(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-26
(45)【発行日】2023-07-04
(54)【発明の名称】無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法、並びに無機質球状化粒子
(51)【国際特許分類】
F23D 14/58 20060101AFI20230627BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20230627BHJP
B01J 2/16 20060101ALI20230627BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
F23D14/58 Z
C01B33/18 Z
B01J2/16
F23D14/22 E
(21)【出願番号】P 2021046561
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】萩原 義之
(72)【発明者】
【氏名】諸熊 晶
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-048118(JP,A)
【文献】特開昭58-145613(JP,A)
【文献】実開昭51-068033(JP,U)
【文献】特開2016-161167(JP,A)
【文献】米国特許第06342086(US,B1)
【文献】特開2019-151889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00 - 14/84
C01B 33/18
B01J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎形成方向における先端側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室を有する無機質球状化粒子製造用バーナであって、
前記燃焼室内に向けて、酸素又は酸素富化空気をキャリアガスとして原料粉体を供給する原料粉体供給路と、
前記原料粉体供給路を外周側から取り囲むように配置され、前記燃焼室内に向けて燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、
前記燃料ガス供給路を外周側から取り囲むように配置され、前記燃焼室内に向けて
支燃性ガスを供給す
る供給路と、を備え、
前記原料粉体供給路は、前記燃焼室の底部に配置された粉体分散板に備えられる複数の原料粉体供給口によって前記燃焼室内に開口しており、且つ、前記複数の原料粉体供給口は、前記無機質球状化粒子製造用バーナの中心軸を囲むように配置されており、
前記燃料ガス供給路は、前記燃焼室の側壁に開口するとともに、平面視で前記原料粉体供給口を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に沿った方向で前記燃料ガスを噴出する燃料ガス噴出口を有しており、
前記
支燃性ガスを供給する供給路は、前記燃焼室の側壁に開口するとともに、平面視で前記燃料ガス噴出口を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら前記
支燃性ガスを噴出する第
1噴出口と、前記燃焼室の側壁における前記第
1噴出口よりも下流側の位置に開口するとともに、平面視で前記第
1噴出口を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に向けて前記
支燃性ガスを噴出する第
2噴出口とを有しており、
前記燃料ガス噴出口から噴出する前記燃料ガスの運動量をm
fとし、前記第
2噴出口から噴出する前記
支燃性ガスの運動量m
0の
、前記バーナの軸方向に直交する方向の運動量をm
0,θとしたとき、これらの関係が下記(1)式で表される関係を満たすことを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナ。
m
f/m
0,θ ≦ 1.0 ・・・・・(1)
【請求項2】
前記燃料ガス噴出口から噴出する前記燃料ガスの噴出速度が50m/s以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項3】
前記原料粉体供給口から噴出する前記原料粉体は、前記燃焼室の下流側に向かうに従って放射状に広がる角度で噴出されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項4】
前記原料粉体供給口から噴出する前記原料粉体の前記中心軸に対する噴出角度αが0~15°であることを特徴とする請求項3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項5】
前記燃料ガスが炭素を含まないガスであることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項6】
前記燃料ガスがアンモニア又は水素であることを特徴とする請求項5に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項7】
前記燃焼室の外側に、冷却水を流通させるための冷却水用管路を有することを特徴とする請求項1~請求項6の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを用いることを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ、又は、請求項8に記載の無機質球状化粒子の製造方法によって得られることを特徴とする無機質球状化粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法、並びに無機質球状化粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質球状化粒子を製造する方法として、例えば、無機質原料粉体を火炎中に通過させて表面を熔融し、球状化する、所謂火炎熔融法と呼ばれる方法が採用されている。
このような方法で無機質球状化粒子を製造する場合、製品粒子となる無機質球状化粒子の粒径は原料粉体の粒径に依存し、概ね原料粉体に近い粒径の製品粒子が製造される。
また、原料粉体を火炎中で球状化するためには、高温の火炎が必要になることから、火炎熔融法においては、通常、酸素・ガス燃料バーナが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図1に、従来から一般に用いられている、無機質球状化粒子製造用バーナを備えた無機質球状化粒子製造装置100の系統図の一例を示す。
図1に示す系統図において、図視略の原料粉体は、粉体フィーダ102から切り出され、経路101から供給されるキャリアガスに同伴されて、酸素・ガス燃焼バーナ200へと搬送される。この酸素・ガス燃焼バーナ200には、酸素供給設備105から供給される酸素と、燃料供給設備104から供給される燃料ガスが導入されており、炉106内における火炎中で原料粉体が球状化され、無機質球状化粒子が生成される。その後、無機質球状化粒子は、経路107から炉106内に導入された空気によって搬送・温度希釈され、後段のサイクロン108及びバグフィルター109によって回収される。
【0004】
また、
図2の断面図には、上記の酸素・ガス燃焼バーナ200に用いられる拡散型バーナの概略構造を示している。
図2に示すように、酸素・ガス燃焼バーナ200の中心軸に沿った中心部には、原料粉体及びキャリアガスを供給する原料供給路201が設けられ、その外周側には燃料ガスを供給する燃料供給路202が、さらに外周側には支燃性ガスである酸素を供給する酸素ガス供給路203が設けられている。このような構成により、先端側の燃焼室204において燃料ガスと酸素が混合され、火炎が形成される。また、酸素ガス供給路203は、燃焼室204内に旋回流を形成させる第1酸素ガス供給路205と、軸方向に酸素ガスを噴出する第2酸素ガス供給路206とからなる、2系統の供給路を備える。
酸素・ガス燃焼バーナ200を備える無機質球状化粒子製造装置100は、上記構成により、火炎熔融法によって無機質原料粉体を球状化し、無機質球状化粒子を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、球状化製品の市場においては、この球状化製品に対する品質向上の要求が益々高まっており、より高い球状化度が求められるようになっていた。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造することが可能な無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法、並びに無機質球状化粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
即ち、請求項1に係る発明は、火炎形成方向における先端側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室を有する無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃焼室内に向けて、酸素又は酸素富化空気をキャリアガスとして原料粉体を供給する原料粉体供給路と、前記原料粉体供給路を外周側から取り囲むように配置され、前記燃焼室内に向けて燃料ガスを供給する燃料ガス供給路と、前記燃料ガス供給路を外周側から取り囲むように配置され、前記燃焼室内に向けて酸素ガスを供給する酸素ガス供給路と、を備え、前記原料粉体供給路は、前記燃焼室の底部に配置された粉体分散板に備えられる複数の原料粉体供給口によって前記燃焼室内に開口しており、且つ、前記複数の原料粉体供給口は、前記無機質球状化粒子製造用バーナの中心軸を囲むように配置されており、前記燃料ガス供給路は、前記燃焼室の側壁に開口するとともに、平面視で前記原料粉体供給口を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に沿った方向で前記燃料ガスを噴出する燃料ガス噴出口を有しており、前記酸素ガス供給路は、前記燃焼室の側壁に開口するとともに、平面視で前記燃料ガス噴出口を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら前記酸素ガスを噴出する第1酸素ガス噴出口と、前記燃焼室の側壁における前記第1酸素ガス噴出口よりも下流側の位置に開口するとともに、平面視で前記第1酸素ガス噴出口を取り囲むように複数で設けられ、前記中心軸に向けて前記酸素ガスを噴出する第2酸素ガス噴出口とを有しており、前記燃料ガス噴出口から噴出する前記燃料ガスの運動量をmfとし、前記第2酸素ガス噴出口から噴出する前記酸素ガスの運動量m0の、前記中心軸に対する接線方向の運動量をm0,θとしたとき、これらの関係が下記(1)式で表される関係を満たすことを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
mf/m0,θ ≦ 1.0 ・・・・・(1)
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃料ガス噴出口から噴出する前記燃料ガスの噴出速度が50m/s以下であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記原料粉体供給口から噴出する前記原料粉体は、前記燃焼室の下流側に向かうに従って放射状に広がる角度で噴出されることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記原料粉体供給口から噴出する前記原料粉体の前記中心軸に対する噴出角度αが0~15°であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃料ガスが炭素を含まないガスであることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃料ガスがアンモニア又は水素であることを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、請求項1~請求項6の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナであって、前記燃焼室の外側に、冷却水を流通させるための冷却水用管路を有することを特徴とする無機質球状化粒子製造用バーナである。
【0015】
また、請求項8に係る発明は、請求項1~請求項7の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナを用いることを特徴とする無機質球状化粒子の製造方法である。
【0016】
また、請求項9に係る発明は、請求項1~請求項7の何れか一項に記載の無機質球状化粒子製造用バーナ、又は、請求項8に記載の無機質球状化粒子の製造方法によって得られることを特徴とする無機質球状化粒子である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナによれば、上記のように、燃料ガス噴出口から噴出する燃料ガスの運動量をmfとし、第2酸素ガス噴出口から噴出する酸素ガスの運動量m0の、中心軸に対する接線方向の運動量をm0,θとしたとき、これらの関係が次式[mf/m0,θ≦1.0]を満たす構成を採用している。
このように、燃料ガス噴出口から噴出する燃料ガスの運動量[mf]と、第2酸素ガス噴出口から噴出する酸素ガスの運動量[m0]の中心軸に対する接線方向の運動量[m0,θ]との関係を最適範囲で規定することにより、燃料ガスと酸素ガスとの混合性が良好になり、形成される火炎の最高温度が高められる。これにより、原料粉体に対する伝熱量も高められることから、無機質球状化粒子のガラス化度が高められるとともに、原料粉体を効率的に熔融・球状化することができることから、無機質球状化粒子の球状化度も高められる。
従って、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法によれば、上記構成を有した本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナを用いて無機質球状化粒子を製造する方法なので、上記同様、形成される火炎の最高温度が高められるので、原料粉体に対する伝熱量も高められることから、無機質球状化粒子のガラス化度が高められるとともに、原料粉体を効率的に熔融・球状化することができることから、無機質球状化粒子の球状化度も高められる。
従って、球状化度に優れた無機質球状化粒子を、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく製造することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る無機質球状化粒子によれば、上記構成を有した本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナ、又は、無機質球状化粒子の製造方法を用いて得られる無機質球状化粒子なので、安価で球状化度に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】無機質球状化粒子の製造に一般的に用いられる無機質球状化粒子製造装置の概略構成について説明する系統図である。
【
図2】無機質球状化粒子の製造に一般的に用いられる無機質球状化粒子製造用バーナへの、各ガスの導入・噴出形態の一例を説明する断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、火炎の噴出側から中心軸に沿ってバーナを見た平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナを模式的に説明する図であり、
図3に示したバーナのA-A断面図である。
【
図5】本発明の無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法の実施例について説明する図であり、次式[mf/m0,θ]で表される燃料ガスと酸素ガスとの混合性に係る指標(-)と、得られた無機質球状化粒子のガラス化度(%)との関係と示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法、並びに、それによって得られる無機質球状化粒子について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
<無機質球状化粒子>
本実施形態の無機質球状化粒子は、詳細を後述する本実施形態の無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法によって製造されるものである。
本実施形態の無機質球状化粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、マグネタイト、又はガラス原料粉末等からなる原料粉体を、本実施形態の無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法を用いた火炎熔融法によって球状化して得られるものである。
本実施形態の無機質球状化粒子は、例えば、球状化度が85~98%と、非常に高い球状化度を有するものである。なお、本実施形態で説明する球状化度とは、熔融処理後の粒子の短径を長径で除した値を意味する。このような球状化度は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて、1視野に含まれる無機質球状化粒子の数が100~200個程度となる測定倍率で測定し、個数基準の算術平均値を算出すればよい。
【0023】
<無機質球状化粒子製造用バーナ>
以下、本発明の一実施形態である無機質球状化粒子製造用バーナ1(以下、単にバーナ1と略称する場合がある)について、主に
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態のバーナ1を、図示略の火炎の噴出側から中心軸Jに沿って見た平面図であり、
図4は、
図3中に示したA-A断面図である。なお、
図4においては、所定の方向に延在するバーナ1全体を図示することは困難なので、バーナ1の先端部分のみを図示している。また、
図4では、説明の都合上、バーナ1の先端部分のみを断面図として図示している。さらに、
図3の平面図においては、A-A断面線の位置には第1酸素ガス噴出口51(第1酸素ガス供給路5A)が重なっていないが、説明の都合上、
図4のA-A断面図においては、第1酸素ガス噴出口51、及び、第1酸素ガス供給路5Aも併せて表示している。
【0024】
本実施形態のバーナ1は、例えば、
図1に示すような無機質球状化粒子製造装置100において、原料粉体を熔融・球状化して無機質球状化粒子を製造することを目的として備えられるものである。
【0025】
図3及び
図4に示すように、本実施形態のバーナ1は、火炎形成方向における先端1A側が拡径するように開口した有底円錐形状の燃焼室2を有するものである。本実施形態のバーナ1は、燃焼室2内において、原料流体G1に含まれる原料粉体が火炎による高温雰囲気中に曝され、原料流体G1中の水滴を蒸発させることで、球状度が高められた微粒子からなる無機質球状化粒子を製造するものである。
なお、本実施形態で説明する原料流体G1とは、酸素又は酸素富化空気をキャリアガスとした原料粉体を含む流体全体のことを指す。
【0026】
また、
図4の断面図に示すように、バーナ1は、中心軸J上に、原料粉体を含む原料流体G1を供給するための原料粉体供給路3が配置され、その外周側に、原料粉体供給路3を取り囲むように、燃焼室2内に向けて燃料ガスG2を供給する燃料ガス供給路4が配置されている。さらに、その外周側には、燃料ガス供給路4を取り囲むように配置され、燃焼室2内に向けて酸素ガスを供給する酸素ガス供給路5が配置されおり、図示例においては、第1酸素ガス供給路5A及び第2酸素ガス供給路5Bの2系統の酸素ガス供給路が、中心軸J側から第1酸素ガス供給路5A、第2酸素ガス供給路5Bの順で、同心軸で配置されている。
【0027】
原料粉体供給路3は、燃焼室2の底部に配置された粉体分散板30に備えられる複数の原料粉体供給口31によって燃焼室2内に開口しており、且つ、複数の原料粉体供給口31は、無機質球状化粒子製造用バーナ1の中心軸Jを囲むように配置されている。
燃料ガス供給路4は、燃焼室2の側壁22に開口するとともに、平面視(
図3参照)で原料粉体供給口31を取り囲むように複数で設けられ、中心軸Jに沿った方向で燃料ガスG2を噴出する燃料ガス噴出口41を有している。
【0028】
また、図示例における第1酸素ガス供給路5Aは、燃焼室2の側壁22に開口するとともに、平面視(
図3参照)で燃料ガス噴出口41を取り囲むように複数で設けられ、中心軸Jに対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら酸素ガスG3を噴出する第1酸素ガス噴出口51を有している。さらに、図示例における第2酸素ガス供給路5Bは、燃焼室2の側壁22における第1酸素ガス噴出口51よりも下流側の位置に開口し、平面視で第1酸素ガス噴出口51を取り囲むように複数で設けられ、中心軸Jに向けて酸素ガスG4を噴出する第2酸素ガス噴出口52を有している。
【0029】
そして、本実施形態のバーナ1は、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の運動量をmfとし、第2酸素ガス噴出口52から噴出する酸素ガスG4の運動量m0の、中心軸Jに対する接線方向の運動量をm0,θとしたとき、これらの関係が次式[mf/m0,θ≦1.0]で表される関係を満たすものである。
【0030】
燃焼室2は、
図3及び
図4に示すように、先端1A側が拡径するように開口し、有底円錐形状に形成された凹部であり、
図4中においては縦断面で略台形状(コーン形状)とされる。また、図示例の燃焼室2は、有底円錐形状に形成された凹部の底部として、上述した複数の原料粉体供給口31が設けられた粉体分散板30が配置されている。
本実施形態のバーナ1は、上述したように、この燃焼室2内において、原料流体G1中の水滴を火炎による高温雰囲気中で蒸発させることで、原料粉体から微粒子を合成させる。
【0031】
なお、燃焼室2は、基端側の底部からバーナ1の先端1A側までの側壁22の勾配角度αを一定としても良いが、
図4に示すように、バーナ1の先端1A側の一部が円筒形状とされていることが、安定した保炎確保の観点から、より好ましい。
【0032】
原料粉体供給路3は、バーナ1の中心軸J上に配置される。
そして、原料粉体供給路3の開口部である原料粉体供給口31は、上述したように、燃焼室2の底部に配置された粉体分散板30に開口しており、
図3に示す例では、中心軸Jを取り囲むように、計8箇所で、それぞれ円周上に均等間隔で配置するように設けられている。
原料粉体供給口31は、原料粉体供給路3から供給される原料粉体及び燃料を含む原料流体G1を、燃焼室2内に向けて噴出するように開口して複数設けられ、
図4に示す例では、中心軸Jに対して傾斜角αで拡開するように設けられている。
【0033】
なお、本実施形態においては、図示例のように、原料粉体供給路3に対して複数の原料粉体供給口31が連通され、複数の原料粉体供給口31から原料流体G1が噴出される構成で説明しているが、これには限定されない。例えば、原料粉体供給口31を単孔の構成としても構わない。
【0034】
また、複数の原料粉体供給口31が形成される粉体分散板30の材質としては、特に限定されないが、摩耗が生じるのを抑制するため、耐摩耗性の材料で被覆した金属材料、あるいはアルミナや炭化ケイ素等のセラミック材料を採用することが好ましい。
【0035】
また、複数の原料粉体供給口31は、該原料粉体供給口31から噴出する原料粉体を含む原料流体G1が、燃焼室2の下流側に向かうに従って放射状に広がる角度で噴出されることが好ましい。より具体的には、原料粉体供給口31から噴出する原料流体G1の中心軸Jに対する噴出角度αは任意に設定可能であるが、例えば、0~15°であることが、原料粉体が燃焼室2内に均一に拡散され、加熱熔融効率が向上し、球状化度が高められた無機質球状化粒子が得られる観点からより好ましい。
【0036】
燃料ガス供給路4は、中心軸J上に配置された原料粉体供給路3の外側に、この原料粉体供給路3を取り囲むように複数で平行に配置される。
そして、燃料ガス供給路4の開口部である燃料ガス噴出口41は、燃料ガス供給路4の配置位置に対応して、燃焼室2の側壁22に、平面視(
図3参照)で原料粉体供給口31を取り囲むように複数で設けられ、図示例では計8箇所で、それぞれ円周上に均等間隔で配置するように設けられている。
【0037】
第1酸素ガス供給路5Aは、燃料ガス供給路4を外周側から取り囲むように、複数で平行に配置されている。
そして、第1酸素ガス供給路5Aの開口部である第1酸素ガス噴出口51は、第1酸素ガス供給路5Aの配置位置に対応して、燃焼室2の側壁22に、平面視(
図3参照)で燃料ガス噴出口41を取り囲むように複数で設けられ、図示例では計8箇所で、それぞれ円周上に均等間隔で配置するように設けられている。また、第1酸素ガス噴出口51は、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら、一次酸素となる酸素ガスG3を噴出するように開口している。即ち、第1酸素ガス噴出口51は、
図4中に示すように、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに対して直交する方向で開口するように設けられている。
【0038】
なお、第1酸素ガス噴出口51は、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに対して酸素ガスG3の旋回流を形成させるような位置に開口していれば、原料粉体供給口31及び燃料ガス噴出口41からの距離や孔数、形状等は特に限定されず、所望する火炎の性状に応じて任意に設定可能である。
【0039】
第2酸素ガス供給路5Bは、上記のように、複数の第1酸素ガス供給路5Aの外周側に、これら第1酸素ガス供給路5Aを取り囲むように複数で平行に配置される。
そして、第2酸素ガス供給路5Bの開口部である第2酸素ガス噴出口52は、第2酸素ガス供給路5Bの配置位置に対応して、燃焼室2の側壁22における第1酸素ガス噴出口51よりも先端1A側の位置で、平面視で原料粉体供給口31、燃料ガス噴出口41及び第1酸素ガス噴出口51を取り囲むように複数で設けられ、図示例では計24箇所で、それぞれ円周上に均等間隔で配置するように設けられている。また、第2酸素ガス噴出口52は、燃焼室2の側壁22において、中心軸Jに向けて、二次酸素となる酸素ガスG4を噴出するように開口している。
【0040】
第2酸素ガス噴出口52についても、上述した第1酸素ガス噴出口51の場合と同様、燃焼室2の側壁22において、第1酸素ガス噴出口51よりも先端1A側であって、中心軸Jに向けて酸素ガスG4を噴出するような位置で開口していれば、原料粉体供給口31、燃料ガス噴出口41及び複数の第1酸素ガス噴出口51からの距離や孔数、形状等は特に限定されず、所望する火炎の性状に応じて任意に設定可能である。
【0041】
なお、本実施形態においては、第1酸素ガス供給路5A及び第2酸素ガス供給路5Bの計2系統の酸素ガス供給路5を設け、各々に第1酸素ガス噴出口51又は第2酸素ガス噴出口52を設けた構成について説明しているが、これには限定されない。例えば、酸素ガス供給路5を1系統のみとし、この酸素ガス供給路5に分岐路を設けることで、1系統の酸素ガス供給路5から、第1酸素ガス噴出口51及び第2酸素ガス噴出口52の両方に酸素ガスを供給する構成を採用してもかまわない。
【0042】
また、
図4に示す例のバーナ1には、燃焼室2の外側に、冷却水Wを流通させるための冷却水用管路6が備えられている。この冷却水用管路6は、先端61が燃焼室2と隣接するように配置されている。また、図示例の冷却水用管路6は、2本の流路6a,6bが、先端61で折り返すように連通された構成とされており、バーナ1の後端側から2本の流路6a,6bの何れか一方に供給された冷却水Wが、先端61で折り返して他方の流路から後端側に還流されるように構成されている。
【0043】
冷却水用管路6の配置数及び位置としては、特に限定されず、第1酸素ガス供給路5Aや第2酸素ガス供給路5Bと同様、複数で配置されていても構わないが、例えば、バーナ1の平面視における全周に渡って円環状に形成されていても構わない。
【0044】
本実施形態においては、燃焼室2の外側に冷却水用管路6が備えられることで、火炎による高温雰囲気や輻射熱からバーナ1の各構成部品を保護するとともに、燃焼室2内における過渡な加熱が抑制され、燃焼場をより均一に制御しながら無機質球状化粒子を合成させることが可能になる。
【0045】
上述したように、本実施形態のバーナ1は、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の運動量をm
fとし、第2酸素ガス噴出口52から噴出する酸素ガスG4の運動量m
0の、中心軸Jに対する接線方向の運動量をm
0,θとしたとき、これらの関係が下記(1)式で表される関係を満たすものである(
図4も参照)。
m
f/m
0,θ ≦ 1.0 ・・・・・(1)
【0046】
以下に、上記(1)式で表される各運動量の比率の定義について、詳しく説明する。
図4中には、燃料ガスG2の運動量m
f、及び、二次酸素である酸素ガスG4の運動量m
0を要素分解したときの、中心軸Jに対する接線方向の運動量m
0,θを示している。
また、
図5のグラフには、上記(1)式で表される燃料ガスG2と酸素ガスG4との混合性に係る指標(-)と、サイクロンで回収された無機質球状化粒子のガラス化度(%)との関係を示しており、燃料ガスG2としてアンモニアを用いた場合について示している。
上記の各運動量(kg・m/s)は、次式[ノズル噴出流速(m/s)×ガス噴出体積から導出されるガスの質量(kg)]で算出される。
また、上記の二次酸素の中心軸Jに対する接線方向の運動量m
0,θは、次式[m
0×sinθ]で算出される。ここで、上記式中におけるθは、中心軸Jとm
0ベクトルとがなす角度である。
【0047】
図5のグラフに示すように、上記の[m
f/m
0,θ]の値が1.0以下になると、ガラス化度が急激に高くなる傾向がある。さらに、[m
f/m
0,θ]の値が0.48以下になると、ガラス化度は約90%程度となり、[m
f/m
0,θ]の値が0.29~048の範囲でさらに良好となることがわかる。
このことから、上記(1)式中における[m
f/m
0,θ]の値は、1.0以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.29~048の範囲であることがさらに好ましい。
【0048】
上述したように、上記(1)式中における[mf/m0,θ]の値は、燃料ガスG2と二次酸素である酸素ガスG4との混合性を示す指標であり、この値が小さいほど各ガスの間の混合性が良好となる一方、この値が大きくなるのに伴って混合性が低下してゆく。即ち、燃料ガスG2と酸素ガスG4とを適切に混合することにより、燃焼室2内で形成される火炎の最高温度が上昇し、原料粉体を含む原料流体G1に対する伝熱性が有利になるので、得られる無機質球状化粒子のガラス化度を向上させることが可能になる。つまり、本実施形態のバーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造することで、球状化度に優れた無機質球状化粒子が効率よく得られる。
【0049】
さらに、本実施形態においては、アンモニア等のカーボンを含まず輝度の低いものを燃料ガスG2に用いた場合でも、原料流体G1中に含まれる原料粉体を効率的に熔融・球状化できるので、製品使用時のトラブルを招くおそれのあるカーボンの含有量が抑制され、且つ、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造することが可能となる。このような効果は、無機質材料からなる原料粉体としてシリカ以外のものを用いた場合、例えば、アルミナ、マグネタイト、ガラス等を用いた場合であっても、効率的な熔融・球状化が可能であることを示唆するものである。
【0050】
燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の噴出速度は、特に限定されないが、例えば、50m/s以下であることが好ましい。燃料ガスG2の噴出速度が50m/s以下であることで、原料粉体が火炎中に滞在する時間が長くなり、原料粉体に対して十分に熱が伝わるので、熔融化度がさらに向上する。燃料ガスG2の噴出速度の下限も特に限定されないが、ノズル(噴出口)を製造する観点から、燃料ガス噴出口41の口径を適切な大きさで設計できるため、10m/s以上であることが好ましい。
【0051】
また、本発明者等が鋭意検討した結果、本実施形態のバーナ1のような拡散型バーナにおいて、特に、燃料ガスG2として液化プロパンガス(LPG)や天然ガス等の一般的なカーボン系燃料を用いた場合には、燃料ガスG2の噴出速度を50m/s以下に抑制することで、原料粉体をより効率的に球状化することが可能になることが明らかになっている。
【0052】
従って、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の噴出速度は、そのガス種を問わず、10~50m/sの範囲であることが好ましい。
【0053】
第2酸素ガス噴出口52から噴出する二次酸素である酸素ガスG4の噴出速度も、特に限定されないが、例えば、60~120m/sの範囲であることが好ましい。
酸素ガスG4の噴出速度が60m/s以上であることで、原料流体G1に含まれる原料粉体と燃料ガスG2とが十分に混合されるので、熔融化度がさらに向上する。
また、酸素ガスG4の噴出速度が120m/s以下であることで、形成される火炎のサイズが太くなるので、原料粉体が火炎中に滞在する時間が長くなり、原料粉体に対して十分に熱が伝わることから、熔融化度がさらに向上する。
【0054】
第1酸素ガス噴出口51から噴出する一次酸素である酸素ガスG3の噴出速度も、特に限定されないが、熔融化度を向上させる観点から、例えば、50~100m/sの範囲であることが好ましい。
第1酸素ガス噴出口51から噴出する酸素ガスG3の噴出速度が50m/s以上であることで、燃料と酸素の混合が十分に行われ、未燃分が発生するのを抑制する効果が得られる。
また、第1酸素ガス噴出口51から噴出する酸素ガスG3の噴出速度が100m/s以下であることで、形成される火炎のサイズが太くなるので、原料粉体が火炎中に滞在する時間が長くなり、原料粉体に対して十分に熱が伝わることから、熔融化度がさらに向上する。
【0055】
原料粉体のキャリアガスとして用いられる酸素又は酸素富化空気の、原料粉体供給口31からの噴出速度、即ち、原料流体G1の噴出速度も、特に限定されないが、原料粉体の熔融化度を向上させる観点から、例えば、20~60m/sの範囲であることが好ましい。
原料粉体供給口31から噴出される原料流体G1の噴出速度が20m/s以上であることで、ノズル近傍での原料の固着を防止する効果が得られる。
また、原料粉体供給口31から噴出される原料流体G1の噴出速度が60m/s以下であることで、原料粉体が火炎中に滞在する時間が長くなり、原料粉体に対して十分に熱が伝わることから、熔融化度がさらに向上する。
【0056】
本実施形態のバーナ1においては、燃料ガスG2として、炭素を含まないガスを用いることがより好ましい。具体的には、燃料ガスG2として、例えば、アンモニア又は水素のような、カーボンを含まない燃料を用いることがさらに好ましい。
このように、カーボンを含まない燃料を燃料ガスG2に用いることで、原料粉体が火炎中で熔融して球状化する過程において無機質球状化粒子中に取り込まれるカーボン量を抑制できる。
【0057】
上述したように、球状化製品の市場においては、この球状化製品に対する品質向上の要求が年を追う毎に高まっている。一例として、半導体用の封止剤として用いられる球状シリカに対しては、上記のような球状化度の向上に加えて、半導体基板上で生じる電気的ショートによって動作の不具合が発生する場合の原因不純物である、カーボンの含有率を低減することが強く求められている。
【0058】
球状シリカを火炎熔融法によって製造する際、例えば、燃料ガスとして液化プロパンガス(LPG)や天然ガス等のカーボン系燃料を用いると、燃料ガスの組成に由来するカーボンが製品中に微量で混入してしまうという問題がある。そのため、カーボン不純物をゼロにすることを目的として、アンモニアや水素等のカーボンを含有しない燃料ガスを用いて原料粉体を球状化することが考えられる。
【0059】
他方、アンモニアや水素等のカーボンを含まない燃料ガスは、従来から用いられているカーボン系燃料と比較して、火炎輝度が極端に小さいという特徴がある。この火炎輝度は、火炎熔融法を用いた球状化において、原料粉体に対する球状化度に大きく影響する。そのため、従来の製造装置においてアンモニアや水素を燃料ガスに用いる場合、従来のカーボン系燃料と同様の設計の拡散型バーナでは、原料粉体に対する球状化度が低下し、十分な品質の製品が得られ難いという側面もある。
【0060】
しかしながら、本実施形態のバーナ1によれば、上記のように、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の運動量をmfとし、第2酸素ガス噴出口52から噴出する酸素ガスG4の運動量m0の、中心軸Jに対する接線方向の運動量をm0,θとしたとき、これらの関係が次式[mf/m0,θ≦1.0]で表される関係を満たす構成を採用している。これにより、例え、火炎輝度が小さめであるカーボンを含まない燃料ガスを用いた場合であっても、原料粉体を効率的に加熱熔融しで球状化することが可能になる。
【0061】
なお、本実施形態においては、一次酸素である酸素ガスG3、及び、二次酸素である酸素ガスG4として、同じ酸素ガスを用いてもよいし、それぞれ異なる種類の支燃性ガスを用いることも可能である。この場合には、酸素以外の支燃性ガスとして、例えば、酸素富化空気等を適宜採用できる。
【0062】
[無機質球状化粒子の製造方法]
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法は、上記構成とされた本実施形態のバーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造する方法である。
即ち、本実施形態の製造方法においては、まず、シリカ、アルミナ、マグネタイト又はガラス等からなる原料粉体をキャリアガスと混合することで原料流体G1を調整し、これ燃焼室2に噴出する。
そして、燃焼室2において、燃料ガスG2と酸素ガスG3,G4とを燃焼させて火炎を形成し、この火炎中に原料流体G1に含まれる原料粉体を滞在させることで、原料粉体を熔融・球状化して微粒子を形成し、無機質球状化粒子を製造する方法である。
【0063】
上記のような方法で無機質球状化粒子を製造する装置としては、例えば、本実施形態のバーナ1に加えて、
図1に例示した、従来から一般に用いられている無機質球状化粒子製造装置100に備えられるような、原料粉体を供給して原料流体G1とするためのするための粉体フィーダ102、燃料ガスG2を供給するための燃料供給設備104、酸素ガスG3,G4を供給するための酸素供給設備105、炉106、サイクロン108及びバグフィルター109等を備え、さらに、キャリアガス供給手段や、各流体の流量を調整する流量制御部等を備えたものを用いることができる。
【0064】
具体的には、本実施形態の製造方法においては、まず、粉体フィーダ102において、酸素又は酸素富化空気からなるキャリアガスに原料粉体を混合し、キャリアガス中に原料粉体が分散した原料流体G1を調整する。この際、経路101から供給されるキャリアガスに原料粉体が同伴されるように、原料流体G1を調整する。また、原料粉体としては、目的とする無機質球状化粒子の種類に応じたものを用い、例えば、シリカやアルミナの他、マグネタイトやガラス原料粉末等を用いることができる。
【0065】
次いで、原料流体G1を、
図3及び
図4に示すバーナ1の原料粉体供給路3に供給するとともに、第1酸素ガス供給路5A及び第2酸素ガス供給路5Bに、それぞれ一次酸素となる酸素ガスG3又は二次酸素となる酸素ガスG4を供給する。この際、各流体の供給量は、例えば、マスフローメーターや自動弁等から構成された図示略の流量制御部によって調整することができる。
【0066】
一次酸素となる酸素ガスG3、及び、二次酸素となる酸素ガスG4としては、例えば、酸素(酸素ガス)の他、酸素富化空気等の支燃性ガスを用いることも可能である。また、酸素ガスG3及び酸素ガスG4は、同種の支燃性ガスを用いてもよいが、それぞれ異なる支燃性ガスを用いても構わない。本実施形態では、酸素ガスG3及び酸素ガスG4として、酸素ガスか、あるいは、酸素富化空気等の支燃性ガスを用いることで、良好で安定した火炎を形成できる。
【0067】
その後、燃焼室2内に向けて、原料粉体供給口31から原料流体G1が噴出されるとともに、各々が複数で設けられた、燃料ガス噴出口41、第1酸素ガス噴出口51及び第2酸素ガス噴出口52から、それぞれ、燃料ガスG2、一次酸素である酸素ガスG3又は二次酸素である酸素ガスG4が噴出される。これら燃料ガスG2と、酸素ガスG3及び酸素ガスG4とを燃焼させることで、燃焼室2内において図示略の火炎を形成する。
【0068】
この際、複数の第1酸素ガス噴出口51から噴出した酸素ガスG3は、中心軸Jに対して垂直な方向の面内に旋回流を形成しながら燃料ガスG2と混合し、燃焼に供される。このように、一次酸素である酸素ガスG3が旋回流を形成することで、燃料ガスG2と酸素ガスG3とが適切に混合されるので、良好な保炎状態を保持することが可能になる。
【0069】
さらに、複数の第2酸素ガス噴出口52から中心軸Jに向けて噴出した酸素ガスG4が、燃料ガスG2及び酸素ガスG3と混合し、燃焼に供されることで、より良好な保炎状態を保持することが可能になる。
【0070】
そして、火炎中において原料流体G1に含まれる原料粉体の表面を熔融させ、球状化した粒子を生成させることで、無機質球状化粒子を製造することができる。その後、製造された無機質球状化粒子は、
図1中に示す後段のサイクロン108及びバグフィルター109によって分級・回収される。
【0071】
本実施形態の無機質球状化粒子の製造方法によれば、上記構成を有した本実施形態のバーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造する方法なので、上記同様、形成される火炎の最高温度が高められ、原料粉体に対する伝熱量も高められることから、無機質球状化粒子のガラス化度が高められる。また、原料粉体を効率的に熔融・球状化することができることから、無機質球状化粒子の球状化度も高められるので、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【0072】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の無機質球状化粒子製造用バーナ1によれば、燃焼室2の底部に配置される原料粉体供給口31と、燃焼室2の側壁22に開口し、原料粉体供給口31を取り囲むように設けられ、中心軸Jに沿った方向で燃料ガスG2を噴出する燃料ガス噴出口41と、燃焼室2の側壁22に開口し、燃料ガス噴出口41を取り囲むように設けられ、中心軸Jに対する直交方向の面内で旋回流を形成させながら酸素ガスG3を噴出する第1酸素ガス噴出口51と、燃焼室2の側壁22における第1酸素ガス噴出口51よりも下流側の位置に開口し、中心軸Jに向けて酸素ガスG4を噴出する複数の第2酸素ガス噴出口52と、を備え、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の運動量をmfとし、第2酸素ガス噴出口52から噴出する酸素ガスG4の運動量m0の、中心軸Jに対する接線方向の運動量をm0,θとしたとき、これらの関係が次式[mf/m0,θ≦1.0]を満たす構成を採用している。
このように、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の運動量[mf]と、第2酸素ガス噴出口52から噴出する酸素ガスG4の運動量[m0]の中心軸Jに対する接線方向の運動量[m0,θ]との関係を最適範囲で規定することにより、燃料ガスG2と酸素ガスG4との混合性が良好になり、形成される火炎の最高温度が高められる。これにより、原料粉体に対する伝熱量も高められることから、無機質球状化粒子のガラス化度が高められるとともに、原料粉体を効率的に熔融・球状化することができることから、無機質球状化粒子の球状化度も高められる。
従って、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造することが可能となる。
【0073】
また、本発明に係る無機質球状化粒子の製造方法によれば、上記構成を有した本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造する方法なので、上記同様、形成される火炎の最高温度が高められるので、原料粉体に対する伝熱量も高められることから、無機質球状化粒子のガラス化度が高められるとともに、原料粉体を効率的に熔融・球状化することができることから、無機質球状化粒子の球状化度も高められる。
従って、球状化度に優れた無機質球状化粒子を、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく製造することが可能となる。
【0074】
また、本発明に係る無機質球状化粒子によれば、上記構成を有した本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナ1、又は、無機質球状化粒子の製造方法を用いて得られる無機質球状化粒子なので、安価で球状化度に優れたものとなる。
【0075】
<本発明の他の形態>
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記のような特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により、本発明に係る無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法、並びに無機質球状化粒子についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
<無機質球状化粒子製造用バーナ>
本実施例においては、
図3及び
図4に示すような、燃焼室2、原料粉体供給路3、燃料ガス供給路4、酸素ガス供給路5、及び冷却水用管路6を備え、燃焼室2内に、原料粉体供給口31、燃料ガス噴出口41、第1酸素ガス噴出口51及び第2酸素ガス噴出口52が開口した構成のバーナ、即ち、上述した本発明に係る一実施形態として説明したバーナ1を用いて無機質球状化粒子を製造した。
【0078】
また、本実施例においては、上記のバーナ1を備えるとともに、
図1に例示した無機質球状化粒子製造装置100に備えられているような、粉体フィーダ102、燃料供給設備104、酸素供給設備105、炉106、サイクロン108及びバグフィルター109等を備えた装置を準備し、無機質球状化粒子を製造した。
【0079】
<無機質球状化粒子の製造条件>
本実施例では、上記のバーナ1を用い、炉106内に火炎を形成しながら原料粉体を熔融させて球状化し、無機質球状化粒子を製造した。
具体的には、粉体フィーダ102から供給される原料粉体を含む原料流体G1を、バーナ1における燃焼室2内及び炉106内で火炎中に通過させた後、後段のサイクロン108及びバグフィルター109で分級しながら粒径毎に回収し、無機質球状化粒子を得た。
なお、原料粉体としては、湿式粒度計による平均粒径がD50=10μmとなる粒度を有する破砕シリカを用いた。
また、燃料ガスG2としてアンモニアを用いた。
本実施例におけるバーナ1の基本運転条件を下記表1に示す。
【0080】
【0081】
本実施例においては、バーナ1で得られた無機質球状化粒子のうち、粒度が大きい粒子をサイクロン108で回収し、サイクロン108で回収した粒子よりも粒度が小さな粒子をバグフィルター109で回収した。
ここで、本実施例における原料粉体の球状化処理においては、原料粉体のうち、粒度の大きい粒子ほど熱容量が大きいため、球状化しづらい傾向にあることを考慮し、サイクロン108側で回収された無機質球状化粒子を用いて評価を実施した。
【0082】
本実施例における無機質球状化粒子の球状化度の評価指標としては、上述したような、球状化物のガラス化度を用いた。ここで、原料粉体であるシリカは、SiO2由来の結晶成分を有しているが、一般に、このような原料粉体が熔融すると、結晶が非晶質へと遷移する。そこで、本実施例においては、原料粉体であるシリカ及び球状化後のシリカ(無機質球状化粒子)の両方の結晶性について、X線回折装置(XRD装置;Rigaku社製;商品名:SmartLabを用いて測定を行った後、下記(2)式及び(3)式に従い、ガラス化度を算出して評価した。なお、特性X線としては、CuKa;波長=1.5418Åを使用した。
η=(Isaw/Iraw)×100 ・・・・・(2)
λ=100-η ・・・・・(3)
なお、上記(2),(3)式中において、
η :結晶度
Isaw:球状化製品のSiO2結晶強度(2θ=26°に現れるX線のピーク強度)
Iraw:原料シリカのSiO2結晶強度(2θ=26°に現れるX線のピーク強度)
λ :ガラス化度
【0083】
下記表2に、各実施例及び比較例における、バーナの燃焼条件(無機質球状化粒子の製造条件)及び試験結果の一覧を示す。また、
図5のグラフに、各実施例及び比較例におけるガラス化度を示す。
なお、下記表2中には、各例におけるバーナからのアンモニア(燃料ガスG2)及び二次酸素(酸素ガスG4)の噴出速度を示しており、それぞれの噴出速度(m/s)は、複数で設けられる噴出口のうちの一つの噴出口におけるガス噴出量(体積流量;m
3/s)を、噴出口の断面積(m
2)で除することによって算出している。
【0084】
【0085】
以下に、表2に示した実施例1,2,4~6及び比較例3,7のうち、実施例1について、燃料ガスG2であるアンモニアの噴出速度VNH3、二次酸素である酸素ガスG4の噴出速度VO2を示すとともに、上記(1)式に示した[mf/m0,θ]に関し、アンモニアの運動量mf、酸素ガスG4の運動量m0、θを含む各計算過程を示す。
【0086】
本実施例で用いたバーナ1は、燃料ガス噴出口41の断面積が0.00036(m2)、第2酸素ガス噴出口52の断面積が0.00004(m2)であり、これらに基づくアンモニアの噴出速度VNH3、及び、二次酸素である酸素ガスG4の噴出速度VO2は、それぞれ、下記(4)式及び(5)式に示す値となる。
VNH3=0.009(Nm3/s)/0.00036(m2)=25(m/s) ・・・・・(4)
VO2=0.004(Nm3/s)/0.00004(m2)=90(m/s) ・・・・・(5)
【0087】
また、θ:45°、アンモニアの噴出体積:0.009(Nm3/s)、酸素ガス噴出体積:0.004(Nm3/s)、アンモニアガスの密度:0.76(kg/Nm3)、酸素ガスの密度:1.43(kg/Nm3)であることにより、アンモニアの運動量mf、二次酸素である酸素ガスG4の運動量m0、及び、酸素ガスG4の運動量m0の中心軸Jに対する接線方向の運動量m0,θは、それぞれ、下記(6)~(8)式に示す値となる。
mf=25(m/s)×0.009(Nm3/s)×0.76(kg/m3)=0.17(kg・m/s2) ・・・・・(6)
m0=90(m/s)×0.004(Nm3/s)×1.43(kg/m3)=0.51(kg・m/s2) ・・・・・(7)
m0,θ=0.51(kg・m/s2)×sin45=0.36(kg・m/s2) ・・・・・(8)
【0088】
上記(6)~(8)式での計算結果により、上記(1)式で表される[mf/m0,θ]は、下記(9)式で表される値となる。
mf/m0,θ=0.17(kg・m/s)/0.36(kg・m/s)=0.48(-) ・・・・・(9)
【0089】
また、本実施例においては、その他の実施例2,4~6及び比較例3,7においても、上記の実施例1の場合と同様に計算し、評価を行った。
【0090】
<評価結果>
表2及び
図5のグラフに示したように、燃料ガス噴出口41から噴出する燃料ガスG2の運動量m
f、第2酸素ガス噴出口52から噴出する酸素ガスG4の運動量m
0、中心軸Jに対する接線方向の運動量をm
0,θの関係が、上記(1)で表される関係を満たす実施例1,2,4~6においては、ガラス化度が87~93%となった。これにより、上記(1)式で表される関係を満たすことで、原料粉体を効率的に熔融・球状化でき、ガラス化度及び球状化度に優れた無機質球状化粒子が得られることが確認できた。
【0091】
一方、次式[mf/m0,θ]で表される値が1.44である比較例3、及び、当該値が1.08である比較例7は、ガラス化度が75%又は77%であり、実施例1,2,4~6に比べて劣っていることから、球状化度も劣っていると考えられる。
【0092】
なお、本実施例においては、無機質球状化粒子中における炭素含有量の測定データは得られなかったが、原理的には、燃料ガスに炭化水素燃料を用いた場合に比べ、アンモニアや水素ガスを用いた場合には、得られた無機質球状化粒子中における炭素含有量が少なくなることが知られている。
【0093】
以上説明した実施例の結果より、本発明の無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法を用いて無機質球状化粒子を製造することにより、原料粉体を効率的に熔融・球状化することができ、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造することが可能となることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の無機質球状化粒子製造用バーナ及び無機質球状化粒子の製造方法は、製造設備の増設やそれに伴うコストアップを招くことなく、球状化度に優れた無機質球状化粒子を製造可能なものなので、火炎中において無機質粉体原料を熔融させ、無機質球状化粒子を製造する用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0095】
1…無機質球状化粒子製造用バーナ(バーナ)
1A…先端
2…燃焼室
22…側壁
30…粉体分散板
3…原料粉体供給路
31…原料粉体供給口
4…燃料ガス供給路
41…燃料ガス噴出口
5A(5)…第1酸素ガス供給路
51…第1酸素ガス噴出口
5B(5)…第2酸素ガス供給路
52…第2酸素ガス噴出口
6…冷却水用管路
6a,6b…流路
61…先端(冷却水用管路)
J…中心軸
10…無機質球状化粒子製造装置
G1…原料流体
G2…燃料ガス
G3…酸素ガス(一次酸素)
G4…酸素ガス(二次酸素)
W…冷却水