(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、及び、研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20230627BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230627BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20230627BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20230627BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230627BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230627BHJP
【FI】
B24B37/24 C
C08G18/65
C08G18/42
C08J9/28 101
C08J9/28 CFF
H01L21/304 622F
C08G18/65 005
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2018238336
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大倉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223835(JP,A)
【文献】特公昭47-006753(JP,B1)
【文献】特開2005-015643(JP,A)
【文献】特開2017-002145(JP,A)
【文献】特開平10-110025(JP,A)
【文献】特開2012-102182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
C08G71/00-71/04
C08J 9/00- 9/42
B24B 3/00- 3/60
B24B21/00-39/00
H01L21/304
H01L21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及び、鎖伸長剤(c)を原料とするウレタン樹脂(X)を含有するウレタン樹脂組成物による多孔体を有する研磨パッドであって、
前記ポリオール(a)が、ポリエステルポリオールを含むものであり、
前記ポリエステルポリオールが、エチレングリコールとアジピン酸との反応物、1,4 ブタンジオールとアジピン酸との反応物、エチレングリコールと1,4 ブタンジオールとアジピン酸との反応物、及び1,6 ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物からなる群より選ばれる1種以上であり、
前記ポリオール(a)の数平均分子量が700~5000の範囲であり、
前記ポリイソシアネート(b)が、ジフェニルメタンジイシソアネートであり、
前記鎖伸長剤(c)が、エチレングリコール又は1,4-ブタンジオールであり、
前記ポリオール(a)の使用割合が、前記ウレタン樹脂(X)の原料中に40~65質量%の範囲であり、
前記ポリイソシアネート(b)の使用割合が、前記ウレタン樹脂(X)の原料中に30~40質量%の範囲であり、
前記鎖伸長剤(c)の使用割合が、前記ウレタン樹脂(X)の原料中に5~20質量%の範囲であり、
パルスNMR測定法によるウレタン樹脂(X)の非晶相の存在比率が34~50%の範囲であり、かつ、結晶相の存在比率が20~32%の範囲であることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量が12万~30万の範囲である請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
仕上げ研磨に使用されるものである、請求項1
又は2記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、及び、研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ガラス、ハードディスクガラス、シリコンウエハ、半導体などの高度な表面平坦性が要求される分野においては、ウレタン樹脂組成物を使用した研磨パッドが広く利用されている。中でも、最終の仕上げ研磨においては、DMF(ジメチルホルムアミド)等の溶剤で希釈したウレタン樹脂を水中で凝固させる湿式成膜法によって加工された軟質な多孔体が使用されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この多孔体による研磨パッドに対して要求される特性としては、例えば、加工体表面の平坦性を保持するための高い体積弾性率を持つこと(=低圧縮率)、表面のスクラッチを抑制する材料としての柔軟性、及び、スラリー(研磨液)の保持と安定的な研磨を担う多孔セルの微細さと均一性(湿式成膜性)等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記の低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性は相反する物性であり、例えば、平坦性を重視し、研磨パッドの低圧縮率化を試みた場合、ウレタン樹脂が硬質化することとなり、スクラッチが悪化してしまうことが挙げられる。また、スクラッチを重視し、ウレタン樹脂を軟質化した場合には、水中での凝固が速やかに進行しなくなることで多孔セルの均一性が失われ、研磨の不安定化が起こる。このように、前記した全ての物性を高いレベルで成立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性に優れるウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及び、鎖伸長剤(c)を原料とするウレタン樹脂(X)を含有するウレタン樹脂組成物であって、パルスNMR測定法によるウレタン樹脂(X)の非晶相の存在比率が20~50%の範囲であり、かつ、結晶相の存在比率が20~50%の範囲であることを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記ウレタン樹脂組成物による多孔体を有することを特徴とする研磨パッドを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン樹脂組成物は、低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性に優れるものである。
【0010】
よって、本発明のウレタン樹脂組成物は、湿式成膜法により得られる多孔体を有する仕上げ研磨用研磨パッドとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)、及び、鎖伸長剤(c)を原料とするウレタン樹脂(X)を含有するものであり、低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性を高いレベルで成立させる上で、パルスNMR測定法によるウレタン樹脂(X)の非晶相の存在比率が20~50%の範囲であり、かつ、結晶相の存在比率が20~50%の範囲であることが必須である。
【0012】
一般に、ウレタン樹脂(X)は、ポリオール(a)からなるソフトセグメントと、ポリイソシアネート(b)及び鎖伸長剤(c)に由来するウレタン基やウレア基等から構成されるハードセグメントとから成ることが知られている。ここで、前記パルスNMR測定法により得られる「非晶相」とは、前記ソフトセグメントを示し、前記「結晶相」とは、前記ハードセグメントを示す。よって、このソフトセグメント及びハードセグメントのバランスを前記範囲に設定することによって、低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性を高いレベルで成立させることができる。なお、前記パルスNMRの測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0013】
前記パルスNMR測定法では、前記「非晶相」及び「結晶相」以外に、「中間相」と呼ばれる領域が存在する。これは、ソフトセグメントとハードセグメントとが混在する領域であり、ソフトセグメント及びハードセグメントがより相分離された構造に制御することで、中間相の存在比率を低くすることができる。
【0014】
本発明における、前記「非晶相」及び「結晶相」の前記した存在比率は、比較的高い割合として位置されており、これを同時に満たす数値範囲に制御する為には「中間相」の存在比率を如何にして減らすかが重要である。前記「非晶相」、及び「結晶相」の存在比率を係る範囲に設定し得る技術的思想としては、例えば、比較的分子量の高いポリオール(a)を原料として用いることでソフトセグメントの存在比率を高めること;比較的鎖長の短いポリイソシアネート(b)及び鎖伸長剤(c)を用いること;原料を反応させる順番を工夫することにより相分離構造を形成させやすくすることなどが挙げられる。
【0015】
前記パルスNMR測定法によるウレタン樹脂(X)の非晶相の存在比率としては、より一層優れた低圧縮率性、及び柔軟性が得られる点から、25~40%の範囲であることが好ましく、結晶相の存在比率としては25~40%の範囲であることが好ましい。
【0016】
前記ポリオール(a)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた湿式成膜性が得られる点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及び、ポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、及び/又は、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0017】
前記ポリオール(a)の数平均分子量としては、500~100,000の範囲であることが好ましく、700~10,000の範囲がより好ましく、800~5,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリオール(a)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0018】
前記ウレタン樹脂(X)を構成する原料中における、前記ポリオール(a)の使用割合としては、35~65質量%の範囲が好ましく、40~60質量%の範囲がより好ましい。
【0019】
前記ポリイソシアネート(b)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた湿式成膜性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイシソアネートがより好ましい。
【0020】
前記ウレタン樹脂(X)を構成する原料中における、前記ポリイソシアネート(b)の使用割合としては、より一層優れた低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性が得られる点から、30~45質量%の範囲が好ましく、35~40質量%の範囲がより好ましい。
【0021】
前記鎖伸長剤(c)は、分子量が500未満(好ましくは50~450の範囲)のものであり、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤;2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、1,7-ノナンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ノナンジオール、3-メチル-1,7-ノナンジオール、4-メチル-1,7-ノナンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、2-メチル-1,10-デカンジオール、3-メチル-1,10-デカンジオール、4-メチル-1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記鎖伸長剤(c)の分子量は、化学式から算出される化学式量を示す。
【0022】
前記ウレタン樹脂(X)を構成する原料中における、前記鎖伸長剤(c)の使用割合としては、5~20質量%の範囲が好ましく、5~15質量%の範囲がより好ましい。
【0023】
前記ウレタン樹脂(X)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)と前記鎖伸長剤(c)とを仕込み、反応させることによって製造する方法が挙げられる。これらの反応は、例えば、50~100℃の温度で3~10時間行うことが挙げられる。また、前記反応は、後述する有機溶剤(Y)中で行ってもよい。
【0024】
前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量としては、より一層優れた低圧縮率性、及び、湿式成膜性が得られる点から、12万~30万の範囲であることが好ましく、14万~25万の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0025】
前記ウレタン樹脂組成物中における前記ウレタン樹脂(X)の含有率としては、5~80質量%の範囲が挙げられる。
【0026】
前記有機溶剤(Y)としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等アルコール溶剤などを用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(X)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
【0028】
前記その他の添加剤としては、例えば、顔料、難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、界面活性剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ウレタン樹脂組成物により形成された皮膜の、クロスヘッドスピード300mm/分の条件での引張試験で得られる100%モジュラスとしては、より一層優れた柔軟性が得られる点から、7~20MPaの範囲であることが好ましく、9~16MPaの範囲がより好ましい。なお、前記皮膜の100%モジュラスの測定方法は、JISK:1995に準拠した方法により測定した値を示し、具体的には後述する実施例にて記載する。
【0030】
次に、前記ウレタン樹脂組成物を湿式成膜法により多孔体を製造する方法について説明する。
【0031】
前記湿式成膜法とは、前記ウレタン樹脂組成物を、基材表面に塗布または含浸し、次いで、該塗布面または含浸面に水や水蒸気等を接触させることによって前記ウレタン樹脂(X)を凝固させ多孔体を製造する方法である。
【0032】
前記ウレタン樹脂組成物を塗布する基材としては、例えば、不織布、織布、編み物からなる基材;樹脂フィルム等を用いることができる。前記基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維;綿、麻、絹、羊毛、これらの混紡繊維などを用いることができる。
【0033】
前記基材の表面には、必要に応じて制電加工、離型処理加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮断加工等の処理が施されていてもよい。
【0034】
前記基材表面に前記ウレタン樹脂組成物を塗布または含浸する方法としては、例えば、グラビアコーター法、ナイフコーター法、パイプコーター法、コンマコーター法が挙げられる。その際、ウレタン樹脂組成物の粘度を調整し塗工作業性を向上するため、必要に応じて、有機溶剤(Y)の使用量を調節してもよい。
【0035】
前記方法により塗布または含浸された前記ウレタン樹脂組成物の乾燥皮膜の厚さとしては、例えば、0.5~5mmの範囲であり、0.5~3mmの範囲が好ましい。
【0036】
前記ウレタン樹脂組成物が塗布または含浸され形成した塗布面に水または水蒸気を接触させる方法としては、例えば、前記ウレタン樹脂組成物からなる塗布層や含浸層の設けられた基材を水浴中に浸漬する方法;前記塗布面上にスプレー等を用いて水を噴霧する方法などが挙げられる。前記浸漬は、例えば5~60℃の水浴中に、2~20分行うことが挙げられる。
【0037】
前記多孔体は、常温の水や温水を用いてその表面を洗浄して有機溶剤(Y)を抽出除去し、次いで乾燥することが好ましい。前記洗浄は、5~60℃の水で20~120分行なうことが好ましく、洗浄に用いる水は1回以上入れ替えるか、あるいは、流水で連続して入れ替えるのが好ましい。前記乾燥は、80~120℃に調整した乾燥機等を用い、10~60分行うことが好ましい。
【0038】
前記多孔体は、面の厚さ方向に長い紡錘形または涙滴形の多孔構造を有する。前記孔の大きさとしては、面方向の幅が最も大きい部分で直径1~70μmの範囲であることが好ましい。前記多孔体の厚みは、0.4~1.2mmの厚さであることが、研磨パッド等の用途で使用するうえで好適であり、0.4~1mmの厚さがより好ましい。
【0039】
以上、本発明のウレタン樹脂組成物は、低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性に優れるものである。
【0040】
よって、本発明のウレタン樹脂組成物は、湿式成膜法により得られる多孔体を有する仕上げ研磨用研磨パッドとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0042】
[実施例1]
攪拌機、温度計、及び、窒素ガス導入管を有する4ツ口フラスコに、ポリエステルポリオール(エチレングリコール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「PEs(1)」と略記する。)100質量部、1,4-ブタンジオール(以下「BG」と略記する。)20質量部、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と略記する。)564質量部、及び、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)68質量部を投入し、撹拌下60℃で6時間反応させ、引き続きイソプロピルアルコール1質量部を投入し、更に60℃で1時間撹拌することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、188,100であった。
【0043】
[実施例2~5、比較例1~3]
表1~2に示す通りに、材料の種類及び量を変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0044】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量、及び、ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0045】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0046】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0047】
[100%モジュラスの測定方法]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物100質量部に、DMF40質量部を配合した配合液を、フラット離型紙(リンテック株式会社製「EK-100D」)上に乾燥後の膜厚が30μmとなるように塗布し、90℃で2分間、更に120℃で2分間乾燥させて皮膜を作製した。次いで、得られた皮膜を幅5mm、長さ70mmの短冊状に裁断し、オートグラフ(株式会社島津製作所製「AG-1KNX」)を使用して、クロスヘッドスピード300mm/分の条件にて、100%モジュラス(MPa)を測定した。
【0048】
[パルスNMRの測定方法]
前記[100%モジュラスの測定方法]にて得られた皮膜について、以下の条件によりパルスNMR(核磁気共鳴)測定法により、非晶相、結晶相、及び、中間相の存在比率(%)を測定した。
【0049】
測定方法:パルスNMR測定によるSolid Echo法
測定装置:日本電子株式会社製「JNM-MU25」
測定条件:1H90 Pulse:2.9μS
繰り返し時間:3s
積算回数:32回
測定温度:27℃
【0050】
[湿式成膜性の評価方法]
得られたウレタン樹脂組成物100質量部を、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上に厚さ1mmとなるように塗布してから25℃の水に10分漬けて、凝固させた。その後、50℃の温水中で60分洗浄し、100℃乾燥機中に30分放置することにより加工フィルムを得た。得られた加工フィルムの断面状態を、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡「JSM-IT500」(倍率:100倍)で観察し、セル形状(細さ、均一性)を確認し、最大横幅が70μm以下のセルが全体の60%を占めていれば「○」、それ以外は「×」と評価した。
【0051】
[圧縮率の評価方法]
前記[湿式成膜性の評価方法]で得られた加工フィルムについて、JISL-1021-6に準拠して圧縮率評価を行った。具体的には、初荷重2kPaを30秒間かけた後の「標準圧力下における厚さ:t0」を測定し、次に、最終荷重98kPaの荷重を30秒間かけた後の「一定圧力下における厚さ:t1」を測定し、これを下記の式に適用して圧縮率を算出した。
圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0
これによって求められた圧縮率が20%以下であれば「○」、それ以外は「×」と評価した。
【0052】
[柔軟性の評価方法]
前記[100%モジュラスの測定方法]で得られた加工フィルムについて、JISK7244-1999に準拠した下記条件での動的粘弾性分析により、23℃のおける貯蔵弾性率(E’)を測定し、E’が200MPa以下であれば「○」、それ以外を「×」とした。
【0053】
測定装置:粘弾性スペクトロメータ(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「DMS6100」)
温度範囲:-100~250℃
昇温速度:5℃/分
周波数1Hz、引張モード
【0054】
【0055】
【0056】
表1~2中における略語について説明する。
「PEs(2)」;1,4-ブタンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000
「PEs(3)」;エチレングリコール、1,4-ブタンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000
「PEs(4)」;1,6-ヘキサンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000
「PEs(5)」;1,4-ブタンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;1,000
「PTMG」;ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量;2,000
「EG」;エチレングリコール
表中の使用量は質量部を示す。
構成原料中におけるポリイソシアネート(b)の使用割合(質量%)は、小数点第一位を四捨五入した値を示す。
【0057】
本発明のウレタン樹脂組成物は、耐オレイン酸性、低圧縮率性、柔軟性、及び、湿式成膜性に優れることが分かった。
【0058】
一方、比較例1は、非晶相の存在比率が本発明で規定する範囲を下回り、かつ、結晶相の存在比率が本発明で規定する範囲を超える態様であるが、柔軟性が不良であった。
【0059】
比較例2は、非晶相の存在比率が本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、低圧縮率性が不良であった。
【0060】
比較例3は、非晶相の存在比率が本発明で規定する範囲を超え、かつ、結晶相の存在比率が本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、低圧縮率性、及び、湿式成膜性が不良であった。