(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230627BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20230627BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20230627BHJP
H10B 41/30 20230101ALI20230627BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20230627BHJP
【FI】
H01L29/78 371
H10B41/30
H10B41/70
(21)【出願番号】P 2019069319
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】柴口 拓
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-110073(JP,A)
【文献】特開2016-136622(JP,A)
【文献】特開2005-175411(JP,A)
【文献】特開2002-094029(JP,A)
【文献】特開平03-206661(JP,A)
【文献】特開2005-026696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
H10B 41/30
H10B 41/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置された不揮発性メモリセルと、を備え、
前記不揮発性メモリセルは、データ書き込み用電界効果トランジスタ、及び前記データ書き込み用電界効果トランジスタに隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタを含み、
前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタは、それぞれ、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された浮遊ゲートと、前記半導体基板の厚さ方向から見て前記浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層と、を有し、
前記拡散層は、前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタに共有されており、
前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜の厚み
が、前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜の厚み
よりも小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜が、酸化膜又は酸窒化膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜の厚みが4nm~10nmであり、前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜の厚みが2nm~4nmである、請求項1
又は請求項
2に記載の半導体装置。
【請求項4】
データ書き込み用電界効果トランジスタ、及び前記データ書き込み用電界効果トランジスタに隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタを含む不揮発性メモリセルを備えた半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域に、前記データ書き込み用電界効果トランジスタにおけるゲート絶縁膜の厚さ方向の一部を構成するための第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1絶縁膜のうち、前記データ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域における前記第1絶縁膜を除去する第1絶縁膜一部除去工程と、
前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域に、前記第1絶縁膜とともに
前記データ書き込み用電界効果トランジスタにおける前記ゲート絶縁膜を構成し、かつ、前記
データ読み出し用電界効果トランジスタにおけるゲート絶縁膜を構成する第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、
前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜上及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜上のそれぞれに浮遊ゲートを形成する工程と、
前記半導体基板の厚さ方向から見て、前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成
し、かつ、前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成
し、前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタに共有される拡散層を形成する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1絶縁膜形成工程において形成する前記第1絶縁膜の厚みが、前記第2絶縁膜形成工程において形成する前記第2絶縁膜の厚みよりも大きい、請求項
4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜として、酸化膜又は酸窒化膜を形成する、請求項
4又は請求項
5項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1回だけ書き込み可能な(OTP:One Time Programmable)不揮発性メモリに対し、書き換え可能な(MTP:Multi Time Programmable)不揮発性メモリが知られている。
MTP不揮発性メモリセルの使用例として、Si半導体製品の製造番号のように比較的小容量の情報を記憶するための不揮発性メモリ回路部や、近年ではアパレルや商品流通に使用されるRF(Radio Frequency)タグの置き換えとして不揮発性メモリ回路部を有するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の不揮発性メモリセルをアレイ状に配置し、各ビット毎にメモリセル選択用の電界効果トランジスタが電気的に接続された不揮発性メモリが開示されている。この不揮発性メモリセルは、データ書き込み用の電界効果トランジスタと、データ読み出し用の電界効果トランジスタと、容量部とを有しており、データ書き込み用の電界効果トランジスタおよびデータ読み出し用の電界効果トランジスタのゲート電極は、同じ浮遊ゲート電極の一部で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、データ書き込み用の電界効果トランジスタとデータ読み出し用電界効果トランジスタを備え、各電界効果トランジスタに適した特性を発揮することができる不揮発性メモリを備えた半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、半導体基板と、
前記半導体基板上に配置された不揮発性メモリセルと、を備え、
前記不揮発性メモリセルは、データ書き込み用電界効果トランジスタ、及び前記データ書き込み用電界効果トランジスタに隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタを含み、
前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタは、それぞれ、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された浮遊ゲートと、前記半導体基板の厚さ方向から見て前記浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層と、を有し、
前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜の厚みと、前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜の厚みとが異なる。
【0007】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、データ書き込み用電界効果トランジスタ、及び前記データ書き込み用電界効果トランジスタに隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタを含む不揮発性メモリセルを備えた半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域に、前記データ読み出し用電界効果トランジスタ及び前記データ書き込み用電界効果トランジスタの一方におけるゲート絶縁膜の厚さ方向の一部を構成するための第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1絶縁膜のうち、前記データ読み出し用電界効果トランジスタ及び前記データ書き込み用電界効果トランジスタの他方を形成する領域における前記第1絶縁膜を除去する第1絶縁膜一部除去工程と、
前記データ書き込み用電界効果トランジスタ及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域に、前記一方における前記第1絶縁膜とともに前記ゲート絶縁膜を構成し、かつ、前記他方におけるゲート絶縁膜を構成する第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、
前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜上及び前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記ゲート絶縁膜上のそれぞれに浮遊ゲートを形成する工程と、
前記半導体基板の厚さ方向から見て、前記データ書き込み用電界効果トランジスタの前記浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層並びに前記データ読み出し用電界効果トランジスタの前記浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層を形成する工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、データ書き込み用の電界効果トランジスタとデータ読み出し用電界効果トランジスタを備え、各電界効果トランジスタに適した特性を発揮することができる不揮発性メモリを備えた半導体装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る半導体装置の不揮発性メモリセルの一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図1のA-A線断面におけるデータ書き込み用電界効果トランジスタ及びデータ読み出し用電界効果トランジスタの一例を示す概略構成図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図12】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【
図13】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態(本実施形態)について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
不揮発性メモリセルの性能を評価する特性として、フローティングゲートの電荷が時間変化することによって、記憶されたデータが失われるまでに要する時間、すなわち、データリテンション特性がある。
従来のMTP不揮発性メモリセルにおけるデータ書き込み用の電界効果トランジスタおよびデータ読み出し用の電界効果トランジスタでは、通常、データ書き込み用の電界効果トランジスタのゲート酸化膜はデータリテンション特性を考慮して4nm~10nmの膜厚で熱酸化により形成されるのが一般的である。
このようにデータ書き込み用電界効果トランジスタとデータ読み出し用電界効果トランジスタを備えた不揮発性メモリセルを製造する場合、データ書き込み用電界効果トランジスタに隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタは、データ書き込み用電界効果トランジスタと同じプロセスで形成されることになり、データ読み出し用電界効果トランジスタのゲート酸化膜は、データ書き込み用電界効果トランジスタのゲート酸化膜と同じ厚みで形成されることになる。
【0012】
データ読み出し用電界効果トランジスタのゲート酸化膜の厚みも4nm~10nmである場合、データ読み出し用電界効果トランジスタのチャネルを十分にONするためには2~3V程度のゲート電圧が必要となる。しかし、例えば、アパレルや商品流通に使用されるRFタグの置き換えとして使用される不揮発性メモリセルの電圧としては1.0V~1.5V程度が上限であり、メモリセルがON状態での駆動電流値が十分得られない。
【0013】
そこで、本発明者が検討を重ねたところ、データ書き込み用電界効果トランジスタと、データ読み出し用電界効果トランジスタとを備えた不揮発性メモリセルにおいて、各トランジスタに要求される機能、環境等に適したゲート絶縁膜の厚みとすれば、各トランジスタに適した閾値電圧とすることができることを見出し、本開示に係る不揮発性メモリセル及びその製造方法の完成に至った。
【0014】
本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に配置された不揮発性メモリセルと、を備え、不揮発性メモリセルは、データ書き込み用電界効果トランジスタ、及びデータ書き込み用電界効果トランジスタに隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタを含んでいる。データ書き込み用電界効果トランジスタ及びデータ読み出し用電界効果トランジスタは、それぞれ、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成された浮遊ゲートと、半導体基板の厚さ方向から見て浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層と、を有し、データ読み出し用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚みと、データ書き込み用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚みとが異なっている。
【0015】
図1は、本開示の実施形態(本実施形態)に係る半導体装置における不揮発性メモリセルの構成の一例を概略的に示している。
図1に示す不揮発性メモリセル50は、データ書き込み用電界効果トランジスタ100、及びデータ書き込み用電界効果トランジスタ100に隣接するデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を含んでいる。なお、
図1に示す不揮発性メモリセルにおいて、18はアクティブ領域(読み出しトランジスタ)、20はコンタクト、22はサイドウォール、24,34はn型ウェル領域、32、36はアクティブ領域(データ書き込み部)、38は浮遊ゲート、40はアクティブ領域(基板電位)である。
【0016】
図2には、
図1のA-A線断面において点線Bで囲まれる領域に含まれるデータ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ書き込み用電界効果トランジスタ100に付随するデータ読み出し用電界効果トランジスタ200が概略的に示されている。
データ書き込み用電界効果トランジスタ100は、シリコン基板の表層部におけるpウェル302上に形成されたSiO
2等のゲート絶縁膜102,104と、ゲート絶縁膜102,104上に形成された浮遊ゲート106とを備えている。また、pウェル302の表層部の、浮遊ゲート106を間に挟む位置においてソース・ドレインを構成するn型拡散層310A,310Bを有する。浮遊ゲート106の側面は、SiO
2等の絶縁体で構成されるサイドウォール112によって覆われている。浮遊ゲート106の表面及びn型拡散層310A,310Bの表面には、例えばコバルトシリサイド等のシリコンと金属との化合物からなる合金層108,312A,312Bが設けられている。
【0017】
一方、データ読み出し用電界効果トランジスタ200は、シリコン基板10上において、データ書き込み用電界効果トランジスタ100の近傍に設けられている。データ読み出し用電界効果トランジスタ200は、pウェル302の表面にSiO2等で構成されたゲート絶縁膜204と、ゲート絶縁膜204上にポリシリコンで構成された浮遊ゲート206と、pウェル302の表層部において浮遊ゲート206を間に挟む位置においてソース・ドレインを構成するn型拡散層310B,310Cを有する。なお、n型拡散層312Bは、データ書き込み用電界効果トランジスタ100と共有している。
そして、データ読み出し用電界効果トランジスタ200のゲート絶縁膜204の厚みは、データ書き込み用電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜102,104の厚みよりも小さくなっている。
また、データ読み出し用電界効果トランジスタ200の浮遊ゲート206は、データ書き込み用電界効果トランジスタ100の浮遊ゲート106とは電気的に分離されている。浮遊ゲート206の側面は、SiO2等の絶縁体で構成されるサイドウォール212によって覆われている。浮遊ゲート206の表面及びn型拡散層312B,312Cの表面には、例えばコバルトシリサイド等のシリコンと金属との化合物からなる合金層208,312B,312Cが設けられている。
【0018】
データ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200の外周部全体が、主としてSi3N4を含んで構成される厚さ20nm~40nm程度のシリコン窒化膜110で覆われている。
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示しながら、本実施形態に係る半導体装置の不揮発性メモリセルの主な構成について具体的に説明する。
【0019】
本開示に係る半導体装置の製造方法は特に限定されないが、半導体基板のデータ書き込み用電界効果トランジスタ及びデータ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域に、データ読み出し用電界効果トランジスタ及びデータ書き込み用電界効果トランジスタの一方におけるゲート絶縁膜の厚さ方向の一部を構成するための第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、第1絶縁膜のうち、データ読み出し用電界効果トランジスタ及びデータ書き込み用電界効果トランジスタの他方を形成する領域における第1絶縁膜を除去する第1絶縁膜一部除去工程と、データ書き込み用電界効果トランジスタ及びデータ読み出し用電界効果トランジスタを形成する領域に、一方における第1絶縁膜とともにゲート絶縁膜を構成し、かつ、他方におけるゲート絶縁膜を構成する第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、データ書き込み用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜上及びデータ読み出し用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜上のそれぞれに浮遊ゲートを形成する工程と、半導体基板の厚さ方向から見て、データ書き込み用電界効果トランジスタの浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層並びにデータ読み出し用電界効果トランジスタの浮遊ゲートを間に挟む位置においてソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層を形成する工程と、を含む方法によって好適に製造することができる。
【0020】
図3~
図13は、本実施形態に係る半導体装置の不揮発性メモリセルにおけるデータ書き込み用電界効果トランジスタ及びデータ読み出し用電界効果トランジスタを形成する工程の一例を示している。なお、本開示において使用する半導体基板はp型でもn型でもよいが、製造容易性の観点から、p型の半導体基板であることが好ましい。本実施形態では、p型のシリコン基板を用いる場合について説明する。
【0021】
(トレンチの形成)
シリコン基板10の一方の面に熱酸化法によりシリコン酸化膜(SiO
2)12及びCVD法によってシリコン窒化膜(Si
3N
4)14を順次形成する。
次いで、シリコン窒化膜14上に、フォトリソグラフィ及びエッチングによりデータ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域(本開示において「トランジスタ形成領域」と称する場合がある。)以外のシリコン酸化膜12、シリコン窒化膜14を除去する。
次いで、シリコン酸化膜12、シリコン窒化膜14をマスクとしてエッチングを行い、シリコン基板10の一部に溝(トレンチ)15を形成する(
図3)。
【0022】
(素子分離膜の形成)
次に、HDPCVD法(High Density Plasm Chemical Vapor Deposition)によりトレンチ15内に埋め込まれるシリコン酸化膜(埋め込み酸化膜)を形成する。
次に、表面をCMP法(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化し、トレンチ形成のためのマスクとして形成したシリコン酸化膜12、シリコン窒化膜14を例えばドライエッチングによって除去する。これにより、シリコン基板10に形成したトレンチ15内にシリコン酸化膜が埋め込まれた素子分離膜308が形成される。
さらに、前酸化を行い、シリコン基板10上及び素子分離膜308上にシリコン酸化膜(前酸化膜)16を形成する(
図4)。
【0023】
(ウェルの形成)
次に、イオン注入法によりシリコン基板10内の所定の深さに、例えばボロンを注入してp型の導電型を有するpウェル306を形成する。さらにシリコン基板10の表層部にヒ素またはリンを注入する。これにより、Vt(閾値)調整のためのp型の導電型を有するpウェル302を形成する(
図5)。
【0024】
(第1ゲート絶縁膜の形成)
次に、前酸化膜16を除去した後、トランジスタ形成領域に第1ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)102を形成する(
図6)。
第1ゲート絶縁膜としては、酸化膜又は酸窒化膜が好ましい。本実施形態においては第1ゲート絶縁膜102として、例えばCVD法又は熱酸化によって、pウェル302及び素子分離膜308の表面を一体的に覆うシリコン酸化膜102を形成する。
本実施形態では、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域Wにおいては第1ゲート絶縁膜102と後述する第2ゲート絶縁膜104とが積層されることでデータ書き込み用電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜を構成することになる。一方、データ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rにおいては第1ゲート絶縁膜102は除去され、第2ゲート絶縁膜104がデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rのゲート絶縁膜を構成することになる。
【0025】
本実施形態におけるデータ書き込み用電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜102,104の厚みは、リテンション特性を満たす観点から4nm~10nmが好ましく、データ読み出し用電界効果トランジスタ200のゲート絶縁膜204の厚みは低電圧化の観点から2nm~4nmが好ましい。また、第1ゲート絶縁膜102は、データ書き込み用電界効果トランジスタ100に要求されるゲート絶縁膜の厚みから第2ゲート絶縁膜104,204の厚みを差し引いた厚みで形成することが好ましい。データ書き込み用電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜102,104の厚みは、データ読み出し用電界効果トランジスタ200のゲート絶縁膜204の厚みの2倍以上とすることが好ましいため、第1ゲート絶縁膜102は、第2ゲート絶縁膜104,204よりも大きい厚みで形成することが好ましく、具体的には、2nm~6nmの厚みで形成することが好ましい。
【0026】
(第1ゲート絶縁膜の一部除去)
第1ゲート絶縁膜102を形成した領域のうち、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域W及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rの一方の領域における第1ゲート絶縁膜102を除去する。本実施形態では、データ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rにおける第1ゲート絶縁膜102を除去する。
第1ゲート絶縁膜102のうち、データ書き込み用の電界効果トランジスタを形成する領域のみフォトリソグラフィによってレジストマスク18で覆う。そして、データ読み出し用の電界効果トランジスタを形成する領域Rにおけるレジストマスク18で覆われていない第1ゲート絶縁膜102をドライエッチング又はウエットエッチングにより除去する(
図7)。
【0027】
(第2ゲート絶縁膜形成工程)
次に、レジストマスク18を除去し、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域W及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rに第2ゲート絶縁膜(第2絶縁膜)104,204を形成する(
図8)。
前述したように、本実施形態では、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域Wにおいては第1ゲート絶縁膜102と第2ゲート絶縁膜104とが一体となってデータ書き込み用電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜を構成し、データ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rにおいては、第2ゲート絶縁膜204がデータ読み出し用電界効果トランジスタ200のゲート絶縁膜を構成することになる。
【0028】
第1ゲート絶縁膜102を2nm~6nmの厚みで形成した場合、データ書き込み用電界効果トランジスタ100のリテンション特性と、データ読み出し用電界効果トランジスタ200の低電圧化の観点から、第2ゲート絶縁膜204は2nm~4nmの厚みで形成することが好ましい。これにより、データ書き込み用電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜は、第1ゲート絶縁膜102と第2ゲート絶縁膜104とが積層された4nm~10nmの厚みを有し、データ読み出し用電界効果トランジスタ200のゲート絶縁膜は、第2ゲート絶縁膜204による2nm~4nmの厚みを有することになる。
なお、第2ゲート絶縁膜104,204は、第1ゲート絶縁膜102と同様、酸化膜又は酸窒化膜が好ましく、例えばCVD法又は熱酸化によって形成することができる。なお、例えば、第1ゲート絶縁膜102として酸化膜を形成し、第2ゲート絶縁膜として酸化物より誘電率の高い酸窒化膜を形成してもよい。
【0029】
(浮遊ゲートの形成)
次に、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域W及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rのそれぞれの第2ゲート絶縁膜104,204上に浮遊ゲート106,206を形成する。
例えば、CVD法により第2ゲート絶縁膜104,204の表面にポリシリコン膜を形成する。続いて、イオン注入法により、ポリシリコン膜の全面にリンまたはヒ素を注入する。これにより、ポリシリコン膜の全体にn型の導電性が付与される。
【0030】
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて、ポリシリコン膜をパターニングする。これにより、データ書き込み用電界効果トランジスタ100の浮遊ゲート(フローティングゲート)106及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200の浮遊ゲート(フローティングゲート)206が形成される(
図9)。
【0031】
(サイドウォールの形成)
次に、CVD法により、データ書き込み用電界効果トランジスタ100の浮遊ゲート106及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200の浮遊ゲート206の上面及び側面を覆うように、SiN膜を形成後、SiO
2等の絶縁膜をシリコン基板10上に形成する。
続いて、上記の絶縁膜をエッチバックする。これにより、データ書き込み用電界効果トランジスタ100の浮遊ゲート106の側面を覆うサイドウォール112及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200の浮遊ゲート206の側面を覆うサイドウォール212が形成される(
図10)。
【0032】
(拡散層の形成)
次に、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域W及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rのそれぞれにおいて、シリコン基板10内のシリコン基板10の厚さ方向から見て浮遊ゲート106,206を間に挟む位置においてそれぞれソース領域及びドレイン領域を構成する拡散層310A,301B,310Cを形成する。
例えば、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域W及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rのそれぞれにおいて、シリコン基板10内のシリコン基板10の厚さ方向から見て浮遊ゲート106,206を間に挟む位置におけるpウェル302の表面にイオン注入法によりヒ素またはリンを注入する。これにより、pウェル302の表層部の、各浮遊ゲート106,206を間に挟む位置にソース・ドレインを構成するn型拡散層310A,310B,310Cがそれぞれ形成される(
図11)。
【0033】
(酸化膜の除去/Coシリサイド層の形成)
次に、データ書き込み用電界効果トランジスタ100を形成する領域W及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を形成する領域Rにおいて露出する酸化膜(ゲート絶縁膜102,104,204)を除去し、サリサイドプロセスを用いて、データ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200のn型拡散層310A,310B,310Cの表面及び浮遊ゲート106,206の表面に合金層312A,312B,312C,108,208を形成する(
図12)。
【0034】
例えば、スパッタ法によりデータ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200の表面全体を覆うように、シリコン基板10上にコバルト膜を形成する。
続いて、熱処理によってシリコンとコバルト膜とが接している部分、すなわち、n型拡散層310A,310B,310Cの表面及び浮遊ゲート106,206の表面に主としてコバルトモノシリサイド(CoSi)を含むCoシリサイド層を形成する。
続いて、薬液処理によって、データ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200以外の領域(素子分離領域)におけるコバルト膜を除去する。
続いて、更なる熱処理によってコバルトモノシリサイド(CoSi)をコバルトダイシリサイド(CoSi2)に相転移させる。
これにより、n型拡散層310A,310B,310C及び浮遊ゲート106,206の表面にそれぞれ、主としてコバルトダイシリサイド(CoSi2)を含む合金層312A,312B,312C,108,208が形成される。なお、各熱処理は、加熱時間が短時間であるRTA(Rapid Thermal Anneal)によって行われる。
【0035】
(層間絶縁膜の形成/コンタクトの形成)
その後、データ書き込み用電界効果トランジスタ100及びデータ読み出し用電界効果トランジスタ200を覆う層間絶縁膜(中間層)320を形成する。
さらに、データ書き込み用電界効果トランジスタ100またはデータ読み出し用電界効果トランジスタ200に接続されるコンタクト322を層間絶縁膜320内に形成する。コンタクト322を介してデータ書き込み用電界効果トランジスタ100またはデータ読み出し用電界効果トランジスタ200に接続される配線を層間絶縁膜320上に形成する工程などを経て不揮発性メモリセルが完成する(
図13)。
【0036】
このようなプロセス工程を経ることで、例えば、データ書き込み用の電界効果トランジスタ100のゲート絶縁膜102,104をリテンション特性を満たす4nm~10nmで形成し、かつデータ読み出し用の電界効果トランジスタ200のゲート絶縁膜204は2nm~4nmと薄膜化が可能となる。このような構造を有する不揮発性メモリセルを形成することで、データ書き込み用の電界効果トランジスタのリテンション特性を損なうことなく、データ読み出し用の電界効果トランジスタのゲート電圧低電圧化が可能となる。
【0037】
以上、本開示に係る半導体装置及びその製造方法について説明したが、本開示に係る半導体装置及びその製造方法は上記説明に限定されない。
例えば、本開示における不揮発性メモリの構成は
図1、
図2、
図13に示す構成に限定されず、データ書き込み用電界効果トランジスタ及びデータ読み出し用電界効果トランジスタを有する不揮発性メモリセルを備えた半導体装置であれば、本開示を適用することができる。
また、上記実施形態では、データ書き込み用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚みが、データ読み出し用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚みよりも大きくする場合について説明したが、データ読み出し用電界効果トランジスタに高電圧の印加が要求される場合などは、データ書き込み用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚みよりも、データ読み出し用電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚みを大きくしてもよい。すなわち、各電界効果トランジスタに要求される特性(特に閾値電圧)に応じてゲート絶縁膜の厚みに設定すればよい。
また、本開示に係る半導体装置の用途は限定されず、データの書き換えが要求される導体装置であれば制限でなく適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 シリコン基板
12 シリコン酸化膜
14 シリコン窒化膜
15 トレンチ
16 前酸化膜
18 レジストマスク
50 不揮発性メモリセル
100 データ書き込み用電界効果トランジスタ
102 第1ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)
104 第2ゲート絶縁膜(第2絶縁膜)
106 浮遊ゲート
108 合金層
110 シリコン窒化膜
112 サイドウォール
120 シリコン窒化膜
200 データ読み出し用電界効果トランジスタ
204 第2ゲート絶縁膜(第2絶縁膜)
206 浮遊ゲート
212 サイドウォール
208 合金層
212 絶縁膜
220 シリコン窒化膜
302 pウェル
306 pウェル
308 素子分離膜
310A,310B,310C 拡散層
312A,312B,312C 合金層
320 層間絶縁膜
322 コンタクト