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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】光学式測定装置および光源制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019212328
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021085674
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 利久
(72)【発明者】
【氏名】田村 謙太郎
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-162659(JP,A)
【文献】特開2009-204425(JP,A)
【文献】特開2006-177843(JP,A)
【文献】特開2015-010959(JP,A)
【文献】特開2009-085775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0292406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/06
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を含み、当該光源から発光された光を対象物に照射する照射部と、
前記対象物で反射された前記光を受光し、前記対象物までの距離に応じた光強度波形を示す画像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子よりも広いダイナミックレンジを有し、前記対象物で反射された前記光を受光して光検出信号を出力する光検出器と、
前記撮像素子の受光量が飽和している場合、前記光検出信号の出力値に基づいて前記光源の発光強度の目標値を算出し、前記目標値に基づいて前記光源を制御する光源制御部と、を備える
ことを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
光源を含み、当該光源から発光された光を対象物に照射する照射部と、
前記対象物で反射された前記光を受光し、前記対象物までの距離に応じた光強度波形を示す画像信号を出力する撮像素子と、
前記撮像素子よりも広いダイナミックレンジを有し、前記対象物で反射された前記光を受光して光検出信号を出力する光検出器と、を備える光学式測定装置において実行される光源制御方法であって、
前記撮像素子の受光量が飽和している場合、前記光検出信号の出力値に基づいて、前記光源の発光強度の目標値を算出する目標値算出工程と、
前記目標値に基づいて前記光源を制御する光源制御工程と、を含む
ことを特徴とする光源制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光源制御方法において、
前記光源の前記発光強度をX軸とし、前記画像信号または前記光検出信号の信号レベルをY軸とする座標系において、前記発光強度の変化に対する前記画像信号のピーク値の変化を表す直線を撮像感度直線とし、前記発光強度の変化に対する前記光検出信号の出力値の変化を表す直線を光検出感度直線とする場合、
前記目標値算出工程は、
前記光検出信号の出力値に基づいて前記対象物に関する前記光検出感度直線を算出する工程と、
前記対象物に関する前記光検出感度直線を前記対象物に関する前記撮像感度直線に変換する工程と、
前記対象物に関する前記撮像感度直線に基づいて、前記画像信号の前記ピーク値が所定値に調整される前記発光強度の値を、前記目標値として算出する工程と、を含む
ことを特徴とする光源制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光源制御方法において、
前記撮像感度直線と前記光検出感度直線との間のオフセットおよび角度差を含む相関情報を取得する情報取得工程をさらに備え、
前記目標値算出工程は、前記相関情報に基づいて、前記対象物に関する前記光検出感度直線を前記対象物に関する前記撮像感度直線に変換する
ことを特徴とする光源制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光源制御方法において、
前記情報取得工程は、
互いに異なる反射率を有する複数の基準物について、前記複数の基準物に関する前記撮像感度直線の平均である撮像感度平均直線と、前記複数の基準物に対応する前記光検出感度直線の平均である光検出感度平均直線とをそれぞれ取得する工程と、
前記光検出感度平均直線と前記撮像感度平均直線との間のオフセットおよび角度差を、前記相関情報の前記オフセットおよび前記角度差として算出する工程と、を含む
ことを特徴とする光源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を対象物に照射して当該対象物の形状を非接触で測定する光学式測定装置および光源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物にレーザ光などの光を照射し、対象物に形成された光スポットを撮像することで、対象物の形状を非接触で測定する光学式測定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上述の光学式測定装置は、三角測量法の原理を利用することにより、撮像画像における光スポットの結像位置に基づいて、測定対象物までの距離を算出する。具体的には、光学式測定装置において撮像される撮像画像は、図8に示すように、画素位置に対する画像明度を示す光強度波形を形成するものであり、この光強度波形のピークに対応する画素位置Pxが対象物までの距離に対応している。
このような光学式測定装置では、対象物の表面の反射率が高くなると、撮像部の受光量が増加し、光強度波形のピーク高さが高くなる。そして、図9に示すように、撮像素子の受光量が飽和すると、光強度波形のピークを特定することが困難になり、その結果、対象物までの距離を正確に測定できなくなる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の光学式測定装置では、撮像画像に基づいて撮像素子の受光量を算出し、撮像素子の受光量が所定範囲内になるように、光源の発光強度をフィードバック制御することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-139311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の光学式測定装置は、特許文献1に記載のフィードバック制御を行っていた場合であっても、対象物の走査中にフィードバック制御が追い付かなくなり、撮像素子の受光量が飽和してしまう可能性がある。この場合、撮像画像に基づいて撮像素子の受光量を正確に算出できないため、光源の発光強度を適切に制御できず、測定精度に影響する。
【0007】
本発明は、撮像素子の受光量が飽和している場合に光源の発光強度を適切に制御できる光学式測定装置および光源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学式測定装置は、光源を含み、当該光源から発光された光を対象物に照射する照射部と、前記対象物で反射された前記光を受光し、前記対象物までの距離に応じた光強度波形を示す画像信号を出力する撮像素子と、前記撮像素子よりも広いダイナミックレンジを有し、前記対象物で反射された前記光を受光して光検出信号を出力する光検出器と、前記撮像素子の受光量が飽和している場合、前記光検出信号の出力値に基づいて前記光源の発光強度の目標値を算出し、前記目標値に基づいて前記光源を制御する光源制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の光学式測定装置は、撮像素子および光検出器のそれぞれが対象物で反射された光を受光するように構成されており、光源の発光強度が増加する場合、撮像部から出力される画像信号のピーク値と、光検出器から出力される光検出信号の出力値とは、それぞれ一次関数的に増加する。ここで、光検出器は、撮像素子よりも広いダイナミックレンジを有しているため、撮像素子の受光量が飽和している場合であっても、光検出器の受光量が飽和する可能性は低い。このため、光源制御部は、撮像素子の受光量が飽和している場合、光検出器から出力される光検出信号の出力値に基づいて、撮像素子の受光量が飽和レベル以下になる程度の発光強度の値である目標値を算出できる。そして、光源制御部は、光源を目標値に基づいて制御することにより、撮像素子を飽和状態から素早く回復させることができる。
よって、本発明の光学式測定装置によれば、撮像素子の受光量が飽和している場合に光源の発光強度を適切に制御でき、その結果、測定精度を向上させることができる。
なお、本発明において、光検出器は、対象物で反射された光を直接的に受光してもよいし、間接的に受光してもよい。
【0010】
本発明の光源制御方法は、光源を含み、当該光源から発光された光を対象物に照射する照射部と、前記対象物で反射された前記光を受光し、前記対象物までの距離に応じた光強度波形を示す画像信号を出力する撮像素子と、前記撮像素子よりも広いダイナミックレンジを有し、前記対象物で反射された前記光を受光して光検出信号を出力する光検出器と、を備える光学式測定装置において実行される光源制御方法であって、前記撮像素子の受光量が飽和している場合、前記光検出信号の出力値に基づいて、前記光源の発光強度の目標値を算出する目標値算出工程と、前記目標値に基づいて前記光源を制御する光源制御工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の光源制御方法によれば、上述した測定装置と同様、撮像素子の受光量が飽和している場合に光源の発光強度を適切に制御でき、その結果、測定精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の光源制御方法において、前記光源の前記発光強度をX軸とし、前記画像信号または前記光検出信号の信号レベルをY軸とする座標系において、前記発光強度の変化に対する前記画像信号のピーク値の変化を表す直線を撮像感度直線とし、前記発光強度の変化に対する前記光検出信号の出力値の変化を表す直線を光検出感度直線とする場合、前記目標値算出工程は、前記光検出信号の出力値に基づいて前記対象物に関する前記光検出感度直線を算出する工程と、前記対象物に関する前記光検出感度直線を前記対象物に関する前記撮像感度直線に変換する工程と、前記対象物に関する撮像感度直線に基づいて、前記画像信号の前記ピーク値が所定値に調整される前記発光強度の値を、前記目標値として算出する工程と、を含むことが好ましい。
なお、画像信号のピーク値が調整される所定値は、撮像素子の飽和レベルよりも低い値であればよい。
本発明によれば、光源の発光強度に関する目標値を適切に算出できる。
【0012】
本発明の測定方法は、前記撮像感度直線と前記光検出感度直線との間のオフセットおよび角度差を含む相関情報を取得する情報取得工程をさらに備え、前記目標値算出工程は、前記相関情報に基づいて、前記対象物に関する前記光検出感度直線を前記対象物に関する前記撮像感度直線に変換することが好ましい。
本発明によれば、光源の発光強度に関する目標値をより適切に算出できる。
【0013】
本発明の測定方法において、前記情報取得工程は、互いに異なる反射率を有する複数の基準物について、前記複数の基準物に関する前記撮像感度直線の平均である撮像感度平均直線と、前記複数の基準物に対応する前記光検出感度直線の平均である光検出感度平均直線とをそれぞれ取得する工程と、前記光検出感度平均直線に対する前記撮像感度平均直線のオフセットおよび角度差を、前記相関情報として算出する工程と、を含むことが好ましい。
本発明は、互いに反射率の異なる複数の基準物間の平均データを利用しているため、様々な反射率の対象物に対して、光源の発光強度に関する目標値を適切に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる光学式測定装置を示す模式図。
図2】前記実施形態の光源制御方法における情報取得工程を説明するためのグラフ。
図3】前記実施形態の情報取得工程における撮像感度平均直線を例示するグラフ。
図4】前記実施形態の情報取得工程における光検出感度平均直線を例示するグラフ。
図5】前記実施形態の光源制御方法を説明するためのフローチャート。
図6】前記実施形態の光源制御方法における目標値算出工程を説明するためのグラフ。
図7】前記実施形態の変形例にかかるプローブヘッドを示す図。
図8】光強度波形を例示するグラフ。
図9】光強度波形を例示するグラフであって、従来技術における課題を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
〔測定装置の構成〕
図1において、本実施形態に係る光学式測定装置1は、非接触で対象物Mの形状を測定する三次元測定装置であり、プローブヘッド10と、プローブヘッド10を任意の位置に移動させる移動機構20と、プローブヘッド10からの信号に基づいて対象物Mの形状を測定する制御部30とを備える。
【0016】
(プローブヘッド)
プローブヘッド10は、図1に示すように、照射部11、撮像部12および光検出器13を備えている。
照射部11は、レーザ光を発光するレーザ光源111と、照射光学系112とを有する。
レーザ光源111は、例えばレーザダイオードを含んで構成される。このレーザ光源111は、後述の光源制御部35から入力される制御信号(レーザパワーの目標値)に従ってレーザ光を出射する。すなわち、レーザ光源111のレーザパワーは、光源制御部35によって制御される。
なお、レーザ光源111のレーザパワーは、本発明の光強度に相当する。
【0017】
照射光学系112は、レーザ光源111から出射されたレーザ光を対象物Mの測定点に照射する光学系である。この照射光学系112は、例えば、レーザ光源111から出射されたレーザ光を平行化するコリメートレンズなどを含んで構成される。
【0018】
撮像部12は、受光光学系121と、受光光学系121を介してレーザ光を受光する撮像素子122とを有する。
受光光学系121は、対象物Mで反射されたレーザ光を撮像素子122の受光面に結像させる光学系である。この受光光学系121は、例えば、対象物Mで反射されたレーザ光を集光する集光レンズなどを含んで構成される。
【0019】
撮像素子122は、例えばCCD等のイメージセンサであり、1方向または2方向に沿って配置された複数の画素を有している。撮像素子122は、受光光学系121を透過したレーザ光を受光し、光強度波形を示す画像信号を出力する。光強度波形は、従来技術と同様、画素位置に対する画像明度を示す波形である(図8参照)。画像信号の光強度波形のピークに対応する画素位置Pxは、対象物Mまでの距離に応じて異なる。
【0020】
光検出器13は、例えばフォトダイオードであり、光検出器13は、対象物Mで反射されたレーザ光(散乱光)を受光し、受光量に応じた光検出信号を出力する。この光検出器13は、撮像部12の撮像素子122よりも広いダイナミックレンジを有する。
【0021】
(移動機構)
移動機構20は、プローブヘッド10を任意の位置に移動させる機構である。また、移動機構20には、プローブヘッド10の位置を検出するための図示略の位置検出センサーが設けられている。
移動機構20の具体的な構成は特に限定されず、例えば、多関節アームの先端にプローブヘッド10を保持させ、多関節アームの各アームの角度を変更可能な構成としてもよい。この場合、各アームの回転角度を検出するロータリーエンコーダー等の角度検出センサーを設ける。これにより、制御部30は、各アームのアーム長とアーム間の角度に基づいて、プローブヘッド10の位置や姿勢を算出することができる。
また、移動機構20として、プローブヘッド10をXYZ方向に移動させる門型フレームに保持させる構成としてもよい。つまり、移動機構20は、Y方向に移動可能なコラムと、コラムに保持されてX方向に平行なビームと、ビーム上をX方向に移動可能なスライダーと、スライダーに設けられて、Z方向に移動可能なヘッド保持部材とを備え、ヘッド保持部材にプローブヘッド10が保持される構成としてもよい。このような構成では、移動機構20は、コラムのY方向の位置を検出するYスケール、スライダーのX方向の位置を検出するXスケール、ヘッド保持部材のZ方向の位置を検出するZスケールを備える構成とすればよい。これにより、プローブヘッド10のXYZ座標を検出することができる。ヘッド保持部材に、プローブヘッド10の角度を変更する角度変更部を設けてもよく、この場合、角度変更部に角度検出センサーを設けることで、プローブヘッド10の姿勢を検出できる。
【0022】
(制御部)
制御部30は、コンピューターにより構成されており、演算部31および記憶部37を備えて構成されている。演算部31は、記憶部37に記録された各種プログラムを読み込み実行することにより、図1に示すように、測定制御部32、形状算出部33、飽和判定部34、光源制御部35および情報取得部36として機能する。
【0023】
測定制御部32は、プローブヘッド10および移動機構20を制御することで、照射部11から出射されるレーザ光を対象物Mの複数の測定点に対して順に照射し、測定点毎に画像信号および光検出信号を取得する。
形状算出部33は、撮像部12から出力された画像信号に基づいて、プローブヘッド10から対象物Mの測定点までの距離を算出する。また、形状算出部33は、算出された測定点までの距離と、プローブヘッド10の位置および姿勢とに基づいて、当該測定点の三次元座標を算出する。そして、形状算出部33は、対象物M上の複数の測定点に算出された三次元座標をつなぎ合わせることで、対象物Mの表面形状を測定する。
【0024】
飽和判定部34は、撮像信号に基づいて、撮像素子122の受光量が飽和しているか否かを判定する。
光源制御部35は、撮像素子122の受光量が飽和している場合、レーザ光源111に対して制御信号(レーザパワーの新たな目標値)を出力することにより、レーザ光源111のレーザパワーを制御する。
情報取得部36は、光源制御部35による制御に必要な各種情報の取得を行う。
記憶部37は、制御部30を機能させるためのプログラムや各種情報を記憶する。
【0025】
〔光源制御方法〕
以下、本実施形態の光学式測定装置1において実施される光源制御方法について説明する。
(事前処理)
本実施形態の光学式測定装置1は、測定対象である対象物Mを測定する前に、反射率の異なる複数の基準物を用いた情報取得工程を行う。
【0026】
まず、プローブヘッド10は、対象物Mの替わりの基準物がセットされた状態において、レーザ光を基準物に照射する。情報取得部36は、レーザパワーを所定量変化させる毎に、画像信号のピーク値と光検出信号の出力値とをそれぞれ取得し、記憶部37に記憶させる。なお、本実施形態では、基準物として、反射率の比較的低い黒色基準物と、反射率の比較的高い白色基準物とを、それぞれ用いてデータの取得を行う。
【0027】
次に、情報取得部36は、レーザパワーをX軸成分とし、画像信号または光検出信号の出力レベルをY軸成分とするXY座標系において、白色基準物および黒色基準物のそれぞれで取得したデータをプロットし、線形近似直線を描画することで、各種直線を算出する。
【0028】
具体的には、図2に示すように、白色基準物ついて、レーザパワーの変化に対する画像信号のピーク値の変化を表す一次関数(直線)である撮像感度直線Li-Wを算出する。また、白色基準物について、レーザパワーの変化に対する光検出信号の出力値の変化を表す一次関数(直線)である光検出感度直線Ld-Wを算出する。
同様に、図2に示すように、黒色基準物ついて、レーザパワーの変化に対する画像信号のピーク値の変化を表す一次関数(直線)である撮像感度直線Li-Bを算出する。また、黒色基準物について、レーザパワーの変化に対する光検出信号の出力値の変化を表す一次関数(直線)である光検出感度直線Ld-Bを算出する。
【0029】
次に、図2に示すように、2つの撮像感度直線Li-W,Li-Bが互いに交わる交点Piの座標を算出する。また、図3に示すように、2つの撮像感度直線Li-W,Li-Bの平均である撮像感度平均直線Li-Avgを算出し、この撮像感度平均直線Li-Avgが任意の軸(例えばX軸)との間に形成する角度θiを算出する。
同様に、図2に示すように、2つの光検出感度直線Ld-W,Ld-Bが交わる交点Pdの座標を算出する。また、図4に示すように、2つの光検出感度直線Ld-W,Ld-Bの平均である光検出感度平均直線Ld-Avgを算出し、この光検出感度平均直線Ld-Avgが任意の軸(例えばX軸)との間に形成する角度θdを算出する。
【0030】
次に、光検出感度平均直線Ld-Avgに対する撮像感度平均直線Li-Avgのオフセット量Δrを求める。本実施形態において、このオフセット量Δrは、交点Piに対する交点Pdの座標差(ΔX,ΔY)として算出できる。
また、光検出感度平均直線Ld-Avgに対する撮像感度平均直線Li-Avgの角度差Δθを求める。本実施形態において、この角度差は、角度θiに対する角度θdの差として算出できる。
【0031】
情報取得部36は、上述で算出されたオフセット量Δrおよび角度差Δθを、撮像感度直線と光検出感度直線との相関関係を示す相関情報として、記憶部37に記憶させる。また、2つの光検出感度直線Ld-W,Ld-Bが交わる交点Pdを、光検出感度直線の始点情報として、記憶部37に記憶させる。
【0032】
ここで、各基準物に関する撮像感度直線Li-W,Li-Bが成す形状と、各基準物に関する光検出感度直線Ld-W,Ld-Bが成す形状は、互いに相似している。すなわち、各基準物に関する撮像感度直線Li-W,Li-Bが間に挟む角度θis(図3参照)と、各基準物に関する光検出感度直線Ld-W,Ld-Bが間に挟む角度θds(図4参照)とは、ほぼ等しい。
このため、後述の測定処理において、対象物Mに関する光検出感度直線が推定される場合、上述で求めた相関情報(オフセット量Δrおよび角度差Δθ)に基づく演算処理を行うことにより、当該光検出感度直線を対象物Mに関する撮像感度直線に変換することができる。
【0033】
(測定処理)
本実施形態の光学式測定装置1は、対象物Mの形状を測定する間、レーザ光源111のレーザパワーを制御する。以下、対象物Mの測定中に実施されるレーザ光源111の制御方法について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
なお、対象物Mの測定前、光学式測定装置1には、レーザパワーについて適当な目標値が設定されているものとする。
【0034】
まず、測定制御部32がプローブヘッド10および移動機構20を制御することで、照射部11から出射されるレーザ光を対象物Mの測定点に対して照射し、画像信号および光検出信号を取得する(ステップS1)。
なお、ステップS1で得られる画像信号は、形状算出部33が測定点の座標を測定するために用いられる。形状算出部33による処理は、従来と同様であるため詳細を省略する。
【0035】
飽和判定部34は、測定制御部32により取得された画像信号に基づいて、撮像素子122の受光量が飽和しているか否かを判定する(ステップS2)。撮像素子122の飽和状態を判定する方法は、特に限定されないが、画像信号の波形形状に基づいて判定してもよいし、画像信号のピーク値を閾値と比較することによって判定してもよい。
【0036】
撮像素子122が飽和していないと判定された場合(ステップS2でNoの場合)、直前のステップS1で得られた画像信号に応じる光源制御は終了する。
【0037】
撮像素子122が飽和していると判定された場合(ステップS2でYesの場合)、光源制御部35は、直前のステップS1で得られた光検出信号の出力値と、記憶部37に記憶された各種情報とに基づいて、レーザパワーの目標値を算出する(ステップS3)。
【0038】
具体的には、図6に示すように、レーザパワーをX軸成分とし、画像信号または光検出信号の信号レベルをY軸成分とするXY座標系において、現在設定されているレーザパワーの目標値PWsをX座標とし、直前のステップS1で得られた光検出信号の出力値V1をY座標とする点P1を求める。そして、この点P1と光検出感度直線の始点(交点Pd)とをそれぞれ通る直線を、対象物Mに関する光検出感度直線Ld-Mとして算出し、この光検出感度直線Ld-Mの傾き(X軸に対する角度θd-M)を算出する。
【0039】
次に、光検出感度直線Ld-Mの角度θd-Mに対して記憶部37に記憶された角度差Δθを加えると共に、この光検出感度直線Ld-Mを記憶部37に記憶されたオフセット量Δr分だけ移動させる。これにより、対象物Mに関する光検出感度直線Ld-Mが、対象物Mに関する撮像感度直線Li-Mに変換される。そして、変換された撮像感度直線Li-Mを用いて、画像信号のピーク値が所定値Vt(例えば画像信号の飽和レベルの90%の値)となるレーザパワーの値を新たな目標値PWtとして算出する。
【0040】
なお、図6には、現在設定されているレーザパワーの目標値PWsをX座標とし、直前のステップS1で得られた画像信号のピーク値(飽和レベル)をY座標とする点P2を参考のために示している。ただし、この点P2は、撮像素子122の実際の受光量には対応しておらず、撮像感度直線Li-M上に示す点P3が実際の受光量に対応する。
【0041】
その後、光源制御部35は、ステップS3で算出された目標値PWtを制御信号として、レーザ光源111に出力する。これにより、レーザ光源111のレーザパワーは目標値PWtに制御される(ステップS4)。これにより、直前のステップS1で得られた画像信号に応じる光源制御は終了する。
【0042】
以上に説明した図5のフローチャートは、対象物Mに設定された測定領域の走査が終了するまで、対象物Mの複数の測定点についてそれぞれ実施される。対象物Mに設定された測定領域の走査が終了すると、形状算出部33は、複数の測定点について得られた座標をつなぎ合わせて、対象物Mの形状を測定する。
【0043】
なお、図5のフローチャートにおいて、ステップS1の後、形状算出部33が画像信号に基づいて測定点の座標を測定するタイミングは、光源制御に関するステップS2~S4とは独立していてもよい。あるいは、形状算出部33は、ステップS2で撮像素子122が飽和していないと判定された後に、測定点の座標を測定してもよい。また、ステップS2で撮像素子122が飽和状態であると判定された場合、ステップS4でレーザパワーが制御された後、前回と同一の測定点についてステップS1を実施し、得られた画像信号に基づいて測定点の座標を測定してもよい。
【0044】
[本実施形態の効果]
本実施形態の光学式測定装置1は、撮像部12および光検出器13のそれぞれが対象物Mで反射された光を受光するように構成されており、レーザ光源111のレーザパワーが増加する場合、撮像部12から出力される画像信号のピーク値と、光検出器13から出力される光検出信号の出力値とは、それぞれ一次関数的に増加する。ここで、光検出器13は、撮像部12よりも広いダイナミックレンジを有しているため、撮像素子122の受光量が飽和した場合であっても、光検出器13の受光量が飽和する可能性は低い。このため、光源制御部35は、撮像素子122の受光量が飽和している場合、光検出器13から出力される光検出信号の出力値に基づいて、撮像素子122の受光量が飽和しない程度のレーザパワーの値である目標値を算出できる。そして、光源制御部35は、レーザ光源111を目標値に基づいて制御することにより、撮像素子122を飽和状態から素早く回復させることができる。
また、本実施形態の光学式測定装置1における光源制御方法は、光源制御部35の機能として説明した目標値算出工程および光源制御工程を行うことにより、同様の効果を奏する。
【0045】
また、本実施形態において、目標値算出工程は、対象物Mに関する光検出感度直線Ld-Mを対象物Mに関する撮像感度直線Li-Mに変換し、この撮像感度直線Li-Mに基づいてレーザパワーを算出する。これにより、レーザパワーの適切な目標値を算出できる。
【0046】
また、本実施形態において、撮像感度直線と光検出感度直線とのオフセットおよび角度差を含む相関情報を取得する情報取得工程をさらに実施する。これにより、目標値算出工程は、光検出感度直線Ld-Mを撮像感度直線Li-Mに適切に変換することができ、その結果、レーザパワーの目標値をより適切に算出できる。
【0047】
また、本実施形態において、情報取得工程は、互いに反射率の異なる複数の基準物間の平均データを利用しているため、様々な反射率の対象物に対してレーザパワーの目標値をより適切に算出できる。
【0048】
なお、特許文献1などの従来技術では、レーザパワーの設定値を逐次変化させて収束させるフィードバック制御を行うため、光源制御にかかる時間が測定速度に影響を与えてしまう。一方、本実施形態では、従来技術のようなフィードバック制御を行わなくてもよいため、レーザ光源111の制御にかかる時間を必要最小限に抑えることができ、測定速度に対する影響が少ない。
【0049】
〔変形例〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、照射部11がレーザ光源111を有しているが、レーザ光源111以外の種類の光源を有してもよい。この場合、光源制御部35は、当該光源の発光強度を制御してもよい。
また、前記実施形態において、光検出器13は、対象物Mで反射された光を直接的に受光するように配置されているが、本発明はこれに限られない。すなわち、光検出器13と対象物Mとの間の光路に他の反射物が介在してもよく、光検出器13は、対象物Mで反射された光を間接的に受光するように配置されてもよい。
例えば、図7に示す変形例において、光検出器13Aは、対象物Mで反射された後に撮像素子122で反射された反射光を受光する。このような変形例によっても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
前記実施形態の情報取得工程において利用する複数の基準物は、黒色基準物および白色基準物であることに限定されず、他の反射率を有する基準物を利用してもよい。
【0051】
前記実施形態では、光検出感度平均直線Ld-Avgに対する撮像感度平均直線Li-Avgのオフセット量Δrおよび角度差Δθを相関情報として取得しているが、本発明はこれに限られない。例えば、任意の基準物に関する撮像感度直線および光検出感度直線を利用し、当該撮像感度直線に対する当該光検出感度直線のオフセット量Δrおよび角度差Δθを相関情報として取得してもよい。
【0052】
前記実施形態では、撮像素子122が飽和していない場合、光源制御部35はレーザパワーに設定される目標値を変更しないが、本発明はこれに限られない。例えば、光源制御部35は、従来技術のように画像信号に基づいてレーザパワーをフィードバック制御してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…光学式測定装置、10…プローブヘッド、11…照射部、111…レーザ光源、112…照射光学系、12…撮像部、121…受光光学系、122…撮像素子、13,13A…光検出器、20…移動機構、30…制御部、31…演算部、32…測定制御部、33…形状算出部、34…飽和判定部、35…光源制御部、36…情報取得部、37…記憶部。
図1
図2
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図7
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図9