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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】画像測定機および画像測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230627BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019162954
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042977
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 裕志
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-013112(JP,A)
【文献】特開2018-205005(JP,A)
【文献】特開2008-271368(JP,A)
【文献】特開2009-165558(JP,A)
【文献】特開2018-197666(JP,A)
【文献】特開2001-054009(JP,A)
【文献】特開2009-177250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/06
G01N 21/84-21/958
G03B 15/00
G03B 7/00- 7/30
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを撮像するカメラと、前記カメラの撮像動作を制御する撮像制御部と、前記カメラからの画像信号を処理する画像処理部とを有し、
前記撮像制御部は、前記カメラで撮像する際の長露光時間および短露光時間を設定する時分割撮像設定部と、前記長露光時間および前記短露光時間でそれぞれ前記カメラに撮像動作を実行させる時分割撮像制御部と、を有し、
前記画像処理部は、前記長露光時間で撮像された前記ワークの長時間露光画像と、前記短露光時間で撮像された前記ワークの短時間露光画像とから、前記ワークの合成画像を生成する画像合成部を有し、
前記時分割撮像設定部は、前記カメラで撮像された前記ワークの画像のコントラスト値を検出するコントラスト検出部と、仮露光時間を所定の露光時間最大値から順次短くまたは所定の露光時間最小値から順次長く変化させつつ前記ワークの仮撮像を行って得られた画像の前記コントラスト値に基づいて前記長露光時間および前記短露光時間を設定する露光モード設定部と、を有することを特徴とする画像測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の画像測定機において、
前記露光モード設定部は、前記仮撮像で得られた複数の画像のうち、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最長である画像の露光時間を前記長露光時間とし、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最短である画像の露光時間を前記短露光時間とすることを特徴とする画像測定機。
【請求項3】
請求項2に記載の画像測定機において、
前記露光モード設定部は、長時間露光モード設定部と、短時間露光モード設定部と、を有し、
前記長時間露光モード設定部は、露光時間最大値から順次短い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記長露光時間として設定し、
前記短時間露光モード設定部は、露光時間最小値から順次長い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記短露光時間として設定することを特徴とする画像測定機。
【請求項4】
ワークを撮像するカメラと、前記カメラの撮像動作を制御する撮像制御部と、前記カメラからの画像信号を処理する画像処理部とを有する画像測定機を用い、
先ず、前記撮像制御部により、前記カメラで撮像する際の長露光時間および短露光時間を設定する時分割撮像設定工程として、前記カメラで撮像された前記ワークの画像のコントラスト値を検出するコントラスト検出工程と、仮露光時間を所定の露光時間最大値から順次短くまたは所定の露光時間最小値から順次長く変化させつつ前記ワークの仮撮像を行って得られた画像の前記コントラスト値に基づいて前記長露光時間および前記短露光時間を設定する露光モード設定工程と、を実行し、
次に、前記撮像制御部により、前記長露光時間および前記短露光時間でそれぞれ前記カメラに撮像動作を実行させる時分割撮像制御工程を実行し、
続いて、前記画像処理部により、前記長露光時間で撮像された前記ワークの長時間露光画像と、前記短露光時間で撮像された前記ワークの短時間露光画像とから、前記ワークの合成画像を生成する画像合成工程を実行することを特徴とする画像測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の画像測定方法において、
前記露光モード設定工程では、前記仮撮像で得られた複数の画像のうち、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最長である画像の露光時間を前記長露光時間とし、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最短である画像の露光時間を前記短露光時間とすることを特徴とする画像測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像測定方法において、
前記露光モード設定工程は、長時間露光モード設定工程と、短時間露光モード設定工程と、を有し、
前記長時間露光モード設定工程では、露光時間最大値から順次短い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記長露光時間として設定し、
前記短時間露光モード設定工程では、露光時間最小値から順次長い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記短露光時間として設定することを特徴とする画像測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像測定機および画像測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを撮像して得られた画像からワークの形状や寸法を測定する画像測定機が用いられている。画像測定機では、画像に対するエッジ検出処理(画像上の明暗の境界を抽出してワークの稜線などを捕捉する処理)が行われている(特許文献1参照)。
画像測定機では、エッジ検出処理などの対象となる画像が、測定に適した条件で撮像されることが求められる。しかし、ワークには表面の形状や材質の相違によって、同じ条件で撮像したのでは、画面全体を最良の状態にすることが難しい。このため、ワークの表面の領域ごとに照明や露光時間などの条件を調整し、複数回に分けてワークの撮像を行うことがなされている(特許文献2参照)。
【0003】
画像測定機とは異なるが、人物や物品あるいは風景を撮影する撮影装置では、ワイドダイナミックレンジ機能(WDR機能)が知られている。
WDR機能は、通常は1フレームとされる撮影時間(露光時間)の間に、長時間露光フレームと短時間露光フレームとの2つを設定し、それぞれで得られた画像を合成するものである。このようなWDR機能により、例えば背景が明るくて人物が暗くなる場合などでも、明るい背景は短時間露光フレームで過剰な露光を回避しつつ、暗い人物は長時間露光フレームで十分に光量を得ることができる(特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-49050号公報
【文献】特開2017-151085号公報
【文献】特開2017-224905号公報
【文献】特開2009-88929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、画像測定機では、ワークの領域ごとに撮像条件が異なる場合、領域ごとの設定および撮像を繰り返す必要があった。
これに対し、前述したWDR機能を参照して、通常の1回分の撮像時間を複数に分割し、露光時間が異なる撮像動作を組み合わせることで、ワークの領域ごとに撮像条件が異なる場合でも、各領域が適切に露光された合成画像が得られる可能性がある。
しかし、既存のWDR機能をそのまま利用しても、画像測定機に要求される画像、つまりエッジ検出などに適した画像を得ることはできない。つまり、画像測定機に適した画像となるように、合成画像の元になる複数の画像の露光時間を、ワークに応じて、それぞれ適切に設定する必要があり、その設定を容易に実現できる技術が要望されていた。
【0006】
本発明の目的は、複数の露光条件での撮像を効率よく処理できる画像測定機および画像測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像測定機は、ワークを撮像するカメラと、前記カメラの撮像動作を制御する撮像制御部と、前記カメラからの画像信号を処理する画像処理部とを有し、前記撮像制御部は、前記カメラで撮像する際の長露光時間および短露光時間を設定する時分割撮像設定部と、前記長露光時間および前記短露光時間でそれぞれ前記カメラに撮像動作を実行させる時分割撮像制御部と、を有し、前記画像処理部は、前記長露光時間で撮像された前記ワークの長時間露光画像と、前記短露光時間で撮像された前記ワークの短時間露光画像とから、前記ワークの合成画像を生成する画像合成部を有し、前記時分割撮像設定部は、前記カメラで撮像された前記ワークの画像のコントラスト値を検出するコントラスト検出部と、得られた前記コントラスト値に基づいて前記長露光時間および前記短露光時間を設定する露光モード設定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
このような本発明では、ワークの画像を撮像する際に、通常の1フレーム分の撮像期間を時分割して長露光時間および短露光時間での撮像を行うことができ、各々による長時間露光画像と短時間露光画像とからワークの合成画像を得ることができる。得られた合成画像からは、長時間露光による画像成分と短時間露光による画像成分とを取り出すことができ、ワーク表面の領域によってそこに適した露光時間が異なる場合でも、長短の露光時間で適切に撮像することができる。
長露光時間および短露光時間の設定は、時分割撮像設定部において、仮露光時間によるワークの仮撮像などを行い、得られた画像のコントラスト値に基づいて、エッジ検出などに適した画像が得られる仮露光時間を選択することで、画像測定機におけるエッジ検出などに適した長露光時間および短露光時間を設定することができる。
従って、本発明の画像測定機では、複数の露光条件での撮像を効率よく処理できる。
【0009】
本発明の画像測定機において、前記露光モード設定部は、前記カメラを異なる露光時間に設定して前記ワークを撮像して得られた複数の画像のうち、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最長である画像の露光時間を前記長露光時間とし、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最短である画像の露光時間を前記短露光時間とすることが好ましい。
【0010】
このような本発明では、仮撮像で得られた様々な露光時間のワークの画像のうち、コントラスト値が所定の基準値以上となる範囲の上限(最長の露光時間)および下限(最短の露光時間)を選択することで、これらを長露光時間および短露光時間として設定を簡単にできる。
なお、複数の画像を得るためにカメラに異なる露光時間を設定する際には、所定の露光時間最大値および露光時間最小値を設定し、その範囲内で露光時間を複数設定し、各々の露光時間でカメラによるワークの撮像を行えばよい。これらの露光時間最大値および露光時間最小値としては、カメラあるいは画像処理部において設定が可能な最大値および最小値であり、各々の動作速度や処理速度などに応じて適宜選択すればよい。
【0011】
本発明の画像測定機において、前記露光モード設定部は、長時間露光モード設定部と、短時間露光モード設定部と、を有し、前記長時間露光モード設定部は、露光時間最大値から順次短い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記長露光時間として設定し、前記短時間露光モード設定部は、露光時間最小値から順次長い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記短露光時間として設定することが好ましい。
【0012】
このような本発明では、長時間露光モード設定と短時間露光モード設定とを分離することができ、各々を独立して動作させることができる。例えば、長時間露光モード設定および短時間露光モード設定を同時並行して実行させることができ、長露光時間および短露光時間の設定にかかる処理時間を最小限にすることができる。
長時間露光モード設定と短時間露光モード設定とを分離しない場合、例えば、露光時間最小値から順次長い露光時間で撮像してゆくことで、先ず短露光時間を設定し(コントラスト値が基準値以上になった時点)、続いて長露光時間を設定する(コントラスト値が基準値以上でなくなった時点)ことができる。この場合、コントラスト値が基準値以上である露光時間の範囲も検査し続けることになり、作業時間が長大化する。これに対し、長時間露光モード設定と短時間露光モード設定とを分離することで、コントラスト値が基準値以上である露光時間の範囲についての検査を省略することができ、効率よい設定動作を行うことができる。
なお、長時間露光モード設定および短時間露光モード設定は、それぞれを個々に実行、つまり直列に順次実行してもよい。
【0013】
本発明の画像測定方法は、ワークを撮像するカメラと、前記カメラの撮像動作を制御する撮像制御部と、前記カメラからの画像信号を処理する画像処理部とを有する画像測定機を用い、先ず、前記撮像制御部により、前記カメラで撮像する際の長露光時間および短露光時間を設定する時分割撮像設定工程として、前記カメラで撮像された前記ワークの画像のコントラスト値を検出するコントラスト検出工程と、得られた前記コントラスト値に基づいて前記長露光時間および前記短露光時間を設定する露光モード設定工程と、を実行し、次に、前記撮像制御部により、前記長露光時間および前記短露光時間でそれぞれ前記カメラに撮像動作を実行させる時分割撮像制御工程を実行し、続いて、前記画像処理部により、前記長露光時間で撮像された前記ワークの長時間露光画像と、前記短露光時間で撮像された前記ワークの短時間露光画像とから、前記ワークの合成画像を生成する画像合成工程を実行することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の画像測定機で説明した通りの効果を得ることができる。
【0014】
本発明の画像測定方法において、前記露光モード設定工程では、前記カメラを異なる露光時間に設定して前記ワークを撮像して得られた複数の画像のうち、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最長である画像の露光時間を前記長露光時間とし、前記コントラスト値が所定の基準値以上でありかつ露光時間が最短である画像の露光時間を前記短露光時間とすることが好ましい。
このような本発明では、前述した本発明の画像測定機で説明した通りの効果を得ることができる。
【0015】
本発明の画像測定方法において、前記露光モード設定工程は、長時間露光モード設定工程と、短時間露光モード設定工程と、を有し、前記長時間露光モード設定工程では、露光時間最大値から順次短い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記長露光時間として設定し、前記短時間露光モード設定工程では、露光時間最小値から順次長い露光時間で撮像した画像について前記コントラスト値を検出し、得られた前記コントラスト値が前記基準値以上になった画像の露光時間を前記短露光時間として設定することが好ましい。
このような本発明では、前述した本発明の画像測定機で説明した通りの効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の露光条件での撮像を効率よく処理できる画像測定機および画像測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の画像測定機を示す斜視図。
図2】前記第1実施形態の時分割撮像処理を示すグラフ。
図3】前記第1実施形態の制御装置を示すブロック図。
図4】前記第1実施形態の露光モード設定動作を示すグラフ。
図5】前記第1実施形態で検出するコントラスト値を示すグラフ。
図6】前記第1実施形態の時分割撮像処理を示すフローチャート。
図7】本発明の第2実施形態の露光モード設定動作を示すグラフ。
図8】本発明の第3実施形態の露光モード設定動作を示すグラフ。
図9】本発明の第4実施形態の時分割撮像処理を示すグラフ。
図10】前記第4実施形態で検出するコントラスト値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態である画像測定機1が示されている。
画像測定機1は、ワーク2の表面をカメラ3で撮像し、得られた画像からワーク2の形状寸法を測定するものである。
測定対象であるワーク2は、テーブル4に支持されてカメラ3に対して相対移動可能である。
【0019】
画像測定機1は、カメラ3を制御するとともに得られた画像データを処理するために制御装置10を備えている。
制御装置10は、一般的なパーソナルコンピュータシステムを用いた制御装置本体11に、表示装置12および操作装置13を接続して構成される。操作装置13としては、キーボード14、ポインティング装置であるマウス15、ジョイスティック16およびジョグダイヤル17を有するパッド18などが適宜利用できる。
【0020】
制御装置10は、カメラ3で撮像する際に、時分割撮像処理を行う。
図2おいて、制御装置10は、ワーク2の画像を撮像する際に、通常の1フレーム分の撮像期間TFを時分割し、長露光時間TLおよび短露光時間TSでの撮像を行う。それぞれの撮像の際には、露光時間に応じて光量Lが大きくなる。従って、長露光時間TLの撮像では光量Lが十分に得られ、短露光時間TSの撮像では光量Lを抑制できる。得られた異なる露光時間の画像は、1フレーム分の合成画像に合成される。
このような時分割撮像処理により、ワーク2の表面の各部光学特性の相違が大きくても、合成画像に含まれたいずれかの露光時間の画像成分に、ワーク2の明瞭な画像を得ることができる。
【0021】
図3において、制御装置10は、制御装置本体11にロードされた動作プログラムを実行することで、前述した時分割撮像処理を行うための撮像制御部20および画像処理部30を構成する。
撮像制御部20は、カメラ3で撮像する際の長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定する時分割撮像設定部21と、長露光時間TLおよび短露光時間TSでそれぞれカメラ3に撮像動作を実行させる時分割撮像制御部22と、を有する。
【0022】
時分割撮像設定部21は、カメラ3で撮像されたワーク2の画像のコントラスト値Cを検出するコントラスト検出部23と、得られたコントラスト値Cに基づいて長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定する露光モード設定部(長時間露光モード設定部24および短時間露光モード設定部25)と、を有する。
【0023】
コントラスト検出部23は、既存の計算手法で、指定された画像のコントラスト値Cを検出する。コントラスト値Cを検出するワーク2の画像としては、後述する長時間露光画像記憶部31および短時間露光画像記憶部32に記憶された長時間露光画像VLおよび短時間露光画像VSを用いることができる。なお、コントラスト検出部23は、直接カメラ3から画像を取り込んでもよい。
【0024】
長時間露光モード設定部24および短時間露光モード設定部25は、それぞれ仮露光時間を設定してカメラ3でワーク2の仮撮像を行い、仮露光時間を順次変化させつつ各画像のコントラスト値Cを予め設定された基準値Cr(図5参照)と比較することで、ワーク2の表面形状に適した長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定する。
この際、仮露光時間の変化幅は、カメラ3および制御装置10において設定可能な露光時間最大値Tmから露光時間最小値Tnまでの範囲(図4参照)とされる。なお、図4は露光時間Tと経過時間tとの関係を示す。図5は、コントラスト値Cと露光時間Tとの関係を示す。
なお、露光時間最大値Tmから露光時間最小値Tnは、カメラ3あるいは画像処理部30において設定が可能な最大値および最小値であり、各々の動作速度や処理速度などに応じて適宜選択すればよい。
【0025】
長時間露光モード設定部24は、図4の上段に示すように、露光時間最大値Tmから順次短い仮長露光時間TLtを設定し、仮長露光時間TLtで仮撮像を行い、得られた画像に対して、コントラスト検出部23でコントラスト値Cを検出することを繰り返す。
そして、図5の右側に示すように、仮長露光時間TLtで得られた画像のコントラスト値Cが基準値Cr以上になった時点で、前述した仮撮像の繰り返しを停止し、この画像が得られた現在の仮長露光時間TLtを長露光時間TLとして設定する(長時間露光モード設定動作)。
【0026】
短時間露光モード設定部25は、図4の下段に示すように、露光時間最小値Tnから順次長い仮短露光時間TStを設定し、仮短露光時間TStで仮撮像を行い、得られた画像に対して、コントラスト検出部23でコントラスト値Cを検出する。
そして、図5の左側に示すように、仮短露光時間TStで得られた画像のコントラスト値Cが基準値Cr以上になった時点で、前述した仮撮像の繰り返しを停止し、この画像が得られた現在の仮短露光時間TStを短露光時間TSとして設定する(短時間露光モード設定動作)。
【0027】
画像処理部30は、長露光時間TLで撮像されたワーク2の長時間露光画像VLを記憶する長時間露光画像記憶部31と、短露光時間TSで撮像されたワーク2の短時間露光画像VSを記憶する短時間露光画像記憶部32と、長時間露光画像VLと短時間露光画像VSとからワーク2の合成画像VCを生成する画像合成部33とを有する。得られた合成画像VCは合成画像記憶部34に記憶される。
【0028】
〔第1実施形態の処理手順〕
図6には、本実施形態の画像測定機1における処理手順が示されている。
画像測定機1でワーク2の画像測定を行う際には、先ず画像測定機1に測定対象のワーク2をセットし、制御装置10を起動するとともにカメラ3を調整し、ワーク2の画像が検出できる状態する(図6の処理S1)。
制御装置10では、時分割撮像処理に必要な長露光時間TLの設定(処理S2~S5、長時間露光モード設定動作)および短露光時間TSの設定(処理S6~S9、短時間露光モード設定動作)が実行される。
【0029】
長時間露光モード設定動作は、長時間露光モード設定部24により、処理S4で終了判定されるまで処理S2~S4が繰り返される。
最初の繰り返しでは、仮長露光時間TLtとして露光時間最大値Tmが設定され、この状態で仮撮像が行われ(処理S2)、仮撮像された画像のコントラスト値Cが検出され(処理S3)、得られたコントラスト値Cが基準値Crと比較され(処理S4)、コントラスト値Cが基準値Cr以上でなければ処理S2に戻る。
2回目以降の繰り返しでは、仮長露光時間TLtとして露光時間最大値Tmより所定の差分だけ小さな値が設定され、この設定で仮撮像が行われ(処理S2)、仮撮像された画像のコントラスト値Cが検出され(処理S3)、得られたコントラスト値Cが基準値Crと比較され(処理S4)、コントラスト値Cが基準値Cr以上でなければ処理S2に戻る。
処理S4でコントラスト値Cが基準値Cr以上であれば、その時点の仮長露光時間TLtを長露光時間TLに設定する(処理S5)。
【0030】
以上の処理S2~S5により、図4の上段のように仮長露光時間TLtが露光時間最大値Tmから漸減し、図5の右側のように仮長露光時間TLtが漸減する間にコントラスト値Cが基準値Crを超える仮画像が得られたら繰り返しが終了し、そのときの仮長露光時間TLtが長露光時間TLとして設定される。
【0031】
短時間露光モード設定動作は、短時間露光モード設定部25により、処理S8で終了判定されるまで処理S6~S8が繰り返される。
最初の繰り返しでは、仮短露光時間TStとして露光時間最小値Tnが設定され、この状態で仮撮像が行われ(処理S6)、仮撮像された画像のコントラスト値Cが検出され(処理S7)、得られたコントラスト値Cが基準値Crと比較され(処理S8)、コントラスト値Cが基準値Cr以上でなければ処理S6に戻る。
2回目以降の繰り返しでは、仮短露光時間TStとして露光時間最小値Tnより所定の差分だけ大きな値が設定され、この設定で仮撮像が行われ(処理S6)、仮撮像された画像のコントラスト値Cが検出され(処理S7)、得られたコントラスト値Cが基準値Crと比較され(処理S8)、コントラスト値Cが基準値Cr以上でなければ処理S6に戻る。
処理S8でコントラスト値Cが基準値Cr以上であれば、その時点の仮短露光時間TStを短露光時間TSに設定する(処理S9)。
【0032】
以上の処理S6~S9により、図4の下段のように仮短露光時間TStが露光時間最小値Tnから漸増し、図5の左側のように仮短露光時間TStが漸増する間にコントラスト値Cが基準値Crを超える仮画像が得られたら繰り返しが終了し、そのときの仮短露光時間TStが短露光時間TSとして設定される。
【0033】
以上の長時間露光モード設定動作(処理S2~S5)および短時間露光モード設定動作(処理S6~S9)は、図4に示されるように、同時並行つまり経過時間t上で重複した状態で実行される。
設定された長露光時間TLおよび短露光時間TSは、時分割撮像制御部22に送られ、図2に示す時分割撮像が行われる(処理S10)。
時分割撮像においては、長露光時間TLの撮像により長時間露光画像VLが得られ、長時間露光画像記憶部31に記憶される。また、短露光時間TSの撮像により短時間露光画像VSが得られ、短時間露光画像記憶部32に記憶される。そして、これらの長時間露光画像VLおよび短時間露光画像VSは、画像合成部33により同じ1フレーム上に合成され、合成画像記憶部34に合成画像VCが得られる(処理S11)。
【0034】
画像測定機1は、合成画像VCに対して画像測定処理を実施する(処理S12)。この際、合成画像VCは、長時間露光画像VLおよび短時間露光画像VSを含んでいるため、ワーク2の表面の各部で明暗が大きく異なっても、長時間露光画像VLおよび短時間露光画像VSのいずれかで明瞭な画像として処理することができる。
【0035】
〔第1実施形態の効果〕
前述した本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態では、ワーク2の画像をカメラ3で撮像する際に、通常の1フレーム分の撮像期間TFを時分割して長露光時間TLおよび短露光時間TSでの撮像を行うことができ、各々による長時間露光画像VLと短時間露光画像VSとからワーク2の合成画像VCを得ることができる。
得られた合成画像VCからは、長露光時間TLによる画像成分と短露光時間TSによる画像成分とを取り出すことができ、ワーク2の表面の領域によってそこに適した露光時間Tが異なる場合でも、長短の露光時間(TL,TS)で適切に撮像することができる。
【0036】
本実施形態では、時分割撮像設定部21において、順次変化する仮長露光時間TLtおよび仮短露光時間TStによるワーク2の仮撮像を行い、得られた画像(VL,VS)のコントラスト値Cを順次検査し、エッジ検出などに適した画像が得られる仮長露光時間TLtおよび仮短露光時間TStを選択することで、画像測定機1におけるエッジ検出などに適した長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定することができる。
従って、本実施形態の画像測定機1では、複数の露光条件(長露光時間TLおよび短露光時間TS)での撮像を効率よく処理できる。
【0037】
本実施形態では、コントラスト値Cに基づいて長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定する際に、仮長露光時間TLtおよび仮短露光時間TStによるワーク2の仮撮像で得られた様々な画像のうち、コントラスト値Cが所定の基準値Cr以上となる範囲の上限(最長の仮長露光時間TLt)および下限(最短の仮短露光時間TSt)を選択することで、これらを長露光時間TLおよび短露光時間TSとして設定を簡単にできる。
【0038】
本実施形態では、仮長露光時間TLtにより長露光時間TLを設定する長時間露光モード設定部24と、仮短露光時間TStにより短露光時間TSを設定する短時間露光モード設定部25とを分離した。このため、長時間露光モード設定部24による長時間露光モード設定動作と、短時間露光モード設定部25による短時間露光モード設定動作とを、独立して実行することができる。
とくに、長時間露光モード設定部24による長時間露光モード設定動作と、短時間露光モード設定部25による短時間露光モード設定動作とを、同時並行して実行させることができ、長露光時間TLおよび短露光時間TSの設定にかかる処理時間を最小限にすることができる。
【0039】
本実施形態では、長時間露光モード設定動作において、仮長露光時間TLtを所定の露光時間最大値Tmから漸減させ、コントラスト値Cが基準値Crを超えた時点で長露光時間TLとするようにした。また、短時間露光モード設定動作において、仮短露光時間TStを所定の露光時間最小値Tnから漸増させ、コントラスト値Cが基準値Crを超えた時点で短露光時間TSとするようにした。
このため、画像測定機1では使用しない露光時間最大値Tm以上の領域および露光時間最小値Tn以下の領域については、露光時間としての適否の検査を省略でき、設定作業を効率的に行うことができる。
また、長時間露光モード設定動作における仮長露光時間TLtの変化と、仮時間露光モード設定動作における仮短露光時間TStの変化とが、いわば時間軸の両側から互いに近づくように進行することで、選択された長露光時間TLおよび短露光時間TSの中間の領域についての検査を省略でき、この点でも作業時間を短縮できる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図7には、本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態において、画像測定機1の構成は前述した第1実施形態と同じであるため、重複する説明は省略し、以下相違点について説明する。
前述した第1実施形態では、長時間露光モード設定部24による長時間露光モード設定動作と、短時間露光モード設定部25による短時間露光モード設定動作とを、同時並行させた。
これに対し、本実施形態では、長時間露光モード設定部24による長時間露光モード設定動作と、短時間露光モード設定部25による短時間露光モード設定動作とを、直列的に順次実行させる。
【0041】
図7において、本実施形態では、先ず、短時間露光モード設定部25により、仮短露光時間TStを露光時間最小値Tnから漸増させつつ仮撮像を行い、コントラスト値Cを検査して短露光時間TSを設定する(短時間露光モード設定動作)。続いて、長時間露光モード設定部24により、仮長露光時間TLtを露光時間最大値Tmから漸減させつつ仮撮像を行い、コントラスト値Cを検査して長露光時間TLを設定する(長時間露光モード設定動作)。
このような本実施形態によれば、長露光時間TLおよび短露光時間TSの設定に時間を要することになるが、長時間露光モード設定部24の処理と短時間露光モード設定部25の処理とが重複しないため、カメラ3からの画像データの転送や画像処理に要する演算負荷を軽減することができ、比較的低コストのパーソナルコンピュータを用いて制御装置10を構成することもできる。
【0042】
〔第3実施形態〕
図8には、本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態において、画像測定機1の構成は前述した第1実施形態と同じであるため、重複する説明は省略し、以下相違点について説明する。
前述した第1実施形態では、長時間露光モード設定部24と短時間露光モード設定部25とを分離し、各々で仮長露光時間TLtおよび仮短露光時間TStを漸減漸増させる処理を行った。
これに対し、本実施形態では、長時間露光モード設定部24を省略し、短時間露光モード設定部25だけで長露光時間TLおよび短露光時間TSの設定を行う。
【0043】
図8において、本実施形態では、先ず、短時間露光モード設定部25により、仮短露光時間TStを露光時間最小値Tnから漸増させつつ仮撮像を行い、コントラスト値Cを検査して短露光時間TSを設定する(短時間露光モード設定動作)。続いて、同じ短時間露光モード設定部25において、さらに仮短露光時間TStを漸増させつつ仮撮像を行い、コントラスト値Cが基準値Crを超える最大の仮短露光時間TStを検出し、この仮短露光時間TStを長露光時間TLとして設定する(長時間露光モード設定動作)。
このような本実施形態によれば、ひとつの短時間露光モード設定部25で長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定することができる。また、一連の仮短露光時間TStを漸増させる操作の間、コントラスト値Cの評価だけで長露光時間TLおよび短露光時間TSを設定できる。ただし、短露光時間TSの設定から長露光時間TLの設定に至る長時間露光モード設定動作に時間を要する可能性もある。
【0044】
〔第4実施形態〕
図9および図10には、本発明の第4実施形態が示されている。
本実施形態において、画像測定機1の構成は前述した第1実施形態と同じであるため、重複する説明は省略し、以下相違点について説明する。
前述した第1実施形態では、ワーク2の画像をカメラ3で撮像する際に、通常の1フレーム分の撮像期間TFを、長露光時間TLと短露光時間TSとの2つに分割した。
これに対し、本実施形態では、通常の1フレーム分の撮像期間TFを、長露光時間TL、短露光時間TS1および短露光時間TS2との3つに分割する(図9参照)。
【0045】
このような本実施形態によっても、長露光時間TL、短露光時間TS1および短露光時間TS2で撮像された各画像を合成することで、得られた合成画像VCからは、長露光時間TLによる画像成分、短露光時間TS1による画像成分、短露光時間TS2による画像成分を取り出すことができ、ワーク2の撮像に必要な露光時間Tが3つになる場合でも対応することができる。
このような長露光時間TL、短露光時間TS1および短露光時間TS2の設定にあたっては、前述した第1実施形態の構成をそのまま利用することができる。
図10において、長露光時間TLについては、長時間露光モード設定部24による長時間露光モード設定動作をそのまま利用する。一方、短露光時間TS1および短露光時間TS2については、短時間露光モード設定部25による短時間露光モード設定動作により、先ず短露光時間TS1を選択し、さらに仮短露光時間TStの漸増を続けてコントラスト値Cに基づいて短露光時間TS2を選択することができる。
【0046】
〔変形例〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
通常の1フレーム分の撮像期間TFを時分割するにあたり、長露光時間TLおよび短露光時間TSの前後関係は任意である。また、時分割する数は、前述した第1実施形態などの2つ、第4実施形態の3つに限らず、それ以上の数としてもよい。
撮像制御部20あるいは画像処理部30の具体的構成は、前述した機能が達成できる他の構成であってもよい。例えば、コントラスト検出部23は、長時間露光モード設定部24および短時間露光モード設定部25にそれぞれ組み込んでもよく、長時間露光モード設定部24および短時間露光モード設定部25についても同じ処理ルーチンを長露光時間TLおよび短露光時間TSという目的別に利用するものでもよい。
その他、画像測定機1の各部構成、例えばカメラ3、表示装置12、および操作装置13の具体的構成は、実施にあたって適宜選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は画像測定機および画像測定方法に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1…画像測定機、2…ワーク、3…カメラ、4…テーブル、10…制御装置、11…制御装置本体、12…表示装置、13…操作装置、14…キーボード、15…マウス、16…ジョイスティック、17…ジョグダイヤル、18…パッド、20…撮像制御部、21…時分割撮像設定部、22…時分割撮像制御部、23…コントラスト検出部、24…長時間露光モード設定部、25…短時間露光モード設定部、30…画像処理部、31…長時間露光画像記憶部、32…短時間露光画像記憶部、33…画像合成部、34…合成画像記憶部、C…コントラスト値、Cr…基準値、L…光量、t…経過時間、T…露光時間、TF…撮像期間、TL…長露光時間、TLt…仮長露光時間、Tm…露光時間最大値、Tn…露光時間最小値、TS,TS1,TS2…短露光時間、TSt…仮短露光時間、VC…合成画像、VL…長時間露光画像、VS…短時間露光画像。
図1
図2
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図6
図7
図8
図9
図10