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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】切断工具
(51)【国際特許分類】
   B26B 25/00 20060101AFI20230627BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
B26B25/00 A
B26B27/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020205130
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092358
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(73)【特許権者】
【識別番号】305022598
【氏名又は名称】株式会社プロテリアルプレシジョン
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀一
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3171604(JP,U)
【文献】特許第6006917(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 25/00
B26B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブを切断するための切断工具であって、
前記チューブに切り込む刃先を備える刃物と、
前記刃先に対向配置され、前記チューブに当接し、前記チューブを回転可能に支持するチューブ受け面を備えるチューブ受け具と、
前記刃物が取り付く刃物取付部、前記刃物取付部に続く第1クランプアーム、前記第1クランプアームに続く第1レバー連結部、前記第1レバー連結部に続く第1バネ係止部、および、前記第1バネ係止部に続く第1グリップアームを備える第1レバーと、
前記チューブ受け具が取り付くチューブ受け具取付部、前記チューブ受け具取付部に続く第2クランプアーム、前記第2クランプアームに続く第2レバー連結部、前記第2レバー連結部に続く第2バネ係止部、および、前記第2バネ係止部に続く第2グリップアームを備える第2レバーと、
前記第1レバーの第1レバー連結部と前記第2レバーの第2レバー連結部とを繋ぎ、前記第1レバーと前記第2レバーのそれぞれを同一平面内で回転可能に支持する連結軸と、
前記第1バネ係止部と前記第2バネ係止部とで係止され、前記刃物取付部と前記チューブ受け具取付部とを近づけるための予荷重を付与するバネと、を有し、
前記第1グリップアームおよび前記第2グリップアームに外部荷重を付与して前記刃先と前記チューブ受け面とを離間させる第1操作と、
前記刃先と前記チューブ受け面との間に前記チューブを配置した後に前記外部荷重を除去し、前記刃先と前記チューブ受け面との間に前記チューブをクランプする第2操作と、
前記バネの予荷重を利用して前記刃先を前記チューブに押し付けて切り込む第3操作と、
前記第3操作を行った後の状態で、前記刃先と前記チューブとを相対的に回転させる第4操作として、前記刃先と前記チューブ受け面との間に前記チューブがクランプされた前記切断工具を手または機械装置で保持して固定して前記チューブを手または機械装置で回転させる操作、前記刃先と前記チューブ受け面との間にクランプされた前記チューブを手または機械装置で保持して固定して前記切断工具を前記チューブ回りに手または機械装置で回転させる操作、および、前記刃先と前記チューブ受け面との間にクランプされた前記チューブを手または機械装置で保持して回転させるとともに前記切断工具を手または機械装置で保持して前記チューブ回りに互いに反対の向きに回転させる操作、のうちのいずれか1つを行うことによって、前記チューブを切断する、切断工具。
【請求項2】
前記刃物が前記第1クランプアームの延在方向に対して軸方向が直交する刃物支軸を介して前記刃物取付部に取り付き、前記刃物の前記刃先が前記刃物支軸回りに回転自在に支持される、請求項1に記載の切断工具。
【請求項3】
前記チューブ受け具が前記第2クランプアームの延在方向に対して軸方向が直交するチューブ受け具支軸を介して前記チューブ受け具取付部に取り付き、前記チューブ受け具の前記チューブ受け面が前記チューブ受け具支軸回りに回転自在に支持される、請求項1または2に記載の切断工具。
【請求項4】
前記バネがねじりバネである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の切断工具。
【請求項5】
前記チューブの中空部に棒状の切断補助具を挿入した状態として、前記チューブを切断する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の切断工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断工具に関し、詳しくは、チューブの切断(横切り)に適する切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、医療用のチャンネルチューブ、カテーテル、およびガイドチューブなどの用途で、1.5mm~15mm程度の外径に対して0.1mm~3.0mm程度の肉厚を有する、薄肉チューブが知られている。このような薄肉チューブは、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルなどの半硬質樹脂からなる樹脂チューブであり、金属材料が樹脂材料で被覆された樹脂被覆金属チューブである。具体的に、たとえば、特許文献1に開示される薄肉チューブは、外側の樹脂層と内側の金属層とにより構成された、2層構造の樹脂被覆金属チューブである。また、たとえば、特許文献2に開示される薄肉チューブは、外側の樹脂層と、中間の金属線からなる螺旋状またはメッシュ状の金属層と、内側の樹脂層とにより構成された、3層構造の樹脂被覆金属チューブである。このような薄肉チューブは、その用途や必要に応じて、適切な長さに切断(横切り)されて利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-116787号公報
【文献】特開平5-95892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような薄肉チューブは、その薄肉の構造に起因して機械的強さが小さいため、チューブの径方向に大きな荷重が加わると容易に変形する。そのため、上記したような薄肉チューブを切断(横切り)すると、切断荷重(切断力)に起因してチューブに潰れ変形が発生し、チューブの切断面に突起(バリ)や切断痕(凹凸)などが形成される問題があった。特に、1.5mm~15mm程度の外径に対して0.1mm~3.0mm程度の肉厚を有する薄肉チューブは、切断時に潰れ変形が発生して品質不良になりやすく、早急な改善が望まれている。
【0005】
この発明の目的は、操作が簡易で、切断(横切り)による潰れ変形が抑制され、高品質のチューブが得られる、簡易な構成の切断工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記したような薄肉チューブを切断(横切り)したときの挙動を詳細に検討し、チューブに切り込む刃先とチューブとの相対的な位置関係を適切な状態に保つことで上記課題が解決できることを見出し、この発明に想到することができた。
【0007】
この発明に係る切断工具は、チューブを切断するための切断工具であって、
前記チューブに切り込む刃先を備える刃物と、
前記刃先に対向配置され、前記チューブに当接し、前記チューブを回転可能に支持するチューブ受け面を備えるチューブ受け具と、
前記刃物が取り付く刃物取付部、前記刃物取付部に続く第1クランプアーム、前記第1クランプアームに続く第1レバー連結部、前記第1レバー連結部に続く第1バネ係止部、および、前記第1バネ係止部に続く第1グリップアームを備える第1レバーと、
前記チューブ受け具が取り付くチューブ受け具取付部、前記チューブ受け具取付部に続く第2クランプアーム、前記第2クランプアームに続く第2レバー連結部、前記第2レバー連結部に続く第2バネ係止部、および、前記第2バネ係止部に続く第2グリップアームを備える第2レバーと、
前記第1レバーの第1レバー連結部と前記第2レバーの第2レバー連結部とを繋ぎ、前記第1レバーと前記第2レバーのそれぞれを同一平面内で回転可能に支持する連結軸と、
前記第1バネ係止部と前記第2バネ係止部とで係止され、前記刃物取付部と前記チューブ受け具取付部とを近づけるための予荷重を付与するバネと、を有し、
前記第1グリップアームおよび前記第2グリップアームに外部荷重を付与して前記刃先と前記チューブ受け面とを離間させる第1操作と、
前記刃先と前記チューブ受け面との間に前記チューブを配置した後に前記外部荷重を除去し、前記刃先と前記チューブ受け面との間に前記チューブをクランプする第2操作と、
前記バネの予荷重を利用して前記刃先を前記チューブに押し付けて切り込む第3操作と、
前記第3操作を行った後の状態で、前記刃先と前記チューブとを相対的に回転させる第4操作として、前記刃先と前記チューブ受け面との間に前記チューブがクランプされた前記切断工具を手または機械装置で保持して固定して前記チューブを手または機械装置で回転させる操作、前記刃先と前記チューブ受け面との間にクランプされた前記チューブを手または機械装置で保持して固定して前記切断工具を前記チューブ回りに手または機械装置で回転させる操作、および、前記刃先と前記チューブ受け面との間にクランプされた前記チューブを手または機械装置で保持して回転させるとともに前記切断工具を手または機械装置で保持して前記チューブ回りに互いに反対の向きに回転させる操作、のうちのいずれか1つを行うことによって、前記チューブを切断する。
【0008】
この発明に係る切断工具は、前記刃物が前記第1クランプアームの延在方向に対して軸方向が直交する刃物支軸を介して前記刃物取付部に取り付き、前記刃物の前記刃先が前記刃物支軸回りに回転自在に支持されることが好ましい。
【0009】
この発明に係る切断工具は、前記チューブ受け具が前記第2クランプアームの延在方向に対して軸方向が直交するチューブ受け具支軸を介して前記チューブ受け具取付部に取り付き、前記チューブ受け具の前記チューブ受け面が前記チューブ受け具支軸回りに回転自在に支持されることが好ましい。
【0010】
この発明に係る切断工具は、前記バネがねじりバネであることが好ましい。
【0011】
この発明に係る切断工具は、前記チューブの中空部に棒状の切断補助具を挿入した状態として、前記チューブを切断することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、操作が簡易で、切断(横切り)による潰れ変形が抑制され、高品質のチューブが得られる、簡易な構成の切断工具を提供することができる。特に、3mm以上15mm以下の外径に対して0.1mm以上3.0mm以下の肉厚を有するチューブの切断(横切り)に有利な効果を奏する、切断工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】チューブの一例であって、端面(切断面)が円筒形状の樹脂被覆金属チューブを模式的に示す図である。
図2】この発明に係る切断工具の実施形態の一つとして示す構成例(構成例1)であって、待機状態の切断工具を示す正面図である。
図3】待機状態の切断工具の内部を一部断面で示す図である。
図4】待機状態の切断工具の側面図である。
図5】待機状態から第1操作を行った状態の切断工具を示す図である。
図6】第1操作後に第2操作を行った状態の切断工具を示す図である。
図7】第2操作後に第3操作を行った状態の切断工具を示す図である。
図8】第3操作後に行う第4操作について説明するための図である。
図9】第4操作におけるチューブ、刃先およびチューブ受け面の位置について説明するための図である。
図10】切断補助具を用いたチューブの切断について説明するための図である。
図11】この発明に係る切断工具の実施形態の一つとして示す構成例(構成例2)であって、待機状態の切断工具を示す図である。
図12】この発明に係る切断工具に適用可能な刃先の構成例を示す図である。
図13】この発明に係る切断工具に適用可能なチューブ受け面の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係る切断工具の実施形態の構成、および、切断対象となるチューブの構成について、適宜図面を参照して説明する。なお、この発明に係る切断工具およびチューブの構成は、ここに例示する構成に限定するものではない。この発明に係る切断工具の構成は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解することが相当である。なお、切断工具およびチューブを構成する各部の呼称および各部に付す符号は、特段の断りがない限り、明細書および図面の記載において共用する。
【0015】
まず、この発明に係る切断工具の切断対象となるチューブの具体例を、図1に示す。
【0016】
図1に示すチューブWは、樹脂被覆金属チューブの一例であって、端面(断面)が円筒形状の薄肉チューブである。このチューブWは、金属層Wmと、この金属層Wmを被覆する樹脂層Wpとにより構成されている。樹脂層Wpは、内側樹脂層Wp1と、外側樹脂層Wp2とにより構成されている。このチューブWは、たとえば、0.1mm以上2mm以下の肉厚である。このチューブWは、たとえば、1.5mm以上15mm以下の外径である。このチューブWは、たとえば、医療用のチャンネルチューブ、カテーテル、および、カテーテルワーヤーのガイドチューブなどとして使用されるものであってよい。なお、このチューブWは、後述する図6から図9に示すチューブWに対応する。
【0017】
金属層Wmは、チューブWを構成する金属部分である。金属層Wmは、たとえば、ばね用ステンレス鋼などからなる金属帯材がメッシュ状に形成されたものである。また、金属層Wmは、たとえば、ばね用ステンレス鋼などからなる金属帯材が螺旋状に形成されたものである。金属層Wmの螺旋形状は、たとえば、1.5mm超15mm未満の外径で、0.5mm以上5mm以下のピッチである。この場合、このチューブWを切断するための刃物の刃先は、上記ピッチに適する厚み、たとえば、チューブWと接触する部位の厚さ(刃厚)が0.5mm以上5mm以下の刃先を用いることが好ましい。金属層Wmとなる金属帯材は、たとえば、0.01mm以上1.8mm以下の厚さで、0.5mm以上3mm以下の幅である。
【0018】
樹脂層Wpは、チューブWを構成する樹脂部分である。樹脂層Wpは、チューブWを構成する金属部分(金属層Wm)の表面を被覆している。樹脂層Wpは、熱可塑性樹脂からなる内側樹脂層Wp1と、熱可塑性樹脂からなる外側樹脂層Wp2とで構成されている。内側樹脂層Wp1は、たとえば、0.02mm以上1mm以下の肉厚である。外側樹脂層Wp2は、たとえば、0.02mm以上1mm以下の肉厚である。内側樹脂層Wp1および外側樹脂層Wp2は、同材質であってもよいし、異材質であってもよい。内側樹脂層Wp1および外側樹脂層Wp2の材質は、それぞれ、たとえば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PA(ポリアミド)またはPTFE(ポリテトラフルオロチレン)などのフッ素樹脂などであってよい。
【0019】
次に、この発明に係る切断工具の実施形態の構成例を挙げて、適宜図面を参照して説明する。
【0020】
[構成例1]
この発明に係る切断工具の実施形態の一つとして、図2から図4に示す切断工具1を挙げる。構成例1として示す切断工具1は、たとえば、図1に示すような金属層Wmが樹脂層Wpで被覆されたチューブWの横切りが可能である。なお、ここでいう「横切り」とは、チューブWの長手方向と交差する方向に切断することを意図する。
【0021】
切断工具1は、チューブWに切り込む刃先11を備える刃物10を有する。図2図4において、刃物10は、チューブWに近づく向き(Z2側)に突出する凸状の円形の刃先、いわゆる円形刃を備えている。刃物10の刃先11はチューブWに対して凸(Z2側に凸)の凸状の刃先である。切断工具1に搭載する刃物の刃先は、図2図4に示す刃物10の刃先11に限らない。たとえば、チューブWに対向して平行にX方向に延びる直状(平状)の刃先、または、チューブWから離れる向き(Z1側)に凹む凹状の刃先を、必要に応じて選択することができる。好ましくは、図2図4に示す刃物10の刃先11(円形刃)である。刃物の刃先の形状については後述する。
【0022】
切断工具1は、刃物10の刃先11に対向配置され、チューブWに当接し、チューブWを回転可能に支持するチューブ受け面21を備えるチューブ受け具20を有する。図2図4において、刃物10の刃先11はZ1側に配置され、これに対向して、チューブ受け面21を備えるチューブ受け具20がZ2側に配置されている。このチューブ受け具20は、2つのローラによって構成され、チューブWから離れる向き(Z2側)に凹む、凹状のチューブ受け面21を備えている。チューブ受け面21は、一方のローラの外周面(円柱側面)からなるチューブ受け面21aと、他方のローラの外周面(円柱側面)からなるチューブ受け面21bと、一対のローラの間に画成された空間とにより構成される。この2つのローラからなる構成によって、チューブWから離れる向き(Z2側)に凹む、凹状のチューブ受け面21となっている。なお、ローラの外周面はチューブWに近づく向き(Z1側)に凸の凸状の曲面である。切断工具1に搭載するチューブ受け具のチューブ受け面は、図2図4に示すチューブ受け具20のチューブ受け面21に限らない。たとえば、チューブWから離れる向き(Z2側)にV字状またはU字状などに凹む凹状のチューブ受け面を、必要に応じて選択することができる。好ましくは、一対のローラにより構成された、図2図4に示すチューブ受け具20のチューブ受け面21である。チューブ受け具のチューブ受け面の形状については後述する。
【0023】
切断工具1は、刃物10が取り付く刃物取付部31、刃物取付部31に続くクランプアーム32(第1クランプアーム)、クランプアーム32に続くレバー連結部33(第1レバー連結部)、レバー連結部33に続くバネ係止部34(第1バネ係止部)、および、バネ係止部34に続くグリップアーム35(第1グリップアーム)を備える第1レバー30を有する。
【0024】
切断工具1は、チューブ受け具20が取り付くチューブ受け具取付部41、チューブ受け具取付部41に続くクランプアーム42(第2クランプアーム)、クランプアーム42に続くレバー連結部43(第2レバー連結部)、レバー連結部43に続くバネ係止部44(第2バネ係止部)、および、バネ係止部44に続くグリップアーム45(第2グリップアーム)を備える第2レバー40を有する。
【0025】
切断工具1は、第1レバー30のレバー連結部33と第2レバー40のレバー連結部43とを繋ぎ、第1レバー30と第2レバー40のそれぞれを同一平面内(X-Z平面内)で回転可能に支持する連結軸50を有する。
【0026】
切断工具1は、第1レバー30のバネ係止部34と第2レバー40のバネ係止部44とで係止され、刃物取付部31とチューブ受け具取付部41とを近づけるための予荷重を付与するバネ60を有する。切断工具1は、後述する第1操作を行う前の待機状態(図3参照)では、バネ60の一方のフックが第1レバー30のバネ係止部34に係止され、バネ60の他方のフックが第2レバー40のバネ係止部44に係止されている。このとき、バネ60は、適度な大きさの抵抗力が生じるように、係止されている。この待機状態でバネ60に生じている抵抗力が予荷重である。このバネ60による予荷重の付与によって、刃物取付部31とチューブ受け具取付部41とが近づけられる。
【0027】
図2図4において、バネ60は、薄板バネであるねじりバネである。バネ60は、曲げ部と、曲げ部の一方にある腕部およびフックと、曲げ部の他方にある腕部およびフックと、を備えている。バネ60は、曲げ部の軸回りにねじりモーメントを生じさせるために2つのフックの隙間を広げて、一方のフックを第1レバー30のバネ係止部34に係止し、他一方のフックを第2レバー40のバネ係止部44に係止している。バネ60の2つのフックの間隔を広げて生じたねじりモーメントに抵抗する力は、バネ係止部34、44を介して、刃物取付部31とチューブ受け具取付部41とを近づける向きの予荷重(予圧)を第1レバー30および第2レバー40に付与している。
【0028】
切断工具1に搭載するバネは、図2図4に示すバネ60(ねじりバネ)に限らず、たとえば、曲げ部にY方向が軸方向であるコイルを備えたねじりコイルバネ、軸方向に圧縮荷重を負荷したときにそれに抵抗する力を生じる圧縮バネまたは圧縮コイルバネなどのバネ形状を選択することができる。また、バネ60(薄板バネ)に限らず、たとえば、線バネ、金属バネ、鋼製バネ、非鉄金属バネまたは非金属バネなどのバネ種類やバネ材質を選択することができる。好ましくは、ねじりバネであり、より好ましくは、線バネまたは薄板バネであるねじりバネである。ねじりバネは、構造が簡素で、比較的軽量である。ねじりバネは、ねじり量が2つのフックの間隔の大小で容易に調整できるため、上記予荷重(予圧)の設定を簡易かつ高精度に行うことができる。
【0029】
切断工具1は、好ましくは、刃物10が第1レバー30のクランプアーム32の延在方向(X方向)に対して軸方向が直交する刃物支軸70を介して刃物取付部31に取り付き、刃物10の刃先11がY軸と平行な刃物支軸70回りに回転自在に支持される。この構成によって、刃物支軸70回りに回転自在に支持される刃物10の刃先11は、X-Z平面内で自在に回転することができる。
【0030】
ここで、チューブWの切断中、刃物10の刃先11とチューブWが互いに接して摩擦力が発生する。たとえば、刃物の刃先が回転(自転)しない、いわゆる固定刃の場合、刃先が摺動しながらチューブWを切り込むことにより、摺動摩擦力(摺動抵抗)が発生する。一方、刃物の刃先が回転(自転)する、いわゆる回転刃の場合、刃先が転動しながらチューブWを切り込むことにより、転がり摩擦力(転がり抵抗)が発生する。転がり抵抗は摺動抵抗よりも十分に小さく有利である。そのため、好ましくは、刃物の刃先が回転(自転)する回転刃、すなわち図2図4に示す刃先11を備える刃物10(円形刃)を選択する。
【0031】
切断工具1は、好ましくは、チューブ受け具20が第2レバー40のクランプアーム42の延在方向(X方向)に対して軸方向が直交するチューブ受け具支軸80を介してチューブ受け具取付部41に取り付き、チューブ受け具20のチューブ受け面21がY軸と平行なチューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持される。この構成によって、チューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持されるチューブ受け具20のチューブ受け面21は、X-Z平面内で自在に回転することができる。
【0032】
ここで、チューブWの切断中、刃物10の刃先11と同様、チューブ受け具20のチューブ受け面21とチューブWが互いに接触して摩擦力が発生する。たとえば、チューブ受け具のチューブ受け面が回転(自転)しない場合、チューブWが摺動しながらチューブ受け面で支持されることにより、摺動摩擦力(摺動抵抗)が発生する。一方、チューブ受け具のチューブ受け面が回転(自転)する場合、チューブWが転動しながらチューブ受け面で支持されることにより、転がり摩擦力(転がり抵抗)が発生する。転がり抵抗は摺動抵抗よりも十分に小さく有利である。そのため、好ましくは、チューブ受け具のチューブ受け面が回転(自転)する構成であり、図2図4に示すチューブ受け面21を備えるチューブ受け具20である。また、チューブWをチューブ受け面で支持する場合、接触抵抗の低減には面接触よりも線接触が有利である。この観点から、好ましくは、チューブWに対して線接触となるローラの外周面(円柱側面)を利用した、図2図4に示すチューブ受け面21である。
【0033】
切断工具1は、好ましくは、上記した構成の刃物支軸70を介して刃物取付部31に取り付く刃物10の刃先11と、上記した構成のチューブ受け具支軸80を介してチューブ受け具取付部41に取り付くチューブ受け具20のチューブ受け面21とを組み合わせた構成である。この構成によって、刃物支軸70回りに回転自在に支持される刃物10の刃先11と、チューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持されるチューブ受け具20のチューブ受け面21とが、それぞれ、X-Z平面内で自在に回転することができる。そのため、上記したように、チューブWの切断中、刃先11においては転がり抵抗となり、チューブ受け面21においては線接触となり、十分に有利である。
【0034】
上記のように、切断工具1は、刃物10と、チューブ受け具20と、第1レバー30と、第2レバー40と、連結軸50と、バネ60と、を有する簡易な構成で、チューブWを切断(横切り)することができる。簡易な構成の切断工具1であるが、特に、3mm以上15mm以下の外径に対して0.1mm以上3.0mm以下の肉厚を有するチューブWの切断(横切り)に有利な効果を奏する。
【0035】
次に、この発明に係る切断工具の操作方法について、図2図4に示す切断工具1により図1に示すチューブWを切断する場合を挙げて、図5図9を参照して説明する。
【0036】
切断工具1によるチューブWの切断は、第1操作、第2操作、第3操作および第4操作を、この順に行う。
【0037】
図5に示すように、切断工具1の第1操作は、第1レバー30のグリップアーム35および第2レバー40のグリップアーム45に外部荷重を付与し、刃物10の刃先11とチューブ受け具20のチューブ受け面21とを離間させる操作である。たとえば、切断工具1を人手で操作する場合、一方の手でグリップアーム35、45を保持し、グリップアーム35、45を握る。このときの握力がグリップアーム35、45に付与する外部荷重である。なお、切断工具1は、第1操作を行う前の待機状態(図3参照)では、バネ60による予荷重を付与することによって、刃物取付部31とチューブ受け具取付部41とが近づいた状態になっている。
【0038】
待機状態の切断工具1のグリップアーム35、45をバネ60による予荷重に抗して握ると、第1レバー30側では、連結軸50の軸心P回りに、グリップアーム35がZ2側に回転し、クランプアーム32がZ1側に回転する。同時に、第2レバー側では、連結軸50の軸心P回りに、グリップアーム45がZ1側に回転し、クランプアーム42がZ2側に回転する。このとき、グリップアーム35、45に加えた握力によって生じるトルクTf(外部荷重トルク)と、バネ60の抵抗力によって生じるトルクTs(バネ荷重トルク)との差分が、クランプアーム32、42のX1側を互いに離間させる向きのトルクTc(離間トルク)となる。このトルクTcによって、第1レバー30のクランプアーム32のX1側に設けられた刃物取付部31がZ1側に移動し、第2レバー40のクランプアーム42のX1側に設けられたチューブ受け具取付部41がZ2側に移動する。この結果、刃物取付部31に取り付けられた刃物10と、チューブ受け具取付部41に取り付けられたチューブ受け具40とが、互いに離間するため、刃先11とチューブ受け面21とを離間させることができる。
【0039】
上記第1操作に続いて、第2操作を行う。図6に示すように、切断工具1の第2操作は、刃物10の刃先11とチューブ受け具20のチューブ受け面21との間にチューブWを配置した後に外部荷重を除去し、刃先11とチューブ受け面21との間にチューブWをクランプする操作である。たとえば、上記第1操作を行った一方の手はグリップアーム35、45を握ったままで保持し、他方の手でチューブWを刃先11とチューブ受け面21の間に配置する。そして、チューブWが所定の位置にあることを確認し、握力を弱めてグリップアーム35、45を解放する。
【0040】
切断工具1のグリップアーム35、45の握力を弱めてバネ60の抵抗力が上回ると、第1レバー30側では、連結軸50の軸心P回りに、クランプアーム32がZ2側に回転し、グリップアーム35がZ1側に回転する。同時に、第2レバー側では、連結軸50の軸心P回りに、クランプアーム42がZ1側に回転し、グリップアーム45がZ2側に回転する。このとき、グリップアーム35、45に加えた握力によって生じるトルクTfが小さくなるため、バネ60の抵抗力によって生じるトルクTs(バネ荷重トルク)がクランプアーム32、42のX1側を互いに近づける向きのトルクTc(近接トルク)となる。このトルクTcによって、第1レバー30のクランプアーム32のX1側に設けられた刃物取付部31がZ2側に移動し、第2レバー40のクランプアーム42のX1側に設けられたチューブ受け具取付部41がZ1側に移動する。この結果、刃物取付部31に取り付けられた刃物10と、チューブ受け具取付部41に取り付けられたチューブ受け具20とが、互いに近接するため、刃先11とチューブ受け面21とを近接させることができる。そして、刃先11とチューブ受け面21とを十分に近接させることによって、刃先11とチューブ受け面21との間にチューブWをクランプすることができる。
【0041】
上記第2操作に続いて、第3操作を行う。図7に示すように、切断工具1の第3操作は、バネ60による予荷重を利用して、刃物10の刃先11をチューブWに押し付けて切り込む操作である。たとえば、上記第2操作を行った一方の手の握力を十分に弱めてグリップアーム35、45を十分に解放する。このとき、バネ60の抵抗力(予荷重)によって生じるトルクTs(バネ荷重トルク)が、クランプアーム32、42のX1側を互いに近づけ、さらに刃物10の刃先11をチューブWに押し付けて切り込む向きのトルクTc(近接トルク)となる。この結果、刃物10の刃先11は、チューブ受け具20のチューブ受け面21に支持されたチューブWを切り込むことができる。この場合、バネ60による予荷重の大きさを適切に設定する。バネ60の予荷重を設定する場合、たとえば、切断対象となるチューブWの肉厚および外径、樹脂層Wpの材質および硬さ、金属層Wmの材質および硬さを考慮することが好ましく、刃物10の刃先11の材質、硬さ、刃先角および刃厚を考慮することが好ましく、バネ形状、バネ種類およびバネ材質を考慮することが好ましい。
【0042】
上記第3操作に続いて、第4操作を行う。切断工具1の第4操作は、刃物10の刃先11をチューブWに押し付けて切り込んだ状態で、刃物10の刃先11とチューブWとを相対的に回転させる操作である。刃物10の刃先11をチューブWに押し付けて切り込んだ状態とは、第3操作を行った後の状態である。
【0043】
この発明における第4操作の第1例は、たとえば、切断工具1を一方の手で保持して固定し、チューブWを他方の手で保持し、チューブWを回す操作である。つまり、刃先11とチューブ受け面21との間にチューブWがクランプされた切断工具1を固定し、クランプによって押し付けた刃先11を切り込ませたままの状態で、チューブWを手で回転(自転)させる操作である。なお、切断工具1およびチューブWを手で保持する替わりに、機械装置などで保持しても構わない。また、チューブWを手で回す替わりに、機械装置などで回しても構わない。この操作を行って、チューブ軸θw(図8参照)を中心としてチューブWが約1回転したとき、チューブWを切断することができる。
【0044】
切断工具1を固定し、チューブWを回す間、刃物10の刃先11に視点を置けばチューブWが回転しており、チューブWに視点を置けば刃物10の刃先11が回転している。つまり、切断工具1を固定し、チューブWを回す操作を行っている間、刃物10の刃先11とチューブWとは相対的に回転している。同時に、切断工具1側の連結軸50の軸心P、刃物支軸70の軸心Q、チューブ受け具支軸80aの軸心R1、および、チューブ受け具支軸80bの軸心R2と、チューブ軸θwとが、それぞれ、相対的に回転している。
【0045】
この第4操作の第1例を行う切断工具1は、チューブWをたとえば手で回す簡易な操作でチューブWを切断することができるし、切断によるチューブWの潰れ変形を抑制することができる。切断工具1は、操作が簡単であるが、特に、3mm以上15mm以下の外径に対して0.1mm以上3.0mm以下の肉厚を有するチューブWの切断(横切り)に有利な効果を奏する。切断に供するチューブWの全長が比較的短い場合、切断工具1を固定し、チューブWを回す第1例の第4操作を選択すると有利である。
【0046】
この発明における第4操作の第2例は、たとえば、チューブWを他方の手で保持して固定し、切断工具1を一方の手で保持し、切断工具1を回す操作である。つまり、刃先11とチューブ受け面21との間にクランプされたチューブWを固定し、切断工具1をチューブ軸θw回りに回転(公転)させる操作である。なお、切断工具1およびチューブWを手で保持する替わりに、機械装置などで保持しても構わない。また、切断工具1を手で回す替わりに、機械装置などで回しても構わない。この操作を行って、チューブ軸θwを中心として切断工具1が約1回転したとき、チューブWを切断することができる。
【0047】
この切断工具1を回す操作を行う前は、図8に示すように、チューブWは、刃物10の刃先11とチューブ受け具20a、20bのチューブ受け面21a、21bとでクランプされている(第1操作~第3操作を参照)。刃先11とチューブ受け面21a、21bとでクランプされたチューブWは、クランプによって押し付けられた刃物10の刃先11が切り込んだ状態で、トルクTcによって固定されている。この状態で切断工具1をチューブ軸θw回りに回転(公転)させると、刃先11およびチューブ受け面21a、21bがチューブ軸θw回りに回転(公転)する。なお、切断工具1のチューブ軸θw回りの回転(公転)は、刃先11およびチューブ受け面21a、21bのチューブ軸θw回りの回転(公転)と同意である。切断工具1をチューブ軸θw回りに回転(公転)させる場合、矢印CWRで示す時計回りでも、矢印ACWRで示す反時計回りでも、いずれでもよい。
【0048】
チューブWを固定したままの図8に示す状態から、たとえば、切断工具1すなわち刃先11およびチューブ受け面21a、21bをチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す反時計回りに回転させる操作を行う。チューブWを固定し、切断工具1を回す間、チューブWに視点を置けば刃物10の刃先11が回転(公転)しており、刃物10の刃先11に視点を置けばチューブWが回転(公転)している。つまり、チューブWを固定し、切断工具1を回す操作を行っている間、刃物10の刃先11とチューブWとは相対的に回転している。このとき、切断工具1側の連結軸50の軸心Pは軌道θ50上を移動し、刃物支軸70の軸心Qは軌道θ10上を移動し、チューブ受け具支軸80aの軸心R1およびチューブ受け具支軸80bの軸心R2は軌道θ20上を移動している。つまり、チューブWを固定し、切断工具1を回す操作を行っている間、切断工具1側の連結軸50の軸心P、刃物支軸70の軸心Q、チューブ受け具支軸80aの軸心R1、および、チューブ受け具支軸80bの軸心R2と、チューブ軸θwとは、それぞれ、相対的に回転している。
【0049】
図8に示す状態を、チューブWに対する刃先11およびチューブ受け面21a、21bの位置に着目し、図9(a)に簡略化して示す。以下、図9を参照して説明する。
【0050】
図9(a)に示す、刃先11およびチューブ受け面21a、21bをチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す向きに回転させる前の状態では、刃先11が、Z1側からZ2側に向かって切断点C1、C2まで、チューブWを切り込んでいる。そのため、この状態のチューブWは、矢印ACWRで示す向きに、切断点C1から切断点C2まで切断されている。
【0051】
図9(a)に示す状態から、刃先11およびチューブ受け面21a、21bをチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す向きに、たとえば、約120°回転させると、図9(b)に示す状態となる。この状態では、矢印ACWRで示す向きにさらに回転した刃先11が、切断点C2から切断点C3まで、チューブWをさらに切り込んでいる。そのため、この状態のチューブWは、矢印ACWRで示す向きに、切断点C1から切断点C2まで切断されている。
【0052】
図9(b)に示す状態から、刃先11およびチューブ受け面21a、21bをチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す向きに、たとえば、さらに約120°回転させると、図9(c)に示す状態となる。この状態では、矢印ACWRで示す向きにさらに回転した刃先11が、切断点C2から切断点C1を通過して切断点C3まで到達する。この間、チューブWは、さらに切り込まれ、刃先11が切断点C3から切断点C1に到達したときに、完全に切断される。この後、刃先11およびチューブ受け面21a、21bをチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す向きに、たとえば、さらに約120°回転させると、図9(a)に示す状態に戻る。
【0053】
この第4操作の第2例を行う切断工具1は、切断工具1をたとえば手で回す簡易な操作でチューブWを切断することができるし、切断によるチューブWの潰れ変形を抑制することができる。切断工具1は、操作が簡単であるが、特に、3mm以上15mm以下の外径に対して0.1mm以上3.0mm以下の肉厚を有するチューブWの切断(横切り)に有利な効果を奏する。切断に供するチューブWの全長が比較的長い場合、チューブWを固定し、切断工具1を回す第2例の第4操作を選択すると有利である。
【0054】
この発明における第4操作の第3例は、たとえば、チューブWを他方の手で保持し、切断工具1を一方の手で保持し、チューブWを一方向へ回しながら、切断工具を他方向へ回す操作である。つまり、刃先11とチューブ受け面21との間にクランプされたチューブWをチューブ軸θw回りに回転(自転)し、切断工具1をチューブ軸θw回りに回転(公転)させる操作である。なお、チューブWをチューブ軸θw回りに矢印CWRで示す時計回りに回す場合は、切断工具1をチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す反時計回りに回す操作を行う。また、チューブWをチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す向きに回す場合は、切断工具1をチューブ軸θw回りに矢印ACWRで示す向きに回す操作を行う。また、切断工具1およびチューブWを手で保持する替わりに、機械装置などで保持しても構わない。また、切断工具1およびチューブWを手で回す替わりに、機械装置などで回しても構わない。この操作を行って、チューブ軸θwを中心として切断工具1とチューブWとが相対的に約1回転したとき、チューブWを切断することができる。
【0055】
この第3例として示す操作では、チューブWと刃先11との相対関係は、チューブWと、刃先11およびチューブ受け面21a、21bとを、チューブ軸θw回りに互いに反対の向きに回転させる点を除いて、第2例として示す操作と同じである。よって、この第3例として示す操作の説明は、第2例として示す操作の説明を参照し、ここでは略す。
【0056】
この第4操作の第3例を行う切断工具1は、切断工具1およびチューブWをたとえば手で回す簡易な操作でチューブWを切断することができるし、切断によるチューブWの潰れ変形を抑制することができる。切断工具1は、操作が簡単であるが、特に、3mm以上15mm以下の外径に対して0.1mm以上3.0mm以下の肉厚を有するチューブWの切断(横切り)に有利な効果を奏する。切断に供するチューブWの全長が比較的短い場合、切断時間をより短縮したい場合、切断工具1およびチューブWを回す第3例の第4操作を選択すると有利である。
【0057】
上記した第1例から第3例の第4操作を行う切断工具1において、好ましくは、刃物10の刃先11が刃物支軸70回りに回転自在に支持され、チューブ受け具20のチューブ受け面21a、21bがチューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持され、刃先11およびチューブ受け面21a、21bとチューブWとが、チューブ軸θw回りに相対的に回転する構成である。この構成によって、チューブWの切断中、刃先11とチューブWとが互いに転動しながら回転し、切断抵抗が転がり抵抗となる。そのため、チューブWの切断中に発生する切断抵抗を十分に小さくすることができる。
【0058】
上記した第1例から第3例の第4操作を行う切断工具1において、図10に示すように、好ましくは、チューブWの中空部に棒状の切断補助具90を挿入した状態として、チューブWを切断する。棒状の切断補助具90は、チューブWを切断した刃物10の刃先11の移動を緩和させるため、好ましくは、チューブWを構成する樹脂層Wpよりも硬質とし、より好ましくは、チューブWを構成する金属層Wmと同等以上の硬質とする。また、棒状の切断補助具90は、好ましくは、刃物10の刃先11の摩耗および損傷を緩和させるため、刃物10の刃先11よりも軟質とする。
【0059】
チューブWの中空部に棒状の切断補助具90を挿入した状態にすることによって、上記した第3操作および第4操作において、刃物10の刃先11がチューブWを押し付けて切り込むときの荷重を十分に受け止めることができる。そのため、刃物10の刃先11の切り込みに起因して発生しやすいチューブWの潰れ変形を十分に防止することができる。その結果、トルクTc(近接トルク)の許容値が大きくなるため、バネ60のバネ荷重を大きく設定することができる。これにより、切断工具1の切断能力、つまり、チューブWの切断荷重を大きくすることができる。なお、チューブWの中空部に棒状の切断補助具90を挿入する場合も、上記を参照して詳細を略すが、上記した第1操作、第2操作、第3操作および第4操作を、この順に行うことによって、チューブWを切断することができる。
【0060】
[構成例2]
この発明に係る切断工具の実施形態の一つとして、図11に示す切断工具1を構成例2として挙げる。図11に示す切断工具1は、上記した構成例1の切断工具1と同様に、たとえば、図1に示すような金属層Wmが樹脂層Wpで被覆されたチューブWの横切りが可能である。なお、簡便のため、構成例2の説明においても、構成例1の説明で用いた名称および符号を引用する。
【0061】
構成例2の切断工具1は、構成例1の切断工具1と同様に簡易な構成であって、刃物10と、チューブ受け具20と、第1レバー30と、第2レバー40と、連結軸50と、バネ60と、を有する。構成例2の切断工具1は、刃物10が第1レバー30のクランプアーム32の延在方向(X方向)に対して軸方向が平行な刃物支軸70を介して刃物取付部31に取り付き、チューブ受け具20が第2レバー40のクランプアーム42の延在方向(X方向)に対して軸方向が平行なチューブ受け具支軸80を介してチューブ受け具取付部41に取り付いている。構成例2の切断工具1は、刃先11およびチューブ受け面21a、21bとチューブWとを、チューブ軸θw回りに相対的に回転させることができる。構成例2の切断工具1は、上記した第1操作、第2操作、第3操作および第4操作を、この順に行うことによって、チューブWを切断(横切り)することができる。構成例2の切断工具1は、簡易な構成であるが、上記した第1操作から第4操作までの簡易な操作を行うことによって、チューブWを切断するすることができる。構成例2の切断工具1は、特に、3mm以上15mm以下の外径に対して0.1mm以上3.0mm以下の肉厚を有するチューブWの切断(横切り)に有利な効果を奏する。
【0062】
構成例2の切断工具1は、構成例1の切断工具1と同様に、好ましくは、刃物10が第1レバー30のクランプアーム32の延在方向(X方向)に対して軸方向が平行な刃物支軸70を介して刃物取付部31に取り付き、刃物10の刃先11がX軸と平行な刃物支軸70回りに回転自在に支持される。この構成によって、刃物支軸70回りに回転自在に支持される刃物10の刃先11は、Y-Z平面内で自在に回転することができる。この構成により、チューブWの切断中、刃先11においては転がり抵抗となり、有利である。
【0063】
構成例2の切断工具1は、構成例1の切断工具1と同様に、好ましくは、チューブ受け具20が第2レバー40のクランプアーム42の延在方向(X方向)に対して軸方向が平行なチューブ受け具支軸80を介してチューブ受け具取付部41に取り付き、チューブ受け具20のチューブ受け面21がX軸と平行なチューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持される。チューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持されるチューブ受け具20のチューブ受け面21は、Y-Z平面内で自在に回転することができる。この構成により、チューブWの切断中、チューブ受け面21においては線接触となり、有利である。
【0064】
構成例2の切断工具1は、構成例1の切断工具1と同様に、好ましくは、刃物10の刃先11が刃物支軸70(軸心Q)回りに回転自在に支持され、チューブ受け具20のチューブ受け面21a、21bがチューブ受け具支軸80(軸心R1、R2)回りに回転自在に支持される。この構成によって、刃物支軸70回りに回転自在に支持される刃物10の刃先11がY-Z平面内で自在に回転することができるし、チューブ受け具支軸80回りに回転自在に支持されるチューブ受け具20のチューブ受け面21がY-Z平面内で自在に回転することができる。この構成により、チューブWの切断中、刃先11においては転がり抵抗となり、チューブ受け面21においては線接触となり、十分に有利である。
【0065】
この発明に係る切断工具において、刃物の刃先の好ましい構成について、図12を参照して説明する。
【0066】
図12(a)に示す刃物10は、円形刃である。円形刃10は、チューブWに近づく向きに凸形状となる、円形の刃先線(刃先11)を有する。円形刃10の刃先11は、刃物の刃先を刃物支軸回りに回転自在に支持する構成に適用すると特に有利であり、チューブWの切断中、円形刃10の刃先11における切断抵抗を転がり抵抗とすることができる。
【0067】
図12(b)に示す刃物10は、凸状湾曲刃である。凸状湾曲刃10は、チューブWに近づく向きに凸形状となる、円弧形、楕円弧形、または、湾曲線形などの刃先線(刃先11)を有する。凸状湾曲刃10の刃先11は、好ましくは、両端側から中央に向かって連続的に小さくなる傾き角で傾斜し、チューブWに近づく向きに湾曲する。凸状湾曲刃10は、円形刃と比べて、刃物取付部31をコンパクト化しやすいため、切断工具1の軽量化に有利である。
【0068】
図12(c)に示す刃物10は、凹状V字刃である。凹状V字刃10は、チューブWから離れる向きに凹形状となる刃先線であって、略V字のような形状の刃先線(刃先11)を有する。凹状V字刃10の刃先11は、好ましくは、両端側から中央に向かって一定の傾き角で傾斜し、チューブWから離れた側に略V字の谷形状を画す。凹状V字刃10は、円形刃および凸状湾曲刃と比べて、刃先11の凹みによってチューブWが保持されやすいため、切断の安定化に有利である。
【0069】
図12(d)に示す刃物10は、凹状湾曲刃である。凹状湾曲刃10は、チューブWから離れる向きに凹形状となる刃先線(刃先11)を有する。凹状湾曲刃10の刃先11は、好ましくは、両端側から中央に向かって連続的に小さくなる傾き角で傾斜し、チューブWから離れる向きに湾曲する。凹状湾曲刃10は、凹状V字刃と同様に、円形刃や凸状湾曲刃と比べて、刃先11の凹みによってチューブWが保持されやすいため、切断の安定化に有利である。
【0070】
図12(e)に示す刃物10は、直状刃である。直状刃10は、チューブWをクランプする方向(Z方向)と直交する方向(X方向またはY方向)に対して平行に延在する刃先線(刃先11)を有する。直状刃10の刃先11は、好ましくは、チューブWをクランプする方向(Z方向)と直交する方向(X方向またはY方向)に対して平行な直線形状である。直状刃10の刃先11は、円形刃、凸状湾曲刃および凹状湾曲刃と比べて、刃先11の形状が最も簡素であるため、刃先の研磨などの刃付け加工が簡易で、有利である。
【0071】
図12(f)に示す刃物10は、片傾斜刃である。片傾斜刃10は、チューブWをクランプする方向(Z方向)と直交する方向(X方向またはY方向)に対して任意の傾き角で一方の向きに傾斜する刃先線(刃先11)を有する。片傾斜刃の刃先は、図11(f)に示すように、チューブWをクランプする方向(Z方向)と直交する方向(X方向またはY方向)に対して一定の傾き角で一方の向きに傾斜する、片傾斜の直線形状にすることができる。片傾斜刃10の直線形状の刃先11は、直状刃と同様に、刃先11の形状が最も簡素であるため、刃先の研磨などの刃付け加工が簡易で、有利である。なお、片傾斜刃の刃先は、一方側から他方側に向かって連続的に小さくなる傾き角で傾斜し、チューブWから離れる向きに湾曲する、片傾斜の凹状湾曲形状にすることができる。また、片傾斜刃の刃先は、一方側から他方側に向かって連続的に小さくなる傾き角で傾斜し、チューブWに近づく向きに湾曲する、片傾斜の凸状湾曲形状にすることができる。
【0072】
上記した図12に示す刃物10の刃先11は、いずれも、構成例1、2として示した切断工具1に適用することができる。
【0073】
この発明に係る切断工具において、チューブ受け具のチューブ受け面の好ましい構成について、図13を参照して説明する。なお、図13に示すチューブ受け面21(21a、21b)は、いずれも、構成例1、2として示した切断工具1に適用することができる。
【0074】
図13(a)に示すチューブ受け具20は、2つのローラによって構成され、チューブWから離れる向き(Z2側)に凹む、凹状のチューブ受け面(21a、21b)を備えている。このチューブ受け面(21a、21b)は、一方のローラの外周面(円柱側面)からなるチューブ受け面21aと、他方のローラの外周面(円柱側面)からなるチューブ受け面21bと、一対のローラの間に画成された空間とにより構成される。この2つのローラからなる構成によって、チューブWから離れる向き(Z2側)に凹む、凹状のチューブ受け面21となっている。なお、ローラの外周面それ自体は、チューブWに近づく向き(Z1側)に凸の凸状の曲面である。
【0075】
2つのローラによって構成されたチューブ受け具20のチューブ受け面(21a、21b)は、チューブWに対する接触が線接触となるため、面接触と比べて、有利である。また、2つのローラによって構成されたチューブ受け具20のチューブ受け面(21a、21b)は、チューブ受け具のチューブ受け面をチューブ受け具支軸回りに回転自在に支持する構成に適用すると有利であり、チューブWの切断中、チューブWを転動させながら支持することができるため、チューブ受け面21における接触抵抗を転がり抵抗とすることができる。
【0076】
図13(b)に示すチューブ受け具20は、凹状V字面である。凹状V字面は、チューブWから離れる向きに凹形状となる。凹状V字面は、両端側から中央に向かって一定の傾き角で傾斜し、チューブWから離れた側に略V字の谷形状を画す2つの平面からなる。凹状V字面からなるチューブ受け具20は、2つのローラからなるチューブ受け具と比べて、チューブ受け具取付部41をコンパクト化しやすいため、切断工具1の軽量化に有利である。
【0077】
図13(c)に示すチューブ受け具20は、凹状湾曲面である。凹状湾曲面は、チューブWから離れる向きに凹形状となる。凹状湾曲面は、両端側から中央に向かって連続的に小さくなるように傾き角で傾斜し、チューブWから離れる向きに湾曲する。凹状湾曲面の形状は、たとえば、円弧形、楕円弧形、略U字形、または、任意の湾曲線形などである。凹状湾曲面からなるチューブ受け具20は、凹状V字面からなるチューブ受け具と同様に、2つのローラからなるチューブ受け具と比べて、チューブ受け具取付部41をコンパクト化しやすいため、切断工具1の軽量化に有利である。
【0078】
上記した図13に示すチューブ受け具20のチューブ受け面21(21a、21b)は、いずれも、構成例1、2として示した切断工具1に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 切断工具
10 刃物
11 刃先
20 チューブ受け具
21 チューブ受け面
22 凹部
30 第1レバー
31 刃物取付部
32 クランプアーム
33 レバー連結部
34 バネ係止部
35 グリップアーム
40 第2レバー
41 チューブ受け具取付部
42 クランプアーム
43 レバー連結部
44 バネ係止部
45 グリップアーム
50 連結軸
60 バネ
70 刃物支軸
80 チューブ受け具支軸
90 切断補助具
W チューブ
Wm 金属層
Wp 樹脂層
Wp1 内側樹脂部
Wp2 外側樹脂部
P 軸心(連結軸)
Q 軸心(刃物支軸)
R1 軸心
R2 軸心
Tf トルク
Ts トルク
Tc トルク
θw チューブ軸
θ10 軌道
θ20 軌道
θ50 軌道
C1 切断点
C2 切断点
C3 切断点
C4 切断点(刃先の位置)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13