(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる吸着・吸収剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20230627BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230627BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230627BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20230627BHJP
C08J 3/14 20060101ALI20230627BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20230627BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B01J20/26 J
B01J20/26 A
B01J20/28 Z
C02F1/28 A
C02F1/28 N
C02F1/40 E
C08J3/14 CEV
C08J9/26 102
G10K11/162
(21)【出願番号】P 2019021275
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018159567
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 将一
(72)【発明者】
【氏名】山本 和明
(72)【発明者】
【氏名】松永 敬浩
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-108294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔率が50~95%の範囲内であり、ビーズ内部に中空部を有し、ビーズ表面から中心に一部の孔径が0.002~0.2μmの範囲にある連続孔を有し、その連続孔の細孔容積が0.03cm
3/g以上であり、且つ、ビーズ内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積が、多孔質ビーズの体積に対し0.01~30体積%であるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる有機物吸着・吸収剤。
【請求項2】
請求項1に記載の有機物が、液状の有機物、水に浮遊・沈降又は水中に分散した状態の有機物、水に溶解した水溶液中の有機物、又は水中に安定に分散した状態の有機物であることを特徴とする
請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる有機物吸着・吸収剤。
【請求項3】
請求項1に記載の有機物が、ガス及び/又はミスト状の有機物であることを特徴とする
請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる有機物吸着・吸収剤。
【請求項4】
請求項1に記載の有機物が、炭化水素系有機物、アルコール系有機物、ハロゲン系有機物、アミン系有機物、カルボン酸系有機物、ニトロ系有機物、エーテル系有機物、アルデヒド系有機物、ケトン系有機物、鉱油性油、又は植物油であることを特徴とする
請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる有機物吸着・吸収剤。
【請求項5】
有機物の吸着・吸収及び脱着が可能な
請求項1に記載のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの吸着・吸収用途に関する。更に詳細には、外層から中心にかけて微細な連続孔を有し、中心部に中空部を有する空孔率の高いポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの有機物吸着・吸収剤、吸音材、遮熱剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質高分子材料は、分離、吸着、吸水機能、触媒固定・担持機能、断熱・緩衝性、絶縁性、吸音性、軽量性など、様々な機能や特性を有している。そのため、分離機能性や吸着性から、膜・フィルム状の分離膜や医療材料、粒状の濾過材や吸着材、軽量性や緩衝性から梱包・包装材料、断熱性から建築資材や保温材、吸音性から吸音材料、など幅広い用途で有用である。
【0003】
また、高分子材料として塩化ビニル系重合体は、耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性に優れており、安価であるため汎用材料として有用である。
【0004】
油田や石油化学プラント、工場からの排水等には有機物の汚染物質が含まれることがある。これらの有機物含有汚染水を河川や海等に直接排出するには、環境面から汚染水中の有機物の除去が必要である。この有機物含有汚染水からの有機物を吸着・吸収して除去する方法としては、例えば、活性炭による吸着・吸収が挙げられる。活性炭に代表される多孔質炭素は、吸着特性を利用し、従来から液中の有機物の吸着・吸収による除去やガスの吸着など、広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸着又は吸収用途において、粒径が小さすぎると圧力損失が大きくなり、空孔率が低い、又は、連続孔を有していないと吸着又は吸収効率が低下する。また、有機物を含む排水がエマルションである場合、あるいは排水中の有機物濃度が低い場合には、排水から有機物を十分に吸着・吸収することは困難である。
【0007】
特許文献1に開示された活性炭や活性コークスは、排水中の有機物の吸着・吸収剤としては必ずしも十分ではない。
【0008】
本発明の目的は、ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズによる有機物の吸着・吸収用途に関する。更に詳細には、ビーズ表面から中心にかけて微細な連続孔を有し、ビーズ内部に中空部を有する空孔率の高いポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる有機物吸着・吸収剤、吸音材、遮熱剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ塩化ビニル樹脂からなる多孔質ビーズであって、特に、空孔率が50~95%の範囲内であり、ビーズ内部に中空部を有し、ビーズ表面から中心に一部の孔径が0.002~0.2μmの範囲にある連続孔を有し、その連続孔の細孔容積が0.03cm3/g以上であり、且つ、ビーズ内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積が、多孔質ビーズの体積に対し0.01~30体積%であるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズがそれらの用途に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
[1]ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる有機物吸着・吸収剤。
【0011】
[2]空孔率が50~95%の範囲内であり、ビーズ内部に中空部を有し、ビーズ表面から中心に一部の孔径が0.002~0.2μmの範囲にある連続孔を有し、その連続孔の細孔容積が0.03cm3/g以上であり、且つ、ビーズ内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積が、多孔質ビーズの体積に対し0.01~30体積%であるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなることを特徴とする有機物吸着・吸収剤。
【0012】
[3]前記[1]又は[2]に記載の有機物が、液状の有機物、水に浮遊・沈降又は水中に分散した状態の有機物、水に溶解した水溶液中の有機物、又は水中に安定に分散した状態の有機物であることを特徴とする有機物吸着・吸収剤。
【0013】
[4]前記[1]又は[2]に記載の有機物が、ガス及び/又はミスト状の有機物であることを特徴とする有機物吸着・吸収剤。
【0014】
[5]前記[1]又は[2]に記載の有機物が、炭化水素系有機物、アルコール系有機物、ハロゲン系有機物、アミン系有機物、カルボン酸系有機物、ニトロ系有機物、エーテル系有機物、アルデヒド系有機物、ケトン系有機物、鉱物性油、又は植物性油であることを特徴とする有機物吸着・吸収剤。
【0015】
[6]ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる吸音材。
【0016】
[7]ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる遮熱剤。
【0017】
[8]有機物の吸着・吸収及び脱着が可能なポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズ。
に関する。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの空孔率は50~95%の範囲内であり、70~95%の範囲内であることが好ましく、80~95%の範囲内であることがより好ましい。空孔率が50%より高ければ、濾過材や吸着剤としての性能に優れる点で好ましい。
【0020】
本発明で規定するポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの空孔率(P)は、下記式に従い、全細孔容積(Vp)とポリ塩化ビニル樹脂の比重により求められる。
【0021】
【0022】
(式中、Pは多孔質ビーズの空孔率(%)を表し、Vpは多孔質ビーズの全細孔容積(cm3/g)を表し、ρPVCはポリ塩化ビニル樹脂の比重を表す)
また、本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂多孔質ビーズの全細孔容積Vpは、乾燥した多孔質ビーズ約0.2gの重量を測定し、乾燥時の重量(W0)とし、重量測定したビーズ全量を25℃のメタノール100mLに添加して、48時間静置した。次に、細孔内に十分にメタノールが含浸したポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを取出し、乾燥した濾紙に広げて、表面の余分なメタノールを取り、重量を測定し、メタノール含浸時の重量(W1)とした。多孔質ビーズの乾燥時の重量(W0)とメタノール含浸時の重量(W1)及びメタノールの比重(25℃)を用いて、下記式に従いポリ塩化ビニル樹脂多孔質ビーズの全細孔容積(Vp)を求めた。
【0023】
【0024】
(式中、Vpは多孔質ビーズの全細孔容積(cm3/g)を表し、W0は多孔質ビーズの乾燥時の重量(g)を表し、W1は多孔質ビーズのメタノール含浸時の重量(g)を表し、ρMeOHはメタノールの比重を表す)
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、ビーズ内部に中空部を有する。中空部は、ビーズ内部に複数位置し、特に限定するものではないが、例えば、10~1500μmの孔径を有しており、機械的強度に優れる点で孔径が10~500μmであることが好ましい。
【0025】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、ビーズ表面から中心部に位置する中空部まで微細な連続孔を有する。そして、微細な連続孔の一部の孔径は0.002~0.2μmの範囲にある。
【0026】
連続孔の存在は、本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの割断面と表面のSEM写真及びガス吸着法による細孔分布測定結果から確認することができる。
【0027】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、その連続孔の細孔容積が0.03cm3/g以上である。そして、吸着又は吸収用途において毛管凝縮が起こり易い0.002~0.05μmのメソ孔を含む、孔径0.002~0.2μmの細孔を外層に有することは、有機物の選択的吸着・吸収等に優れることを意味する。
【0028】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの連続孔の細孔容積は、定容量式ガス吸着法による細孔分布測定装置(マイクロトラック社製、BELSORP-miniII)により吸着等温線を測定し、BJH法による解析により求めた。
【0029】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの形状は、実質的に球状であり、真球度については、特に限定するものではないが、例えば、多孔質ビーズの最長径と最短径の比が1~2の範囲を挙げることができ、形状の均一性に優れる点で、1~1.5であることが好ましい。
【0030】
また、本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの大きさは、特に限定するものではないが、例えば、ビーズ径0.1~10mmの範囲を挙げることができるが、生産性や取扱いに優れる点でビーズ径は0.5~5mmが好ましい。
【0031】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積は、多孔質ビーズの体積に対し0.01~30体積%を有する。平均空間容積が0.01体積%未満の場合は空孔率が下がり、30体積%を超えると強度が低下する。空孔率を維持し、機械的強度に優れる点で、平均空間容積は、0.01~30体積%であることが好ましく、0.05~20体積%であることがより好ましい。
【0032】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積は、SEM写真を用いて中空部の最長直径と最短直径を測定し、その平均値を中空直径とし、平均空間容積を計算した。
【0033】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの原料としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は400~4000の範囲を挙げることができ、溶媒への溶解性が優れる点では、400~2000であることが好ましいが、細孔の熱安定性を向上させる点では、1000~4000であることが好ましく、用途に応じて平均重合度を選択すればよい。また、平均重合度の異なる2種類以上のポリ塩化ビニル樹脂を混合して供してもよい。
【0034】
前記ポリ塩化ビニル樹脂には、安定剤が含まれていてもよく、安定剤としては、特に限定するものではないが、例えば、鉛、バリウム、亜鉛、カルシウム、錫などの有機酸塩、無機酸塩等が挙げられる。より具体的には、前記有機酸塩としては、特に限定するものではないが、例えば、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ジラウリン酸ジブチル錫、マレイン酸ジブチル錫等が挙げられる。また、無機酸塩としては、特に限定するものではないが、例えば、塩基性硫酸鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性亜リン酸鉛等が挙げられる。これらの安定剤は、単独もしくは2種以上を併用しても構わない。
【0035】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの製造方法は、ポリ塩化ビニル樹脂を良溶媒に加熱溶解し、ポリ塩化ビニル樹脂溶液を得る工程において、良溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ジメチルアセトアミド、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサノン、o-ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、及び1,1,2,2-テトラクロロエタン等が挙げられる。これらの良溶媒の中で、ポリ塩化ビニル樹脂の溶解性に優れる点で、ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0036】
また、ポリ塩化ビニル樹脂を良溶媒に加熱溶解する温度としては、良溶媒の沸点以下であればよく、特に限定するものではないが、10~100℃の範囲を挙げることができ、生産性の観点から20~80℃が好ましい。更に溶解の方法としては、特に限定するものではないが、撹拌、ポンプ循環、振とう、超音波処理等が挙げられる。
【0037】
ポリ塩化ビニル樹脂を良溶媒に加熱溶解し、ポリ塩化ビニル樹脂溶液を得る工程において、ポリ塩化ビニル樹脂溶液の濃度としては、特に限定するものではないが、例えば、1~50重量%の範囲が挙げられる。濃度が1重量%未満であると液滴化した後、形状を維持することが難しく、ビーズ強度も低下する。また、濃度が50重量%より高いとポリ塩化ビニル樹脂溶液の粘度が増加するため、液滴を形成することが困難になる。液滴形成が容易で、生産性に優れている観点から、ポリ塩化ビニル樹脂溶液の濃度は、3~50重量%が好ましく、5~30重量%がより好ましい。
【0038】
前記工程で得られたポリ塩化ビニル樹脂溶液の液滴を形成する工程において、液滴形成方法としては、特に限定するものではないが、例えば、撹拌、回転噴霧、スプレー噴霧、振動式滴下、自然滴下が挙げられる。液滴形成方法は、均一な多孔質ビーズを得ることができる点で、振動式滴下、自然滴下が好ましく、生産性の観点で振動式滴下がより好ましい。
【0039】
ポリ塩化ビニル樹脂溶液の液滴を形成する工程において、液滴を形成する温度としては、液滴が形成できればよく、特に限定するものではないが、0~100℃の範囲を挙げることができ、生産性の観点から20~80℃が好ましい。
【0040】
前記工程で得られた液滴を、水を含む貧溶媒に浸漬させ、樹脂を固化する工程において、貧溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ-プロパノール、ブタノール等が挙げられ、汎用性の観点から、メタノールが好ましい。
【0041】
また、液滴を貧溶媒中で固化する方法において、特に限定するものではないが、静置、撹拌のいずれでもよい。液滴を球状として固化する点で、撹拌することが好ましい。
【0042】
ここで、水を含む貧溶媒の水の割合としては、特に限定するものではないが、例えば0.1~80重量%までの範囲を挙げることができ、多孔質ビーズの成形が容易で、吸着性能が向上する孔径0.002~0.2μmの孔の生成に優れる点で、3~70重量%であることが好ましい。
【0043】
液滴を、水を含む該貧溶媒に浸漬させ、樹脂を固化する工程において、樹脂を固化する温度としては、良溶媒の凝固点よりも高く、ポリ塩化ビニル樹脂のガラス転移温度より低ければよい。特に限定するものではないが、-15~50℃の範囲を挙げることができ、生産性に優れる点で、-5~50℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。樹脂を固化する時間としては、特に限定するものではないが、成形性に優れる点で、0.25時間以上であることが好ましい。
【0044】
前記工程で得られた固化した樹脂を該良溶媒と水と該貧溶媒との混合物から分離する工程において、前処理として、固化した樹脂内に含まれる良溶媒と貧溶媒を置換する溶媒置換を行うことが好ましい。溶媒置換としては、固化した樹脂を新しい貧溶媒に浸漬する。このとき撹拌しても静置でもどちらでもよいが、置換効率に優れる点で、撹拌することが好ましい。また、溶媒置換の時間としては、特に限定するものではないが、置換効率に優れる点で、0.5時間以上であることが好ましい。また、溶媒置換の温度としては、ポリ塩化ビニル樹脂のガラス転移温度よりも低ければ、特に限定するものではないが、-15~70℃の範囲を挙げることができる。生産性に優れる点で、0~50℃が好ましく、10~40℃がより好ましい。
【0045】
固化した樹脂を該良溶媒と水と該貧溶媒との混合物から分離する工程において、前処理の溶媒置換後の分離方法は任意であり、例えば、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過、デカンテーション、遠心デカンテーション、減圧乾燥、加熱乾燥、自然乾燥等の方法をいくつか組み合わせて用いることが可能である。また、その際の温度は、ポリ塩化ビニル樹脂のガラス転移温度よりも低ければ、特に限定するものではないが、-15~70℃の範囲を挙げることができる。生産性に優れる点で、0~50℃が好ましく、更には本発明の特徴である多孔質ビーズが形成する点で、10~40℃がより好ましい。
【0046】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズに吸着・吸収される有機物としては、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン系有機物、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系有機物、エチレンジアミン、トリエチルアミン等のアミン系有機物、酢酸、メタクリル酸等のカルボン酸系有機物、ニトロベンゼン等のニトロ系有機物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機物、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド系有機物、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系有機物、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系有機物、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系有機物、軽油、A重油、B重油、C重油等の鉱物性油、菜種油、ゴマ油等の植物性油の有機物が挙げられる。
【0047】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを吸着・吸収剤として使用する温度としては、液吸着・吸収であれば有機物の沸点以下、ガス吸着・吸収であれば有機物の沸点以上であればよく、特に限定するものではないが、液吸着・吸収であれば操作性の観点から大気圧下で操作できる温度であることが好ましい。
【0048】
本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズに吸着・吸収される有機物としては、液状の有機物、水に浮遊・沈降又は水中に分散した状態の有機物、水に溶解した水溶液中の有機物、又は水中に安定に分散した状態の有機物のいずれかの状態であることを意味する。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、有機物の吸着・吸収効率が高いポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズからなる吸着・吸収剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】合成例1で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズ断面のSEM写真(倍率:30倍)である。
【
図2】合成例1で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズ表面のSEM写真(倍率:5万倍)である。
【
図3】合成例1で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズ断面の外殻部分近傍のSEM写真(倍率:1万倍)である。
【
図4】実施例1及び比較例1、比較例2、比較例3で行ったクロロホルムの吸収テストの結果である。
【
図5】実施例2、実施例3、実施例4、実施例5及び比較例4で行った各種有機物の吸収テストの結果である。
【
図6】実施例9で行ったn-ヘキサンの繰り返し吸収テストの結果である。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されて解釈されるものではない。ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、以下に示す方法により評価した。
【0052】
[走査型電子顕微鏡(SEM)による観測]
ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズのSEMによる観測は、JEOL製JSM-6390LVにより行った。
【0053】
ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの断面の観測は、乾燥した多孔質ビーズをエタノールに浸漬し、次いで、エタノールが含浸した多孔質ビーズを液体窒素で凍結し、更に、凍結した多孔質ビーズを剃刀で割断した断面を試料とした。
【0054】
[中空部の平均空間容積]
ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積は、SEM写真を用いて中空部の最長直径と最短直径を測定し、その平均値を中空直径とし、平均空間容積を計算した。
【0055】
[ビーズ径]
SEM写真を用いてポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの最長直径と最短直径を測定し、その平均値をビーズ径とした。
【0056】
[全細孔容積]
ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの全細孔容積は、乾燥した多孔質ビーズ約0.2gの重量を測定し、乾燥時の重量(W0)とし、重量測定したビーズ全量を25℃のメタノール50mLに添加して、48時間静置した。次に、細孔内に十分にメタノールが含浸したポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを取出し、乾燥した濾紙に広げて、表面の余分なメタノールを取り、重量を測定し、メタノール含浸時の重量(W1)とした。多孔質ビーズの乾燥時の重量(W0)とメタノール含浸時の重量(W1)及びメタノールの比重(25℃)を用いて、下記式に従いポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの全細孔容積(Vp)を求めた。
【0057】
【0058】
(式中、Vpは多孔質ビーズの全細孔容積(cm3/g)を表し、W0は多孔質ビーズの乾燥時の重量(g)を表し、W1は多孔質ビーズのメタノール含浸時の重量(g)を表し、ρMeOHはメタノールの比重を表す)
[空孔率]
ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの空孔率(P)は、下記式に従い、全細孔容積(Vp)とポリ塩化ビニル樹脂の比重により求めた。
【0059】
【0060】
(式中、Pは多孔質ビーズの空孔率(%)を表し、Vpは多孔質ビーズの全細孔容積(cm3/g)を表し、ρPVCはポリ塩化ビニル樹脂の比重を表す)
[0.002~0.2μmの細孔容積の測定]
0.002~0.2μmの細孔容積は、定容量式ガス吸着法による細孔分布測定装置(マイクロトラック社製、BELSORP-miniII)により吸着等温線を測定し、BJH法による解析により求めた。
【0061】
合成例1
ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、グレードTH-1700、平均重合度1600-1800)10gをジメチルアセトアミド90gに加え、70℃で撹拌し、ポリ塩化ビニル樹脂溶液10重量%を調製した。200mLのガラス容器にエタノール72gと水48gを混合して、水/エタノール混合溶液(水の割合40重量%)を調製した。70℃のポリ塩化ビニル樹脂溶液5gを10℃の該水/エタノール混合溶液(水の割合40重量%)に滴下し、液滴を30分間撹拌して凝固させた。凝固した液滴を取出し、新しいエタノール100gに入れ、18時間室温で静置した。エタノールを濾過により除去し、濾過物を室温下で6時間減圧乾燥を行い、ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを得た。得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、ビーズ直径2.5mm、空孔率90%、細孔容積(0.002~0.2μm領域)0.28cm
3/g、ビーズ内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積が、多孔質ビーズの体積に対し0.17体積%を有するものであった。得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの断面のSEM写真(倍率:30倍)を
図1、表面のSEM写真(倍率:5万倍)を
図2、外殻部分近傍のSEM写真(倍率:1万倍)を
図3に示す。
【0062】
実施例1
クロロホルム50mLの中に、合成例1で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを0.02g加え、25℃で静置した。所定時間後に取出し、クロロホルム含浸多孔質ビーズの重量を測定した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とクロロホルム吸収重量の差から、クロロホルム吸収量を求めた。含浸開始から20時間後の結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの代わりに、ポリ塩化ビニル樹脂製ペレットを0.3g使用した以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、クロロホルムを吸収させた。使用したポリ塩化ビニル樹脂の乾燥重量とクロロホルム吸収重量の差から、クロロホルム吸収量を求めた。含浸開始から20時間後の結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの代わりに、ポリエチレン製ペレット(東ソー社製、ペトロセン222)0.3gを使用した以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、クロロホルムを吸収させた。使用したポリエチレンペレットの乾燥重量とクロロホルム吸収重量の差から、クロロホルム吸収量を求めた。吸収開始から20時間後の結果を表1に示す。
【0065】
比較例3
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの代わりに、アンバーライトXAD1180N(ダウ・ケミカル社製)0.3gを使用した以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、クロロホルムを吸収させた。使用したアンバーライトの乾燥重量とクロロホルム吸収重量の差から、クロロホルム吸収量を求めた。吸収開始から20時間後の結果を表1に示す。
【0066】
合成例2
ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、グレードTH-3800、平均重合度3500-4100)5gをジメチルアセトアミド95gに加え、70℃で撹拌し、ポリ塩化ビニル樹脂溶液5重量%を調製した。200mLのガラス容器にエタノール36gと水84gを混合して、水/エタノール混合溶液(水の割合70重量%)を調製した。70℃のポリ塩化ビニル樹脂溶液5gを10℃の該水/エタノール混合溶液(水の割合70重量%)に滴下し、液滴を60分間撹拌して凝固させた。凝固した液滴を取出し、新しいエタノール100gに入れ、18時間室温で静置した。エタノールを濾過により除去し、濾過物を室温下で6時間減圧乾燥を行い、ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを得た。得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、ビーズ直径2.5mm、空孔率94%、細孔容積(0.002~0.2μm領域)0.19cm3/g、ビーズ内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積が、多孔質ビーズの体積に対し0.05体積%を有するものであった。
【0067】
実施例2
クロロベンゼン15gを含む水60gを100mLのスクリュー管に加え、よく振とうした後、合成例2で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを0.5g加え、20℃でロータリーシェーキングバス(アズワン製、SBR-13)を用いて振とうした。所定時間後に取出し、吸収した多孔質ビーズの重量を測定した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とクロロベンゼン吸収重量の差から、クロロベンゼン吸収量を求めた。振とう開始から240分後の結果を表2に示す。
【0068】
実施例3
実施例2のクロロベンゼンの代わりに、トルエン15gを使用した以外は、実施例2に記載した方法と同様にして実施した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とトルエン吸収重量の差から、トルエン吸収量を求めた。振とう開始から240分後の結果を表2に示す。
【0069】
実施例4
実施例2のクロロベンゼンの代わりに、n-ヘキサン15gを使用した以外は、実施例2に記載した方法と同様にして実施した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とn-ヘキサン吸収重量の差から、n-ヘキサン吸収量を求めた。振とう開始から240分後の結果を表2に示す。
【0070】
実施例5
実施例2のクロロベンゼンの代わりに、クロロホルム15gを使用した以外は、実施例2に記載した方法と同様にして実施した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とクロロホルム吸収重量の差から、クロロホルム吸収量を求めた。振とう開始から240分後の結果を表2に示す。
【0071】
比較例4
ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズの代わりに、市販の円柱状活性炭(クラレケミカル製、4GS)0.5gを使用した以外は、実施例2に記載した方法と同様にして実施した。使用した活性炭の乾燥重量とクロロベンゼン吸収重量の差から、クロロベンゼン吸収量を求めた。振とう開始から240分後の結果を表2に示す。
【0072】
実施例6
直径23mm×長さ200mmの円筒形カラムに、実施例1に記載のポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを70mL充填し、濃度97mg/Lのクロロベンゼン水溶液を25mL/hrの速度で5日間連続通液した。カラム通過後の水溶液中のクロロベンゼンの濃度を、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-2014)を用い、内部標準添加法(内標物はメタノール)で定量測定した。その結果、カラム通過後の水溶液にクロロベンゼンのピークは検出(1mg/L未満)されず、実質的にクロロベンゼンの濃度はゼロであった。本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズによって、有機物が吸着・吸収除去できることが確認された。
【0073】
実施例7
実施例6において、濃度97mg/Lのクロロベンゼン水溶液の代わりに、濃度420mg/Lのクロロベンゼン水溶液を使用し、25mL/hrの速度で1日間連続通液に変更した以外は、実施例6に記載した方法と同様にして実施した。その結果、カラム通過後の水溶液にクロロベンゼンのピークは検出(1mg/L未満)されず、実質的にクロロベンゼンの濃度はゼロであった。本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズによって、有機物が吸着・吸収除去できることが確認された。
【0074】
実施例8
トルエン2gを含む水200gに、界面活性剤として合成洗剤(ライオン社製、チャーミーグリーン(登録商標))0.2gを加えたものを500mLのサンプル瓶に入れ、よく振とうした後、超音波分散器(アズワン製、USD-4R、600W)で1時間分散させ、白濁した分散液を得た。得られたトルエン/水/界面活性剤の分散液は、光学顕微鏡(アズワン製、DN107T)で観察した結果、10μm程度の液滴を確認した。直径23mm×長さ200mmの円筒形カラムに、合成例2で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを2g充填し、濃度9891mg/Lのトルエン/水/界面活性剤の分散液を200mL通液した。カラム通過後の分散液中のトルエンの濃度を、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-2014)を用い、内部標準添加法(内標物はt-ブタノール)で定量測定した。その結果、カラム通過後の分散液にトルエンのピークは検出(1mg/L未満)されず、実質的にトルエンの濃度はゼロであった。また、カラム通過後の分散液(無色透明)を光学顕微鏡で観察した結果、10μm程度の液滴は消失していた。本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズによって、界面活性剤を添加した分散液の形態からトルエンを吸着・吸収除去できることが確認された。
【0075】
実施例9
n-ヘキサン50mLの中に、合成例2で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを0.02g加え、25℃で静置した。18時間後に取出し、n-ヘキサン含浸多孔質ビーズの重量を測定した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とn-ヘキサン含浸多孔質ビーズの重量の差から、n-ヘキサン吸収量を求めた結果、9.5cm3/gであった。含浸多孔質ビーズは、風乾(25℃、大気圧)により10分でn-ヘキサンが完全脱離することを確認できた。乾燥後の多孔質ビーズを、再度n-ヘキサン50mLの中に加え、25℃で静置した。18時間後に取り出し、2回目のn-ヘキサン吸収量を求めた結果、初回と同等の9.5cm3/gであった。また、含浸多孔質ビーズは、風乾(25℃、大気圧)により10分でn-ヘキサンが完全脱離することを確認できた。乾燥後の多孔質ビーズを、再度n-ヘキサン50mLの中に加え、25℃で静置した。18時間後に取り出し、3回目のn-ヘキサン吸収量を求めた結果、初回、2回目と同等の9.5cm3/gであった。本発明におけるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、n-ヘキサンを吸着・吸収し、脱離することで繰り返し使用できることが確認された。
【0076】
合成例3
ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、塩ビホモポリマー、グレードTH-1700、平均重合度1600-1800)11.5gをジメチルアセトアミド88.5gに加え、70℃で撹拌し、ポリ塩化ビニル樹脂溶液11.5重量%を調製した。200mLのガラス容器にメタノール80gと水20gを混合して、水/メタノール混合溶液(水の割合20重量%)を調製した。70℃のポリ塩化ビニル樹脂溶液5gを30℃の該水/メタノール混合溶液(水の割合20重量%)に滴下し、液滴を30分間撹拌して凝固させた。凝固した液滴を取出し、新しいメタノール100gに入れ、18時間室温で静置した。メタノールを濾過により除去し、濾過物を室温下で6時間減圧乾燥を行い、ポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズを得た。得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、ビーズ直径2.4mm、空孔率87%、細孔容積(0.002~0.2μm領域)0.45cm3/g、ビーズ内部に位置する複数の中空部のうちビーズ中心部に位置する中空部の平均空間容積が、多孔質ビーズの体積に対し0.30体積%を有するものであった。
【0077】
実施例10
デシケーター(アズワン製、乾燥ガラス器、φ210mm)内の下部にメタノール100gを加え、蓋を閉じて室温で1日静置した。次に、デシケーターの蓋を開けた後、合成例3で得られたポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズ0.0145gをデシケーター内の上部の網棚にメタノールに接触しないように加え、蓋を閉じた後、室温で1日静置した。その後、メタノール吸着・吸収した多孔質ビーズを取出し、重量を測定した。使用した多孔質ビーズの乾燥重量とメタノール吸着・吸収重量の差から、メタノール吸着・吸収量を求めた。メタノール吸着・吸収した多孔質ビーズの重量は0.0196gであり、増加した重量より0.44cm3/gのメタノールを吸着・吸収していることを確認した。
【0078】
【0079】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明で用いるポリ塩化ビニル樹脂製多孔質ビーズは、耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性に優れ、外層から中心にかけて微細な連続孔を有し、ビーズ内部に中空部を有し、空孔率が高いため、各種有機物の吸着・吸収剤、自動車用又は建築材用の吸音材や遮熱剤としての用途が期待される。