(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ノズルプラズマ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230629BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01L21/302 101E
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2019160075
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】クンプアン ソマワン
(72)【発明者】
【氏名】石田 夕起
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-066135(JP,A)
【文献】特開2014-212303(JP,A)
【文献】特開2014-220288(JP,A)
【文献】特開2014-212302(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0329191(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0186167(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0040663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/00-1/54
H01L 21/302
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハが設置されるステージと、
該ステージを覆うチャンバと、
該チャンバ内を真空引きする真空引き部と、
前記チャンバの前記ステージに対向する位置に設けられた管状のガス供給部と、
該ガス供給部に取り付けられ、該ガス供給部内のエッチングガス中にマイクロプラズマを発生させてイオンとラジカルを生成させるノズルプラズマ発生部と、
前記ガス供給部の先端からのエッチングガスの吹き付け方向に交差する方向に前記ステージを移動させるスキャン部とを具備し、
前記ノズルプラズマ発生部は、前記ガス供給部の外周に沿って上下方向に所定長さ設けられた本体部と、該本体部の下部から外側に向けて延設され
、前記ステージの移動範囲よりも範囲が広くなるように構成された鍔状部とを有していることを特徴とするノズルプラズマ装置。
【請求項2】
前記ステージに設けられ、該ステージに設置されるウェハを含む領域にプラズマを発生させてエッチングガスをイオン化およびラジカル化させるステージプラズマ発生部を具備していることを特徴とする請求項1に記載のノズルプラズマ装置。
【請求項3】
前記チャンバは、導電性を有し上部に開口部が設けられたチャンバ本体と、前記開口部内に配置された前記ノズルプラズマ発生部と前記開口部の内周縁部との間に配置された絶縁部材とを有しており、該絶縁部材が前記チャンバ内に突出する突出部を有していることを特徴とする請求項2に記載のノズルプラズマ装置。
【請求項4】
前記ステージにおいて、ウェハの周縁部を載置して当該ウェハを保持する載置部を有すると共に、該載置部の下方に別体の前記ステージプラズマ発生部を有する構成の本体部を備えており、
該本体部が、ウェハの周縁部の全周を載置すると共に、前記ステージプラズマ発生部の側面を全周覆うように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のノズルプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハをプラズマエッチングするためのノズルプラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマ装置が用いられる半導体デバイスの製造ラインは、広大なクリーンルーム内に、同種機能の処理装置を纏めたベイと呼ばれるユニットを複数備え、そのベイ間を搬送ロボットやベルトコンベアで接続するジョブショップ方式を採用したレイアウトが主流になっている(特許文献1参照)。また、そのような製造ラインで処理されるワークには、12インチなどの大口径のウェハが使用され、1枚のウェハから数千個の半導体チップが製造される生産システムとされている。
【0003】
ところがこのジョブショップ方式では、複数の似たような処理工程を繰り返す場合には、ベイ内での搬送やベイ間での搬送距離が大幅に伸びるとともに、待機時間も増加するため、製造時間が増大し、仕掛品の増大を招くなどコストアップの要因となり、ワークを多量生産する製造ラインとしては、生産性の低さが問題となる場合が生じる。そこで、従来のジョブショップ方式の製造ラインに代え、半導体処理装置を処理工程順に配置したフローショップ方式による製造ラインも提案されている。
【0004】
一方、このようなフローショップ方式による製造ラインは、単一の製品を多量に製造する場合には最適であるが、製造品を変えることで製造手順(レシピ)を変えなければならない場合には、製造ラインでの各半導体処理装置の設置をワークの処理フロー順に並べ替えることが必要となる。しかしながら、製品が変わるたびにそのような並び替えを行うのは、再配置のための手間と時間を考慮すると、現実的ではない。特に、クリーンルームという閉鎖空間内に巨大な半導体処理装置が固定配置されている現状では、その半導体処理装置をその都度再配置することは、現実的には不可能である。
【0005】
また、エンジニアサンプルやユビキタスセンサー用など、製造単位数が数個~数百個というような超少量の半導体を製造するニーズも存在する。しかしながら、上述したジョブショップ方式やフローシップ方式による巨大な製造ラインでは、超少量の半導体を製造すると、コストパフォーマンスが極端に悪くなってしまうため、その製造ラインに他の品種を流さざるを得ないこととなる。
【0006】
ところが、そのように多品種を同時に投入して混流生産をするとなると、製造ラインの生産性は品種数の増大ととともに一層低下することとなるので、結局のところ、このような巨大な製造ラインでは、超少量生産でかつ多品種生産に適切に対応できない。
【0007】
そこで、半導体デバイスなどの製造システムとして、0.5インチサイズ(ハーフインチサイズ。正確には、直径12.5mm。)のウェハに1個のデバイスを作成することを基本とし、その製造システムを構成する各処理工程それぞれを可搬性の処理装置で構成して、それら処理装置をレシピに沿ってフローショップやジョブショップ等に再配置することを容易にすることで、少量生産でかつ多品種生産に適切に対応することができるようにするミニマルファブシステムが本出願人より提案されている。このミニマルファブシステムでは、現状の半導体製造システムに比べ1/1000程度の極めて少ない設備投資額で済むと期待されており、また運転コストが低いなどのため多品種少量生産に適した生産システムとなることが期待されている。
【0008】
また、プラズマ装置においても、ミニマルファブシステムのような多品種少量生産に適した製造ラインに用いられる装置として、ノズルプラズマ装置が開発、提案されてきた。このノズルプラズマ装置では、プラズマ生成空間に誘導電界を生じさせて処理ガスを供給してプラズマ化させ、プラズマ生成空間を形成する胴部内径よりも小径となった漏斗状のプラズマ密度調整部材の上端部を、プラズマ生成空間と基台との間のチャンバの内壁に配置し、プラズマ密度調整部材の開口部に、プラズマ生成空間で生成されたプラズマを通過させて、プラズマの平面内密度を調整して基台上の基板に導く構成が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来のノズルプラズマ装置においては、プラズマ生成空間を形成する胴部内径より小径とした漏斗状のプラズマ密度調整部材の開口部に、プラズマ生成空間で生成させたプラズマを通過させて、基台上の基板へプラズマを導くものとしているに過ぎない。このため、プラズマ密度調整部材にてプラズマの密度を調整することができるものの、基板へプラズマを均等に導くことは考慮されておらず、比較的小さな基板の場合には、プラズマの密度の調整ですら容易ではない。
【0011】
そこで、チャンバ内でウェハが設置されるステージに対向する位置に設けられたガス供給管内のエッチングガス中に、マイクロプラズマを発生させるとともにイオンとラジカルを生成させるノズルプラズマ発生部を備え、エッチングガスの吹き付け方向に交差する方向にステージを移動させるスキャン機構を有しているノズルプラズマ装置が提案された。
【0012】
このように、ノズルプラズマ装置にスキャン機構が設けられたことにより、ウェハ表面内のエッチングレートの均一化を向上させることができるようになった。
【0013】
しかし、このようなノズルプラズマ装置において異方性エッチングを行う場合、RFプラズマをチャンバ内に印加して電場を形成することで行うが、ステージが移動する範囲に対して電場の範囲が狭いため、ステージの移動に電場が影響されて、均一にエッチングされないという問題があった。それゆえ、全体的により精度良くエッチングを行うことができる技術が求められており、検討が重ねられていた。
【0014】
本発明の課題は、移動するウェハの移動範囲に対応して、電場をウェハ全体に均一に作用させ、精度良くエッチングを行うことが可能なノズルプラズマ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るノズルプラズマ装置は、ウェハが設置されるステージと、該ステージを覆うチャンバと、該チャンバ内を真空引きする真空引き部と、前記チャンバの前記ステージに対向する位置に設けられた管状のガス供給部と、該ガス供給部に取り付けられ、該ガス供給部内のエッチングガス中にマイクロプラズマを発生させてイオンとラジカルを生成させるノズルプラズマ発生部と、前記ガス供給部の先端からのエッチングガスの吹き付け方向に交差する方向に前記ステージを移動させるスキャン部とを具備し、前記ノズルプラズマ発生部は、前記ガス供給部の外周に沿って上下方向に所定長さ設けられた本体部と、該本体部の下部から外側に向けて延設され、前記ステージの移動範囲よりも範囲が広くなるように構成された鍔状部とを有していることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るノズルプラズマ装置は、前記ステージに設けられ、該ステージに設置されるウェハを含む領域にプラズマを発生させてエッチングガスをイオン化およびラジカル化させるステージプラズマ発生部を具備していることが望ましい。
【0017】
本発明に係るノズルプラズマ装置は、前記チャンバが、導電性を有し上部に開口部が設けられたチャンバ本体と、前記開口部内に配置された前記ノズルプラズマ発生部と前記開口部の内周縁部との間に配置された絶縁部材とを有しており、該絶縁部材が前記チャンバ内に突出する突出部を有していることが望ましい。
【0018】
本発明に係るノズルプラズマ装置は、前記ステージにおいて、ウェハの周縁部を載置して当該ウェハを保持する載置部を有すると共に、該載置部の下方に別体の前記ステージプラズマ発生部を有する構成の本体部を備えており、該本体部が、ウェハの周縁部の全周を載置すると共に、前記ステージプラズマ発生部の側面を全周覆うように構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノズルプラズマ発生部の本体部でガス供給部内のエッチングガス中にマイクロプラズマを発生させると共に、ノズルプラズマ発生部の鍔状部で電場をステージより広くとることで、ステージが動くことで生じる擾乱を無視できるほどに広く電場を広げておくことができる。このため、移動するウェハの移動範囲に対応する、より広い範囲でエッチングガスのイオンを安定してウェハに到達させることができる。その結果、イオンをウェハ全体に均一に作用させることができ、精度良くエッチングを行うことができる。従って、装置を小型化、低価格化した上で、エッチングの精度向上等を図ることができる。
【0020】
また、本発明において、ステージに設けられたステージプラズマ発生部にて、このステージに設置されるウェハを含む領域にプラズマを発生させることができる。そのため、ウェハに吹き付けられる直前にエッチングガスをイオン化することができるため、ノズルプラズマ発生部と共に用いることで、比較的小さなウェハであってもさらに精度良くエッチングすることができる。
【0021】
また、本発明において、チャンバが、導電性を有するチャンバ本体と、その上部に設けられた開口部内に配置されたノズルプラズマ発生部と開口部の内周縁部との間に配置された絶縁部材とを有しており、この絶縁部材がチャンバ内に突出する突出部を有しているため、チャンバ内のステージ周辺を覆う空間に絶縁体の壁を設けることとなる。そのため、ステージプラズマ発生部が発生させたプラズマ化したエッチングガスが、グランドとなったチャンバ本体に向かってしまう不具合を解消して、絶縁部材の突出部で囲まれた空間に留まらせることができる。
【0022】
また、本発明において、ステージに設けられた、ウェハの周縁部を載置して当該ウェハを保持する本体部が、ウェハの周縁部の全周を載置するため、複数本の爪でウェハの周縁部を保持するパターンに比べて、安定してウェハを保持することができる。また、ステージプラズマ発生部の側面を全周覆うように構成されているため、プラズマがウェハの裏側に回り込んでしまう不具合が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るノズルプラズマ装置を示す概略図である。
【
図2】同実施の形態のノズルプラズマ装置が収容される筐体を示す外観図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
【
図3】同実施の形態のノズルプラズマ装置のスキャン機構を説明する概略図である。
【
図4】同実施の形態のノズルプラズマ装置のノズルプラズマ発生部の一例を示す概略図である。
【
図5】同実施の形態のノズルプラズマ装置のノズルプラズマ発生部の他の例を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係るノズルプラズマ装置を示す概略図である。
【
図7】同実施の形態のノズルプラズマ装置のステージを示す上面図である。
【
図8】
図7のA-A断面でステージプラズマ発生部が下方位置にある状態を示す図である。
【
図9】
図7のA-A断面でステージプラズマ発生部が上方位置にある状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[本発明の実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1を
図1~
図5に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態1に係るノズルプラズマ装置を示す概略図ある。
図2は、ノズルプラズマ装置が収容される筐体を示す外観図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は背面図である。
【0026】
本発明の実施の形態1に係るノズルプラズマ装置1は、
図2に示すように、予め規格された大きさの筐体2内に収容されたミニマルファブ(minimal fabrication)構想に基づくミニマルエッチング装置である。ここで、このミニマルファブ構想とは、多品種少量という半導体製造市場に最適なもので、省資源・省エネルギ・省投資・高性能な多様なファブに対応でき、例えば特開2012-54414号公報に記載の生産をミニマル化させるミニマル生産システムを実現させるものである。
【0027】
また、筐体2は、上下方向に長手方向を有する略直方体状に形成されたモジュールであり、内部への微粒子およびガス分子のそれぞれを遮断する構造とされている。この筐体2の上側の装置上部2aには、ウェハWをプラズマエッチングするためのノズルプラズマ装置1が収容されている。ここで、ノズルプラズマ装置1によるプラズマエッチングとしては、ウェハWの表面上に積層されているレジストパターンに対応させてウェハWの表面をエッチングするものである。
【0028】
さらに、筐体2の下側には、装置上部2a内のノズルプラズマ装置1を制御する制御装置等を内蔵させるための装置下部2bが設けられている。この装置下部2bには、ノズルプラズマ装置1でのエッチングの際に用いられる冷却ユニット9や電源ユニット(ここでは低周波電源10aと高周波電源10b)等が収容されている。また、装置下部2bの背面には、ノズルプラズマ装置1でのエッチングの際に用いられた後のエッチングガスG等の気体を筐体2外へ排出させるアウトレットとなる排出部2eが設けられている。
【0029】
また、筐体2の装置上部2aの上下方向の中間部には、この装置上部2aの正面側が上方に凹状に切り欠かれた形状とされている。そして、この装置上部2aの上側の正面側には、操作パネル2cが取り付けられている。また、この装置上部2aの下側の部分は、ウェハWを筐体2内に搬入させる前室2dとされている。そして、この前室2dの上面の略中央部には、搬送容器としてのミニマルシャトル(図示せず)を設置するためのシャトル収容部としての略円形状のドッキングポート(図示せず)が設けられている。ここで、前室2dは、筐体2内への微粒子およびガス分子のそれぞれを遮断する構成とされている。すなわち、この前室2dは、ミニマルシャトル内に収容されているウェハWを外気に曝す等することなく筐体2内へ出し入れできるようにするためのPLAD(Particle Lock Air-tight Docking)システムとされている。
【0030】
そして、前室2d内には、ドッキングポートから搬入されてくるウェハWをノズルプラズマ装置1の所定位置へ搬送するとともに、このノズルプラズマ装置1にてエッチングされた後のウェハWをドッキングポートへ搬出するための搬送装置(図示せず)が収容されている。なお、この搬送装置としては、例えば特開2011-96942号公報に記載のワーク搬送装置等が用いられる。
<ノズルプラズマ装置>
次いで、ノズルプラズマ装置1は、筐体2内の前室2dの後側のウェハ処理室2f内に収容されている。そして、このノズルプラズマ装置1にてエッチングするウェハWは、所定の大きさ、例えば直径12.5mm(ハーフインチサイズ)の円形状の表面を有し、単結晶シリコン(Si)にて構成された円盤状に形成されている。そして、このウェハWの表面には、予め所定のレジストパターンが形成され、プラズマエッチング前の状態とされている。
【0031】
さらに、ノズルプラズマ装置1は、いわゆるLFマイクロプラズマ方式とステージRFプラズマ方式とを併用したものである。すなわち、このノズルプラズマ装置1は、後述するガス供給管5dに取り付けられたLF印加部8に低周波電圧を印加してエッチングガスG中に多量のラジカルおよびイオンを発生させるとともに、ステージ6に取り付けられたRF印可板6dに高周波電圧を印加してチャンバ内にイオンシースを発生させると同時にエッチングガスGを励起させてイオン化させたプラスイオンとともにマイクロプラズマで発生したプラスイオンをウェハWの表面に略垂直に叩き込んで垂直エッチングするものである。
【0032】
具体的に、このノズルプラズマ装置1は、
図1に示すように、チャンバ5と、このチャンバ5内に設置されるステージ6とを備え、このステージ6をチャンバ5にて気密に覆う構成とされている。
<チャンバ>
チャンバ5は、
図1に示すように、円筒状のチャンバ本体5aを有しており、金属等の導電性を有する部材で構成されている。そして、このチャンバ本体5aの軸方向を上下方向に沿わせて設置され、このチャンバ本体5aの上端側に開口部5cが形成されており、その開口部5cを閉塞する円盤状の石英ガラス等の外部から低周波電圧を印加することが可能な絶縁材料にて構成された上板5bが配置されている。
【0033】
また、チャンバ本体5aの開口部5cの内縁部と上板5bの間には、所定厚さの絶縁部材5gが配置されている。ここでは、絶縁部材5gとして、セラミックからなる絶縁体が配置され、その内側上部にポリイミド等の樹脂で構成された固定部材5hが配置されて、チャンバ5を密閉した状態で固定されている。この絶縁部材5gは、チャンバ本体5aにグランドが設けられ、後述するLF印加部8に鍔状部8bが設けられたことにより、チャンバ5の外側とLF印加部8の間の距離が短くなって、後述するステージプラズマ発生部としての下部電極であるRF印加板6dが発生させたプラズマPでイオン化したエッチングガスGがウェハW付近に留まらずにチャンバ5の壁面方向に向かってしまい、ウェハWのエッチング精度が落ちる不具合を防止すべく、開口部5cから下方に所定量突出してチャンバ5内に突出する突出部5iが形成されるように構成されている。そして、この突出部5iで、チャンバ5内のステージ6周辺を覆う空間に絶縁体の壁を設けることとなる。そのため、RF印加板6dが発生させたプラズマPでイオン化したエッチングガスGが、グランドとなったチャンバ本体5aに向かってしまう(外側方向に流れていく)のを防止して、絶縁部材5gの突出部5iで囲まれた空間に留まらせることができる。
【0034】
また、この上板5bの中心位置には、ガス供給部としての、例えば角筒状のガス供給管5dの下端側が同心状に嵌合されて取り付けられている。このガス供給管5dは、断面矩形筒状に形成されており、このガス供給管5dの下端側の一部を上板5bに貫通させた状態とされ、この上板5bに溶接等されて一体的に取り付けられている。ここで、ガス供給管5dの形状としては、角筒状以外の形状、例えば円筒状等であってもよい。
【0035】
ガス供給管5dの下端部には、ブロック状のノズル7が内嵌合されて取り付けられている。このノズル7は、ガス供給管5dの内寸法に略等しい外寸法を有する角柱状の本体を備えている。この本体には、複数のガス挿通孔が穿設されている。これらガス挿通孔は、本体の高さ方向に沿った直線状に形成されており、これらガス挿通孔を平行かつ等間隔に離間させた状態とされ、本体の一端面から他端面へ直線状に貫通させて設けられている。すなわち、これらガス挿通孔は、ノズル7全体に亘って設けられており、このノズル7の各ガス挿通孔を通過させることによって、エッチングガスGを略均等にウェハWに吹き付ける構成とされている。
【0036】
また、ガス供給管5dの上部には、ガス供給口5eが接合されている。ここで、ガス供給口5eとしては、ガス供給管5dの上端部を同心状に縮径させて形成する他、ガス供給管5dに枝管(図示せず)を設ける等し、この枝管に接続して設けても良い。具体的に、ガス供給口5eには、メタルチューブ5fが取り付けられ、このメタルチューブ5fを介して、ガス供給口5eから、例えば四フッ化炭素とアルゴン(Ar)との混合ガス(CF4/Ar)等のエッチングガスGがチャンバ5内に供給される。なお、このエッチングガスGとしては、四フッ化炭素(CF4)のみにて構成されたガスとすることもできる。
【0037】
また、ガス供給管5dには、このガス供給管5dを介してウェハWに吹き付けるエッチングガスG中にマイクロプラズマ(径のサイズがμm~mmオーダの微小プラズマ)Mを発生させるためのノズルプラズマ発生部としてのLF印加部8が設けられている。このLF印加部8は、ノズル7からウェハWへ吹き付けるエッチングガスG中にマイクロプラズマMを発生させ、エッチングガスGを構成するCF4およびAr等を励起してイオン化およびラジカル化させてプラスイオン(CF3+、Ar+)やフッ素ラジカル(F)を発生させるようになっている。
【0038】
具体的に、このLF印加部8は、ガス供給管5dの上板5bより上方に突出している部分の上板5bに当接する位置に取り付けられており、ガス供給管5dに沿って設けられた本体部8aと、その下部から上板5bの外側方向に拡がる鍔状部8bとを有している。また、これら本体部8aと鍔状部8bを有するLF印加部8は、ガス供給管5dの外側に銅線を周方向に巻き付けられてコイル状に構成されている。
【0039】
さらに、LF印加部8に低周波電源10aが取り付けられており、この低周波電源10aからLF印加部8間に高圧低周波電圧が印加され、LF印加部8の本体部8aを介してガス供給管5d内を通過するエッチングガスG中にマイクロプラズマMを発生させる。すなわち、LF印加部8に印加される高圧低周波電圧は、エッチングガスG中に高圧交流励起プラズマを発生させる誘電体バリア放電であって、例えば電圧:10kVp-p、周波数:8kHz程度の交流高電圧がマイクロプラズマMの発生の主要因とされている。
【0040】
また、鍔状部8bがあることで、チャンバ5内に拡がるエッチングガスG中に、所定の電場をステージ6より広くとることができ、ステージ6が動くことで生じる擾乱を無視できるほどに広く電場を広げておくことができる。このため、移動するウェハWの移動範囲に対応する、より広い範囲でエッチングガスGのイオンを安定してウェハWに到達させることができる。その結果、イオンをウェハW全体に均一に作用させることができ、精度良くエッチングを行うことができる。従って、装置を小型化、低価格化した上で、エッチングの精度向上等を図ることができる。
【0041】
なお、本体部8aの形状としては、
図4に示すように、本体部8aが円筒型に形成されているものと、
図5に示すように、本体部8aが円筒を半分に割った形状のものとが考えられる。このうち、
図4に示すように本体部8aが円筒型に形成されたものでは、電解方向Z1は上下方向となり、これによりプラスイオンがウェハWに向かって加速する方向となる。このため、Si熱酸化膜エッチング等、イオン衝撃のサポートを必要とするエッチングに適している。また、
図5に示すように本体部8aが円筒を半分に割った形状に形成されたものでガス供給管5dと平行にGNDをとったものでは、電解方向Z2は左右方向となり、プラスイオンがウェハWと平行に加速する方向となる。このため、ラジカルやケミカル反応でエッチングを行いたいときに適しており、レジストアッシングや下地との選択比を稼ぎたいエッチングプロセスに適している。
【0042】
また、ここでは、鍔状部8bは後述するステージ6の移動範囲よりも範囲が広くなるように構成されている。これにより、ステージ6が動くことで生じる擾乱を無視できるほどに広く電場を広げておくことができるようになっている。
<ステージ>
ステージ6は、チャンバ5内に収容されつつ、このチャンバ5の上下方向に軸方向を沿わせつつ、このチャンバ5の開口部5cの鉛直下に設置されている。すなわち、このステージ6は、後述するRF印可板6dを、チャンバ5のガス供給口5eに対し同心状に位置させつつ、このガス供給口5eから所定間隔ほど下方に間隔を空けた位置に設置されている。
【0043】
具体的に、ステージ6は、円柱状の本体部6aを備え、この本体部6aの軸方向を上下方向に沿わせた状態で設置されている。この本体部6aの上端面は、閉塞されて平坦な円盤状の設置面とされており、この設置面上にウェハWが設置される構成とされている。すなわち、本体部6aは、ウェハWの外径寸法より若干大きな外径寸法に形成され、このウェハWの外径寸法より若干大きな径寸法を有する設置面とされている。
【0044】
この設置面は、絶縁性を有する絶縁板を備え、この絶縁板上にステージプラズマ発生部としての下部電極であるRF印加板6dが積層されている。ここで、これら絶縁板およびRF印加板6dは、それぞれ略円盤状に形成されており、このRF印加板6d上にウェハWが設置される。そして、RF印加板6dは、LF印加部8とともにチャンバ5内に上方から下方に向かう垂直な電界Eを形成させ、このチャンバ5内にイオンシースを発生させるとともに、ウェハW上へ送られるエッチングガスG中にプラズマPを発生させてエッチングガスGを励起させてイオン化させるイオンアシスト部である。
【0045】
具体的に、RF印加板6dは、例えば13.56MHz等の高周波電圧(RF)が印加され、このRF印加板6d上に設置されるウェハWを含む領域、すなわちウェハW上およびその周囲にプラズマPを発生させ、このウェハWに吹き付けられるエッチングガスGを構成するCF4およびAr等を励起してイオン化させたりラジカル化させてプラスイオン(CF3+、Ar+)やフッ素ラジカル(F)とする。さらに、このRF印加板6dの下端側の中心部に電極部が設けられ、この電極部を介して高周波電圧がチャンバ5外に設置された高周波電源10bから印加される。
【0046】
また、ステージ6には、このステージ6のRF印加板6d上に設置されるウェハWを冷却するための冷却部としての冷却ユニット9が取り付けられている。この冷却ユニッ9トは、例えば水冷式とされており、ステージ6の本体部6aおよび絶縁板を介してRF印加板6dを冷却することにより、このRF印加板6d上に設置されているウェハWを冷却する構成とされている。さらに、この冷却ユニット9は、装置下部2b内に収容されて取り付けられている。
【0047】
また、ステージ6は移動式となっており、プラズマエッチング時にステージ6を移動させてウェハWをスキャンするように構成されている。詳述すると、ステージ6は、
図3に示すように、ウェハWが設置されるウェハホルダ61を備えている。ウェハホルダ61には、ウェハホルダ61をX軸方向に移動させるX軸ステージ62と、ウェハホルダ61をY軸方向に移動させるY軸ステージ63とを備えたスキャン部としてのスキャン機構60が取り付けられている。スキャン機構60は、ノズル7からのエッチングガスGの吹き付け方向に交差するX軸方向およびY軸方向のそれぞれに向けてウェハホルダ61を移動させる。X軸ステージ62には、X軸ステージ62を介してウェハホルダ61をX軸方向に移動させる駆動源として直進モータ64が取り付けられている。Y軸ステージ63にもまた、Y軸ステージ63を介してウェハホルダ61をY軸方向に移動させる駆動源として直進モータ65が取り付けられている。
【0048】
また、この実施の形態ではチャック機構として本体部6aに静電チャックを備えており、所謂押さえ部材等で物理的に押さえることなくチャックしてプラズマエッチングを行うことができるようになっている。また、符号10cは静電チャックに使用するRFカットフィルタである。なお、本発明は静電チャックに限るものではなく、物理的にウェハWを上方から押さえるチャック機構を有している構成であっても良い。
【0049】
これにより、ウェハホルダ61上に設置されたウェハWをプラズマエッチングする際に、スキャン機構60の各直進モータ64,65の駆動を適宜制御して、ウェハW上のエッチングポイントをX軸方向およびY軸方向においてスキャンさせる。この結果、プラズマ密度の揺らぎ、サイズおよび装置構成等によって生じ得るウェハW表面内のエッチングレートの不均一性を均一化することが可能となる。すなわち、LF印加部8が本体部8aと鍔状部8bを有していることで上板5bからウェハWに向かう上下方向の電場を安定化させることができ、その上でプラズマエッチング時のスキャン機構60によるスキャン速度およびスキャンパターン等を制御して、エッチングレートが大きなマイクロプラズマMの下流域に曝す時間をウェハW表面の部分ごとに調整することによって、ウェハW表面における均一なエッチングが可能となる。
【0050】
ここで、12インチ程度の大口径のウェハを用いる従来のメガファブにおいては、プラズマエッチングする対象のウェハが大きいことから、プラズマエッチング時にウェハを走査してスキャンすることは不可能である。一方で、本発明に係るノズルプラズマ装置1においては、直径12.5mm(ハーフインチサイズ)の円形状のウェハWを対象としているため、プラズマエッチング時のウェハWのスキャニングが可能となり、ウェハW表面内におけるエッチングレートの均一化が可能である。
【0051】
さらに、チャンバ5の下方には、このチャンバ5の下端を閉塞する蓋体11aが取り付けられており、この蓋体11aには、チャンバ5内を真空引きするための真空引き部としての真空形成装置11が取り付けられている。この真空形成装置11もまた、装置下部2b内に収容されて取り付けられており、チャンバ5内のステージ6のRF印加板6d上にウェハWが設置された状態で、このチャンバ5内を真空引きする構成とされている。
【0052】
次に、上記実施の形態のノズルプラズマ装置1を用いたプラズマエッチング方法について説明する。
【0053】
まず、エッチング前のウェハWが収容されたミニマルシャトルを、筐体2の前室2dのドッキングポートに嵌合させて設置する。この状態で、筐体2の所定位置、例えば操作パネル2c等に表示等されているスタートスイッチ(図示せず)を押す。このとき、冷却ユニット9が駆動されステージ6の冷却が開始される。
【0054】
さらに、ドッキングポートに設置されたミニマルシャトルが開放され、このミニマルシャトル内に収容されているウェハWが、搬送装置にてノズルプラズマ装置1のステージ6のRF印加板6d上へ搬送され設置される。このとき、ステージ6は、例えばステージ6とチャンバ5とが相対的に上下動される等して、チャンバ5内からステージ6が取り出された状態とされている。
【0055】
この後、ノズルプラズマ装置1のチャンバ5が蓋体11aにて密封され、このチャンバ5内が略真空になるまで真空形成装置11にて真空引きされる。この状態で、チャンバ5のガス供給口5eに取り付けられたメタルチューブ5fを介してガス供給口5eからエッチングガスGがチャンバ5内に供給され、このチャンバ5内の圧力が所定の圧力に維持される。この後、低周波電源10aがオンされLF印加部8に低周波電圧が印加されるとともに、高周波電源10bがオンされ、RF印加板6dに高周波電圧が印加され、チャンバ5内に、ウェハWに向かう方向に沿った電位傾斜が形成され、垂直な電界Eが形成される。
【0056】
また、スキャン機構60により、ウェハホルダ61が所定量、X軸方向とY軸方向に移動させられる。
【0057】
この結果、エッチングガスGは、LF印加部8の本体部8aを通過する際に、この本体部8に印加されている低周波電圧によってエッチングガスG中にマイクロプラズマMを発生させ、このエッチングガスGを構成するCF4をイオン化およびラジカル化させ、多量のフッ素ラジカル(F)とCF3イオンを発生させる。すなわち、このエッチングガスG中のCF4がCF3とFとに分離(CF4+e→CF3+F+e)されて、多量のフッ素ラジカル(F)とCF3イオンが生成される。また、このフッ素ラジカルは、エッチングガスGとともに、ガス供給口5eに取り付けられたノズル7の各ガス挿通孔7bを通過することによって吹き付け方向が略平行に整流され、略均等にウェハW上に吹き付けられる。
【0058】
さらに、ステージ6のRF印加板6dに印加された高周波電圧によって、このRF印可板6dの周囲にプラズマPが発生され、このRF印加板6dの周囲に上下方向に沿ったイオンシースとともに電界Eが形成される。この結果、ノズル7から吹き出されたエッチングガスGがウェハW上に叩き付けられる直前で励起されてイオン化されたプラスイオン(CF3+、Ar+)がウェハW上に垂直に叩き付けられ、ガス流とともに吹付けられたフッ素ラジカル(F)との相乗効果で、このウェハW上に設けられたレジストパターンを介して、ウェハWがプラズマエッチング(異方性エッチング)される。
【0059】
すなわち、LF印加部8の本体部8aと鍔状部8bで広い範囲に印加された低周波電圧と、RF印加板6dに印加された高周波電圧とによって、マイクロプラズマM由来のフッ素ラジカル(F)が多量に所定範囲を移動しているウェハW上に供給され、エッチングガスG中のAr+やC+等のプラスの電荷を有するイオン(プラスイオン)がウェハW上に送られ、このウェハWを構成する単結晶シリコン(Si)へのフッ素ラジカル(F)の反応がアシストされて高効率化され、このウェハW表面の単結晶シリコン結合(Si-Si)が切断されプラズマエッチングされていく。
【0060】
このとき、ウェハWの表面においては、このウェハWを構成する単結晶シリコン(Si)とフッ素ラジカル(F)とが反応(Si[個体]+4F→SiF4[気体])して、このウェハW表面のプラズマエッチングが進行していく。さらに、ウェハWの表面においては、エッチングガスG中のArやCF4等が励起されてイオン化(Ar+、CF3+)され、これらプラスイオンによるイオンアシストによって、ウェハWを構成する単結晶シリコン(Si)とフッ素ラジカル(F)との反応が促進され、ウェハW表面のエッチング反応が促進され高速化される。
【0061】
この後、ウェハWのエッチングが完了した後、チャンバ5の密封が解除され、例えばステージ6とチャンバ5とを相対的に上下動させる等して、チャンバ5内からステージ6を取り出し、このステージ6のRF印加板6d上に設置されているウェハWを、搬送装置による引き戻し動作にてミニマルシャトル上に設置されてから、このミニマルシャトルが閉操作されてウェハWが収容される。さらに、このウェハWが収容されたミニマルシャトルを、前室2cのドッキングポートから取り外すことによって、ウェハWが搬出される。この後、冷却ユニット9の駆動が停止されステージ6の冷却が停止される。
【0062】
上述のように、上記実施の形態のノズルプラズマ装置1においては、ステージ6のRF印加板6d上にウェハWを設置させた状態でチャンバ5内を真空形成装置11にて真空引きしつつ、ガス供給管5dからチャンバ5内へエッチングガスGを供給する。この状態で、ガス供給管5d内の先端側に取り付けられたノズル7からウェハWへ吹き付けるエッチングガスG中にLF印加部8に印加された低周波電圧による誘電体バリア放電によって高圧交流励起プラズマ(マイクロプラズマM)を発生させ、エッチングガスG中に多量のフッ素ラジカル(F)とCF3イオンを発生させる。
【0063】
そして、この多量のフッ素ラジカルとCF3イオンがエッチングガスGとともにノズル7の各ガス挿通孔7bを通過することによって、吹き付け方向が略垂直方向に整流されるとともに、これらフッ素ラジカル、CF3イオンおよびエッチングガスGの密度が略均一にされる。この後、ステージ6のRF印加板6dに印加された高周波電圧によって、このRF印加板6d上に設置されたウェハW上およびその周囲に存在するエッチングガスG中に発生させたプラズマPにてエッチングガス中のCF4やAr等を励起させるとともに、ウェハW上の垂直方向に電界Eを形性し、イオン化させたCF3+、Ar+とともにラジカル化させたフッ素ラジカル(F)を、ウェハWの表面に略垂直に叩き込んでエッチングする構成とした。
【0064】
この結果、LF印加部8の本体部8aに印加された低周波電圧によりガス供給管5d内にマイクロプラズマMを発生させることにより、ノズル7から噴出されるエッチングガスのガス流の効果によって、ウェハの表面まで効率良くフッ素ラジカル(F)を輸送でき、さらに、鍔状部8bに印加されたマイクロプラズマMにより、より広い範囲にマイクロプラズマMを届けされることができ、また、ノズル7のガス輸送効果も加わり、結果として、マイクロプラズマM由来のフッ素ラジカル(F)を多量にウェハW上に叩き付けることができる同時に、ステージ6のRF印加板6dに印加された高周波電圧によって、エッチングガスG中のCF4およびArを励起させたCF3+やAr+等のプラスイオンをウェハW上に叩き付けることができる。よって、これらプラスイオンによるアシストのもと、ウェハWを構成する単結晶シリコン(Si)へのフッ素ラジカルの反応、すなわちウェハW表面の単結晶シリコン結合(Si-Si)の切断(プラズマエッチング)を効率良くかつ高速に行うことができる。
【0065】
ここで、ステージ6のRF印加板6d上に設置されたウェハWを、冷却ユニット9にて冷却するとともに、エッチングガスGをウェハW上へ吹き付けるためのノズル7を、RF印加板6dから遠ざけたことにより、ガス供給管5d内で発生させたマイクロプラズマMがウェハWに直接当たらなくなり、プラズマ照射によるレジストダメージが防止され、このガス供給管5d内で発生させた多量のフッ素ラジカル(F)を、ノズル7からのエッチングガスGの吹き出しとともに、ウェハW上に多量に吹き付けることができる。また同時に、この多量のフッ素ラジカルとともにエッチングガスGをウェハW上に叩き付けてエッチングする際のウェハWの温度上昇を適切に抑制でき、例えばウェハW上に積層させたレジストパターンの焼き付き等を防止できるから、このウェハWをより精度良くエッチングすることができる。
【0066】
さらに、エッチングガスGがノズル7の各ガス挿通孔7bを通過する際に、このエッチングガスGの吹き付け方向が略平行とされて整流されるため、このノズル7にてエッチングガスGおよびラジカルをウェハW上に略均等に叩き付けることができる。また、ステージ6のRF印加板6dに印加された高周波電圧によって、このRF印加板6d上に設置されたウェハW上およびその周囲に存在するエッチングガスG中にプラズマPを発生させ、エッチングガスGをウェハWに叩き付ける直前の位置で、エッツングガスGを効率良く励起させてイオン化およびラジカル化できる。よって、ノズル7からウェハWへ吹き付けるエッチングガスGをより効率良くイオン化およびラジカル化できるから、比較的小さなハーフインチサイズのウェハWであっても精度良くエッチングすることができる。
【0067】
また、直線状の複数のガス挿通孔7bが平行に等間隔に設けられて構成されたノズル7を用いることにより、このノズル7の各ガス挿通孔7bを通過したエッチングガスGの密度を略均一にでき、このエッチングガスGをウェハWへ均等に吹き付けることができるから、比較的簡単な構成のノズル7を用い、ウェハWを精度良くエッチングすることができる。
[本発明の実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2を
図6~
図9に基づいて説明する。
【0068】
なお、本実施の形態では、前記した実施の形態1と異なるものについてのみ説明し、前記した実施の形態1と同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略する。
【0069】
図6は、本発明の実施の形態2に係るノズルプラズマ装置を示す概略図ある。
図7は、同実施の形態のノズルプラズマ装置のステージを示す上面図、
図8は、
図7のA-A断面でステージプラズマ発生部が下方位置にある状態を示す図、
図9は、
図7のA-A断面でステージプラズマ発生部が上方位置にある状態を示す図である。
<ステージ>
図6~9に示すように、本実施の形態のノズルプラズマ装置101におけるステージ106は、チャンバ5内に収容されつつ、このチャンバ5の上下方向に軸方向を沿わせつつ、このチャンバ5の開口部5cの鉛直下に設置されている。すなわち、このステージ106は、RF印可板106dを、チャンバ5のガス供給口5eに対し同心状に位置させつつ、このガス供給口5eから所定間隔ほど下方に間隔を空けた位置に設置されている。すなわち、このステージ106は、チャンバ5のガス供給口5eからノズル7を介して吹き出してくるおそれのあるマイクロプラズマMが、ステージ106上のRF印加板106dへ直接当たらない程度の間隔を空けてチャンバ5内に取り付けられている。
【0070】
なお、
図6~
図8に示すように、ステージ106に設けられた、ウェハWの周縁部W1を載置して当該ウェハWを保持するウェハホルダ161が、ウェハWの周縁部W1の全周を載置するように構成されていても良い。このようになっていると、複数本の爪でウェハWの周縁部W1を保持するパターンに比べて、安定してウェハWを保持することができる。また、ウェハの全周を保持しているため、ウェハとステージの間の間隙をなくしてRFですることができる。
【0071】
具体的に、ステージ106は、略円筒形状の本体部106aを備え、この本体部106aの軸方向を上下方向に沿わせた状態で設置されている。この本体部106aの上端面は、開放された円盤状となっており、その周縁部がウェハWの周縁部を載置する載置部となっている。また、この本体部106aの内部で載置部106cの下方には、閉塞されて平坦な円盤状の設置面を有するRF印加板106dが設けられている。この設置面上にウェハWが設置される構成とされており、
図8と
図9に示すように、RF印加板106dが上下動するようになっている。そして、
図9に示すように、RF印加板106dが上方位置となったときに、載置部106cの間隙からRF印加板106dの設置面がウェハWの下面に当接するようになっている。すなわち、RF印加板106dの設置面は、ウェハWの外径寸法より若干小さな外径寸法に形成され、載置部106cがこのウェハWの外径寸法より若干大きな径寸法を有するようになっている。また、本体部106aは、ウェハWの周縁部の全周を載置するようになっており、かつ、RF印加板106dの側面を全周覆って外部、特に上側の外部に繋がらないように構成されている。このため、RF印加板106dで発生させたプラズマPがRF印加板106dの裏側に回ったりすることがないように構成されている。
【0072】
なお、前記した各実施の形態のように、LF印加部8と共に、ステージ6,106上に設置されるウェハWに高周波電圧を印加するRF印加板6d,106dが設けられた構成とは異なり、RF印加板6d,106dがなく、高圧交流励起プラズマのみでウェハWをプラズマエッチングするようになっていても良い。すなわち、ステージ6,106は、設置面上に絶縁板が設置され、この絶縁板上にウェハWが設置される構成となっていても良い。
<その他>
なお、上記各実施の形態では、少なくともLF印加部8への低周電圧の印加を用いて、レジストパターンが積層されたウェハWをエッチングする構成とした。しかしながら、本発明はこれに限定されることはなく、レジストパターンが積層された単結晶シリコン構造のウェハW以外であっても、対応させて用いることができる。
【0073】
また、チャンバ5に対してノズル供給管5dを移動可能とし、このノズル供給管5dを水平方向に走査してウェハWをスキャンする構成としたり、ノズル供給管5dを大口径とし、複数のノズル7を取り付けてエッチングガスGを整流する構成としたりすることにより、ハーフインチサイズのミニマルウェハより大きな大口径ウェハであっても対応させて用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
1,101
ノズルプラズマ装置
5 チャンバ
5a チャンバ本体
5b 上板
5c 開口部
5d ガス供給管(ガス供給部)
5g 絶縁部材
5h 固定部材
5i 上部材
5j 下部材
5k 突起部
6,106 ステージ
6a,106a 本体部
6d,106d RF印加板(ステージプラズマ発生部,プラズマ発生部)
7 ノズル
8 LF印加部(ノズルプラズマ発生部,プラズマ発生部)
8a 本体部
8b 鍔状部
9 冷却ユニット(冷却部)
60 スキャン機構
G エッチングガス
M マイクロプラズマ
P プラズマ
W ウェハ