(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】リンゴ含有液状調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/12 20160101AFI20230629BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20230629BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20230629BHJP
【FI】
A23L27/12
A23L27/10 C
A23L27/00 D
(21)【出願番号】P 2022500314
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003152
(87)【国際公開番号】W WO2021161802
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020022539
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 志穂
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-45769(JP,A)
【文献】特開昭61-162150(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138596(WO,A1)
【文献】特開昭57-125663(JP,A)
【文献】特開昭63-91054(JP,A)
【文献】Apple and Onion Vegetable Pate, 記録番号(ID#) 1567007, Mintel GNPD, 2011, [online], [retrieved on 2021.03.15], Retrieved from the Internet: <URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1567007/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L19/00-23/10,27/00-27/60
Mintel GNPD, Cookpad, 楽天レシピ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有し、且つ(b)ジャガイモ破砕物を1.5質量%以上5質量%以下含有する、リンゴ含有液状調味料。
【請求項2】
(c)pHが3.2以上4.5以下である、請求項1に記載のリンゴ含有液状調味料。
【請求項3】
(d)前記リンゴ含有液状調味料の調製に使用するジャガイモ破砕物の短辺の平均径が10μm以上50μm以下である、請求項1又は2に記載のリンゴ含有液状調味料。
【請求項4】
(e)ブルックフィールド型粘度計で測定される粘度(測定条件:20℃、6rpm)が1000cp以上35000cp以下である、請求項1~3のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料。
【請求項5】
(f)不溶性食物繊維の含有量が5質量%以上10質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料。
【請求項6】
(g)95%希釈時の水分活性が0.950以上0.999以下である、請求項1~5のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料が添加されてなる、食品。
【請求項8】
リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強する方法。
【請求項9】
リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味の後味の伸びを向上する方法。
【請求項10】
リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ風味が増強したリンゴ含有液状調味料の製造方法。
【請求項11】
リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ風味の後味の伸びが向上したリンゴ含有液状調味料の製造方法。
【請求項12】
ジャガイモ破砕物を含有する、リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有するリンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強するための組成物。
【請求項13】
ジャガイモ破砕物を含有する、リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有するリンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味の後味の伸びを向上するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴ含有液状調味料等に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴ含有液状調味料は、リンゴの甘み及び酸味を付与することができ、各種食品に利用されている。例えば、リンゴ含有液状調味料をパン、ヨーグルト、肉料理、サラダ等の食品に添加することにより、食品に甘みや酸味を付与して、或いはそれにより食品自身の風味を引き立たせて、食品の美味しさをより向上させることができる。
【0003】
リンゴを液状調味料として利用する場合、工業的に生産して市場で常温流通させるために、通常は、加熱処理することにより殺菌及び褐変抑制する方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱処理により、食感及び風味がジャム様となってしまい、加熱前のリンゴが有する特有の風味(リンゴ風味)が十分に感じられなくなってしまう。また、得られたリンゴ含有液状調味料を食品素材に添加して喫食した際のリンゴ風味の後味の伸びが弱いという問題がある。
【0006】
特許文献1には、ジャムに使用する果実を凍結濃縮した後に2000気圧以上の高圧で加圧することにより、加熱殺菌することなく生鮮果実特有の香りを保持したジャムを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法は特殊な加圧設備が必要なため製造コストが高い。また、後味への影響については考慮されていない。
【0007】
本発明は、リンゴ風味が増強し且つリンゴ風味の後味の伸びが向上したリンゴ含有液状調味料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、(a)リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有し、且つ(b)ジャガイモ破砕物を1.5質量%以上5質量%以下含有する、リンゴ含有液状調味料、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1. (a)リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有し、且つ(b)ジャガイモ破砕物を1.5質量%以上5質量%以下含有する、リンゴ含有液状調味料.
項2. (c)pHが3.2以上4.5以下である、項1に記載のリンゴ含有液状調味料.
項3. (d)前記リンゴ含有液状調味料の調製に使用するジャガイモ破砕物の短辺の平均径が10μm以上50μm以下である、項1又は2に記載のリンゴ含有液状調味料.
項4. (e)ブルックフィールド型粘度計で測定される粘度(測定条件:20℃、6rpm)が1000cp以上35000cp以下である、項1~3のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料.
項5. (f)不溶性食物繊維の含有量が5質量%以上10質量%以下である、項1~4のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料.
項6. (g)95%希釈時の水分活性が0.950以上0.999以下である、項1~5のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料.
項7. 項1~6のいずれかに記載のリンゴ含有液状調味料が添加されてなる、食品.
項8. リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強する方法.
項9. リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味の後味の伸びを向上する方法.
項10. リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ風味が増強したリンゴ含有液状調味料の製造方法.
項11. リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ風味の後味の伸びが向上したリンゴ含有液状調味料の製造方法.
項12. ジャガイモ破砕物を含有する、リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有するリンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強するための組成物.
項13. ジャガイモ破砕物を含有する、リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有するリンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味の後味の伸びを向上するための組成物.
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リンゴ風味が増強し且つリンゴ風味の後味の伸びが向上したリンゴ含有液状調味料を提供することができる。このリンゴ含有液状調味料は、リンゴ破砕物及びジャガイモ破砕物を所定量になるように配合することにより、簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。また、本明細書に上限及び下限が別々に記載されている場合、これらの上限及び下限を任意に組合わせることができる。
【0012】
1.リンゴ含有液状調味料
本発明は、その一態様において、(a)リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有し、且つ(b)ジャガイモ破砕物を1.5質量%以上5質量%以下含有する、リンゴ含有液状調味料(本明細書において、「本発明のリンゴ含有液状調味料」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0013】
リンゴ破砕物は、リンゴの果肉が破砕されており、且つ液状のものである限り、特に制限されない。
【0014】
リンゴとしては、特に制限されず、例えばふじ、王林、ジョナゴールド、秋映、あいかの香り、あかぎ、茜、安祈世、あずさ、アルプスの乙女、印度、おいらせ、かんき、北紅、紅の夢、恋空、紅玉、昂林、国光、こみつ、美丘、さんさ、シナノスイート、シナノ、シナノレッド、シナノピッコロ、秋陽、スターキング・デリシャス、スリムレッド、世界一、千秋、大紅栄、高嶺、千雪、つがる、夏明、ひめかみ、弘前ふじ、ピンクむつ、ピンクレディー、ファーストレディー、紅いわて、紅将軍、紅ロマン、ほおずり、北斗、ほのか、未希ライフ、ミニふじ、やたか、由香里、ゆめあかり、夢ひかり、陽光等が挙げられる。また、リンゴは果実をそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、皮むき、種実抜き、除芯等)を加えてから使用してもよい。リンゴは1種単独であってもよいし2種以上の組合せであってもよい。
【0015】
リンゴの破砕の程度は、リンゴ破砕物が液状となる程度である限り、特に制限されない。破砕の方法としては、例えばカッター、ブレンダー、ミキサー、すりおろし機、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等による機械的力による破砕方法; 空気、液体等の圧力による破砕方法等が挙げられる。破砕の方法は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0016】
本明細書において、液状とは、流動性を有する限りにおいて特に制限されず、通常、固体及び液体の混合物、ペースト等を包含する。
【0017】
リンゴ破砕物は、好ましくは、破砕後に、裏ごしにより比較的大きな固形物が潰されたもの(リンゴピューレ)である。裏ごしにより、リンゴ破砕物をより滑らかにすることができ、ひいては本発明のリンゴ含有液状調味料を調味ペーストとして使用し易いものとすることができる。裏ごしに用いるフィルターの目開きは、例えば0.1mm以上3mm以下、好ましくは0.3mm以上1mm以下である。
【0018】
リンゴ破砕物は、好ましくは加熱処理されたものである。加熱処理により、殺菌及び褐変抑制することができる。加熱処理は、リンゴ破砕物の製造工程のいずれかの段階で行われてもよいが、好ましくは破砕後(製造工程に裏ごし処理を含む場合、より好ましくは破砕後、裏ごし処理前)である。リンゴ破砕物は、加熱処理により、食感及び風味がジャム様となってしまい、加熱前のリンゴが有する特有の風味(リンゴ風味)が十分に感じられなくなってしまう。また、得られたリンゴ含有液状調味料を食品素材に添加して喫食した際のリンゴ風味の後味の伸びが弱くなってしまう。このため、加熱処理リンゴ破砕物を使用する場合、本発明の課題(リンゴ風味の増強、及びリンゴ風味の後味の伸びの向上)の重要性が一層高まり、また本発明の効果がより一層顕著になる。加熱処理の条件は、酵素の失活及び殺菌が可能な程度の条件である限り、特に制限されず、例えば80℃以上100℃以下で1分間以上30分間以下という処理条件が挙げられる。
【0019】
リンゴ破砕物の不溶性食物繊維量は、特に制限されないが、リンゴ破砕物100質量%に対して、好ましくは0.4質量%以上2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。このようなリンゴ破砕物を使用すると、本発明のリンゴ含有液状調味料の不溶性食物繊維量及び粘度を後述の好適な範囲に調整し易くなるので、好ましい。リンゴ破砕物の不溶性食物繊維量は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
リンゴ破砕物は1種単独であってもよいし2種以上の組合せであってもよい。
【0021】
リンゴ破砕物の含有量は、本発明のリンゴ含有液状調味料100質量%に対して、45質量%以上95質量%以下である。このような範囲とすることにより、後述のジャガイモ破砕物と相まって、リンゴ風味の増強効果及びリンゴ風味の後味の伸びの向上効果を得ることができる。該含有量は、これらの効果の観点から、好ましくは50質量%以上90質量%以下、より好ましくは53質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは64質量%以上74質量%以下である。
【0022】
ジャガイモ破砕物は、ジャガイモの可食部が破砕されたものである限り、特に制限されない。
【0023】
ジャガイモとしては、特に制限されず、例えばアーリーキング、アーリーローズ、アイノアカ、あかね風、アトランチック、アローワ、アンドーバー、岩手3号、インカゴールド、インカのひとみ、インカのめざめ、インカレッド、ウルリケ、疫不知、エスペランサローハ、エエゾアカリ、エニワ、カンデラ、咸南白、キタアカリ、きたかむい、キタムサシ、金時薯、グラウンドペチカ、クワタルパン、群馬8号、ごうしゅいも(祖谷いも)、コナヒメ、コナフブキ、コナユタカ、コロール、根優1号、サクラフブキ、三円薯、さんじゅう丸、シェポディー、シェリー、紫月、シマバラ、下栗二度芋、ジジャガキッズレッド、シャドークイーン、ジョージナ、シルテーマ、シレトコ、スノーデン、スノーフレークポテト、セトユタカ、タチバナ、タワラビーナス、男爵薯、チェルシー、チヂワ、チトセ、ツニカ、ツノー、独逸薯、とうや、トヨアカリ、トヨシロ、ドロシー、ながさき黄金、長崎白、ニシユタカ、ニセコ、根室紫、ノーキングラセット、農林1号、パールスターチ、ハツフブキ、ピーアレスポテト、ひかる、日の丸1号、ビホロ、紅久、紅丸、ペポー、ホイラ、ボーヴィー、北農第2号、ホッカイアカ、ホッカイコガネ、北海白、ぽろしり、明星、ムサマル、紫いも、メークイン、メイホウ、柳川白、ヤンキーチッパー、リラチップ、レッドカリスマ、レッドムーン、レディジョウ、ローズママ、ロザンナ、ワーバ、ワセシロ、ボールガード(Beauregard)、バーダマン(Vardaman)、センテニアル(Centennial)、ジョージアジェット(Georgia Jet)等が挙げられる。また、ジャガイモは可食部をそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、皮むき、芽除去等)を加えてから使用してもよい。ジャガイモは1種単独であってもよいし2種以上の組合せであってもよい。
【0024】
ジャガイモ可食部を、加熱後、破砕することにより、本発明で使用するジャガイモ破砕物を得ることができる。加熱前には、必要に応じて、適当な大きさに切断することが好ましい。ジャガイモの加熱処理の条件は、ジャガイモが破砕に適した硬さとなる程度の条件である限り、特に制限されず、例えば、水中又は蒸気中、80℃以上100℃以下で5分間以上30分間以下という処理条件が挙げられる。ジャガイモの破砕の程度は、ジャガイモ破砕物がペースト状部分を含むようになる程度である限り、特に制限されない。破砕の方法としては、例えばカッター、ブレンダー、ミキサー、すりおろし機、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等による機械的力による破砕方法; 空気、液体等の圧力による破砕方法等が挙げられる。破砕の方法は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
【0025】
本発明のリンゴ含有液状調味料の調製に使用するジャガイモ破砕物としては、上記破砕後のものをそのまま用いることもできるが、含有する水分により、本発明のリンゴ含有液状調味料の風味が薄まる可能性がある。このため、ジャガイモ破砕物としては、好ましくは加熱後、上記破砕前後(好ましくは破砕後)に乾燥処理を経たもの(ジャガイモ乾燥破砕物)を使用することができる。乾燥処理の方法は、食品を乾燥可能な方法である限り特に制限されず、例えばドラム式乾燥機、循環式乾燥機、台車式乾燥機、平型乾燥機等の各種乾燥機を使用する方法が挙げられる。乾燥処理は、水分含量が、例えば15質量%以下、好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5~9.5質量%になるまで行うことができる。なお、水分含量の測定には、一般的に食品の成分測定に用いる方法を用いることができ、例えば日本食品標準成分表に記載の方法に準じた測定方法を用いることができる。また、乾燥処理後は、いまだ破砕処理されていない場合は破砕処理が行われる。また、既に破砕処理されていた場合であっても、乾燥処理後に、再度破砕処理することができる。
【0026】
ジャガイモ乾燥破砕物の形状は、特に制限されず、例えば燐片状、球状、楕円状、ロッド状であり得る。該形状は、好ましくは燐片状である。
【0027】
本発明のリンゴ含有液状調味料の調製に使用するジャガイモ破砕物(特に、ジャガイモ乾燥破砕物)の粒子の大きさは、本発明のリンゴ含有液状調味料の調製時に(例えば混合時の機械的力により)適当な大きさの粒子へと破砕され、本発明のリンゴ含有液状調味料に適度な食感を付与することができる程度の大きさである限り、特に制限されない。例えば、ジャガイモ破砕物の短辺の平均径は、例えば10μm以上50μm以下、好ましくは12μm以上40μm以下、より好ましくは15μm以上35μm以下である。また、ジャガイモ破砕物の長辺の平均径は、例えば0.2mm以上10mm以下、好ましくは0.5mm以上8mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。ジャガイモ破砕物の短辺及び長辺の平均径は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
ジャガイモ破砕物の不溶性食物繊維量は、特に制限されないが、ジャガイモ破砕物100質量%に対して、好ましくは3.5質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以上5.5質量%以下である。このようなジャガイモ破砕物を使用すると、本発明のリンゴ含有液状調味料の不溶性食物繊維量及び粘度を後述の好適な範囲に調整し易くなるので、好ましい。ジャガイモ破砕物の不溶性食物繊維量は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0028】
ジャガイモ破砕物は1種単独であってもよいし2種以上の組合せであってもよい。
【0029】
ジャガイモ破砕物の含有量は、本発明のリンゴ含有液状調味料100質量%に対して、1.5質量%以上5質量%以下である。このような範囲とすることにより、前述のリンゴ破砕物と相まって、リンゴ風味の増強効果及びリンゴ風味の後味の伸びの向上効果を得ることができる。該含有量は、これらの効果の観点から、好ましくは1.8質量%以上4質量%以下、より好ましくは2質量%以上3質量%以下である。
【0030】
本発明のリンゴ含有液状調味料のpHは、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて特に制限されない。該pHはリンゴ風味の維持に必要な酸味を備えるという観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.4以下、さらに好ましくは4.17以下である。また、該pHは、良好なリンゴ風味が得られる程度に酸味を抑えるという観点から、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.3以上、さらに好ましくは3.4以上である。該pHは、好ましくは3.2以上4.5以下、好ましくは3.3以上4.4以下、より好ましくは3.4以上4.17以下である。pHの測定方法には制限がないが、後述の実施例記載のようにpHメーターで測定する方法が簡便である。
【0031】
本発明のリンゴ含有液状調味料の粘度は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて特に制限されない。本発明による粘度は、後述の実施例記載のブルックフィールド型粘度計で測定される粘度(測定条件:20℃、6rpm)で規定する。粘度は、液状調味料としての滑らかさを担保するという観点から、好ましくは35000cp以下、より好ましくは34000cp以下、さらに好ましくは33000cp以下である。該粘度は、リンゴ風味の増強効果及びリンゴ風味の後味の伸びの向上効果の観点から、好ましくは1000cp以上、より好ましくは2000cp以上、さらに好ましくは3500cp以上である。該粘度は、好ましくは1000cp以上35000cp以下、より好ましくは2000cp以上34000cp以下、さらに好ましくは3500cp以上33000cp以下である。
【0032】
本発明のリンゴ含有液状調味料の不溶性食物繊維の含有量は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて特に制限されない。該含有量は、液状調味料としての滑らかさを担保するという観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9.8質量%以下、さらに好ましくは9.6質量%以下である。該含有量は、リンゴ風味の増強効果及びリンゴ風味の後味の伸びの向上効果の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは5.1質量%以上、さらに好ましくは5.2質量%以上である。該含有量は、好ましくは5質量%以上10質量%以下、より好ましくは5.1質量%以上9.8質量%以下、さらに好ましくは5.2質量%以上9.6質量%以下である。不溶性食物繊維の含有量は後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0033】
本発明のリンゴ含有液状調味料の95%希釈時の水分活性は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて特に制限されない。該水分活性は、リンゴ特有の果肉感の観点から、好ましくは0.999以下、より好ましくは0.998以下、さらに好ましくは0.996以下である。該水分活性は、リンゴのみずみずしさの観点から、好ましくは0.950以上、より好ましくは0.952以上、さらに好ましくは0.954以上である。該水分活性は、好ましくは0.950以上0.999以下、より好ましくは0.952以上0.998以下、さらに好ましくは0.954以上0.996以下である。水分活性を測定する手法に制限はないが、後述の実施例に記載の方法の通り、大規模生産時のブレンド量のバラツキを加味して95%希釈した状態で測定する。
なお、95%希釈とは、リンゴ含有液状調味料試料95部に対して水を5部添加することをいう。
【0034】
本発明のリンゴ含有液状調味料は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、リンゴ破砕物及びジャガイモ破砕物以外の他の原料を含有することができる。他の原料としては、糖類(高甘味度甘味料を含む)、果実や野菜を切削やすり潰す等の処理により得られる破砕物(搾汁液(果汁や、野菜汁)、ピューレ、ペースト等)、フレーバー、食酢、食塩、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、酸味料、旨味調味料、酒類、油脂類、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等、pH調整剤が挙げられる。
【0035】
上記糖類としては、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、黒糖、はちみつ、水あめ、デキストリン、ラクトース、ガラクトースや、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0036】
上記高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、甘草抽出物、ステビアやその酵素処理物等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0037】
上記果実としては、例えば、桃、ぶどう、アセロラ、ブルーベリー、梨、杏、オレンジ、レモン、柚子、カボス、スダチ、ライム、みかん、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、バナナ、メロン、キウイフルーツ、パイナップル、カシス、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ、ウメ、ざくろ、アサイー、ピンクグレープフルーツ、ラズベリー、白ぶどう、ベルガモット、パッションフルーツ、八朔等に由来する果実が挙げられる。果実はこれらに限定されるものではなく、1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。
【0038】
上記野菜としては、例えば、トマト、ピーマン、パプリカ、キュウリ、ナス、レッドベルペッパー、かぼちゃ、枝豆、等の果菜、タマネギ(オニオン)、ショウガ(ジンジャー)、ニンニク(ガーリック)、大根、ニンジン、ビーツ等の根菜、キャベツ、レタス、ほうれん草、白菜、セロリ、小松菜、チンゲン菜、モロヘイヤ、ケール、シソ、ニラ、パセリ、ネギ等の葉菜、ニンニク、アスパラガス、たけのこ等の茎菜、ブロッコリー、カリフラワー等の花菜等、その他きのこ類等に由来する野菜が挙げられる。野菜はこれらに限定されるものではなく、1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。なお、これらの野菜、果実より得られた搾汁液(果汁や、野菜汁)やピューレ、ペースト等を、本発明の飲料に1種又は2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で配合してもよい。
【0039】
上記フレーバーとしては、例えば、ぶどうフレーバー、リンゴフレーバー、レモンフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフルーツフレーバー、柚子フレーバー、すだちフレーバー、ブルーベリーフレーバー、ウメフレーバー、カシスフレーバー、ざくろフレーバー、ラズベリーフレーバー等や、ヨーグルトフレーバー等の乳フレーバー、その他、ローズヒップフレーバー、カモミールフレーバー、ジャスミンフレーバー、ジンジャーフレーバー等が挙げられる。これらのフレーバーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0040】
上記食酢としては、例えば、米や麦などの穀物や果汁を原料として生産される醸造酢と、氷酢酸や酢酸の希釈液に砂糖等の調味料を加えるか、又はそれに醸造酢を加えた合成酢と、があり、何れも使用することができる。醸造酢としては、例えば、米酢、穀物酢(玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(リンゴ酢、ぶどう酢、レモン酢、カボス酢、梅酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢などが挙げられる。また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸を水で適宜希釈したものなどが挙げられる。なお、これらの食酢は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記食塩はそのものでもよいが、食塩を含有する食品でも良い。
【0042】
上記アミノ酸系調味料としては、例えば、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸系調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0043】
上記核酸系調味料としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸系調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0044】
上記有機酸系調味料としては、例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸系調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。2種以上の有機酸系調味料を併用することで、双方の呈味が相乗的に高まるため好ましい。
【0045】
上記酸味料としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フィチン酸、フマル酸、リン酸等が挙げられる。これらの酸味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0046】
上記旨味調味料としては、例えば、たん白加水分解物、酵母エキス等が挙げられる。これらの旨味調味料は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0047】
上記酒類としては、清酒、合成清酒、みりん、焼酎、ワイン、リキュール、紹興酒等が挙げられる。これらの酒類は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0048】
上記油脂類としては、例えば、大豆油、大豆胚芽油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、へーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、藻類油等が挙げられる。これらの油脂類は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0049】
上記香辛料とは、特有の香り、刺激的な呈味、色調を有し、香り付け、消臭、調味、着色等の目的で飲食品に配合する植物体の一部(植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎など)をいい、香辛料にはスパイス又はハーブが含まれる。スパイスとは、香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものをいい、例えば、胡椒(黒胡椒、白胡椒、赤胡椒)、ニンニク、ショウガ、ごま(ごまの種子)、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、ケシノミ、柚子、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペッパー、オリーブの実などが挙げられる。また、ハーブとは、香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものをいい、例えば、クレソン、コリアンダー、シソ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉などが挙げられる。
【0050】
また、上記粘度調整剤としては、例えばキサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、タラガム、トラガントガム、ペクチン、セルロース、カラギーナン、寒天、澱粉、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラヤガム、プルラン、キチン、キトサン等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で併用してもよい。
【0051】
上記他の原料の組合せ及び含有量は、特に限定はされず、適宜設定することができる。好ましくは、本発明のリンゴ含有液状調味料は、糖原(例えば糖類、高甘味度甘味料、果汁等、好ましくは果汁)及び食酢を含有する。他の原料の含有量は、本発明のリンゴ含有液状調味料100質量%に対して、例えば68.5質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。本発明の好ましい一態様においては、本発明のリンゴ含有液状調味料は、糖原(好ましくは果汁)を例えば5質量%以上40質量%以下、好ましくは15質量%以上35質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下含有することができる。本発明の好ましい一態様においては、本発明のリンゴ含有液状調味料は、食酢を、例えば0.5質量%以上10質量%以下、好ましくは1質量%以上5質量%以下含有することができる。
【0052】
本発明のリンゴ含有液状調味料の製造方法は、特に制限されない。典型的には、リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む方法により、製造することができる。
【0053】
各原料の配合のタイミング及び順序は、特に制限されない。また、同一原料を1回で投入することもできるし、複数回に分けて投入することもできる。各原料を配合した後は、必要に応じて、各原料ができるだけ均一に分散されるように、混合することが好ましい。
【0054】
また、必要に応じて、原料の配合後、加熱処理(殺菌処理)することができる。例えば、湯煎加熱、蒸気加熱、レトルト加熱、ヒーター加熱、高周波電磁誘導加熱、チューブ式高温加熱、又はジュール加熱等の方法により行うことができる。これらの方法による加熱は、例えばバッチ式の攪拌機能付きジャケットタンク、レトルト殺菌装置、若しくはオートクレーブ、又はプレート式熱交換機、チューブ式熱交換機、若しくはスチームインジェクション式熱交換機等の各種熱交換機等、従来公知の機器が使用できる。
【0055】
得られた本発明のリンゴ含有液状調味料は、通常、一般の液状調味料と同様に、容器に充填される。本発明のリンゴ含有液液状調味料に使用する容器としては、材質や形状は特に限定はされないが、例えば、プラスチック製容器、パウチ(ポリエチレンパウチ、アルミパウチ)、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶、瓶容器などが挙げられる。また、本発明のリンゴ含有液液状調味料は容器に充填した後で、上記加熱処理に供することもできる。
【0056】
また、上記方法により、リンゴ風味が増強した(リンゴ風味の後味の伸びが向上した)リンゴ含有液状調味料を得ることができ、またリンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強すること(リンゴ風味の後味の伸びを向上すること)ができる。
【0057】
この観点から、本発明は、その一態様において、リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ風味が増強した(リンゴ風味の後味の伸びが向上した)リンゴ含有液状調味料の製造方法、に関する。また、本発明は、その一態様において、リンゴ破砕物を含有量が45質量%以上95質量%以下になるように配合し、且つジャガイモ破砕物を含有量が1.5質量%以上5質量%以下になるように配合することを含む、リンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強する(リンゴ風味の後味の伸びを向上する)方法、に関する。
【0058】
同様の観点から、本発明は、その一態様において、ジャガイモ破砕物を含有する、リンゴ破砕物を45質量%以上95質量%以下含有するリンゴ含有液状調味料におけるリンゴ風味を増強するための(リンゴ風味の後味の伸びを向上するための)組成物、に関する。
【0059】
これらの実施形態の各構成については、本発明のリンゴ含有液状調味料に関する上記説明と同様である。
【0060】
2.食品
本発明のリンゴ含有液状調味料は、食品に添加して使用することができる。これにより、食品に、リンゴの甘み及び酸味のみならずリンゴ風味を付与することができ、或いはそれにより食品自身の風味を引き立たせて、食品の美味しさをより向上させることができる。
【0061】
この観点から、本発明は、その一態様として、本発明のリンゴ含有液状調味料が添加されてなる、食品(本明細書において、「本発明の食品」と示すこともある。)、に関する。以下、これについて説明する。
【0062】
食品としては、特に制限されず、各種食品を挙げることができる。食品としては、そのまま喫食に供することができる食品が好ましい。食品の具体例としては、以下の食品が挙げられる:
パン類(例えば食パン、フランスパン、ピタ、ナン、マントウ、ドーナツ、サワーブレッド、ソーダブレッド、スコーン、マフィン、ホットケーキ、蒸しパン、ケーキドーナツ、トルティーヤ、ロティ、プーリー);
デザート(例えばカスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、果汁入りゼリー等のゼリー類、ババロア、ヨーグルト、豆乳グルト、ケーキ等); 焼菓子(例えばハードビスケット、クッキー、ケーキ、ホットケーキ等);
蒸菓子(例えば饅頭、蒸し羊羹等);
冷菓(例えば、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー等);
チョコレート菓子(例えばハイカカオチョコレート、ミルクチョコレート、マーブルチョコレート、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート、メロンチョコレート等);
キャンディー(例えばボンボン、バターボール、マーブル、キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ、果汁入りキャンディー、錠菓等);
グミ(例えば、果汁入りグミ);
シリアル食品;
発酵食品(例えば納豆等の豆発酵食品、キムチ、ヨーグルト等);
惣菜(肉類、魚介類、卵、乳、野菜、果物、ハーブ、海藻等の具材を適当な方法で調理して得られた食品。例えばサラダ、漬物、煮物、焼き物、揚げ物、炒め物、蒸し物、和え物等);
レトルト食品;
野菜摂取用固形食品(例えば野菜バー、野菜ペースト等)。
【0063】
本発明の食品は、各種食品に、本発明のリンゴ含有液状調味料を、必要に応じてさらに他の食品素材や調味料等を添加して、得ることができる。また、必要に応じて、加熱などの調理を施してもよい。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0065】
(1)原料の製造
(1-1)リンゴ破砕物の製造
リンゴを、洗浄後、除芯して、破砕機(フルーツクッカー セイケンエンジニアリング社製)で破砕処理した。得られた破砕物を、90℃でヒーター加熱処理した後、目開き0.5mmのメッシュで裏漉しして大粒径の固形物を潰して、リンゴ破砕物であるリンゴピューレを得た。得られたリンゴピューレの不溶性食物繊維量を後述の方法で測定したところ、0.9質量%であった。
【0066】
(1-2)ジャガイモ破砕物の製造
ジャガイモを、洗浄して、皮むきしてから約1.5cmずつに切断した後、95℃の水中で20分間加熱処理した。加熱処理後のジャガイモを粗くつぶした後、ドラム型乾燥機を使って水分含量5質量%以上8質量%以下になるように乾燥させた。得られた乾燥物を、目開き4mmのメッシュで粉砕して、ジャガイモ破砕物を得た。得られたジャガイモ破砕物の短辺の平均径を後述の方法で測定したところ、約21μmであった。また、長辺の平均径を後述の方法で測定したところ、1.9mmであった。また、ジャガイモ破砕物の不溶性食物繊維量を後述の方法で測定したところ、4.2質量%であった。
【0067】
(2)リンゴ含有液状調味料の製造
リンゴ破砕物(上記(1-1))、ジャガイモ破砕物(上記(1-2))、リンゴ酢(酢酸酸度10%(w/v))、ブドウ果汁(Brix66)、食塩、水酸化ナトリウム水溶液(0.1mol/L)、及び水の内の一部の材料を、表1に示される組成になるように混合した。得られた混合物500gを、合成樹脂製のパウチに30gずつ分注した後、90℃の水に10分間浸漬して、リンゴ含有液状調味料を得た。
【0068】
(3)物性値の測定
(3-1)水分活性の測定
リンゴ含有液状調味料95部に水を5部添加した95%希釈時の水分活性を、AW SPRINT TH500(Novasina社)を用いて定法に従って測定した。
【0069】
(3-2)pHの測定
リンゴ含有液状調味料のpHを、pHメーター(pH METER F-51)(堀場製作所社)を用いて測定した。
【0070】
(3-3)粘度の測定
リンゴ含有液状調味料の粘度を、ブルックフィールド型粘度計BMII(BII形粘度計、東機産業株式会社製)を用いて測定した。測定時の温度は20℃とし、ローターNo.3を用い、6rpmで測定した。ローターNo.3の測定上限値20000cpを超えた場合は、ローターNo.4に切り替えて測定を行った。(ローターNo.4に切り替えて測定を行った場合は、表1中の測定値右側に「※」を表示した。)
【0071】
(3-4)ジャガイモ破砕物の短辺の平均径の測定方法
ジャガイモ破砕物試料を電子顕微鏡(Miniscope TM3000 (日立ハイテク社製))で500倍に拡大した後、粒子10個をランダムに選択し、その短辺を拡大像内のスケールを用いて測定した。
【0072】
(3-5)ジャガイモ破砕物の長辺の平均径の測定方法
ジャガイモ破砕物の長辺の平均径を、当該ジャガイモ破砕物の粒子10個をランダムに選択し、選択された粒子の長辺の粒径をノギスで測定することで算出した。
【0073】
(3-6)不溶性食物繊維の測定方法
リンゴ含有液状調味料、リンゴ破砕物、及びジャガイモ破砕物の不溶性食物繊維含有量を、プロスキー変法(AOAC985.29 法をベースとする方法)による可溶性食物繊維と不溶性食物繊維の分別定量によって、測定した。
【0074】
(4)官能評価
各サンプルの評価は以下の条件で行った。各評価は以下の訓練を行った官能検査員4名で実施し、その平均点を評点として小数第一位を四捨五入した値を表1に記載した。
【0075】
官能検査員は、下記A)及びB)の識別訓練を実施し、特に成績が優秀な者を選定した。A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
【0076】
官能検査の項目は以下の2つとした。
【0077】
リンゴ風味の増強感
5:リンゴ風味の増強感が顕著に感じられて非常に好ましい。
4:リンゴ風味の増強感が明らかに感じられて好ましい。
3:リンゴ風味の増強感が感じられて許容範囲である。
2:リンゴ風味の増強感がほぼ感じられず好ましくない。
1:リンゴ風味の増強感が全く感じられず非常に好ましくない。
【0078】
後味の伸び
5:後味の伸びが顕著に感じられて非常に好ましい。
4:後味の伸びが明らかに感じられて好ましい。
3:後味の伸びが感じられて許容範囲である。
2:後味の伸びがほぼ感じられず好ましくない。
1:後味の伸びが全く感じられず非常に好ましくない。
【0079】
(5)結果
結果を表1に示す。実施例は全般に渡って、3点以上と基準値を満たしたが、比較例は全般に渡って2点以下となり基準値を満たさなかった。
【0080】