(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20230621BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230621BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C23C16/44 J
H01L21/205
H01L21/302 101H
(21)【出願番号】P 2019073136
(22)【出願日】2019-04-05
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亨
(72)【発明者】
【氏名】神保 洋介
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-150622(JP,A)
【文献】特開2007-250628(JP,A)
【文献】特開2003-197615(JP,A)
【文献】特開2006-128485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/44
H01L 21/205
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、ガス導入口を有する電極フランジと、前記チャンバ及び前記電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとから構成され、成膜空間を有する処理室と、
前記成膜空間内に収容され、処理面を有する基板が載置され、前記基板の温度を制御する支持部と、
前記成膜空間内に収容され、前記処理面に対向するように配置され、前記基板に向けてプロセスガスを供給する複数の小孔を有するシャワープレートと、
前記シャワープレートと前記支持部との間に電圧を印加し、前記プロセスガスのプラズマを生成する電圧印加部と、
前記電極フランジと前記シャワープレートとの間に設けられた空間内へ活性化されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス供給手段と、
を含み、
前記クリーニングガス供給手段は、
前記活性化されたクリーニングガスを製造する発生部と、前記発生部において製造されたクリーニングガスが前記空間と接する前記シャワープレートの上面に沿って該空間内を流れる位置に、前記クリーニングガスの吐出部と
、前記発生部と前記吐出部との間に、前記活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部と、を備え
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスの温度を低下させるための冷却部を備えた、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に設けたクランク形状部である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に、希釈ガスを添加させる導入部を備えた、
ことを特徴とする請求項
1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記吐出部において、前記活性化されたクリーニングガスを前記空間に導入する配管の開口部が、前記発生部の側あるいは前記減速部の側から見て、広がる形状をなしている、ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、ガス導入口を有する電極フランジと、前記チャンバ及び前記電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとから構成され、成膜空間を有する処理室と、
前記成膜空間内に収容され、処理面を有する基板が載置され、前記基板の温度を制御する支持部と、
前記成膜空間内に収容され、前記処理面に対向するように配置され、前記基板に向けてプロセスガスを供給する複数の小孔を有するシャワープレートと、
前記シャワープレートと前記支持部との間に電圧を印加し、前記プロセスガスのプラズマを生成する電圧印加部と、
前記電極フランジと前記シャワープレートとの間に設けられた空間内へ活性化されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス供給手段と、
を含み、
前記クリーニングガス供給手段は、前記活性化されたクリーニングガスを製造する発生部と、前記発生部において製造されたクリーニングガスが前記空間と接する前記シャワープレートの上面に吹き付ける方向へ該空間内を流れる位置に、前記クリーニングガスの吐出部を有し、かつ、
前記クリーニングガス供給手段は、前記発生部と前記吐出部との間に、前記活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部を備え
、
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスの温度を低下させるための冷却部を備えた、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に設けたクランク形状部である、
ことを特徴とする請求項
5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に、希釈ガスを添加させる導入部を備えた、
ことを特徴とする請求項
5または6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記吐出部は、前記活性化されたクリーニングガスを前記空間に導入する配管の開口部が、前記発生部の側あるいは前記減速部の側から見て、広がる形状をなしている、
ことを特徴とする請求項
5乃至
7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングガスの照射に伴い、シャワープレートの上面側と反応して発生するパーティクルを抑制できるプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Siやガラス、セラミックスなどの基板表面に各種の被膜をCVD法などにより形成するプラズマ処理装置では、成膜室内に成膜ガスを導入しプラズマを発生させて基板に被膜を形成する成膜工程が繰り返し行われる。このような成膜工程においては、成膜対象である基板のみならず、非成膜対象である基板以外の部分(たとえば、基板を載置する基板支持部や成膜室の内壁など)にも着膜し、成膜工程を繰り返す回数に比例して膜厚が徐々に増えてしまう。
【0003】
成膜対象である基板は、成膜工程(1バッチ)ごとに交換されるので、特定の基板上には所望の被膜が所定の膜厚だけ形成される。これに対して、非成膜対象である基板以外の部分は、成膜工程ごとに交換されない。ゆえに、たとえば100回の成膜工程が繰り返し行われた場合は、非成膜対象である基板以外の部分には、成膜工程1回分の100倍の着膜が生じ、100回分の膜厚が重なった状態となる。このため、非成膜対象である基板以外の部分においては、被膜の内部応力が高まり、被膜の密着性が低下するなどの不具合が生じやすく、ひいては基板から膜ハガレが起こり、成膜室内の雰囲気が汚染される。
【0004】
また、プラズマ処理装置では基板が設置される電極(基板支持部)と平行するようにシャワープレート(対向電極)が設けられおり、シャワープレートの上面に向けて略直進する方向からクリーニングガスを導入した場合、クリーニングガスが直進して衝突した領域では特に、シャワープレート材料と強く反応してパーティクルが発生するという問題があった。
【0005】
このようにシャワープレートの上面側でパーティクルが発生すると、シャワープレートの微細孔を通してシャワープレートの下面側へパーティクルが進行し、ひいては基板表面に落下することにより、基板表面に予め堆積された膜や、堆積中の膜に不具合をもたらす虞があった。たとえば、液晶ディスプレイの製造工程などでは、基板に付着した堆積物は、画素欠損などの異常に繋がる。そのため、この付着した堆積物を除去するクリーニング工程が成膜工程とは別に行われている。
【0006】
クリーニングガスを成膜室内に導入する手法としては、2つの手法、すなわち、通常のプロセスガス(成膜ガスやエッチングガスなど)と同じようにシャワープレートを通して導入する手法1(シャワープレートの上面が接する空間内に導入する手法)と、シャワープレートを介さずに成膜室の側面部から導入する手法2(シャワープレートの下面が接する空間内に導入する手法)がある。
【0007】
上記手法2については、たとえば、特許文献1に開示されている。
本発明は、上記手法1における課題を解決することを目的とする。前述したように、フッ素系のクリーニングガスをシャワープレート側から導入する場合には、シャワープレートの上面[基板支持部と対向する面(下面)の反対側の面]もクリーニングガスに含まれるフッ素ラジカルに曝されることになる。シャワープレートの表面(上面や下面)にはアルミニウム合金あるいはそれを陽極酸化した皮膜が形成されているが、フッ素ラジカルによりフッ化アルミニウムの生成反応が起こり、これがパーティクルとなってしまう問題がある。
【0008】
さらに、近年の基板の大型化に伴ってこれを支持する基板支持部や、基板支持部に対向して配置されるシャワープレート、これらを内包する空間を有する成膜室が大型化しており、より効率的に成膜室内部、シャワープレートの下面をクリーニングする必要があった。また、成膜室内部、シャワープレートの下面が不均一にクリーニングされることで、堆積物が除去された後のこれら部材の表面が必要以上にフッ素ラジカルに晒されることになる。これにより、前述したフッ素ラジカルによりフッ化アルミニウムの生成反応が起こり、これがパーティクルとなってしまう問題がある。
【0009】
このため、プロセスガスの通過に伴いシャワープレートの上面側において、クリーニングガスがシャワープレートの上面と反応して発生するパーティクルを抑制できるプラズマ処理装置の開発が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、クリーニングガスをシャワープレートを通して導入する手法に際して、クリーニングガスがシャワープレートの上面と反応して発生するパーティクルを抑制できるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、ガス導入口を有する電極フランジと、前記チャンバ及び前記電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとから構成され、成膜空間(反応室)を有する処理室と、 前記成膜空間内に収容され、処理面を有する基板が載置され、前記基板の温度を制御する支持部と、
前記成膜空間内に収容され、前記処理面に対向するように配置され、前記基板に向けてプロセスガスを供給する複数の小孔を有するシャワープレートと、
前記シャワープレートと前記支持部との間に電圧を印加し、前記プロセスガスのプラズマを生成する電圧印加部と、前記電極フランジと前記シャワープレートとの間に設けられた空間内へ活性化(ラジカル化)されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス供給手段と、
を含み、
前記クリーニングガス供給手段は、
前記活性化されたクリーニングガスを製造する発生部と、前記発生部において製造されたクリーニングガスが前記空間と接する前記シャワープレートの上面に沿って該空間内を流れる位置に、前記クリーニングガスの吐出部と、前記発生部と前記吐出部との間に、前記活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部と、を備え
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスの温度を低下させるための冷却部を備えた、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記において、前記クリーニングガス供給手段が、前記発生部と前記吐出部との間に、前記活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記において、前記減速部が、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に設けたクランク形状部であることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記のいずれかにおいて、前記減速部が、前記活性化されたクリーニングガスの温度を低下させるための冷却部を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記のいずれか一項において、前記減速部が、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に、希釈ガスを添加させる導入部を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記のいずれか一項において、前記吐出部においては、前記活性化されたクリーニングガスを前記空間に導入する配管の開口部が、前記発生部の側あるいは前記減速部の側から見て、広がる形状(テーパー形状)をなしていることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、ガス導入口を有する電極フランジと、前記チャンバ及び前記電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとから構成され、成膜空間(反応室)を有する処理室と、 前記成膜空間内に収容され、処理面を有する基板が載置され、前記基板の温度を制御する支持部と、
前記成膜空間内に収容され、前記処理面に対向するように配置され、前記基板に向けてプロセスガスを供給する複数の小孔を有するシャワープレートと、
前記シャワープレートと前記支持部との間に電圧を印加し、前記プロセスガスのプラズマを生成する電圧印加部と、
前記電極フランジと前記シャワープレートとの間に設けられた空間内へ活性化(ラジカル化)されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス供給手段と、
を含み、
前記クリーニングガス供給手段は、前記活性化されたクリーニングガスを製造する発生部と、前記発生部において製造されたクリーニングガスが前記空間と接する前記シャワープレートの上面に吹き付ける方向へ該空間内を流れる位置に、前記クリーニングガスの吐出部を有し、かつ、
前記クリーニングガス供給手段は、前記発生部と前記吐出部との間に、前記活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部を備え、
前記減速部は、前記活性化されたクリーニングガスの温度を低下させるための冷却部を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記において、前記減速部が、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に設けたクランク形状部であることを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記のいずれかにおいて、前記減速部が、前記活性化されたクリーニングガスの温度を低下させるための冷却部を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記のいずれか一項において、前記減速部が、前記活性化されたクリーニングガスを流すための流路に、希釈ガスを添加させる導入部を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明は、上記のいずれか一項において、前記吐出部は、前記活性化されたクリーニングガスを前記空間に導入する配管の開口部が、前記発生部の側あるいは前記減速部の側から見て、広がる形状(テーパー形状)をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明(
図1のプラズマ処理装置)においては、クリーニングガス供給手段は、活性化(ラジカル化)されたクリーニングガスを製造する発生部と、前記クリーニングガスを電極フランジとシャワープレートとの間に設けられた空間内へ導入する吐出部とを備えている。前記吐出部は、クリーニングガスが前記空間と接する前記シャワープレートの上面に沿って該空間内を流れる位置に配置されている。
これにより、活性化されたクリーニングガスが、電極フランジとシャワープレートとの間に設けられた空間内へ供給された際に、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に沿って進行する。すなわち、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に水平方向から導入される。
そのため、クリーニングガスは、シャワープレートの上面を撫でるように、シャワープレートの表面に対して柔らかな接触を保ちながら、シャワープレートの上面に沿って通過あるいは拡散する。
ゆえに、クリーニング時の電極内部に対する活性化されたクリーニングガスによるダメージが軽減するので、電極内部の部材が活性化されたクリーニングガスと反応することで発生するパーティクルを低減させることが可能となる。
【0024】
換言すると、本発明(
図1のプラズマ処理装置)によれば、従来(
図12に示す構成のプラズマ処理装置)のように、クリーニングガスがシャワープレートの上面に衝突する現象が避けられるので、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを抑制できる。
また、処理室の成膜空間である反応室内部をクリーニングする際に、シャワープレートの上方からシャワープレートの上面に対してクリーニングガスを均一に反応室内部へ導入することによって、効率的にかつ均一に、反応室内部、および、シャワープレートの下面に着膜した堆積物をクリーニングすることが可能となる。
また、反応室や、シャワープレートの下面を均一にクリーニングを行うことにより、これらの部材がオーバークリーニングされる虞がなくなるので、過度のフッ素ラジカルとの反応から生じるパーティクルの発生を抑制することが可能になる。
よって、このクリーニングによれば、シャワープレートの上面(表面)におけるパーティクル発生が減少するので、シャワープレートの上面(表面)から下面(裏面)に向けて貫通する、複数の小孔の内側面に対しても均一なクリーニング効果も期待できる。
【0025】
本発明(
図8のプラズマ処理装置)においては、クリーニングガス供給手段は、活性化(ラジカル化)されたクリーニングガスを製造する発生部と、前記クリーニングガスを電極フランジとシャワープレートとの間に設けられた空間内へ導入する吐出部とを備えている。前記吐出部は、クリーニングガスが前記空間と接する前記シャワープレートの上面に吹き付ける方向へ該空間内を流れる位置に配置されている。これに加えて、前記クリーニングガス供給手段は、前記発生部と前記吐出部との間に、前記活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部(たとえば、クランク構造)を備えている。 これにより、活性化されたクリーニングガスが、電極フランジとシャワープレートとの間に設けられた空間内へ供給された際に、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に吹き付ける方向へ進行するが、減速部の存在により、クリーニングガスの流速は抑制される。すなわち、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に吹き付ける方向から導入されるが、減速部を通過することにより、クリーニングガスの流速が低減された状態で前記空間へ導入される。
そのため、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に衝突する衝撃力が弱まり、シャワープレートの表面に対して柔らかな接触を保ちながら、シャワープレートの上面に沿って通過あるいは拡散する。
つまり、減速部は、活性化されたクリーニングガスがその運動エネルギーを低減させたのち電極内部に導入されるように機能するので、電極内部の部材が活性化されたクリーニングガスと反応することで発生するパーティクルを低減させることが可能となる。
【0026】
ゆえに、本発明(
図8のプラズマ処理装置)によれば、従来(
図12に示す構成のプラズマ処理装置)のように、クリーニングガスがシャワープレートの上面に衝突する現象が避けられるので、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを抑制できる。
したがって、クリーニングガスがシャワープレートを通して導入される手法に際して、
クリーニングガスと反応して発生するパーティクルを抑制できる、プラズマ処理装置(
図8)をもたらす。
よって、本発明(
図8のプラズマ処理装置)は、シャワープレートの上面(表面)におけるパーティクル発生が減少するので、シャワープレートの上面(表面)から下面(裏面)に向けて貫通する、複数の小孔の内側面に対しても均一なクリーニング効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図2】実施形態2のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図3】実施形態3のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図4】実施形態4のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図5】実施形態5のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図6】実施形態6のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図7】従来のプラズマ処理装置と実施形態1~5のプラズマ処理装置におけるパーティクルを示すグラフ。
【
図8】実施形態11のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図9】実施形態12のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図10】実施形態13のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図11】実施形態14のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図12】従来のプラズマ処理装置を示す概略構成図。
【
図13】従来のプラズマ処理装置と実施形態11~14のプラズマ処理装置におけるパーティクルを示すグラフ。
【
図14】従来のプラズマ処理装置のシャワープレート上面におけるパーティクルの発生分布を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態1~6に係るプラズマ処理装置(A1~A6)を、
図1~
図6に基づいて説明する。
後述するとおり、実施形態1~6は何れも、クリーニングガスを水平導入するタイプ(クリーニングガスがシャワープレートの上面に沿って流れる位置に、クリーニングガスの吐出部を備えたタイプ)である。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。実施形態1~6においては、プラズマ処理装置としてプラズマCVD法を用いた成膜装置を説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置A1(1)の一構成例を示す概略断面図である。
図1に示すように、プラズマ処理装置A1は、反応室である成膜空間2aを有する処理室101を含む。処理室101は、真空チャンバ2と、電極フランジ4と、絶縁フランジ81とを含む。絶縁フランジ81は、真空チャンバ2及び電極フランジ4に挟まれている。
【0030】
真空チャンバ2の底部11には、開口部が形成されている。この開口部には支柱25が挿通され、支柱25は真空チャンバ2の下部に配置されている。支柱25の先端(真空チャンバ2内)には、たとえば板状のヒータ16を内在した支持部15(第二電極部)が接続されている。また、真空チャンバ2には、排気管27が接続されている。排気管27の先端には、真空ポンプ(真空排気系)28が設けられている。真空ポンプ28は、真空チャンバ2内が真空状態となるように減圧する。
【0031】
支柱25は、真空チャンバ2の外部に設けられた昇降機構(不図示)に接続されており、基板10の鉛直方向において上下に移動可能である。つまり、支柱25の先端に接続されている支持部15は、上下方向に昇降可能に構成されている。また、真空チャンバ2の外部においては、支柱25の外周を覆うようにベローズ(不図示)が設けられている。
【0032】
電極フランジ4は、上壁41と周壁43とを有する。電極フランジ4は、開口部が基板10の鉛直方向において下方に位置するように配置されている。また、電極フランジ4の開口部には、シャワープレート5(第一電極部)が取り付けられている。これにより、電極フランジ4とシャワープレート5との間に空間24が形成されている。
また、電極フランジ4は、シャワープレート5と対向する上壁41を有する。上壁41には、成膜やエッチングに使用されるプロセスガスのガス導入口42が設けられている。
また、処理室101の外部に設けられたプロセスガス供給部21とガス導入口42との間には、ガス導入管7が設けられている。ガス導入管7の一端は、ガス導入口42に接続され、他端は、プロセスガス供給部21に接続されている。ガス導入管7を通じて、プロセスガス供給部21から空間24にプロセスガスが供給される。即ち、空間24は、プロセスガスが導入されるガス導入空間として機能する。
【0033】
電極フランジ4とシャワープレート5は、それぞれ導電材で構成されており、電極フランジ4は処理室101の外部に設けられたRF電源9(高周波電源,電圧印加部)に電気的に接続されている。即ち、電極フランジ4、及びシャワープレート5はカソード電極71として構成されている。シャワープレート5には、複数のガス噴出口6(第二ガス噴出口)が形成されている。空間24内に導入されたプロセスガスは、ガス噴出口6から真空チャンバ2内の成膜空間2aに噴出される。
【0034】
電極フランジ4の周壁43には、シャワープレート5の上面にクリーニングガスを導入するためのガス導入口44が設けられている。
また、処理室101の外部に設けられたクリーニングガス供給部22とガス導入口44との間には、ガス導入管8が設けられている。クリーニングガス供給部22としては、たとえば、「クリーニングガスがNF3ガスの場合はNF3ガスが充填されたボンベ」が用いられる。また、ガス導入管8とクリーニングガス22と表示した「クリーニングガスの供給部」との間には、ラジカル源23と表示した「供給部から供給されるクリーニングガスから活性化されたクリーニングガスを製造する発生部」が配置されている。
【0035】
つまり、プラズマ処理装置A1は、クリーニングガスの供給部22とラジカル源23(クリーニングガスを製造する発生部)とガス導入管8A(8)とから構成された、クリーニングガス供給手段KA1を備えている。
これにより、活性化されたクリーニングガスは、ガス導入管8Aの吐出部8aを通じて空間24に導入される。これにより、活性化されたクリーニングガスは、ガス導入管8Aの吐出部8aを通じて空間24に導入される。すなわち、空間24は、活性化されたクリーニングガスが導入されるガス導入空間としても機能する。
【0036】
成膜空間2a内には、処理面10aを有する基板10が載置され、基板10の温度を制御する機構を備えた支持部15が配置されている。
支持部15は、表面が平坦に形成された板状の部材である。支持部15の上面には、基板10が載置される。支持部15は、接地電極、つまりアノード電極72として機能する。このため、支持部15は、導電性を有する、たとえば、アルミニウム合金で形成されている。基板10が支持部15上に配置されると、基板10とシャワープレート5とは互いに近接して平行に位置される。より具体的には、基板10の処理面10aとシャワープレート5の下面との間の距離(ギャップ)G1は、15mm以上40mm以下のナローギャップに設定されている。
【0037】
なお、距離G1が15mmよりも小さい場合、シャワープレート5に形成されているガス噴出口6の最小(限界)孔径が0.7mmに設定されているとき、基板10の処理面10aに形成される膜の品質がシャワープレート5のガス噴出口6の孔径の影響を受けるおそれがある。また、距離G1が40mmよりも大きい場合、成膜時にパウダーが生じるおそれがある。
【0038】
支持部15上に基板10が配置された状態で、ガス噴出口6からプロセスガスを噴出させると、プロセスガスは基板10の処理面10a上の空間に供給される。
また、支持部15の内部には加熱手段(たとえばヒータ線)16が設けられている。加熱手段16によって支持部15の温度が所定の温度に調整される。加熱手段16は、支持部15の鉛直方向から見た支持部15の略中央部の裏面17から突出されている。加熱手段16は、支持部15の略中央部に形成された貫通孔18及び支柱25の内部に挿通され、真空チャンバ2の外部へと導かれている。
【0039】
そして、加熱手段16は真空チャンバ2の外部にて電源(不図示)と接続され、支持部15の温度を調節する。これにより、支持部15に載置された基板10の表面10aの温度が制御可能とされている。
更に、支持部15の外周縁には、支持部15と真空チャンバ2との間を接続するように複数のアース30が略等間隔で配設されている。アース30は、たとえば、アルミ合金などで構成されている。
【0040】
プラズマ処理装置A1が上記構成からなる場合には、ガス導入口42から空間24へ吐出されたプロセスガスは、直進してシャワープレート5の上面に衝突するように進行し、シャワープレート5のガス噴出口6を通じて、真空チャンバ2内に噴出する。
【0041】
図1のプラズマ処理装置A1においては、上述した堆積物を除去するために、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ活性化(ラジカル化)されたクリーニングガスを導入するクリーニングガス供給手段KA1(K)を備えている。
プラズマ処理装置A1において、クリーニングガス供給手段KA1は、クリーンニングガス22と表示した「クリーニングガスの供給部(たとえば、クリーニングガスが
NF
3
ガスの場合はNF
3ガスが充填されたボンベ)」と、ラジカル源23と表示した「供給部から供給されるクリーニングガスから活性化されたクリーニングガスを製造する発生部」と、ガス導入管8A(8)とから構成されている。これにより、活性化されたクリーニングガスは、ガス導入管8Aの吐出部8aを通じて空間24に導入される。
ここで、クリーニングガスとしては、たとえば、NF
3ガスの他に、C
2F
6ガス、CF
4ガス、SF
6ガスなどが挙げられる。中でも、クリーニング効率が良いことから、本発明ではNF
3ガスが好適に用いられる。
【0042】
図1のプラズマ処理装置A1では、前記発生部(ラジカル源23)において製造されたクリーニングガスが前記空間24と接する前記シャワープレート5の上面に沿って該空間24内を流れる位置に、前記クリーニングガスのガス導入管8Aの吐出部8aが配置される。この構成によれば、活性化された(ラジカルを含む)クリーニングガスが、電極フランジとシャワープレートとの間に設けられた空間内へ供給された際に、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に沿って進行する。そのため、クリーニングガスは、シャワープレートの上面を撫でるように、シャワープレート表面に対して柔らかな接触を保ちながら、シャワープレートの上面に沿って通過あるいは拡散する。
【0043】
図12に示す構成の従来装置(プラズマ処理装置C)では、クリーニングガスがシャワープレートの上面に衝突する位置に、クリーニングガスのガス導入管8Cの吐出部8cが配置されている。これにより、吐出部8cの直下に相当する領域E1、領域E2において、シャワープレート上面にパーティクルが局在(集中)して発生する傾向があった(
図14)。ここで、
図14は、従来装置(プラズマ処理装置C)のガラス基板上面におけるパーティクルの発生分布を表す図である。
【0044】
これに対して、
図1のプラズマ処理装置A1では、シャワープレート上面においてパーティクルが局在して発生する傾向が解消され、
図7に示すように、パーティクルの発生数がほぼ50%減少することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置A1:0.51)。ここで、プラズマ処理装置A1における「0.51」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
ゆえに、本発明(実施形態1のプラズマ処理装置A1)によれば、従来(
図12に示す構成のプラズマ処理装置C)のように、クリーニングガスがシャワープレートの上面に衝突する現象を回避できるので、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生する現象を著しく抑制できることが分かった。
【0045】
(実施形態2)
図2は、実施形態2(プラズマ処理装置A2)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置A2は、ガス導入管8Aが減速部(クランク)TA1を有する点のみ、プラズマ処理装置A1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置A1と同一である。
すなわち、プラズマ処理装置A2では、クリーニングガス供給手段KA2(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8aとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TA1を備えている。
【0046】
このように構成する(減速部TA1を備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制された状態で、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給(導入(以下では、吐出とも呼ぶ))される。これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図7に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置A2:0.19)。ここで、プラズマ処理装置A2における「0.19」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
本発明の減速部TA1としては、上記のクランク形状の他に、らせん形状、S字形状などが挙げられ、「活性化(ラジカル化)されたクリーニングガス」に対して減速効果が期待できる形状であれば、クランク形状に限定されない。
【0047】
(実施形態3)
図3は、実施形態3(プラズマ処理装置A3)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置A3は、ガス導入管8Aが減速部(クランク)TA1と冷却部TA2を有する点のみ、プラズマ処理装置A1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置A1と同一である。
すなわち、プラズマ処理装置A3では、クリーニングガス供給手段KA3(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8aとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TA1に加えて、減速部KTA1の温度を低温に保つために冷却部TA2も備えている。
冷却部TA2を備えた場合(プラズマ処理装置A3)には、減速部TA1の温度を、たとえば50℃程度に保つことができる。これに対して、前述した冷却部TA2のない場合(プラズマ処理装置A2)には、減速部TA1の温度が、たとえば200℃を越えてしまう場合もある。
【0048】
このように構成する(減速部TA1に加えて冷却部TA2を備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制されるとともに、活性化エネルギーが抑制された状態で、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図7に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置A3:0.09)。ここで、プラズマ処理装置A3における「0.09」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
【0049】
(実施形態4)
図4は、実施形態4(プラズマ処理装置A4)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置A4は、ガス導入管8Aが減速部(クランク)TA1と冷却部TA2に加えて、希釈ガスを添加させる導入部TA3を有する点のみ、プラズマ処理装置A1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置A1と同一である。
すなわち、プラズマ処理装置A4では、クリーニングガス供給手段KA4(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8aとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TA1を備える。また、これに加えて、減速部TA1の温度を低温に保つために冷却部TA2を備える。さらに、減速部TA1を通過する活性化されたクリーニングガスに対して、導入部TA3は希釈ガスを添加させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。
ここで、希釈ガスとしては、たとえば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス、N
2ガスなどが挙げられる。中でも、安価であることから、本発明ではArガスが好適に用いられる。
【0050】
このように構成する(減速部TA1と冷却部TA2と希釈ガスの導入部TA3を備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制されるとともに、活性化エネルギーが抑制された状態で、かつ、その濃度が希釈された状態で、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。
これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図7に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置A4:0.04)。ここで、プラズマ処理装置A4における「0.04」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
【0051】
(実施形態5)
図5は、実施形態5(プラズマ処理装置A5)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置A5は、ガス導入管8Aが減速部(クランク)TA1と冷却部TA2と導入部TA3に加えて、活性化されたクリーニングガスを空間24に導入するガス導入管8の開口部(吐出部8a)が、発生部23の側あるいは減速部KA1の側から見て、広がる形状(テーパー形状)をなしている点のみ、プラズマ処理装置A1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置A1と同一である。
なお、ガス導入管8の開口部(吐出部8a)の近傍に配置された、この広がる形状(テーパー形状)を有する部位のことを、以下では「拡張部TA4」とも呼ぶ。
【0052】
すなわち、プラズマ処理装置A5では、クリーニングガス供給手段KA5(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8aとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TA1を備える。また、これに加えて、減速部TA1の温度を低温に保つために冷却部TA2を備える。さらに、減速部TA1を通過する活性化されたクリーニングガスに対して、導入部TA3は希釈ガスを添加させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。
【0053】
これらに加えて、拡張部TA4を通して、活性化されたクリーニングガスを空間24へ向けて放出するように進行させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。具体的には、電極内部に導入する直近の配管を円錐形状(テーパー状)の拡張部TA4とすることにより、活性化されたクリーニングガスが空間24へ流れる方向を均一に電極内部に広げることができる。これにより、電極内部の部材と活性化されたクリーニングガスとの局所的な接触が抑制されるので、電極内部の部材が活性化されたクリーニングガスと反応することで発生するパーティクルを低減させることが可能となる。
なお、
図5における拡張部TA4は、紙面の上下方向に広がる形状を描写しているが、広がる方向はこれに限定されず、紙面の手前方向や奥行き方向に広がる形状を備えていても構わない。
【0054】
このように構成する(減速部TA1と冷却部TA2と希釈ガスの導入部TA3と拡張部TA4とを備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制されるとともに、活性化エネルギーが抑制された状態で、かつ、その濃度が希釈された状態で、急速に拡散しながなら、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。
これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図7に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置A5:0.006)。ここで、プラズマ処理装置A5における「0.006」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
【0055】
(実施形態6)
図6は、実施形態6(プラズマ処理装置A6)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置A6は、ガス導入管8Aが減速部(クランク)TA1に加えて、前述した拡張部TA4を有する点のみ、プラズマ処理装置A1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置A1と同一である。
【0056】
このように構成する(減速部TA1と拡張部TA4とを備える)ことによっても、活性化されたクリーニングガスはその流速が抑制された状態で、かつ、急速に拡散しながら、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。
これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを抑制できる。
図7には示さないが、プラズマ処理装置A6におけるパーティクルの発生数は、プラズマ処理装置A1の場合より低減することが確認された。プラズマ処理装置A6の結果は、「拡張部TA4」を備えることによる作用・効果が、「冷却部TA2」や「導入部TA3」を並存しなくても得られることを表している。
【0057】
以下では、本発明の実施形態11~14に係るプラズマ処理装置(B1~B4)を、
図8~
図11に基づいて説明する。
後述するとおり、実施形態11~14は何れも、クリーニングガスを垂直導入するタイプ(クリーニングガスがシャワープレートの上面に吹き付ける方向へ流れる位置に、クリーニングガスの吐出部を備えたタイプ)である。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。実施形態11~14においては、プラズマ処理装置としてプラズマCVD法を用いた成膜装置を説明する。
【0058】
(実施形態11)
図8は、本実施形態におけるプラズマ処理装置B1(1)の一構成例を示す概略断面図である。
図8のプラズマ処理装置B1(1)は、以下の2点(b1、b2)について、前述したプラズマ処理装置A1(1)と異なる。他の点は、プラズマ処理装置A1と同一である。
【0059】
(b1)クリーニングガス供給手段KB1は、クリーンニングガス22と表示した「クリーニングガスの供給部(たとえば、クリーニングガスがNF3ガスの場合はフッ素ガスが充填されたボンベ)」と、ラジカル源23と表示した「供給部から供給されるクリーニングガスから活性化されたクリーニングガスを製造する発生部」と、ガス導入管8B(8)とから構成されており、このガス導入管8Bが減速部(クランク)TB1を有する。
(b2)発生部(ラジカル源23)において製造されたクリーニングガスが前記空間24と接する前記シャワープレート5の上面に吹き付ける方向へ該空間24内を流れる位置に、前記クリーニングガスのガス導入管8Bの吐出部8bが配置される。
【0060】
このような構成によれば、活性化された(ラジカルを含む)クリーニングガスが、電極フランジとシャワープレートとの間に設けられた空間内へ供給された際に、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に吹き付ける方向へ進行する。しかし、プラズマ処理装置B1においては、ガス導入管8Bが減速部(クランク)TB1を有するので、活性化されたクリーニングガスはその流速が抑制された状態で、シャワープレートの上面に衝突した後、シャワープレートの上面に沿って広がる方向へ進行する。
そのため、クリーニングガスは、シャワープレートの上面に付着した堆積物を撫でるように、堆積物に対して柔らかな接触を保ちながら、シャワープレートの上面に沿って通過あるいは拡散する。
【0061】
図12に示す構成の従来装置(プラズマ処理装置C)では、クリーニングガスがシャワープレートの上面に衝突する位置に、クリーニングガスのガス導入管8Cの吐出部8cが配置されている。これにより、吐出部8cの直下に相当する領域E1や、プロセスガス供給部21のガス導入管7の吐出部7cの直下に相当する領域E2において、シャワープレート上面にパーティクルが局在(集中)して発生する傾向があった(
図14)。ここで、
図14は、従来装置(プラズマ処理装置C)のガラス基板上面におけるパーティクルの発生分布を表す図である。
【0062】
これに対して、
図8のプラズマ処理装置B1では、シャワープレート上面においてパーティクルが局在して発生する傾向が解消され、
図13に示すように、パーティクルの発生数がほぼ60%減少することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置B1:0.42)。ここで、プラズマ処理装置B1における「0.42」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
ゆえに、本発明(実施形態11のプラズマ処理装置B1)によれば、従来(
図12に示す構成のプラズマ処理装置C)のように、クリーニングガスがシャワープレートの上面に衝突する現象を回避できるので、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生する現象を抑制できることが分かった。
【0063】
(実施形態12)
図9は、実施形態12(プラズマ処理装置B2)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置B2は、ガス導入管8Bが減速部(クランク)TB1と冷却部TB2を有する点のみ、プラズマ処理装置B1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置B1と同一である。
すなわち、プラズマ処理装置B2では、クリーニングガス供給手段KA2(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8aとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TB1に加えて、減速部KTB1の温度を低温に保つために冷却部TB2も備えている。
冷却部TB2を備えた場合(プラズマ処理装置B2)には、減速部TB1の温度を、たとえば50℃程度に保つことができる。これに対して、前述した冷却部TB2のない場合(プラズマ処理装置B1)には、減速部TB1の温度が、たとえば200℃を越えてしまう場合もある。
【0064】
このように構成する(減速部TB1に加えて冷却部TB2を備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制されるとともに、活性化エネルギーが抑制された状態で、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図13に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置B2:0.20)。ここで、プラズマ処理装置A3における「0.20」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
【0065】
(実施形態13)
図10は、実施形態13(プラズマ処理装置B3)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置B3は、ガス導入管8Bが減速部(クランク)TB1と冷却部TB2に加えて、希釈ガスを添加させる導入部TB3を有する点のみ、プラズマ処理装置B1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置B1と同一である。
すなわち、プラズマ処理装置B3では、クリーニングガス供給手段KB3(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8aとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TB1を備える。また、これに加えて、減速部TB1の温度を低温に保つために冷却部TB2を備える。さらに、減速部TB1を通過する活性化されたクリーニングガスに対して、導入部TB3は希釈ガスを添加させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。
ここで、希釈ガスとしては、たとえば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス、N
2ガスなどが挙げられる。中でも、安価であることから、本発明ではArガスが好適に用いられる。
【0066】
このように構成する(減速部TB1と冷却部TB2と希釈ガスの導入部TB3を備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制されるとともに、活性化エネルギーが抑制された状態で、かつ、その濃度が希釈された状態で、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。
これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図13に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置B3:0.12)。ここで、プラズマ処理装置B3における「0.12」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
【0067】
(実施形態14)
図11は、実施形態14(プラズマ処理装置B4)を示す概略構成図である。
プラズマ処理装置B4は、ガス導入管8Bが減速部(クランク)TB1と冷却部TB2と導入部TB3に加えて、活性化されたクリーニングガスを空間24に導入するガス導入管8の開口部(吐出部8b)が、発生部23の側あるいは減速部TB1の側から見て、広がる形状(テーパー形状)をなしている点のみ、プラズマ処理装置B1と異なっている。他の点は、プラズマ処理装置B1と同一である。
なお、ガス導入管8の開口部(吐出部8b)の近傍に配置された、この広がる形状(テーパー形状)を有する部位のことを、以下では「拡張部TB4」とも呼ぶ。
【0068】
すなわち、プラズマ処理装置B4では、クリーニングガス供給手段KB4(K)が、発生部(ラジカル源23)と吐出部8bとの間に、活性化されたクリーニングガスの流速を抑制する減速部TB1を備える。また、これに加えて、減速部TB1の温度を低温に保つために冷却部TB2を備える。さらに、減速部TB1を通過する活性化されたクリーニングガスに対して、導入部TB3は希釈ガスを添加させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。これらに加えて、拡張部TB4を通して、活性化されたクリーニングガスを空間24へ向けて放出するように進行させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。
なお、
図5における拡張部TB4は、紙面の上下方向に広がる形状を描写しているが、広がる方向はこれに限定されず、紙面の手前方向や奥行き方向に広がる形状を備えていても構わない。
【0069】
このように構成する(減速部TB1と冷却部TB2と希釈ガスの導入部TB3と拡張部TB4とを備える)ことで、活性化されたクリーニングガスは、その流速が抑制されるとともに、活性化エネルギーが抑制された状態で、かつ、その濃度が希釈された状態で、急速に拡散しながなら、電極フランジ4とシャワープレート5との間に設けられた空間24内へ供給される。
これにより、シャワープレート5の上面に対するクリーニングガスの影響が緩和され、ラジカルがシャワープレートの表面(上面)と反応してパーティクルが発生することを更に抑制できる。
図13に示すように、パーティクルの発生数が激減することが確認された(プラズマ処理装置C:1.0→プラズマ処理装置B4:0.025)。ここで、プラズマ処理装置B4における「0.025」とは、従来装置(プラズマ処理装置C)において観測されたパーティクルの発生数を1として規格化された数値である。
【0070】
プラズマ処理装置B4では、拡張部TB4を通して、活性化されたクリーニングガスを空間24へ向けて放出するように進行させることにより、活性化(ラジカル化)のレベル(度合い)を低下させる。具体的には、電極内部に導入する直近の配管を円錐形状(テーパー状)の拡張部TB4とすることにより、活性化されたクリーニングガスが空間24へ流れる方向を均一に電極内部に広げることができる。これにより、電極内部の部材と活性化されたクリーニングガスとの局所的な接触が抑制されるので、電極内部の部材が活性化されたクリーニングガスと反応することで発生するパーティクルを低減させることが可能となる。
なお、
図11における拡張部TB4は、紙面の左右方向に広がる形状を描写しているが、広がる方向はこれに限定されず、紙面の手前方向や奥行き方向に広がる形状を備えていても構わない。
【0071】
本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
たとえば、実施形態1~6において、クリーニングガスのガス供給管8Aを真空チャンバの片側に設けた場合の図面(
図1~
図6)で説明をしたが、両側あるいは側面の複数箇所に設けてもよい。
【0072】
また、本実施形態において、ガス供給管8Aを真空チャンバの長辺側に設けた場合の説明をしたが、短辺側に設けてもよい。
さらに、本実施形態では矩形状基板10への成膜処理を行う矩形状の真空チャンバを例にして説明したが、半導体ウエハなどの円形状基板への成膜処理を行う円形状や多角形状の真空チャンバに本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、シャワープレートに着膜した膜を除去する際に、シャワープレートに入射したクリーニングガスが反応して発生するパーティクルを抑制できるプラズマ処理装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
A1 プラズマ処理装置、G1 距離(ギャップ)、KA1(K) クリーニングガス供給手段、2 真空チャンバ、2a 成膜空間(反応室)、4 電極フランジ、5 シャワープレート(第一電極部)、6 ガス噴出口(第二ガス噴出口)、7 ガス導入管、8 ガス導入管、8A ガス導入管、8a 吐出部、9 RF電源(高周波電源,電圧印加部)、10 基板、10a 処理面、11 底部、15 支持部、16 加熱手段(ヒータ)、17 裏面、18 貫通孔、21 プロセスガス供給部、22 クリーニングガス、23 ラジカル源(発生部)、24 空間、25 支柱、27 排気管、28 真空ポンプ(真空排気系)、30 アース、41 上壁、42 ガス導入口、43 周壁、44 ガス導入口、71 カソード電極、81 絶縁フランジ、101 処理室。