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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】吸着フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20230627BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230627BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20230627BHJP
   C01B 32/30 20170101ALI20230627BHJP
【FI】
B01J20/20 E
B01J20/28 Z
C02F1/28 D
C01B32/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019563028
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2018046467
(87)【国際公開番号】W WO2019131305
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2017254354
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴行
(72)【発明者】
【氏名】花本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉延 寛枝
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆之
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112518(JP,A)
【文献】特開2011-194335(JP,A)
【文献】国際公開第2010/008072(WO,A1)
【文献】特開2013-220413(JP,A)
【文献】特開平02-167809(JP,A)
【文献】特開昭62-230608(JP,A)
【文献】特開2017-007879(JP,A)
【文献】米国特許第06353528(US,B1)
【文献】国際公開第2014/061740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/34
C02F 1/28
C01B 32/00 - 32/991
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭と繊維状バインダーを含む吸着フィルターであって、密度が0.400g/ml以上であり、かつ水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積が0.60ml/g以下であることを特徴とする、トリハロメタン類に対して吸着性能を有する吸着フィルター。
【請求項2】
25℃にて、溶剤飽和濃度の1/10となる溶剤蒸気を含む空気を通し、質量が一定となったときの試料の増量から求められるベンゼン飽和吸着量が18~35%であることを特徴とする、請求項1記載の吸着フィルター。
【請求項3】
水銀圧入法による細孔直径30μm以上での細孔容積に対する、水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積(細孔直径1~20μmでの細孔容積/細孔直径30μm以上での細孔容積)が0.1~1.5である、請求項1又は2に記載の吸着フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭を含む吸着フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水の水質に関する安全衛生上の関心が高まってきており、水道水中に含まれる遊離残留塩素、トリハロメタン類などのVOC(揮発性有機化合物)、農薬、カビ臭などの有害物質を除去することが望まれている。
【0003】
特に、雑菌繁殖を防止するために水道水等に利用されている塩素は無毒な物質ではなく、残留塩素濃度の高い水道水で髪や肌を洗浄すると髪や肌の蛋白質を変性させて傷めてしまうおそれがある。また、水道水中に溶存している微量のトリハロメタンは、発ガン性物質であることが疑われている。近年の健康志向の高まりの中で、トリハロメタン等を除去することが望まれている。
【0004】
従来、これらの有害物質を除去するため、フィブリル化繊維状バインダーに粒状の活性炭を絡ませた吸着成形体がフィルターとして用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、活性炭を主成分とする瀘材を、繊維状バインダーにて成形してある成形吸着体であって、前記活性炭が、体積基準モード径が20μm以上100μm以下の微粒子状活性炭であり、前記繊維状バインダーが、フィブリル化により瀘水度20mL以上100mL以下とした繊維材料を主成分とするものである成形吸着体が開示されている。
【0006】
上記特許文献1記載の成形吸着体のように、粒子径の細かい粉末状活性炭を濾水度の低い繊維状バインダーで成形すると、成形性が良くなり、かつ、吸着性能が高く、品質が安定したフィルターが得られる。しかしながら、微粉末状の活性炭が含まれると、成形体強度が低くなることに加えて、圧力損失も高くなる上に、フィルターの目詰まりが起こりやすいという問題がわかってきた。目詰まりが起こると、充分な水量が得られなくなったり、フィルターに水圧の負荷がかかることにより破損したり、破損部位から浄化されていない水や、濾材が流出したりするという問題が起こる。
【0007】
そこで、有害物質の優れた濾過能力を保持しつつ、目詰まりが起こりにくい、粉末状活性炭とバインダーからなる吸着フィルターが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-255310号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために、吸着フィルターおよびその製造方法について詳細に検討を重ねた結果、下記構成により上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の一局面に係る吸着フィルターは、活性炭と繊維状バインダーを含む吸着フィルターであって、密度が0.400g/ml以上であり、かつ水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積が0.60ml/g以下であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態の吸着フィルターを調製するための型枠の斜視図を示す。
図2図2は、図1の型枠を用いて得られる本実施形態の吸着フィルターの一例を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示す型枠を用いて吸着フィルター用スラリーを吸引濾過して得られる予備成形体の一例を示す。
図4図4は、吸引濾過して得られた予備成形体を平面上で転動する工程を説明する図である。
図5図5は、吸着フィルターの細孔容積の測定の際の、測定試料の切り取り方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
(吸着フィルター)
本実施形態の吸着フィルターは、活性炭と繊維状バインダーを含む吸着フィルターであって、密度が0.400g/ml以上であり、かつ水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積が0.60ml/g以下であることを特徴とする。
【0014】
このような構成を有することにより、優れた通水性および高吸着性能を有し、特に、クロロホルム等の有害物質に対する濾過能力に優れ、かつ目詰まりを起こしにくい吸着フィルターを提供できる。
【0015】
これは、フィルターの密度を大きくすることで、吸着フィルターの有害物質の吸着性能を高め、かつ、特定の細孔径を有する細孔の容積を小さくすることによって、目詰まりを起こしにくくすることができるためと考えられる。
【0016】
本実施形態の吸着フィルターの密度は0.400g/ml以上である。前記密度が0.400g/ml未満であると、活性炭の総量が少なくなり、有害物質の吸着性能が低くなる。より好ましくは、前記密度は0.420g/ml以上である。一方、前記吸着フィルターの密度の上限については特に限定はされないが、あまり密度が大きくなると、吸着フィルターの目詰まりが生じやすくなる場合がある。従って、本実施形態の吸着フィルターの密度は0.550g/ml以下であることが好ましい。
【0017】
本実施形態において、吸着フィルターの密度は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
本実施形態の吸着フィルターは、水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積が0.60ml/g以下である。前記細孔容積が0.60ml/gより大きいと、懸濁物質が細孔に充填されて閉塞し、目詰まりが生じる。前記細孔容積のより好ましい範囲は、0.55ml/g以下であり、さらに好ましくは0.50ml/g以下である。一方、前記細孔容積の下限は特に限定されないが、細孔容積が小さすぎる吸着フィルターでは、フィルターの活性炭密度が減少する傾向があるため、有害物質の吸着性能が低下するおそれがある。従って、前記細孔容積は0.10ml/g以上であることが好ましい。
【0019】
本実施形態において、水銀圧入法による細孔容積の測定は、後述の実施例のように、水銀圧入法細孔容積測定装置(マイクロメリティックス社製「MicroActive AutoPore V 9620」)を用いて行うことができる。なお、後述の実施例ではフィルターの成形層を約1cm角の大きさの測定試料としているが、この測定試料の大きさはフィルターサイズによって適宜変更することが好ましい。例えば、スパウトインタイプ用のフィルターであれば約5mm角の測定試料で測定することが望ましい。
【0020】
さらに、本実施形態の吸着フィルターにおいて、水銀圧入法による細孔直径30μm以上での細孔容積に対する、水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積(細孔直径1~20μmでの細孔容積/細孔直径30μm以上での細孔容積)が0.1~1.5であることが好ましい。比較的小さい細孔と比較的大きい細孔との比率がこのような範囲であれば、懸濁物質の細孔充填による目詰まりをより抑制でき、かつ有害物質の吸着性能をさらに高めることができるという利点がある。より好ましくは、細孔直径1~20μmでの細孔容積/細孔直径30μm以上での細孔容積の範囲は、0.2~1.0であることが望ましい。
【0021】
本実施形態の吸着フィルターは、水銀圧入法による細孔直径30μm以上での細孔容積が0.40~1.0ml/gであることが好ましく、0.50~0.90ml/gであることがより好ましい。前記細孔容積が小さくなりすぎると、懸濁物質を流通するための容積が不十分となり、目詰まりが生じやすくなる。また、前記細孔容積が大きくなりすぎると、上述した吸着フィルターの密度が小さくなり、有害物質の吸着性能が低下するおそれがある。
【0022】
さらに、本実施形態の吸着フィルターは、ベンゼン吸着性能が18~35%であることが好ましく、20~35%であることがより好ましく、22~30%程度であることがさらに好ましい。ベンゼン吸着性能が18%未満であると、十分な吸着能力を保持できない可能性があり、また35%を超えると、過賦活状態で細孔径が増大しており、有害物質の吸着保持力が低下する傾向にある。したがって、本実施形態の吸着フィルターにおいて、ベンゼン吸着性能は、上記範囲となるようにすることが好ましい。
【0023】
本実施形態において、前記ベンゼン吸着性能とは、日本工業規格における活性炭試験方法JISK1474(1991年)の記載を参考に、25℃にて、溶剤飽和濃度の1/10となる溶剤蒸気を含む空気を通し、質量が一定となったときの試料の増量から求めたベンゼン飽和吸着量のことである。
【0024】
本実施形態の吸着フィルターに使用される活性炭は、特に限定はなく市販のものを使用することも可能であるが、例えば、炭素質材料を炭化及び/ 又は賦活することによって得られる活性炭を使用することもできる。炭化を必要とする場合は、通常、酸素又は空気を遮断して、例えば、400~800℃、好ましくは500~800℃、さらに好ましくは550~750℃程度で行うことができる。賦活法としては、ガス賦活法、薬品賦活法のいずれの賦活法も採用でき、ガス賦活法と薬品賦活法とを組み合わせてもよいが、特に、浄水用として使用する場合、不純物の残留の少ないガス賦活法が好ましい。ガス賦活法は炭化された炭素質材料を、通常、例えば、700~1100℃、好ましくは800~980℃、さらに好ましくは850~950℃程度で、賦活ガス(例えば、水蒸気、二酸化炭素ガスなど)と反応させることにより行うことができる。安全性及び反応性を考慮すると水蒸気を10~40容量%含有する水蒸気含有ガスが好ましい。賦活時間及び昇温速度は特に限定されず、選択する炭素質材料の種類、形状、サイズにより適宜選択できる。
【0025】
前記炭素質材料としては、特に限定されないが、例えば植物系炭素質材料(例えば、木材、鉋屑、木炭、ヤシ殻やクルミ殻などの果実殻、果実種子、パルプ製造副生成物、リグニン、廃糖蜜などの植物由来の材料)、鉱物系炭素質材料(例えば、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、コークス、コールタール、石炭ピッチ、石油蒸留残渣、石油ピッチなどの鉱物由来の材料)、合成樹脂系炭素質材料(例えば、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂などの合成樹脂由来の材料)、天然繊維系炭素質材料(例えば、セルロースなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維などの天然繊維由来の材料)などが挙げられる。これらの炭素質材料は、単独でまたは2種類以上組み合わせて使用できる。これらの炭素質材料のうち、JIS S 3201(2010年)で規定される揮発性有機化合物の吸着性能に関与するミクロ孔が発達しやすい点から、ヤシ殻やフェノール樹脂が好ましい。
【0026】
賦活後の活性炭は、特にヤシ殻などの植物系炭素質材料や鉱物系炭素質材料を用いた場合、灰分や薬剤を除去するために洗浄してもよい。洗浄には鉱酸や水が用いられ、鉱酸としては洗浄効率の高い塩酸が好ましい。
【0027】
本実施形態の活性炭の形状としては、粉末状、粒子状、繊維状(糸状、織り布(クロス)状、フェルト状)などのいずれの形状でもよく、用途によって適宜選択できるが、体積あたりの吸着性能の高い粒子状が好ましい。
【0028】
本実施形態の活性炭の粒子径は、特には限定されないが、体積基準の累計粒度分布における50%粒子径(D50)が50~200μm程度であることが好ましく、100~170μm程度であることがより好ましく、130~150μm程度であることが更に好ましい。活性炭がこのような範囲の粒子径であれば、吸着除去性能に加え、目詰まりがしにくい吸着フィルターが得られやすくなる。
【0029】
本実施形態の活性炭の粒子径は、特には限定されないが、体積基準の累計粒度分布における10%粒子径(D10)が30~100μm程度であることが好ましく、40~90μm程度であることがより好ましく、50~80μm程度であることが更に好ましい。活性炭がこのような範囲の粒子径であれば、吸着除去性能に加え、目詰まりがしにくい吸着フィルターが得られやすくなる。
【0030】
本実施形態の活性炭の粒子径は、特には限定されないが、体積基準の累計粒度分布における90%粒子径(D90)が160~240μm程度であることが好ましく、170~230μm程度であることがより好ましく、180~220μm程度であることが更に好ましい。活性炭がこのような範囲の粒子径であれば、吸着除去性能に加え、目詰まりがしにくい吸着フィルターが得られやすくなる。
【0031】
本実施形態において、上記D50、D10およびD90の数値はレーザー回折・散乱法により測定した値であり、例えば、日機装株式会社製の湿式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3300EX II)などにより測定できる。
【0032】
本実施形態の吸着フィルターに使用される繊維状バインダーとしては、前記粒子状活性炭を絡めて賦形できるものであれば、特に限定されず、合成品、天然品を問わず幅広く使用可能である。このようなバインダーとしては、例えば、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、パルプなどが挙げられる。繊維状バインダーの繊維長は4mm以下であることが好ましい。
【0033】
これらの繊維状のバインダーは2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に好ましくは、ポリアクリロニトリル繊維またはパルプをバインダーとして使用することである。それにより、成形体密度および成形体強度をさらに上げ、性能低下を抑制することができる。
【0034】
本実施形態において、繊維状の高分子バインダーの通水性は、CSF値で10~150mL程度である。本実施形態において、CSF値はJIS P8121(2012年)「パルプの濾水度試験方法」カナダ標準ろ水度法に準じて測定した値である。また、CSF値は、例えばバインダーをフィブリル化させることによって調整できる。
【0035】
繊維状の高分子バインダーのCSF値が10mL未満となると、通水性が得られず、成形体の強度が低くなり、圧力損失も高くなるおそれがある。一方で、前記CSF値が150mLを超える場合は、粉末状の活性炭を十分に保持することができず、成形体の強度が低くなる上、吸着性能に劣る可能性がある。
【0036】
また実施形態の吸着フィルターには、本発明の効果が阻害されない限り上記以外の機能性成分が含まれていてもよい。例えば、溶解性鉛を吸着除去できるゼオライト系粉末(鉛吸着材)やイオン交換樹脂またはキレート樹脂、あるいは抗菌性を付与するために銀イオン及び/又は銀化合物を含んだ各種吸着材などを任意の量加えてもよいが、通常、吸着フィルター全体に対して0.1~30質量部配合する。
【0037】
本実施形態の吸着フィルターにおける各成分の混合割合は、有害物質の吸着効果、成形性などの点から、好ましくは、前記活性炭もしくは前記活性炭と前記機能性成分の混合物100質量部に対し、前記繊維状バインダーを4~10質量部程度とする。繊維状バインダーの量が4質量部未満となると、十分な強度が得られずに成形体を成形できないおそれがある。また、繊維状バインダーの量が10質量部を超えると、吸着性能が低下するおそれがある。より好ましくは、繊維状バインダーを4.5~6質量部配合することが望ましい。
【0038】
本実施形態の吸着フィルターは、前記活性炭と前記繊維状バインダーとに加え、さらに中芯を含有する円筒状フィルターであってもよい。円筒形状にすることによって、通水抵抗を低下することができ、さらに、後述するようにハウジングに充填してカートリッジとして使用する場合、浄水器へのカートリッジの装填・交換作業が簡単にできるという利点がある。
【0039】
本実施形態で使用できる中芯としては、円筒状フィルターの中空部に挿入され、円筒状フィルターを補強できるものであれば特に限定されないが、例えば、トリカルパイプやネトロンパイプ、セラミックフィルターであることが好ましい。さらに、中芯の外周に不織布などを巻き付けて使用することもできる。
【0040】
(製造方法)
本実施形態の吸着フィルターの製造は、任意の方法で行われ、特に限定されない。効率よく製造できる点で、スラリー吸引方法が好ましい。
【0041】
以下にその一例として、本実施形態の円筒状フィルターの製造方法の詳細を図面等を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、図面中、各符号は以下を示す:
1 成形体調製用型枠
2 芯体
3 吸引用孔
4,4’ フランジ
5 濾液排出口
6 成形体
7 スラリー
8 台上
9 押さえ具
【0042】
具体的には、例えば、円筒状フィルター(成形体)は、粉末状活性炭及び繊維状バインダーを水中に分散させスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記スラリーを吸引しながら濾過して予備成形体を得る吸引濾過工程と、吸引濾過後の予備成形体を整形台上で圧縮することで外表面の形状を整える転動工程と、前記予備成形体を乾燥して乾燥した成形体を得る乾燥工程と、必要に応じて前記成形体の外表面を研削する研削工程とを含む製造方法により得られる。
【0043】
(スラリー調製工程)
本実施形態では、スラリー調製工程において、粉末状活性炭及び繊維状バインダーを、例えば、前記活性炭100質量部に対し、前記繊維状バインダーを4~8質量部となるように、かつ、固形分濃度が0.1~10質量%(特に好ましくは1~5質量%)になるように、溶媒に分散させたスラリーを調製する。前記溶媒としては特に限定はされないが、水等を用いることが好ましい。前記スラリーの固形分濃度が高すぎると、分散が不均一になり易く、成形体に斑が生じ易いという問題がある。一方、前記固形分濃度が低すぎると、成形時間が長くなり生産性が低下するだけではなく、成形体の密度が高くなり、濁り成分を捕捉することによる目詰りが発生しやすい。
【0044】
(吸引濾過工程)
次に、吸引濾過工程では、例えば、図1に示すような、芯体2の表面に多数の吸引用穴3を有し、かつ両端にフランジ4、4’を取り付けた円筒状成形用の型枠1に、上述したような中芯を取り付け、前記スラリーに入れ、濾液排出口5から前記型枠の内側から吸引しながら濾過することにより、スラリーを型枠1に付着させる。吸引方法としては、慣用の方法、例えば、吸引ポンプなどを用いて吸引する方法などを利用できる。ここで、型枠1に付着させるスラリーの量は、図3に示すように、型枠1のフランジ4、4’の直径Rに対し、R+(H×2)が105~125%程度となるような量で付着させる。例えば、前記フランジの直径が65mmである場合には、前記Hは2~9mm程度とすることが好ましい。
【0045】
(転動工程)
転動工程では、吸引濾過工程で得られた予備成形体を付着させたまま型枠1を、図4のように台上8に載せる。そして、所定の力で押さえつけることが可能な面を有する押さえ具9を用いて、該成形体をA方向に押さえつけながら前後に動かす。これによって、予備成形体7の外径を所定の大きさに調整しながら、真円度を高め、かつ外周面の凹凸を減少させる。予備成形体の外径を調整する際に、フランジ4,4’の外周が台上8に接するまで押さえ具9で押さえながら調整することが好ましい。転動させた後、予備成形体を型枠から取り外す。
【0046】
なお、前記吸引濾過工程および転動工程は、目的のフィルター密度および細孔容積を得るために、数回に亘って行っても良い。
【0047】
(乾燥工程)
前記吸引濾過および前記転動工程により予備成形体を生成した後は、型枠1の両端のフランジ4、4’を取り外し、芯体2を抜き取ることにより、中空円筒型の成形体を得ることができる。
【0048】
次いで、乾燥工程では、型枠から取り外した予備成形体を、乾燥機などで乾燥することにより成形体(本実施形態の吸着フィルター)を得ることができる。
【0049】
乾燥温度は、例えば、100~150℃(特に110~130℃)程度であり、乾燥時間は、例えば、4~24時間(特に8~16時間)程度である。乾燥温度が高すぎると、繊維状バインダーが変質したり溶融して濾過性能が低下したり成形体の強度が低下し易い。乾燥温度が低すぎると、乾燥時間が長時間になったり、乾燥が不十分になるおそれがある。
【0050】
(研削工程)
必要に応じて、前記乾燥工程の後、フィルターの外径をさらに調整したり、外周面の凹凸を減少させるために、研削工程を行うこともできる。本実施形態で使用する研削手段は、乾燥した成形体の外表面を研削(又は研磨)できれば、特に限定されず、慣用の研削方法を利用できるが、研削の均一性の点から、成形体自体を回転させて研削する研削機を用いる方法が好ましい。
【0051】

なお、研削工程は、研削機を用いた方法に限定されず、例えば、回転軸に固定した成形体に対して、固定した平板状の砥石で研削してもよい。この方法では、発生する研削滓が研削面に堆積し易いため、エアブローしながら研削するのが効果的である。
【0052】

(吸着フィルターの用途等)

本実施形態の吸着フィルターは、例えば、浄水フィルターや人工透析用フィルターなどとして用いられる。浄水フィルターや人工透析用フィルターとして使用する場合、例えば、本実施形態の吸着フィルターを上記の製造方法によって製造したのち、整形、乾燥後、所望の大きさおよび形状に切断して得ることができる。さらに必要に応じて、先端部分にキャップを装着したり、表面に不織布を装着させてもよい。
【0053】

本実施形態の吸着フィルターは、ハウジングに充填して浄水用カートリッジとして使用し得る。カートリッジは浄水器に装填され、通水に供されるが、通水方式としては、原水を全量濾過する全濾過方式や循環濾過方式が採用される。本実施形態において浄水器に装填されるカートリッジは、例えば浄水フィルターをハウジングに充填して使用すればよいが、さらに公知の不織布フィルター、各種吸着材、ミネラル添加材、セラミック濾過材などと組合せて使用することもできる。
【0054】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0055】
本発明の一局面に係る吸着フィルターは、活性炭と繊維状バインダーを含む吸着フィルターであって、密度が0.400g/ml以上であり、かつ水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積が0.60ml/g以下であることを特徴とする。
【0056】
このような構成により、有害物質の優れた濾過能力を保持しつつ、目詰まりが起こりにくい、粉末状活性炭とバインダーからなる吸着フィルターを提供できる。
【0057】
さらに、上記吸着フィルターにおいて、25℃にて、溶剤飽和濃度の1/10となる溶剤蒸気を含む空気を通し、質量が一定となったときの試料の増量から求められるベンゼン飽和吸着量が18~35%であることが好ましい。それにより、有害物質の優れた濾過能力がより確実に得られると考えられる。
【0058】
また、上記吸着フィルターにおいて、水銀圧入法による細孔直径30μm以上での細孔容積に対する、水銀圧入法による細孔直径1~20μmでの細孔容積(細孔直径1~20μmでの細孔容積/細孔直径30μm以上での細孔容積)が0.1~1.5であることが好ましい。それにより、上述したような効果がより確実に得られる。
【実施例
【0059】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に述べるが、これらの実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0060】
まず、各実施例および比較例で調製した活性炭や吸着フィルターの評価方法について説明する。
【0061】
[活性炭の粒径の測定]
活性炭の粒径(D10、D50、D90)はレーザー回折測定法により測定した。すなわち、測定対象である活性炭を界面活性剤と共にイオン交換水中に入れ、超音波振動を与え均一分散液を作製し、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EX-IIを用いて測定した。界面活性剤には、和光純薬工業株式会社製の「ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル」を用いた。分析条件を以下に示す。
【0062】
(分析条件)
測定回数;3回の平均値
測定時間;30秒
分布表示;体積
粒径区分;標準
計算モード;MT3000II
溶媒名;WATER
測定上限;2000μm、測定下限;0.021μm
残分比;0.00
通過分比;0.00
残分比設定;無効
粒子透過性;吸収
粒子屈折率;N/A
粒子形状;N/A
溶媒屈折率;1.333
DV値;0.0882
透過率(TR);0.800~0.930
拡張フィルター;無効
流速;70%
超音波出力;40W
超音波時間;180秒
【0063】
[吸着フィルター密度の測定]
円筒状吸着フィルター密度(g/ml)は、得られた吸着フィルターを120℃で2時間乾燥した後、以下の式に従って算出した。なお、円筒状吸着フィルター密度とは、活性炭と繊維状バインダーの成形層のみの密度を指す。
円筒状吸着フィルター密度=
(円筒状吸着フィルター重量)/(円筒状吸着フィルター体積)
【0064】
[吸着フィルターの細孔容積の測定]
円筒状吸着フィルターの細孔容積は、水銀圧入法細孔容積測定装置(マイクロメリティックス社製「MicroActive AutoPore V 9620」)を用い、測定した。測定圧力は0.7kPa-420MPaとした。円筒状吸着フィルターの活性炭と繊維状バインダーから成る成形層を図5のように切り取った後、切り取った断片を均等(厚み方向:フィルターの断面と垂直な方向に1/2)に切断し、切断した断片を更に約1cm角の大きさに切り取って測定を行った。切断して得られた2つの試料について、それぞれ細孔直径が1~20μmの細孔の容積、および細孔直径が30μm以上の細孔の容積を算出し、平均値をとった。
【0065】
そして、細孔直径30μm以上での細孔容積に対する、細孔直径1~20μmμm以上での細孔容積(細孔直径1~20μmでの細孔容積/細孔直径30μm以上での細孔容積)を計算により求めた。
【0066】
細孔直径が1~20μmでの細孔容積、並びに、細孔直径1~20μmでの細孔容積/細孔直径30μm以上での細孔容積(小さい細孔容積/大きい細孔容積)の結果を表に示す。
【0067】
[吸着フィルターのベンゼン吸着性能の測定]
日本工業規格における活性炭試験方法JISK1474(1991年)を参考にして、25℃にて、溶剤飽和濃度の1/10となる溶剤蒸気を含む空気を通し、質量が一定となったときの試料の増量からベンゼン飽和吸着量を求めた。測定試料としては、円筒状吸着フィルターの一部を切り取って粉砕したものを使用し、粉砕後の試料の吸着性能を評価した。
【0068】
さらに、得られた円筒状吸着フィルターについては、以下の方法により濁度成分除去性能およびクロロホルム除去性能を評価した。これらの方法は、各々、JISS3201(2010年)(家庭用浄水器試験方法)の濁度成分除去性能試験(6.2.2)および揮発性有機化合物除去性能試験(6.2.3)に準じた方法である。
【0069】
[目詰まり性能(濁度成分除去性能)試験]
原水(水道水)に、カオリンを2度の濃度となるように添加した試験水を調製した。この試験水を、0.1MPaの圧力条件下で、円筒状吸着フィルターの外側から内側に向かって、4.0L/分の初期流量で流した。初期流量の50%の通水量になった時点での積算通水量を、濁度成分除去性能として評価した。本評価試験では20000L以上を目詰まり性能における合格基準とした。
【0070】
[クロロホルム(有害物質)除去性能]
クロロホルムの濃度が60ppbの試験水を、0.1MPaの圧力条件下で、円筒状吸着フィルターの外側から内側に向かって、4.0L/分の流量で流した。クロロホルムの除去率が80%未満になった時点での積算通水量を、クロロホルム除去性能として評価した。本評価試験では8000L以上を有害物質除去性能の合格基準とした。
【0071】
(実施例1)
[吸着フィルターの原料]
(活性炭A)
原料に使用した活性炭の調製方法は以下の通りである:
フィリピン産のヤシ殻を炭化したヤシ殻炭を900℃で水蒸気賦活し、目的のベンゼン吸着量になるように賦活時間を調整し、得られたヤシ殻活性炭を希塩酸洗浄、イオン交換水で脱塩することで粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量32wt%)を得た。得られた粒状活性炭を、ボールミルで粉砕した後に、325メッシュの篩で分級し、D50値が140.9μmの粉末状活性炭Aを得た。
【0072】
(繊維状バインダー)
アクリル繊維状バインダー:日本エクスラン工業株式会社製「アクリル繊維Bi-PUL/F」、CSF値90ml
(中芯)
タキロンシーアイ株式会社製、トリカルパイプ
【0073】
[吸着フィルターの製造]
上記粉末状活性炭A100質量部に対し、繊維状バインダーを5.5質量部の割合で、合計1.055kgとして、水道水を追加し、スラリー量を20リットルとした。
【0074】
次いで、得られたスラリーを、直径3mmの多数の小孔を有する外径63mmφ、中軸径30mmφおよび高さ245mmHの金型に円筒状不織布を巻付けたトリカルパイプ(外径35mmφ、内径30.5mmφ、高さ245mmH)を装着し、スラリーからなる予備成形体の外径が73mmφとなるまで、450mmHgでスラリーを吸引した。その後、得られた予備成形体を、外径が63mmφとなるまで表面を転動成形し、乾燥後、外径63mmφ、内径35mmφおよび高さ245mmHの中空型円筒状吸着フィルターを得た。得られた吸着フィルターの密度、ベンゼン吸着性能、並びに、水銀ポロシメータ測定によって得られる、1-20μmの直径を有する細孔の細孔容積、および、1-20μmの直径を有する細孔の細孔容積/30μm以上の直径を有する細孔の細孔容積を下記表2に示す。
【0075】
この吸着フィルターを平均直径79mm、長さ約250mm、内在量約1200mlの透明なプラスチック製ハウジングに装填し、外側から内側に通水し、家庭用浄水器試験方法に準拠して、濁度成分除去性能およびクロロホルム除去性能を評価した。結果を表2に示す。
【0076】
(比較例1)
スラリー吸引後の外径を65mmφとした以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0077】
(比較例2)
[吸着フィルターの原料]
(活性炭B)
実施例1の粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量32wt%)を、D50値が114.3μmになるようにボールミルで粉砕して、粉末状活性炭Bを得た。
【0078】
そして、使用する活性炭を粉末状活性炭Bに変更した以外は、比較例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0079】
(比較例3)
使用する活性炭を粉末状活性炭Bに変更した以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0080】
(実施例2)
[吸着フィルターの原料]
(活性炭C)
原料に使用した活性炭の調製方法は以下の通りである:
フィリピン産のヤシ殻を炭化したヤシ殻炭を900℃で水蒸気賦活し、目的のベンゼン吸着量になるように賦活時間を調整し、得られたヤシ殻活性炭を希塩酸洗浄、イオン交換水で脱塩することで粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量21wt%)を得た。得られた粒状活性炭を、ボールミルで粉砕した後に、200メッシュの篩で分級し、D50値が147.6μmの粉末状活性炭Cを得た。
【0081】
そして、使用する活性炭を粉末状活性炭Cに変更した以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0082】
(比較例4)
[吸着フィルターの原料]
原料に使用した活性炭の調製方法は以下の通りである:
(活性炭D)
フィリピン産のヤシ殻を炭化したヤシ殻炭を900℃で水蒸気賦活し、目的のベンゼン吸着量になるように賦活時間を調整し、得られたヤシ殻活性炭を希塩酸洗浄、イオン交換水で脱塩することで粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量39wt%)を得た。得られた粒状活性炭を、ボールミルで粉砕した後に、325メッシュの篩で分級し、D50値が142.1μmの粉末状活性炭Dを得た。
【0083】
そして、使用する活性炭を粉末状活性炭Dに変更した以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0084】
(実施例3)
スラリー吸引後の外径を68mmφとした以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0085】
(実施例4)
[吸着フィルターの原料]
(活性炭E)
原料に使用した活性炭の調製方法は以下の通りである:
フィリピン産のヤシ殻を炭化したヤシ殻炭を900℃で水蒸気賦活し、目的のベンゼン吸着量になるように賦活時間を調整し、得られたヤシ殻活性炭を希塩酸洗浄、イオン交換水で脱塩することで粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量32wt%)を得た。得られた粒状活性炭を、ボールミルで粉砕した後に、325メッシュの篩で分級し、D50値が123.5μmの粉末状活性炭Eを得た。
【0086】
そして、使用する活性炭を粉末状活性炭Eに変更した以外は、実施例3と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0087】
(実施例5)
使用する活性炭を粉末状活性炭Eに変更した以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0088】
(実施例6)
[吸着フィルターの原料]
(活性炭F)
原料に使用した活性炭の調製方法は以下の通りである:
フィリピン産のヤシ殻を炭化したヤシ殻炭を900℃で水蒸気賦活し、目的のベンゼン吸着量になるように賦活時間を調整し、得られたヤシ殻活性炭を希塩酸洗浄、イオン交換水で脱塩することで粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量32wt%)を得た。得られた粒状活性炭を、ボールミルで粉砕した後に、325メッシュの篩で分級し、D50値が123.0μmの粉末状活性炭Fを得た。
【0089】
そして、使用する活性炭を粉末状活性炭Fに変更した以外は、実施例3と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0090】
(比較例5)
使用する活性炭を粉末状活性炭Fに変更した以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0091】
(実施例7)
[吸着フィルターの原料]
(活性炭G)
原料に使用した活性炭の調製方法は以下の通りである:
フィリピン産のヤシ殻を炭化したヤシ殻炭を900℃で水蒸気賦活し、目的のベンゼン吸着量になるように賦活時間を調整し、得られたヤシ殻活性炭を希塩酸洗浄、イオン交換水で脱塩することで粒状活性炭(JISK1474、18×42メッシュ、ベンゼン吸着量35wt%)を得た。得られた粒状活性炭を、ボールミルで粉砕した後に、325メッシュの篩で分級し、D50値が145.0μmの粉末状活性炭Gを得た。
【0092】
そして、使用する活性炭を粉末状活性炭Gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で円筒状吸着フィルターを作製した。各評価試験結果を表2に示す。
【0093】
なお、上記各活性炭A~GのD10、D50、D90を表1にまとめる。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
(考察)
本実施形態の吸着フィルターは、表2に示されるように、有害物質除去性能を維持しつつ、非常に優れた目詰まり性能を示した。
【0097】
それに対し、比較例の吸着フィルターは、有害物質除去性能あるいは目詰まり性能において劣る結果となった。
【0098】
以上より、本発明の吸着フィルターによれば、目詰まり性能と有害物質除去性能を両立することができることが確認できた。
【0099】
この出願は、2017年12月28日に出願された日本国特許出願特願2017-254354を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0100】
本発明を表現するために、前述において具体例等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、吸着フィルターや浄水等に関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5