(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230626BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230626BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20230626BHJP
B09B 101/15 20220101ALN20230626BHJP
【FI】
B09B5/00 C
G01N21/27 A
G06T7/62
B09B101:15
(21)【出願番号】P 2020066205
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後田 智也
(72)【発明者】
【氏名】河村 寿文
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026551(WO,A1)
【文献】特開2015-232449(JP,A)
【文献】特開2014-081943(JP,A)
【文献】特表2007-505733(JP,A)
【文献】特開2000-099729(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090941(WO,A1)
【文献】特開2020-197953(JP,A)
【文献】特開2020-197954(JP,A)
【文献】特開2021-081971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
G01N 21/00- 21/01;
21/17- 21/61
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像した撮像画像の中から、前記複数の部品種毎に、前記電子・電気機器部品屑を抽出し、
抽出した前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑及び前記電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与し、
前記認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する
、記憶手段に予め記憶された学習データである部品種面積率データに基づいて、前記複数の部品種毎に、前記認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の合計面積を推測し、
前記合計面積の推測結果と前記複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、前記複数の部品種毎の前記電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、前記撮像画像内の前記電子・電気機器部品屑の組成を解析すること
を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項2】
抽出処理で抽出されなかった前記撮像画像中の前記電子・電気機器部品屑の輪郭の情報、前記抽出処理で抽出されなかった前記撮像画像中の前記電子・電気機器部品屑と前記背景の画像とを含む前記認識枠の情報、該認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報の少なくともいずれかを取得し、該取得結果に基づいて、前記抽出処理及び推測処理を行うことを更に含む請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項3】
前記複数の部品種が、基板及びプラスチックを少なくとも含む請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項4】
前記電子・電気機器部品屑の前記組成の解析結果に基づいて、前記複数の部品種の中から特定の部品種を選別するための選別機の運転条件の情報を生成することを更に含む請求項1~3のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の前記電子・電気機器部品屑の前記組成の解析結果に基づいて、前記複数の部品種の中から特定の部品種を選別する選別工程を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項6】
複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像した撮像画像の中から前記電子・電気機器部品屑を抽出する抽出手段と、
抽出した前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑及び前記電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する認識枠付与手段と、
前記認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報を有する
、記憶手段に予め記憶された学習データである部品種面積率データに基づいて、前記複数の部品種毎に、前記認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の合計面積を推測する面積推測手段と、
前記合計面積の推測結果と前記複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、前記複数の部品種毎の前記電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、前記撮像画像内の前記電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析手段と
を備えることを特徴とする電子・電気機器部品屑の組成解析装置。
【請求項7】
複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像する撮像手段と、
撮像画像の中から前記電子・電気機器部品屑を抽出する抽出手段、抽出した前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑及び前記電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する認識枠付与手段、前記認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報を有する
、記憶手段に予め記憶された学習データである部品種面積率データに基づいて、前記複数の部品種毎に、前記認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の合計面積を推測する面積推測手段、及び、前記合計面積の推測結果と前記複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、前記複数の部品種毎の前記電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、前記撮像画像内の前記電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析手段を備える組成解析装置と、
前記組成解析装置によって解析された組成解析結果に基づいて前記電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機と
を備える電子・電気機器部品屑の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源保護の観点から、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきている。また、電子・電気機器部品屑の処理量は近年増加する傾向にあり、その効率的な回収方法が検討され、提案されている。
【0003】
例えば、特開2015-123418号公報(特許文献1)では、銅を含む電気・電子機器部品屑を焼却後、所定のサイズ以下に粉砕し、粉砕した電気・電子機器部品屑を銅の溶錬炉で処理することが記載されている。
【0004】
しかしながら、電子・電気機器部品屑の処理量が増加することにより、電子・電気機器部品屑に含まれる物質の種類によってはその後の銅製錬工程での処理に好ましくない物質(製錬阻害物質)が従来よりも多量に投入されることとなる。このような銅製錬工程に装入される製錬阻害物質の量が多くなると、電子・電気機器部品屑の投入量を制限せざるを得なくなる状況が生じる。
【0005】
例えば、電子・電気機器部品屑には、様々な形状及び種類の部品屑が含まれており、供給元の違い等によりその原料組成が変化する。銅製錬工程に投入される原料を適切に選別するために、現在は、電子・電気機器部品屑の原料組成を予め目視判定や化学分析によって評価し、その結果を選別処理の操業管理、運転条件の設定に反映させることが行われている。
【0006】
しかしながら、目視により原料組成を判定する手法では、個人の経験や技能によって評価結果にバラつきがあり、定量的な評価もできていない。原料組成特定のための化学分析や手選別も時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、個人の経験や技能に関係なく、電子・電気機器部品屑中の部品屑の組成を短時間で効率良く解析することが可能な電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析方法は一実施態様において、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像した撮像画像の中から、複数の部品種毎に、電子・電気機器部品屑を抽出し、抽出した電子・電気機器部品屑に対し、電子・電気機器部品屑及び電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与し、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する部品種面積率データに基づいて、複数の部品種毎に、認識枠が付された電子・電気機器部品屑の合計面積を推測し、合計面積の推測結果と複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、複数の部品種毎の電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、撮像画像内の電子・電気機器部品屑の組成を解析することを含む電子・電気機器部品屑の組成解析方法である。
【0010】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は一実施態様において、上記電子・電気機器部品屑の組成の解析結果に基づいて、複数の部品種の中から特定の部品種を選別する選別工程を含む電子・電気機器部品屑の処理方法である。
【0011】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析装置は一実施態様において、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像した撮像画像の中から電子・電気機器部品屑を抽出する抽出手段と、抽出した電子・電気機器部品屑に対し、電子・電気機器部品屑及び電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する認識枠付与手段と、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を有する部品種面積率データに基づいて、複数の部品種毎に、認識枠が付された電子・電気機器部品屑の合計面積を推測する面積推測手段と、合計面積の推測結果と複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、複数の部品種毎の電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、撮像画像内の電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析手段とを備える電子・電気機器部品屑の組成解析装置である。
【0012】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置は一実施態様において、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像する撮像手段と、撮像画像の中から電子・電気機器部品屑を抽出する抽出手段、抽出した電子・電気機器部品屑に対し、電子・電気機器部品屑及び電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する認識枠付与手段、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を有する部品種面積率データに基づいて、複数の部品種毎に、認識枠が付された電子・電気機器部品屑の合計面積を推測する面積推測手段、及び、合計面積の推測結果と複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、複数の部品種毎の電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、撮像画像内の電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析手段を備える組成解析装置と、組成解析装置によって解析された組成解析結果に基づいて電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機とを備える電子・電気機器部品屑の処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、個人の経験や技能に関係なく、電子・電気機器部品屑中の部品屑の組成を短時間で効率良く解析することが可能な電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2(a)は、撮像画像中に存在する電子・電気機器部品屑(基板)に認識枠を付与した画像の例を表す写真であり、
図2(b)は、認識枠を付与した電子・電気機器部品屑を部品種(基板・プラスチック)毎に並べた例を示す写真である。
【
図3】電子・電気機器部品屑の画像解析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】基板・プラスチックの合計面積の実測値と推測値との比較を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0016】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置は、
図1に示すように、電子・電気機器部品屑を撮像する撮像装置12と、電子・電気機器部品屑の組成を解析する解析手段を備える組成解析装置10と、組成解析装置10によって解析された組成解析結果に基づいて電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機13とを備える。
【0017】
本実施形態における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさに破砕されたものを指す。本実施形態では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0018】
破砕方法として、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でもよいが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕が望ましい。従って、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。
【0019】
電子・電気機器部品屑は、基板、筐体などに使われるプラスチック(合成樹脂類)、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他、等の複数の部品種からなり、処理目的に応じて更に細かく分類することができる。以下に限定されるものではないが、本実施形態では、粒度50mm以下に破砕されている電子・電気機器部品屑を好適に処理することができる。粒度の下限は特に限定されないが、5mm以上、より典型的には10mm以上、更には15mm以上である。
【0020】
組成解析装置10は、組成解析処理を制御するための制御部(制御装置)100、各種制御に必要な情報を記憶する記憶装置110、入力装置120、表示装置130を備えることができる。制御部100は、抽出手段101、認識枠付与手段102、面積推測手段103、解析手段104、運転条件生成手段105、位置情報出力手段106、学習手段107及び更新手段108を含むことができる。
【0021】
記憶装置110は、抽出データ記憶手段111、部品面積率記憶手段112、解析情報記憶手段113、付加情報記憶手段114を備えることができる。解析手段104は、ネットワーク11を介して、解析手段104の解析結果を、サーバ15或いはネットワーク11を介して接続された選別機13とは別の選別機14へ入出力することができるようになっている。
【0022】
抽出データ記憶手段111は、電子・電気機器部品屑を撮像した画像の中から、複数の部品種毎に、電子・電気機器部品屑の画像を分類して抽出するための抽出データが記憶されている。例えば、抽出データ記憶手段111は、電子・電気機器部品屑の画像情報から、複数の部品種、即ち、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他(コネクタ、フィルム状部品屑、被覆線屑等)の少なくとも2種類以上、好ましくは7種類以上、更には10種類以上に分類するための抽出基本情報を備えている。電子・電気機器部品屑を複数の部品種毎に分類して抽出するための条件は、その後の選別処理目的等種々の条件に応じて、操作者が予め設定することができる。
【0023】
抽出処理に利用される抽出データとしては、例えば、電子・電気機器部品屑の輪郭等の幾何形状を抽出するための形状情報、電子・電気機器部品屑の色彩を抽出するための色彩情報、電子・電気機器部品屑の周囲の背景画像の色彩、凹凸による影等の背景情報を抽出するための背景情報等、電子・電気機器部品屑の回転画像等を含むことができる。抽出データは抽出データ記憶手段111に記憶される。抽出手段101は、抽出データ記憶手段111に記憶された抽出データに基づいて、電子・電気機器部品屑を複数の部品種毎に抽出し、抽出結果を抽出データ記憶手段111へ記憶させる。
【0024】
認識枠付与手段102は、抽出手段が抽出した電子・電気機器部品屑に対し、電子・電気機器部品屑及び電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する。認識枠付与手段102が背景画像を含んだ認識枠を付与することによって、電子・電気機器部品屑の輪郭が認識しやすくなる。
【0025】
認識枠付与手段102は、電子・電気機器部品屑の輪郭と外接する外接図形を認識枠として付与することが好ましい。外接図形の形状は、外接矩形、外接円形、外接多角形など任意の形状を有し得る。認識枠付与手段102は、操作者が複数の部品屑を見分けやすいように、部品種毎に異なる特性(色彩、線の濃淡、線の種類(太さ、点線/実線など))の認識枠を付与することが望ましい。
図2(a)は撮像画像から電子・電気機器部品屑として基板を抽出した場合の例を表す写真である。
図2(b)の紙面上部が基板、紙面下部がプラスチックの抽出物の例を示す。
【0026】
面積推測手段103は、部品面積率記憶手段112に記憶された、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する部品種面積率データを用いて、複数の部品種毎に、認識枠が付された電子・電気機器部品屑の合計面積を推測する。部品種面積率データとしては、電子・電気機器部品屑の輪郭の形状情報、認識枠の面積、認識枠内に占める電子・電気機器部品屑の面積及び背景の面積、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報、位置情報等の種々の情報を含むことができ、後述する学習手段107により、任意のタイミングでデータの更新が可能な学習データである。
【0027】
解析手段104は、部品種毎の電子・電気機器部品屑の合計面積の推測結果と予め定められた複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、複数の部品種に含まれる電子・電気機器部品屑の重量を解析することで、複数の部品種の重量比率をそれぞれ解析し、これにより、撮像画像内に存在する電子・電気機器部品屑の組成を解析する。
【0028】
複数の部品種の単位面積当たりの想定重量は、操業結果に応じて予め操作者により入力装置120等を介して設定しておくことができる。以下に限定されるものではないが、例えば、電子・電気機器部品屑を基板、プラスチック、その他部品の3種類に分類する場合、基板屑の想定重量を例えば2.0g/cm2、プラスチックの想定重量を1.5g/cm2、その他の部品を1.0g/cm2と設定することができる。
【0029】
なお、解析手段104は、上記で説明した面積の情報の他に、抽出した部品種毎にその部品種を構成する部品の個数(個)、上記の面積の推測結果と個数とから算出される平均粒径、夫々の部品種を構成する元素の重量比などのその他物理的特性についても解析し、表示装置130等に出力することもできる。
【0030】
運転条件生成手段105は、解析手段104による複数の部品種の重量比率の解析結果に基づいて、複数の部品種を選別するための選別機の運転条件の情報を生成する。選別機としては、ピッキング、カラーソーター、メタルソーター、渦電流選別機、風力選別機、篩別機などの種々の選別機がある。例えば、解析手段104による解析結果から、運転条件生成手段105は、例えば基板とプラスチックとを選別するカラーソーターの運転条件を生成し、生成した運転条件を付加情報記憶手段114へ格納する。付加情報記憶手段114へ格納された運転条件は、選別機13、14へ出力されて、選別機13、14が、出力された運転条件に応じて選別処理を行うことができる。
【0031】
位置情報出力手段106は、電子・機器部品屑を撮像した画像において抽出手段101が分類した複数の部品種のそれぞれの位置情報を取得し、付加情報記憶手段114へ格納する。そして、複数の部品種の中から特定の部品種の位置を抽出してこれを選別するための特定の選別機13、14に対し、位置情報を出力する。例えば、基板と金属片はメタルソーター等の特定の選別機13、14では分離できないが、画像情報で個別に位置情報が得られれば、ピッキング機能を備える選別機13、14によってこれらを選別することができるようになる。
【0032】
学習手段107は、抽出処理及び推測処理に必要な学習データを機械学習により作製する。例えば、学習手段107は、基板、プラスチック、金属片、銅線屑などの複数の部品種毎の特徴、例えば、本実施形態では、各部品種毎の色彩、形状、認識枠と部品屑の面積率の関係等の情報に関し、数百枚~数万枚のデータの入力に基づいてその特徴を学習し、抽出処理及び推測処理の精度を向上させるように学習する。
【0033】
更に、学習手段107は、電子・電気機器部品屑の誤認識等が生じた場合に、抽出手段101による誤認識、或いは抽出漏れが生じた場合に、誤認識又は抽出漏れが生じた電子・電気機器部品屑の特性を更に学習する。例えば、学習手段107は、抽出手段101により抽出されなかった電子・電気機器部品屑の輪郭の情報、抽出処理で抽出されなかった電子・電気機器部品屑の背景の画像とを含む新たな認識枠の情報、その認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報等の入力に応じた機械学習等により新たな学習モデルを作製する。
【0034】
更新手段108は、学習手段107の学習結果に基づいて、抽出手段101が部品種を抽出するために用いられる抽出データ及び部品種面積率データを更新することができる。更新されたデータは、ネットワーク11を介して接続された選別機14やサーバ15へ送信されてもよい。
【0035】
図1に示す電子・電気機器部品屑の処理装置を用いた電子・電気機器部品屑の処理方法の一例について、
図3のフローチャートを用いて説明する。ステップS100において、撮像画像を取得する。撮像画像は入力装置120或いはネットワーク11を介して入力された撮像画像でもよいし、撮像装置12が撮像した撮像画像を用いてもよい。ステップS101において、
図1の抽出手段101が、撮像装置12により撮像された画像内に存在する電子・電気機器部品屑を、抽出データ記憶手段111に記憶された抽出データに基づいて、部品種毎(例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他の部品種の7分類)に分類する。
【0036】
抽出手段101による分類結果は、表示装置130等によって表示されることができる。操作者の確認がし易くなるように、分類結果は、表示装置130に表示される画像において、例えば、基板は赤枠で、プラスチックは青枠にする等して、部品種毎に色の異なる認識枠が付され得る。このとき、
図1の位置情報出力手段は、抽出手段101によるこの抽出結果に基づく位置情報を付加情報記憶手段114に格納することができる。
【0037】
例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他の部品種の7分類に分類した場合、基板、銅線屑、コンデンサー及びICチップは有価物とし、金属片(アルミやSUS)及びプラスチックを製錬阻害物質と見なして選別するように、選別条件を適切化することで、電子・電気機器部品屑の分離効率やロス率、操業成績を数値化して管理することができる。
【0038】
ステップS102において、認識枠付与手段102が、抽出手段101が抽出した複数の電子・延期機器部品屑に対し、複数の部品種毎に、電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する。ステップS103において、面積推測手段103が、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を有する部品種面積率データに基づいて、複数の部品種毎に、認識枠が付された電子・電気機器部品屑の面積(合計面積)を推測する。ステップS103において、解析手段104は、面積推測手段103による面積の推測結果と、複数の部品種の単位面積当たりの想定重量を乗算して複数の部品種の重量比率をそれぞれ解析することにより、撮像画像内の電子・電気機器部品屑の組成を解析する。例えば、画像内の部品種毎の合計面積に、単位面積当たりの重量を乗算すると、部品屑の総重量を概ね算出することができる。各部品種毎の部品屑の総重量をそれぞれ対比することで、撮像画像内に含まれる電子・電気機器部品屑の組成が解析できる。解析結果は、ステップS104において出力される。
【0039】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析方法及び組成解析装置によれば、撮像画像に電子・電気機器部品屑とその周囲の背景画像を含む認識枠、好ましくは外形矩形の認識枠を付与し、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を用いて、部品屑毎の電子・電気機器部品屑の重量を解析することにより、画像解析によって、撮像画像中に存在する電子・電気機器部品屑の部品種毎の重量比率を求めることができる。これにより、原料組成を、個人の経験や技能に関係なく迅速に推測することができる。その結果、操作者が、原料の購入条件や原料の選別方法の判断をより早期に行うことができるようになるため、工場全体をより効率的に運用できる。
【0040】
電子・電気機器部品屑の周囲の背景画像は、撮像先の条件により異なる場合があり、場合によっては、抽出手段101が、電子・電気機器部品屑を適切に抽出できない場合がある。本実施形態では、学習手段107が、背景の情報と、電子・電気機器部品屑の縁取り画像を組み合わせた画像を合成した新たな認識枠の情報を含む、電子・電気機器部品屑の抽出処理のための学習データを新たに作製することにより、撮像画像中の種々の条件に対応したより柔軟な組成解析装置を得ることができる。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態に係る解析方法に従って、撮像画像の中から電子・電気機器として基板とプラスチックとをそれぞれ抽出し、その面積を推測した結果と実測値との比較の例を表す表である。
図4に示すように、本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析方法によれば、基板については5.0%未満の測定誤差で、プラスチックについては10%未満の測定誤差で適切な評価ができており、二種類の部品を含む場合には、認識率90%以上を達成することができた。そのため、原料の組成を数値的に大まかに把握する上では、本手法により十分な効果が得られているといえる。
【0042】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
例えば、解析手段104によって、撮像画像の中から複数の部品種毎の平均の面積、個数、平均粒径、重量比などを数値化して解析することができるため、従来のように、手選別で電子・電気機器部品屑の原料組成を評価するよりも著しく迅速にその原料組成を数値化して把握することができる。
【0044】
更に、解析手段104が解析した原料解析結果に基づいて、複数の部品種の中から特定の部品種を選別する選別機の運転条件の情報、例えば、原料を選別処理するための選別機の選択と、選別条件、選別順序等の操業条件を決定し、その操業条件に基づいて選別処理を行うことができる。
【0045】
例えば、電子・電気機器部品屑に対して風力選別機を用いて風力選別を行って軽量物と重量物とに選別することにより、選別後の処理物中の基板とプラスチックの重量比率を上げるための処理を行うことができる。この場合、選別機13、14による処理においては、解析手段104が解析した原料解析結果に基づいて、複数の部品種の平均粒径に応じて、風力選別機の風量を調整することができる。風量は例えば5~20m/s、より好ましくは5~12m/s、更には5~10m/s程度とすることができる。風力選別は解析手段104が解析した原料解析結果に応じて2回以上繰り返して行うことができる。
【0046】
或いは、上記の風力選別を実施する前に、ピッキング装置を用いたピッキング処理を行うことにより、塊状の銅線屑を取り除くピッキング処理を行うことができる。このピッキング処理に際しては、付加情報記憶手段114に記憶された銅線屑の位置情報を選別機13としてのピッキング装置に出力し、ピッキング装置がその出力結果に応じて銅線屑を取り除くことができる。この銅線屑は、例えば有価金属回収工程へ送ることができる。
【0047】
風力選別を二回以上繰り返す場合は、第1回目の風力選別と第2回目の風力選別との間に篩別機を用いた選別処理を行うことができる。この場合、選別機13としては篩別機が採用され、解析手段104が解析した原料解析結果である複数の部品種の平均粒径に基づいて、特性の部品種を選別するための篩別機の篩目の寸法を変更することができる。
【0048】
上記で説明した手法の他にも、磁力選別工程、渦電流選別工程、及び金属物と非金属物とを光学的に選別する光学式選別工程に用いられる選別機13に対してそれぞれ本発明の実施の形態に係る組成解析装置による組成解析結果を活用することで、搬送中の電子・電気機器部品屑を連続的に撮影しながら、その画像データをリアルタイムに解析し、原料組成を解析することができる。
【0049】
従来、電子・電気機器部品屑の原料組成は、目視判定や化学分析によって評価し、その結果を選別処理の操業管理、運転条件の設定に反映させることが行われていたが、しかしながら、目視判定により原料組成を把握する手法では、迅速な処理を行うことができなかった。
【0050】
本発明の実施の形態によれば、時々刻々とその組成が変化する電子・電気機器部品屑の中からその中の部品屑の組成を画像解析と所定の分類データに基づく分離によって、瞬時に判別し数値化することができるため、大量の電子・電気機器部品屑をより適切な条件で迅速に選別を行うことができる。
【0051】
更に、選別機13、14による処理前後の部品屑の原料組成を画像解析することで、部品屑の変化量に基づいて、選別機13、14の選別効率(成績)を評価することができる。電子・電気機器部品屑の原料組成を判別するとともにその位置情報を抽出し、ピッキング装置やカラーソーター、メタルソーターなどの選別機13、14と連動させることで、部品種の個別分離が容易になる。また、表示装置130に解析結果として原料種毎に色の異なる枠を付けて表示させることで操作者が認識しやすくなるため、組成解析装置の誤検知も認識しやすくなる。
【符号の説明】
【0052】
10…組成解析装置
11…ネットワーク
12…撮像装置
13,14…選別機
15…サーバ
100…制御部
101…抽出手段
102…認識枠付与手段
103…面積推測手段
104…解析手段
105…運転条件生成手段
106…位置情報出力手段
107…学習手段
108…更新手段
110…記憶装置
111…抽出データ記憶手段
112…部品面積率記憶手段
113…解析情報記憶手段
114…付加情報記憶手段
120…入力装置
130…表示装置