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特許7300384ポリウレタンホットメルト接着剤、それを用いた積層体及び積層体の製造方法
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  • 特許-ポリウレタンホットメルト接着剤、それを用いた積層体及び積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ポリウレタンホットメルト接着剤、それを用いた積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230622BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230622BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20230622BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20230622BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230622BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230622BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20230622BHJP
   B32B 3/14 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J7/35
C09J7/10
C09J175/08
B32B27/00 D
B32B27/40
B32B27/12
B32B3/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019535084
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2018027681
(87)【国際公開番号】W WO2019031231
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2017155665
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】割田 真人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 明久
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 道憲
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103102861(CN,A)
【文献】特開2009-280735(JP,A)
【文献】特表2007-525546(JP,A)
【文献】特開2015-101699(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024917(WO,A1)
【文献】特開2005-126595(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104479618(CN,A)
【文献】特開平11-080678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤とを含む原料の反応物である熱可塑性ポリウレタンを含み、
前記高分子ポリオールは、互いに数平均分子量が1000以上異なる少なくとも2種のポリプロピレングリコールを60質量%以上含有し、
溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度(℃)をX、1.0×105Pa・sになる温度をYとしたときに、X-Y≧15であり、
100%モジュラスが2.5MPa以上であるポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項2】
X-Y≧19である請求項1に記載のポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項3】
X≧135、130≧Yである請求項1または2に記載のポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記少なくとも2種のポリプロピレングリコールの数平均分子量が500~5000の範囲である請求項1~3の何れか1項に記載のポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項5】
100%モジュラスが2.5~6.0MPaである請求項1~4の何れか1項に記載のポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項6】
フィルムである請求項1~5の何れか1項に記載のポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項7】
基材の表面に、請求項1~6の何れか1項に記載のポリウレタンホットメルト接着剤で接着された少なくとも2枚の部材を積層した積層体。
【請求項8】
前記基材は繊維構造体であり、
前記2枚の部材は、互いに織編構造が異なる繊維構造体である請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
基材の表面に、接着剤を介して、織編構造が互いに異なる少なくとも2枚の繊維構造体を配した積重体を形成する工程と、
前記積重体を熱プレスして積層体を形成する工程と、を備え、
前記接着剤が請求項1~7の何れか1項に記載のポリウレタンホットメルト接着剤である積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンホットメルト接着剤、それを用いて2枚の部材を接着した積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンホットメルト接着剤は、熱プレスによりシート部材同士を接着するために用いられている。従来、ポリウレタンホットメルト接着剤は、所定の温度に達すれば速やかに溶融し、所定の温度以下になれば速やかに固化するように、溶融粘度の温度依存性が高くなるように設計されていた。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、溶融粘度挙動が温度に対して敏感であり、低温時の柔軟性に優れ、さらに、風合い、耐薬品性、ドライクリーニング性、耐熱性、接着強力が良好な熱接着性ポリウレタンフィルムを開示する。具体的には、特許文献1は、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、高分子ジオール、及び鎖伸長剤を反応させて得られる熱可塑性ポリウレタンを主成分とする熱接着性ポリウレタンフィルムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-97560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、良好に接着するために選択できる温度幅が広く、且つ、高い接着性を維持しながら接着剤層のしなやかさを維持することができるポリウレタンホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、高分子ポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤とを含む原料の反応物である熱可塑性ポリウレタンを含み、高分子ポリオールは、互いに数平均分子量が1000以上異なる少なくとも2種のポリプロピレングリコールを60質量%以上含有し、溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度(℃)をX、1.0×105Pa・sになる温度をYとしたときに、X-Y≧15、好ましくはX-Y≧19であり、100%モジュラスが2.5MPa以上であるポリウレタンホットメルト接着剤である。このようなポリウレタンホットメルト接着剤は良好に接着するために選択できる温度幅が広い。そのために、例えば、基材の表面にポリウレタンホットメルト接着剤を介在させて熱伝導性の異なる複数の部材を配置して熱プレスして接着する場合、各部材を接着する各ポリウレタンホットメルト接着剤に温度差が生じても、各ポリウレタンホットメルト接着剤に大きな溶融粘度の差が生じない。その結果、例えば、熱伝導性の異なる複数の部材を基材に接着する際に、各ポリウレタンホットメルト接着剤は基材に浸透しやすくなる。また、接着後は、高い接着性を維持できる。
【0007】
また、高分子ポリオールは、数平均分子量が1000以上異なる少なくとも2種の高分子ポリオールを含有することにより、X-Y≧15を示すポリウレタンホットメルト接着剤が得られやすくなる。
【0008】
また、高分子ポリオールが、互いに数平均分子量が1000以上異なる少なくとも2種のポリプロピレングリコールを60質量%以上含有することにより、高い耐加水分解性及びポリエーテルポリウレタンに対する高い接着性を有するポリウレタンホットメルト接着剤が得られる。
【0009】
また、ポリウレタンホットメルト接着剤は100%モジュラスが2.5~6.0MPaである場合には、高い接着性を維持しながら接着剤層のしなやかさを維持することができる点から好ましい。
【0010】
また、ポリウレタンホットメルト接着剤はフィルムであることが、作業性に優れる点から好ましい。
【0011】
また、本発明の他の一局面は、基材の表面に、上記何れかのポリウレタンホットメルト接着剤で接着された少なくとも2枚の部材を積層した積層体である。このような積層体は、部材間の熱伝導性に差がある場合でも、各部材の接着性を充分に維持させることができる。とくに、基材が繊維構造体であり、2枚の部材が、互いに織編構造が異なる繊維構造体である場合に、各部材の接着性を充分に維持させることができる。
【0012】
また、本発明の他の一局面は、基材の表面に、接着剤を介して、織編構造が互いに異なる少なくとも2枚の繊維構造体を配した積重体を形成する工程と、積重体を熱プレスして積層体を形成する工程と、を備え、接着剤が上述した何れかのポリウレタンホットメルト接着剤である積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好に接着するために選択できる温度幅が広く、また、高い接着性も維持することができるポリウレタンホットメルト接着剤が得られる。このようなポリウレタンホットメルト接着剤によれば、例えば、基材の表面に熱伝導性の異なる複数の部材を配置して熱プレスにより接着する場合に、各部材を接着するポリウレタンホットメルト接着剤が基材に浸透しやすくなる。また、接着後は、高い接着性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤のフィルム10を用いて、メッシュ編物である基材1の表面に、互いに織編構造の異なる部材2、部材3、部材4、部材5を接着して積層体20を製造する工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤は、高分子ポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤とを含む原料の反応物である熱可塑性ポリウレタンを含み、溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度(℃)をX、1.0×105Pa・sになる温度をYとしたときに、X-Y≧15であるポリウレタンホットメルト接着剤である。
【0016】
熱可塑性ポリウレタンは、高分子ポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤とを含む原料をウレタン化反応させる、従来から知られた、熱可塑性ポリウレタンの重合方法により得られる。重合方法としては、塊状重合,溶液重合,水性ディスパージョン重合などが挙げられる。これらの中では、容積反応効率が良い点から塊状重合が好ましい。塊状重合のために、プレポリマー法やワンショット法が用いられる。プレポリマー法は、高分子ポリオールとポリイソシアネートとを適切な反応条件(例えば80℃で4時間反応)で反応させてウレタンプレポリマーを製造し、ウレタンプレポリマーに鎖伸長剤を加えてポリウレタンを重合する方法である。また、ワンショット法は、高分子ポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤とを同時に加えて重合させる方法である。これらの中では、工業的生産性や分子量分布の広い熱可塑性ポリウレタンが得られやすい点からワンショット法がとくに好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリウレタンは、分岐構造を形成させない2官能性の高分子ポリオール(高分子ジオール)と2官能性のポリイソシアネート(ジイソシアネート)と鎖伸長剤とを含む原料を反応させて得られるポリウレタンである。なお、熱可塑性を損なわない限り、必要に応じて、3官能以上の化合物を含ませてもよい。
【0018】
高分子ポリオールとは数平均分子量200以上のポリオールであり、ポリエーテルポリオールやポリカーボネートポリオールやポリエステルポリオール等がとくに限定なく用いられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリブチレングリコール,ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ポリエーテルジオールが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、ポリエステルポリオールとしては、低分子量ジオールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリオールが挙げられる。
【0022】
低分子量ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール,ブタンジオール,1,2-プロピレングリコール,1,3-プロピレングリコール,1,3-ブチレングリコール,1,4-ブチレングリコール,2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール,1,6-ヘキサンジオール,3-メチル-1,5-ペンタンジオール,1,8-オクタンジオール,1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,3-ビス(ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコール,シクロヘキサン-1,4-ジオール,シクロヘキサン-1,4-ジメタノール,グリセリン,トリメチロールプロパン,トリメチロールエタン,ヘキサントリオール,ペンタエリスリトール,ソルビトール,メチルグリコシド等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、ジカルボン酸の具体例としては、アジピン酸,セバシン酸,イタコン酸,無水マレイン酸,テレフタル酸,イソフタル酸等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
なお、一般的なポリウレタンホットメルト接着剤としては、コストと接着性とのバランスを考慮してポリエステルポリウレタンが多用されていた。しかし、ポリエステルポリウレタンは耐加水分解性が低く、形成される接着剤層が経時的に加水分解して劣化しやすい傾向がある。
【0025】
さらに、人工皮革や合成皮革の銀面層や表面コート層を形成するために、環境負荷の低い水系エマルジョン型ポリウレタンが多用されている。銀面層や表面コート層には高い耐加水分解性が求められる。そのために、水系エマルジョン型ポリウレタンとして、耐加水分解性の高いポリエーテルポリオールをポリオール成分として用いたポリエーテルポリウレタンが多用されている。ポリエーテルポリウレタンの表面に、ポリエステルポリウレタンホットメルト接着剤で部材を接着する場合、相溶性や極性に差があるために接着強力を高く維持しにくい傾向がある。
【0026】
上述した問題を解決する点から、高分子ポリオールは、互いに数平均分子量が1000以上異なる少なくとも2種のポリプロピレングリコールの含有割合が60質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、とくには90質量%以上、ことには100質量%である。このようなポリプロピレングリコールを60質量%以上含有する高分子ポリオールを用いることにより、耐加水分解性に優れ、ポリエーテルポリウレタンに対する接着性にも優れる熱可塑性ポリウレタンが得られる。
【0027】
高分子ポリオールの数平均分子量としては、500~5000、さらには600~4500、とくには700~4000であることが、柔軟性と機械的特性とのバランスに優れる熱可塑性ポリウレタンが得られる点から好ましい。
【0028】
また、ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、フェニレンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,ナフタレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート,リジンジイソシアネート,シクロヘキサンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体および3量体等のポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、鎖伸長剤としては、従来からポリウレタンの製造に用いられている、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2つ有する、分子量400以下の低分子化合物が挙げられる。
【0030】
鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびその誘導体,フェニレンジアミン,トリレンジアミン,キシレンジアミン,アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジド,ヘキサメチレンジアミン,4,4’-ジアミノフェニルメタン,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミンなどのジアミン系化合物;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,4-シクロヘキサンジオール,ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート,3-メチル-1,5-ペンタンジオール,シクロヘキサンジオール,キシリレングリコール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,ネオペンチルグリコールなどのジオール系化合物;アミノエチルアルコール,アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、鎖伸長剤に加えて、エチルアミン,n-プロピルアミン,イソプロピルアミン,n-ブチルアミン,イソブチルアミン,t-ブチルアミン,シクロヘキシルアミン等のモノアミノ化合物を併用して分子量を制御したり、ε-アミノカプロン酸(6-アミノヘキサン酸),γ-アミノ酪酸(4-アミノブタン酸),アミノシクロヘキサンカルボン酸,アミノ安息香酸などのアミノカルボン酸を併用して末端にカルボキシル基を導入したりしてもよい。
【0032】
高分子ポリオールと鎖伸長剤とポリイソシアネートとの配合割合としては、ポリイソシアネート中のイソシアネート基と高分子ポリオール及び鎖伸長剤に含まれる活性水素基との当量比であるイソシアネート指数が、0.85~1.1、さらには、0.9~1.0程度であることが好ましい。イソシアネート指数がこのような範囲である場合には、熱可塑性ポリウレタンの融点が適度になることにより加工性に優れ、また、機械的特性が優れることにより接着強力にも優れるポリウレタンホットメルト接着剤が得られやすくなる。
【0033】
熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は特に限定されないが、50,000~300,000、さらには80,000~200,000であることが、適度な溶融粘度が得られやすい点から好ましい。
【0034】
また、熱可塑性ポリウレタンの分子量分布としては、重量平均分子量と数平均分子量の比から算出される多分散度が、1.8~4.5、さらには2.0~4.0、とくには2.5~3.5であることが、溶融粘度の温度依存性が適度になる点から好ましい。
【0035】
ポリウレタンホットメルト接着剤は、上述のような熱可塑性ポリウレタンそのものであっても、また、熱可塑性ポリウレタンを主体とし、必要に応じて、添加剤を配合したものであってもよい。添加剤の具体例としては、例えば、公知のヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系やトリアジン系などの耐光剤、顔料や染料などの着色剤が挙げられる。
【0036】
ポリウレタンホットメルト接着剤は、溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度(℃)をX、1.0×105 Pa・sになる温度をYとしたときに、X-Y≧15であり、好ましくはX-Y≧19、さらに好ましくはX-Y≧20、とくに好ましくはX-Y≧25である。ポリウレタンホットメルト接着剤がこのような溶融粘度特性を有することにより、熱接着に適した、2.0×103Pa・s~1.0×105Pa・sの範囲の溶融粘度を維持するための温度範囲を広くすることができる。そして、ポリウレタンホットメルト接着剤を用いた熱接着の温度条件の選択幅が広がる。なお、X-Yの上限は特に限定されないが、50≧X-Y、さらには40≧X-Yであることが、冷却時の固化速度を制御しやすい点から好ましい。
【0037】
また、溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度X(℃)は特に限定されないが、X≧120、さらには、X≧135であることが好ましい。また、溶融粘度が1.0×105 Pa・sになる温度Y(℃)も特に限定されないが、130≧Y、さらには、125≧Yであることが好ましい。
【0038】
このような溶融粘度特性を有するポリウレタンホットメルト接着剤は、例えば次のように調製することにより得られる。
【0039】
例えば、熱可塑性ポリウレタンの製造に用いられる高分子ポリオールとして、互いに数平均分子量が1000以上、さらには2000以上異なる少なくとも2種の高分子ポリオールを用いることにより、分子量分布が広い、すなわち、多分散度の高い熱可塑性ポリウレタンが得られる。溶融粘度の温度依存性は分子量分布が広いほど、低くなりやすい。また、高分子ポリオールとポリイソシアネートと鎖伸長剤の種類や比率を選択することによりソフトセグメントとハードセグメントとの比率を調整したり、反応温度や反応時間を制御したりすることによっても、溶融粘度特性を制御することができる。さらに、溶融粘度特性の異なる2種以上の熱可塑性ポリウレタンを混合したポリマーアロイの手法によっても実現することができる。
【0040】
ポリウレタンホットメルト接着剤は100%モジュラスが2.5MPa以上である。また、100%モジュラスは2.5~6.0MPa、さらには2.8~5.5MPa、とくには3.0~4.5MPaであることが、接着性としなやかさとのバランスに優れる点から好ましい。100%モジュラスが2.5MPa未満である場合には、ポリウレタンホットメルト接着剤により形成される接着剤層の破壊が起こりやすく、接着強力が不充分になる。また、100%モジュラスが高すぎる場合には、接着剤層が硬くなり、特に、繊維部材のようにしなやかな部材を接着する場合には得られる積層体がしなやかさを失いやすくなる傾向がある。
【0041】
ポリウレタンホットメルト接着剤は、好ましくはフィルムに加工されて用いられる。フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば、20~300μm程度であることが好ましい。
【0042】
本実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤は、とくに、織編構造が異なる繊維構造体からなる複数の部材を、例えば、編物,織物,不織布,スエード調や銀面調の人工皮革,樹脂フィルムのような基材に貼りあわせるときに好ましく用いられる。なお、本実施形態において、織編構造とは、不織布であるか織物であるか編物であるかの絡合構造や、織り方や編み方、目付、見掛け密度、繊維密度、繊度、繊維原料、厚さ等の、部材の熱伝導性に差を生じさせる要素を意味する。織編構造が異なる繊維構造体からなる複数の部材の組み合わせとしては、例えば、不織布と織物、不織布と編物、人工皮革と織物、等のように絡合構造の異なる部材の組み合わせや、目付の高い部材と目付の低い部材の組み合わせ、見掛け密度の高い部材と見掛け密度の低い部材の組み合わせ、等が例示できる。
【0043】
図1は、本実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤のフィルム10を用いて、メッシュ編物である基材1の表面に、互いに織編構造の異なる部材2、部材3、部材4、部材5を接着して積層体20を製造する工程を説明する模式図である。部材2、部材3、部材4、及び部材5は、互いに織編構造が異なる繊維部材であり、織編構造が互いに異なることにより、熱伝導性も異なる。繊維密度の低い順、または熱伝導性の高い順に、部材2,部材3,部材4,及び部材5を選択している。
【0044】
基材の表面にポリウレタンホットメルト接着剤(以下、単に接着剤とも称する)を介して部材を接着する場合、接着剤は部材から伝わる熱により溶融する。熱伝導性の高い部材は、熱伝導性の低い部材よりも速やかに熱を伝えるために接着剤の温度を上げやすい。温度が高い接着剤は温度が低い接着剤よりも低粘度化する。
【0045】
例えば、図1に示すように、メッシュ編物1の表面に、繊維密度が最も低く空隙の多い編物部材(部材2)と、繊維密度が最も高く空隙の少ない不織布部材(部材5)と、その他の部材(部材3,部材4)を接着する場合について説明する。従来の接着剤のフィルムを用いてメッシュ編物である基材1の表面に、各部材を熱プレスして接着する場合、部材2の方が部材5よりも熱伝導性が高いために、部材2を接着する接着剤の温度は速やかに高くなって溶融して低粘度化する。一方、部材5を接着する接着剤の温度は高くなりにくいために充分に溶融しない。その結果、部材2を接着する接着剤は基材1に浸透しやすくなり、接着強力が高くなりやすい。一方、部材5を接着する接着剤は基材1に浸透しにくくなり、接着強力が低くなりやすい。
【0046】
このように、熱伝導性の異なる複数の部材を従来の接着剤で基材に接着する場合、熱伝導性の高い部材(部材2)の接着強力は高くなりやすく、熱伝導性の低い部材(部材5)の接着強力は低くなりやすかった。そのために、複数の部材間の接着強力に差が出たり、接着されない部材が発生することがあった。このような問題を解決するために、熱プレスの温度をコントロールすることも考えられるが、接着剤の溶融粘度の温度依存性が高い場合、コントロールできる温度の幅が小さく、改善が困難であった。
【0047】
一方、上記接着工程において、従来の接着剤の代わりに、溶融粘度の温度依存性の低い本実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを用いた場合、次のような接着を実現することができる。すなわち、本実施形態のポリウレタンホットメルト接着剤は、溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度(℃)をX、1.0×105Pa・sになる温度をYとしたときに、X-Y≧15であり、溶融粘度の温度依存性が低い。そのために、熱プレスで接着する際に、温度によって溶融粘度が大きく変化しにくい。具体的には、上述した例においては、部材2を接着するポリウレタンホットメルト接着剤と部材5を接着するポリウレタンホットメルト接着剤との間に、溶融粘度の差が大きくなりすぎない。すなわち、接着される部材間の熱伝導性の差によるポリウレタンホットメルト接着剤の温度の差の影響が溶融粘度の差に反映されにくい。その結果、熱伝導性の異なる複数の部材を基材に接着する場合に、各部材を接着するポリウレタンホットメルト接着剤を基材に均等に浸透させやすくなる。また、熱プレスの温度条件の選択幅も広くなる。このような繊維構造体の基材の表面に、接着剤を介して、互いに織編構造が異なる少なくとも2枚の繊維部材を配した積重体は、例えば、スニーカーの表皮材の製造等に好ましく用いられる。
【実施例
【0048】
本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定して解釈されるものではない。
【0049】
はじめに、本実施例で用いた評価方法についてまとめて説明する。
【0050】
〈温度X(℃)、温度Y(℃)の評価〉
(株)東洋精機製作所製のキャピログラフ1C(キャピラリーレオメータ)を用いて溶融粘度測定を行った。具体的には、内径9.55mm, 有効長35mmの円筒状のチャンバーの底部に1mmφx10mmのキャピラリーをセットした。そして、所定の温度に加熱したチャンバー内に、粉砕したポリウレタンホットメルト接着剤を所定量充填し、ポリウレタンホットメルト接着剤を溶融させた。そして、チャンバー内にせん断速度6.08/sec~121.6/secの範囲でピストンを進行させ、そのときの応力から溶融粘度を測定した。そして、各温度における溶融粘度のせん断速度依存性のチャートから、各温度においてせん断速度12.1/secのときの溶融粘度が2.0×103Pa・sになる温度(℃)をX、1.0×105 Pa・sになる温度(℃)をYとして特定した。
【0051】
〈ポリウレタンホットメルト接着剤の100%モジュラス〉
幅25mm×長さ15cm×厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを製造した。そして、JIS K7311に準拠した引張試験機(テンシロン オリエンテック(株)製)を用いて、ヘッドスピード:100mm/分の条件でフィルムの100%モジュラスを測定した。
【0052】
〈接着良好温度幅〉
幅25mm×長さ15cmのサイズで、厚さ1.0mm、見掛け密度0.6g/cm3の立毛調人工皮革(スエード調人工皮革)と、同じサイズで厚さ3.0mm、見掛け密度0.3g/cm3のダブルラッセルタイプのメッシュ編物とを準備した。そして、立毛調人工皮革とメッシュ編物との間に、厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを介在させ、80℃~160℃の間で5℃毎の温度にそれぞれ設定した加温平板プレス機を用いて、圧力:6kgf/cm2、加圧時間:60秒間の条件で熱接着した。そして、室温で1日間冷却して積層体を得た。そして、引張試験機(テンシロン オリエンテック(株))を用いて積層体の接着強力を測定した。そして、積層体の接着強力が2.5kg/cm以上となったときの温度の範囲を特定し、その温度幅を接着良好温度幅とした。
【0053】
〈湿熱処理による積層体の接着強力保持率〉
幅25mm×長さ15cmのサイズで、厚さ1.0mm、見掛け密度0.6g/cm3の立毛調人工皮革片同士の間に、厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを介在させた積重体を形成した。そして、前述の〈繊維構造体の接着良好温度幅〉の測定において最高の接着強力を達成したときの温度に設定した加温平板プレス機を用いて、圧力:6kgf/cm2、加圧時間:60秒間の条件で積重体を熱プレスした後、室温で1日間放置して積層体を得た。そして、引張試験機(テンシロン オリエンテック(株))を用いて積層体の接着強力(S)を測定した。また、同様に作成した積層体を、温度70℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽内に3週間放置した。そして、恒温恒湿槽から積層体を取り出し、同様に接着強力(S)を測定した。そして、接着強力の保持率(%)をS/S×100の式から求めた。
【0054】
〈ポリエーテルポリウレタンに対する接着強力〉
幅25mm×長さ15cmのサイズで、厚さ1.0mmの、ポリエーテルポリウレタン(大日精化工業(株)製のレザミン ME-1085EA)のフィルムを銀面層として有した見掛け密度0.5g/cm3の銀付調人工皮革を準備した。そして、その銀付調人工皮革の銀面層同士を、厚さ100μmの各ポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを介在させ、前述の〈繊維構造体の接着良好温度幅〉の測定において最高の剥離強力を達成したときの温度に設定した加温平板プレス機を用いて、圧力:6kgf/cm2、加圧時間:60秒間の条件で熱接着した。そして、室温で1日間冷却させた後、その後、引張試験機を用いて接着強力を測定した。
【0055】
〈ソフトネス(剛軟度)〉
ソフトネステスター(皮革ソフトネス計測装置ST300:英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いて剛軟度を測定した。具体的には、直径25mmの所定のリングを装置の下部ホルダーにセットした後、下部ホルダーに上記〈繊維構造体の接着良好温度幅〉の測定で作成したものと同じ構成の積層体をセットした。そして、上部レバーに固定された金属製のピン(直径5mm)を積層体に向けて押し下げた。そして、上部レバーを押し下げて上部レバーがロックしたときの数値を異なる5カ所で測定し、その平均値を読み取った。なお、数値は侵入深さを表し、数値が大きいほどしなやかであることを表す。
【0056】
[実施例1]
数平均分子量4000のポリプロピレングリコール(以下PPG4000とも称する、水酸基価28mgKOH/g) 40質量部と、数平均分子量1000のポリプロピレングリコール(以下PPG1000とも称する、水酸基価112mgKOH/g) 100質量部と、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIとも称する) 60質量部と鎖伸長剤である1,4-ブタンジオール(以下、1,4-BDとも称する) 12.5質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
[実施例2]
PPG4000 20質量部と、PPG1000 40質量部と、数平均分子量2000のポリエチレンプロピレンアジペート(以下PEPA2000とも称する、水酸基価56mgKOH/g) 40質量部と、MDI 50質量部と、1,4-BD 13.1質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
数平均分子量3000のポリプロピレングリコール(以下PPG3000とも称する、水酸基価37mgKOH/g) 20質量部と、数平均分子量500のポリプロピレングリコール(以下PPG500とも称する、水酸基価223mgKOH/g) 90質量部と、MDI 80質量部と、1,4-BD 12.5質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例4]
数平均分子量2000のポリプロピレングリコール(以下PPG2000とも称する、水酸基価56mgKOH/g)50質量部と、PPG1000 50質量部と、MDI 40質量部と、1,4-BD 10質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例5]
PPG3000 130質量部と、PPG1000 50質量部と、MDI 50質量部と1,4-BD 12質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例6]
PPG2000 20質量部と、PPG500 80質量部と、MDI 80質量部と、1,4-BD 12.5質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例7]
PPG4000 20質量部と、PPG500 30質量部と、MDI 45質量部と、1,4-BD 10質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例8(参考例)]
PPG4000 30質量部と、PPG1000 30質量部と、PEPA2000 60質量部と、MDI 50質量部と、1,4-BD 12.5質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱し、ブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0065】
[実施例9(参考例)]
数平均分子量3000のポリエチレンプロピレンアジペート(PEPA3000と称する、水酸基価37mgKOH/g) 60質量部と、数平均分子量1000のポリエチレンプロピレンアジペート(PEPA1000と称する、水酸基価112mgKOH/g)100質量部と、MDI 55質量部と1,4-BD 11.5質量部を反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例1]
PPG3000 100質量部と、MDI 35質量部と、1,4-BD 9.5質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例2]
PPG3000 160質量部と、PPG1000 40質量部と、MDI 45質量部と、1,4-BD 12質量部とを反応容器に仕込み、140℃で3時間加熱してブロック状の熱可塑性ポリウレタンを得た。そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを粉砕し、Tダイ溶融押出成形法によって厚さ100μmのポリウレタンホットメルト接着剤のフィルムを作成した。そして、得られたポリウレタンホットメルト接着剤を用いて、上記評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0068】
表1の結果から、実施例1~実施例9で得られたポリウレタンホットメルト接着剤は、何れも接着強力が2.5kg以上を維持する温度幅が広かった。また、高分子ポリオール中のポリエーテルポリオールが60質量%以上である実施例1~実施例7で得られたポリウレタンホットメルト接着剤は、耐加水分解性及びポリエーテル系ポリウレタンシートに対する接着性も高かった。一方、X-Yが15未満の比較例1で得られたポリウレタンホットメルト接着剤は、溶融粘度の温度依存性が高いために、接着強力が2.5kg以上を維持する温度幅が狭かった。また、100%モジュラス2.0MPaの比較例2で得られたポリウレタンホットメルト接着剤は、接着剤層が凝集破壊しやすく接着強力が低かった。
【符号の説明】
【0069】
1 基材
2,3,4,5 部材
10 ポリウレタンホットメルト接着剤のフィルム
図1