(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
H01L21/304 644C
H01L21/304 643A
H01L21/304 647Z
(21)【出願番号】P 2020180466
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 紀通
(72)【発明者】
【氏名】桝村 寿
(72)【発明者】
【氏名】中田 哲平
(72)【発明者】
【氏名】深津 佑平
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-198345(JP,A)
【文献】特開2005-12076(JP,A)
【文献】特開2010-92928(JP,A)
【文献】米国特許第5868857(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にエピタキシャル膜が形成されたウェーハを洗浄する方法であって、
前記ウェーハの表面、裏面及び端面の全ての面にO
3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第1の洗浄工程と、
前記第1の洗浄工程の後、前記ウェーハの裏面及び端面に洗浄液を供給してロール型ブラシにより洗浄する第2の洗浄工程と、
前記第2の洗浄工程の後、前記ウェーハの表面にO
3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第3の洗浄工程と、
前記第3の洗浄工程の後、前記ウェーハの表面にHFを含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第4の洗浄工程と
を含むことを特徴とするエピタキシャルウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記第2の洗浄工程の後、前記第3の洗浄工程と前記第4の洗浄工程を、この順で複数回行うことを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記第4の洗浄工程の後、最終洗浄工程として、前記ウェーハの表面にO
3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する工程を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記ロール型ブラシとしてPVA製のものを用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進むにつれ、その土台となるウェーハもますます高い清浄度、品質が求められる。品質を損なう原因の1つとしてパーティクルの存在がある。パーティクルはウェーハの表面、裏面、端面(エッジ部ともいう)に付着しており、その種類や付着の原因は様々である。
【0003】
特にロジック用半導体用に使用されるエピタキシャルウェーハにおいては、半導体デバイスを形成する表面側に、より高品質のエピタキシャル膜を形成する。エピタキシャル膜は、高温でトリクロロシランなどのガスを分解し、ウェーハの表面にシリコン単結晶膜をエピタキシャル成長することで形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/057640号
【文献】特開平11-111661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エピタキシャル装置において、ウェーハの裏面やエッジ部が、装置内の治具と接触または近接することにより、ウェーハの裏面や端面にパーティクルが付着する問題があった。
【0006】
これまでは、半導体デバイスを形成する面であるウェーハの表面の清浄度が重要であった。例えば特許文献1のように、エピタキシャル膜を形成する前にSC-1、SC-2、HF、ブラシなどの洗浄手法を用いてウェーハ表面の洗浄を行ってきた。また、エピタキシャル膜形成後のウェーハについても、バッチ式洗浄を行ったり、特許文献2のように、オゾン水、ブラシなどの洗浄手法を用いたりして、ウェーハ表面に付着したパーティクルに着目して、パーティクルの低減を図ってきた。
【0007】
半導体デバイスの微細化が進むにつれ、半導体デバイス製造プロセスで問題となるパーティクルサイズが小さくなっており、ウェーハの表面のみならず、ウェーハの裏面やエッジ部のパーティクルが半導体デバイスの歩留まりに大きく影響することとなった。これにより、エピタキシャル膜形成時にウェーハの裏面やエッジ部に付着したパーティクルの影響も無視できなくなってきた。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、半導体デバイス製造プロセスにおいて、ウェーハの裏面やエッジ部からのパーティクルの発塵が最小限となるエピタキシャルウェーハを製造するための、エピタキシャル膜形成後に行うエピタキシャルウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、表面にエピタキシャル膜が形成されたウェーハを洗浄する方法であって、前記ウェーハの表面、裏面及び端面の全ての面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第1の洗浄工程と、前記第1の洗浄工程の後、前記ウェーハの裏面及び端面に洗浄液を供給してロール型ブラシにより洗浄する第2の洗浄工程と、前記第2の洗浄工程の後、前記ウェーハの表面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第3の洗浄工程と、前記第3の洗浄工程の後、前記ウェーハの表面にHFを含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第4の洗浄工程とを含むエピタキシャルウェーハの洗浄方法を提供する。
【0010】
このようなエピタキシャルウェーハの洗浄方法によれば、半導体デバイス製造プロセスにおいて、ウェーハの裏面やエッジ部からのパーティクルの発塵が最小限となるエピタキシャルウェーハとすることができる。
【0011】
前記第2の洗浄工程の後、前記第3の洗浄工程と前記第4の洗浄工程を、この順で複数回行うことが好ましい。
【0012】
このようにすれば、清浄度が高いウェーハの表面状態を得ることができる。
【0013】
前記第4の洗浄工程の後、最終洗浄工程として、前記ウェーハの表面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する工程を行うことが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ウェーハの表面に酸化膜が形成され、保護膜として作用することができる。
【0015】
このとき、前記ロール型ブラシとしてPVA製のものを用いることが好ましい。
【0016】
これにより、ウェーハの金属汚染を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のエピタキシャルウェーハの洗浄方法によれば、半導体デバイス製造プロセスにおいて、ウェーハの裏面やエッジ部からのパーティクルの発塵が最小限となるエピタキシャルウェーハを製造するための、エピタキシャル膜形成後に行うエピタキシャルウェーハの洗浄方法を提供することができる。エピタキシャル膜形成後のウェーハを枚葉洗浄する際に、ウェーハの裏面およびエッジ部に対しブラシ洗浄を行い、表面に対しスピン洗浄することにより、表面、裏面、エッジ部のパーティクルを減少させ、最良の清浄度の状態に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る洗浄方法で用いる洗浄装置のブラシ洗浄ユニットを含む部分を拡大した側面図を示す。
【
図2】本発明に係る洗浄方法で用いる洗浄装置のブラシ洗浄ユニットを含む部分を拡大した下面図を示す。
【
図3】実施例、比較例で行った各洗浄方法における、ウェーハの裏面のパーティクル除去率を示すグラフである。
【
図4】実施例、比較例で行った各洗浄方法における、ウェーハの端面(エッジ部)のパーティクル除去率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
上述のように、半導体デバイス製造プロセスにおいて、ウェーハの裏面やエッジ部からのパーティクルの発塵が最小限となるエピタキシャルウェーハを製造するための、エピタキシャル膜形成後に行うエピタキシャルウェーハの洗浄方法が求められていた。
【0021】
そこで、本発明者らは、エピタキシャル膜形成後のウェーハの裏面およびエッジ部のパーティクルについて洗浄除去能力を調査したところ、洗浄方法によってパーティクル除去率が大きく影響することを見出した。
【0022】
バッチ式のSC-1(NH4OH/H2O2/H2Oの混合洗浄液)洗浄では、洗浄液の温度を低温、高温のどちらにした場合でも、パーティクルの除去能力はあるが、十分満足できるレベルではなかった。
【0023】
また、枚葉スピン洗浄機を用いて行う、洗浄液をO3/HF混合液とした洗浄、O3/HF混合液+超音波アシスト洗浄、HF水溶液による酸化膜剥離洗浄、純水とAirによる二流体洗浄なども、パーティクルの除去能力に関して十分満足できるレベルではなかった。
【0024】
そこで、ブラシを使って洗浄したところ、パーティクルの除去能力に関して十分満足できるレベルの洗浄であることが分かった。さらに、洗浄に使うブラシはロール型のブラシとディスク型のブラシに大別できるが、ロール型のブラシの方がよりパーティクルを除去する能力が高いことが分かった。
【0025】
また、ロール型のブラシを用いる洗浄は、2つのロール型のブラシを回転させ、これらの間にウェーハを挟み、ウェーハの表面と裏面の両面を同時にブラシ洗浄する方法と、ウェーハの表面または裏面のいずれか一方に1つのロール型のブラシを押し付けてウェーハの片面のみ洗浄を行う方法がある。2つのロール型のブラシを回転させてウェーハの表裏面を同時に洗浄する方法では、エピタキシャル膜を形成した表面側はもともと(洗浄を行わなくても)十分にパーティクルが少ない清浄な状態であるが、ブラシ洗浄によって、ブラシがウェーハ表面のエピタキシャル膜に接触することにより、微小なパーティクルが付着し、清浄のレベルが悪化することが分かった。
【0026】
以上から、エピタキシャル膜形成後のウェーハにおいては、バッチ式の洗浄や、ブラシ洗浄を行わない枚葉スピン洗浄では、裏面やエッジ部のパーティクルは十分除去することができないことが分かった。そこで、本発明者らは、ロール型のブラシを用いた洗浄で裏面とエッジ部を洗浄し、表面はスピン洗浄のみで洗浄することにより、ウェーハの表面、裏面、エッジ部がパーティクルの最も少ない、最良の清浄度の状態にできることを見出した。
【0027】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、表面にエピタキシャル膜が形成されたウェーハを洗浄する方法であって、前記ウェーハの表面、裏面及び端面の全ての面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第1の洗浄工程と、前記第1の洗浄工程の後、前記ウェーハの裏面及び端面に洗浄液を供給してロール型ブラシにより洗浄する第2の洗浄工程と、前記第2の洗浄工程の後、前記ウェーハの表面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第3の洗浄工程と、前記第3の洗浄工程の後、前記ウェーハの表面にHFを含む洗浄液を供給してスピン洗浄する第4の洗浄工程とを含むエピタキシャルウェーハの洗浄方法により、半導体デバイス製造プロセスにおいて、ウェーハの裏面やエッジ部からのパーティクルの発塵が最小限となるエピタキシャルウェーハを製造するための、エピタキシャル膜形成後に行うエピタキシャルウェーハの洗浄方法を提供することができることを見出し、本発明を完成した。
【0028】
以下、図面を参照して説明する。
【0029】
まず、本発明に係る洗浄方法に用いる洗浄装置について説明する。第1の洗浄工程、第3の洗浄工程、第4の洗浄工程で行うスピン洗浄では、通常のスピン洗浄装置を用いればよい。この場合、チャンバー部においてウェーハWを保持しながら回転させ、薬液供給ノズルにより回転するウェーハの表面及び裏面に薬液を供給することができるスピン洗浄ユニットと、後述するブラシ洗浄ユニットを並設することができる。各洗浄工程に応じてウェーハをそれぞれのユニットに適宜搬送し、洗浄を行うことができる。
次に、第2の洗浄工程に用いるブラシ洗浄ユニットについて説明する。本発明に係る洗浄方法における第2の洗浄工程では、枚葉式のスピンブラシ洗浄を行うブラシ洗浄ユニットを用いることができる。
図1に、本発明に係る洗浄方法で用いる洗浄装置のブラシ洗浄ユニットを含む部分を拡大した側面図を示し、
図2に下面図を示す。本発明に係る洗浄方法における第2の洗浄工程で行うブラシ洗浄ユニットは、ウェーハWを保持しながら回転させる複数のウェーハ回転ローラー3と、回転するウェーハWの表面に薬液を供給する薬液供給ノズル4aと、裏面に薬液を供給する薬液供給ノズル4bと、端面に薬液を供給する薬液供給ノズル4cと、ウェーハWを保持し、回転させ、かつウェーハWのエッジ部をブラシ洗浄するロール型ブラシのエッジブラシ1と、ウェーハWの直径よりも長く、ウェーハWの裏面全面を洗浄できるロール型ブラシの裏面ブラシ2を有することができる。尚、
図2は、説明の都合上ウェーハWを透明なものとし、下面からでもウェーハWの表面に薬液を供給する薬液供給ノズル4aが見えるものとしている。
【0030】
ブラシ洗浄ユニットは、ウェーハWを保持しつつ、ウェーハWを回転させる駆動部に繋がるエッジブラシ保持治具5と、ウェーハWの直径よりも長いロール型ブラシの裏面ブラシ2を回転させる駆動部と繋がり、このロール型ブラシの裏面ブラシ2を回転させながらウェーハWの裏面に押し付けて洗浄する裏面ブラシ洗浄部を有することが望ましい。エッジブラシ保持治具5とロール型ブラシのエッジブラシ1は、それぞれ複数個有していてもよい。
【0031】
ロール型のエッジブラシ1及び裏面ブラシ2は、ウェーハWへの金属不純物汚染の観点から樹脂製が望ましく、PVA(ポリビニルアルコール)製がより望ましい。
【0032】
次に、本発明に係る洗浄方法について説明する。
まず、本発明に係る洗浄方法を行う、表面にエピタキシャル膜が形成されたウェーハを準備する。準備するウェーハの種類はエピタキシャルウェーハであれば特に限定されない。例えば、シリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル膜を形成したシリコンエピタキシャルウェーハを用いることができるが、ウェーハの材料は適宜選択できる。シリコンウェーハにシリコンエピタキシャル膜を形成する場合、例えば、エピタキシャル装置において高温下でトリクロロシランなどのガスをチャンバー部に導入し、これらのガスを分解して、ウェーハ表面にシリコン単結晶膜をエピタキシャル成長することでエピタキシャル膜を形成することができる。
【0033】
次に、第1の洗浄工程として、エピタキシャルウェーハをスピン洗浄ユニットにセットし、ウェーハWの表面、裏面及び端面の全ての面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する。この第1の洗浄工程では、エピタキシャル膜形成後のウェーハWの表面は、非常に活性な状態である。そこで、パーティクルや有機物、金属不純物などの汚染が発生しないように、有機物を分解・除去するとともに、表面、裏面及び端面の全ての面に酸化膜を形成するためにO3を含む洗浄液でスピン洗浄する。O3を含む洗浄液は、回転するウェーハWの中心部に位置する薬液供給ノズルから、ウェーハWを十分に被覆し、かつ、有機物が分解・除去され、全ての面に十分な酸化膜を形成できる時間供給することが望ましい。このとき、ウェーハWの表面及び裏面に供給されたO3を含む洗浄液が端面に到達し、端面に供給されることで、ウェーハWの端面の有機物も分解・除去されうる。別途、ウェーハWの端面に向けてO3を含む洗浄液を供給してもよい。また、表面のスピン洗浄の後、ウェーハの表裏を反転させて、裏面のスピン洗浄を行うこともできる。
【0034】
第1の洗浄工程の後、第2の洗浄工程として、ウェーハを
図1、
図2に示すブラシ洗浄ユニットに搬送し、ブラシ洗浄ユニットを用いて、ウェーハWの裏面及び端面に洗浄液を供給してロール型ブラシのエッジブラシ1、裏面ブラシ2により洗浄する。第2の洗浄工程では、ウェーハWを保持するロール型ブラシのエッジブラシ1によってウェーハWを回転させながらエッジ部に対しブラシ洗浄を行い、同時に又は逐次的にウェーハWの直径よりも長いロール型ブラシの裏面ブラシ2を回転させながらウェーハWの裏面に押し付け、ブラシ洗浄する。このとき、ブラシ(例えば、PVAなどの樹脂製)が回転しながらウェーハWの裏面とエッジ部に接触することから、傷発生を防ぐために洗浄液を供給しながらブラシ洗浄する。このとき、ウェーハWの表面に、ブラシ洗浄により発塵したパーティクルが付着するのを防ぐため、ウェーハWの表面にも洗浄液を供給するのが好ましい。供給する洗浄液に制限はなく、例えば純水やアンモニア過水とすることができる。また、このときのウェーハWの回転数及び裏面ブラシ2の回転数に制限はない。また、裏面ブラシ2を押し付ける力も特に制限はない。
【0035】
第2の洗浄工程の後、第3の洗浄工程として、ウェーハをスピン洗浄ユニットに搬送し、スピン洗浄ユニットにセットし、ウェーハWの表面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する。さらに、第3の洗浄工程の後、第4の洗浄工程として、ウェーハWの表面にHFを含む洗浄液を供給してスピン洗浄する。第2の洗浄工程でウェーハWの裏面とエッジ部をブラシ洗浄した後にウェーハWの表面の洗浄を行うが、エピタキシャル膜形成後のウェーハWの表面はもともとパーティクルの付着個数が少なく、非常に清浄度が高い。既に第1の洗浄工程によりO3を含む洗浄液にて酸化膜が保護膜として形成されていることから、ブラシ洗浄時に付着したパーティクルについては保護膜である酸化膜を除去する際に、酸化膜とともに除去される。O3を含む洗浄液による第3の洗浄工程と、HFを含む洗浄液による第4の洗浄工程の順で洗浄することにより、エピタキシャル膜形成後と同レベルの、パーティクル付着個数が少なく、非常に清浄度が高い表面状態を得ることができる。
【0036】
さらに、第2の洗浄工程の後、第3の洗浄工程と第4の洗浄工程を、この順で複数回行うことが望ましい。また、ウェーハWの表面に酸化膜を形成し、保護膜として作用させるために、第4の洗浄工程の後、最終洗浄工程として、ウェーハWの表面にO3を含む洗浄液を供給してスピン洗浄する工程を行うことが好ましい。
【0037】
洗浄後、ウェーハWの裏面、エッジ部のパーティクルの評価工程に移ることができる。ウェーハWの裏面の評価工程としては、本来裏面となる側に表面側が来るように表裏反転したウェーハWを評価することで、感度良く評価できる。裏面のパーティクルを評価するには、例えばKLA社製パーティクルカウンターSP5にてパーティクル(欠陥)個数評価が行える。エッジ部のパーティクルを評価するには、レーザーテック社製エッジ検査装置EZ-300にてエッジ部のパーティクル(欠陥)個数評価が行える。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0039】
(実施例)
まず、第1の洗浄工程として、ウェーハの表裏面にO3水を端面が覆われるまで十分に供給してスピン洗浄を行った。ウェーハ回転数を1000rpm、O3濃度を20ppm、温度を24℃、O3水の流量を1L/min、洗浄時間を20secとした。
【0040】
次に、第2の洗浄工程として、ウェーハの裏面、エッジ部について、ブラシ洗浄を行った。ウェーハ回転数を50rpm、エッジブラシ回転数を20rpm、裏面ブラシ回転数を150rpm、洗浄液として純水を流し、純水の流量を1L/min、洗浄時間を40secとした。
【0041】
次に、第3の洗浄工程として、ウェーハの表面にO3水を流してスピン洗浄を行った。ウェーハ回転数を1000rpm、O3濃度を20ppm、温度を24℃、O3水の流量を1L/min、洗浄時間を20secとした。続いて、第4の洗浄工程として、HFを流して表面のスピン洗浄を行った。ウェーハ回転数を1000rpm、HF濃度を0.3wt%(質量パーセント濃度)、温度を24℃、HFの流量を1L/min、洗浄時間を7secとした。第3の洗浄工程、第4の洗浄工程をこの順で2回繰り返した。
【0042】
次に、最終洗浄工程として、O3水を流してウェーハの表面のスピン洗浄を行った。ウェーハ回転数を300rpm、O3濃度を20ppm、温度を24℃、O3水の流量を1L/min、洗浄時間を40secとした。
次に、ウェーハ回転数を1000rpm、乾燥時間を30secとして、ウェーハを乾燥させた。
【0043】
(比較例1)
ブラシ洗浄を行わなかったこと以外は実施例と同様にエピタキシャルウェーハの洗浄、乾燥を行った。
【0044】
(比較例2)
バッチ式洗浄機を用いて、エピタキシャルウェーハのSC-1洗浄を行った。NH4OH:28wt%、H2O2:30wt%の薬液を使用し、NH4OH/H2O2/H2Oを1:1:10の混合洗浄液にて70℃の液温にて5min間薬液に浸漬して洗浄した。
【0045】
実施例及び比較例で用いたエピタキシャルウェーハについて、エピタキシャル膜形成後(洗浄工程前)及び洗浄工程後の同一ウェーハの裏面及びエッジ部に対し、パーティクル除去率の評価を行った。裏面についてはKLA社製パーティクル測定器SP5を用いて28nm以上のサイズのパーティクル(欠陥)個数を評価し、エッジ部についてはレーザーテック社製エッジ検査装置EZ-300にてエッジ部のパーティクル(欠陥)個数評価を行った。エピタキシャル膜形成後の裏面付着パーティクル個数を1として洗浄工程後のパーティクル個数と比較し、除去されたパーティクル個数との比を取り、除去率として洗浄効果を比較した。
【0046】
図3は、実施例、比較例で行った各洗浄方法における、ウェーハの裏面のパーティクル除去率を示すグラフである。また、
図4は、実施例、比較例で行った各洗浄方法における、ウェーハの端面のパーティクル除去率を示すグラフである。裏面のパーティクル除去率はそれぞれ、比較例1(ブラシ洗浄を行わなかったスピン洗浄):5%、比較例2(バッチ式洗浄):33%、実施例(ブラシ洗浄を行ったスピン洗浄):83%であった。エッジ部のパーティクル除去率はそれぞれ、比較例1(ブラシ洗浄を行わなかったスピン洗浄):37%、比較例2(バッチ式洗浄):48%、実施例(ブラシ洗浄を行ったスピン洗浄):66%であった。なお、別途実施したエピタキシャルウェーハ表面の評価では、実施例において、表面のパーティクルレベルはエピタキシャル膜形成後(洗浄工程前)の状態からの増加は計測されなかった。
【0047】
実施例と比較例1、2の比較から、エピタキシャル膜形成後のウェーハに枚葉スピン洗浄にて、ウェーハの表面、裏面及び端面の有機物を分解・除去するとともに酸化膜を形成するために、O3を含む洗浄液にて洗浄した後に、裏面と端面をブラシ洗浄し、その後にウェーハの表面に対しO3を含む洗浄液を用いるスピン洗浄とHFを用いるスピン洗浄の順にて洗浄することにより、表面のパーティクルレベルをエピタキシャル膜形成後の状態を保ちつつ、裏面と端面のパーティクルを除去し、ウェーハの清浄度を良好なレベルに改善できたことが分かる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
1…エッジブラシ、 2…裏面ブラシ、 3…ウェーハ回転ローラー、
4a、4b、4c…薬液供給ノズル、 5…エッジブラシ保持治具。
W…ウェーハ。