(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび半導体部品の封止方法、樹脂成型物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230622BHJP
B29C 33/68 20060101ALI20230622BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B29C33/68
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2020083203
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】石原 靖久
(72)【発明者】
【氏名】今泉 圭司
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 晃洋
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-172021(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244447(WO,A1)
【文献】特開2006-187913(JP,A)
【文献】特表2019-521885(JP,A)
【文献】特開2009-045789(JP,A)
【文献】特開平7-205538(JP,A)
【文献】特開2010-247455(JP,A)
【文献】米国特許第6440566(US,B1)
【文献】特表2002-506395(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1591409(KR,B1)
【文献】国際公開第2019/069658(WO,A1)
【文献】特開2019-218444(JP,A)
【文献】ゼッフルGKシリーズ,[online],日本,ダイキン工業株式会社,2023年01月19日,物性(Specific gravity (20℃/solid)),<URL:https://www.daikinchemicals.com/jp/solutions/products/coatings-resins/zeffle-solventbased.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B29C 33/68
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する離型フィルムであって、引っ張り強さが20MPa以上、切断時伸びが300%以上で、厚みが10μm以上100μm以下である樹脂フィルム上に離型層
(ただし、前記離型層を構成する樹脂はフッ素樹脂を除く)が2g/m
2以上10g/m
2以下で直接積層されたものであ
り、
前記離型層中のシリコーン樹脂含有率が3%以下であることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
前記樹脂フィルムの融点が200℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
離型力が0.4N/25mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型フィルムが、圧縮成型法による半導体部品の樹脂封止プロセスに適用されるものであることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
圧縮成型法による樹脂封止プロセスにおいて、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の離型フィルムを使用することを特徴とする半導体部品の封止方法。
【請求項6】
樹脂の金型成型時に請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の離型フィルムを使用することを特徴とする樹脂成型物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは、樹脂成型工程で成型材の基材や、金型成型を始めとした成型装置から樹脂成型物を取り出し易くするための離型フィルムに関する。例えば圧縮成型法による樹脂成型プロセスの離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の成型方法は、塗工成型、押し出し成型、射出成型など様々な方法が開発されている。樹脂についても、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂など樹脂の特性によって成型方法や条件を使い分けている。この様々な成型工程のなかで、離型フィルムが広く使用されている。離型フィルムを使用しない場合には、成型装置内で樹脂が触れる部分に離型剤を噴霧する必要があったり、成型装置から取り出す際に、樹脂成型物を傷つけたり、変形させる恐れがある。もしくは成型装置からの離型を容易にするような添加剤を添加する必要がある。
【0003】
そこで、離型フィルムは成型工程中で成型された樹脂成型品を成型装置からの取り出しを容易にしたり、成型装置の樹脂成分による汚染を防止できる。たとえば樹脂を離型フィルム上で成型し、成型後に離型フィルムを剥離する、というものである。すなわち離型フィルムには成型工程中の熱や圧力などの環境に耐えうる強度を持ちつつ、成型後に樹脂から剥離できなければならない。
【0004】
一般的な離型フィルムとしては、PET樹脂フィルム上に離型層を積層させた離型フィルムが用いられる(特許文献1、2)。しかし金型成型において樹脂成型物が複雑になったり、寸法精度が求められる場合、PET樹脂フィルムを基材とした離型フィルムでは、金型追従性が悪く、金型通りの樹脂成型物が得られない場合がある。
【0005】
そこで、金型追従性があり、成型工程中の熱や圧力に耐える樹脂フィルムとしてフッ素フィルムが挙げられる(特許文献3)。フッ素樹脂フィルムは離型性はもちろんのこと、熱可塑性を示すこともあり加熱時の金型追従性に優れている。しかし、フッ素樹脂は燃焼時に有害物質を発生させることが知られており、産業廃棄物処理法の指定を受けた業者が処分しなければならない。また一般的に高価であることが知られており、価格面で課題があった。
【0006】
また樹脂フィルムに離型層を接着層を用いて積層させる発明が知られている(特許文献4)が、離型層を積層させるために、接着層が必要になり、離型フィルムの加工が複雑になり、また接着層が剥離するなどの懸念がある。
【0007】
離型剤は食品やコンクリート、鋳物、樹脂などの材料を型にはめて製品を成型する工程で、型から製品をスムーズに取り出すために使用される薬剤である。型に直接塗布、噴霧する場合や樹脂フィルム上に離型剤を塗布し、それを型と材料の界面に介在させる方法がある。離型剤は材料によって使い分ける必要がある。例えば食品に関していえば、油脂やパラフィン、植物性ワックスが用いられることが多い。コンクリートであれば、植物油などが用いられる。また、ゴムや樹脂のような有機材料に対しては、フッ素系、シリコーン系離型剤が知られている。
【0008】
ただ、フッ素系離型剤は、前述の通り廃棄方法や高価であることが問題として挙げられる。またシリコーン系離型剤はフッ素系離型剤に比べて廃棄や価格の問題は少ないが、シリコーン成分に含まれる低分子シロキサンが型や装置を汚染させる問題がある。フッ素系やシリコーン系離型剤の他に、アクリル系樹脂やメラミン系樹脂を用いた離型剤が挙げられ、必要に応じて、様々な離型剤を組み合わせて使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2020-011521号公報
【文献】特許6653485号公報
【文献】特許6481616号公報
【文献】特開2020-019263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明では良好な離型性はもちろんのこと、樹脂の金型成型時に掛かる環境に耐え、さらに金型に追従するように柔軟性を有する樹脂フィルム上に直接離型層を積層させた離型フィルムを与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、
柔軟性を有する離型フィルムであって、引っ張り強さが20MPa以上、切断時伸びが300%以上で、厚みが10μm以上100μm以下である樹脂フィルム上に離型層が2g/m2以上10g/m2以下で直接積層されたものである離型フィルムを提供する。
【0012】
このようなものであると、良好な離型性はもちろんのこと、樹脂の金型成型時に掛かる環境に耐え、さらに金型に追従するように柔軟性を有する樹脂フィルム上に直接離型層を積層させた離型フィルムを与えることができる。
【0013】
また、前記樹脂フィルムの融点が200℃以上であることが好ましい。
【0014】
このようなものであれば、幅広い加工用途に用いることができる。
【0015】
また、前記離型フィルムの離型力が0.4N/25mm以下であることが好ましい。
【0016】
離型力が低いものであると、樹脂成型物からの剥離の際に大きな力を必要とせず、剥離工程でフィルムが破断することがない。
【0017】
さらに、前記離型層中のシリコーン樹脂含有率が3%以下であることが好ましい。
【0018】
このようなものであれば、シロキサンによる汚染が起こらない。
【0019】
加えて、前記離型フィルムが、圧縮成型法による半導体部品の樹脂封止プロセスに適用されるものであることが好ましい。
【0020】
このようなものであると、容易に半導体部品の樹脂封止が可能である。
【0021】
また、本発明では圧縮成型法による樹脂封止プロセスにおいて上記の離型フィルムを使用する半導体部品の封止方法を提供する。
【0022】
本発明の離型フィルムは、樹脂の封止の際に用いることができ、半導体部品の封止工程を容易にする。
【0023】
さらに、本発明では樹脂の金型成型時に上記の離型フィルムを使用する樹脂成型物の製造方法を提供する。
【0024】
このように本発明の離型フィルムを使用することで、容易に樹脂成型物を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明は離型フィルムの発明であって、良好な離型性は当然のこと、樹脂の金型成型時に掛かる環境に耐え、さらに金型に追従するような柔軟性を有する樹脂フィルム上に直接離型層を積層させた、安価で廃棄時に有毒ガスを出さず環境に悪影響を及ぼさない離型フィルムを与える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例、比較例で行った成型方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、良好な離型性はもちろんのこと、樹脂の金型成型時に掛かる環境に耐え、さらに金型に追従するように柔軟性を有する樹脂フィルム上に直接離型層を積層させた離型フィルムの開発が求められていた。
【0028】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、後述する特定の物性を持つ樹脂フィルムに離型層を直接積層した離型フィルムであれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
即ち、本発明は、柔軟性を有する離型フィルムであって、引っ張り強さが20MPa以上、切断時伸びが300%以上で、厚みが10μm以上100μm以下である樹脂フィルム上に離型層が2g/m2以上10g/m2以下で直接積層されたものである離型フィルムである。
【0030】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムは、有機分子を重合反応によって高分子化した樹脂をフィルム状に成型したものである。樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリアクリル樹脂などが挙げられる。成型方法はそれぞれの樹脂によってさまざまであるが、押し出し成型、延伸成型などが挙げられる。樹脂フィルムとして、例えば、ルミラー(PETフィルム;東レ製)やレイファン(ナイロンフィルム;東レ製)、アクリプレン(アクリルフィルム;三菱化学製)などの中から、引っ張り強さが20MPa以上、切断時伸びが300%以上を満たすものを用いることができる。
【0032】
<樹脂フィルムの引っ張り強さ>
基材となる樹脂フィルムの引っ張り強さは20MPa以上であり、好ましくは30MPa以上である。20MPa未満であれば金型成型時の圧力でフィルムが破断する可能性がある。なお、引張強度はJIS-C-2318に準拠して測定する。
【0033】
<樹脂フィルムの切断時伸び>
基材となる樹脂フィルムの切断時伸びは、300%以上であり、好ましくは400%以上である。300%未満であると金型追従性が悪く、樹脂成型物の寸法精度が得られない。なお、切断時伸びはJIS C 2318:2007記載の方法で測定した。
【0034】
<樹脂フィルムの厚み>
基材となる樹脂フィルムの厚みは10μm以上100μm以下である。好ましくは30μm以上70μm以下である。10μm未満であると、強度が高くても金型成型時の圧力によるフィルムの破断や、成型時にフィルムにシワが入ってしまう可能性がある。また、100μmを超えると十分な伸びを有していても金型の形状に追従しない可能性がある。また金型の熱を十分に樹脂に伝えられない懸念もある。
【0035】
<融点>
樹脂フィルムの融点は、200℃以上が好ましく、より好ましくは220℃以上である。200℃以上であれば幅広い加工用途に用いることが出来る。
【0036】
[離型層]
離型層は樹脂フィルム上に直接2g/m2以上10g/m2以下で積層されている。好ましくは2g/m2以上6g/m2以下である。2g/m2未満であると樹脂フィルムの柔軟性に十分に追従せず離型効果が損なわれる可能性がある。10g/m2を超えると離型層が厚くなりすぎて、離型フィルムとしての柔軟性を損なう可能性がある。
【0037】
離型層を樹脂フィルム上に接着剤などを用いて積層させると、接着剤を樹脂フィルム上に塗布する工程が必要になり、さらに成型時の圧力や熱で離型層と樹脂フィルムが剥離してしまう恐れがある。
【0038】
離型剤は樹脂フィルム上に直接硬化させて積層させることが出来、離型力を有するのであれば特に限定はなく、市販のものを使用してよい。
【0039】
離型剤は、ゴムや樹脂のような有機材料に対しては、フッ素系、シリコーン系離型剤が知られている。
【0040】
しかし、フッ素系離型剤は、前述の通り廃棄方法や高価であることが問題として挙げられる。またシリコーン系離型剤はフッ素系離型剤に比べて廃棄や価格の問題は少ないが、シリコーン成分に含まれる低分子シロキサンが型や装置を汚染させる問題がある。それらの問題点を解決するため、フッ素系やシリコーン系離型剤の他に、アクリル系樹脂やメラミン系樹脂を用いた離型剤が挙げられ、必要に応じて、様々な離型剤を組み合わせて使用されている。
【0041】
本発明ではこれら離型剤のいずれをも使用することができる。
【0042】
<離型層中のシリコーン樹脂含有率>
離型層中のシリコーン樹脂含有率は3%以下が好ましく、より好ましくは2.5%以下である。特に気にしない場合は問題ないが、成型装置によってはシロキサンによる汚染を嫌う場合もあるため、シリコーン樹脂含有率は3%以下に抑えておく方がよい。
【0043】
[離型力]
離型フィルムの離型力は0.4N/25mm以下が好ましい。より好ましくは0.35N/25mm以下である。0.4N/25mm以下であれば樹脂に対する離型力が十分低く、樹脂成型物からの剥離に大きな力が必要とならず、剥離工程でのフィルムの破断などの可能性がない。なお、離型力は25mm巾の粘着テープを離型フィルムと貼り合せて、70g/m2の荷重で25℃x1日経過後、さらに20g/m2の荷重で70℃x1日経過後、0.3mm/minの剥離速度で180°方向に粘着面を剥離したときの剥離に必要な荷重を測定した値である。なお、粘着テープはNitto31Bテープ(日東電工製)を用いた。
【0044】
[離型フィルムの製造方法]
離型フィルムの製造においては、離型層は樹脂フィルム上に積層させて硬化させる必要がある。例えば離型剤を適宜有機溶剤で希釈し、硬化剤、添加剤を加え、ワイヤバーコーターで樹脂フィルム上に、既定の塗布量になるように塗布し、溶剤を揮発させ、既定の硬化条件で硬化させることができる。
【0045】
製造方法は特にこれに限定されるものではない。
【0046】
[離型フィルムの廃棄]
成型工程で使用した離型フィルムは基本的に廃棄することになるため、廃棄物の処理を考慮する必要があり、焼却処分できることが好ましい。例えばフッ素樹脂フィルムの場合は、燃焼により有毒ガスが発生するため、廃棄物処理法の指定を受けた業者で焼却処分または、埋め立て処分となり、処分する際に掛かる費用もちろんのこと、環境に与える影響を考慮しなくてはならない。
【0047】
[離型フィルムの使用方法]
本発明の離型フィルムは、圧縮成型法による半導体部品の樹脂封止プロセスに適用される離型フィルムとすることができる。このようなものであれば、半導体部品の樹脂封止を容易にすることが可能である。
【0048】
また、圧縮成型法による樹脂封止プロセスにおいて上記の離型フィルムを使用して半導体部品の封止を行う方法を提供する。
【0049】
更に、樹脂の金型成型時に上記の離型フィルムを使用する樹脂成型物の製造方法を提供する。
【0050】
本発明の離型フィルムを用いることで、封止の際の成型工程中の熱や圧力などの環境に耐えつつ成型後に樹脂から速やかに剥離することが可能になり、樹脂の封止を容易に行うことができる。また、金型成型において複雑になった樹脂組成物や寸法精度の求められる樹脂組成物を製造する際に、良好な金型追従性によって金型通りの樹脂成型物を得ることができ、さらに容易に樹脂成型物を取り出すことができる。
【0051】
半導体は素子の他にハンダ、ワイヤ、リッドなどから構成されており、光、熱、埃や湿気、物理的衝撃から保護する必要があるため樹脂封止されている。樹脂としてはエポキシ樹脂が一般的で、エポキシ樹脂に硬化剤、添加剤を配合し加熱硬化させる。封止工程は、封止したい部品とエポキシ樹脂を金型に設置し、熱と圧力を印加し望みの形状に成型する。その際に、本発明の離型フィルムを使用することができる。一般的な封止材としては、CEL-8240(日立化成製)、KMC-2990(信越化学工業製)が挙げられるが、本発明で使用できる封止剤はこれらに限定されない。
【実施例】
【0052】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
[評価方法]
本実施例・比較例では後述のように離型フィルムを作製し、その離型フィルムについて離型力を測定した。また、離型フィルムを製造するためにかかる工程数を求めた。
次に実効寸法60x60x0.5mmの金型を用いてエポキシ封止材料KMC-2990(信越化学工業製)を成型する場合に作製した離型フィルムを用いて、金型追従性や離型フィルムの離型性を評価した。硬化条件は180℃/5分で8MPaの圧力を印加した。成型方法の詳細は
図1に示す。
【0054】
下金型1と、上金型1’の間に、下から順に離型フィルム2、エポキシ封止材料3、もう一枚の離型フィルム2として挟み(A)、加熱、加圧4を行い(B)、エポキシ封止材料を成型した後(C)、離型フィルム2を剥離した。
【0055】
<金型追従性>
成型したシート寸法を測定し、理論寸法との差が40μm以内であれば、金型追従性が良好とする。
【0056】
<離型性>
樹脂成型後に離型フィルムを剥離する際に、破れることなく剥離できた場合、良好とする。
【0057】
<離型フィルムを製造するために掛かる工程数>
樹脂フィルム上に直接離型層を積層させる場合は、1工程、樹脂フィルム上に接着剤を塗布し、離型層を貼り合せる場合は2工程とした。
【0058】
<離型力>
25mm巾の粘着テープを離型フィルムと貼り合せて、70g/m2の荷重で25℃x1日経過後、さらに20g/m2の荷重で70℃x1日経過後、0.3mm/minの剥離速度で180°方向に粘着面を剥離したときの剥離に必要な荷重を測定した。なお、粘着テープはNitto31Bテープ(日東電工製)を用いた。
【0059】
[実施例1~7、比較例1~4]
以下の表1に示す特徴を持つ樹脂フィルム上に、下記の離型剤を表2、3に示す組み合わせで用いた離型層が直接積層された離型フィルムを製造し、実施例1~7、比較例1~4とした。得られた離型フィルムの離型力、金型追従性、離型性及び離型フィルムを製造するのに掛かる工程数を上述の方法により調べた。その結果を表2、表3に示した。
【0060】
【0061】
<離型剤>
以下に、用いた離型剤、及び該離型剤を用いて離型層を形成する方法を示す。
離型剤1:X-70-201S(信越化学工業製)
離型剤1/CAT-PL-50T(信越化学工業製)/SFシンナー(信越化学工業製)=100/0.5/200をディゾルバーを用いて攪拌し、塗工液を調製しワイヤーバーを用いて塗工後、130℃/1分で硬化させる。
【0062】
離型剤2:KS-847(信越化学工業製)
離型剤2/CAT-PL-50T/トルエン=100/10/200をディゾルバーを用いて攪拌し、塗工液を調製しワイヤーバーを用いて塗工後、140℃/30秒で硬化させる。
【0063】
離型剤3:X-62-9088(信越化学工業製)
離型剤3/CAT-PS-80(信越化学工業製)/MEK/トルエン=100/0.9/450/450をディゾルバーを用いて攪拌し、塗工液を調製しワイヤーバーを用いて塗工後、120℃/1分で硬化させる。
【0064】
【0065】
【0066】
[比較例5]
厚み50μmの樹脂フィルム1上にウレタン接着剤タケラックA-616(三井化学製)/タケネートA-65(三井化学製)/酢酸エチル=16/1/100をディゾルバーを用いて攪拌し塗工液を調製し1.5g/m2になるようにワイヤーバーコートで塗布し、60℃/2分乾燥させたのち、無延伸の4-メチルー1-ペンテン共重合樹脂フィルム(厚み15μm)をさらにラミネートし、離型フィルムを得た。
【0067】
実施例では引っ張り強さ、伸びともに十分な樹脂フィルム上に、2g/m2以上の離型剤を塗布した離型フィルムを用いたため、離型力が十分に低く、金型追従性、離型性共に良好な結果となった。また、離型フィルムを製造するには樹脂フィルム上に離型層を直接塗布、硬化させる1工程のみであった。
【0068】
比較例1では離型層を用いなかったため、離型性が著しく損なわれ、樹脂からフィルムを剥離することができなかったため、金型追従性を評価することができなかった。比較例2では樹脂フィルムにフィルムの伸びが不足したPETを用いたため、十分な金型追従性が得られなかった。比較例3では、離型剤の塗布量が少なかったため、樹脂フィルムの成型時の伸びに離型層が追従できず、良好な離型性が得られなかった。比較例4はフィルムの厚みが100μmを超えていたため、金型の形状に追従しなかった。
【0069】
比較例5は金型追従性、離型性ともに良好であったが離型フィルム上に直接離型層を積層させておらず接着剤を用いたため、離型フィルムを製造するために2工程必要となった。
【0070】
以上述べてきたように、引っ張り強さが20MPa以上、切断時伸びが300%以上で、厚みが10μm以上100μm以下である樹脂フィルム上に離型層がで2g/m2以上10g/m2以下で直接積層されている、柔軟性を有する離型フィルムは、良好な金型追従性と離型性を与えることができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1…下金型、 1’…上金型、 2…離型フィルム、 3…エポキシ封止材料、 4…加熱、加圧