(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】検体測定デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
G01N27/416 338
(21)【出願番号】P 2020519701
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2018078686
(87)【国際公開番号】W WO2019077099
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-06
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレム
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516599(JP,A)
【文献】特表2013-516615(JP,A)
【文献】特表2003-511694(JP,A)
【文献】特開昭60-236058(JP,A)
【文献】特公平06-048204(JP,B2)
【文献】特開2004-085566(JP,A)
【文献】特開2016-224075(JP,A)
【文献】特開2013-178227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料(10)中の検体(16)を測定する方法であって:
測定時間間隔(MT)中に電気分析信号(160;260;360)を
該試料(10)に適用する工程であって、電気分析信号(160;260;360)は周波数空間に移されたとき、少なくともサンプリング時間(t1、t2)において、2つ以上の非ゼロ周波数成分(c1、c2、c3)の重ね合わせを含む、工程と、
該試料(10)からの少なくとも1つの電気応答信号(170;270;370)を測定する工程と、
電気応答信号(170;270;370)を分析し、電気応答信号(170;270;370)の分析に基づいて
該試料(10)中の検体(16)の量を決定する工程と、を含
み、
ここで、電気分析信号(160)は、ホワイトノイズ周波数スペクトル、ピンクノイズ周波数スペクトル、レッドノイズ周波数スペクトル、ブルーノイズ周波数スペクトル、バイオレットノイズ周波数スペクトル、およびグレーノイズ周波数スペクトルのうちの1つを含む、ノイズ信号を含
み、
電気応答信号(170;270;370)は、測定時間間隔(MT)中に変化する中心周波数(fc)を有する可変バンドパスフィルタ(130)によってフィルタリングされ、電気応答信号(170;270;370)のうちの可変バンドパスフィルタ(130)を通過する部分が分析されて、該試料(10)中の検体(16)の量が決定される、前記方法。
【請求項2】
第1のサンプリング時間(t1)において、可変バンドパスフィルタ(130)は第1の中心周波数(f1)へと調整され、第2のサンプリング時間(t2)において、可変バンドパスフィルタ(130)は、第1の中心周波数(f1)とは異なる第2の中心周波数(f2)に少なくとも合わせて調整される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
可変バンドパスフィルタ(130)は、測定時間間隔(MT)中に、第1の中心周波数(f1)へとおよび第2の中心周波数(f2)へと繰り返し調整される、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
液体試料(10)中の検体(16)を測定するための検体測定デバイス(100;200;300)であって:
電気分析信号(160;260;360)を生成するように構成されている信号発生器(110;210;310)であって、電気分析信号(160;260;360)は周波数空間に移されたとき、少なくともサンプリング時間(t1,t2)において2つ以上の非ゼロ周波数成分(c1,c2,c3)の重ね合わせを含む、信号発生器と、
電気信号発生器(110;210;310)に接続されており、
該試料(10)に電気的に接続可能であり、
該試料(10)が電気分析信号(160;260;360)に曝されるときに
該試料(10)からの少なくとも1つの電気応答信号(170;270;370)を測定するように構成されている、コントローラ(150;250;350)と
、
ここで、信号発生器(110)は、ホワイトノイズ周波数スペクトル、ピンクノイズ周波数スペクトル、レッドノイズ周波数スペクトル、ブルーノイズ周波数スペクトル、バイオレットノイズ周波数スペクトル、およびグレーノイズ周波数スペクトルのうちの少なくとも1つを生成するように構成されている、ノイズ発生器(112)を含
んでいる、
コントローラ(150)に接続されコントローラ(150)によって調整可能な可変バンドパスフィルタ(130)、ここで、該可変バンドパスフィルタ(130)は、中心周波数(fc)を有し、中心周波数(fc)は測定時間間隔(MT)中に変化することができ、そして、該試料(10)からの電気応答信号(170)をフィルタリングするように構成されている、とを含む、検体測定デバイス(100)。
【請求項5】
コントローラ(150)は、可変バンドパスフィルタ(130)を第1のサンプリング時間(t1)において第1の中心周波数(f1)へと調整するように、および、第1のサンプリング時間(t1)において電気応答信号(170)のうちの可変バンドパスフィルタ(130)によってフィルタリングされた部分を測定するようにまたは記録するように構成されており、コントローラ(150)は、可変バンドパスフィルタ(130)を第2のサンプリング時間(t2)において第2の中心周波数(f2)へと調整するように、および、第2のサンプリング時間(t2)において電気応答信号の(170)のうちの可変バンドパスフィルタ(130)によってフィルタリングされた部分を測定するようにまたは記録するように構成されている、請求項
4に記載の検体測定デバイス。
【請求項6】
該試料(10)に直流オフセットを適用するように構成されている直流オフセット発生器(120;220;320)を更に含む、請求項
5に記載の検体測定デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は検体測定デバイスに、および試料中の、特に液体試料中の検体を測定する方法に関する。一態様では、本開示は血糖モニタリング(BGM)の分野に関し、特に血液試料中の血糖の測定およびモニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
血糖モニタリングは、血液中のグルコースの濃度を検査する方法である。糖尿病のケアで特に重要なこととして血糖検査が行われるが、これは、典型的には指において表皮を穿刺し、採血し、化学反応性のある使い捨て試験片に血液を付着させることによって行われる。様々な製造者によって様々な技術が用いられているが、一部のシステムでは、電気的特性が測定され、これを使用して血液中のグルコースレベルが決定される。
【0003】
医療専門家は糖尿病患者に、その症状に適したモニタリングレジメンを助言する。2型糖尿病である人のほとんどは、1日に少なくとも1回は検査を行う。インスリンを使用している糖尿病患者は通常、自身の前回のインスリン用量の有効性を検証することおよび自身の次回のインスリン用量の決定に役立てることの両方のために、更に頻繁に、例えば1日に3から10回、自身の血糖を検査する。
【0004】
血糖を測定するための技術の改善により、糖尿病を患う患者のケアの水準が急速に変わりつつある。
【0005】
血糖レベルをモニタするための方法およびデバイスには、グルコースバイオセンサを備えた試験片を使用するものがある。例えば、グルコース酸化酵素(GOx)を利用するアンペロメトリック型酵素電極を含む試験片が提案されている。化学反応中に、すなわちグルコースの酸化中に、グルコースと酸素がグルコン酸と水に変換される。
【0006】
知られている電流測定試験片は、目的の検体、例えばグルコースを電流に変換するために、酵素を利用する。これらのバイオセンサは、以下の工程に従って2つの分子間の電子の移動を触媒し得る、酸化酵素と呼ばれる酵素のクラスを主として利用するものである。第1の工程では、酵素が酸素分子と標的化合物をその活性部位内に結合し、検体を酸化するが、この過程で2つの電子が取り出される。酸化中、これらの電子は酵素の補因子によって回収され、この補因子は還元された状態になる。更なる段で、酵素の補因子は、電子を酸素の分子へと移し産生物として過酸化水素を生成することによって、その天然状態へと戻り、新しいサイクルを始めることが可能になる。
【0007】
クロノアンペロメトリーによる過酸化水素の測定は、試料中の酸素の濃度によって大きく影響を受ける。試験片によっては、この問題を、その組成に媒介物質、すなわち酵素の補因子と電極の間で電子シャトルとして機能する化合物を組み込むことによって、解決している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、試料中の検体を測定する改善された方法を提供すること、および、試料中のそのような1つの検体またはいくつかの検体を測定するための改善された検体測定デバイスを提供することが、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、試料中の検体を測定する方法が提供される。方法は、測定時間間隔中に電気分析信号を試料に適用する工程を含む。電気分析信号は周波数空間に移されたとき、少なくともサンプリング時間において、2つ以上の非ゼロ周波数成分の重ね合わせを含む。方法は、試料への電気分析信号の適用に応答する、試料からの少なくとも1つの電気応答信号を測定する工程を更に含む。その後の更なる工程において、電気応答信号を分析する。電気応答信号の分析に基づいて、試料中の検体の量、分量、または濃度を決定することができる。
【0010】
電気分析信号は試料に適用されるときに所与のサンプリング時間において2つ以上の非ゼロ周波数成分を含むので、試料は少なくとも2つの周波数成分に同時に曝される。試料から得られる戻りの電気応答信号のスペクトルを分析する。電気応答信号はしたがってまた、試料中に含まれる含少なくとも1つの検体を示す、少なくとも2つの非ゼロ周波数成分の重ね合わせも含む。このようにこの複数周波数成分の手法に従うことにより、試料の電気化学的分析の精度を改善することができる。所与のサンプル時間において、試料は、電気分析信号の少なくとも2つの異なる周波数成分に曝される。電気応答信号を、少なくとも2つの周波数成分に関してスペクトル分析することができる。このようにして、検体測定のために、試料に対して一種の電気化学的インピーダンス分光法が行われる。
【0011】
実質的に変化しない電気分析信号を試料に繰り返しおよび/または規則正しく適用できることは、特に有益である。次いで、試料から取得可能なまたは試料によって変更されたそれぞれの電気応答信号を、異なる様式で、例えば異なるスペクトル範囲または異なる周波数成分に関して、分析することができる。このことは実際的な利益を有し得るが、その理由は、試料、例えば血液試料の付いた試験片が、変更されずかつ変化しない電気分析信号に繰り返し曝されるからである。したがって、試料の経時的な変化、または試料の中もしくは表面で起こる電気化学的反応の変化および時間的挙動を、一定かつ変更されない測定条件下で、繰り返しモニタおよび測定することができる。
【0012】
電気分析信号を試料に絶え間なく適用して、これにより電気分析信号を試料に連続モードまたはcwモードで適用することさえ考えられる。試料への電気分析信号の適用のタイプとは無関係に、電気応答信号のスペクトル範囲を、試料に影響を及ぼすことなく、それぞれの分析用のハードウェアおよびソフトウェアによって個別に分析することができる。
【0013】
測定時間間隔中に多数の電気分析信号のシーケンスが試料に繰り返し適用されること、および、電気分析信号を試料に適用するたびに試料からの少なくとも1つの戻りの電気応答信号が測定されることが、特に考えられる。測定期間中、試料には電気化学的反応が見られ、これが経時的にモニタされる。測定時間間隔は典型的には、2から10秒の間の範囲にわたり得る。測定時間間隔は4から6秒の間の範囲にわたり得る。いくつかの典型的な例では、測定時間間隔は約5秒続いてもよい。
【0014】
ある例によれば、電気分析信号は、ホワイトノイズ周波数スペクトル、ピンクノイズ周波数スペクトル、レッドノイズ周波数スペクトル、ブルーノイズ周波数スペクトル、バイオレットノイズ周波数スペクトル、およびグレーノイズ周波数スペクトルのうちの1つを含む、ノイズ信号を含む。ノイズ信号は、測定時間間隔全体にわたって試料に絶え間なくかつ恒久的に適用される。別法として、ノイズ信号を、測定時間間隔内の少なくとも選択されたサンプリング時間中に、繰り返し適用してもよい。
【0015】
ノイズ信号は非常に多数の周波数成分の重ね合わせを含み、各周波数成分には時間的な変動または揺らぎが見られる。ノイズ信号が含む異なる周波数成分が非常に少数である場合も考えられる。このようにして、試料は、多数のまたは場合によっては非常に少数の異なる周波数成分に、同時に曝される。試料から取得可能な戻りの電気応答信号はこの場合、周波数成分のそれぞれの量を含んでおり、この量を後から選択的に分析して、試料中の検体の量または分量を決定することができる。
【0016】
特に、ノイズ信号は、ピンクノイズ周波数スペクトルを含む。ピンクノイズ信号は、パワースペクトル密度、すなわち周波数間隔ごとのエネルギーまたはパワーが、信号の周波数に反比例するような周波数スペクトルを含む。ピンクノイズ信号の場合、オクターブ、すなわち周波数の2分の1または2倍ごとに、等しい量のノイズエネルギーを有する。ノイズ信号、および特にピンクノイズ信号は、10Hzから20kHzまでの周波数範囲を含み得る。
【0017】
電気分析信号がノイズ信号を含むとき、または、ノイズ信号、例えばピンクノイズ信号の電気分析信号の条件が、ノイズ信号、特にピンクノイズ信号から成るとき、その電気分析信号には考えられるほぼ全ての周波数成分が含まれており、試料は考えられるほぼ全ての周波数成分へと励起されるかまたはそのような周波数成分に曝される。この結果、電気応答信号もまた非常に多数の周波数成分を含むことになる。
【0018】
電気応答信号を分析するために、電気応答信号の適当なまたは事前決定された周波数スペクトルをフィルタリングすること、および個別に分析することができる。電気応答信号のただ1つまたはいくつかの周波数成分への、そのようなフィルタリング、選択、または限定は、完全に分析側で行われ、電気分析信号による試料の励起または暴露を変化させることはない。試料から見た場合の測定条件が補正および変更されることはなく、したがって、測定精度の向上および測定の再現性の改善が可能になる。
【0019】
別の例によれば、電気応答信号は、測定時間間隔中に変化する中心周波数を有する可変バンドパスフィルタによってフィルタリングされる。可変バンドパスフィルタを通過する電気応答信号の一部が分析されて、試料中の検体の量が決定される。可変バンドパスフィルタによって、信号分析のために、および検体の量、分量、または濃度の決定のために、電気応答信号のただ1つのまたはいくつかの事前決定された周波数成分を選択することができる。
【0020】
可変バンドパスフィルタは、比較的短い時間内に動的に調整または調節することができる。このようにして、測定時間間隔中に可変バンドパスフィルタの中心周波数を変化させるだけで、電気応答信号から多数の異なる周波数成分をフィルタリングすることができる。可変バンドパスフィルタの中心周波数の切り替えまたは修正は、数ミリ秒、例えば10msまたは更にはそれ未満で行うことができる。このようにして、例えば1秒あたり100サンプルの範囲の、かなり高いサンプリングレートを実現できる。可変バンドパスフィルタの中心周波数を、10msまたは更にはそれ未満などの所定のサンプリング間隔に従って、変更することおよび変化させることができる。サンプリング間隔、したがって2つの連続したサンプリング時間の間の時間間隔は、可変バンドパスフィルタの動的挙動および動的切り替え特性によってのみ規制および限定される。
【0021】
別の例によれば、第1のサンプリング時間において、可変バンドパスフィルタは、第1の中心周波数へと調整される。第2のサンプリング時間において、可変バンドパスフィルタは、少なくとも第2の中心周波数へと調整される。第1の中心周波数と第2の中心周波数は異なる。また更に、各サンプリング間隔の後で、バンドパスフィルタの中心周波数は、異なる中心周波数へと切り替えられるかまたは調整される。バンドパスフィルタの中心周波数が、各サンプリング時間において1段ずつ単調に増加または減少することが考えられる。最大中心周波数に達したとき、中心周波数は1段ずつ減少し得るか、または最小中心周波数へと切り替えることができる。最小中心周波数に達したとき、中心周波数は1段ずつ増加し得るか、または最大中心周波数へと切り替えることができる。
【0022】
可変バンドパスフィルタを、10個の異なる中心周波数、50個の異なる中心周波数、または更には100個もしくは数百個の異なる中心周波数へと、連続的に調整するまたは切り替えることが考えられる。このようにして、電気応答信号を、それぞれの数の異なる周波数成分に関して分析することができる。電気分析信号としてのノイズ信号を試料に適用することによって、選択された特定の中心周波数だけをソフトウェアによって実装することができ、それぞれの検体測定デバイスのハードウェア設定を変更する必要はない。
【0023】
また更に、周波数成分の数および可変バンドパスフィルタの中心周波数は、可変バンドパスフィルタを相応に操作および制御することによって、容易に変更することができる。周波数成分の数および/または測定時間間隔中に分析されるべき周波数成分の選択を変更することさえ考えられる。このようにして、方法は、変化する複数の測定条件のうちの特定のものに対して動的に対応してもよい。
【0024】
更なる例によれば、可変バンドパスフィルタは測定時間間隔中に、第1の中心周波数へとおよび第2の中心周波数へと、繰り返し調整される。測定時間間隔中に多数の測定サイクルを行ってもよく、この場合、各測定サイクル中に、所定の中心周波数または周波数成分の各々が1回選択されている。例として、電気応答信号の分析のために10msのサンプリング間隔で例えば10個の異なる周波数成分が選択される場合、測定サイクルは100ms継続し得る。5秒の測定時間間隔中に、方法およびそれぞれの検体測定デバイスは50回の測定サイクルを行うことができ、したがって10個の周波数成分のうちの各1つについて、50個の電気応答信号を収集することができる。
【0025】
別の例によれば、電気分析信号はパルスのシーケンスを含み、この場合、パルスのシーケンスの単一のパルスは、山型パルスまたは矩形パルスを含む。他のパルス形態も考えられる。連続したパルスが試料に所定の反復率で適用される。パルスのシーケンスの反復率は、数ミリ秒の範囲内、例えば10ms以下の範囲内であってもよい。
【0026】
パルスのシーケンスの2つの連続したパルスの間に、電気分析信号は、ゼロ振幅または定振幅を含んでもよい。典型的には、電気応答信号は、電気分析信号のパルスに続くパルス休止中に分析される。このようにして、試料の動的応答を経時的に分析することができる。電気分析信号のパルスに続く電気応答信号を、パルス応答信号と呼んでもよい。パルス応答信号は、試料中の検体の量、分量、および/または濃度を示すものであり得る。パルス応答信号は、検体の測定に対する影響を有する外部要因または内部要因を更に示すものであり得る。パルス応答信号および一般に電気応答信号は、ヘマトクリット値、アスコルビン酸、酸素、湿度、または温度のうちの少なくとも1つを示すものであり得るが、これらはいくつか例を挙げたに過ぎない。
【0027】
別の例では、電気応答信号は、測定時間間隔全体の間、および/またはパルスのシーケンスの連続したパルスの間の時間間隔中に、分析される。両方の手法を用いて、試料のパルス励起の影響、および試料の表面でまたは試料に関して生じる電気化学的反応に適用されるパルス励起を、モニタおよび分析することができる。
【0028】
別の態様によれば、試料中の検体を測定するための検体測定デバイスが提供される。検体測定デバイスは、電気分析信号を生成するように構成されている信号発生器を含み、この場合電気分析信号は、周波数空間に移されたとき、少なくともサンプリング時間において2つ以上の非ゼロ周波数成分の重ね合わせを含む。検体測定デバイスは、電気信号発生器に接続され試料に電気的に接続可能な、コントローラを更に含む。コントローラは、試料が電気分析信号に曝されるときにまたは電気分析信号が試料に適用されるまたは既に適用されているときに、試料からの少なくとも1つの電気応答信号を測定するように構成されている。
【0029】
検体測定デバイスは特に、上記したような検体を測定する方法を実行するように構成されている。検体を測定する方法に関連して上記した機能および効果は検体測定デバイスに等しくあてはまり、逆も成り立つ。
【0030】
コントローラはまた、電気応答信号を分析するようにおよび電気応答信号の分析に基づいて試料中の検体の量を決定するように、構成してもよい。別法として、コントローラを、試料中の検体の量、分量、または濃度の分析および決定を行うように構成されている演算ユニットまたはプロセッサを有する、コンピュータまたはスマートフォンなどの、別個のコンピューティングデバイスに接続することができる。
【0031】
別の例によれば、信号発生器は、ホワイトノイズ周波数スペクトル、ピンクノイズ周波数スペクトル、レッドノイズ周波数スペクトル、ブルーノイズ周波数スペクトル、バイオレットノイズ周波数スペクトル、およびグレーノイズ周波数スペクトルのうちの少なくとも1つを生成するように構成されている、ノイズ発生器を含む。信号発生器を、測定時間間隔全体にわたって試料に絶え間なくかつ恒久的にノイズ信号を適用するように構成することができる。別法として、信号発生器を、測定時間間隔内の少なくとも選択されたサンプリング時間中にノイズ信号を繰り返し適用するように構成することができる。ノイズ信号は非常に多数の周波数成分の重ね合わせを含み、各周波数成分には時間的な変動または揺らぎが見られる。ノイズ信号が含む異なる周波数成分が非常に少数である場合も考えられる。このようにして、試料は、多数のまたは場合によっては非常に少数の異なる周波数成分に、同時に曝される可能性がある。
【0032】
別の例では、検体測定デバイスは、コントローラに接続されコントローラによって調整可能な、可変バンドパスフィルタを含む。可変バンドパスフィルタは、試料に電気分析信号を適用することに応答して試料から返される電気応答信号を、フィルタリングするように構成されている。可変バンドパスフィルタは特に、試料に適用される電気分析信号がピンクノイズ周波数スペクトルなどのノイズ信号を含むときに、電気応答信号をフィルタリングするように構成されている。コントローラは、可変バンドパスフィルタを調整することによって、測定時間間隔中に所定の電気応答信号の周波数成分を選択するように構成されている。このようにして、コントローラは2重の機能を実現する。一態様では、コントローラは、中心周波数、およびしたがって特定の周波数成分を選択するように構成されている。第2の態様では、コントローラは、選択された周波数成分に関してまたは可変バンドパスフィルタの選択されたもしくは調整された中心周波数に関して、電気応答信号を測定するようにおよび分析するように構成されている。
【0033】
更なる例によれば、コントローラは、可変バンドパスフィルタを第1のサンプリング時間(t1)において第1の中心周波数へと調整するように、ならびに、電気応答信号のうちの可変バンドパスフィルタによってフィルタリングされた部分を、第1のサンプリング時間(t1)において測定するようにまたは記録するように、構成されている。コントローラは、可変バンドパスフィルタを第2のサンプリング時間において第2の中心周波数へと調整するようにまたは調節するように、ならびに、電気応答信号のうちの可変バンドパスフィルタによってフィルタリングされた部分を、第2のサンプリング時間において測定するようにまたは記録するように、更に構成されている。このようにして、コントローラおよびしたがって検体測定デバイスは、電気応答信号の経時的な周波数選択分析を、試料に適用される電気分析信号を変更することなく行うことができる。
【0034】
別の例によれば、信号発生器は、パルスのシーケンスを生成するように構成されているパルス発生器を含む。パルス発生器は山型パルスのシーケンスを生成するように構成されているか、またはパルス発生器は、矩形パルスのシーケンスを生成するように構成されている。周波数空間において見られるようなタイプの異なるパルスはどちらも、2つ以上の非ゼロ周波数成分の重ね合わせを含む。典型的には、信号発生器としてのパルス発生器を用いて、電気応答信号は、測定時間間隔全体の間、または信号発生器によって生成されるパルスのシーケンスの連続したパルスの間の時間間隔中に、分析される。このようにして、試料表面でまたは試料において生じる電気化学的反応の動的な反応または応答をモニタおよび分析して、検体測定デバイスの正確度および信頼性を改善することができる。
【0035】
別の実施形態によれば、パルス発生器およびしたがって信号発生器は、試料に矩形電流パルスを適用するように構成されている電流源を含む。電流源によって、制御された様式で試料を帯電または放電させることができる。矩形電流パルスによる試料の帯電または放電は、内部要因または外部要因を更に示すものとなり得る。この帯電または放電はまた、試料中の検体の量、分量、または濃度を直接示すものとなり得る。
【0036】
更なる例では、検体測定デバイスは、試料に直流オフセットを適用するように構成されている、直流オフセット発生器を含む。直流オフセットによって、電気化学的反応の基礎測定、および試料中の検体の量、濃度の分量の基礎推定を行うことができる。電気分析信号への動的寄与、例えばパルスのシーケンスおよび試料のパルス応答は、専らまたは主として、試料中の検体の測定に大きな影響を与え得る内部要因または外部要因を、演算的に補償するために使用することができる。
【0037】
更なる例によれば、コントローラは、パルス発生器を起動してパルスのシーケンスを生成する前に直流オフセット発生器を停止するように構成されている。直流オフセット発生器およびパルス発生器を同時に動作させて、所与のサンプリング時間において、直流オフセット発生器およびパルス発生器の一方だけが起動しているようにすることができる。
【0038】
検体を測定する上記した方法および対応する検体測定デバイスは主として、血糖が測定されるように構成することができるが、この用途に限定されない。一般に、検体を測定する方法および対応する検体測定デバイスは、以下の検体のうちの少なくとも1つを測定するように構成することができる:血液、尿、および汗のうちの少なくとも1つなどの液体生体試料中の、乳酸塩、尿酸、ケトン、クレアチニン、ヘモグロビン、総コレステロール、酸素、二酸化炭素、タンパク質、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル、または鉛。
【0039】
検体測定デバイスは、糖尿病などの慢性疾患を患っている患者の血糖濃度を測定するための、血糖モニタリングデバイスとして実装することができる。検体測定デバイスを使用して、薬学的に活性な物質、したがって別個の注射デバイスを用いて注射される薬物または薬剤の量を、決定してもよい。検体測定デバイスは更に言えば、注射デバイス内に実装されてもよい。
【0040】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、更なる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4もしくはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0041】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0042】
インスリン誘導体は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0043】
エキセンジン-4は、例えば、H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2配列のペプチドであるエキセンジン-4(1-39)を意味する。
【0044】
エキセンジン-4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H-(Lys)4-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)5-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
(ここで、基-Lys6-NH2が、エキセンジン-4誘導体のC-末端に結合していてもよい);
【0045】
または、以下の配列のエキセンジン-4誘導体:
desPro36エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010)、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Lys6-desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(S1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン-4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
から選択される。
【0046】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0047】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0048】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0049】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70~110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(例えば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0050】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0051】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプの全ての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体全てについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0052】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211~217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0053】
全ての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0054】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH-H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。更に、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0055】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、例えば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類、例えば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1~R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1~C6アルキル基、場合により置換されたC2~C6アルケニル基、場合により置換されたC6~C10アリール基、または場合により置換されたC6~C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩の更なる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0056】
薬学的に許容される溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0057】
本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な修正および変更を行うことができることが、当業者には更に明らかとなるであろう。更に、付属の特許請求の範囲において使用されるどのような参照符号も、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0058】
以下では、駆動機構および注射デバイスの実施形態について、下記の図面を参照して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】試料中の検体を測定するように構成されている検体測定デバイスの概略図である。
【
図2】電気分析信号の例のスペクトルを示す図である。
【
図3】電気分析信号の別の例のスペクトルを示す図である。
【
図4】電気分析信号の更なる例のスペクトルを示す図である。
【
図5】検体測定デバイスの一実施形態のブロック図である。
【
図6】電気分析信号のおよび電気応答信号の経時的な振幅図である。
【
図7】検体測定デバイスの別の実施形態のブロック図である。
【
図8】電気分析信号のおよび対応する電気応答信号の経時的な振幅図である。
【
図9】検体測定デバイスの更なる実施形態のブロック図である。
【
図10】電気分析信号のおよび対応する電気応答信号の経時的な振幅図である。
【
図11】試料中の検体を測定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
いくつかの電気化学血糖モニタリング(BGM)測定スキームでは、測定および測定結果は、多数の外部要因および内部要因の影響を受ける。内部要因は、試料の酸素圧、試料のヘマトクリット値のレベル、または試料のアスコルビン酸のレベルであり得る。湿度および温度は、試料の電気化学的分析に対して実質的な影響を及ぼし得る、外部要因と見なすことができる。
【0061】
測定信号に基づくおよび演算モデルに基づく、精緻な計算によって、これらの内部要因または外部要因のうちのいくつかを少なくとも近似することができ、この結果、測定結果に対するそのような内部要因または外部要因のうちの少なくとも1つまたはいくつかの影響、例えばヘマトクリットの干渉を、補償することが可能になる。
【0062】
したがって、試料中の検体を測定する改善された方法を提供すること、および、試料中のそのような1つの検体またはいくつかの検体を測定するための改善された検体測定デバイスを提供することが、本開示の目的である。改善された方法および検体測定デバイスにより、非常に堅牢で精確でフェイルセーフな、試料中の検体の測定を実現できる。また更に、検体測定デバイスおよびそれぞれの方法は、検体の測定に影響を及ぼす外部要因および内部要因の演算的な補償を支援するものとなる。
【0063】
図1には検体測定デバイス100が概略的に図示されている。検体測定デバイス100は、ハウジング20と、試験片12を受けるための少なくとも1つのレセプタクル22と、を含む。試験片12は、液体媒体、例えば血液14を受けるように構成されている。血液14を試験片12に付着させると、試験片12はバイオセンサへと、または一種の電気化学セルへと変わる。典型的には上記したように、試験片12は、血液14を試験片12に付着させるとすぐに血液14との反応を開始する、多数の酵素を含むかまたは備えている。試験片12または少なくともその一部は、血液試料14を受け、この結果、検体測定デバイス100によって行われることになる電気化学的分析を受ける、試料10を形成するように構成されている。このために、検体測定デバイス100のレセプタクル22は、試験片12の少なくとも一部、すなわち試験片12のうちの試料10を担持する部分を受けるように形成されている。試験片12に適用される血液14は、少なくとも1つの検体16、例えば検体測定デバイス100によって測定されることになる血糖を含む。
【0064】
検体測定デバイス100の内部構造が
図5に概略的に図示されている。検体測定デバイス20は、いずれも試料10に接続されているかまたは接続可能である、コントローラ150と信号発生器110とを含む。この図では、試料10は電気化学セルとして再現されている。試料10は、コントローラ150および信号発生器110に電気的に接続されている。信号発生器110およびコントローラ150は、直列に接続されている。また更に、試料10は、信号発生器110におよびコントローラ150に、直列に接続されている。
【0065】
検体測定デバイス100は、信号発生器110、試料10に、およびコントローラ150に同じく直列に接続されている、任意選択の直流オフセット発生器120を更に含み得る。試料10とコントローラ150の間に、可変バンドパスフィルタ130が配置されている。可変バンドパスフィルタ130とコントローラ150の間に、整流器およびまたは積分器140が配置されており、これによって、可変バンドパスフィルタ130によってフィルタリングされた信号を、コントローラ150によって更に分析するために整流および積分することができる。
【0066】
コントローラ150は、アナログ-デジタル変換器152を含む。コントローラ150は、測定に対して影響を及ぼす内部要因または外部要因を演算的に補償するための、プロセッサおよびストレージなどのデジタル論理ユニット、例えばマイクロコントローラを含む。
【0067】
コントローラ150は、可変バンドパスフィルタ130に接続されている。コントローラ150はまた、信号発生器110にも接続されている。コントローラ150は、可変バンドパスフィルタ130を制御するようにおよび調整するように構成されている。コントローラ150はまた、信号発生器110を制御および動作させるようにも構成されている。コントローラ150はまた、直流オフセット発生器120にも接続されている。コントローラ150は、直流オフセット発生器120を制御するように、したがってこれを起動または停止するように、構成されている。
【0068】
信号発生器110と試料10の間には、基準抵抗器として機能する抵抗器114が配置されている。抵抗器114は電流電圧変換器として機能しかつ振る舞う。
【0069】
図5に図示するような例では、信号発生器110は、ノイズ信号を
図6に示すような電気分析信号160として生成するように構成されている、ノイズ発生器112として実装することができる。そのようなノイズ信号の周波数スペクトル162が、
図2に示されている。ノイズ発生器120は、
図6の上のグラフ180に示すようなノイズ信号160を生成するように構成されている。信号発生器110およびそのノイズ発生器112は、経時的に連続的な信号としてのピンクノイズ信号160を生成するように構成されている。そのようなノイズ信号が、試料10に電気分析信号160として適用される。試験片12に対する電気化学的反応がそこに血液14を付着させることによって活性化されたとき、試料10および電気化学セルは、
図6のグラフ182に示すような電気応答信号170を生成する。
【0070】
信号の全てのグラフ表現において、信号の振幅Aは、時間に対してまたは周波数に対して与えられている。振幅信号Aは、電圧、電流、またはインピーダンスのうちの1つを表し得る。
【0071】
電流およびしたがって試料10によって生成された電気応答信号は、経時的に変化する。
図6では、信号は測定時間間隔MTにわたって示されている。測定時間間隔MTは、数秒、例えば5秒から10秒の継続時間を有し得る。この信号から、応答信号170、したがって血液14によって活性化されたときに試料10によって生成される電流が増加し、測定時間間隔MTがかなり経過してから最大値に達するがことが、明らかである。その後時間の経過とともに、試料10によって生成される電流はゆっくりと減少する。
【0072】
電気応答信号170のグラフ186には、サンプリング時間t1およびt2において測定される、2つの別個の周波数成分171、172が示されている。これらのサンプリング時間t1、t2において、電気応答信号170は、コントローラ150によって測定される。
図5の実施形態では、ノイズ発生器112は、ノイズ信号160を生成するようにおよびこのノイズ信号を試料10に適用するように、構成されている。そのようなこのノイズ信号の周波数スペクトル162が、例えば
図2に示されている。
図2には、その周波数成分にわたるノイズ信号の振幅が示されている。
図2から、電気分析信号160は多数の周波数成分、いくつか例を挙げればc1、c2、c3を含むことが明らかである。
【0073】
ノイズ信号の形態の電気分析信号160が、測定時間間隔MT全体にわたって連続的に試料10に適用されている間、コントローラ150は、可変バンドパスフィルタ130を一連の異なる中心周波数f0、f1、f2へと調整するように構成されている。特に、第1のサンプリング時間t1において、バンドパスフィルタ130は、第1の中心周波数f1へと調整される。この結果、試料10から電気応答信号170が得られる。電気応答信号170は可変バンドパスフィルタ130によってフィルタリングされ、可変バンドパスフィルタ130を通過する部分171、したがってその第1の周波数成分171は整流器および積分器140に入力される。その後、整流され積分された信号171はアナログ-デジタル変換器152に提供され、次いでコントローラ150によって分析される。このようにサンプリング時間t1において、電気応答信号170は、中心周波数f1を有する周波数成分に関して分析される。このことが
図6のグラフ186に示されている。
【0074】
第2のサンプリング時間t2において、可変バンドパスフィルタ130は、コントローラ150によって、第2の中心周波数f2へと調整される。次いで、広帯域応答信号170の別の周波数成分172が、可変バンドパスフィルタ130によってフィルタリングされる。これに対応して、整流器および積分器140はフィルタリングされた信号を処理し、アナログ-デジタル変換器に、およびしたがってコントローラ150に、異なる信号を提供する。
【0075】
コントローラ150は、可変バンドパスフィルタ130を多数の中心周波数へと繰り返し調整するように、および、試料10に電気分析信号160、したがってノイズ信号を適用することに応答して受信される、電気応答信号170のそれぞれの周波数成分を、その電気応答信号の中心周波数ごとに測定するように、構成されている。コントローラ150は、測定時間間隔MT中に電気応答信号170を繰り返し測定するように、および、電気応答信号170を選択された中心周波数ごとに数回測定するように、構成されている。
【0076】
コントローラ150は測定時間間隔MT中に多数の測定サイクルを行ってもよく、この場合、各測定サイクル中に、電気応答信号の周波数成分は1回だけ測定される。サンプリング間隔においてまたはサンプリング間隔中に、各測定サイクルを、したがって電気応答信号170の多数の周波数成分にわたる掃引を、行うことができる。したがって、サンプリング間隔ごとに電気応答信号の各周波数成分を測定することができる。多数のサンプリング時間において多数の測定サイクルを行うことによって、電気応答信号の周波数成分の時間的発展を導き出すことができる。
【0077】
図6のグラフ184には、測定時間間隔MTにわたって、3つの異なる周波数成分f1、f2、f3に関する複素インピーダンスZの時間的発展が与えられている。電気応答信号170の異なる周波数成分f1、f2、f3の時間的挙動から、検体の測定に影響を与える内部要因および/または外部要因を補償または計算することができる。
【0078】
典型的には、可変バンドパスフィルタを、かなり短い時間間隔内、例えば500ms、100ms、10ms以内に、または更にはより速く、調節することができる。このことにより、電気応答信号の異なる周波数成分を選択することおよび個別に測定することのできるサンプリング間隔またはサンプリングレートが得られる。
【0079】
図5に示すような実施形態では、試料10は2極電気化学セルを含み、それらを表している。別法として、試料10を、基準電極を更に含む3極セルとして実装することもできる。
【0080】
図7および
図8に示すような更なる例では、異なるタイプの信号発生器210が使用される。この場合、信号発生器210は、
図8に示すような山型パルスのシーケンス260を生成するように構成されている、パルス発生器212を含む。ここでも同様に、コントローラ250は、アナログ-デジタル変換器255を含む。コントローラ250は、直流オフセット発生器220および信号発生器210に接続されている。同じくコントローラ250によって制御可能なスイッチ214、224、および234が、更に示されている。スイッチ214は、信号発生器210と試料10の間に位置付けられている。スイッチ224はスイッチ214と並列に接続されている。スイッチ224は、直流オフセット発生器220と試料10の間に位置付けられている。更なるスイッチ234は、他の2つのスイッチ214および224と並列に接続されている。スイッチ234によって、増幅器230を試料10の一方の極に接続可能である。増幅器230の反対側の端部は最終的に、コントローラ250のアナログ-デジタル変換器252に接続されている。コントローラ250は、直流オフセット発生器220のおよび信号発生器210の動作を制御するために、マイクロコントローラを含み得る。コントローラ250はまた、試料10から取得可能な電気応答信号270を測定および分析するようにも構成されてよい。
【0081】
図8のグラフ280は、直流オフセット発生器220によって生成される振幅または電圧を経時的に示す。時間t0において、試験片12に血液14が適用される。結果的に、試料10および試料10が表す電気化学セルは、電気化学的に活性化される。コントローラ250は、時間t0において電気化学セルの活性化が、およびしたがって試料の活性化が検出されるとすぐに、直流オフセット発生器220を停止するように構成されている。この場合、コントローラは、試料10の電気化学的活性化を検出し得る。その後、または発生器のDCの停止と同時に、コントローラ250は信号発生器220を起動する。グラフ280に示すように、所定の電圧の山型パルスのシーケンスが、電気分析信号260として試料10に適用される。
【0082】
その後、連続したパルス間の時間間隔内で、増幅器230は試料10に接続される。この場合、スイッチ234はパルス休止中に閉じられる。増幅器230は実際上、電流電圧変換器を提供し、増幅器230は実際上、試料10の端子における電圧をゼロにする。電気分析信号260の各パルスが試料10の電気化学的挙動によって生成された電磁力と組み合わされたとき、コントローラ250がモニタする電気応答信号270において反復的な電流減衰が生じる。グラフ284に示すような電気分析信号の山型パルス260に続く、電気応答信号270の時間的挙動および経時的な電流減衰は、外部要因もしくは内部要因の少なくとも一方にとってまたは試料中の検体の濃度にとって、特徴的なものであり得る。
【0083】
上述した内部要因および外部要因などの様々なパラメータを考慮する特定のアルゴリズムによって、検体濃度、または試料中の検体の量もしくは分量を計算することができる。このためには、n次元方程式を解かねばならない。そのような方程式を解くために、コントローラ250によってニューラルネットワークを構築してもよく、または、コントローラ250は、そのようなニューラルネットワークを含む別個のコンピューティングデバイスと通信してもよい。
【0084】
図8のグラフ282において時間領域で示されている、電気分析信号260として使用される一連の山型パルスは、
図3では262として周波数領域で示されている。山型パルスのシーケンスは、いわゆるディラックのくしに似ている場合があるか、またはこれを含み得る。このシーケンスは多数の周波数成分c1、c2、c3を含み、これらを重ね合わせると、ディラックのデルタ関数から構築された緩増加超関数が形成される。
【0085】
図9および
図10に示すような更なる例では、試料10に、電気分析信号360として矩形パルスが適用される。
図9に係る例は
図7に係る例に似ている。この場合、信号発生器310はパルス発生器312も含むが、
図7に示すような実施形態とは異なり、パルス発生器312は電流源314を含む。
図9に示すような検体測定デバイス300はまた、信号発生器310と並列に接続されている、直流オフセット発生器320も含む。信号発生器310および直流オフセット発生器320はいずれも、試料10と、およびしたがって電気化学セルと、直列に接続されている。
【0086】
信号発生器310および直流オフセット発生器320と並列に、増幅器330が設けられる。増幅器330は、演算増幅器332である増幅装置と抵抗器334とを含む。増幅器330には、電流から電圧への変換を行うための別個の抵抗器336が更に設けられている。抵抗器336は、増幅器330の入力部に接続されている。増幅器330の入力部は抵抗器336に接続されており、抵抗器336は、試料10の少なくとも1つの極または電極に更に接続されている。増幅器330の出力部は、コントローラ350のアナログ-デジタル変換器352に接続されている。コントローラ350は、直流オフセット発生器320におよび信号発生器310に接続されている。コントローラ350は、直流オフセット発生器320および信号発生器310を制御するように更に構成されている。
【0087】
図7に関連して記載したものと同様に、試料10が血液14の少なくともいくつかの液滴を受けることによって活性化されたとき、グラフ370に示すような直流オフセットが、時間t0においてオフにされる。この場合、コントローラ350によって試料10の活性化が既に検出されている。その後直流オフセットコントローラ350を停止した後で、試料10への電気分析信号360の適用がトリガされる。
【0088】
この場合、電気分析信号360は時間領域において、矩形電流パルスのシーケンスを含む。
図4では、電流パルスが時間領域において360として表されており、その対応する周波数スペクトルが362として示されている。
図4に示すように、電流パルス360は、
図4の対応する周波数スペクトル362において示されているような、多数の周波数成分c1、c2、c3を含む。試料10への電流パルスの適用と同時に、試料10の応答およびしたがって試料10によって反映または生成された電気応答信号370が、コントローラ350によって測定される。試料10および試料10によって提供または形成されるバイオセンサセルは、例えば試験片12上に血液14を付着させることにより、活性化されたとき、電圧および電流を供給する。
【0089】
電流源314によって、試料10およびしたがって電気化学セルへの電荷の供給および除去が行われる。グラフ382に示すような電流パルスを試料10に適用している間にまたは適用した後で、グラフ384に示すような電気応答信号370の振幅の特徴的な低下または変調372が生じる。変調372のサイズおよび形状は、試料10中の検体の測定に影響を及ぼす内部要因または外部要因を示している。また更に、変調372のサイズおよび形状は、試料10中の検体16の量、分量、および/または濃度を示すものであり得る。
【0090】
図11には、試料10中の検体16を測定する方法の簡単なフローチャートが示されている。第1の工程400において、例えば、試験片12上に血液14を数滴付着させることによって、および試験片12をBGMデバイスなどの検体測定デバイス100に挿入することによって、試料が活性化される。次いで、工程402において、試料10に電気分析信号160が適用される。電気分析信号160は周波数空間に移されたとき、サンプリング時間において、2つ以上の非ゼロ周波数成分の重ね合わせを含む。
【0091】
電気分析信号160の適用中または適用後に、工程404において、試料10からの電気応答信号170が測定される。その後工程406において、電気応答信号を分析して、試料10中の検体の量、分量、または濃度を決定する。
【符号の説明】
【0092】
10 試料
12 試験片
14 血液
16 検体
20 ハウジング
22 レセプタクル
100 検体測定デバイス
110 信号発生器
112 ノイズ発生器
114 抵抗器
120 直流オフセット発生器
130 可変バンドパスフィルタ
140 整流器
150 コントローラ
152 アナログ-デジタル変換器
160 電気分析信号
162 周波数スペクトル
170 応答信号
171 周波数成分
172 周波数成分
180 グラフ
182 グラフ
184 グラフ
186 グラフ
200 検体測定デバイス
210 信号発生器
212 パルス発生器
214 スイッチ
220 直流オフセット発生器
224 スイッチ
230 増幅器
234 スイッチ
250 コントローラ
252 アナログ-デジタル変換器
260 電気分析信号
262 周波数スペクトル
270 応答信号
280 グラフ
282 グラフ
284 グラフ
286 グラフ
300 検体測定デバイス
310 信号発生器
312 パルス発生器
314 電流源
320 直流オフセット発生器
330 増幅器
332 演算増幅器
334 抵抗器
336 抵抗器
350 コントローラ
352 アナログ-デジタル変換器
360 電気分析信号
362 周波数スペクトル
370 応答信号
372 変調
380 グラフ
382 グラフ
384 グラフ