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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-20
(45)【発行日】2023-06-28
(54)【発明の名称】改良型研磨パッドのための配合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230621BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20230621BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20230621BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230621BHJP
   B29C 64/343 20170101ALI20230621BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20230621BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20230621BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230621BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230621BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20230621BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20230621BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
C08F290/06
B24B37/24 C
B29C64/124
B29C64/314
B29C64/343
B29C64/40
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y40/20
B33Y40/10
H01L21/304 622F
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021512234
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 US2019044710
(87)【国際公開番号】W WO2020050932
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】62/726,661
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガナパティアッパン, シヴァパキア
(72)【発明者】
【氏名】ヴォラ, アンキット
(72)【発明者】
【氏名】フー, ボイ
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン, ヴェンカット
(72)【発明者】
【氏名】ヤマムラ, マユ
(72)【発明者】
【氏名】コルネホ, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】アブラムソン, イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, モー
(72)【発明者】
【氏名】レッドフィールド, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バジャージ, ラジーブ
(72)【発明者】
【氏名】パティバンドラ, ナーグ ビー.
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0203408(US,A1)
【文献】特表2018-533487(JP,A)
【文献】特表2017-533585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203406(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0100074(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B24B 37/24
B29C 64/124
B29C 64/314
B29C 64/343
B29C 64/40
B29C 64/35
B33Y 10/00
B33Y 70/00
B33Y 40/20
B33Y 40/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV硬化性樹脂前駆体組成物であって:
2の官能基を有する脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート;
アクリレートモノマー混合物であって、
イソボニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート又はそれらの組み合わせから選択される単官能性アクリレートモノマーと、
プロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート又はそれらの組み合わせから選択される多官能性アクリレートモノマーと
を含むアクリレートモノマー混合物;及び
光開始剤
を含み、
脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートは、前駆体組成物の総重量に基づいて20重量%から30重量%で存在し、アクリレートモノマー混合物は、前駆体組成物の総重量に基づいて70重量%から80重量%で存在し、光開始剤は、前駆体組成物の総重量に基づいて0.5重量%から2.5重量%で存在し、前駆体組成物は、分配される前駆体組成物が付加製造プロセスにより研磨用物品の一部分を形成することを可能にする70℃において10cPから30cPの範囲内の粘度を有する、UV硬化性樹脂前駆体組成物。
【請求項2】
粘度が70℃において25cPから30cPの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
多官能性アクリレートモノマーが、1,3-ブタンジオールジアクリレートである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
多官能性アクリレートモノマーが、1,4-ブタンジオールジアクリレートである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートが、60℃における44500の名目粘度及び、DMAによる-18のTgを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
多官能性アクリレートモノマーが、1,4-ブタンジオールジアクリレートであり官能性アクリレートモノマーが、イソボルニルアクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前駆体組成物が、20から25重量%の脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前駆体組成物が、75から80重量%のアクリレートモノマー混合物を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
光開始剤が、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンと2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシドとのブレンドから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
研磨用物品を形成する方法であって、
ターゲット厚に到達するように、3Dプリンタを用いて複数の複合層を堆積させることを含み、複数の複合層を堆積させることが:
硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を支持体の上に分配することを含み、硬化性樹脂前駆体組成物が:
2の官能基を有する脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート;
アクリレートモノマー混合物であって、
イソボニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート又はそれらの組み合わせから選択される単官能性アクリレートモノマーと、
プロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート又はそれらの組み合わせから選択される多官能性アクリレートモノマーと
を含むアクリレートモノマー混合物;及び
光開始剤
を含み、
脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートは、前駆体組成物の総重量に基づいて20重量%から30重量%で存在し、アクリレートモノマー混合物は、前駆体組成物の総重量に基づいて70重量%から80重量%で存在し、光開始剤は、前駆体組成物の総重量に基づいて0.5重量%から2.5重量%で存在し、硬化性樹脂前駆体組成物は、分配される硬化性樹脂前駆体組成物が付加製造プロセスにより研磨用物品の一部分を形成することを可能にする70℃において10cPから30cPの範囲内の粘度を有する、研磨用物品を形成する方法。
【請求項11】
脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートが、60℃における44500の名目粘度及び、DMAによる-18のTgを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
多官能性アクリレートモノマーが、1,4-ブタンジオールジアクリレートであり官能性アクリレートモノマーが、イソボルニルアクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴を支持体の上に分配することを更に含み、多孔性形成組成物の少なくとも1つの成分が、研磨用物品にポアを形成するために除去可能である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
多孔性形成組成物が、グリコール、グリコール-エーテル、アミン、又はこれらの組み合わせから選択される多孔性形成剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
分配された硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴と、分配された多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴とを部分的に硬化させた後で、分配された硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴と、分配された多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴とを、アニーリング処理、すすぎプロセス、又はこれらの両方のうちの少なくとも1つに曝露することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
研磨用物品を形成する方法であって:
ターゲット厚に到達するように、3Dプリンタを用いて複数の複合層を堆積させること、及び
複数の複合層を固化してパッド本体を形成すること
を含み、
複数の複合層を堆積させることが、
硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を支持体上に分配することであって、硬化性樹脂前駆体組成物が:
2の官能基を有する脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート;
アクリレートモノマー混合物であって、
イソボニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート又はそれらの組み合わせから選択される単官能性アクリレートモノマーと、
プロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート又はそれらの組み合わせから選択される多官能性アクリレートモノマーと
を含むアクリレートモノマー混合物;及び
光開始剤
を含み、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートは、前駆体組成物の総重量に基づいて20重量%から30重量%で存在し、アクリレートモノマー混合物は、前駆体組成物の総重量に基づいて70重量%から80重量%で存在し、光開始剤は、前駆体組成物の総重量に基づいて0.5重量%から2.5重量%で存在し、硬化性樹脂前駆体組成物は、分配される硬化性樹脂前駆体組成物が付加製造プロセスにより研磨用物品の一部分を形成することを可能にする70℃において10cPから30cPの範囲内の粘度を有する、硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を支持体上に分配することと;
硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を電磁放射に曝露して硬化性樹脂前駆体組成物を少なくとも部分的に硬化させることと;
分配すること及び曝露することを繰り返して支持体上に3Dレリーフを構築することと;
を含む、方法。
【請求項17】
粘度が、70℃において25cPから30cPの範囲内である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートが、60℃における44500の名目粘度及び、DMAによる-18のTgを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
多官能性アクリレートモノマーが、1,4-ブタンジオールジアクリレートであり官能性アクリレートモノマーが、イソボルニルアクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
硬化性樹脂前駆体組成物が:
20から25重量%の脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート;
75から80重量%のアクリレートモノマー混合物;及び
0.5から2.5重量%の光開始剤
を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
ここに記載される実装態様は、概して、研磨プロセスにおいて使用される研磨用物品及び研磨用物品を製造するための方法に関する。具体的には、ここに記載される実装態様は、調節可能な性能を含む、改善された研磨パッドの特性及び性能を生むプロセスによって生産される研磨パッドに関する。
【0002】
関連技術の記載
化学機械研磨(CMP)は、多数の異なる産業において使用され、基板の表面を平坦化する従来のプロセスである。半導体産業においては、デバイスの特徴部のサイズが低減し続けるにつれて、研磨及び平坦化の均一性がますます重要になっている。CMPプロセスの間に、シリコンウエハなどの基板は、回転する研磨パッドに接するように配置されるデバイス表面を有するキャリアヘッドに取り付けられる。キャリアヘッドは、基板に制御可能な荷重を提供し、デバイス表面を研磨パッドに対して押し付ける。研磨粒子を有するスラリーなどの研磨液は、一般に、動いている研磨パッドの表面と研磨ヘッドとに供給される。研磨パッドと研磨ヘッドが基板に機械的エネルギーを加える間に、パッドは、研磨プロセスの間に基板と相互作用するスラリーの輸送を制御するために役立つ。
【0003】
研磨パッドは一般に粘弾性のポリマー材料から作製されているため、研磨パッドの機械的特性(例えば、弾性、反発性、硬度、及び剛性)及びCMP処理条件は、集積回路(「IC」)ダイのレベル(微視的/ナノスケール)及びウエハ即ちグローバルレベル(巨視的)の両方において、CMPの研磨性能に重大な影響を有する。例えば、パッドの圧縮、パッドの反発、摩擦、及び処理中の温度変化といったCMPプロセスの力及び条件、並びに研磨用水性スラリーの化学的性質は、研磨パッドの特性、したがってCMPの性能に影響を与えるであろう。
【0004】
研磨システム内で実施される化学機械研磨プロセスは、一般に、研磨プロセス全体の異なる部分を実施する複数の研磨パッドを含む。研磨システムは、一般に、第1のプラテン上に配置され、第1の材料除去速度と、基板表面の第1の表面仕上げ及び第1の平坦度とを生成する第1の研磨パッドを含む。第1の研磨プロセスは、一般に、粗研磨プロセスとして知られており、通常高研磨速度で実施される。システムはまた、一般に、少なくとも1つの追加のプラテン上に配置され、第2の材料除去速度と、基板表面の第2の表面仕上げ及び第2の平坦度とを生成する少なくとも1つの追加の研磨パッドを含む。第2の研磨プロセスは、一般に、精密研磨プロセスとして知られており、通常粗研磨プロセスよりも遅い研磨速度で実施される。いくつかの実装態様では、システムは、第3のプラテン上に配置され、第3の除去速度と、基板表面の第3の表面仕上げ及び平坦度とを生成する第3の研磨パッドも含みうる。第3の研磨プロセスは、一般に、材料クリア又はバフ仕上げプロセスとして知られている。マルチパッド研磨プロセスは、パッドが異なる研磨特性を有し、且つ基板が累進的に精細な研磨を受けるか、又は研磨特性が、研磨中に遭遇する異なる層、例えば酸化物表面の下の金属線を補償するために調整される、多段階プロセスに使用することができる。
【0005】
CMP処理段階の各々の間に、研磨パッドは、圧縮及び反発サイクル、加熱及び冷却サイクル、並びに研磨用スラリーの化学的性質に曝露される。最終的に、研磨パッドは、一定数の基板を研磨した後に磨耗又は光沢化し、交換又は修繕が必要となる。
【0006】
従来の研磨パッドは、一般に、ポリウレタン材料を含むポリマー材料を、成形、鋳造又は焼結することによって作製される。成形の場合、研磨パッドは、例えば射出成形によって一度に1つずつ作製することができる。鋳造の場合、液体の前駆物質が鋳造され、ケーキへと硬化され、その後個別のパッド片にスライスされる。次いで、これらのパッド片は、最終的な厚さに機械加工することができる。スラリーの輸送を支援する溝を含むパッド表面の特徴部を、研磨面中に機械加工することができるか、又は射出成形プロセスの一部として形成することができる。このような研磨パッド製造方法は、費用と時間を要し、パッド表面の特徴部寸法の製造及び制御の困難性によって、不均一な研磨結果を生じることが多い。ICダイ及び特徴部が小型化を続けるにつれ、不均一性はますます注目されている。
【0007】
現行のパッド材料及びその製造方法は、パッド性能に関与する貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)といったバルクパッド特性の操作及び微調整を制限する。したがって、均一なCMPは、予測可能で且つ精密に制御された貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E”のバランスを有するパッド材料と、溝及びチャネルなどの表面特徴部とを利用し、そのようなバランスは更に、CMP処理の温度範囲、例えば、約30℃から約90℃にわたって維持される。残念なことに、パッドは、分子内の反発力及び引力と様々なポリマー鎖の絡み合いとに曝露される相分離された巨大分子ドメインのランダムな混合物であるため、伝統的なバルク重合と鋳造及び成形技術による従来のパッド生産は、パッド特性(例えば弾性率)のわずかな制御をもたらすだけである。例えば、バルクパッドにおける相分離された微視的及び巨視的な構造ドメインの存在は、基板のバッチのCMP処理中に典型的に生じる、加熱と冷却の複数のサイクルにわたる貯蔵弾性率E’のヒステリシスといった、非線形材料反応の更なる組み合わせを生むことがあり、この結果、基板のバッチ全体に研磨の不均一性と予測不能な性能が生じうる。
【0008】
したがって、パッド特徴部の形状寸法の制御と、パッドの材料特性、化学的特性及び物理的特性の精密な制御とを提供する、新たな研磨パッド材料及び研磨パッドの新たな製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
ここに記載される実装態様は概して、研磨プロセスにおいて使用される研磨用物品及び研磨用物品を製造するための方法に関する。具体的には、ここに記載される実装態様は、調節可能な性能を含む、改善された研磨パッドの特性及び性能を生むプロセスによって生産される研磨パッドに関する。一実装態様において、UV硬化性樹脂前駆体組成物が提供される。UV硬化性樹脂前駆体は前駆体配合物を含む。前駆体配合物は、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料を含む第1の樹脂前駆体成分を含み、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料は、準結晶性の脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、準結晶性の脂肪族ポリカーボネートウレタンアクリレート、準結晶性の脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート、又はこれらの組み合わせから選択される。前駆体配合物は、単官能性又は多官能性アクリレートモノマーを含む第2の樹脂前駆体成分を更に含む。樹脂前駆体配合物は、光開始剤を更に含み、前駆体配合物は、前駆体配合物を分配して付加製造処理により研磨用物品の一部分を形成することを可能にする粘度を有する。
【0010】
別の実装態様では、研磨用物品の形成方法が提供される。この方法は、ターゲット厚に到達するよう、3Dプリンタを用いて複数の複合層を堆積させることを含む。複数の複合層を堆積させることは、硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を支持体上に分配することを含む。硬化性樹脂前駆体組成物は、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料を含む第1の樹脂前駆体成分を含む。準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料は、準結晶性の脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、準結晶性の脂肪族ポリカーボネートウレタンアクリレート、準結晶性の脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート、又はこれらの組み合わせから選択される。第1の樹脂前駆体成分は、単官能性又は多官能性アクリレートモノマーを含む第2の樹脂前駆体成分を更に含む。第1の樹脂前駆体成分は、光開始剤を更に含む。硬化性樹脂前駆体組成物は、分配される硬化性樹脂前駆体組成物が付加製造処理により研磨用物品の一部分を形成することを可能にする粘度を有する。
【0011】
更に別の実装態様では、研磨用物品の形成方法が提供される。この方法は、ターゲット厚に到達するように、3Dプリンタを用いて複数の複合層を堆積させることを含む。複数の複合層を堆積させることは、硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を支持体上に分配することを含む。硬化性樹脂前駆体配合物は、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料を含む第1の樹脂前駆体成分を含み、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料は、準結晶性の脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、準結晶性の脂肪族ポリカーボネートウレタンアクリレート、準結晶性の脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレート、又はこれらの組み合わせから選択される。硬化性樹脂前駆体配合物は、単官能性又は多官能性アクリレートモノマーを含む第2の樹脂前駆体成分を更に含む。硬化性樹脂前駆体組成物は、光開始剤を更に含む。硬化性樹脂前駆体配合物は、硬化性樹脂前駆体配合物を分配して付加製造処理により研磨用物品の一部分を形成することを可能にする粘度を有する。方法は、硬化性樹脂前駆体組成物を少なくとも部分的に硬化させるために、硬化性樹脂前駆体組成物の1つ又は複数の液滴を電磁放射に曝露することを更に含む。方法は、支持体上に3Dレリーフを構築するために、分配すること及び曝露することを繰り返すことを更に含む。方法は、パッド本体を形成するために、複数の複合層を固化することを更に含む。
【0012】
本開示の上記の特徴をより詳しく理解できるように、上記で簡単に要約された実装態様のより詳細な記載が実装態様を参照することによって得られ、実装態様のいくつかが添付図面に示される。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実装態様を許容しうるため、添付図面は、本開示の典型的な実装態様のみを示すものであり、したがってその範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ここに記載される実装態様により形成された改良型研磨パッドを有する研磨ステーションの概略断面図である。
図2A】本開示の一実装態様による改良型研磨パッドの概略等角断面図である。
図2B】本開示の一実装態様による改良型研磨パッドの概略部分上面図である。
図2C】本開示の一実装態様による改良型研磨パッドの概略等角断面図である。
図2D】本開示の一実装態様による改良型研磨パッドの一部分の概略側断面図である。
図2E】本開示の一実装態様による改良型研磨パッドの一部分の概略側断面図である。
図2F-2K】F-Kは、本開示の実装態様による改良型研磨パッド設計の上面図である。
図3A】本開示の一実装態様による、改良型研磨パッドを製造するためのシステムの概略図である。
図3B-C】Bは、本開示の一実装態様による、図3Aに示されるシステムの一部分の概略図であり;Cは、本開示の一実装態様による、Bに示される改良型研磨パッドの一領域の表面に配置された分配された液滴の概略図である。
図4A】本開示の一実装態様による、ウェブ即ち又はロールトゥロールタイプの研磨パッドの概略上面図である。
図4B】本開示の一実装態様による、改良型研磨パッドの一部分の概略側断面図である。
図5A】本開示の少なくとも1つの実装態様による、ポアを含みうる改良型研磨パッドを形成するために使用されるピクセルチャートの上面図である。
図5B】本開示の一実装態様による、改良型研磨パッドの一部分の概略側断面図である。
図5C】本開示の一実装態様による改良型研磨パッドの一部分の概略側断面図である。
図6】ここに記載される実装態様による改良型パッドを形成する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解を容易にするため、可能な場合には、図面に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。一実装態様の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実装態様に有益に組み込まれうることが企図される。
【0015】
ここに開示される実装態様は、概して、研磨プロセスに使用される研磨用物品及び研磨用物品を製造するための方法に関する。具体的には、ここに開示される実装態様は、調節可能な性能を含む、研磨パッドの特性及び性能を向上させるプロセスによって製造される多孔性研磨パッドに関する。付加製造プロセス、例えば三次元印刷(「3D印刷」)プロセスは、固有の特性及び属性を有する研磨パッドを作製する能力を提供する。本開示の実装態様は、液体ポリマー前駆体、又は「樹脂前駆体成分」を含有する樹脂前駆体組成物から形成される少なくとも2つの異なる材料から形成される個別の特徴及び形状寸法を有する改良型研磨パッドを提供する。樹脂前駆体成分には、限定されないが、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー、反応性希釈剤、フロー添加物、硬化剤、光開始剤、1つ又は複数の多孔性形成剤、界面活性剤及び硬化相乗剤が含まれる。
【0016】
本開示の様々な実装態様の完全な理解を提供するために、特定の詳細が以下の記載及び図1~6に提示される。しばしば付加製造処理及び研磨用物品製造に関連付けられる周知の構造及びシステムを記載する他の詳細は、種々の実装態様の記載を不要に曖昧にしないように、以下の開示には提示されない。図面に示される詳細、寸法、角度、及び他の特徴の多くは、特定の実装態様の例示に過ぎない。したがって、他の実装態様が、本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、寸法、角度、及び特徴を有することが可能である。加えて、以下に記載される詳細のうちのいくつかがなくても、本開示の更なる実装態様を実施することが可能である。
【0017】
ここに記載される研磨用物品は研磨パッドであるが、ここに記載される実装態様は、例えばバフパッドを含む他の研磨用物品にも適用可能であることを理解されたい。更に、ここに記載される研磨用物品は化学機械研磨プロセスに関連して説明されているが、ここに記載される研磨用物品及び研磨用物品の製造方法は、レンズ研磨を含む他の研磨プロセス、並びに研磨及び非研磨スラリー系の両方を含む他のプロセスにも適用可能である。加えて、ここに記載される研磨用物品は、少なくとも、航空宇宙、陶器、ハードディスクドライブ(HDD)、MEMS及びナノテク、金属加工、光学及び電気光学、並びにとりわけ半導体の産業において使用されうる。
【0018】
一実装態様において、ここに記載される研磨用物品を生産する(又は作製する)ために、三次元印刷(又は3D印刷)プロセスといった付加製造プロセスが使用されうる。一実装態様において、部品のコンピュータ(CAD)モデルが作製され、次いでスライスアルゴリズムがすべての層の情報をマッピングする。3D印刷プロセスの非限定的な一実施例では、3D印刷プロセスは、液体前駆体組成物材料の液滴が表面に分配され、次いで一層ずつ研磨用物品を形成するために硬化されるプロセスである。これについては更に後述する。3D印刷プロセスは、材料組成、微細構造、及び表面テクスチャーに対する局所的制御を行うことができるため、この方法では、様々な(及び以前は到達不能であった)形状寸法が実現されうる。
【0019】
一実装態様において、ここに記載される研磨用物品は、コンピュータレンダリングデバイス又はコンピュータディスプレイデバイスが読み取り可能なデータ構造で表すことができる。コンピュータ可読媒体は、研磨用物品を表すデータ構造を含みうる。データ構造はコンピュータファイルであってよく、1つ又は複数の物品の構造、材料、テクスチャー、物理的特性、又は他の特質に関する情報を含みうる。データ構造はまた、コンピュータレンダリングデバイス又はコンピュータディスプレイデバイスの選択された機能性に関わるコンピュータ実行可能コード又はデバイス制御コードといったコードを含みうる。データ構造は、コンピュータ可読媒体に保存されていてよい。コンピュータ可読媒体は、磁気メモリ、フロッピーディスク、又は任意の便利な物理的記憶媒体といった物理的記憶媒体を含みうる。データ構造が表す物品を、コンピュータスクリーン又は物理的レンダリングデバイス上にレンダリングするために、物理的記憶媒体はコンピュータシステムによって読み取り可能であってよく、物理的なレンダリングデバイスは、3Dプリンタといった付加製造デバイスであってよい。
【0020】
堆積される20-100ミクロンの領域の長さスケールにわたる材料及び微細構造の変化は再現性を有する。このような属性により、前例のないレベルでCMPプロセスの性能の調整が可能となる。3D印刷の1つの技術はインクジェット技術を利用し、この技術は、液体樹脂前駆体組成物の液滴を所定のパターンで分配すること、及び分配された前駆体材料を、紫外光といった電磁放射に曝露することにより固体ポリマーへと硬化させること又は固化することを含む。インクジェット技術は、小さなノズル(例えば、10-50ミクロンの直径)を通して前駆体材料を射出することにより、前駆体材料の微小液滴を生成する。これにより液滴上に高圧及び剪断が生じる。加えて3D印刷技術は、材料を一層ずつ印刷することを含み、この場合各堆積層の厚さ制御が重要である。
【0021】
UV硬化性エチレン性不飽和部分により得られる典型的な架橋ネットワークは、極めて脆弱であり、極めて低い破断時伸び率を有する。ここに記載される実装態様は、半導体製造のための改良型化学機械平坦化(CMP)パッドの新規の配合物及び組成物を提供する。ここに開示される配合物及び組成物は、紫外(UV)光によりクロスリンクしてネットワーク構造を形成する。更に、ここに記載される配合物は、エチレン性不飽和モノマー、オリゴマー及びポリマーを含む。ここに記載される配合物は、例えばプリントヘッドを通してインクを噴射することにより、CMPパッドを作製する付加製造(3D印刷)プロセスに使用することができる。ここに記載される改良型研磨パッドのための配合物は、良好な研磨性能のために、30℃でのターゲット弾性率(E’30)及び90℃でのターゲット弾性率(E’90)と、室温での極限引張応力(UTS)を維持しながら、室温でより高い破断時伸び率を有するように設計される。
【0022】
一実装態様において、CMPパッドのインクジェットベースの付加製造のための感光性配合物が提供される。ここに記載される感光性配合物は、準結晶性のウレタンアクリレートオリゴマーを含む。配合物中に準結晶性のウレタンアクリレートオリゴマーを含めることにより、低い粘度(例えば、70℃で30cP未満)を維持しながら、室温及び高温(例えば、90℃)における、伸び率、極限引張強度、貯蔵弾性率のような強化された機械特性が提供されると考えられる。理論により拘束されないが、伸び率が大きくなると、CMPパッドの切断レートが低下し、欠陥が減少しうると考えられる。
【0023】
一実装態様において、ここに記載される配合物は、メタ(アクリレート)オリゴマーを含む。メタ(アクリレート)オリゴマーは、高い伸び率及び高い弾性率のためにポリエステルウレタン基を含む。ここに記載される配合物は、性能を向上させるために、反応性希釈剤、光開始剤、感光剤、脱酸素剤、及び添加物を更に含む。一実装態様において、噴出温度における、ここに記載される配合物の粘度は、約5cPから約100cPの範囲、例えば約5cPから約50cPの範囲、例えば約10cPから約30cPの範囲内である。
【0024】
一実装態様において、オリゴマーは、末端官能性アクリレート部分に結合した尿素基を有する。更に、オリゴマーは、より高い伸び率及び弾性率を維持することに役立ちうる架橋時の規則性を向上させるために、結晶性又は液体結晶性の基を有することができる。更に、オリゴマーは、架橋パッド材料の疎水性及び弾性率を改善するために、尿素及びカルボン酸のような他の水素結合基を有することができる。一実装態様において、ウレタンアクリレート基は、架橋フィルムの伸び率及び弾性率を向上させるために、制御されたネットワーク構造を形成することのできる長鎖アルキル基を有することができる。更に、架橋パッド材料の機械特性を改善するために、SiO、ZnO、ZnS、及びZrOといったナノ粒子と、その他のポリマー繊維とをUV硬化性配合物に加えることができる。
【0025】
一実装態様において、配合物に使用されるアクリレートモノマーは、1:2以上のアクリレートとウレタンの比を有することができる。一実装態様において、配合物の粘度を低下させるために使用される反応性希釈剤は、2つのアクリレート基を有することができ、5cPを下回る粘度と30℃を上回るTgとを有することができる。
【0026】
研磨パッド装置及び研磨方法:
ここに開示される改良型研磨パッド設計は、多くの異なるタイプの研磨装置において研磨プロセスを実施するために使用することができる。ここに提供される開示の範囲を制限することを意図しない一実施例では、改良型研磨パッドは、半導体基板を研磨するために使用される研磨ステーションに使用されうる。図1は、ここに記載される実装態様により形成された改良型研磨パッド106を有する研磨ステーション100の概略断面図である。研磨ステーション100は、複数の研磨ステーション100を含む、より大きな化学機械研磨(CMP)システム内に位置決めされうる。研磨ステーション100はプラテン102を含む。プラテン102は、中心軸104を中心にして回転しうる。改良型研磨パッド106は、プラテン102上に置くことができる。ここに提供される開示を限定することを意図しないが、一般に改良型研磨パッド106は、研磨ステーション100で処理される基板110のサイズ(例えば、基板直径)の少なくとも1から2倍の大きさのプラテン102の上表面103を覆う。一実施例では、改良型研磨パッド106及びプラテン102は、直径で約6インチ(150mm)と40インチ(1,016mm)の間である。改良型研磨パッド106は、1つ又は複数の基板110に接触して同基板を処理するよう構成にされた研磨面112を含む。プラテン102は、研磨中に、改良型研磨パッド106を支持し、改良型研磨パッド106を回転させる。キャリアヘッド108は、改良型研磨パッド106の研磨面112に接するように、処理中の基板110を保持することができる。研磨界面130は、研磨面112と基板110との間に形成される。キャリアヘッド108は、一般に、基板110を改良型研磨パッド106に接触させるために使用されるフレキシブルダイヤフラム111と、研磨プロセス中に基板の表面全体に見られる本質的に不均一な圧力分布を補正するために使用されるキャリアリング109とを含む。キャリアヘッド108は、中心軸114を中心にして回転することができる、及び/又は基板110と改良型研磨パッド106との間に相対運動を発生させるスイープ運動で動くことができる。
【0027】
研磨中、研磨材スラリー又は非研磨材スラリーといった研磨流体116が、送達アーム118によって研磨面112に供給されうる。研磨流体116は、基板の化学機械研磨を可能にするために、研磨粒子、pH調整剤、及び/又は化学的に活性な成分を含有することができる。116のスラリー化学特性は、金属、金属酸化物、及び半金属酸化物を含みうる基板表面及び/又は特徴部を研磨するように設計されている。研磨プロセス中に基板110と相互作用する研磨流体116(例えばスラリー)の輸送を制御するために、改良型研磨パッド106の表面トポロジーが使用されることに気づくであろう。例えば、改良型研磨パッド106の表面トポロジーは、改良型研磨パッド106の上方、上及び内部に配置されうる、鋳造、成形、又は機械加工により形成された溝、チャネル及び他の突起を含むことができる。
【0028】
いくつかの実装態様では、研磨ステーション100は、コンディショニングアーム122とアクチュエータ124及び126とを含むパッドコンディショニングアセンブリ120を含む。アクチュエータ124及び126は、研磨プロセスサイクル中の異なる時点でパッドコンディショニングディスク128(例えば、ダイヤモンド含侵ディスク)を、研磨面112に押し当てられて研磨面112を横切るようにスイープする改良型研磨パッド106の研磨面112を研磨し再生させるように構成されている。処理中、改良型研磨パッド106及びキャリアヘッド108を移動させることによって、基板110に機械的エネルギーが加えられ、この機械的エネルギーは、研磨流体116中の化学物質及び研磨成分と組み合わされて、基板の表面を平坦化させる。
【0029】
研磨パッドの構成の実施例
研磨装置に使用することのできる改良型研磨パッドの種々の構造的実装態様の実施例を、図2A-2Kと関連させて説明する。図2A-2Kに示される改良型研磨パッドは、例えば、図1に示される研磨ステーション100において使用することができる。別途指定のない限り、第1の研磨要素(複数可)204及び第2の研磨要素(複数可)206という用語は、改良型研磨パッド200の研磨体内部の部分、領域、及び/又は特徴部を広義に表す。いくつかの実装態様では、改良型研磨パッド200は、スラリーに曝露されるとパッドの表面にボイドを形成するポア又は材料を含む。図2A図2Kに示される異なる改良型研磨パッドの具体的な実施例は、他の同様の実装態様がここに記載される1つ又は複数の付加製造プロセスの使用により形成されうるため、ここに提供される開示の範囲に関して限定的であることを意図していない。
【0030】
改良型研磨パッドは、少なくとも1つの樹脂前駆体組成物を一層ずつ自動逐次堆積し、続いて少なくとも1つの硬化プロセスを行うことによって形成することができ、各層は、少なくとも1つのポリマー組成物、及び/又は異なる組成物の領域を表すことができる。硬化性樹脂前駆体組成物は、前駆体、又は樹脂前駆体組成物を含み、これには、官能性ポリマー、官能性オリゴマー、モノマー、乳化剤/界面活性剤、光開始剤、無機粒子、反応性希釈剤、硬化相乗剤、及び更なる添加物を含むがそれらに限定されない「樹脂前駆体成分」が含まれる。官能性ポリマーは、多官能性アクリレート前駆体組成物を含みうる。複数の固体ポリマー層を形成するために、1つ又は複数の組成物のUV照射及び/又は熱エネルギーへの曝露といった、1つ又は複数の硬化プロセスを用いることができる。このようにして、研磨パッド全体が、付加製造プロセスにより複数のポリマー層から形成されうる。硬化された層の厚さは、約0.1ミクロンから約1ミリメートル、例えば5ミクロンから約100ミクロン、例えば25ミクロンから約30ミクロンでありうる。
【0031】
本開示による改良型研磨パッドは、研磨要素から研磨要素への少なくとも1つの組成勾配により反映される、パッド本体202全体に複数の異なる材料特性、例えば、多孔性を有しうる。静的機械特性、動的機械特性及び摩耗特性を含みうるターゲットの研磨パッド特性を実現するために、研磨パッド200全体の多孔性は、対称又は非対称、均一又は不均一であってよい。一実装態様において、ポアは、各隣接堆積層の界面の近くに形成される。パッド本体202全体の研磨要素204、206のいずれかのパターンは、改良型研磨パッド全体の、多孔性を含むターゲット特性を実現するために、放射状、同心円状、矩形、螺旋、フラクタル又はランダムとすることができる。有利には、3D印刷プロセスは、特性が組み合わされて特性の平均が増大しうるか又は特性の「複合物」が示されるように、パッドの特定のパッドエリア内、又はパッドのより大きいエリアにわたり、ターゲット特性を有する材料組成物の詳細な配置を可能にする。
【0032】
図2Aは、本開示の一実装態様による改良型研磨パッド200aの概略斜視断面図である。1つ又は複数の第1の研磨要素204aは、1つ又は複数の第2の研磨要素206aに連結されて円形のパッド本体202を形成する1つおきの同心円状リングに形成することができる。1つ又は複数の第1の研磨要素204a及び1つ又は複数の第2の研磨要素206aのうちの少なくとも1つは、ここに記載される実装態様に従って形成することができる。一実装態様において、第1の研磨要素(複数可)204aの支持面203からの高さ210は、第2の研磨要素(複数可)206aの高さ212よりも高く、そのため第1の研磨要素(複数可)204aの上表面(複数可)208は、第2の研磨要素(複数可)206aの上方に突出している。一実装態様では、第1の研磨要素204は、第2の研磨要素206a(複数可)の一部分212Aの上に配置される。溝218又はチャネルは、第1の研磨要素(複数可)204a間に形成され、第2の研磨要素206aの一部を少なくとも含む。研磨中、第1の研磨要素204aの上表面(複数可)208が基板と接触する研磨面を形成し、溝218は研磨流体を保持し導く。一実装態様では、パッド本体202の上面にチャネル又は溝218が形成されるように、第1の研磨要素(複数可)204aは、研磨面と平行な平面又はパッド本体202の上表面(複数可)208に対して直角の方向(即ち、図2AのZ方向)に、第2の研磨要素(複数可)206aよりも厚い。
【0033】
一実装態様では、第1の研磨要素204aの幅214は、約250ミクロンと約5ミリメートルの間でありうる。硬い第1の研磨要素(複数可)204a間のピッチ216は、約0.5ミリメートルと約5ミリメートルの間でありうる。各第1の研磨要素204aは、約250ミクロンと約2ミリメートルの間の範囲内の幅を有しうる。幅214及び/又はピッチ216は、硬度、多孔性、又は硬度と多孔の両方が変化するゾーンを画定するために、改良型研磨パッド200の半径にわたって変化させることができる。
【0034】
図2Bは、本開示の一実装態様による、改良型研磨パッド200bの概略的部分上面図である。改良型研磨パッド200bは、改良型研磨パッド200bが相互連結用の第1の研磨要素204bと第2の研磨要素206bとを含んでいることを除き、図2Aの改良型研磨パッド200と同様である。相互連結用の第1の研磨要素204bと第2の研磨要素206bのうちの少なくとも1つは、ここに記載される実装態様に従って形成することができる。第1の研磨要素204b及び第2の研磨要素206bは、複数の同心リングを形成している。相互連結用の第1の研磨要素204bは突出する垂直リッジ220を含むことができ、第2の研磨要素206bは、垂直リッジ220を受け入れるための垂直凹部222を含むことができる。代替的に、第2の研磨要素206bが突出するリッジを含み、第1の研磨要素204bが凹部を含んでもよい。第2の研磨要素206bを相互連結用の第1の研磨要素204bと相互連結させることによって、CMPプロセス中及び/又は材料の取り扱い中に発生しうる剪断力の印加に関連して機械的により強くなるであろう。一実装態様では、第1の研磨要素と第2の研磨要素とは、相互に連結して改良型研磨パッドの強度を向上させ、且つ改良型研磨パッドの物理的一体性を向上させることができる。特徴部の相互連結は、物理的及び/又は化学的な力によるものであってよい。
【0035】
図2Cは、本開示の一実装態様による、改良型研磨パッド200cの概略的斜視断面図である。研磨パッド200cは、第2の研磨要素206cといったベース材料層から延びる、複数の第1の研磨要素204cを含む。複数の第1の研磨要素204cと第2の研磨要素206cのうちの少なくとも1つは、ここに記載される実装態様に従って形成することができる。第1の研磨要素204cの上表面208は、研磨中に基板に接触する研磨面を形成する。一実装態様では、第1の研磨要素204cと第2の研磨要素206cとは、異なる材料特性及び構造特性を有する。例えば、第1の研磨要素204cは改良型材料から形成することができ、第2の研磨要素206cはここに記載される非改良型材料から形成することができる。改良型研磨パッド200cは、改良型研磨パッド200と同様に、3D印刷によって形成することができる。
【0036】
第1の研磨要素204cは、実質的に同じサイズであってよいか、又は改良型研磨パッド200c全体にわたって変化する多孔性又は伸び率といった機械特性を生成するためにサイズが変化してもよい。第1の研磨要素204cは、改良型研磨パッド200c全体に均一に分布していてよいか、又は改良型研磨パッド200cのターゲット特性を実現するために不均一なパターンで配置されてもよい。
【0037】
図2Cでは、第1の研磨要素204cは、第2の研磨要素206cから延びる円柱である。代替的に、第1の研磨要素204cは、例えば環状体、部分的環状体(例えば円弧)、卵形、正方形、矩形、三角形、多角形、若しくは他の不規則な断面形状又はこれらの組み合わせを有する柱など、任意の適切な断面形状のものであってもよい。一実装態様では、第1の研磨要素204cは、改良型研磨パッド200cの硬さ、機械的強度、又は他の所望の特性を調節するために、種々の断面形状のものであってよい。
【0038】
図2Dは、本開示の一実装態様による、改良型研磨パッド200dのパッド本体202の概略部分側断面図である。改良型研磨パッド200dは、改良型研磨パッド200dが相互連結用の第1の研磨要素204dと第2の研磨要素206dとを含んでいることを除き、図2A図2Cの改良型研磨パッド200a、200b又は200cと同様である。複数の相互連結用の第1の研磨要素204dと第2の研磨要素206dのうちの少なくとも1つは、改良型であり、ここに記載される実装態様に従って形成することができる。相互連結用の第1の研磨要素204dと第2の研磨要素206dは、例えば図2A、2B、及び2Cに示されている、パッド本体202の一部を形成する複数の同心のリング及び/又は別個の要素を含んでいてよい。一実装態様では、相互連結用の第1の研磨要素204dは突出する側壁224を含むことができ、第2の研磨要素206dは、第1の研磨要素204dの突出する側壁224を受け入れるための領域225を含むことができる。代替的に、相互連結用の第1の研磨要素204dが突出する側壁を受け入れるように構成された領域を含み、第2の研磨要素206dが突出する側壁を含んでいてもよい。第2の研磨要素206cを相互連結用の第1の研磨要素204dと相互連結させることによって、改良型研磨パッド200dは、増大した引張強度、圧縮強度、及び/又は剪断強度を呈しうる。加えて、相互連結用の側壁は、改良型研磨パッド200dがばらばらになることを防止する。
【0039】
一実装態様において、相互連結用の第1の研磨要素204dと第2の研磨要素206dとの境界は、組成物の少なくとも1つの材料から別の組成物の材料への凝集遷移(cohesive transition)、例えば、相互連結用の第1の研磨要素204dを形成するために使用される第1の組成物から第2の研磨要素206dを形成するために使用される第2の組成物への遷移又は組成勾配を含む。材料の凝集性は、ここに記載される付加製造プロセスの結果であり、これによって、一層ずつ付加的に形成された構造内の2つ以上の化学的組成物のミクロンスケールでの制御及び均質混合が可能になる。
【0040】
図2Eは、本開示の一実装態様による、改良型研磨パッド200eの概略的部分断面図である。改良型研磨パッド200eは、改良型研磨パッド200eが異なる構成のインターロック特徴部を含んでいることを除き、図2Dの改良型研磨パッド200dと同様である。改良型研磨パッド200eは、複数の同心のリング及び/又は別個の要素を有する、第1の研磨要素204e及び第2の研磨要素206eを含みうる。第1の研磨要素204eと第2の研磨要素206eのうちの少なくとも1つは、改良型であり、ここに記載される実装態様に従って形成することができる。一実装態様では、第1の研磨要素204eは水平リッジ226を含むことができ、第2の研磨要素206eは、第1の研磨要素204eの水平リッジ226を受け入れるための水平凹部227を含むことができる。代替的に、第1の研磨要素204位eが水平凹部を含み、第2の研磨要素206eが水平リッジを含んでもよい。一実装態様では、垂直の相互連結特徴部、例えば図2Bの相互連結用の特徴部と、水平の相互連結特徴部、例えば図2D及び図2Eの相互連結特徴部とが組み合わされて、改良型研磨パッドを形成しうる。
【0041】
図2F図2Kは、本開示の実装態様による様々な研磨パッド設計の概略平面図である。図2F図2Kの各々は、基板と接触して基板を研磨するための第1の研磨要素204f~204kをそれぞれ表す白色領域(白色ピクセルの領域)と、第2の研磨要素206f~206kを表す黒色領域(黒色ピクセルの領域)とを有するピクセルチャートを含む。ここで同様に説明されるように、白色領域間の黒色領域内にチャネルが形成されるように、白色領域は通常黒色領域の上方に突出している。一実施例では、ピクセルチャート内のピクセルは、改良型研磨パッドの層又は層の一部の内部において様々な材料の位置を規定するために使用される、矩形アレイタイプのパターン(例えば、X及びYに配向されたアレイ)に配置されている。別の実施例では、ピクセルチャート内のピクセルは、研磨パッドの層又は層の一部の内部において様々な材料の位置を規定するために使用される、六方最密充填配列タイプのパターン(例えば、1個のピクセルが6個の最近接ピクセルに囲まれている)に配列されている。研磨中、研磨スラリーは、チャネルを通って流れることができ、チャネル内に保持されうる。図2F図2Kに示される研磨パッドは、付加製造プロセスを使用して材料の複数の層を堆積させることによって形成することができる。複数の層の各々は、第1の研磨要素204f~204k及び第2の研磨要素206f~206kを形成する2つ以上の材料を含みうる。一実装態様では、第1の研磨要素(複数可)204f~204kは、研磨パッドの上面上に溝及び/又はチャネルが形成されるように、材料の複数の層に平行な平面に対して直角の方向に、第2の研磨要素206f~206kよりも厚くすることができる。
【0042】
図2A-2Kの改良型研磨パッド200a-200kの第1の研磨要素204a~204kは、1つの同一の材料又は複数の材料の同一の組成物から形成することができる。代替的に、図2Aから図2Kの設計における第1の研磨要素204a~204kの材料組成及び/又は材料特性は、研磨特徴部毎に変化させてもよい。個別化された材料組成及び/又は材料特性により、特定のニーズ向けに研磨パッドをカスタマイズすることができる。
【0043】
改良型研磨パッドの配合物の実施例
ここに記載される改良型研磨パッドは、ここに記載される少なくとも1つの樹脂前駆体組成物から形成することができる。樹脂前駆体組成物は、少なくとも1つのプレポリマー組成物を含みうる。プレポリマー組成物は、インクジェット印刷可能なプレポリマー組成物であってよい。樹脂前駆体組成物は、以下の少なくとも1つを含むか、以下の少なくとも1つから本質的になるか、又は以下の少なくとも1つからなる:(1)1つ又は複数のオリゴマー成分;(2)1つ又は複数のモノマー成分;(3)1つ又は複数の光開始剤成分;(4)1つ又は複数の乳化剤/界面活性剤;(5)無機粒子、有機粒子又はそれらの両方;(6)1つ又は複数の多孔性形成剤;及び(7)追加の添加物。
【0044】
樹脂前駆体組成物は、1つ又は複数のオリゴマー成分(1)を含む。最終的な改良型研磨用物品にはターゲット特性を実現することのできる任意の適切なオリゴマー成分が使用されてよい。一実装態様において、オリゴマー成分は、準結晶性の放射線硬化性有機材料を含む多官能性アクリレートオリゴマーを含む。一実装態様において、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料は、準結晶性の脂肪族ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、準結晶性の脂肪族ポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート、準結晶性の脂肪族ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせポリエステルウレタンオリゴマーから選択される。準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料は、単官能性又は多官能性(例えば、二官能性)であってよい。いくつかの実装態様では、準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料は、2つ以上のアクリレートを含む。1つ又は複数のオリゴマー成分は、アクリル系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン系メタ(アクリレート)、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー又はここに記載される他のオリゴマー成分の任意のもののうちの少なくとも1つを含みうる。一実装態様において、オリゴマー成分は、末端官能性アクリレート部分に結合した尿素基を有する。更に、オリゴマー成分は、より高い伸び率及び弾性率を維持することを助けることのできる架橋時規則性を向上させるために、結晶性又は液体結晶性の基を有することができる。オリゴマー成分は、分子間及び分子内相互作用と架橋パッド材料の弾性率とを向上させるために、尿素及びカルボン酸のような他の水素結合基を有することができる。一実装態様において、ウレタンアクリレート基は、架橋フィルムの伸び率及び弾性率を向上させるために、制御されたネットワーク構造を形成する長鎖アルキル基を有する。オリゴマー成分は、低粘度、低揮発性、高反応性、及び低ガラス転移点温度のものとすることができる。オリゴマー成分は、多官能性の成分であってもよい。オリゴマー成分の官能性は、3以下でよい。オリゴマー成分の官能性は、2以下でもよい。一実装態様において、準結晶性のポリエステルウレタン成分は、2以上の官能性を有する。
【0045】
適切な多官能性アクリレートオリゴマーの例には、限定されないが、Dymax Corporationから入手可能な、BOMAR(登録商標)BR-744BT脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートオリゴマー、BOMAR(登録商標)BR-742Sポリエステルウレタンアクリレートオリゴマー、BOMAR(登録商標)BR-582E8脂肪族ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーの名称下のものが含まれる。他の適切なアクリレートオリゴマーには、Dymax Corporationから入手可能な、BOMAR(登録商標)BRシリーズのBR-144B、BR-144H15、BR-302、BR-371S、BR-372、BR-541S、BR-571、BR-582H15、BR-582I10、BR-930D、BR-5825I30が含まれる。
【0046】
1つ又は複数のオリゴマー成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、少なくとも5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、又は55重量%を構成しうる。1つ又は複数のオリゴマー成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、最大10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、又は60重量%を構成しうる。樹脂前駆体組成物中のオリゴマー成分の量は、樹脂前駆体組成物の総重量の約5重量%から約60重量%(例えば、約10重量%から約60重量%、約10重量%から約30重量%、約20重量%から約30重量%、約25重量%から約30重量%)でありうる。
【0047】
樹脂前駆体組成物は、1つ又は複数のモノマー成分(2)を更に含む。モノマー成分は、一般に、インク配合物中のオリゴマー成分に対する良好な溶解性を示し、これによりインクが低粘度に希釈される。モノマー成分はまた、低ガラス転移点温度も有していてよく、このことは、硬化後のインクの可撓性に寄与する。モノマー成分は、多官能性成分であってよい。モノマー成分の官能性は3以下とすることができる。モノマー成分の官能性は2以下でもよい。一実装態様では、モノマー成分は、単官能性モノマー及び二官能性モノマーの両方を含む。一実装態様において、モノマーはアクリレートモノマーである。
【0048】
一実装態様において、モノマーは、1:2以上のアクリレートとウレタンの比を有するアクリレートモノマーである。一実装態様において、モノマーは、2つのアクリレート基と、5cP未満の粘度及び30℃を上回るTgとを有するアクリレートモノマーである。
【0049】
適切な単官能性モノマーの例には、限定されないが、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えばSartomer(登録商標)からのSR285)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ビニルカプロラクタム、イソボルニルアクリレート(「IBOA」)、イソボルニルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、2-[[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチルアクリレート(例えば、RAHN USAコーポレーションからのGenomer 1122又はIGM ResinsからのPhotomer(登録商標)4184)、3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、及び単官能性メトキシ化PEG(350)アクリレートなどが含まれる。
【0050】
適切な二官能性モノマーの例には、限定されないが、ジオール及びポリエーテルジオールのジアクリレート又はジメタクリレート、例えばプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート(例えば、Hitachi ChemicalからのFA-513A)、ジシクロペンタニルメタクリレート(例えば、Hitachi ChemicalからのFA-513M)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(例えば、Sartomer(登録商標)からのSR420)、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート(例えば、Sartomer(登録商標)からのSR9209A)、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer(登録商標)からのSR508)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えば、Sartomer(登録商標)からのSR285)、1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリレート、ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びアルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、例えばSartomer(登録商標)からのSR562、SR563、SR564が含まれる。
【0051】
一実装態様において、モノマーは単官能性又は多官能性アクリレートモノマーである。一実装態様において、アクリレートモノマーは:イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3、3、5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3、3、5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、又はこれらの組み合わせを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる群から選択される。
【0052】
1つ又は複数のモノマー成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、又は75重量%を構成しうる。1つ又は複数のモノマー成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、最大15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、又は80重量%を構成しうる。樹脂前駆体組成物中のモノマー成分の量は、樹脂前駆体組成物の総重量に対して約10重量%から約80重量%(例えば、約30重量%から約80重量%、約50重量%から約80重量%、約50重量%から約70重量%、約60重量%から約70重量%)でありうる。
【0053】
樹脂前駆体組成物は、1つ又は複数の光開始剤成分(3)を更に含む。放射硬化プロセスでは、光開始剤成分によって、入射放射線に応答して硬化が開始される。樹脂前駆体組成物中の光開始剤成分のタイプの選択は、通常、樹脂前駆体組成物の硬化に用いられる硬化放射の波長に依存する。一般に、選択された光開始剤のピーク吸収波長は、特に放射として紫外光を使用して、放射エネルギーを効率的に利用するために、硬化放射の波長の範囲と共に変化する。
【0054】
ここに提供される開示の1つ又は複数の実装態様では、2つのタイプの遊離基光開始剤が使用されうる。ここではバルク硬化光開始剤とも呼ばれる第1のタイプの光開始剤は、UV照射に曝露されると開裂し、直ちに遊離基を生じる開始剤であり、これにより重合が開始されうる。第1のタイプの光開始剤は、分配された液滴の、表面硬化と完全硬化又はバルク硬化の両方に有用でありうる。第1のタイプの光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アセチルフェノン、アルキルフェノン、及びホスフィンオキシドを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。ここでは表面硬化光開始剤とも呼ばれる第2のタイプの光開始剤は、UV照射によって活性化され、第2の化合物からの水素引き抜きによって遊離基を形成し、この遊離基が、実際の開始遊離基となる。この第2の加工物は、共開始剤又は重合相乗剤と呼ばれることが多く、アミン相乗剤であってよい。アミン相乗剤は、酸素阻害を低減させるために使用されており、したがって、迅速な表面硬化のためには第2のタイプの光開始剤が有用でありうる。第2のタイプの光開始剤は、ベンゾフェノン化合物及びチオキサントン化合物を含む群から選択することができるが、これらに限定されない。アミン相乗剤は、活性水素を有するアミンであってよく、一実装態様では、アミン含有アクリレートといったアミン相乗剤は、a)酸素阻害を制限し、b)液滴又は層表面を高速硬化して、液滴又は層の表面の寸法を固定し、c)硬化プロセスを通じて層の安定性を増大させるために、樹脂前駆体組成配合物中でベンゾフェノン光開始剤と組み合わせることができる。いくつかの実装態様では、遊離基の硬化メカニズムを減速させるか又は阻害する二原子酸素による遊離基のクエンチを遅延させるか防止するために、酸素が制限されているか又は酸素を含まない硬化雰囲気又は環境が選択されてよい。酸素が制限されているか又は酸素を含まない環境は、不活性ガス雰囲気、及び乾燥し、脱気され、酸素をほぼ含まない化学試薬を含む。
【0055】
適切な光開始剤の例には、限定されないが、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-イソプロピルフェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシ-アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオンフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-2,4,6トリメチルフェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノ-プロピオニル)-9-n-オクチルカルバゾール、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1フェニル-1-プロパノンが含まれる。市販の光開始剤の適切なブレンドには、限定されないが、Ciba(登録商標)Specialty ChemicalsからのDarocur 4625、Irgacure 819、Irgacure 1173、Irgacure 2022、Irgacure 2100、及びLamberti(登録商標)からのEsacure KT37、Esacure KT55、Esacure KTO046の名称下のものが含まれる。Irgacureシリーズ184、2022、2100、250、270、295、369、379、500、651、TPO、TPO-L、754、784、819、907、1173、又は4265といった光開始剤は、BASFのものでもよいであろう。アミン相乗剤は、アクリル基を含むか又は含まない二級又は三級アミノ化合物とすることができる。このような品目の例には、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、又はアクリレート相乗的オリゴアミン(例えば、Genomer5142)を含む。
【0056】
一実装態様において、光開始剤は、フリーラジカルタイプの光開始剤である。一実装態様において、光開始剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド、又はこれらの組み合わせから選択される。一実装態様において、光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アセチルフェノン、アルキルフェノンホスフィンオキシド、ベンゾフェノン化合物、及びチオキサントン化合物を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる群から選択される。
【0057】
樹脂前駆体組成物中の光開始剤成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、少なくとも0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、又は17重量%を構成しうる。光開始剤成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、最大1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、17重量%、又は20重量%を構成しうる。樹脂前駆体組成物中の光開始剤成分の量は、樹脂前駆体組成物の総重量に対して約0.1重量%から約20重量%(例えば、約0.5重量%から約5重量%;約0.5重量%から約2.5重量%、約5重量%から約10重量%;約10重量%から約15重量%;又は約15重量%から約20重量%)でありうる。
【0058】
樹脂前駆体組成物は、(4)1つ又は複数の乳化剤/界面活性剤を更に含むことができる。1つ又は複数の乳化剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性又はこれらの組み合わせから選択される。ここで使用される「乳化剤」は、エマルションの形成を可能にする化合物又は物質を指す。乳化剤は、乳化剤が、少なくとも1つのアニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性界面活性剤を含み、樹脂前駆体組成物に液体ポリマーエマルション中多孔性形成剤を提供するために十分な量で使用されることを前提に、エマルションを安定させることのできる任意の表面活性化合物又はポリマーから選択することができる。一般に、このような表面活性化合物又はポリマーは、エマルション中における多孔性形成剤の分散量の癒合を防止することにより、エマルションを安定化する。現行の樹脂前駆体組成物中の乳化剤として有用な表面活性化合物は、アニオン性、カチオン性、両性若しくは非イオン性界面活性剤又は界面活性剤の組み合わせである。異なるタイプの界面活性剤及び/又は同じタイプの異なる界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0059】
樹脂前駆体組成物中の乳化剤/界面活性剤成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、少なくとも0.1重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、又は17重量%を構成しうる。乳化剤成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、最大1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、17重量%、又は20重量%を構成しうる。樹脂前駆体組成物中の乳化剤成分の量は、乳化剤の総重量の約0.1重量%から約20重量%(例えば、約1重量%から約5重量%、約5重量%から約10重量%、約10重量%から約15重量%、又は約15重量%から約20重量%)でありうる。
【0060】
樹脂前駆体組成物は、無機粒子、有機粒子、又はそれらの両方(5)を更に含むことができる。3D印刷プロセスは、層あたり少なくとも1つの組成物の層ごとの逐次堆積を含むため、特定のパッド特性を獲得するため及び/又は特定の機能を実施するために、パッド層の上又は内部に配置される無機又は有機の粒子を追加で堆積することも適切でありうる。無機又は有機の粒子は、50ナノメートル(nm)から100マイクロメートル(μm)の範囲の大きさであってよく、3Dプリンタ306によって分配される前に前駆体材料に追加することができるか、又は1から50重量%(wt%)の比で未硬化の印刷層に追加することができる。無機又は有機の粒子は、極限引張強度を向上させるため、降伏強度を向上させるため、一定の温度範囲にわたる貯蔵弾性率の安定性を向上させるため、熱伝達を向上させるため、表面のゼータ電位を調整するため、及び表面の表面エネルギーを調整するために、改良型研磨パッドの形成プロセス中に追加することができる。
【0061】
粒子のタイプ、化学組成、又は大きさ、及び追加される粒子は、用途又は実現すべきターゲット効果により変動しうる。無機又は有機の粒子は、1ナノメートル(nm)から100マイクロメートル(μm)の範囲の大きさであってよく、液滴噴出プリンタ306によって分配される前に前駆体材料に追加されてよいか、又は1重量%(wt%)と約50重量%の間の比で未硬化の印刷層に追加されてよい。いくつかの実装態様では、粒子は、金属間化合物、セラミック、金属、ポリマー、及び/又は金属の酸化物、例えば、セリア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、硫化亜鉛、窒化物、炭化物、又はこれらの組み合わせを含みうる。一実施例では、パッドの上又は内部に配置された無機又は有機の粒子は、PEEK、PEK、PPS、並びに改良型研磨パッドの熱伝導性及び/又は他の機械特性を向上させる他の同様の材料といった高性能ポリマーの粒子を含みうる。
【0062】
樹脂前駆体組成物中の粒子成分は、樹脂前駆体組成物の総重量の、少なくとも0.1重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、又は17重量%を構成しうる。粒子組成物は、樹脂前駆体組成物の総重量の、最大1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、17重量%、又は20重量%を構成しうる。樹脂前駆体組成物中の粒子成分の量は、樹脂前駆体組成物の総重量に対して約0.1重量%から約20重量%(例えば、約1重量%から約5重量%、約5重量%から約10重量%、約10重量%から約15重量%、又は約15重量%から約20重量%)でありうる。
【0063】
樹脂前駆体組成物は、1つ又は複数の多孔性形成剤(6)を更に含むことができる。一実装態様において、多孔性形成剤は、グリコール、グリコール-エーテル、アミン、又はこれらの組み合わせの群から選択される。一実装態様において、多孔性形成剤は、エチレングリコール、ブタンジオール、ダイマージオール、プロピレングリコール-(1,2)及びプロピレングリコール-(1,3)、オクタン-1,8-ジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール(1,4-ビス-ヒドロキシメチルシクロヘキサン)、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール-(1,6)、ヘキサントリオール-(1,2,6)ブタントリオール-(1,2,4)、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール及びソルビトール、メチルグリコシド、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エタノールアミン、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)又はこれらの組み合わせの群から選択される。樹脂前駆体組成物中の多孔性形成剤の量は、樹脂前駆体組成物の総重量に対して約0.1重量%から約20重量%(例えば、約1重量%から約5重量%、約5重量%から約10重量%、約10重量%から約15重量%、又は約15重量%から約20重量%)でありうる。
【0064】
樹脂前駆体組成物は、1つ又は複数の追加の添加物(7)を更に含みうる。追加の添加物には、限定されないが、安定剤、界面活性剤、レベリング添加物、pH調整剤、封鎖剤、脱酸素剤、ポリマー球及び着色剤が含まれる。
【0065】
ここに記載される実装態様の目的及び利点は、以下の実施例により更に説明される。特定の材料及びその量と、これらの実施例に記載される他の条件及び詳細とは、ここに記載される実装態様を制限するために使用されるものではない。本開示の実施例は、文字「E」とそれに続く試料番号によって同定され、本開示の実施例ではない比較実施例は、文字「X」とそれに続く試料番号によって示される。
【0066】
上記のように、いくつかの実装態様では、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206といった2つ以上の研磨要素のうちの少なくとも1つを形成するために使用される材料のうちの1つ又は複数は、少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体組成物の逐次堆積及び堆積後処理によって形成される。一般的に、硬化性樹脂前駆体組成物は、付加製造システム350(図3A参照)の前駆体送達ステーション353(図3A参照)において実施される前駆体配合プロセスの間に混合されたものであり、官能性オリゴマー、多孔性形成剤(例えば、水)、乳化剤、疎水性、反応性希釈剤及び硬化成分、例えば開始剤を含む樹脂前駆体組成物の配合物を含むであろう。これらの成分のいくつかの例を表3に列挙する。
【0067】
【0068】
官能性オリゴマーの実施例は、表Iの品目O1-O4に示される。反応性希釈剤とモノマーの例は、表Iの品目M1-M12に示される。硬化成分の例は、表Iの品目P1-P2に示される。表Iに示される品目O1-O3は、Dymax Corporationから入手可能であり、品目M2及びM3はHitachi Chemicalから入手可能であり、品目O4、M4-M6、及びM11はSartomerから入手可能である。品目M1、M7、及びM9は、Sigma-Aldrich(登録商標)Co. Itemから入手可能であり、M12はドイツ国のBYK-Gardner GmbHから入手可能である。品目M8は、IGM Resinsから入手可能である。品目P1-P2及びA1は、Ciba Specialty Chemicals Inc.及びRAHN USA Corporationから入手可能である。
【0069】
ここに記載される付加製造プロセスの1つの利点は、パッド本体構造内部に使用される材料の組成と、種々の材料の構造的配置に基づいて調整することのできる特性を有する、改良型研磨パッドを形成する能力を含む。以下の情報は、いくつかの材料配合物と、これらの配合物及び/又は処理技術内で変動する種々の成分が、従来の研磨パッドの設計より改善された研磨結果を実現するであろう改良型研磨パッドを形成するために必要な特性のうちのいくつかに対して有する影響の、いくつかの実施を提供する。これらの実施例に提供される情報は、改良型研磨パッド200の少なくとも一部分、例えば第1の研磨要素204、第2の研磨要素206、又は第1の研磨要素204と第1の研磨要素206の両方の一部を形成するために使用することができる。ここに記載される特性のうちのいくつかを調整するために他の同様な化学配合物及び処理技術を使用することができるため、ここに記載される実施例は、ここに記載される開示の範囲を限定することを意図しない。
【0070】
上述及び後述の硬化性樹脂前駆体組成物成分の実施例は、比較例であることが意図されており、当業者であれば、ターゲット特性を実現するために、様々な供給源からの他の適切なモノマー/オリゴマーを見つけることができるであろう。反応性希釈剤のいくつかの例は、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、カプロラクトンアクリレート、及びアルコキシル化ラウリルメタクリレートである。第1の材料はSigma-Aldrichから入手可能であり、バランスはSartomer USA及び/又はRAHN AG USAから入手されうる(SRシリーズ 203、217、238、242、306、339、355、368、420、484、502、506A、508、SR531、550、585、495B、256、257、285、611、506、833S、及び9003B、CDシリーズ 421A、535、545、553、590、730、及び9075、Genomerシリーズ 1116、1117、1119、1121、1122、5142、5161、5275、6058、7151、及び7210、Genocureシリーズ、BP、PBZ、PMP、DETX、ITX、LBC、LBP、TPO、及びTPO-L、並びにMiramerシリーズ、M120、M130、M140、M164、M166、及びM170)。二官能性架橋剤のいくつかの例は、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、及び1,4-ブタンジオールジアクリレートであり、これらはSigma-Aldrichから入手可能である。オリゴマーのいくつかの例には、脂肪族オリゴマー(Sartomer USAのCNシリーズ131、131B、132、152、508、549、2910、3100及び3105)、ポリエステルアクリレートオリゴマー(Sartomer USAのCNシリーズ292、293、294E、299、704、2200、2203、2207、2261、2261LV、2262、2264、2267、2270、2271E、2273、2279、2282、2283、2285及び2303)、並びに脂肪族ウレタンオリゴマー(Sartomer USAのCNシリーズ929、959、961H81、962、969、964A85、965、968、980、986、989、991、992、996、2921、9001、9007、9013、9178及び9783)が含まれうる。3550、3560、307、378、1791、1794、9077、A515、A535、JET9510、JET9511、P9908、UV3500、UV3535、DISPERBYK168、及びDISPERBYK2008といった薬剤又は添加物は、BYKから供給されうる。Irgacureシリーズ184、2022、2100、250、270、295、369、379、500、651、TPO、TPO-L、754、784、819、907、1173、又は4265といった第1のタイプの光開始剤は、BASFからのものでありうる。加えて、他の官能性オリゴマー及び樹脂前駆体組成物成分、例えばEbecrylシリーズ(EB):40、53、80、81、83、110、114、130、140、150、152、154、168、170、180、220、230、242、246、264、265、270、271、284、303、350、411、436、438、450、452、524、571、600、605、608、657、745、809、810、811、812、830、860、870、871、885、888、889、893、1258、1290、1291、1300、1360、1710、3200、3201、3411、3415、3418、3500、3600、3700、3701、3720、4265、4827、4833、4849、4858、4883、5129、7100、8100、8296、8301、8311、8402、8405、8411、8412、8413、8414、8465、8501、8602、8701、8702、8804、8807、8808、及び8810は、Allnex Corp.,から購入することができる。
【0071】
ここに記載される改良型研磨パッドを形成するための配合物の実施例は以下の表IIに示される。
【0072】
【0073】
表IIIは、表IIに示される配合物に関する結果を示す。表IIIは、表IIに開示される配合物の架橋フィルムの機械的性能を示す。試料は、シリコンモールドで形成され(即ち3D印刷されなかった)、プラスチックの引張特性のための標準試験法であるASTM D638により特徴づけた。すべての試料は、Hバルブを使用して概ね1150mJ/cmのUV線量に曝露された。試料は2.5と2.8mmの間の厚さを有していた。
【0074】
【0075】
ここに記載される改良型研磨パッドを形成するための配合物の更なる実施例を以下の表IVに示す。
【0076】
【0077】
表Vは、表IVに示される配合物に関する結果を示す。表Vは、表IVに開示される配合物の架橋フィルムの機械的性能を示す。試料は、シリコンモールドで形成され(即ち3D印刷されなかった)、プラスチックの引張特性のための標準試験法であるASTM D638により特徴づけた。すべての試料は、Hバルブを使用して概ね1150mJ/cmのUV線量に曝露された。試料は2.5と2.8mmの間の厚さを有する。
【0078】
図3Aは、本開示の1つ又は複数の実装態様による付加製造プロセスを使用して改良型研磨パッドを形成するために使用することのできる、付加製造システム350の概略断面図である。付加製造プロセスは、限定しないが、ポリジェット堆積プロセス、インクジェット印刷プロセス、熱溶解積層プロセス、バインダー噴射プロセス、粉末床溶融結合プロセス、選択的レーザー焼結プロセス、ステレオリソグラフィプロセス、バット光重合プロセス、デジタル光処理、シート積層プロセス、指向性エネルギー堆積プロセス、又は他の同様の3D堆積プロセスといったプロセスを含みうる。
【0079】
付加製造システム350は、通常、前駆体送達セクション353、前駆体配合セクション354、及び堆積セクション355を含む。前駆体配合セクション354は、前駆体送達ステーション353に位置決めされた樹脂前駆体成分を混合して1つ又は複数の樹脂前駆体組成物を形成する、付加製造システム350のセクションを含む。堆積セクション355は、通常、支持体302の上に配置された層の上に1つ又は複数の樹脂前駆体組成物を堆積させるために使用される付加製造デバイス(即ち、以降の印刷ステーション300)を含むであろう。改良型研磨パッド200は、印刷ステーション300内部において支持体302上で印刷されうる。一般に、改良型研磨パッド200は、図3Aに示されるプリンタ306A及びプリンタ306Bといった1つ又は複数の液滴噴射プリンタ306を使用して、CAD(コンピュータ支援設計)プログラムに基づいて一層ずつ形成される。プリンタ306A、306B及び支持体302は、印刷プロセス中、互いに対して移動しうる。
【0080】
液滴噴射プリンタ306は、液体前駆体を分配するための1つ又は複数のノズル(例えば、ノズル309-312)を有する1つ又は複数のプリントヘッド308(例えば、プリントヘッド308A、308B)を含みうる。図3Aの実装態様では、プリンタ306Aは、ノズル309を有するプリントヘッド308Aと、ノズル310を有するプリントヘッド308Bとを含んでいる。ノズル309は、第1の液体前駆体組成物を分配して第1のポリマー材料、例えば多孔性ポリマーを形成するように構成することができ、ノズル310は、第2の液体前駆体を分配して第2のポリマー材料、例えば非多孔性ポリマー、又は多孔性ポリマーを形成するために使用することができる。液体前駆体組成物は、ターゲット特性を有する多孔性研磨パッドを形成するための選択された場所又は領域に分配することができる。これらの選択された場所は、集合的にCAD適合ファイルとして保存することのできるターゲット印刷パターンを形成し、ターゲット印刷パターンは次いで、液滴噴射プリンタ306のノズルからの液滴の送達を制御する電子コントローラ305によって読み込まれる。
【0081】
電子コントローラ305は通常、印刷ステーション300を含む付加製造システム350内部の構成要素の制御と自動化を促進するために使用される。電子コントローラ305は、例えば、コンピュータ、プログラマブル論理コントローラ、又は組込型コントローラでありうる。電子コントローラ305は一般に、中央処理装置(CPU)(図示せず)、メモリ(図示せず)、及び入出力(I/O)用サポート回路(図示せず)を含む。CPUは、様々なシステム機能、基板の移動、チャンバプロセス、及び制御支援ハードウエア(例えば、センサ、モータ、ヒータなど)を制御するために工業環境で使用される任意の形態のコンピュータプロセッサのうちの1つであってよく、システム内で実施される処理をモニタすることができる。メモリは、CPUに接続されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、又は任意の他の形態のローカル若しくは遠隔のデジタルストレージといった容易に利用可能な非揮発性メモリのうちの1つ又は複数であってよい。メモリ内部に、CPUに命令するためのソフトウエア命令及びデータをコード化して記憶させることができる。従来の方式でプロセッサをサポートするためのサポート回路もCPUに接続される。サポート回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入出力回路、サブシステムなどを含みうる。電子コントローラ305によって読み取り可能なプログラム(又はコンピュータ命令)は、どのタスクが付加製造システム350の構成要素によって実施可能かを決定する。このプログラムは、プリンタ306から送達される液滴の送達及び位置決め、並びに電子コントローラ305内で実施されている様々なプロセスタスク及び様々なシーケンスに沿った印刷ステーション300内部の構成要素の移動、支持、及び/又は位置決めの、モニタリング、実行及び制御に関連するタスクを実施するためのコードを含む、コントローラ305によって読み取り可能なソフトウエアでありうる。
【0082】
3D印刷の後、改良型研磨パッド200は、付加製造システム350の堆積セクション355内部に配置された硬化装置320を使用して固化又は部分的に固化することができる。硬化装置320によって実施される硬化プロセスは、印刷された研磨パッドを硬化温度に加熱すること又はパッドを電磁放射若しくは電子ビーム硬化のうちの1つ又は複数の形態に曝露することによって実施することができる。一実施例では、硬化プロセスは、印刷された研磨パッドを、硬化装置320内部に配置された可視光源、紫外光源、X線源、又は他のタイプの電磁波源といった電磁放射源によって生成された放射321に曝露することによって実施されうる。
【0083】
付加製造プロセスは、異なる材料及び/又は異なる組成物の材料から形成された別個の特徴部を有する改良型研磨パッドを作製するための、便利且つ高度に制御可能なプロセスを提供する。
【0084】
別の実装態様では、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206は、各々2つ以上の組成物の混合物から形成されていてよい。一実施例では、第1の組成物は、プリントヘッド308Aといった第1のプリントヘッドによって液滴の形態で分配することができ、第2の組成物は、プリンタ306Aのプリントヘッド308Bといった第2のプリントヘッドによって液滴の形態で分配することができる。第1の研磨要素204を複数のプリントヘッドから送達された液滴の混合物で形成することは、一般に、第1の研磨要素204に対応する複数のピクセルを電子コントローラ305内に見られる堆積マップ内部の所定のピクセルに合わせて整列させることを含む。プリントヘッド308Aは次いで、第1の研磨要素204が形成されるべき場所に対応するピクセルと整列し、次いで所定のピクセル上に液滴を分配することができる。したがって、一実装態様において、改良型研磨パッドは、第1の液滴組成物の液滴を堆積させることによって形成される材料の第1の組成物と、第2の液滴組成物の液滴を堆積させることによって形成される第2の材料の組成物を含む第2の材料とから形成される。
【0085】
図3Bは、パッド製造プロセス中の印刷ステーション300の一部分と改良型研磨パッド200の概略断面図である。印刷ステーション300は、図3Bに示されるように、改良型研磨パッド200の一部分を逐次的に形成するために使用される2つのプリンタ306A及び306Bを含む。図3Bに示される改良型研磨パッド200の一部分は、例えば、最終的に形成される改良型研磨パッド200の中の第1の研磨要素204又は第2の研磨要素206の一部を含みうる。処理中、プリンタ306A及び306Bは、支持体302の第1の表面に対して、続いて層ごとのプロセスにおいて支持体302上に堆積した成長中の研磨パッドの表面に対して、それぞれ液滴「A」又は「B」を送達するように構成されている。
【0086】
図3Bに示すように、第2の層348は、支持体302上に形成された第1の層346の上に堆積される。一実装態様では、第2の層348は、パッド製造プロセス内でプリンタ306A及び306Bの下流に配置された硬化装置320によって処理された第1の層346の上に形成される。いくつかの実装態様では、プリンタ306A及び306Bのうちの1つ又は複数が、液滴「A」及び/又は「B」を、以前に形成された第1の層346の表面346A上に堆積させている間に、第2の層348の複数の部分を硬化装置320によって同時に処理することができる。この場合、現在形成中の層は、硬化ゾーン349Aのそれぞれの側に配置された処理済み部分348A及び未処理部分348Bを含みうる。未処理部分348Bは通常、分配された液滴、例えば分配された液滴343及び347のアレイを含み、これらの液滴は、それぞれプリンタ306B及び306Aの使用により、以前に形成された第1の層346の表面346A上に堆積される。
【0087】
図3Cは、以前に形成された層346の表面346A上に配置された、分配された液滴343の近接断面図である。分配された液滴343中の材料の特性に基づき、及び表面346Aの表面エネルギーに起因して、分配された液滴は、表面張力により最初に分配された液滴(例えば液滴「A」又は「B」)のサイズよりも大きい量で表面全体に広がるであろう。分配された液滴の広がりの量は、液滴が表面346A上に堆積された瞬間からの時間に応じて変化するであろう。しかしながら、非常に短い時間(例えば<1秒)の後で、液滴の広がりは平衡サイズに到達し、平衡接触角αを有するであろう。表面全体にわたる分配された液滴の広がりは、成長中の研磨パッドの表面上における液滴の配置の解像度に影響し、したがって最終的な研磨パッドの様々な領域内部に見られる特徴部及び材料組成物の解像度に影響する。
【0088】
いくつかの実装態様では、液滴「A」及び「B」が一定の期間にわたって基板表面に接触した後で、これらの液滴の一方又は両方を曝露して、液滴が基板表面で未硬化の平衡サイズに広がる機会を有する前に、各液滴をターゲットサイズに硬化、即ち「固定」することが有用である。この場合、分配された液滴の各々の解像度を制御するために、分配された液滴及び硬化装置320によって液滴が配置された表面に対して供給されるエネルギー、並びに液滴の材料組成が調整される。したがって、3D印刷プロセス中に制御又は調節する1つの任意選択的パラメータは、液滴を分配置した表面に対する分配された液滴の表面張力の制御である。
【0089】
いくつかの実装態様では、硬化プロセスの動態を制御し、酸素阻害を防止し、及び/又は液滴を堆積させる表面上における液滴の接触角を制御するために、液滴の配合物に対して1つ又は複数の硬化促進成分(例えば光開始剤)を追加することが有用である。硬化促進成分は通常:1)電磁放射のターゲット量への最初の曝露中に、分配された液滴中の材料に生じるバルク硬化の量、2)電磁放射のターゲット量への最初の曝露中に、分配された液滴中の材料に生じる表面硬化の量、及び3)分配された液滴の表面硬化領域に対する表面特性修飾(例えば、添加物)の量を調整することのできる材料を含むであろうことに留意されたい。分配された液滴の表面硬化領域に対する表面特性修飾の量は通常、分配されて少なくとも部分的に硬化された液滴の表面に見られる、硬化又は部分硬化されたポリマーの表面エネルギーの調整を含む。
【0090】
分配された各液滴の表面特性及び寸法を印刷プロセス中に「固定」するために、分配された各液滴を部分的に硬化することが有用であることが分かった。液滴をターゲットサイズに「固定」する能力は、液滴の材料組成に対して少なくとも1つの硬化促進成分のターゲット量を加えること、及び付加製造プロセス中に十分な量の電磁エネルギーを硬化装置320から送達することによって実現することができる。いくつかの実装態様では、付加層形成プロセス中に、平方センチ当たり約1ミリジュール(mJ/cm)と100mJ/cmの間、例えば約10~20mJ/cmの紫外(UV)光を液滴に送達することが可能な、硬化装置320を使用することが有用である。UV照射は、水銀マイクロ波アークランプ(例えばHバルブ、H+バルブ、Dバルブ、Qバルブ、及びVバルブタイプのランプ)、パルス式キセノンフラッシュランプ、高効率UV発光ダイオードアレイ、及びUVレーザーといった任意のUV源によって提供することができる。UV照射は、約170nmと約500nmの間の波長を有しうる。
【0091】
いくつかの実装態様では、分配された液滴「A」、「B」のサイズは、約10から約200ミクロン、例えば約50から約70ミクロンであってよい。液滴が全体に及び上に分配される基板又はポリマー層の表面エネルギー(ダイン)に応じて、未硬化の液滴は、表面の上及び全体で約10ミクロンと約500ミクロンの間、例えば約50ミクロンと約200ミクロンの間の固定液滴サイズ343Aに広がることができる。一実施例では、このような液滴の高さは、表面エネルギー、濡れ、及び/又は、流動剤、増粘剤、及び界面活性剤などの他の添加物を含みうる樹脂前駆体組成物といった要素に応じて、約5ミクロンから約100ミクロンでありうる。添加物の1つの供給源は、ドイツ国ゲーレッツリートのBYK-Gardner GmbHである。
【0092】
いくつかの実装態様では通常、分配された液滴が、固定されるべき場所である表面と接触した後約1秒未満、例えば約0.5秒未満で「固定」されるように、光開始剤、液滴組成物中の光開始剤の量、及び硬化装置320が供給するエネルギーの量を選択することが有用である。分配される液滴の硬化時間は硬化装置320から提供される放射エネルギーの量と波長に依存するため、送達される硬化エネルギーへの曝露によって、分配された液滴が部分的に硬化されるまでにかかる実際の時間は、送達された放射に液滴が曝露される前に表面上にある時間より長くても短くてもよい。一実施例では、10~15mJ/cmの放射曝露レベルのUV照射の場合、120マイクロメートル(μm)の分配された液滴を部分的に硬化するために使用される曝露時間は約0.4マイクロ秒(μs)である。このような短い時間枠の中で液滴を「固定」しようとするためには、改良型研磨パッドの表面346Aを硬化装置320から送達された放射321に曝露する間に、液滴噴射プリンタ306aの分配ノズルを、研磨パッドの表面から短距離に、例えば0.1と10ミリメートル(mm)の間、又は場合によっては0.5と1mmの間に位置決めしなければならない。液滴組成物、以前に形成された層の硬化の量(例えば、以前に形成された層の表面エネルギー)、硬化装置320からのエネルギーの量、及び液滴組成物中の光開始剤の量を制御することによって、液滴の接触角αを制御して、固定された液滴のサイズを制御し、したがって印刷プロセスの解像度を制御することが可能であるということも分かった。一実施例では、下層の硬化は、約70%のアクリレート変換の硬化であってよい。固定された、又は少なくとも部分的に硬化された液滴は、ここでは硬化された液滴とも呼ばれる。いくつかの実装態様では、固定された液滴のサイズ343Aは、約10と約200ミクロンの間である。いくつかの実装態様では、「固定された」液滴の、ここでは動的接触角(例えば、非平衡接触角)とも呼ばれる接触角は、望ましくは、少なくとも50°、例えば55°超、又は場合によっては60°超、更には70°超の値に制御することができる。
【0093】
付加製造プロセスによって層又は層の一部分を形成するために使用されるピクセルチャート内部のピクセルの解像度は、分配された液滴の平均「固定」サイズによって規定されうる。したがって、層又は層の一部分の材料組成物は、「分配された液滴組成物」によって、即ち、特定の液滴組成物の液滴を含む、層又は層の一部分の内部のピクセルの総数のパーセンテージによって規定することができる。一実施例では、形成された改良型研磨パッドの1つの層の一領域が、60%の第1の分配された液滴組成物の、分配された液滴の組成物を有するものとして規定される場合、この領域内部のピクセルの60%は第1の材料組成物を含む固定された液滴を含むことになる。層の一部分が複数の材料組成物を含んでいる場合には、改良型研磨パッド内部の一領域の材料組成物を、「材料組成比」として規定することも有用でありうる。材料組成比は、第1の材料組成物が上に配置されたピクセルの数の、第2の材料組成物が上に配置されたピクセルの数に対する比である。一実施例では、ある領域が、表面の一エリア全体に配置された1,000個のピクセルを含み、このピクセルのうち、600個が第1の液滴組成物の固定液滴を含み、400個が第2の液滴組成物の固定された液滴を含むものとして規定された場合、材料組成比は、3:2の、第1の液滴組成物の第2の液滴組成物に対する比を含む。各ピクセルが1よりも多い固定された液滴(例えばピクセルあたり1.2個の液滴)を含みうる実装態様では、材料組成比は、規定された領域内部に見られる第1の材料の固定された液滴の数の、第2の材料の固定された液滴の数に対する比として規定されるであろう。一実施例では、ある領域が1,000個のピクセルを含み、この領域内部に第1の液滴組成物の固定された液滴が800個、第2の液滴組成物の固定された液滴が400個存在するものと規定される場合、改良型研磨パッドのこの領域の材料組成比は、2:1である。
【0094】
次の下層を形成する分配された液滴の表面の硬化量は、注目すべき研磨パッド形成プロセスパラメータである。なぜならば、この「初回線量」における硬化量が、分配された液滴の次の層が付加製造プロセス中に曝露される表面エネルギーに影響するからである。続いて堆積される層が成長するのにつれてこれらを通じて供給される硬化用放射の更なる伝達に各堆積層が繰り返し曝露されることに起因して、初回硬化線量は、形成される研磨パッド内に最終的に達成される各堆積層を硬化させる量にも影響するためやはり注目に値する。形成された層の過剰硬化を防止することは通常、過剰硬化された材料の材料特性及び/又は硬化された層の表面の、後続のプロセスで続いて堆積される分配された液滴に対する濡れ性に影響するため有用である。一実施例では、分配された液滴の10~30ミクロンの厚さの層の重合を行うことは、各液滴を表面に分配すること、次いで、約0.1秒と約1秒の間の時間が経過した後に、分配された液滴を約10mと約15mJ/cmの間の放射曝露レベルでUV照射に曝露することにより実施されうる。しかしながら、いくつかの実装態様では、初回硬化線量の間に送達される放射レベルは、層ごとに異なっていてよい。例えば、層ごとに異なる分配される液滴組成物に起因して、各初回線量におけるUV照射への曝露の量は、現在曝露されている層と、1つ又は複数の下層とに対して、有用なレベルの硬化を提供するように調整されうる。
【0095】
いくつかの実装態様では、液滴組成及び、最初の硬化プロセスの間に硬化装置320から送達されるエネルギーの量を制御することが有用であり、最初の硬化プロセスは、分配された液滴が堆積した層が、層をターゲット量だけ部分的にのみ硬化させるために、硬化装置320によって提供されるエネルギーに直接曝露されるプロセスである。一般的に、形成された層の表面エネルギーを制御することは、分配された液滴サイズを制御するために重要であるため、最初の硬化プロセスは、分配された液滴を、バルク硬化するよりも、表面硬化する方が主であった方が望ましい。一実施例では、分配された液滴が部分的に硬化される量は、分配された液滴中の材料の化学変換の量によって規定することができる。一実施例では、ウレタンポリアクリレート含有層を形成するために使用される分配された液滴中に見られるアクリレートの変換は、以下の等式により計算されるパーセンテージxによって規定される:
(式中、AC=C及びAC=Oは、FT-IR分光法を使用して見られる、910cm-1におけるC=Cピーク及び1700cm-1におけるC=Oピークの値である)。重合中、アクリレート中のC=C結合はC-C結合に変換されるが、アクリレート中のC=Oに変換は生じない。したがって、C=CのC=Oに対する強度はアクリレート変換率を示す。AC=C/AC=O比は、硬化された液滴中のC=C結合のC=O結合に対する相対比を指し、したがって(AC=C/AC=Oは、液滴中のAC=CのAC=Oに対する初期比を意味し、一方(AC=C/AC=Oは、液滴が硬化された後の基板表面におけるAC=CのAC=Oに対する比を意味する。いくつかの実装態様では、一の層が最初に硬化される量は、分配された液滴のうちの約70%以上であってよい。いくつかの実装態様では、分配された液滴を約70%から約80%のレベルの硬化エネルギーに最初に曝露している間に、分配された液滴中の材料を部分的に硬化させ、それによって分配された液滴のターゲット接触角を達成し得ることが有用でありうる。上面上の未硬化の又は部分的アクリレート材料は、後続の液滴と共重合され、それにより層間の粘着が生み出されると考えられている。
【0096】
最初の層の形成プロセスの間に、分配された液滴を部分的に硬化させるプロセスは、残留未結合基、例えば残留アクリル基の存在によって、後で堆積される層の間にいくらかの化学的結合/接着が存在することを確実にするためにも重要でありうる。残留未結合基は重合していないので、後で堆積される層との化学結合の形成に関与することができる。このように、層間の化学結合の形成は、パッド形成プロセス中の層成長により、層の方向(例えば、図3BのZ方向)に形成された改良型研磨パッドの機械的強さを増大させることができる。上記のように、層間結合は、物理的力及び/又は化学的力の両方によって形成されうる。
【0097】
分配された液滴の混合又は分配された液滴の位置決めは、個別に調節可能な特性を有する層と、形成された層の複合物であるターゲットパッド特性を有する研磨パッドを形成するために、層ごとに調整することができる。一実施例では、図3Bに示すように、分配された液滴の混合物は、50:50の比の分配された液滴343と347((又は1:1の材料組成比)を含み、分配された液滴343は、分配された液滴347中に見られる材料とは異なる少なくとも1つの材料を含む。第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206といったパッド本体202の部分の特性は、堆積プロセス中の分配された液滴の位置決めによって形成される第1の組成物と第2の組成物の比及び/又は分配に従って調整又は調節されうる。例えば、第1の組成物の重量%は、総組成物重量に基づいて約1重量%から総組成物重量に基づいて約100%に形成することができる。同様に、第2の組成物は、総組成物重量に基づいて約1重量%から総組成物重量に基づいて約100%に形成することができる。硬さ及び/又は貯蔵弾性率といった必要とされる材料特性に応じて、2つ以上の材料の組成物は、ターゲット効果を実現するために異なる比で混合することができる。一実装態様では、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206の組成物は、少なくとも1つの組成物又は組成物の混合物、並びに、1つ又は複数のプリンタによって分配される液滴のサイズ、位置、及び/又は密度を選択することによって制御される。したがって、電子コントローラ305は通常、形成中の研磨パッドの表面上に、ターゲット密度及びパターンで位置決めされた、相互に組み合わされた液滴を有する層を形成するために、ノズル309~310、311~312を位置決めするように適合される。いくつかの実装態様では、分配された液滴は、各液滴が、他の液滴とブレンドせず、したがって各々が硬化前に別個の材料の「島」として残留している位置に配置されることが確実となるように、堆積させることができる。いくつかの実装態様では、分配された液滴はまた、構築速度を上昇させるため又は材料特性をブレンドするために、同じ層内部で先立って分配された液滴の上に配置することができる。表面上での互いに対する液滴の配置は、層内の分配された液滴の各々の挙動を部分的に混合できるようにするために調整されてもよい。いくつかの事例では、隣接する液滴中の組成物の混合をより強く又は弱くするために、液滴同士をそれぞれより近くに又はより遠くに配置することが有用でありうる。他の分配された液滴に対する液滴の配置と、各液滴の組成物を制御することが、形成された改良型研磨パッドの機械的特性及び研磨特性に影響しうることが分かった。
【0098】
いくつかの実装態様では、分配された少なくとも2つの異なる樹脂前駆体組成物の液滴は、他の液滴とブレンドせず、したがって各々が硬化前に別個の材料の「島」として残る位置に配置されることが確実となるように、堆積させることができる。一実装態様において、少なくとも2つの樹脂前駆体組成物の各々は、形成される研磨パッドの表面のターゲットエリア内部の樹脂前駆体組成物の各タイプの液滴のパーセンテージを調整することにより、同ターゲットエリア全体の平均ゼータ電位を調整及び/又は制御することができるように、異なるゼータ電位を有する材料を提供するために配合される。追加的に又は代替的に、堆積される層中の分配される液滴の各々の少なくとも部分的な混合を可能にするために、少なくとも2つの異なる樹脂前駆体組成物の液滴の配置が調整される。したがって、少なくとも2つの樹脂前駆体組成物の各々が異なるゼータ電位を有する材料を提供するために配合される場合、形成される研磨パッドの表面のターゲットエリア全体の平均ゼータ電位は、ターゲットエリアの少なくとも一部分の内部で、分配される各タイプの樹脂前駆体組成物の液滴の相互混合量を調整することにより、調整及び/又は制御することができる。
【0099】
ここでは、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206を形成するための2つのみの組成物について説明しているが、本開示の実装態様は、組成勾配により、相互接続されている複数の材料を用いて研磨パッド上の特徴部を形成することを包含している。いくつかの実装態様では、研磨パッド内の第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206の組成は、以下で詳述するように、研磨面に平行な平面内で及び/又は研磨パッドの厚さを通して調整される。
【0100】
組成勾配を形成する能力、且つ改良型研磨パッドの局所的、内部、及び全体の化学的含有量を調節する能力は、図3Bに示される液滴「A」及び/又は「B」を形成するために使用される3D印刷技術の「インクジェット印刷可能」な低粘度組成物、又は低粘度「インク」によって可能になる。低粘度のインクは、「プレポリマー」組成物であり、パッド本体202に見られる、形成された第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206の「前駆体」である。低粘度インクは、従来技術(例えば、成形及び鋳造)が利用できない、広い範囲の化学物質と別個の組成物を送達することを可能にし、したがって、パッド本体202の異なる領域内部に、制御された組成の遷移又は勾配を形成することが可能になる。これは、適切な粘度配合を実現するために高粘度の官能性オリゴマーに粘度を薄める反応性希釈剤を追加及び混合し、続いて硬化装置320により送達される硬化エネルギーに曝露されたときこの希釈剤(複数可)をより高い粘度の官能性オリゴマーと共重合することによって実現する。反応性希釈剤は溶媒として機能することもでき、それにより各段階で除去しなければならない不活性の非反応性溶媒又は希釈剤の使用が排除される。
【0101】
図3Aの前駆体送達ステーション353及び前駆体配合セクション354を参照すると、一実装態様において、第1の前駆体356と、任意選択的に第2の前駆体357と、任意選択的に第1の多孔性形成剤/乳化剤混合物352とは、希釈剤358と混合されて第1の印刷可能なインク組成物359を形成し、これがプリンタ306Bのリザーバ304Bに送達されて、パッド本体202の部分を形成するために使用される。同様に、第3の前駆体366と、任意選択的に第4の前駆体367と、任意選択的に第2の多孔性形成剤/乳化剤混合物365とは、希釈剤368と混合されて第2の印刷可能なインク組成物369を形成し、これがプリンタ306Aのリザーバ304Aに送達されて、パッド本体202の別の部分を形成するために使用される。一実装態様において、第1の前駆体356及び第3の前駆体366は各々が多官能性オリゴマーといった第1のオリゴマーを含み、第2の前駆体357及び第4の前駆体367は各々が多官能性モノマーといったモノマーを含み、希釈剤358及び希釈剤368は各々が反応性希釈剤(例えば、モノマー)及び/又は開始剤(例えば、光開始剤)を含む。
【0102】
第1の印刷可能なインク組成物359の一実施例は、ここに記載される準結晶性の放射線硬化性オリゴマー材料を含む第1の前駆体356を含むことができ、この場合反応性希釈剤(例えば、希釈剤358)、例えばモノアクリレートと混合されて従って希釈され、新規の粘度を有する新規組成物を生成する。一実装態様において、得られた印刷可能な組成物は、3Dプリンタのインクジェットノズルから効果的に分配されうる70℃で約5cPから約100cPの範囲の粘度、70℃で約5cPから約50cPの範囲の粘度、70℃で約10cPから約20cPの範囲の粘度を呈する。
【0103】
図4Aは、研磨面即ち上表面(複数可)208を横切って(例えば、Y方向)材料組成に勾配を有する研磨面即ち上表面(複数可)208を形成するために、付加製造処理を使用して形成されるウェブベースの研磨パッド400aの概略図である。図4Aに示すように、研磨材料は、プラテン102の上の第1のロール481と第2のロール482の間に配置することができる。機械特性の異なる領域を有するウェブ、又は場合によっては標準の研磨パッドを構築することにより、研磨プロセスの各フェーズの間の、ターゲット機械特性を提供する研磨プロセスの様々な部分の間に、基板は、ウェブベースの研磨パッド400a上の異なる場所の上で移動させることができる。一実施例では、第1の組の機械特性を有するウェブベースの研磨パッド400aの平坦化部分を使用して素早く除去される初期表面テクスチャーを有する基板を利用し、この場合、第1の組の機械特性と同一でも異なってもよい第2の組の機械特性を有するウェブベースの研磨パッド400aの第2の部分へと基板を移動させる。
【0104】
図4Bは、Z方向に材料組成の勾配を有する研磨ベース層491を形成するために、付加製造プロセスを使用して形成された改良型研磨パッド400bの概略側断面図である。研磨ベース層491の積層された印刷層の材料組成及び/又は材料特性の勾配は、第1の材料から第2の材料への高濃度から低濃度への一方向の変化又はその逆の変化とすることができる。いくつかの事例では、改良型研磨パッド内部の1つ又は複数の領域は、異なる材料特性を有する少なくとも2つの材料の、高/低/高、又は低/高/低の濃度勾配といったより複雑な濃度勾配を含みうる。いくつかの実装態様では、改良型研磨パッド400bは、少なくとも第1の研磨要素204と第2の研磨要素206とを含む別個の領域を含みうる研磨要素領域494を含むことができる。一実施例では、研磨要素領域494は、図2A図2Kに示される構造のうちの1つ又は複数を含む、研磨体202の一部分を含みうる。
【0105】
一実装態様では、研磨用ベース層491は、研磨用ベース層491内部に形成された各層中に2つ以上の異なる材料の均質な混合物を含む。一実施例では、この均質な混合物は、ベース層491内部に形成される各層中に、第1の研磨要素204及び第2の研磨要素206を形成するために使用される材料の混合物を含みうる。いくつかの実装態様では、層の成長方向(例えば、図3BのZ方向)に材料組成の勾配を形成するために、層ごとに材料の均質な混合物の組成を変化させることが望ましい。均質な混合物という表現は、概して、各層の内部に少なくとも2つの異なる組成物を有し、したがって、それぞれがターゲット解像度にサイズ決めされた少なくとも2つの異なる組成物の小領域の混合物を含みうる印刷された液滴を、分配及び硬化することによって形成された材料を表すことを意図している。研磨ベース層491と研磨要素領域494の間の界面は、研磨ベース層491の上表面に見られる材料と、研磨要素領域494の下表面に見られる材料との均質なブレンドを含んでいてよいか、又は研磨要素領域494の第1の堆積層内の異なる材料組成が研磨ベース層491の表面上に直接堆積されている不連続な遷移を含んでいてよい。
【0106】
研磨要素領域494、又はより一般的には上記のパッド本体202のうちの任意のもののいくつかの実装態様では、多孔性研磨パッドの研磨面に直角の方向に、第1の研磨要素204及び/又は第2の研磨要素206内に材料組成の多孔性の勾配を形成することが有用である。一実施例では、多孔性研磨パッドのベース付近(例えば、研磨面の反対側)の印刷層内において、低い多孔性の特徴部を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くし、多孔性研磨パッドの研磨面付近の印刷層内において、高い多孔性の特徴部を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くすることが有用である。別の実施例では、多孔性研磨パッドのベース付近の印刷層内において、高い多孔性の特徴部を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くし、多孔性研磨パッドの研磨面付近の印刷層内において、低い多孔性の特徴部を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くすることが有用である。
【0107】
一実装態様では、多孔性研磨パッドの研磨面に直角方向に第1及び/又は第2の研磨要素を形成するために使用される材料中に、材料組成の勾配を形成することが有用である。一実施例では、多孔性研磨パッドのベース付近(例えば研磨面の反対側)の印刷層内において、第2の研磨要素206を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くし、多孔性研磨パッドの研磨面付近の印刷層内において、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くすることが有用である。別の実施例では、多孔性研磨パッドのベース付近の印刷層内において、第1の研磨要素204を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くし、多孔性研磨パッドの研磨面付近の印刷層内において、第2の研磨要素206を形成するために使用される材料組成物の濃度をより高くすることが有用である。例えば、第1の層では、第1の印刷組成物と第2の印刷組成物の材料組成比は1:1とすることができ、第2の層では、第1の印刷組成物と第2の印刷組成物の材料組成比は2:1とすることができ、第3の層では、第1の印刷組成物と第2の印刷組成物の材料組成比は3:1とすることができる。一実施例では、第1の印刷組成物は第2の印刷組成物より高い多孔性を有する材料を有し、第1、第2、及び第3の層の逐次的な成長の方向は、多孔性研磨パッドの支持面から離れる方向である。勾配は、堆積される層の平面内部における印刷される液滴の配置を調整することによって、単一層の異なる部分内部にも形成されてよい。
【0108】
図5Aは、本開示の1つ又は複数の実装態様による、ポア形成領域を含む研磨パッドの第1の研磨要素又は第2の研磨要素の層522(図5B)の領域500を形成するために使用されるピクセルチャートの概略図を示す。この実施例では、ピクセルチャートは、第1のプリントヘッドから表面上に多孔性形成剤504(図5B)の1つ又は複数の液滴を分配することと、次いで、少なくとも第2のプリントヘッドから1つ又は複数の樹脂前駆体組成物の液滴を分配することによって形成された材料を含む、1つ又は複数の構造材料含有領域501でポア形成領域502を少なくとも部分的に取り囲むこととによって形成される、ポア形成領域502の矩形のパターンを含む。次いで、多孔性形成剤504を、後処理工程において又は研磨プロセス中に後で除去して、研磨パッドの1つ又は複数の層内にポアを形成することができる。一実施例では、多孔性形成剤材料は、研磨パッドがCMP研磨プロセスで使用されるとき、形成された改良型研磨パッドから除去される。この実施例では、多孔性形成剤材料は、改良型研磨パッドの第1の研磨要素又は第2の研磨要素の表面520上に配置された多孔性形成剤と、第1の研磨要素及び/又は第2の研磨要素と研磨中の基板との間に配置されたスラリー内部に見られる1つ又は複数の成分との相互作用によって除去することができる。図5Aに示されるように、ポア形成領域502は、上に層522が形成される表面全体に樹脂前駆体配合物の液滴を分配することによって形成された構造材料含有領域501に取り囲まれている。ここに記載される種々の技術の使用によって、構造材料含有領域501内部に見られる硬化された構造材料の組成勾配、及び/又はポア形成領域502のサイズ及び密度の勾配を、ターゲット機械的特性及び熱特性を有する研磨パッドの完成品の少なくとも一部を形成するために使用することができる。ポア形成領域502内部に配置されたポア形成材料の組成、及び改良型研磨パッド200全体を横切る(即ち、X-Y平面)又は研磨要素の厚さを通る(即ち、Z方向)ポア形成領域502の分布及びサイズは、任意の適切なパターンで変動してよい。ここに記載される研磨パッドは2種類の材料から形成されているものとして示されているが、3種類以上の材料を含む複合研磨パッドが本開示の範囲に含まれるため、この構成は、ここに提供される開示の範囲の限定を意図していない。図2A図2Kに示される研磨パッドの設計といった、研磨パッド内に見られる構造材料の組成が、図4A図4Fに関連して上記で説明されたものと同様に変動してよいことに留意されたい。このように、いくつかの実装態様では、形成された構造材料含有領域501内部に見られる材料は、形成された層を横切る(例えばX及び/又はY方向)又は通る(例えばZ方向)1つ又は複数の方向に変動する2つ以上の異なる材料の混合物を含んでいてよい。
【0109】
図5Bは、本開示の1つ又は複数の態様による、図5Aに示される領域500の一部分の側断面図である。図5Bに示される部分は、ここに記載される付加製造プロセスの使用によって任意選択的なベース層521上に形成された複数の層522を含む。説明を明確にする目的で、図5Bに示される層は2つの破線の間に配置されているが、ここに記載されるプロセスによって、少なくとも隣接する層の構造材料含有領域501の一部は、形成された改良型研磨パッド200内の層間に明確な物理的境界が存在しないように形成されてよい。層522は各々が、構造材料含有領域501の領域間に点在するポア形成領域502を含んでいる。上記のように、改良型研磨パッド200の表面520(即ち、研磨面112)のポア形成領域502内部に配置された多孔性形成剤と、研磨領域530内部に配置されたスラリー(図示せず)との相互作用によって、多孔性形成剤504を容易に除去することができ、ポア形成領域502内部に空のボイドが残され、その結果ポア503が形成される。
【0110】
一実装態様では、各層522を形成するために使用されるピクセルチャートは、形成された層の表面全体にわたってターゲットパターンで形成された多孔性形成剤504含有ポア形成領域502のアレイを含むパターンを含む。上記のように、いくつかの実装態様では、多孔性形成剤504含有ポア形成領域502のパターンは、X方向及びY方向の両方にターゲットピッチを有する矩形のアレイに形成することができる。しかしながら、多孔性形成剤504含有ポア形成領域502のパターンは、六角形配列のポア形成領域502、方向が変動するパターンのポア形成領域502、ランダムなパターンのポア形成領域502、又は他の有用なパターンのポア形成領域502を含む、任意のターゲットパターンで形成されてよい。いくつかの実装態様では、隣接する層522を形成するために使用されるピクセルチャートは、研磨パッドが形成される際に隣接して位置決めされる層内においてポア形成領域502が互いに上下に配置されないように、互いに対して1つ又は複数の方向(例えば、X、Y、若しくはX及びY方向)にターゲット距離525だけシフトされるか、又は異なる相対的X-Yパターンで形成される。一実装態様では、隣接する層のポア形成領域502の同様に構成されたパターンは、ポア形成領域502が、隣接して位置決めされる層内において互いに上下に配置されないように、互いに対して1つ又は複数の方向にターゲット距離だけ互い違いにずれて配置されてよい。
【0111】
図5Cは、本開示の別の態様による、図5Aに示される領域500の一部分の側断面図を示す。いくつかの実装態様では、配置された層のうちの2つ以上が、互いに直接上下に形成されるように、互いに対して位置合わせされうる。一実施例では、図5Cに示されるように、2つの層522A及び522Bは、層522Aが層522Bの上に直接あって、ポア形成領域502が互いに上下に配置されるように形成される。次いで次の層又は後続の層は、後続層のポア形成領域502が層522A-Bの上に配置されないように、層522A-Bに対してターゲット距離525だけシフトされうる。層のより大きなスタックの内部で2つ以上の層が互いに上下に形成される実装態様は、X及びY方向における固定の液滴サイズの解像度がZ方向の層の厚さより大きくてよい場合に有用でありうる。一実施例では、X及びY方向における固定の液滴サイズは、Z方向の厚さの2倍の大きさであり、このようにして、2つの層が互いに上下に配置されるとき、印刷された材料の規則的なパターンがX、Y、及びZ方向に形成されうる。
【0112】
再び図5Aを参照すると、層内部におけるポア形成領域502を形成するために使用されるピクセルチャートと周囲の構造材料含有領域501とは、1つ又は複数の方向X、Y、又はZに一定の又は変動する多孔性を有する研磨特徴部の部分を形成するために使用することができる。一実施例では、改良型研磨パッドのエッジ領域付近の研磨特徴部は、構造材料含有領域501内部に、ポア形成領域502を含有する多孔性形成剤 504より多くの、構造材料を形成するために使用される樹脂前駆体配合物を含むことができる。研磨パッドの中心領域付近の研磨特徴部は、層ごとに、エッジ領域付近の研磨特徴部よりも、ポア形成領域502をより高いパーセンテージ(例えば、より高い密度)で含むこともできる。この実施例では、同じタイプの各研磨特徴部(例えば、第1の研磨要素204)、又は異なるタイプの各研磨特徴部(例えば、第1の研磨要素204と第2の研磨要素206)は、層ごとに及び/又は研磨要素ごとに、樹脂前駆体配合物と、多孔性形成剤と、ポア形成領域502の密度との独自の組み合わせを有する。一実施例では、第1の研磨要素204は、樹脂前駆体配合物と多孔性形成剤との第1の組み合わせを含み、第2の研磨要素206は、樹脂前駆体配合物と多孔性形成剤との異なる第2の組み合わせを含む。したがって、ピクセルチャートの使用によって、研磨体の異なる部位においてターゲットとする多孔性勾配が実現され、改良型研磨パッドのターゲット研磨性能が実現されるように、研磨体を逐次的に形成することができる。
【0113】
ここに記載される実装態様による多孔性の改良型研磨パッドを形成する方法は、以下の工程を含みうる。第1に、樹脂組成物の1つ又は複数の液滴、例えばここに記載されるものは、ターゲットとするX及びYパターンで分配されて、形成される層の構造材料部分を形成する。一実装態様では、樹脂組成物の1つ又は複数の液滴は、この1つ又は複数の液滴が第1の層を構成する場合、支持体上に分配される。いくつかの実装態様では、樹脂組成物の1つ又は複数の液滴は、以前に堆積された層(例えば、第2の層など)の上に分配される。第2に、多孔性形成剤504を含む多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴は、ターゲットのX及びYパターンで分配されて、形成される層内部にポア形成領域502を形成する。一実装態様では、多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴は、この1つ又は複数の液滴が第1の層を構成する場合、支持体上に分配される。いくつかの実装態様では、多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴は、以前に堆積された層の上に分配される。第1の工程と第2の工程の分配プロセスは、一般に、時間的に間隔をおいて且つ異なるX-Y座標において実施される。次に、即ち第3に、硬化性樹脂前駆体の分配された1つ又は複数の液滴と、多孔性形成組成物の分配された1つ又は複数の液滴は、少なくとも部分的に硬化される。次に、任意選択的な第4の工程では、硬化性樹脂前駆体の分配された1つ又は複数の液滴と、多孔性形成組成物の分配された1つ又は複数の液滴とは、アニーリングプロセス、すすぎプロセス、又はこれらの両方のうちの少なくとも1つに曝露されて、多孔性形成剤が除去される。すすぎプロセスは、水、別の溶媒、例えばアルコール(イソプロパノールなど)、又はこれらの両方ですすぐことを含みうる。アニーリングプロセスは、多孔性形成剤を気化させるために、堆積されたパッド構造を低圧下で低温(例えば、約100℃)に加熱することを含みうる。次に、第5の工程、即ち任意選択的な第2の硬化プロセスが、形成された層又は最終的なパッドに対して実施され、最終的な多孔性パッド構造が形成される。いくつかの事例では、第4の工程が完了する前に、多数の積層された層を形成するために、第1、第2、第3、及び第5の処理工程を任意のターゲット順序で逐次的に繰り返すこともできる。
【0114】
図6は、ここに記載される実装態様による多孔性パッドを形成する方法600を示すフロー図である。工程610では、樹脂組成物の1つ又は複数の液滴が分配される。一実装態様では、樹脂組成物の1つ又は複数の液滴は、この1つ又は複数の液滴が第1の層を構成する場合、支持体上に分配される。いくつかの実装態様では、樹脂組成物の1つ又は複数の液滴は、以前に堆積された層の上に分配される。工程620では、多孔性形成剤を含む多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴が分配される。一実装態様では、多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴は、この1つ又は複数の液滴が第1の層を構成する場合、支持体上に分配される。いくつかの実装態様では、多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴は、以前に堆積された層の上に分配される。工程610及び工程620の分配プロセスは、一般に別々に実施される。任意選択的に、工程630では、分配される硬化性樹脂前駆体の1つ又は複数の液滴と分配される多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴とは部分的に硬化される。工程610、620、及び630を繰り返して3-Dレリーフを形成することができる。工程640では、分配された硬化性樹脂前駆体の1つ又は複数の液滴と、分配された多孔性形成組成物の1つ又は複数の液滴とは、アニーリングプロセス、すすぎプロセス、又はこれらの両方のうちの少なくとも1つに曝露され、多孔性形成剤が除去される。すすぎプロセスは、水、別の溶媒、例えばアルコール(イソプロパノールなど)、又はこれらの両方ですすぐことを含みうる。アニーリングプロセスは、多孔性形成剤を気化させるために、堆積されたパッド構造を低圧下で低温(例えば、約100℃)に加熱することを含みうる。工程650では、最終的な多孔性パッド構造を形成するために、任意選択的な硬化プロセスが実施される。
【0115】
以上の記述は本開示の実装態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱せずに本開示の他の実装態様及び更なる実装態様が考案可能であり、本開示の範囲は特許請求の範囲によって決定される。
【0116】
以下の記載において特に断らない限り、単位「部」は、「重量部」を表し、単位「パーセント(%)」は「質量パーセント(%)」を表す。
以下の記載においてモノマーのTgは、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を指す。
【0117】
本開示の要素又はそれらの例示的な態様若しくは実装態様(複数可)を導入するとき、「1つの」及び「前記」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図している。
【0118】
「備える」、「含む」、及び「有する」という語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外に追加の要素が存在しうることを意味する。
【0119】
以上の記述は本開示の実装態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱せずに、本開示の他の実装態様及び更なる実装態様が考案されてよく、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F-2K】
図3A
図3B-C】
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6