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特許7300320電磁誘導式エンコーダにおける受信線間隔
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダにおける受信線間隔
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20230622BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G01D5/20 110X
G01D5/245 110Q
G01D5/20 110E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019113947
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020003486
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】16/024,269
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】テッド ステイトン クック
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106922(JP,A)
【文献】特開平8-313295(JP,A)
【文献】特開2004-200356(JP,A)
【文献】特開平10-213406(JP,A)
【文献】特開2013-64653(JP,A)
【文献】特開平11-223505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定軸方向に沿って2つの要素の相対的位置を測定するために使用可能である電子式エンコーダであって、
前記測定軸方向に沿って延在し、少なくとも、前記測定軸方向に沿って配置される第1のパターントラック及び第2のパターントラックを含む信号変調スケールパターンを含むスケールであって、各パターントラックは、前記測定軸方向に沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素を含む、前記スケールと、
前記第1のパターントラック及び前記第2のパターントラックに近接して取り付けられ、前記第1のパターントラック及び前記第2のパターントラックに対して前記測定軸方向に沿って移動するように構成され、多層プリント回路基板(PCB)を含む検出部と、
コイル駆動信号を提供するように前記検出部に動作可能に接続され、前記検出部から入力される検出信号に基づいて、前記検出部と前記スケールとの前記相対的位置を決定する信号処理部と、
を含み、
前記検出部は、
前記PCB上に設けられた磁場発生コイル部と、
前記測定軸方向に沿って配置されるそれぞれの導電性受信ループを含み、第1の内部領域及び第2の内部領域と位置合わせされた状態で前記PCB上に設けられた複数の検知要素と、
を含み、
前記磁場発生コイル部は、
少なくとも部分的に取り囲むことによって、前記第1のパターントラックと位置合わせされる前記第1の内部領域を画定し、前記コイル駆動信号に応えて、前記第1の内部領域内に第1トラック磁束変化を発生させる第1トラック磁場発生コイル部と、
少なくとも部分的に取り囲むことによって、前記第2のパターントラックと位置合わせされる前記第2の内部領域を画定し、前記コイル駆動信号に応えて、前記第2の内部領域内に第2トラック磁束変化を発生させる第2トラック磁場発生コイル部と、
を含み、
前記複数の検知要素は、
前記第1のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される前記第1トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第1のセットと、
前記第2のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される前記第2トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第2のセットと、
を含み、
前記第1のパターントラックは、前記測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含み、
前記第2のパターントラックは、前記測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含み、
検知要素の前記第1のセットは、前記第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なるセグメントであって測定軸方向に垂直に方向付けられる直線セグメントである交差セグメントを含む接続線を介して、前記信号処理部に接続され、
検知要素の前記第1のセットは、第1の空間位相接続線を介して前記信号処理部に接続される検知要素の第1の空間位相サブセット、及び、第2の空間位相接続線を介して前記信号処理部に接続される検知要素の第2の空間位相サブセットを含み、
前記第1の空間位相接続線は、前記第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なる第1の空間位相交差セグメントをそれぞれ含む少なくとも2つの接続線を含み、前記第2の空間位相接続線は、前記第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なる第2の空間位相交差セグメントをそれぞれ含む少なくとも2つの接続線を含み、前記第1の空間位相交差セグメント及び前記第2の空間位相交差セグメントからなる第1の対が、距離Nλだけ、前記測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数であり、前記第1の空間位相交差セグメント及び前記第2の空間位相交差セグメントからなる第2の対が、距離Nλだけ、前記測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数である、電子式エンコーダ。
【請求項2】
前記第1トラック磁場発生コイル部及び前記第2トラック磁場発生コイル部は、前記第1の内部領域及び前記第2の内部領域の両方を画定する単一ループの一部である、請求項1に記載の電子式エンコーダ。
【請求項3】
前記スケールは更に、前記測定軸方向に沿って配置され、前記測定軸方向に沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素を含む第3のパターントラックを含み、前記第1のパターントラックは、前記第2のパターントラックと前記第3のパターントラックとの間に配置され、
前記検出部は、前記第1のパターントラック、前記第2のパターントラック及び前記第3のパターントラックに近接して取り付けられ、前記第1のパターントラック、前記第2のパターントラック及び前記第3のパターントラックに対して前記測定軸方向に沿って移動するように構成され、
前記磁場発生コイル部は更に、少なくとも部分的に取り囲むことによって、前記第3のパターントラックと位置合わせされる第3の内部領域を画定し、前記コイル駆動信号に応えて、前記第3の内部領域内に第3トラック磁束変化を発生させる第3トラック磁場発生コイル部を含み、
前記複数の検知要素は、前記第1の内部領域、前記第2の内部領域及び前記第3の内部領域と位置合わせされた状態で前記測定軸方向に沿って配置され、前記複数の検知要素は更に、前記第3のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される前記第3トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第3のセットを含み、
前記第3のパターントラックは、前記測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含み、
検知要素の前記第3のセットは、接続線を介して、前記信号処理部に接続される、請求項1に記載の電子式エンコーダ。
【請求項4】
前記スケールは更に、前記測定軸方向に沿って配置され、前記測定軸方向に沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素を含む第3のパターントラックを含み、前記第1のパターントラックは、前記第2のパターントラックと前記第3のパターントラックとの間に配置され、
前記検出部は、前記第1のパターントラック、前記第2のパターントラック及び前記第3のパターントラックに近接して取り付けられ、前記第1のパターントラック、前記第2のパターントラック及び前記第3のパターントラックに対して前記測定軸方向に沿って移動するように構成され、
前記磁場発生コイル部は更に、少なくとも部分的に取り囲むことによって、前記第3のパターントラックと位置合わせされる第3の内部領域を画定し、前記コイル駆動信号に応えて、前記第3の内部領域内に第3トラック磁束変化を発生させる第3トラック磁場発生コイル部を含み、
前記複数の検知要素は、前記第1の内部領域、前記第2の内部領域及び前記第3の内部領域と位置合わせされた状態で前記測定軸方向に沿って配置され、前記複数の検知要素は更に、前記第3のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される前記第3トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第3のセットを含み、
前記第3のパターントラックは、前記測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含み、
検知要素の前記第3のセットは、前記第1のパターントラックに亘って延在するか又は重なる交差セグメントを含む接続線を介して、検知要素の前記第2のセットに接続され、
検知要素の前記第3のセットは、第3の空間位相接続線を介して検知要素の前記第2のセットに接続される検知要素の第1の空間位相サブセット、及び、第4の空間位相接続線を介して検知要素の前記第2のセットに接続される検知要素の第2の空間位相サブセットを含み、
前記第3の空間位相接続線は、前記第1のパターントラックに亘って延在するか又は重なるそれぞれの第1の空間位相交差セグメントを含む少なくとも2つの接続線を含み、前記第4の空間位相接続線は、前記第1のパターントラックに亘って延在するか又は重なるそれぞれの第2の空間位相交差セグメントを含む少なくとも2つの接続線を含み、前記第1の空間位相交差セグメント及び前記第2の空間位相交差セグメントからなる第1の対が、距離Nλだけ、前記測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数であり、前記第1の空間位相交差セグメント及び前記第2の空間位相交差セグメントからなる第2の対が、距離Nλだけ、前記測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数である、請求項1に記載の電子式エンコーダ。
【請求項5】
前記第1のパターントラックは、2つのサブトラックを含み、各サブトラックは、前記測定軸方向に沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素を含み、
前記第1のパターントラックの前記2つのサブトラックは、前記測定軸方向に沿って、約1/2λの公称スケールトラックオフセットだけオフセットされ、
前記第1トラック磁場発生コイル部は、2つのサブコイルを含み、各サブコイルは、少なくとも部分的に取り囲むことによって、対応するサブトラックと位置合わせされるサブ内部領域を画定し、コイル駆動信号に応えて、前記サブ内部領域内にサブトラック磁束変化を発生させ、
検知要素の前記第1のセットは、2つのサブセットを含み、各サブセットは、前記サブトラックの隣接する信号変調要素によって提供される前記サブトラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される、請求項4に記載の電子式エンコーダ。
【請求項6】
前記2つのサブコイルは、それぞれ、前記2つのサブ内部領域の一方のサブ領域内に、第1の極性を有する前記サブトラック磁束変化を発生させ、前記2つのサブ内部領域の他方のサブ領域内に、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する前記サブトラック磁束変化を発生させるように構成され、
検知要素の前記第1のセットを形成する前記導電性受信ループそれぞれの少なくとも半分以上は、前記測定軸方向に垂直な方向に沿って、前記2つのサブ内部領域に亘り、前記2つのサブ内部領域内に同じ検知ループ極性を提供する、請求項5に記載の電子式エンコーダ。
【請求項7】
前記2つのサブコイルは、それぞれ、前記2つのサブ内部領域の一方のサブ領域内に、第1の極性を有する前記サブトラック磁束変化を発生させ、前記2つのサブ内部領域の他方のサブ領域内に、前記第1の極性と同じ第2の極性を有する前記サブトラック磁束変化を発生させるように構成され、
検知要素の前記第1のセットを形成する前記導電性受信ループそれぞれの少なくとも半分以上は、前記測定軸方向に垂直な方向に沿って、前記2つのサブ内部領域に亘り、前記2つのサブ内部領域内に相反する検知ループ極性を提供するように前記導電性受信ループの導電性トレースの交差又はツイストを含む、請求項5に記載の電子式エンコーダ。
【請求項8】
検知要素の前記第1のセットを形成する前記導電性受信ループの少なくとも半分以上について、前記導電性受信ループの前記導電性トレースの前記交差又はツイストは、前記2つのサブ内部領域間の領域内に位置付けられる、請求項7に記載の電子式エンコーダ。
【請求項9】
前記第1トラック磁場発生コイル部及び前記第2トラック磁場発生コイル部は、それぞれ、前記第1の内部領域を少なくとも部分的に取り囲む単一の巻回及び前記第2の内部領域を少なくとも部分的に取り囲む単一の巻回を含む、請求項1に記載の電子式エンコーダ。
【請求項10】
各導電性受信ループの少なくとも半分以上は、前記測定軸方向に垂直な方向に沿って、対応する内部領域に亘る公称検知要素幅寸法を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の電子式エンコーダ。
【請求項11】
前記公称検知要素幅寸法は、前記測定軸方向に垂直な前記方向に沿って、前記対応する内部領域に亘る寸法よりも大きく、
前記導電性受信ループの少なくとも半分以上は、対応する磁場発生コイル部に重なる、請求項10に記載の電子式エンコーダ。
【請求項12】
前記第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なる各交差セグメントは、前記測定軸方向に垂直に方向付けられる直線セグメントである、請求項1から11のいずれか1項に記載の電子式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定器に関し、より具体的には、精密測定器において使用できる電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なエンコーダ構成には、様々なタイプの光学式、静電容量式、磁気式、電磁誘導式、移動及び/又は位置トランスデューサが含まれうる。これらのトランスデューサは、読取ヘッド内の送信器及び受信器の様々な幾何学的構成を使用して、読取ヘッドとスケールとの間の移動を測定する。磁気式及び電磁誘導式トランスデューサは、汚れに対して比較的ロバストではあるが、完璧にそうあるわけではない。
【0003】
特許文献1は、高精度用途に使用可能である電磁誘導式トランスデューサについて説明している。特許文献2及び特許文献3は、信号生成及び処理回路を含む電磁誘導式インクリメンタル型ノギス及びリニアスケールについて説明している。特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、電磁誘導式トランスデューサを使用する電磁誘導式アブソリュート型ノギス及び電子式巻き尺について説明している。特許文献7は、高精度用途に使用可能である電磁誘導式トランスデューサについて説明しており、平行に二分されたスケール並びに複数の送信コイル及び受信コイルのセットが、電磁誘導式トランスデューサに誤差を生じさせる可能性のある特定の信号オフセットを低減する。これらの特許に説明されるように、電磁誘導式トランスデューサは、プリント回路基板技術を使用して製造することができ、汚れにほとんど影響されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6011389号明細書
【文献】米国特許第5973494号明細書
【文献】米国特許第6002250号明細書
【文献】米国特許第5886519号明細書
【文献】米国特許第5841274号明細書
【文献】米国特許第5894678号明細書
【文献】米国特許第7906958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなシステムは、例えば信号強度、小型サイズ、高分解能、価格、位置ずれ及び汚れに対するロバスト性等の組み合わせといったユーザによって望まれる特徴の特定の組み合わせを提供する能力に限界がある場合がある。改良された組み合わせを提供するエンコーダの構成が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明において更に説明される概念のセレクションを、簡略形式で紹介するために提供される。この概要は、請求項に係る主題の重要な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求項に係る主題の範囲を決定する助けとして使用されることも意図していない。
【0007】
測定軸方向に沿って2つの要素の相対的位置を測定するために使用可能である電子式エンコーダが提供される。様々な実施態様において、電子式エンコーダは、スケールと、検出部と、信号処理部とを含む。スケールは、測定軸方向に沿って延在し、少なくとも、測定軸方向に沿って配置される第1のパターントラック及び第2のパターントラックを含む信号変調スケールパターンを含み、各パターントラックは、測定軸方向に沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素を含む。
【0008】
検出部は、第1のパターントラック及び第2のパターントラックに近接して取り付けられ、第1のパターントラック及び第2のパターントラックに対して測定軸方向に沿って移動するように構成される。
【0009】
様々な実施態様において、検出部は、多層プリント回路基板(PCB)を含み、また、PCB上に設けられた磁場発生コイル部(送信器)及び複数の検知要素(受信器)を含む。磁場発生コイル部は、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第1のパターントラックと位置合わせされる第1の内部領域を画定し、コイル駆動信号に応えて、第1の内部領域内に第1トラック磁束変化を発生させる第1トラック磁場発生コイル部を含む。磁場発生コイル部はまた、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第2のパターントラックと位置合わせされる第2の内部領域を画定し、コイル駆動信号に応えて、第2の内部領域内に第2トラック磁束変化を発生させる第2トラック磁場発生コイル部を含む。
【0010】
検出部は、測定軸方向に沿って配置されるそれぞれの導電性受信ループを含み、第1の内部領域及び第2の内部領域と位置合わせされた状態でPCB上に設けられた複数の検知要素(受信器)を含む。複数の検知要素は、第1のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される第1トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第1のセットと、第2のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される第2トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第2のセットとを含む。
【0011】
信号処理部は、磁場発生コイル部用のコイル駆動信号を提供するように検出部に動作可能に接続され、検出部から入力される検出信号に基づいて、検出部とスケールとの相対的位置を決定する。
【0012】
様々な実施態様では、スケールの第1のパターントラックは、測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含み、スケールの第2のパターントラックは、測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含む。(第1のパターントラックに対応する)検知要素の第1のセットは、第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なる交差セグメントを含む接続線を介して、信号処理部に接続される。検知要素の第1のセットは、第1の空間位相接続線を介して信号処理部に接続される検知要素の第1の空間位相サブセット、及び、第2の空間位相接続線を介して信号処理部に接続される検知要素の第2の空間位相サブセットを含む。第1の空間位相接続線は、第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なる第1の空間位相交差セグメントをそれぞれ含む少なくとも2つの接続線を含む。第2の空間位相接続線は、第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なる第2の空間位相交差セグメントをそれぞれ含む少なくとも2つの接続線を含む。第1の空間位相交差セグメント及び第2の空間位相交差セグメントからなる第1の対は、距離Nλだけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数である。第1の空間位相交差セグメント及び第2の空間位相交差セグメントからなる第2の対は、距離Nλだけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数である。
【0013】
発明者は、異なる波長(λ、λ、…)のパターントラックを複数使用する一部の電磁誘導式エンコーダでは、複数のパターントラックからの信号の相互結合による信号混入という欠点があることを見出した。理想的には、各パターントラックからの信号は、それ自身の波長(λ)による位相情報のみを含むべきである。しかし、波長λの第1のパターントラックからの信号は、しばしば、波長λの第2のパターントラックから信号を一部含む。このような信号の相互結合は、特にエンコーダの位置計算に誤差をもたらすので望ましくない。発明者は、相互結合問題の一部は、1つのパターントラックの受信線が、異なる波長を有する別のパターントラックを越えて渡る構成によって引き起こされていることを見出した。発明者は更に、波長λの第1のパターントラックの受信線の空間位相対、具体的には、λの異なる波長を有する第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なるそれらの空間位相交差セグメントを、測定軸方向に沿って、λの整数倍数の距離(=Nλ)だけ離間された位置に配置することによって、信号の相互結合が大幅に低減され、これにより、エンコーダトランスデューサの性能全体が向上されることを見出した。このような受信線間隔は、これがなければ、第2の波長(λ)の第2のパターントラックによって出現するコモンモード誤差を無効化する又は相殺することを容易にすると考えられ、これにより、第2のトラックパターンに亘って延在するか又は重なる第1の波長(λ)の第1のトラックパターンからの受信線の空間位相対の交差セグメントにおける信号混入が低減される。
【0014】
様々な実施形態において、第2のトラックパターンに亘って延在するか重なるそれぞれの第1の空間位相交差セグメント及び第2の空間位相交差セグメントは、測定軸方向に垂直に方向付けられる直線セグメントである。
【0015】
実施形態の別の態様では、スケールは更に、測定軸方向に沿って配置される第3のパターントラックを含み、第1のパターントラックは、第2のパターントラックと第3のパターントラックとの間に配置される。磁場発生コイル部は更に、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第3のパターントラックと位置合わせされる第3の内部領域を画定し、コイル駆動信号に応えて、第3の内部領域内に第3トラック磁束変化を発生させる第3トラック磁場発生コイル部を含む。複数の検知要素は更に、第3のパターントラックの隣接する信号変調要素によって提供される第3トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素の第3のセットを含む。第3のパターントラックは、測定軸方向に沿って、波長λで周期的に配置される信号変調要素を含む。検知要素の第3のセットは、第3の空間位相接続線を介して検知要素の第2のセットに接続される検知要素の第1の空間位相サブセット、及び、第4の空間位相接続線を介して検知要素の第2のセットに接続される検知要素の第2の空間位相サブセットを含む。第3の空間位相接続線は、第1のパターントラックに亘って延在するか又は重なるそれぞれの第1の空間位相交差セグメントを含む少なくとも2つの接続線を含み、第4の空間位相接続線は、第1のパターントラックに亘って延在するか又は重なるそれぞれの第2の空間位相交差セグメントを含む少なくとも2つの接続線を含む。第1の空間位相交差セグメント及び第2の空間位相交差セグメントからなる第1の対が、距離Nλだけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数である。第1の空間位相交差セグメント及び第2の空間位相交差セグメントからなる第2の対が、距離Nλだけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、Nは整数である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、検出部及びスケールを含む電子式エンコーダを使用するハンドツールタイプのノギスの組立分解等角図である。
図2】(a)は、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第1の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。(b)は、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第1の例示的な実施態様及び信号変調互換スケールパターンを示す平面図である。
図3】(a)は、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第2の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。(b)は、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第2の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。
図4】(a)は、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第3の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。(b)は、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第3の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。
図5A図5Aは、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第4の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。
図5B図5Bは、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第4の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。
図5C図5Cは、電子式エンコーダに使用可能である検出部の第4の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターンを示す平面図である。
図6図6は、電子式エンコーダを含む測定システムのコンポーネントの1つの例示的な実施態様を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、スケール170を含む略長方形の横断面の本尺を有するスケール部材102と、スライダアセンブリ120とを含むハンドツールタイプのノギス100の組立分解等角図である。様々な実施態様において、スケール170は、(例えばX軸方向に相当する)測定軸方向MAに沿って延在してよく、また、信号変調スケールパターン180を含んでよい。既知のタイプのカバー層172(例えば100μmの厚さ)が、スケール170を覆ってよい。スケール部材102の第1の端の近くのジョー108及び110と、スライダアセンブリ120上の可動ジョー116及び118とが、既知の方法で、物体の寸法を測定するために使用される。スライダアセンブリ120は、端止め具154によって、スケール部材102の下のデプスバー溝152内に収められるデプスバー126を任意選択的に含んでもよい。デプスバー測定端128を穴の中に延ばして、その深さを測定することができる。スライダアセンブリ120のカバー139が、オン/オフスイッチ134と、ゼロ設定スイッチ136と、測定結果ディスプレイ138とを含んでよい。スライダアセンブリ120のベース140は、スケール部材102のサイドエッジ146に接触するガイドエッジ142を含み、ネジ147によって弾性圧力バー148をスケール部材102の対向するエッジに付勢することで、測定、及び、スケール170に対する読取ヘッド部164の移動に適切な位置合わせを保証する。
【0018】
ベース140上にはピックオフアセンブリ160が設けられている。このピックオフアセンブリ160は、読取ヘッド部164を保持している。読取ヘッド部164は、本実施態様では、磁場発生コイル部及び測定軸方向MAに沿って配置された検知要素群(例えば集合的に磁場発生及び検知巻線部)を含む検出部167と、信号処理部(例えば制御回路)166とを搭載した多層プリント回路基板(PCB)162を含んでいる。回路及び接続部の汚染を防止するように、弾性シール163が、カバー139とPCB162との間で圧縮されるとよい。検出部167は、絶縁コーティングによって覆われてよい。
【0019】
1つの特定の例示的な例では、検出部167は、スケール170と平行にかつスケール170に対向して配置され、また、スケール170に対向する検出部167の前面は、深さ(Z)方向に沿って、約0.5mmの間隙によって、スケール170(及び/又は信号変調スケールパターン180)から離間されてよい。読取ヘッド部164とスケール170とを合わせて、電子式エンコーダの一部としてのトランスデューサが形成されうる。一実施態様では、トランスデューサは、磁場の変化を発生させることによって動作する渦電流トランスデューサであってよい。以下により詳細に説明されるように、磁場の変化は、当該磁場内に置かれた信号変調スケールパターン180の信号変調要素の幾つかにおいて、エディカレントと知られる渦電流を誘導する。当然ながら、図1に示されるノギス100は、小型サイズ、(例えば長い電池寿命のための)低電力動作、高分解能及び高精度測定、低価格、汚れに対するロバスト性等の比較的最適化された組み合わせを提供するように、長年にわたって進化してきた電子式エンコーダを通常実装する様々な応用のうちの1つである。これらの要素の何れかにおける小さい改良でも、非常に望ましいことであるが、特に、様々な応用における商業上の成功を達成するために課される設計上の制約を鑑みると、達成することは困難である。以下の説明に開示される原理は、特に費用効果及び小型化の点で、これらの要素のうちの幾つかに改良を提供する。
【0020】
図2(a)及び(b)は、図1等に示される電子式エンコーダにおいて検出部167及び信号変調スケールパターン180として使用可能である第1の例示的な実施態様の平面図である。図2(a)及び(b)は、部分的に具象的、部分的に概略的であるとみなされてよい。図2(a)における検出部167及び信号変調スケールパターン180の拡大部が、図2(b)に示される。図2(a)及び(b)では、以下に説明される様々な要素は、その形状又は外形によって表され、また、互いに重ね合わされて、特定の幾何学的関係を強調するように示される。当然ながら、以下の説明に基づいて当業者には明らかであるように、各種要素は、必要に応じて、様々な動作間隙及び/又は絶縁層を提供するように、Z軸方向(図2(a)及び(b)の紙面に向かう方向)位置がそれぞれ異なる平面に配置された異なる製造層上にあってよい。具体的には、例示的な実施形態によれば、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2は、PCBの1つ以上の送信銅層を使用して作成される導電性トレースを含み、波長λの第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN20のセットを形成する導電性受信ループ及び波長λの第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SEN1’~SEN20’のセットを形成する導電性ループは、PCBの1つ以上の受信銅層を使用して作成される導電性トレースを含んでよい。
【0021】
信号変調スケールパターン180の図示される部分は、第1のパターントラックPT1及び第2のパターントラックPT2を含み、各パターントラックは、破線の外形で示される信号変調要素SMEを含み、信号変調要素SMEは、(図1に示される)スケール170上に配置される。信号変調要素SMEは、測定軸方向MAに沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される。第1のパターントラックPT1では、信号変調要素SMEは、測定軸方向MAに沿って波長λで周期的に配置される。第2のパターントラックPT2では、信号変調要素SMEは、測定軸方向MAに沿って波長λで周期的に配置される。図1において見られるように、当然ながら、信号変調スケールパターン180は、動作中、検出部167に対して移動する。
【0022】
図2(a)及び(b)の例では、信号変調スケールパターン180は、(例えばX軸方向に相当する)測定軸方向MAに沿って周期的に配置される個別の信号変調要素SMEを含む。しかし、より一般的には、信号変調スケールパターン180は、パターンがX軸方向に沿った位置の関数として変化する空間特性を有し、これにより、既知の方法に従って、検出部167の検知要素SENに生じる位置依存検出信号を提供するならば、個別の要素又は1つ以上の連続パターン要素を含む様々な代替空間変調パターンを含んでよい。
【0023】
様々な実施態様では、検出部167は、第1のパターントラックPT1及び第2のパターントラックPT2に近接して取り付けられ、第1のパターントラックPT1及び第2のパターントラックPT2に対して測定軸方向MAに沿って移動するように構成される。検出部167は、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2を含む磁場発生部を含む。第1トラック磁場発生コイル部FGC1は、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第1のパターントラックPT1と位置合わせされた第1の内部領域INT1を画定し、第1トラック磁場発生コイル部FGC1に供給されるコイル駆動信号に応えて、第1の内部領域INT1内に第1トラック磁束変化を発生させる。第2トラック磁場発生コイル部FGC2は、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第2のパターントラックPT2と位置合わせされた第2の内部領域INT2を画定し、第2トラック磁場発生コイル部FGC2に供給されるコイル駆動信号に応えて、第2の内部領域INT2内に第2トラック磁束変化を発生させる。
【0024】
様々な実施態様において、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2は、対応する内部領域INT1及びINT2を取り囲む単一の巻回を含んでよい。幾つかの実施形態では、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2は、第1の内部領域INT1及び第2の内部領域INT2の両方を画定する単一のループの一部である。
【0025】
様々な検知要素SEN1~SEN20及びSEN1’~SEN20’、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2は、基板(例えば図1のPCB162)上に設けることができる。様々な実施態様では、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2は、(例えばPCBの異なる層内に配置されるため)検知要素SEN1~SEN20及びSEN1’~SEN20’の対応するセットから絶縁されている。
【0026】
複数の検知要素SENは、当業者には理解されるように、様々な実施形態において、多種多様の対応する信号処理スキームと組み合わせて使用される様々な代替構成を取りうる。図2(a)及び(b)は、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2にそれぞれ対応する検知要素SEN1~SEN20及びSEN1’~SEN20’の2つの代表セットを示す。この特定の実施形態における検知要素SENは、直列に接続される第1の空間位相サブセットSEN1~SEN10(又はSEN1’~SEN10’)及び直接に接続される第2の空間位相サブセットSEN11~20(又はSEN11’~SEN20’)内に配置される導電性受信ループ(或いは、検知ループ要素、検知コイル要素又は検知巻線要素とも呼ばれる)を含む。
【0027】
第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN20の第1のセットは、第1のパターントラックPT1の隣接する信号変調要素によって提供される第1トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される。第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SEN1’~SEN20’の第2のセットは、第2のパターントラックPT2の隣接する信号変調要素によって提供される第2トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される。この実施形態では、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN20の第1のセット及び第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SEN1’~SEN20’の第2のセットのそれぞれにおいて、隣接するループ要素は、相対する巻線極性を有するように、既知の方法に従って、フィードスルーによって接続されるPCBの様々な層上の導体の構成によって接続される。つまり、第1のループが、正の極性の検出信号寄与を有する磁場の変化に反応する場合、隣接するループは、負の極性の検出信号寄与で反応する。この特定の実施形態では、検知要素は、それらの検出信号又は信号寄与が合計され、「合計」検出信号が、検出信号出力接続部SDS1~SDS8において、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN20の第1のセット及び第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SEN1’~SEN20’の第2のセットから信号処理部(図示せず)へと出力されるように、直列に接続される。信号処理部(例えば図1の信号処理部166又は以下に説明される図6の信号処理部766等)は、検出部167に動作可能に接続され、第1トラック磁場発生コイル部FGC1及び第2トラック磁場発生コイル部FGC2にコイル駆動信号を提供し、(検出信号出力接続部SDS1~SDS8を介して)検出部167から入力される検出信号に基づいて、検出部167とスケール170との相対的位置を決定するように構成される。
【0028】
当然ながら、本明細書において説明される検知要素の構成は、例示に過ぎず、限定ではない。一例として、個々の検知要素ループは、幾つかの実施形態では、例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2018/003524号に開示されるように、対応する信号処理部に個別の信号を出力してもよい。より一般的には、様々な実施形態において、様々な既知の検知要素構成が、様々な既知の信号変調スケールパターン及び信号処理スキームと組み合わせた使用のために、本明細書において開示され、請求項に係る原理と組み合わせて使用されてよい。
【0029】
上記のように、第1のパターントラックPT1において、信号変調要素SMEは、測定軸方向MAに沿って波長λで周期的に配置され、第2のパターントラックPT2において、信号変調要素SMEは、測定軸方向MAに沿って波長λで周期的に配置される。図2(b)に最も良く示されるように、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN20の第1のセットは、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なる交差セグメントを含む接続線を介して、信号処理部に接続されている。第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN20の第1のセットは、第1の空間位相接続線を介して、信号処理部に接続されている検知要素SEN1~SEN10の第1の空間位相サブセットと、第2の空間位相接続線を介して、信号処理部に接続されている検知要素SEN11~SEN20の第2の空間位相サブセットとを含む。第1の空間位相接続線は、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの第1の空間位相交差セグメントCRS1を含む少なくとも2つの接続線CON1A及びCON1Bを含む。第2の空間位相接続線は、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの第2の空間位相交差セグメントCRS2を含む少なくとも2つの接続線CON2A及びCON2Bを含む。(CON1Aに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Aに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第1の対が、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、(CON1Bに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Bに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第2の対が、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間される。
【0030】
様々な実施態様において、信号処理部は、第1の空間位相交差セグメントCRS1及び第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第1の対間、並びに、第1の空間位相交差セグメントCRS1及び第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第2の対間の任意のコモンモード信号結合を取り去るために、検知要素SEN1~SEN10の第1の空間位相サブセットによって提供される信号と、検知要素SEN11~SEN20の第2の空間位相サブセットによって提供される信号との差を決定するように構成されてよい。
【0031】
様々な実施態様において、検知要素SENを形成する各導電性受信ループの少なくとも半分以上は、図2(b)に示されるように、測定軸方向MAに垂直な方向に沿って、対応する内部領域INTに亘る公称検知要素幅寸法NSEWDを有する。様々な実施態様において、検知要素SENの公称検知要素幅寸法NSEWDは、(以下に説明される図5Bに示されるように)測定軸方向MAに垂直な方向に沿って、対応する内部領域INTに亘る寸法よりも大きくてよく、検知要素SENの少なくとも半分以上が、こちらも以下に説明される図5Bに示されるように、対応する磁場発生コイル部FGCに重なってよい。
【0032】
図2(b)に示されるように、様々な実施態様では、第2のパターントラックPT2に亘って延在する又は重なる各交差セグメントCRS1及びCRS2は、測定軸方向MAに垂直に方向付けられる直線セグメントである。
【0033】
波長λの第1のパターントラックの受信線の空間位相対、具体的には、λの異なる波長を有する第2のパターントラックに亘って延在するか又は重なるそれらの交差セグメントを、λの整数倍数である距離(=Nλ)だけ離間された位置に配置することは、異なる波長を有する異なるパターントラック間の信号の相互結合を大幅に低減することが見出され、これにより、エンコーダトランスデューサの性能全体が向上される。
【0034】
図1に関して上記されたように、様々な実施態様において、検出部167は、様々なタイプの測定器(例えばノギス、マイクロメータ、ゲージ、リニアスケール等)内に含まれてよい。例えば検出部167は、スライド部材に固定されてよく、信号変調スケールパターン180は、X軸方向と一致する測定軸を有するはり部材に固定されてよい。このような構成において、スライド部材は、はり部材に移動可動に取り付けられ、X軸方向及びY軸方向に沿って延在する平面(Z軸方向は、当該平面に対して直交する)内で測定軸方向MAに沿って移動可能である。
【0035】
図3(a)及び(b)は、図1等に示される電子式エンコーダにおける、検出部167として使用可能である検出部267の第2の例示的な実施態様及び信号変調スケールパターン180を示す平面図である。検出部267は、図2(a)及び(b)の検出部167と同様の特徴及びコンポーネントを有し、以下に明記される点を除き、同様に動作すると理解されてよく、また、本明細書に開示される様々な設計原理を満たすように構成されている。図3(a)における検出部267及び信号変調スケールパターン180の拡大部が、図3(b)に示される。
【0036】
図2(a)の実施形態と同様に、図3(a)に示される実施形態は、第1トラック磁場発生コイル部FGC1に対応する波長λを有する第1のパターントラックPT1と、第2トラック磁場発生コイル部FGC2に対応する波長λを有する第2のパターントラックPT2とを含む。(CON1Aに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Aに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第1の対は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ離、測定軸方向に沿って互いに離間され、(CON1Bに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Bに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第2の対は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間される。図3(a)の検出部267は更に、測定軸方向MAに沿って配置され、測定軸方向MAに沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素SMEを含む第3のパターントラックPT3を含む。図示されるように、第1のパターントラックPT1は、第2のパターントラックPT2と第3のパターントラックPT3との間に配置(間置)される。
【0037】
検出部267は、第1のパターントラックPT1、第2のパターントラックPT2及び第3のパターントラックPT3に近接して取り付けられ、また、第1のパターントラックPT1、第2のパターントラックPT2及び第3のパターントラックPT3に対して測定軸方向に沿って移動するように構成される。磁場発生コイル部は更に、第3トラック磁場発生コイル部FGC3を含み、第3トラック磁場発生コイル部FGC3は、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第3のパターントラックPT3と位置合わせされる第3の内側領域INT3を画定し、第3トラック磁場発生コイル部FGC3に供給されるコイル駆動信号に応えて、第3の内部領域INT3内に第3トラック磁束変化を発生させる。複数の検知要素SENは更に、第3のパターントラックPT3の隣接する信号変調要素SMEによって提供される第3トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号(検出信号出力接続部SDS9~SDS12において出力される)を提供するように構成される検知要素の第3のセットを含む。第3のパターントラックPT3は、測定軸方向MAに沿って波長λで周期的に配置される信号変調要素SMEを含み、検知要素の第3のセットは、検出信号出力接続部SDS9~SDS12に結合される接続線を介して、信号処理部(図示せず)に接続される。第3のパターントラックPT3の波長λは、第1のパターントラックPT1の波長λと同じであっても異なっていてもよい。このような実施態様では、ヨー誤差が低減されうる。第3のパターントラックPT3の波長λは、第2のパターントラックPT2の波長λと同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
図4(a)及び(b)は、図1等に示される電子式エンコーダにおいて使用可能である検出部367の第3の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターン180を示す平面図である。検出部367は、図2乃至図3の検出部167及び267と同様の特徴及びコンポーネントを有し、以下に明記される点を除き、同様に動作すると理解されてよく、また、本明細書に開示される様々な設計原理を満たすように構成されている。図4(a)における検出部367及び信号変調スケールパターン180の拡大部が、図4(b)に示される。前述同様に、当然ながら、各種要素は、必要に応じて、様々な動作間隙及び/又は絶縁層を提供するように、Z軸方向位置がそれぞれ異なる平面に配置された異なる製造層上にあってよい。
【0039】
上記実施形態と同様に、図4(a)に示される実施形態は、第1トラック磁場発生コイル部FGC1に対応する波長λを有する第1のパターントラックPT1と、第2トラック磁場発生コイル部FGC2に対応する波長λを有する第2のパターントラックPT2とを含む。更に、上記実施形態と同様に、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素の第1のセットは、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なる交差セグメントを含む接続線を介して、信号処理部に接続される。第1のパターントラックPT1に対応する検知要素の第1のセットは、第1の空間位相接続線を介して信号処理部に接続される検知要素の第1の空間位相サブセットと、第2の空間位相接続線を介して信号処理部に接続される検知要素の第2の空間位相サブセットとを含む。第1の空間位相接続線は、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの第1の空間位相交差セグメントCRS1を含む少なくとも2つの接続線CON1A及びCON1Bを含む。第2の空間位相接続線は、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの第2の空間位相交差セグメントCRS2を含む少なくとも2つの接続線CON2A及びCON2Bを含む。(CON1Aに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Aに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第1の対は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、(CON1Bに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Bに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第2の対は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間される。
【0040】
しかし、上記検出部167及び267とは異なり、検出部367では、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SENの第1のセットは更に、第3の接続線CON3A及びCON3Bを介して、信号処理部に接続される検知要素の第3の空間位相サブセットを含む。第3の接続線CON3A及びCON3Bは、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの交差セグメントCRS3を含む。(CON2Aに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2及び(CON3Aに対応する)第3の空間位相交差セグメントCRS3からなる第1の対が、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、(CON2Bに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2及び(CON3Bに対応する)第3の空間位相交差セグメントCRS3からなる第2の対が、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間される。
【0041】
したがって、この実施形態では、第1の空間位相接続線CON1A及びCON1B、第2の空間位相接続線CON2A及びCON2B、及び、第3の空間位相接続線CON3A及びCON3Bは、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離だけ離間された位置に配置されている。このような構成は、例えば第1の空間位相接続線CON1A及びCON1Bが0°位相の受信線に対応し、第2の空間位相接続線CON2A及びCON2Bが120°位相の受信線に対応し、第3の空間位相接続線CON3A及びCON3Bが240°位相の受信線に対応する3相(3チャネル)エンコーダにおいて適用されてよい。当然ながら、図4(a)及び(b)では、第1の空間位相接続線CON1A及びCON1Bは、PCBの異なる層上に積み重ねられるものとして理解されうる一方で、図2(a)、図2(b)、図3(a)及び図3(b)に示される第1の空間位相接続線CON1A及びCON1Bは、互いに隣接するものとして示されている。同様に、図4(a)及び(b)では、第2の空間位相接続線CON2A及びCON2B並びに第3の空間位相接続線CON3A及びCON3Bは、積み重ねられるものとして示されている。
【0042】
図5A図5B及び図5Cは、図1等の電子式エンコーダにおいて使用可能である検出部467の第4の例示的な実施態様及び互換信号変調スケールパターン180を示す平面図である。検出部467は、図2乃至図4の検出部167、267及び367と同様の特徴及びコンポーネントを有し、以下に明記される点を除き、同様に動作すると理解されてよく、また、本明細書に開示される様々な設計原理を満たすように構成されている。当然ながら、各種要素は、必要に応じて、様々な動作間隙及び/又は絶縁層を提供するように、Z軸方向位置がそれぞれ異なる平面に配置された異なる製造層上にあってよい。
【0043】
上記実施形態と同様に、図5Aに示される実施形態は、第1トラック磁場発生コイル部FGC1に対応する波長λを有する第1のパターントラックPT1と、第2トラック磁場発生コイル部FGC2に対応する波長λを有する第2のパターントラックPT2とを含む。更に、上記実施形態と同様に、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN24の第1のセットは、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なる交差セグメントを含む接続線を介して、信号処理部に接続される。第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SEN1~SEN24の第1のセットは、第1の空間位相接続線を介して信号処理部に接続される検知要素SEN1~SEN12の第1の空間位相サブセットと、第2の空間位相接続線を介して信号処理部に接続される検知要素SEN13~SEN24の第2の空間位相サブセットとを含む。第1の空間位相接続線は、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの第1の空間位相交差セグメントCRS1を含む少なくとも2つの接続線CON1A及びCON1Bを含む。第2の空間位相接続線は、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの第2の空間位相交差セグメントCRS2を含む少なくとも2つの接続線CON2A及びCON2Bを含む。(CON1Aに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Aに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第1の対は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、(CON1Bに対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS1及び(CON2Bに対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS2からなる第2の対は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間される。
【0044】
検出部467は更に、測定軸方向MAに沿って配置され、測定軸方向に沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素SMEを含む第3のパターントラックPT3を含む。第1のパターントラックPT1は、第2のパターントラックPT2と第3のパターントラックPT3との間に配置される。様々な例示的な実施形態では、第3のパターントラックPT3の信号変調要素SMEは、第2のパターントラックPT2と同じ波長λである波長λで周期的に配置される。
【0045】
磁場発生コイル部は更に、少なくとも部分的に取り囲むことによって、第3のパターントラックPT3と位置合わせされた第3の内部領域INT3を画定し、第3トラック磁場発生コイル部FGC3に供給されるコイル駆動信号に応えて、第3の内部領域INT3内に第3トラック磁束変化を発生させる第3トラック磁場発生コイル部FGC3を含む。
【0046】
検出部467は更に、第3のパターントラックPT3の隣接する信号変調要素SMEによって提供される第3トラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される検知要素SEN1~SEN20の第3のセットを含む。検知要素SEN1~SEN20の第3のセットは、第1のパターントラックPT1に亘って延在するか又は重なる交差セグメントCRS3及びCRS4を含む空間位相接続線CON1A’、CON1B’、CON2A’及びCON2B’を介して、第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SENの第2のセットに接続される。空間位相接続線CON1A’、CON1B’、CON2A’及びCON2B’のこれらの各交差セグメントCRS3及びCRS4は、測定軸方向MAに沿って、第1のパターントラックPT1の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ離間された位置に配置される。
【0047】
具体的には、第3のパターントラックPT3に対応する検知要素SENの第3のセットは、検知要素SEN1~SEN10の第1の空間位相サブセットを含む。検知要素SEN1~SEN10の第1の空間位相サブセットは、第3の空間位相接続線を介して、第2のパターントラックTP2に対応する検知要素SENの第2のセットに接続される。第3の空間位相接続線は、少なくとも2つの接続線CON1A’及びCON1B’を含み、接続線CON1A’及びCON1B’は、第1のパターントラックPT1に亘って延在するか又は重なるそれぞれの交差セグメントCRS3を含む。また、検知要素SENの第3のセットは、検知要素SEN11~SEN20の第2の空間位相サブセットを含む。検知要素SEN11~SEN20の第2の空間位相サブセットは、第4の空間位相接続線を介して、第2のパターントラックTP2に対応する検知要素SENの第2のセットに接続される。第4の空間位相接続線は、少なくとも2つの接続線CON2A’及びCON2B’を含み、接続線CON2A’及びCON2B’は、第1のパターントラックPT1に亘って延在するか又は重なるそれぞれの交差セグメントCRS4を含む。(CON1A’に対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS3及び(CON2A’に対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS4からなる第1の対は、第1のパターントラックPT1の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間され、(CON1B’に対応する)第1の空間位相交差セグメントCRS3及び(CON2B’に対応する)第2の空間位相交差セグメントCRS4からなる第2の対は、第1のパターントラックPT1の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間される。
【0048】
図示される実施形態では、(CON1A’及びCON1B’を介して)第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SENの第2のセットが接続されている、第3のパターントラックPT3に対応する検知要素SENの第3のセットの第1の空間位相サブセットSEN1~SEN10は、検出信号出力接続部SDS5及びSDS6を介して、信号処理部に接続されている。また、(CON2A’及びCON2B’を介して)第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SENの第2のセットが接続されている、第3のパターントラックPT3に対応する検知要素SENの第3のセットの第2の空間位相サブセットSEN11~SEN20は、検出信号出力接続部SDS7及びSDS8を介して、信号処理部に接続されている。
【0049】
このような検出部467は、第1のパターントラックPT1、第2のパターントラックPT2及び第3のパターントラックPT3に近接して取り付けられ、また、第1のパターントラックPT1、第2のパターントラックPT2及び第3のパターントラックPT3に対して測定軸方向MAに沿って移動するように構成される。
【0050】
幾つかの実施態様では、図5Aに説明されるようなエンコーダは、直交エンコーダとして構成されてよい。具体的には、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SENの第1のセットは更に、検知要素SENの第3の空間位相サブセット(図示せず)を含む。この検知要素SENの第3の空間位相サブセットは、接続線CON3A及びCON3Bの第3の対を少なくとも含む接続線を介して、信号処理部に接続される。接続線CON3A及びCON3Bは、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの交差セグメントCRS3を含み、それぞれの交差セグメントCRS3は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間した位置に配置される。また、第1のパターントラックPT1に対応する検知要素SENの第1のセットは更に、検知要素SENの第4の空間位相サブセット(図示せず)を含む。この検知要素SENの第4の空間位相サブセットは、接続線CON4A及びCON4Bの第4の対を少なくとも含む接続線を介して、信号処理部に接続される。接続線CON4A及びCON4Bは、第2のパターントラックPT2に亘って延在するか又は重なるそれぞれの交差セグメントCRS4を含み、それぞれの交差セグメントCRS4は、第2のパターントラックPT2の波長λの整数倍数である距離(=Nλ、Nは整数)だけ、測定軸方向に沿って互いに離間した位置に配置される。
【0051】
例えば第1の空間位相接続線CON1A及びCON1Bは、直交エンコーダの0°位相の受信線に対応し、第2の空間位相接続線CON2A及びCON2Bは、180°位相の受信線に対応し、第3の空間位相接続線CON3A及びCON3Bは、90°位相の受信線に対応し、第4の空間位相接続線CON4A及びCON4Bは、270°位相の受信線に対応してよい。同様に、第2のパターントラックPT2に対応する検知要素SENの第2のセットは更に、検知要素の第1のセットと類似したやり方で配置される検知要素SENの第3の空間位相サブセット及び検知要素SENの第4の空間位相サブセットを含んでよい。
【0052】
図5Aに示されるように、様々な実施態様において、第1のパターントラックPT1は、2つのサブトラックPT1A及びPT1Bを含んでよく、各サブトラックは、測定軸方向MAに沿った位置の周期関数として変化する空間変化特性を提供するように配置される信号変調要素SMEを含む。様々な実施態様において、2つのサブトラックPT1A及びPT1Bの両方における信号変調要素SMEは、波長λで周期的に配置され、また、更なる様々な実施態様において、同じ信号変調要素SEMを使用して、2つのサブトラックPT1A及びPT1Bの両方が形成される。図示される実施形態における2つのサブトラックPT1A及びPT1Bは、測定軸方向MAに沿って、約1/2λの公称スケールトラックオフセットOFFだけ互いに対してオフセットにされる。
【0053】
第1トラック磁場発生コイル部FGC1は、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bを含み、各サブコイルは、少なくとも部分的に取り囲むことによって、対応するサブトラックPT1A又はPT1Bと位置合わせされるサブ内部領域INT1A又はINT1Bを画定し、各サブコイルは、コイル駆動信号に応えて、サブ内部領域内にサブトラック磁束変化を発生させる。
【0054】
検知要素SENの第1のセットは、2つのサブセットを含み、各サブセットは、サブトラックPT1A又はPT1Bの隣接する信号変調要素によって提供されるサブトラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される。
【0055】
図5Bは、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bの1つの構成を示し、各サブコイルは、λの波長を共に有する2つのサブトラックPT1A及びPT1Bに配置される信号変調要素SEMと共に使用される検知要素SEN1~SEN24のサブセットに対応する。図5Bに示される構成は、図5Aの第1のパターントラックPT1と、検出部467の対応する部分とを形成するように使用されてよい。図5Bの下部に、当該構成の拡大部が示される。具体的には、第1のパターントラックPT1は、2つのサブトラックPT1A及びPT1Bを含み、各サブトラックは、波長λで周期的に配置される信号変調要素SEMを含む。様々な実施形態において、同じ信号変調要素SMEを使用して、2つのサブトラックPT1A及びPT1Bそれぞれを形成することができる。第1のパターントラックPT1の2つのサブトラックPT1A及びPT1Bは、約1/2λの公称スケールトラックオフセットOFFだけ、測定軸方向MAに沿って、互いに対してオフセットにされる。第1トラック磁場発生コイル部FGC1は、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bを含み、各サブコイルは、少なくとも部分的に取り囲むことによって、対応するサブトラックPT1A又はPT1Bと位置合わせされるサブ内部領域INT1A又はINT1Bを画定し、各サブコイルは、コイル駆動信号に応えて、サブ内部領域INT1A又はINT1B内にサブトラック磁束変化を発生させる。図示される実施形態では、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bは、それぞれ、コイル駆動信号を信号処理部(例えば図1の信号処理部166又は図6の信号処理部766等)からサブコイルFGC1Bに提供する第1の接続部CP1、及び、コイル駆動信号を信号処理部(例えば図1の信号処理部166又は図6の信号処理部766等)からサブコイルFGC1Aに提供する第2の接続部CP2を含む。第1の接続部CP1及び第2の接続部CP2は、プリント回路基板フィードスルー等を介して、信号処理部に接続されてよい。検知要素SEN1~SEN24の第1のセットは、(例えば測定軸方向MAに相当する)X軸方向に沿って配置され、基板(例えば図1のPCB162)上に設けられる。検知要素SEN1~SEN24の第1のセットは、2つのサブセットSEN-A及びSEN-B(図5Bの下部における拡大部を参照)を含み、各サブセットは、対応するサブトラックPT1A又はPT1Bの隣接する信号変調要素によって提供されるサブトラック磁束変化の局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される。図5Bの例では、(検知要素SENの2つのサブセットの組み合わせである)検知要素SENそれぞれは、Y軸方向に沿って、全体内部領域幅OIAWDを有する(図5Bにおける2つのサブ内部領域INT1A及びINT1Bの組み合わせである)対応する内部領域INT1に少なくとも亘る公称検知要素幅寸法NSEWDを有する。
【0056】
様々な実施態様では、図5B(及び以下に説明される図5C)に示されるように、(例えば第1の方向における電流を生成するように、第1の極性の磁束変化に応じた)第1の検知ループ極性を提供するように構成された導電性受信ループ(SEN)と、第1の検知ループ極性とは反対の(例えば同じ方向における電流を生成するように、第1の極性とは反対の磁束変化に応じた)第2の検知ループ極性を提供するように構成された導電性受信ループ(SEN)とが、X軸方向に沿って交互に配置される。信号処理部は、コイル駆動信号を提供するように検出部に動作可能に接続され、既知の方法に従って、検出部の図示される検知要素SENから(及び、既知の原理に従って、他の空間位相位置に提供されている図示されない他の検知要素SENから)入力される検出信号に基づいて、検出部と信号変調スケールパターンとの相対的位置を決定することができる。
【0057】
図5Bにおける電流の流れの矢印によって示されるように、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bは、それぞれ、サブ内部領域INT1A内に第1の極性を有するサブトラック磁束変化を発生させ、サブ内部領域INT1B内に第1の極性とは反対の第2の極性を有するサブトラック磁束変化を発生させるように構成される。検知要素SEN1~SEN24の第1のセットを形成する導電性受信ループそれぞれは、その少なくとも半分以上が、測定軸方向MAに垂直な方向に沿って、2つのサブ内部領域INT1A及びINT1Bに亘り、2つのサブ内部領域INT1A及びINT1B内に同じ検知ループ極性を提供する。
【0058】
第1のサブ内部領域INT1Aにおける発生磁束の極性は、第2のサブ内部領域INT1Bにおける発生磁束の極性とは反対であるので、これは、第1のサブトラックPT1A及び第2のサブトラックPT1B内で約λ/2のスケールトラックオフセットOFFを有する信号変調要素SMEと相互作用して、各検知要素SENにおいて、強化信号寄与が生成される。したがって、図5Bの構成は、上記実施態様と比べて、よりロバストな信号精度及び/又は信号強度を提供する点に関して、追加の利点を提供する。
【0059】
図5Cは、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bの別の構成の平面図である。各サブコイルは、λの波長を共に有する2つのサブトラックPT1A及びPT1Bに配置される信号変調要素SEMと共に使用される検知要素SEN1~SEN24のサブセットに対応する。図5Bに示される構成と同様に、図5Cに示される構成は、図5Aの第1のパターントラックPT1と、検出部467の対応する部分とを形成するように使用されてよい。この構成は、図5Bに示される上記構成と同様の特徴及びコンポーネントを有し、以下に明記される点を除き、同様に動作すると理解されてよい。
【0060】
具体的には、図5Cにおける電流の流れの矢印によって示されるように、2つのサブコイルFGC1A及びFGC1Bは、それぞれ、サブ内部領域INT1A内に第1の極性を有するサブトラック磁束変化を発生させ、サブ内部領域INT1B内に第1の極性と同じである第2の極性を有するサブトラック磁束変化を発生させるように構成される。図5Bからのこの相違点に関連し、図5Cにおける検知要素SENを形成する導電性受信ループそれぞれは、第1のサブ内部領域INT1A及び第2のサブ内部領域INT1B内に、相反する検知ループ極性を提供するように、それらの導電性トレースの交差又はツイストTWSを含む。具体的には、検知要素SENの第1のセットを形成する導電性受信ループそれぞれは、測定軸方向MAに垂直な方向の少なくともその半分以上が、公称検知要素幅寸法NSEWDを有するように、測定軸方向MAに垂直な方向に沿って、2つのサブ内部領域INT1A及びINT1Bに亘り、また、2つのサブ内部領域INT1A及びINT1B内に、相反する検知ループ極性を提供するように、それらの導電性トレースの交差又はツイストTWSを含む。様々な実施態様において、検知要素SENの第1のセットを形成する導電性受信ループの少なくとも半分以上について、それらの導電性トレースの交差又はツイストTWSは、不所望の信号外乱を生じさせないように、2つのサブ内部領域INT1A及びINT1Bの間の「非アクティブ」中心領域内又は上に位置付けられる。
【0061】
図5Cに示されるように、検知要素SENの導電性受信ループは、(例えば図5Cの下部に拡大図で示される1つの例示的な検知ループ導体図及び関連の電流の流れの矢印によって概略的に示されるように)X軸方向に沿って、相反する極性を有する検知ループ極性が交互に配置されるように構成される。
【0062】
上記説明によれば、第1のサブ内部領域INT1Aにおける発生磁束の極性は、第2のサブ内部領域INT1Bにおける発生磁束の極性と同じであるので、これは、第1のサブトラックPT1A及び第2のサブトラックPT1B内で約λ/2のスケールトラックオフセットOFFを有する信号変調要素SMEと相互作用して、「ツイストした」検知要素SENのそれぞれにおいて、強化信号寄与が生成される。
【0063】
図5B及び図5Cを参照して上記されたものと同様の磁場発生極性及び検知要素極性と組み合わせて使用される2トラック信号変調スケールパターンは、米国特許第7906958号特許において、詳細な作成又はレイアウトの配慮点に言及することなく開示されたように、単一トラック信号変調スケールパターン構成において生じうる特定の信号オフセット成分を低減又は排除するのに役立ちうる。
【0064】
図6は、電子式エンコーダ710を含む測定システム700のコンポーネントの1つの例示的な実施態様を示すブロック図である。当然ながら、図6の幾つかの番号が付けられたコンポーネント7XXは、以下に明記される点を除き、図1の同様に番号が付けられたコンポーネント1XXに対応するか、及び/又は、同様の動作を有してよい。電子式エンコーダ710は、信号処理部766と、合わされるとトランスデューサを形成するスケール770及び検出部767とを含む。様々な実施態様では、検出部767は、図2乃至図5Cに関して説明された構成の何れか又は他の構成を含んでよい。測定システム700は更に、ディスプレイ738及びユーザによって操作可能なスイッチ734、736といったユーザインターフェースを含み、また、電源765を追加的に含んでもよい。様々な実施態様では、外部データインターフェース732が含まれてもよい。これらの要素はすべて、信号プロセッサとして具体化されうる信号処理部766(又は信号処理及び制御回路)に結合される。信号処理部766は、検出部767から入力される検出信号に基づいて、スケール770に対する検出部767の検知要素の位置を決定する。
【0065】
様々な実施態様において、図6の信号処理部766(及び/又は図1の信号処理部166)は、本明細書において説明される機能を行うように、ソフトウェアを実行する1つ以上のプロセッサを含んでも又はそれらから構成されてよい。プロセッサは、プログラマブル汎用又は特殊用途向けマイクロプロセッサ、プログラマブルコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)等又はこのようなデバイスの組み合わせを含む。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等、又は、このようなコンポーネントの組み合わせといったメモリに記憶されてよい。ソフトウェアは更に、光学ベースのディスク、フラッシュメモリデバイス又はデータを記憶する任意の他のタイプの不揮発性記憶媒体といった1つ以上の記憶デバイスに記憶されてもよい。ソフトウェアは、特定のタスクを行う又は特定のアブストラクトデータタイプを実現するルーティン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む1つ以上のプログラムモジュールを含んでよい。分散型コンピュータ環境では、プログラムモジュールの機能は、組み合わされても、複数のコンピュータシステム又はデバイスにわたって分散され、有線又は無線構成のサービスコールを介してアクセスされてよい。
【0066】
本開示の好適な実施態様が図示及び説明されたが、本開示に基づけば当業者には、図示及び説明された特徴の配置及び動作の順序における多数の変形態様が明らかであろう。本明細書に開示される原理を実現するために、様々な代替形態が使用されてもよい。
【0067】
一例として、当然ながら、信号変調要素SMEは、様々な実施態様において、ループ要素若しくはプレート要素、又は、材料特性変化を含んでよい。別の例として、当然ながら、本明細書に開示される様々な特徴及び原理は、回転式エンコーダに適用されてもよく、その場合、円形測定軸方向及び半径方向が、上記説明において言及されるX軸方向及びY軸方向と同様となる。
【0068】
上記様々な実施態様及び特徴は、更なる実施態様を提供するために、組み合わされてもよい。本明細書において参照されたすべての米国特許及び米国特許出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。必要に応じて、実施態様の態様は、更なる実施態様を提供するために、様々な特許及び出願の概念を採用するように、変更されてもよい。
【0069】
上記詳細な説明に照らせば、これらの及び他の変更を実施態様に行うことができる。一般に、次の請求項において使用される用語は、請求項を、本明細書及び請求項に開示される特定の実施態様に限定すると解釈されるべきではなく、むしろ、当該請求項の等価物の全範囲内のあらゆる可能な実施態様を含むと解釈されるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6