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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】メトロロジにおける補正不能誤差
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/02 20060101AFI20230620BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230620BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G03F9/02 H
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H01L21/66 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022500023
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020065916
(87)【国際公開番号】W WO2021001119
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】19184407.5
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19193962.8
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ファン ゴルプ、シモン、ヘンドリック、セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク、アリー
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/012859(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 9/00
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に関するパラメータの複数の値を備える第1及び第2の計測データ間の差を決定する装置であって、前記基板は、デバイストポロジーを備える複数のフィールドを含み、
前記パラメータのフィールド内成分を決定することと、
決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから除去し、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得することと、
前記フィールド間成分および前記第2の計測データに基づいて、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することと、を有する方法を実施するコンピュータプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサを備える装置。
【請求項2】
前記第1の計測データは、レベルセンサによって取得される前記基板上に造られたフィーチャの高さに関するデータZLSを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィールド内成分は、フィールド内の1つ又は複数のデバイスのトポロジーに関するデータを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィールド内成分を決定することは、前記パラメータの1つ又は複数の特性を入力とする1つ又は複数のアルゴリズムに基づく、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記パラメータの1つまたは複数の特性は、前記装置又はさらなる装置によって測定される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記フィールド内成分は、前記第1の計測データに基づいて少なくとも部分的に決定される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の計測データの前記複数の値は、前記基板内又は前記基板上に造られた計測ターゲットから計測されたものである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の計測データの前記複数の値は、前記基板上のフィールド間及び/又はダイ間のスクライブレーンで計測されたものである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の計測データ間の差を決定することは、レベリング補正不能誤差の推定値を前記第1の計測データに基づいて決定するために、前記フィールド間成分からリソグラフィ露光装置の露光高さZEXPを減算することを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の計測データ間の差を決定することは、前記第1の計測データに基づいて推定されたレベリング補正不能誤差を前記第2の計測データから減算することをさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記パラメータは、フォーカス誤差を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することは、前記第1の計測データのスクライブレーンに特有な表現を取得するために、前記第1の計測データのフィールド間成分から既知の作動プロファイルを減算することを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することは、前記第2の計測データと前記第1の計測データのスクライブレーンに特有な表現との差を決定することをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
基板に関するパラメータの複数の値を備える第1及び第2の計測データ間の差を決定する方法であって、前記基板は、デバイストポロジーを備える複数のフィールドを含み、
前記パラメータのフィールド内成分を決定することと、
決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得するために除去することと、
前記フィールド間成分および前記第2の計測データに基づいて、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することと、を備える方法。
【請求項15】
リソグラフィ装置についてスクライブレーンフォーカス誤差寄与度の推定値を第1及び第2の計測データに基づいて決定する装置であって、
前記第1の計測データは、基板のフィールドにわたる複数の高さ値を備え、前記基板は、スクライブレーンとデバイストポロジーを含むダイとを備える複数のフィールドを含み、
前記第2の計測データは、前記スクライブレーン内で測定された前記リソグラフィ装置のフォーカスに関するパラメータの複数の値を備えており、
前記第1の計測データのフィールド内成分を決定することと、
決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得するために除去することと、
前記第1の計測データのフィールド間成分と、前記第1の計測データに基づく前記リソグラフィ装置の作動による前記基板の測定され又は予想された動きとの差として、前記第1の計測のスクライブレーンフォーカス誤差寄与度を決定することと、を有する方法を実施するコンピュータプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサを備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月4日に出願された欧州出願第19184407.5号および2019年8月28日に出願された欧州出願第19193962.8号の優先権を主張し、それらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、メトロロジにおける補正不能誤差の全部または一部を決定するための方法および装置に関する。より具体的には、本発明は、第1の計測データと第2の計測データとの間のオフセットの決定に関してもよい。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に与えるように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(多くの場合、「設計レイアウト」または「デザイン」とも称される)を基板(例えばウェーハ)に設けられた放射感応性材料(レジスト)層に投影しうる。
【0004】
基板にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は、電磁放射を使用しうる。この放射の波長が基板上に形成することのできるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用される典型的な波長は365nm(i線)、248nm、193nmおよび13.5nmである。4~20nmの範囲内の波長、例えば6.7nmまたは13.5nmを有する極紫外(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば波長193nmの放射を用いるリソグラフィ装置よりも基板上に小さなフィーチャを形成するために使用されうる。
【0005】
低kリソグラフィは、リソグラフィ装置の古典的な解像度限界よりも小さい寸法をもつフィーチャを処理するために使用されうる。このようなプロセスにおいて、解像度の公式は、CD=k×λ/NAとして表され、ここで、λは、使用される放射の波長であり、NAは、リソグラフィ装置における投影光学系の開口数であり、CDは、「クリティカルディメンション」(一般に、印刷される最小フィーチャサイズであるが、ここではハーフピッチ)であり、kは、経験上の解像度係数である。一般に、kが小さいほど、特定の電気的な機能と性能を達成するために回路設計者によって計画された形状および寸法に近似するパターンを基板上で再現することが困難になる。こうした困難を克服するために、洗練された微調整のステップがリソグラフィ投影装置及び/または設計レイアウトに適用されてもよい。これには例えば、NAの最適化、カスタマイズされた照明スキーム、位相シフトパターニングデバイスの使用、設計レイアウトにおける光近接効果補正(OPC、「光学およびプロセス補正」とも呼ばれる)など設計レイアウトの様々な最適化、または「超解像技術」(RET)と一般に定義される他の方法が含まれるがこれに限定されない。あるいは、リソグラフィ装置の安定性を制御するための厳密な制御ループが低kでのパターンの再現を改善するために使用されてもよい。
【0006】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを投影するために、電磁放射を基板上に集束する。電磁放射に関するフォーカス誤差を決定することは、結果として得られるICの品質を決定する手段となる。また、フォーカス誤差についての補正が、ICの品質への悪影響を軽減するためにリソグラフィ装置内で適用されてもよい。
【0007】
フォーカス誤差を決定する際には、2つの主要な情報源、すなわち、レベルセンサからのデータと1つまたは複数のメトロロジ装置(回折に基づく手法を用いるものであってもよい)からのデータとが使用されてもよい。これら2つのデータソースの相関性は、フォーカス誤差を決定する精度の要因となる。
【発明の概要】
【0008】
本発明のある態様によると、基板に関するパラメータの複数の値を備える第1及び第2の計測データ間の差を決定する装置であって、前記基板は、デバイストポロジーを備える複数のフィールドを含み、前記パラメータのフィールド内成分を決定することと、決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから除去し、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得することと、前記フィールド間成分および前記第2の計測データに基づいて、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することと、を有する方法を実施するコンピュータプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサを備える装置が提供される。
【0009】
任意選択的に、前記第1の計測データは、レベルセンサによって取得される前記基板上に造られたフィーチャの高さに関するデータZLSを備える。
【0010】
任意選択的に、前記フィールド内成分は、フィールド内の1つ又は複数のデバイスのトポロジーに関するデータを備える。
【0011】
任意選択的に、前記フィールド内成分を決定することは、前記パラメータの1つ又は複数の特徴を入力とする1つ又は複数のアルゴリズムに基づく。
【0012】
任意選択的に、前記パラメータの1つまたは複数の特徴は、前記装置又はさらなる装置によって測定される。
【0013】
任意選択的に、前記フィールド内成分は、前記第1の計測データに基づいて少なくとも部分的に決定される。
【0014】
任意選択的に、前記プロセッサは、前記第1の計測データを取得するように前記装置を制御するようにさらに構成される。
【0015】
任意選択的に、前記第2の計測データの前記複数の値は、前記基板内又は前記基板上に造られた計測ターゲットから計測されたものである。
【0016】
任意選択的に、前記第2の計測データの前記複数の値は、前記基板上のフィールド間及び/又はダイ間のスクライブレーンで計測されたものである。
【0017】
任意選択的に、前記第2の計測データは、回折に基づくフォーカスを用いて取得されるトータルフォーカス誤差データを備える。
【0018】
任意選択的に、前記第1及び第2の計測データ間の差を決定することは、レベリング補正不能誤差の推定値を前記第1の計測データに基づいて決定するために、前記フィールド間成分からリソグラフィ露光装置内のウェハテーブルの作動高さZEXPを減算することを備える。
【0019】
任意選択的に、前記第1及び第2の計測データ間の差を決定することは、前記第1の計測データに基づいて推定されたレベリング補正不能誤差を前記第2の計測データから減算することをさらに備える。
【0020】
任意選択的に、前記パラメータは、フォーカス誤差を備える。
【0021】
任意選択的に、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することは、前記第1の計測データのスクライブレーンに特有な表現を取得するために、前記第1の計測データのフィールド間成分から既知の作動プロファイルを減算することを備える。
【0022】
任意選択的に、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することは、前記第2の計測データと前記第1の計測データのスクライブレーンに特有な表現との差を決定することをさらに備える。
【0023】
任意選択的に、第1の計測データを取得するための装置および/または第2の計測データを取得するための装置をさらに備える。
【0024】
請求項1から16のいずれかに記載の装置を備えるリソグラフィ装置。
【0025】
本発明のある態様によると、基板に関するパラメータの複数の値を備える第1及び第2の計測データ間の差を決定する方法であって、前記基板は、デバイストポロジーを備える複数のフィールドを含み、前記パラメータのフィールド内成分を決定することと、決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得するために除去することと、前記フィールド間成分および前記第2の計測データに基づいて、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することと、を備える方法が提供される。
【0026】
本発明のある態様によると、リソグラフィ装置についてスクライブレーンフォーカス誤差寄与度の推定値を第1及び第2の計測データに基づいて決定する装置であって、前記第1の計測データは、基板のフィールドにわたる複数の高さ値を備え、前記基板は、スクライブレーンとデバイストポロジーを含むダイとを備える複数のフィールドを含み、前記第2の計測データは、前記スクライブレーン内で測定された前記リソグラフィ装置のフォーカスに関するパラメータの複数の値を備えており、前記第1の計測データのフィールド内成分を決定することと、決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得するために除去することと、前記第1の計測データのフィールド間成分と、前記第1の計測データに基づく前記リソグラフィ装置の作動による前記基板の測定され又は予想された動きとの差として、前記第1の計測のスクライブレーンフォーカス誤差寄与度を決定することと、を有する方法を実施するコンピュータプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサを備える装置が提供される。
【0027】
任意選択的に、前記プロセッサは、前記第1の計測データにおいて観測されない効果によって引き起こされるリソグラフィ装置のフォーカス誤差の推定値を決定するために、前記第2の計測データから前記第1の計測のスクライブレーンフォーカス誤差寄与度を除去するようにさらに構成される。
【0028】
任意選択的に、前記プロセッサは、前記第1の計測データを、前記第1の計測データにおいて観測されない効果によって引き起こされるリソグラフィ装置のフォーカス誤差の決定された推定値と組み合わせるようにさらに構成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】リソグラフィ装置の全体を模式的に示す。
図2】リソグラフィセルの全体を模式的に示す。
図3】半導体製造を最適化する3つの重要技術の協働を表すホリスティックリソグラフィを模式的に示す図である。
図4a】ダイおよびスクライブラインを備える基板のフィールドを平面図で模式的に示したものである。
図4b】ダイおよびスクライブラインを備える基板のフィールドを側面図で模式的に示したものである。
図5a図4bの側面図にZexpとZLSを重ねて示したものである。
図5b】スクライブレーンおよびデバイストポロジーに関連する補正不能誤差のプロットを示す。
図6】第1の計測データと第2の計測データとの間のオフセットを決定する方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本文書においては、「放射」および「ビーム」という用語は、紫外放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)及びEUV(極紫外放射、例えば5から100nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を包含するよう用いられる。
【0031】
本書に使用される「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分に生成されるべきパターンに相当するパターン形成された断面を入射放射ビームに与えるために使用可能な一般的なパターニングデバイスを指すものとして広く解釈されうる。この文脈で「ライトバルブ」という用語も使用されうる。古典的なマスク(透過性または反射性、バイナリ、位相シフト、ハイブリッド等)のほかに、こうしたパターニングデバイスの他の例にはプログラマブルミラーアレイとプログラマブルLCDアレイが含まれる。
【0032】
図1は、リソグラフィ装置LAを模式的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、またはEUV放射)を調整するよう構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成された第1位置決め部PMに接続されているマスク支持体(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストでコーティングされたウェーハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成された第2位置決め部PWに接続されている基板支持体(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つ又は複数のダイを含む)ターゲット部分Cに投影するよう構成されている投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0033】
動作時に、照明システムILは、放射ソースSOから例えばビーム搬送システムBDを介して放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を方向付け、形状を整え、及び/または制御するために、屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、及び/または他の種類の光学素子などの各種の光学素子、またはこれらの組合せを含みうる。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面におけるその断面において、所望の空間的および角度的な強度分布を有するように、放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0034】
本書に使用される「投影システム」PSという用語は、使用される露光放射、及び/または液浸液の使用または真空の使用などの他の要因に適切である限り、屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、アナモフィック光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、及び/または静電的光学系などの各種の投影システム、またはそれらの任意の組み合わせを包含するものと広く解釈されるべきである。本書における「投影レンズ」という用語の使用は、より一般的な用語「投影システム」PSと同義であるとみなされうる。
【0035】
リソグラフィ装置LAは、基板の少なくとも一部が比較的屈折率の高い液体、たとえば水で覆われ、それにより投影システムPSと基板Wとの間の空間が充填される形式のものであってもよく、これは液浸リソグラフィとも称される。液浸技術について詳しい情報は、本書に援用されるUS6952253に与えられる。
【0036】
また、リソグラフィ装置LAは、2以上の基板支持体WTを有する形式のものであってもよい(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。このような「多重ステージ」の装置においては、基板支持体WTが並行して使用されてもよく、及び/または、1つの基板支持体WT上の基板Wにパターンを露光するためにその基板支持体WTが使用されている間に他の基板支持体WTで次の基板Wの露光の準備工程がその基板Wに実行されてもよい。
【0037】
基板支持体WTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを備えてもよい。測定ステージは、センサ及び/またはクリーニング装置を保持するように配置される。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように配置されてもよい。測定ステージは、複数のセンサを保持してもよい。クリーニング装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を清掃するように配置されてもよい。測定ステージは、基板支持体WTが投影システムPSから離れるときに投影システムPSの下に移動してもよい。
【0038】
動作時に、放射ビームBは、マスク支持体MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスMAに存在するパターン(設計レイアウト)によってパターン形成される。マスクMAを横切った放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに合焦させる。第2位置決め部PWおよび位置測定システムIFにより、例えば放射ビームBの経路において合焦されアライメントされた位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板支持体WTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め部PMとありうる別の位置センサ(図1には明示されない)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために使用することができる。パターニングデバイスMAと基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と基板アライメントマークP1、P2を使用してアライメントされてもよい。図示される基板アライメントマークP1、P2は、専用のターゲット部分を占有しているが、ターゲット部分間のスペースに配置されてもよい。基板アライメントマークP1、P2は、ターゲット部分C間に配置される場合、スクライブレーンアライメントマークとして知られている。
【0039】
図2に示すように、リソグラフィ装置LAは、リソグラフィセルLCの一部を形成しうる。リソグラフィセルLCは、リソセルまたは(リソ)クラスタと呼ばれることもあり、多くの場合、基板Wに露光前および露光後のプロセスを実行する装置も含む。これには従来、レジスト層を堆積させるスピンコータSC、露光されたレジストを現像するディベロッパDE、例えばレジスト層の溶媒を調整するために例えば基板Wの温度を調整するためのチルプレートCHおよびベークプレートBKが含まれる。基板ハンドラまたはロボットROは、入力/出力ポートI/O1,I/O2から基板Wを取り上げ、様々なプロセス装置間で移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBへと基板Wを配送する。多くの場合トラックとも総称されるリソセルのこれら装置は通例、トラック制御ユニットTCUの制御下にある。トラック制御ユニットTCU自体は、監視制御システムSCSにより制御されうる。監視制御システムSCSは、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAも制御しうる。
【0040】
リソグラフィ装置LAによって露光される基板Wが正確かつ整合的に露光されるためには、例えば、後続層とのオーバーレイ誤差、線幅、クリティカルディメンション(CD)、フォーカス誤差などパターン構造の特性を測定すべく基板を検査することが望ましい。そのため、検査ツールまたはメトロロジ装置(図示せず)がリソセルLCに含まれてもよい。誤差が検出された場合、とくに検査が同じバッチまたはロットの他の基板Wが露光され又は処理される前に行われた場合には、調整は例えば、後続の基板の露光又は基板Wに行われるべき他の処理の工程で行われてもよい。
【0041】
検査装置は、メトロロジ装置とも呼ばれるが、基板Wの特性、とくに、異なる基板Wについて特性がどのように変動するか、または同じ基板Wの様々な層に関連付けられる特性が層ごとにどのように変動するかを決定するために使用される。あるいは、検査装置は、基板W上の欠陥を特定するように構築されてもよく、例えば、リソセルLCの一部であってもよいし、リソグラフィ装置LAに統合されていてもよいし、あるいはスタンドアロン装置であってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層における像)、半潜像(露光後ベーク工程PEB後のレジスト層における像)、または現像されたレジスト像(レジストの露光部分または未露光部分が除去されている)、あるいはエッチングされた像(エッチングなどのパターン転写工程後)の特性を測定しうる。
【0042】
典型的には、リソグラフィ装置LAにおけるパターニングプロセスは、基板W上の構造の寸法と配置について高精度を必要とする処理のなかで最も重要な工程の1つである。この高精度を確保するために、図3に模式的に示されるように、3つのシステムがいわゆる「ホリスティック」制御環境に組み合わされてもよい。これらシステムの1つがリソグラフィ装置LAであり、リソグラフィ装置LAは、メトロロジツールMT(第2のシステム)とコンピュータシステムCL(第3のシステム)に(仮想的に)接続されている。このような「ホリスティック」環境の鍵は、これら3つのシステム間の連携を最適化して、プロセスウィンドウ全体を強化し、厳密な制御ループを提供して、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまることを保証することにある。プロセスウィンドウは、特定の製造プロセスが定められた結果(例えば、機能する半導体デバイス)を生むことになるプロセスパラメータ(例えばドーズ、フォーカス、オーバレイ)の範囲を定義する。典型的には、プロセスウインドウ内で、リソグラフィプロセスまたはパターニングプロセスにおけるプロセスパラメータを変化させることが許される。
【0043】
コンピュータシステムCLは、パターニングすべき設計レイアウト(の一部)を使用して、どの超解像技術を使用するかを予測し、計算的リソグラフィシミュレーションおよび計算を実行して、どのマスクレイアウトおよびリソグラフィ装置設定がパターニングプロセスの最大の全体的プロセスウィンドウを達成するかを決定しうる(第1の目盛りSC1の両矢印で図3に描かれている)。典型的には、超解像技術は、リソグラフィ装置LAのパターニングの可能性に合わせて用意される。また、コンピュータシステムCLは、(例えばメトロロジツールMTからの入力を使用して)リソグラフィ装置LAがプロセスウィンドウ内のどこで現在動作しているかを検出し、例えば次善のプロセスにより欠陥が存在しうるか否かを予測するために使用されてもよい(第2の目盛りSC2が「0」を指すことによって図3に描かれている)。
【0044】
メトロロジツールMTは、正確なシミュレーションおよび予測を可能にするためにコンピュータシステムCLに入力を提供してもよく、また、例えばリソグラフィ装置LAの較正状態に起こりうるドリフト(第3の目盛りSC3における複数の矢印で図3に描かれている)を特定するためにリソグラフィ装置LAにフィードバックを提供してもよい。
【0045】
リソグラフィ装置(またはスキャナ)LAは、図では特定されていないレベルセンサを含んでいてもよい。あるいは、レベルセンサは、トラック内にある別個の装置であってもよい。
【0046】
基板上にパターンを結像する際には、基板の最上部の表面(すなわち、パターンが結像されるべき表面)が投影レンズの焦点面内にあることを確実にすることが望まれる。投影レンズの焦点面からの基板の最上面の位置のずれは、フォーカス誤差と呼ばれることがある。基板の最上面の位置を決定するために、レベルセンサが使用されてもよい。基板の最上面が投影レンズの焦点面にないことをレベルセンサが示した場合、それに応じて、基板を支持する基板テーブルの高さが調整されてもよい。
【0047】
また、レベルセンサは、基板の表面に存在しうる傾斜を測定するために使用されてもよく、それに応じて傾斜を補正するために、基板テーブルが傾斜されてもよい。
【0048】
レベルセンサは、リソグラフィ投影装置の一部であってもよい。リソグラフィ装置によって印刷されるフィーチャのフォーカス誤差の許容範囲が狭くなるにつれて、フォーカス誤差の決定の精度がますます重要となりうる。
【0049】
レベルセンサの動作については、当業者であれば理解できるだろう。しかしながら、大まかに言えば、典型的なレベルセンサは、基板に入射する放射の反射率に影響される。放射はスリットを通って伝搬し、得られたビームは基板の表面上で走査される。基板の表面で反射した放射が検出され、フォーカス誤差を決定するために使用される。
【0050】
上述したように、検査装置(またはメトロロジ装置)は、レベルセンサによる測定に加えてフォーカス誤差を決定するために使用されるスタンドアロンのツールであってもよい。そのような検査装置は、当業者に理解されるように、回折に基づく手法を用いてフォーカス誤差を決定してもよい。大まかに言えば、検査装置は、基板上および/または基板内に造られた特定のターゲット(またはフォーカスマーク)に放射を方向付けてもよい。ターゲットによって回折された放射が検出され、「トータルフォーカス誤差」とも呼ばれるフォーカス誤差を決定するために使用される。典型的には、ターゲットは、基板の表面にわたって比較的まばらに位置し、基板のフィールド間及び/またはダイ間の狭い通路であるスクライブレーンに配置される。本明細書では、「フィールド」という用語は、上述のターゲット部分を包含する。フィールドは、1つまたは複数の、典型的には複数の「ダイ」を備えてもよい。いくつかの構成では、ダイは、典型的には、基板上に製造される特定の半導体デバイス(またはチップ)に関連づけられる。スクライブレーンとターゲットは、フィールド間および/またはダイ間に位置してもよい。
検査装置を使用する際には、「ピュアフォーカス」の値がトータルフォーカス誤差から抽出されてもよい。これは、トータルフォーカス誤差から既知のスキャナ寄与因子を減算することによって行うことができる。スキャナ寄与因子は、主としてレベリング補正不能誤差(NCE)であり、とくに、基板の上面がスリットの長さに匹敵する空間スケールで走査方向に沿って高さ変動を示している場合においてウェハテーブルの動きがこの表面に追従できる限界によってもたらされる作動誤差である。スリットは、典型的に、x方向にフィールド幅全体を、y方向に数mmをカバーしながら、基板上に露光される。y方向における走査動作がフィールド全体を網羅することを可能にする。その結果、(ウェハステージが唯一のアクチュエータであって、像面自体は歪み得ないと仮定すると、)線形プロファイルをx方向に作動させることができるにすぎず、y方向には所望の非線形プロファイルの「移動平均」となる。
【0051】
別の言い方をすれば、スキャナのメトロロジ(例えばレベルセンサのデータ)とスキャナの作動能力との差に基づいて予想される何らかのフォーカス誤差に加えて、ピュアフォーカスは、基板にわたり生じる予想外のフォーカス誤差として定義されうる。
【0052】
レベルセンサによって生成されるビームは、有限の長さのスリットを通って伝搬しているので、基板の表面のある領域をカバーする。いくつかの構成では、レベルセンサのビームがカバーする領域はおよそ1.0mm×2.5mmである。したがって、レベルセンサによって決定される基板の最上面のレベルは、ビームがカバーする領域にわたるデータを含んでいる。例示的なケースでは、レベルセンサによって決定されるレベルは、ビームがカバーする基板の表面の領域にわたる最上面のレベルの平均である。そのため、基板上のデバイストポロジーを含むフィールド間および/またはダイ間に配置されるスクライブレーンのレベルは、レベルセンサによって決定されるレベルにうまく捕捉されず、その結果、オフセットが生じる。これは、デバイストポロジーに基づいてレベルセンサによって取得されるデータと、スクライブレーンに造られたターゲットに基づいて検査装置によって取得されるデータとの間の、スクライブ・セル間オフセット(scribe-to-cell offset)に関連する。
【0053】
ピュアフォーカス誤差は、検査装置から導出されるトータルフォーカス誤差からレベルセンサから導出されるフォーカス誤差データを差し引くことによって決定されるため、スクライブ・セル間オフセット(これは、スクライブレーンのフォーカス測定マークとフィールドのデバイストポロジーとの間の局所的な高さの差として定義されうる)が、「ピュアフォーカス」フィンガープリントに存在する。スクライブ・セル間オフセットの起源は、スクライブレーンがダイ内またはフィールド内のデバイスフィーチャに対して異なる処理がなされることにある。これにより、ダイ内のデフォーカスとスクライブ内のデフォーカスとの間でトポロジーが異なることになる。
【0054】
オンプロダクトの性能はますます、いわゆるNCEのウェハマップから再構築されるようになっている。NCEとは典型的に、測定側の入力とリソグラフィ装置が作動できうるものとの差をいう。このような誤差は、測定可能な信号に相関させることができる。例えば、レベリングのNCEは、検査装置によって測定されるフォーカス誤差に直接寄与するはずである。しかしながら、上述したように、検査装置での測定は、デバイストポロジーを含むフィールドの内側ではなく、スクライブレーンに配置される小ターゲットに対して行われることが多い。これらのスクライブレーンは一般的に小さすぎて、上述したレベルセンサによって決定されるNCEマップでは視認することができない。そのため、スクライブレーンの高さがデバイストポロジーの高さと大きく異なる場合、いわゆる「スクライブ・セル間オフセット」により、レベルセンサのデータから決定されるNCEマップと検査装置によって取得される測定結果との間の相関性が低下する。このことは、特に3D-NANDメモリなど、フィールド内のトポグラフィーが大きい基板で発生することがわかっている。
【0055】
図4aおよび図4bは、上記の議論を説明するためのものである。基板400の表面の一部が、図4aに平面図で、図4bに断面図で示されている。基板の表面は、複数のダイ402a~dを備える。ダイの間にはスクライブレーン404が走っている。複数のターゲット406がスクライブレーン404に位置しており、図4aおよび図4bでは星で示されている。スクライブ・セル間オフセットは、図4bで見ることができる。図4aおよび4bのスクライブレーンは、明確にするために、図4aおよび4bが縮尺に合わせて描かれた場合に表れるものよりも大きく示されていることに留意されたい。フィールドの典型的な寸法は、実際には約26mm×30mmであり、スクライブレーンの幅は、実際には典型的に約50μmである。
【0056】
図5aは、リソグラフィ装置LAの露光高さ(Zexp)500と、レベルセンサによって測定された基板表面のレベル(ZLS)502を重ねた、図4bに見られるような基板を通る断面を示している。
【0057】
見てわかるように、ZLS502は、基板の実際のトポロジーを平滑化したものである。これは、上述した平均化の結果であり、レベルセンサのビームがカバーする領域に関連している。Zexp500は、リソグラフィ装置の露光の高さである。Zexp500に対するウェハの位置は、ウェハテーブルの作動高さによって制御される。
【0058】
図5bは、NCE値、NCEscribe504とNCEdevice506を示す。図5bに示すNCEdevice506は、レベルセンサ高さZLS502から露光高さZexp500を減算することにより算出される。
【数1】
【0059】
本明細書に開示される方法および装置は、NCEscribeを決定するように構成されてもよい。NCEscribeは、リソグラフィ装置のフォーカス制御の制限および/またはレベルセンサデータによってスクライブレーンに誘起される補正不能なフォーカス誤差である。
【0060】
そこで、開示される方法および装置は、第1の計測データ(例えば、レベルセンサのフォーカス誤差データ)と第2の計測データ(例えば、検査装置のフォーカス誤差データ)との間の差またはオフセットを決定するように構成されてもよい。これは、NCEscribeをレベルセンサデータから決定することによって行われてもよい。
【0061】
フォーカス計測(例えば回折に基づく手法を用いた検査装置を使用して取得される)は、オフセットをレベルセンサベースのフォーカス制御に提供し、フォーカス挙動を経時的に監視するのに有用である。トータルフォーカスバジェットは、いくつかの成分で構成されている。レベルセンサのNCEは大きな成分である。投影レンズのフォーカス誤差は、レベルセンサに拾われないフォーカスバジェット寄与因子の一例である。投影レンズのフォーカス誤差の寄与度は、スクライブレーンのターゲットからデータを取得することによって測定されうる。スクライブレーンは通常、ウェハの露光中にレジストに形成される。他の構成では、投影レンズのフォーカス誤差は、専用のイメージセンサを用いて測定されてもよい。
【0062】
しかしながら、ターゲットは、露光中に必然的に存在するレベルセンサNCEに起因して、非ゼロのフォーカスにも形成される。そのため、投影レンズのフォーカス誤差は、フォーカスマークに基づく計測値から、(独立して測定された)レベルセンサNCEを減算することによって決定される。
【0063】
より広い文脈では、本明細書に開示される方法および装置は、(例えばフォーカス)パラメータデータの高密度かつ高精度のマップを合成するために、複数の計測データソースおよび事前知識(物理学、NCE、マスクレイアウト)を組み合わせるメトロロジ方法論の一部に貢献しうる。開示される方法および装置は、複数の種類の計測データおよび事前知識(例えば、デバイスを構成する製品フィーチャに対するスクライブライン内のターゲットのオフセット)を組み合わせるので、このような方法論に適合しうる。
【0064】
図6は、第1の計測データと第2の計測データとの間の差、オフセット又は相関を決定するための例示的な方法のフロー図である。第1の計測データとの間の差、オフセット又は相関を決定することは、第1の計測データから決定される(例えばレベルセンサデータから決定される)フォーカス誤差データと、第2の計測データから決定される(例えば検査装置データから決定される)フォーカス誤差データとの間の差、オフセット又は相関を決定することを備えてもよい。例示的な構成では、第1の計測データは、フィールド間成分及びフィールド内成分を備える。
【0065】
例示的な構成では、第1の計測データは、ZLSを備えてもよい。
【0066】
パラメータのフィールド内成分が決定される(600)。フィールド内成分は、基板上のフィールド内及び/又はダイ内で観測されるパラメータの成分である。フィールド内成分は、基板上の複数のダイおよび/または複数のフィールドに繰り返されてもよい。レベルセンサから取得されうるレベルデータの場合、レベルデータのフィールド内成分は、フィールド内および/またはダイ内のトポロジーのレベルである。これは、デバイストポロジーであってもよい。
【0067】
パラメータのフィールド内成分は、1つまたは複数のアルゴリズムに基づいて決定されてもよい。アルゴリズムは、パラメータの1つまたは複数の特徴を入力としてもよい。例えば、パラメータの特徴は、フィールド内のデバイストポロジーのX、Y、Zのうち1つまたは複数の寸法を備えてもよい。また、アルゴリズムは、レベルセンサのスリットの寸法、レベルセンサ内の放射を基板上に導くための光学部品に関する1つまたは複数のパラメータ、および/または、レベルセンサ内で基板に入射する放射ビームの面積を含んでもよい。
【0068】
パラメータのフィールド内成分を決定するためのアルゴリズムは、当業者に知られているものであってもよい。
【0069】
決定されたフィールド内成分は、第1の計測データから除去され(602)または減算される。これにより、フィールド間成分を残すことができる。
【数2】
【0070】
ここで、第1の計測データと第2の計測データとの間の差、オフセット又は相関が、フィールド間成分ZLS,inter及び第2の計測データに基づいて決定されてもよい。図6に示す例示的な構成では、差、オフセット又は相関を決定することは、NCEscribeを第1の計測データから決定することを備える(604)。
【数3】
【0071】
決定されたNCEscribeは、リソグラフィ装置によって誘起される誤差によってスクライブレーンで観測される補正不能なフォーカス誤差の推定値である。すなわち、上記で決定されたNCEscribeは、スクライブ・セル間オフセットが除去された状態でレベルセンサによって決定される補正不能誤差である。決定されたNCEscribeは、第2の計測データと、及び/又は第2の計測データから決定される値と、(例えば、そこから減算されることによって)比較されてもよい(606)。例えば、第2の計測データは、検査装置から(任意選択として回折ベースの方法を用いて)取得されるトータルフォーカス測定データを備えてもよい。
【0072】
NCEscribeは、スクライブレーンにまばらに配置された計測ターゲットの位置で観測されるレベルセンサのデフォーカスへの寄与度を記述する。このNCEをフォーカス誤差測定値から差し引くことにより、フォーカス誤差の「ノンレベリング」成分(「ピュアフォーカス」と呼ばれることもある)が取得されてもよい。
【0073】
しかしながら、NCEdeviceが、デバイス内のフォーカス性能を説明する際に考慮すべきレベリングNCEである場合もある。本明細書に開示される例示的な方法および装置では、トータルフォーカス測定値からスクライブレーンNCE(NCEscribe)を減算することにより、「ピュアフォーカス」を計算することができるかもしれない。ピュアフォーカスは、期待されるトータルデフォーカス性能を得るために、デバイスNCEと知的に再結合されてもよい。再結合操作の一例は、基板上の一連の(x,y)位置でのピュアフォーカスおよびデバイスNCE信号の加算である。適切な数学的補間操作を用いて、それぞれの測定位置と一致しない位置における「ピュアフォーカス」および「デバイスNCE」信号の代表値を得ることができる。
【0074】
本発明の更なる実施形態が以下に列挙される番号付けられた項に開示される。
1.基板に関するパラメータの複数の値を備える第1及び第2の計測データ間の差を決定する装置であって、前記基板は、デバイストポロジーを備える複数のフィールドを含み、
前記パラメータのフィールド内成分を決定することと、
決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから除去し、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得することと、
前記フィールド間成分および前記第2の計測データに基づいて、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することと、を有する方法を実施するコンピュータプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサを備える装置。
2.前記第1の計測データは、レベルセンサによって取得される前記基板上に造られたフィーチャの高さに関するデータZLSを備える、項1に記載の装置。
3.前記フィールド内成分は、フィールド内の1つ又は複数のデバイスのトポロジーに関するデータを備える、項2に記載の装置。
4.前記フィールド内成分を決定することは、前記パラメータの1つ又は複数の特徴を入力とする1つ又は複数のアルゴリズムに基づく、項1または2に記載の装置。
5.前記パラメータの1つまたは複数の特徴は、前記装置又はさらなる装置によって測定される、項4に記載の装置。
6.前記フィールド内成分は、前記第1の計測データに基づいて少なくとも部分的に決定される、項1から5のいずれかに記載の装置。
7.前記プロセッサは、前記第1の計測データを取得するように前記装置を制御するようにさらに構成される、項1から6のいずれかに記載の装置。
8.前記第2の計測データの前記複数の値は、前記基板内又は前記基板上に造られた計測ターゲットから計測されたものである、項1から7のいずれかに記載の装置。
9.前記第2の計測データの前記複数の値は、前記基板上のフィールド間及び/又はダイ間のスクライブレーンで計測されたものである、項8に記載の装置。
10.前記第2の計測データは、回折に基づくフォーカスを用いて取得されるトータルフォーカス誤差データを備える、項1から9のいずれかに記載の装置。
11.前記第1及び第2の計測データ間の差を決定することは、レベリング補正不能誤差の推定値を前記第1の計測データに基づいて決定するために、前記フィールド間成分からリソグラフィ露光装置内のウェハテーブルの作動高さZEXPを減算することを備える、項1から10のいずれかに記載の装置。
12.前記第1及び第2の計測データ間の差を決定することは、前記第1の計測データに基づいて推定されたレベリング補正不能誤差を前記第2の計測データから減算することをさらに備える、項11に記載の装置。
13.前記パラメータは、フォーカス誤差を備える、項1から12のいずれかに記載の装置。
14.前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することは、前記第1の計測データのスクライブレーンに特有な表現を取得するために、前記第1の計測データのフィールド間成分から既知の作動プロファイルを減算することを備える、項1から13のいずれかに記載の装置。
15.前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することは、前記第2の計測データと前記第1の計測データのスクライブレーンに特有な表現との差を決定することをさらに備える、項14に記載の装置。
16.第1の計測データを取得するための装置および/または第2の計測データを取得するための装置をさらに備える、項1から15のいずれかに記載の装置。
17.項1から16のいずれかに記載の装置を備えるリソグラフィ装置。
18.基板に関するパラメータの複数の値を備える第1及び第2の計測データ間の差を決定する方法であって、前記基板は、デバイストポロジーを備える複数のフィールドを含み、
前記パラメータのフィールド内成分を決定することと、
決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得するために除去することと、
前記フィールド間成分および前記第2の計測データに基づいて、前記第1の計測データと前記第2の計測データとの差を決定することと、を備える方法。
19.リソグラフィ装置についてスクライブレーンフォーカス誤差寄与度の推定値を第1及び第2の計測データに基づいて決定する装置であって、
前記第1の計測データは、基板のフィールドにわたる複数の高さ値を備え、前記基板は、スクライブレーンとデバイストポロジーを含むダイとを備える複数のフィールドを含み、
前記第2の計測データは、前記スクライブレーン内で測定された前記リソグラフィ装置のフォーカスに関するパラメータの複数の値を備えており、
前記第1の計測データのフィールド内成分を決定することと、
決定されたフィールド内成分を前記第1の計測データから、前記第1の計測データのフィールド間成分を取得するために除去することと、
前記第1の計測データのフィールド間成分と、前記第1の計測データに基づく前記リソグラフィ装置の作動による前記基板の測定され又は予想された動きとの差として、前記第1の計測のスクライブレーンフォーカス誤差寄与度を決定することと、を有する方法を実施するコンピュータプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサを備える装置。
20.前記プロセッサは、前記第1の計測データにおいて観測されない効果によって引き起こされるリソグラフィ装置のフォーカス誤差の推定値を決定するために、前記第2の計測データから前記第1の計測のスクライブレーンフォーカス誤差寄与度を除去するようにさらに構成される、項19に記載の装置。
21.前記プロセッサは、前記第1の計測データを、前記第1の計測データにおいて観測されない効果によって引き起こされるリソグラフィ装置のフォーカス誤差の決定された推定値と組み合わせるようにさらに構成される、項20に記載の装置。
【0075】
本書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされている場合があるが、ここに説明したリソグラフィ装置は、その他の用途を有しうるものと理解されたい。ありうる他の用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用案内パターン及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
【0076】
本書ではリソグラフィ装置の文脈における本発明の実施形態について具体的な言及がなされている場合があるが、本発明の実施形態は、他の装置にも使用されうる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、または、ウェーハ(またはその他の基板)またはマスク(またはその他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する何らかの装置の一部を形成してもよい。これら装置は、リソグラフィツールと総称されてもよい。こうしたリソグラフィツールは、真空条件または環境(非真空)条件を使用してもよい。
【0077】
上記では光リソグラフィの文脈における本発明の実施形態の使用について具体的な言及がなされている場合があるが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなどの他の用途においても使用されうるものであり、文脈が許す場合、光リソグラフィに限られるものではないことは理解されよう。
【0078】
上記では本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a)】
図5b)】
図6