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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/064 20160101AFI20230629BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20230629BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20230629BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H02P25/064
G01N35/04 G
B65G54/02
H02K41/03 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019123605
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021010254
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 武司
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】神原 克宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502525(JP,A)
【文献】特開昭57-135364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0309139(US,A1)
【文献】特開2004-054838(JP,A)
【文献】特許第3210153(JP,B2)
【文献】特表2008-521379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/064
G01N 35/04
B65G 54/02
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を具備する搬送容器をその上方で搬送する搬送平面と、前記搬送容器の搬送平面上の位置を検出する位置検出部と、前記搬送平面の下方に配置され、コアとコイルとを具備する磁極と、前記磁極に電圧を印加する駆動部と、前記駆動部を制御する演算部と、を有し、
前記演算部は、前記搬送容器の搬送平面上の位置と前記位置を通過する時刻とに基づいて、前記搬送容器が加速する加速領域における磁極間に要する時間とこの磁極間の距離とを使用し、前記搬送容器の搬送速度を演算し、演算される前記搬送容器の搬送速度と基準となる搬送容器の搬送速度とを比較し、前記搬送平面の表面状態を検出することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記位置検出部は、磁極毎に配置され、前記磁性体が前記磁極を通過又は到達する時刻を、前記演算部に伝えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記磁極の位置と前記時刻とを記録し、前記位置と前記時刻とに基づいて、前記搬送容器の搬送速度を演算することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記演算部は、所定区間における平均加速度を演算し、前記平均加速度に基づいて、前記搬送平面の表面状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
搬送平面の表面状態の検出は、一定の質量、同一の形状、基準となる磁性体の磁力、基準となる搬送面の状態の搬送容器を使用して実行することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
搬送平面の表面状態の変化を表示する監視システムを有することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記演算部は、異なる搬送容器の所定区間における平均加速度に基づいて、異なる搬送容器の質量を推定することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項8】
磁性体を具備する搬送容器をその上方で搬送する搬送平面と、前記搬送平面の下方に配置され、コアとコイルとを具備する磁極と、前記磁極に電圧を印加する駆動部と、前記駆動部を制御する演算部と、を有し、
前記駆動部は、前記磁極に流れる電流を検出し、
前記演算部は、検出される電流に基づいて、前記搬送容器の搬送平面上の位置を検出し、前記搬送容器の搬送平面上の位置と前記位置を通過する時刻とに基づいて、前記搬送容器が加速する加速領域における磁極間に要する時間とこの磁極間の距離とを使用し、前記搬送容器の搬送速度を演算し、演算される前記搬送容器の搬送速度と基準となる搬送容器の搬送速度とを比較し、前記搬送平面の表面状態を検出することを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記コイルに接続される抵抗に流れる電流を検出することを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記駆動部が前記磁極に印加する電圧は、電圧パルスであり、前記駆動部が検出する電流は、電流波形であることを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項11】
搬送平面の表面状態の検出は、検査用の搬送容器を使用して実行することを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記磁極に流れる電流、前記磁極に印加する電圧、前記搬送容器の搬送平面上の位置、前記位置を通過する時刻、前記搬送容器の搬送速度、及び、搬送平面の表面状態を格納するデータベースを有することを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記磁極に流れる電流、前記磁極に印加する電圧、前記搬送容器の搬送平面上の位置、前記位置を通過する時刻、前記搬送容器の搬送速度、及び、搬送平面の表面状態を、前記データベースに、通信機能を有する通信装置にて送信することを特徴とする請求項12に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血液、血漿、血清、尿、その他の体液などの生体試料(以下「検体」と呼称する)の分析を実行する検体分析装置やこの分析に必要な前処理を実行する検体前処理装置などの検体分析システムに使用する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査のための検体分析システムでは、血液、血漿、血清、尿、その他の体液などの検体(サンプル)に対して、指示される分析項目の検査を実行する。
【0003】
この検体分析システムは、複数の機能を有する装置を接続して、自動的に各工程の処理を実行する。つまり、検査室の業務合理化のため、生化学や免疫などの複数の分析を実行する分析部(分析工程)やこの分析に必要な複数の前処理を実行する前処理部(前処理工程)などを、搬送ラインで接続して、1つの検体分析システムとして使用する。
【0004】
近年、医療の高度化及び患者の高齢化によって、検体分析の重要性が高まっている。そこで、検体分析システムの分析処理能力を向上させるため、検体の高速搬送、大量搬送、同時搬送、及び、複数方向への搬送が要望されている。
【0005】
このような本技術分野の背景技術として、特開2016-166890号公報(特許文献1)がある。
【0006】
この特許文献1には、非常に柔軟であり、高い搬送性能を有する研究室試料配送システムが記載されている。そして、特許文献1には、研究室試料配送システムは、各々が、少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料を含む試料容器を運ぶように適合された幾つかの容器キャリアと、搬送デバイスと、制御デバイスと、を備え、搬送デバイスが、複数の容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置された幾つかの電磁アクチュエータと、であって、電磁アクチュエータが、容器キャリアに磁力を印加することによって、搬送平面の上方に配置された容器キャリアを移動させるように適合され、制御デバイスが、電磁アクチュエータを駆動するように適合され、3つ以上の容器キャリアが、同時にかつ互いから独立して移動可能であるように移動を制御するように適合されたことが記載されている(要約参照)。
【0007】
更に、特許文献1には、スケジュール位置と検出された位置とを比較することによって、例えば、摩擦力の増加をもたらす搬送平面の汚れによって引き起こされる、搬送速度の緩やかな低下を検出することができ、搬送速度の緩やかな低下が検出される場合、制御デバイスは、電磁アクチュエータによって生成される磁力を増加させ、及び/又は、搬送速度が所与の閾値を下回る場合、エラーメッセージを表示することが記載されている(0021参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-166890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、特許文献1には、容器キャリアのスケジュール位置と検出された位置とを比較することによって、搬送平面の汚れによって引き起こされる搬送速度の低下を検出することが記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1に記載される研究室試料配送システムでは、容器キャリア(搬送容器)のスケジュール位置と検出された位置とが不一致となるまでは、搬送平面の汚れによって引き起こされる搬送速度の低下を検出することは難しい。
【0011】
また、特許文献1には、検体の種類や量(有無を含む)などによって容器キャリア(搬送容器)の質量が変化する場合や永久磁石の磁力の低下などによって容器キャリア(搬送容器)の推力が低下する場合など、つまり、容器キャリア(搬送容器)の状態の変化によって、容器キャリア(搬送容器)の搬送速度が変化し、搬送性能が変化することについては記載されていない。
【0012】
そこで、本発明は、搬送装置の搬送平面の表面状態の変化に起因する搬送装置の異常を検出し、高い搬送性能を維持する搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の搬送装置は、磁性体を具備する搬送容器をその上方で搬送する搬送平面と、搬送容器の搬送平面上の位置を検出する位置検出部と、搬送平面の下方に配置され、コアとコイルとを具備する磁極と、磁極に電圧を印加する駆動部と、駆動部を制御する演算部と、を有し、演算部は、搬送容器の搬送平面上の位置と位置を通過する時刻とに基づいて、搬送容器が加速する加速領域における磁極間に要する時間とこの磁極間の距離とを使用し、搬送容器の搬送速度を演算し、演算される搬送容器の搬送速度と基準となる搬送容器の搬送速度とを比較し、搬送平面の表面状態を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送装置の搬送平面の表面状態の変化に起因する搬送装置の異常を検出し、高い搬送性能を維持する搬送装置を提供することができる。
【0015】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を説明する説明図である。
図2】実施例1に記載する搬送装置1の磁極25の概略構成を説明する説明図である。
図3】実施例1に記載する搬送装置1において、一定電流によって搬送容器を搬送する場合の、時刻と搬送容器の位置及び時刻と搬送容器の搬送速度との関係をグラフに模式的に説明する説明図である。
図4】実施例1に記載する搬送装置1の断面を時系列に模式的に説明する説明図である。
図5】実施例1に記載する搬送装置1において、一定電流によって搬送容器を搬送する場合の、磁極の位置Xiと搬送容器の搬送速度viとの関係をグラフに模式的に説明する説明図である。
図6】実施例2に記載する搬送装置1において、搬送平面上を搬送する搬送容器の搬送経路を模式的に説明する説明図である。
図7】実施例3に記載する搬送装置1において、磁極の位置毎の電流値を、時系列に説明する説明図である。
図8】実施例4に記載する搬送装置1において、一定電流によって搬送容器を搬送する場合の、磁極の位置Xiと搬送容器の搬送速度viとの関係をグラフに模式的に説明する説明図である。
図9】実施例5に記載する搬送装置1における、演算部40の概略構成を説明する説明図である。
図10】実施例5に記載する搬送装置1における、搬送容器の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形と対応する電流波形とを説明する説明図である。
図11】実施例7に記載する搬送装置1において、搬送容器の搬送情報(位置、電圧・電流、搬送時間など)を収集し、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量などの監視を実行するシステムの概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して、説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0018】
まず、実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を説明する。
【0019】
図1は、実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を説明する説明図である。
【0020】
実施例1に記載する搬送装置1は、永久磁石(磁性体)10を具備する搬送容器(図示なし)をその上方で搬送する搬送平面(図示なし)と、永久磁石10を具備する搬送容器の搬送平面上の位置を検出する位置検出部30と、搬送平面の下方に配置され、磁性体であるコア22とその外周側に巻回される巻線であるコイル21とを具備する磁極25と、磁極25のコイル21に電圧を印加する駆動部(搬送容器を駆動する駆動装置)50と、駆動部50を制御する演算部(駆動装置を制御する制御装置)40と、を有する。
【0021】
そして、磁極25と永久磁石10とは、搬送平面を介して、対向して配置される。永久磁石10は、磁極25の上方を、相対的に移動する。つまり、永久磁石10は、搬送平面を介して、磁極25の上方を、移動する。このように、磁極25と永久磁石10との間には、搬送平面が配置され、永久磁石10は、搬送平面上を、滑るように移動する。
【0022】
永久磁石10は、搬送容器に配置される。永久磁石10には、例えば、ネオジムやフェライトなどの永久磁石10が使用される。なお、実施例1では、永久磁石10を使用して説明するが、永久磁石10の代わりに、その他の磁石や軟磁性体を使用してもよい。また、永久磁石10の代わりに、永久磁石10と軟磁性体とを組み合わせて、使用してもよい。
【0023】
なお、「磁性体」とは、永久磁石10、その他の磁石や軟磁性体、又は、永久磁石10と軟磁性体との組み合わせなどを、意味することとする。実施例1では、代表して、永久磁石10を使用して、説明する。
【0024】
容器キャリアなどの搬送容器には、永久磁石10が配置される。なお、搬送容器は、検体ホルダ(図示なし)や複数本の検体ホルダを保持する検体ラック(図示なし)などである。搬送容器には、検体を収容する検体容器が、通常、1本配置される。そして、検体容器は、永久磁石10の移動に伴って、所望の位置まで、搬送される。つまり、搬送容器は、永久磁器10や検体容器を有し、搬送平面上を搬送される。
【0025】
搬送装置1は、磁極25のコイル21に電圧を印加することによって、コア22に電磁力を発生させ、搬送容器に配置する永久磁石10を、複数の磁極25間(磁極25と磁極25との間)で移動させる。電磁力を効率よく永久磁石10に作用させるためには、また、永久磁石10を目的の方向に移動させるためには、永久磁石10と磁極25との相対的な位置情報が必要となる。
【0026】
例えば、永久磁石10が、二つの磁極25の一方の上方(直上)にある場合を想定する。永久磁石10が直下にある磁極25(コイル21)に電圧を印加しても、永久磁石10には、搬送方向への力(推力)が発生しない。一方、永久磁石10が上方(直上)にない磁極25(コイル21)に電圧を印加すると、永久磁石10には、その磁極25に引き寄せられる力が発生し、搬送方向への力(推力)が発生する。
【0027】
つまり、所望の磁極25(コイル21)に電圧を印加することによって、永久磁石10に効率よく搬送方向への力を発生させることができる。そして、電圧を印加する磁極25(コイル21)を選択することによって、搬送方向への力の向き(方向)を制御することができる。
【0028】
また、位置検出部30は、永久磁石10を具備する搬送容器の搬送平面上の位置を検出する。永久磁石10の位置の検出は、例えば、ホール素子による磁性の検出、物理的な位置センサを使用する検出、画像を使用する検出など、永久磁石10の位置を取得することができれば、その方法は問わない。つまり、位置検出部30は、永久磁石10がどの磁極25(搬送平面)の上方に位置するか、を検出する。
【0029】
また、駆動部50は、磁極25(コイル21)に電圧を印加する。
【0030】
また、演算部40は、駆動部50を制御する。磁極25(コイル21)に印加される電圧は、演算部40にて演算される。
【0031】
つまり、演算部40は、搬送容器(永久磁石10)の搬送方向にあって、位置検出部30にて検出される或る磁極25Aの位置及びその位置の時刻(この位置を通過又は到達する時刻)と、位置検出部30にて検出される次の磁極25B(必ずしも隣接する磁極25である必要はない)の位置及びその位置の時刻(この位置を通過又は到達する時刻)と、に基づいて、或る磁極25Aと次の磁極25Bとの間を、永久磁石10が移動する時間(搬送時間)及び或る磁極25Aと次の磁極25Bとの間の距離を演算し、演算される時間と距離とに基づいて、搬送容器の搬送速度を演算する。
【0032】
そして、演算部40は、演算される搬送容器の搬送速度に基づいて、搬送容器(永久磁石10)の搬送方向にあって、位置検出部30にて検出される次の磁極25Bの次の磁極25C(必ずしも隣接する磁極25である必要はない)に、印加する電圧を演算する。演算部40にて演算される電圧に基づいて、駆動部50は磁極25Cに電圧を印加する。
【0033】
これにより、搬送容器は、搬送平面上を、搬送平面の下方に配置される磁極25(コイル21)に印加される電圧に基づいて、順次、滑るように移動する。
【0034】
なお、搬送容器の種類(例えば、ラックやホルダなど)、検体容器に収容される検体の種類や量(有無を含む)などによって、搬送容器の質量が変化する。つまり、搬送容器の状態が変化し、一定電流によって搬送容器を搬送する場合であっても、搬送容器の搬送速度が変化する場合がある。
【0035】
また、永久磁石10の磁力の低下(減磁などの永久磁石10の劣化)などによって、磁極25に対する永久磁石10の反発力が低下し、搬送容器の推力が低下する。つまり、搬送容器の状態が変化(悪化)し、一定電流によって搬送容器を搬送する場合であっても、搬送容器の搬送速度が変化(低下)する場合がある。
【0036】
また、搬送容器の搬送面(搬送平面との接触面)の状態の変化(悪化)などによって、搬送平面と搬送容器の搬送面との間の摩擦力が増加する。つまり、搬送容器の状態が変化(悪化)し、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合であっても、搬送容器の搬送速度が変化(低下)する場合がある。
【0037】
実施例1では、基準となる搬送容器の質量(同一の形状)であって、正常な永久磁石10の磁力、正常な搬送容器の搬送面の状態、正常な搬送平面の表面状態における搬送容器の搬送速度(基準となる搬送容器の搬送速度)を予め把握し、把握される搬送容器の搬送速度(基準となる搬送容器の搬送速度)と演算される搬送容器の搬送速度とを比較し、この搬送速度の差が、所定の範囲に入らない場合には、搬送装置(例えば、搬送平面)1や搬送容器に異常があると検出する。
【0038】
なお、演算される搬送容器の搬送速度には、例えば、基準となる搬送容器を使用して、この基準となる搬送容器を、搬送平面上を移動させ、演算する場合(1)と、基準となる搬送平面の表面状態を有する搬送平面を使用して、検査すべき搬送容器を、この搬送平面上を移動させ、演算する場合(2)と、がある。
【0039】
このように、実施例1では、搬送容器の搬送速度の変化(低下)に基づいて、搬送装置1や搬送容器の状態の変化に起因する搬送装置1や搬送容器の異常を検出する。つまり、実施例1では、演算される搬送容器の搬送速度に基づいて、搬送装置1や搬送容器の状態の変化に起因する搬送装置1や搬送容器の異常を検出する。
【0040】
なお、基準となる搬送容器とは、例えば、所定の形状や質量を有する。特に、新しい状態の搬送容器であるのが望ましい。また、基準となる搬送平面とは、所定の材質や形状を有する。特に、表面状態の変化(悪化)の少ない、新しい状態の搬送平面であるのが望ましい。基準となる搬送容器の搬送速度とは、こうした基準となる搬送容器を使用し、新しい状態の搬送平面の搬送装置にて把握(計測)されるものである。
【0041】
また、異なる複数の搬送容器の質量に対応する複数の基準となる搬送容器の搬送速度を予め把握しもよい。つまり、基準となる搬送容器の質量を、複数準備し、それぞれの質量に対応する基準となる搬送容器の搬送速度を準備してもよい。
【0042】
なお、搬送装置1の状態の変化(悪化)とは、例えば、搬送平面の汚れや劣化などによる搬送平面の表面状態の悪化などである。また、搬送容器の状態の変化(悪化)とは、例えば、永久磁石10の磁力の低下や搬送容器の搬送面の汚れや劣化などである。また、搬送容器の状態の変化とは、例えば、搬送容器の質量の変化などである。
【0043】
実施例1では、こうした搬送装置1や搬送容器の状態の変化を、搬送容器の搬送速度に基づいて評価することができる。これにより、実施例1に記載する搬送装置1は、搬送装置や搬送容器の状態の変化に起因する搬送装置や搬送容器の異常を検出し、高い搬送性能を維持する搬送装置を提供することができる。
【0044】
次に、実施例1に記載する搬送装置1の磁極25の概略構成を説明する。
【0045】
図2は、実施例1に記載する搬送装置1の磁極25の概略構成を説明する説明図である。
【0046】
実施例1に記載する搬送装置1は、例えば、X方向に10個、Y方向に10個、合計100個の磁極25を具備する。実施例1に記載する搬送装置1は、目的とする搬送経路に基づいて、磁極25を励磁する(磁極25(コイル21)に電圧を印加する)ことによって、永久磁石10を具備する搬送容器を、任意の目的の方向(搬送方向)に搬送することができる。
【0047】
実施例1に記載する搬送装置1は、例えば、X方向にX1Y1からX10Y1まで、Y方向にX1Y1からX1Y10まで、合計100個の磁極25を具備する。永久磁石10を、X2Y2からX5Y2まで移動させる場合、駆動部50は、X3Y2の磁極、X4Y2の磁極、X5Y2の磁極を、順次、励磁する。これにより、磁極25は、X2Y2からX5Y2まで、搬送平面上を、順次、滑るように移動する。
【0048】
次に、実施例1に記載する搬送装置1において、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合の、時刻と搬送容器の位置及び時刻と搬送容器の搬送速度との関係をグラフに模式的に説明する。
【0049】
図3は、実施例1に記載する搬送装置1において、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合の、時刻と搬送容器の位置及び時刻と搬送容器の搬送速度との関係をグラフに模式的に説明する説明図である。
【0050】
図3における上段の図は、時刻と搬送容器の位置との関係を示すものであり、図3における下段の図は、時刻と搬送容器の搬送速度との関係を示すものである。
【0051】
永久磁石10が、所定区間を移動する場合、その所定区間には、加速領域と減速領域とが存在する。
【0052】
搬送容器の搬送速度を演算するためには、複数の磁極25間の距離を使用することが好ましい。例えば、X2Y2の磁極25からX5Y2の磁極25までの間の距離と、この磁極25間に要する時間(この磁極25間を移動する時間:搬送時間)を使用して、搬送容器の搬送速度(平均搬送速度)を演算することもできる。
【0053】
特に、加速領域における磁極25間に要する時間とこの磁極25間の距離とを使用するのが望ましく、搬送容器の搬送速度(平均搬送速度)を演算して、搬送装置1や搬送容器の異常を検出することもできる。
【0054】
次に、実施例1に記載する搬送装置1の断面を時系列に模式的に説明する。
【0055】
図4は、実施例1に記載する搬送装置1の断面を時系列に模式的に説明する説明図である。
【0056】
実施例1に記載する搬送装置1は、例えば、永久磁石10が、4つの磁極25a、磁極25b、磁極25c、磁極25dに対して、相対的に移動する。例えば、磁極25aがX2Y2(位置Xa、時刻ta)の位置に、磁極25bがX3Y2(位置Xb、時刻tb)の位置に、磁極25cがX4Y2(位置Xc、時刻tc)の位置に、磁極25dがX5Y2(位置Xd、時刻td)の位置に配置され、永久磁石10は、X2Y2からX5Y2まで移動する。
【0057】
つまり、コイル21a、コイル21b、コイル21c、コイル21dの順番に電圧を印加し、磁極25a、磁極25b、磁極25c、磁極25dを順番に励磁し、永久磁石10に推力(搬送方向への力)を与え、永久磁石10を、位置Xa、位置Xb、位置Xc、位置Xdの順番に移動させる。
【0058】
なお、各磁極25は、位置検出部30を具備する。
【0059】
位置検出部30は、永久磁石10が各位置に到達したことを示す情報を演算部40に伝え、演算部40は、永久磁石10が各位置に到達した時刻を記録する。位置検出部30が伝える情報は、位置検出の有無を示す論理情報であってもよいし、コイル電流やシャント抵抗間の電圧などの物理情報であってもよい。
【0060】
つまり、位置検出部30aは、永久磁石10が位置Xaに到達した際に、到達したことを示す情報を演算部40に伝え、演算部40は永久磁石10が位置Xaに到達した時刻taを記録する。同様に、位置検出部30bは、永久磁石10が位置Xbに到達した際に、到達したことを示す情報を演算部40に伝え、演算部40は永久磁石10が位置Xbに到達した時刻tbを記録する。同様に、位置検出部30cは、永久磁石10が位置Xcに到達した際に、到達したことを示す情報を演算部40に伝え、演算部40は永久磁石10が位置Xcに到達した時刻tcを記録する。同様に、位置検出部30dは、永久磁石10が位置Xdに到達した際に、到達したことを示す情報を演算部40に伝え、演算部40は永久磁石10が位置Xdに到達した時刻tdを記録する。
【0061】
つまり、位置検出部30は、磁極25毎に配置され、そして、位置検出部30は、永久磁石(磁性体)10が、磁極25を通過又は到達したことを示す情報を演算部40に伝え、演算部40は、磁極25の位置とこの時刻とを記録する。そして、演算部40は、位置と時刻とに基づいて、搬送容器の搬送速度を演算する。
【0062】
また、例えば、時刻の始点(時刻ta)を、始動時の指令のタイミング(起点)としてもよい。つまり、位置Xaに対応する時刻taを起点として、位置Xb、位置Xc、位置Xdに対応する時刻を、それぞれ、時刻tb、時刻tc、時刻tdとすることもできる。
【0063】
概念的には、各磁極25に具備される位置検出部30から、搬送容器(永久磁石10)が、N個の各磁極25を通過する時刻の時系列データ{t1、t2、…、ti、…、tN}を取得することができる。なお、tiは、i番目の磁極25を通過する時刻である。
【0064】
ここで、i番目の磁極の位置をXiとする。i番目と(i+1)番目との磁極25間のピッチdXiを、dXi=X(i+1)-Xiとする。
【0065】
なお、搬送容器(永久磁石10)が、磁極(i+1)と磁極iとを通過する時刻の差(搬送時間)dtiは、dti=t(i+1)-tiとなる。
【0066】
従って、磁極の位置Xiにおける搬送容器の搬送速度viは、vi=dXi/dtiとなる。
【0067】
次に、実施例1に記載する搬送装置1において、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合の、磁極の位置Xiと搬送容器の搬送速度viとの関係をグラフに模式的に説明する。
【0068】
図5は、実施例1に記載する搬送装置1において、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合の、磁極の位置Xiと搬送容器の搬送速度viとの関係をグラフに模式的に説明する説明図である
一定電流によって搬送容器を搬送する場合、搬送容器の搬送速度viは、それぞれの磁極の位置Xiおいて、相違することがわかる。つまり、永久磁石10が、或る磁極25の位置から次の磁極25(必ずしも隣接する磁極25である必要はない)の位置まで移動する場合には、加速領域及び減速領域を繰り返し、磁極の位置Xiでは加速度aiを有して、搬送容器が搬送されることがわかる。
【0069】
加速度aiは、搬送容器の搬送速度viの差分値(微分値)であるため、ノイズなどの影響を受け易く、誤差が大きくなり易い。
【0070】
そこで、例えば、所定区間(磁極の位置X1から磁極の位置XN)における平均搬送速度や平均加速度を演算することが好ましい。実施例1では、特に、所定区間(磁極の位置X1から磁極の位置XN)の平均加速度を(vN-v1)/(tN―t1)とする。
【0071】
つまり、実施例1では、演算部40は、所定区間における平均搬送速度や平均加速度を演算し、この平均搬送速度や平均加速度に基づいて、搬送装置1や搬送容器の異常を検出する。特に、演算部40は、所定区間における平均加速度を演算し、平均加速度に基づいて、搬送平面の表面状態を検出する。
【0072】
また、例えば、一定電流によって搬送容器を搬送する場合、所定区間(複数の磁極25分の所定区間)において、搬送容器の推力が、平均的に概略一定であれば、ニュートンの運動方程式から、その所定区間(磁極の位置X1から磁極の位置XN)の平均加速度(vN-v1)/(tN―t1)は、搬送容器に加わる力Fを搬送容器の質量mで割った値(F÷m)に比例する。
【0073】
これにより、搬送容器の搬送速度(磁極25間の距離(磁極25の位置)や磁極25間の搬送時間(磁極25の時刻))を評価することによって、搬送容器に加わる力Fや搬送容器の質量mに関する情報も取得することができる。
【0074】
このように実施例1に記載する搬送装置1は、永久磁石10を具備する搬送容器をその上方で搬送する搬送平面と、搬送容器(永久磁石10)の搬送平面上の位置を検出する位置検出部30と、搬送平面の下方に配置され、コア22とコイル21とを具備する磁極25と、磁極25(コイル21)に電圧を印加する駆動部50と、駆動部50を制御する演算部40と、を有し、演算部40は、搬送容器(永久磁石10)の搬送平面上の位置と、その位置を通過する時刻とに基づいて、搬送容器の搬送速度を演算し、演算される搬送容器の搬送速度に基づいて、搬送平面の表面状態及び/又は搬送容器の状態を検出することを特徴とする。
【0075】
これにより、実施例1に記載する搬送装置1は、搬送装置1や搬送容器の状態の変化に起因する搬送装置1や搬送容器の異常を検出し、高い搬送性能を維持することができる。
【0076】
このように、実施例1では、搬送容器の搬送速度を使用し、搬送平面の表面状態や搬送容器の状態を検出することによって、早期に、搬送平面の表面状態や搬送容器の状態を検出することができる。
【実施例2】
【0077】
次に、実施例2に記載する搬送装置1において、搬送平面上を搬送する搬送容器の搬送経路を模式的に説明する。
【0078】
図6は、実施例2に記載する搬送装置1において、搬送平面上を搬送する搬送容器の搬送経路を模式的に説明する説明図である。
【0079】
搬送容器に加わる力において、搬送平面と搬送容器の搬送面との間の摩擦力は、搬送平面の表面状態を反映し、搬送平面上の場所によって相違する。
【0080】
そこで、例えば、搬送平面上のA地点、B地点、C地点の平均搬送速度を比較することによって、搬送平面の表面上の場所による依存性を検出することができる。
【0081】
つまり、搬送平面の表面上の場所による依存性の検出は、検査すべき搬送容器を、搬送平面上を移動させること(特定の動作モード)によって、実行する。この際、搬送平面の辺に沿って、順番に、搬送平面上の各地点において、実行することが好ましい。これは、基準となる搬送容器の搬送速度を、把握する場合も同様である。つまり、搬送平面上の各地点において、搬送容器の搬送速度を演算することになる。
【0082】
つまり、搬送容器の質量や形状が異なる場合には、同一の搬送経路であっても、搬送容器の搬送速度が変化する。このため、実施例2では、基準となる搬送容器の質量(同一の形状)である検査用の搬送容器を使用し、搬送平面の表面上の場所による依存性を検出する。
【0083】
また、永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態が異なる場合にも、同一の搬送経路であっても、搬送容器の搬送速度が変化する。このため、実施例2では、基準となる永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態が把握される検査用の搬送容器を使用し、搬送平面の表面上の場所による依存性を検出する。
【0084】
つまり、検査用の搬送容器は、基準となる搬送容器の質量(同一の形状)であって、基準となる永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態が把握されるものである。
【0085】
このように、実施例2では、基準となる、搬送容器の質量(同一の形状)であって、基準となる永久磁石10の磁力、搬送容器の搬送面の状態、搬送平面の表面状態を把握し、基準となる搬送容器の搬送速度を予め把握する。
【0086】
そして、把握される搬送容器の搬送速度(基準となる搬送容器の搬送速度)と、検査用の搬送容器を使用し、搬送平面上の各地点において、演算される搬送容器の搬送速度と、を比較し、この搬送速度の差が、所定の範囲に入らない場合には、搬送装置(例えば、搬送平面)1に異常があると検出する。これにより、搬送平面の表面上の場所による依存性を検出することができる。
【0087】
なお、搬送容器の質量や形状、永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態が未知の場合には、つまり、基準となる検査用の搬送容器が使用できない場合には、検査すべき搬送容器を、搬送平面上を移動させ、搬送平面上の各地点において、搬送容器の搬送速度を演算する。そして、異なる複数の搬送容器を使用し、それぞれ搬送容器の搬送速度を演算する。そして、搬送平面上における典型的な値(例えば、平均値や中央値)を使用し、相対値に規格化し、搬送平面の表面上の場所による依存性を検出する。
【0088】
また、特に、搬送容器の質量が未知の場合には、後述する異なる複数の搬送容器の質量差(実施例4参照)を使用することによって、異なる複数の搬送容器の質量を使用し、相対値に規格化し、搬送平面の表面上の場所による依存性を検出することもできる。
【0089】
このように実施例2に記載する搬送装置1は、特に、搬送容器の質量や形状、永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態を予め把握することができる検査用の搬送容器を使用し、演算部40は、搬送容器(永久磁石10)の搬送平面上の位置と、その位置を通過する時刻とに基づいて、搬送容器の搬送速度を演算し、演算される搬送容器の搬送速度に基づいて、搬送平面の表面状態を検出することを特徴とする。
【0090】
つまり、搬送平面の表面状態の検出は、一定の質量、同一の形状、基準となる永久磁石(磁性体)10の磁力(新しい搬送容器又は永久磁石(磁性体)10の磁力が把握できている搬送容器)、基準となる搬送面の状態(新しい搬送容器又は搬送面の状態が把握できている搬送容器)の搬送容器を使用して実行する。
【0091】
これにより、実施例2に記載する搬送装置1は、搬送装置1の搬送平面の表面状態の変化に起因する搬送装置1の異常を検出し、高い搬送性能を維持することができる。
【0092】
このように、実施例2では、搬送容器の搬送速度を使用し、搬送平面の表面状態を検出することによって、早期に、搬送平面の表面状態を検出することができる。
【実施例3】
【0093】
次に、実施例3に記載する搬送装置1において、磁極の位置毎の電流値を、時系列に説明する。
【0094】
図7は、実施例3に記載する搬送装置1において、磁極の位置毎の電流値を、時系列に説明する説明図である。
【0095】
実施例3に記載する搬送装置1は、搬送平面上を永久磁石10が移動を開始する際の、位置、電流、電圧、時刻から、搬送平面上の静止摩擦係数(搬送平面と搬送容器の搬送面との間の摩擦力)に相当する搬送平面の表面状態に関する情報を取得する。
【0096】
実施例3に記載する搬送装置1は、例えば、駆動部50あるいは位置検出部30などから、磁極25(コイル21)に流れる電流(電流値)を検出する。そして、所定の時刻(日時)毎(時系列)の電流を取得する。つまり、所定の時刻に対応する、磁極の位置Xa、磁極の位置Xb、磁極の位置Xc、磁極の位置Xdの電流を取得する。
【0097】
検出すべき搬送容器(永久磁石10)は、静止摩擦係数を評価するため、特定の動作モードにて、移動される。
【0098】
具体的には、例えば、二つの磁極25(例えば、磁極位置Xaと磁極位置Xb)の一方(磁極位置Xa)の上方(直上)に、永久磁石10がある場合を想定する。永久磁石10が上方(直上)にない磁極25(磁極位置Xb)に電圧を印加すると、永久磁石10には、その磁極25(磁極位置Xb)に引き寄せられる力が発生し、搬送方向への力(推力)が発生する。
【0099】
日時(1)や日時(2)の場合は、磁極位置Xaの電流値(0.50A~0.51A)、磁極位置Xbの電流値(0.48A~0.19A)が取得され、電流値(0.48A~0.51A)には、ほぼ変化がない。このため、ほぼ一定の電流にて、永久磁石10は、磁極位置Xaから磁極位置Xbへ、移動していることがわかる。
【0100】
一方、日時(3)や日時(4)の場合は、磁極位置Xaの電流値(0.50A~0.49A)、磁極位置Xbの電流値(0.90A~0.91A)が取得され、磁極位置Xaから検出される電流よりも、磁極位置Xbから検出される電流が、大きいことがわかる。
【0101】
これは、磁極位置Xbの磁極25に、一定の電流で励磁して、永久磁石10に発生する、磁極位置Xbの磁極25に引き寄せられる力が変わらなくても、永久磁石10に働く静止摩擦力が増加した結果、搬送方向への力(推力)が小さいことを示すものと推測される。
【0102】
そこで、実施例3では、磁極位置Xbの磁極25に励磁する電流を、徐々に、大きくし、永久磁石10が移動する電流を取得する。
【0103】
このように、日時(3)から磁極位置Xbの電流値が大きくなり、電流値が所定の閾値を超えた場合には、アラートにて注意を促すことによって、又は、監視システムに表示することによって、搬送平面の表面状態の変化を、ユーザやシステム管理者に速やかに通知することができる。つまり、この監視システムは表示装置(ユーザインターフェイス)を有し、搬送平面の表面状態の変化を表示する。
【0104】
そして、永久磁石10が隣接する磁極位置に移動する場合の電流値に基づいて、搬送平面と搬送容器の搬送面との静止摩擦係数を評価することができる。
【0105】
なお、実施例3では、電流値を使用して説明するが、電流値の代わりに、励磁電流の直流電流値を使用してもよい。また、電流値の代わりに、電圧パルスにて永久磁石10を移動させる場合には、電流実効値、電流瞬間値、電圧パルスのデューティーなどを使用してもよい。
【0106】
また、例えば、磁極位置Xbの磁極25には一定の電圧を印加し、磁極位置Xbの磁極25に印加する電圧を徐々に大きくする代わりに、磁極位置Xaの磁極25(永久磁石10の直下の磁極25)に、磁極位置Xaの磁極25に対する永久磁石10の反発力が発生するように、電流を流してもよい。
【0107】
なお、検査用の搬送容器(永久磁石10)を使用することによって、特に、搬送平面の表面状態を評価することができる。また、検査用の搬送容器を使用することによって、搬送容器の個体差の影響を抑制することができる。
【0108】
検査用の搬送容器は、基準となる搬送容器の質量や形状、基準となる永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態が把握されるものである。なお、基準となる搬送容器とは、例えば、所定の形状であり、検体が無い状態の新しい搬送容器である。
【0109】
なお、事前に、搬送容器の質量や形状、永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態を把握している場合には、こうした搬送容器の質量や形状、永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態を、規格化することによって、異なる種類の搬送容器を評価することができる。
【0110】
このように実施例3に記載する搬送装置1は、駆動部50にて、永久磁石10が、磁極25を通過する際の、その磁極25に流れる電流を検出し、搬送平面の表面状態を推定する。その磁極25に流れる電流を取得し、静止摩擦係数を評価することによって、搬送装置1の搬送平面の表面状態の変化に起因する搬送装置1の異常を検出し、高い搬送性能を維持することができる。
【実施例4】
【0111】
次に、実施例4に記載する搬送装置1において、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合の、磁極の位置Xi(横軸)と搬送容器の搬送速度vi(縦軸)との関係をグラフに模式的に説明する。
【0112】
図8は、実施例4に記載する搬送装置1において、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合の、磁極の位置Xiと搬送容器の搬送速度viとの関係をグラフに模式的に説明する説明図である。
【0113】
本実施例では、同一の搬送箇所又は同一の搬送経路において、搬送容器の搬送速度の加速領域を使用し、異なる複数の搬送容器の平均加速度を評価し、異なる複数の搬送容器の質量(比率)を推定する。
【0114】
具体的には、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合、搬送容器に加わる力Fの内、電磁力が大きく、電磁力に対して摩擦力が相対的に無視することができ、永久磁石10が概略同一である場合には、搬送容器の平均加速度(搬送容器の搬送速度vi/時刻ti)は、搬送容器の質量に逆比例する。このように、搬送容器の平均加速度に基づいて、異なる複数の搬送容器の質量を推定することができる。
【0115】
例えば、図8に示すように、搬送容器Aの位置Xaにおける搬送容器Aの通過時刻tAa、搬送速度VAa、搬送容器Aの位置Xbにおける搬送容器Aの通過時刻tAb、搬送速度VAb、搬送容器Bの位置Xaにおける搬送容器Bの通過時刻tBa、搬送速度VBa、搬送容器Bの位置Xbにおける搬送容器Bの通過時刻tBb、搬送速度VBb、とする。
【0116】
搬送容器Aの加速領域の平均加速度aAは、(VAb-VAa)/(tAb-tAa)、搬送容器Bの加速領域の平均加速度aBは、(VBb-VBa)/(tBb-tBa)、となる。つまり、異なる2つの搬送容器Aと搬送容器Bとは、搬送容器の搬送速度の差(VAb-VAa)/(tAb-tAa)と(VBb-VBa)/(tBb-tBa)が、相違する。
【0117】
つまり、例えば一定電流などの所定の電流によって搬送容器を搬送する場合であって、搬送容器の形状、永久磁石10の磁力、搬送容器の搬送面の状態が把握される搬送容器を使用する場合には、また、搬送平面の表面状態が把握される場合には、この搬送容器の搬送速度の差に基づいて、異なる2つの搬送容器Aと搬送容器Bとの質量差(比率)を推定することができる。
【0118】
なお、実施例4では、搬送容器の搬送速度の加速領域を使用する。これは、異なる2つの搬送容器Aと搬送容器Bとの搬送容器の搬送速度の差が、顕著に表れるためである。この加速領域以外の領域は、搬送容器の速度制御によって、その搬送容器の搬送速度の差が小さくなる。
【0119】
このように実施例4に記載する搬送装置1は、演算部40は、搬送容器(永久磁石10)の搬送平面上の位置と、搬送容器の搬送速度とに基づいて、異なる複数(実施例4では2つ)の搬送容器の質量差を推定する。これにより、異なる複数の搬送容器の質量差を推定することができ、信頼性の高い搬送装置1の異常の検出を実現することができる。
【0120】
つまり、演算部40は、異なる複数の搬送容器の所定区間における平均加速度(平均搬送速度)に基づいて、異なる複数の搬送容器の質量を推定する。そして、この所定区間は、搬送容器が加速する加速領域である。
【0121】
また、この異なる複数の搬送容器の質量差と、搬送容器の位置や搬送容器の搬送速度とに基づき、より信頼性の高い搬送平面の表面状態の推定を実現することができる。
【実施例5】
【0122】
次に、実施例5に記載する搬送装置1における、演算部40の概略構成を説明する。
【0123】
図9は、実施例5に記載する搬送装置1における、演算部40の概略構成を説明する説明図である。
【0124】
実施例5に記載する搬送装置1は、電流を検出する電流検出部を有し、この電流検出部にて検出される電流に基づいて、搬送容器の位置を検出する。つまり、電流検出部が検出する電流(位置検出パルスの立上り/立下りの電流の変化量)を検出することによって、搬送容器の位置を検出する。
【0125】
演算部40は、搬送容器を移動させるために磁極25を励磁するための制御信号と、磁極25の位置を搬送容器が通過する事象を検出する信号を処理する。
【0126】
演算部40は、永久磁石10が通過する磁極25の位置を推定する位置推定部210、搬送容器の搬送経路を格納する搬送経路格納部211、搬送容器を移動させるために磁極25に印加する電圧パルスを制御するコイル駆動部212、を有する。
【0127】
位置推定部210は、モータドライバから出力される電流に基づいて、搬送容器の位置を推定し、推定される搬送容器の位置を、コイル駆動部212に出力する。
【0128】
コイル駆動部212は、推定される搬送容器の位置と、搬送経路格納部211に格納される搬送容器の搬送経路と、に基づいて、搬送方向にある磁極25に電圧パルスを印加する。そして、コイル駆動部212は、搬送容器を移動させるために磁極25に印加する電圧パルスと、搬送容器が通過する磁極25の位置を検出する電圧パルスと、を印加する磁極25を、電圧指令として、演算する。
【0129】
次に、実施例5に記載する搬送装置1における、搬送容器の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形と対応する電流波形とを説明する。
【0130】
図10は、実施例5に記載する搬送装置1における、搬送容器の位置を検出するためにコイルに印加する電圧波形と対応する電流波形とを説明する説明図である。
【0131】
電圧パルス60の大きさ(V)やパルス幅(t)は、磁極25に、どの程度の電圧を印加するかによって決定される。そして、搬送容器の永久磁石10が磁極25に接近すると、磁極25の磁気飽和によって、電流波形70aから電流波形70bに変化する。
【0132】
このように実施例5に記載する搬送装置1は、永久磁石(磁性体)10を具備する搬送容器をその上方で搬送する搬送平面と、搬送平面の下方に配置され、コア22とコイル21とを具備する磁極25と、磁極25に電圧(特に、電圧パルス)を印加する駆動部50と、駆動部50を制御する演算部40と、を有する。
【0133】
そして、駆動部50は、磁極25に流れる電流(特に、電流波形)を検出する。演算部40は、検出される電流に基づいて、搬送容器の搬送平面上の位置を検出し、搬送容器の搬送平面上の位置と位置を通過する時刻とに基づいて、搬送容器の搬送速度を演算し、演算される搬送容器の搬送速度に基づいて、搬送平面の表面状態を検出する。
【0134】
また、駆動部50は、磁極25のコイルに接続される抵抗に流れる電流を検出する。
【0135】
なお、搬送平面の表面状態の検出は、検査用の搬送容器を使用して実行することが好ましい。
【0136】
つまり、搬送容器の位置に応じて、電流(特に、電流波形)が変化するため、この電流の変化を使用して、搬送容器の位置を推定することができる。例えば、電流波形70aと電流波形70bとの位置検出パルスの立上り/立下りの電流の変化量を、検出することによって、搬送容器を搬送しつつ、搬送容器の位置を推定することができる。
【0137】
このように、実施例5によれば、磁極25に位置検出部30を配置することなく、搬送容器の位置を推定することができる。また搬送容器の搬送平面上の位置と位置を通過する時刻とに基づいて、搬送容器の搬送速度を演算し、演算される搬送容器の搬送速度に基づいて、搬送平面の表面状態を検出することができる。
【実施例6】
【0138】
次に、搬送容器の質量や形状、永久磁石10の磁力や搬送容器の搬送面の状態が、既知の搬送容器を使用し、搬送装置(例えば、搬送平面)1に異常があると検出する。
【0139】
つまり、既知の搬送容器の質量(既知の形状)であって、既知の永久磁石10の磁力、既知の搬送容器の搬送面の状態、既知の搬送平面の表面状態における搬送容器の搬送速度(既知の搬送容器の搬送速度)を予め把握し、把握される搬送容器の搬送速度(既知の搬送容器の搬送速度)と演算される搬送容器の搬送速度とを比較し、この搬送速度の差が、所定の範囲に入らない場合には、搬送装置(例えば、搬送平面)1に異常があると検出する。
【0140】
ここで、演算される搬送容器の搬送速度とは、例えば、既知の搬送容器を使用して、この既知の搬送容器を、搬送平面上を移動させ、演算する場合(1)と、既知の搬送平面の表面状態を有する搬送平面を使用して、検査すべき搬送容器を、この搬送平面上を移動させ、演算する場合(2)と、がある。
【0141】
また、既知の搬送容器を使用し、事前に、この既知の搬送容器を、検査すべき搬送平面上を移動させ、この既知の搬送容器が、この搬送平面を移動する際の、位置、電流、電圧、時刻を収集し、参照値として使用することよって、搬送平面の表面状態を、絶対値として、評価することができる。
【0142】
なお、この参照値は、ベンダーが事前に設定してもよいし、校正モードによって、ユーザやシステム管理者が設定してもよい。
【0143】
また、複数の検査用の搬送容器を使用することによって、異常を検出する処理を、高速化することができる。
【0144】
なお、既知の搬送容器とは、例えば、所定の形状であり、検体が無い状態の質量が既知の搬送容器である。また、既知の搬送容器の搬送速度とは、こうした既知の搬送容器を使用し、既知の搬送平面の表面状態における搬送容器の搬送速度である。
【0145】
これにより、実施例6に記載する搬送装置1は、搬送装置1の搬送平面の表面状態の変化に起因する搬送装置1の異常を検出し、高い搬送性能を維持することができる。このように、実施例6では、搬送容器の搬送速度を使用し、搬送平面の表面状態を検出することによって、早期に、搬送平面の表面状態を検出することができる。
【実施例7】
【0146】
次に、実施例7に記載する搬送装置1において、搬送容器の搬送情報(位置、電圧・電流、搬送時間など)を収集し、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量などの監視を実行するシステムの概略構成を説明する。
【0147】
図11は、実施例7に記載する搬送装置1において、搬送容器の搬送情報(位置、電圧・電流、搬送時間など)を収集し、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量などの監視を実行するシステムの概略構成を説明する説明図である。
【0148】
実施例7に記載する搬送装置1は、複数個の搬送装置1が組み合わされ、検体分析システムとして、使用される。この検体分析システムの稼動中、搬送容器の搬送情報(位置、電圧・電流、搬送時間など)は、これら複数個の搬送装置1から、搬送装置制御用のサーバに収集される。
【0149】
そして、搬送容器の搬送情報(位置、電圧・電流、搬送時間など)を収集し、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量などの監視を実行する。
【0150】
つまり、位置は、制御情報から取得、又は、位置検出部30や電圧パルスと対応する電流波形などによって検出される。電圧・電流は、制御情報から推定、又は、電圧や電流のセンサから取得される。搬送時間(時刻)は、センサから取得、又は、電流波形から推定される。
【0151】
このように、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量などを監視し、搬送表面の表面状態や搬送容器の質量の変化による制御不具合(例えば、搬送表面や搬送容器の搬送面の表面粗さの増加、静止摩擦係数の増加、損傷、ほこりの付着、汚れや劣化)を、早期に、検出することができる。そして、アラートにて注意を促すことによって、又は、監視システムに表示することによって、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量の変化を、ユーザやシステム管理者に速やかに通知することができる。これにより、信頼性の高い搬送装置を提供することができる。
【0152】
また、サーバは、クラウドなどのデータセンターに存在するデータベースに、これら搬送容器の搬送情報を集約し、検出分析システムに活用する。
【0153】
つまり、データベースには、磁極25に流れる電流、磁極25に印加する電圧、搬送容器の搬送平面上の位置、この位置を通過する時刻、搬送容器の搬送速度、及び、搬送平面の表面状態、搬送時間などが、格納される。そして、これらはデータベースに、通信機能を有する通信装置にて、送信されることが好ましい。
【0154】
また、サーバは、実施例2に記載するような、搬送平面の表面上の場所による依存性を取得する。また、サーバは、実施例3に記載するような、永久磁石10が搬送平面を移動する際の、位置、電流、電圧、時刻から、搬送平面上の静止摩擦係数に相当する搬送平面の表面状態に関する情報を取得する。そして、特に、磁極25に流れる所定の時刻毎の電流を取得する。
【0155】
これにより、搬送平面の表面状態や搬送容器の質量などを監視し、制御不具合を、早期に、自動的に、検体分析システムの稼動中に、検出することができる。
【0156】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されない。また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の一部を、追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0157】
1…搬送装置、10…永久磁石、21…コイル、22…コア、25、25a、25b、25c、25d…磁極、30…位置検出部、40…演算部、50…駆動部、60…電圧パルス、70a、70b…電流波形、210…位置推定部、211…搬送経路格納部、212…コイル駆動部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11