(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電子式可変調光素子用フィルターターレット
(51)【国際特許分類】
G03B 11/00 20210101AFI20230622BHJP
G02B 7/14 20210101ALI20230622BHJP
【FI】
G03B11/00
G02B7/14 Z
(21)【出願番号】P 2019118714
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】有賀 秀明
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和典
(72)【発明者】
【氏名】菊地 幸大
(72)【発明者】
【氏名】山下 誉行
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 泰士
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-139796(JP,A)
【文献】特開2005-173062(JP,A)
【文献】特開2013-038042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
H04N 5/222 - 5/257
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
G03B 11/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じて光学特性が変化する電子式可変調光用フィルターと、
前記電子式可変調光用フィルターの少なくとも1つが搭載されて直線状に往復移動するターレット本体と、
前記ターレット本体の外部に固定された制御回路から出力される制御信号を前記電子式可変調光用フィルターへ伝送する信号伝送線と、を備え、
前記信号伝送線は、
前記ターレット本体に形成されており前記ターレット本体の可動経路に沿った形状の複数の受け側電極と、
前記ターレット本体に形成されており前記電子式可変調光用フィルターの電極と前記受け側電極とを電気的に接続する複数の導線と、
前記ターレット本体の外部に固定されて前記制御回路と電気的に接続されると共に前記受け側電極に接触して前記ターレット本体の往復移動を案内する複数の制御信号供給側電極と、を有
し、
前記制御信号供給側電極は、少なくとも一部がバネ材料で形成され、付勢力によって前記受け側電極を挟み込む方向に付勢されている電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【請求項2】
制御信号に応じて光学特性が変化する電子式可変調光用フィルターと、
前記電子式可変調光用フィルターの少なくとも1つが搭載されて直線状に往復移動するターレット本体と、
前記ターレット本体の外部に固定された制御回路から出力される制御信号を前記電子式可変調光用フィルターへ伝送する信号伝送線と、を備え、
前記信号伝送線は、
前記ターレット本体に形成されており前記ターレット本体の可動経路に沿った形状の複数の受け側電極と、
前記ターレット本体に形成されており前記電子式可変調光用フィルターの電極と前記受け側電極とを電気的に接続する複数の導線と、
前記ターレット本体の外部に固定されて前記制御回路と電気的に接続されると共に前記受け側電極に接触して前記ターレット本体の往復移動を案内する複数の制御信号供給側電極と、を有し、
前記受け側電極は、前記ターレット本体の外枠に沿って前記外枠の一端から他端まで連続的に形成されている電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【請求項3】
前記受け側電極は、前記ターレット本体の外枠に沿って前記外枠の一端から他端まで連続的に形成されている請求項
1に記載の電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【請求項4】
電子式可変調光用フィルターは、電子式可変NDフィルターである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【請求項5】
電子式可変調光用フィルターは、色温度特性を補正するフィルターである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【請求項6】
電子式可変調光用フィルターは、直流の制御信号で駆動する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【請求項7】
電子式可変調光用フィルターは、交流の制御信号で駆動する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子式可変調光素子用フィルターターレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式可変調光素子用フィルターターレットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放送用のテレビカメラ等の撮像装置の光学ブロック部には、光の量を減衰させるND(Neutral Density)フィルターや、色温度特性を補正するフィルター(CCフィルター:Color Compensating filter)といった複数枚の光学フィルターを搭載した回転式フィルターターレットが用いられている。このような光学フィルターは、撮像装置に外付けあるいは内蔵され、手動あるいは自動制御により、その都度、適切な光学フィルターに切り替えられて撮像光路上に配置されるようになっている。通常用いられている光学フィルターは、事前に予め想定された光学特性(透過率、色温度)に沿って製造された光学特性が固定された特性固定型の光学フィルターである。
【0003】
一方、電源を用いる調光素子として、反射率を可変することができる素子が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された調光素子は、2枚の電極基板の間にスペーサを介在させて形成した空間に電解液を充填した構造を有している。これらの電極基板は、ガラス基板の表面に透明導電膜からなる透明電極を備えている。それぞれの透明電極は、対向するように配置され、その間に電解液が満たされている。この電解液は、金属塩となる銀(または銅)をメタノールで溶解させた液体である。よって、両透明電極間に印加する電場の変化に応じて、電解液中の銀イオンを透明電極の一方(負極)に析出させて光透過率を減衰したり、透明電極に付着した銀を電解液中に銀イオンとして還元して元の透過率に戻したりすることを可逆的に繰り返すことができる。つまり、この調光素子は、制御信号として両透明電極間に直流電流を印加したり停止したりすることで、光の透過率を無段階で変化させることが可能である。
【0004】
また、2枚の電極基板間の電解液中の主成分を変更すれば、分光透過特性を大幅に変化させることも可能である。その場合には、透過する光の色相が変化するために色温度を調整できる調光素子として働くことになる。
【0005】
さらに、特許文献1に開示された調光素子以外にも、他の作動原理で光透過率を無段階に連続的に変化する調光素子が知られている(非特許文献1参照)。非特許文献1に開示された調光素子は、2枚の直線編光子が交差する向きに配置された間に形成された空間へ2枚の液晶素子を挟み込んだ構造を有している。よって、AC矩形波の電圧が印加されていないときにシャッターが全開し、電圧が印加されている間はシャッターが閉じた状態を維持する。このような作動原理のため、電圧印加により液晶分子の屈折状態が変化して光の位相差を調整することで、特許文献1に開示された調光素子と同様に光の透過率を無段階で可変できる。
以下では、このように通電する電気変化に応じて光学特性が変化する各種の調光素子のことを電子式可変調光用フィルターと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】株式会社ルミネックス、“液晶シャッター”、[online]、[平成31年3月11日検索]、インターネット<URL:http://www.luminex.co.jp/products/products03/products03_24.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放送用のテレビカメラ等のように複数枚のフィルターを搭載したターレット本体に、電子式可変調光用フィルターを搭載する場合、制御信号を供給する制御回路や、制御信号をターレット部に伝送する信号伝送線が必要になる。一方、フィルターを切り替えるためには、ターレット本体を回転させなくてはならない。このとき、信号伝送線を単純に接続するだけでは、回転を制約するなど動作の妨げになったり、信号伝送線が断線したり短絡したりする原因となる。その結果、電子式可変調光用フィルターへ電源を安定に供給することができなくなり、使い勝手が悪くなる。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ターレット本体を可動させても電子式可変調光用フィルターへ電源を安定に供給し続けることができる電子式可変調光素子用フィルターターレットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の第1の観点に係る電子式可変調光素子用フィルターターレットは、制御信号に応じて光学特性が変化する電子式可変調光用フィルターと、前記電子式可変調光用フィルターの少なくとも1つが搭載されて直線状に往復移動するターレット本体と、前記ターレット本体の外部に固定された制御回路から出力される制御信号を前記電子式可変調光用フィルターへ伝送する信号伝送線と、を備え、前記信号伝送線は、前記ターレット本体に形成されており前記ターレット本体の可動経路に沿った形状の複数の受け側電極と、前記ターレット本体に形成されており前記電子式可変調光用フィルターの電極と前記受け側電極とを電気的に接続する複数の導線と、前記ターレット本体の外部に固定されて前記制御回路と電気的に接続されると共に前記受け側電極に接触して前記ターレット本体の往復移動を案内する複数の制御信号供給側電極と、を有し、前記制御信号供給側電極は、少なくとも一部がバネ材料で形成され、付勢力によって前記受け側電極を挟み込む方向に付勢されている。
また、本発明の第2の観点に係る電子式可変調光素子用フィルターターレットは、制御信号に応じて光学特性が変化する電子式可変調光用フィルターと、前記電子式可変調光用フィルターの少なくとも1つが搭載されて直線状に往復移動するターレット本体と、前記ターレット本体の外部に固定された制御回路から出力される制御信号を前記電子式可変調光用フィルターへ伝送する信号伝送線と、を備え、前記信号伝送線は、前記ターレット本体に形成されており前記ターレット本体の可動経路に沿った形状の複数の受け側電極と、前記ターレット本体に形成されており前記電子式可変調光用フィルターの電極と前記受け側電極とを電気的に接続する複数の導線と、前記ターレット本体の外部に固定されて前記制御回路と電気的に接続されると共に前記受け側電極に接触して前記ターレット本体の往復移動を案内する複数の制御信号供給側電極と、を有し、前記受け側電極は、前記ターレット本体の外枠に沿って前記外枠の一端から他端まで連続的に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
電子式可変調光素子用フィルターターレットによれば、電子式可変調光用フィルターへ制御信号を伝送する信号伝送線を構成する制御信号供給側電極が、ターレット本体の外部に固定されているので、ターレット本体の可動により信号伝送線が断線したり短絡したりすることを防止できる。そのため、ターレット本体を可動させても電子式可変調光用フィルターへ電源を安定に供給し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子式可変調光素子用フィルターターレットが備えるターレット本体の模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子式可変調光素子用フィルターターレットの模式図である。
【
図3】(a)、(b)は、それぞれ
図2の制御信号供給側電極の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図2のIV-IV線における断面を模式的に示す図である。
【
図5】
図2の電子式可変調光素子用フィルターターレットにおける2つの信号伝送線の模式図である。
【
図6】(a)、(b)は、ターレット本体の往復動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[電子式可変調光素子用フィルターターレットの構成]
まず、電子式可変調光素子用フィルターターレットの構成について
図1~
図5を参照して説明する。なお、
図5は、
図2の構成要素の配置をずらした電気回路の説明図を示している。また、各図面に示される部材のサイズや位置関係は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0014】
テレビカメラ本体(不図示)には、
図4に示す光学ブロック部20において、被写体Aからカメラレンズを通過した光の光路C上に、電子式可変調光素子用フィルターターレット21と、撮像素子Bと、が設けられている。
電子式可変調光素子用フィルターターレット21は、
図5に示すように、複数の光学フィルター4,5を搭載したターレット本体1と、信号伝送線51,52と、を備えている。ここでは、ターレット本体1に、1つの特性固定型の光学フィルターと、制御信号に応じて光学特性が変化する1つの電子式可変調光用フィルターと、が搭載されている。一例として、光学フィルター4は、特性固定型の光学フィルターである。
【0015】
また、電子式可変調光用フィルターは、一例として電子式可変NDフィルター5として説明する。また、電子式可変NDフィルター5は、一例として直流の制御信号で駆動するものとする。具体的には、電子式可変NDフィルター5は、金属塩析出型エレクトロクロミック素子である(特許文献1参照)。
【0016】
電子式可変NDフィルター5の給電用電極(例えば負極)は、電子式調光素子側電極6に接続されている。電子式可変NDフィルター5の給電用電極(例えば正極)は、電子式調光素子側電極7に接続されている。ここでは、電子式可変NDフィルター5の給電用電極は、ガラス基板表面に形成されたITOからなる透明電極である。電子式調光素子側電極6は、一端側が透明電極に電気的に接続されると共に、他端が導線8を介して受け側電極2に接続されている。電子式調光素子側電極7は、一端側が透明電極に電気的に接続されると共に、他端が導線9を介して受け側電極3に接続されている。
【0017】
ターレット本体1は、電子式可変NDフィルター5が搭載されて直線状に往復移動する。本実施形態では、ターレット本体1は、
図2、
図3(a)および
図3(b)に示すように左右両側から制御信号供給側電極10,11に挟持された状態で上下方向にスライド移動するものとして説明する。移動の方法は、公知の機械式、電動式、手動などいずれでも構わない。
信号伝送線51,52は、制御回路14から出力される制御信号を電子式可変NDフィルター5へ伝送する。
【0018】
制御回路14は、電子式可変NDフィルター5の動作を制御する制御信号を出力するものである。ここでは、制御回路14は、直流電源として機能する。なお、電子式可変NDフィルター5の種類によっては、交流電源として機能する制御回路を用いることもできる。この制御回路14は、ターレット本体1の外部に固定されている。制御回路14は、ターレット本体1に連動しなければ、テレビカメラ本体内の設置場所が限定されないが、電子式可変調光素子用フィルターターレット21の近傍に設けられることが好ましい。
【0019】
信号伝送線51は、受け側電極3と、導線9と、制御信号供給側電極11と、を有する。信号伝送線52は、受け側電極2と、導線8と、制御信号供給側電極10と、を有する。受け側電極2,3は、
図1に示すようにターレット本体1に形成されておりターレット本体1の可動経路に沿った形状を有している。受け側電極2,3は、ターレット本体1の可動方向に沿って直線状に設けられている。受け側電極2,3は、ターレット本体1の左右において、ターレット本体1の外枠に沿って外枠の一端から他端まで連続的に形成されている。受け側電極2,3は、
図4に示す入射光の光路Cに係らない場所に設けられている。受け側電極2,3は、ターレット本体1が移動すると、ターレット本体1と共に移動する。受け側電極2,3の素材は、例えば銅を用いることができる。受け側電極2,3を銅製とすることで、長期に渡る通電性を確保することができる。
【0020】
受け側電極2,3は、ターレット本体1の表面に貼付けて形成されても構わない。
図3(a)および
図3(b)に示した例では、受け側電極2,3は、ターレット本体1の外枠に接続され、光入射面側から光出射面側まで連続的に形成されている。受け側電極2,3をこのように構成すると、表面に貼り付ける場合よりも強度が増すので好ましい。
【0021】
導線8は、
図1に示すように受け側電極2と電子式可変NDフィルター5とを電気的に接続する。導線8は、
図2および
図5に示すように受け側電極2の側において、制御信号供給側電極10によって受け側電極2に供給された制御信号を受ける。導線8は、電子式可変NDフィルター5の側において電子式調光素子側電極6に接続されている。導線8は、ターレット本体1に対して固定されている。
【0022】
導線9は、
図1に示すように受け側電極3と電子式可変NDフィルター5とを電気的に接続する。導線9は、
図2および
図5に示すように受け側電極3の側において、制御信号供給側電極11によって受け側電極3に供給された制御信号を受ける。導線9は、電子式可変NDフィルター5の側において電子式調光素子側電極7に接続されている。導線9は、ターレット本体1に対して固定されている。
【0023】
制御信号供給側電極10は、
図2および
図5に示すようにターレット本体1の外部に固定されて制御回路14と受け側電極2とを電気的に接続する。制御信号供給側電極10は、制御回路14からの制御信号を受け側電極2に供給する。制御信号供給側電極10は、受け側電極2に接触してターレット本体1の往復移動を案内する。制御信号供給側電極10は、少なくとも一部がバネ材料で形成され、付勢力によって受け側電極2を挟み込む方向に付勢されている。ここで、バネ材料は、例えば銅製で弾性力に優れたものである。
【0024】
制御信号供給側電極11は、
図2および
図5に示すようにターレット本体1の外部に固定されて制御回路14と受け側電極3とを電気的に接続する。制御信号供給側電極11は、制御回路14からの制御信号を受け側電極3に供給する。制御信号供給側電極11は、受け側電極3に接触してターレット本体1の往復移動を案内する。制御信号供給側電極11は、少なくとも一部がバネ材料で形成され、付勢力によって受け側電極3を挟み込む方向に付勢されている。
【0025】
制御信号供給側電極10,11が固定される場所は、テレビカメラ本体の筐体や、筐体内に装着される各種基板等いずれの場所にも限定されない。これにより、制御信号供給側電極10,11は、ターレット本体1が往復移動しても、固定された状態を保つ。
【0026】
上記構成により、電子式可変NDフィルター5は、常に、制御回路14からの制御信号を受けることができる。
なお、
図5に示した電子式可変調光素子用フィルターターレット21の回路図では、信号伝送線51は、制御回路14の正極側から、導線13と、制御信号供給側電極11と、受け側電極3と、導線9と、電子式調光素子側電極7と、を備えているが、これに限定されるものではない。例えば、受け側電極3を電子式調光素子側電極7に直接的に接続してもよいし、導線9と電子式調光素子側電極7とを一体的に形成してもよい。
また、信号伝送線52は、
図5に示すように制御回路14の負極側から、導線12と、制御信号供給側電極10と、受け側電極2と、導線8と、電子式調光素子側電極6と、を備えているが、これに限定されるものではない。例えば、受け側電極2を電子式調光素子側電極6に直接的に接続してもよいし、導線8と電子式調光素子側電極6とを一体的に形成してもよい。
【0027】
次に、制御信号供給側電極10,11の構成例について
図3(a)および
図3(b)を参照して説明する。
図3(a)および
図3(b)は制御信号供給側電極11,10の拡大図である。
図3(a)に示すように、制御信号供給側電極11は、供給部接点11a,11bを有している。供給部接点11a,11bは、受け側電極3に対する電気接点として機能する。供給部接点11a,11bは、制御信号供給側電極11においてターレット本体1が配置される側に設けられ、銅を用いたバネ材料で形成されている。制御信号供給側電極11は、例えば、ターレット本体1が配置される側とは反対側の部位が、ターレット本体1の外部に固定されている。ここで、ターレット本体1の外部とは、例えばテレビカメラ本体の筐体や、筐体内に装着される各種基板等を意味する。制御信号供給側電極11は、底部もターレット本体1の外部に固定されている。
【0028】
また、
図3(b)に示すように、制御信号供給側電極10は、供給部接点10a,10bを有している。供給部接点10a,10bは、ターレット本体1において受け側電極3と対向するように反対側に設けられた受け側電極2に対する電気接点として機能する以外、前記した供給部接点11a,11bと同様なので、これ以上の説明を省略する。
【0029】
ターレット本体1の外部にそれぞれ固定された制御信号供給側電極11,10は、
図2に示すように、ターレット本体1に形成された受け側電極3,2を、左右両側からそれぞれ挟持している。ターレット本体1が移動すると、例えば左の制御信号供給側電極11の供給部接点11a,11bは、
図3(a)に示すように受け側電極3と接触しながらターレット本体1の往復移動を案内する。供給部接点11a,11bは、ターレット本体1が移動しても受け側電極3に接触し続けることのできる付勢力を生じるような弾性力を有していれば、その形状、大きさ、バネ材料を適宜選択することができる。また、例えば右の制御信号供給側電極10の供給部接点10a,10bも同様に構成されている。
【0030】
次に、電子式可変調光素子用フィルターターレット21の動作について
図6を参照(適宜
図1~
図5参照)して説明する。なお、
図6(a)は、
図2と同様である。ここでは、ターレット本体1が、
図6(a)に示す位置に静止している状態では、光学フィルター4が選択されずに、電子式可変NDフィルター5が選択されている。このとき、
図4に示す被写体Aからの光は、電子式可変NDフィルター5を通過する。
【0031】
電子式可変NDフィルター5は、テレビカメラ本体のカメラレンズに入射する光の量を無段階で変化させることができる。操作者は、好みの光量になるまで、電子式可変NDフィルター5に対して、例えば数秒から数十秒間の通電を行う。これにより、
図4に示す被写体Aからの光は、電子式可変NDフィルター5を通過することにより、操作者の好みの光量に調光され、撮像素子Bに入射されて結像する。こうして、画質に厳しい特性が求められる放送用テレビカメラ等に好適に利用できる。
【0032】
また、操作者は、好みの光量に戻るまで、電子式可変NDフィルター5への通電を所定時間停止してから撮影を行う。あるいは、操作者は、逆極性で低電圧値の通電を行うように切り替えて所定時間の通電を行ってから撮影を行ってもよい。
【0033】
次に、図示しない選択スイッチを操作すると、これに連動して例えば機械的駆動機構により、ターレット本体1が下降し、
図6(b)に示す位置で停止することで、光学フィルター4が選択される。このとき、
図4に示す被写体Aからの光は、光学フィルター4に例えば予め蒸着された固定的な光特性で調光され、撮像素子Bに入射されて結像する。
さらに、図示しない選択スイッチを操作すると、これに連動して例えば機械的駆動機構により、ターレット本体1が上昇し、
図6(a)に示す位置で停止することで、電子式可変NDフィルター5が選択される。以降、同様にしてターレット本体1を上下に往復移動させることができる。
【0034】
本実施形態に係る電子式可変調光素子用フィルターターレット21は、信号伝送線51,52を構成する制御信号供給側電極11,10が、ターレット本体1の外部に固定されており、ターレット本体1が移動するときに動くことはない。したがって、電子式可変NDフィルター5へ電源を供給する信号伝送線は、ターレット本体1の移動により断線したり絡まったりする可能性が低減する。そのため、電子式可変調光素子用フィルターターレット21は、ターレット本体1の移動に関わらず、常に電子式可変NDフィルター5へ制御信号を伝達することが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る電子式可変調光素子用フィルターターレット21は、ターレット本体1が上下方向に直線状に往復移動するので、同じ大きさのフィルターを搭載する回転式フィルターターレットに比べて、水平方向のサイズを低減できる効果がある。例えばスタジオで使用する放送用テレビカメラは、より高精細な映像を撮影するためより大きな撮像素子を用いる傾向にある。これに対して、本実施形態は、フィルターターレットのサイズを低減することで、より小型軽量な撮像装置を提供できる効果を奏する。
【0036】
次に、実施形態に係る電子式可変調光素子用フィルターターレット21の複数の変形例について説明する。前記実施形態では、電子式可変調光用フィルターが電子式可変NDフィルターであるものとして説明したが、これに限らず、色温度特性を補正するフィルターであってもよい。
前記実施形態では、電子式可変調光用フィルターが直流の制御信号で駆動する金属塩析出型エレクトロクロミック素子であるものとしたが、これに限らず、交流の制御信号で駆動する液晶方式の調光素子であってもよい。
【0037】
また、例えば、ターレット本体1に搭載する電子式可変NDフィルターの個数は、2つであっても構わない。さらに、ターレット本体1は、3つ以上のフィルターを搭載できるように構成してもよい。
前記実施形態では、ターレット本体1が上下に往復移動することとして説明したが、水平方向に移動するように構成しても構わない。この場合、ターレット本体1は、上下両側から制御信号供給側電極10,11に挟持された状態で左右方向にスライド移動する。
【0038】
前記実施形態では、例えば左の制御信号供給側電極11の供給部接点11a,11bが受け側電極3を挟み込む構造であるものとして説明したが、反対に、受け側電極3,2の側に制御信号供給側電極11,10を挟み込む構造の電気接点を形成しても構わない。
【0039】
以上、本発明の実施形態に係る電子式可変調光素子用フィルターターレットについて説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 ターレット本体
2,3 受け側電極
4 光学フィルター
5 電子式可変NDフィルター(電子式可変調光用フィルター)
6,7 電子式調光素子側電極
8,9,12,13 導線
10,11 制御信号供給側電極
10a,10b,11a,11b 供給部接点
14 制御回路
20 光学ブロック部
21 電子式可変調光素子用フィルターターレット
51,52 信号伝送線
A 被写体
B 撮像素子
C 光路