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特許7300324電磁誘導式エンコーダのためのスケール構成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダのためのスケール構成
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20230622BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G01D5/20 110D
G01D5/245 110Q
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019117322
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2020003492
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】16/021,528
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】テッド ステイトン クック
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス アレン ヒッチマン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶顕
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-4630(JP,A)
【文献】特開2009-11092(JP,A)
【文献】特開2001-255108(JP,A)
【文献】特開2005-249730(JP,A)
【文献】特開2009-168701(JP,A)
【文献】特開平8-313295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
H02K 3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定軸方向に沿った2つの要素間の相対位置を測定するために使用可能な電磁誘導式エンコーダであって、当該電磁誘導式エンコーダは、
少なくとも第1のタイプの信号変調素子を含む周期的スケールパターンを含み、前記測定軸方向に沿って延在するスケールと、
前記周期的スケールパターンに近接して取り付けられ、前記周期的スケールパターンに対して前記測定軸方向に沿って移動するように構成される検出部と、
コイル駆動信号を提供するように前記検出部に動作可能に接続され、前記検出部と前記周期的スケールパターンとの相対位置を、前記検出部から入力される検出信号に基づいて特定する信号処理部とを備え、
前記周期的スケールパターンは、空間波長W1を有し、前記第1のタイプの信号変調素子は、前記空間波長W1に対応して前記測定軸方向に沿って配置される複数の導電性プレートまたは複数の導電性ループを含み、
前記検出部は、
基板に固定され、動作中に信号変調素子の前記周期的スケールパターンに合わせて整列される内部領域を囲み、前記コイル駆動信号に応答して前記内部領域内に磁束変化を発生する磁場発生コイルと、
前記測定軸方向に沿って配置され、前記基板に固定された磁場検出コイルセット
を含み
前記磁場検出コイルセットの磁場検出コイルは、前記内部領域と位置合わせされるかまたは重なる前記磁場検出コイルの部分について、前記測定軸方向に沿った公称検知素子幅寸法DSENを有する導電性ループまたは導電性ループ部分を含み、
前記磁場検出コイルセットは、前記周期的スケールパターンの隣接する前記信号変調素子によって提供される磁束変化への局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成され、
前記第1のタイプの信号変調素子は、動作中に前記内部領域と整列するかまたは重なる有効領域を含み、前記有効領域は、前記測定軸方向に沿って平均寸法DSMEを有し、DSMEはDSENよりも大きく、DSMEは、少なくとも0.55*W1であり、最大で0.8*W1であり、
0.45*W1<DSEN<0.55*W1である、電磁誘導式エンコーダ。
【請求項2】
前記平均寸法DSMEは、多くとも1.6*DSENであることを特徴とする、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項3】
DSENが約0.5*W1であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項4】
前記平均寸法DSMEは、少なくとも0.6*W1であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項5】
前記平均寸法DSMEは、少なくとも0.66*W1であることを特徴とする、請求項4に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項6】
前記平均寸法DSMEは、少なくとも0.7*W1であることを特徴とする、請求項5に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項7】
第2のタイプの信号変調素子が、前記測定軸方向に沿って前記第1のタイプの信号変調素子の間に配置され、前記第2のタイプの信号変調素子は、前記第1のタイプの信号変調素子と比較して磁束変化に対して少ない影響を有するように構成される、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項8】
前記第2のタイプの前記信号変調素子は、非導電性材料の領域を含む、請求項7に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項9】
前記第2のタイプの信号変調素子は、非導電性スケール基板の領域を含み、前記第1のタイプの信号変調素子は、前記非導電性スケール基板に固定されることを特徴とする、請求項8に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項10】
前記検出部および前記スケールは、ほぼ平坦な基板を含み、前記検出部は、前記周期的スケールパターンとほぼ平行に、且つ互いの導体間の公称動作ギャップが少なくとも0.075*W1であるように取り付けられて構成される、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項11】
前記公称動作ギャップは、少なくとも0.15*W1であることを特徴とする、請求項10に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項12】
前記磁場検出コイルの前記導電性ループまたは導電性ループ部分は、前記測定軸方向に垂直であり、前記内部領域と整列するかまたは重なるように構成されたほぼ平行な導体セグメントを含み、前記平行な導体セグメントは、前記測定軸方向に沿って前記公称検知素子幅寸法DSENで間隔を置いて配置される、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項13】
前記第1のタイプの前記信号変調素子の前記複数の導電性プレートまたは前記複数の導電性ループは、それぞれ、前記測定軸方向に垂直であり、それらの有効領域を境界付ける、ほぼ平行なプレートエッジまたはほぼ平行な導電性ループセグメントを備え、前記平行なプレートエッジまたは前記平行な導電性ループセグメントは、前記測定軸方向に沿って前記平均寸法DSMEで離間されることを特徴とする、請求項1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定機器に関し、より詳細には、精密測定機器において利用され得る電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なエンコーダ構成には、様々なタイプの光学式、静電容量式、磁気式、電磁誘導式、移動及び/又は位置トランスデューサが含まれうる。これらのトランスデューサは、読取ヘッド内の送信器及び受信器の様々な幾何学的構成を使用して、読取ヘッドとスケールとの間の移動を測定する。
【0003】
特許文献1は、高精度用途に使用可能である電磁誘導式トランスデューサについて説明している。特許文献2及び特許文献3は、信号生成及び処理回路を含む電磁誘導式インクリメンタル型ノギス及びリニアスケールについて説明している。特許文献4、特許文献5及び特許文献6は、電磁誘導式トランスデューサを使用する電磁誘導式アブソリュート型ノギス及び電子式巻き尺について説明している。特許文献7、特許文献8、および特許文献9は、電磁誘導式エンコーダの精度、ロバスト性および位置合わせの容易さを高めるために有用な巻線構成の改良を開示している。これらの特許および出願に記載されているように、電磁誘導式トランスデューサは、プリント回路基板技術を使用して製造することができ、汚れに対してほとんど影響を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第6011389号明細書
【文献】米国特許第5973494号明細書
【文献】米国特許第6002250号明細書
【文献】米国特許第5886519号明細書
【文献】米国特許第5841274号明細書
【文献】米国特許第5894678号明細書
【文献】米国特許出願番号15/245,560号公報
【文献】米国特許出願番号15/850,457号公報
【文献】米国特許出願番号15/910,478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらのシステムは、小型サイズ、高解像度、精度、低コスト、汚れに対するロバスト性などの組合せなど、ユーザが望む特徴の特定の組合せを提供する能力が制限されることがある。このような特徴の改善された組合せを提供するエンコーダの構成が望まれている。
【0006】
この概要は、以下の詳細な説明において更に説明される概念のセレクションを、簡略形式で紹介するために提供される。この概要は、請求項に係る主題の重要な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求項に係る主題の範囲を決定する助けとして使用されることも意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
測定軸方向に沿った2つの要素間の相対位置を測定するために使用可能な電磁誘導式エンコーダが提供される。様々な実施態様では、電磁誘導式エンコーダは、スケール、検出部、および信号処理部を含む。
【0008】
スケールは、測定軸方向に沿って延在し、少なくとも第1のタイプの信号変調素子を含む周期的なスケールパターンを含む。周期的スケールパターンは、空間波長W1を有する。第1のタイプの信号変調素子は、空間波長W1に対応して測定軸方向に沿って配置された複数の導電性プレートまたは複数の導電性ループを備える。検出部は、周期的スケールパターンに近接して取り付けられ、周期的スケールパターンに対して測定軸方向に沿って移動するように構成される。様々な実施態様では、検出部は、磁場発生コイルと、磁場検出コイルセットとを含む。磁場発生コイルは、基板に固定され、動作中に信号変調素子の周期的スケールパターンと位置合わせされる内部領域を取り囲む。本明細書で使用されるように、「取り囲む」という用語は、様々な実施形態において、完全に取り囲むか、または部分的に取り囲むことを意味することができる。唯一の制約は、磁場発生コイルが、コイル駆動信号に応答して、本明細書に開示され、特許請求される原理による動作をサポートするように、内部領域に磁束変化を発生するように構成されることである。磁場検出コイルセットは、測定軸方向に沿って配置され、基板に固定される。磁場検出コイルセットを構成する各磁場検出コイルは、少なくとも磁場発生コイルによって囲まれた内部領域と位置合わせされるかまたは重なる磁場検出コイルの部分について、測定軸方向に沿った公称検知素子幅寸法DSENを有する導電性ループまたは導電性ループ部分を含む。磁場検出コイルセットは、スケールパターンの隣接する信号変調素子によって提供される磁束変化への局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される。信号処理部は、コイル駆動信号を提供するように検出部に動作可能に接続されてよく、検出部から入力される検出信号に基づいて、検出部と信号変調スケールパターンとの相対的位置を決定する。
【0009】
第1のタイプの信号変調素子は、動作中に内部領域と位置合わせされるか、または内部領域と重なる有効領域を含む。様々な実施形態では、有効領域は、測定軸方向に沿った平均寸法DSMEを有するように構成される。DSMEは、測定軸方向に沿った公称検知素子幅寸法DSENよりも大きく、DSMEは、少なくとも0.55*W1であり、最大で0.8*W1である。そのような構成は、本明細書で開示される原理に従って、(例えば、検出信号において、より良好な信号対雑音(S/N)比、および/または低減された誤差成分を提供することによって)有利な検出信号特性を提供する。
【0010】
いくつかの実装形態では、平均寸法DSMEは、多くとも1.6*DSENである。いくつかの実装形態では、0.45*W1<DSEN<0.55*W1である。いくつかの実装形態では、DSENは、約0.5*W1である。いくつかの実装形態では、平均寸法DSMEは、少なくとも0.6*W1、または0.66*W1、または0.7*W1である(例えば、DSMEをより大きな値とすることは、検出器とスケールとの間の動作ギャップが大きいものを使用する場合、および/または第1のタイプの信号変調素子が複数の導電性プレートを備える場合に有利であり得る)。
【0011】
様々な実施形態では、第1のタイプの信号変調素子は、複数の導電性プレートを含むことができる。様々な実施形態では、第1のタイプの信号変調素子は、複数の導電性ループを含むことができる。
【0012】
様々な実施形態において、第2のタイプの信号変調素子は、測定軸方向に沿って第1のタイプの信号変調素子の間に配置される。第2のタイプの信号変調素子は、第1のタイプの信号変調素子と比較して、磁束変化に対して比較的少ない影響を有するように構成される。いくつかの実施態様では、第2のタイプの信号変調素子は、非導電性材料の領域を含む。いくつかのそのような実装形態では、第2のタイプの信号変調素子は、非導電性スケール基板の領域を含み、第1のタイプの信号変調素子は、非導電性スケール基板に固定される。
【0013】
様々な実施形態では、検出部およびスケールは、ほぼ平坦な基板を含むことができ、検出部は、それぞれの導体間の公称動作ギャップが少なくとも0.075*W1となるように、周期的スケールパターンにほぼ平行に取り付けられるように構成するとよい。いくつかのそのような実装形態では、公称動作ギャップは、少なくとも0.15*W1であってもよい。
【0014】
いくつかの実施態様では、導電性ループまたは磁場検出コイルの導電性ループ部分は、測定軸方向に垂直に配向され、内部領域と位置合わせされるかまたは重なるように構成されたほぼ平行な導体セグメントを備え、平行な導体セグメントは、測定軸方向に沿って公称検知素子幅寸法DSENで離間して配置される。いくつかの実施態様では、第1のタイプの信号変調素子の複数の導電性プレートまたは複数の導電性ループは、それぞれ、測定軸方向に垂直に配向されたほぼ平行なプレート縁部またはほぼ平行な導電性ループセグメントを備えることができる。これらの平行なプレート縁部または平行な導電性ループセグメントは、それらの関連する信号変調素子の有効領域の境界を定める。このような実施形態では、これらの平行なプレート縁部または平行な導電性ループセグメントは、測定軸方向に沿って平均寸法DSMEで離間して配置される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】検出部およびスケールを含む電磁誘導式エンコーダを利用するハンドツール型ノギスの組立分解等角図である。
図2】本明細書に開示される様々な原理に関連する背景情報として提示される、代表的な従来技術の電磁誘導式エンコーダの特定の特徴を概略的に示す平面図である。
図3図1に示されるような電磁誘導式エンコーダにおいて使用可能な検出部およびスケールパターンの第1の例示的な実施形態の平面図を、本明細書に開示される原理に従ってそれらの特徴を特徴付けることができる様々な寸法とともに示す。
図4図3に示される検出部およびスケールパターンの一部の拡大等角図であり、電磁誘導式エンコーダにおける信号変調素子の動作に関連し得る磁束および磁束結合特性の定性的表現を含む。
図5A】電磁誘導式エンコーダの実装形態を概略的に示す平面図であり、本明細書で開示される原理による特定の例示的な寸法を含む。
図5B】電磁誘導式エンコーダの実装形態を概略的に示す平面図であり、本明細書で開示される原理による特定の例示的な寸法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、スケール部材172及びスライダアセンブリ120を含むハンドツール型ノギス100の組立分解等角図である。スケール部材172は、溝内に配置されたスケール170を含む、略矩形の断面の本尺を備えてもよい。スライダアセンブリ120は、以下により詳細に説明するベース140、電子アセンブリ160、及びカバー150を含むことができる。電子アセンブリ160は、基板162上に配置された検出部167および信号処理部166を含むことができる。弾性シール(図示せず)がカバー150と基板162との間で圧縮されて、電子回路及び接続部から汚れを排除するとよい。スケール170、検出部167、および信号処理部166は、協働して、測定軸方向MAに沿った2つの要素間(例えば、スケール部材172とスライダアセンブリ120との間)の相対位置を測定するために使用可能な電磁誘導式エンコーダを提供するように動作する。
【0017】
様々な実施形態では、スケール170は、(例えば、x軸方向に対応する)測定軸方向MAに沿って延在し、(例えば、既知のプリント回路製造方法を使用して)スケール基板上に作成された信号変調素子SMEを含む信号変調スケールパターン180を含む。本明細書に示す様々な実施形態では、信号変調スケールパターン180は、代替的に、図1に空間波長W1を有するように示されている周期的スケールパターン180と呼ぶことがある。図示された実施形態では、既知のタイプのカバー層174(例えば、厚さ100μm)が(図1において一部を切り取って示されるように)スケール170を覆っている。
【0018】
様々な実施形態では、ノギス100の機械的構造および動作は、共通に譲渡された米国特許第5,901,458号、および/または6,400,138号、および/またはRE37490号(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)のものなど、特定の従来の電子ノギスのものと同様であってもよい。スケール部材172の第1の端部付近のジョー176および178、ならびにスライダアセンブリ120上の可動ジョー146および148は、既知の方法で物体の寸法を測定するために使用される。測定された寸法は、電子アセンブリ160のカバー150内に取り付けられたデジタルディスプレイ158上に表示することができる。カバー150はまた、オン/オフスイッチ154と、必要に応じて、電子アセンブリ160に含まれる回路または要素を作動させる他の任意選択の制御ボタンとを含むことができる。スライダアセンブリ120のベース140は、スライダアセンブリ120をスケール170に対して移動させながら、測定のための適切な位置合わせを確実にするために、スケール部材172の嵌合エッジに沿ってそれを案内するように構成された様々な既知の要素を含んでもよい。
【0019】
図1に示すように、検出部167は、磁場発生コイルFGCと、測定軸方向MAに沿って配置された磁場検出コイルセットSETSENとを含むことができる。1つの特定の例示的な例では、検出部167は、スケール170と平行にかつスケール170に面して配置されてもよく、スケール170に面する検出部167の前面は、Z軸方向に沿って0.5mmのオーダーのギャップだけスケール170(および/またはスケールパターン180)から分離されてもよい。検出部167の前面(例えば、その構成導体)は、絶縁コーティングによって覆われてもよい。磁場発生コイルFGC及び磁場検出コイルセットSETSENの構造及び動作を以下により詳細に説明する。
【0020】
図1に示されるノギス100は、コンパクトサイズ、低電力動作(例えば、長いバッテリ寿命のため)、高分解能および高精度測定、低コスト、汚れに対するロバスト性などの比較的最適化された組合せを提供するために、長年にわたって発展した電磁誘導式エンコーダを典型的に実装する様々な用途のうちの1つであることが理解されるであろう。これらの要因のいずれかにおけるわずかな改善でさえも、非常に望ましいが、特に、様々な用途において商業的成功を達成するために課される設計制約の観点から、これを達成することは困難である。本明細書に開示され、特許請求される原理は、多くのこれらの要因における改善を提供する。
【0021】
図2は、本明細書の他の場所に開示された様々な原理に関連する背景情報として提示された、特許文献1に示された代表的な従来技術の電磁誘導式エンコーダの特定の特徴を概略的に示す平面図である。図2は、さらに、ここに含まれる他の図における同等の要素を示すために使用される同等の参照番号または記号を示すための参照番号を含む。特許文献1の開示に基づく以下の省略された説明では、本開示の他の図における同等の参照番号は、特許文献1からの元の参照番号に続く括弧内に示される。従来技術の図2に関する完全な説明は、特許文献1に見出すことができる。したがって、本開示に関連する特許文献1からの教示を含む省略された説明のみが、本明細書に含まれる。本発明者が確認することができる限り、図2を参照して以下に概説する教示は、当技術分野で知られている、および/または市販の電磁誘導式エンコーダで使用される従来の理論および従来の設計手法を表す。
【0022】
特許文献1に開示されているように、図2に示されているようなトランスデューサは、ワイヤまたは巻線の少なくとも2つの実質的に同一平面上の経路を含む。送信機巻線102(FGC)は、大きな平面ループを形成する。送信機巻線102と実質的に同じ平面にある受信機巻線104(SETSEN)は、ジグザグまたは正弦波パターンで矢印によって示されるように一方向に配置され、次いで矢印によって示されるように、巻線がそれ自身を横切って逆方向に配置され、互いの間に交互に配置されるループ106(SEN+)および108(SEN-)を形成する。その結果、レシーバ巻線104(SETSEN)の交互ループ106(SEN+)および108(SEN-)の各々は、隣接するループと比較して異なる巻線方向を有する。送信機巻線102(FGC)に交流(変化)電流を印加することによって、送信機巻線は、受信機巻線104(SETSEN)のループ106(SEN+)および108(SEN-)を貫通する時間変化する磁界を生成する。
【0023】
導電性物体(例えば、導電性プレート114(SME)(そのいくつかは、図2におけるスケールパターン112上の短点線を使用して輪郭が描かれている)を含むスケールまたはスケールパターン112(180)(そのセグメントは、図2において交互の長点線および短点線を示すエッジによって輪郭が描かれている)がトランスデューサの近くに移動されると、トランスミッタ巻線102(FGC)によって生成される変動磁界は、導電性物体に渦電流を誘導し、これは、次に、トランスミッタ磁界の変動を打ち消す磁場を導電性物体から生じさせる。その結果、受信機巻線104(SETSEN)が受信する磁束は、変化または乱され、それによって、受信機巻線は、受信機巻線104の出力端子V+およびV-で非ゼロEMF信号(電圧)を出力し、これは、導電性物体が「+」ループ106(SEN+)と「-」ループ108(SEN-)との間を移動するにつれて極性を変化させる。
【0024】
同じ極性の2つのループの位置間(例えば、ループ106(SEN+)の位置と次のループ106(SEN+)の位置との間)の距離は、トランスデューサのピッチまたは波長110(W1)として定義される。上述の導電性物体(例えば、導電性プレート114(SME))がレシーバ巻線104(SETSEN)に近接し、測定軸300(MA)に沿った位置で連続的に変化する場合、レシーバ巻線(SETSEN)から出力される信号のAC振幅は、ループ106(SEN)および108(SEN)の周期的な変化、ならびに導電性物体(例えば、導電性プレート114(SME))によって引き起こされる送信磁界の局所的な乱れのために、波長110(W1)と共に連続的かつ周期的に変化する。
【0025】
特許文献1は、導電性物体(例えば、導電性プレート114(SME))がループ106および/または108(SEN+、SEN-)よりもはるかに小さいかまたは大きい場合、信号出力の振幅は弱く、高精度を得ることが困難であることを強調している。導電性物体(例えば、導電性プレート114(SME))が波長110(W1)の約半分に等しい長さを有する場合(すなわち、物体がループ106または108(SEN+またはSEN-)と正確に一致して配置されることが可能である場合)、信号出力は、大きな振幅を有し、したがって、導電性物体の位置に最も敏感である。したがって、本発明は、好ましくは、波長110(W1)の半分に等しい長さを有する導電性物体(例えば、導電性プレート114(SME))を使用する。
【0026】
図2に示され上述された送信器巻線102および受信器巻線104(SETSEN)は、本明細書において検出部として指定された素子(例えば、図1に示された検出部167)の従来技術の実施例の一例であり、スケールまたはスケールパターン112(180)は、本明細書においてスケールパターンとして示された従来技術の実施例の一例である(例えば、図1に示されたスケールパターン180)。スケールまたはスケールパターン112(180)は、本明細書でスケールパターンとして示された従来技術の実施例の一例である(たとえば、図1に示されるスケールパターン180)。図3は、図1に示されたような電磁誘導式エンコーダにおいて使用可能な検出部367およびスケールパターン380の第1の例示的実施例の平面図を、本明細書に開示される原理に従ってそれらの特徴を特徴付けることができる様々な寸法とともに示している。検出部367およびスケールパターン380の様々な特徴は、本明細書に開示され、特許請求される様々な設計原理を満たすように構成される。図3のいくつかの番号が付された構成要素3XXは、図1および/または図2の同様の番号が付された構成要素1XXに対応し、および/または同様の動作または機能を提供し得るものであり(例えば、検出部367は、検出部167と同様の動作または機能を提供する)、別段の指示がない限り、同様に理解され得ることを理解される。
【0027】
図3は、一部は具象的であり、一部は概略的であるとみなすことができる。検出部367およびスケールパターン380の拡大部分は、図3の下部に示されている。図3では、以下に説明する様々な要素は、それらの形状または輪郭によって表現され、特定の幾何学的関係を強調するために互いに重ね合わされて示されている。以下の説明に基づいて当業者に明らかであるように、様々な動作ギャップおよび/または絶縁層を提供するべく、必要に応じて、z軸方向に沿って異なる平面に位置する様々な加工層上に様々な要素が存在してもよいことを理解されたい。本開示の図面を通して、1つまたは複数の要素の図示されたx軸、y軸、および/またはz軸の寸法は、明確にするために誇張されていることがあるが、それらは、本明細書で開示され、特許請求される様々な寸法設計原理および関係と矛盾することを意図していないことが理解されるであろう。
【0028】
スケールパターン380の図示された部分は、破線で示された第1のタイプの信号変調素子SMEを含む。周期スケールパターン380は、空間波長W1を有する。この実施態様では、第1のタイプの信号変調素子SMEは、(例えば、プリント回路基板上に製造された領域によって形成されるような、または導電性基板から延在する隆起領域によって形成されるような)複数の導電性プレートを備える。しかし、他の実施形態では、それらは、以下でより詳細に説明するように、(例えば、プリント回路基板上のトレースによって形成されるような)複数の導電性ループを含むことができる。いずれの場合も、空間波長W1に対応する測定軸方向MAに沿って配置される。スケールパターン380は、一般に、スケール(例えば、図1に示されるスケール170)上に実装される。図3に示す実施例では、ほとんどの信号変調素子SMEのy方向の端部は、磁場発生コイルFGCの第1及び第2の伸長部EP1及びEP2の下に隠されているが、図1に示すように、スケールパターン380は、動作中に検出部367に対して移動することが理解されるであろう。
【0029】
図3の例では、スケールパターン380は、y軸方向に沿って公称スケールパターン幅寸法NSPWDを有し、測定軸方向MAに沿って周期的に(例えば、x軸方向に対応して)配置された概ね矩形の信号変調素子SMEを備える。しかし、より一般的には、スケールパターン380は、パターンがx軸方向に沿った位置の関数として変化する空間特性を有し、検出部367内の磁場検出コイルセットSETSENの磁場検出コイルSEN (例えば、SEN14)内で生じる位置依存検出信号(いくつかの実施態様では、検出信号成分とも呼ばれる)を提供することを条件として、代替の信号変調素子構成を含む様々な代替の空間変調パターンを含むことができる。
【0030】
様々な実施態様では、検出部367は、スケールパターン380に近接して取り付けられ、スケールパターン380に対して測定軸方向MAに沿って移動するように構成される。当業者には理解されるように、検出部は、磁場発生コイルFGCと、様々な実施形態において様々な対応する信号処理スキームと組み合わせて使用される様々な代替構成をとることができる磁場検出コイルセットSETSENとを含む。図3は、磁場検出コイルSEN1~SEN24の単一の代表的なセットを示し、これは、この実施形態では、直列に接続された検知ループ素子(あるいは、検知コイル素子または検知巻線素子と呼ばれる)を備える。この実施態様では、隣接するループ要素は、PCBの様々な層上の導体の構成によって接続され(例えば、フィードスルーによって接続され)、既知の方法(例えば、図4に示すような)に従って、反対の巻線極性を有するように接続される。すなわち、第1のループが磁界の変化に正極性の検出信号寄与で応答する場合、隣接するループは負極性の検出信号寄与で応答する。正極性の検出信号寄与を有するループは、本明細書ではSEN+磁場検出コイルと呼ぶことができ、負極性の検出信号寄与を有するループは、本明細書の様々な文脈ではSEN-磁場検出コイルと呼ぶことができる。この実施態様では、磁場検出コイルは、それらの検出信号または信号寄与が加算されるように直列に接続され、「加算された」検出信号が、検出信号出力接続SDS1およびSDS2で信号処理部(図示せず)に出力される。
【0031】
図3は、視覚的混同を回避するために磁場検出コイルセットを示しているが、様々な実施態様では、異なる空間位相位置で1つまたは複数の追加の磁場検出コイルセットを提供するように(例えば、直交信号を提供するように)検出部を構成することが有利であることが当業者には理解されよう。しかし、本明細書で説明される磁場検出コイルの構成は、例示に過ぎず、限定するものではないことを理解されたい。一例として、個々の磁場検出コイルのループは、例えば、2016年6月30日に出願された同一出願人による同時係属中の米国特許出願第15/199,723号に開示されているように、いくつかの実装形態では、対応する信号処理部に個々の信号を出力することができる。より一般的には、様々な既知のスケールパターンおよび信号処理スキームと組み合わせて使用するために、様々な既知の磁場検出コイルの構成を、本明細書に開示され、特許請求される原理と組み合わせて、様々な実装形態で使用することができる。
【0032】
磁場検出コイルセットSETSENおよび磁場発生コイルFGCのセットの様々な磁場検出コイルは、基板(例えば、図1の基板162)上に固定されてもよい。磁場発生コイルFGCは、x軸方向に沿った公称コイル面積長さ寸法NCALDと、y軸方向に沿った約YSEPの公称コイル面積幅寸法とを有する内部領域INTAを囲むものとして説明することができる。内部領域INTAは、ほぼ図示されるように、動作中、信号変調素子SMEの周期的スケールパターン380と位置合わせされる。図示の実施形態では、磁場発生コイルFGCは、内部領域INTAを取り囲む単一の巻線を含む。しかし、様々な他の実施形態では、磁場発生コイルFGCは、複数の巻きを含むことができ、および/または蛇行して、スケールパターン380と位置合わせされた内部領域INTAを動作可能に取り囲む(例えば、動作可能に部分的に取り囲む)とともに、参考文献に開示されているように、他のスケールパターンを含むスケールトラックと位置合わせされた他の内部領域を動作可能に取り囲む(例えば、動作可能に部分的に取り囲む)。いずれにしても、動作時には、界磁発生コイルFGCは、コイル駆動信号に応答して内部領域INTAに磁束変化を発生する。図示の実施形態では、第1および第2の接続部分CP1およびCP2を使用して、信号処理部(例えば、図1の信号処理部166)からのコイル駆動信号を磁場発生コイルFGCに接続することができる。
【0033】
磁場検出コイルセットSETSEN(例えば、検知素子SEN1~SEN24のセット)は、x軸方向(例えば、測定軸方向MAに対応する)に沿って配置され、基板(例えば、図1の基板162)上に固定される。図3に示すように、磁場検出コイルセットの磁場検出コイルは、少なくとも内部領域INTAと整列するかまたは重なる磁場検出コイルの部分について、x軸方向(測定軸方向MA)に沿った公称検知素子幅寸法DSENを有する導電性ループまたは導電性ループ部分(例えば、SEN1~SEN24)を含む。図3の例では、磁場検出コイルSENの各々は、y軸方向に沿った公称検知素子幅寸法NSEWDを有し、公称検知素子幅寸法NSEWDの少なくとも半分以上は、y軸方向に沿った公称コイル領域幅寸法YSEP内に含まれる。磁場検出コイルセットSETSENの磁場検出コイルは、スケールパターン380の隣接する信号変調素子SME(例えば、1つ以上の信号変調素子SME)によって提供される磁束変化への局所的影響に応じた検出信号を提供するように構成される。信号処理部(例えば、図1の信号処理部166など)は、検出部367から入力された検出信号に基づいて、スケールパターン380に対する磁場検出コイルセットSETSENの位置を決定するように構成されてもよい。一般に、磁場発生コイルFGCおよび磁場検出コイルセットSETSENなどは、参考文献に記載されているような既知の原理(例えば、誘導性エンコーダ)に従って動作してもよい。
【0034】
様々な実施形態では、磁場発生コイルFGC及び磁場検出コイルSENは、(例えば、プリント回路基板の異なる層に配置されるように)互いに絶縁される。そのような一実施形態では、磁場検出コイルSENの公称検知素子幅寸法NSEWDは、公称コイル面積幅寸法YSEPよりも大きいことが有利であり、オーバーラップ寸法として定義される量だけ伸長部EP1またはEP2の内側縁部を越えて延びる。さらに、磁場発生コイルFGCは、y軸方向に沿った伸長部EP1およびEP2のトレース幅が、対応するオーバーラップ寸法よりも大きくなるように有利に構成されてもよい。様々な実施形態では、伸長部EP1およびEP2は、プリント回路基板の第1の層上に製造することができ、磁場検出コイルSENは、少なくとも重なり寸法の近傍で、第1の層とは異なる層を含むプリント回路基板の1つまたは複数の層内に製造された導電性ループを含むことができる。
【0035】
先に示したように、いくつかの実施態様では、磁場発生コイルFGCは、プリント回路基板上に作製された1つまたは複数の導電性トレースを含むことができ、磁場検出コイルセットSETSENの磁場検出コイルSENは、プリント回路基板上に作製された導電性トレースによって形成された磁束検知ループまたはループ部分を含むことができる。図1に関して上述したように、様々な実施態様では、検出部367は、様々なタイプの測定機器(例えば、ノギス、マイクロメータ、ゲージ、リニアスケールなど)に含まれてもよい。例えば、検出部367をスライド部材に固定し、スケールパターン380を測定軸がx軸方向に一致する柄または本尺に固定してもよい。このような構成では、スライド部材は、ビームまたは桁部材上に移動可能に取り付けられ、x軸方向およびy軸方向に沿って延在する平面内で測定軸方向MAに沿って移動可能であり、z軸方向は平面に直交する。
【0036】
図3の下部に示される検出部367およびスケールパターン380の拡大断面に関して、それは、磁場発生コイルFGCの部分によって境界付けられた、磁場検出コイルセットSETSENの3つの例示的な磁場検出コイルSEN14、SEN15、およびSEN16と、2つの例示的な信号変調素子SMEとを示す。この実施形態では、磁場検出コイルは、回路基板の第1および第2の層上に、それらの間に絶縁体の層を挟んで製造されたトレースによって形成することができる。「第1層」トレースは実線で示され、「第2層」トレースは破線で示されている。小さな矢印は、磁場発生コイルFGCから生じる磁界の変化によってトレース内に誘導される電流の方向を示す。磁場検出コイルSEN14は、その関連する電流方向のために「SEN+」極性ループとして特徴付けることができ、隣接する磁場検出コイルSEN15は、その関連する「反対極性」電流方向のために「SEN-」極性ループとして特徴付けることができることが分かる。次の隣接する磁場検出コイルSEN16は、再び、「SEN+」極性ループとして特徴付けられてもよく、以下同様である。図3の拡大断面図に示す様々な要素は、寸法DSEN及びDSMEと空間波長W1との間の関係によって特徴付けることができる。
【0037】
DSENは、内部領域INTAと位置合わせされるか、またはそれと重なる磁場検出コイルSENの部分の測定軸方向MAに沿った公称検知素子幅寸法である。これは、y軸方向に沿った寸法YSEPのスパンと一致する磁場検出コイルSENの部分であることが分かる。様々な実施形態では、公称検知素子幅寸法DSENは、内部領域INTAと位置合わせされるか、または内部領域INTAと重なる部分の磁場検出コイルSENの最大幅での寸法とみなすことができる。磁場検出コイルSENの他の構成に対する寸法DSENのさらなる例が、図5Aおよび図5Bに示されている。
【0038】
DSMEは、(第1のタイプの)信号変調素子SMEの「有効領域」の測定軸方向MAに沿った平均寸法である。信号変調素子SMEの有効領域EffRは、ここでは、内部領域INTAのy軸寸法と位置合わせされるか、または重なり合うとともに、磁場検出コイルSENのy軸寸法と位置合わせされるか、または重なり合う部分として定義される。有効領域EffRは、磁場検出コイルSENにおいて一次信号変調効果を生成する。これは、磁場発生コイルFGCの内部領域INTAの寸法YSEPが磁場検出コイルSENの-y軸寸法よりも小さく、その中に含まれているので、図3に示されている実施形態では、y軸方向に沿った寸法YSEPのスパンと一致する信号変調素子SMEの部分であることが分かる。様々な実施形態では、信号変調素子SMEの平均寸法DSMEは、信号変調素子SMEの有効領域EffRの面積を有効領域EffRのy軸方向寸法で割ったものとみなすことができる。信号変調素子SMEの他の構成のための寸法DSMEのさらなる例が、図5Aおよび図5Bに示されている。
【0039】
図2を参照して先に概説したように、磁場検出コイルSENのような検知素子は、0.5*W1である公称検知素子幅寸法DSENを有することが従来から行われている。そのような寸法は、様々な実装において有利であり得る。さらに、図2を参照して前述したように、信号変調素子SMEのような信号変調素子が0.5*W1である平均幅寸法DSMEを有すること、および/または平均幅寸法DSMEが公称検知素子幅寸法DSENと同じであることも従来から行われている。
【0040】
上記で概説した従来技術の設計実践とは対照的に、本明細書で開示した原理によるいくつかの実施形態では、公称検知素子寸法DSENが0.5*W1であることが厳密に必要ではないことを理解されたい。0.5*W1よりも小さいか又は大きい公称検知素子寸法DSENは、特定の用途において様々な理由のために選択することができ、適切な信号及び精度を提供することができる。例えば、いくつかの実装形態では、DSENは、0.45*W1より大きく0.55*W1より小さい範囲内の任意のサイズであってもよい。もちろん、いくつかの実装形態では、DSENは、約0.5*W1であってもよい。
【0041】
公称検知素子寸法DSENのサイズにかかわらず、先行技術の設計実践とは対照的に、本明細書に開示され、特許請求される原理によれば、信号変調素子SMEの平均幅寸法DSMEが公称検知素子寸法DSENよりも大きく、空間波長W1に関して特定の条件を満たす場合に有利である。特に、本発明者は、信号変調素子SMEの有効領域が、測定軸方向に沿った平均寸法DSMEを有するように構成され、DSMEが測定軸方向に沿った公称検知素子幅寸法DSENよりも大きく、DSMEが少なくとも0.55*W1で最大0.8*W1である場合に有利であると判断した。このような構成は、従来技術の設計原理による構成と比較して、有利な検出信号特性を提供する(例えば、より良好な信号対雑音(S/N)比を提供する、および/または検出信号における誤差成分を低減する)。いくつかのそのような実装形態では、平均寸法DSMEが最大で1.6*DSENである場合に有利であり得る。いくつかの実装形態では、平均寸法DSMEが、他の実装形態では少なくとも0.6*W1、または少なくとも0.66*W1、または他の実装形態では少なくとも0.7*W1である場合に有利であり得る。例えば、平均寸法DSMEのより大きな値の使用は、検出部367とスケールパターン380との間のより大きな動作ギャップを使用する場合、および/または第1のタイプの信号変調素子SMEが、図4を参照して以下により詳細に説明されるように、導電性プレートを備える場合に有利であり得る。
【0042】
図4は、このような電磁誘導式エンコーダにおける信号変調素子SMEの動作に関連し得る磁束および磁束結合特性の定性的表現を含む、図3に示される検出部367およびスケールパターン380の一部の拡大等角図である。
【0043】
図4は、前に概説したように、磁場発生コイルFGCによって提供される、発生した磁界変化GCMFに対する信号変調素子SMEの応答を示す。図4に示すように、磁場発生コイルFGCに印加されたコイル駆動信号電流Igenは、信号変調素子SMEに誘導結合する変化磁界GCMFを発生する。信号変調素子SMEは、図4に導電性ループとして概略的に示されており、結合された磁界変化GCMFに応答して、誘導電流Iindが信号変調素子SME内に生成され、これは、磁束線(図4の矢印を含む磁束線)によって表される誘導磁界を生成する。図示された磁束線は、中心磁束線CFLによって表される中心磁束CFと、信号変調素子SMEの導電性ループを取り囲むように示された、閉じた周辺の磁束線MFL1~MFL3によって表される周辺の磁束MFとを表している。
【0044】
一般的に言えば、磁場検出コイルセットSETSENの磁場検出コイルは、上で概説したように表される誘導された磁束変化に応答する信号(または信号寄与)を生成することが理解されるであろう。特に、生成された信号は、その内部ループ領域を介して効果的に結合される磁束の量に応答して、信号寄与または信号成分を生成する。信号寄与または信号成分は、図4において磁場検出コイルSEN14において電流Isenseとして表される。図4に示されるように、種々の実施において、検出部367およびスケールパターン380は、ほぼ平面であってもよく(例えば、それらは、ほぼ平面基板上に含んでもよく、または形成されてもよい)、検出部367は、周期的スケールパターン380とほぼ平行に、且つ互いの導体間に公称動作ギャップGapZを有して取り付けられるように構成されてもよい。例えば、様々な実施形態では、公称動作GapZは、実際の組立および位置合わせ公差を容易にするために、少なくとも0.075*W1とすることができる。いくつかのそのような実装形態では、公称動作ギャップは、少なくとも0.15*W1であってもよい。図4に示すように、中心磁束CFは、一般に、実用的な範囲の動作ギャップにわたって磁場検出コイルSEN14を介して効果的に結合される。しかし、動作ギャップのために、周辺の磁束MFの少なくとも一部は、磁場検出コイルSEN14を介して効果的に結合されないことがある。例えば、図4で誇張されているように、動作ギャップGapZの比較的大きな寸法では、周辺の磁束線MFL1~MFL3のいずれも磁場検出コイルSEN14を介して結合されず、電流Isenseに寄与しない。その結果、図4に定性的に示す構成では、磁場検出コイルSEN14によって検知される信号変調素子SMEの実効幅Weff (図4に破線の棒線で示す)は、結合された中心磁束線CFLのみに対応する。図4からわかるように、例えば、磁場検出コイルSEN14を介して周辺の磁束線MFL3を結合するために、動作ギャップGapZを減少させたとしても、有効幅Weffは、信号変調素子SMEの平均寸法DSMEよりも小さいままである。したがって、図2を参照して上記で概説した従来技術の教示とは異なり、信号変調素子SMEは、磁場検出コイルSENの公称検知素子幅寸法DSENに対応する有効幅Weffを有するために、公称検知素子幅寸法DSENよりも大きい平均寸法DSMEを有することが有利であり、これにより、磁場検出コイルSENが測定軸方向に沿ってその磁場検出コイルを通過する際に最大信号変動を生成する。例えば、いくつかの実装形態では、寸法DSENおよび寸法Weffが約0.5*W1であることが望ましい場合があり、これは、前述の説明によれば、実際の動作ギャップGapZを使用する場合、信号変調素子SMEの平均寸法DSMEが、いくつかのそのような実装形態では、少なくとも0.6*W1であることが望ましい場合があることを意味する。
【0045】
さらなる考察として、検出信号における様々な空間高調波の空間フィルタリング(例えば、検知電流Isenseにおいて生じ得るような)は、信号変調素子SMEの平均寸法DSMEではなく、実効幅Weffにも依存し得ることを理解されたい。例えば、検出部367内の磁場検出コイルSENの寸法DSENが約0.5*W1である場合、偶数次の空間高調波は、検出信号から大幅に除去される。しかし、0.33*W1などに対応する奇数次の空間高調波が残ることがある。3次の空間高調波を空間的にフィルタリングすることが望ましい場合、寸法Weffが約0.66*W1であることが望ましく、これは、前述の議論によれば、信号変調素子SMEの平均寸法DSMEが、所望の空間フィルタリングを提供する所望の寸法Weffを生成するために、少なくとも0.66*W1、または少なくとも0.7*W1、またはそれ以上であることが望ましいことを意味する。
【0046】
信号変調素子SMEが、図4に示されるような導電性ループではなく導電性プレートである場合、「同心」渦電流の分布が、生成された磁場変化GCMFに応答して、そのような導電性プレートにおいて生成され得ることが理解されるべきである。これらの渦電流は、図4に示す誘導電流Iindに動作的に匹敵するが、導電性プレートが図14に示す導電性ループSMEと同じ平均寸法DSMEを有する場合、その渦電流の分布した「同心」パターンのために、それらの「等価電流位置」は、導電性プレートの縁部の内側のどこかにあり、その結果、同様のサイズの導電性ループに関連するものよりもさらに小さい有効幅Weffが得られる。その結果、導電性プレート型信号変調素子SMEが、上記で概説した望ましい範囲のより大きな端部に向かう平均寸法DSMEを有することが特に望ましい場合がある。
【0047】
図5Aおよび図5Bは、図3を参照して前に概説した寸法DSENおよびDSMEのさらなる例を示す、それぞれの電磁誘導式エンコーダ実装を概略的に示す平面図であり、図5Aおよび図5Bのいくつかの番号付けされた構成要素5XXは、図3の同様の番号付けされた構成要素3XXと同様の動作または機能に対応し、かつ/またはそれらを提供することができ、別段の指示がない限り、同様に理解され得ることが理解されるであろう。
【0048】
図3に示した実施形態では、磁場検出コイルSENの導電性ループまたは導電性ループ部分は、y軸方向(測定軸方向に垂直)に沿って配向され、内部領域INTAと整列するかまたは重なるように構成されたほぼ平行な導体セグメントを備え、平行な導体セグメントは、測定軸方向に沿って公称検知素子幅寸法DSENで離間される。さらに、第1のタイプの信号変調素子SMEの複数の導電性プレート(または複数の導電性ループ)は、y軸方向(測定軸方向に垂直)に沿って配向されたほぼ平行なプレートエッジ(またはほぼ平行な導電性ループセグメント)を含む。これらの平行なプレートエッジ(または平行な導電性ループセグメント)は、それらの関連する信号変調素子SMEの有効領域の境界を定める。このような実施形態では、これらの平行なプレートエッジ(または平行な導電性ループセグメント)は、測定軸方向に沿って平均寸法DSMEで間隔を置いて配置される。しかし、様々な実施形態では、磁場検出コイルSENおよび/または信号変調素子SMEのy軸方向に沿って延びる境界は、直線または平行である必要はない。
【0049】
図5Aおよび図5Bは、図5Aの信号変調素子SMEおよび図5Bの磁場検出コイルの非直線境界プロファイルに適用される、空間波長W1および前述の寸法DSENおよびDSMEを示す。信号変調素子SMEの前述の有効領域EffRも示されている。先に概説したように、DSENは、内部領域INTAと位置合わせされるか、またはそれと重なる磁場検出コイルSENの部分の測定軸方向MAに沿った公称検知素子幅寸法である。これは、y軸方向に沿った寸法YSEPのスパンと一致する磁場検出コイルSENの部分であることが分かる。様々な実施形態では、公称検知素子幅寸法DSENは、内部領域INTAと位置合わせされるか、または内部領域INTAと重なる部分の磁場検出コイルSENの最大幅での寸法とみなすことができる。DSMEは、(第1のタイプの)信号変調素子SMEの有効領域EffRの測定軸方向MAに沿った平均寸法である。
【0050】
信号変調素子SMEの有効領域EffRは、ここでは、内部領域INTAのy軸寸法と位置合わせされるか、または重なり合うとともに、磁場検出コイルSENのy軸寸法と位置合わせされるか、または重なり合う部分として定義される。有効領域EffRは、磁場検出コイルSENにおいて一次信号変調効果を生成する。これは、磁場発生コイルFGCの内部領域INTAの寸法YSEPが磁場検出コイルSENの-y軸寸法よりも小さく、その中に含まれているので、図5Aおよび図5Bに示されている実施形態では、y軸方向に沿った寸法YSEPのスパンと一致する信号変調素子SMEの部分であることが分かる。しかし、これは、全ての実施例において当てはまる必要はなく、有効領域EffRの以前の定義は、より一般的である。様々な実施形態では、信号変調素子SMEの平均寸法DSMEは、信号変調素子SMEの有効領域EffRの面積を有効領域EffRのy軸方向寸法で割ったものとみなすことができる。
【0051】
図5Aおよび図5Bはまた、W1からDSMEを引いたものに等しい寸法DSPCを示す。第1の方法について説明すると、次元DSPCは、第1のタイプの信号変調素子SME間の「非信号変調空間」に対応するものとして説明することができる。しかしながら、周期的スケールパターンの様々な他の実施形態に適用される第2の方法をより一般的に説明すると、寸法DSPCは、第2のタイプの信号変調素子に対応するものとして説明することができ、第2のタイプの信号変調素子は、測定軸方向に沿って第1のタイプの信号変調素子SMEの間に配置される。第2のタイプの信号変調素子は、第1のタイプの信号変調素子SMEと比較して、磁束変化に対して比較的少ない影響を有するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、第2のタイプの信号変調素子は、非導電性材料の領域を含む。いくつかのそのような実装形態では、第2のタイプの信号変調素子は、非導電性スケール基板の領域を含み、第1のタイプの信号変調素子SMEは、非導電性スケール基板上に製造および/または固定された導体を含む。別の例として、いくつかの実装形態では、第2のタイプの信号変調素子は、スケールパターンを形成するために使用される導電性材料の「より深く凹んだ」領域を含むことができ、第1のタイプの信号変調素子SMEは、導電性材料の「凹んでいない」領域を含むことができる。
【0052】
本開示の好ましい実施形態が図示され、説明されてきたが、図示され、説明された特徴の配置および動作のシーケンスにおける多くの変形が、本開示に基づいて当業者には明らかであろう。本明細書で開示される原理を実施するために、様々な代替形態を使用することができる。
【0053】
上述の様々な実施態様を組み合わせて、さらなる実施態様を提供することができる。本明細書で言及される米国特許および米国特許出願のすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施態様の態様は、さらにさらなる実施態様を提供するために、必要であれば、様々な特許および出願の概念を使用するように修正することができる。これらおよび他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施態様に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに、すべての可能な実施態様を含むように解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B