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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】非水系電解液及びエネルギーデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230622BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230622BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230622BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20230622BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20230622BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20230622BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20230622BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M6/16 A
H01G11/64
H01G11/60
H01G11/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019211322
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021082556
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 脩平
(72)【発明者】
【氏名】深水 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 花穂
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017250(JP,A)
【文献】特開2013-175369(JP,A)
【文献】特開2019-102434(JP,A)
【文献】国際公開第2007/020876(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/033358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0569
H01M 10/0568
H01M 6/16
H01G 11/64
H01G 11/60
H01G 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を備えるエネルギーデバイス用の非水系電解液であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに、
(A)式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートを含有し、かつ、
(B)式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートの含有量と式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの含有量との質量比が73/27乃至80/20であり、
前記非水系電解液全量に対する前記式(1)で表される化合物ならびに前記式(2)で表される化合物の総含有量が0.2質量%以上0.8質量%以下である、
ことを特徴とする非水系電解液。
【化1】

(式(1)中、2つのRは、それぞれ同一の基であり、炭素数1~5の飽和炭化水素基を表し、式(2)中、2つのRは、それぞれ同一の基であり、炭素数1~5の飽和炭化
水素基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)中のR及び式(2)中のRが同一の基である、請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
前記非水系溶媒が鎖状カルボン酸エステルを含有する、請求項1または2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記鎖状カルボン酸エステルの非水系溶媒全量に対する含有量が1体積%以上50体積%以下である、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記電解質として、LiPFを含有し、LiPFの含有量に対する、前記式(1)で表される化合物ならびに前記式(2)で表される化合物の総含有量の質量比が、0.00005以上0.1以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
前記非水系電解液が、更に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1 種の化合物を含有する、請求項1~5のいずれ
か1項に記載の非水系電解液。
【請求項7】
前記炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の非水系電解液全量に対する合計含有量が、0.001質量%以上10質量%以下である、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項8】
前記電解質として、LiPFを含有し、LiPFの含有量に対する、前記炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量の質量比が、0.00005以上0.5以下である、請求項6または7に記載の非水系電解液。
【請求項9】
負極、正極及び請求項1~8のいずれか1項に記載の非水系電解液を含む、エネルギーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液、及びエネルギーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の小型機器用の電源や、電気自動車用等の駆動用車載電源等の広範な用途において、リチウム一次電池やリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のエネルギーデバイスが実用化されている。しかしながら、近年のエネルギーデバイスに対する高性能化の要求はますます高くなっている。
【0003】
中でも、非水系電解液電池の電池特性を改善する手段として、正極や負極の活物質、非水系電解液の添加剤分野において数多くの検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、炭素数4~6のシクロアルキレン基を1つ有するジイソシアネート及びフッ素原子を有する環状カーボネートを含有する非水系電解液電池用電解液を用いることにより、高温保存時における容量劣化ならびにサイクル時における容量劣化を抑制し、高電流密度下での充放電特性を改善する検討が開示されている。しかしながら、当該文献には、イソシアネート化合物においてcis-trans構造等の立体異性体に関する言及は一切されていない。
特許文献2には、第三級または第四級炭素原子を少なくとも1つ有し、イソシアネート基を複数有する化合物を含有する非水系電解液電池用電解液及び合成ゴム系接着剤と増粘剤を特定比率で含有する非水系電解液電池用負極を用いることにより、高温保存時における容量劣化ならびに高電流密度下での充放電特性を改善する検討が開示されている。しかしながら、当該文献には、イソシアネート化合物においてcis-trans構造等の立体異性体に関する言及は一切されていない。
特許文献3には、ゴルフボール用ポリウレタンのジイソシアネート成分の合成に関する検討がなされており、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(東京化成工業社製)を原料に用い、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを異性体比(モル比)cis体:trans体=26:74で合成した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-51198号公報
【文献】特開2014-41819号公報
【文献】特開2013-42959号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電気自動車の車載用途電源や、スマートフォン等の携帯電話用電源等にリチウム電池の高容量化が加速されており、電池内の空隙の割合が従来と比較して小さくなっている。そのため、特に初期容量の向上及び高温保存耐久後の容量低下の抑制への要求が更に高まっている。
上記に鑑み、本発明は、エネルギーデバイスの初期容量を向上させ、かつ、高温保存耐久後の容量低下を抑制できる非水系電解液を提供することを課題とする。また、初期容量が大きく、かつ、高温保存耐久後の容量低下が抑制されたエネルギーデバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、複数の異なる立体構造を有するジイソシアネート化合物を特定比率で含有した非水系電解液を用いることにより、エネルギーデバイスの初期容量の向上及び高温保存耐久後の容量低下の抑制を実現できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のものを含む。
<1>
正極及び負極を備えるエネルギーデバイス用の非水系電解液であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに、
(A)式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートを含有し、かつ、
(B)式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートの含有量と式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの含有量との質量比が30/70乃至99/1である、
ことを特徴とする非水系電解液。
【化1】
(式(1)中、2つのRは、それぞれ同一の基であり、炭素数1~5の飽和炭化水素基を表し、式(2)中、2つのRは、それぞれ同一の基であり、炭素数1~5の飽和炭化水素基を表す。)
<2>
前記式(1)中のR及び式(2)中のRが同一の基である、<1>に記載の非水系電解液。
<3>
前記非水系電解液全量に対する前記式(1)で表される化合物ならびに前記式(2)で表される化合物の総含有量が0.001質量%以上5質量%以下である、<1>または<2>に記載の非水系電解液。
<4>
前記非水系溶媒が鎖状カルボン酸エステルを含有する、<1>~<3>のいずれかに記載の非水系電解液。
<5>
前記鎖状カルボン酸エステルの非水系溶媒全量に対する含有量が1体積%以上50体積%以下である、<4>に記載の非水系電解液。
<6>
前記電解質として、LiPFを含有し、LiPFの含有量に対する、前記式(1)で表される化合物ならびに前記式(2)で表される化合物の総含有量の質量比が、0.0
0005以上0.1以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の非水系電解液。
<7>
前記非水系電解液が、更に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、<1>~<6>のいずれかに記載の非水系電解液。
<8>
前記炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の非水系電解液全量に対する合計含有量が、0.001質量%以上10質量%以下である、<7>に記載の非水系電解液。
<9>
前記電解質として、LiPFを含有し、LiPFの含有量に対する、前記炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量の質量比が、0.00005以上0.5以下である、<7>または<8>に記載の非水系電解液。
<10>
負極、正極及び<1>~<9>のいずれかに記載の非水系電解液を含む、エネルギーデバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エネルギーデバイスの初期容量を向上させ、かつ、高温保存耐久後の容量低下を抑制できる非水系電解液を提供することができる。また、かかる非水系電解液を用いることにより、初期容量が大きく、かつ、高温保存耐久後の容量低下が抑制されたエネルギーデバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0011】
<1.非水系電解液>
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、以下に説明する式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートと式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートを特定比率で含有する。
【0012】
これまでも、ジイソシアネートを用いることにより、エネルギーデバイス特性の改善が試みられている。例えば、特許文献1又は2において、イソシアネート化合物は負極上に被膜を形成すると言及されている。しかし、被膜は重合物である為、立体異性体比率の変化により、重合物の立体構造や重合度に変化が生じると考えられるが、当該文献ではそれらに関する言及はなされていない。
例えば、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートは面対称性を持った分子であるため、2つのイソシアネート部位の反応性が等価である。よって、複合被膜形成時の反応が均一、かつ連続的に進行することで、重合度の高い複合被膜が形成される。しかし、重合度が高くなりすぎると、複合被膜自体の嵩が大きくなり、被膜同士の立体的な反発により負極上を十分に覆うことができなくなる。また、重合度が高くなることで、リチウムイオンの挿入脱離を阻害することにより、エネルギーデバイス特性は低下する。よって、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート単独では被膜による改善効果は不十分である。
一方、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートは面対称性を有さないことから、2つのイソシアネート部位の反応性が非等価である。よって、反応は不均一に進行するが反応の進行は遅く、重合度が低い皮膜が形成される。重合度の低い皮膜は電解液への溶解性が高くなり、安定に負極上に存在することができない。よって、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート単独では被膜による改善効果は不十分である。
【0013】
本発明ではその点に着目し、異なる立体構造を有するイソシアネート異性体を特定の比率で混合することで、重合度及び立体構造が最適に調整され負極表面に均一に安定な被膜が形成されることを見出した。なお、前述の特許文献3に記載されているこれまで公知として知られている異性体比率では、改善効果が小さく、特性としては不適であることも確認された。
【0014】
なお、本発明の一実施形態に係る非水系電解液に式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートなどの添加剤(以下、「併用添加剤」とも表記する。)を含有させる方法は、特に制限されない。下記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、エネルギーデバイス内又は電解液中において併用添加剤を発生させる方法が挙げられる。併用添加剤を発生させる方法としては、併用添加剤以外の化合物を添加し、電解液等のエネルギーデバイス構成要素を酸化又は加水分解等する方法が挙げられる。更には、エネルギーデバイスを作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法も挙げられる。
【0015】
また、併用添加剤は、非水系電解液に含有させ実際にエネルギーデバイスの作製に供すると、そのエネルギーデバイスを解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。従って、エネルギーデバイスから抜き出した非水系電解液から、併用添加剤が極少量でも検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。また、併用添加剤は、非水系電解液として実際にエネルギーデバイスの作製に供すると、そのエネルギーデバイスを解体して再び抜き出した非水系電解液には併用添加剤が極少量しか含有されていなかった場合であっても、エネルギーデバイスの他の構成部材である正極、負極若しくはセパレータ上で検出される場合も多い。従って、正極、負極、セパレータから併用添加剤が検出された場合は、その合計量を非水系電解液に含まれていたと仮定することができる。この仮定の下、併用添加剤は後述で述べる範囲になるように含まれていることが好ましい。
【0016】
<1-1.式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート>
本実施形態の非水系電解液は、下記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートを含有することを特徴とする。
【0017】
【化2】
【0018】
(式(1)中、2つのRは、それぞれ同一の基であり、炭素数1~5の飽和炭化水素基を表し、式(2)中、2つのRは、それぞれ同一の基であり、炭素数1~5の飽和炭化水素基を表す。)
【0019】
式(1)中のR及び式(2)中のRは、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよいが、それぞれ同一の基であると、被膜形成反応が効率よく進行し、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを併用添加した際の相乗効果が発現しやすくなるため、好ましい。
【0020】
及びRは炭素数1以上5以下の飽和炭化水素基であれば特に制限はなく、置換基を有するものであってもよく、好ましくは炭素数1以上3以下の飽和炭化水素基である。また、飽和炭化水素基の主鎖の炭素数は、通常1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。R及びRで表される飽和炭化水素基の主鎖の炭素数がこの範囲であることで、立体異性体同士の特性差が表れやすくなり、複数の立体異性体を併用で用いた際の相乗改善効果がより顕著に発現する。
【0021】
飽和炭化水素基としては、アルキレン基およびシクロアルキレン基が挙げられ、好ましくはアルキレン基である。アルキレン基としては、置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が挙げられ、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基またはトリメチレン基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基であり、さらに好ましくは置換基を有さないメチレン基である。メチレン基であることで効率よく被膜が形成され、複数の立体異性体を用いた際の相乗効果がより顕著に発現する。
【0022】
飽和炭化水素基が有していてもよい置換基としては、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基等の、炭素数1以上4以下の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数1以上4以下のアルコキシ基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
等が挙げられる。これらのうち、置換基はアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
なお、上述した飽和炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数が含まれるものとする。
【0023】
式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0024】
【化3】
【0025】
式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0026】
【化4】
【0027】
式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートの含有量と式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの含有量との質量比は、通常30/70以上であり、好ましくは51/49以上、より好ましくは68/32、さらに好ましくは73/27であり、通常99/1以下であり、好ましくは90/10、より好ましくは84/16、さらに好ましくは80/20、特に好ましくは78/12である。該質量比がこの範囲であれば、形成する重合物の立体構造及び重合度が被膜として適しており、リチウムイオンの挿入脱離を阻害することなく負極表面全体を均一に安定で良質な被膜で覆うことができ、エネルギーデバイス特性改善効果が顕著に発現する。式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートと式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートとの含有量比(質量比)の測定方法は、ガスクロマトグラフィ(GC)分析が挙げ
られる。
【0028】
式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートまたは式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの含有量は特に限定されないが、非水系電解液全量に対する式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートまたは式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの含有量が各々通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.8質量%以下である。これらのジイソシアネートの含有量が各々この範囲内であると、抵抗増加が少なく発明の効果が顕著に発現される。
【0029】
また、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの総含有量は特に限定されないが、非水系電解液全量に対する式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートの総含有量が通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.8質量%以下である。これらのジイソシアネートの総含有量がこの範囲内であると、抵抗増加が少なく発明の効果が顕著に発現される。
式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートとの含有量の測定方法は、ガスクロマトグラフィ(GC)分析が挙げられる。
【0030】
<1-2.電解質>
本実施形態の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその成分として、電解質を含有する。本実施形態の非水系電解液に用いられる電解質について特に制限は無く、公知の電解質を用いることができる。以下、電解質の具体例について詳述する。
【0031】
<1-2-1.リチウム塩>
本実施形態の非水系電解液における電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを1種以上用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0032】
例えば、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;
LiPF、LiPO等のフルオロリン酸リチウム塩類;
LiWOF等のタングステン酸リチウム塩類;
CFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;
CHSOLi、FSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FSO、LiN(CFSO等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO等のリチウムメチド塩類;
LiB(C等のリチウムオキサラート塩類;
その他、LiPF(CF等の含フッ素有機リチウム塩類;
等が挙げられる。
【0033】
エネルギーデバイスの高温環境下での充電保存特性向上に加え、充放電レート特性、インピーダンス特性の向上効果を更に高める点から、本実施形態の非水系電解液における電解質は、無機リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リ
チウムイミド塩類、リチウムオキサラート塩類の中から選ばれるものが好ましい。これらのうち、好ましくはLiPF、LiBF、LiClO、LiB(C、Li(FSON及びLi(CFSONから選ばれる少なくとも1つであり、より好ましいものはLiPF、LiBF、Li(FSON及びLi(CFSONから選ばれる少なくとも1つであり、更に好ましいのは、LiPF及びLi(FSONのうちの少なくとも一方であり、特に好ましいものはLiPFである。以上に挙げたリチウム塩は1種類のみで用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
非水系電解液中のこれらの電解質の総濃度は、特に制限はないが、リチウム塩を電解液の主塩として用いる場合、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。また、通常20質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の総濃度が上記範囲内であると、電気伝導率がエネルギーデバイス動作に適正となるため、十分な出力特性が得られる傾向にある。また、リチウム塩を副塩として用いる場合、リチウム塩の濃度は、非水系電解液の全量に対して、通常0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、通常2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。リチウム塩の濃度がこの範囲内であると、エネルギーデバイス中での副反応が少なく、抵抗を上昇させにくい。
【0035】
非水系電解液中においてLiPFを有する場合において、PFアニオンはすべてLiPF由来であるとみなし、そこから算出したLiPFの含有量に対する前記式(1)で表される化合物ならびに前記式(2)で表される化合物の総含有量の質量比は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.1以下、好ましくは0.08以下、より好ましくは0.06以下、さらに好ましくは0.04以下である。LiPFの含有量がこの範囲であれば、エネルギーデバイスの
特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、エネルギーデバイス系内でのLiPFの分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
以下も同様に、非水系電解液中のLiPFの質量は、PFアニオンすべてがLiPF由来であるとみなし、そこから算出した質量とみなす。
【0036】
<1-3.非水系溶媒>
非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質を溶解する非水系溶媒を含有する。ここで用いる非水系溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、特に限定されず、例えば飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、スルホン系化合物、環状カルボン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、有機溶媒は、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、エネルギーデバイスの初期容量を向上させやすくなる点で、少なくとも鎖状カルボン酸エステルを含むことがより好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。以下、これらの有機溶媒について説明する。
【0037】
<1-3-1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、通常炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ、リチウムイオン解離度の向上に由来するエネルギーデバイス特性向上の点から炭素数2~3の飽和環状カーボネートが好ましく用いられる。
【0038】
飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネートがより好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0039】
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。飽和環状カーボネートの含有量の下限をこの範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池等のエネルギーデバイスの大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、飽和環状カーボネートの含有量の含有量の上限は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の酸化・還元耐性が向上し、高温保存時の安定性が向上する傾向にある。
なお、本実施形態における体積%とは25℃、1気圧における体積を意味する。
【0040】
<1-3-2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、通常炭素数3~7のものが用いられ、電解液の粘度を適切な範囲に調整するために、炭素数3~5の鎖状カーボネートが好ましく用いられる。
【0041】
具体的には、鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0042】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
【0043】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0044】
フッ素化ジメチルカーボネート誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
【0045】
フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体としては、2-フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネ
ート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
フッ素化ジエチルカーボネート誘導体としては、エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’,2’-ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0047】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0048】
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池等のエネルギーデバイスの出力特性を良好な範囲としやすくなる。
【0049】
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、エネルギーデバイス性能を著しく向上させることができる。
【0050】
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上、好ましくは20体積%以上、また、通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの含有量を上記範囲内とすることで、高温安定性に優れ、ガス発生が抑制される傾向がある。
【0051】
<1-3-3.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、炭素数が3~12のものが好ましく、炭素数3~5のものがより好ましい。
鎖状カルボン酸エステルとしては、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-tert-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、酪酸イソブチル、酪酸-tert-ブチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸n-ブチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸-tert-ブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸n-プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸n-ブチル、吉草酸
イソブチル、吉草酸-tert-ブチル、ヒドロアンゲリカ酸メチル、ヒドロアンゲリカ酸エチル、ヒドロアンゲリカ酸n-プロピル、ヒドロアンゲリカ酸イソプロピル、ヒドロアンゲリカ酸n-ブチル、ヒドロアンゲリカ酸イソブチル、ヒドロアンゲリカ酸-tert-ブチル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸n-プロピル、イソ吉草酸イソプロピル、イソ吉草酸n-ブチル、イソ吉草酸イソブチル、イソ吉草酸-tert-ブチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n-プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸n-ブチル、ピバル酸イソブチル、ピバル酸-tert-ブチル等の飽和鎖状カルボン酸エステル;
【0052】
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-tert-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-tert-ブチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸n-プロピル、クロトン酸イソプロピル、クロトン酸n-ブチル、クロトン酸イソブチル、クロトン酸-tert-ブチル、3-ブテン酸メチル、3-ブテン酸エチル、3-ブテン酸n-プロピル、3-ブテン酸イソプロピル、3-ブテン酸n-ブチル、3-ブテン酸イソブチル、3-ブテン酸-tert-ブチル、4-ペンテン酸メチル、4-ペンテン酸エチル、4-ペンテン酸n-プロピル、4-ペンテン酸イソプロピル、4-ペンテン酸n-ブチル、4-ペンテン酸イソブチル、4-ペンテン酸-tert-ブチル、3-ペンテン酸メチル、3-ペンテン酸エチル、3-ペンテン酸n-プロピル、3-ペンテン酸イソプロピル、3-ペンテン酸n-ブチル、3-ペンテン酸イソブチル、3-ペンテン酸-tert-ブチル、2-ペンテン酸メチル、2-ペンテン酸エチル、2-ペンテン酸n-プロピル、2-ペンテン酸イソプロピル、2-ペンテン酸n-ブチル、2-ペンテン酸イソブチル、2-ペンテン酸-tert-ブチル、2-プロピン酸メチル、2-プロピン酸エチル、2-プロピン酸n-プロピル、2-プロピン酸イソプロピル、2-プロピン酸n-ブチル、2-プロピン酸イソブチル、2-プロピン酸-tert-ブチル、3-ブチン酸メチル、3-ブチン酸エチル、3-ブチン酸n-プロピル、3-ブチン酸イソプロピル、3-ブチン酸n-ブチル、3-ブチン酸イソブチル、3-ブチン酸-tert-ブチル、2-ブチン酸メチル、2-ブチン酸エチル、2-ブチン酸n-プロピル、2-ブチン酸イソプロピル、2-ブチン酸n-ブチル、2-ブチン酸イソブチル、2-ブチン酸-tert-ブチル、4-ペンチン酸メチル、4-ペンチン酸エチル、4-ペンチン酸n-プロピル、4-ペンチン酸イソプロピル、4-ペンチン酸n-ブチル、4-ペンチン酸イソブチル、4-ペンチン酸-tert-ブチル、3-ペンチン酸メチル、3-ペンチン酸エチル、3-ペンチン酸n-プロピル、3-ペンチン酸イソプロピル、3-ペンチン酸n-ブチル、3-ペンチン酸イソブチル、3-ペンチン酸-tert-ブチル、2-ペンチン酸メチル、2-ペンチン酸エチル、2-ペンチン酸n-プロピル、2-ペンチン酸イソプロピル、2-ペンチン酸n-ブチル、2-ペンチン酸イソブチル、2-ペンチン酸-tert-ブチル等の不飽和鎖状カルボン酸エステル;が挙げられる。
【0053】
これらのうち、負極での副反応が少ない点から、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸n-ブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸n-プロピル、吉草酸n-ブチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n-プロピル又はピバル酸n-ブチルが好ましく、電解液粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル又はプロピオン酸n-ブチルがより好ましく、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルが更に好ましく、酢酸メチルまたは酢酸エチルが特に好ましい。
【0054】
鎖状カルボン酸エステルを非水系溶媒として用いる場合の含有量は、非水系溶媒100体積%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上であり、また、50体積%以下で含有させることができ、より好ましくは45体積%以下、更に好ましくは40体積%以下である。鎖状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池等のエネルギーデバイスの入出力特性や充放電レート特性を向上させやすくなる。また、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池等のエネルギーデバイスの入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。
【0055】
上記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートと鎖状カルボン酸エステル(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート/鎖状カルボン酸エステルが、通常1/1000以上であり、好ましくは1/100以上、より好ましくは2/100以上、更に好ましくは3/100以上であり、通常100/100以下であり、好ましくは50/100以下、より好ましくは10/100以下、さらに好ましくは9/100以下、特に好ましくは8/100以下、最も好ましくは7/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、電池特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0056】
上記式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートと鎖状カルボン酸エステル(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート/鎖状カルボン酸エステルが、通常1/1000以上であり、好ましくは1/100以上、より好ましくは2/100以上、更に好ましくは3/100以上であり、通常100/100以下であり、好ましくは50/100以下、より好ましくは10/100以下、さらに好ましくは9/100以下、特に好ましくは8/100以下、最も好ましくは7/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0057】
尚、鎖状カルボン酸エステルを非水系溶媒として用いる場合は、好ましくは環状カーボネートとの併用であり、更に好ましくは環状カーボネートと鎖状カーボネートとの併用である。電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも更に高い入出力を得ることができ、またエネルギーデバイス、特に電池の膨れを更に低下させることができるからである。
【0058】
<1-3-4.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)
エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、メトキシエトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、メトキシエトキシメタンである。
【0060】
炭素数3~6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
【0061】
エーテル系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系溶媒100体積%中、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が前記好ましい範囲内であれば、リチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性を適正な範囲とすることができる。
【0062】
<1-3-5.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、環状スルホン、鎖状スルホンであっても特に制限されないが、環状スルホンの場合、通常炭素数が3~6、好ましくは炭素数が3~5であり、鎖状スルホンの場合、通常炭素数が2~6、好ましくは炭素数が2~5である化合物が好ましい。また、スルホン系化合物1分子中のスルホニル基の数は、特に制限されないが、通常1又は2である。
【0063】
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類;等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0064】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0065】
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジフルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチルスルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロメチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フルオロ-3
-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0066】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0067】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-t-ブチルスルホン等が電解液の高温保存安定性が向上する点で好ましい。
【0068】
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が前記範囲内であれば、高温保存安定性に優れた電解液が得られる傾向にある。
【0069】
<1-3-6.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、炭素数が3~12のものが好ましい。
具体的には、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。中でも、γ-ブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来するエネルギーデバイス特性向上の点から特に好ましい。
【0070】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ
及び比率で併用してもよい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、エネルギーデバイスの大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの含有量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、エネルギーデバイスの大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0071】
<1-4.助剤>
非水系電解液において、本実施形態に係る発明の効果を奏する範囲で以下の助剤を含有してもよい。助剤としては、特に限定されず、例えば炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、ホウ酸塩、シュウ酸塩、フルオロスルホン酸塩、芳香族カーボネート等が挙げられる。これらのうち、助剤は、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、フルオロスルホン酸塩並びに芳香族カーボネートから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、ジフルオロリン酸塩、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、フルオロスルホン酸塩及び芳香族カーボネートから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、これらを併用することがさらに好ましい。或いは、助剤は、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及びフッ素含有環状カーボネートから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、これらを併用することがより好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。以下、具体的な助剤について説明する。
【0072】
<1-4-1.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート>
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」ともいう)としては、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はない。芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0073】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。中でもビニレンカーボネート類、または芳香環もしくは炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類が好ましい。
【0074】
不飽和環状カーボネートの具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート類;
ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-
ジフェニルエチレンカーボネート、4-フェニル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート等の芳香環もしくは炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類;
等が挙げられる。中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートは更に安定な界面保護被膜を形成するので好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましく、ビニレンカーボネートがさらに好ましい。
【0075】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。不飽和環状カーボネートの含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、5質量%以下であることができ、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。不飽和環状カーボネートの含有量がこの範囲内であれば、非水系電解液電池等のエネルギーデバイスが十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0076】
上記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートと不飽和環状カーボネート(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート/不飽和環状カーボネートが、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0077】
上記式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートと不飽和環状カーボネート(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート/不飽和環状カーボネートが、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0078】
非水系電解液中においてLiPFを有する場合において、LiPFの含有量に対する不飽和環状カーボネートの総含有量の質量比は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、エネルギーデバイス系内でのLiPFの分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0079】
<1-4-2.モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩>
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、それぞれ、分子内に少なくとも1つのモノフルオロリン酸又はジフルオロリン酸構造を有する塩であれば、特に制限されない。本実施形態の非水系電解液において、上記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート及び式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートとモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上とを併用することにより、この電解液を用いたエネルギーデバイスにおいて、耐久特性を改善することができる。
【0080】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、NR121122123124(式中、R121~R124は、独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。上記アンモニウムのR121~R124で表わされる炭素数1以上12以下の有機基は特に制限されず、例えば、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR121~R124は、独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0081】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが好ましく、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0082】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。フルオロリン酸塩の含有量がこの範囲内であると、非水系電解液をエネルギーデバイスに用いた場合に初期不可逆容量向上の効果が顕著に発現される。
【0083】
上記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートとモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート/モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩が、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0084】
上記式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートとモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩(2種以上の場合
は合計量)の質量比は、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート/モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩が、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0085】
非水系電解液中においてLiPFを有する場合において、LiPFの含有量に対するモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩から選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩の総含有量の質量比は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、エネルギーデバイス系内でのLiPFの分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0086】
<1-4-3.フッ素含有環状カーボネート>
フッ素含有環状カーボネートは、環状のカーボネート構造を有し、かつフッ素原子を含有するものであれば特に制限されない。
フッ素含有環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物(以下、「フッ素化エチレンカーボネート」と記載する場合がある)、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
【0087】
フッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネートが、電解液に高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜を容易に形成しやすい点で好ましい。
【0088】
フッ素含有環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。フッ素含有環状カーボネートの含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、最も好ましくは1.2質量%以上であり
、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。また、フッ素含有環状カーボネートを非水系溶媒として用いる場合の含有量は、非水系溶媒100体積%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは25体積%以下である。
【0089】
上記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートとフッ素含有環状カーボネート(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート/フッ素含有環状カーボネートが、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0090】
上記式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートとフッ素含有環状カーボネート(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート/フッ素含有環状カーボネートから選ばれる1種以上のフルオロリン酸塩が、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比この範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0091】
非水系電解液中においてLiPFを有する場合において、LiPFの含有量に対するフッ素含有環状カーボネートの総含有量の質量比は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、エネルギーデバイス系内でのLiPFの分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0092】
<1-4-4.リチウムイミド塩>
リチウムイミド塩とは、窒素に2つのするスルホニル基が結合した構造(-SOSO-)を有するアニオン又は窒素に2つのホスホリル基が結合した構造(-P(O)NP(O)-)を有するアニオンとリチウムカチオンとの塩であれば、特に限定されない。ただし、本実施形態の非水系電解液が、電解質としてリチウムイミド塩を含有する場合は、助剤としてのリチウムイミド塩は非水電解液には含有しないものとする。また、後述するフルオロスルホン酸塩にも該当するものは、1-4-12.フルオロスルホン酸塩ではなく、1-4-4.リチウムイミド塩に包含されるものとする。
【0093】
リチウムイミド塩としては、例えばリチウムカルボニルイミド塩;リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ノナフルオロブタ
ンスルホニル)イミド等のリチウムスルホニルイミド塩;リチウムビス(ジフルオロホスホニル)イミド等のリチウムホスホニルイミド塩等を挙げられる。中でも、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドが、正極での副反応が少ない点でより好ましい。
【0094】
リチウムイミド塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。リチウムイミド塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。リチウムイミド塩の含有量がこの範囲であれば、負極での副反応が少ない。
【0095】
上記式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネートとリチウムイミド塩(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(1)で表されるcis構造を有するジイソシアネート/リチウムイミド塩が、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0096】
上記式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネートとリチウムイミド塩(2種以上の場合は合計量)の質量比は、式(2)で表されるtrans構造を有するジイソシアネート/リチウムイミド塩が、通常1/100以上であり、好ましくは10/100以上、より好ましくは20/100以上、更に好ましくは25/100以上であり、通常10000/100以下であり、好ましくは500/100以下、より好ましくは300/100以下、さらに好ましくは100/100以下、特に好ましくは75/100以下、最も好ましくは50/100以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、電極上での添加剤の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0097】
非水系電解液中においてLiPFを有する場合において、LiPFの含有量に対するリチウムイミド塩の総含有量の質量比は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で混合させることで、エネルギーデバイス系内でのLiPFの分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0098】
なお、非水系電解液が、LiPFに加え、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の助剤を含有する場合、LiPFの含有量に対する前記助剤の総含有量の質量比は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。該質量比がこの範囲であれば、エネルギーデバイス特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理につい
ては定かではないが、この比率で混合させることで、エネルギーデバイス系内でのLiPFの分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0099】
また、非水系電解液が、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、リチウムイミド塩、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の助剤を含有する場合、非水系電解液100質量%中の前記助剤の総含有量は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.6質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。助剤の総含有量がこの範囲であれば、エネルギーデバイス系内での副反応を効率よく抑制できる。
【0100】
<1-4-5.硫黄含有有機化合物>
硫黄含有有機化合物としては、分子内に硫黄原子を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されない。
硫黄含有有機化合物は好ましくは分子内にS=O基を有している有機化合物であり、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステル等が挙げられる。中でも、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルが好ましく、より好ましくはS(=O)基を有する化合物であり、さらに好ましくは鎖状スルホン酸エステル及び環状スルホン酸エステルであり、特に好ましくは環状スルホン酸エステルである。硫黄含有有機化合物を併用した本実施形態の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、耐久特性を改善することができる。
硫黄含有有機化合物の具体例としては、以下を挙げることができる。
【0101】
≪鎖状スルホン酸エステル≫
フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチル等のフルオロスルホン酸エステル;
メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸2-プロピニル、メタンスルホン酸3-ブチニル、ブスルファン、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸3-ブチニル、メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2-プロピニル及びメタンスルホニルオキシ酢酸3-ブチニル等のメタンスルホン酸エステル;
ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル及び1,2-ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン等のアルケニルスルホン酸エステル;
メタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、メタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,2-エタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,2-エタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,2-エタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,2-エタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3-プロパンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-プロパンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-ブタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-ブタン
ジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル等のアルキルジスルホン酸エステル;
【0102】
≪環状スルホン酸エステル≫
1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン及び1,5-ペンタンスルトン等のスルトン化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等の環状ジスルホネート化合物;
【0103】
≪鎖状硫酸エステル≫
ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート及びジエチルスルフェート等のジアルキルスルフェート化合物。
【0104】
≪環状硫酸エステル≫
1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、1,3-ブチレンスルフェート、1,4-ブチレンスルフェート、1,2-ペンチレンスルフェート、1,3-ペンチレンスルフェート、1,4-ペンチレンスルフェート及び1,5-ペンチレンスルフェート等のアルキレンスルフェート化合物。
【0105】
≪鎖状亜硫酸エステル≫
ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト及びジエチルスルファイト等のジアルキルスルファイト化合物。
【0106】
≪環状亜硫酸エステル≫
1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、1,3-ブチレンスルファイト、1,4-ブチレンスルファイト、1,2-ペンチレンスルファイト、1,3-ペンチレンスルファイト、1,4-ペンチレンスルファイト及び1,5-ペンチレンスルファイト等のアルキレンスルファイト化合物。
【0107】
これらのうち、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル、1,3-プロパンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,2-エチレンスルフェート、1,2-エチレンスルファイト、メタンスルホン酸メチル及びメタンスルホン酸エチルがエネルギーデバイスの初期効率向上の点から好ましく、プロパンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニル
エチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル、1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、1,2-エチレンスルフェート、1,2-エチレンスルファイトがより好ましく、1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトンが更に好ましい。
【0108】
硫黄含有有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。硫黄含有有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.6質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下、最も好ましくは1.0質量%以下である。硫黄含有有機化合物の含有量がこの範囲にあると、エネルギーデバイスの出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0109】
<1-4-6.リン含有有機化合物>
リン含有有機化合物としては、分子内に少なくとも一つリン原子を有している有機化合物であれば、特に制限されない。リン含有有機化合物を併用した本実施形態の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、耐久特性を改善することができる。
リン含有有機化合物としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、亜リン酸エステルが好ましく、より好ましくはリン酸エステル及びホスホン酸エステルであり、更に好ましくはホスホン酸エステルである。
リン含有有機化合物としては、以下を挙げることができる。
【0110】
≪リン酸エステル≫
ジメチルビニルホスフェート、ジエチルビニルホスフェート、ジプロピルビニルホスフェート、ジブチルビニルホスフェート、ジペンチルビニルホスフェート、メチルジビニルホスフェート、エチルジビニルホスフェート、プロピルジビニルホスフェート、ブチルジビニルホスフェート、ペンチルジビニルホスフェート及びトリビニルホスフェート等のビニル基を有する化合物;
【0111】
アリルジメチルホスフェート、アリルジエチルホスフェート、アリルジプロピルホスフェート、アリルジブチルホスフェート、アリルジペンチルホスフェート、ジアリルメチルホスフェート、ジアリルエチルホスフェート、ジアリルプロピルホスフェート、ジアリルブチルホスフェート、ジアリルペンチルホスフェート及びトリアリルホスフェート等のアリル基を有する化合物;
【0112】
プロパルギルジメチルホスフェート、プロパルギルジエチルホスフェート、プロパルギルジプロピルホスフェート、プロパルギルジブチルホスフェート、プロパルギルジペンチルホスフェート、ジプロパルギルメチルホスフェート、ジプロパルギルエチルホスフェート、ジプロパルギルプロピルホスフェート、ジプロパルギルブチルホスフェート、ジプロパルギルペンチルホスフェート及びトリプロパルギルホスフェート等のプロパルギル基を有する化合物;
【0113】
2-アクリロイルオキシメチルジメチルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチルジエチルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチルジプロピルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチルジブチルホスフェート、2-アクリロイルオキシメチルジペンチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)メチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)エチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)プロピルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)ブチルホスフェート
、ビス(2-アクリロイルオキシメチル)ペンチルホスフェート及びトリス(2-アクリロイルオキシメチル)ホスフェートの2-アクリロイルオキシメチル基を有する化合物;
【0114】
2-アクリロイルオキシエチルジメチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルジエチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルジプロピルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルジブチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルジペンチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチル)メチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチル)エチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチル)プロピルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチル)ブチルホスフェート及びビス(2-アクリロイルオキシエチル)ペンチルホスフェート及びトリス(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート
【0115】
≪ホスホン酸エステル≫
トリメチル ホスホノフォルメート、メチル ジエチルホスホノフォルメート、メチルジプロピルホスホノフォルメート、メチル ジブチルホスホノフォルメート、トリエチルホスホノフォルメート、エチル ジメチルホスホノフォルメート、エチル ジプロピルホスホノフォルメート、エチル ジブチルホスホノフォルメート、トリプロピル ホスホノフォルメート、プロピル ジメチルホスホノフォルメート、プロピル ジエチルホスホノフォルメート、プロピル ジブチルホスホノフォルメート、トリブチル ホスホノフォルメート、ブチル ジメチルホスホノフォルメート、ブチル ジエチルホスホノフォルメート、ブチル ジプロピルホスホノフォルメート、メチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、エチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、プロピル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、ブチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノフォルメート、トリメチル ホスホノアセテート、メチル ジエチルホスホノアセテート、メチル ジプロピルホスホノアセテート、メチル ジブチルホスホノアセテート、トリエチル ホスホノアセテート、エチル ジメチルホスホノアセテート、エチル ジプロピルホスホノアセテート、エチル ジブチルホスホノアセテート、トリプロピル ホスホノアセテート、プロピル ジメチルホスホノアセテート、プロピル ジエチルホスホノアセテート、プロピル
ジブチルホスホノアセテート、トリブチル ホスホノアセテート、ブチル ジメチルホスホノアセテート、ブチル ジエチルホスホノアセテート、ブチル ジプロピルホスホノアセテート、メチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、エチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、プロピル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、ブチル ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノアセテート、アリル ジメチルホスホノアセテート、アリル
ジエチルホスホノアセテート、2-プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2-プロピニル ジエチルホスホノアセテート、トリメチル 3-ホスホノプロピオネート、メチル 3-(ジエチルホスホノ)プロピオネート、メチル 3-(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3-(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリエチル 3-ホスホノプロピオネート、エチル 3-(ジメチルホスホノ)プロピオネート、エチル 3-(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、エチル 3-(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリプロピル 3-ホスホノプロピオネート、プロピル 3-(ジメチルホスホノ)プロピオネート、プロピル 3-(ジエチルホスホノ)プロピオネート、プロピル
3-(ジブチルホスホノ)プロピオネート、トリブチル 3-ホスホノプロピオネート、ブチル 3-(ジメチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3-(ジエチルホスホノ)プロピオネート、ブチル 3-(ジプロピルホスホノ)プロピオネート、メチル 3-(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、エチル 3-(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、プロピル 3-(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、ブチル 3-(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ)プロピオネート、トリメチル 4-ホ
スホノブチレート、メチル 4-(ジエチルホスホノ)ブチレート、メチル 4-(ジプロピルホスホノ)ブチレート、メチル 4-(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリエチル 4-ホスホノブチレート、エチル 4-(ジメチルホスホノ)ブチレート、エチル 4-(ジプロピルホスホノ)ブチレート、エチル 4-(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリプロピル 4-ホスホノブチレート、プロピル 4-(ジメチルホスホノ)ブチレート、プロピル 4-(ジエチルホスホノ)ブチレート、プロピル 4-(ジブチルホスホノ)ブチレート、トリブチル 4-ホスホノブチレート、ブチル 4-(ジメチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4-(ジエチルホスホノ)ブチレート、ブチル 4-(ジプロピルホスホノ)ブチレート等。
【0116】
これらのうち、エネルギーデバイス特性向上の観点から、トリアリルホスフェート及びトリス(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリメチル ホスホノアセテート、トリエチル ホスホノアセテート、2-プロピニル ジメチルホスホノアセテート、2-プロピニル ジエチルホスホノアセテートが好ましい。
リン含有有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。リン含有有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、特に好ましくは0.6質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下、最も好ましくは0.9質量%以下である。リン含有有機化合物の含有量がこの範囲であると、エネルギーデバイスの出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0117】
<1-4-7.シアノ基を有する有機化合物>
シアノ基を有する有機化合物としては、分子内にシアノ基を少なくとも1つ有しているシアノ基を有する有機化合物であれば、特に制限されない。中でも、2つまたは3つのシアノ基を有するシアノ基を有する有機化合物が好ましい。シアノ基を有する有機化合物を含有する本実施形態の非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、耐久特性を改善することができる。
シアノ基を有する有機化合物の具体例としては、以下を挙げることができる。
【0118】
≪1つのシアノ基を有する化合物≫
プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、ペラルゴノニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテン二トリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル及び2-ヘキセンニトリル;
【0119】
≪2つのシアノ基を有する化合物≫
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3,3-トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3-テトラメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジエチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-2,2-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-3,3-ジカルボニトリル、2,5-ジメチル-2,5-
ヘキサンジカルボニトリル、2,3-ジイソブチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジイソブチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,3-ジメチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジジアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル及び3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン;
【0120】
≪3つのシアノ基を有する化合物≫
トリス(2-シアノエチル)アミン、1,2,3-プロパントリカルボニトル、1,2,3-ブタントリカルボニトル、1,2,3-ペンタントリカルボニトル、1,3,4-ペンタントリカルボニトル、1,3,5-ペンタントリカルボニトル、1,3,6-ペンタントリカルボニトル;
【0121】
これらのうち、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル及び3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、フマロニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトルがエネルギーデバイスの高温保存耐久特性向上の点から好ましい。更に、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、グルタロニトリル、3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン及び1,3,5-ペンタントリカルボニトルは、エネルギーデバイスの高温保存耐久特性向上効果が特に優れ、また電極での副反応による劣化が少ないためにより好ましい。
【0122】
シアノ基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。シアノ基を有する有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、特に好ましくは0.6質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.2質量%以下、最も好ましくは0.9質量%以下である。シアノ基を有する有機化合物の含有量がこの範囲であると、エネルギーデバイスの出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0123】
<1-4-8.式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物>
式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する有機化合物であれば、特に制限されないが、イソシアネート基の数は、一分子中、好ましくは1以上4以下、より好ましくは2以上3以下、更に好ましくは2である。本実施形態の非水系電解液に、式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物を含有させることにより、エネルギーデバイスの耐久特性を改善することができる。
【0124】
式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物としては、以下を挙げることができる。
メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ターシャルブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネートヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロパルギルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネート等のイソシアネート基を1個有する有機化合物;
【0125】
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,4-ジイソシアナト-2-ブテン、1,4-ジイソシアナト-2-フルオロブタン、1,4-ジイソシアナト-2,3-ジフルオロブタン、1,5-ジイソシアナト-2-ペンテン、1,5-ジイソシアナト-2-メチルペンタン、1,6-ジイソシアナト-2-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-フルオロヘキサン、1,6-ジイソシアナト-3,4-ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-1,1’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、カルボニルジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン-1,4-ジオン、1,5-ジイソシアナトペンタン-1,5-ジオン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物;等が挙げられる。
【0126】
これらのうち、モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等のイソシアネート基を2個有する有機化合物が保存特性向上の点から好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートがより好ましく、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)が更に好ましい。
【0127】
式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物は
、分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物から誘導される三量体化合物、又はそれに多価アルコールを付加した脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。例えば、以下に示す式(2-6-1)~(2-6-4)の基本構造で示されるビウレット、イソシアヌレート、アダクト及び二官能のタイプの変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0128】
【化5】
【0129】
【化6】
【0130】
【化7】
【0131】
【化8】
【0132】
式(2-6-1)~(2-6-4)中、R及びR’はそれぞれ独立して任意の2価または3価の炭化水素基である(例えば、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基)である。
分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物には、ブロック剤でブロックして保存安定性を高めた、いわゆるブロックイソシアネートも含まれる。ブロック剤には、アルコール類、フェノール類、有機アミン類、オキシム類、ラクタム類を挙げることができ、具体的には、n-ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエチルケトキシム、ε-カプロラクタム等を挙げることができる。
【0133】
式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物に基づく反応を促進し、より高い効果を得る目的で、ジブチルスズジラウレート等のような金属触媒や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7のようなアミン系触媒等を併用することも好ましい。
式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、0.001質量%以上であることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、10質量%以下であることができ、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。式(1)及び式(2)で表される化合物以外のイソシアネート基を有する有機化合物の含有量がこの範囲であれば、エネルギーデバイスの出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0134】
<1-4-9.ケイ素含有化合物>
本実施形態に係る非水系電解液においては、ケイ素含有化合物(以下、単に「ケイ素含有化合物」と表記することがある。)を含むことができる。ケイ素含有化合物としては、分子内に少なくとも1つのケイ素原子を有する化合物であれば、特に制限されない。非水系電解液にケイ素含有化合物を含有させることにより、エネルギーデバイスの耐久特性を改善することができる。
【0135】
ケイ素含有化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、ホウ酸トリス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(トリエトキシシリル)、ホウ酸トリス(ジメチルビニルシリル)及びホウ酸トリス(ジエチルビニルシリル)等のホウ酸化合物;
リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(トリプロピルシリル)、リン酸トリス(トリフェニルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(トリエトキシシリル)、リン酸トリス(トリフエノキシシリル)、リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)及びリン酸トリス(ジエチルビニルシリル)等のリン酸化合物;
【0136】
亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリエチルシリル)、亜リン酸トリス(トリプロピルシリル)、亜リン酸トリス(トリフェニルシリル)、亜リン酸トリス(トリメトキシシリル)、亜リン酸トリス(トリエトキシシリル)、亜リン酸トリス(トリフエノキシシリル)、亜リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)及び亜リン酸トリス(ジエチルビニルシリル)等の亜リン酸化合物;
メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のスルホン酸化合物;
ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,1,2,2-テトラエチルジシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルジシラン及び1,1,2,2-テトラフェニルジシラン等のジシラン化合物;
等が挙げられる。
【0137】
これらのうち、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルジシラン及び1,1,2,2-テトラフェニルジシランが好ましく、ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリメチルシリル)及びヘキサメチルジシランがより好ましい。
【0138】
ケイ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ケイ素含有化合物の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましく
は5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。ケイ素含有化合物の含有量がこの範囲であれば、エネルギーデバイスの出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0139】
<1-4-10.ホウ酸塩>
本実施形態において、ホウ酸塩は、分子内にホウ素原子を少なくとも1つ有している塩であれば、特に制限されない。ただしシュウ酸塩に該当するものは、1-4-10.ホウ酸塩ではなく、後述する1-4-11.シュウ酸塩に包含されるものとする。本実施形態の非水系電解液において、式(1)または式(2)表される化合物とホウ酸塩とを併用することによって、この電解液を用いたエネルギーデバイスにおいて、耐久特性を改善することができる。
【0140】
ホウ酸塩におけるカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ルビジウム、セシウム、バリウム等が挙げられ、中でもリチウムが好ましい。
ホウ酸塩としては、リチウム塩が好ましく、含ホウ酸リチウム塩も好適に使用することができる。例えばLiBF、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF2(CSO等が挙げられる。中でも、LiBFがエネルギーデバイスの初期充放電効率と高温サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。ホウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0141】
ホウ酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、通常10.0質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、特に好ましくは1.0質量%以下である。ホウ酸塩の含有量がこの範囲内であると、エネルギーデバイスの負極の副反応が抑制され抵抗を上昇させにくい。
【0142】
<1-4-11.シュウ酸塩>
本実施形態において、シュウ酸塩は、分子内に少なくとも1つのシュウ酸構造を有する化合物であれば、特に制限されない。本実施形態の非水系電解液において、式(1)または式(2)表される化合物とシュウ酸塩とを併用することによって、この電解液を用いたエネルギーデバイスにおいて、耐久特性を改善することができる。
シュウ酸塩としては、以下に示す式(9)で表される金属塩が好ましい。この塩は、オキサラト錯体をアニオンとする塩である。
【0143】
【化9】
【0144】
(式中、Mは、周期表における1族、2族及びアルミニウム(Al)からなる群より選ばれる元素であり、Mは、遷移金属、周期表の13族、14族及び15族からなる群より選ばれる元素であり、R91は、ハロゲン、炭素数1以上11以下のアルキル基及び炭素数1以上11以下のハロゲン置換アルキル基からなる群より選ばれる基であり、a及びbは正の整数であり、cは0又は正の整数であり、dは1~3の整数である。)
は、本実施形態の非水系電解液をリチウム二次電池等のエネルギーデバイスに用い
たときのエネルギーデバイス特性の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。
【0145】
は、リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ等のリチウム系エネルギーデバイスに用いる場合の電気化学的安定性の点で、ホウ素及びリンが特に好ましい。
91としては、フッ素、塩素、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、ペンタフルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、フッ素、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0146】
式(9)で表される金属塩としては、以下が挙げられる。
リチウムジフルオロオキサラトボレート及びリチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等のリチウムオキサラトホスフェート塩類;
これらのうち、リチウムビス(オキサラト)ボレート及びリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートが好ましく、リチウムビス(オキサラト)ボレートがより好ましい。
【0147】
シュウ酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シュウ酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。シュウ酸塩の含有量がこの範囲にあると、エネルギーデバイスの出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等を制御しやすい。
【0148】
<1-4-12.フルオロスルホン酸塩>
本実施形態におけるフルオロスルホン酸塩としては、分子内に少なくとも1つのフルオロスルホン酸構造を有している塩であれば、特に制限されない。本実施形態の非水系電解液において、上記式(1)または式(2)表される化合物とフルオロスルホン酸塩とを併用することにより、この電解液を用いたエネルギーデバイスにおいて、耐久特性を改善することができる。
【0149】
フルオロスルホン酸塩におけるカウンターカチオンは、特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び、NR131132133134(式中、R131~R134は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上12以下の有機基である)で表されるアンモニウム等が挙げられる。上記アンモニウムのR131~R134で表わされる炭素数1以上12以下の有機基は特に制限されず、例えば、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR131~R134は、独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、中でもリチウムが好ましい。
【0150】
フルオロスルホン酸塩としては、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスル
ホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホン酸構造を有するイミド塩もフルオロスルホン酸塩として使用することができる。
【0151】
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フルオロスルホン酸塩の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液100質量%中、通常0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。フルオロスルホン酸塩の含有量がこの範囲内であると、エネルギーデバイス中での副反応が生じにくく、抵抗を上昇させにくい。
【0152】
<1-4-13.その他の助剤>
本発明の一実施形態に係る非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート、メトキシエチル-メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチル-3-フェニルインダン等の芳香族化合物;
2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;
2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等;
3-プロピルフェニルアセテート、2-エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート等の芳香族アセテート類;
ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の芳香族カーボネート類;
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;
3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;
亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド等の含燐化合物;
1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
【0153】
ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート、リチウム エチル メチルオキシカル
ボニルホスホネート、リチウム エチル エチルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル 2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル 1-メチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム エチル 1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム メチル スルフェート、リチウム エチル スルフェート、リチウム 2-プロピニル スルフェート、リチウム 1-メチル-2-プロピニル スルフェート、リチウム 1,1-ジメチル-2-プロピニル スルフェート、リチウム 2,2,2-トリフルオロエチル スルフェート、メチル トリメチルシリル スルフェート、エチル トリメチルシリル スルフェート、2-プロピニル トリメチルシリル スルフェート、ジリチウム エチレン ジスルフェート、2-ブチン-1,4-ジイル ジメタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル ジエタンスルホネート、2-ブチン-1,4-ジイル ジホルメート、2-ブチン-1,4-ジイル ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジイル ジプロピオネート、4-ヘキサジイン-1,6-ジイル ジメタンスルホネート、2-プロピニル メタンスルホネート、1-メチル-2-プロピニル メタンスルホネート、1,1-ジメチル-2-プロピニル メタンスルホネート、2-プロピニル エタンスルホネート、2-プロピニル
ビニルスルホネート、メチル 2-プロピニル カーボネート、エチル 2-プロピニル カーボネート、ビス(2-プロピニル) カーボネート、メチル 2-プロピニル オギザレート、エチル 2-プロピニル オギザレート、ビス(2-プロピニル)オギザレート、2-プロピニル アセテート、2-プロピニル ホルメート、2-プロピニル メタクリレート、ジ(2-プロピニル) グルタレート、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル アセテート、2,2-ジオキシド-1,2-オキサチオラン-4-イル プロピオネート、5-メチル-1,2-オキサチオラン-4-オン 2,2-ジオキシド、5、5-ジメチル-1,2-オキサチオラン-4-オン 2,2-ジオキシド、2-イソシアナトエチル アクリレート、2-イソシアナトエチル メタクリレート、2-イソシアナトエチル クロトネート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチル
アクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチル メタクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチル クロトネート、2-アリル無水こはく酸、2-(1-ペンテン-3-イル)無水こはく酸、2-(1-ヘキセン-3-イル)無水こはく酸、2-(1-ヘプテン-3-イル)無水こはく酸、2-(1-オクテン-3-イル)無水こはく酸、2-(1-ノネン-3-イル)無水こはく酸、2-(3-ブテン-2-イル)無水こはく酸、2-(2-メチルアリル)無水こはく酸、2-(3-メチル-3-ブテン-2-イル)無水こはく酸;等が挙げられる。
【0154】
これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、エネルギーデバイスの高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0155】
その他の助剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。その他の助剤の含有量がこの範囲であれば、その他の助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等のエネルギーデバイスの特性が低下するといった事態も回避しやすい。その他の助剤の含有量は、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0156】
<1-5.非水系電解液の製造方法>
非水系電解液は、前述の非水系溶媒に、電解質と、特定のジイソシアネート化合物と、必要に応じて前述の「助剤」などを溶解することにより調製することができる。
【0157】
非水系電解液を調製するに際しては、非水系電解液の各原料、すなわち、リチウム塩等
の電解質、特定シラン、非水系溶媒、式(1)及び式(2)で表される化合物、その他添加剤等は、予め脱水しておくことが好ましい。脱水の程度としては、通常50質量ppm以下、好ましくは30質量ppm以下となるまで脱水することが望ましい。
【0158】
非水系電解液中の水分を除去することで、水の電気分解、水とリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解等が生じ難くなる。脱水の手段としては特に制限はないが、例えば、脱水する対象が非水系溶媒等の液体の場合は、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いればよい。また脱水する対象が電解質等の固体の場合は、分解が起きる温度未満で加熱して乾燥させればよい。
【0159】
<2.非水系電解液を用いたエネルギーデバイス>
非水系電解液を用いたエネルギーデバイスは、金属イオンを吸蔵または放出可能な複数の電極と、以上説明した非水系電解液とを備えるものである。エネルギーデバイスの種類としては、一次電池、二次電池、リチウムイオンキャパシタをはじめとする金属イオンキャパシタが具体例として挙げられる。中でも、一次電池または二次電池が好ましく、二次電池が特に好ましい。なお、これらのエネルギーデバイスに用いられる非水系電解液は、高分子やフィラー等で疑似的に固体化された、所謂ゲル電解質であることも好ましい。以下、当該エネルギーデバイスについて説明する。
【0160】
<2-1.非水系電解液二次電池>
<2-1-1.電池構成>
非水系電解液二次電池は、非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0161】
<2-1-2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の非水系電解液を用いる。なお、本実施形態に係る発明の趣旨を逸脱しない範囲において、非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
【0162】
<2-1-3.負極>
負極に使用される負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属化合物系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これら1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
なかでも、炭素質材料及び金属化合物系材料が好ましい。金属化合物系材料の中では、ケイ素を含む材料が好ましく、したがって負極活物質としては、炭素質材料及びケイ素を含む材料が特に好ましい。
また、第一の実施形態と同様の負極とすることも好ましい。
【0163】
<2-1-3-1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、特に限定されないが、下記(ア)~(エ)から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよい二次電池を与えるので好ましい。
(ア)天然黒鉛
(イ)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400℃~3200℃の範囲で1回以上熱処理して得られた炭素質材料
(ウ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ち、
かつ/またはその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(エ)負極活物質層が少なくとも2種類の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち、かつ/またはその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料
(ア)~(エ)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0164】
上記(イ)における人造炭素質物質または人造黒鉛質物質の具体例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの;
ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材;
ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物;
炭化可能な有機物及びこれらの炭化物;並びに、
炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n-へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液状の炭化物;などが挙げられる。
【0165】
その他、上記(ア)~(エ)の炭素質材料はいずれも従来公知であり、その製造方法は当業者によく知られており、またこれらの市販品を購入することもできる。
【0166】
<2-1-3-2.金属化合物系材料>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムと合金化可能な金属が含まれていれば特に限定されず、その形態としては、金属イオン、例えば、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に限定されず、リチウムと合金を形成する単体金属若しくは合金、またはそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物が使用できる。このような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。なかでも、リチウムと合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、周期表13族または14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く。また以降では、金属及び半金属をまとめて「金属」と呼ぶ。)を含む材料であることがより好ましく、更には、ケイ素(Si)、スズ(Sn)または鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「SSP金属元素」という場合がある)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、または、それらの金属(SSP金属元素)の化合物であることが好ましい。最も好ましいのはケイ素である。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0167】
<2-1-3-3.リチウム含有金属複合酸化物材料>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある。)が特に好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、リチウムイオン非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、二次電池の出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0168】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
【0169】
負極活物質として好ましいリチウムチタン複合酸化物としては、下記一般式(2)で表されるリチウムチタン複合酸化物が挙げられる。
LiTi (2)
(一般式(2)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu
、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。また、一般式(2)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。)
【0170】
<2-1-3-4.負極の構成、物性、調製方法>
上記活物質材料を含有する負極及び電極化手法、集電体については、公知の技術構成を採用することができるが、次に示す(I)~(VI)のいずれか1項目または複数の項目を同時に満たしていることが望ましい。
【0171】
(I)負極作製
負極の製造は、本実施形態に係る発明の効果を著しく制限しない限り、公知のいずれの方法をも用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリー状の負極形成材料とし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって、負極活物質層を形成することができる。
【0172】
(II)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔である。
【0173】
(III)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液の注液工程の直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、二次電池の容量が減少する場合がある。
【0174】
(IV)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は、特には限定されず、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がより好ましく、1.3g・cm-3以上が更に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3g・cm-3以下がより好ましく、2.5g・cm-3以下が更に好ましく、1.7g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲内であると、負極活物質粒子が破壊されにくく、二次電池の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を防ぎ易くなる。さらに、負極活物質間の導電性を確保することができ、電池抵抗が増大することなく、単位容積当たりの容量を稼ぐことができる。
【0175】
(V)バインダー・溶媒等
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常、負極活物質に対して、溶媒にバインダー(結着剤)、増粘剤等を混合したものを加えて調製される。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0176】
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物;
EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物;
等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0177】
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0178】
前記水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、前記有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。
なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0179】
負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、8質量部以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であると、電池容量に寄与しないバインダーの割合が多くならないので、電池容量の低下を招き難くなる。さらに、負極の強度低下も招き難くなる。
【0180】
特に、負極形成材料であるスラリーがSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.6質量部以上が更に好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
【0181】
また、スラリーがポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合には、負極活物質100質量部に対するバインダーの割合は、1質量部以上
が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、また、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下が更に好ましい。
【0182】
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0183】
増粘剤を用いる場合、負極活物質100質量部に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましい。また、前記割合は通常5質量部以下であり、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内にあると、スラリーの塗布性が良好となる。さらに、負極活物質層に占める負極活物質の割合も適度なものとなり、電池容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する問題が生じ難くなる。
【0184】
(VI)負極板の面積
負極板の面積は、特に限定されないが、対向する正極板よりもわずかに大きくして、正極板が負極板から外にはみ出すことがないように設計することが好ましい。また、二次電池の充放電を繰り返したときのサイクル寿命や高温保存による劣化を抑制する観点から、できる限り正極に等しい面積に近づけることが、より均一かつ有効に働く電極割合を高めて特性が向上するので好ましい。特に、二次電池が大電流で使用される場合には、この負極板の面積の設計が重要である。
【0185】
<2-1-4.正極>
以下に非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
【0186】
<2-1-4-1.正極活物質>
以下に前記正極に使用される正極活物質について説明する。
【0187】
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが好ましく、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属燐酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
【0188】
前記リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記複合酸化物の具体例としては、LiCoO等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0189】
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiMn1.8Al0.2、Li1.1Mn1.9Al0.1、LiMn1.5Ni0.5等が挙げられる。
中でも、リチウムとニッケルとコバルトを含有する複合酸化物がより好ましい。コバル
トとニッケルを含有する複合酸化物は、同じ電位で使用した際の容量を大きくとることが可能となるためである。
【0190】
一方でコバルトは資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることも望ましい。すなわち、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物が特に好ましい。
【0191】
また、化合物としての安定性や、製造の容易さによる調達コストも鑑みると、スピネル型構造を有するリチウム・マンガン複合酸化物も好ましい。すなわち、上記の具体例のうちLiMn、LiMn1.8Al0.2、Li1.1Mn1.9Al0.1、LiMn1.5Ni0.5等も好ましい具体例として挙げることができる。
【0192】
前記リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記燐酸化合物の具体例としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等の燐酸鉄類、LiCoPO等の燐酸コバルト類、LiMnPO等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
中でも、リチウム鉄燐酸化合物が好ましい、鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であり、かつ有害性も少ないためである。すなわち、上記の具体例のうち、LiFePOをより好ましい具体例として挙げることができる。
【0193】
前記リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ケイ酸化合物の具体例としては、例えば、LiFeSiO等のケイ酸鉄類、LiCoSiO等のケイ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ケイ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0194】
前記リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、前記ホウ酸化合物の具体例としては、例えば、LiFeBO等のホウ酸鉄類、LiCoBO等のホウ酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属ホウ酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0195】
また、非水系電解液二次電池に用いる正極は、組成式(14)で表されるリチウム遷移金属酸化物が使用される。
Lia1Nib1Coc1d1・・・(14)
(式(14)中、0.90≦a1≦1.10、0.50≦b1≦0.98、0.01≦c1<0.50、0.01≦d1<0.50の数値を示し、b1+c1+d1=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0196】
組成式(14)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.80Co0.15Al0.05、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8
Co0.1Mn0.1等が挙げられる。
【0197】
組成式(14)である遷移金属酸化物が下記組成式(15)で示されることが好ましい。アルカリ不純物と一般式(C)で表される化合物が好適に反応し、高温保存時のガス抑制効果がより高まるからである。
Lia2Nib2Coc2d2・・・(15)
(式(15)中、0.90≦a2≦1.10、0.50≦b2≦0.90、0.05≦c2≦0.30、0.05≦d2≦0.30の数値を示し、かつb2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0198】
組成式(14)である遷移金属酸化物が下記組成式(16)で示されることがさらに好ましい。アルカリ不純物と一般式(C)で表される化合物が好適に反応し、高温保存時のガス抑制効果がさらに高まるからである。
Lia3Nib3Coc3d3・・・(16)
(式(16)中、0.90≦a3≦1.10、0.50≦b3≦0.80、0.10≦c3≦0.30、0.10≦d3≦0.30の数値を示し、かつb3+c3+d3=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0199】
組成式(16)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1等が挙げられる。
【0200】
組成式中、MはMn、Alが好ましい。遷移金属酸化物の構造安定性が高まり、繰り返し充放電した際の構造劣化が抑制される。中でも、Mnがさらに好ましい。
【0201】
また、上記の正極活物質のうち2種類以上を混合して使用してもよい。同様に、上記の正極活物質のうち少なくとも1種以上と他の正極活物質とを混合して使用してもよい。他の正極活物質の例としては、上記に挙げられていない遷移金属酸化物、遷移金属燐酸化合物、遷移金属ケイ酸化合物、遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
【0202】
中でも、上述した、スピネル型構造を有するリチウム・マンガン複合酸化物やオリビン型構造を有するリチウム含有遷移金属燐酸化合物が好ましい。
また、リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、上述したものを用いることができる。また、好ましい態様も同様である。
【0203】
(2)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本実施形態に係る発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0204】
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、
それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0205】
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0206】
<2-1-4-2.正極構造と作製法>
以下に、正極の構成及びその作製法について説明する。
【0207】
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子とバインダーとを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法でも作製することができる。例えば、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、またはこれらの材料を液体媒体に溶解または分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
【0208】
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であると、電気容量を十分確保できる。さらに、正極の強度も十分なものとなる。なお、正極活物質粉体は、1種を単独で用いてもよく、異なる組成または異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。2種以上の活物質を組み合わせて用いる際は、前記リチウムとマンガンとを含有する複合酸化物を粉体の成分として用いることが好ましい。前記の通り、コバルトまたはニッケルは、資源量も少なく高価な金属であり、自動車用途等の高容量が必要とされる大型電池では活物質の使用量が大きくなることから、コストの点で好ましくないため、より安価な遷移金属としてマンガンを主成分に用いることが望ましいためである。
【0209】
(導電材)
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料;等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0210】
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。導電材の含有量が上記範囲内であると、導電性を十分確保できる。さらに、電池容量の低下も防ぎやすい。
【0211】
(バインダー)
正極活物質層の製造に用いるバインダーは、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
【0212】
塗布法で正極を作製する場合は、バインダーは電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解または分散される材料であれば特に限定されないが、その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体またはその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;
シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物;等が挙げられる。
なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0213】
正極活物質層中のバインダーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。バインダーの含有量が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持でき、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。さらに、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
【0214】
(液体媒体)
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質、導電材、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解または分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0215】
前記水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。前記有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;
キノリン、ピリジン等の複素環化合物;
アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;
ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;
N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒;
等を挙げることができる。
なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0216】
(増粘剤)
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン
・ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスとを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。
【0217】
増粘剤としては、本実施形態に係る発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0218】
増粘剤を使用する場合には、正極活物質と増粘剤の質量の合計に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。増粘剤の割合が上記範囲内であると、スラリーの塗布性が良好となり、さらに、正極活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、二次電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
【0219】
(圧密化)
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上が更に好ましく、2g・cm-3以上が特に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下が更に好ましく、3g・cm-3以下が特に好ましい。
正極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下することなく、特に二次電池の高電流密度での充放電特性が良好となる。さらに、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
【0220】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料;が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0221】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0222】
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができる。さらに、取り扱い性も良好となる。
【0223】
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、二次電池の高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。さらに、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐことができる。
【0224】
(電極面積)
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく、40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0225】
(放電容量)
非水系電解液を用いる場合、非水系電解液二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ah(アンペアアワー)であり、より好ましくは4Ah以上、また、好ましくは20Ah以下であり、より好ましくは10Ah以下になるように設計する。
上記範囲内であると、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり過ぎず、電力効率の悪化を防ぐことができる。さらに、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
【0226】
(正極板の厚さ)
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0227】
<2-1-5.セパレータ>
非水系電解液二次電池において、正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0228】
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シートまたは不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0229】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アラミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはポリオレフィン、ガラスフィルターであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0230】
上記セパレータの厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、好ましくは50μm以下であり、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータの厚さが、上記範囲
内であると、絶縁性や機械的強度が良好なものとなる。さらに、レート特性等の電池性能の低下を防ぐことができ、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度の低下も防ぐことができる。
【0231】
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、好ましくは20%以上であり、35%以上がより好ましく、45%以上が更に好ましく、また、好ましくは90%以下であり、85%以下がより好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲内であると、膜抵抗が大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の悪化を抑制できる。さらに、セパレータの機械的強度も適度なものとなり、絶縁性の低下も抑制できる。
【0232】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、好ましくは0.5μm以下であり、0.2μm以下がより好ましく、また、好ましくは0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲内であると、短絡が生じ難くなる。さらに、膜抵抗も大きくなり過ぎず、二次電池のレート特性の低下を防ぐことができる。
【0233】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0234】
セパレータの形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状のセパレータでは、平均孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製のバインダーを用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/または負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を使用し、かつフッ素樹脂をバインダーとして使用して多孔層を形成させることが挙げられる。
【0235】
<2-1-6.電池設計>
(電極群)
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、好ましくは40%以上であり、50%以上がより好ましく、また、好ましくは95%以下であり、90%以下がより好ましい。電極群占有率が、上記範囲内であると、電池容量が小さくなり難くなる。また、適度な空隙スペースを確保できるため、電池が高温になることによって部材が膨張したり非水系電解液の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、二次電池としての充放電繰り返し性能や高温保存特性等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合を回避することができる。
【0236】
(集電構造)
集電構造は特に限定されるものではないが、非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0237】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電
極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0238】
(保護素子)
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター、温度ヒューズ、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない電池設計にすることがより好ましい。
【0239】
(外装体)
非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
【0240】
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、または、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、または、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0241】
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0242】
<2-2.非水系電解液一次電池>
正極に金属イオンを吸蔵可能な材料を用い、負極に金属イオンを放出可能な材料を用いる。正極材料としてはフッ化黒鉛、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物が好ましい。負極材料としては亜鉛やリチウムなどの金属単体が好ましい。非水系電解液には、上述の非水系電解液を用いる。
【0243】
<2-3.金属イオンキャパシタ>
正極に電気二重層を形成できる材料を用い、負極に金属イオンを吸蔵・放出可能な材料を用いる。正極材料としては活性炭が好ましい。また負極材料としては、炭素質材料が好ましい。非水系電解液には、上述の非水系電解液を用いる。
【0244】
<2-4.電気二重層キャパシタ>
電極には電気二重層を形成できる材料を用いる。電極材料としては活性炭が好ましい。非水系電解液には、上述の非水系電解液を用いる。
【実施例
【0245】
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要
旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0246】
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
【0247】
【化10】
【0248】
なお、以下の合成例における各種分析方法は以下の通りである。
[ガスクロマトグラフィ(GC)分析]
サンプル100μLを1mLのヘキサンに溶解させた。得られた溶液をGC分析装置(島津製作所製GC-2025)にて分析した。条件は以下の通り。
(測定条件)
カラム:HP1(長さ30m、内径0.53mm、 膜厚2.65μm、ジーエルサイエンス社製)
注入量:1μL
検出器:FID
温度:50℃→280℃、10℃/minで昇温
(解析条件)
ソフトウェア:島津製作所社製GC-solution ver.2.43.00
設定:Width=3、Slope=1000、Drift=0、T.DBL=1000、Min.Area/Height=1000
【0249】
純度は、上記分析条件により解析されたピークのうち溶媒由来のものを除いたピークの合計面積を100%としたときに、cis-およびtrans-1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを合わせたピーク面積の比率として求めた。
cis/trans比は、上記分析条件により解析されたピークのうち、cis-およびtrans-1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、もしくはその原料であるcis-およびtrans-1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのピーク面積の合計値を100としたときの比で表した。いずれかのピークが上記解析条件にて未検出の場合は0とした。
【0250】
<合成例1> 1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比100/0)の合成
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1.00g、cis/trans比100/0)と1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(6.03g)をジクロロメタ
ン(70mL)に溶解させ、0℃で撹拌しながらクロロギ酸トリクロロメチル(1.02mL)を滴下し、30分間撹拌した。反応液をジクロロメタン(140mL)で希釈した後、1N塩酸水溶液(70mL)で5回、1N水酸化ナトリウム水溶液(70mL)で1回、飽和塩化ナトリウム水溶液(140mL)で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下溶媒留去し、目的物(1.23g、収率90%)を取得した。GC分析より見積もられた純度は99.0%、cis/trans比は100/0であった。
【0251】
<合成例2> 1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比18.7/81.3)の合成
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1.00g、cis/trans比20.9/79.1)を原料として用いた以外は合成例1と同様にして1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを合成(1.27g、収率93%)した。GC分析より見積もられた純度は97.4%、cis/trans比は18.7/81.3であった。
【0252】
<合成例3> 1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比75.8/24.2)の合成
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1.0g、cis/trans比74.3/25.7)を原料として用いた以外は合成例1と同様にして1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを合成(1.26g、収率92%)した。GC分析より見積もられた純度は99.0%、cis/trans比は75.8/24.2であった。
【0253】
<実施例1-1、比較例1-1~1-3>
[実施例1-1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(「EC」ともいう)、エチルメチルカーボネート(「EMC」ともいう)及びジエチルカーボネート(「DEC」ともいう)からなる混合溶媒(混合体積比3:4:3)に、電解質であるLiPF、添加剤であるビニレンカーボネート(「VC」ともいう)及びモノフルオロエチレンカーボネート(「MFEC」ともいう)、並びに合成例3で得られた1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比75.8/24.2)を、表1に示す濃度となるよう添加し、実施例1-1の非水系電解液を調製した。
【0254】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量部と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0255】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン・ブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0256】
[リチウム二次電池の作製]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、
セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に、正極と負極の端子が袋から突設するように挿入した後、非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、シート状のリチウム二次電池を作製した。
【0257】
[初期充放電試験]
リチウム二次電池をガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で10時間定電流充電した後、0.2Cで2.8Vまで定電流放電した。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC-CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、60℃、24時間の条件下で放置した。電池を十分に冷却させた後、0.2Cの定電流で2.8Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で2.8Vまで再度放電し、このときの放電容量を初期容量とした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。以下同様である。
【0258】
[高温保存耐久試験]
初期充放電試験を実施したリチウム二次電池を、25℃において、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、60℃、14日間の条件で高温保存を行った。その後、25℃において、0.2Cで2.8Vまで定電流放電させ、次いで、0.2Cで4.3VまでCC-CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で2.8Vまで再度放電し、このときの放電容量を保存後容量とした。
【0259】
上記作製したリチウム二次電池を用いて、上記の初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施した。評価結果を、後述する比較例1-1を100.0%としたときの相対値で表1に示す。以下の比較例1-2及び1-3も同様とする。
【0260】
[比較例1-1]
基本電解液に1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを添加しなかった以外は実施例1-1と同様にして比較例1-1の非水系電解液を調製した。また、電解液として比較例1-1の非水系電解液を用いた以外は実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施した。
【0261】
[比較例1-2]
基本電解液に合成例3で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに代えて合成例1で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比100/0)を添加した以外は実施例1-1と同様にして比較例1-2の非水系電解液を調製した。また、電解液として比較例1-2の非水系電解液を用いた以外は実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施した。
【0262】
[比較例1-3]
基本電解液に合成例3で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに代えて合成例2で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比18.7/81.3)を添加した以外は実施例1-1と同様にして比較例1-3の非水系電解液を調製した。また、電解液として比較例1-2の非水系電解液を用いた以外は実施例1-1と同様にしてリチウム二次電池を作製し、初期充放電試験及び高温保存耐久試験を実施した。
【0263】
【表1】
【0264】
表1から、実施例1-1の非水系電解液を用いると、化合物(1)及び化合物(2)がいずれも添加されていない場合(比較例1-1)に比べ、リチウム二次電池の初期容量が向上し、さらに保存後容量低下が抑制されることがわかった。一方、化合物(1)のみを含む非水系電解液の場合(比較例1-2)、リチウム二次電池の初期容量は向上するが、保存後容量低下の抑制が不十分となった。また、化合物(1)及び化合物(2)の両方を含有している場合でも、これらの比率が本発明の特定の比率でない非水系電解液の場合(比較例1-3)も同様に、リチウム二次電池の初期容量は向上したが、保存後容量低下の抑制は不十分となった。よって、本発明の一実施形態にかかる非水系電解液を用いたリチウム二次電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0265】
<実施例2-1、比較例2-1~2-3、参考例2-1>
[実施例2-1]
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、EMC、ジメチルカーボネート(「DMC」ともいう)及び酢酸メチルからなる混合溶媒(混合体積比20:10:60:10)に、電解質であるLiPF;添加剤であるビニレンカーボネート(「VC」ともいう)、モノフルオロエチレンカーボネート(「MFEC」ともいう)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、メチルフェニルカーボネート(「MPC」ともいう)、フルオロスルホン酸リチウム(LiFSO)及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li(FSON);並びに合成例3で得られた1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比75.8/24.2)を、表2に示す濃度となるよう添加し、実施例2-1の非水系電解液を調製した。
【0266】
[正極の作製]
正極活物質としてLiNi0.8Co0.15Al0.05を97質量部と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスした。その後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて非水系電解液電池(コイン型)用の正極とした。
【0267】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、結着材としてスチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン・ブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。その後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて非水系電解液電池(コイン型)用の負極とした。
【0268】
[非水系電解液電池(コイン型)の作製]
上記の正極及び負極と、各実施例及び比較例で調製した非水系電解液とを用いて、以下の手順でコイン型セルを作製した。即ち、正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に正極を収容し、その上に後述の電解液を含浸させたポリプロピレン製のセパレータを介して負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封し、非水系電解液電池(コイン型)を作製した。
【0269】
[初期充放電試験]
非水系電解液電池(コイン型)を25℃において、0.05Cに相当する電流で4時間定電流充電した後、0.2Cで2.5Vまで定電流放電した。更に、0.1Cに相当する電流で4.1Vまで定電流充電した後、0.2Cで2.5Vまで定電流放電した。更に、0.1Cに相当する電流で4.1Vまで定電流充電した後、0.2Cで2.5Vまで定電流放電し、このときの放電容量を初期容量とした。
上記作製した非水系電解液電池(コイン型)を用いて、上記の初期充放電試験を実施した。評価結果を、後述する比較例2-1を100%としたときの相対値で表2に示す。以下の比較例2-1~2-3、参考例2-1も同様とする。
【0270】
[比較例2-1]
基本電解液に1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを添加しなかった以外は実施例2-1と同様にして比較例2-1の非水系電解液を調製した。また、電解液として比較例2-1の非水系電解液を用いた以外は実施例2-1と同様にして非水系電解液電池(コイン型)を作製し、初期充放電試験を実施した。
【0271】
[比較例2-2]
基本電解液に合成例3で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに代えて合成例1で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比100/0)を添加した以外は実施例2-1と同様にして比較例2-2の非水系電解液を調製した。また、電解液として比較例2-2の非水系電解液を用いた以外は実施例2-1と同様にして非水系電解液電池(コイン型)を作製し、初期充放電試験を実施した。
【0272】
[比較例2-3]
基本電解液に合成例3で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに代えて合成例2で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis/trans比18.7/81.3)を添加した以外は実施例2-1と同様にして比較例2-3の非水系電解液を調製した。また、電解液として比較例2-3の非水系電解液を用いた以外は実施例2-1と同様にして非水系電解液電池(コイン型)を作製し、初期充放電試験を実施した。
【0273】
[参考例2-1]
基本電解液に合成例3で得た1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンに代えてヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」ともいう)を添加した以外は実施例2-1と同様にして参考例2-1の非水系電解液を調製した。また、電解液として参考例2-1の非水系電解液を用いた以外は実施例2-1と同様にして非水系電解液電池(コイン型)を作製し、初期充放電試験を実施した。
【0274】
【表2】
【0275】
表2から、実施例2-1の非水系電解液を用いると、化合物(1)及び化合物(2)がいずれも添加されていない非水系電解液(比較例2-1)に比べ、非水系電解液電池の初期容量が向上することがわかった。一方、化合物(1)のみを含む非水系電解液の場合(比較例2-2)、非水系電解液電池の初期容量が低下した。また、化合物(1)及び化合物(2)の両方を含有している場合でも、これらの比率が本発明の特定の比率でない非水系電解液の場合(比較例2-3)も同様に、非水系電解液電池の初期容量は低下した。また、化合物(1)及び化合物(2)に代えてその他イソシアネート化合物を用いた場合(参考例2-1)、初期容量が低下した。よって、本実施形態に係る非水系電解液を用いた非水系電解液電池の方が優れた特性であることは明らかである。
【0276】
なお、以上の表1および表2において示した実施例・比較例においては、各種耐久試験期間はモデル的に比較的短期間として行なっているが、有意な差が確認されている。実際の非水系電解液二次電池の使用は数年に及ぶ場合もあるため、これら結果の差は長期間の使用を想定した場合、更に顕著な差になると理解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本発明に係る非水系電解液をエネルギーデバイスの電解液として用いることにより、エネルギーデバイスの初期容量が向上し、かつ、高温耐久保存後の容量低下も抑制される。従って、本発明に係る非水系電解液はエネルギーデバイスが用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。
また、本発明に係る非水系電解液及びこれを用いたエネルギーデバイスは、エネルギーデバイスを用いる公知の各種用途に用いることが可能である。用途の具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、携帯オーディオプレーヤー、小型ビデオカメラ、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。