(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】化学センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/414 20060101AFI20230622BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G01N27/414 301U
G01N27/416 353Z
G01N27/414 301P
(21)【出願番号】P 2020520344
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2019020315
(87)【国際公開番号】W WO2019225660
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018100611
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】竹井 邦晴
(72)【発明者】
【氏名】中田 尚吾
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-189416(JP,A)
【文献】特表2013-539049(JP,A)
【文献】特開2016-122009(JP,A)
【文献】国際公開第2003/042638(WO,A1)
【文献】特開2009-047662(JP,A)
【文献】NAKATA, S. et al.,Flexible integrated chemical and physical sensors toward a wearable healthcare patch,IEEE Conference Proceedings,Vol.2017, No.Transducers,2017年,p.1688-1691
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/414
G01N 27/416
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられ第1コンタクト領域及び第2コンタクト領域を有する半導体薄膜と、第1コンタクト領域と接触する注入電極と、前記半導体薄膜の一部及び第1ゲート電極を含む第1MIS構造と、前記半導体薄膜の一部及び第2ゲート電極を含む第2MIS構造と、第2コンタクト領域と接触する転送電極と、前記転送電極と電気的に接続したキャパシタとを備え、
前記半導体薄膜は、測定対象に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた感応領域を有し、
かつ、n型半導体薄膜又はp型半導体薄膜であり、
前記キャパシタは、第1導電層と、第2導電層と、第1及び第2導電層の間に配置された誘電体層とを備え、
前記注入電極は、第1コンタクト領域に電荷を注入するように設けられ、
第1MIS構造は、前記注入電極により第1コンタクト領域に注入された電荷の前記感応領域への流入を制御するように設けられ、
第2MIS構造は、前記感応領域から第2コンタクト領域への電荷の流入を制御するように設けられ、
前記転送電極は、前記感応領域の電荷を第2コンタクト領域を介して前記キャパシタに流入させるように設けられたことを特徴とする化学センサ。
【請求項2】
前記基板は、フレキシブル基板である請求項1に記載の化学センサ。
【請求項3】
前記半導体薄膜は、単原子層膜厚以上200nm以下の厚さを有する請求項1又は2に記載の化学センサ。
【請求項4】
延長ゲート電極と、第3MIS構造とをさらに備え、
前記延長ゲート電極は、ゲート部と、直接的又は間接的に測定対象と電気的に相互作用する感応部とを備え、
第3MIS構造は、前記半導体薄膜の前記感応領域と前記ゲート部とを含む請求項1~3のいずれか1つに記載の化学センサ。
【請求項5】
参照電極をさらに備え、
前記参照電極は、前記延長ゲート電極の前記感応部の周りに配置された請求項4に記載の化学センサ。
【請求項6】
基板と、前記基板上に設けられ第1コンタクト領域及び第2コンタクト領域を有する半導体薄膜と、第1コンタクト領域と接触する注入電極と、前記半導体薄膜の一部及び第1ゲート電極を含む第1MIS構造と、前記半導体薄膜の一部及び第2ゲート電極を含む第2MIS構造と、第2コンタクト領域と接触する転送電極と、前記転送電極と電気的に接続したキャパシタと、第4MIS構造
とを備え、
前記半導体薄膜は、測定対象に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた感応領域を有し、
前記注入電極は、第1コンタクト領域に電荷を注入するように設けられ、
第1MIS構造は、前記注入電極により第1コンタクト領域に注入された電荷の前記感応領域への流入を制御するように設けられ、
第2MIS構造は、前記感応領域から第2コンタクト領域への電荷の流入を制御するように設けられ、
第4MIS構造は、前記半導体薄膜の第1コンタクト領域及び第3ゲート電極を含
み、
前記転送電極は、前記感応領域の電荷を第2コンタクト領域を介して前記キャパシタに流入させるように設けられたことを特徴とする化学センサ。
【請求項7】
第5MIS構造をさらに備え、
第5MIS構造は、前記半導体薄膜の第2コンタクト領域及び第4ゲート電極を含み、
前記転送電極は、前記半導体薄膜の第2コンタクト領域と接触する請求項1~6のいずれか1つに記載の化学センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学センサに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中のイオンなどを検出する化学センサとして、イオン感応型トランジスタが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなトランジスタを利用すると溶液のpHを検出することができる。しかし、このようなpHセンサは、検出感度が低いという問題がある。
また、累積型化学・物理現象検出装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-215974号公報
【文献】特開2002-098667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の化学センサでは、シリコン基板にトランジスタなどを形成する。シリコン基板を利用すると、製造コストが大きくなるという問題や、曲面や肌に貼り付けることが難しいという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低減された製造コストで製造でき、高い検出感度を有する化学センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられ第1コンタクト領域及び第2コンタクト領域を有する半導体薄膜と、第1コンタクト領域と接触する注入電極と、前記半導体薄膜の一部及び第1ゲート電極を含む第1MIS構造と、前記半導体薄膜の一部及び第2ゲート電極を含む第2MIS構造と、第2コンタクト領域と接触する転送電極と、前記転送電極と電気的に接続したキャパシタとを備え、前記半導体薄膜は、測定対象に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた感応領域を有し、前記注入電極は、第1コンタクト領域に電荷を注入するように設けられ、第1MIS構造は、前記注入電極により第1コンタクト領域に注入された電荷の前記感応領域への流入を制御するように設けられ、第2MIS構造は、前記感応領域から第2コンタクト領域への電荷の流入を制御するように設けられ、前記転送電極は、前記感応領域の電荷を第2コンタクト領域を介して前記キャパシタに流入させるように設けられたことを特徴とする化学センサを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化学センサは基板と、基板上に設けられた半導体薄膜とを有する。このため、基板にフレキシブル基板を用いることが可能になり、曲面や肌に貼り付けることが可能になる。また、半導体薄膜を用いることにより、化学センサの製造コストを低減することができる。
前記半導体薄膜は、測定対象に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた感応領域を有する。また、本発明の化学センサは、注入電極により半導体薄膜に注入された電荷の感応領域への流入を制御するように設けられた第1MIS構造と、感応領域の電荷の転送電極への流入を制御するように設けられた第2MIS構造とを有する。第1MIS構造を用いて感応領域への電荷の流入を制御することにより、測定対象に感応した感応領域の電位に対応した量の電荷を注入電極から感応領域に注入することができ、注入された電荷を感応領域に蓄積することができる。この感応領域に蓄積される電荷の量は、検出対象の量に対応した量になる。また、第2MIS構造を用いて感応領域から転送電極への電荷の流入を制御することにより、感応領域に蓄積した電荷を転送電極を介してキャパシタに転送することができる。このキャパシタに蓄積された電荷(電気量)を信号電圧として読み出すことにより、検出対象(例えば、溶液のpH)を検出することができる。さらに、感応領域における電荷の蓄積及びキャパシタへの電荷の転送を複数回繰り返すことにより、感応領域に蓄積した電荷をキャパシタに累積することができ、キャパシタの電気量を大きくすることができる。このため、増幅した信号電圧を読み出すことが可能になり、化学センサの検出感度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の化学センサの概略上面図である。
【
図2】(a)は
図1の破線A-Aにおける化学センサの概略断面図であり、(b)は
図1の破線B-Bにおける化学センサの概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の化学センサの概略回路図である。
【
図4】本発明の一実施形態の化学センサの概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の化学センサの概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の化学センサの概略断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の化学センサによる電荷転送の説明図である。
【
図8】作製したpHセンサの写真及びその説明図である。
【
図9】(a)~(c)はそれぞれ1回の測定サイクルの電圧シーケンスである。
【
図11】pHモニタリング実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の化学センサは、基板と、前記基板上に設けられ第1コンタクト領域及び第2コンタクト領域を有する半導体薄膜と、第1コンタクト領域と接触する注入電極と、前記半導体薄膜の一部及び第1ゲート電極を含む第1MIS構造と、前記半導体薄膜の一部及び第2ゲート電極を含む第2MIS構造と、第2コンタクト領域と接触する転送電極と、前記転送電極と電気的に接続したキャパシタとを備え、前記半導体薄膜は、測定対象に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた感応領域を有し、前記注入電極は、第1コンタクト領域に電荷を注入するように設けられ、第1MIS構造は、前記注入電極により第1コンタクト領域に注入された電荷の前記感応領域への流入を制御するように設けられ、第2MIS構造は、前記感応領域から第2コンタクト領域への電荷の流入を制御するように設けられ、前記転送電極は、前記感応領域の電荷を第2コンタクト領域を介して前記キャパシタに流入させるように設けられたことを特徴とする。
MIS構造は、金属層、絶縁体層、半導体層の三層構造である。
【0009】
前記基板は、フレキシブル基板であることが好ましい。このことにより、本発明の化学センサを曲面や肌に貼り付けることが可能になる。
前記半導体薄膜は、単原子層膜厚以上200nm以下の厚さを有することが好ましい。このことにより、化学センサの製造コストを低減することができる。また、本発明の化学センサを曲面や肌に貼り付けることが可能になる。
本発明の化学センサは、延長ゲート電極と、第3MIS構造とを備えることが好ましい。前記延長ゲート電極は、ゲート部と、直接的又は間接的に測定対象と電気的に相互作用する感応部とを備えることが好ましい。第3MIS構造は、前記半導体薄膜の前記感応領域と前記ゲート部とを含むことが好ましい。このような構成により、測定対象と電気的に相互作用する感応部と、複数のMIS構造からなる電荷転送部とを離して配置することができ、測定対象が電荷転送部に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0010】
本発明の化学センサは、参照電極を備ることが好ましい。前記参照電極は、延長ゲート電極の感応部の周りに配置されることが好ましい。この参照電極を設けることにより、参照電極と測定対象である水溶液とを接触させることができ、水溶液の電位に基準点を与えることができる。
本発明の化学センサは、第4MIS構造を備えることが好ましい。第4MIS構造は、半導体薄膜の第1コンタクト領域及び第3ゲート電極を含むことが好ましい。この第3ゲート電極にゲート電圧を印加することにより、第1コンタクト領域の電位を変化させることができ、注入電極と第1コンタクト領域との間のショットキー障壁を低くすることが可能になる。
本発明の化学センサは、第5MIS構造を備えることが好ましい。第5MIS構造は、半導体薄膜の第2コンタクト領域及び第4ゲート電極を含むことが好ましい。前記転送電極は、半導体薄膜の第2コンタクト領域と接触することが好ましい。この第4ゲート電極にゲート電圧を印加することにより、第2コンタクト領域の電位を変化させることができ、転送電極と第2コンタクト領域との間のショットキー障壁を低くすることが可能になる。
【0011】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0012】
図1は本実施形態の化学センサの概略上面図であり、
図2(a)は
図1の破線A-Aにおける化学センサの概略断面図であり、
図2(b)は
図1の破線B-Bにおける化学センサの概略断面図である。また、
図3は、本実施形態の化学センサの概略回路図である。また、
図4~
図6は、それぞれ本実施形態に含まれる化学センサの概略断面図である。
【0013】
本実施形態の化学センサ50は、基板1と、基板1上に設けられ第1コンタクト領域13及び第2コンタクト領域17を有する半導体薄膜2と、第1コンタクト領域13と接触する注入電極3と、半導体薄膜2の一部及び第1ゲート電極4を含むMIS構造20bと、半導体薄膜2の一部及び第2ゲート電極5を含むMIS構造20dと、第2コンタクト領域17と接触する転送電極6と、転送電極6と電気的に接続したキャパシタ7とを備え、半導体薄膜2は、測定対象32に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた感応領域15を有し、注入電極3は、第1コンタクト領域13に電荷を注入するように設けられ、MIS構造20bは、注入電極3により第1コンタクト領域13に注入された電荷の感応領域15への流入を制御するように設けられ、MIS構造20dは、感応領域15から第2コンタクト領域17への電荷の流入を制御するように設けられ、転送電極6は、感応領域15の電荷を第2コンタクト領域17を介してキャパシタ7に流入させるように設けられたことを特徴とする。
本実施形態の化学センサ50は、ソースフォロア回路37、参照電極30、リセットゲート電極28及びリセット電極29のうち少なくとも1つを備えることができる。
半導体薄膜2、注入電極3、第1ゲート電極4、第2ゲート電極5、転送電極6、延長ゲート電極8のゲート部9、第3ゲート電極22、第4ゲート電極24、リセットゲート電極28及びリセット電極29は、電荷転送部35に含まれる。
以下、本実施形態の化学センサ50について説明する。
【0014】
化学センサ50は、化学物質を検知するためのセンサである。具体的には、溶液中のイオンを検知するイオンセンサ(pHセンサを含む)、汗腺から分泌される汗に含まれる化学物質(汗のpHを含む)や皮膚から放出される化学物質を検知するウェアラブルセンサなどである。また、化学センサ50は、フレキシブルセンサであってもよい。
【0015】
基板1は、化学センサ50の基材となる板又はシートである。基板1は、フレキシブル基板であってもよい。このことにより、化学センサ50をフレキシブルセンサとすることができ、化学センサ50を曲面上や皮膚上などに貼り付けることが可能になる。
基板1は、積層構造を有してもよい。例えば、
図2、4~6に示した化学センサ50では基板1は、基板1aと基板1bとからなる。基板1aは、例えばポリイミドシートであり、基板1bはPET(ポリエチレン・テレフタレート)シートである。ポリイミドシートは、耐熱性を有するため、化学センサ50の作製時の基材として利用することができる。又、PETシートは、ポリイミドシートのサポートシートとして機能する。
【0016】
半導体薄膜2は、基板1上に設けられる半導体の薄膜である。基板1と半導体薄膜2との間には、絶縁体層26やゲート電極が設けられてもよい。半導体薄膜2の厚さは、例えば、単原子層膜厚以上200nm以下である。また、半導体薄膜2はn型半導体であってもよく、p型半導体であってもよい。また、半導体薄膜2は、例えば、酸化物半導体薄膜、シリコン薄膜、カーボンナノチューブ薄膜、有機半導体薄膜などである。酸化物半導体薄膜の材料としては、IGZO(In-Ga-Zn-O)、ITZO(In-Sn-Zn-O)、IGO(In-Ga-O)などが挙げられる。
半導体薄膜2は、第1コンタクト領域13、第1制御領域14、感応領域15、第2制御領域16及び第2コンタクト領域17を有することができる。
【0017】
注入電極3は、半導体薄膜2の第1コンタクト領域13と接触するように設けられる。また、注入電極3は、半導体薄膜2の第1コンタクト領域13に電荷(電子)を注入するように設けられる。注入電極3は、半導体薄膜2の下に設けられてもよく、半導体薄膜2の上に設けられてもよい。また、注入電極3には、第1コンタクト領域13に電荷を注入できるように電圧Vinputが印加される。
注入電極3は、金属の単層膜であってもよく、金属の積層膜であってもよい。注入電極3は、例えば、Au層(半導体薄膜と接触する層)を有することができる。
【0018】
半導体薄膜2の第1コンタクト領域13が注入電極3と第3ゲート電極22との間に位置するように第3ゲート電極22を設けることができる。また、第3ゲート電極22は、半導体薄膜2の第1コンタクト領域13及びゲート絶縁膜と共にMIS構造20a(金属層、絶縁体層、半導体層の三層構造)を構成するように設けることができる。このような第3ゲート電極22にゲート電圧を印加すると、第1コンタクト領域13の電位が変化する。例えば、注入電極3と第1コンタクト領域13との界面にショットキー障壁が形成される場合であっても、第3ゲート電極22にゲート電圧を印加することにより、ショットキー障壁の高さを低くすることができ、注入電極3から第1コンタクト領域13に電荷が注入されやすくなる。第3ゲート電極22は省略可能である。
例えば、
図2(b)、
図4~
図6では、絶縁体層26bがMIS構造20aのゲート絶縁膜となる。また、
図2、
図4~
図6では、第3ゲート電極22が半導体薄膜2の下側に位置し、注入電極3が半導体薄膜2の上側に位置しているが、第3ゲート電極22が半導体薄膜2の上側に位置し、注入電極3が半導体薄膜2の下側に位置してもよい。
【0019】
ゲート電極(第1ゲート電極4、第2ゲート電極5、第3ゲート電極22、第4ゲート電極24、リセットゲート電極28又は延長ゲート電極8のゲート部9)は、金属の単層膜であってもよく、複数の金属の積層膜であってもよい。ゲート電極は、例えばAl電極とすることができる。
絶縁体層26(絶縁体層26a、26b、26c又は26d)は、絶縁体からなる層である。絶縁体層26の材料は、無機絶縁体であってもよく、有機絶縁体であってもよい。例えば、ゲート絶縁膜となる絶縁体層26a、26b又は26dの材料には、SiO2、Al2O3、Si3N4などを用いることができる。絶縁体層26a、26b又は26dは、単層膜であってもよく、複数の絶縁体からなる積層膜であってもよい。また、MIS構造の上部を覆う絶縁体層26cの材料には、ポリイミドなどの有機絶縁体を用いることができる。
【0020】
図2(b)のように、複数のMIS構造(金属層、絶縁体層、半導体層の三層構造)のゲート絶縁膜となる絶縁体層26は、半導体薄膜2と接触する絶縁体層26bと、絶縁体層26bと接触する絶縁体層26aとの二層構造を有してもよい。複数のゲート電極のうち一部を絶縁体層26aと絶縁体層26bとの間に配置し、他のゲート電極を絶縁体層26aの絶縁体層26bの反対側に配置することができる。また、隣接する2つのゲート電極のうち一方を絶縁体層26aと絶縁体層26bとの間に配置し、他方を絶縁体層26aの絶縁体層26bの反対側に配置することができる。このことにより、隣接する2つのゲート電極の間に絶縁体層26aを配置することができ、ゲート電極間にリーク電流が流れることを抑制することができる。また、隣接する2つのゲート電極は、その端部が重なるように設けることができる。このことにより、半導体薄膜2の各領域(第1コンタクト領域13、第1制御領域14、感応領域15、第2制御領域16又は第2コンタクト領域17)の間にすき間が生じることを抑制することができる。
図2(b)では、ゲート絶縁膜の二層構造および各ゲート電極を半導体薄膜2の下側に配置しているが、ゲート絶縁膜の二層構造および各ゲート電極を半導体薄膜2の上側に配置してもよい。
【0021】
第1ゲート電極4は、第1ゲート電極4、半導体薄膜2の第1制御領域14及びゲート絶縁膜がMIS構造20bを構成するように設けられる。例えば、
図2(b)では、絶縁体層26a及び絶縁体層26bがゲート絶縁膜となり、
図4では、絶縁体層26bがゲート絶縁膜となり、
図5、
図6では、絶縁体層26dがゲート絶縁膜となる。第1ゲート電極4にゲート電圧を印加することにより、MIS構造20bに含まれる半導体薄膜2の第1制御領域14の電位を変化させることができる。
MIS構造20bは、注入電極3により第1コンタクト領域13に注入された電荷の感応領域15への流入を制御するように設けられる。このため、第1ゲート電極4に印加するゲート電圧V
ICGを制御することにより、第1コンタクト領域13の電荷の感応領域15への流入を制限したり、第1コンタクト領域13の電荷を感応領域15へ流入させたりすることができる。
MIS構造20bは、第1制御領域14が第1コンタクト領域13と感応領域15との間に位置するように設けることができる。このことにより感応領域15への電荷の流入を制御することができる。
第1ゲート電極4は、
図2(b)、
図4のように半導体薄膜2の下側に配置されてもよく、
図5、6のように半導体薄膜2の上側に配置されてもよい。
【0022】
半導体薄膜2の感応領域15は、測定対象32に直接的又は間接的に感応して電位が変化するように設けられた領域である。
図2~
図5では、延長ゲート電極8を利用して感応領域15が間接的に測定対象32に感応するように感応領域15を設けている。
図6では、半導体薄膜2の感応領域15が測定対象32に直接的に感応するように感応領域15を設けている。
【0023】
延長ゲート電極8は、ゲート部9と、感応部10と、ゲート部9と感応部10とを繋ぐ配線部11とを有する。延長ゲート電極8は、例えばAl電極である。
ゲート部9は、ゲート部9、半導体薄膜2の感応領域15、ゲート絶縁膜がMIS構造20cを構成するように設けられる。例えば、
図2(b)、
図4では、絶縁体層26bがゲート絶縁膜となる。また、
図5では、絶縁体層26dがゲート絶縁膜となる。MIS構造20cは、半導体薄膜2の感応領域15が第1制御領域14と第2制御領域16との間に位置するように設けることができる。また、ゲート部9は、
図2(b)、
図4のように半導体薄膜2の下側に配置されてもよく、
図5のように半導体薄膜2の上側に配置されてもよい。
【0024】
感応部10は、直接的又は間接的に測定対象32と電気的に相互作用する部分である。測定対象32は、例えば、水溶液、汗、皮膚から放出される化学物質(例えばアセトン)などである。
例えば、測定対象32が水溶液であり、検出対象がこの水溶液のpHである場合、感応部10は水溶液中の水素イオン(H
+)と電気的に相互作用するように設けられる。感応部10は、例えば
図2(a)のように、絶縁体層26bを介して感応部10と水溶液とが電気的に相互作用するように設けることができる。また、感応部10の周りに参照電極30が設けられる。参照電極30は、参照電極30と測定対象32とが接触するように設けられる。参照電極30の電位が一定の場合、水溶液の水素イオンの濃度が変化すると、水溶液-絶縁体層26b-感応部20の三層構造において水溶液と感応部10との間の電位差が変化する。従って、水溶液の水素イオン濃度によって、感応部10の電位が変化する。
参照電極30には、例えば、Ag-AgCl参照電極を用いることができる。
【0025】
感応部10とゲート部9とは配線部11により接続されているため、感応部10とゲート部9とは実質的に同じ電位となる。半導体薄膜2の感応領域15、ゲート絶縁膜及びゲート部9は、MIS構造20cを構成するため、ゲート部9の電位により感応領域15の電位を変化させることができる。従って、半導体薄膜2の感応領域15は、測定対象32に間接的に感応して電位が変化する。
【0026】
図6に示した化学センサでは、延長ゲート電極8を用いずに、半導体薄膜2の感応領域2が絶縁体膜26dを介して水溶液(測定対象32)中の水素イオン(H
+)と電気的に相互作用するように設けられる。また、参照電極30は、参照電極30と測定対象32とが接触するように設けられる。参照電極30の電位が一定の場合、水溶液の水素イオンの濃度が変化すると、水溶液-絶縁体層26d-感応領域15の三層構造において水溶液と感応領域15との間の電位差が変化する。従って、水溶液の水素イオン濃度によって、感応領域15の電位が変化する。従って、半導体薄膜2の感応領域15は、測定対象32に直接的に感応して電位が変化する。
【0027】
このように、半導体薄膜2の感応領域15の電位が測定対象32に直接的又は間接的に感応して電位が変化すると、この感応した電位に応じた量の電荷を注入電極3から第1コンタクト領域13及び第1制御領域14を介して感応領域15に流入させることができる。この感応領域に流入した電荷量は、測定対象32に応じた量となるため、この電荷をキャパシタ7に転送してキャパシタ7の電気量を検出することにより、測定対象32のpHなどを検出することができる。また、感応領域の電荷量を複数回キャパシタ7に転送してキャパシタ7に電荷を累積させることにより、キャパシタ7の電気量を大きくすることができ、化学センサ50の検出感度を高くすることができる。
【0028】
化学センサ50により化学物質を検出する場合、延長ゲート電極8の感応部10上に化学物質に感応する感応膜を設けることができる。感応膜は、例えば、酵素、吸着剤などを有することができる。感応膜は、酵素、吸着剤などが検出対象である化学物質に感応して感応部10に電荷を供給するように設けることができる。このことにより、検出対象である化学物質の量に応じて延長ゲート電極8の電位及び半導体薄膜2の感応領域15の電位を変化させることができ、化学センサ50により化学物質を検出することができる。
【0029】
第2ゲート電極5は、第2ゲート電極5、半導体薄膜2の第2制御領域16及びゲート絶縁膜がMIS構造20dを構成するように設けられる。例えば、
図2(b)では、絶縁体層26a及び絶縁体層26bがゲート絶縁膜となり、
図4では、絶縁体層26bがゲート絶縁膜となり、
図5、
図6では、絶縁体層26dがゲート絶縁膜となる。第2ゲート電極5にゲート電圧を印加することにより、MIS構造20dに含まれる半導体薄膜2の第2制御領域16の電位を変化させることができる。
【0030】
MIS構造20dは、半導体薄膜2の感応領域15の電荷の転送電極6への流入を制御するように設けられる。このため、第2ゲート電極5に印加するゲート電圧V
TGを制御することにより、感応領域15から転送電極6への電荷の流入を制限したり、感応領域15の電荷を転送電極6へ流入させたりすることができる。MIS構造20dは、第2制御領域16が感応領域15と第2コンタクト領域17との間に位置するように設けることができる。このことにより感応領域15から第2コンタクト領域17への電荷の流入を制御することができる。
第2ゲート電極5は、
図2(b)、
図4のように半導体薄膜2の下側に配置されてもよく、
図5、6のように半導体薄膜2の上側に配置されてもよい。
【0031】
延長ゲート電極8のゲート部9、第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5を、共に半導体薄膜2の上側及び下側のうちどちらか一方に配置することができる。このことにより、半導体薄膜2とゲート絶縁膜との界面の半導体薄膜2の電位をゲート部9、第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5により変化させることができる。
【0032】
転送電極6は、半導体薄膜2の第2コンタクト領域17と接触するように設けられる。また、転送電極6は、キャパシタ7と電気的に接続する。また、転送電極6は、感応領域15の電荷を第2制御領域16及び第2コンタクト領域17を介してキャパシタ7に流入させるように設けられる。また、転送電極6は、ソースフォロア回路37と電気的に接続してもよい。転送電極6は、半導体薄膜2の下に設けられてもよく、半導体薄膜2の上に設けられてもよい。
転送電極6は、金属の単層膜であってもよく、金属の積層膜であってもよい。転送電極6は、例えば、Au層(半導体薄膜2と接触する層)を有することができる。
【0033】
半導体薄膜2の第2コンタクト領域17が転送電極6と第4ゲート電極24との間に位置するように第4ゲート電極24を設けることができる。また、第4ゲート電極24は、半導体薄膜2の第2コンタクト領域17及びゲート絶縁膜と共にMIS構造20e(金属層、絶縁体層、半導体層の三層構造)を構成するように設けることができる。このような第4ゲート電極24にゲート電圧を印加すると、第2コンタクト領域17の電位が変化する。例えば、転送電極6と第2コンタクト領域17との界面にショットキー障壁が形成される場合であっても、第4ゲート電極24にゲート電圧を印加することにより、ショットキー障壁の高さを低くすることができ、第2コンタクト領域17の電荷が転送電極6に流入しやすくなる。第4ゲート電極24は省略可能である。
例えば、
図2(b)、
図4~
図6では、絶縁体層26bがMIS構造20eのゲート絶縁膜となる。また、
図2、
図4~
図6では、第4ゲート電極24が半導体薄膜2の下側に位置し、転送電極6が半導体薄膜2の上側に位置しているが、第4ゲート電極24が半導体薄膜2の上側に位置し、転送電極6が半導体薄膜2の下側に位置してもよい。
【0034】
キャパシタ7は、第1導電層と、第2導電層と、第1及び第2導電層の間に配置された絶縁体層(誘電体層)とを備える。第1及び第2導電層のうちどちらか一方は、転送電極6と電気的に接続することができ、他方は、グラウンドに接続することができる。このことにより、転送電極6を介して感応領域15の電荷をキャパシタ7に転送することができる。また、感応領域15の電荷を複数回キャパシタ7に転送することができ、キャパシタ7に電荷を累積させることができる。例えば、キャパシタ7は、
図1のように配線38により転送電極6と電気的に接続することができる。
ソースフォロア回路37は、キャパシタ7の電気量を読み出すための回路である。ソースフォロア回路37は、キャパシタ7の電気量を信号電圧(出力電圧V
out)として出力するように設けることができる。ソースフォロア回路37は、例えば、
図1、3のように、配線38によりキャパシタ7及び転送電極6と電気的に接続することができる。また、ソースフォロア回路37は、例えば、
図3に示したような電気回路を有することができる。
【0035】
リセット電極29は、半導体薄膜2に接触するように設けることができる。また、リセット電極29は、グラウンドと電気的に接続することができる。
リセットゲート電極28は、リセットゲート電極28、半導体薄膜2の第3制御領域18及びゲート絶縁膜がMIS構造20fを構成するように設けられる。例えば、
図2(b)では、絶縁体層26a及び絶縁体層26bがゲート絶縁膜となり、
図4~
図6では、絶縁体層26bがゲート絶縁膜となる。リセットゲート電極28にゲート電圧を印加することにより、MIS構造20fに含まれる半導体薄膜2の第3制御領域18の電位を変化させることができる。
【0036】
MIS構造20fは、第2コンタクト領域17及び転送電極6からリセット電極29への電荷の流入を制御するように設けることができる。このため、リセットゲート電極28に印加するゲート電圧VRSTを制御することにより、第2コンタクト領域17及び転送電極6からリセット電極29への電荷の流入を制限したり、キャパシタ7及び感応領域15の電荷をリセット電極29を介してグラウンドに流しキャパシタ7及び感応領域15の電位をリセットすることができる。MIS構造20fは、第3制御領域18が転送電極6とリセット電極29との間に位置するように設けることができる。
【0037】
次に、本実施形態の化学センサ50による電荷転送メカニズムを
図7を用いて説明する。V
inputは注入電極3の電位であり、V
ICGで示した領域は第1ゲート電極4により制御される第1制御領域14のバンド図であり、pHで示した領域は感応領域15のバンド図であり、V
TGで示した領域は、第2ゲート電極5により制御される第2制御領域16のバンド図である。
【0038】
図7(a)は、初期状態のバンド図である。また、
図7(a)では、測定対象32である水溶液は、化学センサ50に滴下されていない。
化学センサ50に測定対象32である水溶液を滴下する(例えば、
図2(a)、
図6)と、
図7(b)のようにバンド図は変化する。具体的には、測定対象32である水溶液中の水素イオンに感応して感応領域15の電位が変化する。
次に、
図7(c)のように、第1ゲート電極4の電圧V
ICGを変化させ、注入電極3から電荷を感応領域15に流入させる。この際、測定対象32である水溶液の水素イオンの量に応じた量の電荷が感応領域15に流入する。
【0039】
次に、
図7(d)のように第1ゲート電極4の電圧V
ICGを変化させ、感応領域15に電荷が流入しないようにする。このことにより、水素イオンの量に応じた量の電荷が感応領域15に閉じ込められる。
次に、
図7(e)(f)のように第2ゲート電極5の電圧V
TGを変化させ、感応領域15の電荷を転送電極6を介してキャパシタ7に転送する。
次に
図7(b)のように、第2ゲート電極5の電圧V
TGを変化させ、感応領域15の電荷が転送電極6に流入しないようにする。
図7(b)→
図7(c)→
図7(d)→
図7(e)→
図7(f)の操作(電荷転送サイクル)を複数回繰り返すことにより、測定対象32である水溶液中の水素イオンに応じた量の電荷を複数回キャパシタ7に転送することができ、キャパシタ7に累積することができる。
その後、ソースフォロア回路37を用いてキャパシタ7の電気量を出力電圧V
out(信号電圧)として読み出す。この出力電圧V
outは、測定対象32である水溶液中の水素イオンの量に応じた値となるため、検量線を用いて出力電圧V
outから溶液のpHを算出することができる。また、電荷転送サイクルを複数回行うため、増幅された信号電圧を出力することができ、感度よく測定対象32である水溶液のpHを検出することができる。なお、検量線は予め作成したものを用いる。
【0040】
その後、リセットゲート電極28の電圧を変化させ、キャパシタ7に蓄積された電荷及び感応領域15の電荷をリセット電極29に流入させ、キャパシタ7の電位及び感応領域15の電位を初期状態に戻す。
そして、電荷転送サイクルの複数回繰り返し、キャパシタ7に蓄積された電気量の読み出し及びリセットゲート電極28への電圧印加からなる測定サイクルを繰り返し行うことにより、測定対象32のpHの変化をモニタリングすることができる。
ここでは、溶液のpHの検出について説明したが、本実施形態の化学センサ50を用いると、汗腺から分泌される汗に含まれる化学物質の濃度や皮膚から放出される化学物質(アセトンなど)の濃度を検出することも可能である。
【0041】
化学センサの作製実験
図1~3に示したような化学センサ(pHセンサ)を次のように作製した。
(1)Si/SiO
2ハンドルウェハ上にポリアミド酸溶液をスピンコートし、350℃で焼成することにより、ウェハ上にポリイミド層(厚さ10μm以下)(基板1a)を形成した。
(2)ポリイミド層上にAl層を蒸着し、ウェットエッチングを用いてAl層をパターニングすることにより、第1ゲート電極4、第2ゲート電極5及びリセットゲート電極28を形成した。
【0042】
(3)これらのゲート電極上にAl2O3層(厚さ50nm)及びSiOx層(厚さ:10nm)(絶縁体層26a)を形成した。
(4)絶縁体層26a上にAl層を蒸着し、ウェットエッチングを用いてAl層をパターニングすることにより、第3ゲート電極22、延長ゲート電極8及び第4ゲート電極24を形成した。
(5)これらのゲート電極上にAl2O3層(厚さ50nm)及びSiOx層(厚さ:10nm)(絶縁体層26b)を形成した。
【0043】
(6)スパッタ法を用いて絶縁体層26b上にアモルファスInGaZnO薄膜(厚さ:30nm)を堆積させ、パターニングを行い、半導体薄膜2を形成した。
(7)半導体薄膜2上にCr/Au層を堆積させ、パターニングすることにより注入電極3、転送電極6、リセット電極29を形成した。
(8)形成した積層体を真空雰囲気で90分間、200℃の熱処理を行い、フォーミングガス中で20分間、250℃の熱処理を行った。
(9)延長ゲート電極8の感応部10の周りにAg-AgCl参照電極インクを塗布し、大気中で2分間120℃の熱処理を行い、参照電極30を形成した。
【0044】
(10)延長ゲート電極8の感応部10及び参照電極30以外の領域上にポリイミドテープを貼り付け、絶縁体層26cを形成した。
(11)ポリイミド層をSi/SiO
2ハンドルウェハから取り外し、ポリイミド層に温度センサ付きのPETフィルム(基板1b)を貼り付けた。
(1)~(11)の手順により、化学センサを作製した。なお、(2)~(8)の手順において、ソースフォロア回路37、キャパシタ7及び配線38なども同時に形成している。
作製したpHセンサの写真及びその説明図を
図8に示す。
【0045】
pH検出実験
作製したpHセンサを用いて測定対象である溶液のpHと出力電圧V
outとの関係を調べた。具体的には、延長ゲート電極8の感応部10上にpHを予め調整した水溶液を滴下して
図9(a)~
図9(c)のような電圧シーケンスを行い、V
outを出力させた。なお、測定により電荷転送サイクルの回数を変えている。
図9(a)は、1回の測定サイクルに伴う第1ゲート電極4に印加する電圧V
ICGの電圧シーケンスであり、
図9(b)は、1回の測定サイクルに伴う第2ゲート電極5に印加する電圧V
TGの電圧シーケンスであり、
図9(c)は、1回の測定サイクルに伴うリセットゲート電極28に印加する電圧V
RSTの電圧シーケンスである。
【0046】
図9(a)において第1ゲート電極4に4Vの電圧を印加した際に、
図7(c)のように電荷が感応領域15に流入する。また、
図9(b)において第2ゲート電極5に4Vの電圧を印加した際に、
図7(e)(f)のように感応領域15の電荷がキャパシタ7に転送される。このような第1及び第2ゲート電極への電圧の印加からなる電荷転送サイクルを複数回繰り返すことにより、キャパシタ7に電荷が累積され、キャパシタ7の電気量が大きくなる。
電荷転送サイクルの繰り返しが終わった後、ソースフォロア回路37により、キャパシタ7の電気量を出力電圧(信号電圧)V
outとして出力する。
V
outを出力した後、
図9(c)のように、リセットゲート電極28に2Vの電圧を印加して、キャパシタ7及び感応領域15の電荷をグラウンドへと流す。
【0047】
図10は、実験結果を示すグラフで有り、測定対象である水溶液のpHと、出力電圧V
outとの関係を示すグラフである。測定対象として、pH2.8の水溶液、pH6.9の水溶液又はpH11.2の水溶液を用いた。また、電荷転送サイクルの回数を10回、20回、60回又は100回として測定を行った。
図10に示すように、測定対象である水溶液のpHと出力電圧V
outとは、比例関係となることがわかった。また、電荷転送サイクルの回数を増やすと、回帰直線の傾きが大きくなり、検出感度が高くなることがわかった。
【0048】
pHモニタリング実験
作製したpHセンサを用いて
図9に示した測定サイクル(電荷転送サイクルの回数:100回)を繰り返すことにより、溶液のpHモニタリングを行った。
具体的には、延長ゲート電極8の感応部10上の測定対象32を、pH6.9の水溶液→pH2.8の水溶液→pH6.9の水溶液→pH11.2の水溶液と変化させてpHのモニタリングを行った。
測定対象32のpHを変化させたときの出力電圧V
outの変化を
図11に示す。
図11に示した測定結果から、測定対象32のpHに応じて出力電圧V
outが変化することが確認された。
従って、作製したpHセンサを用いて測定対象32のpHをモニタリングできることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1、1a、1b:基板 2:半導体薄膜 3:注入電極 4:第1ゲート電極 5:第2ゲート電極 6:転送電極 7:キャパシタ 8:延長ゲート電極 9:ゲート部 10:感応部 11:配線部 13:第1コンタクト領域 14:第1制御領域 15:感応領域 16:第2制御領域 17:第2コンタクト領域 18:第3制御領域 20a~20f:MIS構造 22:第3ゲート電極 24:第4ゲート電極 26、26a~26d:絶縁体層 28:リセットゲート電極 29:リセット電極 30:参照電極 32:測定対象 35:電荷転送部 37:ソースフォロア回路 38:配線 50:化学センサ