一部に融着金属が付着したり、繊維間の空隙の少なくとも一部に融着金属が広がったりする。このような繊維基材と融着金属との一体化により、パターン付繊維基材の優れた耐屈曲性をさらに向上させることができる。
【0067】
<積層工程>
複数のパターン付繊維基材から構成されるパターン付繊維基材積層体を製造する場合、その製造方法は、工程(iii)で得たパターン付繊維基材および後述の工程(iv)で得た少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有するパターン付繊維基材からなる群から選択される少なくとも2つのパターン付繊維基材を積層する工程を含む。
パターン付繊維基材の積層方法としては、一般的に知られている貼り合わせ法を用いることができる。例えば、ラミネータで、場合により加熱を伴って接着剤を用いて、または加熱により、ロールtoロール方式またはバッチ方式で貼り合わせを実施することができる。一般的には、長尺のパターン付繊維基材の場合はロールtoロール方式を用い、例えばA4サイズ以下といった比較的小さいパターン付繊維基材の場合は、バッチ方式を用いることが好ましい。接着剤を用いる場合は、<保護材>の段落で例示した接着剤を使用できる。
貼り合わせ時に減圧(例えば1×10-3~5×10Pa)を印加してもよい。しかし、本発明によれば、減圧を印加しなくても、パターン付繊維基材から気泡が抜けやすいため基材同士の貼り合わせにおいて大きな課題となる気泡のかみこみが生じにくく、その結果、優れた均一性という利点を有するパターン付繊維基材積層体を得やすい。少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を有するパターン付繊維基材を積層する場合は、保護材の個数または面積等に応じて、減圧の印加が好ましいこともある。
複数のパターン付繊維基材を積層する際に、異なるパターン付繊維基材のパターン同士の位置合わせが必要な場合は、光学式カメラ等のパターン識別機器を用いてパターンの位置を測定し、位置合わせを行ってもよい。その手順は特に限定されるものではないが、例えば、まず、1つ目のパターン付繊維基材の位置を、真空吸着または粘着剤等を用いて仮固定する工程を行い、次に、光学式カメラ等を用いてこのパターンの位置を測定して記憶する工程を行い、その後、2つ目のパターン付繊維基材を1つ目のパターン付繊維基材の位置にアライメント(位置合わせ)する工程を行う。アライメントした後は、位置ずれを起こさないようにしながら、場合により加熱を伴って接着剤を用いて、または加熱により、貼り合わせを実施する。硬化性接着剤を用いる場合は、必要に応じて熱または光エネルギーおよび圧力を印加することにより接着剤を硬化させる。最後に、パターン付繊維基材の仮固定を解除し、パターン付繊維基材積層体が得られる。
【0068】
パターン付繊維基材における導電パターンに、先述した電子部品を電気的に接続する場合、その方法は特に限定されず、当技術分野で一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0069】
<保護材を有するパターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体の製造方法>
パターン付繊維基材が保護材を有する場合、その製造方法は、
(iv)工程(iii)で得たパターン付繊維基材の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を形成する工程
を含む。
パターン付繊維基材積層体が、その表面に保護材を有する場合、その製造方法は、
パターン付繊維基材積層体の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を形成する工程
を含む。
【0070】
シート状の保護材を用いる場合は、例えばラミネータまたはシート貼り合わせ装置等を用いた一般的な方法により、パターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体の少なくとも一面の少なくとも一部にシート状保護材を貼り合わせることにより、保護材を形成することができる。シート状保護材は、接着剤を用いて貼り合わせることもできる。その場合の接着剤としては、<保護材>の段落で例示した接着剤を使用できる。
【0071】
保護材は、溶液若しくは分散体の適用および続く溶媒若しくは分散媒の除去により形成することもできる。具体的には、保護材の溶液若しくは分散体をパターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体の上に適用(例えば、塗布、印刷、転写、噴霧またはキャスト)するか、または保護材の溶液若しくは分散体にパターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体を接触若しくは浸漬させ、その後、溶媒若しくは分散媒を(例えば乾燥により)除去することにより、保護材を形成できる。例えば、ポリイミドからなる保護材を形成する場合は、保護材の溶液若しくは分散体として、ポリイミド溶液若しくはポリイミド前駆体溶液を用いることができる。
【0072】
パターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体のパターンが導電パターンの場合は、電着法を用いて、パターン部分のみに保護材を形成することができる。
【0073】
従って、本発明の一態様では、工程(iv)において、シート状保護材のパターン付繊維基材との貼り合わせ、保護材の溶液若しくは分散体のパターン付繊維基材に対する適用若しくは電着および続く溶媒若しくは分散媒の除去、または保護材の溶液若しくは分散体へのパターン付繊維基材の浸漬および続く溶媒若しくは分散媒の除去により、保護材を形成する。
これらの手順は、パターン付繊維基材積層体の少なくとも一面の少なくとも一部に保護材を形成する工程においても同様に用いることができる。
【0074】
保護材が、パターン付繊維基材若しくはパターン付繊維基材積層体の片面に複数存在する場合または両面に存在する場合、各保護材を形成する工程は、同じであっても異なっていてもよく、同時にまたは逐次実施できる。
【実施例
【0075】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、各物性値は以下の方法により測定したものである。
【0076】
[繊維基材を構成する繊維の平均繊維径]
繊維基材を構成する繊維の平均繊維径は、JIS L 1015「化学繊維ステープル試験方法(8.5.1)」に準拠して求めた。
【0077】
[接触角]
繊維基材表面に微小な純水滴(純水滴の大きさ:0.7μL)を滴下し、その純水滴の繊維基材に対して垂直方向の形状をカメラで撮影した。接触角の測定法として一般的なθ/2法により、繊維基材と純水滴とが接触してから1秒後の接触角(静的接触角)を算出した。接触角測定装置として、株式会社ニック製ぬれ性評価装置LSE-ME3(商品名)を用いた。3回測定した平均値を、その繊維基材表面の純水に対する接触角とした。
【0078】
[通気度]
繊維基材の通気度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法 通気性」のフラジール法に準拠して測定した。
【0079】
[導電パターンの線幅および配線同士の間隔]
導電パターンの実体顕微鏡像から求めた。n=3の平均値をそれぞれ求め、これらの平均値をそれぞれ、導電パターンの線幅および配線同士の間隔とした。
【0080】
[基材内部に達している機能性材料の基材表面からの深さ]
走査型電子顕微鏡により、導電性インクを用いて導電パターンを形成したパターン付基材の断面観察を行い、浸透した導電性インクの基材表面からの距離を読み取った。n=3の平均値を求め、この平均値を、機能性材料の基材表面からの深さとした。
なお、基材が繊維基材の場合、パターン付基材の観察用切断面の作製は、切断時に銀および繊維基材を構成する繊維等の位置がずれないよう、まず繊維基材内部を熱硬化性エポキシ樹脂で充填して真空脱泡し、大気圧下、空気雰囲気にて80℃のホットプレート上で90分間加熱することにより熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させた後、イオンビーム(Ar)を用いてイオンミリング法を実施することにより行った。基材がフィルムの場合、パターン付基材の切断面の作製は、熱硬化性エポキシ樹脂の充填を行わずに、イオンビーム(Ar)を用いたイオンミリング法により行った。
【0081】
実施例1
繊維基材として、目付け25g/m、通気度45cm/cm・s、厚さ250μmのポリブチレンテレフタレート(PBT)不織布を用いた。PBT不織布を構成する繊維の平均繊維径は5μmであった。また、初期状態の(真空紫外光照射前の)PBT不織布の表面の純水に対する接触角は、129°であった。この接触角がPBT本来の接触角(約90°)よりも大幅に高い値であることは、PBT不織布の表面がその構造(ダブルラフネス構造)等に起因して高い撥液性を有することを示している。
次に、繊維基材上および繊維基材内部に所望の親液化領域を形成するのに十分な真空紫外光の積算光量を決定した。具体的には、19L/分の流量で窒素を流通させながらPBT不織布片面に上方から真空紫外光(波長:172nm)を照射した後、不織布表面の接触角を測定することにより、積算光量を決定した。真空紫外光の照射は、株式会社エム・ディ・コム製のエキシマ照射装置MEIRA-MS-1-152-H3(商品名)を用いて行った。繊維基材表面の純水に対する接触角を5°以下とするための積算光量は、1.63J/cmであった。
続いて、導電パターンを形成した。具体的には、石英ガラス上に所望のパターンでクロム薄膜がパターニングされたフォトマスクを準備し、初期状態の不織布基材の上にこのフォトマスクを配置し、その上方から真空紫外光を1.63J/cmの積算光量で照射した。これにより、同一の繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域(真空紫外光照射部)と撥液性領域(非照射部)とが存在するようになった。この繊維基材の照射面側全面に液圧転写法によって導電性インクを適用することにより、親液化領域にのみ導電性インクが浸透し、保持された。導電性インクとしては、水溶媒を用いた銀ナノ粒子系導電性インクである、株式会社C-INK製の銀インク(ドライキュアAg-J 0410B:商品名)を用いた。その後、導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために、ホットプレートを用いて繊維基材を150℃で30分間加熱することにより、パターン付繊維基材を得た。
図1に、形成した導電パターンの一部を示す。導電パターンの配線はにじみがなく、最も細い線幅は200μm、配線同士の間隔は200μmであり、導電パターンを構成する銀の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在していた。また、断面観察をしたところ、導電パターンを構成する銀の少なくとも一部は、繊維基材の表面から200μmの深さに達していた(図2)。よって、得られたパターン付繊維基材は、耐屈曲性に優れたものであった。
【0082】
実施例2
繊維基材として、目付け25g/m、通気度80cm/cm・s、厚さ70μmの液晶ポリマー(LCP)不織布[クラレクラフレックス株式会社製 べクルス(登録商標)]を用いた。LCP不織布を構成する繊維の平均繊維径は7μmであった。また、初期状態のLCP不織布の表面の純水に対する接触角は、105°であった。この接触角がLCP本来の接触角(約70°)よりも大きな値であることは、LCP不織布の表面がその構造(ダブルラフネス構造)等に起因して撥液性を有することを示している。
次に、PBT不織布に代えてLCP不織布を用いたこと以外は実施例1と同様にして、真空紫外光の照射により繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成した。LCP不織布の表面の純水に対する接触角は、真空紫外光の照射により約40°以下に低下するため、Cassie-Baxterの式で表すことのできる接触角範囲を下回ることとなり、これは、LCP不織布の表面が撥液性を示さなくなったことを表している。この繊維基材にインクジェット法によって実施例1と同じ導電性インクを適用することにより、親液化領域にのみ導電性インクを保持した。続いて、実施例1と同様にして導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために繊維基材を加熱することにより、パターン付繊維基材を得た。
形成した導電パターンの最も細い線幅は400μm、配線同士の間隔は400μmであった。また、導電パターンを構成する銀の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在していた。よって、得られたパターン付繊維基材は、耐屈曲性に優れたものであった。
【0083】
実施例3
繊維基材として、目付け25g/m、通気度10cm/cm・s、厚さ50μmのLCP不織布[クラレクラフレックス株式会社製 べクルス(登録商標)]を用いた。LCP不織布を構成する繊維の平均繊維径は3μmであった。また、初期状態のLCP不織布の表面の純水に対する接触角は、111°であった。この接触角がLCP本来の接触角(約70°)よりも大きな値であることは、LCP不織布の表面がその構造(ダブルラフネス構造)、LCP不織布を構成する繊維の細い平均繊維径等に起因して高い撥液性を有することを示している。
次に、PBT不織布に代えてLCP不織布を用いたこと以外は実施例1と同様にして、真空紫外光の照射により繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成した。この繊維基材に、毛細管現象を利用したディッピング法によって実施例1と同じ導電性インクを適用することにより、親液化領域にのみ導電性インクを保持した。続いて、実施例1と同様にして導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために繊維基材を加熱することにより、パターン付繊維基材を得た。
導電パターンの配線はにじみがなく、最も細い線幅200μm、配線同士の間隔400μmでの作製が可能であった。また、導電パターンを構成する銀の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在していた。よって、得られたパターン付繊維基材は、耐屈曲性に優れたものであった。
【0084】
実施例4
導電性インクに代えて無電解めっき触媒コロイド溶液を用い、導電性インクの乾燥および焼結のための150℃で30分間の加熱に代えて無電解めっき触媒コロイド溶液の乾燥のための100℃で10分間の加熱を行ったこと以外は実施例1と同様にして、パターン付繊維基材を得た。無電解めっき触媒コロイド溶液としては、水溶媒を用いたパラジウム/スズ系コロイド溶液である、奥野製薬工業株式会社製の無電解めっき触媒溶液(OPC-80キャタリスト:商品名)を用いた。次いで、このパターン付繊維基材を、浸漬法により無電解めっき液に適用することにより、無電解めっき触媒を保持した領域にのみめっきを形成した。無電解めっき液としては、水溶媒を用いた銅系めっき液である、奥野製薬工業株式会社製の無電解銅めっき液(ATSアドカッパーIW-A:商品名、ATSアドカッパーC:商品名、ATSアドカッパーIW-M:商品名、無電解銅R-N:商品名)の混合液を用いた。続いて、無電解めっき液の乾燥のために、オーブンを用いて繊維基材を100℃で10分間加熱することにより、めっきパターン付繊維基材を得た。
めっきパターンの配線はにじみがなく、最も細い線幅200μm、配線同士の間隔200μmでの作製が可能であった。また、めっきパターンを構成する銅の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在していた。よって、得られたパターン付繊維基材は、耐屈曲性に優れたものであった。さらに、めっきパターン配線のシート抵抗値は、0.1Ω/□と導電性に優れたものであった。
【0085】
実施例5
真空紫外光の繊維基材への照射を片面だけでなく両面に実施したこと、および液圧転写法に代えてインクジェット法を採用したこと以外は実施例1と同様にして、一面に形成された導電パターン(A)と他面に形成された導電パターン(B)とを有するパターン付繊維基材を作製した。その際、図6に示すように、導電パターン(A)の一部と導電パターン(B)の一部とが互いに別の導電パターンにより接続されるように、真空紫外光の照射を実施した。
導電パターンの配線はにじみがなく、最も細い線幅は200μm、配線同士の間隔は200μmであった。また、導電パターンを構成する銀の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在していた。よって、得られたパターン付繊維基材は、耐屈曲性に優れたものであった。
導電パターン部分でのシート抵抗を測定した結果、導電性インクをインクジェット塗布した面〔導電パターン(A)が形成された面、表面〕について0.1Ω/□であり、その逆の面〔導電パターン(B)が形成された面、裏面〕から測定した結果は0.1Ω/□であった。また、パターン付繊維基材の表面および裏面に対して垂直な方向での、導電パターン(A)と導電パターン(B)とを互いに電気的に接続する別の導電パターンの部分の抵抗値を測定した結果、0.01Ω未満であり、パターン付繊維基材の表裏で電気的導通が得られていることが確認された。
【0086】
実施例6
繊維基材として、目付け25g/m、通気度80cm/cm・s、厚さ70μmの液晶ポリマー(LCP)不織布[クラレクラフレックス株式会社製 べクルス(登録商標)]を用いた。LCP不織布を構成する繊維の平均繊維径は1μmであった。また、初期状態のLCP不織布の表面の純水に対する接触角は、105°であった。この接触角がLCP本来の接触角(約70°)よりも大きな値であることは、LCP不織布の表面がその構造(ダブルラフネス構造)等に起因して撥液性を有することを示している。
次に、PBT不織布に代えてLCP不織布を用いたこと、および真空紫外光の照射にウシオ電機株式会社製のプリンタブルパターニング用光源ユニット VUVアライナー(商品名)を用いたこと、および液圧転写法に代えてインクジェット法を採用したこと以外は実施例1と同様にして、真空紫外光の照射により繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成した。LCP不織布の表面の純水に対する接触角は、真空紫外光の照射により約40°以下に低下するため、Cassie-Baxterの式で表すことのできる接触角範囲を下回ることとなり、これは、LCP不織布の表面が撥液性を示さなくなったことを表している。この繊維基材にインクジェット法によって実施例1と同じ導電性インクを適用することにより、親液化領域にのみ導電性インクを保持した。続いて、実施例1と同様にして導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために繊維基材を加熱することにより、パターン付繊維基材を得た。
形成した導電パターンの最も細い線幅は10μm、配線同士の間隔は10μmであった。また、導電パターンを構成する銀の少なくとも一部は繊維基材の内部に存在していた。よって、得られたパターン付繊維基材は、耐屈曲性に優れたものであった。
【0087】
比較例1
繊維基材として、目付け55g/m、通気度17.3cm/cm・s、厚さ110μmのポリエステル平織物を用いた。ポリエステル平織物は、ポリエチレンテレフタレート繊維(56dtex/36f)からなる縦糸の織り密度が150本/インチ、緯糸の織り密度が90本/インチの織物であった。また、ポリエステル平織物の表面の純水に対する接触角を測定しようと試みたが、水滴が織物内部に1秒より短い時間内に浸み込んだため、接触角を測定することができなかった。
この繊維基材にインクジェット法によって実施例1と同じ導電性インクを適用して、導電パターンの付与を試みたが、繊維基材の親水性が高いため導電性インクが多方向に広がってにじみが生じ、精細なパターンを有するパターン付繊維基材を得ることはできなかった。
【0088】
比較例2
基材として、PBT不織布に代えて、厚さ50μmのテイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、初期状態のPETフィルムの表面の純水に対する接触角:79°〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして、真空紫外光の照射により親液化領域を形成した。この基材に、実施例1と同様にして、導電性インクを適用し、導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために繊維基材を加熱することにより、パターン付基材を得た。
形成した導電パターンの最も細い線幅は200μm、配線同士の間隔は400μmであった。しかし、断面観察をしたところ、導電パターンを構成する銀は全て、フィルム上に存在し、基材の内部には存在しなかった(図3)。よって、得られたパターン付基材は、耐屈曲性に劣るものであった。
【0089】
比較例3
実施例1で用いた目付け25g/m、通気度45cm/cm・s、厚さ250μmのポリブチレンテレフタレート(PBT)不織布に親液化処理を行った。具体的には、19L/分の流量で窒素を流通させながらPBT不織布片面に上方から真空紫外光(波長:172nm)を照射した。これにより、PBT不織布の表面の純水に対する接触角が90°である繊維基材を得た。真空紫外光の照射は、株式会社エム・ディ・コム製のエキシマ照射装置MEIRA-MS-1-152-H3(商品名)を用いて行った。
得られた繊維基材にインクジェット法によって実施例1と同じ導電性インクを適用して、導電パターンの付与を試みたが、繊維基材の親水性が高いため導電性インクが多方向に広がってにじみが生じ、精細なパターンを有するパターン付繊維基材を得ることはできなかった。
【0090】
[耐屈曲性の比較]
以下において、耐屈曲性について、実施例1のパターン付繊維基材と、比較例2のパターン付基材とを、試験片をそれぞれ作製して比較した。
【0091】
まず、実施例1のパターン付繊維基材に対応する試験片を作製した。具体的には、繊維基材として、実施例1で用いたものと同じPBT不織布を用いた。このPBT不織布上に、中央付近のクロム薄膜(1cm×9cm)を除去したフォトマスクを配置し、19L/分の流量で窒素を流通させながら、その上方から真空紫外光(波長:172nm、積算光量:1.63J/cm)を照射することにより、繊維基材上および繊維基材内部に親液化領域を形成した。この繊維基材にドロップキャスト法により実施例1と同じ導電性インクを適用することにより、親液化領域にのみ導電性インクが浸透し、保持された。次いで、実施例1と同様にして導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために繊維基材を加熱することにより、1cm×9cm寸法のパターンが形成された繊維基材を得た。この繊維基材から、パターンが形成された部分(1cm×9cm)を切り出すことにより、試験片を得た。
【0092】
続いて、比較例2のパターン付基材に対応する試験片を作製した。具体的には、基材として、厚さ50μmのテイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〕を用いた。PBT不織布に代えてPETフィルムを用いたこと以外は実施例1のパターン付繊維基材に対応する試験片と同様にして、真空紫外光の照射により親液化領域を形成した。この基材にドロップキャスト法により実施例1と同じ導電性インクを適用することにより、親液化領域にのみ導電性インクが保持された。次いで、実施例1と同様にして導電性インクの乾燥および銀ナノ粒子の焼結のために繊維基材を加熱することにより、1cm×9cm寸法のパターンが形成された基材を得た。この基材から、パターンが形成された領域(1cm×9cm)を切り出すことにより、試験片を得た。
【0093】
上記の通り作製した試験片の長手方向の抵抗(初期抵抗値:RΩ)をそれぞれ測定した。次いで、各試験片の長手方向両端部を屈曲試験装置に固定した。試験片を、パターン形成面が外側になるように屈曲半径1.5mmで連続的に屈曲させた。15000回、20000回および30000回屈曲させた後の試験片の長手方向の抵抗(RΩ)をそれぞれ測定し、下記式に従って抵抗悪化率αを算出した。
【数1】
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1のパターン付繊維基材に対応する試験片では、屈曲回数が15000回より増えても抵抗悪化率は上昇しなかった。一方、比較例2のパターン付基材に対応する試験片では、屈曲回数の増加に伴って抵抗悪化率は上昇した。
なお、実施例1のパターン付繊維基材に対応する試験片において、屈曲試験の初期(屈曲回数15000回まで)に抵抗悪化率が0.15となったが、これは、不織布内部で繊維上に固定されていなかった銀ナノ粒子が剥落したためと考えられる。
【0096】
これらの結果から、本発明のパターン付繊維基材の方が、パターン付基材より優れた耐屈曲性を有することが明らかである。これは、パターン付繊維基材では、導電性インクが繊維基材に浸透することにより、パターンを構成する導電性材料の少なくとも一部が繊維基材内部(屈曲時の中立面近傍)に存在するために、そのような導電性材料が屈曲時に受ける歪みが小さい一方で、パターン付基材では、導電性インクがフィルム基材に浸透せず、フィルム表面にのみ導電パターンが形成されるために、導電パターンが屈曲時に大きな歪みを受けるためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のパターン付繊維基材は、広い範囲の機能性材料溶液または分散体を用いて、より簡単な方法で製造でき、精細なパターンも有することができ、耐屈曲性に優れている。このような本発明のパターン付繊維基材は、繊維製品若しくはその一部を構成する部材、電子部材、建築物若しくは構造物のための部材、または建物若しくは乗物等の内装用部材として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0098】
1 基材の厚さ
2 基材内部に存在する機能性材料の基材表面からの深さ
3 基材表面上に存在する機能性材料
4 パターン
5 導電パターン(A)
6 導電パターン(B)
7 導電パターン(A)と導電パターン(B)とを電気的に接続する導電パターン
8 パターン付繊維基材
9 保護材
10 接着層
11 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7