(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ダイボンディング装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230622BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230622BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/52 C
G06T7/00 610C
(21)【出願番号】P 2019166864
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小橋 英晴
(72)【発明者】
【氏名】牧 浩
(72)【発明者】
【氏名】中島 宜久
(72)【発明者】
【氏名】高野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大輔
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-078254(JP,A)
【文献】特開2019-047067(JP,A)
【文献】特開平02-137339(JP,A)
【文献】特開2013-021226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
G06T 7/00
H05K 13/04-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に塗布されたペースト状接着剤を撮像する撮像装置と、
前記ペースト状接着剤が塗布された前記基板の上にダイを搭載するボンディングヘッドと、
前記撮像装置が撮像した前記ペースト状接着剤の画像に基づいて外観検査を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
量産前の登録動作において、
量産時
の連続動作における前記ペースト状接着剤を前記基板に塗布する動作から前記撮像装置で前記ペースト状接着剤を撮像する動作までの時間を測定し、
第一ペースト状接着剤を第一基板に塗布してから前記測定した時間を待って、前記第一基板に塗布した前記第一ペースト状接着剤を前記撮像装置で撮像して
量産時の連続動作における外観検査で取得する画像の比較対象としての参照検査画像を取得するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項2】
請求項1のダイボンディング装置において、
前記制御装置は、
量産時
の連続動作に、第二ペースト状接着剤を第二基板に塗布してから前記測定した時間の経過時に前記撮像装置で前記第二基板に塗布された第二ペースト状接着剤を撮像して検査画像を取得し、
前記検査画像と前記参照検査画像とに基づいて外観検査を行うよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項3】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記制御装置は、
前記登録動作において、前記第一ペースト状接着剤の塗布後の時間経過により、前記撮像装置で前記第一ペースト状接着剤を複数回撮像して複数の参照検査画像を取得するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項4】
基板の上に塗布されたペースト状接着剤を撮像する撮像装置と、
前記ペースト状接着剤が塗布された前記基板の上にダイを搭載するボンディングヘッドと、
前記撮像装置が撮像した前記ペースト状接着剤の画像に基づいて外観検査を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第一ペースト状接着剤を第一基板に塗布してからの経過時間を測定し、
前記撮像装置で前記第一ペースト状接着剤を複数回撮像して複数の画像および前記複数の画像のそれぞれの撮像時の経過時間を取得し、
前記複数の画像のそれぞれに基づいてそれぞれの撮像時の経過時間における前記第一ペースト状接着剤の面積または形状を測定し、
量産時において、
第二ペースト状接着剤を
第二基板に塗布してからの経過時間を測定し、
前記撮像装置で前記第二ペースト状接着剤を撮像して検査画像および前記検査画像の撮像時の第二経過時間を取得し、
前記第二経過時間および撮像時の経過時間における前記第一ペースト状接着剤の面積または形状に基づいて前記第二ペースト状接着剤の塗布時の予想面積または予想形状を算出し、
前記予想面積または前記予想形状に基づいて外観検査を行うよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項5】
基板の上に塗布されたペースト状接着剤を撮像する撮像装置と、
前記ペースト状接着剤が塗布された前記基板の上にダイを搭載するボンディングヘッドと、
前記撮像装置が撮像した前記ペースト状接着剤の画像に基づいて外観検査を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第一ペースト状接着剤を第一基板に塗布してからの経過時間を測定し、
前記撮像装置で前記第一ペースト状接着剤を複数回撮像して複数の画像または前記複数の画像に基づいた複数の形状データを取得すると共に、前記複数の画像のそれぞれの撮像時の経過時間を取得し、
量産時
の連続動作において、
第二ペースト状接着剤を第二基板に塗布してからの経過時間を測定し、
前記撮像装置で前記第二ペースト状接着剤を撮像して検査画像または前記検査画像に基づいた第二形状データを取得すると共に、前記検査画像の撮像時の第二経過時間を取得し、
取得した前記複数の画像または前記複数の形状データから前記第二経過時間に相当する画像または形状データを選択し、選択した画像または形状データと前記検査画像または前記第二形状データとに基づいて外観検査を行うよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項6】
請求項2のダイボンディング装置において、
前記外観検査において前記検査画像と前記参照検査画像とを比較して塗布が正常に行われたかどうかを判定するよう構成されるダイボンディング装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項のダイボンディング装置において、さらに、
前記ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウェハリングホルダと、
前記基板の上に前記ペースト状接着剤を塗布するシリンジと、
を備えるダイボンディング装置。
【請求項8】
基板の上に塗布されたペースト状接着剤を撮像する撮像装置と、前記ペースト状接着剤が塗布された前記基板の上にダイを搭載するボンディングヘッドと、前記撮像装置が撮像した前記ペースト状接着剤の画像に基づいて外観検査を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、量産前の登録動作において、量産時
の連続動作における前記ペースト状接着剤を前記基板に塗布する動作から前記撮像装置で前記ペースト状接着剤を撮像する動作までの時間を測定し、第一ペースト状接着剤を第一基板に塗布してから前記測定した時間を待って、前記第一基板に塗布した前記第一ペースト状接着剤を前記撮像装置で撮像して
量産時の連続動作における外観検査で取得する画像の比較対象としての参照検査画像を取得したダイボンディング装置に、第二基板を搬入する工程と、
前記第二基板の上に第二ペースト状接着剤を塗布する工程と、
前記第二ペースト状接着剤を前記第二基板に塗布してから前記測定した時間の経過時に前記撮像装置で前記第二基板に塗布された前記第二ペースト状接着剤を撮像して検査画像を取得し、前記検査画像と前記参照検査画像とに基づいて外観検査を行う
検査工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8の半導体装置の製造方法において、
前記制御装置は、前記登録動作において、前記第一ペースト状接着剤の塗布後の時間経過により、前記撮像装置で前記第一ペースト状接着剤を複数回撮像して複数の参照検査画像を取得する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板の上に塗布されたペースト状接着剤を撮像する撮像装置と、前記ペースト状接着剤が塗布された前記基板の上にダイを搭載するボンディングヘッドと、前記撮像装置が撮像した前記ペースト状接着剤の画像に基づいて外観検査を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、第一ペースト状接着剤を第一基板に塗布してからの経過時間を測定し、前記撮像装置で前記第一ペースト状接着剤を複数回撮像して複数の画像および前記複数の画像のそれぞれの撮像時の経過時間を取得し、前記複数の画像のそれぞれに基づいてそれぞれの撮像時の経過時間における前記第一ペースト状接着剤の面積または形状を測定したダイボンディング装置に、第二基板を搬入する工程と、
前記第二基板の上に第二ペースト状接着剤を塗布する工程と、
前記第二ペースト状接着剤を前記第二基板に塗布してからの経過時間を測定し、前記撮像装置で前記第二ペースト状接着剤を撮像して検査画像および前記検査画像の撮像時の第二経過時間を取得し、前記第二経過時間および撮像時の経過時間における前記第一ペースト状接着剤の面積または形状に基づいて前記第二ペースト状接着剤の塗布時の予想面積または予想形状を算出し、前記予想面積または前記予想形状に基づいて外観検査を行う工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板の上に塗布されたペースト状接着剤を撮像する撮像装置と、前記ペースト状接着剤が塗布された前記基板の上にダイを搭載するボンディングヘッドと、前記撮像装置が撮像した前記ペースト状接着剤の画像に基づいて外観検査を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、第一ペースト状接着剤を第一基板に塗布してからの経過時間を測定し、前記撮像装置で前記第一ペースト状接着剤を複数回撮像して複数の画像または前記複数の画像に基づいた
複数の形状データを取得すると共に、前記複数の画像のそれぞれの撮像時の経過時間を取得したダイボンディング装置に、第二基板を搬入する工程
を含み、
量産時の連続動作において、
前記第二基板の上に第二ペースト状接着剤を塗布する工程と、
前記第二ペースト状接着剤を前記第二基板に塗布してからの経過時間を測定し、前記撮像装置で前記第二ペースト状接着剤を撮像して検査画像または前記検査画像に基づいた第二形状データを取得すると共に、前記検査画像の撮像時の第二経過時間を取得し、取得した前記複数の画像または前記複数の形状データから前記第二経過時間に相当する参照検査画像または形状データを選択し、選択した画像または形状データと前記検査画像または前記第二形状データとに基づいて外観検査を行う工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項8の半導体装置の製造方法において、
前記検査工程は、前記検査画像と前記参照検査画像とを比較して塗布が正常に行われたかどうかを判定する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項8から12の何れか
1項の半導体装置の製造方法において、さらに、
前記ダイが貼付されたダイシングテープを保持するウェハリングホルダを搬入する工程と、
前記ダイを前記ダイシングテープからピックアップする工程と、
ピックアップされたダイを前記基板に載置する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダイボンディング装置に関し、例えばペースト状接着剤を塗布する機能を備えるダイボンダに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一部に半導体チップ(以下、単にダイという。)を配線基板やリードフレーム等(金属、ガラス・エポキシ等有機基板)に搭載してパッケージを組み立てる工程があり、パッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウェハ(以下、単にウェハという。)からダイを分割する工程(ダイシング工程)と、分割したダイを基板の上に搭載するボンディング工程とがある。ボンディング工程に使用される半導体製造装置がダイボンダである。
【0003】
ダイボンダは、樹脂ペースト、はんだ、金メッキ等を接合材料として、ダイを基板または既にボンディングされたダイの上にボンディング(搭載して接着)する装置である。ダイを、例えば、基板の表面にボンディングするダイボンダにおいては、コレットと呼ばれる吸着ノズルを用いてダイをウェハから吸着してピックアップし、基板上に搬送し、押付力を付与すると共に、接合材を加熱することによりボンディングを行うという動作(作業)が繰り返して行われる。
【0004】
樹脂を接合材料として使用する場合、Agエポキシ及びアクリル等の樹脂ペーストが接着剤(以下、ペースト状接着剤という)として使用される。ダイをリードフレーム等に接着するペースト状接着剤はシリンジ内に封入され、このシリンジが。リードフレームに対して上下動してペースト状接着剤を射出して塗布する。すなわち、ペースト状接着剤を封入したシリンジによってペースト状接着剤が所定の位置に所定量塗布され、そのペースト状接着剤上にダイが圧着・ベークされて接着される。シリンジの近傍には認識カメラが取り付けられ、この認識用カメラで塗布されたペースト状接着剤が所定位置に所定の形状で所定量だけ塗布されているかを確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属フレームであるリードフレーム等の基板に搭載されたダイを封止するモールドレジンの基板への密着性を向上させるため、基板に梨地処理が行われる。しかし、ペースト状接着剤の塗布後、基板に形成された細かい凹凸によるペースト状接着剤の滲みが発生し、塗布されたペースト状接着剤に形状変化が起こる。このため、塗布されたペースト状接着剤の検査が困難となる。
本開示の課題は、塗布後に形状の変化が起こるペースト状接着剤の外観検査が可能な技術を提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、ダイボンダは、量産前の登録動作において、量産時におけるペースト状接着剤を金属フレームに塗布する動作からペースト状接着剤を撮像する動作までの時間を測定し、ペースト状接着剤を金属フレームに塗布してから当該測定した時間を待って、当該金属フレームに塗布したペースト状接着剤を撮像して参照検査画像を取得するよう構成される。
【発明の効果】
【0008】
上記ダイボンディング装置によれば、塗布後に形状の変化が起こるペースト状接着剤の外観検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ペースト状接着剤の塗布について説明する図である。
【
図2】梨地処理がなされたリードフレームにペースト状接着剤を塗布する場合の問題点について説明する図である。
【
図3】梨地処理がなされたリードフレームにペースト状接着剤を塗布する場合の問題点について説明する図である。
【
図5】第一実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図6】第一実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図7】第一変形例におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図8】第二実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図9】第二実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図10】第二実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図11】形状の予測方法の一例について説明する図である。
【
図12】第二変形例におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図13】第三実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について説明する図である。
【
図14】実施例のダイボンダを上から見た概念図である。
【
図16】
図14のダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図である。
【
図17】半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態、変形例および実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
まず、ペースト状接着剤の塗布について
図1を用いて説明する。
図1(a)は格子状にタブが配列されたリードフレームのタブ上に塗布されたペースト状接着剤の撮像画像を示す図であり、
図1(b)は
図1(a)の二値化画像を示す図である。
【0012】
金属フレームであるリードフレームへのペースト状接着剤の塗布は、例えば、ボンディング部の前に設けられたプリフォーム部で行われる。まず、プリフォーム部は、認識カメラを用いてペースト状接着剤を塗布するリードフレームLFの位置決めを行う。位置決めはボンディングヘッド部と同様にパターンマッチングなどで行う。次に、プリフォーム部は、ペースト状接着剤PAが封入されているシリンジの先端のノズルから射出し、ノズルの軌跡に従って塗布する。シリンジは塗布したい形状によりXYZ軸で駆動され、その軌跡によって×印形状や十字形状など、自由な軌跡を描いて塗布する。最後に、プリフォーム部は、認識カメラを用いて塗布後にペースト状接着剤PAの状態を検査する(外観検査を行う)。ペースト状接着剤PAの有無、塗布面積、塗布形状(不足、はみ出し)などを必要に応じて検査する。検査は
図1(b)に示す二値化処理にてペースト領域を分離後に画素数を数える方法のほか、差分による比較、パターンマッチングによるスコアを比較する方法などで行う。以下、ペースト状接着剤PAの塗布パターンは×印形状であるとして説明する。
【0013】
図1(a)に示すように、ペースト状接着剤の塗布状態によって不足(
図1(a)の中段)、はみ出し(
図1(a)の下段)などがある。なお、
図1(a)の上段はペースト状接着剤の塗布状態は正常な場合である。
【0014】
ダイがボンディングされた基板としてのリードフレームを封止するモールドレジンとの密着性を向上させるために、リードフレームに梨地処理がなされる。梨地処理がなされたリードフレームにペースト状接着剤を塗布した場合の問題点について
図2、3を用いて説明する。
図2(a)は梨地処理がなされたリードフレームの表面にペースト状接着剤を塗布した直後の撮像画像を示す図であり、
図2(b)は
図2(a)から所定時間経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図2(c)は
図2(b)のA-A線における概念断面図であり、
図2(d)は
図2(a)の二値化画像を示す図であり、
図2(e)は
図2(b)の二値化画像を示す図である。
図3は格子状にタブが配列されたリードフレームのタブ上に塗布されたペースト状接着剤の撮像画像を示す図である。
【0015】
梨地処理がなされたリードフレームLFのダイ載置部としてのタブTBにペースト状接着剤PAを塗布すると、
図2(b)(c)に示すように、時間経過とともにペースト状接着剤PAが薄く滲む。梨地処理がなされたリードフレームLFの表面は平坦ではなく、細かい凹凸がある。この凹凸に浸みていくように塗布したペースト状接着剤PAが滲んでいく。本明細書では、この滲みをブリードBOという。ブリードBOは初期のうちにおいては経過時間とともに均一方向に薄く広がっていく。なお、梨地処理がなされていないリードフレームであっても、ペースト状接着剤の粘度が小さい場合も、ペースト状接着剤は経過時間とともに広がっていく。
【0016】
ペースト状接着剤PAを塗布した直後に外観検査する場合は、ブリードBOが広がる前に検査を終了する。しかし、何らかの理由で再検査または所定時間経過後に検査が必要な場合は、ブリードBOの変化を考慮する必要がある。
ブリードには溶剤の染み出しと、ペースト自体の染み出しがある。ペースト自体の染み出しの場合はブリードBOの変化があるときに不良と判定する。この場合、塗布後所定時間経過後の
図2(e)の二値化画像と予め登録しておいた塗布直後である
図2(d)の二値化画像により検出することができる。
【0017】
他方、ブリードBOはペースト状接着剤PAの塗布量にはほとんど影響しなく、ブリードBOがあること自体は不良ではない場合に、ペースト状接着剤PAの塗布後のある程度時間経過した後に、塗布されたペースト状接着剤PAの上方に設置された認識カメラで撮像した画像を用いて外観検査を行うと、ペースト状接着剤PAの量を測定しようとしても、ブリードBOの影響で正確なペースト量(面積/塗布形状)を検出できなくなってしまう。撮像画像をそのまま二値化を行うと、
図2(e)に示すように、ブリードBOもペースト塗布領域と看做してしまうため、ペースト部PSTとブリードBOの分離ができず、二次元検査しかできない現在の検査システムでは塗布過多と判定してしまう。
【0018】
ペースト状接着剤PAの塗布から所定時間経過後に検査が必要な場合について
図3を用いて説明する。
【0019】
図3では、格子状にタブが配列されたリードフレームLFの右上のタブから下方向に順次ペースト状接着剤PAを塗布し、右下のタブへのペースト状接着剤PARの塗布後、右から二列目の最上の位置から下方向に順次ペースト状接着剤PAを塗布し、その後、同様に、三列目、四列目と塗布する。よって、一列目の最上のタブに塗布されたペースト状接着剤PASは塗布後最も経過時間が大きく、四列目の最下のタブに塗布されたペースト状接着剤PAEは塗布後最も経過時間が小さくなる。
【0020】
図3に示すように、四列塗布後、すなわち、ペースト状接着剤PAEの塗布後に四列すべてのタブに塗布されたペースト状接着剤の外観検査を行うと、
図3に示すように、ブリードBOの広がりがタブ毎に異なる。通常、ペースト状接着剤の外観検査は列毎に行われるため、その列の最初に塗布されたタブのペースト状接着剤と最後に塗布されたタブのペースト状接着剤ではブリードBOの広がりがタブ毎に異なる。
【0021】
一列または複数列等の複数のタブへの塗布後に全タブ検査を行う場合では、タブ毎に塗布から検査までの時間が異なり、ブリードBOの広がりがタブ毎に異なってしまい、検査結果がタブの位置に応じて変化してしまう。
【0022】
次に、上記問題点を解決する実施形態の概要について
図4を用いて説明する。
図4(a)はリードフレームの表面にペースト状接着剤を塗布した直後の撮像画像を示す図であり、
図4(b)は
図4(a)から所定時間経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図4(c)は
図4(a)の二値化画像を示す図であり、
図4(d)は
図4(b)の二値化画像を示す図であり、
図4(e)は
図4(a)の二値化画像を示す図であり、
図4(f)は
図4(b)からブリードの変化を除去した二値化画像を示す図である。
【0023】
第一実施形態では、基準となる参照検査画像の登録タイミングを量産時の連続動作における検査タイミングと合わせて、
図4(d)に示すように、ブリードも含む画像認識により検査判定を行う。他方、第二実施形態では、ブリードの広がりから元の塗布量(形状)を予測し、
図4(f)に示すように、ブリードの変化を除去して検査判定を行う。第三実施形態では、照明によりブリードをペースト部から分離して検査判定を行う。以下、それぞれの検査方法について詳細に説明する。
【0024】
(第一実施形態)
第一実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について
図5、6を用いて説明する。
図5は参照検査画像の取得方法を説明するフローチャートである。
図6(a)はリードフレームの表面にペースト状接着剤を塗布した直後の撮像画像を示す図であり、
図6(b)は
図6(a)からA分経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図6(c)は
図6(a)からB分経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図6(d)は
図6(a)の二値化画像を示す図であり、
図6(e)は
図6(b)の二値化画像を示す図であり、
図6(f)は
図6(c)の二値化画像を示す図である。
【0025】
上述したように、第一実施形態では、基準となる参照検査画像の登録タイミングを量産時の検査タイミングと合わせて、ブリードも含む画像認識により検査判定を行う。以下に説明する検査方法はダイボンダが備える制御装置が撮像装置としての認識カメラ等を制御して行う。
【0026】
まず、実際の認識タイミングで登録(画像取得)動作について説明する。
(ステップS1:量産条件(認識タイミング)の取得)
実際には塗布せず空動作(ステップS11)し、量産時の連続動作での塗布から認識カメラで撮像する外観検査(認識)までのタイミング(時間)を測定する(ステップS12)。
図3で説明したように、リードフレームLFの複数のタブTBにペースト状接着剤PAを塗布した後、最初に塗布されたペースト状接着剤PASから最後に塗布されたペースト状接着剤PAEまで順次、外観検査する場合は、それぞれの塗布から外観検査までの時間を測定する。これにより、量産時の外観検査タイミングが取得される。
【0027】
(ステップS2:参照検査画像の取得)
実際に一回のペースト状接着剤PAの第一基板としてのリードフレームLFのタブTBへの塗布を実施し、照明など設定を確定する(ステップS21)。塗布と同時に経過時間の測定を開始する。測定している経過時間がステップS12で測定した時間(実測時間)になるまで待って(ステップS22)、すなわち、量産での外観検査タイミングである実際の認識タイミングで認識カメラを用いてペースト状接着剤PAの参照検査画像を取得し、制御装置が備える記憶装置に格納して登録する(ステップS23)。例えば、ステップS12で測定した時間がA分である場合、
図6(b)の撮像画像が参照検査画像として登録され、ステップS12で測定した時間がB分である場合、
図6(c)の撮像画像が参照検査画像として登録される。ステップS11で測定した時間が一つである場合は、一つの検査画像を取得し、ステップS11で測定した時間が複数ある場合は、それぞれの時間における複数の参照検査画像を取得する。これにより、量産時の外観検査タイミングにおける参照検査画像が取得される。
【0028】
量産時は、連続動作で検査実施および判定を行う。ペースト状接着剤PAの第二基板としてのリードフレームLFのタブTBへの塗布後の外観検査で認識カメラを用いて画像取得し、ステップS23で登録した参照検査画像等と比較して塗布が正常に行われたかどうかを判定する。例えば、量産時の外観検査の撮像画像を二値化し、ステップS12で測定した時間がA分である場合、
図6(e)に示す二値化画像と比較し、ステップS12で測定した時間がB分である場合、
図6(f)に示す二値化画像と比較する。
【0029】
第一実施形態では、認識登録タイミングがペースト状接着剤の二次元形状の変化を考慮しているので、初期塗布量と経時変化の区別が可能であり、参照検査画像の登録と量産時の外観検査における検査画像の取得タイミングの条件一致により正しい検査判定が可能となる。すなわち、参照検査画像の登録タイミングと量産(連続動作)時の検査画像の取得タイミングを一致させ、塗布されたペースト状接着剤の形状変化を検出する。これにより、塗布されたペースト状接着剤の異常の有無の判定の安定化が図られ正しい検査判定が可能となる。また、参照検査画像の登録タイミングの自動化(量産条件に装置が合わせる)により作業者による差を除去することが可能となり、稼働率も改善することが可能となる。
【0030】
以下、実施形態の代表的な変形例および他の実施形態について、幾つか例示する。以下の変形例および他の実施形態の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施形態の一部、および、複数の変形例および他の実施形態の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0031】
(第一変形例)
ペースト状接着剤PAの塗布後の時間による変化を検出するようにしてもよい。第一実施形態の変形例(第一変形例)における基準検査画像の取得方法について
図7を用いて説明する。
図7は基準検査画像の取得方法を説明するフローチャートである。
【0032】
図5のステップS2の後に、認識カメラを用いて第一基板としてのリードフレームLFのタブTBに塗布されたペースト状接着剤PAの参照検査画像を取得すると共に参照検査画像を取得した経過時間を取得する(ステップS24)。以前に取得した参照検査画像および最新の参照検査画像に基づいてブリードの広がりが飽和しているかどうかを判定する(ステップS25)。ステップS24,S25を繰り返し、ブリードの広がりが飽和する飽和時間を取得する(ステップS26)。
【0033】
すなわち、塗布後の時間経過により、例えば
図6(a)~(c)に示すような複数回、参照検査画像を取得する。これらの参照検査画像により、時間経過による変化確認および飽和時間の確認を行う。塗布後、装置停止前に検査が実施されなかった場合、塗布から装置再開後の検査までの時間(ここでは、装置停止時間という。)による量産再開時の判定を行う。装置停止時間が飽和時間以内である場合、装置停止時間に対応する参照検査画像を用いて判定する。装置停止時間が飽和時間よりも長い場合、飽和時間に対応する参照検査画像を用いて判定する。
【0034】
(第二実施形態)
第二実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法について
図8~11を用いて説明する。
図8はブリードの広がりの登録を説明するフローチャートである。
図9は着工時の外観検査を説明するフローチャートである。
図10は塗布直後のペースト状接着剤の塗布量(形状)の予測を説明する図である。
図10(a)はリードフレームの表面にペースト状接着剤を塗布した直後の撮像画像を示す図であり、
図10(b)は
図10(a)からA分経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図10(c)は
図10(a)からB分経過した状態の撮像画像を示す図である。
図10(d)は
図10(a)からA分経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図10(e)は
図10(d)の二値化画像を示す図であり、
図10(f)は
図10(d)の二値化画像から塗布直後を算出した二値化画像である。
図10(g)は
図10(a)からB分経過した状態の撮像画像を示す図であり、
図10(h)は
図10(g)の二値化画像を示す図であり、
図10(i)は
図10(h)の二値化画像から塗布直後を算出した二値化画像である。
図11は形状の予測方法の一例について説明する図である。
【0035】
上述したように、第二実施形態では、リードの広がりから元の塗布量(形状)を予測し、ブリードの変化を除去して検査判定を行う。以下、詳細に説明する。
【0036】
図8に示すように、倣い動作(登録動作)を行うことにより、品種別にブリードの広がるスピードを調査してデータベース化する。以下、倣い動作について説明する。
【0037】
ペースト状接着剤PAを塗布する場所まで第一基板としてのリードフレームLFを搬送し(ステップS31)、照明値を決定する(ステップS32)。次に、ペースト状接着剤PAを第一基板としてのリードフレームLFのタブTBに塗布すると同時に時間経過の測定を開始する(ステップS33)。塗布後、直ぐに、認識カメラを用いてペースト状接着剤PAを撮像して画像を取り込むと同時にタイムスタンプを取得し(ステップS34)、撮像画像から塗布されたペースト状接着剤の領域の面積および形状の少なくとも一方を測定する(ステップS35)。以降、ステップS34およびステップS35を所定時間ごとに、ブリードの広がりが飽和するまで、繰り返す。
【0038】
着工時の連続動作では、
図9に示すように、ペースト状接着剤PAを塗布する場所まで第二基板としてのリードフレームLFを搬送し(ステップS41)、ペースト状接着剤PAを第二基板としてのリードフレームLFのタブTBに塗布する(ステップS42)。ペースト状接着剤PAを塗布する同時に時間経過の測定を開始する(ステップS43)。塗布後、所定のタイミングで認識カメラを用いてペースト状接着剤PAを撮像して画像を取り込むと同時にタイムスタンプを取得する(ステップS44)。
【0039】
ステップS44で取得したタイムスタンプから算出した経過時間および倣い動作時に取得した画像に基づいて塗布直後のペースト状接着剤PAの領域の面積、形状を予測する(ステップS45)。この際、ステップS44で取得した画像に対して通常の画像処理による検査を行う。例えば、塗布からの経過時間がA分である場合は、
図10(e)に示すように、検出した塗布領域を二値化した画像に対して、倣いによって取得した、経過時間に従って取り決められた収縮量に基づいて、収縮処理を施して、塗布直後の面積、形状を算出する。これにより、
図10(f)に示す塗布時の予想画像を生成し、塗布時の塗布量を予想して結果とする。塗布からの経過時間がB分である場合は、
図10(h)に示すように、検出した塗布領域を二値化した画像に対して、倣い動作によって取得した、経過時間に従って取り決められた収縮量に基づいて、収縮処理を施して、塗布直後の面積、形状を算出する。これにより、
図10(i)に示す塗布時の予想画像を生成し、塗布時の塗布量を予想して結果とする。
【0040】
形状の予測方法として、単純な画像膨張処理または画像収縮処理でも良い。経過時間に対する収縮回数や膨張回数を倣い動作時に取得したデータから定める。画像膨張処理または画像収縮処理は八方位または四方位で行う。
図11に示すように、×印形状のペンライト軌跡の各屈曲点(●印)に起点を設け、倣い動作時に矢印で示す輪郭線に対する外側方向への時間当たりの変化量を求めておき、予測計算時にそれを用いて計算しても良い。変化量の予測は面積だけでも良い。
【0041】
ステップS45で予測した面積、形状と倣い動作時の塗布直後の画像における面積、形状とに基づいて検査および判定を行う(ステップS45)。例えば、検査は、ペースト状接着剤PAの予測した塗布エリアの面積または形状と、倣い動作時にリファレンスとなる塗布形状を記憶したものとの比較などで行う。塗布エリアの面積の抽出は特定の明度の画素をカウントするか(ヒストグラムデータからの抽出など)、ブロブ検出などを用いる。塗布エリアの形状の比較は二値化後のデータを比較できるリファレンスデータを倣い動作で取得して保持しておき、そのリファレンスデータと予想した形状のデータとの差分処理などで比較する。
【0042】
第二実施形態の検査方法は、塗布後一定時間内にブリードが広がる速度と方向は事前に確認し決定した計算式通りに再現することを仮定としている。よって、ブリードが均一に広がり続ける上限時間も倣い動作によって事前に測定しておき、その上限時間経過後は測定結果を無効とする処理もあわせて実施する。
【0043】
第二実施形態では、ブリードが一定時間内に一定量進むため、ブリード部分を除いたペーストの塗布状態を確認することができる。
【0044】
(第二変形例)
第二実施形態の変形例(第二変形例)におけるペースト状接着剤の検査方法について
図8、12を用いて説明する。
図12は着工時の外観検査を説明するフローチャートである。
【0045】
第二変形例におけるペースト状接着剤の検査方法は倣い動作時の経過時間毎の撮像画像または形状と量産の着工時に取得した撮像画像または形状とを比較する。第二実施形態における倣い動作および着工時のステップS41~S44までと同様である。
【0046】
倣い動作時に第一基板としてのリードフレームLFのタブTBへのペースト状接着剤PAの塗布後の経過時間毎に撮像画像または形状データを保持しておく(ステップS34,S35)。着工時の連続動作において第二基板としてのリードフレームLFのタブTBへのペースト状接着剤PAの塗布から検査までの経過時間を測定する(ステップS43)。その経過時間の値から倣い動作時のどの画像と比較するかを選択する。すなわち、経過時間に対応する倣い動作時の画像または形状データを取得する(ステップS45a)。ステップS44で取得した画像またはそれに基づく形状データとステップ45aで取得した画像または形状データとに基づいて検査および判定を行う(ステップS46a)。
【0047】
(第三実施形態)
第二実施形態では、ブリードの広がりから元の塗布量(形状)を予測し、ブリードの変化を除去して検査判定を行うが、第三実施形態では、照明によってブリードをペースト部から分離する。第三実施形態におけるペースト状接着剤の検査方法
図13を用いて説明する。
図13は第三実施形態における撮像装置および照明装置を示す図である。
【0048】
図2(c)に示すように、ペースト部PSTとブリードBOが立体的に異なるため、ブリードBOを暗、ペースト部PSTを明として分離する。ブリードBOは塗布後ほとんどのケースで基板表面に対し暗く写る(雨が降った後のコンクリートが暗く写る状態の様なもの)。よって塗布前の画像から塗布後の画像の差分処理を行うとブリードBOは必ず暗として写る(負の画像)。よって負数切捨てのモードで差分処理を行えばブリードBO分は除外することができる。しかし、ペースト部PSTは明になるとは限らない。これは液面反射の特性で、落射照明にて平行光を当ててしまうと、ペースト部PSTの周囲部が暗になる場合がある。よって、
図13に示すように、ペースト部PSTの周囲部が必ず明になるように斜光照明(好ましくはリングもしくは方形タイプ)のものと併用する。
【0049】
図13に示すように、第三実施形態における照明装置IDは落射照明である同軸照明CLと斜光照明OLとを備える。同軸照明CLは照明LSとハーフミラーHMとで構成され、撮像装置CAMの光学軸に沿って光を照射する。斜光照明OLは当該光学軸に対して斜めに光を照射する。ペースト状接着剤PAの塗布エリアは液面であるため、照明により鏡面反射が発生し、照明の位置に準じた輝線や暗部が生じる。例えば、斜光照明OLにより取得される画像は塗布エリアの周辺に輝線が現れ、塗布エリアの中心に暗部が現れる。これは、斜光照明OLでは照明の入射方向が低いためである。一方、同軸照明CLにより取得される画像は塗布エリアの中心に輝線が現れ、塗布エリアの周辺に暗部が現れる。これは、同軸照明CLでは照明の入射方向が高いためである。同軸照明CLと斜光照明OLとを併用することにより、暗部を除去することができる。
【実施例】
【0050】
実施例のダイボンディング装置としてのダイボンダの構成について
図14~16を用いて説明する。
図14は実施例のダイボンダを上から見た概念図である。
図15は
図14のダイボンダの光学系の構成図である。
図16は
図14のダイボンダの制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0051】
ダイボンダ10は大別してウェハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3と、を有する。
【0052】
ウェハ供給部1は、ウェハカセットリフタ11と、ピックアップ装置12とを有する。ウェハカセットリフタ11はウェハリング16が充填されたウェハカセット(図示せず)を有し,順次ウェハリング16をピックアップ装置12に供給する。ピックアップ装置12は、所望するダイDをウェハリング16からピックアップできるように、ウェハリング16を移動し、ダイDを突き上げる。
【0053】
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有し、リードフレームLF(
図15参照)を矢印方向に搬送する。スタックローダ21は、ダイDを接着するリードフレームLFをフレームフィーダ22に供給する。フレームフィーダ22は、リードフレームLFをフレームフィーダ22上の二箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送する。アンローダ23は、搬送されたリードフレームLFを保管する。
【0054】
ダイボンディング部3はプリフォーム部(ペースト塗布ユニット)31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたリードフレームLFにシリンジ36(
図15参照)でエポキシ樹脂等のペースト状接着剤PAを塗布する。シリンジ36は内部にペースト状接着剤PAが封入されており、空気圧によりペースト状接着剤PAがノズル先端からリードフレームLFに押し出されて塗布されるようになっている。リードフレームLFが、例えば、複数個の単位リードフレームが横一列に並べられて一連に連設されている多連リードフレームの場合は、単位リードフレームのタブごとにペースト状接着剤PAを塗布する。ここで、リードフレームLFは梨地処理がされている。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイDをピックアップして上昇し、ダイDをフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はボンディングポイントでダイDを下降させ、ペースト状接着剤PAが塗布されたリードフレームLF上にダイDをボンディングする。
【0055】
ボンディングヘッド部32は、ボンディングヘッド35をZ軸方向(高さ方向)に昇降させ、Y軸方向に移動させるZY駆動軸60と、X軸方向に移動させるX駆動軸70とを有する。ZY駆動軸60は、矢印Cで示すY軸方向、即ちボンディングヘッド35をピックアップ装置12内のピックアップ位置とボンディングポイントとの間を往復するY駆動軸40と、ダイDをウェハ14からピックアップする又はリードフレームLFにボンディングするために昇降させるZ駆動軸50とを有する。X駆動軸70は、ZY駆動軸60全体を、リードフレームLFを搬送する方向であるX方向に移動させる。
【0056】
図15に示すように、光学系88は、シリンジ36の塗布位置等を把握する撮像装置としての接着剤認識カメラ33と、ボンディングヘッド35が搬送されてきたリードフレームLFにボンディングするボンディング位置を把握する基板認識カメラ34と、ボンディングヘッド35がウェハ14からピックアップするダイDのピックアップ位置を把握するウェハ認識カメラ15とを有する。各認識カメラは、対象に対して照明する照明装置を用いて撮像する。ウェハ14において網目状にダイシングされたダイDは、ウェハリング16に固定されたダイシングテープ17に固定されている。
【0057】
この構成によって、ペースト状接着剤PAがシリンジ36によって正確な位置に塗布され、ダイDがボンディングヘッド35によって確実にピックアップされ、リードフレームLFの正確な位置にボンディングされる。
【0058】
図16に示すように、制御系80は制御装置8と駆動部86と信号部87と光学系88とを備える。制御装置8は、大別して、主としてCPU(Central Processor Unit)で構成される制御・演算装置81と、記憶装置82と、入出力装置83と、バスライン84と、電源部85とを有する。記憶装置82は、処理プログラムなどを記憶しているRAMで構成されている主記憶装置82aと、制御に必要な制御データや画像データ等を記憶しているHDDで構成されている補助記憶装置82bとを有する。入出力装置83は、装置状態や情報等を表示するモニタ83aと、オペレータの指示を入力するタッチパネル83bと、モニタを操作するマウス83cと、光学系88からの画像データを取り込む画像取込装置83dと、を有する。また、入出力装置83は、ウェハ供給部1のXYテーブル(図示せず)やボンディングヘッドテーブルのZY駆動軸等の駆動部86を制御するモータ制御装置83eと、種々のセンサ信号や照明装置などのスイッチ等の信号部87から信号を取り込み又は制御するI/O信号制御装置83fとを有する。光学系88には、ウェハ認識カメラ15、接着剤認識カメラ33、基板認識カメラ34が含まれる。制御・演算装置81はバスライン84を介して必要なデータを取込み、演算し、ボンディングヘッド35等の制御や、モニタ83a等に情報を送る。
【0059】
制御装置8は画像取込装置83dを介して光学系88で撮像した画像データを記憶装置82に保存する。保存した画像データに基づいてプログラムしたソフトウェアにより、制御・演算装置81を用いてダイDおよびリードフレームLFの位置決め、ペースト状接着剤PAの塗布パターンの検査並びにダイDおよびリードフレームLFの表面検査を行う。制御・演算装置81が算出したダイDおよびリードフレームLFの位置に基づいてソフトウェアによりモータ制御装置83eを介して駆動部86を動かす。このプロセスによりウェハ14上のダイDの位置決めを行い、ウェハ供給部1およびダイボンディング部3の駆動部で動作させダイDをリードフレームLF上にボンディングする。光学系88で使用する認識カメラはグレースケール、カラー等であり、光強度を数値化する。
【0060】
次に、実施例に係るダイボンダを用いた半導体装置の製造方法について
図17を用いて説明する。
図17は半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0061】
(ステップS51:ウェハ・基板搬入工程)
ウェハ14から分割されたダイDが貼付されたダイシングテープ17を保持したウェハリング16をウェハカセット(不図示)に格納し、ダイボンダ10に搬入する。制御装置8はウェハリング16が充填されたウェハカセットからウェハリング16をウェハ供給部1に供給する。また、リードフレームLFを準備し、ダイボンダ10に搬入する。制御装置8はスタックローダ21よりリードフレームLFをフレームフィーダ22に供給する。
【0062】
(ステップS52:ピックアップ工程)
制御装置8は、ピックアップ装置12に、所望するダイDをウェハリング16からピックアップできるように、ウェハリング16を移動し、ダイDを突き上げさせ、剥離したダイDをボンディングヘッド35によりウェハ14からピックアップする。
【0063】
(ステップS53:ボンディング工程)
制御装置8は接着剤認識カメラ33により塗布前のリードフレームLFの表面の画像を取得してペースト状接着剤PAを塗布すべき面を確認する。塗布すべき面に問題なければ、制御装置8はフレームフィーダ22により搬送されたリードフレームLFにシリンジ36からペースト状接着剤PAを塗布する。リードフレームLFが多連リードフレームの場合はすべてのタブにペースト状接着剤PAを塗布する。制御装置8は、塗布後ペースト状接着剤PAが正確に塗布されているかを第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態、並びにそれらの変形例の何れかの検査方法により接着剤認識カメラ33で再度確認し、塗布されたペースト状接着剤PAを検査する。塗布に問題なければ、制御装置8はボンディングヘッド35でピックアップしたダイDをペースト状接着剤PAが塗布されたリードフレームLFにボンディングする。
【0064】
(ステップS54:基板搬出工程)
制御装置8はフレームフィーダ22によりダイDがボンディングされたリードフレームLFをアンローダ23に供給する。ダイボンダ10からリードフレームLFを搬出する。
【0065】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施形態、変形例および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態、変形例および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
例えば、実施形態1では、ステップS11において実際には塗布せず空動作する例について説明したが、ステップS11において実際には塗布してもよい。
【0067】
また、実施形態2では、倣い動作(登録動作)を行うことにより、品種別にブリードの広がるスピードを調査してデータベース化している例を説明したが、プリフォーム部からダイボンディング部の間に規定の間隔で複数の認識カメラを設置して、通過するリードフレームに塗布されたペースト形状の検査画像とリードフレームの搬送速度から品種別にブリードの広がるスピードを計算してデータベース化してもよい。また、量産時の状況を継続的に確認できるため、データベースの自動修正や、データ偏差を利用したペースト塗布の異常や変化点の検出も行うことができる。
【0068】
また、実施例では、ボンディングヘッド35でウェハ14からピックアップしたダイDをリードフレームLFにボンディングする例を説明したが、ウェハ14とリードフレームLFとの間に中間ステージを設け、ピックアップヘッドでウェハ14からピックアップしたダイDを中間ステージに載置し、ボンディングヘッド35で中間ステージから再度ダイDをピックアップし、搬送されてきたリードフレームLFにボンディングするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
8:制御装置
10:ダイボンダ(ダイボンディング装置)
33:接着剤認識カメラ(撮像装置)
35:ボンディングヘッド
D:ダイ
LF:リードフレーム(基板)
PA:ペースト状接着剤