(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】立毛人工皮革及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20230621BHJP
D06C 23/02 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
D06N3/00
D06C23/02 B
(21)【出願番号】P 2019193940
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 明久
(72)【発明者】
【氏名】割田 真人
(72)【発明者】
【氏名】辻本 悠亮
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-199873(JP,A)
【文献】特開2013-067917(JP,A)
【文献】特開昭53-056301(JP,A)
【文献】特開平09-119074(JP,A)
【文献】特開2018-178271(JP,A)
【文献】特開2010-222770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
D06N1/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び前記繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を含み、
少なくとも一面に、立毛した前記極細繊維を含む立毛面を有し、
前記立毛面において、前記極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に有し、
前記膜化領域の平均円換算径が0.3~8mmであり、その平均数密度が1~100個/cm
2であることを特徴とする立毛人工皮革。
【請求項2】
前記膜化領域のISO 25178に準じて測定された算術平均高さSaが0~20μmである請求項1に記載の立毛人工皮革。
【請求項3】
前記膜化領域間の平均最短距離が0.01mm以上である請求項1または2に記載の立毛人工皮革。
【請求項4】
請求項1に記載の立毛人工皮革の製造方法であって、
前記0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び前記繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を準備する工程と、
前記繊維基材の少なくとも一面をバフィングすることにより、一部の前記極細繊維を形成する樹脂を膜化させながら、その他の前記極細繊維を立毛させることにより、複数の前記膜化領域を含む立毛面を形成する工程と、を含む立毛人工皮革の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料,靴,家具等の表面素材や、車両や航空機等の内装材のような用途に用いられる立毛人工皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヌバックやスエードに似せた立毛人工皮革が知られている。立毛人工皮革においては、パール調のようなキラキラした光沢を示す立毛面を有する人工皮革が提案されている。
【0003】
下記特許文献1は、繊維布帛とその内部に含浸された弾性重合体からなる基体の表面に、0.5デニール以下の極細繊維からなる立毛層が形成されており、かつ染色されているスエード調人工皮革において、該立毛層の表面にパール顔料がバインダー樹脂によりスポット状に固定されており、かつ各スポットとそれと隣り合うスポットとの距離の最短距離が50~500μmであるスエード調人工皮革を開示する。特許文献1は、このようなスエード調人工皮革は、立毛面が極細繊維の立毛に覆われた、パール調の光沢感を示すことを開示する。
【0004】
また、下記特許文献2は、異形断面繊維を含有する繊維層を含む不織布と該不織布に含浸された高分子弾性体から構成され、下記(1)~(5):(1)異形断面繊維を含有する繊維層が、重量比率で、異形断面繊維10~50%及び非異形断面繊維90~50%を含有する;(2)異形断面繊維の異形度が1.1~5.0であり、非異形断面繊維の異形度が1.1未満である;(3)異形断面繊維の単繊維繊度が0.6~5.5dtexである;(4)異形断面繊維の酸化チタン含有量が重量比率で0.3%以下である;(5)非異形断面繊維の酸化チタン含有量が重量比率で0.5~3.0%である;の条件を満たす人工皮革を開示する。特許文献2は、このような人工皮革は、局所的に輝きを有し、優美な表面品位を有することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-168764号公報
【文献】特開2018-178271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたように、パール顔料を立毛面に付与する方法の場合、パール顔料を付与することが煩雑であるために生産性が低いという問題があった。また、特許文献2に開示されたように、異形断面繊維と非異形断面繊維とを混合することにより、局所的に輝きを有し優美な表面品位を有する立毛面を形成する方法の場合には、繊度の異なる繊維を混合する必要があるために工程が煩雑であり、また、ムラが発生しやすいために、生産性が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、容易な工程で形成される、キラキラした光沢を発する立毛面を有する立毛人工皮革及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を含み、少なくとも一面に、立毛した極細繊維を含む立毛面を有し、立毛面において、極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に有し、膜化領域の平均円換算径が0.3~5mmであり、その数密度が1~100個/cm2である立毛人工皮革である。このような立毛皮革によれば、立毛面を形成するためのバフィング処理により、立毛面の極細繊維を不連続に熱溶融させて膜化させた光を反射する膜化領域を形成するだけで、キラキラした光沢(以下、パール感とも称する)を発現させることができる。
【0009】
また、立毛人工皮革は、膜化領域のISO 25178に準じて測定された算術平均高さSaが0~20μmであることが、膜化領域の平滑性が適度であるためにキラキラした光沢を得ることと生産性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0010】
また、立毛人工皮革は、膜化領域間の平均最短距離が0.01mm以上であることが、均質なキラキラした光沢が得られやすい点から好ましい。
【0011】
また、本発明の他の一局面は、上記立毛人工皮革の製造方法であって、0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を準備する工程と、繊維基材の少なくとも一面をバフィングすることにより、一部の極細繊維を形成する樹脂を膜化させながら、その他の極細繊維を立毛させることにより、複数の膜化領域を含む立毛面を形成する工程と、を含む立毛人工皮革の製造方法である。このような製造方法によれば、立毛処理と同時にキラキラした光沢を発する膜化領域を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易な工程で、キラキラした光沢を発する立毛面を有する立毛人工皮革を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の立毛人工皮革10の立毛面の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1の立毛人工皮革の立毛面をマイクロスコープで12倍で観察したときの写真の一例である。
【
図3】
図3は、バフィング処理工程の工程模式図である。
【
図4】
図4は、比較例1の立毛人工皮革の立毛面をマイクロスコープで12倍で観察したときの写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る立毛人工皮革の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の立毛人工皮革10の立毛面の模式図であり、
図2は後述する実施例1で得られた立毛人工皮革の立毛面をSEMで観察したときの写真の一例である。
図1中、1は立毛面の極細繊維が立毛された立毛繊維であり、2は、立毛面の極細繊維を形成する樹脂が膜化されてなる複数の膜化領域である。
【0016】
本実施形態の立毛人工皮革は、例えば、次のようにして得られる。はじめに、0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を準備する。そして、繊維基材の少なくとも一面をバフィングすることにより、一部の極細繊維を形成する樹脂を熱融着させて膜化させながら、その他の極細繊維を立毛させることにより、複数の膜化領域を不連続に含む立毛面を形成する。このとき、立毛面において、膜化領域の平均円換算径が0.3~8mmであり、その数密度が1~100個/cm2になるように膜化領域の大きさや数密度を調整する。
【0017】
立毛人工皮革は、膜化領域の平均円換算径が0.3~8mmであり、0.5~3mmであることが好ましい。膜化領域の平均円換算径が0.3mm未満の場合には、パール顔料が発するようなキラキラした光沢が得られにくくなる。また膜化領域の平均円換算径が8mmを超える場合には、触感が低下しやすくなる。なお、平均円換算径とは、1つの膜化領域の面積を同等の面積を有する円の直径に換算したときの径の平均を意味する。
【0018】
また、立毛人工皮革は、膜化領域の平均数密度が1~100個/cm2である。膜化領域の数密度が1個/cm2未満の場合には、キラキラした光沢を視認しにくくなる。また膜化領域の数密度が100個/cm2を超える場合には、均一な光沢感を感じさせにくくなる。
【0019】
また、立毛人工皮革は、膜化領域間の平均最短距離が0.01mm以上、さらには、0.1~100mm、とくには0.3~8mmであることが好ましい。膜化領域間の平均最短距離が短すぎる場合には、均一な光沢感が得られにくくなる傾向がある。なお、膜化領域間の平均最短距離とは、隣接する2つの膜化領域を隔てる輪郭間の最も短い部分の距離の平均を意味する。
【0020】
また、立毛人工皮革は、膜化領域の合計面積が、立毛面の全面に対して、1~50%、さらには、5~40%、とくには10~30%の面積を占めることが好ましい。膜化領域の合計面積の割合が低すぎる場合には優美な光沢感のある輝きが得られにくくなる傾向がある。また、立毛面の合計面積の割合が高すぎる場合には外観や触感が低下しやすくなる傾向がある。
【0021】
以上説明した、立毛人工皮革の立毛面の膜化領域の平均円換算径,平均数密度,膜化領域間の平均最短距離は、次のようにして特定される。立毛人工皮革の立毛面の立毛繊維をリントブラシで逆目に揃え、その立毛面をマイクロスコープで倍率12倍で観察した拡大写真を得る。そして、拡大写真に複数の膜化領域と立毛した極細繊維を有する立毛領域との境界線(膜化領域の輪郭)を引く。そして、境界線に沿って立毛領域と膜化領域とを切り離し、各膜化領域の写真片の重量を測定し、各膜化領域ごとの重量割合を算出し、各領域の面積に換算する。そして、各膜化領域の面積と数から平均円換算径を算出する。また、拡大写真から選ばれた任意の膜化領域の10点(10より少ない場合は全数)の境界線間の最短距離をノギスで測定し、その平均値から膜化領域間の平均最短距離を算出できる。各評価は、評価対象である立毛人工皮革から万遍なく選択した、1×1cmのサンプルを5枚用意し、各サンプルにおいて、任意の場所2カ所を撮影し、計10カ所の平均値を算出して特定される。
【0022】
立毛人工皮革は、例えば、0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を準備する工程と、繊維基材の少なくとも一面を選択された条件でバフィングすることにより、一部の極細繊維を形成する樹脂を膜化させながら、その他の極細繊維を立毛させることにより、複数の膜化領域を含む立毛面を形成する工程において、バフィングする際に、膜化領域の平均円換算径が0.3~8mmであり、その平均数密度が1~100個/cm2になるように調整することにより、製造される。以下、立毛人工皮革の具体的な製造方法の一例を詳しく説明する。
【0023】
本実施形態の立毛人工皮革の製造方法においては、はじめに、0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を製造する。不織布としては、バフィング処理により、熱融着しやすい極細繊維を含む繊維絡合体を用いることが好ましい。
【0024】
また、極細繊維の繊維絡合体としては、極細繊維の不織布,織物,編物,または、これらを組み合わせたものが挙げられる。本実施形態では、複数本の極細繊維が集束してなる極細繊維の繊維束の絡合体である極細繊維の不織布を含む立毛人工皮革を製造する方法について、代表例として詳しく説明する。
【0025】
極細繊維の不織布を含む立毛人工皮革の製造は、例えば、次のような工程を含む。(1)溶融紡糸により海島型複合繊維等の極細繊維発生型繊維からなるウェブを製造するウェブ製造工程、(2)得られたウェブを複数層重ねて絡合させることにより絡合ウェブを形成するウェブ絡合工程、(3)絡合ウェブを湿熱収縮させる熱収縮処理工程、(4)絡合ウェブ中の極細繊維発生型繊維を極細単繊維化する極細繊維形成工程、(5)絡合ウェブまたは極細繊維形成後の繊維絡合体にポリウレタン等の高分子弾性体を含浸付与させる高分子弾性体含浸付与工程、(6)形成された繊維基材の立毛面を形成する面にバフィング処理を施すバフィング処理工程、(7)染色工程。
【0026】
なお、本実施形態においては、極細繊維発生型繊維として海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。なお、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維等が挙げられる。
【0027】
(1)ウェブ製造工程
本工程においては、はじめに、溶融紡糸により海島型複合繊維からなるウェブを製造する。海島型複合繊維は、後の適当な段階で海成分を抽出または分解させて除去することにより、島成分からなる繊維束状の極細繊維を形成させる。
【0028】
ウェブの製造方法としては、いわゆるスパンボンド法を用いて、海島型複合繊維を溶融紡糸法を用いて紡糸し、これを切断せずにネット上に捕集して長繊維のウェブを形成する方法や、任意の繊維長(例えば18~110mm)にカットしてステープル化した短繊維を捕集して短繊維のウェブを形成する方法が挙げられる。以下、長繊維のウェブを製造する場合について、代表例として詳しく説明する。
【0029】
海島型複合繊維の島成分を形成し、極細繊維を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,芳香族ポリアミド,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;オレフィン樹脂等の繊維形成能を有する合成樹脂から形成された繊維が挙げられる。これらの中では、PET、とくには、変性処理により融点(軟化温度)が低下された変性PETが、極細繊維を形成する熱可塑性樹脂を膜化させた膜化領域を形成しやすい点から好ましい。変性PETとしては、イソフタル酸,フタル酸,5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の非対称型芳香族カルボン酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を共重合成分として所定割合で含有する変性PETが好ましい。さらに具体的には、モノマー成分としてイソフタル酸単位を2~12モル%含有する変性PETがとくに好ましい。
【0030】
なお、紡糸後の変性PETの場合、例えば90~130℃付近に、結晶ドメインの融点ピークを有する。そのために、融点ピークのピークトップ付近の温度にまで加熱することにより、変性PETは軟化する。後述するバフィング処理においては、サンドペーパと極細繊維との摩擦による摩擦熱により、立毛面に融点ピーク付近まで加熱される領域を形成させることにより、極細繊維を形成する熱可塑性樹脂を膜化させた膜化領域が形成されやすくなる。なお、結晶ドメインの融点(軟化温度)は、示唆走査熱量計(DSC)により測定され、アルミパンに極細繊維10mgを密閉して収容し、5℃から250℃まで10℃/分で昇温させたときに測定された吸熱ピークのピークトップを融点ピークとした。
【0031】
一方、海島型複合繊維の海成分を形成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,エチレンプロピレン共重合体,エチレン酢酸ビニル共重合体,スチレンエチレン共重合体,スチレンアクリル共重合体、などが挙げられる。
【0032】
海島型複合繊維の紡糸及びウェブの形成には、好ましくはスパンボンド法が用いられる。具体的には、多数のノズル孔が、所定のパターンで配置された複合紡糸用口金を用いて、海島型複合繊維を個々のノズル孔からコンベヤベルト状の移動式のネット上に連続的に吐出させ、高速気流を用いて冷却しながら堆積させる。このような方法により海島型複合繊維のウェブが形成される。
【0033】
(2)ウェブ絡合工程
ウェブを4~100層程度重ねて絡合させることにより、海島型複合繊維の絡合ウェブを形成する。絡合ウェブは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いてウェブに絡合処理を行うことにより形成される。例えば、ニードルパンチによる絡合処理の場合、はじめに、ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ウェブに絡合処理を行うことにより、繊維密度が高く、繊維の抜けを起こしにくい絡合ウェブが得られる。
【0034】
(3)熱収縮処理工程
次に、絡合ウェブを熱収縮させることにより、絡合ウェブの繊維密度および絡合度合を高めてもよい。熱収縮処理の具体例としては、例えば、絡合ウェブを水蒸気に連続的に接触させる方法や、絡合ウェブに水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波により絡合ウェブに付与した水を加熱する方法等が挙げられる。
【0035】
(4)極細繊維形成工程
絡合ウェブ中の海島型複合繊維は、海成分を溶解除去または分解除去させることにより、繊維束状の極細繊維に変換される。例えば、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂を海成分に用いた海島型複合繊維の場合、熱水加熱処理することにより海成分であるポリビニルアルコール系樹脂が溶解除去される。
【0036】
このようにして形成される極細繊維は、0.5dtex以下の繊度を有し、好ましくは0.01~0.5dtex、さらに好ましくは0.05~0.3dtexの繊度を有する。極細繊維の繊度が0.5dtexを超える場合には後述するバフィングにおいて極細繊維を形成する樹脂が膜化しにくくなる。
【0037】
(5)高分子弾性体含浸付与工程
得られる繊維絡合体の形態安定性や充実感を高める目的で、極細繊維化処理を行う前の絡合ウェブにまたは極細繊維化処理を行った後の繊維絡合体に、高分子弾性体を含浸付与する。高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン,アクリル系弾性体,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系弾性体,ポリエステルエラストマー等のポリエステル系弾性体,ポリスチレン系弾性体,ポリオレフィン系弾性体等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが柔軟性と充実感に優れる点からとくに好ましい。
【0038】
高分子弾性体の含有割合は、形成される立毛人工皮革において、5~40質量%、さらには、10~30質量%になるように含有させることが好ましい。高分子弾性体の含有割合が低すぎる場合には形態安定性や充実感を充分に付与することができなくなる傾向がある。また、高分子弾性体の含有割合が高すぎる場合にはゴムライクな硬い風合いになり、好ましくない。
【0039】
絡合ウェブに高分子弾性体を含浸付与する方法としては、高分子弾性体のエマルジョンや溶液を絡合ウェブに含浸した後、高分子弾性体を凝固させる方法が挙げられる。例えばポリウレタンの場合、ポリウレタンのエマルジョンまたはポリウレタンのDMF等を含む有機溶剤溶液、で満たされた浴中に絡合ウェブを浸した後、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行う。そして、ポリウレタンのエマルジョンを乾燥凝固させたり、ポリウレタンの有機溶剤溶液を湿式凝固させたりすることにより、絡合ウェブに高分子弾性体を含浸付与する。
【0040】
以上のような工程により0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体である不織布及び高分子弾性体を含む繊維基材が得られる。
【0041】
(6)バフィング処理工程
このようにして得られた繊維基材は必要に応じて、複数枚にスライスされたり、裏面を研削されて厚さ調整されたりした後、繊維基材の立毛面を形成する面にバフィング処理が施される。
【0042】
バフィング処理工程では、繊維基材の立毛面を形成する面に、表面がサンドペーパで覆われている回転するバフローラを接触させて研削処理を施す。このようなバフィング処理により、繊維基材の立毛面の極細繊維を形成する熱可塑性樹脂を部分的に膜化させながら、その他の極細繊維を立毛させることにより、複数の膜化領域を含む立毛面を形成させることができる。
【0043】
図3は、バフィング処理装置20で繊維基材10の立毛面を形成する面Nをバフィングするバフィング処理工程の工程模式図の一例を示す。
図3に示すように、バフィング処理装置20は、繊維基材10を送り出す送出ローラ11、繊維基材10を巻き取る巻取ローラ12、圧接ローラ13、バフローラ14、駆動ローラ15、及び研磨ベルト16と、を有する。繊維基材10は、巻取ローラ12に向かって進行方向Aに搬送される。
【0044】
研磨ベルト16は表面がサンドペーパである環状ベルトであり、バフローラ14と駆動ローラ15とに掛け渡されている。駆動ローラ15には図略のシャフトを回転させる回転駆動モータが接続されており、シャフトの回転によって駆動ローラ15を回転させることにより、バフローラ14と駆動ローラ15とに掛け渡された研磨ベルト16を回転させる。
【0045】
バフローラ14と圧接ローラ13とは繊維基材10を介して対向するように配置されている。圧接ローラ13は、周面が平滑なゴム製ローラである。圧接ローラ13は、繊維基材10をD方向に圧し付ける。圧接ローラ13は回転方向Cに回転し、バフローラ14は回転方向Bに回転する。
【0046】
繊維基材10は、張力を掛けられながら送出ローラ11から巻取ローラ12に向かって方向Aに送り出される。そして、送出ローラ11から送出されて巻取ローラ12に巻取られる。繊維基材10は、送り出しから巻取りの過程において、繊維基材10の立毛面を形成する面Nに、バフローラ14に掛け渡された回転する研磨ベルト16のサンドペーパを接触させることによりバフィング処理が行われる。
【0047】
研磨ベルト16には、例えば、#120~#600程度の細かな砥粒が固着されたサンドペーパが外周に配されている。
【0048】
圧接ローラ13とバフローラ14との間において、繊維基材10の立毛面を形成される面Nに付与されるD方向の圧力が調整されることにより、バフローラ14にかかる負荷電流が調整される。バフローラ14の負荷電流としては、10~40A、さらには20~30Aであることが好ましい。負荷電流が低すぎる場合や高すぎる場合には電流値が安定した運転が困難になる。
【0049】
バフローラ14の回転数は、バフローラの直径やサンドペーパの番手にもよるが、800~1500rpm、さらには、1000~1500rpmであることが好ましい。繊維基材10の搬送速度も、バフローラの直径やサンドペーパの番手にもよるが、3~10m/min、さらには、5~8m/minであることが好ましい。
【0050】
送出ローラ11から送出された繊維基材10がバフィング処理されるとき、研磨ベルト16が繊維基材10の立毛面を形成する面Nに掛ける剪断力は、バフローラ14の回転数と負荷電流、繊維基材10の搬送速度を変化させることにより調整される。バフローラ14の回転数や電流値、搬送速度が大きい場合には剪断力が大きくなり、小さい場合には剪断力が小さくなる。剪断力が大きい場合には、立毛面を形成する面に摩擦熱が発生しやすくなり、極細繊維が膜化しやすくなる。
【0051】
バフィング処理においては、立毛した極細繊維を含む立毛面において、極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に形成するためには、立毛面の極細繊維と研磨ベルト16のサンドペーパの表面との摩擦による摩擦熱により、立毛面を局所的に昇温させる。そして、極細繊維を形成する樹脂を溶融または軟化させて膜化することにより形成される。より効率的に膜化を促進するためには、軟化温度の低い極細繊維を用いたり、極細繊維の軟化温度以上の温度に達する領域を増やすために、繊維基材を予熱したり、バフローラの周面に凹凸を設けて繊維基材にバフローラの周面を不均質に当てるように調整したりする方法が挙げられる。
【0052】
以上のようなバフィング処理工程によって、繊維基材の少なくとも一面の表層の極細繊維の一部分を熱融着させて、極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に発生させる。このようにして立毛人工皮革基材が得られる。なお、立毛人工皮革基材には、バフィング処理に加えて、必要に応じて、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
【0053】
(7)染色工程
このようにして得られた立毛人工皮革基材は、通常、染色することが好ましい。染色は、分散染料、カチオン染料、反応染料、酸性染料、金属錯塩染料、硫化染料、硫化建染染料などを主体とした染料を繊維の種類に応じて適宜選択し、パッダー、ジッガー、サーキュラー、ウィンスなど繊維の染色に通常用いられる公知の染色機を使用して行われる。例えば、極細繊維がポリエステル系極細繊維の場合には、分散染料を用いて高温高圧染色により染色することが好ましい。また、染色処理している場合には、染色工程の後の何れかの工程の前後で堅牢度を高めるために洗浄する工程を設けることが好ましい。
【0054】
以上のようにして、立毛人工皮革が得られる。本実施形態の立毛人工皮革は、上述したように、0.5dtex以下の極細繊維の繊維絡合体及び繊維絡合体に含浸付与された高分子弾性体を含む繊維基材を含み、少なくとも一面に、立毛した極細繊維を含む立毛面を有し、立毛面において、極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に有し、膜化領域の平均円換算径が0.3~8mmであり、その数密度が1~100個/cm2である立毛人工皮革である。このような立毛人工皮革は、適度に分散した複数の膜化領域が光を反射することによるキラキラした光沢を呈する立毛面を有する。
【0055】
膜化領域は、ISO 25178に準じて測定された算術平均高さSaが0~20μm、さらには、0~10μm、であるような表面を有することが、高い平滑性により光反射性に優れる点から好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール、島成分の熱可塑性樹脂としてイソフタル酸6モル%変性ポリエチレンテレフタレートをそれぞれ個別に溶融させた。DSCによって測定されたイソフタル酸6モル%変性ポリエチレンテレフタレートの軟化温度(融点ピーク)は、135℃であった。
【0058】
そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成させる複合紡糸用口金に各溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より溶融繊維を吐出させた。
【0059】
そして、ノズル孔から吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように気流の圧力を調節したエアジェット・ノズル型の吸引装置で吸引することにより延伸し、2.1dtexの海島型複合繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合繊維は、可動型のネット上に、ネットの裏面から吸引しながら連続的に堆積された。そして、表面の立毛繊維の毛羽立ちを抑えるために、ネット上に堆積された海島型複合繊維を42℃の金属ロールで軽く押さえた。そして、海島型複合繊維をネットから剥離し、表面温度75℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させることにより熱プレスした。このようにして、表面の繊維が格子状に仮融着されたウェブが得られた。
【0060】
次に、ウェブの表面に、帯電防止油剤をスプレー付与した後、クロスラッパー装置を用いてウェブを10層重ねて総目付が340g/m2の重ね合せウェブを作成し、更に、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、重ね合せウェブをニードルパンチングすることにより絡合ウェブを得た。
【0061】
得られた絡合ウェブは、以下のようにして湿熱収縮処理されることにより、緻密化された。絡合ウェブに対して水を均一にスプレーし、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中で3分間張力が掛からない状態で放置して熱処理することにより湿熱収縮させた。緻密化された絡合ウェブの目付は750g/m2であり、見かけ密度は0.52g/cm3であった。そして、絡合ウェブをさらに緻密化するために乾熱ロールプレスすることにより、見かけ密度0.60g/cm3に調整した。
【0062】
そして、絡合ウェブにポリウレタンエマルジョンを以下のようにして含浸させた。ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンを主体とする水系ポリウレタンエマルジョン(固形分濃度13%)を緻密化された絡合ウェブに含浸させた。そして、150℃の乾燥炉で水分を乾燥し、さらにポリウレタンを架橋させた。このようにして、ポリウレタン/絡合ウェブの質量比が7/93のポリウレタン絡合ウェブ複合体を形成した。
【0063】
次に、ポリウレタン絡合ウェブ複合体を95℃の熱水中に20分間浸漬することにより海島型複合繊維に含まれる海成分を溶解除去し、120℃の乾燥炉で乾燥することにより、厚さ約1mmの繊維基材が得られた。
【0064】
得られた繊維基材の見かけ密度は0.58g/cm3であり、不織布/ポリウレタンの質量比は90/10であった。また、繊維絡合体である不織布を形成する極細繊維の繊度は0.1dtexであった。
【0065】
そして得られた繊維基材をバフィングすることにより0.80mmに研削した。そして、周面が#240のサンドペーパである研磨ベルトを備えた、
図3に示したようなバフィング装置を用いて、繊維基材の立毛面を形成する面をバフィングした。このときのバフィングの条件は、バフローラの回転数は1000rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が30Aであった。このようにして立毛面を備えた立毛人工皮革基材を得た。
【0066】
そして、バフィングされた繊維基材を、茶色の分散染料を用いて、130℃で1時間液流染色し、還元、中和処理、洗浄をし、乾燥した。このようにして染色された立毛人工皮革を得た。
図2は、得られた立毛人工皮革の立毛面を、マイクロスコープを用いて12倍で観察したときの写真の一例である。
図2に示すように、得られた立毛人工皮革の立毛面には、極細繊維を形成する樹脂が膜化された複数の膜化領域を不連続に存在していた。
【0067】
得られた立毛人工皮革は、以下のように評価した。
【0068】
(繊度)
繊度は、立毛人工皮革の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を3000倍で撮影し、繊維の断面をランダムに10個選んで断面積を測定し、その断面積の平均値を算出し、各樹脂の密度から換算して算出した。
【0069】
(軟化温度(融点ピーク)
軟化温度の測定は、示差走査熱量計において、アルミパンに極細繊維10mgを密閉して収容し、5℃から250℃まで10℃/分で昇温させたときに測定された吸熱ピークのピークトップを融点ピークとした。
【0070】
(立毛面における膜化領域の平均円換算径、平均数密度、及び膜化領域間の平均最短距離)
立毛人工皮革の立毛面の極細繊維に対してリントブラシをかけて順目に揃えた。そして、立毛方向を揃えた立毛人工皮革の表面を、マイクロスコープを用いて12倍で写真を撮影した。このときの視野は、タテ18mm×ヨコ24mmであった。そして、得られた写真をA4サイズに拡大し、立毛した極細繊維の立毛領域と、膜化領域との境界線を引いた。そして、境界線に沿って立毛領域と膜化領域とを切り離し、各領域の写真片を重量測定して、膜化領域の円換算径及び立毛面における面積割合を算出した。また、拡大写真から選ばれた任意の膜化領域10点(10より少ない場合は全数)の境界間最短距離をノギスで測定し平均値から膜化領域間の平均最短距離を求めた。サンプル5枚×2カ所=計10枚の写真について各値を算出し、それらの平均値を求めた。
【0071】
(膜化領域のISO 25178に準じて測定された算術平均高さSa)
立毛面の膜化領域のISO 25178に準じた算術平均高さSaを、非接触式の表面粗さ・形状測定機である「ワンショット3D測定マクロスコープVR-3200」((株)キーエンス製)を用いて測定した。具体的には、立毛調人工皮革の立毛面を順目方向にシールブラシで整毛し、整毛された立毛面の18mm×24mmの範囲を高輝度LEDから照射された構造化照明光により、400万画素モノクロC-MOSカメラで12倍の倍率で歪みの生じた縞投影画像撮影を行い、算術平均高さ(Sa)を求めた。測定は3回行い、その平均値を各数値として採用した。
【0072】
(立毛面のパール感)
人工皮革の製造に従事する10人のモニターに表面の外観を確認させ、表面の優美な光沢感を、以下の判定基準に基づいて多数決で判定した。
A:パール感がある
B:わずかにパール感がある
C:パール感がない
【0073】
(立毛面の触感)
人工皮革の製造に従事する10人のモニターに表面の触感を確認させ、以下の判定基準に基づいて触感を多数決で判定した。
A:手に異物感を与えなかった。
B:手にわずかに異物感を与えた。
C:手に顕著に異物感を与えた
【0074】
結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
[実施例2]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、バフローラの回転数は800rpm、繊維基材の搬送速度が3m/min、バフローラの負荷電流が15Aであった。
【0077】
[実施例3]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が30Aであった。
【0078】
[実施例4]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#400のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が3m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
【0079】
[実施例5]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#120のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1300rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
【0080】
[実施例6]
極細繊維の繊度が0.1dtexの繊維基材の代わりに、見かけ密度0.49g/cm3であり、不織布/ポリウレタンの質量比は90/10であった。また、繊維絡合体である不織布を形成する極細繊維の繊度が0.5dtexである繊維基材を用いた以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。また、比較例1の立毛人工皮革の立毛面をマイクロスコープにて12倍で観察したときの写真の一例を
図4に示す。
バフィングの条件は、#120のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1000rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が10Aであった。
【0082】
[比較例2]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#120のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
【0083】
[比較例3]
実施例1において、バフィング処理の条件を下記条件に変更することにより、表1に示したような表面を形成した以外は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得た。そして、同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#600のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
【0084】
[比較例4]
実施例1において、使用樹脂を未変性タイプに変更した以外は実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
バフィングの条件は、#600のサンドペーパを用い、バフローラの回転数は1500rpm、繊維基材の搬送速度が6m/min、バフローラの負荷電流が40Aであった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明で得られる立毛人工皮革は、衣料,靴,家具等の表面素材や、車両や航空機等の内装材のような用途に用いられる立毛人工皮革として好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0086】
1 立毛繊維
2 複数の膜化領域
10 立毛人工皮革
11 送出ローラ
12 巻取ローラ
13 圧接ローラ
14 バフローラ
15 駆動ローラ
16 研磨ベルト
20 バフィング処理装置