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特許7304145リードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】リードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20230629BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01L23/50 D
H01L23/50 R
H01L23/50 A
H01L21/60 311Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018209997
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020077747
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 真太郎
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153987(JP,A)
【文献】特開2018-056386(JP,A)
【文献】特開平10-041325(JP,A)
【文献】特開2017-028152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/60 -21/607
H01L23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と前記第1部分よりも薄い第2部分とを有するリード部と、
前記リード部の前記第2部分に位置する半導体素子の接続領域に設けられ、前記リード部の幅方向の両側まで延びるめっき層と、
前記リード部の前記第2部分上において前記めっき層を挟んで互いに対向し、前記リード部を幅方向に貫通する一対の凹部と、
前記リード部の前記一対の凹部を含む表面に設けられた酸化層と
を備え、
前記めっき層の外周は、円弧状であり、
前記一対の凹部の各々は、前記リード部の幅方向に垂直な断面において、底面が曲面状であり、
前記一対の凹部の各々の内周は、円弧状であり且つ平面視で前記めっき層の外周と重なる位置に位置する
ことを特徴とするリードフレーム。
【請求項2】
前記一対の凹部は、前記めっき層の周囲を囲うことを特徴とする請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記リード部は、銅を材料とし、
前記めっき層は、銀を材料とする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
前記酸化層は、前記リード部の材料となる金属の酸化物からなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のリードフレーム。
【請求項5】
第1部分と前記第1部分よりも薄い第2部分とを有するリード部と、
前記リード部の前記第2部分に位置する半導体素子の接続領域に設けられ、前記リード部の幅方向の両側まで延びるめっき層と、
前記リード部の前記第2部分上において前記めっき層を挟んで互いに対向し、前記リード部を幅方向に貫通する一対の凹部と、
前記リード部の前記一対の凹部を含む表面に設けられた酸化層と、
前記めっき層にはんだにより端子が接続された半導体素子と、
前記リード部及び前記半導体素子を被覆する封止樹脂と
を備え、
前記めっき層の外周は、円弧状であり、
前記一対の凹部の各々は、前記リード部の幅方向に垂直な断面において、底面が曲面状であり、
前記一対の凹部の各々の内周は、円弧状であり且つ平面視で前記めっき層の外周と重なる位置に位置する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
リードと、前記リードの半導体素子の接続領域の周囲に設けられた凹部とを形成する第1工程と、
前記接続領域にめっき層を形成する第2工程と、
前記リードの前記凹部を含む表面に酸化層を形成する第3工程と
を備え、
前記第1工程は、
金属基板に、エッチングレジスト層を形成する工程と、
前記エッチングレジスト層をマスクとして前記金属基板にハーフエッチングを施すことにより、前記金属基板における所定領域の隣接領域に凹部を有する前記リードを形成する工程と、
前記金属基板から前記エッチングレジスト層を除去する工程とを含み、
前記第2工程は、
前記リードの前記凹部及び前記所定領域を含む領域にめっきレジストを形成する工程と、
前記所定領域よりも面積が大きいマスクで所定領域を覆い前記めっきレジストを露光し次いで現像することで、前記所定領域のめっきレジストを除く工程と、
前記所定領域にめっき層を形成する工程とを含み、
前記第3工程は、
前記リードから前記めっきレジストを除去する工程と、
前記凹部を含み且つ前記所定領域を除く前記リード上の領域に酸化層を形成する工程とを含む
ことを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項7】
前記凹部は、底面が曲面状であることを特徴とする請求項6に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項8】
前記凹部は、前記めっき層の全周を囲うことを特徴とする請求項6又は7に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項9】
前記リードは、銅を材料とし、
前記めっき層は、銀を材料とする
ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一つに記載のリードフレームの製造方法。
【請求項10】
前記第3工程は、前記リードの基材となる金属を酸化処理することで前記酸化層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項6~9のいずれか一つに記載のリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型の半導体装置として、FC(Flip Chip)-QFN(Quad Flat Non-leaded package)型の半導体装置が知られている。FC-QFN型の半導体装置では、リードフレームの載置面に載置した半導体素子が封止樹脂によって封止され、載置面とは反対側に位置する封止樹脂の裏面からリード部の一部が露出している。
【0003】
このようなFC-QFN型の半導体装置の製造工程では、まず、金属基板に対してエッチング加工を行うことで、各半導体素子に対応する領域がマトリクス状に配置されたリードフレームを得る。リードフレームでは、各半導体素子に対応する領域がコネクティングバーによって区画されている。このコネクティングバーは、ソーイングバーとも呼称される。コネクティングバーには、各半導体素子の周囲に配置される複数のリード部が連結されている。
【0004】
続いて、FC-QFN型の半導体装置の製造工程では、半導体素子上にCuピラーが配置され、その先端にはんだが塗布される。そして、Cuピラーの先端にはんだが塗布された半導体素子を反転してリードフレームに搭載し、はんだを溶融させて半導体素子とリードフレームとを接合する。続いて、封止樹脂を用いて半導体素子を封止するモールディングが行われる。その後、封止樹脂及びコネクティングバーをソーイングブレードで切断して、各半導体素子を分離するソーイング加工が行われる。
【0005】
FC-QFN型の半導体装置の製造工程における半導体素子とリードフレームとの接合では、半導体素子を反転してリードフレームに搭載した後にリフローが行われる。その際、リードフレーム面がCuで形成されていると、はんだがリードフレーム上で濡れ拡がらず、半導体素子が移動して位置が安定しないことが考えられる。そこで、接合性の向上と、チップ位置ずれ対策として、接合面にはんだが濡れやすいAgめっきを配設し、Agめっきの周囲にはんだが濡れない酸化Cu処理を施す技術が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-349497号公報
【文献】特開2004-332105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接合面に部分的にめっき層を形成する処理は、エッチングなどでリードフレームの形状を成形した後に行われる。そのため、端子とめっき層の領域に位置ずれが生じる可能性がある。さらに、めっき層がリードフレーム端面付近に配置される場合、位置ずれによるめっき欠けが生じるおそれがある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、めっき層の欠けを抑えたリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示するリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法の一つの態様において、リードフレームは、リード部及び以下の各部を有する。めっき層は、前記リード部の半導体素子の接続領域に設けられる。凹部は、前記リード部の前記めっき層の周囲に設けられる。酸化層は、前記リード部の前記凹部を含む表面に設けられる。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、本発明は、めっき層の欠けを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、リードフレームの概略平面図である。
図2図2は、単位リードフレームの平面図である。
図3図3は、リードの内側端部を拡大した図である。
図4図4は、図2におけるリードフレームのIV-IV断面図である。
図5図5は、図3のリードフレームのV-V断面図である。
図6図6は、実施例に係るリードフレームを用いて作成された半導体装置の断面図である。
図7図7は、半導体装置の半導体素子のリードとの接合部分の拡大図である。
図8A図8Aは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8B図8Bは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8C図8Cは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8D図8Dは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8E図8Eは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8F図8Fは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8G図8Gは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8H図8Hは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8I図8Iは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8J図8Jは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8K図8Kは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図8L図8Lは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
図9図9は、めっきレジストの除去を説明するための図である。
図10図10は、めっきレジストの層が形成された状態のリードフレームにおけるめっき層部分の拡大断面図である。
図11図11は、めっきレジスト除去後のリードフレーム上におけるめっき層部分の拡大断面図である。
図12A図12Aは、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図12B図12Bは、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図12C図12Cは、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図13図13は、接合面が円形のCuピラーと四角形のめっき層との接合状態を表す図である。
図14A図14Aは、リードの幅方向の外縁まで届くめっき層の一例の図である。
図14B図14Bは、リードの幅方向の外縁まで届くめっき層の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示するリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示するリードフレーム、半導体装置及びリードフレームの製造方法が限定されるものではない。
【0013】
[実施例]
[リードフレームの構成]
図1は、リードフレームの概略平面図である。図1に示すように、リードフレーム1は、平面視略矩形状の基板フレーム2を有する。基板フレーム2の材料としては、例えば銅(Cu)、Cuをベースにした合金、鉄-ニッケル(Fe-Ni)又はFe-Niをベースにした合金等を用いることができる。基板フレーム2の厚さは、例えば0.05~0.25mm程度とすることができる。
【0014】
基板フレーム2には、複数の樹脂封止領域3が分離して画定される。本実施例では、基板フレーム2は、3つの樹脂封止領域3を有する。各樹脂封止領域3には、単位リードフレーム100がマトリクス状に複数個連設して形成される。本実施例では、各樹脂封止領域3は、5×5の単位リードフレーム100を含む。この単位リードフレーム100は、最終的に半導体素子が搭載されて個々の半導体装置(パッケージ)として切り出されるものである。なお、各樹脂封止領域3の外周には、長手方向(図中の左右方向)に延在されるレール部4と、幅方向(図中の上下方向)に延在されるレール部5とが形成される。また、半導体装置の組み立てを行う際には、各単位リードフレーム100に半導体素子が搭載された後、各樹脂封止領域3毎に一括モールディング方式により樹脂封止が行われる。
【0015】
図2は、単位リードフレーム100の平面図である。以下の説明では、単位リードフレーム100を単にリードフレーム100という。なお、以下の説明において、「表面」とは、後述する半導体素子21を載置するための載置面側に位置する面を示し、「裏面」とは、半導体素子21を載置するための載置面とは反対側に位置する面を示す。
【0016】
リードフレーム100は、フレーム部101及びフレーム部101に支持された複数のリード102を含む。フレーム部101は、四角形枠状に形成される。リード102は、フレーム部101と直交してフレーム部101の内側に向かって延びるように形成される。リード102は、切断線L1にて切断され半導体装置における部材の1つとなる。
【0017】
リード102は、内側端部にめっき層23を有する。図3は、リードの内側端部を拡大した図である。めっき層23は、リード102に半導体素子21を実装するために設けられる。めっき層23としては、例えば、銀(Ag)めっきを用いることができる。なお、めっき層23として、例えば、ニッケル(Ni)めっき、パラジウム(Pd)めっき又は金(Au)めっきを用いてもよい。他にも、めっき層23は、例えば、Niめっき層とAgめっき層を重ねて形成されるなど、複数のめっき層により形成されてもよい。例えば、リード102側からから順にNiめっき層とAuめっき層とを積層してめっき層23としてもよい。また、リード102側から順にNiめっき層とPdめっき層とAuめっき層とを積層してめっき層23としてもよい。さらに、めっき層23の周囲には凹部24が形成される。
【0018】
図4は、図2におけるリードフレームのIV-IV断面図である。図4に示すように、リード102は、金属板である基材26を有する。基材26は、導電性を有する。基材26の材料は、例えば、銅(Cu)、Cu合金、又は鉄とニッケルの合金である42アロイなどの金属を用いることができる。
【0019】
基材26は、図2に示すフレーム部101から中央部に向かって延びる長手方向の中央部付近が裏面側から薄く形成される。ここで、本実施例では、基材26の裏面側に段差が付くように形成したが、これに限らず、例えば、基材26の裏面を削らなくてもよいし、裏面全てを削ってもよい。
【0020】
リード102は、基材26における図2におけるリードフレーム100の中央に向かう先端部付近の領域にめっき層23が形成される。また、リード102は、めっき層23の周囲に基材26の表面を凹ませた凹部24を有する。さらに、リード102は、表面側のめっき層23を除く領域に酸化層25を有する。酸化層25は、凹部24の領域にも形成される。酸化層25は、例えば、酸化銅の皮膜である。
【0021】
図5は、図3のリードフレームのV-V断面図である。本実施例では、めっき層23の領域は円形であり、且つ凹部24もめっき層23の周囲を囲む環状の形状である。そのため、図5に示すV-V断面は、図4のめっき層23の近傍を拡大した図と同様となる。図5に示すように、凹部24は、断面が半円状の曲面である。そして、めっき層23の周囲の凹部24の全面を含む領域に酸化層25が形成される。
【0022】
[半導体装置の構成]
次に、図6を参照して、本実施例に係るリードフレーム100を用いて作成された半導体装置200について説明する。図6は、実施例に係るリードフレームを用いて作成された半導体装置の断面図である。図6は、リード102に半導体素子21を搭載した状態の半導体装置200の図2におけるIV-IV断面と同じ位置の断面を表す。
【0023】
半導体素子21は、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等である。半導体素子21は電極であるCuピラー22を有する。Cuピラー22は、例えば、めっき層23と同様の平面形状を有する。そして、Cuピラー22は、はんだ30を介してリード102のめっき層23に接続される。はんだ30は、例えば、はんだボールを用いることができる。
【0024】
ここで、図7に示すように、めっき層23の周囲には、酸化層25が形成される。図7は、半導体装置の半導体素子のリードとの接合部分の拡大図である。酸化層25は、はんだ30が濡れにくい。そのため、リード102において、めっき層23の周囲が酸化層25により覆われることで、はんだ30の必要以上の広がり(ブリードアウト)を抑えることができる。
【0025】
図6に戻って説明を続ける。半導体素子21及びリード102は、封止樹脂27により覆われる。封止樹脂27としては、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等を用いることが可能である。各リード102の外部端子部28は、半導体装置200の裏面において封止樹脂27から露出する。各リード102の外部端子部28は、半導体装置20の外装となる外装めっき層29によって覆われる。
【0026】
[リードフレームの製造方法]
次に、図2に示すリードフレーム100の製造方法について、図8A~8Kを参照して説明する。図8A~8Kは、実施例に係るリードフレームの製造方法を示す断面図である。
【0027】
まず、図8Aに示すように、平板状の金属基板41を準備する。金属基板41の材料としては、銅や銅合金、Re-Ni合金等からなる金属を使用することができる。
【0028】
次に、図8Bに示すように、金属基板41の表面全体及び裏面全体にそれぞれ感光性レジスト42a及び43aを形成する。例えば、感光性レジスト42a及び43aは、金属基板41にドライフィルムレジストと呼ばれるフィルム上のレジストを張り付けることで形成される。また他にも、ドライフィルムレジストに代えて液状のレジスト剤を塗布及び完成させることで、感光性レジスト42a及び43aを形成してもよい。
【0029】
次に、図8Cに示すように、所定のパターンを有するフォトマスク44及び45を用いて、感光性レジスト42a、43aを露光する。
【0030】
次に、図8Dに示すように、露光された感光性レジスト42a及び43aを現像することによって、所定の開口部を有するレジスト層42及び43を形成する。具体的には、金属基板41の表面側において、貫通エッチング加工が施される部分に開口部42bが形成される。また、金属基板41の表面側において、ハーフエッチング加工が施され凹部24が形成される部分に開口部42cが形成される。一方、金属基板41の裏面側において、貫通エッチング加工が施される部分及びハーフエッチング加工が施される部分に開口部43bが形成される。
【0031】
次に、図8Eに示すように、レジスト層42及び43をマスク(耐腐食マスク)として金属基板41に腐蝕液でエッチングを施すことで基材26を生成する。腐蝕液は、使用する金属基板41の材質に応じて適宜選択することができる。例えば、金属基板41として銅を用いる場合、塩化第二鉄水溶液や塩化第二銅水溶液等が使用される。金属基板41のエッチングは、例えば、金属基板41の表面及び裏面に腐食液をスプレーで吹き付けることによって、行われる。これにより、複数のリード102を有する基材26が形成される。また、リード102が形成される際に、基材26の表面側から凹む凹部24か形成される。ここで、開口部42cの大きさが小さいため、腐食液が供給される量が開口部42bに比べて少なくなる。そのため、凹部24は、基材26の裏面側に貫通しない程度のハーフエッチングにより形成される。この凹部24は、リード102の形成と同時に行われるため、リード102に対する位置ずれが発生せずに、所望の位置に形成される。
【0032】
次に、図8Fに示すように、レジスト層42層43を剥離して除去する。
【0033】
次に、図8Gに示すように、液レジストに図8Fの状態のリードフレーム100を漬け込み、凹部24を含む領域にめっきレジスト64aを塗布し、乾燥させる。めっきレジスト64aは、ネガ型のレジストであり、露光された部分が残る。
【0034】
次に、図8Hに示すように、凹部24で囲われた領域を覆うフォトマスク47を用いて、めっきレジスト46aを露光する。
【0035】
次に、図8Iに示すように、露光されためっきレジスト46aを現像することによって、凹部24で囲われた領域を露出させる開口部46bを有するめっきレジスト層46を形成する。
【0036】
次に、図8Jに示すように、開口部46bで露出した基材26の表面にめっき層23を形成する。めっき層23は、例えば、基材26からの給電による電解めっき法により形成される。なお、電解めっき法に代えて、無電解めっき法により形成してもよい。
【0037】
次に、図8Kに示すように、めっきレジスト層46を剥離して除去する。
【0038】
次に、図8Lに示すように、基材26の表面に酸化層25を形成する。酸化層25は、基材26の表面の酸化処理により得ることができる。この酸化処理は、めっき層23に反応しない酸化処理である。例えば、酸化処理としては、黒化処理液中にリードフレーム100を浸漬して陽極酸化処理を行う強制酸化処理を用いることができる。この場合、リードフレーム100の表面側と裏面側とで表面側を陽極にして裏面側を陰極にすることで裏面の酸化を抑えて表面を酸化することができる。また、黒化処理液を、リードフレーム100に吹き付けることで酸化処理を行ってもよい。他にも、酸化させない領域にフィルムを張るなどして所定の領域を酸化するなどの方法を用いることができる。また、この酸化処理においては、基材26の表面のみが酸化されてもよいし、基板26の表面及び側面が酸化されてもよい。
【0039】
黒化処理液は、例えば、強アルカリ化合物と酸化剤の混合液である。強アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができ、これらの単体、又は2種以上を混合して用いることができる。酸化剤としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム等を用いることができる。なお、任意の添加物を追加的に用いることもできる。黒化処理液としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を0~100g/L、水酸化ナトリウム(NaOH)を5~60g/L、リン酸三ナトリウム(NaPO)を0~200g/L、含むものを用いることができる。処理条件としては、例えば、溶温を約50~80度とし、処理時間を約1秒間~20秒間とし、陰極電流密度を約0.2~10A/cmとすることができる。
【0040】
これにより、リード102を有するリードフレーム100が製造される。
【0041】
ここで、図9を参照して、凹部24に囲われた領域のめっきレジストの除去について詳細に説明する。図9は、めっきレジストの除去を説明するための図である。
【0042】
状態61は、めっきレジスト46aが基材26の表面に形成された状態である。状態61は、図8Gに示す状態である。そして、状態62に示すように凹部24に囲われた領域を覆うフィルムやガラスで形成されたフォトマスク47を配置する。この状態が、図8Hに示す状態である。
【0043】
ここで、フォトマスク47は、凹部24の外周で囲われた領域よりも小さく、且つ、凹部24の内周で囲われた領域よりも大きいサイズである。具体的には、フォトマスク47は、めっき層23を形成することを所望する領域に対して、いずれの方向にもフォトマスク47を配置する装置の位置ずれの能力の2倍以上の幅の余裕を有することが好ましい。例えば、フォトマスク47を配置する装置において最大50μmの位置ずれが発生するのであれば、本実施例の場合、フォトマスク47は直径が凹部24の内周で囲われた円形領域の直径よりも100μm大きいことが好ましい。すなわち、フォトマスク47と凹部24の内周で囲われた円形領域との中心が一致した場合、フォトマスク47は、凹部24の内周から50μm突き出す状態となる。
【0044】
また、凹部24のサイズは、内周から外周までの距離がフォトマスク47を配置する装置の位置ずれの能力の2倍以上であることが好ましい。すなわち、フォトマスク47は、凹部24の外周と内周の間の半分の位置までの大きさを有してもよい。また、凹部24は、深いほど好ましい。ただし、凹部24の深さは、基材26の板厚に応じて決まり、およそ板厚の50%程度である。
【0045】
そして、フォトマスク47で凹部24の内周で囲われた領域を覆った状態で光を当てて露光すると状態62のようになる。この時、フォトマスク47と凹部24の外周との間に照射された光は、回析や屈折が発生し、また、凹部24の表面で反射することで、フォトマスク47と凹部24の内周の間の直接光が照射されない領域も露光する。これにより、状態63で示すように、フォトマスク47が接していた凹部24の内周で囲われた領域以外の部分をほとんど露光することができ、フォトマスク47が接していた凹部24の内周で囲われた領域のめっきレジスト46aを主に除去できる。これにより、状態63に示すように、凹部24の内周で囲われた領域を露出させる開口部46bを有するめっきレジスト46が形成される。この状態が、図8Iで示す状態である。
【0046】
次に、状態63となったリード102にめっき層23を形成すると、図10に示すようにめっきレジスト46の開口部46bの位置にめっき層23を形成することができ、リード102上の所望の位置にめっき層23を形成することができる。図10は、めっきレジストの層が形成された状態のリードフレームにおけるめっき層部分の拡大断面図である。これは、図8Jで示す状態である。
【0047】
そして、図10に示す状態のリード102からめっきレジストを除去することで、図11に示すように、リード102上の所望の位置にめっき層23が形成されたリード102を生成することができる。図11は、めっきレジスト除去後のリードフレーム上におけるめっき層部分の拡大断面図である。これは、図8Kで示す状態である。
【0048】
[半導体製造装置の製造方法]
図6に示した半導体装置200の製造方法について、図12A~12Cを参照して説明する。図12A~12Cは、実施例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0049】
図12Aに示す工程では、リード102に半導体素子21を実装する。リードフレーム100のめっき層23又は半導体素子21の電極であるCuピラー22の少なくとも一方にはんだ30を付着させる。なお、はんだボールを用いてはんだ30を付着させるようにしてもよい。次に、半導体素子21はCuピラー22が下になるように反転させられる。そして、めっき層23とCuピラー22とを位置合わせした後、リフロー処理によって溶融したはんだ13が硬化することにより、半導体素子21がリード102に接続される。この処理は、フリップチップボンディングと呼ばれる。
【0050】
ここで、本実施例に係るリードフレーム100では、リード102に対する位置ずれの発生し難い凹部24の内周の領域にめっき層23が形成される。そのため、めっき層23とCuピラー22とを結合する際に、双方に十分な結合面を確保することができ、確実に半導体素子21とリード102とを接合することができる。
【0051】
図12Bに示す工程では、リード102の一部と半導体素子21とを覆う封止樹脂27を形成する。封止樹脂27は、例えば、トランスファモールド法、コンプレッションモールド法やインジェクションモールド法などの方法を用いて形成される。この状態で、リード102の外部端子部28が、封止樹脂27から露出する。
【0052】
図12Cに示す工程では、リード102の封止樹脂27から露出する外部端子部28に外装めっき層29を形成する。この外装めっき層29は、例えば、スズめっきである。外装めっき層29は、例えば、電解めっき法又は無電解めっき法により形成される。そして、個片化処理において切断線L1にて個片化されることで、図6に示す半導体装置200が得られる。
【0053】
以上に説明したように、本実施例に係るリードフレームは、めっき層を形成する所望領域の周囲に凹部を有する基板にめっきレジストが塗布され、所望領域よりも大きいマスクで所望領域を覆い露光が行われることで、所望領域のめっきレジストが除去されてそこにめっき層が形成される。これにより、めっき層を所望の位置に形成することができる。特にめっきをする所望領域の周りに凹部を設けることで、確実に所望領域にめっきを施すことができる。
【0054】
また、めっき層の周囲に酸化層を配置することで、めっき層とリードを結合するハンダの濡れ拡がりが抑制できる。これにより、リードの電極とリードとを結合する際の位置ずれを抑制でき、確実に接合することができる。
【0055】
さらに、凹部の底面を曲面にすることで、機械の位置ずれ精度を考慮して所望領域よりもサイズの大きいマスクを配置しても、反射などによりマスクの影の部分まで露光することができ、所望領域以外の部分に確実に酸化層を形成することができる。
【0056】
また、本実施例では、銅でできたリードの所望領域上に例えば銀めっきを施す。これにより、はんだの濡れを所望領域に広げることができ、ICチップなどの電子部品をリードに確実に接合することができる。
【0057】
(変形例)
なお、上記実施例は、以下の態様で実施してもよい。なお、以下の説明では、上述した実施例と同様の部材については同じ符号を付し、説明の一部またはすべてを省略する場合がある。
【0058】
上述した実施例では、Cuピラー22のはんだ付けされる面の形状が円形であることを想定して説明したが、Cuピラー22は、他の形状でもよい。例えば、Cuピラー22は、楕円形や四角形であってもよい。その場合、めっき層23は、Cuピラー22と同型であることが好ましい。
【0059】
また、はんだ30がある程度流れることを許容できる場合であれば、めっき層23は、Cuピラー22よりもはんだ30の流れが許容できる範囲で大きくてもよい。
【0060】
さらに、Cuピラー22がめっき層23に含まれる大きさであり、且つ、はんだ30の流れが許容できる範囲サイズの差であれば、Cuピラー22とめっき層23との形状が異なってもよい。例えば、図13に示すように、Cuピラー22の接続面が円形である場合に、めっき層23がその円形を含む大きさの四角形の形状であってもよい。図13は、接合面が円形のCuピラーと四角形のめっき層との関係を表す図である。
【0061】
さらに、上述した実施例では、めっき層23が、リード102の表面に含まれるサイズの場合で説明したが、めっき層23は、リード102の幅方向、すなわち図2においてフレーム部101から中心に向かう方向に直交する方向でリード102の外縁まで届いてもよい。例えば、図14Aに示すように、めっき層23がリード102の幅方向の両サイドに届く形状でもよい。その場合、凹部24はリード102の幅方向に貫通する形状となる。また、図14Bに示すように、凹部24は直線で形成され、めっき層23がリード102の幅方向の両サイドに届く四角形状であってもよい。図14A及び14Bは、リードの幅方向の外縁まで届くめっき層の一例の図である。
【0062】
以上に説明したように、めっき層とリードの電極の接合面の形状が円形でない場合や、リードの外縁までめっき層が届く場合であっても、凹部を設けることでめっき層を所望の位置に形成することができる。また、めっき層の周囲に酸化層を配置することで、めっき層とリードを結合するハンダの濡れ拡がりが抑制できる。これにより、リードの電極とリードとを結合する際の位置ずれを抑制でき、確実に接合することができる。
【0063】
また、めっき層とリードの電極の接合面とが異なる形状を有する場合であっても、はんだの流れる量が許容範囲であれば、確実に接合することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 リードフレーム
21 半導体素子
22 Cuピラー
23 めっき層
24 凹部
25 酸化層
30 はんだ
100 単位リードフレーム
102 リード
200 半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図8K
図8L
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B