(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/238 20110101AFI20230621BHJP
H03M 13/29 20060101ALI20230621BHJP
H03M 13/19 20060101ALI20230621BHJP
H04H 20/95 20080101ALI20230621BHJP
H04N 21/438 20110101ALI20230621BHJP
【FI】
H04N21/238
H03M13/29
H03M13/19
H04H20/95
H04N21/438
(21)【出願番号】P 2019146027
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】592180339
【氏名又は名称】営電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】横畑 和典
(72)【発明者】
【氏名】筋誡 久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134872(JP,A)
【文献】特開2015-156636(JP,A)
【文献】特開2019-087958(JP,A)
【文献】特開2019-118076(JP,A)
【文献】特開2019-125860(JP,A)
【文献】特開2019-092159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04H 20/00 - 20/95
H03M 13/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPベースの番組データを21GHz帯の衛星放送伝送路経由の変調波信号で伝送する送信装置であって、
前記IPベースの番組データを可変長のIPパケットに格納したIP信号を入力し、当該IP信号のデータ領域を抽出して、当該IPベースの番組データを格納している旨を示す固定パターンの識別信号とデータ長情報が記述された付加ヘッダを当該IPパケットのパケット長単位で挿入しながら連結し、MPEG‐2 TSの固定長のTSパケット列となるよう1バイトのMPEG‐2 TSのTS同期信号を付加しながら187バイト単位で分割することにより188バイトのTSパケット単位とするMPEG‐2 TSのTSパケット列に信号変換するIP‐TS変換手段と、
前記IP‐TS変換部から取得した188バイト単位のMPEG‐2 TSのTSパケット列に対し前記TS同期信号を削除して連結し、所定の符号化変調処理を施した変調シンボルフレームを生成する伝送路符号化手段と、
前記伝送路符号化手段から得られる変調シンボルフレームにおける変調方式に対応する直交変調処理を行い、波形成形を行って変調波信号を生成する直交変調手段と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記伝送路符号化手段は、前記所定の符号化変調処理として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式をベースとした内符号をLDPC符号、外符号をBCH符号とする連接符号により、前記LDPC符号の符号長をLDPC符号化率に関わらず44880ビットとして187バイトの整数倍で構成した主信号を符号化対象とする誤り訂正符号化処理を施す手段を有し、前記LDPC符号化率として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式で利用される全てのLDPC符号化率を利用可能とし、8PSK以下の変調次数の変調方式で前記変調シンボルフレームを生成することを特徴とする、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記IP‐TS変換手段は、前記付加ヘッダを10バイトで構成し、前記付加ヘッダにおける先頭8バイトに前記識別信号を記述し、当該IPパケットのパケット長をデータ長として前記付加ヘッダにおける下位2バイトに記述することを特徴とする、請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の送信装置から伝送された変調波信号を受信する受信装置であって、
受信した当該変調波信号に対し波形成形及び適応等化処理を施した後、直交復調処理を行い、誤り訂正復号処理に用いる伝送フレームを構成する直交復調手段と、
前記直交復調手段から得られる伝送フレームに対して誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正復号後の主信号のデータ187バイトに1バイトのMPEG‐2 TSのTS同期信号を付加した188バイトのTSパケット単位とするMPEG‐2 TSのTSパケット列を生成する伝送路復号手段と、
前記伝送路復号手段から得られるMPEG‐2 TSの各TSパケットから前記TS同期信号を削除してTSパケット列の主信号のデータを連結し、連結後のデータ列について、前記付加ヘッダを参照して当該IPパケットのパケット長単位で信号分割を行ってから前記付加ヘッダを除去することにより前記送信装置から伝送されたIPパケットを抽出し、抽出したIPパケットを用いてIP信号を生成するTS‐IP変換手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送及び地上放送並びに固定通信及び移動通信の技術分野に関するものであり、特に、デジタルデータの送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル伝送方式では、各サービスで利用可能な周波数帯域幅において、より多くの情報が伝送可能なよう、多値変調方式がよく用いられる。周波数利用効率を高めるには、変調信号1シンボル当たりに割り当てるビット数(変調次数)を高めるのが有効であるが、周波数1Hzあたりに伝送可能な情報速度の上限値と信号対雑音比の関係はシャノン限界で制限される。衛星放送伝送路を用いた情報の伝送形態の一例として、衛星デジタル放送が挙げられる。
【0003】
現在利用されている衛星デジタル放送では、誤り訂正符号を用いた受信装置における情報訂正が行われている。パリティビットと呼ばれる冗長信号を送るべき情報に付加することで信号の冗長度(符号化率)を制御し、雑音に対する耐性を上げることが可能である。
【0004】
誤り訂正符号と変調方式は密接に関わっており、信号対雑音比に対する周波数利用効率の理論的な上限値はシャノン限界と呼ばれる。シャノン限界に迫る性能を有する強力な誤り訂正符号の一つとしてLDPC(Low Density Parity Check)符号が1962年にギャラガーによって提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
LDPC符号は、非常に疎な検査行列H(検査行列の要素が0と1からなり、且つ1の数が非常に少ない)により定義される線形符号である。
【0006】
LDPC符号は符号長を大きくし、適切な検査行列を用いることによりシャノン限界に迫る伝送特性が得られる強力な誤り訂正符号であり、次世代の放送サービスである4K・8Kのスーパーハイビジョンの衛星放送の伝送方式を規定するARIB STD‐B44(以下、高度衛星放送方式と呼ぶ。例えば、非特許文献2参照)においてもLDPC符号が採用されている。多値変調とLDPC符号をはじめとする強力な誤り訂正符号を組み合わせることで、より高い周波数利用効率の伝送が可能となってきている。
【0007】
高度衛星放送方式を例にした場合、本方式におけるLDPC符号の符号長は、前方向誤り訂正方式(FEC:Forward Error Correction)フレームで構成され、44880ビットであり、BPSK限界(信号点配置をBPSKとした場合の信号対雑音比に対する周波数利用効率の理論的な上限値)から約1dB以内の性能を有することが示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
また、高度衛星放送方式においては、LDPC符号化率として、41/120(≒1/3)、49/120(≒2/5)、61/120(≒1/2)、73/120(≒3/5)、81/120(≒2/3)、89/120(≒3/4)、93/120(≒7/9)、97/120(≒4/5)、101/120(≒5/6)、105/120(≒7/8)、及び、109/120(≒9/10)の11種類が定められている。
【0009】
ところで、衛星放送で使用される12GHz帯に着目すると、利用可能な周波数はひっ迫しており、4K・8Kのハイビジョンサービスの伝送容量を超える次世代コンテンツの伝送にむけては十分な周波数帯域幅を確保することが困難な状況にある。そのような状況の中で、ITU‐Rで日本に衛星放送用周波数帯(BSS)として分配されている21GHz帯が注目されている。この周波数帯は600MHzの広帯域を持っているため、2K、或いは4K・8Kのスーパーハイビジョンだけでなく、4K・8Kのハイビジョンサービスの伝送容量を超える次世代コンテンツの伝送サービスとして考えられるAR(Augmented Reality)、VR(Virtual Reality)、立体テレビ等の大容量伝送の利用に期待できる。
【0010】
しかし、衛星デジタル放送では降雨による減衰、地上デジタル放送ではフェージングなど、デジタル放送では、誤り訂正符号のみでは信号を復旧できないほど伝送条件が悪化する場合がある。特に、21GHz帯で伝送を行う場合、降雨減衰の影響が12GHz帯のdB値で約3倍発生することが想定される。
【0011】
一方、昨今、放送に係る放送番組を、送信側からIP(Internet Protocol)網を経て受信装置に送信するといった放送と通信を連携したサービスが可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】R. G. Gallager, “Low‐Density Parity‐Check Codes,” in Research Monograph series Cambridge, MIT Press, 1963年12月
【文献】“高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3) 標準規格 ARIB STD‐B44 2.1版”、[online]、平成28年3月25日改定、ARIB、[令和01年7月2日検索]、インタ‐ネット<URL:https://www.arib.or.jp/kikaku/kikaku_hoso/std-b44.html>
【文献】鈴木他, “高度BSデジタル放送用LDPC符号の設計”、映像情報メディア学会誌、一般社団法人映像情報メディア学会、映像情報メディア vol.62、No.12、2008年12月1日、pp.1997‐2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、昨今、現行の衛星・地上放送による2Kサービスや、衛星放送による4K・8Kスーパーハイビジョンに加え、新たに地上放送による4K・8Kスーパーハイビジョンの提供が期待されている。しかしながら、衛星放送で使用される12GHz帯に着目すると、利用可能な周波数はひっ迫しており、4K・8Kサービスを超える次世代コンテンツの伝送にむけては十分な周波数帯域幅を確保することが困難な状況にある。
【0014】
そこで、衛星放送で利用可能な他の帯域として、21GHz帯が挙げられる。21GHz帯は衛星放送用に600MHzの帯域幅が割り当てられており、大容量伝送の実現に向けて有望な伝送帯域である。
【0015】
ただし、21GHz帯は12GHz帯と比較して、降雨減衰による影響が大きいことから、十分な所要C/Nマージンを確保するために、上述のLDPC符号をはじめとする強力な誤り訂正符号の適用や、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)に規定される最大変調次数(32APSK)よりも変調次数を下げるなどの対応が必要となる。
【0016】
また、昨今は放送と通信の融合に伴い、電波の垣根を越えた伝送形態の多様化が進んでおり、特にIPをベースとした伝送手段の共通化が進んでいる。5Gを始めとした次世代通信ネットワークも、衛星放送伝送路との融合が検討されており、今後、IPをベースとした伝送手段の共通化は更に加速することが想定される。
【0017】
このため、放送と通信の融合を考慮した21GHz帯衛星放送の伝送方式が求められ、非特許文献2に開示される高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)をベースに、降雨減衰による影響を考慮した符号化変調方式とし、且つIPをベースとした伝送手段の信号形態との共通化を可能として、伝送性能を高めつつIPと親和性の高い伝送手段が望まれる。
【0018】
従って、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、放送と通信の融合を考慮した21GHz帯衛星放送の伝送方式として、伝送性能を高めつつIPと親和性の高い伝送を可能とする送信装置及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の送信装置は、IPベースの番組データを21GHz帯の衛星放送伝送路経由の変調波信号で伝送する送信装置であって、前記IPベースの番組データを可変長のIPパケットに格納したIP信号を入力し、当該IP信号のデータ領域を抽出して、当該IPベースの番組データを格納している旨を示す固定パターンの識別信号とデータ長情報が記述された付加ヘッダを当該IPパケットのパケット長単位で挿入しながら連結し、MPEG‐2 TSの固定長のTSパケット列となるよう1バイトのMPEG‐2 TSのTS同期信号を付加しながら187バイト単位で分割することにより188バイトのTSパケット単位とするMPEG‐2 TSのTSパケット列に信号変換するIP‐TS変換手段と、前記IP‐TS変換部から取得した188バイト単位のMPEG‐2 TSのTSパケット列に対し前記TS同期信号を削除して連結し、所定の符号化変調処理を施した変調シンボルフレームを生成する伝送路符号化手段と、前記伝送路符号化手段から得られる変調シンボルフレームにおける変調方式に対応する直交変調処理を行い、波形成形を行って変調波信号を生成する直交変調手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の送信装置において、前記伝送路符号化手段は、前記所定の符号化変調処理として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式をベースとした内符号をLDPC符号、外符号をBCH符号とする連接符号により、前記LDPC符号の符号長をLDPC符号化率に関わらず44880ビットとして187バイトの整数倍で構成した主信号を符号化対象とする誤り訂正符号化処理を施す手段を有し、前記LDPC符号化率として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式で利用される全てのLDPC符号化率を利用可能とし、8PSK以下の変調次数の変調方式で前記変調シンボルフレームを生成することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の送信装置において、前記IP‐TS変換手段は、前記付加ヘッダを10バイトで構成し、前記付加ヘッダにおける先頭8バイトに前記識別信号を記述し、当該IPパケットのパケット長をデータ長として前記付加ヘッダにおける下位2バイトに記述することを特徴とする。
【0022】
更に、本発明の受信装置は、本発明の送信装置から伝送された変調波信号を受信する受信装置であって、受信した当該変調波信号に対し波形成形及び適応等化処理を施した後、直交復調処理を行い、誤り訂正復号処理に用いる伝送フレームを構成する直交復調手段と、前記直交復調手段から得られる伝送フレームに対して誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正復号後の主信号のデータ187バイトに1バイトのMPEG‐2 TSのTS同期信号を付加した188バイトのTSパケット単位とするMPEG‐2 TSのTSパケット列を生成する伝送路復号手段と、前記伝送路復号手段から得られるMPEG‐2 TSの各TSパケットから前記TS同期信号を削除してTSパケット列の主信号のデータを連結し、連結後のデータ列について、前記付加ヘッダを参照して当該IPパケットのパケット長単位で信号分割を行ってから前記付加ヘッダを除去することにより前記送信装置から伝送されたIPパケットを抽出し、抽出したIPパケットを用いてIP信号を生成するTS‐IP変換手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放送と通信の融合を考慮した21GHz帯衛星放送の伝送方式を構成することができ、伝送性能を高めつつIPと親和性の高い伝送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による一実施例の送信装置及び受信装置を備える伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明による一実施例の送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明による一実施例の送信装置におけるIP‐TS変換部の信号変換処理を示す図である。
【
図4】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の送信装置における伝送路符号化部により構成する伝送フレーム及びLDPC符号化率ごとの伝送フレーム構成ビットを示す図である。
【
図5】本発明による一実施例の送信装置における伝送路符号化部により構成する変調シンボルフレームを示す図である。
【
図6】本発明による一実施例の受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明による一実施例の受信装置におけるTS‐IP変換部の信号変換処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(伝送システム)
まず、本発明による一実施例の送信装置2及び受信装置5を備える伝送システム1の構成例について説明する。
【0026】
図1は、本発明による一実施例の送信装置2及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示す伝送システム1において、信号源装置3は、IPベースの番組データを蓄積しており、IPネットワーク6経由で或る番組データのIP信号を送信装置2に出力する。送信装置2は、放送と通信の融合を考慮して、信号源装置3からIPネットワーク6経由で当該番組データのIP信号を入力し、この番組データのIP信号を識別可能に信号変換したMPEG‐2 TSを生成する。そして、送信装置2は、このMPEG‐2 TSから、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)をベースに、降雨減衰による影響を考慮した符号化変調方式の変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して21GHz帯衛星放送用の放送衛星4の衛星放送伝送路経由で受信装置5に向けて伝送する。一方、受信装置5は、受信アンテナ5aを介して当該変調波信号を受信して復調・復号し、MPEG‐2 TSを復元してIP信号を抽出し外部に出力する。
【0027】
尚、本発明の趣旨とは直接的に関係するものではないが、放送と通信の融合を考慮して、送信装置2及び受信装置5の双方は、
図1に示す伝送形態に加えて、送信装置2及び受信装置5間はIPネットワークで接続された形態とし、IP信号を双方向通信する機能を有する構成としてもよい。例えば、送信装置2は、
図1に示す伝送形態に加えて、上記の信号源装置3からIPネットワーク6経由で入力した番組データのIP信号をIPネットワーク経由で受信装置5に向けて送信する機能を有し、受信装置5はIPネットワーク経由で当該IP信号を受信する機能を有していてもよい。
【0028】
以下、図面を参照して、送信装置2及び受信装置5の具体的な構成及び動作について、順に説明する。
【0029】
(送信装置)
図2は、本発明による一実施例の送信装置2の概略構成を示すブロック図である。送信装置2は、番組データのIP信号を入力源とし、IP‐TS変換部21、伝送路符号化部22、及び直交変調部23を備える。
【0030】
IP‐TS変換部21は、信号源装置3からIPネットワーク6経由でIPベースの番組データを可変長のIPパケットに格納したIP信号を入力し、当該IP信号のデータ領域を抽出して、当該IPベースの番組データを格納している旨を示す固定パターンの識別信号とデータ長情報が記述された付加ヘッダを当該IPパケットのパケット長単位で挿入しながら連結し、MPEG‐2 TSの固定長(188バイト)のTSパケット列となるよう1バイトのMPEG‐2 TSのTS同期信号を付加しながら187バイト単位で分割することにより188バイトのTSパケット単位とするMPEG‐2 TSのTSパケット列に信号変換して、伝送路符号化部22に出力する。
【0031】
図3には、IP‐TS変換部21における信号変換処理として、IP信号からMPEG‐2 TSのTSパケット列へと信号変換する処理方法を示している。
図3に示すように、IP‐TS変換部21は、入力されるIP信号(図示上段)に対し、手順1として、当該IP信号のデータ領域のみを抽出して付加ヘッダを挿入し(図示中段)、手順2として、MPEG‐2 TSのTS同期信号(1バイト;0x47)を付加し、188バイトで固定長のMPEG‐2 TSのTSパケット化を行う(図示下段)。
【0032】
まず、IP‐TS変換部21に入力されるIP信号は、主にプリアンブル、イーサネット(登録商標)フレームヘッダ(以下、「Eフレームヘッダ」とも称する。)、データ、FCS(Frame Check Sequence)から構成される。プリアンブル、Eフレームヘッダ、及びFCSは、信号源装置3からIPネットワーク6経由でIP信号を受信するための送信装置2における通信処理に用いられる。そして、衛星放送伝送路経由で送るべき映像等の番組データは、
図3に示す可変長の「データ」として構成されるIPパケット内(正確には、IPパケットヘッダに付随する可変長のペイロード領域)に含まれる。
【0033】
そこで、手順1において、付加ヘッダは10バイトで構成され、IP‐TS変換部21は、付加ヘッダにおける先頭8バイトには、IPベースの番組データを格納している旨を示す固定パターンの識別信号を記述し、当該IPパケットのパケット長をデータ長として判別した上で、そのデータ長を付加ヘッダにおける下位2バイトにデータ長情報(16ビット)として記述する。つまり、付加ヘッダにおける9バイト目にはデータ長情報の上位8ビットを、10バイト目にはデータ長情報の下位8ビットを記述する。尚、この識別信号は、受信装置5における選択チャンネル(21GHz帯の放送チャンネル)に対して固有の固定パターンとし、送信装置2及び受信装置5間で既知とする。
【0034】
例えば、本実施例の付加ヘッダは、
1バイト目:0x55、
2バイト目:0xC4、
3バイト目:0x50、
4バイト目:0xF4、
5バイト目:0x6F、
6バイト目:0xD3、
7バイト目:0x44、
8バイト目:0xC9、
9バイト目:データ長情報(上位8ビット)、及び、
10バイト目:データ長情報(下位8ビット)、
から構成される。
【0035】
上記のように10バイトの付加ヘッダを定義することで、受信装置5側ではIPベースの番組データを格納していることを選択チャンネル(21GHz帯の放送チャンネル)単位で識別することができ、且つ送信装置2側では伝送する番組データのIP信号(可変長IPパケット)のデータ長を判別しつつ、無駄のないTSパケット化を行うことが可能となり、伝送効率が向上する。尚、付加ヘッダは先頭8バイトが固定パターンであることから、仮に付加ヘッダを分割する場合でも受信装置5側で容易にTSパケット列を連結することができ、且つIPベースの番組データを識別可能となる。このように、手順1においては、可変長パケットのデータ長情報を含む付加ヘッダをIPパケットのパケット長単位で挿入することで、効率の良いセグメント化が実現される。
【0036】
続いて、手順2において、IP‐TS変換部21は、手順1により得られた各種情報(付加ヘッダ、及びデータ)に対して、MPEG‐2 TSのTS同期信号(1バイト)を付加することで、MPEG‐2 TSと同一の信号形式を構成する。
【0037】
尚、
図3に示すように、手順2では、MPEG‐2 TSのTS同期信号付加のケースとして、
・TS同期信号1バイト+付加ヘッダ10バイト+データ177バイト(ケース1)、
・TS同期信号1バイト+データ187バイト(ケース2)、
・TS同期信号1バイト+データ177バイト+付加ヘッダ10バイト(ケース3)、
の事例が示されている。また、上記事例以外にも、付加ヘッダが複数分割される事例も考えられるが、付加ヘッダは先頭8バイトが固定パターンを有することから、容易に受信装置5側で連結することが可能である。
【0038】
本形式を有することで、例えば、
図2におけるIP‐TS変換部21と伝送路符号化部22との間に、TS同期信号を利用した既存のMPEG‐2‐TS用インターフェース回路を用いることが可能となる。
【0039】
伝送路符号化部22は、IP‐TS変換部21から取得した188バイト単位のMPEG‐2 TSのTSパケット列に対し、先頭1バイトのTS同期信号を削除して情報効率を高めた上で連結し、連結したTSパケット列の情報を高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)をベースとした伝送フレームに誤り訂正符号化処理のLDPC符号化率に応じたビット列単位で格納し、該ビット列に対し誤り訂正符号化処理(BCH符号及びLDPC符号)を施した伝送フレームの情報を生成し、更に変調シンボルマッピング処理を施した変調シンボルフレームを生成して直交変調部23に出力する。
【0040】
図4(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の送信装置2における伝送路符号化部22により構成する伝送フレーム及びLDPC符号化率ごとの伝送フレーム構成ビットを示す図である。
図4(a)に示すように、伝送路符号化部22は、誤り訂正符号化処理として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)と同様に、内符号がLDPC符号、外符号がBCH符号の連接符号構成とし、LDPC符号の符号長は44880ビットとする。
【0041】
つまり、伝送路符号化部22は、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)と同様のBCH符号の生成多項式を用いて、フレームヘッダ及び主信号のビット列に対して外符号のBCH符号化処理を行うため、1伝送フレームにおいて任意の12ビットを訂正することが可能である。そして、伝送路符号化部22は、BCH符号化後のビット列(フレームヘッダ、主信号、BCH符号パリティ、スタッフビット)に対して、17次エネルギー拡散を行うことにより変調スペクトラムの平坦化を行ってから、符号化率に応じたLDPC符号化処理によりLDPC符号パリティを付加することで、1伝送フレームを構成する。尚、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)では、BCH符号化後のビット列(フレームヘッダ、主信号、BCH符号パリティ、スタッフビット)に対して25次エネルギー拡散処理を行うように規定されているが、本実施形態では、後述するように8PSK以下の変調次数の変調方式としていることから、17次エネルギー拡散処理によって十分に平坦化され、処理負担を軽減させている。
【0042】
従って、
図4(a)に示すように、伝送フレームは、フレームヘッダ(176ビット)、主信号、BCH符号パリティ(192ビット)、スタッフビット(6ビット)、LDPC符号パリティから構成される。そして、
図4(b)に示すように、伝送路符号化部22は、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)で利用可能な全てのLDPC符号化率を利用可能とし、1伝送フレームの符号長は常に44880ビットとする。LDPC符号化率の選択設定(外部指示)により、誤り訂正符号の強度を時事変更可能とし、送信装置2及び受信装置5間の伝送品質を容易に保つことが可能となる。尚、LDPC符号化率及び変調方式の設定情報は、主信号の伝送に係る変調シンボルフレームに時分割多重して伝送されるTMCC信号(伝送制御信号)に記述される。尚、TMCC信号(伝送制御信号)は、後述する11次エネルギー拡散処理した信号に多重してπ/2シフトBPSKにより伝送することが可能である。
【0043】
また、
図4(b)に示すように、伝送フレームにおける主信号は、LDPC符号のLDPC符号化率に応じたビット列単位とするが、全て187バイトの整数倍で構成される。このため、伝送路符号化部22は、IP‐TS変換部21と整合の取れた過不足の無い伝送フレームを構成することが可能となる。
【0044】
続いて、伝送路符号化部22は、誤り訂正符号化処理を行った伝送フレームの情報に対して、変調シンボルマッピング処理を施した変調シンボルフレームを生成する。ここで、本発明に係る送信装置2では、伝送路符号化部22で変調シンボルフレームを構成するために用いる変調方式として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)に規定される最大変調次数(32APSK)よりも変調次数を下げた8PSK以下の変調次数の変調方式とし、より具体的には、QPSK及び8PSKの2種類とする。これにより、21GHz帯衛星放送として、降雨減衰による影響が大きい場合でも、上記のLDPC符号及びBCH符号による誤り訂正符号化処理との組み合わせで、十分な所要C/Nマージンを確保することができる。
【0045】
図5は、本発明による一実施例の送信装置2における伝送路符号化部22により構成する変調シンボルフレームを示す図である。
図5に示す変調シンボルフレームは、先頭26シンボルがユニークワード(18D2E82(16進表記))のπ/2シフトBPSKで構成され、続いて、187シンボルの主信号の変調シンボル、4シンボルの位相基準用π/2シフトBPSKの繰り返しから構成され、QPSKの場合120回、8PSKの場合80回繰り返して、
図4(a)に示す伝送フレームの情報を変調する。また、位相基準用π/2シフトBPSKの入力源として、11次エネルギー拡散回路を適用する。尚、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)では、位相基準用π/2シフトBPSKの入力源として、15次エネルギー拡散処理を行うように規定されているが、本実施形態では、8PSK以下の変調次数の変調方式の位相基準としているため、11次エネルギー拡散処理によって十分に平坦化されることから、処理負担を軽減させるようにしている。
【0046】
このように、伝送路符号化部22により構成する変調シンボルフレームは、変調方式としてQPSK及び8PSKの2種類としており、伝送フレームと変調シンボルフレームとは、主信号の変調方式がQPSKと8PSKのいずれであっても1対1の関係性を維持することが可能となる。尚、伝送路符号化部22は、主信号の変調方式を8PSKとする場合、LDPC符号の復号性能向上を目的として、高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB‐S3)と同様に、直交変調部23による変調シンボルマッピングの直前に、主信号にのみビットインターリーブを適用して直交変調部23に出力する。
【0047】
直交変調部23は、伝送路符号化部22から得られる変調シンボルフレームにおける変調方式に対応する直交変調処理を行い、ロールオフフィルタによる波形成形を行って変調波信号を生成し出力する。
【0048】
(受信装置)
図6は、本発明による一実施例の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。受信装置5は、
図1における受信アンテナ5aから得られる変調波信号を入力源とし、直交復調部51、伝送路復号部52、及びTS‐IP変換部53を備える。
【0049】
直交復調部51は、受信した変調波信号に対し、送信装置2と同一のロールオフフィルタによるロールオフフィルタによる波形成形、及び衛星放送伝送路で生じる波形歪を補正するための適応等化処理を施した後、事前に復調・復号済みのTMCC信号(伝送制御信号)を基に、送信装置2と同一の変調方式により直交復調処理を行い、直交復調後の信号に対しデマッピングを行うことで
図4(a)に示す伝送フレームを構成し、伝送路復号部52に出力する。
【0050】
直交復調部51は、その直交復調処理の過程で、エネルギー逆拡散処理後の位相基準用π/2シフトBPSKを利用した位相同期や、
図5に示す26シンボルから構成されるユニークワードの検出を行うことで、
図5における主信号を取得することが可能となる。QPSKの場合、ユニークワードから連なる主信号187シンボルを120回、8PSKの場合、主信号187シンボルを80回連結し、デマッピングを行うことで、
図4(a)に示す44880ビットの1伝送フレームを再構成することが可能となる。また、8PSKの場合、送信装置2においてビットインターリーブを行う都合上、受信装置5においても対応するデインターリーブを行うことで、ビットの整合性を保つようにする。尚、デマッピングにおいては、伝送路復号部52におけるLDPC復号処理のために、通常、情報ビットの0または1の確からしさを示す尤度を基に確率値を高める尤度判定処理を行って伝送フレームを再構成することから、この尤度判定処理には、受信信号のC/Nに応じたものとすることが望ましい。
【0051】
続いて、伝送路復号部52は、直交復調部51から得られる伝送フレームに対して、送信装置2による誤り訂正符号化処理に対応する誤り訂正復号処理(LDPC復号、エネルギー逆拡散及びBCH復号)を行い、誤り訂正復号後の主信号のデータ187バイトに1バイトのMPEG‐2 TSのTS同期信号を付加した188バイトのTSパケット単位とするMPEG‐2 TSのTSパケット列を生成し、TS‐IP変換部53に出力する。
【0052】
受信装置5側においても、伝送路復号部52とTS‐IP変換部53との間に、TS同期信号を利用した既存のMPEG‐2‐TS用インターフェース回路を用いる。
【0053】
TS‐IP変換部53は、伝送路復号部52から得られるMPEG‐2 TSの各TSパケットから先頭1バイトのTS同期信号を削除してTSパケット列の主信号のデータを連結し、この連結後のデータ列について、付加ヘッダを参照して当該IPパケットのパケット長単位で信号分割を行ってから付加ヘッダを除去することにより送信装置2から伝送されたIPパケットを抽出し、必要に応じて各IPパケットにローカルエリアネットワーク伝送用にプリアンブル、Eフレームヘッダ、及びFCSを付加して、抽出したIPパケットを用いてIP信号を生成し外部に出力する。
【0054】
図7には、TS‐IP変換部53における信号変換処理として、MPEG‐2 TSのTSパケット列からIP信号へと信号変換する処理方法を示している。
図7に示すように、TS‐IP変換部53は、入力されるMPEG‐2 TSのTSパケット列(図示上段)に対し、先頭1バイトのTS同期信号を削除してTSパケット列を連結し、このTS連結後、付加ヘッダを参照して信号分割を行ってから付加ヘッダを除去する(図示中段)。上述の通り、付加ヘッダには9バイト目と10バイト目にデータ長情報が記述されているため、この情報を基に、付加ヘッダを参照して信号分割を行うことができる。続いて、TS‐IP変換部53は、IPパケットを抽出し、必要に応じてローカルエリアネットワーク伝送用にプリアンブル、Eフレームヘッダ、及びFCSを付加して、IP信号を生成する(図示下段)。
【0055】
以上の処理により、受信装置5は、送信装置2から衛星放送伝送路経由で伝送された可変長のIP信号を効率よく取得することが可能となる。
【0056】
従って、本発明に係る送信装置2及び受信装置5は、放送と通信の融合を考慮した21GHz帯衛星放送の伝送方式として、伝送性能を高めつつIPと親和性の高い伝送が可能となる。
【0057】
上述した実施例に関して、送信装置2及び受信装置5の各々としてそれぞれ機能するコンピュータを構成させ、送信装置2及び受信装置5の各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
【0058】
上述の実施例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明による送信装置及び受信装置は、21GHz帯で生じうる降雨減衰に対しても強力な誤り訂正機能を有しつつ、付加ヘッダに基づくIP信号の変換処理を有することで、送信装置及び受信装置間の同期を維持しつつ、IP信号との親和性を高めることが可能となるので、21GHz帯衛星放送の用途に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 伝送システム
2 送信装置
2a 送信アンテナ
3 信号源装置
4 放送衛星
5 受信装置
5a 受信アンテナ
6 IPネットワーク
21 IP‐TS変換部
22 伝送路符号化部
23 直交変調部
51 直交復調部
52 伝送路復号部
53 TS‐IP変換部