(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】撥水剤組成物、及び撥水性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20230622BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
C09K3/18 104
D06M15/643
(21)【出願番号】P 2019561615
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2018047085
(87)【国際公開番号】W WO2019131456
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2017247815
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌央
(72)【発明者】
【氏名】前田 高輔
(72)【発明者】
【氏名】柘植 好揮
(72)【発明者】
【氏名】兒島 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 誠司
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-149563(JP,A)
【文献】特開2000-336580(JP,A)
【文献】特表2010-526891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
D06M 13/00 - 15/715
C09D 1/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ変性シリコーンと、シリコーンレジンと、アルキルポリシロキサンとを含有し、
前記アルキルポリシロキサンの配合量が、前記アミノ変性シリコーンの配合量100質量部に対して、
900~6,000質量部であ
り、
前記シリコーンレジンが、構成成分としてMQ、MDQ、MTQ又はMDTQ{M、D、T及びQは、それぞれ(R’’)
3
SiO
0.5
単位、(R’’)
2
SiO単位、R’’SiO
1.5
単位及びSiO
2
単位を表し、R’’は、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6~15の1価の芳香族炭化水素基を表す。}を含み
前記アルキルポリシロキサンが、鎖状オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端が飽和炭化水素基である化合物、並びに環状オルガノポリシロキサンの側鎖が飽和炭化水素基である化合物からなる群より選択される少なくとも一種である、撥水剤組成物。
【請求項2】
前記アミノ変性シリコーンの官能基当量が、100~20,000g/molである、請求項1に記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
衣類用途品用である、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
繊維を、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【請求項5】
前記処理液で処理した前記繊維を110~180℃で熱処理する工程を更に備える、請求項4に記載の撥水性繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水剤組成物、及び撥水性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素基を有するフッ素系撥水剤が知られており、かかるフッ素系撥水剤を繊維製品等に処理することにより、その表面に撥水性が付与された繊維製品が知られている。このようなフッ素系撥水剤は一般にフルオロアルキル基を有する単量体(モノマー)を重合、若しくは共重合させることにより製造される。フッ素系撥水剤で処理された繊維製品は優れた撥水性を発揮するものの、フルオロアルキル基を有する単量体は難分解性であるため、環境面において問題がある。
【0003】
そこで、近年、フッ素を含まない非フッ素系撥水剤について研究が進められている。例えば、下記特許文献1には、エステル部分の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として含む特定の非フッ素系ポリマーからなる撥水剤が提案されている。また、下記特許文献2には、アミノ変性シリコーンと多官能イソシアネート化合物を含有する柔軟撥水性剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-328624号公報
【文献】特開2004-059609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実用の面から、非フッ素系撥水剤に対して、繊維製品の風合いを損なわずに撥水性を更に向上させることが求められている。そのため、上記特許文献1に記載の撥水剤においても改善の必要がある。
【0006】
上記特許文献2に記載のシリコーン系の柔軟撥水性剤は、良好な風合いは得られるものの、十分な撥水性能を得ることが困難であり、初期の撥水性とともに、特に洗濯後にも撥水性を十分維持できる耐久撥水性を得ることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撥水性、耐久撥水性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を得ることができる撥水剤組成物、及びそれを用いた撥水性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、特定のシリコーン化合物とシリコーンレジンとアルキルポリシロキサンとを組み合わせ、特定のシリコーン化合物の配合量とアルキルポリシロキサンの配合量との質量比を調整することにより、高水準の撥水性及び耐久撥水性を示しながらも柔らかな風合いを有する繊維製品が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、アミノ変性シリコーンと、シリコーンレジンと、アルキルポリシロキサンとを含有し、アルキルポリシロキサンの配合量が、アミノ変性シリコーンの配合量100質量部に対して、500~15,000質量部である、第1の撥水剤組成物を提供する。
【0010】
本発明に係る第1の撥水剤組成物によれば、撥水性、耐久撥水性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を得ることができる。また、本発明に係る第1の撥水剤組成物によれば、着用中に縫い目が開く現象を防止する性能である縫目滑脱性にも優れる撥水性繊維製品を得ることができる。このような効果が得られる理由は、上記成分を所定の配合量で組み合わせることにより、繊維の風合いを損なわずに撥水性及び耐久撥水性を向上させることができるとともに、繊維が伸びすぎることや固くなりすぎることも抑制できるためと考えられる。
【0011】
撥水性、耐久性撥水性、風合い及び縫目滑脱性の観点から、上記アミノ変性シリコーンの官能基当量は、100~20,000g/molであってよい。ここで、アミノ変性シリコーンの官能基当量とは、窒素原子1molあたりのアミノ変性シリコーンの分子量を意味する。
【0012】
本発明はまた、水酸基及び/又は炭素数1~3のアルコキシ基を有するジメチルポリシロキサンと、アミノ基含有シランカップリング剤と、シリコーンレジンと、アルキルポリシロキサンとを含有し、アルキルポリシロキサンの配合量が、上記ジメチルポリシロキサン及びアミノ基含有シランカップリング剤の合計配合量100質量部に対して、500~15,000質量部である、第2の撥水剤組成物を提供する。
【0013】
本発明に係る第2の撥水剤組成物によれば、撥水性、耐久撥水性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を実現することができる。また、本発明に係る第2の撥水剤組成物によっても、縫目滑脱性にも優れる撥水性繊維製品を得ることができる。
【0014】
本発明はまた、繊維を、上記本発明に係る第1又は第2の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える、撥水性繊維製品の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の撥水性繊維製品の製造方法によれば、撥水性、耐久撥水性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を安定して製造することができる。また、本発明の方法で製造された撥水性繊維製品は縫目滑脱性に優れたものになり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撥水性、耐久撥水性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を得ることができる撥水剤組成物を提供することができる。また、本発明の撥水剤組成物によれば、繊維製品等に優れた縫目滑脱性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態の撥水剤組成物は、アミノ変性シリコーン(以下、(I)成分という場合もある)及びシリコーンレジン(以下、(II)成分という場合もある)を含む撥水性成分と、アルキルポリシロキサン(以下、(III)成分という場合もある)とを含有する。
【0019】
<アミノ変性シリコーン>
アミノ変性シリコーンとしては、オルガノポリシロキサンの側鎖又は末端にアミノ基及び/又はイミノ基を含む有機基を有する化合物が挙げられる。このような有機基としては、例えば、-R-NH2で表される有機基、及び、-R-NH-R’-NH2で表される有機基が挙げられる。R及びR’としては、エチレン基、プロピレン基等の2価の基が挙げられる。アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部が、封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基であってもよい。封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基は、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を封鎖剤で処理することにより得られる。封鎖剤としては、例えば、炭素数2~22の脂肪酸、炭素数2~22の脂肪酸の酸無水物、炭素数2~22の脂肪酸の酸ハライド、炭素数1~22の脂肪族モノイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
アミノ変性シリコーンの官能基当量は、撥水性、耐久性撥水性、風合い及び縫目滑脱性の観点から、100~20,000g/molが好ましく、150~12,000g/molがより好ましく、200~4,000g/molがより好ましい。
【0021】
アミノ変性シリコーンは25℃で液状であることが好ましい。アミノ変性シリコーンの25℃における動粘度は、10~100,000mm2/sであることが好ましく、10~30,000mm2/sであることがより好ましく、10~5,000mm2/sであることがさらに好ましい。25℃における動粘度が100,000mm2/s以下である場合、作業性及び縫目滑脱性の確保が容易となる傾向にある。25℃における動粘度とは、JIS K 2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
【0022】
アミノ変性シリコーンとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、KF8005、KF-868、KF-864、KF-393(いずれも、信越化学工業(株)製、商品名)、XF42-B1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、SF-8417、BY16-853U(いずれも、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0023】
アミノ変性シリコーンは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
アミノ変性シリコーンは、アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部が、中和されていてもよく、未中和物であってもよい。中和は、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸;塩化水素、硫酸、硝酸等の無機酸を用いることができる。
【0025】
本実施形態の撥水剤組成物におけるアミノ変性シリコーンの配合量は、撥水剤組成物を処理浴(例えば繊維を処理する処理浴)とする場合、撥水剤組成物全量を基準として、0.01~1質量%とすることができる。また、流通時においては、アミノ変性シリコーンの配合量は、撥水剤組成物全量を基準として、0.1~50質量%とすることができ、0.2~20質量%であってもよい。
【0026】
本実施形態の撥水剤組成物には、上記アミノ変性シリコーンに代えて、末端又は側鎖に水酸基及び/又は炭素数1~3のアルコキシ基を有するジメチルポリシロキサン(以下、(IV)成分という場合もある)と、アミノ基含有シランカップリング剤(以下、(V)成分という場合もある)とを配合することができる。この場合の撥水剤組成物(以下、第2の撥水剤組成物という場合もある)は、少なくとも(IV)成分、(V)成分、(II)成分及び(III)成分が配合されてなるものである。(IV)成分における上記の水酸基及び/又は炭素数1~3のアルコキシ基は、ジメチルポリシロキサン骨格の末端に結合していることが好ましく、両末端に結合していることがより好ましい。
【0027】
(IV)成分と(V)成分との反応物の25℃における動粘度は、10~100,000mm2/sであることが好ましく、10~30,000mm2/sであることがより好ましく、10~5,000mm2/sであることがさらに好ましい。25℃における動粘度が100,000mm2/s以下である場合、作業性及び縫目滑脱性の確保が容易となる傾向にある。25℃における動粘度とは、JIS K 2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
【0028】
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製のKBM-602(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM-603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、KBM-903(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)などのアミノ基と炭素数1~3のアルコキシ基とを有するシラン化合物が挙げられる。
【0029】
第2の撥水剤組成物における(IV)成分及び(V)成分の配合量は、撥水剤組成物を処理浴(例えば繊維を処理する処理浴)とする場合、撥水剤組成物全量を基準として、合計で0.01~1質量%とすることができる。また、流通時においては、(IV)成分及び(V)成分の配合量は、撥水剤組成物全量を基準として、合計で0.1~50質量%とすることができ、0.2~20質量%であってもよい。
【0030】
(IV)成分及び(V)成分の配合割合は、(IV)成分の官能基(水酸基及び炭素数1~3のアルコキシ基の合計)と(V)成分の官能基(炭素数1~3のアルコキシ基の合計)とのモル比[(IV):(V)]で20:1~1:1とすることができる。
【0031】
<シリコーンレジン>
本実施形態の撥水剤組成物は、上記アミノ変性シリコーン、上記(IV)成分、及び、上記(IV)成分と上記(V)成分との反応物以外のシリコーン化合物として、シリコーンレジンを含む。シリコーンレジンとしては、構成成分としてMQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含み、25℃にて固形状であり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、シリコーンレジンは、JIS K 6249:2003 13.硬さ試験に従ってタイプAデュロメータにより測定した硬さが20以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。ここで、M、D、T及びQは、それぞれ(R’’)3SiO0.5単位、(R’’)2SiO単位、R’’SiO1.5単位及びSiO2単位を表す。R’’は、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6~15の1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0032】
シリコーンレジンは、一般に、MQレジン、MTレジン又はMDTレジンとして知られており、MDQ、MTQ又はMDTQと示される部分を有することもある。
【0033】
シリコーンレジンは、これをアルキルポリシロキサン又はアルキルポリシロキサン以外の適当な溶媒に溶解させた溶液としても入手することができる。アルキルポリシロキサン以外の溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン及びこれらの溶媒の混合物等が挙げられる。
【0034】
シリコーンレジンをアルキルポリシロキサンに溶解させた溶液としては、例えば、信越化学工業(株)より市販されているKF7312J(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:デカメチルシクロペンタシロキサン=50:50混合物)、KF7312F(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:オクタメチルシクロテトラシロキサン=50:50混合物)、KF9021L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)、KF7312L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)等が挙げられる。
【0035】
シリコーンレジン単独としては、例えば、東レダウコーニング(株)より市販されているMQ-1600 solid Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン)、MQ-1640 Flake Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン)などが挙げられる。上記市販品は、トリメチルシリル基含有ポリシロキサンを含み、MQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含むものである。
【0036】
本実施形態の撥水剤組成物におけるシリコーンレジンの配合量は、撥水性、風合い及び縫目滑脱性の観点から、アミノ変性シリコーンの配合量100質量部に対して、50~15,000質量部とすることができ、100~10,000質量部であってもよく、150~6,000質量部であってもよく、500~15,000質量部であってもよく、900~6,000質量部であってもよい。
【0037】
また、本実施形態の第2の撥水剤組成物におけるシリコーンレジンの配合量は、撥水性、風合い及び縫目滑脱性の観点から、(IV)成分及び(V)成分の合計配合量100質量部に対して、500~15,000質量部であることが好ましく、900~6,000質量部であることがより好ましい。
【0038】
<アルキルポリシロキサン>
アルキルポリシロキサンは、鎖状オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端が飽和炭化水素基である化合物、又は、環状オルガノポリシロキサンの側鎖が飽和炭化水素基である化合物である。アルキルポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物などが挙げられる。
【0039】
【化1】
[式(1)中、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、及びR
18は、それぞれ独立に炭素数1~18の1価の飽和炭化水素基を表し、vは1以上の整数を表す。]
【0040】
【化2】
[式(2)中、R
19及びR
20は、それぞれ独立に炭素数1~18の1価の飽和炭化水素基を表し、wは2~20の整数を表す。]
【0041】
本実施形態にて使用される上記一般式(1)で表される化合物において、R13、R14、R15、R16、R17、及びR18は、それぞれ独立に炭素数1~18の1価の飽和炭化水素基である。この飽和炭化水素基の炭素数は、一般式(1)で表される化合物にシリコーンレジンが溶解し易く、当該化合物を入手し易い観点から、1~10であることが好ましい。飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。飽和炭化水素基は、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。飽和炭化水素基は、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。vは1以上の整数である。vは、一般式(1)で表される化合物の動粘度が下記のアルキルポリシロキサンの動粘度の範囲内になるように適宜選択することができる。
【0042】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0043】
本実施形態にて使用される上記一般式(2)で表される化合物において、R19及びR20は、それぞれ独立に炭素数1~18の1価の飽和炭化水素基である。この飽和炭化水素基の炭素数は、1~10であることが好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が上記範囲内である場合、一般式(2)で表される化合物にシリコーンレジンが溶解し易く、当該化合物を入手し易い傾向にある。飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。飽和炭化水素基は、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。飽和炭化水素基は、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。wは2~20の整数である。wは、3~10であることが好ましく、4又は5であることがより好ましい。wが上記範囲内である場合、一般式(2)で表される化合物にシリコーンレジンが溶解し易く、当該化合物を入手し易い傾向にある。
【0044】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0045】
アルキルポリシロキサンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アルキルポリシロキサンは25℃で液状であることが好ましい。アルキルポリシロキサンの25℃における動粘度は、0.1~100,000mm2/sであることが好ましく、0.1~10,000mm2/sであることがより好ましく、0.1~1,000mm2/sであることがさらに好ましく、0.1~500mm2/sであることがさらにより好ましく、0.1~100mm2/sであることが特に好ましい。25℃における動粘度が上記範囲内である場合、アルキルポリシロキサンにシリコーンレジンが溶解し易く、作業性の確保が容易となる傾向にある。25℃における動粘度とは、JIS K 2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
【0047】
本実施形態の撥水剤組成物におけるアルキルポリシロキサンの配合量は、アミノ変性シリコーンの配合量100質量部に対して、500~15,000質量部である。アルキルポリシロキサンの配合量は、撥水性、風合い及び縫目滑脱性の観点から、アミノ変性シリコーンの配合量100質量部に対して、900~6,000質量部であることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態の第2の撥水剤組成物におけるアルキルポリシロキサンの配合量は、(IV)成分及び(V)成分の合計配合量100質量部に対して、500~15,000質量部である。アルキルポリシロキサンの配合量は、撥水性、風合い及び縫目滑脱性の観点から、(IV)成分及び(V)成分の合計配合量100質量部に対して、900~6,000質量部であることがより好ましい。
【0049】
本実施形態の撥水剤組成物におけるシリコーンレジンの配合量とアルキルポリシロキサンの配合量との質量比[(II):(III)]は、風合い及び撥水性の観点から、10:90~60:40が好ましく、20:80~55:45がより好ましく、20:80~35:65がさらに好ましい。
【0050】
(I)成分、(II)成分、(IV)成分及び(V)成分以外の撥水性成分としては、例えば、公知のフッ素系ポリマー、脂肪族炭化水素、脂肪族カルボン酸及びそのエステル化物、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどの炭化水素基含有化合物等が挙げられる。
【0051】
従来のフッ素系ポリマーとしては、例えば、NKガードS-33(日華化学株式会社製)などが挙げられる。
【0052】
脂肪族炭化水素としては、例えば、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素などが挙げられる。脂肪族炭化水素の炭素数は12以上が好ましい。
【0053】
脂肪族カルボン酸は、飽和及び不飽和のいずれであってもよく、炭素数は12以上が好ましい。このような脂肪族カルボン酸のエステル化物を用いてもよい。
【0054】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0055】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、エステル結合を介して存在する炭化水素基の炭素数が12以上であることが好ましい。また、炭化水素基の炭素数は24以下であることが好ましい。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。かかるポリマー中のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの単量体の構成割合は、ポリマーを構成する単量体単位の全量に対して、80~100質量%であることが好ましい。また、かかるポリマーの重量平均分子量は、50万以上であることが好ましい。また、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの共重合体を用いてもよい。
【0056】
このようなポリ(メタ)アクリル酸エステル(非フッ素系ポリマー)としては、例えば、下記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)に由来する構成単位を含有する非フッ素アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0057】
【化3】
[式(A-1)中、R
1は水素又はメチル基を表し、R
2は置換基を有していてもよい炭素数12以上の1価の炭化水素基を表す。]
【0058】
本実施形態にて使用される上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は、置換基を有していてもよい炭素数が12以上の1価の炭化水素基を有する。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、更には脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状のアルキル基であるものがより好ましい。この場合、撥水性がより優れるものとなる。炭素数12以上の1価の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基等のうちの1種以上が挙げられる。本実施形態では、上記一般式(A-1)において、R2は無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0059】
上記炭化水素基の炭素数は、12~24であることが好ましい。炭素数が12以上であると、非フッ素アクリル系ポリマーを含む撥水剤組成物を繊維製品等に付着させた場合、撥水性がより向上し易い。一方、炭素数が24以下であると、非フッ素アクリル系ポリマー含む撥水剤組成物を繊維製品等に付着させた場合、繊維製品の風合いがより向上する傾向にある。
【0060】
上記炭化水素基の炭素数は、12~21であることがより好ましい。炭素数がこの範囲である場合は、撥水性と風合いが特に優れるようになる。炭化水素基として特に好ましいのは、炭素数が12~18の直鎖状のアルキル基である。
【0061】
上記(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸セリル及び(メタ)アクリル酸メリシルが挙げられる。
【0062】
上記(A)成分は、架橋剤と反応可能なヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することができる。この場合、得られる繊維製品の耐久撥水性を更に向上させることができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、上記(A)成分がアミノ基を有する場合、得られる繊維製品の風合いを更に向上させることができる。
【0063】
上記(A)成分は、1分子内に重合性不飽和基を1つ有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。
【0064】
上記(A)成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記(A)成分は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、アクリル酸エステル単量体(a1)とメタアクリル酸エステル単量体(a2)とを併用することが好ましい。配合する(a1)成分の質量と(a2)成分の質量との比(a1)/(a2)は、30/70~90/10であることが好ましく、40/60~85/15であることがより好ましく、50/50~80/20であることがさらに好ましい。(a1)/(a2)が上記範囲内である場合は、得られる繊維製品の耐久撥水性がより良好となる。
【0066】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(A)成分の単量体の合計構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び耐久撥水性の点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、50~100質量%であることが好ましく、55~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましい。
【0067】
非フッ素アクリル系ポリマーは、得られる繊維製品の撥水性、及び非フッ素アクリル系ポリマーの乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性をより向上できる点で、(A)成分に加えて、(B1)HLBが7~18である下記一般式(I-1)で表される化合物、(B2)HLBが7~18である下記一般式(II-1)で表される化合物、及び(B3)HLBが7~18である、ヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物のうちから選ばれる少なくとも1種の反応性乳化剤(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0068】
【化4】
[式(I-1)中、R
3は水素又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、Y
1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
【0069】
【化5】
[式(II-1)中、R
4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、Y
2は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基を表す。]
【0070】
「反応性乳化剤」とは、ラジカル反応性を有する乳化分散剤、すなわち、分子内に1つ以上の重合性不飽和基を有する界面活性剤のことであり、(メタ)アクリル酸エステルのような単量体と共重合させることができるものである。
【0071】
また、「HLB」とは、エチレンオキシ基を親水基、それ以外を全て親油基と見なし、グリフィン法により算出したHLB値のことである。
【0072】
本実施形態にて使用される上記(B1)~(B3)の化合物のHLBは、7~18であり、非フッ素アクリル系ポリマーの乳化重合又は分散重合時及び重合後の組成物中での乳化安定性(以降、単に乳化安定性という。)の点で、9~15が好ましい。さらには、撥水剤組成物の貯蔵安定性の点で上記範囲内の異なるHLBを有する2種以上の反応性乳化剤(B)を併用することがより好ましい。
【0073】
本実施形態にて使用される上記一般式(I-1)で表される反応性乳化剤(B1)において、R3は水素又はメチル基であり、(A)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、本実施形態の非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。Y1は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Y1におけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0074】
上記一般式(I-1)で表される化合物としては、下記一般式(I-2)で表される化合物が好ましい。
【0075】
【化6】
[式(I-2)中、R
3は水素又はメチル基を表し、Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、A
1Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、mは上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~80の整数が好ましく、mが2以上のときm個のA
1Oは同一であっても異なっていてもよい。]
【0076】
上記一般式(I-2)で表される化合物において、R3は水素又はメチル基であり、(A)成分との共重合性の点でメチル基であることがより好ましい。Xは炭素数1~6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基であり、非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、炭素数2~3の直鎖アルキレン基がより好ましい。A1Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。A1Oの種類及び組み合わせ、並びにmの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、mは1~80の整数が好ましく、1~60の整数であることがより好ましい。mが2以上のときm個のA1Oは同一であっても異なっていてもよい。また、A1Oが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0077】
上記一般式(I-2)で表される反応性乳化剤(B1)は、従来公知の方法で得ることができ、特に限定されるものではない。また、市販品より容易に入手することができ、例えば、花王株式会社製の「ラテムルPD-420」、「ラテムルPD-430」、「ラテムルPD-450」等を挙げることができる。
【0078】
本実施形態にて使用される上記一般式(II-1)で表される反応性乳化剤(B2)において、R4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基であり、トリデセニル基、トリデカジエニル基、テトラデセニル基、テトラジエニル基、ペンタデセニル基、ペンタデカジエニル基、ペンタデカトリエニル基、ヘプタデセニル基、ヘプタデカジエニル基、ヘプタデカトリエニル基等が挙げられる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、R4は炭素数14~16の1価の不飽和炭化水素基がより好ましい。
【0079】
Y2は炭素数2~4のアルキレンオキシ基を含む2価の基である。Y2におけるアルキレンオキシ基の種類、組み合わせ及び付加数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。また、アルキレンオキシ基が2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、アルキレンオキシ基はエチレンオキシ基がより好ましい。
【0080】
上記一般式(II-1)で表される化合物としては、下記一般式(II-2)で表される化合物が好ましい。
【0081】
【化7】
[式(II-2)中、R
4は重合性不飽和基を有する炭素数13~17の1価の不飽和炭化水素基を表し、A
2Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、nは上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、具体的には、1~50の整数が好ましく、nが2以上のときn個のA
2Oは同一であっても異なっていてもよい。]
【0082】
上記一般式(II-2)で表される化合物におけるR4は、上述した一般式(II-1)におけるR4と同様のものが挙げられる。
【0083】
A2Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基である。非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、A2Oの種類及び組み合わせ、並びにnの数については、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができる。非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、A2Oはエチレンオキシ基がより好ましく、nは1~50の整数が好ましく、5~20の整数がより好ましく、8~14の整数がさらに好ましい。nが2以上のときn個のA2Oは同一であっても異なっていてもよい。また、A2Oが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0084】
本実施形態にて使用される上記一般式(II-2)で表される反応性乳化剤(B2)は、従来公知の方法で対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールにアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0085】
上記対応する不飽和炭化水素基を有するフェノールには、工業的に製造された純品または混合物のほか、植物等から抽出・精製された純品又は混合物として存在するものも含まれる。例えば、カシューナッツの殻等から抽出され、カルダノールと総称される、3-[8(Z),11(Z),14-ペンタデカトリエニル]フェノール、3-[8(Z),11(Z)-ペンタデカジエニル]フェノール、3-[8(Z)-ペンタデセニル]フェノール、3-[11(Z)-ペンタデセニル]フェノール等が挙げられる。
【0086】
本実施形態にて使用される反応性乳化剤(B3)は、HLBが7~18である、ヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂に炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物である。ヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂としては、不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)を含んでいてもよい脂肪酸のモノ又はジグリセライド、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸(リシノール酸、リシノエライジン酸、2-ヒドロキシテトラコセン酸等)を含む脂肪酸のトリグリセライドを挙げることができる。非フッ素系ポリマーの乳化安定性の点で、少なくとも1種のヒドロキシ不飽和脂肪酸を含む脂肪酸のトリグリセライドのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ヒマシ油(リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド)の炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物がより好ましく、ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物がさらに好ましい。さらに、アルキレンオキサイドの付加モル数は、上記HLBの範囲内になるように適宜選択することができ、非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性の点で、20~50モルがより好ましく、25~45モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキサイドが2種以上の場合、それらはブロック付加構造又はランダム付加構造を有することができる。
【0087】
本実施形態にて使用される反応性乳化剤(B3)は、従来公知の方法でヒドロキシ基及び重合性不飽和基を有する油脂にアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができ、特に限定されるものではない。例えば、リシノール酸を含む脂肪酸のトリグリセライド、すなわちヒマシ油に苛性ソーダ、苛性カリウム等のアルカリ触媒を用い、加圧下、120~170℃にて、所定量のアルキレンオキサイドを付加することにより合成することができる。
【0088】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(B)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性、及び非フッ素アクリル系ポリマーの乳化安定性をより向上できる観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0089】
非フッ素アクリル系ポリマーは、得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、(A)成分に加えて、下記(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び(C5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2の(メタ)アクリル酸エステル単量体(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0090】
(C1)は、(C5)以外の下記一般式(C-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0091】
【化8】
[式(C-1)中、R
5は水素又はメチル基を表し、R
6はヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を表す。ただし、分子内における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は2以下である。]
【0092】
(C2)は、下記一般式(C-2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0093】
【化9】
[式(C-2)中、R
7は水素又はメチル基を表し、R
8は置換基を有していてもよい炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を表す。]
【0094】
(C3)は、下記一般式(C-3)で表されるメタクリル酸エステル単量体である。
【0095】
【化10】
[式(C-3)中、R
9は無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基を表す。]
【0096】
(C4)は、下記一般式(C-4)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0097】
【化11】
[式(C-4)中、R
10は水素又はメチル基を表し、pは2以上の整数を表し、Sは(p+1)価の有機基を表し、Tは重合性不飽和基を有する1価の有機基を表す。]
【0098】
(C5)は、下記一般式(C-5)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0099】
【化12】
[式(C-5)中、R
11は水素又はメチル基を表し、R
12はクロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基とヒドロキシ基とを有する炭素数3~6の1価の鎖状飽和炭化水素基を表す。]
【0100】
上記(C1)の単量体は、エステル部分にヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、かつ、上記(C5)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体である。架橋剤と反応可能な点から、上記炭素数1~11の1価の鎖状炭化水素基は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。これらの架橋剤と反応可能な基を有する(C1)の単量体を含有する非フッ素アクリル系ポリマーを、架橋剤とともに繊維製品に処理した場合に、得られる繊維製品の風合いを維持したまま、耐久撥水性をより向上することができる。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基であってもよい。
【0101】
上記鎖状炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、上記官能基の他に置換基を更に有していてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、直鎖状であること、及び/又は、飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0102】
具体的な(C1)の単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。さらに得られる繊維製品の風合いをより向上させる点で、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。
【0103】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(C1)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合いの観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0104】
上記(C2)の単量体は、エステル部分に炭素数1~11の1価の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体であり、環状炭化水素基としては、イソボルニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基等が挙げられる。これら環状炭化水素基はアルキル基等の置換基を有していてもよい。ただし、置換基が炭化水素基の場合、置換基及び環状炭化水素基の炭素数の合計が11以下となる炭化水素基が選ばれる。また、これら環状炭化水素基は、エステル結合に直接結合していることが、更なる耐久撥水性向上の観点から好ましい。環状炭化水素基は、脂環式であっても芳香族であってもよく、脂環式の場合、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよい。具体的な単量体としては、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシルが好ましく、メタクリル酸イソボルニルがより好ましい。
【0105】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(C2)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合いの観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0106】
上記(C3)の単量体は、エステル部分のエステル結合に、無置換の炭素数1~4の1価の鎖状炭化水素基が直接結合したメタクリル酸エステル単量体である。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、炭素数1~2の直鎖炭化水素基、及び、炭素数3~4の分岐炭化水素基が好ましい。炭素数1~4の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。具体的な化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチルが挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0107】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(C3)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合いの観点で、非フッ素系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0108】
上記(C4)の単量体は、1分子内に3以上の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体である。本実施形態では、上記一般式(C-4)におけるTが(メタ)アクリロイルオキシ基である、1分子内に3以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。式(C-4)において、p個のTは同一であっても異なっていてもよい。具体的な化合物としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、テトラメチロールメタンテトラアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートがより好ましい。
【0109】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(C4)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合いの観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0110】
上記(C5)の単量体は、クロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基とヒドロキシ基とを有する炭素数3~6の1価の鎖状飽和炭化水素基を有する。上記(C5)の単量体において、R11は水素又はメチル基である。得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、R11はメチル基であることが好ましい。
【0111】
R12はクロロ基及びブロモ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基とヒドロキシ基とを有する炭素数3~6の1価の鎖状飽和炭化水素基である。鎖状飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。鎖状飽和炭化水素基が直鎖状である場合、得られる繊維製品の耐久撥水性がより優れるものとなる。鎖状飽和炭化水素基の炭素数は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、3~4であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0112】
上記鎖状飽和炭化水素基は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、一つもしくは二つのクロロ基と、一つのヒドロキシ基とを有していることが好ましく、一つのクロロ基と、一つのヒドロキシ基とを有していることがより好ましい。また、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、鎖状飽和炭化水素基はβ位(CH2=CR11(CO)O-に結合している炭素原子の隣の炭素原子)にヒドロキシ基を有していることがさらに好ましい。具体的な上記鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、3-クロロ-2-ヒドロキシルプロピル基、3-クロロ-2-ヒドロキシブチル基、5-クロロ-2-ヒドロキシペンチル基、3-クロロ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基及び3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0113】
具体的な(C5)の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸5-クロロ-2-ヒドロキシペンチル及び(メタ)アクリル酸3-ブロモ-2-ヒドロキシプロピルが挙げられる。中でも得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上できる点で、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルが好ましく、メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルがより好ましい。
【0114】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(C5)の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の耐久撥水性の点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0115】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記の(C)成分の単量体の合計構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合いの観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0116】
非フッ素アクリル系ポリマーは、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、これらと共重合可能な単官能の単量体(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)を、本発明の効果を損なわない範囲において含有することができる。
【0117】
上記(D)の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、エチレン、スチレン等のフッ素を含まない(E)成分以外のビニル系単量体等が挙げられる。なお、(A)成分及び(C)成分以外の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、炭化水素基に、ビニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基等の置換基を有していてもよく、第4級アンモニウム基等の架橋剤と反応可能な基以外の置換基を有していてもよく、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はウレタン結合等を有していてもよい。(A)成分及び(C)成分以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0118】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(D)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品の撥水性及び風合いの観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、10質量%以下であることが好ましい。
【0119】
非フッ素アクリル系ポリマーは、架橋剤と反応可能なヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが、得られる繊維製品の耐久撥水性をより向上させることから好ましい。イソシアネート基は、ブロック化剤で保護されたブロックドイソシアネート基を形成していてもよい。また、非フッ素アクリル系ポリマーは、アミノ基を有することが、得られる繊維製品の風合いもより向上させることから好ましい。
【0120】
非フッ素アクリル系ポリマーは、得られる繊維製品の撥水性とコーティングに対する剥離強度をより向上できる点で、(A)成分に加えて、塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(E)(以下、「(E)成分」ともいう。)を単量体成分として含有していることが好ましい。
【0121】
本実施形態にて使用される塩化ビニル及び塩化ビニリデンのうち少なくともいずれか1種の単量体(E)は、得られる繊維製品の撥水性とコーティングに対する剥離強度の点で、塩化ビニルが好ましい。
【0122】
非フッ素アクリル系ポリマーにおける上記(E)成分の単量体の構成割合は、得られる繊維製品のコーティングに対する剥離強度をより向上できる観点で、非フッ素アクリル系ポリマーを構成する単量体成分の全量に対して、1~45質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることがさらに好ましい。
【0123】
上記非フッ素アクリル系ポリマーの製造方法について説明する。
【0124】
非フッ素アクリル系ポリマーは、ラジカル重合法により製造することができる。また、このラジカル重合法の中でも、得られる撥水剤の性能及び環境の面から乳化重合法又は分散重合法で重合することが好ましい。
【0125】
例えば、媒体中で、上記一般式(A-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)を乳化重合又は分散重合させることにより非フッ素アクリル系ポリマーを得ることができる。より具体的には、例えば、媒体中に(A)成分及び必要に応じて上記(B)成分、上記(C)成分、上記(D)成分及び上記(E)成分、並びに乳化補助剤又は分散補助剤を加え、この混合液を乳化又は分散させて、乳化物又は分散物を得る。得られた乳化物又は分散物に、重合開始剤を加えることにより、重合反応が開始され、単量体及び反応性乳化剤を重合させることができる。なお、上述した混合液を乳化又は分散させる手段としては、ホモミキサー、高圧乳化機又は超音波等が挙げられる。
【0126】
上記乳化補助剤又は分散補助剤等(以下、「乳化補助剤等」ともいう。)としては、上記反応性乳化剤(B)以外のノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を使用することができる。乳化補助剤等の含有量は、全単量体100質量部に対して、0.5~30質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。上記乳化補助剤等の含有量が0.5質量部以上であると、混合液の分散安定性がより向上する傾向にあり、乳化補助剤等の含有量が30質量部以下であると、得られる撥水剤組成物の撥水性がより向上する傾向にある。
【0127】
乳化重合又は分散重合の媒体としては、水が好ましく、必要に応じて水と有機溶剤とを混合してもよい。このときの有機溶剤としては、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではない。
【0128】
上記重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、又はレドックス系等の公知の重合開始剤を適宜使用できる。重合開始剤の含有量は、全単量体100質量部に対して、重合開始剤0.01~2質量部であることが好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲であると、重量平均分子量が10万以上である非フッ素アクリル系ポリマーを効率よく製造することができる。
【0129】
また、重合反応において、分子量調整を目的として、ドデシルメルカプタン、t-ブチルアルコール等の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0130】
なお、分子量調整のためには重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤の添加により所望の重量平均分子量を有する非フッ素アクリル系ポリマーを容易に得ることができる。
【0131】
重合反応の温度は、20℃~150℃が好ましい。温度が20℃以上であると、重合が十分になり易い傾向にあり、温度が150℃以下であると、反応熱の制御が容易になり易い。
【0132】
重合反応において、得られる非フッ素アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、上述した重合開始剤、連鎖移動剤、重合禁止剤の含有量の増減により調整することができ、105℃における溶融粘度は、多官能単量体の含有量、及び、重合開始剤の含有量の増減により調整することができる。なお、105℃における溶融粘度を低下させたい場合は、重合可能な官能基を2つ以上有する単量体の含有量を減らしたり、重合開始剤の含有量を増加させたりすればよい。
【0133】
乳化重合又は分散重合により得られるポリマー乳化液又は分散液における非フッ素アクリル系ポリマーの含有量は、組成物の貯蔵安定性及びハンドリング性の観点から、乳化液又は分散液の全量に対して10~50質量%とすることが好ましく、20~40質量%とすることがより好ましい。
【0134】
上記の炭化水素基含有化合物としては、例えば、ネオシードNR-90(日華化学(株)製)、NR-158(日華化学(株)製)、TH-44(日華化学(株)製)、PW-182(大和化学(株)製)フォボール、RSH(ハンツマン・ジャパン(株)製)、パラヂウムECO-500(大原パラヂウム化学(株)製)、NX018((株)ナノテックス製)などが挙げられる。
【0135】
<その他の成分>
本実施形態の撥水剤組成物は、上記で説明した各成分以外に、多官能イソシアネート化合物、界面活性剤、消泡剤、有機酸、無機酸、アルコール、抗菌剤、防黴剤、pH調整剤、着色剤、シリカ、酸化防止剤、消臭剤、各種触媒、乳化安定剤、アルキルポリシロキサン以外の各種有機溶剤、キレート剤、帯電防止剤、アミノ変性シリコーン以外のオルガノ変性シリコーン、多官能イソシアネート化合物以外の架橋剤などをさらに含有していてもよい。
【0136】
多官能イソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、アルキレンジイソシアネート、アリールジイソシアネート及びシクロアルキルジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物の二量体、三量体又は四量体などの変性ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。アルキレンジイソシアネートの炭素数は、1~12であることが好ましい。
【0137】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、2,4又は2,6-トリレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレン又はナフチレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、2,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、3,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-エチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルシクロヘキサン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3-イソシアネート-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、酸-ジイソシアネート二量体、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルトルエン、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルトルエン、フマル酸ビス(2-イソシアネートエチル)エステル、1,4-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼン、及び、1,3-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼンが挙げられる。
【0138】
トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)-チオフォスファートなどが挙げられる。テトライソシアネート化合物としては、例えば、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネートなどが挙げられる。
【0139】
ジイソシアネート化合物から誘導される変性ポリイソシアネート化合物としては、2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造などを有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体などを挙げることができる。また、ポリメリックMDI(MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート)もポリイソシアネート化合物として使用することができる。ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0140】
多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、そのままでもよく、ブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基であってもよい。ブロック剤としては、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチル-4-ニトロピラゾール、3,5-ジメチル-4-ブロモピラゾール、ピラゾールなどのピラゾール類;フェノール、メチルフェノール、クロルフェノール、iso-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、iso-アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物類;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;重亜硫酸ソーダなどがある。これらの中でも、耐久撥水性の観点から、ピラゾール類及びオキシム類が好ましい。
【0141】
多官能イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート構造に親水基を導入して界面活性効果を持たせることにより、ポリイソシアネートに水分散性を付与した水分散性イソシアネートを用いることもできる。また、アミノ基とイソシアネート基との反応を促進するため、有機錫、有機亜鉛等の公知の触媒を併用することもできる。
【0142】
本実施形態の撥水剤組成物における多官能イソシアネート化合物の配合量は、撥水性、耐久撥水性及び風合いの観点から、アミノ変性シリコーンの配合量とシリコーンレジン配合量との合計100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0143】
本実施形態の第2の撥水剤組成物における多官能イソシアネート化合物の配合量は、撥水性、耐久撥水性及び風合いの観点から、(IV)成分及び(V)成分、並びに(II)成分の合計配合量100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0144】
本実施形態の撥水剤組成物が、撥水性成分として、(I)成分、(II)成分、(IV)成分及び(V)成分以外の成分を含む場合、多官能イソシアネート化合物の配合量は、撥水性、耐久撥水性及び風合いの観点から、撥水性成分全量100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。この場合、撥水性成分における(I)成分及び(II)成分の合計配合量が、撥水性成分全量を基準として1質量%以上であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましい。第2の撥水剤組成物の場合、撥水性成分における(IV)成分及び(V)成分、並びに(II)成分の合計配合量が、撥水性成分全量を基準として1質量%以上であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましい。
【0145】
界面活性剤は、ポリアルキレンオキサイド付加物を必須とし、更にその他の界面活性剤を含んでいてもよい。その他の界面活性剤は、例えば、エマルションの状態が安定に保持される温度領域を拡充し、水に配合して希釈液を調製した場合に発生する起泡量を調整する役割があるものを用いてよい。その他の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれかで構成されるものであればよい。その他の界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0146】
消泡剤としては、特に限定はないが、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール、ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;3-ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0147】
有機酸としては、特に限定はないが、例えば、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等が挙げられる。有機酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
無機酸としては、特に限定はないが、例えば、塩化水素、硫酸、硝酸等が挙げられる。無機酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0149】
アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。アルコールは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
帯電防止剤としては、撥水性の性能を阻害しにくいものを使用するのがよい。帯電防止剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、スルホン酸塩、第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型4級塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコールエステル型などの非イオン系界面活性剤、イミダゾリン型4級塩、アラニン型、ベタイン型などの両性界面活性剤、高分子化合物タイプとしては前述した制電性重合体、ポリアルキルアミンなどが挙げられる。帯電防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0151】
上記多官能イソシアネート化合物以外の架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂などを挙げることができる。
【0152】
メラミン樹脂としては、メラミン骨格を有する化合物を用いることができ、例えば、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのポリメチロールメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数1~6のアルキル基を有するアルコキシメチル基となったアルコキシメチルメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数2~6のアシル基を有するアシロキシメチル基となったアシロキシメチルメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン樹脂は、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。このようなメラミン樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンAPM、ベッカミンM-3、ベッカミンM-3(60)、ベッカミンMA-S、ベッカミンJ-101、及びベッカミンJ-101LF、ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380K、三木理研工業株式会社製のリケンレジンMMシリーズなどが挙げられる。
【0153】
グリオキザール樹脂としては、従来公知のものを使用することができる。グリオキザール樹脂としては、例えば、1,3-ジメチルグリオキザール尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシプロピレン尿素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の官能基は、他の官能基で置換されていてもよい。このようなグリオキザール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンN-80、ベッカミンNS-11、ベッカミンLF-K、ベッカミンNS-19、ベッカミンLF-55Pコンク、ベッカミンNS-210L、ベッカミンNS-200、及びベッカミンNF-3、ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E、三木理研工業株式会社製のリケンレジンRGシリーズ、及びリケンレジンMSシリーズなどが挙げられる。
【0154】
メラミン樹脂及びグリオキザール樹脂には、反応を促進させる観点から触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒として、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX-110、キャタリストGT-3、及びキャタリストNFC-1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3-P、及びユニカキャタリストMC-109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ-5などが挙げられる。
【0155】
上述した本実施形態に係る撥水剤組成物は、繊維製品加工剤、紙製品加工剤、皮製品加工剤などの用途に好適に用いることができる。
【0156】
本実施形態の撥水剤組成物の製造方法について説明する。
【0157】
本実施形態の撥水剤組成物は、上述した、アミノ変性シリコーンと、シリコーンレジンと、アルキルポリシロキサンとを混合することにより得ることができる。本実施形態の撥水剤組成物における上述した各成分の含有量は、上述した好ましい配合量とすることができる。
【0158】
本実施形態の撥水剤組成物は、アミノ変性シリコーンと、シリコーンレジンと、アルキルポリシロキサンとを予め混合した1剤型であってもよいし、上記3成分中の2成分を混合した1剤と他の1成分の1剤とに分けられている2剤型であってもよいし、上記3成分がそれぞれ別々になっている3剤型であってもよい。本実施形態の撥水剤組成物は、取り扱いの簡便性の観点から、上記3成分が水性媒体に分散(乳化、溶解を含む)していることが好ましい。
【0159】
(I)成分と(II)成分と(III)成分とを予め混合した1剤型となっている場合、本実施形態の撥水剤組成物は、(I)成分と(II)成分と(III)成分とを水性媒体に同時に分散(乳化、溶解を含む)させることにより、又は、3成分中の少なくとも1成分を水性媒体に分散させた分散液と、他の成分を水性媒体に分散させた分散液とを混合することにより、又は、(I)成分、(II)成分及び(III)成分のそれぞれの分散液を混合することにより得ることができる。
【0160】
上記の各成分を水性媒体に分散する方法としては、例えば、各成分と、水性媒体と、必要により分散剤とを混合攪拌することが挙げられる。混合攪拌する場合、マイルダー、高速攪拌機、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ビーズミル、パールミル、ダイノーミル、アスペックミル、バスケットミル、ボールミル、ナノマイザー、アルチマイザー、スターバーストなどの従来公知の乳化分散機を用いてよい。これらの乳化分散機は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0161】
水性媒体としては、水、又は、水と水に混和する親水性溶剤との混合溶媒であることが好ましい。親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ソルフィット、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。
【0162】
上記分散液は、分散安定性の観点から、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。このような界面活性剤としては、乳化分散安定性を向上することができるものであれば特に限定されず、例えば、公知の非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0163】
上記分散液は、そのまま処理液として使用してもよいし、さらに水性媒体又は疎水性有機溶媒で希釈することによって処理液とすることもできる。分散液は、未中和のまま(中和せずに)使用してもよく、アミノ変性シリコーンを中和するなどの方法によってpH調整を行っていてもよい。pH調整する場合、処理液のpHが5.5~6.5となるように調整することができる。
【0164】
本実施形態の第2の撥水剤組成物については、(I)成分に代えて、(IV)成分及び(V)成分を用いることにより、製造することができる。
【0165】
本実施形態の撥水性繊維製品の製造方法について説明する。
【0166】
本実施形態の方法は、繊維を上述した本実施形態の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える。この工程を経て、撥水性繊維製品が得られる。
【0167】
繊維の素材としては特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。繊維の形態は、糸、布、不織布、紙などのいずれの形態であってもよい。繊維は、繊維製品であってもよい。
【0168】
本実施形態の撥水剤組成物が含まれる処理液で繊維を処理する方法としては、例えば、(I)成分と(II)成分と(III)成分とを含む処理液を用いて1工程で処理する方法、上記3成分中の2成分を含む処理液と他の1成分を含む処理液とを用いて2工程で処理する方法、上記3成分を別々に含む3種の分散液を用いて3工程で処理する方法を挙げることができる。2工程又は3工程で処理する場合、それぞれの成分を処理する順番はどのような順番であってもかまわない。第2の撥水剤組成物を適用する場合、(I)成分に代えて(IV)成分及び(V)成分を処理液に配合すればよい。
【0169】
上記の処理液及び分散液は、未中和のまま(中和せずに)使用してもよく、pHが5.5~6.5に調整されていてもよい。pHの調整は、例えば、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸;塩化水素、硫酸、硝酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類;アンモニアなどを用いることができる。
【0170】
繊維を上記処理液で処理する方法としては、例えば、浸漬、噴霧、塗布等の加工方法が挙げられる。また、撥水剤組成物が水を含有する場合は、繊維に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。
【0171】
本実施形態の撥水剤組成物の繊維への付着量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、繊維100gに対して、撥水剤組成物の付着量が0.1~5gとなるように調整することが好ましく、0.1~3gとなるように調整することがより好ましい。撥水剤組成物の付着量が0.1g以上であると、繊維が十分な撥水性をより発揮し易い傾向にあり、5g以下であると、繊維の風合いがより向上し、また経済的にも有利となる傾向がある。
【0172】
また、本実施形態の撥水剤組成物を繊維に付着させた後は、適宜熱処理することが好ましい。温度条件は特に制限はないが、撥水性、耐久性撥水性及び風合いの観点から、110~180℃で1~5分間行うことが好ましい。
【0173】
本実施形態の撥水性繊維製品は、優れた撥水性と柔軟な風合いを示すことから、ダウン用側地、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、ドレスシャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバー、カーテンまたはテント類など、衣類用途品、非衣類用途品などの繊維用途に好適に使用される。
【実施例】
【0174】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0175】
<アミノ変性シリコーン分散液の調製>
(調製例A1)
アミノ変性シリコーンとしてKF8005(信越化学工業(株)製、商品名)30質量部と、蟻酸0.3質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物1質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水68.7質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アミノ変性シリコーンを30質量%含む分散液を得た。
【0176】
(調製例A2~A7)
アミノ変性シリコーンをKF8005から表1に記載のアミノ変性シリコーンに変えたこと以外は調製例A1と同様にして、アミノ変性シリコーンを30質量%含む分散液を得た。なお、KF-868、KF-864、KF-393は、信越化学工業(株)製の商品名であり、SF-8417、BY16-853Uは、東レ・ダウコーニング(株)製の商品名であり、XF42-B1989は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の商品名である。
【0177】
<アミノ変性シリコーンの物性>
上記で用いたアミノ変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mоl)、及び25℃における動粘度(単位:mm2/s)を表1に示す。
【0178】
【0179】
(調製例A8)
アミノ変性シリコーンとしてSF-8417(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)30質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物1質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水69.0質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アミノ変性シリコーンを30質量%含む分散液を得た。
【0180】
<アルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の調製>
(調製例B1)
シリコーンレジンとしてMQ-1600(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)50質量部に、アルキルポリシロキサンとしてジメチルシリコーン(6cs、東レ・ダウコーニング(株)製)50質量部を添加し、シリコーンレジンが溶解するまで混合して、混合物を得た。得られた混合物30質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物1質量部とを混合した。次いで、水69質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アルキルポリシロキサンを15質量%とシリコーンレジンを15質量%含む分散液を得た。
【0181】
(調製例B2)
MQ-1600とジメチルシリコーンとの混合物に代えてKF9021L(信越化学工業(株)製、商品名、溶媒:低粘度メチルポリシロキサン(KF-96L-2cs、ジメチルシリコーン)、トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:溶媒(質量比)=50:50)を使用したこと以外は、調製例B1と同様にしてアルキルポリシロキサンを15質量%とシリコーンレジンを15質量%含む分散液を得た。
【0182】
(調製例B3)
MQ-1600とジメチルシリコーンとの混合物に代えてKF7312L(信越化学工業(株)製、商品名、溶媒:低粘度メチルポリシロキサン(KF-96L-2cs、ジメチルシリコーン)、トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:溶媒(質量比)=50:50)を使用したこと以外は、調製例B1と同様にしてアルキルポリシロキサンを15質量%とシリコーンレジンを15質量%含む分散液を得た。
【0183】
(調製例B4)
シリコーンレジンとしてMQ-1600(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)25質量部に、アルキルポリシロキサンとしてジメチルシリコーン(6cs、東レ・ダウコーニング(株)製)75質量部を添加し、シリコーンレジンが溶解するまで混合して、混合物を得た。得られた混合物30質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物1質量部とを混合した。次いで、水69質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アルキルポリシロキサンを22.5質量%とシリコーンレジンを7.5質量%含む分散液を得た。
【0184】
<多官能イソシアネート化合物分散液の調製>
【0185】
(調製例C1:トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物のメチルエチルケトオキシムブロック化物の分散液)
まず、トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物として、Polurene AD(トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネート(2,4異性体と2,6異性体との質量比は80:20)との反応生成物の含有量75質量%、溶剤:酢酸エチル、SAPICI社製、商品名)を用意した。
【0186】
上記で用意したトリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物1モルを60~70℃まで加熱した。次いで、メチルエチルケトオキシム3モルをゆっくりと仕込み、60~70℃で赤外分光光度計にて確認されるイソシアネート含量がゼロになるまで反応させ、酢酸エチルを添加して、メチルエチルケトオキシムブロックポリイソシアネート化合物を98.7質量%含む無色透明の粘稠液状組成物を得た。
【0187】
上記で得られた組成物180質量部と、非イオン界面活性剤として3スチレン化フェノールのエチレンオキサイド30モル付加物20質量部とを混合し、均一化した。撹拌しながら徐々に水を仕込んだ後、30MPaにてホモジナイザー処理を行い、トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物のメチルエチルケトオキシムブロック化物を40質量%含む分散液を得た。
【0188】
(調製例C2:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプのメチルエチルケトオキシムブロック化物の分散液)
反応容器に、デュラネートTHA-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ、NCO官能基数:3、含有量100質量%、旭化成ケミカルズ社製、商品名)を1モル、及びメチルイソブチルケトンを添加し、60~70℃まで加熱した。次いで、メチルエチルケトオキシム3モルをゆっくりと仕込み、60~70℃で赤外分光光度計にて確認されるイソシアネート含量がゼロになるまで反応させることにより、メチルエチルケトオキシムブロックポリイソシアネート化合物を98.7質量%含む無色透明の粘稠液状組成物を得た。
【0189】
上記で得られた組成物180質量部と、有機溶剤としてメチルエチルケトン20質量部と、非イオン界面活性剤として3スチレン化フェノールのエチレンオキサイド30モル付加物20質量部とを混合し、均一化した。撹拌しながら徐々に水を仕込んだ後、30MPaにてホモジナイザー処理を行い、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプのメチルエチルケトオキシムブロック化物を40質量%含む分散液を得た。
【0190】
(調製例C3:ヘキサメチレンジイソシアネートビューレットのジメチルピラゾールブロック体)
反応容器に、デュラネート24A-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットタイプ、NCO官能基数:3、含有量100質量%、旭化成ケミカルズ社製、商品名)を1モル、及びメチルイソブチルケトンを添加し、60~70℃まで加熱した。次いで、3,5-ジメチルピラゾール3モルをゆっくりと仕込み、60~70℃で赤外分光光度計にて確認されるイソシアネート含量がゼロになるまで反応させることにより、ジメチルピラゾールブロックポリイソシアネート化合物を98.7質量%含む無色透明の粘稠液状組成物を得た。
【0191】
上記で得られた組成物180質量部と、有機溶剤としてブチルジグリコール140質量部と、非イオン界面活性剤として3スチレン化フェノールのエチレンオキサイド30モル付加物20質量部とを混合し、均一化した。撹拌しながら徐々に水を仕込んだ後、30MPaにてホモジナイザー処理を行い、ヘキサメチレンジイソシアネートビューレットのジメチルピラゾールブロック体を40質量%含む分散液を得た。
【0192】
<架橋剤>
(調製例C4)
ベッカミンM-3(トリメチロールアミン、DIC株式会社製、商品名)を準備した。
【0193】
<触媒>
(調製例C5)
ベッカミンACX(有機アミン系触媒、DIC株式会社製、商品名)を準備した。
【0194】
<非フッ素アクリル系ポリマー分散液の調製>
(調製例D1)
500mL耐圧フラスコに、アクリル酸ステアリル30g、アクリル酸ラウリル10g、クロロエチレン20g、3スチレン化フェノール30モルエチレンオキサイド付加物5g、アーカードT-28(ライオン株式会社製、商品名、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム)3g、トリプロピレングリコール25g及び水206.7gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で60℃にて6時間ラジカル重合させて、非フッ素アクリル系ポリマーを20質量%含む非フッ素アクリル系ポリマー分散液を得た。
【0195】
<アルキルポリシロキサン分散液>
(調製例E1)
ジメチルシリコーン(25℃での動粘度が6cs、東レ・ダウコーニング(株)製)30質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物2質量部とを混合した。次いで、水68質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アルキルポリシロキサンを30質量%含む分散液を得た。
【0196】
<撥水性繊維製品の作製>
(実施例1)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液を0.3質量%、調製例B4で得られたアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液を3.7質量%、ナイスポールFE-26(帯電防止剤、日華化学(株)製、商品名)を0.5質量%及びテキスポートBG-290(浸透剤、日華化学(株)製、商品名)を0.5質量%となるように水で希釈した処理液に、染色を行ったポリエステル100%布又はナイロン100%布を浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で1分間乾燥した。更にポリエステル100%布においては180℃で30秒間熱処理をし、ナイロン100%布においては170℃で30秒間熱処理を行い、撥水性繊維製品を得た。なお、表中に、アミノ変性シリコーンの配合量とアルキルポリシロキサンの配合量との質量比を示す。
【0197】
(実施例2~6、9~10並びに参考例7、8及び11)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液に代えて表2又は3に示すアミノ変性シリコーン分散液を用い、アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の配合量(質量%)を表2又は3に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品をそれぞれ得た。
【0198】
(実施例12)
アミノ変性シリコーンとしてSF-8417(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)1.5質量部と、蟻酸0.1質量部と、シリコーンレジンであるMQ-1600(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)及びジメチルシリコーンの1:1混合物28.5質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物1質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水68.9質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アミノ変性シリコーンとシリコーンレジンとアルキルポリシロキサンとを合計で30質量%含む分散液(アミノ変性シリコーン:アルキルポリシロキサン(質量比)=100:950)を得た。
【0199】
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液及び調製例B4で得られたアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液に代えて、上記で得られた分散液を4質量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0200】
(実施例13)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液に代えて表4に示すアミノ変性シリコーン分散液を用い、アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の配合量(質量%)を表4に示すように変え、調製例D1で得られた非フッ素アクリル系ポリマー分散液を表4に示す配合量(質量%)となるように更に加えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0201】
(実施例14、15)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液及び調製例B4で得られたアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液に代えて表4に示すアミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液を用い、アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の配合量(質量%)を表4に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0202】
(実施例16)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液に代えて表5に示すアミノ変性シリコーン分散液を用い、調製例C1で得られた多官能イソシアネート化合物分散液を表5に示す配合量(質量%)となるように更に加えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0203】
(実施例17、18)
多官能イソシアネート化合物分散液の種類を表5に示すように変えたこと以外は実施例16と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0204】
(実施例19)
多官能イソシアネート化合物分散液に代えて、調製例C4の架橋剤と調製例C5の触媒とを表5に示す配合量(質量%)となるように用いたこと以外は実施例16と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0205】
(実施例20)
多官能イソシアネート化合物分散液の配合量(質量%)を表5に示すように変え、調製例C4の架橋剤と調製例C5の触媒とを表5に示す配合量(質量%)となるように更に加えたこと以外は実施例16と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0206】
(実施例21)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液に代えて、調製例A8で得られたアミノ変性シリコーン分散液を用たこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品をそれぞれ得た。
【0207】
(実施例22)
調製例A8で得られたアミノ変性シリコーン分散液を0.3質量%、調製例B4で得られたアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液を3.7質量%、ナイスポールFE-26(帯電防止剤、日華化学(株)製、商品名)を0.5質量%及びテキスポートBG-290(浸透剤、日華化学(株)製、商品名)を0.5質量%となるように水で希釈した処理液に、酢酸を添加して処理液のpHを6に調整した。この処理液に染色を行ったポリエステル100%布又はナイロン100%布を浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で1分間乾燥した。更にポリエステル100%布においては180℃で30秒間熱処理をし、ナイロン100%布においては170℃で30秒間熱処理を行い、撥水性繊維製品を得た。
【0208】
(比較例1)
アルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液を用いず、アミノ変性シリコーン分散液の種類及び配合量(質量%)を表7に示すように変え、調製例C1で得られた多官能イソシアネート化合物分散液を表7に示す配合量(質量%)となるように更に加えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0209】
(比較例2)
アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液を用いず、調製例C1で得られた多官能イソシアネート化合物分散液、及び調製例D1で得られた非フッ素アクリル系ポリマー分散液を、表7に示す配合量(質量%)となるように更に加えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0210】
(比較例3)
アミノ変性シリコーン分散液を用いず、アルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の種類及び配合量(質量%)を表7に示すように変え、調製例C1で得られた多官能イソシアネート化合物分散液を表7に示す配合量(質量%)となるように更に加えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0211】
(比較例4)
多官能イソシアネート化合物分散液を用いなかったこと以外は比較例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0212】
(比較例5)
多官能イソシアネート化合物分散液を用いなかったこと以外は比較例2と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0213】
(比較例6)
多官能イソシアネート化合物分散液を用いなかったこと以外は比較例3と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0214】
(比較例7)
アミノ変性シリコーン分散液の種類及び配合量(質量%)を表8に示すように変え、アルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液に代えて調製例E1で得られたアルキルポリシロキサン分散液を表7に示す配合量(質量%)となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0215】
(比較例8)
アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサン分散液の配合量(質量%)を表8に示すように変えたこと以外は比較例7と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0216】
(比較例9)
調製例A1で得られたアミノ変性シリコーン分散液及び調製例B4で得られたアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液に代えて表8に示すアミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液を用い、アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の配合量(質量%)を表8に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0217】
(比較例10)
アミノ変性シリコーン分散液及びアルキルポリシロキサンとシリコーンレジンの分散液の配合量(質量%)を表8に示すように変えたこと以外は比較例9と同様にして、撥水性繊維製品を得た。
【0218】
上記得られた撥水性繊維製品について、下記の方法にて、撥水性、洗濯後の撥水性、風合い(ポリエステルのみ)及び縫目滑脱性(ナイロンのみ)を測定した。結果を表2~8に示す。
【0219】
(繊維製品の撥水性評価)
JIS L 1092(2009)のスプレー法に準じてシャワー水温を20℃として試験をした。結果は目視にて下記の等級で評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性が等級4と等級5との間である場合は、等級を「4-5」とした。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0220】
(繊維製品の耐久撥水性評価)
上記撥水性繊維製品に対して、JIS L 0217(1995)の103法による洗濯を10回(L-10)行い、風乾後の撥水性を上記撥水性評価方法と同様に評価した。
【0221】
(繊維製品の風合い評価)
上記撥水性繊維製品をハンドリングにて下記に示す5段階で評価した。
1:硬い ~ 5:柔らかい
【0222】
(繊維製品の縫目滑脱性評価)
上記撥水性繊維製品の縫目滑脱抵抗力を、JIS L 1096:2010の8.23滑脱抵抗力 8.23.1縫目滑脱法 b)B法により測定した。数値が小さいほど縫目滑脱性に優れていることを示し、中でも4mm以下の場合を良好と判断した。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
実施例1~6、9、10、12~22並びに参考例7、8及び11の撥水剤組成物で処理した撥水性繊維製品は、撥水性、耐久撥水性及び風合に優れ、縫目滑脱性にも優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明によれば、撥水性、耐久撥水性及び風合いに優れた撥水性繊維製品を得ることができる撥水剤組成物を提供することができる。また、本発明の撥水剤組成物によれば、繊維製品等に優れた縫目滑脱性を与えることができる。