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特許7300596インクジェット用硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化物を有する電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】インクジェット用硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化物を有する電子部品
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20230623BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230623BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230623BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C09D11/38
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 129
H05K3/28 C
H05K3/28 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020510914
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012857
(87)【国際公開番号】W WO2019189185
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018069133
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
(72)【発明者】
【氏名】松本 博史
(72)【発明者】
【氏名】韋 瀟竹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 里奈
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100353(JP,A)
【文献】特開2017-215569(JP,A)
【文献】特表2008-545859(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145671(WO,A1)
【文献】特開平07-109322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41M 5/00
B41J 2/01
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オキシムエステル系光重合開始剤と、
(B)アミノ基含有(メタ)アクリレート化合物と、
(C)水酸基含有(メタ)アクリレートと、
(D)ブロックイソシアネート化合物と、
アミノアセトフェノン系光重合開始剤と、
を含むことを特徴とするインクジェット用硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット用硬化性組成物を硬化したことを特徴とする硬化物。
【請求項3】
請求項に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用硬化性組成物に関し、特に表面硬化性及び深部硬化性に優れるインクジェット用硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化物を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント配線板のエッチングレジスト、ソルダーレジスト、及びマーキングの形成には、写真現像法及びスクリーン印刷法が用いられてきたが、パターニングを簡略化する目的で近年ではインクジェット法も利用されている。
【0003】
特許文献1にはインクジェット印刷に使用される光硬化性熱硬化性組成物が記載されている。この組成物は、(メタ)アクリロイル基含有モノマーとブロックイソシアネートと光重合開始剤とを含んでおり、この組成とすることにより、インクジェット法に適した比較的低い粘度を有し、かつ硬化後の密着性や耐熱性などを向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/146706号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインクジェット用硬化性組成物は、インクジェットプリンターから吐出可能とするために低粘度となるように調製された硬化性組成物(インキ)であるため、空気中の酸素が硬化性組成物に溶解し、拡散し易いという問題がある。また、インクジェット印刷法では、硬化性組成物を微小な液滴として吐出するため、液滴として吐出された硬化性組成物の全体としての比表面積は広くなり、より多くの酸素が溶解し易いという事情がある。
【0006】
これらの原因から、インクジェット印刷後のUV硬化のときに組成物が空気中の酸素によって硬化が阻害される、いわゆる酸素阻害を受け易く、よって、硬化膜は、表面硬化性が低下しやすく、にじみが生じやすかった。また、インクジェット印刷用硬化性組成物には、表面硬化性だけでなく、深部硬化性の更なる向上も従来から求められ続けている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、表面硬化性及び深部硬化性に優れるインクジェット印刷用硬化性組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、そのインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化した硬化物、及びその硬化物を有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、(A)オキシムエステル系光重合開始剤と、(B)アミノ基含有(メタ)アクリレート化合物と、を含むことを特徴とするインクジェット用硬化性組成物により達成される。
【0010】
従来では、オキシムエステル系光重合開始剤は酸素阻害(具体的にはにじみの発生、タック性の低下)を引き起こして表面硬化性が低下し得ることから使用されていなかったが、本発明では、アミノ基含有(メタ)アクリレート化合物と組み合わせることで表面硬化性に優れ、オキシムエステル系光重合開始剤を使用することで深部硬化性及びはんだ耐熱性を向上させることができることが本発明者らにより見出された。
【0011】
また、本発明のインクジェット用硬化性組成物は、さらに、アミノアセトフェノン系光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0012】
さらに、上記目的は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化した硬化物、及びその硬化物を有する電子部品により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面硬化性及び深部硬化性に優れるインクジェット印刷用硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。上述したように、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物は、アミノ基含有(メタ)アクリレート及びオキシムエステル系光重合開始剤を含む。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0015】
<(A)アミノ基含有(メタ)アクリレート>
アミノ基含有(メタ)アクリレートは、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物である。アミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のいずれでもよい。アミノ基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、使用できる市販の製品としては、DOUBLE BOND CHEMICAL社製DM-281(アミン変性多官能ポリエステルアクリレート)やアルケマ社製CN371NS(2官能アミノアクリレート)が挙げられる。
【0016】
アミノ基含有(メタ)アクリレートの含有量は、本発明の組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基含有モノマー全体を基準として、例えば、1~100質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~20質量%、更に好ましくは1~10質量%、特に好ましくは2~8質量%、最も好ましくは3~7質量%である。
【0017】
ここで、「(メタ)アクリロイル基含有モノマー」とは、本発明のインクジェット用硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基を含む化合物のことをいい、アミノ基含有(メタ)アクリレートの他、後述する水酸基含有(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレートなどを含む概念である。
【0018】
<(B)オキシムエステル系光重合開始剤>
オキシムエステル系光重合開始剤は、分子内に少なくとも1つのオキシムエステル基を有する化合物である。オキシムエステル系光重合開始剤の例としては、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-ブタンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-ペンタンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-ヘキサンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-ヘプタンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-1,2-ブタンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(エチルフェニルチオ)フェニル]-1,2-ブタンジオン、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(ブチルフェニルチオ)フェニル]-1,2-ブタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-メチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-プロピル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-ブチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン、2-(アセトキシイミノ)-4-(4-クロロフェニルチオ)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-ブタノンが使用可能であり、市販品として、BASFジャパン株式会社製のCGI-325、イルガキュア(登録商標)OXE01、イルガキュアOXE02、ADEKA社製N-1919などが挙げられる。
【0019】
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(I)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、Xは、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換基を有していてもよい)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換基を有していてもよい)を表し、
Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換基を有していてもよい)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基により置換基を有していてもよい)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、
Arは、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、4,2’-スチレン-ジイルを表し、
nは0又は1の整数である)。
【0022】
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基又はエチル基であり、Zがメチル又はフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェン又はチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0023】
オキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して、通常0.01~5質量部、好ましくは0.05~4質量部、より好ましくは0.1~3質量部、特に好ましくは0.5~2質量部である。
【0024】
<アミノアセトフェノン系光重合開始剤>
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、アミノアセトフェノン系光重合開始剤を含有していることが望ましい。これにより、表面硬化性及び深部硬化性の双方が更に向上する。アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的にはベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどを挙げることができる。市販品としては、IGM社製のOmnirad379、379、907などを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせ使用することができる。
【0025】
アミノアセトフェノン系光重合開始剤を使用する場合の配合量は、本発明の硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して、通常は0.1~15質量部、好ましくは1~12質量部、より好ましくは2~10質量部である。
【0026】
オキシムエステル系光重合開始剤に対するアミノアセトフェノン系光重合開始剤の質量比(アミノアセトフェノン系光重合開始剤/オキシムエステル系光重合開始剤)は、例えば、1~30、好ましくは5~20であることが本発明の効果を更に向上させることができる点で好ましい。
【0027】
(その他の光重合開始剤)
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、上記以外の光重合開始剤を含有してもよい。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6-トリス-s-トリアジン、2,2,2-トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0028】
また更に、これらに加え、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を使用することができる。また、可視光領域に吸収のあるCGI-784等(BASFジャパン社製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために光ラジカル重合開始剤に添加することもできる。
【0029】
<熱硬化成分>
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、熱硬化成分を含んでいてもよい。上記光重合に加えて、熱硬化する成分を添加して光及び熱の両方で硬化させることにより、硬化性組成物の硬化物の耐熱性が更に向上する。
【0030】
熱硬化成分としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化成分、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、保存安定性に優れることから、ブロックイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0031】
分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化成分は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0032】
多官能エポキシ化合物としては、ADEKA社製のアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A等のエポキシ化植物油;三菱化学社製のjER828、ダイセル化学工業社製のEHPE3150、DIC社製のエピクロン840、東都化成社製のエポトートYD-011、ダウケミカル社製のD.E.R.317、住友化学工業社製のスミ-エポキシESA-011、旭化成工業社製のA.E.R.330等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製のYSLV-80XY等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製のYSLV-120TEのチオエーテル型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、東都化成社製のエポトートYDB-400、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ-エポキシESB-400、旭化成工業社製のA.E.R.711等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、ダウケミカル社製のD.E.N.431DIC社製のエピクロンN-730、東都化成社製のエポトートYDCN-701、日本化薬社製のEPPN-201、住友化学工業社製のスミ-エポキシESCN-195X、旭化成工業社製のA.E.R.ECN-235等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC-3000等のビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST-2004(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH-434、住友化学工業社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;日本化薬社製のEPPN-501等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL-931等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN-190、DIC社製HP-4032等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB-3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0033】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0034】
なお、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート等、分子中にラジカル重合部位(メタクリル基)とカチオン重合部位(オキセタニル部位)を併せ持つモノマーは、光硬化成分でもあり、熱硬化成分でもあることから、光硬化及び熱硬化の2段階硬化を行う場合に組成物中に含まれることが好ましい。
【0035】
このような成分としては、多官能オキセタン化合物以外に、例えば、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート(製品名、DPGDA、東亞合成社製)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(製品名、4HBAGE、日本化成株式会社製)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(製品名、サイクロマーM100、株式会社ダイセル製)などが挙げられる。
【0036】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、三菱化学社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0037】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、例えばメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等がある。さらに、アルコキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン化合物、アルコキシメチル化グリコールウリル化合物およびアルコキシメチル化尿素化合物は、それぞれのメチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等とすることができる。特に人体や環境に優しいホルマリン濃度が0.2%以下のメラミン誘導体が好ましい。
【0038】
これらの市販品としては、例えば、サイメル300、同301、同303、同370、同325、同327、同701、同266(いずれも三井サイアナミッド社製)、ニカラックMx-750、同Mx-032、同Mx-270、同Mx-280、同Mx-290、同Mx-706(いずれも三和ケミカル社製)等を挙げることができる。このような熱硬化成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物は、1分子内に複数のイソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を有する化合物である。このような1分子内に複数のイソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を有する化合物としては、ポリイソシアネート化合物、またはブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。なお、ブロック化イソシアネート基とは、イソシアネート基がブロック剤との反応により保護されて一時的に不活性化された基であり、所定温度に加熱されたときにそのブロック剤が解離してイソシアネート基が生成する。上記ポリイソシアネート化合物、またはブロックイソシアネート化合物を加えることにより硬化性および得られる硬化物の強靭性を向上させることができる。
【0040】
このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートが用いられる。
【0041】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等が挙げられる。
【0042】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
脂環式ポリイソシアネートの具体例としてはビシクロヘプタントリイソシアネートが挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0044】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0045】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε-カプロラクタム、δ-パレロラクタム、γ-ブチロラクタムおよびβ-プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミドおよびマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミンおよびプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0046】
ブロックイソシアネート化合物は市販のものであってもよく、例えば、スミジュールBL-3175、BL-4165、BL-1100、BL-1265、デスモジュールTPLS-2957、TPLS-2062、TPLS-2078、TPLS-2117、デスモサーム2170、デスモサーム2265(いずれも住友バイエルウレタン社製)、コロネート2512、コロネート2513、コロネート2520(いずれも日本ポリウレタン工業社製)、B-830、B-815、B-846、B-870、B-874、B-882(いずれも三井武田ケミカル社製)、TPA-B80E、17B-60PX、E402-B80T(いずれも旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。なお、スミジュールBL-3175、BL-4265はブロック剤としてメチルエチルオキシムを用いて得られるものである。このような1分子内に複数のイソシアネート基、またはブロック化イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
熱硬化成分の配合量は、本発明の硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリレート含有モノマー100質量部に対して1~30質量部が好ましい。配合量が1質量部以上であれば、塗膜の強靭性、耐熱性がさらに向上する。一方、30質量部以下であれば、保存安定性が低下することを抑制できる。
【0048】
<水酸基含有(メタ)アクリレート>
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、水酸基含有(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。これにより、他の成分、特に熱硬化成分と反応することで、インクジェット用硬化性組成物の硬化後の耐熱性が更に向上する。水酸基含有(メタ)アクリレートは、少なくとも1つの水酸基と、少なくとも1つのアクロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物である。
【0049】
水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
市販品としてはアロニックスM-5700(東亞合成社製の商品名)、4HBA、2HEA、CHDMMA(以上、日本化成社製の商品名)、BHEA、HPA、HEMA、HPMA(以上、日本触媒社製の商品名)、ライトエステルHO、ライトエステルHOP、ライトエステルHOA(以上、共栄社化学社製の商品名)等がある。(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は1種類又は複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0051】
このうち、特に2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく用いられる。また、粘度調整の容易さ等から単官能(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられる。
【0052】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の配合量は、本発明の硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基含有モノマーの全体の質量を基準として、1~30質量%、より好ましくは2~15質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
【0053】
<その他の(メタ)アクリレート化合物>
本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物は、更に、上述した(メタ)アクリレート化合物以外の単官能や2官能などの(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。一般に、単官能(メタ)アクリレート化合物および/または2官能(メタ)アクリレート化合物を含むと低粘度化に有利であるものの、官能基が少ないので、表面硬化性および深部硬化性という点では不利になる。しかしながら、本発明では、(A)オキシムエステル系光重合開始剤と(B)アミノ基含有(メタ)アクリレート化合物とを組合せて含むことにより、インクジェット用途として求められる低粘度と、表面硬化性および深部硬化性に優れたものとなる。
【0054】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、脂肪族エポキシ変性(メタ)アクリレート等変性(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロキシアルキルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、γ-(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0055】
単官能(メタ)アクリレートを使用する場合、その含有量は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基含有モノマーの全体の質量を基準として、例えば1~99質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~30質量%、更に好ましくは1~10質量%、特に好ましくは2~8質量%である。
【0056】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどのジオールのジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの少なくとも何れか1種を付加して得たジオールのジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどのグリコールのジアクリレート、ビスフェノールAEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールA PO付加物ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、シクロヘキシルジアクリレートなどの環状構造を有するジアクリレート、などが挙げられる。
【0057】
市販されているものとしては、ライトアクリレート1,6HX-A、1,9ND-A、3EG-A、4EG-A、(共栄社化学社製の商品名)、HDDA、1,9-NDA、DPGDA、TPGDA(ダイセル・サイテック社製の商品名)、ビスコート#195、#230、#230D、#260、#310HP、#335HP、#700HV、(大阪有機化学工業社製の商品名)、アロニックスM-208、M-211B、M-220、M-225、M-240、M-270(東亞合成社製の商品名)などが挙げられる。
【0058】
2官能(メタ)アクリレートを使用する場合、その含有量は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基含有モノマーの全体の質量を基準として、例えば1~99質量%、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~85質量%である。
【0059】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤、重合開始助剤等の添加剤を含有させることができる。
【0060】
消泡剤・レベリング剤としてはシリコーン、変性シリコーン、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0061】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘度鉱物や微粒子シリカ、シリカゲル、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0062】
消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤を添加することにより、硬化物の表面特性および組成物の性状の調整を行うことができる。
【0063】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ-アミノプロピルトリメトキシラン、Ν―β―(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、Ν―フェニル―γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチルー1-ブチル)ビス-(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m-アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ-ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m-アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート(、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3-メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2-ビス(2-プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2-(ビス2-プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト-O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0064】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。
【0065】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコンポリマー等が使用できる。
【0066】
重合速度や重合度を調整するためには、更に、重合禁止剤、重合遅延剤を添加することも可能である。
【0067】
重合開始助剤としては、2,4-ジメチルチオキサントンを使用することができ、その含有量は、本発明の硬化性組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して通常は0.1~5質量部、好ましくは0.5~2質量部である。
【0068】
更に、本発明の硬化性樹脂組成物には、粘度調整のため溶剤を用いてもよいが、硬化後の膜厚低下を防ぐために、添加量は少ないことが好ましい。また、粘度調整のための溶剤は含まないことがより好ましい。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物には、着色を目的として、着色顔料や染料等を添加しても良い。着色顔料や染料等としては、カラ-インデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、PigmentGreen 7、 36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139 179 185 93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、 198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、Pigment Brown 23、25、PigmentBlack 1、7等が挙げられる。これら着色顔料・染料等は、硬化性組成物の全体の質量を基準として0.01~5質量%添加することが好ましい。
【0070】
また、本発明の硬化性組成物は、LEDの光の反射率を向上させるためにルチル型やアナターゼ型の酸化チタンを添加してもよい。この場合は、硬化性組成物100の質量を基準として、1~20質量%添加することが好ましい。これら着色顔料・染料等は単独や2種以上の併用で使用できる。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、インクジェット法による印刷に適用可能である。インクジェット法による印刷に適用可能であることには、インクジェットプリンターにより噴射可能な粘度であることが好ましい。
【0072】
粘度とはJIS Z8803に従って測定した粘度を指す。また、上記のインクジェット用硬化性組成物の粘度は常温(25℃)で150mPa・s以下であることが好ましい。上述のように、インクジェットプリンターに使用するインクの粘度は塗布時の温度において約20mPa・s以下であることが好ましい。しかし、常温で150mPa・s以下の粘度であれば、塗布前、若しくは塗布時の加温によって上記条件を充足することができる。粘度条件を調べる。
【0073】
従って、本発明の硬化性組成物によりプリント配線板用の基板等に、直接パターンを印刷することができる。
【0074】
更に、本発明の硬化性組成物は、常温では重合反応が生じないため、一液型の硬化性組成物として安定に保存可能である。
【0075】
本発明の硬化性組成物はインクジェットプリンターにインクとしてされ、基板上への印刷に使用される。
【0076】
本発明の硬化性組成物は光重合開始剤を含むため、印刷直後の組成物層に50mJ/cm~1000mJ/cm光照射を行うことにより組成物層を光硬化させることができる。光照射は、紫外線、電子線、化学線等の活性エネルギー線の照射により、好ましくは紫外線照射により行われる。
【0077】
インクジェットプリンターにおける紫外線照射は、例えばプリントヘッドの側面に高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LEDなどの光源を取り付け、プリントヘッドもしくは基材を動かすことによる走査を行うことにより行うことができる。この場合は、印刷と、紫外線照射とをほぼ同時に行なえる。
【0078】
光硬化後の硬化性組成物は、熱硬化成分が含まれる場合には、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の加熱炉を用いることにより熱硬化する。加熱条件は、130℃~170℃にて5分~90分加熱することが好ましい。
【0079】
このように基板等の基材上にパターン印刷した硬化性組成物からなる被膜は、ソルダーレジストとして用いられる場合、部品の実装のためのはんだ付け工程で加熱される。はんだ付けは、手はんだ付け、フローはんだ付け、リフローはんだ付け等のいずれで行われてもよいが、例えば、リフローはんだ付けの場合には、100℃~140℃で1~4時間の予熱と、その後、240~280℃で5~20秒程度の加熱を複数回(例えば、2~4回)繰り返してはんだを加熱・溶融させるリフロー工程に供される。
【0080】
また、基板が、いわゆるリジッド基板、すなわち、両面に配線がプリントされた両面板や基板を積層させてなる多層板である場合には、上記硬化性組成物からなる被膜を有する基板が複数回上記はんだ付け工程に供され、繰り返し加熱されることとなる。
【0081】
しかし、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、得られた被膜は、複数回のはんだ付けを想定した熱履歴を受けた後においても被膜上のクラックの発生が無く、且つ十分な基板との密着性及び被膜硬度を維持しており、リジッド基板上に施されるソルダーレジストとして期待される良好な機械的特性を有する。
【0082】
本発明の硬化性組成物は、表面硬化性、深部硬化性及び耐熱性に優れることから種々の用途に適用可能であり、適用対象に特に制限はない。例えばプリント配線板用のソルダーレジスト、およびマーキング等に用いられることが好ましい。
【0083】
上述したように、本発明は、本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物を硬化してなる硬化物、及びその硬化物を有する電子部品も提供する。本発明のインクジェット印刷用硬化性組成物を用いることで、品質、耐久性及び信頼性の高い電子部品が提供される。なお、本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれ、本発明の硬化性組成物の硬化物がこれらの絶縁性硬化塗膜として、本発明の効果を奏するものである。
【0084】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成および実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【実施例
【0085】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0086】
<組成物の調製>
表1に示す割合(単位:質量部)で各成分を配合し、これをディゾルバーで撹拌した。その後ビーズミルを用いて1mmのジルコニアビーズにて分散を2時間行い、本発明の組成物(実施例1~4)および比較組成物(比較例1~4)を得た。
【0087】
<評価>
(1)深部硬化性
60μmのアプリケーター(ERICHSEN社製)を使って上記組成物をFR-4基材上に塗布し、LED365nm(フォセオン社製FE400)600mJ/cmにて硬化を行った。その後、150℃の熱風循環式乾燥炉にて60分間加熱処理を行った。作製したサンプルに対してクロスカットテープピール試験(JIS K5600)を実施した。剥離が生じなかったものを○とし、剥離が生じたものを×とした。
【0088】
(2)タック
60μmのアプリケーター(ERICHSEN社製)を使って上記組成物を銅箔上に塗布し、LED365nm(フォセオン社製FE400)600mJ/cmにて硬化を行った。その後、150℃の熱風循環式乾燥炉にて60分間加熱処理を行った。作製したサンプルに対し塗膜の表面の指触乾燥性を評価した。タック性無しを○とし、硬化せず、液状のままのものを×とした。
【0089】
(3)耐熱性
60μmのアプリケーター(ERICHSEN社製)を使って上記組成物を銅箔上に塗布し、LED365nm(フォセオン社製FE400)600mJ/cmにて硬化を行った。その後、150℃の熱風循環式乾燥炉にて60分間加熱処理を行った。作製したサンプルに対しJIS C-5012の方法に準拠し、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行った後の塗膜状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。塗膜に変化がなかったものを○とし、塗膜が剥離したものを×とした。
【0090】
(4)にじみ
60μmのアプリケーター(ERICHSEN社製)を使って上記組成物を銅箔上に塗布し、LED365nm(フォセオン社製FE400)600mJ/cmにて硬化を行った。その後塗膜の端部からのにじみを光学顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。塗膜端部からにじみがないものを○とし、塗膜端部からにじみがあるものを×とした。
【0091】
【表1】
【0092】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0093】
7982:ブロックイソシアネート(Baxenden社製)
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成社製)
CHDMMA:1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成社製)
DM-281:アミン変性多官能ポリエステルアクリレート(DOUBLE BOND CHEMICAL社製
CN371NS:2官能アミノアクリレート(アルケマ社製)
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート(BASFジャパン社製)
M-221B: ビスフェノールA EO変性ジアクリレート(東亞合成社製)
POA:フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学)
Omnirad379:ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン(IGM社製)
DETX:2,4-ジメチルチオキサントン(日本化薬社製)
TOE-04-A3:オキシムエステル光重合開始剤(日本化学工業所社製)
OXE-02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製)
MA-100:カーボンブラック(三菱化学社製)
BYK-307:シリコン系添加剤(ビックケミー・ジャパン社製)
【0094】
<評価結果>
実施例1~4では、深部硬化性、表面硬化性(タック、みじみ)及び耐熱性の全ての点で良好な結果が得られたが、水酸基含有アクリレートを含有しない比較例1では耐熱性に劣り、アミノ基含有アクリレートを含有しない比較例2では表面硬化性(タック及びにじみ)に劣り、オキシムエステル系光重合開始剤を使用しなかった比較例3では深部硬化性に劣り、水酸基含有アクリレート、アミノ基含有アクリレート、及びオキシムエステル系光重合開始剤を全て含まない比較例4では全ての評価が低いことが認められた。