(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】帯電防止表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/16 20150101AFI20230623BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230623BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230623BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230623BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20230623BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230623BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230623BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230623BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230623BHJP
【FI】
G02B1/16
G02B5/30
C08J7/04 Z CFD
C09J7/40
C09J133/06
C09J133/14
C09J11/06
B32B27/00 M
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2022000539
(22)【出願日】2022-01-05
(62)【分割の表示】P 2020159920の分割
【原出願日】2016-02-29
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131414(JP,A)
【文献】特開2012-246477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0280389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
G02B 1/16
G02B 5/30
C08J 7/04
C09J 7/40
C09J 133/06
C09J 133/14
C09J 11/06
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を、透明性を有する樹脂からなる基材の片面に形成してなり、前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に帯電防止剤を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムが、前記剥離剤層を介して貼り合わせてなる帯電防止表面保護フィルムであって、
前記剥離剤層は、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物を用いて形成されてなり、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部と、
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種を0.1~12重量部と、
(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを5~20重量部と、
を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーからなり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部のうち、
(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~30重量部と、
(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を70~99重量部との割合で含有してなり、
前記アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー、及び水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを共重合しておらず、
前記(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種のうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択した少なくとも1種を含有してなり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(C)2官能以上のイソシアネート化合物と、(D)架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物と、を含有し、且つ、帯電防止剤を含有しておらず、
前記粘着剤層の、表面抵抗率が5.0×10
+12Ω/□以下であり、剥離帯電圧が±0.6kV以下であること
を特徴とする帯電防止表面保護フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の帯電防止表面保護フィルムが
前記剥離フィルムを剥がした状態で貼り合わされてなる光学用フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の帯電防止表面保護フィルムが
前記剥離フィルムを剥がした状態で貼り合わされてなる光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、帯電防止性能を備えた帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルムに関し、被着体に対する汚染が少なく、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0003】
近年、液晶ディスプレイパネルの生産工程において、光学用フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、液晶ディスプレイパネルの表示画面を制御するための、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV~-0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
このため、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤を用いた、表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献5,6には、表面保護フィルムの粘着剤層の中に、ポリエーテル変性シリコーンを混合することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-131957号公報
【文献】特開2005-330464号公報
【文献】特開2005-314476号公報
【文献】特開2006-152235号公報
【文献】特開2009-275128号公報
【文献】特許第4537450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1~4では、粘着剤層の内部に帯電防止剤が添加されているが、粘着剤層の厚みが厚くなる程、また、経過時間が経つにつれて、表面保護フィルムの貼合された被着体に対して、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなる。また、LR(Low Reflective)偏光板やAG(Anti Glare)-LR偏光板などの光学用フィルムでは、光学用フィルムの表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理されているため、このような光学用フィルムに使用する表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧が高くなる。
【0007】
また、特許文献5,6に記載の、粘着剤層の中にポリエーテル変性シリコーンを混合した場合には、表面保護フィルムの粘着力を微調整することが難しい。また、粘着剤層内に、ポリエーテル変性シリコーンを混ぜているため、粘着剤組成物を基材フィルムの上に塗工・乾燥する条件が変化すると、表面保護フィルムの形成された粘着剤層の表面の特性が、微妙に変化する。さらに、光学用フィルムの表面を保護するという観点から、粘着剤層の厚さを極端に薄くすることができない。そのため、粘着剤層の厚みに応じて、粘着剤層内に混ぜるポリエーテル変性シリコーンの添加量を増やす必要があり、結果的に、被着体表面を汚染し易くなり、経時での粘着力や被着体に対する汚染性が変化する。
【0008】
近年、3Dディスプレイ(立体視ディスプレイ)の普及に伴い、偏光板等の光学用フィルムの表面にFPR(Film Patterned Retarder)フィルムを貼合したものがある。偏光板等の光学用フィルムの表面に貼合されていた表面保護フィルムを剥がした後に、FPRフィルムが貼合される。しかし、偏光板等の光学用フィルムの表面が、表面保護フィルムに使用している粘着剤や帯電防止剤で汚染されていると、FPRフィルムが接着し難いという問題がある。このため、当該用途に用いる表面保護フィルムには、被着体に対する汚染の少ないものが求められている。
【0009】
一方、いくつかの液晶パネルメーカーにおいては、表面保護フィルムの被着体に対する汚染性の評価方法として、偏光板等の光学用フィルムに貼合されている表面保護フィルムを一度剥がし、気泡を混入させた状態で再貼合したものを所定条件で加熱処理し、その後、表面保護フィルムを剥がして被着体の表面を観察する方法が採用されている。このような評価方法では、被着体の表面汚染が微量であっても、気泡を混入させた部分と、表面保護フィルムの粘着剤が接していた部分とで、被着体の表面汚染の差があると、気泡の跡(気泡ジミと言うこともある)として残る。そのため、被着体の表面に対する汚染性の評価方法としては、非常に厳しい評価方法となる。近年、こうした厳しい評価方法による判定の結果でも、被着体の表面に対する汚染性に問題がない表面保護フィルムが求められている。しかし従来から提案されている、帯電防止剤を含有する粘着剤層を用いた表面保護フィルムでは、当該課題を解決するのが難しい状況にあった。
【0010】
このため、光学用フィルムに使用する表面保護フィルムであって、被着体に対する汚染が非常に少なく、かつ、被着体に対する汚染性が経時変化しないものが必要とされている。さらに、被着体から剥離する時の剥離帯電圧を、低く抑えた表面保護フィルムが求められている。
【0011】
本発明者らは、この課題を解決することについて、鋭意、検討を行なった。
被着体に対する汚染が少なく、且つ、帯電防止性能の経時変化も少なくするためには、被着体を汚染している原因と推測される帯電防止剤の添加量を減量させる必要がある。しかし、帯電防止剤の添加量を減量させた場合には、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧が高くなってしまう。本発明者らは、帯電防止剤の添加量の絶対量を増加させないで、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑える方法について検討した。その結果、粘着剤組成物の中に、帯電防止剤を添加し混ぜて粘着剤層を形成するのではなく、粘着剤組成物を塗工・乾燥させて粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に、適量の帯電防止剤の成分を付与することにより、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、被着体に対する汚染が少なく、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムの製造方法、及び帯電防止表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の帯電防止表面保護フィルムは、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、その粘着剤層の表面に適量の帯電防止剤を付与することにより、被着体に対する汚染性を低く抑えた上、被着体である光学用フィルムから剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えることを技術思想としている。
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明は、帯電防止表面保護フィルムの製造方法であって、次の工程(1)~(3)、工程(1):アクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~30重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を70~99重量部と、共重合可能なモノマー群として、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種を0.1~12重量部と、を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーからなり、前記アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー、及び水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを含まず、前記粘着剤組成物が、さらに、(C)2官能以上のイソシアネート化合物と、(D)架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物と、を含有する粘着剤組成物を作製する工程と、工程(2):透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を形成する工程と、工程(3):前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に帯電防止剤を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して貼り合わせ、前記剥離剤層の前記帯電防止剤が、前記粘着剤層の表面に転写される工程と、を工程(1)~(3)の順に経て作製され、前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物により形成されてなり、前記粘着剤層を、低反射表面処理が施された偏光板に貼合した後に、剥離した時の剥離帯電圧が±0.6kV以下であり、前記粘着剤層を、前記低反射表面処理が施された偏光板に貼合した後、剥離した時の汚染性が良好なことを特徴とする帯電防止表面保護フィルムの製造方法を提供する。
【0015】
また、前記粘着剤組成物に、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことが好ましい。
【0016】
また、前記剥離剤層中の帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0017】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、アクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなり、前記粘着剤層の表面に、樹脂フィルムの片面に帯電防止剤を含有する剥離剤層が積層された剥離フィルムが、前記剥離剤層を介して貼り合わせてなる帯電防止表面保護フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部と、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1~12重量部と、を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーからなり、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計100重量部のうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種の合計が1~30重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種以上の合計が70~99重量部との割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー、及び水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを共重合しておらず、前記粘着剤組成物が、さらに、(C)2官能以上のイソシアネート化合物と、(D)架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物と、を含有してなり、且つ、帯電防止剤を含有しておらず、前記剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、20℃において液体のシリコーン系化合物であるポリエーテル変性シリコーンと、帯電防止剤とを含む樹脂組成物により形成されてなり、前記帯電防止表面保護フィルムの前記粘着剤層の表面から、前記剥離フィルムを剥がした時に、前記剥離剤層の前記帯電防止剤が、前記粘着剤層の表面に転写され、前記剥離フィルムを剥がした前記帯電防止表面保護フィルムを、前記粘着剤層を介して、被着体として低反射表面処理が施された偏光板に貼合した後、前記偏光板から前記粘着剤層を剥離した時に、前記偏光板の表面を目視観察して汚染がないことを特徴とする帯電防止表面保護フィルムを提供する。
【0018】
また、前記粘着剤組成物に、さらに、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを0~50重量部(但し、含有しない場合もある)含むことが好ましい。
【0019】
また、前記(D)架橋促進剤が、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上であり、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して0.001~0.5重量部であり、前記(E)ケトエノール互変異性体化合物を0.1~300重量部を含有してなり、(E)/(D)の重量部比率が70~1000であることが好ましい。
【0020】
また、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であり、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1~10重量部であることが好ましい。
【0021】
また、前記(C)2官能以上のイソシアネート化合物として、2官能イソシアネート化合物としては、非環式脂肪族イソシアネート化合物で、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて生成された化合物であり、ジイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネートであり、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートからなる化合物群の中から選択された1種と、ジオール化合物としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールモノヒドロキシピバレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールからなる化合物群の中から選択された1種からなり、3官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体、トリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、からなり、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1~10重量部であることが好ましい。
【0022】
また、前記粘着剤組成物に、HLB値が7~15である(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して1.0重量部以下(0重量部の場合を除く)、含むことが好ましい。
【0023】
また、前記剥離剤層中のシリコーン系化合物が、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0024】
また、前記剥離剤層中の帯電防止剤が、アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0025】
また、前記剥離剤層中の帯電防止剤がLi塩であり、LiTFSI、LiFSI、LiTFからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0026】
また、本発明は、上記の帯電防止表面保護フィルムが、前記剥離フィルムを剥がした状態で貼り合わせてなる光学用フィルムを提供する。
【0027】
また、本発明は、上記の帯電防止表面保護フィルムが、前記剥離フィルムを剥がした状態で貼り合わせてなる光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する汚染が少なく、被着体に対する低汚染性が経時変化しない。また、本発明によれば、LR偏光板やAG-LR偏光板などの、被着体の表面が、シリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある光学用フィルムであっても、帯電防止表面保護フィルムを、被着体から剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑えることができ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する帯電防止表面保護フィルムを提供できる。
本発明の帯電防止表面保護フィルムによれば、光学用フィルムの表面を確実に保護することができることから、生産性の向上と歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。
【
図2】本発明の帯電防止表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。この帯電防止表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、樹脂フィルム3の表面に剥離剤層4が形成された剥離フィルム5が、貼合されている。
【0031】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、帯電防止表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚みが好ましく、20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された面の反対側の面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0032】
また、本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥がせ、かつ、被着体を汚染しにくい粘着剤であれば特に限定されるものではないが、光学用フィルムに貼合後の耐久性などを考慮すると、アクリル系ポリマーを含有する粘着剤組成物を架橋させてなるアクリル系粘着剤を用いるのが一般的である。
【0033】
特に、アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種と、共重合可能なモノマー群として、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーからなる粘着剤層が好ましい。
前記共重合可能なモノマー群として、さらに、(F)ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であり、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことができる。
アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー、及び水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを含まないことが好ましい。
さらに、前記アクリル系ポリマーに加えて、(C)2官能以上のイソシアネート化合物と、(D)架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物と、を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層が好ましい。
【0034】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーのうち、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種としては、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~30重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を70~99重量部と、の割合で含有していることが好ましく、前記(a1)の少なくとも1種を5~25重量部と、前記(a2)の少なくとも1種を75~95重量部と、の割合で含有していることがより好ましく、前記(a1)の少なくとも1種を8~22重量部と、前記(a2)の少なくとも1種を78~92重量部と、の割合で含有していることが特に好ましい。
【0035】
(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。これらの(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーは、後述する(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとは異なり、ポリアルキレングリコール鎖を有しない。
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種を0.1~12重量部の割合で共重合させることが好ましく、0.1~9.5重量部であることがより好ましく、0.3~8重量部であることが特に好ましい。
また、前記アクリル系ポリマーの合計を100重量部とする時、前記(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを0.1~10重量部の割合で含有していることが好ましく、0.1~8.5重量部であることがより好ましく、0.3~7.5重量部であることが特に好ましい。
【0036】
(C)2官能以上のイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物から選択される、少なくとも1種または2種以上であればよい。ポリイソシアネート化合物には、脂肪族系イソシアネート、芳香族系イソシアネート、非環式系イソシアネート、脂環式系イソシアネートなどの分類があるが、いずれでもよい。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物や、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジメチルジフェニレンジイソシアネート(TOID)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート化合物が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン(TMP)やグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
(C)2官能以上のイソシアネート化合物として、(C-1)3官能イソシアネート化合物のみ、または(C-2)2官能イソシアネート化合物のみを用いることも可能である。また、(C-1)3官能イソシアネート化合物と、(C-2)2官能イソシアネート化合物を併用することも可能である。
【0037】
さらに、本発明に用いる(C-1)3官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる、(C-1-1)第1の脂肪族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上と、トリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体、水添キシリレンジイソシアネート化合物のアダクト体からなる、(C-1-2)第2の芳香族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上とを含むことが好ましい。(C-1-1)第1の脂肪族系のイソシアネート化合物群と、(C-1-2)第2の芳香族系のイソシアネート化合物群とを、併用することが好ましい。本発明では、(C-1)3官能イソシアネート化合物として、(C-1-1)第1の脂肪族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上と、(C-1-2)第2の芳香族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上とを、併用することにより、低速剥離領域および高速剥離領域の粘着力のバランスをさらに改善することができる。
【0038】
また、(C-1)3官能イソシアネート化合物は、前記(C-1-1)第1の脂肪族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上と、前記(C-1-2)第2の芳香族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上とを含み、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、合計して0.5~5.0重量部含まれることが好ましい。また、(C-1-1)第1の脂肪族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上と、(C-1-2)第2の芳香族系のイソシアネート化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上との混合比率は、(C-1-1):(C-1-2)が重量比で10%:90%~90%:10%の範囲内であることが好ましい。
【0039】
さらに、本発明に用いる(C-2)2官能イソシアネート化合物としては、非環式脂肪族イソシアネート化合物で、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて生成された化合物であることが好ましい。
例えば、一般式「O=C=N-X-N=C=O」(ただし、Xは2価基)でジイソシアネート化合物を、一般式「HO-Y-OH」(ただし、Yは2価基)でジオール化合物を表すとき、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応させて生成された化合物としては、例えば、次の一般式Zで表される化合物が挙げられる。
【0040】
〔一般式Z〕
O=C=N-X-(NH-CO-O-Y-O-CO-NH-X)n-N=C=O
【0041】
ここで、nは0以上の整数である。nが0の場合、一般式Zは、「O=C=N-X-N=C=O」を表す。2官能非環式脂肪族イソシアネート化合物として、一般式Zにおいてnが0の化合物(ジオール化合物に対して未反応のジイソシアネート化合物)を含んでもよいが、nが1以上の整数である化合物を必須成分として含むことが好ましい。2官能非環式脂肪族イソシアネート化合物は、一般式Zにおけるnが異なる、複数の化合物からなる混合物であってもよい。
【0042】
一般式「O=C=N-X-N=C=O」で表されるジイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネートである。Xは、非環式で脂肪族の2価基であることが好ましい。前記脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートからなる化合物群の中から選択された1種又は2種以上からなることが好ましい。
【0043】
一般式「HO-Y-OH」で表されるジオール化合物は、脂肪族ジオールである。Yは、非環式で脂肪族の2価基であることが好ましい。前記ジオール化合物としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールモノヒドロキシピバレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールからなる化合物群の中から選択された1種又は2種以上からなることが好ましい。
【0044】
前記(C-1)3官能イソシアネート化合物と、(C-2)2官能イソシアネート化合物との重量比(C-1/C-2)が、1~90であることが好ましい。前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、前記(C)2官能以上のイソシアネート化合物が、0.1~10重量部であることが好ましい。
【0045】
(D)架橋促進剤は、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする場合に、前記アクリル系ポリマーと架橋剤との反応(架橋反応)に対して触媒として機能する物質であればよく、第三級アミン等のアミン系化合物、金属キレート化合物、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等の有機金属化合物等が挙げられる。本発明では、架橋促進剤として、金属キレート化合物や有機錫化合物が好ましい。
【0046】
金属キレート化合物としては、中心金属原子Mに、1以上の多座配位子Lが結合した化合物である。金属キレート化合物は、金属原子Mに結合する1以上の単座配位子Xを有してもよく、有しなくてもよい。例えば、金属原子Mが1つである金属キレート化合物の一般式を、M(L)m(X)nで表すとき、m≧1、n≧0である。mが2以上の場合、m個のLは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。nが2以上の場合、n個のXは同一の配位子でもよく、異なる配位子でもよい。
【0047】
金属原子Mとしては、Fe,Ni,Mn,Cr,V,Ti,Ru,Zn,Al,Zr,Sn等が挙げられる。
多座配位子Lとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン(別名2,4-ペンタンジオン)、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらは、ケトエノール互変異性体化合物であり、多座配位子Lにおいてはエノールが脱プロトンしたエノラート(例えばアセチルアセトネート)であってもよい。
単座配位子Xとしては、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、2-エチルヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基等のアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。
【0048】
金属キレート化合物の具体例としては、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、鉄トリスアセチルアセトネート、チタニウムトリスアセチルアセトネート、ルテニウムトリスアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)鉄(III)、ビス(2,4-ヘキサンジオナト)亜鉛、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン、トリス(2,4-ヘキサンジオナト)アルミニウム、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0049】
有機錫化合物としては、ジアルキル錫オキシドや、ジアルキル錫の脂肪酸塩、第1錫の脂肪酸塩等が挙げられる。従来、ジブチル錫化合物が多く使用されてきたが、近年、有機錫化合物の毒性の問題が指摘され、特にジブチル錫化合物に含まれるトリブチル錫(TBT)は、内分泌攪乱物質としても懸念されている。安全性の観点から、ジオクチル錫化合物等の長鎖アルキル錫化合物が好ましい。具体的な有機錫化合物としては、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。暫定的にはSn化合物も使用可能であるが、将来的には、より安全性の高い物質の使用が要求される趨勢に鑑み、Snに比べて安全性の高い、Al,Ti,Fe等の金属キレート化合物を用いることが好ましい。
本発明に係わる粘着剤組成物における(D)架橋促進剤としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、鉄キレート化合物からなる群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
(D)架橋促進剤は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.001~0.5重量部含まれることが好ましい。
【0050】
(E)ケトエノール互変異性体化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル等のβ-ケトエステルや、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、ベンゾイルアセトン等のβ-ジケトンが挙げられる。これらは、ポリイソシアネート化合物を架橋剤とする粘着剤組成物において、架橋剤の有するイソシアネート基をブロックすることにより、架橋剤の配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長することができる。
(E)ケトエノール互変異性体化合物は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.1~300重量部含まれることが好ましい。
【0051】
(E)ケトエノール互変異性体化合物は、(D)架橋促進剤とは反対に、架橋を抑制する効果を有することから、(D)架橋促進剤に対する(E)ケトエノール互変異性体化合物の割合を適切に設定することが好ましい。粘着剤組成物のポットライフを長くし、貯蔵安定性を向上させるには、(E)/(D)の重量部比率が70~1000であることが好ましく、70~700であることがより好ましく、80~600であることが特に好ましい。
【0052】
前記アクリル系ポリマーは、前記共重合可能なモノマー群として、さらに、(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを任意に含有することができる。(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、前記アクリル系ポリマーに共重合することができる。他の水酸基は、OHのままでもよく、メチルエーテルやエチルエーテル等のアルキルエーテルや、酢酸エステル等の飽和カルボン酸エステル等となっていてもよい。
ポリアルキレングリコールの有するアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の2種以上のポリアルキレングリコールの共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの共重合体としては、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール等が挙げられ、該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が3~14であることが好ましい。「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーの分子構造に含まれる「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。
(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーにおいて、モノマー中のジエステル分が0.2%以下であることが好ましい。「モノマー中のジエステル分」とは、(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマー中に含まれるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステルの含有率(重量%)である。
【0053】
(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
より具体的には、ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート;エトキシポリエチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計を100重量部とする時、前記(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを0~50重量部の割合で含有していることが好ましい。本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有させなくてもよい。
【0054】
粘着剤組成物は、HLB値が7~15である(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を任意に含有することができる。ポリエーテル変性シロキサン化合物は、ポリエーテル基を有するシロキサン化合物であり、通常のシロキサン単位〔-SiR1
2-O-〕の他に、ポリエーテル基を有するシロキサン単位〔-SiR1(R2O(R3O)nR4)-O-〕を有する。ここで、R1は1種又は2種以上のアルキル基又はアリール基、R2及びR3は1種又は2種以上のアルキレン基、R4は1種又は2種以上のアルキル基やアシル基等(末端基)を示す。ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基〔(C2H4O)n〕やポリオキシプロピレン基〔(C3H6O)n〕等のポリオキシアルキレン基が挙げられる。
【0055】
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、HLB値が7~15であるポリエーテル変性シロキサン化合物であることが好ましい。また、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して、HLB値が7~15であるポリエーテル変性シロキサン化合物が1.0重量部以下(0重量部の場合を除く)、0.01~1.0重量部含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1~0.5重量部である。
HLBとは、例えばJIS K3211(界面活性剤用語)等に規定する親水親油バランス(親水性親油性比)である。
【0056】
ポリエーテル変性シロキサン化合物は、例えば、水素化ケイ素基を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。具体的には、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン重合体等が挙げられる。ポリエーテル変性シロキサン化合物のHLB値は、ポリエーテル基とシロキサン基との比率を選択することにより、調整することができる。
HLB値が7~15である(H)ポリエーテル変性シロキサン化合物を粘着剤組成物に配合することにより、粘着剤の粘着力及び汚染性を改善することができる。粘着剤組成物がポリエーテル変性シロキサン化合物を含有しない場合、より低コストとなる。
【0057】
さらに、その他成分として、本発明に係わる粘着剤組成物には、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することが出来る。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0058】
本発明の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100重量部に対して、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を1~30重量部と、(a2)アルキル基の炭素数がC5~C18の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの少なくとも1種を70~99重量部と、共重合可能なモノマー群として、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの少なくとも1種を0.1~12重量部と、を共重合させることで合成することができる。前記共重合可能なモノマー群として、さらに、(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含んでもよい。アクリル系ポリマーの重合方法は特に限定されるものではなく、溶液重合、乳化重合等、適宜の重合方法が使用可能である。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーに、(C)2官能以上のイソシアネート化合物、(D)架橋促進剤と、(E)ケトエノール互変異性体化合物、さらに適宜任意の添加剤を配合することで調製することができる。
【0059】
前記アクリル系ポリマーが、共重合可能なモノマー群として、カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー、及び水酸基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを含まないことにより、架橋速度の向上および粘着力の安定化に効果がある。架橋剤として使用される(C)2官能以上のイソシアネート化合物と反応するモノマーとして、(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーを用いることが好ましい。前記アクリル系ポリマーの好ましいモノマー組成としては、前記(A)と前記(B)とからそれぞれ1種以上、前記(A)と前記(B)と前記(F)とからそれぞれ1種以上、などが挙げられる。
【0060】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、低速の剥離速度0.3m/minでの粘着力が0.05~0.1N/25mmであり、高速の剥離速度30m/minでの粘着力が1.0N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着力が剥離速度によっても変化が少ない性能が得られ、高速剥離によっても、速やかに剥離することが可能になる。また、貼り直しのため、一旦、帯電防止表面保護フィルムを剥がすときにも、過大な力を必要とせず、被着体から剥がし易い。
【0061】
前記粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層の、表面抵抗率が5.0×10+12Ω/□以下であり、剥離帯電圧が「±0.6kV以下」であることが好ましい。なお、本発明において、「±0.6kV以下」とは、0~-0.6kV及び0~+0.6kV、すなわち、-0.6~+0.6kVを意味する。表面抵抗率が大きいと、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時に、帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0062】
本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率は、95~100%であることが好ましい。このようにゲル分率が高いことにより、低速の剥離速度において、粘着力が過大にならず、前記アクリル系ポリマーからの未重合モノマーあるいはオリゴマーの溶出が低減して、汚染性や高温・高湿度における耐久性が改善され、被着体の汚染を抑制することができる。
【0063】
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、樹脂フィルムの片面または両面に形成してなる。本発明の帯電防止表面保護フィルムは、上記の(A)~(E)の各成分がバランスよく配合された粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が形成されてなるため、優れた帯電防止性能を備え、低速の剥離速度、及び高速の剥離速度において、粘着力のバランスが優れ、さらに、耐久性能、及び汚染性にも優れたものとなる。このため、偏光板の表面保護フィルムの用途として好適に使用することができる。
【0064】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚みは、特に限定はないものの、例えば、5~40μm程度の厚みが好ましく、10~30μm程度の厚みがより好ましい。帯電防止表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03~0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。また、帯電防止表面保護フィルム10から剥離フィルム5を剥がす時の操作性に優れることから、剥離フィルム5の粘着剤層2からの剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
【0065】
また、本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10に使用される剥離フィルム5は、樹脂フィルム3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤とを含む樹脂組成物を用いた剥離剤層4が形成されている。剥離剤層4は、さらに、20℃において液体のシリコーン系化合物を含むことが好ましい。剥離剤層4中のシリコーン系化合物が、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0066】
樹脂フィルム3としては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性に優れていることや価格が比較的に安価であることから、ポリエステルフィルムが特に好ましい。樹脂フィルムは、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
樹脂フィルム3の厚みは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚みが好ましく、20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、樹脂フィルム3の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0067】
剥離剤層4を構成するジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS-776A、KS-847T、KS-779H、KS-837、KS-778、KS-830(信越化学工業(株)製)、SRX-211、SRX-345、SRX-357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC-300B、LTC-350G、LTC-310(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX-290、SYLOFF-23(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR-6501、TPR-6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62-7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、X62-7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0068】
剥離剤層4を構成する20℃において液体のシリコーン系化合物としては、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、カルビノール高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられる。本発明では、粘着剤層の表面の帯電防止性を向上するために、ジメチルポリシロキサンを主成分とした剥離剤層の中に相溶している状態の20℃において液体のシリコーン系化合物が用いられる。本発明の用途には、変性シリコーン化合物の中でも、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリエーテル鎖は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどで構成され、例えば、側鎖に用いるポリエチレンオキサイドの分子量を選択することにより、シリコーン剥離剤との相溶性や帯電防止効果などの物性が調整される。
また、ポリエーテル変性シリコーンとして市販されている製品には、例えば、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-642(信越化学工業(株)製)、SH8400、SH8700、SF8410(東レダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4441、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4450(モメンティブパーフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK-300、BYK-306、BYK-307、BYK-320、BYK-325、BYK-330(ビックケミー社製)などが挙げられる。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に対する20℃において液体のシリコーン系化合物の添加量は、シリコーン系化合物の種類や剥離剤との相溶性の度合いにより異なるが、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0069】
剥離剤層4を構成する帯電防止剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤溶液に対して分散性の良いもので、かつ、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の硬化を阻害しないものが好ましい。こうした帯電防止剤としてはアルカリ金属塩が好適である。
【0070】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられる。具体的には、たとえば、Li+、Na+、K+よりなるカチオンと、Cl-、Br-、I-、BF4
-、PF6
-、SCN-、ClO4
-、CF3SO3
-、(FSO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)3C-よりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。なかでも特に、LiBr、LiI、LiBF4、LiPF6、LiSCN、LiClO4、LiCF3SO3、Li(FSO2)2N、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3Cなどのリチウム塩(Li塩)、とりわけ、Li(CF3SO2)2N「略記号LiTFSI」、Li(FSO2)2N「略記号LiFSI」、LiCF3SO3「略記号LiTF又はLiTf」が好ましく用いられる。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類や剥離剤との親和性の度合いにより異なるが、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0071】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に、帯電防止剤を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちに帯電防止剤と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、シロキサンを主成分とする剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後帯電防止剤を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤やポリオキシアルキレン基を含有する化合物などの帯電防止効果を補助する材料、を添加しても良い。
剥離剤に対するポリエーテル変性シリコーンの混合方法は、帯電防止剤との混合方法と同様であり、特に限定はない。
【0072】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤との混合比率は、特に限定はないが、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して、帯電防止剤を固形分として5~100程度の割合が好ましい。帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して5の割合より少ないと、粘着剤層の表面への帯電防止剤の転写量も少なくなり、粘着剤に帯電防止の機能が発揮され難くなる。また、帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して100の割合を越えると、帯電防止剤とともにジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤も、粘着剤層の表面に転写されてしまうため、粘着剤の粘着特性を低下させる可能性がある。
剥離剤に対するポリエーテル変性シリコーンの混合比率は、帯電防止剤の混合比率と同程度が好ましく、特に限定はない。
【0073】
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び剥離フィルム5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための粘着剤組成物を塗布、乾燥し粘着剤層を形成した後に、剥離フィルム5を貼合する方法、(2)剥離フィルム5の表面に、粘着剤層2を形成するための粘着剤組成物を塗布・乾燥し粘着剤層を形成した後に、基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。
【0074】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0075】
また、同様に、樹脂フィルム3に、剥離剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0076】
図2は、本発明の帯電防止表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
図1に示した帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がすことにより、剥離フィルム5の剥離剤層4に含まれる、帯電防止剤(符号7)の一部が、帯電防止表面保護フィルム10の粘着剤層2の表面に、転写される(付着する)。そのため、
図2においては、帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層2の表面に転写された、帯電防止剤を、符号7の斑点で模式的に示している。
本発明に係わる帯電防止表面保護フィルムでは、
図2に示した剥離フィルムを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面に転写された、帯電防止剤が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から帯電防止表面保護フィルムを剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。
【0077】
図3は、本発明の光学部品の実施例を示した断面図である。
本発明の帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態で、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。
すなわち、
図3には、本発明の帯電防止表面保護フィルム10が貼合された光学部品20を示している。光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどの各種表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある、低反射処理偏光板(LR偏光板)やアンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)などの光学用フィルムの、防汚染処理した面に貼合される、帯電防止表面保護フィルムとして好適に使用することができる。
LR偏光板の低反射表面処理層としては、金属酸化物薄膜(SiO
2、TiO
2等の蒸着膜など)、フッ素樹脂等の反射防止膜が挙げられる。本発明の帯電防止表面保護フィルムは、これらの反射防止膜に帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層が接触して貼合される場合でも、剥離帯電圧の低減と、被着体に対する低い汚染性とを両立することができる。
本発明の光学部品によれば、帯電防止表面保護フィルム10を、被着体である光学部品(光学用フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル、有機EL表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
【0079】
<粘着剤組成物の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にメチルアクリレート10重量部、2-エチルヘキシルアクリレート90重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート5.0重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(n=12)10重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1のアクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液に対して、アセチルアセトン8.5重量部を加え撹拌したのち、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体)を2.0重量部、チタニウムトリスアセチルアセトネート0.1重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0080】
[実施例2~6及び比較例1~3]
実施例1の粘着剤組成物の組成を各々、表1及び表2の記載のようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の粘着剤組成物を得た。表1及び表2中、アクリル系ポリマーに含まれる(共重合される)モノマーは、(A)、(B)、(F)、及び「カルボキシル基含有モノマー」である。
【0081】
【0082】
【0083】
表1及び表2は、各成分の配合比を示す一体の表を2つに分けたものであり、いずれも(A)群の合計を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1及び表2に用いた各成分の略記号の化合物名を、表3及び表4に示す。なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、タケネート(登録商標)D-140N、D-127N、D-110Nは三井化学株式会社の商品名である。表2の「帯電防止剤」及び後述する表7において、LiTFSIはLi(CF3SO2)2Nを表し、LiFSIはLi(FSO2)2Nを表し、LiTFはLiCF3SO3を表す。また、各実施例の(F)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルモノマーに用いた化合物では、モノマー中のジエステル分が0.2%以下である。
【0084】
【0085】
【0086】
<2官能イソシアネート化合物の合成>
合成例1,2の、2官能イソシアネート化合物は、下記の方法で合成した。表5及び表6に示すように、ジイソシアネートとジオール化合物を、モル比:NCO/OH=16の比率で混合し、120℃で3時間反応させ、その後、薄膜蒸発装置を使用して減圧下で未反応のジイソシアネートを除去し、目的の2官能イソシアネート化合物を得た。
【0087】
【0088】
【0089】
<帯電防止表面保護フィルムの作製>
[実施例1]
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-345)5重量部、ポリエーテル変性シリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SH8400、主成分:ジメチル,メチル(ポリエチレンオキサイド アセテート)シロキサン)0.15重量部、Li(CF3SO2)2N 0.5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、及び白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-212キャタリスト)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の剥離フィルムを得た。
実施例1の粘着剤組成物を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、実施例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0090】
[実施例2]
実施例1の粘着剤組成物を、実施例2の粘着剤組成物にし、剥離剤層に用いる帯電防止剤を、LiCF3SO3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0091】
[実施例3~6]
実施例1の粘着剤組成物を各々、実施例3~6の粘着剤組成物にし、剥離剤層に用いる帯電防止剤を、Li(FSO2)2Nにした以外は、実施例1と同様にして、実施例3~6の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0092】
[比較例1]
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-345)5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、及び白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX-212キャタリスト)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、比較例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、比較例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、比較例1の剥離フィルムを得た。
比較例1の粘着剤組成物を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、比較例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、比較例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0093】
[比較例2]
比較例1の粘着剤組成物を、比較例2の粘着剤組成物にした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0094】
[比較例3]
実施例1の粘着剤組成物を、比較例3の粘着剤組成物にし、剥離剤層に用いる帯電防止剤を、Li(FSO2)2Nにした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の帯電防止表面保護フィルムを得た。
【0095】
表7に、実施例1~6及び比較例1~3の帯電防止表面保護フィルムにおける、剥離剤層の組成を示す。
【0096】
【0097】
<試験方法及び評価>
実施例1~6、及び比較例1~3における帯電防止表面保護フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させたものを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を表出させた帯電防止表面保護フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力、剥離帯電圧、及び汚染性の測定試料とした。
【0098】
<粘着力>
上記で得られた測定試料(25mm幅の帯電防止表面保護フィルムを偏光板の表面に貼り合わせたもの)を、180°方向に引張試験機を用いて低速の剥離速度(0.3m/min)及び高速の剥離速度(30m/min)において剥がして、測定した剥離強度を粘着力とした。
【0099】
<表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0100】
<剥離帯電圧>
上記で得られた測定試料を、30m/minの引張速度で180°剥離した際に偏光板が帯電して発生する電圧(帯電圧)を、高精度静電気センサSK-035、SK-200(株式会社キーエンス製)を用いて測定し、測定値の最大値を剥離帯電圧とした。
【0101】
<汚染性>
ガラス板の片面上に、低反射表面処理を施した偏光板を、貼合機を用いて、粘着剤層(例えば、帯電防止表面保護フィルムの粘着剤層とは異なる両面粘着テープ等)を介して貼合する。その後、偏光板の表面に帯電防止表面保護フィルムを、貼合機を用いて貼合する。23℃、50%RHの環境下で3日間および30日間の期間に渡って保管した後に、帯電防止表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染状態を目視にて観察する。
表面汚染性は、偏光板の表面に対して3日間保管および30日間保管のいずれにおいても汚染なしの場合を「○」、3日間保管および30日間保管のいずれかにおいて、わずかに汚染ありの場合を「△」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0102】
表8に、評価結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0103】
【0104】
表8に示した測定結果から、以下のことが分かる。
本発明に係わる実施例1~6の帯電防止表面保護フィルムは、適度な粘着力があり、被着体の表面に対する汚染がなく、かつ、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低い。
一方、帯電防止剤を粘着剤層に添加した比較例1の帯電防止表面保護フィルムは、粘着剤層の表面抵抗率は低く良好であるが、汚染性がやや劣るものであった。
また、比較例2の帯電防止表面保護フィルムは、帯電防止剤を粘着剤層に添加したことに加えて、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、及び(B)水酸基を含有する共重合可能なモノマーの添加量が多いためか、粘着力が大きく、剥離帯電圧が高く、汚染性がやや劣っていた。
また、比較例3の帯電防止表面保護フィルムは、アクリル系ポリマーが、(a1)アルキル基の炭素数がC1~C4の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含まず、カルボキシル基を含有するモノマーを含むことから、粘着力が大きく、汚染性が劣っていた。
すなわち、粘着剤層に、帯電防止剤を混合させた比較例1、2では、剥離帯電圧の低減と被着体に対する低い汚染性を両立することが難しい。他方、剥離剤層に、帯電防止剤を添加した後、粘着剤層の表面に、剥離剤層に含まれる帯電防止剤を転写させた実施例1~6では、剥離剤層に少量の帯電防止剤を添加しても剥離帯電圧の低減効果があるため、被着体に対する汚染もなく、良好な帯電防止表面保護フィルムが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、などの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等の表面を保護するために用いることができる。特に、表面がシリコーン化合物やフッ素化合物などで防汚染処理してある、LR偏光板やAG-LR偏光板などの光学用フィルムの帯電防止表面保護フィルムとして使用する場合には、被着体から剥離する時に、静電気の発生量を少なくすることができる。
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する汚染が少なくさらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有することから、光学用フィルム、光学部品等の生産工程の歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0106】
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…樹脂フィルム、4…剥離剤層、5…剥離フィルム、7…帯電防止剤、8…被着体(光学部品)、10…帯電防止表面保護フィルム、11…剥離フィルムを剥がした帯電防止表面保護フィルム、20…帯電防止表面保護フィルムを貼合した光学部品。