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特許7301783電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20230626BHJP
   B07C 5/10 20060101ALI20230626BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20230626BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230626BHJP
   G01N 21/27 20060101ALN20230626BHJP
   B09B 101/15 20220101ALN20230626BHJP
【FI】
B09B5/00 C
B07C5/10
G06T7/62
G06T7/00 350B
G01N21/27 A
B09B101:15
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020066206
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021159881
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後田 智也
(72)【発明者】
【氏名】河村 寿文
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-081943(JP,A)
【文献】特表2007-505733(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110717426(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108932510(CN,A)
【文献】特開2020-197953(JP,A)
【文献】特開2020-197954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
G01N 21/00- 21/01;
21/17- 21/61
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を含む原料を撮像した撮像画像の中から、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、前記電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行うことを含み、
前記機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合は、前記機械学習システムの確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が前記学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定して前記電子・電気機器部品屑を抽出すること
を含み、
前記電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行うことが、
設定された前記確信度に基づいて抽出された前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑及び前記電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与し、
記憶装置に記憶された前記認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する部品種面積率データに基づいて、前記複数の部品種毎に、前記認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の合計面積を推測し、
前記合計面積の推測結果と前記複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、前記複数の部品種毎の前記電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、前記撮像画像内の前記電子・電気機器部品屑の組成解析を行うこと
を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項2】
前記第1の閾値を0.2~0.5とし、前記第2の閾値を0.01~0.1とすることを含む請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項3】
前記学習データに反映されていない原料に含まれる前記電子・電気機器部品屑の輪郭、色彩、前記認識枠に対する前記面積率、及び前記背景の少なくともいずれかの情報を、前記機械学習システムに学習させることを含む請求項1又は2に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項4】
前記複数の部品種が、基板及びプラスチックを少なくとも含む請求項1~3のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の組成解析方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の組成解析結果に基づいて、前記複数の部品種の中から特定の部品種を選別する選別工程を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項6】
複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を含む原料を撮像した撮像画像の中から、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、前記電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行う電子・電気機器部品屑の組成解析装置であって、
設定された確信度に基づいて抽出された前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑及び前記電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与し、
記憶装置に記憶された前記認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する部品種面積率データに基づいて、前記複数の部品種毎に、前記認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の合計面積を推測し、
前記合計面積の推測結果と前記複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、前記複数の部品種毎の前記電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、前記撮像画像内の前記電子・電気機器部品屑の組成解析を行い、
前記機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合は、前記機械学習システムの前記確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が前記学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定して前記電子・電気機器部品屑を抽出する処理装置
を備えることを特徴とする電子・電気機器部品屑の組成解析装置。
【請求項7】
複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像する撮像装置と、
撮像画像の中から、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、前記電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行う電子・電気機器部品屑の組成解析装置であって、
設定された確信度に基づいて抽出された前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑及び前記電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与し、
記憶装置に記憶された前記認識枠に対する前記電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する部品種面積率データに基づいて、前記複数の部品種毎に、前記認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の合計面積を推測し、
前記合計面積の推測結果と前記複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、前記複数の部品種毎の前記電子・電気機器部品屑の重量比率をそれぞれ解析することにより、前記撮像画像内の前記電子・電気機器部品屑の組成解析を行い、
前記機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合は、前記機械学習システムの前記確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が前記学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定して前記電子・電気機器部品屑を抽出する処理装置を備える前記組成解析装置と、
前記組成解析装置によって解析された組成解析結果に基づいて前記電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機と
を備える電子・電気機器部品屑の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源保護の観点から、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきている。また、電子・電気機器部品屑の処理量は近年増加する傾向にあり、その効率的な回収方法が検討され、提案されている。
【0003】
例えば、特開2015-123418号公報(特許文献1)では、銅を含む電気・電子機器部品屑を焼却後、所定のサイズ以下に粉砕し、粉砕した電気・電子機器部品屑を銅の溶錬炉で処理することが記載されている。
【0004】
しかしながら、電子・電気機器部品屑の処理量が増加することにより、電子・電気機器部品屑に含まれる物質の種類によってはその後の銅製錬工程での処理に好ましくない物質(製錬阻害物質)が従来よりも多量に投入されることとなる。このような銅製錬工程に装入される製錬阻害物質の量が多くなると、電子・電気機器部品屑の投入量を制限せざるを得なくなる状況が生じる。
【0005】
例えば、電子・電気機器部品屑には、様々な形状及び種類の部品屑が含まれており、供給元の違い等によりその原料組成が変化する。銅製錬工程に投入される原料を適切に選別するために、現在は、電子・電気機器部品屑の原料組成を予め目視判定や化学分析によって評価し、その結果を選別処理の操業管理、運転条件の設定に反映させることが行われている。
【0006】
しかしながら、目視により原料組成を判定する手法では、個人の経験や技能によって評価結果にバラつきがあり、定量的な評価もできていない。原料組成特定のための化学分析や手選別も時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-123418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは目視以外の原料組成把握のための方法として、画像認識技術の利用を検討し、種々の検討を行った。しかしながら、対象とする電子・電気機器部品屑は、種々の部品が混在する上、供給元の状況に応じて組成も大きく異なり、形状も様々であるため、画像認識による電子・電気機器部品屑の個体識別を精度良く行えない場合がある。
【0009】
上記課題を鑑み、本開示は、画像認識精度を向上でき、個人の経験や技能に関係なく、電子・電気機器部品屑中の部品屑の組成を短時間で効率良く解析することが可能な電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析方法は一実施態様において、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を含む原料を撮像した撮像画像の中から、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行うことを含み、機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合は、機械学習システムの確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定して電子・電気機器部品屑を抽出することを含む電子・電気機器部品屑の組成解析方法である。
【0011】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は一実施態様において、上記組成解析結果に基づいて、複数の部品種の中から特定の部品種を選別する選別工程を含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の処理方法である。
【0012】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析装置は一実施態様において、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を含む原料を撮像した撮像画像の中から、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行う電子・電気機器部品屑の組成解析装置であって、機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合は、機械学習システムの確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定して電子・電気機器部品屑を抽出する処理装置を備える電子・電気機器部品屑の組成解析装置である。
【0013】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置は一実施態様において、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を撮像する撮像装置と、撮像画像の中から、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行う電子・電気機器部品屑の組成解析装置であって、機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合は、機械学習システムの確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定して電子・電気機器部品屑を抽出する処理装置を備える組成解析装置と、組成解析装置によって解析された組成解析結果に基づいて電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機とを備える電子・電気機器部品屑の処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、画像認識精度を向上でき、個人の経験や技能に関係なく、電子・電気機器部品屑中の部品屑の組成を短時間で効率良く解析することが可能な電子・電気機器部品屑の組成解析方法、電子・電気機器部品屑の処理方法、電子・電気機器部品屑の組成解析装置及び電子・電気機器部品屑の処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置を示すブロック図である。
図2図2(a)は、撮像画像中に存在する電子・電気機器部品屑(基板)に認識枠を付与した画像の例を表す写真であり、図2(b)は、認識枠を付与した電子・電気機器部品屑を部品種(基板・プラスチック)毎に並べた例を示す写真である。
図3】電子・電気機器部品屑の画像解析処理の一例を示すフローチャートである。
図4】撮像画像の中から電子・電気機器として基板とプラスチックとをそれぞれ抽出し、その面積を推測した結果と面積の実測値との比較の例を表す表である。
図5】本発明の実施の形態に係る機械学習システムを用いて撮像画像の中から電子・電気機器部品屑を抽出した場合の実測値に対する認識結果の比較の例を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0017】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理装置は、図1に示すように、複数の部品種を含む複数の電子・電気機器部品屑を含む原料を撮像した撮像画像を取得可能な撮像装置12と、機械学習システムを利用した画像認識処理を用いて、電子・電気機器部品屑を抽出し、組成解析を行う電子・電気機器部品屑の組成解析装置10と、組成解析装置10によって解析された組成解析結果に基づいて電子・電気機器部品屑から特定の部品屑を選別する選別機13とを備える。
【0018】
本実施形態における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさには破砕されたものを指す。本実施形態では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0019】
破砕方法として、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でもよいが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕が望ましい。従って、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。
【0020】
電子・電気機器部品屑は、基板、筐体などに使われるプラスチック(合成樹脂類)、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他、等の複数の部品種からなり、処理目的に応じて更に細かく分類することができる。以下に限定されるものではないが、本実施形態では、粒度50mm以下に破砕されている電子・電気機器部品屑を好適に処理することができる。粒度の下限は特に限定されないが、5mm以上、より典型的には10mm以上、更には15mm以上である。
【0021】
組成解析装置10は、本実施形態に係る組成解析アルゴリズムに従って撮像画像の画像解析処理を行う処理装置100と、各種処理に必要な情報を記憶する記憶装置110と、入力装置120と、表示装置130とを備える。組成解析装置10は、ネットワーク11を介して、処理装置100による処理結果を、ネットワーク11を介して接続されたサーバ15又は選別機14へ送信可能に構成されている。
【0022】
処理装置100は、学習データを用いた機械学習システムを利用することにより、撮像画像に対して画像認識処理を行い、撮像画像中の電子・電気機器部品屑の組成解析を行う。機械学習には、ディープラーニング等を利用した画像認識のための種々の解析ソフトが利用可能である。記憶装置110には、処理装置100による処理に必要な情報が格納される。
【0023】
例えば、記憶装置110には、電子・電気機器部品屑の画像情報から、複数の部品種、即ち、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他(コネクタ、フィルム状部品屑、被覆線屑等)の少なくとも2種類以上、好ましくは7種類以上、更には10種類以上に分類するための抽出データ、抽出された電子・電気機器部品屑に対して認識枠を付与するための認識枠データ、認識枠中の電子・電気機器部品屑の面積を計測又は推定するための部品種面積率データ、認識枠で囲まれた電子・電気機器部品屑の組成解析に必要な解析データ等を含む種々の組成解析情報等が格納される。
【0024】
抽出処理に利用される抽出情報としては、例えば、電子・電気機器部品屑の輪郭等の幾何形状を抽出するための形状情報、電子・電気機器部品屑の色彩を抽出するための色彩情報、電子・電気機器部品屑の周囲の背景画像の色彩、凹凸による影等の背景情報を抽出するための背景情報等、電子・電気機器部品屑の回転画像等を含む。
【0025】
処理装置100は、記憶装置110に格納された学習データを用いた機械学習により、撮像画像の中から、複数の電子・電気機器部品屑を抽出し、これを複数の部品種毎に区別して分類する。学習データには過去の画像解析結果に基づく電子・電気機器部品屑の特徴を検出するための種々の情報が含まれており、入力装置120を介して新規データが入力され、機械学習システムの学習に用いられる学習データを更新(反映)することにより、電子・電気機器部品屑の認識精度を向上することが行われる。
【0026】
しかしながら、電子・電気機器部品屑は、原料として搬入される前に破砕処理が行われている場合が多く、定まった形を有さず、種々の部品を含み得るため、これらの全てを学習データに反映させることが困難な場合がある。例えば、新しい入手ルートからの電子・電気機器部品屑は、学習データに反映させることが困難であることが多い。機械学習システムの学習に用いられる学習データに組成解析対象とする原料の情報が反映されていない場合には、抽出処理を行ってもその精度が高くなくなり、誤認識率が急激に高くなる。具体的には、誤認識率が一定値を超える場合、例えば本実施形態では誤認識率が15%、更には10%を超える場合は、機械学習システムの学習に用いられる学習データに組成解析対象とする原料の情報が反映されていない場合として判断できる。
【0027】
選別処理対象とする新規の原料が搬送された場合に、処理装置100がその新規の原料の撮像画像の中から、電子・電気機器部品屑の抽出処理を行うに際し、機械学習システムの学習に用いられる学習データに、組成解析対象とする原料の情報が反映されている場合には、機械学習システムの確信度を第1の閾値に設定し、組成解析対象とする原料の情報が学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定する。
【0028】
組成解析対象とする原料の情報が学習データに反映されていない場合は、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定することにより、電子・電気機器部品屑の認識対象を広げることができるため、認識対象範囲を緩和することができる。その結果、新規の原料に対しても電子・電気機器部品屑の抽出率を向上させることができ、原料の組成解析の精度を向上させることができる。なお、本実施形態の確信度とは、図1の処理装置100が備える機械学習システムによる電子・電気機器部品屑の抽出結果の確からしさの度合いを示す。
【0029】
電子・電気機器部品屑の抽出処理の場合、確信度は高く設定すると電子・電気機器部品屑の抽出のための認識率を高めることができる一方で、抽出個数が少なくなるため、原料の組成判断のための抽出処理としては適切とはいえない。一方、認識率を低く設定しすぎることで誤認識が多くなることから、原料の組成判断のための抽出処理としては適切とはいえない。本実施形態では、第1の閾値を0.2~0.5とすることが好ましく、より好ましくは、0.25~0.4とする。第2の閾値は0.01~0.1とすることが好ましく、より好ましくは0.02~0.09とする。その結果、新規原料に対しても撮像画像から、目視による実測値に比べて70%以上の電子・電気機部品屑を抽出することができ、これにより組成解析の精度を高めることができる。
【0030】
処理装置100は、確信度の第1及び第2の閾値の設定値に従って抽出された電子・電気機器部品屑に対し、認識枠を付与する。認識枠は、電子・電気機器部品屑の輪郭を縁取った最小枠としてもよいし、電子・電気機器部品屑及び電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与してもよい。
【0031】
電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する場合には、電子・電気機器部品屑の輪郭と外接する外接図形を認識枠として付与することが好ましい。外接図形の形状は、外接矩形、外接円形、外接多角形など任意の形状を有していてもよい。
【0032】
認識枠は、操作者が複数の部品屑を見分けやすいように、部品種毎に異なる特性(色彩、線の濃淡、線の種類(太さ、点線/実線など))を有して付与されることが望ましい。図2(a)は撮像画像から電子・電気機器部品屑として基板を抽出した場合の例を表す写真である。図2(b)の紙面上部が基板、紙面下部がプラスチックの抽出物の例を示す。
【0033】
処理装置100は、更に、付与された認識枠内に存在する電子・電気機器部品屑の面積を計測又は推測する。電子・電気機器部品屑の面積の計測は、撮像画像に基づいて面積を計測することが可能な面積計測ツールを用いることができる。電子・電気機器部品屑の面積を機械学習システムを用いて推定する場合には、処理装置100が、記憶装置110に記憶された、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を少なくとも有する部品種面積率データを用いて、複数の部品種毎に、認識枠が付された電子・電気機器部品屑の合計面積を推測する。部品種面積率データとしては、電子・電気機器部品屑の輪郭の形状情報、認識枠の面積、認識枠内に占める電子・電気機器部品屑の面積及び背景の面積、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報、位置情報等の種々の情報を含むことができる。
【0034】
処理装置100は、更に、部品種毎の電子・電気機器部品屑の合計面積の推測結果と予め定められた複数の部品種毎の単位面積当たりの想定重量とを乗算し、複数の部品種に含まれる電子・電気機器部品屑の重量を解析することで、複数の部品種の重量比率をそれぞれ解析し、これにより、撮像画像内に存在する電子・電気機器部品屑の組成を解析する。
【0035】
複数の部品種の単位面積当たりの想定重量は、操業結果に応じて予め操作者により入力装置120等を介して設定しておくことができる。以下に限定されるものではないが、例えば、電子・電気機器部品屑を基板、プラスチック、その他部品の3種類に分類する場合、基板屑の想定重量を例えば2.0g/cm2、プラスチックの想定重量を1.5g/cm2、その他の部品を1.0g/cm2と設定することができる。
【0036】
なお、処理装置100は、上記で説明した面積の情報の他に、抽出した部品種毎にその部品種を構成する部品の個数(個)、上記の面積の推測結果と個数とから算出される平均粒径、夫々の部品種を構成する元素の重量比などのその他物理的特性についても解析し、表示装置130等に出力することもできる。
【0037】
処理装置100は、更に、複数の部品種の重量比率の解析結果に基づいて、複数の部品種を選別するための選別機の運転条件の情報を生成することが好ましい。選別機としては、ピッキング、カラーソーター、メタルソーター、渦電流選別機、風力選別機、篩別機などの種々の選別機がある。例えば、風数の部品種の解析結果から、処理装置100が、例えば基板とプラスチックとを選別するカラーソーターの運転条件を生成し、生成した運転条件を記憶装置110へ格納する。記憶装置110へ格納された運転条件は、選別機13、14へ出力されて、選別機13、14が、出力された運転条件に応じて選別処理を行うことができる。
【0038】
処理装置100は、電子・機器部品屑の撮像画像から抽出された電子・電気機器部品屑のそれぞれの位置情報を取得してもよい。そして、特定の電子・電気機器部品屑の位置を抽出してこれを選別するための特定の選別機13、14に対し、位置情報を出力するように構成されてもよい。例えば、基板と金属片はメタルソーター等の特定の選別機13、14では分離できないが、画像情報で個別に位置情報が得られれば、ピッキング機能を備える選別機13、14によってこれらを選別することができるようになる。
【0039】
処理装置100は、抽出処理及び推測処理に必要な学習データを機械学習により更に学習することができる。例えば、処理装置100は、基板、プラスチック、金属片、銅線屑などの複数の部品種毎の特徴、例えば本実施形態では、各部品種毎の色彩、形状、認識枠と部品屑の面積率の関係等の情報に関し、数百枚~数万枚のデータの入力に基づいてその特徴を学習し、抽出処理及び推測処理の精度を向上させるように学習することができる。
【0040】
また、電子・電気機器部品屑の誤認識等が生じた場合に、或いは電子・電気機器部品屑の抽出漏れが生じた場合には、誤認識又は抽出漏れが生じた電子・電気機器部品屑の特性を処理装置100の機械学習システムが更に学習するように構成されることが好ましい。例えば、処理装置100は、電子・電気機器部品屑の抽出処理によって抽出されなかった電子・電気機器部品屑の輪郭の情報、抽出処理で抽出されなかった電子・電気機器部品屑と背景の画像とを含む新たな認識枠の情報、その認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報等の入力に応じた機械学習等により新たな学習モデルを作製することができる。
【0041】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析装置によれば、撮像画像の画像処理によって、電子・電気機器部品屑の部品種毎の重量比率を数値化して評価することができる。これにより、原料の組成にとって、原料に対して物理選別を行うべきか、キルン炉等による焼却処理を行うか等の選別条件の選択をより効率的に行うことができる。撮像画像の認識結果に基づいて、例えば、原料中のプラスチック比率が多い場合には、プラスチックの重量比率に基づいて購入条件を見直すことや、キルン炉の熱負荷等を調整することも可能となる。
【0042】
図1に示す電子・電気機器部品屑の処理装置を用いた電子・電気機器部品屑の処理方法の一例について、図3のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS100において、撮像画像が取得される。撮像画像は入力装置120或いはネットワーク11を介して入力された撮像画像でもよいし、撮像装置12による撮像結果を用いてもよい。ステップS101において、撮像画像に含まれる、組成解析対象とする原料の情報が、機械学習システムの学習に用いられる学習データに既に反映されているか否かが判断される。判断は入力装置120を介して操作者が手動で行っても良いし、処理装置100が記憶装置110のデータを参照して自動的に行っても良い。
【0043】
撮像画像に撮像された組成解析対象とする原料の情報が、機械学習システムの学習に用いられる学習データに反映されている場合は、ステップS102に進み、機械学習システムの確信度が第1の閾値に設定される。組成解析対象とする原料の情報が学習データに反映されていない場合は、ステップS103へ進み、第1の閾値よりも低い第2の閾値に設定され、ステップS104へ進む。
【0044】
ステップS104~ステップS107において、機械学習システムを利用した画像認識処理が行われる。処理装置100は、設定された機械学習システムの確信度に基づいて、撮像画像内に存在する電子・電気機器部品屑を、部品種毎(例えば、基板、プラスチック、金属片、銅線屑、コンデンサー、ICチップ、その他の部品種の7分類)に分類して、抽出する。分類結果は、表示装置130等によって表示されることができる。
【0045】
ステップS105において、処理装置100は、撮像画像から抽出され複数の電子・電気機器部品屑に対し、複数の部品種毎に、電子・電気機器部品屑の周囲の背景の画像を含む認識枠を付与する。ステップS106において、処理装置100は、認識枠に対する電子・電気機器部品屑の面積率の情報を有する部品種面積率データに基づいて、複数の部品種毎に、認識枠が付された前記電子・電気機器部品屑の面積(合計面積)を推測する。ステップS107において、処理装置100は、面積の推測結果と、複数の部品種の単位面積当たりの想定重量を乗算して複数の部品種の重量比率をそれぞれ解析することにより、撮像画像内の電子・電気機器部品屑の組成を解析する。例えば、画像内の部品種毎の合計面積に、単位面積当たりの重量を乗算すると、部品屑の総重量を概ね算出することができる。各部品種毎の部品屑の総重量をそれぞれ対比することで、撮像画像内に含まれる電子・電気機器部品屑の組成が解析できる。解析結果は、ステップS109において出力される。
【0046】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析方法及び組成解析装置によれば、画像解析によって、撮像画像中に存在する電子・電気機器部品屑の部品種毎の重量比率を求めることができる。これにより、原料組成を、個人の経験や技能に関係なく迅速に推測することができる。その結果、操作者が、原料の購入条件や原料の選別方法の判断をより早期に行うことができるようになるため、工場全体をより効率的に運用できる。
【0047】
電子・電気機器部品屑の周囲の背景画像は、撮像先の条件により異なる場合があり、場合によっては、機械学習システムが電子・電気機器部品屑を適切に抽出できない場合がある。本実施形態では、機械学習システムが、背景の情報と、電子・電気機器部品屑の縁取り画像を組み合わせた画像を合成した新たな認識枠の情報を含む、電子・電気機器部品屑の抽出処理のための学習データを新たに学習することにより、撮像画像中の種々の条件に対応したより柔軟な組成解析装置を得ることができる。また、本システムを用いた場合にも誤認識率が高い場合には、学習データに反映されていない原料に含まれる電子・電気機器部品屑の輪郭、色彩、認識枠に対する面積率、及び背景の少なくともいずれかの情報を、機械学習システムに学習させることで電子・電気機器部品屑の認識精度を高めることができる。
【0048】
図4は、本発明の実施の形態に係る解析方法に従って、撮像画像の中から電子・電気機器として基板とプラスチックとをそれぞれ抽出し、その面積を推測した結果と実測値との比較の例を表す表である。本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の組成解析方法によれば、基板については5.0%未満の測定誤差で、プラスチックについては10%未満の測定誤差で適切な評価ができており、二種類の部品を含む場合には、認識率90%以上を達成することができた。そのため、原料の組成を数値的に大まかに把握する上では、本手法により十分な効果が得られているといえる。
【0049】
図5は、本発明の実施の形態に係る機械学習システムを用いて撮像画像の中から電子・電気機器部品屑を抽出した場合の実測値に対する認識結果の比較の例を表す表である。実施例10は、機械学習システムの学習に用いられる学習データにその特徴を反映させた場合の抽出個数の実測値と認識(抽出)個数、誤認識個数、認識率及び誤認識率を示し、この場合の確信度を0.3とした。実施例2及び比較例2は、学習データにその原料情報が反映されていない場合の例を示す。実施例2の確信度を0.07とし、比較例2の確信度を0.3とした。実施例2と比較例1の結果からわかるように、確信度を低くすることにより機械学習システムによる誤認識個数は若干増加するが、確信度を低くした方が、認識率は良好な結果が得られている。原料の組成を数値的に大まかに把握する上では、本手法により十分な効果が得られているといえる。
【0050】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0051】
例えば、処理装置100が、撮像画像の中から複数の部品種毎の平均の面積、個数、平均粒径、重量比などを数値化して解析することにより、従来のように、手選別で電子・電気機器部品屑の原料組成を評価するよりも著しく迅速にその原料組成を数値化して把握することができる。
【0052】
更に、処理装置100が解析した原料解析結果に基づいて、複数の部品種の中から特定の部品種を選別する選別機の運転条件の情報、例えば、原料を選別処理するための選別機の選択と、選別条件、選別順序等の操業条件を決定し、その操業条件に基づいて選別処理を行うことができる。
【0053】
例えば、電子・電気機器部品屑に対して風力選別機を用いて風力選別を行って軽量物と重量物とに選別することにより、選別後の処理物中の基板とプラスチックの重量比率を上げるための処理を行うことができる。この場合、選別機13、14による処理においては、機械学習システムが解析した原料解析結果に基づいて、複数の部品種の平均粒径に応じて、風力選別機の風量を調整することができる。風量は例えば5~20m/s、より好ましくは5~12m/s、更には5~10m/s程度とすることができる。風力選別は原料解析結果に応じて2回以上繰り返して行うことができる。
【0054】
或いは、上記の風力選別を実施する前に、ピッキング装置を用いたピッキング処理を行うことにより、塊状の銅線屑を取り除くピッキング処理を行うことができる。このピッキング処理に際しては、記憶装置110に記憶された銅線屑の位置情報を選別機13としてのピッキング装置に出力し、ピッキング装置がその出力結果に応じて銅線屑を取り除くことができる。この銅線屑は、例えば有価金属回収工程へ送ることができる。
【0055】
風力選別を二回以上繰り返す場合は、第1回目の風力選別と第2回目の風力選別との間に篩別機を用いた選別処理を行うことができる。この場合、選別機13としては篩別機が採用され、原料解析結果で得られる複数の部品種の平均粒径に基づいて、特性の部品種を選別するための篩別機の篩目の寸法を変更することができる。
【0056】
上記で説明した手法の他にも、磁力選別工程、渦電流選別工程、及び金属物と非金属物とを光学的に選別する光学式選別工程に用いられる選別機13に対してそれぞれ本発明の実施の形態に係る組成解析装置による組成解析結果を活用することで、搬送中の電子・電気機器部品屑を連続的に撮影しながら、その画像データをリアルタイムに解析し、原料組成を解析することができる。
【0057】
従来、電子・電気機器部品屑の原料組成は、手選別によって評価し、その結果を選別処理の操業管理、運転条件の設定に反映させることが行われていたが、しかしながら、手選別により原料組成を把握する手法では、迅速な処理を行うことができなかった。
【0058】
本発明の実施の形態によれば、時々刻々とその組成が変化する電子・電気機器部品屑の中からその中の部品屑の組成を画像解析と所定の分類データに基づく分離によって、瞬時に判別し数値化することができるため、大量の電子・電気機器部品屑をより適切な条件で迅速に選別を行うことができる。
【0059】
更に、選別機13、14による処理前後の部品屑の原料組成を画像解析することで、部品屑の変化量に基づいて、選別機13、14の選別効率(成績)を評価することができる。電子・電気機器部品屑の原料組成を判別するとともにその位置情報を抽出し、ピッキング装置やカラーソーター、メタルソーターなどの選別機13、14と連動させることで、部品種の個別分離が容易になる。また、表示装置130に解析結果として各原料種毎に色の異なる枠を付けて表示させることで操作者が認識しやすくなるため、組成解析装置の誤検知も認識しやすくなる。
【符号の説明】
【0060】
10…組成解析装置
11…ネットワーク
12…撮像装置
13、14…選別機
15…サーバ
100…制御装置
110…記憶装置
120…入力装置
130…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5