(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-23
(45)【発行日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ハードマスク及びその他のパターニング応用のための高密度低温炭素膜
(51)【国際特許分類】
H01L 21/471 20060101AFI20230626BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20230626BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230626BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230626BHJP
C23C 16/27 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
H01L21/471
H01L21/314 A
H01L21/205
H01L21/302 105A
C23C16/27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021176077
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2019567614の分割
【原出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタサブラマニアン, エスワラナンド
(72)【発明者】
【氏名】ゴットハイム, サミュエル イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マンナ, プラミット
(72)【発明者】
【氏名】ラーマスワーミ, カーティク
(72)【発明者】
【氏名】越澤 武仁
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
(72)【発明者】
【氏名】ガンディコッタ, シュリーニヴァース
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-040375(JP,A)
【文献】特開昭60-261143(JP,A)
【文献】国際公開第2016/036533(WO,A1)
【文献】特開平09-137273(JP,A)
【文献】特開2005-150622(JP,A)
【文献】特開2004-323973(JP,A)
【文献】特表2008-540849(JP,A)
【文献】特開2007-084919(JP,A)
【文献】特開2003-007590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/471
H01L 21/314
H01L 21/205
H01L 21/3065
C23C 16/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する方法であって、
静電チャック上に基板が位置付けられている、プロセスチャンバの処理空間内に、炭化水素化合物を含有する混合ガスを流入させることであって、前記処理空間が0.5mTorr~10Torrの圧力において維持され、前記炭化水素化合物を含有する混合ガスが炭化水素化合物を含有する前駆体及びエッチャントガスを含む、混合ガスを流入させることと、
前記炭化水素化合物を含有する混合ガスから前記基板上に少なくとも50パーセントのsp
3混成炭素原子を含有する炭素膜を堆積させるために、前記静電チャックに350KHz~100MHzの周波数で、2500ワット~3000ワットの間の電力で供給される第1RFバイアスを印加することにより前記処理空間内でプラズマを生成することであって、前記基板が、-50℃~350℃の温度に維持される、プラズマを生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記エッチャントガスが、Cl
2、CF
4、及びNF
3の一又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素化合物がアルカンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素化合物が、メタン、エタン、プロピレン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、及び2,2-ジメチルブタンの一つ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも75パーセントのsp
3混成炭素原子がある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記温度が0℃~50℃に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素化合物を含有する混合ガスが更に一又は複数の希釈ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一又は複数の希釈ガスが、ヘリウム、アルゴン、キセノン、水素、窒素、アンモニア、又はこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
基板を処理する方法であって、
静電チャック上に基板が位置付けられている、プロセスチャンバの処理空間内に、炭化水素化合物を含有する混合ガスを流入させることであって、前記静電チャックがチャック電極と、当該チャック電極とは別のRF電極とを有し、前記処理空間が0.5mTorr~10mTorrの間の圧力で維持され、且つ前記炭化水素化合物を含有する混合ガスが、炭化水素化合物を含有する前駆体、希釈ガス及びエッチャントガスを含む、混合ガスを流入させることと、
前記炭化水素化合物を含有する混合ガスから前記基板上に少なくとも50パーセントのsp
3混成炭素原子を含有する炭素膜を堆積させるために、前記静電チャックに350KHz~100MHzの周波数で、2500ワット~3000ワットの間の電力の第1RFバイアスを印加することにより前記処理空間内でプラズマを生成することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記基板が、-50℃~350℃の温度に維持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エッチャントガスが、Cl
2、CF
4、及びNF
3の一又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素化合物がアルカンである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素化合物が、メタン、エタン、プロピレン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、及び2,2-ジメチルブタンの一つ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも75パーセントのsp
3混成炭素原子がある、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記基板
の温度が0℃~50℃に維持される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
基板を処理する方法であって、
静電チャック上に基板が位置付けられている、プロセスチャンバの処理空間内に、炭化水素化合物を含有する混合ガスを流入させることであって、前記処理空間が0.5mTorr~10Torrの圧力において維持され、前記炭化水素化合物を含有する混合ガスが、C
2H
2、C
3H
6、CH
4、C
4H
8、ビシクロ[2.2.1]へプタ-2,5-ジエン(2,5-ノルボルナジエン)、ノルボルネン(C
7H
10)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される炭化水素化合物を含有する前駆体及びエッチャントガスを含む、混合ガスを流入させることと、
前記炭化水素化合物を含有する混合ガスから前記基板上にダイヤモンド状炭素膜を堆積させるために、前記静電チャックに350KHz~100MHzの周波数で、2500ワット~3000ワットの間の電力で供給される第1RFバイアスを印加することにより前記処理空間内でプラズマを生成することであって、前記基板が、-50℃~350℃の温度に維持され、前記ダイヤモンド状炭素膜が、少なくとも50パーセントのsp
3混成炭素原子を含有し、1.8g/cc~2.5g/ccの密度と、-600MPa~-300MPaの応力とを有する、プラズマを生成することと
を含む、方法。
【請求項17】
前記エッチャントガスが、Cl
2、CF
4、及びNF
3の一又は複数を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ダイヤモンド状炭素膜が、少なくとも75パーセントのsp
3混成炭素原子を含有し、前記ダイヤモンド状炭素膜の堆積中、前記基板の前記温度が0℃~50℃に維持される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実行形態は概して、集積回路の製造に関する。より具体的には、本書に記載の実行形態は、パターニング応用向けに高密度膜を堆積させるための技法を提供する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
集積回路は、単一チップ上に数百万個ものトランジスタ、コンデンサ、及び抵抗器が含まれうる、複雑なデバイスへと進化を遂げている。チップ設計の進化には、より高速な回路及びより高い回路密度が、継続的に必要になる。より高い回路密度を有する高速回路を求める需要により、かかる集積回路の製造に使用される材料についても、相応の要求が課されている。具体的には、集積回路構成要素の寸法がサブミクロン単位まで小さくなるにつれ、かかる構成要素から好適な電気的性能を得るために、低抵抗率の導電性材料だけでなく低誘電率の絶縁材料を使用することも、現在必要になっている。
【0003】
集積回路の高密度化を求める需要により、集積回路構成要素の製造に使用されるプロセスシーケンスについての要求も課されている。例えば、従来型のフォトリソグラフィ技法を使用するプロセスシーケンスでは、基板上に配置された材料層の積層体の上に、エネルギー感応性レジストの層が形成される。このエネルギー感応性レジスト層は、パターンの画像に露光されてフォトレジストマスクを形成する。その後、このマスクパターンは、エッチングプロセスを使用して、積層体の材料層のうちの一又は複数に転写される。このエッチングプロセスで使用される化学エッチング剤(chemical etchant)は、エネルギー感応性レジストのマスクに対してよりも積層体の材料層に対して高いエッチング選択性を有するよう、選択される。つまり、化学エッチング剤は、材料積層体の一又は複数の層を、エネルギー感応性レジストよりもずっと速い速度でエッチングする。レジストを凌駕する、積層体の一又は複数の材料層に対するこのエッチング選択性は、パターン転写の完了以前にエネルギー感応性レジストが消費されることを防止する。
【0004】
パターン寸法が小さくなるにつれ、これに応じてエネルギー感応性レジストの厚さも、パターン解像度を制御するために薄くされる。かかる薄型レジスト層は、化学エッチング剤の浸食により、パターン転写ステップ中に下にある材料層をマスキングするのに不十分でありうる。多くの場合、パターン転写を促進するために、ハードマスクと称される中間層(例えば酸窒化ケイ素、シリコンカーバイン、又は炭素の膜)が、エネルギー感応性レジスト層とその下の材料層との間に使用されるが、これは、化学エッチング剤に対する中間層の耐性の方が大きいからである。高いエッチング選択性と速い堆積速度の両方を有するハードマスク材料が、求められている。限界寸法(CD)が小さくなっているので、既存のハードマスク材料は、下層材料(例えば酸化物及び窒化物)と比較して望ましいエッチング選択性が欠如しており、かつ多くの場合、堆積が困難である。
【0005】
したがって、当該技術分野において、改良型のハードマスク層、及び改良型のハードマスク層を堆積させるための方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実行形態は概して、集積回路の製造に関する。より具体的には、本書に記載の実行形態は、パターニング応用向けに高密度膜を堆積させるための技法を提供する。一実行形態では、基板を処理する方法が提供される。この方法は、静電チャック上に基板が位置付けられている、プロセスチャンバの処理空間内に、炭化水素を含有する混合ガスを流入させることを含む。基板は、約0.5mTorr~約10Torrの圧力において維持される。方法は、基板上にダイヤモンド状炭素膜を堆積させるために、静電チャックに第1RFバイアスを印加することにより基板の水平面においてプラズマを生成することを更に含む。ダイヤモンド状炭素膜は、1.8g/ccを上回る密度と、-500MPaを下回る応力とを有する。
【0007】
別の実行形態では、基板を処理する方法が提供される。この方法は、静電チャック上に基板が位置付けられている、プロセスチャンバの処理空間内に、炭化水素を含有する混合ガスを流入させることを含む。基板は約0.5mTorr~約10Torrの圧力において維持され、炭化水素を含有する混合ガスはアセチレン(C2H2)を含む。方法は、基板上にダイヤモンド状炭素膜を堆積させるために、静電チャックに第1RFバイアスと第2RFバイアスとを印加することにより基板の水平面においてプラズマを生成することを更に含む。ダイヤモンド状炭素膜は、約1.8g/cc~約2.5g/ccの密度と、およそ-600MPa~およそ-300MPaの応力とを有する。
【0008】
更に別の実行形態では、基板を処理する方法が提供される。この方法は、静電チャック上に基板が位置付けられている、プロセスチャンバの処理空間内に、炭化水素を含有する混合ガスを流入させることを含む。処理空間は、約0.5mTorr~約10Torrの圧力に維持される。方法は、基板上にダイヤモンド状炭素膜を堆積させるために、静電チャックに第1RFバイアスと第2RFバイアスとを印加することにより基板の水平面においてプラズマを生成することを更に含む。ダイヤモンド状炭素膜は、約1.8g/cc~約2.5g/ccの密度と、およそ-1000MPa~およそ-100MPa(例えば、およそ-600MPa~およそ-300MPa)の応力とを有する。方法は、ダイヤモンド状炭素膜の上にパターニングされたフォトレジスト層を形成することを更に含む。方法は、パターニングされたフォトレジスト層と一致するパターンに、ダイヤモンド状炭素をエッチングすることを更に含む。方法は、基板にパターンをエッチングすることを更に含む。方法は、ダイヤモンド状炭素膜のエッチングされた部分の中に材料を堆積させることを更に含む。
【0009】
更に別の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜が、提供される。この膜は、sp3混成炭素(hybridized carbon)原子の含有量が、膜中の炭素原子の総量に基づいて40%~90%であり、密度が1.8g/cc~2.5g/ccであり、かつ弾性率が150GPa~400GPaである。一部の実行形態では、膜は、2.0g/cc~2.5g/ccの密度と、180GPa~200GPaの弾性率とを有する。一部の実行形態では、膜は、-600MPaの応力と、2.0~3.0の屈折率と、0.2~0.3の吸光係数とを有する。
【0010】
上述した本開示の特徴を詳しく理解しうるように、実行形態(上記で簡単に要約されている)のより具体的な説明が、実行形態を参照することによって得られ、一部の実行形態については、付随する図面に示している。しかし、本開示は他の等しく有効な実行形態も許容しうることから、付随する図面はこの開示の典型的な実行形態を示しているにすぎず、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本書に記載の実行形態を実践する上で使用されうる堆積システムの概略断面図を示す。
【
図1B】本書に記載の実行形態を実践する上で使用されうる別の堆積システムの概略断面図を示す。
【
図2】本書に記載の実行形態を実践する上で
図1A及び
図1Bの装置において使用されうる、静電チャックの概略断面図を示す。
【
図3】本開示の一又は複数の実行形態により、基板上に配置された膜積層体の上にダイヤモンド状炭素層を形成するための方法のフロー図を示す。
【
図4A-4B】本開示の一又は複数の実行形態により、基板上に形成された膜積層体の上にダイヤモンド状炭素層を形成するためのシーケンスの一実行形態を示す。
【
図5】本開示の一又は複数の実行形態により形成されたダイヤモンド状炭素層について、バイアス電力の関数としての密度を示しているグラフである。
【
図6】本開示の一又は複数の実行形態により形成されたダイヤモンド状炭素層について、バイアス電力の関数としての応力を示しているグラフである。
【
図7】本開示の一又は複数の実行形態により形成されたダイヤモンド状炭素層について、圧力の関数としての密度及び応力を示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするために、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに、可能な限り同一の参照番号を使用した。1つの実行形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも他の実行形態に有益に組み込まれうると想定される。
【0013】
以下の開示は、基板上にダイヤモンド状炭素膜を堆積させるための技法について説明している。本開示の様々な実行形態についての網羅的な理解を提供するために、特定の詳細事項を、以下の説明及び
図1~7において明記する。様々な実行形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、プラズマ処理及びダイヤモンド状炭素膜の堆積に関連することが多い周知の構造及びシステムについて説明するその他の詳細事項は、以下の開示に明記しない。
【0014】
図に示している詳細事項、寸法、角度、及びその他の特徴の多くは、具体的な実行形態を例示するものにすぎない。したがって、他の実行形態は、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、その他の詳細事項、構成要素、寸法、角度、及び特徴を有することが可能である。加えて、本開示の更なる実行形態は、後述する詳細事項のうちのいくつかがなくとも実践されうる。
【0015】
本書に記載の実行形態は、任意の好適な薄膜堆積システムを使用して実施されうるPECVDプロセスに関連して、後述される。好適なシステムの例は、DXZ(登録商標)処理チャンバを使用しうるCENTURA(登録商標)システム、PRECISION5000(登録商標)システム、PRODUCER(登録商標)システム、PRODUCER(登録商標)GT(商標)システム、PRODUCER(登録商標)XP Precision(商標)システム、PRODUCER(登録商標)SE(商標)システム、Sym3(登録商標)処理チャンバ、及びMesa(商標)処理チャンバを含み、これらは全て、カリフォルニア州Santa ClaraのApplied Materials,inc.から市販されている。PECVDプロセスを実施可能なその他のツールも、本書に記載の実行形態から恩恵を得るよう適合していることがある。加えて、本書に記載のPECVDプロセスを可能にする任意のシステムが、有利に使用されうる。本書に記載の装置の説明は、例示であり、本書に記載の実行形態の範囲を限定するものと理解すべきでも、解釈すべきでもない。
【0016】
メモリ及びその他のデバイス向けの既存のハードマスクの応用は、厚型炭素膜(例えば300ナノメーTorr~1.5ミクロン)を、大いに活用するものである。かかる炭素膜は、元来非晶質(amorphous)であるが、そのエッチング選択性は、これからの技術ノードの、益々厳格になる要件を満たし、かつ高アスペクト比エッチングに合致するのに、もはや十分ではない。より高いエッチング選択性を実現するためには、膜の密度及びヤング率が改善される必要がある。エッチング選択性の向上及びヤング率の改善を実現する上での主な課題の1つは、かかる膜の圧縮応力が高く、それによってもたらされるウエハバウ(wafer bow)が大きくなることにより、応用に適さなくなることである。ゆえに、高密度及び高弾性率を有し(例えばsp3含有量がより多く、よりダイヤモンドに近く)、エッチング選択性が高く、かつ応力が低い(例えば<-500MPa)、炭素の(ダイヤモンド状の)膜が必要とされている。
【0017】
本書に記載の実行形態は、高密度(例えば>1.8g/cc)、高弾性率(例えば>150GPa)、及び低応力(例えば<-500MPa)を有する炭素膜を製造する、改良型の方法を含む。本書に記載の実行形態により製造される炭素膜は、元来不定形であり、既存のパターンニング膜よりも、高いエッチング選択性を有し、弾性率(例えば>150GPa)が大幅に高くなると共に、応力(<-500MPa)は低くなっている。本書に記載の実行形態により製造される炭素膜は、応力が低いだけでなく、sp3炭素含有量が多くなっている。本書に記載の堆積プロセスは、通常、ハードマスク応用向けの既存の集積化スキームに完全に適応可能でもある。
【0018】
一部の実行形態では、本書に記載のダイヤモンド状炭素膜は、炭化水素を含有する混合ガスを使用する化学気相堆積(プラズマ化学気相堆積及び/又は熱化学気相堆積)プロセスによって形成されうる。この混合ガスは、C2H2、C3H6、CH4、C4H8、1,3-ジメチルアダマンタン、ビシクロ[2.2.1]へプタ-2,5-ジエン(2,5-ノルボルナジエン)、アダマンタン(C10H16)、ノルボルネン(C7H10)、又はこれらの組み合わせなどであるがそれらに限定されるわけではない、前駆体を含む。堆積プロセスは、摂氏-50度~摂氏600度の範囲内の温度で実施されうる。堆積プロセスは、処理空間内で、0.1mTorr~10Torrの範囲内の圧力で実施されうる。炭化水素を含有する混合ガスは、He、Ar、Xe、N2、H2のうちのいずれか1つ、又はHe、Ar、Xe、N2、H2のいずれかの組み合わせを、更に含みうる。炭化水素を含有する混合ガスは、膜品質を向上させるために、Cl2、CF4、及び/又はNF3といったエッチャントガス(etchantgas)を更に含みうる。上下の電極と側部の電極のどちらかから、プラズマ(例えば容量結合プラズマ)が形成されうる。これらの電極は、単一の電力供給電極から、二重の(dual)電力供給電極から、又は複数の周波数(350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60MHz、及び100MHzなどであるが、これらに限定されるわけではない)を伴うもっと多い数の電極から、形成されてよく、ハードマスク及び/若しくはエッチング停止として使用されるダイヤモンド状炭素の薄膜、又は他の何らかの応用に必要な平滑炭素膜を堆積させるために、本書で列挙されているあらゆる反応ガスと共に、CVDシステムにおいて交互に又は同時に使用される。ダイヤモンド状炭素膜の高いエッチング選択性は、既存の生成膜よりも高い密度及び弾性率を有することによって実現される。理論に縛られるわけではないが、密度及び弾性率の向上は、膜中のsp3混成炭素原子の含有量の増大によりもたらされると考えられており、この含有量の増大は、低い圧力とプラズマ出力とを組み合わせることによって実現されうる。
【0019】
一部の実行形態では、RPSを通じて水素ラジカルが供給され、これが、sp2混成炭素原子の選択的エッチングにつながり、ひいては膜のsp3混成炭素原子の分画(fraction)を更に増大させ、ゆえに、エッチング選択性を更に高める。
【0020】
一部の実行形態では、ダイヤモンド状炭素膜は、摂氏10度に維持された基板ペデスタルを有するチャンバであって、圧力が2mTorrに維持され、静電チャックに2500ワット(13.56MHz)のバイアスを印加することによりウエハの水平面において生成されたプラズマを有する、チャンバ内で堆積された。一部の実行形態では、静電チャックには2MHzで1000ワットの更なるRFも供給され、ゆえに、ウエハの水平面において二重バイアスプラズマが生成された。
【0021】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、本書に記載の任意の膜でありうる。
【0022】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、sp3混成炭素原子の含有量が、膜中の炭素原子の総量に基づいて40%~90%であり、密度が1.8g/cc~2.5g/ccであり、かつ弾性率が150GPa~400GPaである。
【0023】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、2.0g/cc~2.2g/ccの密度と、約180GPa~約200GPaの弾性率とを有する。一部の実行形態では、膜は、約2.1g/ccの密度と、約195GPaの弾性率とを有する。
【0024】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、-600MPaの応力と、2.0~3.0の屈折率と、0.2~0.3の吸光係数とを有する。
【0025】
図1Aは、本書に記載の実行形態による、ダイヤモンド状炭素層の堆積を実施するために使用されうる基板処理システム132の概略図を示している。基板処理システム132は、ガスパネル130及びコントローラ110に連結されたプロセスチャンバ100を含む。プロセスチャンバ100は、概括的には、処理空間126を画定する上部壁124、側壁101、及び底部壁122を含む。基板支持アセンブリ146が、プロセスチャンバ100の処理空間126内に設けられる。基板支持アセンブリ146は、概括的には、ステム160によって支持されている静電チャック150を含む。静電チャック150は、典型的には、アルミニウム、セラミック、及びその他の好適な材料から製造されうる。静電チャック150は、変位機構(図示せず)を使用して、プロセスチャンバ100の内部で垂直方向に動かされうる。
【0026】
真空ポンプ102が、プロセスチャンバ100の底部に形成されたポートに連結される。真空ポンプ102は、プロセスチャンバ100内の望ましいガス圧を維持するために使用される。真空ポンプ102は更に、プロセスチャンバ100から、後処理ガス及びプロセスの副生成物を排気する。
【0027】
基板処理システム132は、チャンバ圧力を制御するためにプロセスチャンバ100と真空ポンプ102との間に位置付けられた、チャンバ圧力を制御するための更なる器材(例えば、スロットルバルブ及び分離バルブといったバルブ)を、更に含みうる。
【0028】
複数の開孔128を有するガス分配アセンブリ120が、プロセスチャンバ100の上部の、静電チャック150の上方に配置される。ガス分配アセンブリ120の開孔128は、プロセスチャンバ100内にプロセスガスを導入するために利用される。開孔128は、種々のプロセス要件のための様々なプロセスガスの流れを促進するよう、種々のサイズ、数、分布、形状、設計、及び直径を有しうる。ガス分配アセンブリ120はガスパネル130に接続され、ガスパネル130は、処理中に様々なガスを処理空間126に供給することを可能にする。基板190の表面191上への材料の堆積をもたらすプロセスガスの熱分解を強化するために、ガス分配アセンブリ120から出るプロセス混合ガスからプラズマが形成される。
【0029】
ガス分配アセンブリ120と静電チャック150とは、処理空間126内で離間した電極の対を形成しうる。ガス分配アセンブリ120と静電チャック150との間でプラズマの生成を促進するために、一又は複数のRF電源140が、整合ネットワーク138を通じて(これはオプションである)、ガス分配アセンブリ120にバイアス電位を提供する。あるいは、RF電源140及び整合ネットワーク138は、ガス分配アセンブリ120に、静電チャック150に、若しくはその両方に連結されうるか、又は、プロセスチャンバ100の外部に配置されたアンテナ(図示せず)に連結されうる。一部の実行形態では、RF電源140は、350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60Mhz、又は100MHzの周波数で、電力を発生させうる。一実行形態では、RF電源140は、約50kHz~約13.6MHzの周波数で、約100ワット~約3000ワットを提供しうる。別の実行形態では、RF電源140は、約50kHz~約13.6MHzの周波数で、約500ワット~約1800ワットを提供しうる。
【0030】
コントローラ110は、中央処理装置(CPU)112と、メモリ116と、プロセスシーケンスを制御し、かつガスパネル130からのガス流を調節するために利用されるサポート回路114とを含む。CPU112は、産業用設定で使用されうる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサでありうる。ソフトウェアルーチンが、メモリ116(ランダムアクセスメモリ、読出専用メモリ、フロッピー、若しくはハードディスクドライブ、又はその他の形態のデジタルストレージなど)に記憶されうる。サポート回路114は、従来的にはCPU112に接続されており、キャッシュ、クロック回路、入/出力システム、電力供給装置などを含みうる。コントローラ110と基板処理システム132の様々な構成要素との間の双方向通信は、多数の信号ケーブル(信号バス118と総称され、その一部が
図1に示されている)を通じて処理される。
【0031】
図1Bは、本書に記載の実行形態を実践する上で使用されうる別の基板処理積システム180の概略断面図を示している。基板処理システム180は、ガスパネル130から、側壁101を経て基板190の表面191の端から端まで処理ガスを流すよう構成されていることを除けば、
図1Aの基板処理システム132に類似している。加えて、
図1Aに示しているガス分配アセンブリ120が、電極182で置換されている。電極182は、二次的な電荷生成装置として構成されうる。一実行形態では、電極182は、ケイ素含有電極である。
【0032】
図2は、本書に記載の実行形態を実践する上で使用されうる
図1A及び
図1Bの処理システムにおいて使用されうる、基板支持アセンブリ146の概略断面図を示している。
図2を参照するに、静電チャック150は、静電チャック150の上側面192の上に支持されている基板190の温度を制御するのに適した、ヒータ素子170を含みうる。ヒータ素子170は、静電チャック150に埋設されうる。静電チャック150は、ヒータ電源106からの電流がヒータ素子170に印加されることによって、抵抗加熱されうる。ヒータ電源106は、RFフィルタ216を通じて連結されうる。RFフィルタ216は、ヒータ電源106をRFエネルギーから保護するために使用されうる。ヒータ素子170は、ニッケル-クロム合金(例えばINCOLOY(登録商標))のシースチューブ内に封入されたニッケル-クロムワイヤで作製されうる。ヒータ素子170により生成された熱を制御し、ひいては基板190及び静電チャック150を膜堆積中に実質的に一定した温度に維持するよう、ヒータ電源106から供給される電流はコントローラ110によって調整される。供給される電流は、静電チャック150の温度を摂氏約-50度~摂氏約600度に選択的に制御するよう、調節されうる。
【0033】
図1を参照するに、従来的な様態では、静電チャック150の温度をモニタするために、静電チャック150に温度センサ172(熱電対など)が埋設されうる。測定された温度は、ヒータ素子170に供給される電力を制御して、基板を望ましい温度に維持するために、コントローラ110によって使用される。
【0034】
静電チャック150はチャック電極210を含み、チャック電極210は導電性材料のメッシュでありうる。チャック電極210は、静電チャック150に埋設されうる。チャック電極210はチャック電源212に連結されており、チャック電源212は、通電されると、基板190を静電チャック150の上側面192に静電クランプする。
【0035】
チャック電極210は、単極若しくは双極の電極として構成されうるか、又は別の好適な構成を有しうる。チャック電極210はRFフィルタ214を通じてチャック電源212に連結されてよく、チャック電源212は、基板190を静電チャック150の上側面192に静電固定するための直流(DC)電力を提供する。RFフィルタ214は、プロセスチャンバ100の中でプラズマを形成するために利用されるRF電力が、チャンバ外の電気機器を損傷すること又はチャンバ外電気的障害を引き起こすことを防止する。静電チャック150は、セラミック材料(AlN又はAl2O3など)から製造されうる。あるいは、静電チャック150は、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)などといったポリマーから製造されうる。
【0036】
電力印加システム220が、基板支持アセンブリ146に連結される。電力印加システム220は、ヒータ電源106、チャック電源212、第1高周波(RF)電源230、及び第2RF電源240を含みうる。加えて、電力印加システム220の実行形態は、コントローラ110、コントローラ110と通信可能なセンサデバイス250、及び第1RF電源230と第2RF電源240の両方を、含みうる。
【0037】
コントローラ110は更に、基板190に材料の層を堆積させるように、第1RF電源230と第2RF電源240からのRF電力を印加することにより処理ガスからのプラズマを制御するために、利用されうる。
【0038】
上述したように、静電チャック150は、一態様では基板190をチャックするよう機能すると共に第1RF電極としても機能しうる、チャック電極210を含む。静電チャック150は、第2RF電極260も含んでよく、チャック電極210と共に、プラズマをチューニングするためにRF電力を印加しうる。第1RF電源230が第2RF電極260に連結されうる一方、第2RF電源240は、チャック電極210に連結されうる。第1RF電源230と第2RF電源240のそれぞれのために、第1整合ネットワークと第2整合ネットワークが設けられうる。第2RF電極260は、図示しているような導電性材料の固体金属プレートでありうる。あるいは、第2RF電極260は導電性材料のメッシュであることもある。
【0039】
第1RF電源230と第2RF電源240とは、同じ周波数で又は異なる周波数で、電力を発生させうる。一部の実行形態では、第1RF電源230と第2RF電源240の一方又は両方が、約350KHz~約100MHz(例えば350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60Mhz、又は100MHz)の周波数で、個別に電力を発生させうる。一部の実行形態では、第1RF電源230は13.56MHzの周波数で電力を発生させてよく、第2RF電源240は2MHzの周波数で電力を発生させうる(又はその逆)。第1RF電源230と第2RF電源240の一方又は両方からのRF電力は、プラズマをチューニングするために変更されうる。例えば、センサデバイス250が、第1RF電源230と第2RF電源240の一方又は両方からのRFエネルギーをモニタするために使用されうる。センサデバイス250からのデータはコントローラ110に通信されてよく、コントローラ110は、第1RF電源230及び第2RF電源240によって印加される電力を変更するために利用されうる。
【0040】
堆積時の(as-deposited)ダイヤモンド状炭素におけるsp3混成炭素原子の質量/パーセンテージは、応用ごとに変動しうる。本開示の様々な実行形態において、堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85パーセントのsp3混成炭素原子を含有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、最大で45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90パーセントのsp3混成炭素原子を含有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、約50~約90パーセントのsp3混成炭素原子を含有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、約60~約70パーセントのsp3混成炭素原子を含有しうる。
【0041】
かかる堆積時のダイヤモンド状炭素層を形成するために、通常、以下の例示的な堆積プロセスパラメータが使用されうる。ウエハ温度は約-50°C~約350°C(例えば約10°C~約100°C、又は約k10°C~約50°C)の範囲内でありうる。チャンバ圧力は、約0.5mTorr~約10Torr(例えば約2mTorr~約50mTorr、又は約2mTorr~約10mTorr)というチャンバ圧力の範囲内でありうる。炭化水素を含有する混合ガスの流量は、約10sccm~約1,000sccm(例えば約100sccm~約200sccm、又は約150sccm~約200sccm)でありうる。希釈ガスの流量は、個別に、約50sccm~約50,000sccm(例えば約50sccm~約500sccm、又は約50sccm~約100sccm)の範囲内でありうる。
【0042】
ダイヤモンド状炭素層は、約5Å~約20,000Å(例えば約300Å~約5000Å、約2000Å~約3000Å、又は約5Å~約200Å)の厚さに堆積されうる。上記の表1に示しているプロセスパラメータは、カリフォルニア州Santa ClaraのApplied Materials,Inc.から入手可能な堆積チャンバにおける、300mm基板向けのプロセスパラメータの例を提供するものである。
【0043】
堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、2.0を上回る(例えばおよそ2.0~およそ3.0の、例としては2.3の)屈折率又はn値(633nmにおけるn)を有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、0.1を上回る(例えばおよそ0.2~およそ0.3の、例としては0.25の)吸光係数又はk値(633nmにおけるk)を有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、応力(MPa)であって、約-100MPaを下回る(例えばおよそ-1000MPa~およそ-100MPa、およそ-600MPa~およそ-300MPa、およそ-600MPa~およそ-500MPaの、例としてはおよそ-550MPaの)応力を有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、密度(g/cc)であって、1.8g/ccを上回る(例えばおよそ2.0g/cc以上、およそ2.5g/cc以上の、例としては約1.8g/cc~約2.5g/ccの)密度を有しうる。堆積時のダイヤモンド状炭素膜は、弾性率(GPa)であって、150GPaを上回る(例えば約200~約400GPaの)弾性率を有しうる。
【0044】
図3は、本開示の一実行形態による、基板上に配置された膜積層体の上にダイヤモンド状炭素膜を形成するための方法300のフロー図を示す。膜積層体上に形成されたダイヤモンド状炭素層は、例えば、膜積層体で階段状構造物を形成するためのハードマスクとして利用されうる。
図4A-4Bは、方法300により基板上に配置された膜積層体の上にダイヤモンド状炭素層を形成するためのシーケンスを示す、概略断面図である。三次元半導体デバイス向けに膜積層体で階段状構造物を製造するために利用される膜積層体の上に形成されうるハードマスク層に関連して、方法300について後述しているが、方法300は、他のデバイス製造応用においても、有利に使用されうる。更に、
図3に示している工程は、同時にかつ/又は
図3に示しているのとは異なる順序で実施されうることも、理解すべきである。
【0045】
方法300は、工程310において、基板(
図4Aに示している基板400など)を、プロセスチャンバ(
図1A又は
図1Bに示しているプロセスチャンバ100など)の中に位置付けることにより始まる。基板400は、
図1A、
図1B、及び
図2に示している基板190でありうる。基板400は、静電チャック(例えば静電チャック150の上側面192)の上に位置付けられうる。基板400は、必要に応じて、ケイ素ベースの材料又は任意の好適な絶縁材料若しくは導電性材料であってよく、基板400上には膜積層体404が配置されており、膜積層体404は、膜積層体404で構造物402(階段状構造物など)を形成するために利用されうる。
【0046】
図4Aに示している例示的な実行形態に図示しているように、基板400は、実質的に平らな表面、平らではない表面、又は上に構造物が形成された実質的に平らな表面を有しうる。膜積層体404は基板400上に形成される。一実行形態では、膜積層体404は、フロントエンドプロセス又はバックエンドプロセスにおいてゲート構造、接触構造、又は相互接続構造を形成するために、利用されうる。方法300は、膜積層体404でメモリ構造(NAND構造など)に使用される階段状構造物を形成するために、膜積層体404に対して実施されうる。一実行形態では、基板400は、結晶シリコン(例えばSi<100>又はSi<111>)、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコンゲルマニウム、ドープされた又はドープされていないポリシリコン、ドープされた又はドープされていないシリコン基板とパターニングされた又はパターニングされていない基板のシリコンオンインシュレータ(SOI)、炭素がドープされた酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアといった、材料でありうる。基板400は、様々な寸法(例えば200mm、300mm、及び450mm)又はその他の直径を有しうると共に、長方形又は正方形のパネルでもありうる。別途記載されない限り、本書に記載の実行形態及び例は、200mm直径、300mm直径、又は450mm直径を有する基板上で実行される。基板400でSOI構造が利用される実行形態では、基板400は、ケイ素結晶性基板に配置された埋め込み型誘電体層を含みうる。本書で示しているこの実行形態では、基板400は結晶シリコン基板でありうる。
【0047】
一実行形態では、基板400上に配置された膜積層体404は、垂直方向に重なったいくつかの層を有しうる。膜積層体404は、膜積層体404内に反復的に形成されている、第1層(408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anとして図示している)と第2層(408b1、408b2、408b3、・・・・・・、408bnとして図示している)とを含む複数の対を備えうる。かかる対は、第1層(408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anとして図示している)と第2層(408b1、408b2、408b3、・・・・・・、408bnとして図示している)との対が望ましい数に到達するまで反復的に形成された、交互になった第1層と第2層を含む。
【0048】
膜積層体404は、半導体チップ(三次元メモリチップなど)の一部になりうる。
図4A-4Bには、第1層(408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anとして図示している)と第2層(408b1、408b2、408b3、・・・・・・、408bnとして図示している)の3つの反復層が図示されているが、第1層と第2層との任意の望ましい数の反復対が、必要に応じて利用されうることが分かる。
【0049】
一実行形態では、膜積層体404は、三次元メモリチップ向けの複数のゲート構造を形成するために利用されうる。膜積層体404内に形成された第1層408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anは第1誘電体層であってよく、第2層408b1、408b2、408b3、・・・・、408bnは第2誘電体層でありうる。好適な誘電体層が、第1層408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408an及び第2層408b1、408b2、408b3、・・・・・・、408bnを形成するために利用されてよく、かかる好適な誘電体層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸炭化ケイ素、窒化チタン、酸化物と窒化物との複合物、窒化物層を挟持している少なくとも一又は複数の酸化物層、及びこれらの組み合わせを、(他にもあるが)含みうる。一部の実行形態では、誘電体層は、4を上回る誘電率を有する、高誘電率材料でありうる高誘電率材料の好適な例は、二酸化ハフニウム(HfO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウムケイ素(HfSiO2)、酸化ハフニウムアルミニウム(HfAlO)、酸化ジルコニウムケイ素(ZrSiO2)、二酸化タンタル((TaO2)、酸化アルミニウム、アルミニウムでドープされた二酸化ハフニウム、ビスマスストロンチウムチタン(BST)、及びプラチナジルコニウムチタン(PZT)を、(他にもあるが)含む。
【0050】
一具体例では、第1層408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anは酸化ケイ素層であり、第2層408b1、408b2、408b3、・・・・・・、408bnは、第1層408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anの上に配置された窒化ケイ素層又はポリシリコン層である。一実行形態では、第1層408a1、408a2、408a3、・・・・・・、408anの厚さは約50Å~約1000Å(例えば約500Å)に制御されてよく、第2層408b1、408b2、408b3、・・・・・・、408bnの各々の厚さは約50Å~約1000Å(例えば約500Å)に制御されうる。膜積層体404は、約100Å~約2000Åの総厚を有しうる。一実行形態では、膜積層体404の総厚は約3ミクロン~約10ミクロンであるが、これは技術の進歩と共に変動することになる。
【0051】
ダイヤモンド状炭素層は、基板400上に膜積層体404が存在している又は存在していない、基板400の任意の表面又は任意の部分の上に形成されうることが分かる。
【0052】
工程320において、基板400を静電チャックにクランプするために、静電チャックにチャック電圧が印加される。基板400が静電チャック150の上側面192上に位置付けられる一部の実行形態では、処理中に、上側面192が基板400に支持を提供し、基板400をクランプする。静電チャック150は、基板400を上側面192に密着させ、裏側堆積を防止する。チャック電極210を介して、基板400に電気バイアスが提供される。チャック電極210は、チャック電極210にバイアス電圧を供給するチャック電源212と、電気的に通信可能でありうる。一実行形態では、チャック電圧は約10ボルト~約3000ボルトである。一実行形態では、チャック電圧は約100ボルト~約2000ボルトである。一実行形態では、チャック電圧は約200ボルト~約1000ボルトである。
【0053】
工程320において、いくつかのプロセスパラメータがプロセスに合わせて調節されうる。300mm基板の処理に適した一実行形態では、処理空間内のプロセス圧力は、約0.1mTorr~約10Torr(例えば約2mTorr~約50mTorr、又は約5mTorr~約20mTorr)に維持されうる。300mm基板の処理に適した一実行形態では、処理温度及び/又は基板温度は、摂氏約-50度~摂氏約350度(例えば摂氏約0度~摂氏約50度、又は摂氏約10度~摂氏約20度)に維持されうる。
【0054】
一実行形態では、一定したチャック電圧が基板400に印加される。一実行形態では、静電チャック150に対するチャック電圧はパルス化されうる。一部の実行形態では、基板の温度を制御するために、チャック電圧が印加されている時に裏側ガスが基板400に適用されうる。裏側ガスは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などを含みうるが、これらに限定されるわけではない。
【0055】
工程330において、静電チャックに第1RFバイアスを印加することにより、基板の水平面においてプラズマが生成される。基板の水平面において生成されるプラズマは基板と静電チャックとの間のプラズマ領域内で生成されうる。第1RFバイアスは、約350KHz~約100MHz(例えば350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60Mhz、又は100MHz)の周波数の、約10ワット~約3000ワットのものでありうる。一実行形態では、第1RFバイアスは、約13.56MHzの周波数で、約2500ワット~約3000ワットの電力で提供される。一実行形態では、第1RFバイアスは、第2RF電極260を介して静電チャック150に提供される。第2RF電極260は、第2RF電極260にバイアス電圧を供給する第1RF電源230と、電気的に通信可能でありうる。一実行形態では、バイアス電力は約10ワット~約3000ワットである。一実行形態では、バイアス電力は約2000ワット~約3000ワットである。一実行形態では、バイアス電力は約2500ワット~約3000ワットである。第1RF電源230は、約350KHz~約100MHz(例えば350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60Mhz、又は100MHz)の周波数で、電力を発生させうる。
【0056】
一部の実行形態では、工程330は、静電チャックに第2RFバイアスを印加することを更に含む。第2RFバイアスは、約350KHz~約100MHz(例えば350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60Mhz、又は100MHz)の周波数の、約10ワット~約3000ワットのものでありうる。一実行形態では、第2RFバイアスは、約2MHzの周波数で、約800ワット~約1200ワットの電力で提供される。一実行形態では、第2RFバイアスは、チャック電極210を介して基板400に提供される。チャック電極210は、チャック電極210にバイアス電圧を供給する第2RF電源240と、電気的に通信可能でありうる。一実行形態では、バイアス電力は約10ワット~約3000ワットである。一実行形態では、バイアス電力は約500ワット~約1500ワットである。一実行形態では、バイアス電力は約800ワット~約1200ワットである。第2RF電源240は、約350KHz~約100MHz(例えば350KHz、2MHz、13.56MHz、27MHz、40MHz、60Mhz、又は100MHz)の周波数で、電力を発生させうる。一実行形態では、工程320で供給されるチャック電圧が、工程330においても維持される。
【0057】
一部の実行形態では、工程330において、第1RFバイアスはチャック電極210を介して基板400に提供されており、第2RFバイアスは第2RF電極260を介して基板400に提供されうる。一実行形態では、第1RFバイアスは約2500ワット(13.56MHz)であり、第2RFバイアスは約1000ワット(2MHz)である。
【0058】
工程340において、膜積層体上にダイヤモンド状炭素膜を形成するために、炭化水素を含有する混合ガスが処理空間126内に流し込まれる。炭化水素を含有する混合ガスは、ガスパネル130から、ガス分配アセンブリ120を通じて或いは側壁101を介して、処理空間126内に流し込まれうる。炭化水素を含有する混合ガスは、少なくとも1つの炭化水素化合物を含みうる。炭化水素を含有する混合ガスは、不活性ガス、希釈ガス、窒素含有ガス、エッチャントガス、又はこれらの組み合わせを、更に含みうる。炭化水素は任意の液体又はガスでありうるが、材料の計量、制御、及びチャンバへの供給に必要なハードウェアを簡略化するのであれば、好ましい前駆体は室温の蒸気である。一部の実行形態では、工程320において供給されるチャック電圧が、工程340においても維持される。一部の実行形態では、工程320において確立されるプロセス条件、及び工程330において形成されるプラズマが、工程340においても維持される。
【0059】
一実行形態では、炭化水素化合物はガス状炭化水素である。一実行形態では、炭化水素化合物は、CxHyという一般式を有し、ここで、xは1~20の範囲を有し、かつyは1~20の範囲を有する。好適な炭化水素化合物は、例えば、C2H2、C3H6、CH4、C4H8、1,3-ジメチルアダマンタン、ビシクロ[2.2.1]へプタ-2,5-ジエン(2,5-ノルボルナジエン)、アダマンタン(C10H16)、ノルボルネン(C7H10)、又はこれらの組み合わせを含む。一例では、C2H2が好ましい。C2H2は、表面移動度の向上を可能にする、より好適な中間種を形成するからである。
【0060】
一実行形態では、炭化水素化合物はアルカンである(例えばCnH2n+2であり、ここでnは1~20である)。好適な炭化水素化合物は、例えば、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロピレン(C3H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)及びその異性体のイソブタン、ペンタン(C5H12)、ヘキサン(C6H14)とその異性体のイソペンタン及びネオペンタン、ヘキサン(C6H14)とその異性体の2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、及び2,2-ジメチルブタン、又はこれらの組み合わせといった、アルカン類を含む。
【0061】
一実行形態では、炭化水素化合物はアルケンである(例えばCnH2nであり、ここでnは1~20である)。好適な炭化水素化合物は、例えば、アセチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンとその異性体、ペンテンとその異性体などといったアルケン類、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエンといったジエン類、又はこれらの組み合わせを含む。更なる好適な炭化水素類は、例えば、モノフルオロエチレン、ジフルオロエチレン類、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、モノクロロエチレン、ジクロロエチレン類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、又はこれらの組み合わせといった、ハロゲン化されたアルケン類を含む。
【0062】
一実行形態では、炭化水素化合物はアルキンである(例えばCnH2n-2であり、ここでnは1~20である)。好適な炭化水素化合物は、例えば、プロピン(C3H4)、ブチレン(C4H8)、ビニルアセチレン、又はこれらの組み合わせといった、アルキン類を含む。
【0063】
一実行形態では、炭化水素化合物は、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、スチレン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アセトフェノン、メチルベンゾエート、フェニルアセテート、フェノール、クレゾール、フランなど)、アルファ―テルピネン、シメン、1,1,3,3,-テトラメチルブチルベンゼン、t-ブチルエーテル、t-ブチルエチレン、メチル-メタクリレート、並びにt-ブチルフルフリルエーテル、C3H2及びC5H4という式を有する化合物、ハロゲン化された芳香族化合物(モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン類、テトラフルオロベンゼン類、ヘキサフルオロベンゼンを含む)、又はこれらの組み合わせである。
【0064】
一部の実行形態では、炭化水素を含有する混合ガスは、一又は複数の希釈ガスを更に含む。ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、水素(H2)、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、又はこれらの組み合わせといった(他にもあるが)好適な希釈ガスが、所望に応じて、混合ガスに添加されうる。Ar、He、及びN2は、ダイヤモンド状炭素層の密度及び堆積速度を制御するために使用される。場合によっては、N2及び/又はNH3の添加は、後述するように、ダイヤモンド状炭素層中の水素比率を制御するために使用されうる。あるいは、堆積中に希釈ガスが使用されないこともある。
【0065】
一部の実行形態では、炭化水素を含有する混合ガスは、一又は複数の窒素含有ガスを更に含む。好適な窒素含有化合物は、例えば、ピリジン、脂肪族アミン、アミン類、ニトリル類、アンモニア、及び類似の化合物を含む。
【0066】
一部の実行形態では、炭化水素を含有する混合ガスは、不活性ガスを更に含む。一部の実行形態では、炭化水素を含有する混合ガスと共に、アルゴン(Ar)及び/又はヘリウム(He)といった不活性ガスが、処理空間126内に供給されうる。ダイヤモンド状炭素層の密度及び堆積速度を制御するために、その他の不活性ガス(窒素(N2)及び一酸化窒素(NO)など)も使用されうる。加えて、ダイヤモンド状炭素材料の特性を改変するために、炭化水素を含有する混合ガスには、多種多様なその他の処理ガスが添加されうる。一実行形態では、その他の処理ガスとは、水素(H2)、アンモニア(NH3)、水素と(H2)窒素(N2)との混合物、又はこれらの組み合わせといった、反応性ガスでありうる。H2及び/又はNH3の添加は、ダイヤモンド状炭素層の水素比率(例えば炭素と水素との比率)を制御するために使用されうる。ダイヤモンド状炭素膜中に存在する水素の比率により、層特性(反射率など)が制御される。
【0067】
一部の実行形態では、炭化水素を含有する混合ガスは、エッチャントガスを更に含む。好適なエッチャントガスは、塩素(Cl2)、四フッ化炭素(CF4)、三フッ化窒素(NF3)、又はこれらの組み合わせを含む。理論に縛られるわけではないが、エッチャントガスは、膜からsp2混成炭素原子を選択的のエッチングし、ひいては膜中のsp3混成炭素原子の分画を増大させ、これにより、膜のエッチング選択性が高まると考えられている。
【0068】
一部の実行形態では、ダイヤモンド状炭素層412は、工程340において基板上に形成された後に、水素ラジカルに曝露される。一部の実行形態では、ダイヤモンド状炭素層は、工程340の堆積プロセス中に、水素ラジカルに曝露される。一部の実行形態では、水素ラジカルは、RPSで形成され、処理領域に供給される。理論に縛られるわけではないが、ダイヤモンド状炭素層を水素ラジカルに曝露することは、sp2混成炭素原子を選択的エッチング、ひいては膜のsp3混成炭素原子の分画の増大につながり、ゆえに、エッチング選択性を高めると考えられている。
【0069】
基板上にダイヤモンド状炭素層412が形成された後、工程350において、基板がチャック解除される。工程350において、チャック電圧はオフにされる。反応性ガスもオフにされ、オプションで、処理チャンバからパージされる。一実行形態では、工程350において、RF電力が(例えば200Wまで)低減される。オプションで、コントローラ110がインピーダンスの変化をモニタして、静電荷がRF経路を通って接地に散逸したかどうかを判断する。基板が静電チャックからチャック解除されると、残っているガスは処理チャンバからパージされる。処理チャンバはポンプダウンされ、基板は、リフトピン上で上昇し、チャンバの外に移送される。
【0070】
ダイヤモンド状炭素層412は、基板上に形成された後に、エッチングプロセスにおいて、三次元構造物(階段状構造物など)を形成するためのパターニングマスクとして利用されうる。ダイヤモンド状炭素層412は、標準的なフォトレジストパターニング技法を使用してパターニングされうる。ダイヤモンド状炭素層412の上に、パターニングされたフォトレジスト(図示せず)が形成されうる。ダイヤモンド状炭素層412は、パターニングされたフォトレジスト層と一致するパターンにエッチングされてよく、その後、基板400にこのパターンがエッチングされる。ダイヤモンド状炭素層412のエッチングされた部分の中に、材料が堆積されうる。ダイヤモンド状炭素層412は、過酸化水素と硫酸を含む溶液を使用して除去されうる。過酸化水素と硫酸を含む例示的な一溶液は、ピラニア溶液又はピラニア腐食液として既知である。ダイヤモンド状炭素層412は、酸素とハロゲン(例えばフッ素又は塩素)を含有するエッチング化学物質(例えばCl2/O2、CF4/O2、Cl2/O2/CF4)を使用して除去されることもある。ダイヤモンド状炭素層412は、化学機械研磨(CMP)プロセスによっても除去されうる。
【0071】
例:
以下の非限定的な例は、本書に記載の実行形態を更に例示するために提供されている。しかし、これらの例は、本書に記載の実行形態の全てを網羅することを意図しておらず、その範囲を限定するためのものでもない。
【0072】
一実行形態では、希釈ガスとしてAr及び/又はHeを有するCVDリアクタ内で、基板ペデスタル(静電チャック)を通じて2500ワットのRF(13.56MHz)電力と1000ワット(2MHz)とを印加しつつ、摂氏10度の温度で、プロセスガスとしてC
2H
2を150sccmで、かつHeを100sccmで流すことによって、本開示の低応力高密度のダイヤモンド状炭素膜が製造された。結果として得られたダイヤモンド状炭素膜は、1.94g/ccの密度と、-350MPaの応力と、現在入手可能なアモルファスカーボン膜を上回るエッチング選択性とを有していた。
【0073】
図5は、本開示の一又は複数の実行形態により形成されたダイヤモンド状炭素層について、バイアス電力の関数としての密度を示しているグラフ500である。グラフ500は、2MHzの周波数及び13.56MHzの周波数で堆積されたダイヤモンド状炭素膜について、バイアス電力の関数としての密度を示している。y軸は堆積された膜の密度(g/cc)を表わしており、x軸はバイアス電力(ワット)を表わしている。
図5に示しているように、ほとんどの部分について、バイアス電力が増大するにつれて、堆積時の膜の密度も高まる。
【0074】
図6は、本開示の一又は複数の実行形態により形成されたダイヤモンド状炭素層について、バイアス電力の関数としての応力を示しているグラフ600である。グラフ600は、2MHzの周波数及び13.56MHzの周波数で堆積されたダイヤモンド状炭素膜について、バイアス電力の関数としての応力を示している。y軸は堆積された膜の応力(MPa)を表わしており、x軸はバイアス電力(ワット)を表わしている。
図6に示しているように、ほとんどの部分について、バイアス電力が増大するにつれて、堆積時の膜の応力も増大する。
【0075】
図7は、本開示の一又は複数の実行形態により形成されたダイヤモンド状炭素層について、圧力の関数としての密度及び応力を示しているグラフ700である。y軸は堆積された膜の密度(g/cc)及び応力(MPa)を表わしており、x軸はプロセス圧力(mTorr)を表わしている。
図7に示しているように、圧力が低くなると密度は若干高く、応力は小さくなり、圧力が大きくなると圧縮応力は大きくなる。
【0076】
極紫外(EUV)パターニング方式
極紫外(EUV)パターンニング方式において金属含有フォトレジストを使用する場合、半導体デバイスにおける極小不具合(例えばブリッジ形成の欠陥及び間隔形成の欠陥)を防止するために、下層の選択が重要になる。EUVパターニング(リソグラフィ)方式向けの従来的な下層は、スピンオンカーボン(SOC)材料である。しかし、パターンニング中に、スズなどの金属は、例えばSOC材料を通って拡散し、半導体デバイスの極小不具合につながる。かかる極小不具合は、半導体性能を引き下げ、劣化させ、妨害するよう作用する。
【0077】
その一方で、本書に記載の高密度炭素膜は、優れた膜品質を有する(例えば硬度及び密度が向上している)。かかる硬度及び密度により、高密度炭素膜が、従来型のSOC膜よりも大幅に、金属侵入に対するより強力なバリアとして作用すること、及び極小不具合を防ぐ(最低でも低減する)ことが、可能になる。
【0078】
一部の実行形態では、極紫外(EUV)リソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜が提供される。一部の実行形態では、この膜(及び/又は堆積時の膜)は、
1)堆積時の膜中の炭素原子の総量に基づいて少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85パーセントである、sp3混成炭素原子の質量/パーセンテージ(すなわち、sp3混成炭素原子の含有量)であって、上記の又はその他の実行形態では、堆積時の膜中の炭素原子の総量に基づいて最大で45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90パーセントとなり、上記の又はその他の実行形態では、堆積時の膜中の炭素原子の総量に基づいて約50~約90パーセント(例えば約60~約70パーセント)となる、sp3混成炭素原子の質量/パーセンテージ、
2)約5Å~約20,000Å(例えば約300Å~約5000Å、例としては約2000Å~約3000Å)である厚さであって、あるいは約5Å~約200Åである、厚さ、
3)2.0を上回る(例えばおよそ2.0~およそ3.0の、例としては2.3の)屈折率又はn値(633nmにおけるn)、
4)0.1を上回る(例えばおよそ0.2~およそ0.3の、例としては0.25の)吸光係数又はk値(633nmにおけるk)、
5)応力(MPa)であって、約-300MPaを下回る(例えばおよそ-600MPa~およそ-300MPa、およそ-600MPa~およそ-500MPaの、例としてはおよそ-550MPaの)応力、
6)密度(g/cc)であって、1.8g/ccを上回る(例えばおよそ2.0g/cc以上、およそ2.5g/cc以上の、例としては約1.8g/cc~約2.5g/ccの)密度、
7)弾性率(GPa)であって、150GPaを上回る(例えば約200~約400GPa)の弾性率、という特性のうちの、一又は複数を有する。
【0079】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、本書に記載の任意の膜でありうる。
【0080】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、sp3混成炭素原子の含有量が、膜中の炭素原子の総量に基づいて40%~90%であり、密度が1.8g/cc~2.5g/ccであり、かつ弾性率が150GPa~400GPaである。
【0081】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、2.0g/cc~2.2g/ccの密度と、約180GPa~約200GPaの弾性率とを有する。一部の実行形態では、膜は、約2.1g/ccの密度と、約195GPaの弾性率とを有する。
【0082】
一部の実行形態では、EUVリソグラフィプロセスの向けの下層として使用される膜は、-600MPaの応力と、2.0~3.0の屈折率と、0.2~0.3の吸光係数とを有する。
【0083】
ゆえに、半導体デバイスの三次元積層を製造するための階段状構造物の形成に使用されうるダイヤモンド状炭素のハードマスク層を形成するための、方法及び装置が提供される。望ましいほどに強固な膜特性とエッチング選択性を有するダイヤモンド状ハードマスク層を利用することによって、結果として得られる、膜積層体で形成される構造物の寸法及びプロファイル制御の向上が得られ、半導体デバイスの三次元積層向けの応用における、チップデバイスの電気的性能が強化されうる。
【0084】
つまり、本開示の利点の一部により、基板上にダイヤモンド状ハードマスク膜を堆積させるためのプロセスがもたらされる。典型的なPECVDハードマスク膜は、混成sp3原子の割合が非常に低く、ゆえに、弾性率及びエッチング選択性も低い。本書に記載の実行形態の一部では、低いプロセス圧力(mTorr vs. Torr)及び底部駆動(bottom driven)プラズマにより、およそ60%以上の混成sp3原子を有する膜の製造が可能になり、このことは、以前から入手可能なハードマスク膜と比較して、エッチング選択性の改善をもたらす。加えて、本書に記載の実行形態の一部は低い基板温度で実施される。これにより、現在可能な温度よりもずっと低い温度で、その他の誘電体膜の堆積も可能になり、これまでCVDによって対処することができなかった、低い熱収支を伴う応用の可能性が開かれる。加えて、本書に記載の実行形態の一部は、EUVリソグラフィプロセス向けの下層として使用されうる。
【0085】
本開示の要素又はそれらの例示的な態様若しくは実行形態(複数可)を紹介する場合、「1つの(a、an)」及び「前記(the、said)」という冠詞は、一又は複数のかかる要素が存在していることを意味するためのものである。
【0086】
「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という語は、包括的であることが意図されており、列挙された要素以外にも更なる要素が存在しうることを意味する。
【0087】
以上の記述は本開示の実行形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱しなければ、本開示の他の実行形態及び更なる実行形態が考案されうる。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決まる。