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特許7301555電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/42 20130101AFI20230626BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20230626BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20230626BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20230626BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20230626BHJP
【FI】
H01G11/42
H01G11/24
H01G11/52
H01G11/62
H01G11/68
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019035985
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020141060
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 英晴
(72)【発明者】
【氏名】坪田 敏樹
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136478(JP,A)
【文献】特開2016-072144(JP,A)
【文献】特開2011-136856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭素を集電体上に備えた正極側または負極側の電極と、前記電極を分離するセパレータと、電解液を備え、
CHN分析値において、前記多孔質炭素の炭素成分が70.15~91.97質量%であり、
吸着質にCO を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた前記多孔質炭素の細孔容積が1.14~1.83cmgであり、前記多孔質炭素のBET比表面積が1050~2227m /gであり、前記電解液がNaCl水溶液からなる電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記NaCl水溶液の濃度が5%以上26%未満である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記集電体は白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含む請求項1または請求項2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記セパレータはセルロース繊維またはガラス繊維からなる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
多孔質炭素を集電体上に備えた正極側または負極側の電極と、前記電極を分離するセパレータと、NaCl水溶液からなる電解液とを備えた電気二重層キャパシタを製造する場合、
吸着質にCO を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた細孔容積が1.14~1.83cmgであり、BET比表面積が1050~2227m /gの多孔質炭素であって、CHN分析値において、炭素成分が70.15~91.97質量%である多孔質炭素を用いる電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項6】
濃度が5%以上26%未満のNaCl水溶液を用いる請求項5に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項7】
白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含む集電体を用いる請求項5または請求項6に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解液に電極からの電圧が加えられると電解液に含まれているアニオンが一方の電極表面に、カチオンが他方の電極表面に集まり、それぞれの電極表面に電気二重層が形成される。
蓄電デバイスにおいて、炭素質原料を賦活し表面積を大きくした多孔質炭素を電極に用いるとファラドオーダーの大容量が得られることが知られている。容量は表面積が大きいほど大きくなると考えられてきた。
電気二重層キャパシタは電池と比べると容量が小さい欠点があるが、出力密度を意味する瞬発力とサイクル特性に優れ、安全性に優れた蓄電デバイスである。瞬発力を高めるため、電解液は電気伝導度が高い硫酸水溶液(848mS/cm)、または耐電圧が高い有機溶媒にテトラフルオロボレートを含ませた電解液が用いられている。
【0003】
以下の特許文献1には、比表面積が1800~3500m/gであり、平均細孔径が5~15Åで、かつ全細孔容積に対する内径20Å以上の細孔の占める容積の比率が20~40%である炭素材料よりなる分極性電極を用いた電気二重層コンデンサが開示されている。この電気二重層コンデンサでは、水溶液系電解液として硫酸などの無機酸を用い、非水溶媒系電解液としてテトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに溶解したものが用いられている。また、30%HSO水溶液を用いた電気二重層キャパシタの初期容量が大きく、内部抵抗が低く、低温特性に優れていることも記載されている。
【0004】
以下の特許文献2には、分極性電極として樹脂発泡体を炭化し、賦活してなる活性炭素多孔体を用いた電気二重層キャパシタにおいて、活性炭素多孔体として、分極電極の厚さ方向に細長い細胞構造を有する活性炭素多孔体を用いた電気二重層キャパシタが開示されている。この電気二重層キャパシタでは、プロピレンカーボネート等の有機溶媒にテトラエチルアンモニウムパークロレートを添加したものや、KOH水溶液やNaCl水溶液を用いた電解液について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-187614号公報
【文献】特許平4-177713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの従来技術に適用される電解液に含まれている硫酸やKOHやテトラフルオロボレートは、毒物劇物取締法によると劇物に指定されている。電解液は電気伝導度を高めるため、通常これらの劇物を電解液に高濃度で含ませている。有機溶媒の有害性情報は少なく、触れたり飲んだりしてはいけないことは常識であり引火性もある。このような劇物や有機溶媒を電解液に含んだ電気二重層キャパシタは、小型なものから大型のものまで製品化されているが、万一外装から電解液が漏れると周辺に悪影響を及ぼす問題がある。また、使用後は適切な方法で廃棄しなければならなかった。
【0007】
また、本発明者は、電気二重層キャパシタの高容量化を目指し、細孔が異なる多孔質炭素からなる電極を用意し、電解液として安全性の高いNaCl水溶液を用いた電気二重層キャパシタを複数試作し、それらの容量を測定し、用いた多孔質炭素の細孔と容量の関係について研究した。
そして、用いた多孔質炭素について、BET比表面積測定結果、BJH法による容積測定結果、GCMG法(Grand Canonical Monte Carlo method)による容積の測定結果などを駆使し、研究した結果、多孔質炭素の細孔と容量増加との確実な相関を見出すことができなかった。
【0008】
これらの研究結果を基に本発明者は、以下のような考察を行った。
図10は、NaCl水溶液中においてClイオンが水和していると考えた場合のイメージ図を示している。
電解液をNaCl水溶液とした場合、電気二重層キャパシタを充電すると図10に示すClイオンは、多孔質炭素の孔の表面近傍に移動し、電気二重層を形成する。多孔質炭素の表面積が大きいほど、容量は大きくなると考えられるが、容量は電気二重層に存在するCl量と、多孔質炭素表面とCl量との距離にも依存すると考えられる。
電気二重層を形成しているClイオンは、多孔質炭素の表面に1層並ぶのか、それとも複数層重なって並ぶのかは不明であるので、この事情から容量の解析は困難である。同様に、対極側のNaの容量解析も困難である。
【0009】
そこで、多孔質炭素の孔は図11に示すように、マクロ孔100とメソ孔101とミクロ孔102などのように種々の大きさの孔が多数複雑に分布していると考えられ、それ故、表面積が大きい材料であると考えられる。
図11は1つのイメージ図であり、理想的にマクロ孔100内にメソ孔101が形成され、メソ孔101内にミクロ孔102が形成され、それらが分布していると推定した状態を例示している。実際の多孔質炭素が図11に示す構造と同等であるか否かの確証はないが、種々の大きさの孔が混在して表面を構成していることは確かである。
【0010】
ここで、電気二重層キャパシタに充電する状態について考察すると、特定の大きさの孔より大きい水和イオンは孔に入ることができず、特定の大きさの孔より小さい水和イオンは孔に入ることができると考えられる。また、充電時Clイオンは、多孔質炭素の表面近傍まで移動すると考えられるので、Clイオンと多孔質炭素の孔の表面との距離も電気二重層キャパシタの容量に影響を及ぼすと考えられる。このことから、多孔質炭素の表面に存在するマクロ孔100とメソ孔101とミクロ孔102の細孔径分布を把握できると、電気二重層キャパシタの容量増加に好適な多孔質炭素を見極めることができると推定できる。
【0011】
そこで本発明者は、上述したBET比表面積測定結果、BJH法による容積測定結果、GCMG法による容積の測定結果などを駆使して細孔径分布による電気二重層キャパシタの容量増加について把握できると想定して研究したが、これらの測定方法と容量増加との関係は明確に把握できなかった。
このため、本発明者は、他の細孔測定方法について検討し、前述したマクロ孔100とメソ孔101とミクロ孔102の分布を含めて多孔質炭素表面の孔の状態を把握しつつ細孔を評価できる方法と電気二重層キャパシタの容量増加の関係について研究を進めた。
【0012】
上述の研究結果を基に、本発明者はさらに複数の細孔径分布や細孔容積を測定できる方法を駆使し、電気二重層キャパシタの容量増加について研究したところ、電気二重層キャパシタの容量は、多孔質炭素のDubinin-Astakhov法で求めた容積と強い相関があることを見出した。そしてこの容積が所定の値を超えて大きいほど電気二重層キャパシタは高容量になることを見出した。
【0013】
本発明はこれらの事情に鑑み、安全で高容量な電気二重層キャパシタとその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)前記課題を解決するため、本発明の一形態に係る電気二重層キャパシタは、多孔質炭素を集電体上に備えた正極側または負極側の電極と、前記電極を分離するセパレータと、電解液を備え、CHN分析値において、前記多孔質炭素の炭素成分が70.15~91.97質量%であり、吸着質にCO を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた前記多孔質炭素の細孔容積が1.14~1.83cmgであり、前記多孔質炭素のBET比表面積が1050~2227m /gであり、前記電解液がNaCl水溶液からなる。
【0015】
電解液をNaCl水溶液とすることで安全な電気二重層キャパシタとなる。また、吸着質にCO を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた前記多孔質炭素の細孔容積が1.14~1.83cmgであり、前記多孔質炭素のBET比表面積が1050~2227m /gであると、電気二重層キャパシタを構成した場合に容量の増加を得ることができる。
【0017】
本形態において、多孔質炭素のBET比表面積を1050~2227/gとすることで容量増加を確実に見込むことができる電気二重層キャパシタを提供できる。
【0019】
本形態において、多孔質炭素のCHN分析値において、多孔質炭素の炭素成分が70.15~91.97質量%であることで、容量増加を確実に見込むことができる電気二重層キャパシタを提供できる。
【0020】
)前記一態様の電気二重層キャパシタにおいて、前記NaCl水溶液の濃度が5% 以上26%未満であることが好ましい。
【0021】
本形態によれば、濃度5%以上のNaCl水溶液を用いることで電気二重層キャパシタに好適な伝導度の電解液とすることができ、濃度26%未満とすることで、25℃以上でNaClが析出しない電解液とすることができる。
【0022】
)前記一態様の電気二重層キャパシタにおいて、前記集電体は白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含むことが好ましい。
)前記一態様の電気二重層キャパシタにおいて、前記セパレータはセルロース繊維またはガラス繊維からなることが好ましい。
セルロース繊維またはガラス繊維は、安全な材料で、絶縁性がよく、かつNaCl水溶液との耐食性がよく、濡れ性がよいため好ましい。これらの材料からなるセパレータは内部に空孔があり、この空孔にNaCl水溶液が保持されるので好ましい。
【0023】
)前記一態様の電気二重層キャパシタの製造方法は、多孔質炭素を集電体上に備えた正極側または負極側の電極と、前記電極を分離するセパレータと、NaCl水溶液からなる電解液とを備えた電気二重層キャパシタを製造する場合、吸着質にCO を選択し、吸着温度を298KとしたDubinin-Astakhov法で求めた細孔容積が1.14~1.83cmgであり、BET比表面積が1050~2227m /gの多孔質炭素であって、CHN分析値において、炭素成分が70.15~91.97質量%である多孔質炭素を用いることを特徴とする。
【0024】
Dubinin-Astakhov法で求めた細孔容積が1.14~1.83cmgであり、BET比表面積が1050~2227m /gの多孔質炭素であって、CHN分析値において、炭素成分が70.15~91.97質量%である多孔質炭素を用いて電気二重層キャパシタを作成することにより、安全かつ高容量の電気二重層キャパシタを製造することができる。
(6)前記一態様の電気二重層キャパシタの製造方法において、濃度が5%以上26%未満のNaCl水溶液を用いることが好ましい。
(7)前記一態様の電気二重層キャパシタの製造方法において、白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含む集電体を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本形態によれば、NaCl水溶液からなる電解液と、Dubinin-Astakhov法で求めた細孔容積が0.8cm/g以上の多孔質炭素を備えた電極を用いることで、安全かつ高容量な電気二重層キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】各種多孔質炭素のDubinin-Astakhov法で求めた細孔容積と、前記各種多孔質炭素を用いて作製した電気二重層キャパシタの容量の関係を示す散布図である。
図2】各種多孔質炭素のGCMC法で求めた容積と、前記各種多孔質炭素を用いて作製した電気二重層キャパシタの容量の関係を示す散布図である。
図3】各種多孔質炭素のtプロット法で求めた容積と、前記各種多孔質炭素を用いて作製した電気二重層キャパシタの容量の関係を示す散布図である。
図4】各種多孔質炭素のBJH法で求めた容積と、前記各種多孔質炭素を用いて作製した電気二重層キャパシタの容量の関係を示す散布図である。
図5】各種多孔質炭素のBET法で求めた比表面積と、前記各種多孔質炭素を用いて作製した電気二重層キャパシタの容量の関係を示す散布図である。
図6】NaCl水溶液の電気伝導度を示すグラフである。
図7】電気二重層キャパシタの一例を示す部分断面図である。
図8】多孔質炭素Aを用いて構成した電気二重層キャパシタのサイクル特性を示すグラフである。
図9】各種多孔質炭素を用いて構成した電気二重層キャパシタのサイクル特性を示すグラフである。
図10】水溶液中で水和しているClイオンのイメージ図である。
図11】多孔質炭素の表面に存在するマクロ孔とメソ孔とミクロ孔の平均的なイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る第1実施形態について図面を参照して説明する。
また、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し表示しているため、各部材の相対的な大きさが図面に示す形態に限らないのは勿論である。
【0028】
以下、本発明に係る電気二重層キャパシタの実施形態を挙げ、その各構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
一般的に多孔質炭素において、細孔径2nm未満をミクロ孔、2~50nmをメソ孔、50nm超をマクロ孔と分類されている。さらにミクロ孔は、0.7~2nmをスーパーミクロ孔、0.7nm未満をウルトラミクロ孔と分類されている。
多孔質炭素とは、表面に多数の細孔が形成されている炭素からなり、広範囲な大きさの細孔径分布を有している。例えば活性炭、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、グラフェンなどが挙げられる。原料は例えばやし殻、竹、シイ、スギ、稲わら、麦わら、籾殻、おがくず、ケナフなどの植物や、石油、石炭、樹脂などの炭素質材料、アセチレンなど炭素を含んだガスが挙げられる。
【0029】
電気二重層キャパシタに適用する多孔質炭素の製造方法は特に限定されないが、原料が木質の場合、塩化亜鉛やりん酸を用いると炭化と賦活が同時進行する。また原料を炭化した後、水蒸気、やCOなどのガスで、またKOHなどの薬品で賦活してもよい。炭化温度や時間、賦活剤、賦活温度や時間などの製造条件でBET比表面積や細孔径を制御することは可能である。
ただしBET比表面積と細孔径分布は互いに関連しているため、1つの物性のみを変化させることを1つの製造条件だけで制御することは難しい。また製造条件で原料からの収率も変化する。
【0030】
多孔質炭素はミクロ孔~マクロ孔まで非常に広範囲な細孔径分布を有していると考えられるが、どの程度の大きさの細孔径範囲が電気二重層キャパシタの容量に大きく寄与しているかについて以下に説明する。
図11を基に説明した通り、マクロ孔の表面積は小さいため、マクロ孔は、電気二重層キャパシタの容量にあまり寄与していないと考えられる。また、電解液は溶液に溶質を溶かしたものであり、アニオンとカチオンが溶媒和した状態で存在していると考えられ、多孔質炭素の細孔径が小さくなるほど、イオンが入りにくくなり、電気二重層キャパシタの容量も小さくなると考えられる。
【0031】
細孔解析方法として一般に、細孔径100nm以下の場合、ガス吸着法がよく用いられている。
ガス吸着法とは、試料にN、Ar、CO、Hなどを吸着させてその吸着等温線を測定し、比表面積、細孔容積、細孔径分布などを求める方法である。
一般的に吸着等温線はI型~VI型まで分類されている。通常、吸着質にNを、吸着温度を77Kとして測定されることが多く、主にI型、II型、IV型の吸着等温線が得られる。得られた吸着等温線からBET法で比表面積を、BJH法、DH法、CI法などでメソ孔の容積を、tプロット法やα法などでミクロ孔の容積を計算することができると考えられている。
【0032】
細孔径分布や表面積を解析する理論は、当然の事ながら前提となるモデルに適合しなければ正しく見積もることができない。しかし、多孔質炭素材料は原料や製造方法で、表面状態等が変わりかつ細孔形状も複雑なため1つの理論で細孔径分布に関する情報を包括して解析することが難しい。
【0033】
従来の硫酸水溶液または有機溶媒にテトラフルオロボレートを含ませた電解液の場合、測定対象の多孔質炭素に対し吸着質をNで、吸着温度を77KとしてBET法で求めた比表面積が大きいほど、電気二重層キャパシタの容量も大きくなる傾向があるといわれてきた。
図5に、後述する実施例で得られた結果を示すが、異なる8種類の多孔質炭素を本発明者が準備し、同じ吸着質にN、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、BET法で比表面積を求め、これら多孔質炭素からなる電極と、NaCl水溶液を電解液に用いた電気二重層キャパシタの容量を測定し、用いた多孔質炭素の質量で容量を割った値との散布図を示した。
図5から、BET法で求めた比表面積が大きくなるほど、ある程度容量が大きくなる傾向が見られたが、相関係数が小さく、同じBET比表面積で容量が異なる場合もあり、一概にBET比表面積だけでは説明できないことがわかった。
【0034】
そこで多孔質炭素のメソ孔容積と容量との関係を調べた。
結果を図4に示す。図4は、後述する実施例で得られた結果を示すが、メソ孔容積は前述の場合の同じ8種類の多孔質炭素に対し、吸着質にNを選択し、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法で求めた。図4に示すように電気二重層キャパシタの容量とBJH法で求めたメソ孔容積との相関は全く見られず、メソ孔容積は容量にあまり影響していないと考えられる。
【0035】
さらに、多孔質炭素のミクロ孔容積と電気二重層キャパシタの容量との関係を調べた結果を図3に示す。図3は、後述する実施例で得られた結果を示すが、前述と同じ8種類の多孔質炭素に対し吸着質にNを選択し、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、tプロット法で細孔径2nm未満の容積を求めた。
図3に示すように、電気二重層キャパシタの容量とtプロット法で求めた細孔径2nm未満の細孔容積との相関はBJH法で求めた容積よりよかったが十分ではなかった。
【0036】
ここで、本発明者は、ミクロ孔の測定に77KのNを用いると、極低温における速度論的な制約から進入困難なスケールの細孔が存在すると細孔の存在を測定できない可能性があると考えた。また、298KのNは臨界温度を超えるため、液体状態の解析が困難となり、細孔容積の算出ができないのではないかと考えた。
そこで本発明者は、Nより動的分子径が小さいCOを用い、298Kで吸着等温線を測定した。298KのCO測定は吸着温度が高く、拡散速度も速いため、小さな細孔までCOが侵入できると考えられる。また、電気二重層キャパシタが用いられる温度は室温付近が多いため、同じ温度領域での解析がよいと考えた。
【0037】
図2に、後述する実施例で得られた結果を示すが、前述と同じ8種類の多孔質炭素を吸着質にCOを選択し、吸着温度を298Kとして吸着等温線を測定し、GCMC法(Grand Canonical Monte Carlo method)で求めた多孔質炭素の細孔容積と、電気二重層キャパシタの容量との関係を示す。
GCMC法は、従来の吸着相が液体状態であると仮定(Kelvin理論)して解析するのに対し、固体表面からの吸着密度が周期的に変化していくとして解析する方法である。このデータは1.39nm以下のスリット幅の容積である。
【0038】
図2に示す結果から、GCMC法で求めた容積は、BJH法で求めたメソ孔容積より、また、tプロット法で求めた細孔径2nm未満の細孔容積より電気二重層キャパシタの容量に対し相関があることがわかった。しかし、同じ容積でも電気二重層キャパシタの容量が異なる場合もあり、一概に1.39nm以下のスリット幅の容積だけでは説明できないこともわかった。
【0039】
図1に、後述する実施例で得られた結果を示すが、前述と同じ8種類の多孔質炭素に対し、吸着質にCOを選択し、吸着温度を298Kとして吸着等温線を測定し、DA法(Dubinin-Astakhov法)で求めた細孔容積と電気二重層キャパシタの容量との関係を示す。
DA法はDR式(DubininとRadushkevich)の概念を拡張したもので、以下の(1)式~(3)式で表される。
DA法の考えによると、細孔への吸着は壁面に吸着層が積層していくのではなく、細孔空間への容積充填であるとして充填率を定義したものである。電気二重層のイオン分布は諸説あるが、電極平面の最も近い位置に吸着するヘルムホルツモデルと電極平面からの距離の関数で拡散するグイ-チャップマンモデルを考慮すると、細孔におけるDA法と電気二重層の吸着状態のモデルは似ていることから相関が強くなるのではないかと推測した。
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
【0043】
これらの(1)式~(3)式において、θは充填率、Vpはミクロ孔の全容積、Vは相対圧(p/p)のときに満たされている細孔の容積である。DA指数nはワイブル方程式を元にしたものである。詳細はDEVELOPMENT OF THE CONCEPTS OF VOLUME FILLING OF MICROPORES IN THE ADSORPTION OF GASES AND VAPORS BY MICROPOROUS ADSORBENTS(M.M.Dubinin and V.A.Astakhov)とAdsorption,Surface Area and Porosity SECOND EDITION(S.J.Gregg and K.S.W.Sing)において説明されている。
各式において、Rは気体定数、Tは絶対温度、εは吸着の特性自由エネルギー(気相から吸着層に1molの気体を移動する仕事)、pは吸着質の圧力、pは飽和蒸気圧を表す。また、C’は(2)式においてlog10Vをlog 10(p/p)に対してプロットした時の傾きである。
【0044】
上述の論文では、ワイブル方程式に基づいた充填率θの分布関数を以下の(4)式で仮定したことから式を展開しており、その結果前記(1)式~(3)式が導かれる。(n=2の場合は元になるDubinin-Radushkev法)。以下の(4)式において、εは吸着の特性自由エネルギーでθ=1/e=0.368のときAに等しい。
【0045】
【数4】
【0046】
前述の式においてnは分布状態を表す分布関数の指数パラメータであり、n値によって正規分布に似た山のような分布、山に裾野があるような分布、山はなく裾野だけのような分布など、細孔分布の形に依存する値を取り得る。DR法はn=2の場合の分布だけを想定し、DA法は色々な分布があるだろうと考え、DR法を拡張した方法と説明できる。
(2)式に示すlog10Vをlog 10(p/p)に対し図表上にプロットして、直線の切片からVpを求めることができる。DA指数nは最も直線性がよい値を選択した。nは多孔質炭素の種類によって異なり1.2~1.6の範囲であった。
吸着等温線の測定はいろいろな要因で曲がるため、上述のnを変化させて強制的に直線にするとnの値は1.2~1.6の範囲となった。
上述のプロットは、直線状になればなるほど、理論に良く合致していることとなる。nの値を変えると、上に凸のあるいは下に凸のブロットとなることもあり、最も直線性が良くなる指数を選択することが好ましい。
【0047】
前述したようにDA法と電気二重層の吸着状態のモデルは似ていると推測される。
また、DR法は分布関数のパラメータn=2としているが、DA法はnを限定していないため、実測した種々の多孔質炭素に見合った細孔容積を測定できると考えられる。それ故、DA法で求めた細孔容積と電気二重層キャパシタ容量との相関が強くなったと考えられる。
【0048】
DA法で測定できる細孔径範囲は明確に特定することはできないが、ミクロ孔を多く含んだ試料の細孔容積測定方法と解釈できる。
図1に示した実施例における結果が示す通り、DA法で求めた細孔容積と電気二重層キャパシタの容量との関係はGCMC法より求めた関係より強い相関が見られた。
【0049】
前述と同じ8種類の異なる多孔質炭素は、それぞれ広範囲な細孔径分布を有しており、測定方法によって測定できる細孔径範囲が異なっている。
測定範囲は細孔径分布の小さい順からGCMC法<tプロット法<BJH法である。細孔容積と容量との相関係数Rは0.66(GCMC法、図2参照)、0.47(tプロット法、図3参照)、0.83(DA法、図1参照)、相関なし(BJH法、図4参照)であった。
【0050】
このように8種類の多孔質炭素の細孔容積と電気二重層キャパシタの容量との相関を調べたところ、DA法が最も適していた。電解液中のNaとClは水で溶媒和しており、充電すると多孔質炭素のミクロ孔やメソ孔の細孔壁近くまで移動すると考えられ、電気二重層キャパシタの容量はDA法で求めた細孔の容積と強い相関があることがわかった。
DA法で求めた細孔の容積は、0.8~2.0cm/gであると電気二重層キャパシタの容量が大きくなり好ましい。電気二重層キャパシタの容量を大きくする意味において、より好ましいのは0.8~2.5cm/gの範囲であり、さらに好ましいのは0.8cm/g以上の範囲でできるだけ大きい値である。
上述の細孔容積範囲は、図1に示した近似直線(y=18.642x+3.245)から、50F/gになる多孔質炭素が存在すると仮定すると、x=2.5cm/gを採用できる。
賦活剤または賦活温度や時間などの製造条件を調整することで小さな細孔の容積をより多く形成できると考えられる。
【0051】
なお、本実施形態では、DA法で細孔容積を求める場合の条件として、吸着質にCOを選択し、吸着温度を298Kとして吸着等温線を測定し、この吸着等温線を求める場合に前述の(1)~(3)式の関係に基づき、nを変化させた場合に最も直線性に優れた値をn値として選択している。
【0052】
多孔質炭素のBET比表面積は500~3500m/gの範囲が好ましい。500m/g以下では電気二重層キャパシタとした場合の容量が小さ過ぎ、3500m/g以上は製造が難しくなる。この範囲であっても、後述する実施例の試験結果から、1000~3500m/gの範囲がより好ましいと考えられる。
【0053】
多孔質炭素からなる電極とは、多孔質炭素の他に、電極の導電性を向上させるための導電助剤や、これら粉末同士またはこれら粉末と集電体とを接合させるためのバインダーを含ませてもよい。導電助剤やバインダーはNaCl水溶液との耐食性に優れ、かつ安全な材料であることが重要である。例えば、導電助剤はカーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、グラフェンなどが挙げられる。
導電助剤も多孔質であると、容量が増えるため好ましい。例えばバインダーはポリテトラフルオロエチレン、PVDF、SBR、CMC、ポリアクリル酸など挙げられる。
【0054】
多孔質炭素の一つである活性炭の適用法令は消防法(指定可燃物)とじん肺法であり、毒物劇物取締法に該当していない。しかし、粉末の多孔質炭素は空気中に舞いやすく、吸入すると健康を害するおそれがあるが、本形態の電気二重層キャパシタでは、多孔質炭素をバインダーで結着させ、さらにNaCl水溶液で濡らし、さらに外装で囲むため、粉末の飛散は生じない。
【0055】
本実施形態で用いる多孔質炭素は炭素以外の元素を含んでもよい。
多孔質炭素は原料から炭化や賦活などの工程を行って作られるが、多孔質炭素に炭素以外の原料成分が残る場合がある。このような残渣があってもDA法で求めた容積が0.8cm/g以上であればよい。また多孔質炭素の表面状態はほとんどわかっていないが、疎水性であり、室温で酸素と反応することが知られている。各種形態をとる炭素の結晶子の端では炭素原子の規則的な配列が切れ、任意の元素と結合して表面官能基を形成することが知られている。例えばカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボニル基が挙げられる。
これら含酸素系官能基以外にも硫黄、水素、塩素を含む官能基が存在していると考えられる。これらは多孔質炭素を製造する際の原料や炭化、賦活方法によって変化する。また多孔質炭素は多くの様々な物質を吸着する性質があるため、保管環境や保管期間によっても変化すると考えられる。
【0056】
このように様々な成分を含んだ多孔質炭素を電気二重層キャパシタに用いると、炭素以外の成分または炭素と他の元素が結合した成分が電解液に溶解または充電すると電気分解してしまい、容量低下、保存性低下、サイクル特性が不安定になる場合がある。
よって多孔質炭素の炭素成分は多い方がよい。好ましくは多孔質炭素をCHN分析(Elemental Analysis(Carbon,Hydrogen,Nitrogen)したとき、多孔質炭素の炭素成分が65質量%以上である。より好ましいのは80%以上、より好ましいのは90%以上である。
【0057】
また、多孔質炭素の表面は可能な限り清浄にしてから電気二重層キャパシタに用いることが好ましい。多孔質炭素の表面は電気二重層を形成する場所であり、電解液以外の吸着物質があると容量低下、保存性低下、サイクル特性が不安定になる。
清浄にする方法としては熱処理、水蒸気処理、薬品処理などが挙げられ、これらを併用してもよい。これらは吸着物質によって最適な処理方法があると考えられる。
熱処理は空気中または不活性ガス中または真空中で加熱するだけの容易な方法である。熱だけで取れない場合、水または電解液または各種薬品を用いて処理してもよい。
【0058】
例えば水または水に界面活性剤を溶かした溶液に多孔質炭素を入れ、攪拌、加熱、超音波振動などを加えて清浄にする。この場合、水は大気圧で沸点が100℃であるため、吸着物質が水に溶解しない、分解しない、熱分解しない場合は取れにくくなる。
加圧熱水処理は密閉容器中に多孔質炭素と水を入れ加熱する方法で、密閉容器中の圧力が上昇し、100℃以上の水で処理することができる。さらに加熱すると水は臨界点に達し、さらに加熱すると水は超臨界状態に達する。超臨界状態の水は通常の水と性質が異なり、油などの有機物を溶かすユニークな性質を持つため、無害な水だけで100℃以上の処理ができ、表面をより清浄にすることができると考えられる。
【0059】
本形態の電気二重層キャパシタにおいて、電解液はNaCl水溶液を用いる。
Shannon et al., Acta A 32 (1976) 751によると、Naのイオン半径は0.1nm、Clのイオン半径は0.18nmであると考えられている。NaとClは水にどの程度溶媒和しているか不明であるが、電圧が加えられると多孔質炭素の細孔表面に移動すると考えられる。
電解液がNaCl水溶液からなるとは、不純物としてカルシウムの硫酸塩、カリウムの硫酸塩、マグネシウムの硫酸塩、ナトリウムの硫酸塩、炭酸塩、臭化物塩、カルシウムの塩化物、カリウムの塩化物、マグネシウムの塩化物などを含んでもよい。NaClの純度は特に限定しないが97%以上が好ましく、より好ましいのは99%以上である。また電極への濡れ性をよくするため界面活性剤を添加してもよいし、電気性能向上のための添加剤を含ませてもよい。
【0060】
図6に純度99%以上のNaClを用いてNaCl水溶液を作成し、電気伝導度を測定した結果を示した。NaCl水溶液の濃度は5%以上26%未満が好ましい。濃度は100×NaClの質量/(NaClの質量+水の質量)で計算した値である。
濃度が5%未満ではNaCl水溶液の電気伝導度が悪く、濃度が26%以上になると水への溶解度を超えNaClが析出し、電気伝導度が飽和してしまう。より好ましい濃度は10~22%である。濃度26%のNaCl水溶液を多孔質炭素からなる電極に滴下すると、水溶液をはじいてしまいドーム状の水滴となり、すぐにNaClの析出が観察された。濃度0~22%でもはじくが、すぐにNaClの析出は観察されなかった。
【0061】
NaClは食品に含まれているほど安全な物質としてよく知られている。ただし摂取量によっては健康を害する。日本中毒情報センターの情報によると、NaClのヒトの推定致死量は0.5~5g/kgであるとされている。体内で電気二重層キャパシタを利用する際は、この量を超えない範囲で可能な限り少ないNaCl量で電解液を設計すればよい。また、NaClと水は安全、健康、環境に関する法令に適用されていないため容易に廃棄できると考えられる。
【0062】
電気二重層キャパシタに用いる集電体は、白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子のいずれかを含むことができる。
これらの元素または材料を含んだ集電体は、電気伝導度がよく、かつNaCl水溶液に対する耐食性に優れる。これら元素または材料の単体または合金であってもよいし、2種以上を重ね合わせたクラッド板でもよいし、これらの元素または材料の粉末を樹脂に分散させたものでもよい。
【0063】
導電性高分子としてはPEDOT/PSS(ポリチオフェン系導電性高分子)などが挙げられる。形態は箔、板、膜などが挙げられる。例えば、鉄や銅など、NaCl水溶液で錆びてしまう材料の表面に、塗布、メッキ、蒸着、スパッタ、CVDなどの方法で前述の耐食性のよい材料でコーティングしてもよい。
【0064】
ただし、本発明者が、アルミニウムを+側と-側の集電体と端子に用い、電解液にNaCl水溶液を用いた電気二重層キャパシタを作製し、最大電圧1.2Vの充電放電サイクルしたところ、徐々に容量低下が起こり12サイクルで容量0となった。また、ガスが発生し、徐々に膨らんだため、70サイクルで充電を停止させた。
【0065】
この電気二重層キャパシタを分解して観察したところ、-電圧が加えられたアルミニウム集電体とアルミニウム端子は腐食していなかったが、+電圧が加えられたアルミニウム集電体とアルミニウム端子が腐食していた。アルミニウム集電体より幅が狭いアルミニウム端子の腐食が激しかった。電流密度が高いためと考えられる。
このため、チタンまたは炭素を用いて+側と-側の集電体と端子を構成し、前述と同等の充電試験を行った場合、この構成の電気二重層キャパシタは、ガス発生や腐食がなく耐食性に優れた電気二重層キャパシタとなった。
【0066】
電気二重層キャパシタの一例構成を図7に示す。図7は、電気二重層キャパシタの一部を略した部分断面図である。
図7に示す電気二重層キャパシタKは、正極側と負極側の電極1、2と、電極1を備えた集電体3と、電極2を備えた集電体4と、電極1、2間に介在されたセパレータ5と、これら全体を収容する外装体10、20を備えている。外装体10は、例えば、耐熱性樹脂層11とアルミニウム層(アルミニウム箔)12と熱融着樹脂層13を積層したアルミラミネートフィルムからなる。外装体20は、例えば、耐熱性樹脂層21とアルミニウム層(アルミニウム箔)22と熱融着樹脂層23を積層したアルミラミネートフィルムからなる。
【0067】
電極1、2と集電体3、4とセパレータ5を挟んで取り囲むように外装体10と外装体20が設けられ、外装体10と外装体20の周縁部の熱融着樹脂層13と23を所定の幅にわたり熱融着することで外装体10、20が一体化されている。外装体10、20で電極1、2と集電体3、4とセパレータ5を取り囲んだ部分には電解液15が封入されている。
電極1、2はセパレータ5の表裏に密着するように設けられ、電極1側の集電体3は外装体10の内面側に設置され、電極2側の集電体4は外装体20の内面側に設置されている。さらに、図7に示すように集電体3の一部に電気的に接続された端子6が外装体10と外装体20の溶着部分を挿通して外部に導出されている。なお、図7では略されているが、集電体4の一部にも他の端子が接続され、この端子も端子6と同様に外装体10と外装体20の溶着部分を挿通して外部に導出されている。
【0068】
電極1、2は多孔質炭素と必要に応じて導電助剤とバインダーとからなる。例えばこれら材料と溶媒とを混ぜたスラリーを集電体に塗布した電極や、またはこれらを混合した後に成形して作ることができる。
電極1と集電体3または電極2と集電体4は導電性接着剤で接着してもよい。導電性接着剤は例えばエポキシ、フェノール、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリイミドなどの樹脂と白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子の単体、またはこれらを含んだ化合物である導電フィラーを混合したものが挙げられる。
【0069】
電気二重層キャパシタにおいては、充電すると一方の電極表面にNaが、他方の電極表面にClが移動し、放電すると離れると考えられる。容量値の調整や性能向上のため電極1と電極2に含まれる多孔質炭素の種類は同じでも異なってもよいし、電極1と電極2に含まれる多孔質炭素の量も同じでも異なっていてもよい。
集電体3、4は電極の電気を集める働きをするものである。集電体はNaCl水溶液と触れるため前述の耐食性の良い材料を用いるのが好ましい。
端子6の一部は外装内部でNaCl水溶液と触れるため、耐食性がよい前述の材料が好ましい。外装外部の端子6はNaCl水溶液と触れないため、電気伝導度がよい材料を使用環境に応じて適宜選択するとよい。集電体3と端子6の接合部は同じ材料であると接合性がよい。特にチタンはNaCl水溶液との耐食性に優れるとともに、金属アレルギーを起こしにくく生体適合性にも優れる。これら集電体や端子も安全な材料で構成することが好ましい。
【0070】
セパレータ5は安全な材料で、かつ絶縁性がよく、かつNaCl水溶液との耐食性がよく、かつ濡れ性がよいものが好ましい。例えばセルロース繊維またはガラス繊維からなるものが挙げられる。セルロース繊維からなるセパレータとは、植物などを原料としたセルロース繊維を絡ませて薄くしたもので、ガラス繊維からなるセパレータとはガラス繊維とアクリル樹脂などをバインダーとし、不織布のようにしたものである。またこれら材料の片面に短絡防止の観点から、孔径の小さい多孔のポリオレフィンや多孔のセラミックなどNaCl水溶液と濡れが悪い層を設けてもよい。
【0071】
これらの材料からなるセパレータは内部に空孔があり、この空孔にNaCl水溶液が保持される。保持量は空孔率が高いほど、厚みが厚いほど多くなる。セパレータ5の濡れ性は重要である。多孔質炭素からなる電極1、2は水との濡れ性が非常に悪く水をはじいてしまう傾向がある。さらにNaCl水溶液の濃度が濃いほど濡れ性が悪くなる傾向がある。電極にNaCl水溶液が濡れないと電気二重層を形成できない。
【0072】
また、電極とセパレータの両方ともNaCl水溶液が濡れにくいものを用いると外装体10と20を封止するときに内部に注入したNaCl水溶液が外部へ漏れてしまい電気特性が低下する。電極1、2をNaCl水溶液で濡らすために長時間を要するが、濡らす時間が長くなるほど水の揮発が多くなり、最悪NaCl水溶液はNaClの粒子だけとなってしまうおそれがある。
【0073】
これを防ぐため、次のような工程により電気二重層キャパシタを製造とするとよい。
まず、外装体10、20の中に電極1、2とセパレータ5を入れた後、NaCl水溶液を注入する。するとNaCl水溶液は電極1、2に濡れないがセパレータ5に濡れる。そしてすぐに外装体10と外装体20で封止することでNaCl水溶液の水の揮発を最小限にすることができる。そして外装体を封止した状態で長時間放置するだけで電極をNaCl水溶液で濡らすことができる。このような製造工程を採用することで、容易に電気特性の優れた電気二重層キャパシタを製造することができる。
また、セパレータ5は薄く絶縁性のため、電気二重層キャパシタの組み立て時に風や静電気で位置がずれてしまうことがある。そのため、セパレータ5と外装体20の内面を接合部30で接合してもよい。接合部30による接合は、接着剤で接合してもよいし、セパレータ5と外装体20の一部を熱溶着してもよい。
【0074】
アルミラミネートフィルム10、20は、例えばアルミニウム箔からなるアルミニウム層12、22と耐熱性樹脂層11、21と熱融着樹脂層13、23からなる。2つの熱融着樹脂層13、23の外周を溶かして封止し、外装体内部に空間を形成することができる。熱融着樹脂はNaCl水溶液に触れるため耐食性のよいポリプロピレン系の樹脂を用いるとよい。端子6が貫通する部分は端子6の厚み分の段差ができるため、熱融着樹脂層13、23だけで段差を埋めることが困難である。そのため熱融着樹脂層13、23の段差部分に樹脂7を併用して封止すると気密性の高い電気二重層キャパシタとすることができる。
【0075】
外装体内部空間の熱融着樹脂層13または23に穴があると、NaCl水溶液はアルミニウム箔12または22と接触する。端子から充電して電圧が上昇すると、NaCl水溶液を通してアルミニウム層12または22にも電圧が加わる。すると、熱融着樹脂層13または23の穴の部分のアルミニウム層12または22が腐食しガスも発生するため、熱融着性樹脂層13または23に穴がないことが好ましい。この穴はアルミラミネートフィルム10と20をヒートシールする際やセパレータ5と熱融着樹脂層23とを熱溶着する際にできるおそれがあるため、最適な溶着条件とする必要がある。また穴があれば充電しなくても腐食する場合もある。電気二重層キャパシタの電圧は、セパレータと対向する2つの材料が同一であれば0V付近となるが、例えば電極1と2の材料が異なる、集電体3と4の材料が異なる、金属箔12と22の材料が異なるなど、セパレータと対向する材料が異なると電圧を持つ。すると充電しなくても穴があればこの電圧で金属箔12または22が腐食する場合がある。よって、熱融着樹脂13または23に穴がないようにする。
【0076】
この形態では外装10、20にアルミラミネートフィルムを用いた電気二重層キャパシタKを示した。外装の材料や形状は特に限定しないが安全性がよい材料を用いるとよい。
アルミラミネートフィルムではなく、前述のNaCl水溶液と耐食性に優れた材料を金属箔12または22に用いると、熱融着樹脂層13または23に穴があっても腐食やガス発生がなくなるため好ましい。また一般的に電解液に非水溶媒を用いたものは空気中の水分が外装内部に侵入し性能劣化のおそれがあるため、樹脂フィルムの間にガスバリア性が優れたアルミニウム箔を挟んだアルミラミネートフィルムが多用されているが、本発明の電解液はNaCl水溶液であるため、空気中の水分が外装内部に侵入しても性能劣化しにくいと考えられる。よってアルミニウム箔12または22を用いず、外装は単層または多層の樹脂フィルムだけで構成すると安価になると考えられる。
電気二重層キャパシタは、リチウムイオン二次電池のような発火や破裂といった報告はほとんどないが、過度な電圧が印加されるとNaCl水溶液が電気分解し、圧力が上昇して膨らむおそれがある。
特に大型なものほど危険性が高くなるため、外装の一部に薄肉部を設けてもよい。
外装の材料は特に限定しないが例えばNaCl水溶液と触れる部分は耐食性がある前述の導電性材料に加えて、セラミック、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなども挙げられる。NaCl水溶液と触れない部分は使用環境に応じて適宜選択するとよい。
【0077】
例えば室内や屋外で用いる場合は前述の導電性材料に加えて、セラミック、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなども挙げられる。電気二重層キャパシタが人体と触れる場合は白金、金、銀、チタン、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、錫、炭素、導電性高分子、セラミック、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0078】
電気二重層キャパシタKの全体形状は特に限定しないが金属板をプレス加工した円筒型、角形、コイン型でもよいし、凹状のセラミックと金属板からなるチップ型でもよい。金属板をプレス加工したものを用いる場合はプレス加工性と耐食性の観点から材料を決定すればよい。例えば鉄板はプレス加工性がよいがNaCl水溶液で錆びやすいため鉄板表面に耐食性のよい前述の材料を塗布、メッキ、蒸着、スパッタなどの方法で成膜、または鉄板と耐食性のよい材料とを圧接しクラッド板にしたものを用いてもよい。
【0079】
多孔質炭素のDA法で求めた細孔容積と電気二重層キャパシタの容量とは強い相関があるため、電気二重層キャパシタを製造しなくても、多孔質炭素のDA法で求めた細孔容積によって電気二重層キャパシタの容量を推定することができる。多孔質炭素は例えば自然に存在する植物などを原料とするため、原料に含まれる成分が一定していないことが多い。
そのため、炭化や賦活条件を原料に応じて変化させないと、一定の比表面積や細孔径分布をもった多孔質炭素を製造しにくくなる。したがって、多孔質炭素のDA法で求めた細孔容積が一定になるように炭化や賦活条件を変更すれば、電気二重層キャパシタを製造しなくても、容量を推定することができ、同じ容量をもった多数の電気二重層キャパシタを作成することができる。また、市販の多孔質炭素を選定する際、または検査する際に、DA法で求めた細孔容積を測定することが有効な方法である。
【0080】
電解液にNaCl水溶液を用いた電気二重層キャパシタは、過度な充電電圧を印加するとNaCl水溶液が電気分解し、塩素ガスや水素ガス、また水酸化ナトリウムなどの有害物質が生成し、セルの膨らみやサイクル寿命の低下が起こる。これを防ぐため、適切な充電電圧で充電することが重要である。
【実施例
【0081】
以下の表1に示す種々の原料と賦活剤を用いて作成した多孔質炭素A~Hを準備し、それら多孔質炭素の粒径D10、D50、D90をレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業 LMS-2000e)で測定した。測定は多孔質炭素を水に分散させて測定した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
次に、各多孔質炭素A~HのBET比表面積と細孔容積を比表面積・細孔径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社 BELSORP-miniII)を用いて測定した。
まず、各多孔質炭素A~Hを300℃で3時間前処理してから、吸着質にNを選択し、吸着温度を77Kとして吸着等温線を測定し、等温線分類に基づいて分類した。
BET比表面積は得られた吸着等温線がI型の場合ISO9277に基づいてp/po=0~0.1の範囲、I型以外ではp/po=0.05~0.35の範囲から求めた。
各多孔質炭素A~Hのメソ孔容積(メソ孔:2~50nm)はBJH法を用い、得られた吸着等温線のp/poが0.990~0.385までの容積を累積して求めた。また、得られた吸着等温線からtプロット法を用いて細孔径2nm未満(ミクロ孔)の容積を求めた。
【0084】
次に、各多孔質炭素A~Hを300℃で3時間前処理してから、吸着質にCOを選択し、吸着温度を298Kとして、GCMC法で1.39nm以下のスリット幅の容積を求めた。
また、圧力が0.5~100kPaまでの吸着等温線を測定し、細孔の容積をDA法で求めた。{log(p/p)}とlogMのプロットが直線となるようにDA指数nを調整した。ここでpは飽和蒸気圧、pは圧力、Mは試料1gあたりに吸着した質量である。結果を図1図5と表3に示す。
【0085】
多孔質炭素のCHN分析結果を表2に示す。
これらは株式会社アナテック・ヤナコの炭素・水素・窒素同時定量装置CHNコーダー、MT-5で測定した。燃焼炉950℃、酸化炉850℃、還元炉550℃、ヘリウム(キャリヤーガス)200ml/min、酸素20ml/minで行った。CHN分析は試料を完全燃焼させて発生した気体から定量分析を行う。そのためOthersの大部分は酸素と考えられる。残渣はCHN測定後に残った固体の質量であり、つまり完全燃焼で気化しなかったものである。
【0086】
【表2】
【0087】
図7に示した構成の電気二重層キャパシタを作成した。
電解液は蒸留水にNaCl(関東化学 純度99.5%以上)を溶かし、濃度18.9%のNaCl水溶液を作製した。次に、表1の多孔質炭素Aとケッチェンブラックとポリテトラフルオロエチレンをそれぞれ質量比6:3:1で混合し、厚み0.2mmのシートを作製した。このシートを15mm×18.5mmに切断し電極1とした。
チタンからなる集電体3とチタンからなる端子6を溶接して接合し、電極1を炭素フィラーの導電性接着剤で接着した。端子6の一部に樹脂7を溶着した。同様に電極2は電極1と同じとし、集電体4と端子はチタンから構成し、電極2を炭素フィラーの導電性接着剤で接着した。
次に、アルミラミネートフィルム10、20を四角に切断し、熱融着性脂層13と集電体3および熱融着性脂層23と集電体4を接着剤で固定した。次に、電極2の上にガラス繊維からなるセパレータ5を置き、接着剤からなる接合部30で固定した。次に、これらを100℃で3時間熱処理し、アルミラミネートフィルム10、20の外周3辺をヒートシールした。
【0088】
次に、残りの1辺から電解液を注入しセパレータ5に含ませた。そしてすぐにアルミラミネートフィルム10、20の外周1辺をヒートシールし封止した。次に、このまま12時間放置し、四角形状の電気二重層キャパシタを作製した。
【0089】
「実施例2」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Bに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「実施例3」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Cに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「実施例4」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Dに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
【0090】
参考例5」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Eに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
参考例6」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Fに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
【0091】
「比較例1」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Gに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
「比較例2」
多孔質炭素Aを多孔質炭素Hに変えた以外は実施例1と同じ構成の電気二重層キャパシタを作製した。
【0092】
(サイクル試験)
実施例1の電気二重層キャパシタがどの程度の充電電圧に耐えるかを調べるため、それぞれ0.8V、1.0V、1.2V、1.4V、1.6Vで3分充電し、10mAで0Vまで放電し放電時間を測定した。これを1サイクルとし、繰り返しサイクル試験を行った結果を図8に示す。
【0093】
図8に示すように、充電電圧が0.8V、1.0V、1.2Vの電気二重層キャパシタはサイクルが進むにつれ放電時間が増えその後安定し、約10000サイクル以上の充電に耐え、実用上十分であることがわかった。充電電圧を1.4Vと1.6Vとした電気二重層キャパシタは、サイクルが進むにつれ放電時間が増えその後減少した。約10000サイクル充電した後に観察したところ、充電電圧0.8~1.2Vの電気二重層キャパシタは薄くて柔らかいアルミラミネートフィルムが膨らんでいなかったが、1.4Vと1.6Vの電気二重層キャパシタは膨らんでいた。これは充電電圧が高いためNaCl水溶液が電気分解しガスが発生したと考えられる。
【0094】
実施例1~4、参考例5、6と比較例1~2の電気二重層キャパシタを1.2Vで3分充電し、0Vまで放電し、放電時間を測定した結果を図9に示す。サイクルが進むにつれ放電時間が増え、すべて500サイクルで安定したため後述の容量測定を行った。容量測定後はサイクル試験を継続した。
サイクルが進むにつれ放電時間が増えた理由は、多孔質炭素を空気中に放置していたため、何らかの物質が表面に吸着してしまい、実施例に記載の処理で取れず、サイクル試験の進行によって徐々に取れてきたためと考えられる。多孔質炭素の表面は可能な限り清浄な状態にしてから電気二重層キャパシタを作成する必要があると考えられる。
【0095】
(容量測定)
実施例1~4、参考例5、6と比較例1~2の電気二重層キャパシタを前述の通り500サイクル充放電した後、1.2V3分で充電し、放電電流を0.01、0.05、0.1、0.5、1、5 、10、50、100mAの各電流で0Vまで放電した。
この結果、多孔質炭素の種類で放電電流値による容量低下の影響が異なった。すべての電気二重層キャパシタは小電流で自己放電の影響により容量が小さくなり、大電流で内部抵抗の影響により容量が小さくなった。すべての電気二重層キャパシタは放電電流1mAで容量が最大だったため、容量は放電電流1mAで求めた。
【0096】
容量はJIS C5160-1の方法、容量(F)=I×(t2-t1)/(U1-U2)に従って求め、電極1と電極2に含まれる多孔質炭素の質量(g)で除算した。
ここでIは放電電流(A)、U1は充電電圧の80%(V)、U2は充電電圧の40%(V)、t1は放電開始からU1になるまでの時間(s)、t2は放電開始からU2になるまでの時間(s)である。
これらの結果を図1図5と表3にそれぞれ示す。
【0097】
【表3】
【0098】
表3に示す結果から、多孔質炭素のBET比表面積が大きいほど電気二重層キャパシタの容量も大きくなる傾向が見られたが、先に図5を基に説明した如く、同じBET比表面積でも容量が異なる場合があった。
BJH法で求めた多孔質炭素の容積と電気二重層キャパシタの容量について、先に図4を基に説明した如く、相関はなかった。
tプロット法はNの77Kで測定し、GCMC法はCOの298Kで測定した。
tプロット法による測定結果を表3と図3に示し、GCMC法による結果を表3と図2に示す。
図2図3と表3に示す結果を比較するとGCMC法の相関係数がよかったが、十分ではなかった。
【0099】
表3と図1に示すように、DA法で求めた多孔質炭素の細孔容積と電気二重層キャパシタの容量に強い相関が見られ、細孔容積が大きいほど電気二重層キャパシタの容量が大きくなることがわかった。また、チタンと炭素を含んだ集電体を用いたが、サイクル試験で膨らみは生じなかった。
【0100】
これらの試験結果から、NaCl水溶液からなる電解液と、DA法で求めた容積が0.8cm/g以上の多孔質炭素を備えた電極を用いることで、安全で高容量な電気二重層キャパシタを提供できることが分かった。
【符号の説明】
【0101】
K…電気二重層キャパシタ、1、2・・・電極、3、4・・・集電体、5・・・セパレータ、
6・・・端子、7・・樹脂、10、20・・・アルミラミネートフィルム、
11、21・・・耐熱性樹脂層、12、22・・・アルミニウム層、
13、23・・・熱融着樹脂層、30・・・接合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11