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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230620BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230620BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230620BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230620BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020156404
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022050041
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】江原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森島 彰紀
(72)【発明者】
【氏名】曽篠 亮太
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/037654(WO,A1)
【文献】特開2020-089200(JP,A)
【文献】特開2018-148679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 13/00
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網に電気的に接続可能な複数の電力調整リソースと、前記複数の電力調整リソースを管理する管理装置とを含む電力システムであって、
前記管理装置は、自然変動電源を含む事業所を管理する第1コンピュータと、前記複数の電力調整リソースを管理する第2コンピュータとを含み、
前記電力システムは、前記電力網の需給を管理する第3コンピュータをさらに含み、
前記第3コンピュータは、前記電力網の需給調整を要求する第1要求信号を送信するように構成され、
前記第1コンピュータは、前記電力調整リソースに要求する所定期間における充電または放電の電力量を示す第2要求信号を生成し、生成された前記第2要求信号を送信するように構成され、
前記第2コンピュータは、前記第3コンピュータ及び前記第1コンピュータからそれぞれ受信した前記第1要求信号及び前記第2要求信号の両方の要求に応えるように、前記所定期間における所定間隔ごとの充電または放電の指令電力値を示す電力指令信号を生成し、生成された前記電力指令信号を、前記複数の電力調整リソースに含まれる所定の電力調整リソースへ送信するように構成され、
前記第1コンピュータは、前記事業所における前記自然変動電源の発電量と、前記事業所における電力負荷とを用いて、前記所定期間において前記電力網から前記事業所に供給される電力量が所定値を超えないように前記第2要求信号を生成するように構成される、電力システム。
【請求項2】
前記第2コンピュータは、前記第1要求信号及び前記第2要求信号を重畳して前記電力指令信号を生成する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記所定の電力調整リソースは、前記電力網と電気的に接続可能な電動車両を含む、請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記第1要求信号は、前記電力網の周波数調整を要求する信号である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記所定期間の長さは3分以上であり、
前記所定間隔は15秒以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システム、サーバ、充放電制御装置、及び電力需給調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、国際公開第2018/084151号(特許文献1)には、蓄電器から電力網に対する短期的な充放電の切替え要求(周波数調整の要求)と、蓄電器から電力網に対する継続的な放電要求(瞬動予備力の要求)とのいずれか一方に応じて蓄電器の充放電を制御するサーバが開示されている。このサーバは、蓄電器のSOC(State Of Charge)に基づいて、周波数調整の要求と瞬動予備力の要求とのいずれか一方を選ぶように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/084151号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されるサーバは、周波数調整の要求と瞬動予備力の要求とのいずれか一方の要求にしか応えることができない。このサーバは、周波数調整の要求に応える場合には、周波数調整に専念する。
【0005】
しかしながら、近年、複数の電力調整リソース(たとえば、分散型電源、電力貯蔵装置、及び電気機器)がネットワークを形成して1つの集合体となったマイクログリッドが注目されている。マイクログリッドを管理するサーバは、たとえば経済的な観点及び/又は二酸化炭素の排出量削減(COミニマム)の観点から、電力調整リソースに所定期間における電力量の調整を要求することがある。以下、所定期間における電力量の調整を、単に「電力量調整」とも称する。電力調整リソースによる電力量調整によって、所定期間において電力網からマイクログリッドに供給される電力量を調整することができる。
【0006】
電力網の需給調整(たとえば、周波数調整)と電力調整リソースに対する電力量調整とが要求される場合において、上記特許文献1に記載されるサーバによって両方の要求に同時に応えることは困難である。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電力網の需給調整の要求と電力調整リソースに対する電力量調整の要求との両方に同時に応えることができる電力システム、サーバ、充放電制御装置、及び電力需給調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の観点に係る電力システムは、電力網に電気的に接続可能な複数の電力調整リソースと、複数の電力調整リソースを管理する管理装置とを含む。管理装置は、電力網の需給調整を要求する第1要求信号と、電力調整リソースに所定期間における電力量の調整を要求する第2要求信号とを取得し、所定期間における所定間隔ごとの指令電力値を示す電力指令信号を、複数の電力調整リソースに含まれる所定の電力調整リソースへ送信するように構成される。管理装置は、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように電力指令信号を生成する。
【0009】
上記電力システムでは、上記のように生成される電力指令信号により、電力網の需給調整と所定期間における電力量調整との両方を所定の電力調整リソースに指令することが可能になる。所定の電力調整リソースは、電力指令信号が示す指令電力値(すなわち、所定期間における所定間隔ごとの指令電力値)に従って動作することで、電力網の需給調整の要求と所定期間における電力量調整の要求との両方に同時に応えることができる。
【0010】
上記の管理装置は、第1要求信号及び第2要求信号を重畳して電力指令信号を生成するように構成されてもよい。
【0011】
上記所定の電力調整リソースは、電力網と電気的に接続可能な電動車両を含んでもよい。管理装置は、事業所を管理する第1コンピュータと、電動車両を管理する第2コンピュータとを含んでもよい。第1コンピュータは、事業所における電力負荷を用いて第2要求信号を生成し、生成された第2要求信号を第2コンピュータへ送信するように構成されてもよい。第2コンピュータは、第1要求信号を受信し、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように電動車両に対する電力指令信号を生成するように構成されてもよい。
【0012】
上記の電力システムでは、事業所における電力負荷に基づいて第2要求信号が生成される。そして、こうして生成される第2要求信号の要求に応える電力指令信号に従って電動車両による電力調整が行なわれる。このため、事業所において、電力コストを削減したり、二酸化炭素の排出量を削減したりすることが可能になる。
【0013】
なお、電動車両は、電力貯蔵装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成される車両である。電動車両には、EV(電気自動車)及びPHV(プラグインハイブリッド車両)のほか、FC車(燃料電池自動車)、レンジエクステンダーEVなども含まれる。電力貯蔵装置は、電力を貯蔵可能に構成されていればよく、貯蔵方式は任意である。電力貯蔵装置は、電力(電気エネルギー)をそのまま貯蔵してもよいし、他のエネルギー(たとえば、エネルギー源としての液体燃料又は気体燃料)に変換して貯蔵してもよい。電力貯蔵装置の例としては、二次電池、PtG(Power to Gas)機器が挙げられる。
【0014】
事業所は、マイクログリッドを構築してもよい。事業所は、工場であってもよい。第1コンピュータは、FEMS(Factory Energy Management System)サーバであってもよいし、BEMS(Building Energy Management System)サーバであってもよい。
【0015】
事業所は、自然変動電源を含んでもよい。第1コンピュータは、事業所における自然変動電源の発電量と、事業所における電力負荷とを用いて、所定期間において電力網から事業所に供給される電力量が所定値を超えないように第2要求信号を生成するように構成されてもよい。
【0016】
自然変動電源は、気象条件によって発電量が変動する。自然変動電源の例としては、太陽光発電設備、風力発電設備が挙げられる。自然変動電源では、再生可能エネルギーを利用して発電が行なわれるため、自然変動電源を用いて事業所で使用する電力の少なくとも一部を確保することによって事業所における二酸化炭素の排出量を削減できる。そして、上記の電力システムでは、自然変動電源の発電量を用いて第2要求信号が生成されるため、変動する自然変動電源の発電量に合わせて第2要求信号を生成することができる。また、所定期間において電力網から事業所に供給される電力量が所定値を超えないように第2要求信号が生成される。このため、電力網から事業所へ供給される電力量が過剰に多くなることが抑制される。
【0017】
上記第1要求信号は、電力網の周波数調整を要求する信号であってもよい。上記第2コンピュータは、電力網の需給を管理する第3コンピュータから第1要求信号を受信するように構成されてもよい。
【0018】
上記の電力システムによれば、電力網の周波数調整の要求と電力調整リソースに対する電力量調整の要求との両方に同時に応えることが可能になる。
【0019】
上記第1要求信号は、LFC(Load Frequency Control)信号であってもよい。また、上記第1要求信号は、ガバナフリー運転を要求する信号であってもよい。第3コンピュータは、送配電事業者のサーバであってもよいし、需給調整市場のサーバであってもよいし、アグリゲータのサーバであってもよい。
【0020】
第2要求信号の所定期間(以下、「対象期間」とも称する)は、電力量(kWh)の調整に適した長さに設定されてもよい。電力指令信号の所定間隔(以下、「指令間隔」とも称する)は、電力(kW)の調整に適した間隔に設定されてもよい。これら対象期間及び指令間隔は、下記のような範囲に設定されてもよい。
【0021】
対象期間の長さは3分以上であってもよい。指令間隔は15秒以下であってもよい。対象期間の長さは、3分以上3時間以下であってもよいし、30分以上1時間以下であってもよい。指令間隔は、0.1m秒以上15秒以下であってもよいし、0.1秒以上5秒以下であってもよい。
【0022】
本開示の第2の観点に係るサーバは、電力網に電気的に接続可能な複数の電力調整リソースを管理するように構成される。サーバは、電力網の需給調整を要求する第1要求信号と、電力調整リソースに所定期間における電力量の調整を要求する第2要求信号とを受信し、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように、所定期間における所定間隔ごとの指令電力値を示す電力指令信号を生成し、生成された電力指令信号を、複数の電力調整リソースに含まれる所定の電力調整リソースへ送信するように構成される。
【0023】
上記のサーバでは、上記のように生成される電力指令信号により、電力網の需給調整と所定期間における電力量調整との両方を所定の電力調整リソースに指令することができる。これにより、電力網の需給調整の要求と電力調整リソースに対する電力量調整の要求との両方に同時に応えることが可能になる。
【0024】
本開示の第3の観点に係る充放電制御装置は、電力網と電気的に接続可能な蓄電装置の充放電制御を行なうように構成される。充放電制御装置は、電力網の需給調整を要求する第1要求信号と、蓄電装置に所定期間における電力量の調整を要求する第2要求信号とを取得し、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に同時に応えるように蓄電装置の充放電を制御するように構成される。
【0025】
上記の充放電制御装置によれば、電力網の需給調整の要求と蓄電装置に対する電力量調整の要求との両方に同時に応えるように、蓄電装置の充放電制御を行なうことが可能になる。
【0026】
本開示の第4の観点に係る電力需給調整方法は、以下に説明する信号生成ステップと制御ステップとを含む。
【0027】
信号生成ステップでは、電力網の需給調整の要求と、電力網に電気的に接続可能な電力調整リソースに対する所定期間における電力量調整の要求との両方に応えるように、所定期間における所定間隔ごとの指令電力値を示す電力指令信号を生成する。制御ステップでは、生成された電力指令信号に従って電力調整リソースを制御する。
【0028】
上記のサーバによれば、電力網の需給調整の要求と電力調整リソースに対する電力量調整の要求との両方に応える電力指令信号を生成し、生成された電力指令信号に従って電力調整リソースを制御することができる。これにより、電力網の需給調整の要求と電力調整リソースに対する電力量調整の要求との両方に同時に応えることが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、電力網の需給調整の要求と電力調整リソースに対する電力量調整の要求との両方に同時に応えることができる電力システム、サーバ、充放電制御装置、及び電力需給調整方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の実施の形態に係る電力システムの概略的な構成を示す図である。
図2図1に示した電力システムに含まれる各サーバ及び各車両の内部構成を示す図である。
図3】本開示の実施の形態に係る電力需給調整方法を示すフローチャートである。
図4図1に示した電力システムに含まれるFEMSサーバ及びアグリゲータサーバの各々の構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。
図5図4に示したアグリゲータサーバが最適工場負荷を算出する方法について説明するための図である。
図6】実施例に係る第1要求信号(需給調整の要求)から生成される第1電力信号を示す図である。
図7】第1実施例に係る第2要求信号が要求するkWh目標値と、このkWh目標値から生成される第2電力信号を示す図である。
図8】第1実施例に係る電力指令信号を示す図である。
図9】第2実施例に係る第2要求信号が要求するkWh目標値と、このkWh目標値から生成される第2電力信号とを示す図である。
図10】第2実施例に係る電力指令信号を示す図である。
図11】本開示の実施の形態の変形例において、サブアグリゲータサーバが適用された電力システムを示す図である。
図12図4に示したFEMSサーバの変形例を示す図である。
図13図12に示したFEMSサーバの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0032】
図1は、本開示の実施の形態に係る電力システムの概略的な構成を示す図である。図1を参照して、電力システム1は、電力系統PGと、複数の車両10と、FEMSサーバ100(以下、単に「サーバ100」と表記する)と、アグリゲータサーバ200(以下、単に「サーバ200」と表記する)と、送配電事業者サーバ300(以下、単に「サーバ300」と表記する)と、工場500と、受変電設備501とを含む。FEMSは、工場エネルギー管理システム(Factory Energy Management System)を意味する。アグリゲータは、複数の電力調整リソースを束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者である。工場500は、本開示に係る「事業所」の一例に相当する。
【0033】
電力系統PGは、図示しない発電所及び送配電設備によって構築される電力網である。この実施の形態では、電力会社が発電事業者及び送配電事業者を兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当し、電力系統PGを保守及び管理する。電力会社は、電力系統PGの管理者に相当する。サーバ300は、電力系統PG(電力網)の需給を管理するコンピュータであり、電力会社に帰属する。電力系統PG、サーバ300は、それぞれ本開示に係る「電力網」、「第3コンピュータ」の一例に相当する。
【0034】
アグリゲータは、複数の車両10を管理する。サーバ200は、複数の車両10を管理するコンピュータであり、アグリゲータに帰属する。サーバ200は、本開示に係る「第2コンピュータ」の一例に相当する。複数の車両10の各々は、たとえばEV(電気自動車)であり、蓄電装置11を備える。各車両10は、外部充電及び外部給電を実行可能に構成される。外部充電は、車両10の外部から電力の供給を受けて車両10の蓄電装置11を充電することである。外部給電は、車両10の蓄電装置11から放電された電力を用いて車両10の外部へ給電を行なうことである。複数の車両10の各々は、本開示に係る「電力調整リソース」の一例に相当する。この実施の形態では、電力システム1に含まれる各車両10が同じ構成を有するものとする。しかし、電力システム1は、異なる構成を有する複数種の車両を含んでもよい。電力システム1は、個人が所有する車両(POV)と、MaaS(Mobility as a Service)事業者が管理する車両(MaaS車両)との少なくとも一方を含んでもよい。
【0035】
工場500は、後述する複数の電力調整リソースによってマイクログリッドMGを構築している。マイクログリッドMGにおいて複数の電力調整リソースをネットワーク化するための電力線は、自営電力線であってもよい。受変電設備501は、マイクログリッドMGの連系点(受電点)に設けられ、電力系統PGとマイクログリッドMGとの並列(接続)/解列(切離し)を切替え可能に構成される。マイクログリッドMGが電力系統PGと連系しているときに、受変電設備501は、電力系統PGから、たとえば特別高圧(7000Vを超える電圧)の交流電力を受電し、受電した電力を降圧してマイクログリッドMGへ供給する。受変電設備501は、高圧側(一次側)の開閉装置(たとえば、区分開閉器、断路器、遮断器、及び負荷開閉器)、変圧器、保護リレー、計測機器、及び制御装置を含んで構成される。なお、受変電設備501が電力系統PGから受電する電力は、特別高圧の電力に限られず、たとえば高圧(600V超7000V以下の電圧)の電力であってもよい。
【0036】
工場500は、たとえば自動車製造工場であってもよいし、他の工場であってもよい。工場500に含まれる複数の要素は、相互に電気的に接続されることによってマイクログリッドMGを構築している。具体的には、工場500は、複数のEVSE20と、定置式電力貯蔵装置30と、建物510と、産業設備520と、自然変動電源530と、発電機540とを含む。
【0037】
各EVSE20は、工場500の敷地内に設置されたEVSEである。EVSEは、車両用給電設備(Electric Vehicle Supply Equipment)を意味する。各EVSE20とマイクログリッドMGとの間で電力をやり取りできるように、各EVSE20はマイクログリッドMGと電気的に接続されている。車両10は、EVSE20に電気的に接続可能に構成される。たとえば、EVSE20につながる充電ケーブルが車両10のインレットに接続されることによって、EVSE20と車両10との間で電力の授受を行なうことが可能になる。工場500が備えるEVSE20の数は任意であり、5個程度であってもよいし、10個以上であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0038】
定置式電力貯蔵装置30は、工場500の敷地内に設置された電力貯蔵装置である。定置式電力貯蔵装置30とマイクログリッドMGとの間で電力をやり取りできるように、定置式電力貯蔵装置30はマイクログリッドMGと電気的に接続されている。この実施の形態では、定置式電力貯蔵装置30として、リチウムイオン電池を採用する。リチウムイオン電池は、車両で使用されたバッテリ(リサイクル品)であってもよい。定置式電力貯蔵装置30は、リチウムイオン電池に限られず、他の二次電池であってもよいし、PtG(Power to Gas)機器であってもよい。この実施の形態では、定置式電力貯蔵装置30の数が1個であるが、工場500が備える定置式電力貯蔵装置30の数は任意であり、5個程度であってもよいし、10個以上であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0039】
建物510には、たとえば工場500の作業員が出入りする。建物510は、マイクログリッドMGから供給される電力によって動作する各種電気機器(たとえば、照明器具及び空調設備)を含む。この実施の形態では、建物510外のみに発電機(自然変動電源530及び発電機540)が設けられているが、建物510内に発電機が設けられてもよい。
【0040】
産業設備520は、屋外で使用される産業用の設備であり、マイクログリッドMGから供給される電力によって動作する。この実施の形態に係る産業設備520は、アルミニウム用の電気溶解炉及び保持炉を含む。産業設備520は、排水処理を行なう排水プラントと、廃棄物を再資源化するリサイクルプラントとの少なくとも一方を含んでもよい。
【0041】
自然変動電源530は、気象条件によって発電出力が変動する電源であり、発電された電力をマイクログリッドMGへ出力する。自然変動電源530によって発電された電力は、変動性再生可能エネルギー(VRE)に相当する。自然変動電源530によって発電された余剰電力は定置式電力貯蔵装置30に蓄えられてもよい。この実施の形態では、自然変動電源530としてPV発電設備(たとえば、屋根に設置される太陽光パネル)を採用する。PV発電は、太陽光発電(Photovoltaic power generation)を意味する。ただしこれに限られず、自然変動電源530は、PV発電設備に代えて又は加えて、風力発電設備を含んでもよい。
【0042】
発電機540は、自然変動電源に該当しない発電機であり、発電された電力をマイクログリッドMGへ出力する。この実施の形態では、発電機540として蒸気タービン発電機を採用する。ただしこれに限られず、発電機540は、蒸気タービン発電機に代えて又は加えて、ガスタービン発電機、ディーゼルエンジン発電機、ガスエンジン発電機、及びバイオマス発電機の少なくとも1つを含んでもよい。工場500は、発電時に発生する熱を活用するコージェネレーションシステムを含んでもよい。
【0043】
サーバ100は、工場500を管理するように構成される。工場500に含まれる定置式電力貯蔵装置30、建物510、産業設備520、自然変動電源530、及び発電機540の各々は、本開示に係る「電力調整リソース」の一例に相当する。サーバ100は、これらの電力調整リソースを管理するように構成される。サーバ100は、本開示に係る「第1コンピュータ」の一例に相当する。
【0044】
図2は、サーバ100,200,300及び車両10の各々の内部構成を示す図である。図2を参照して、サーバ100,200,300は、それぞれ制御装置101,201,301と、記憶装置102,202,302と、通信装置103,203,303とを含んで構成される。制御装置101,201,301の各々は、プロセッサを含み、所定の情報処理を行なうように構成される。記憶装置102,202,302の各々は、各種情報を保存可能に構成される。記憶装置102,202,302には、それぞれ制御装置101,201,301に実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。通信装置103,203,303の各々は、各種通信I/Fを含む。制御装置101,201,301は、それぞれ通信装置103,203,303を通じて外部と通信するように構成される。
【0045】
車両10は、前述の蓄電装置11に加えて、蓄電装置11の充放電電力を調整する充放電器12と、充放電器12を制御するECU(Electronic Control Unit)13とを備える。ECU13は、プロセッサ(たとえば、CPU(Central Processing Unit))、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、及びタイマ(いずれも図示せず)を含んで構成される。ECU13は、マイクロコンピュータであってもよい。
【0046】
蓄電装置11は、走行用の電力を蓄電する二次電池を含んで構成される。この実施の形態では、二次電池として、複数のリチウムイオン電池を含む組電池を採用する。組電池は、複数の単電池(一般に「セル」とも称される)が互いに電気的に接続されて構成される。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。
【0047】
この実施の形態では、EVSE20として、DC方式のEVSEを採用する。このため、車両10からEVSE20へ直流電力が供給され、EVSE20に内蔵されるインバータによってDC/AC変換が行なわれる。充放電器12は、たとえばDC/DCコンバータによって充放電電力を調整するように構成される。DC方式のEVSEの規格は、CHAdeMO、CCS(Combined Charging System)、GB/T、Teslaのいずれであってもよい。ただし、EVSE20がDC方式であることは必須ではなく、AC方式であってもよい。車両10がAC方式のEVSEに対して外部給電を行なう形態では、充放電器12が、整流回路、PFC(Power Factor Correction)回路、絶縁回路(たとえば、絶縁トランス)、インバータ、及びフィルタ回路を含んでもよい。蓄電装置11から放電された電力に充放電器12がDC/AC変換を行ない、変換後の交流電力が車両10からEVSEへ供給されてもよい。
【0048】
各車両10のユーザは、携帯端末14を携帯している。この実施の形態では、各携帯端末14として、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、各携帯端末14としては、任意の携帯端末を採用可能であり、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ)、又は電子キーなども採用可能である。携帯端末14には所定のアプリケーションソフトウェア(以下、単に「アプリ」と称する)がインストールされており、携帯端末14は、そのアプリを通じてサーバ200と情報のやり取りを行なうように構成される。ユーザは、携帯端末14を操作することにより、ユーザに帰属する車両10の行動予定をサーバ200へ送信することができる。車両10の行動予定の例としては、POVの運転計画(たとえば、自宅を出発する時刻、行き先、及び到着時刻)、又はMaaS車両の運行計画が挙げられる。
【0049】
サーバ100は、工場500で使用される各電力調整リソースの状態(たとえば、消費電力、発電電力、及び蓄電量)を管理している。工場500内の各電力調整リソースの状態は、記憶装置102に記憶されている。電力調整リソースを識別するための識別情報(以下、「リソースID」とも称する)が電力調整リソースごとに付与されており、サーバ100は各電力調整リソースの情報をリソースIDで区別して管理している。制御装置101は、図示しない各種センサにより、工場500における各電力調整リソースの状態を検出し、記憶装置102内のデータを更新するように構成される。
【0050】
サーバ200は、登録された各ユーザの情報(以下、「ユーザ情報」とも称する)と、登録された各車両10の情報(以下、「車両情報」とも称する)と、登録された各EVSE20の情報(以下、「EVSE情報」とも称する)と、登録された定置式電力貯蔵装置30の情報(以下、「PS情報」とも称する)とを管理するように構成される。ユーザ情報、車両情報、EVSE情報、及びPS情報は、識別情報(ID)で区別されて記憶装置202に記憶されている。
【0051】
ユーザIDは、ユーザを識別するための識別情報であり、ユーザに携帯される携帯端末14を識別する情報(端末ID)としても機能する。サーバ200は、携帯端末14から受信した情報をユーザIDごとに区別して保存するように構成される。ユーザ情報には、ユーザが携帯する携帯端末14の通信アドレスと、ユーザに帰属する車両10の車両IDとが含まれる。
【0052】
車両IDは、車両10を識別するための識別情報である。車両IDは、VIN(Vehicle Identification Number)であってもよい。車両情報には、各車両10の行動予定が含まれる。EVSE-IDは、EVSE20を識別するための識別情報である。EVSE情報には、各EVSE20の通信アドレスと、各EVSE20に接続された車両10の状態とが含まれる。また、EVSE情報には、互いに接続されている車両10とEVSE20の組合せを示す情報(たとえば、EVSE-IDと車両IDの組合せ)も含まれる。この実施の形態では、サーバ200が、EVSE20と通信するとともに、EVSE20を介して、EVSE20に接続された車両10と通信するように構成される。サーバ200は、EVSE20に接続された各車両10の状態(たとえば、蓄電装置11のSOC(State Of Charge))を、各車両10から取得するように構成される。なお、車両10は、サーバ200と直接、無線通信するように構成されてもよい。車両10は、DCM(Data Communication Module)を含んでもよいし、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。
【0053】
PS-IDは、定置式電力貯蔵装置30を識別するための識別情報である。PS情報には、定置式電力貯蔵装置30の状態及び通信アドレスが含まれる。サーバ200は、定置式電力貯蔵装置30から受信した定置式電力貯蔵装置30の状態(たとえば、SOC)をPS-IDと紐付けて保存するように構成される。
【0054】
この実施の形態では、各車両10の充放電器12と定置式電力貯蔵装置30の充放電器との各々が、サーバ200によって遠隔操作され、サーバ200の指示に従って充放電を行なうように構成される。各車両10は、外部充電及び外部給電により、マイクログリッドMGと蓄電装置11との間で電力をやり取りするように構成される。サーバ200の遠隔操作により蓄電装置11及び定置式電力貯蔵装置30の各々とマイクログリッドMGとの間で電力の授受が行なわれることで、マイクログリッドMGの需給調整が行なわれる。
【0055】
この実施の形態では、工場500の管理者が電力会社と電力契約を結んでいる。電力会社は、電力契約に従って工場500に電力を供給し、その対価を得ている。工場500(マイクログリッドMG)は電力系統PGから電力の供給を受けている。ただし、上記の電力契約によって、工場500が電力系統PGから供給を受けられる最大電力(以下、「契約最大電力」とも称する)が決められている。サーバ100は、電力系統PGからマイクログリッドMGへ供給される電力が契約最大電力を超えないように、サーバ200と協調して、マイクログリッドMGの需給調整を行なうように構成される。
【0056】
契約最大電力は、所定の対象期間における電力量(kWh)を対象期間の長さ(h)で除算した電力(kWh/h)であってもよい。この実施の形態では、対象期間の長さを30分間(=0.5時間)とする。サーバ100は、対象期間における電力量(kWh)を0.5hで除算した値(kW)が契約最大電力を超えないように、マイクログリッドMGの需給調整を行なう。対象期間が経過すると、連続して次の対象期間が設定される。このため、対象期間は30分経過ごとに設定される。対象期間が経過するたびに、その対象期間における電力量が評価される。サーバ100は、対象期間において電力系統PGからマイクログリッドMGへ供給される電力量を2倍にした値が契約最大電力を超えないように、マイクログリッドMGの需給調整を行なう。
【0057】
この実施の形態に係る電力システム1では、サーバ200が、電力系統PGの需給調整を要求する第1要求信号を、サーバ300から受信する。第1要求信号は、たとえば電力系統PGの周波数調整を要求する信号である。第1要求信号は、順潮流のみ又は逆潮流のみで周波数調整を行なうことを要求してもよいし、順潮流と逆潮流とを交互に要求してもよい。第1要求信号は、LFC(Load Frequency Control)信号であってもよい。ただしこれに限られず、第1要求信号は、EDC(Economic load Dispatching Control)信号であってもよいし、LFC信号とEDC信号とが重畳した信号であってもよい。サーバ200は、複数種の第1要求信号を受信するように構成されてもよい。
【0058】
サーバ200は、車両10に対象期間における電力量の調整を要求する第2要求信号を、サーバ100から受信する。第2要求信号は、対象期間における電力量(kWh)を所定の目標値(以下、「kWh目標値」と表記する)にすることを車両10に要求する信号であってもよい。対象期間の開始時又は開始直前に、その対象期間におけるkWh目標値が決定されてもよい。
【0059】
サーバ200は、電力調整を要求する車両10を選定する。以下、選定された車両10を、「調整車両」とも称する。第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるために必要な数の調整車両が選定される。ただし、対象期間において車両10が蓄電装置11の充放電の繰返しによって周波数調整を行なう場合、対象期間の前後で蓄電装置11のSOCはほとんど変化しない。このため、第1要求信号によって周波数調整が要求される場合には、第2要求信号の要求に応えられるように調整車両が選定されれば、第1要求信号の要求にも応えることができる場合が多い。なお、上記調整車両は、本開示に係る「所定の電力調整リソース」の一例に相当する。以下では、調整車両の数が2台以上である場合について説明するが、要求される電力調整の程度が小さい場合には調整車両の数が1台になることもあり得る。
【0060】
サーバ200は、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように、各調整車両の電力指令信号を生成する。電力指令信号は、対象期間における所定の指令間隔ごとの指令電力値を示す信号である。電力指令信号は、各調整車両に共通の信号であってもよいし、調整車両ごとに異なっていてもよい。この実施の形態では、指令間隔を0.5秒とする。ただしこれに限られず、指令間隔は任意に設定できる。指令間隔は、固定値であってもよいし、第1要求信号の種類に応じて可変であってもよい。指令電力値は、放電電力値及び充電電力値のいずれであってもよい。たとえば、放電電力値を正の指令電力値で表わし、充電電力値を負の指令電力値で表わしてもよい。
【0061】
サーバ200は、対象期間において、各調整車両へ電力指令信号を送信することにより、各調整車両の充放電器12を遠隔操作する。各調整車両の蓄電装置11の充放電電力が、電力指令信号が示す指令電力値になるように、各調整車両の充放電器12が遠隔制御される。
【0062】
図3は、サーバ200によって実行される電力需給調整方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえば対象期間の開始時又は開始直前に実行される。対象期間が開始されるたびに又は対象期間の開始タイミングが近づくたびに、以下に説明するS11~S15が実行されてもよい。
【0063】
図1及び図2とともに図3を参照して、ステップ(以下、単に「S」と表記する)11では、制御装置201がサーバ300から対象期間に対する第1要求信号(電力調整要求)を取得する。S12では、制御装置201がサーバ100から対象期間に対する第2要求信号(kWh目標値)を取得する。図3に示す例では、S11、S12の順に実行されるが、S11とS12を逆にしてもよい。
【0064】
S13では、制御装置201が、サーバ200に登録された複数の車両10の中から、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるための調整車両を選定する。この際、制御装置201は、各調整車両の状態(たとえば、蓄電装置11のSOC)に基づいて、各調整車両にどの程度の電力調整を要求するかを決定する。
【0065】
S14では、制御装置201が、対象期間において第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるための電力指令信号を、調整車両ごとに生成する。S14においては、第1要求信号の要求(すなわち、電力系統PGの需給調整の要求)と、第2要求信号の要求(すなわち、対象期間における電力量調整の要求)との両方に応えるように、電力指令信号が生成される。S14は、「信号生成ステップ」の一例に相当する。
【0066】
S15では、制御装置201が、対象期間において各調整車両へ電力指令信号を送信することにより、各調整車両の蓄電装置11の充放電制御を行なう。S15においては、電力指令信号に従って各調整車両が制御される。S15は、「制御ステップ」の一例に相当する。
【0067】
図4は、サーバ100の制御装置101とサーバ200の制御装置201との各々の構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。
【0068】
図1及び図2とともに図4を参照して、サーバ100の制御装置101は、電力負荷予測部110と、ローカル化部120と、自然発電予測部130と、最適負荷計算部140とを含む。これら各部は、たとえば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0069】
電力負荷予測部110は、記憶装置102に記憶されている情報(たとえば、以下に説明する計測データ及び生産計画)を用いて、対象期間における工場500の電力負荷を予測するように構成される。電力負荷が大きくなるほど電力消費量は大きくなる。
【0070】
サーバ100は、図示しないセンサによって工場500の状態(たとえば、電力負荷、気温、及び日射強度)を逐次計測し、各計測値を記憶装置102に記録する。こうして記憶装置102に記録されたデータが、計測データである。電力負荷予測部110は、電力負荷の予測に計測データを用いてもよい。工場500の電力負荷は、気温及び日射強度によって変動し得る。たとえば、気温が快適範囲(たとえば、夏場は27℃前後)から離れるほど、建物510における空調設備の電力負荷が大きくなる。
【0071】
また、記憶装置102には、工場500の生産計画が記憶される。ユーザが図示しない入力装置を通じてサーバ100に生産計画を入力してもよい。電力負荷予測部110は、生産計画を遂行するための工場500の稼働率を予測する。稼働率が高くなるほど、稼働する設備が多くなり、電力負荷は大きくなる。たとえば、自動車製造工場では、生産計画において自動車の生産台数が増えるほど、工場500の稼働率が高くなると予測される。電力負荷予測部110は、工場500の電力負荷を予測するときに、過去に生産計画を遂行したときの電力負荷(計測データ)を考慮してもよい。
【0072】
ローカル化部120は、現在の気象条件(計測データ)と、気象予測データとを用いて、対象期間の気象条件を予測するように構成される。サーバ100は、気象庁が予測した気象条件(たとえば、日射強度)を逐次取得して記憶装置102に記録する。こうして記憶装置102に記録されたデータが、気象予測データである。ローカル化部120は、気象予測データを用いて、現在の気象条件が時間の経過とともにどのように変化するかを予測することができる。ローカル化部120は、所定の数式を用いて、対象期間における気象条件の推移を算出してもよい。ローカル化部120による予測精度を、機械学習によって高めてもよい。
【0073】
自然発電予測部130は、ローカル化部120が予測した対象期間の気象条件を用いて、対象期間における自然変動電源530の発電出力を予測するように構成される。自然発電予測部130は、所定の発電予測マップを用いて、予測された対象期間の気象条件から、対象期間における自然変動電源530の発電電力の推移を求めてもよい。発電予測マップは、気象条件(たとえば、日射強度)と自然変動電源530の発電電力との関係を示すマップである。日射強度が強くなるほどPV発電電力は大きくなる傾向がある。自然変動電源530の発電能力は、経年変化し得るため、学習によって発電予測マップを更新してもよい。たとえば、サーバ100は、気象条件と自然変動電源530の発電電力とを逐次計測し、計測されたデータに基づいて発電予測マップを更新してもよい。
【0074】
最適負荷計算部140は、記憶装置102に記憶されている最適化情報を用いて、工場500の最適な電力負荷を算出する。以下、最適負荷計算部140によって算出される工場500の最適な電力負荷を、「最適工場負荷」とも称する。最適化情報は、契約最大電力と、電力コストを算出するための情報と、CO排出原単位を算出するための情報と、EV充放電可能量の履歴データとを含む。EV充放電可能量は、対象期間においてアグリゲータが管理する車両群(複数の車両10)が調整可能な電力量の範囲を示す。サーバ200からサーバ100へ逐次フィードバックされるEV充放電可能量の計算結果が、EV充放電可能量の履歴データとして記憶装置102に蓄積される。最適負荷計算部140が最適工場負荷を算出する時点においては、最適負荷計算部140は、まだサーバ200からEV充放電可能量の計算結果を受信していない。このため、最適負荷計算部140は、EV充放電可能量の履歴データに基づいてEV充放電可能量を予測する。
【0075】
最適負荷計算部140は、対象期間において電力系統PGからマイクログリッドMGへ供給される電力量を2倍にした値が契約最大電力を超えないように最適工場負荷を決定する。また、最適負荷計算部140は、電力コスト及びCO排出原単位が十分低くなるように最適工場負荷を決定する。図5は、最適負荷計算部140が最適工場負荷を算出する方法について説明するための図である。
【0076】
図1図4とともに図5を参照して、対象期間における自然変動電源530の発電電力量(以下、「自然発電量E1」とも称する)は、基本的には、対象期間の気象条件によって決まる。ただし、自然発電量E1は、工場500の蓄電容量を超えないように決定される。サーバ100は、自然変動電源530を制御することで、自然変動電源530の発電出力を制限することができる。自然変動電源530の発電電力量が多過ぎて工場500の蓄電容量を超える場合には、サーバ100は、発電出力を制限する指令(自然発電制限指令)を自然変動電源530へ送信する。
【0077】
対象期間における発電機540の発電電力量(以下、「自家発電量E2」とも称する)は、CO排出原単位が高くなり過ぎないように決定される。サーバ100は、発電機540を制御する指令(自家発電指令)によって、発電機540の発電出力を制御できる。
【0078】
対象期間において車両10からマイクログリッドMGへ供給される電力量(以下、「EV電力量E3」とも称する)は、EV充放電可能量の範囲内になるように決定される。サーバ100は、車両10に充放電を要求する信号(EV充放電要求)をサーバ200へ送信することによって、EV電力量E3を制御できる。EV充放電要求は、前述した第2要求信号に相当する。EV電力量E3は、前述したkWh目標値に相当する。
【0079】
対象期間において電力系統PGからマイクログリッドMGへ供給される電力量(以下、「PG電力量E4」とも称する)は、kWh/hで換算したときに契約最大電力を超えないように調整される。PG電力量E4は、基本的には、工場500の電力負荷と、自然発電量E1と、自家発電量E2と、EV電力量E3とによって決まる。工場500の電力負荷によって消費される電力量に対して、自然発電量E1、自家発電量E2、及びEV電力量E3では足りない分が、PG電力量E4によって補われる。
【0080】
工場500の電力負荷(最適工場負荷)は、電力コストが高くなり過ぎないように決定される。サーバ100は、負荷調整指令によって工場500の電力負荷を制御できる。負荷調整指令は、建物510内の電気機器と産業設備520との各々に対する制御信号である。たとえば、サーバ100は、建物510内の空調設備の使用を制限することによって工場500の電力負荷を下げることができる。また、サーバ100は、産業設備520(たとえば、電気溶解炉及び保持炉)を一時的に停止する(又は、出力を下げる)ことによって、工場500の電力負荷を下げることができる。
【0081】
最適負荷計算部140は、上記のような観点で自然発電量E1、自家発電量E2、EV電力量E3、PG電力量E4、及び最適工場負荷を決定するとともに、負荷調整指令と自然発電制限指令と自家発電指令と第2要求信号(EV充放電要求)とによって、マイクログリッドMGの需給調整を行なう。この実施の形態に係るサーバ100は、工場500における自然変動電源530の発電量と、工場500における電力負荷とを用いて、対象期間において電力系統PGから工場500(マイクログリッドMG)に供給される電力量が所定値を超えないように第2要求信号を生成する。生成された第2要求信号は、サーバ100からサーバ200へ送信される。
【0082】
再び図1及び図2とともに図4を参照して、サーバ200の制御装置201は、需給調整負荷配分計算部210と、EV充放電可能量計算部220と、EV充放電最適化計算部230と、EV充放電指令生成部240とを含む。これら各部は、たとえば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0083】
需給調整負荷配分計算部210は、サーバ300から対象期間に対する第1要求信号(需給調整要求)を取得し、第1要求信号が要求する電力系統PGの需給調整について、各電力調整リソースに配分する需給調整負荷を決定する。第1要求信号は、所定の応動時間(たとえば、5分)以内に電力系統PGの周波数調整を行なうための調整力を要求する信号であってもよい。要求される周波数調整の間隔は0.5秒以上30秒以下であってもよい。需給調整負荷は、サーバ200が管理する車両群(複数の車両10)と定置式電力貯蔵装置30とに配分される。需給調整負荷の配分方法は任意であり、所定の割合で車両群と定置式電力貯蔵装置30とに配分されてもよい。所定の割合は可変であってもよい。需給調整負荷配分計算部210は、要求される応動時間が短い需給調整を定置式電力貯蔵装置30に配分してもよい。
【0084】
上記のように需給調整負荷が決まることにより、第1要求信号が車両群に要求する電力系統PGの需給調整(以下、「第1PG需給調整」とも称する)と、第1要求信号が定置式電力貯蔵装置30に要求する電力系統PGの需給調整(以下、「第2PG需給調整」とも称する)とが決まる。サーバ200は、第2PG需給調整に対応する充放電を要求する信号(定置充放電指令)を定置式電力貯蔵装置30へ送信することにより、定置式電力貯蔵装置30に第2PG需給調整を行なわせる。また、第1PG需給調整は、需給調整負荷配分計算部210からEV充放電指令生成部240へ送られる。
【0085】
EV充放電可能量計算部220は、各車両10の行動予定(たとえば、POVの運転計画又はMaaS車両の運行計画)と、EVSE20に接続されている各車両10の状態(たとえば、蓄電装置11のSOC)とを用いて、EV充放電可能量を算出するように構成される。たとえば、EV充放電可能量計算部220は、現時点においてEVSE20に接続されており、かつ、対象期間において走行する予定がない車両10を、待機車両(すなわち、対象期間において電力調整可能な車両)であると認定する。そして、EV充放電可能量計算部220は、各待機車両の蓄電装置11のSOCに基づいて、対象期間において各待機車両が調整可能な電力量の範囲を算出する。これにより、車両群が調整可能な電力量の範囲(すなわち、EV充放電可能量)が得られる。算出されたEV充放電可能量は、サーバ200からサーバ100へフィードバックされる。
【0086】
EV充放電最適化計算部230は、待機車両の中から、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるための調整車両を選定する。この際、EV充放電最適化計算部230は、第2要求信号が要求するマイクログリッドMGの需給調整(電力量調整)のための調整力(以下、「kWh調整力」とも称する)を各調整車両に配分する。EV充放電最適化計算部230は、各調整車両の状態(たとえば、蓄電装置11のSOC)に基づいて、各調整車両に配分されるkWh調整力を決定してもよい。
【0087】
EV充放電指令生成部240は、各調整車両の車両IDと、各調整車両に配分されたkWh調整力とを、EV充放電最適化計算部230から取得する。また、EV充放電指令生成部240は、第1要求信号が車両群に要求する第1PG需給調整(たとえば、周波数調整)を需給調整負荷配分計算部210から取得し、第1PG需給調整のための調整力(以下、「ΔkW調整力」とも称する)を各調整車両に配分する。ΔkW調整力は各調整車両に均等に配分されてもよい。
【0088】
EV充放電指令生成部240は、対象期間において第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるための電力指令信号を、調整車両ごとに生成する。より具体的には、EV充放電指令生成部240は、各調整車両に配分されたkWh調整力及びΔkW調整力に基づいて、調整車両ごとの電力指令信号を生成する。EV充放電指令生成部240は、たとえば、各調整車両に配分されたkWh調整力及びΔkW調整力の各々を電力信号に変換して重畳させることにより、調整車両ごとの電力指令信号を生成してもよい。また、EV充放電指令生成部240は、各調整車両に共通のΔkW調整力のための電力指令信号を、調整車両ごとに配分されたkWh調整力(すなわち、調整車両が対象期間において調整する電力量)に基づいて補正(たとえば、kWh調整力の分を加算)することにより、調整車両ごとの電力指令信号を生成してもよい。
【0089】
以下、具体例に基づき、電力指令信号を生成する方法について説明する。以下に説明する第1実施例及び第2実施例においては、対象期間の長さを180秒間とした。ただし、対象期間の長さは適宜変更可能である。
【0090】
図6は、第1要求信号(需給調整の要求)から生成される第1電力信号の一例を示す図である。図4とともに図6を参照して、実施例に係る第1電力信号は、線L10で示される波形信号であり、±5kWの範囲で周期的に変動する電力値を示す。第1電力信号は、こうした波形(線L10)に合わせて周波数調整を行なうことを要求する。こうした第1電力信号は、充電と放電とを交互に要求する第1要求信号から生成される。EV充放電指令生成部240は、第1要求信号の要求する第1PG需給調整が車両群によって行なわれるように、第1要求信号に基づいて調整車両ごとの第1電力信号を生成する。
【0091】
図7は、第1実施例に係る第2要求信号が要求するkWh目標値と、このkWh目標値から生成される第2電力信号とを示す図である。
【0092】
図4とともに図7を参照して、第1実施例に係る第2要求信号が要求するkWh目標値(たとえば、1つの調整車両に割り当てられたkWh目標値)は、1kWhである。EV充放電指令生成部240は、kWh目標値を第2電力信号に変換するために、対象期間における電力量の推移を取得する。対象期間における電力量の推移は、kWh目標値とともにサーバ100からサーバ200へ送信されてもよいし、EV充放電指令生成部240において作成されてもよい。EV充放電指令生成部240は、上記電力量の推移に従い、kWh目標値(1kWh)を満足する第2電力信号を生成する。図7に示す例では、線L21が、対象期間における電力量の推移を示している。一方、第2電力信号は、対象期間における電力値の推移を示す信号である。図7に示す例では、線L22が第2電力信号を示している。対象期間における電力量の推移(線L21)は一定の速度で上昇するため、kWh目標値(1kWh)を満足するために要求する電力値は、対象期間において均等に分配される。線L22で示される第2電力信号は、対象期間における電力値を一定の値(20kW)にすることを要求する。
【0093】
図8は、第1実施例に係る電力指令信号を示す図である。図4とともに図8を参照して、第1実施例では、EV充放電指令生成部240が、図6に示した第1電力信号(線L10)と、図7に示した第2電力信号(線L22)とを重畳させることにより、調整車両ごとの電力指令信号を生成する。図8に示す例では、線L23が電力指令信号を示している。この電力指令信号は、第1実施例において第1電力信号及び第2電力信号の両方の要求に同時に応える電力指令に相当する。
【0094】
図9は、第2実施例に係る第2要求信号が要求するkWh目標値と、このkWh目標値から生成される第2電力信号とを示す図である。
【0095】
図4とともに図9を参照して、第2実施例に係る第2要求信号が要求するkWh目標値(たとえば、1つの調整車両に割り当てられたkWh目標値)も、第1実施例と同様、1kWhである。EV充放電指令生成部240は、対象期間における電力量の推移を取得し、その電力量の推移に従い、kWh目標値(1kWh)を満足する第2電力信号を生成する。図9に示す例では、線L31が、対象期間における電力量の推移を示している。一方、第2電力信号は、対象期間における電力値の推移を示す信号である。図9に示す例では、線L32が第2電力信号を示している。対象期間における電力量の推移(線L31)は、最初は低速で上昇して途中から高速で上昇する。対象期間においてkWh目標値(1kWh)を満足するために要求する電力値は、上記電力量の推移に従って分配される。線L32で示される第2電力信号は、最初は低い電力値(10kW)を要求して途中から高い電力値(30kW)を要求する。
【0096】
図10は、第2実施例に係る電力指令信号を示す図である。図4とともに図10を参照して、第2実施例では、EV充放電指令生成部240が、図6に示した第1電力信号(線L10)と、図9に示した第2電力信号(線L32)とを重畳させることにより、調整車両ごとの電力指令信号を生成する。図10に示す例では、線L33が電力指令信号を示している。この電力指令信号は、第2実施例において第1電力信号及び第2電力信号の両方の要求に同時に応える電力指令に相当する。
【0097】
再び図1及び図2とともに図4を参照して、EV充放電指令生成部240は、上記のように生成される電力指令信号(EV充放電指令)を各調整車両へ送信することにより、各調整車両の蓄電装置11の充放電制御を行なう。各調整車両は、対象期間において、電力指令信号に従って動作することにより、配分されたkWh調整力及びΔkW調整力として機能する。これにより、対象期間において、第1要求信号が要求する電力系統PGの需給調整と、第2要求信号が要求するマイクログリッドMGの需給調整とが同時に行なわれる。
【0098】
以上説明したように、この実施の形態に係る電力システム1は、電力系統PG(電力網)に電気的に接続可能な複数の電力調整リソース(たとえば、複数の車両10を含む車両群)と、複数の電力調整リソースを管理する管理装置(サーバ100及び200)とを含む。サーバ200は、電力系統PGの需給調整を要求する第1要求信号を、サーバ300から取得する。また、サーバ100は、電力調整リソース(車両群)に所定期間(対象期間)における電力量の調整を要求する第2要求信号を生成する。サーバ200は、サーバ100から第2要求信号を取得する。サーバ200は、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように、対象期間における所定間隔ごとの指令電力値を示す電力指令信号を生成し、生成された電力指令信号を、複数の電力調整リソースに含まれる所定の電力調整リソース(調整車両)へ送信する。
【0099】
上記構成を有する電力システム1では、上記のように生成される電力指令信号により、電力系統PGの需給調整と対象期間における電力量調整との両方を所定の電力調整リソースに指令することが可能になる。所定の電力調整リソースは、電力指令信号が示す指令電力値に従って動作することで、電力網の需給調整の要求と対象期間における電力量調整の要求との両方に同時に応えることができる。
【0100】
第1要求信号は、ガバナフリー運転(自端制御)を要求する信号であってもよい。たとえば、EV充放電指令生成部240は、電力系統PGと連系するマイクログリッドMGの電力周波数を測定しながら、ガバナフリー運転による電力調整(たとえば、電力周波数を所定範囲内に維持する電力調整)を調整車両に行なわせるための制御信号を生成し、調整車両に配分されたkWh調整力をその制御信号に加える。これにより、第1要求信号の要求(ガバナフリー運転による電力系統PGの需給調整の要求)と、第2要求信号の要求(kWh調整力)との両方に応える電力指令信号が生成される。こうして生成された電力指令信号が調整車両へ送信されることで、調整車両によって電力系統PGの需給調整とマイクログリッドMGの需給調整とが同時に行なわれる。
【0101】
第1要求信号を送信するコンピュータ(サーバ300)は、送配電事業者(たとえば、電力会社)のサーバに限られず、需給調整市場のサーバであってもよい。また、第2要求信号の対象期間の長さは、3分間(180秒間)又は30分間に限られず、適宜変更可能である。また、電力指令信号の指令間隔も、0.5秒に限られず、適宜変更可能である。
【0102】
上記実施の形態では、サーバ200が、電動車両(車両10)に対する電力指令信号を、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように生成したが、サーバ200は、電動車両以外の電力調整リソースに対する電力指令信号を、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように生成してもよい。また、電力指令信号の生成におけるkWh調整力及びΔkW調整力の各々の配分は、電力調整リソースの種類に応じて可変であってもよい。たとえば、二次電池は、充放電要求に対して素早い反応が可能であるものの、容量に限りがあるため、充電又は放電を長時間継続することは難しい。一方、蒸気タービン発電機は、発電要求に対する反応は緩やかであるが、発電出力を長時間継続することができる。サーバ200が、二次電池及び蒸気タービン発電機の各々に対する電力指令信号を第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように生成する場合には、二次電池についてはkWh調整力の配分を小さくするとともにΔkW調整力の配分を大きくし、蒸気タービン発電機についてはΔkW調整力の配分を小さくするとともにkWh調整力の配分を大きくしてもよい。なお、ガスエンジン発電機なども、蒸気タービン発電機と同様の特性を有する。
【0103】
アグリゲータサーバ(サーバ200)は、複数のFEMSサーバ(サーバ100)の各々から第2要求信号を受信し、工場ごとに図3に示した処理を実行することにより、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応える電力指令信号を工場ごとに生成してもよい。そして、こうして生成される電力指令信号がアグリゲータサーバから各調整車両へ送信されることにより、電力系統PGの需給調整と各工場のマイクログリッドの需給調整とを同時に行なうように各調整車両が制御されてもよい。
【0104】
アグリゲータサーバ(サーバ200)とFEMSサーバ(サーバ100)との間にサブアグリゲータサーバが設けられてもよい。サブアグリゲータサーバは、エリアごとに配置されてもよい。サブアグリゲータサーバは、管轄エリア内のFEMSサーバと協力して、アグリゲータサーバから要求される電力網の需給調整を行なうように構成されてもよい。図11は、サブアグリゲータサーバが適用された電力システムの例を示す図である。図11を参照して、FEMSサーバ100A~100D、サブアグリゲータサーバ400A~400D、及び工場500A~500Dは、それぞれ領域A~D内に存在する。アグリゲータサーバ200Aは、サブアグリゲータサーバ400A~400Dの全てと通信可能に構成される。サブアグリゲータサーバ400A~400Dは、それぞれ管轄エリア内のFEMSサーバ100A~100Dと通信可能に構成される。以下、区別して説明する場合を除いて、サブアグリゲータサーバ400A~400Dの各々を「サブアグリゲータサーバ400」と記載する。
【0105】
アグリゲータサーバ200Aはアグリゲータに帰属し、サブアグリゲータサーバ400はサブアグリゲータに帰属する。アグリゲータが自動車メーカであり、サブアグリゲータが販売店であってもよい。販売店は、販売した車両をサブアグリゲータサーバ400で管理してもよい。サブアグリゲータサーバ400は、図4に示したサーバ200の機能を有する。すなわち、サブアグリゲータサーバ400は、アグリゲータサーバ200Aから第1要求信号を受信し、管轄エリア内のFEMSサーバから第2要求信号を受信し、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応える電力指令信号を生成する。そして、サブアグリゲータサーバ400は、所定の電力調整リソース(たとえば、電動車両)に電力指令信号を送信することにより、所定の電力調整リソースに電力調整を行なわせる。所定の電力調整リソースが電力指令信号に従って動作することで、アグリゲータから要求された電力系統PGの需給調整と、管轄内の工場のマイクログリッドの需給調整とが同時に行なわれる。この変形例では、サブアグリゲータサーバ400、アグリゲータサーバ200Aが、それぞれ本開示に係る「第2コンピュータ」、「第3コンピュータ」の一例に相当する。
【0106】
上記実施の形態に係る電力システム1(図1図5)において、図4に示したアグリゲータサーバ(サーバ200)の機能をFEMSサーバ(サーバ100)に持たせて、アグリゲータサーバを割愛してもよい。図12は、図4に示したFEMSサーバの変形例を示す図である。図12を参照して、この変形例に係るFEMSサーバ100Eは、図4に示したFEMSサーバ(サーバ100)の機能に加えて、図4に示したアグリゲータサーバ(サーバ200)の機能を有する。すなわち、FEMSサーバ100Eは、電力負荷予測部110と、ローカル化部120と、自然発電予測部130と、最適負荷計算部140と、需給調整負荷配分計算部210と、EV充放電可能量計算部220と、EV充放電最適化計算部230と、EV充放電指令生成部240とを含む。
【0107】
図13は、図12に示したFEMSサーバの変形例を示す図である。図13を参照して、この変形例に係るFEMSサーバ100Fは、複数の定置式電力貯蔵装置30を含む電力システムに適用され、複数の車両10の代わりに、複数の定置式電力貯蔵装置30を用いて電力調整を行なう。FEMSサーバ100Fは、充放電最適化計算部230A及び充放電指令生成部240Aを含む。
【0108】
充放電最適化計算部230Aは、最適負荷計算部140から第2要求信号(充放電要求)を取得し、複数の定置式電力貯蔵装置30の中から、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるための定置式電力貯蔵装置30を選定する。以下、選定された定置式電力貯蔵装置30を、「調整装置」とも称する。充放電最適化計算部230Aは、第2要求信号が要求するマイクログリッドMGの需給調整(電力量調整)のための調整力(kWh調整力)を各調整装置に配分する。
【0109】
充放電指令生成部240Aは、各調整装置のリソースIDと、各調整装置に配分されたkWh調整力とを、充放電最適化計算部230Aから取得する。また、充放電指令生成部240Aは、たとえばサーバ300から第1要求信号(需給調整要求)を取得し、第1要求信号が要求する電力系統PGの需給調整(たとえば、周波数調整)のための調整力(ΔkW調整力)を各調整装置に配分する。そして、充放電指令生成部240Aは、対象期間において第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるための電力指令信号を、調整装置ごとに生成し、生成された電力指令信号を各調整装置へ送信することにより、対象期間において各調整装置の充放電制御を行なう。これにより、対象期間において、第1要求信号が要求する電力系統PGの需給調整と、第2要求信号が要求するマイクログリッドMGの需給調整とが同時に行なわれる。
【0110】
上記変形例に係るFEMSサーバ100Fは、本開示に係る「充放電制御装置」の一例に相当する。FEMSサーバ100Fは、電力系統PG(電力網)と電気的に接続可能な定置式電力貯蔵装置30の充放電制御を行なうように構成される。FEMSサーバ100Fは、電力系統PGの需給調整を要求する第1要求信号と、定置式電力貯蔵装置30に所定期間における電力量の調整を要求する第2要求信号とを取得し、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に同時に応えるように定置式電力貯蔵装置30の充放電を制御するように構成される。こうした構成によれば、電力系統PGの需給調整の要求と定置式電力貯蔵装置30に対する電力量調整の要求との両方に同時に応えるように定置式電力貯蔵装置30の充放電制御を行なうことが可能になる。
【0111】
電力指令信号を生成する機能を定置式電力貯蔵装置又は電動車両に持たせて、定置式電力貯蔵装置又は電動車両が、第1要求信号及び第2要求信号の両方の要求に応えるように電力指令信号を生成し、生成される電力指令信号に従って、自らが保有する蓄電装置の充放電制御を行なうようにしてもよい。また、定置式電力貯蔵装置又は電動車両は、電力周波数を測定しながらガバナフリー運転(自端制御)を行なうための電力指令信号を生成してもよい。
【0112】
上記実施の形態では、電力システムが工場に適用される例を示したが、電力システムは他の事業所(たとえば、学校、病院、旅館、銀行、又はショッピングセンタ)に適用されてもよい。事業所を管理するコンピュータは、FEMSサーバに限られず、BEMSサーバであってもよい。
【0113】
電力調整リソースとして採用される電動車両の構成は、上記実施の形態に示した構成に限られない。たとえば、電動車両は、EV(電気自動車)に限られず、プラグインハイブリッド車(PHV)であってもよい。電動車両は、非接触充電可能に構成されてもよい。また、電力調整リソースとして採用される車両群は、外部給電に対応せず外部充電のみ可能に構成される電動車両を含んでもよい。電動車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。電動車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。電動車両は、無人で走行可能な車両(たとえば、無人搬送車(AGV)又は農業機械)であってもよい。
【0114】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
1 電力システム、10 車両、11 蓄電装置、12 充放電器、13 ECU、14 携帯端末、30 定置式電力貯蔵装置、100,100A~100F FEMSサーバ、101,201,301 制御装置、102,202,302 記憶装置、103,203,303 通信装置、110 電力負荷予測部、120 ローカル化部、130 自然発電予測部、140 最適負荷計算部、200,200A アグリゲータサーバ、210 需給調整負荷配分計算部、220 EV充放電可能量計算部、230 EV充放電最適化計算部、230A 充放電最適化計算部、240 EV充放電指令生成部、240A 充放電指令生成部、300 送配電事業者サーバ、400,400A~400D サブアグリゲータサーバ、500,500A~500D 工場、501 受変電設備、510 建物、520 産業設備、530 自然変動電源、540 発電機、PG 電力系統。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13