(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置を制御する方法および関連する装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230629BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G01B11/06 G
(21)【出願番号】P 2020531102
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081297
(87)【国際公開番号】W WO2019110261
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-08-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】スタールズ、フランク
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】松川 直樹
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027
H01L21/30
G03F7/20-7/24
G03F9/00-9/02
G01B11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィプロセスにおいて基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置を制御する方法であって、
i)前記リソグラフィプロセスにおいて前記基板に適用される製品構造
に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測
定および/またはシミュレーションされ
たデータ
、ii)前記性能パラメータの最適な設定情報、およびiii)前記性能パラメータの前記最適な設定情報に関連する許容されるプロセスパラメータの変動を含む臨界データを含む最適化データを決定することであって、前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量およびオーバーレイのうちの1つを含む、ことと、
前記基板に製品構造を提供する前に測定および/またはモデル化された基板固有計測データを決定することであって、前記基板固有計測データは、構造が適用されている前記基板の特性および/または構造が基板に適用されるときの前記リソグラフィ装置の状態に関連する計測データを含む、ことと、
前記最適化データおよび前記基板固有計測データ
を使用した、基板ごとの前記リソグラフィ装置による設定点補正の計算に基づいて、前記リソグラフィプロセス中の前記リソグラフィ装置の制御を最適化することと、
を備える方法。
【請求項2】
前記基板固有計測データは、前記基板の特性、前記基板に適用されるデバイスパターンを定義するパターニングデバイスの特性、基板を保持するための基板ステージおよびパターニングデバイスを保持するためのレチクルステージの一方または両方の位置、または前記パターニングデバイス上のパターンを前記基板に転写するための放射ビームを提供する放射システムの特性、のうちの1つまたは複数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適化データを決定するステップはオフラインで実行され、前記制御を最適化するステップは、前記基板固有計測データの決定と前記基板への製品構造の提供との間に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最適化データを決定するステップは、前記リソグラフィ装置の外部で実行され、前記制御を最適化するステップは、前記リソグラフィ装置内で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記最適化データは、パターニングデバイスに関連するデバイスレイアウトデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記制御を最適化するステップは、対応する制御目標値からの性能パラメータの最大偏差を最小化すること、および/または、プロセスパラメータの対応する許容変動空間のエッジからの性能パラメータの距離を最大化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記制御を最適化するステップは、ダイが機能することを示す仕様内であると推定される前記基板上に提供されるダイの数を最大化することを含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記制御を最適化するステップは、欠陥を含まないダイの数を最大化することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記最適化データは、前記ダイの少なくとも1つの層に少なくとも1つの欠陥があると推定されるため、どのダイが機能しないと見なされるかを示すデッドダイデータを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記基板固有計測データは、基板高さ変動データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板固有計測データは、モデル化および/またはフィルタリングされた計測データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記最適化データは、前記性能パラメータの推定データを含む、請求項1から
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記最適化データは、以前に基板に提供された製品構造からの少なくとも1つの性能パラメータの測定データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
適切な装置上で実行されたときに、請求項1に記載の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
リソグラフィプロセスで基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置であって、
前記基板を保持するための基板ステージと、
パターニングデバイスを保持するためのレチクルステージと、
前記基板に製品構造を提供する前に、基板固有計測データを測定するように動作可能な計測システムと、
最適化データおよび前記基板固有計測データ
を使用した、基板ごとの当該リソグラフィ装置による設定点補正の計算に基づいて、前記リソグラフィプロセス中に当該リソグラフィ装置の制御を最適化するように動作可能なプロセッサであって、前記最適化データは、
i)前記リソグラフィプロセスで前記基板に適用される前記製品構造および/またはそれらの配置
に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定されおよび/またはシミュレーションされ
たデータ
、ii)前記性能パラメータの最適な設定情報、およびiii)前記性能パラメータの前記最適な設定情報に関連する許容されるプロセスパラメータの変動を含む臨界データを含み、前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量およびオーバーレイのうちの1つを含む、プロセッサと、
を備える、リソグラフィ装置。
【請求項16】
前記最適化データは、パターニングデバイスに関連し、前記基板に適用されるデバイスパターンを定義するデバイスレイアウトデータを含む、請求項
15に記載のリソグラフィ装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記制御を最適化することが、対応する制御目標値からの前記性能パラメータの最大偏差を最小化すること、および/または、プロセスパラメータの対応する許容変動空間のエッジからの前記性能パラメータの距離を最大化すること、を含むように構成される、請求項
15に記載のリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年12月6日に出願された欧州特許出願第17205643.4号の優先権を要求し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リソグラフィプロセスにおいて基板にパターンを適用するための方法および装置に関する。
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用できる。その場合、代替としてマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層に形成される回路パターンを生成することができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、1つ、又はいくつかのダイを含む)に転写することができる。パターンの転写は、典型的には、基板上に設けられた放射線感応性材料(レジスト)の層への結像によるものである。一般に、単一の基板には、連続的にパターン化された隣接するターゲット部分のネットワークが含まれる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体を一度にターゲット部分に露光することによって各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパと、所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームを介してパターンをスキャンしながら、基板をこの方向に平行または反平行に同期してスキャンすることによって各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナを含む。基板上にパターンをインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0004】
リソグラフィプロセスを監視するために、パターン化された基板のパラメータが測定される。パラメータには、例えば、パターン化された基板の中または上に形成された連続する層の間のオーバーレイエラーおよび現像された感光性レジストの臨界線幅(CD)が含まれる。この測定は、製品基板および/または専用の計測ターゲットで実行できる。走査型電子顕微鏡やさまざまな専用ツールの使用など、リソグラフィプロセスで形成された微細構造の測定を行うためのさまざまな手法がある。高速かつ非侵襲的な形式の特殊な検査ツールは、基板の表面上のターゲットに放射ビームが向けられ、散乱または反射されたビームの特性が測定されるスキャトロメータである。2つの主要なタイプのスキャトロメータが知られている。分光スキャトロメータは、広帯域の放射ビームを基板に向け、特定の狭い角度範囲に散乱された放射のスペクトル(波長の関数としての強度)を測定する。角度分解スキャトロメータは、単色の放射ビームを使用し、散乱した放射の強度を角度の関数として測定する。
【0005】
既知のスキャトロメータの例には、US2006033921A1号およびUS2010201963A1号に記載されているタイプの角度分解スキャトロメータが含まれる。そのようなスキャトロメータで使用されるターゲットは比較的大きく、たとえば40μm×40μmのグレーティングであり、測定ビームはグレーティングよりも小さいスポットを生成する(つまり、グレーティングはアンダーフィルされる)。再構成によるフィーチャ形状の測定に加えて、回折に基づくオーバーレイは、公開された特許出願US2006066855A1号に記載されているような装置を使用して測定することができる。回折次数の暗視野イメージングを使用した回折に基づくオーバーレイ計測により、より小さなターゲットでのオーバーレイ測定が可能となる。暗視野画像計測の例は、国際特許出願WO2009/078708号およびWO2009/106279号に見られ、これらの文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この技術のさらなる発展は、公開された特許公報US20110027704A号、US20110043791A号、US2011102753A1号、US20120044470A号、US20120123581A号、US20130258310A号、US20130271740A号およびWO2013178422A1号に記載されている。これらのターゲットは、照明スポットよりも小さく、ウェハ上の製品構造に囲まれている場合がある。複合格子ターゲットを使用して、1つの画像で複数の格子を測定できる。これらすべての出願の内容も、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
基板上へのパターンの付与またはそのようなパターンの測定などのリソグラフィプロセスを実行する際に、プロセス制御方法は、プロセスを監視および制御するために使用される。そのようなプロセス制御技術は、典型的には、リソグラフィプロセスの制御のための補正を得るために実行される。そのようなプロセス制御方法を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の態様では、リソグラフィプロセスにおいて基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置を制御する方法が提供される。この方法は、リソグラフィプロセスにおいて基板に適用される製品構造に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定および/またはシミュレーションされたデータを含む最適化データを決定することと、基板に製品構造を提供する前に測定および/またはモデル化された基板固有計測データを決定することであって、基板固有計測データは、構造が適用されている基板の特性および/または構造が基板に適用されるときのリソグラフィ装置の状態に関連する計測データを含む、ことと、最適化データおよび基板固有計測データに基づいて、リソグラフィプロセス中のリソグラフィ装置の制御を最適化することと、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様では、リソグラフィプロセスで基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置を制御するための最適化データを決定する処理装置が提供される。この処理装置は、リソグラフィプロセスにおいて基板に適用される製品構造および/またはそれらの配置に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定および/またはシミュレーションされたデータを含む最適化データを決定するように構成され、最適化データは、リソグラフィプロセス中のリソグラフィ装置の制御を最適化する際に、基板固有計測データと組み合わせてリソグラフィ装置によって使用可能であり、少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、コントラスト放射システム出力帯域幅、およびリソグラフィ装置の基板ステージおよび/またはレチクルステージ位置決めにおけるエラーのコントラスト移動標準偏差を含む。処理装置は、最適化データをリソグラフィ装置に送信するよう構成される。
【0009】
本発明の第3の態様では、リソグラフィプロセスで基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置が提供される。このリソグラフィ装置は、基板を保持するための基板ステージと、パターニングデバイスを保持するためのレチクルステージと、基板に製品構造を提供する前に、基板固有計測データを測定するように動作可能な計測システムと、最適化データおよび基板固有計測データに基づいて、リソグラフィプロセス中に当該リソグラフィ装置の制御を最適化するように動作可能なプロセッサであって、最適化データは、リソグラフィプロセスで基板に適用される製品構造および/またはそれらの配置に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定および/またはシミュレーションされたデータを含む、プロセッサと、を備える。
【0010】
本発明の第4の態様では、適切な装置上で実行されたときに、第1の態様の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様、特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下で詳細に説明される。本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。このような実施形態は、例示の目的でのみ本明細書に提示されている。追加の実施形態は、本明細書に含まれる教示に基づいて、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここで、添付図面を参照して、例として本発明の実施形態を説明する。
【
図1】半導体デバイスの製造設備を形成する他の装置とともにリソグラフィ装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るターゲットを測定する際に使用するスキャトロメータの概略図である。
【
図3】処理パラメータの例示的なソースを示す図である。
【
図4】オーバーラップ・プロセス・ウィンドウ(OPW)の概念を概略的に示す図である。
【
図5】リソグラフィ装置の制御のための補正を決定する現在の方法を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るリソグラフィ装置の制御のための補正を決定する方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明の実施形態を実施することができる例示的な環境を提示することは有益である。
【0014】
図1の200は、大量のリソグラフィ製造プロセスを実施する産業生産施設の一部としてのリソグラフィ装置LAを示している。本実施例では、製造プロセスは、半導体ウエハなどの基板上の半導体製品(集積回路)の製造に適合している。当業者は、このプロセスの変形で異なるタイプの基板を処理することにより、多種多様な製品を製造できることを理解するであろう。半導体製品の生産は、純粋に今日の商業的重要性の高い例として使用されている。
【0015】
リソグラフィ装置(又は略して「リソツール」200)内では、測定ステーションMEAが202で示され、露光ステーションEXPが204で示されている。制御ユニットLACUは206で示される。この例では、各基板が測定ステーションと露光ステーションを訪れ、パターンが適用される。例えば、光学リソグラフィ装置では、投影システムを使用して、調整された放射及び投影システムを使用して、パターニングデバイスMAから基板に製品パターンを転写する。これは、放射線感受性レジスト材料の層にパターンの画像を形成することにより行われる。
【0016】
本明細書で使用される「投影システム」という用語は、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁気、及び静電光学システム、又は使用される露光放射線、又は液浸液の使用や真空の使用など、その他の要因に適切な組み合わせを含むあらゆるタイプの投影システムを包含すると広く解釈されるべきである。パターニングMAデバイスは、パターニングデバイスによって透過又は反射される放射ビームにパターンを付与するマスク又はレチクルであってもよい。よく知られている動作モードには、ステッピングモードとスキャンモードがある。よく知られているように、投影システムは、さまざまな方法で基板及びパターニングデバイスの支持及び位置決めシステムと協力して、基板全体の多くのターゲット部分に所望のパターンを適用することができる。固定パターンを持つレチクルの代わりに、プログラム可能なパターニングデバイスを使用することができる。放射線は、例えば、深紫外線(DUV)又は極紫外線(EUV)波帯の電磁放射線を含んでもよい。本開示は、他のタイプのリソグラフィプロセス、例えばインプリントリソグラフィ、及び例えば電子ビームによる直接描画リソグラフィにも適用可能である。
【0017】
リソグラフィ装置制御ユニットLACUは、様々なアクチュエータ及びセンサのすべての動き及び測定を制御して、基板W及びレチクルMAを受け入れさせ、パターニング動作を実施させる。LACUは、装置の動作に関連する所望の計算を実施するための信号処理及びデータ処置能力も含む。実際には、制御ユニットLACUは多くのサブユニットのシステムとして実現され、各サブユニットは、リアルタイムのデータ取得、装置内のサブシステム又はコンポーネントの処理、及び制御を取り扱う。
【0018】
パターンが露光ステーションEXPで基板に適用される前に、基板は測定ステーションMEAで処理され、さまざまな準備ステップが実行される。準備ステップには、レベルセンサを使用して基板の表面高さをマッピングし、アライメントセンサーを使用して基板上のアライメントマークの位置を測定することが含まれる。アライメントマークは、通常、規則的なグリッドパターンで配置される。ただし、マークの作成が不正確であり、処理中に発生する基板の変形により、マークは理想的なグリッドから外れる。したがって、装置が非常に高い精度で正しい位置に製品の特徴を印刷する場合、基板の位置と向きの測定に加えて、実際にアライメントセンサーは基板領域全体の多くのマークの位置を詳細に測定する必要がある。装置は、それぞれが制御ユニットLACUによって制御される位置決めシステムを備えた2つの基板テーブルを有する、いわゆるデュアルステージタイプのものであってもよい。1つの基板テーブル上の1つの基板が露光ステーションEXPで露光されている間に、別の基板を測定ステーションMEAで他の基板テーブルにロードして、さまざまな準備ステップを実行できる。したがって、アライメントマークの測定は非常に時間がかかり、2つの基板テーブルを用意することで、装置のスループットを大幅に向上させることができる。位置センサIFが測定ステーション及び露光ステーションにある間、基板テーブルの位置を測定できない場合、両方のステーションで基板テーブルの位置を追跡できるようにするために、第2の位置センサが提供されてもよい。リソグラフィ装置LAは、例えば2つの基板テーブルおよび2つのステーション(露光ステーションと測定ステーション)を有し、それらの間で基板テーブルを交換できる、いわゆるデュアルステージタイプのものであってよい。
【0019】
製造設備内で、装置200は、装置200によるパターニングのために感光性レジスト及び他のコーティングを基板Wに塗布するコーティング装置208も含む「リソセル」又は「リソクラスター」の一部を形成する。装置200の出力側には、露光されたパターンを物理的レジストパターンに現像するためのベーキング装置210及び現像装置212が設けられている。これらのすべての装置間で、基板ハンドリングシステムが基板を支持し、それらをある装置から次の装置に移させる。「トラック」と呼ばれることが多いこれらの装置は、監視制御システムSCSによって制御されるトラック制御ユニットの制御下にあり、監視制御システムSCSは、リソグラフィ装置制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置を制御する。したがって、異なる装置を操作して、スループットと処理効率を最大化できる。監視制御システムSCSは、各パターン基板を作成するために実行するステップの定義を詳細に提供するレシピ情報Rを受け取る。
【0020】
リソセルでパターンが適用され、現像されると、パターン化された基板220は、222,224,226に示されているような他の処理装置に移される。広範囲の処理ステップが、典型的な製造施設のさまざまな装置によって実装される。例示として、この実施形態の装置222はエッチングステーションであり、装置224はエッチング後にアニーリングステップを実行する。さらなる物理的及び/又は化学的処理ステップが、さらなる装置226などで適用される。実際のデバイスを作成するには、材料の堆積、表面材料特性の変更(酸化、ドーピング、イオン注入など)、化学機械研磨(CMP)など、多くの種類の操作が必要になる場合がある。装置226は、実際には、1つ以上の装置で実行される一連の異なる処理ステップを表してもよい。別の例として、リソグラフィ装置によって敷設された前駆体パターンに基づいて複数のより小さいフィーチャを生成するために、自己整合された複数のパターニングを実装するための装置および処理ステップが提供されてもよい。
【0021】
よく知られているように、半導体デバイスの製造では、適切な材料とパターンを使用してデバイス構造を基板上に層ごとに構築するために、このような処理を何度も繰り返す。したがって、リソクラスターに到着する基板230は、新たに準備された基板であってもよく、又はこのクラスタ又は別の装置全体で以前に処理された基板であってもよい。同様に、必要な処理に応じて、装置226を離れる基板232は、同じリソグラフィクラスタでの後続のパターニング動作のために戻されるか、異なるクラスタでのパターニング動作のために運ばれるか、ダイシングとパッケージングのために送られる完成品であり得る。
【0022】
製品構造の各層には、異なる一連のプロセスステップが必要であり、各層で使用される装置226はタイプが完全に異なっていてもよい。さらに、装置226によって適用される処理ステップが名目上同じ場合でも、大規模施設では、異なる基板上でステップ226を実行するために並行して動作するいくつかの同一と思われる機械があり得る。これらのマシン間のセットアップ又は障害のわずかな違いは、異なる基板に異なる方法で影響を与えることを意味する。エッチング(装置222)などの各層に比較的共通のステップでさえ、名目上は同一であるがスループットを最大化するために並行して動作するいくつかのエッチング装置によって実施することができる。実際には、さらに、異なる層は、エッチングされる材料の詳細に応じて例えば化学エッチング、プラズマエッチングのような異なるエッチングプロセス、及び例えば等方性エッチングなどの特別な要件を必要とする。
【0023】
先のプロセス及び/又は後続のプロセスは、前述のように他のリソグラフィ装置で実行されてもよく、異なるタイプのリソグラフィ装置で実行されてもよい。たとえば、解像度やオーバーレイなどのパラメータが非常に要求されるデバイス製造プロセスの一部のレイヤーは、要求の少ない他のレイヤーよりも高度なリソグラフィツールで実行できる。したがって、一部の層は液浸型リソグラフィツールで露光され、他の層は「ドライ」ツールで露光される。DUV波長で動作するツールで露光される層もあれば、EUV波長放射を使用して露光される層もある。
【0024】
リソグラフィ装置によって露光される基板が正しく一貫して露光されるように、露光された基板を検査して、後続の層間のオーバーレイエラー、線の太さ、限界寸法(CD)などの特性を測定することが望ましい。したがって、リソセルLCが配置される製造施設は、リソセルで処理された基板Wの一部又はすべてを受け取る計測システムも含む。計測結果は、直接又は間接的に監視制御システムSCSに提供される。エラーが検出されたとき、特に同じバッチの他の基板が露光されるまでに十分な早さですぐに測定を実行できる場合、後続の基板の露光に対して調整を行える。また、すでに露光している基板は、歩留まりを改善するために剥がして再加工するか、廃棄することができ、それにより欠陥があることが知られている基板のさらなる処理の実行を回避する。基板の一部のターゲット部分のみに欠陥がある場合、良好なターゲット部分のみ露光される。
【0025】
図1には、製造プロセスの所望の段階で製品のパラメータの測定を行うために提供される計測装置240も示されている。現代のリソグラフィ生産設備における計測ステーションの一般的な例は、例えば暗視野スキャトロメータ、角度分解スキャトロメータ又は分光スキャトロメータなどのスキャトロメータであり、装置222でのエッチングの前に220で現像された基板の特性を測定するために適用され得る。計測装置240を使用して、例えば、オーバーレイ又は限界寸法(CD)などの重要な性能パラメータが、現像されたレジストの特定の精度要件を満たさないことが決定され得る。エッチングステップの前に、現像されたレジストを剥離し、リソクラスターを通して基板220を再処理する機会が存在する。装置240からの計測結果242は、監視制御システムSCS及び/又は制御ユニットLACU206が経時的に小さな調整を行うことにより、リソクラスターにおけるパターニング動作の正確な性能を維持するために使用でき、それにより、製品が仕様から外れ、再作業が必要になるリスクを最小限に抑える。
【0026】
さらに、計測装置240及び/又は他の計測装置(図示せず)を適用して、処理済み基板232、234、及び入ってくる基板230の特性を測定できる。計測装置は、オーバーレイやCDなどの重要なパラメータを決定するために、処理された基板上で使用できる。
【0027】
本発明の実施形態での使用に適した計測装置を
図2(a)に示す。ターゲットTおよびターゲットを照射するために使用される測定放射の回折光線が、
図2(b)により詳細に示されている。図示されている計測装置は、暗視野計測装置として知られているタイプのものである。計測装置は、独立式の装置であってもよいし、リソグラフィ装置LA(例えば、測定ステーションにて)またはリソグラフィセルLCのいずれかに組み込まれてもよい。装置を通じて複数の分岐を有する光軸は、破線Oで示される。この装置において、光源11(例えば、キセノンランプ)により出力される光は、レンズ12,14および対物レンズ16を備える光学システムにより、ビームスプリッタ15を介して基板W上に向けられる。これらレンズは、4F配置の二重シーケンスで構成される。検出器上に基板の像を与えるのであれば、異なるレンズ配置を用いることもでき、同時に、このレンズ配置は、空間周波数フィルタリング用の中間瞳面の利用を可能にする。したがって、放射が基板に入射する位置での角度範囲は、基板面での空間スペクトルを示し、本書で(共役)瞳面と称される面内の空間強度分布を定義することにより選択できる。具体的には、レンズ12と14の間であって対物レンズ瞳面の逆投影像である面内に適切な形状のアパーチャプレート13を挿入することによりこれを実現できる。図示される例では、符号13N,13Sのアパーチャプレート13が異なる形状を有し、異なる照明モードの選択を可能にする。第1照明モードにおいて、アパーチャプレート13Nは、説明のみを目的として「北」と指定された方向からの軸外放射を提供する。第2照明モードにおいて、アパーチャプレート13Sは、同様であるが「南」と名付けられた反対方向からの照明を提供するために用いられる。所望の照明モード外のいずれの不要な光も所望の測定信号に干渉することから、瞳面の残りは暗闇であることが望ましい。
【0028】
図2(b)に示されるように、ターゲットTは、対物レンズ16の光軸Oに直交するよう基板Wに配置される。基板Wは、サポート(図示せず)により支持されてよい。軸Oからずれた角度からターゲットTに入射する測定放射Iの光線は、ゼロ次の光線(実線0)および二つの1次光線(一点破線+1および二点破線-1)を生じさせる。はみ出る小さなターゲットの場合、これらの光線は、計測ターゲットTおよび他のフィーチャを含む基板の領域をカバーする多数の平行光線の一つにすぎないことを忘れてはならない。プレート13のアパーチャは(有効な光量を認めるのに必要な)有限の幅を有するため、実際には入射光線Iがある角度範囲を占め、回折光線0および+1/-1は多少拡がるであろう。小さいターゲットの点像分布関数によれば、+1および-1の各次数は、ある角度範囲にわたってさらに拡がり、図示されるような単一の理想的な光線とならないであろう。ターゲットの格子ピッチおよび照明角度は、1次光線が中心光軸の近くにアライメントされて対物レンズに入射するように設計または調整されることができることに留意する。
図2(a)および
図2(b)に示される光線は、図面において純粋にこれらが容易に識別可能となるように、多少軸外しとなるよう示されている。
【0029】
基板W上のターゲットTにより回折される少なくとも0および+1の次数は、対物レンズ16により収集され、ビームスプリッタ15を通って戻るように方向付けられる。
図2(a)に戻ると、北(N)および南(S)の符号が付された径方向に反対のアパーチャを指定することにより、第1および第2照明モードの双方が示される。測定放射の入射光線Iが光軸の北側からである場合、つまり、アパーチャプレート13Nを用いて第1照明モードが適用される場合、+1(N)の符号が付された+1の回折光線が対物レンズ16に入射する。反対に、アパーチャプレート13Sを用いて第2照明モードが適用される場合、(-1(S)の符号が付された)-1の回折光線が対物レンズ16に入射するものとなる。
【0030】
第2ビームスプリッタ17は、回折ビームを二つの測定路に分割する。第1測定路において、光学システム18は、ゼロ次および1次の回折ビームを用いて第1センサ19(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上でターゲットの回折スペクトル(瞳面像)を形成する。各回折次数がセンサ上の異なる点でぶつかるため、画像処理は、次数を比較および対比できる。センサ19に撮像される瞳面像は、本明細書に記載されている方法で使用される再構成などの多くの測定目的に使用することができる。瞳面像は、計測装置の焦点を合わせる、および/または一次ビームの強度測定値を正規化するために使用することもできる。
【0031】
第2測定路において、光学システム20,22は、センサ23(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上にターゲットTの像を形成する。第2測定路において、瞳面に共役となる面内に開口絞り21が設けられる。開口絞り21は、ゼロ次の回折ビームを遮るように機能し、センサ23上に形成されるターゲットの画像が-1または+1次のビームからのみ形成されるようにする。センサ19および23の撮像画像は、画像を処理する処理部PUに出力される。PUの機能は、実行すべき測定の具体的な形式に依存するであろう。なお、本書に用いられる「画像」の用語は広義である。仮に-1次および+1次の一方しか存在しなければ、格子ラインの画像自体は形成されないであろう。
【0032】
図2に示されるアパーチャプレート13および視野絞り21の具体的形状は、純粋に例にすぎない。本発明の他の実施形態において、ターゲットの軸上照明が用いられ、実質的に一方の1次回折光のみをセンサに向けて通過させるために軸外アパーチャを持つ開口絞りが用いられる。さらに別の実施形態において、1次ビームの代わりに又は1次ビームに加えて、2次、3次、さらに高次のビーム(
図2に不図示)を測定に用いることができる。
【0033】
ターゲットTは、複合格子の異なる部分が形成される層間のオーバーレイの測定を容易にするために、異なるバイアスをかけられたオーバレイオフセットを有することができる。格子はまた、入射する放射をX方向とY方向に回折するように、向きが異なってもよい。一例では、ターゲットは、バイアスオーバーレイオフセット+dおよび-dを持つ2つのX方向の回折格子と、バイアスオーバーレイオフセット+dおよび-dを持つY方向の回折格子で構成される。これらの格子の個別の画像は、センサ23によって捕捉された画像で識別できる。いったん格子の個別画像が識別されると、例えば、識別された領域内で選択されたピクセルの強度値を平均化または合計することにより、それら個別画像の強度を測定できる。画像の強度および/または他の特性は互いに比較できる。これらの結果は、リソグラフィ工程の異なるパラメータ測定のために組み合わせることができる。
【0034】
基板上へのパターンの再現の精度を改善するために、様々な技術を使用することができる。基板へのパターンの正確な再現は、ICの製造における唯一の問題ではない。別の問題は歩留まりであり、これは一般に、デバイス製造者またはデバイス製造プロセスが基板あたりいくつの機能デバイスを生産できるかを測定する。歩留まりを向上させるために、さまざまなアプローチを採用することができる。このようなアプローチの1つは、デバイスの製造(たとえば、スキャナなどのリソグラフィ装置を使用して設計レイアウトの一部を基板に結像する)を、基板を処理する間に、例えばリソグラフィ装置を使用して基板上に設計レイアウトの一部を結像する間に、の処理パラメータの少なくとも1つの摂動に対してより耐性をもつことである。オーバーラッププロセスウィンドウ(OPW)の概念は、このアプローチに役立つツールである。デバイス(ICなど)の製造には、イメージング、基板のロードまたはアンロード、パターニングデバイスのロードまたはアンロード、露光前の投影光学系下でのダイの配置、1つのダイから他のダイへのステッピングの前、後、または最中の基板測定などの他のステップが含まれる。さらに、パターニングデバイス上の様々なパターンは、異なるプロセスウィンドウ(すなわち、仕様内でパターンが生成される処理パラメータの空間)を有する場合がある。潜在的なシステマテック欠陥に関連するパターン仕様の例には、ネッキング、ラインプルバック、ライン細線化(line thinning)、CD、エッジ配置、オーバーラップ、レジストトップロス、レジストアンダーカット、ブリッジングのチェックが含まれる。パターニングデバイス上のパターンのすべてまたは一部(通常は特定の領域内のパターン)のプロセスウィンドウは、各個々のパターンのプロセスウィンドウをマージする(たとえば、オーバーラップする)ことによって得ることができる。したがって、これらのパターンのプロセスウィンドウは、オーバーラッププロセスウィンドウと呼ばれる。OPWの境界には、個々のパターンのいくつかのプロセスウィンドウの境界が含まれ得る。つまり、これらの個々のパターンはOPWを制限する。これらの個々のパターンは、「ホットスポット」または「プロセスウィンドウ制限パターン(PWLP)」と呼ぶことができる。リソグラフィプロセスを制御する場合、ホットスポットに焦点を合わせることが可能で、通常は経済的である。ホットスポットに欠陥がない場合、すべてのパターンに欠陥がない可能性がある。処理パラメータの値がOPWの外側にある場合に処理パラメータの値がOPWに近いとき、または、処理パラメータの値がOPWの内側にある場合にOPWの境界からさらに離れているとき、イメージングは摂動に対してより耐性になる。
【0035】
図3は、処理パラメータ350の例示的なソースを示す。1つのソースは、リソグラフィ装置の光源、投影光学系、基板ステージなどのパラメータ、トラックのパラメータなど、処理装置のデータ310であり得る。別のソースは、基板高さマップ、焦点マップ、限界寸法均一性(CDU:critical dimension uniformity)マップなどのさまざまな基板計測ツールからのデータ320である。データ320は、適用可能な基板が、基板の再加工を妨げるステップ(例えば現像)を受ける前に取得されてもよい。別のソースは、1つ以上のパターニングデバイス計測ツール、パターニングデバイスCDUマップ、パターニングデバイス(例えば、マスク)フィルムスタックパラメータ変動などからのデータ330であり得る。さらに別のソースは、処理装置のオペレータからのデータ340であり得る。
【0036】
図4は、OPWの概念を概略的に示す。概念を説明するために、パターニングデバイス上のエリアまたはグリッド要素/ピクセル500は、2つの個別のパターン510および520のみを有すると仮定されている。エリアは、より多くのパターンを含み得る。個々のパターン510および520のプロセスウィンドウは、それぞれ511および512である。概念を説明するために、処理パラメータには焦点(横軸)と線量(縦軸)のみが含まれると仮定されている。しかしながら、処理パラメータは、任意の適切なパラメータを含み得る。エリアのOPW550は、プロセスウィンドウ511と512の間のオーバーラップを見つけることによって取得できる。OPW550は、
図4でハッチングされたエリアとして表される。OPW550は、不規則な形状であり得る。しかしながら、OPWを容易に表すため、および処理パラメータ値のセットがOPW内にあるかどうかを容易に決定するために、「適合OPW(fitted OPW)」(例えば、楕円560)が代わりに使用され得る。「適合OPW」は、例えば、OPW内に適合する最大の超楕円体(例えば、この例のように2次元処理パラメータ空間における楕円、楕円3次元処理パラメータ空間など)であり得る。「適合OPW」を使用すると、計算コストが削減される傾向があるが、原寸大のOPWを活用できない。
【0037】
処理パラメータの値は、処理パラメータがOPWの外側にシフトし、それにより欠陥を引き起こし、歩留まりを低下させる可能性を減らすために、それらがOPWまたは適合OPWの境界から離れるように選択され得る。処理パラメータの値を選択する1つのアプローチには、実際のイメージングの前に、(1)リソグラフィ装置の最適化(たとえば、光源と投影光学系の最適化)と設計レイアウトの最適化、(2)(例えばシミュレーションによる)OPWまたは適合OPWの決定、および(3)OPWまたは適合OPWの境界から可能な限り離れている処理パラメータの空間内の点を決定(つまり、処理パラメータの値を決定)(この点は、OPWまたは適合OPWの「中心」とも呼ばれる)、が含まれる。
図4の例では、点555はOPW550の境界から可能な限り離れた処理パラメータ空間内の点であり、点565は適合OPW560の境界から可能な限り離れた処理パラメータ空間内の点である。点555と点565は、公称条件と呼ばれる場合がある。イメージング中またはイメージング前に、処理パラメータが点555または点565から離れて、OPWの境界に向かって、またはOPWの境界の外側にさえシフトする場合、そのようなシフトを実現する機能を持つこと、および、望ましくはイメージングや他の処理を中断することなく、適切な修正を行って処理パラメータをOPWに戻し、その境界から離すことは有益である。
【0038】
実際のイメージング中またはその前に、処理パラメータは、それらを、OPWまたは適合OPWの境界から可能な限り遠く離れた点から逸脱させる摂動を有し得る。例えば、露光される基板のトポグラフィ、基板ステージのドリフト、投影光学系の変形などにより、焦点が変化する場合がある。線量は、光源強度、滞留時間(dwell time)などの当然のドリフトによって変化する場合がある。摂動は、処理パラメータがOPWの外に出るのに十分なほど大きくなる場合があり、したがって欠陥につながる可能性がある。摂動した処理パラメータを識別し、その処理パラメータを修正するために、さまざまな技法を使用することができる。例えば、焦点が摂動している場合、例えば、基板の残りの部分からわずかに隆起している基板の領域が露光されているため、摂動を補償するために基板ステージを移動または傾斜させることができる。
【0039】
リソグラフィプロセスの制御は、通常、フィードバックまたはフィードフォワードされた測定に基づいており、次に、たとえばインターフィールド(基板にわたるフィンガープリント)またはイントラフィールド(フィールドにわたるフィンガープリント)モデルを使用してモデル化される。ダイ内では、メモリ領域、ロジック領域、コンタクト領域などの個別の機能領域が存在する場合がある。機能領域ごと、または機能領域タイプごとに、異なるプロセスウィンドウがあり、それぞれ異なるプロセスウィンドウ中心を有する。たとえば、機能領域のタイプが異なれば、高さも異なるため、最適な(最良の)焦点設定も異なる。また、機能領域のタイプが異なれば、構造の複雑さが異なるため、各最適な焦点の周囲の焦点トレランス(焦点プロセスウィンドウ)が異なる場合がある。しかしながら、これらの異なる機能領域のそれぞれは、制御グリッドの解像度の制限により、通常、同じ焦点(または線量や位置など)設定を使用して形成される。
【0040】
リソグラフィ制御は、通常、(例えば)以前に形成された構造の測定に基づいて、1つまたは複数の特定の制御自由度に対する1つまたは複数の設定点補正のオフライン計算を使用して実行される。設定点補正は、特定のプロセスパラメータの補正を含むことができ、測定されたプロセスパラメータが仕様の範囲内(たとえば、最適な(最良の)設定値または最適値からの許容される変動内、たとえばOPWまたはプロセスウィンドウ内)に留まるように、ドリフトやエラーを補償する特定の自由度の設定の修正を含むことができる。例えば、重要なプロセスパラメータは焦点であり、焦点エラーは、基板上に形成される欠陥構造に現れる。典型的な焦点制御ループでは、焦点フィードバック手法を使用できる。そのような手法は、形成された構造に使用される焦点設定を測定することができる計測ステップを含むことができる。例えば、回折に基づく焦点(DBF)技術を使用することにより、焦点依存の非対称性を有するターゲットが形成され、その後、焦点設定は、ターゲット上の非対称性の測定によって決定され得る。次に、測定された焦点設定を使用して、オフラインで、リソグラフィプロセスの補正、例えば、焦点オフセット(焦点ずれ)を補正するレチクルステージまたは基板ステージの一方または両方の位置補正、を決定できる。次に、そのようなオフラインの位置補正は、スキャナによる直接の作動のために、設定点の最適な焦点補正としてスキャナに伝達されてもよい。測定値は、1つまたは複数の後続ロットの各基板に適用される平均(ロット全体)の最適な焦点補正を使用して、多数のロットにわたって取得できる。
【0041】
図5は、そのような手法を示している。これは、製品レイアウト、照明モード、製品マイクロトポグラフィなどの製品情報605、および計測データ610(たとえば、以前に製造された基板から測定されたデフォーカスデータまたはオーバーレイデータ)を示す。これらは、最適化アルゴリズム620を実行するオフライン処理デバイス615に供給される。最適化アルゴリズム620の出力は、例えばスキャナ635内のレチクルステージおよび/または基板ステージの位置決めを制御するアクチュエータのための1つまたは複数の設定点補正625を含む。設定点補正625は、通常、計測データ610内に含まれるオフセットエラー(例えば、デフォーカス、ドーズまたはオーバーレイオフセットエラー)を補償するために計算される単純な補正オフセットを含む。制御レチクルステージおよび/または基板ステージ位置決めの補正は、例えば、任意の方向、すなわちx,yおよび/またはz方向の制御補正であってよい。xおよびyは、基板平面を定義し、zはこの平面に垂直である。より具体的には、それらは、オーバーレイ/アライメントエラーを補正するx/y方向補正、および/またはフォーカスエラーを補正するz方向補正を含み得る。制御アルゴリズム640(例えば、レベリングアルゴリズム)は、基板固有計測データ650を使用して制御設定点645を計算する。例えば、レベリング露光軌跡(例えば、リソグラフィプロセスの間にレチクルステージに対する基板ステージの位置決めのための相対移動または加速プロファイルを決定する)は、レベリングデータ(例えば、ウェハ高さマップ)を使用して計算され、スキャナアクチュエータの位置設定点645を出力する。スキャナ635は、各基板に対して等しく、計算された設定点645に設定点補正(オフセット)625を直接適用する。
【0042】
そのような手法の欠点は、基板ごとに最適化される修正を決定することが不可能であることである。知られているように、各基板は、その上に構造が形成される前に(すなわち、
図5の基板固有計測データ650を得るために)、1つ以上の基板固有の計測ステップ(例えば、基板ごとおよび/または層ごと)を受ける。これらの計測ステップは、例えば、基板にわたる高さ変動を決定するためのレベリング測定(例えば、ウェハ高さマップ)を含むことができる。焦点は本質的に基板表面に対するレチクルの高さに依存するので、そのような高さの変動は、修正されない場合、基板にわたって局所的な焦点変動をもたらす。したがって、通常、基板および/またはレチクルの位置は、測定された高さの変動を補償しようとするために、基板表面に構造を形成する間に(利用可能な自由度を使用して)動的に制御される。しかし、決定された最適な焦点設定点補正は平均補正としてオフラインで計算されるため(たとえば、ロットまたはロット数ごと)、測定された高さマップ、すなわち各基板の基板固有の高さ変動に関係なく、各基板に等しく適用できるだけである。これは、最適ではない補正をもたらす。
【0043】
同様に、現在、オフラインオーバーレイおよび/またはエッジ配置最適化は、ロットにわたって平均化されたアライメントデータに基づいて設定点位置補正のみを計算し、したがって、アライメントデータまたは各基板がスキャナにロードされたときに測定されたウェハ高さマップ(高さの変動もオーバーレイとエッジの配置に影響する可能性があるため)を使用して、基板ごとまたは層ごとの最適化を計算できない。
【0044】
したがって、
図6に示されるように、そのようなプロセスパラメータについてリアルタイムの最適化を実行することが提案される。
図6は、製品レイアウト、照明モード、製品マイクロトポグラフィなどの製品情報605、および計測データ610(例えば、以前に露光された基板からの少なくとも1つの性能パラメータの測定値)を受け取るオフライン処理デバイス615を再び示す。しかしながら、アルゴリズム720はここで、最適化サブレシピを含む最適化データ755を計算する。最適化データ755は、例えば、ダイレイアウト情報、デッドダイデータ(例えば、以下でより詳細に説明されるデッドダイマップ)、性能パラメータの推定または既知の最適設定を含む最適設定データ(たとえば、最適設定マップの形式)、臨界データ(たとえば、最適設定マップに関連付けられている又は関連付けられていないプロセスウィンドウなどの許可されたプロセスパラメータ変動スペース)、性能パラメータのモデル化(推定)値(推定マップなど)、または以下で説明する、移動平均(MA)と時間移動標準偏差(MSD)の望ましいバランス比率(MA:MSD)、の1つ以上を含んでよい。このリストは限定的なものであることに留意すべきである。
【0045】
この最適化サブレシピ755は、スキャナ635に伝達され、基板固有計測データ650と共にスキャナアルゴリズム740によって使用され、例えば、基板ごとのベースで、および/または、層ごとのベースで、補正(たとえば、補正された設定点)645を決定する。したがって、(例えば、オフライン計測)に基づいてオフラインで設定点補正を計算し、この設定点補正をスキャナ635に送る代わりに、基板ごとの計測650の結果を使用して、最適化サブレシピ(例えば、適切な最適化関数)755がオフライン計測610に基づいて計算され、実際の最適化が実行され、設定点がスキャナ内で計算される(追加の設定点補正625はオプションでオフラインで計算されてもよい)。
【0046】
上述のように、焦点の特定の例を使用して、焦点設定点補正(例えば、レチクル/基板ステージ設定点位置補正およびレンズ収差補正)のオフライン計算を行い、スキャナ制御による直接実装のためにこれらを転送する代わりに、ここではオフラインアルゴリズム720を使用して、焦点最適化サブレシピ755を決定することが提案されている。次に、最適化サブレシピ755は、例えば、基板高さ変動データ(ウェハ高さマップ)およびレンズ収差状態データを使用して、リアルタイムで焦点を最適化するためにスキャナ635によって使用される。したがって、アルゴリズム740は、基板および/またはレチクルステージを制御するレベリングアルゴリズムと、レンズ制御のためのレンズ収差アルゴリズムとを含み得る。基板固有計測データ650は、ウェハ高さマップおよび測定されたレンズ収差データを含む。結果として、作動設定点645は、基板ごとまたは層ごとに計算され、オフラインの任意の計測データと組み合わせて、各基板のレベリングデータ、および(たとえば)各層のダイレイアウトおよびマイクロトポグラフィを使用して最適化される。そのような提案は、オフライン処理装置615と、スキャナ635と、スキャナ635の制御との間のインタフェースへの修正を必要とするであろう。
【0047】
場合によっては他の基板固有計測データを使用して、基板ごとに、たとえば線量またはオーバーレイの最適化も可能である。例えば、オーバーレイおよび/またはエッジ配置制御の最適化は、基板固有のアライメント計測を使用して、婆によってはレンズ収差データおよび連続ウェハ高さマップと組み合わせて(以下で説明するように)改善することができる。線量の例では、通常利用可能な唯一の計測は、スポットセンサからの平均スポット強度である。本明細書に記載の技術を使用して、基板ごとの線量最適化は、(たとえば、平均スポット強度に加えて)、基板ごとのスリットプロファイルを含む基板固有の計測を使用でき、線量最適化(たとえば、スリットプロファイルとスキャンプロファイル間)を、基板ごとに実行できる。本明細書の後半で説明するように、基板ごとの最適化は、これらの(または他の)プロセスパラメータのうちの2つ以上を共に最適化する共最適化を含むことができる。
【0048】
実施形態では、基板固有計測データは、オフラインの基板固有計測データを含むことができる。これは、マイクロトポロジデータ、レベルセンサプロセス依存性データ、層厚プロファイルデータ、全体形状(global shape)および/または曲げデータの1つ以上を含む。実施形態では、基板固有計測データは、例えば投影光学系のレンズ収差など、露光時のスキャナの状態に関する計測を含むことができる。
【0049】
実施形態では、基板固有計測データは、モデル化および/またはフィルタリングされた計測データを含むことができる。一実施形態では、基板固有計測データは、連続基板マップまたは連続ウェハマップ(CWM)を含むことができる。連続ウェハマップは、センサノイズ、センサキャリブレーションドリフト、センサデータフィルタリングアーティファクト(sensor data filtering artefact)、スパースサンプリング制限(sparse sampling limitation)、および/または基板にわたるプロセスパラメータの変動をマッピングするサンプリングされた基板マップの有限センサスポットサイズ、の1つ以上を補正するモデルで構成できる。一部のシステムでは、CWMは、現在オフラインで維持されている。現在、CWMをスキャナ内で維持し、リアルタイムで更新することができる(例えば基板ごとに更新)。
【0050】
一実施形態では、調整最適化レシピ(最適化データ)は、以下(完全に網羅されていない)の一部またはすべてを含むことができる。
・フィールド(またはダイ)ごとの最適なパラメータ値または設定点マップ。これは、例えば、(プロセスパラメータが焦点を含む)最良焦点マップおよび/または(プロセスパラメータが線量を含む)最良エネルギーマップを含み得る。
・フィールド(またはダイ)内のポイントごとのプロセスパラメーターの許容変動空間(許容変動範囲やプロセスウィンドウなど)。これは、例えば、焦点深度マップおよび/または露出寛容度マップを含み得る。
・最適化バランシング定義/重みのセット。これは、たとえば、WO2009/148976号(参照により本明細書に組み込まれる)などに記載されたレンズ収差インパクトバランシングのためのリソメトリック方程式、レベリングMA:MSD比(z方向)、オーバーレイ対イメージングMA:MSDxy、および/または部分的:完全なダイ重量、を含む。
・さらに、最適化データには参照データが含まれ得る。参照データは、より具体的には、例えば、推定焦点マップまたは推定実効線量マップ(線量感度で割ったCD)などの計測データからの推定マップなどの推定/モデル化データを含み得る。最適化データはまた、層ごとのデータ(例えば、ダイレイアウトデータおよび/またはデッドダイデータ)を含み得る。
【0051】
焦点最適化の特定の例では、焦点調整最適化レシピは、以下のいくつかまたはすべてを含む(またはそこから導出される)ことができる。
・プロセスウィンドウの最適化、たとえば、より具体的には、高度な製品アウェア(product aware)、ダイインスペック(dies-in-spec(仕様内のダイ))の最適化、のための、たとえばマイクロトポロジデータまたはモデル化された最適な焦点シフト(たとえば、参照により本明細書に組み込まれるUS7703069B1に記載されている3次元レチクルモデルを使用)を含むイントラフィールド最良焦点(BF)マップ。最良焦点データは、イメージングエフェクト(マスク3Dエフェクト、レジスト3D、収差)によって変動を補正できる。
・プロセスウィンドウを最適化するためのイントラフィールド焦点深度(DoF)マップ。
・ダイインスペックの最適化のためのダイレイアウト。
・高度なダイインスペックの最適化のためのデッドダイリスト。
・オンプロダクト計測に基づく、オンプロダクト焦点推定モデルの結果。計測データは、例えば計算計測技術を使用して、スキャナ制御からフィードバックされたMAおよび/またはMSD残差(および場合によってはレンズ残存収差、たとえばゼルニケZ5およびZ9(またはZ6)について補正される。
【0052】
スキャナ制御は、最適化を実行するために最適化データを使用することができ、これは以下を含むことができる。
・ダイインスペックの最適化。ダイごとの最大絶対値(max abs)の最適化。これにより、制御ターゲットからのパフォーマンスターゲットの最大偏差を最小化される。他のダイのためにあるダイを犠牲にすることと組み合わされる場合がある。
・プロセスウィンドウの最適化。これは本質的にダイインスペックの最適化に似ているが、さらに、最適なパラメータ値マップおよび/または許容変動空間データ(プロセスウィンドウマップ)を使用する。そのようなプロセスウィンドウ最適化は、対応する最適なパラメータ値からの性能パラメータの最大偏差を最小化すること、および/または、対応する許容変動空間のエッジからの性能パラメータの距離を最大化することを含み得る。より具体的には、プロセスウィンドウ最適化は、最適化空間にわたって、a)対応する最良のパラメータ値(または他の制御目標値)に対する前記性能パラメータの局所的偏差(local excursion)と、b)対応する許容変動空間の局所的エッジとの間の最小距離を最大化することを含むことができる。最適なパラメータ値マップのみがプロセスウィンドウマップなしで利用できる場合、最適化は、各ダイの一定の(仮定)プロセスウィンドウを使用して実行できる。最適なパラメータ値マップなしでプロセスウィンドウマップのみが使用可能な場合、最適なパラメータ値は各プロセスウィンドウの中心、またはゼロまたは他の任意の値であるという仮定を使用して、最適化を実行できる。このようなプロセスウィンドウの最適化は、前述のWO2009/148976号に(特にレンズ収差の補正に関して)説明されている。たとえば、最適なパラメータ値マップに基づく局所的重み(たとえば、焦点深度の逆数に基づく重み付け)を使用したり、パターンの忠実度制御で使用されるアルゴリズムを使用したりするなどの代替の最適化戦略が可能である。
・複数のプロセスパラメータを共最適化する機能。たとえば、スキャナ/プロセス制御内の1以上の自由度に対する単一または組み合わせの補正を決定する。これにより、焦点、線量、オーバーレイ、レンズ収差などの個別の最適化を置き換えることができる。この概念については、以下で詳しく説明する。
【0053】
上述のように、一実施形態では、プロセスパラメータ最適化(例えば、焦点最適化)は、「ダイインスペック」最適化を含むことができる。これは、基板全体に平均化された最適化を適用するのではなく、仕様内のダイの数を最大化することを目的としている(たとえば、基板全体の最適な焦点からの焦点差の最小二乗最小化に基づく最小二乗最適化)。そのため、「ダイインスペック」最適化では、プロセスパラメータを最適化するときに、製品(ダイレイアウト)の予備知識を使用する。最小二乗最適化は通常、ダイレイアウトを考慮せずに、各場所を同等に扱う。そのため、最小二乗最適化では、4つの場所が仕様外であるが、それぞれが異なるダイにあることをもたらす「だけ」の補正を、7つの場所が仕様外であるが2つのダイに影響するだけである補正よりも優先する場合がある(たとえば、1つのダイに4つの欠陥、別のダイに3つの欠陥)。しかしながら、単一の欠陥のみがダイを欠陥とする傾向があるため、欠陥のないダイ(つまり、ダイインスペック)の数を最大化することは、基板あたりの欠陥数を単に最小化するよりも結局より重要である。ダイインスペックの最適化は、ダイごとの最大絶対値(max abs)の最適化を含む場合があることを理解されたい。そのようなmax absの最適化は、制御ターゲットからの性能パラメータの最大偏差を最小化することができる。代わりにmax abs関数の微分可能近似を使用でき、これにより、コスト関数を簡単に解決できる。これを効果的に行うには、最適化でウェハマップなどの詳細を使用する必要がある。
【0054】
一実施形態では、ダイインスペックの最適化は、「デッドダイ」データベースを使用することによってさらに改善することができる。そのようなデータベースは動的に維持され、ダイが持っていると思われる、または少なくとも1つの欠陥があると推定されるすべての事例を(たとえば、以前の歩留りデータ、他のリソグラフィプロセスからのデータ、および/またはデフォーカス推定マップを用いて)記録し、デッド(dead)状態(欠陥がある)と見なされる。そのようなデッドダイは、最適化でさらに犠牲になる可能性がある。これは、機能するための実際の制限の範囲を超えて、非常に大きなまたは無制限のプロセスウィンドウをデッドダイに起因すると考えることによって達成できる。デッドダイの欠陥が増える可能性を高めることで、他のダイの最適化や制御のための柔軟性を高めることができる。したがって、これにより、同じ層または後続の層の最適化で別のダイの欠陥が発生する可能性が低くなり、それにより、ダイインスペックの数がさらに最大化される。
【0055】
ダイインスペックの数を最大化することに加えて、一実施形態では、基板または層ごとにプロセスウィンドウマージン(焦点または他のプロセスパラメータがスペック内にある程度)を最大化するプロセスウィンドウ最適化を実行することにより、ダイインスペック最適化をさらに改善することができる。これは、パラメータ値(例えば、デフォーカス)推定マップおよび製品レイアウト情報(例えば、BFおよびDoFマップ)を使用することを含み得る。デフォーカス推定マップは、計算計測学(例えば、リソグラフィプロセスモデリング)を介して取得できる。計算計測プロセスウィンドウの最適化では、これらのマップを使用して、対応するプロセスウィンドウ(焦点深度など)に関するモデル化されたパラメータ値(焦点など)のマージンを最大化すること、および/または、対応する最適なパラメータ値(たとえば、最適な焦点)に関するモデル化されたパラメータ値間の差を最小化することができる。このように、この方法は、a)対応する最良のパラメータ値(または他の制御目標値)に対する前記性能パラメータの局所的偏差と、b)対応する許容変動空間の局所的エッジとの間の最小距離の、最適化空間にわたっての最大化を含むことができる。
【0056】
ダイインスペックの最適化は、最初の推定値の残差(場合によっては最小二乗適合を含む)が計算され、この各残差から生じる欠陥の可能性に基づく反復プロセスを含むことができる。ダイごとの最大欠陥可能性が計算され、欠陥があると思われるダイの数が決定される。次に、残差の計算で再開する多くの反復にわたって、関連するパラメータを変更して、欠陥のある可能性のあるダイの数を最小限にする。
【0057】
計算された最適化サブレシピ755は、例えば、最適なパラメータデータ(例えばBFマップ)および臨界データ(例えばDoFマップ)、MA/MSDウェイトレシオ、ダイレイアウト、完全/部分ダイウェイトレシオおよびデッドダイマップのうちの1つ以上を使用して、適切な制御アルゴリズム740(例えば、レベリングアルゴリズム)のメリット関数を変更するように動作可能であり得る。
【0058】
MA/MSDウェイトレシオは、リソグラフィステージのエラーの時間移動平均(MA)エラーおよび時間移動標準偏差(MSD)に与えられるレベリングアルゴリズムにおける相対的重要度を含む。ここで重要な時間ウィンドウは、ダイ上の各点が露光される(つまり、フォトンを受け取る)時間間隔である。この時間間隔中のダイ上の点の平均位置エラーが高い場合(つまり、MAエラーが高い場合)、影響は露光された画像のシフトであり、結果として焦点エラーやオーバーレイエラーが発生する。この時間間隔における位置エラーの標準偏差が高い(つまり、MSDエラーが高い)場合、画像が不鮮明になり、フェーディングエラーが発生することがある。多くの状況で、焦点(たとえば、z方向の制御)には1(等しい重み付け)の比率が、オーバーレイ対イメージング(たとえば、x/y平面の制御)には1より大きい比率が推奨される。ただし、他のアプリケーションでは、異なる比率が使用されてもよい。たとえば、3D NANDアプリケーションでは、高層と低層の間で重なり合うDOFが小さい場合がある。そのような場合、重なり合うDOFから逸脱することは、少しコントラストを失うよりも悪い場合がある。したがって、最適化サブレシピは(メリット関数)レベリングアルゴリズムを変更して、MAに関してMSDの重み付けを緩和する。
【0059】
上記の手法は、焦点、線量またはオーバーレイの最適化に関して説明されているが、収差を超えるジョーンズ瞳、レーザ帯域幅、ステージからのコントラストMSDxyzおよびレンズ要素の動きなど、他のスキャナパラメータを含めることができる。最適化はまた、これから説明するように、これらまたは他のプロセスパラメータの2つ以上の任意の組み合わせの共最適化を含むこともできる。
【0060】
上述の概念は、共最適化されたスキャナ制御の非常に重要な利益を得るために拡張されてもよく、それにより、複数のプロセスパラメータに関する最適化データに基づいて共最適化補正が決定され、それらのプロセスパラメータのそれぞれ(またはそのサブセット)および/または関連する(たとえば、依存する)プロセスパラメータを最適化する。例えば、スキャナは、最適化された限界寸法(CD)のために、および/または欠陥を最小限にするために、焦点および線量を共最適化することができる。別の実施形態では、スキャナは、1つまたは複数の最適化レシピ、レベリングデータ(ウェハマップ)およびアライメントデータを使用して、最適化されたエッジ配置エラー(EPE)のために焦点、線量およびオーバーレイを共最適化することができる。EPEは、(全体的および局所的)CD均一性エラーとオーバーレイエラーから生じる総合エラーである。最適化は1つ以上のサブレシピに基づいてスキャナ内で実行されるため、最適化は、スキャナのすべての自由度(作動と制御)を考慮して、すべての利用可能な入力データに基づいてエラーを最適化できる。このような共最適化は、現在実行されている個別(たとえば、焦点、線量、収差、オーバーレイ)の最適化と同様に有益であり、すべてのエラーが独立しているわけではなく、個別に補正可能であり、異なる最適化では相反する補正が必要になる場合がある。たとえば、「スリットを曲げることができない」ため、スリット全体の焦点の最適化は制限されている。つまり、焦点は、レチクルと基板ステージ間の距離の非線形変化によって、スリット全体で非線形に直接変更できない。しかしながら、共最適化戦略では、例えばEPEまたはCDを最適化するために、スリット全体の線量を変化させることによって、および/または投影レンズ光学系(たとえば、レンズマニピュレータ)を介して、スリット全体の直接焦点制御のいくつかの利点を達成できる場合がある。
【0061】
共最適化はまた、レンズ収差を補償するレンズ制御を含み得る。スキャナは、レンズ収差の望ましいバランスに関連する最適化サブレシピを含み得る。最適化サブレシピのレシピは、個々の収差成分(ゼルニケ)に関する重要な製品構造とそのトレランスの知識に基づいてよい。スキャナは、すべての基板のレンズ収差プロファイルを測定し、これを、レンズ制御をさらなる自由度として使用する共最適化の追加入力として使用できる。最適化レシピに基づくレンズ制御のスキャナ最適化は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2009/148976号に記載されている。
【0062】
したがって、本明細書では、焦点、線量、オーバーレイまたは他のプロセスパラメータ、またはそれらの組み合わせを使用して製品固有のスキャナ最適化サブレシピ(オフライン)を決定し、これを使用して性能ベースのスキャナ最適化アルゴリズムを決定することが開示されている。これにより、最適化サブレシピからの入力が可能になり、基板固有の計測に基づいて基板ごとまたは層ごとに計算できる。
【0063】
提案された手法のさらなる利点は、製品固有の情報がスキャナに直接入力されず、これを使用して最適化サブレシピを決定するオフライン処理デバイスにのみ入力されることである。この最適化サブレシピは、本質的にスキャナから隠されているセンシティブな製品固有の情報に関してはかなり中立である。これは、製品固有の情報が機密情報であることを確認したい場合に役立つ。
【0064】
本発明のさらなる実施形態は、以下の番号が付けられた実施形態のリストに開示される:
1.リソグラフィプロセスにおいて基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置を制御する方法であって、
前記リソグラフィプロセスにおいて前記基板に適用される製品構造および/またはそれらの配置に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定および/またはシミュレーションされたデータを含む最適化データを決定することと、
前記基板に製品構造を提供する前に測定および/またはモデル化された基板固有計測データを決定することであって、前記基板固有計測データは、構造が適用されている前記基板の特性および/または構造が基板に適用されるときの前記リソグラフィ装置の状態に関連する計測データを含む、ことと、
前記最適化データおよび前記基板固有計測データに基づいて、前記リソグラフィプロセス中の前記リソグラフィ装置の制御を最適化することと、
を備える方法。
2.前記基板固有計測データは、前記基板の特性、前記基板に適用されるデバイスパターンを定義するパターニングデバイスの特性、基板を保持するための基板ステージおよびパターニングデバイスを保持するためのレチクルステージの一方または両方の位置、または前記パターニングデバイス上のパターンを前記基板に転写するための放射ビームを提供する放射システムの特性、のうちの1つまたは複数を表す、実施形態1に記載の方法。
3.前記最適化データ決定ステップはオフラインで実行され、前記最適化制御ステップは、前記基板固有計測データの決定と前記基板への製品構造の提供との間に実行される、実施形態1または2に記載の方法。
4.前記最適化データを決定するステップは、前記リソグラフィ装置の外部で実行され、前記最適化制御ステップは、前記リソグラフィ装置内で実行される、実施形態3に記載の方法。
5.前記基板に対応する前記基板固有計測データに基づいて、前記製品構造が提供される基板ごとに前記最適化制御ステップが個別に実行される、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
6.前記最適化データは、前記パターニングデバイスに関連するデバイスレイアウトデータを含む、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
7.前記最適化ステップは、対応する制御目標値からの性能パラメータの最大偏差を最小化すること、および/または、プロセスパラメータの対応する許容変動空間のエッジからの性能パラメータの距離を最大化することを含む、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
8.前記最適化ステップは、ダイが機能することを示す仕様内であると推定される前記基板上に提供されるダイの数を最大化することを含む、実施形態7に記載の方法。
9.前記最適化ステップは、欠陥を含まないダイの数を最大化することを含む、実施形態8に記載の方法。
10.前記最適化データは、前記ダイの少なくとも1つの層に少なくとも1つの欠陥があると推定されるため、どのダイが機能しないと見なされるかを示すデッドダイデータを含む、実施形態8または9に記載の方法。
11.前記最適化データは、前記少なくとも1つのプロセスパラメータの1つまたは複数に関連する最適なパラメータ値データを含み、前記制御目標値は、前記最適なパラメータ値データから導出されるか、またはそれによって定義される、実施形態7から10のいずれかに記載の方法。
12.前記最適なパラメータ値データは、フィールド全体および/またはダイ全体の最適な焦点設定を表す最適な焦点マップを含む、実施形態11に記載の方法。
13.前記最適な焦点マップは、関連する製品レイアウトデータによるダイ内の予想される高さ変動を表すマイクロトポロジデータを含む、実施形態12に記載の方法。
14.前記最適なパラメータ値データが、フィールド全体および/またはダイ全体の最適なエネルギー設定を表す最適なエネルギーマップを含む、実施形態11,12または13に記載の方法。
15.前記最適化データは、前記少なくとも1つのプロセスパラメータの1つまたは複数の臨界データを含み、前記臨界データは、プロセスパラメータに関してフィールド全体および/またはダイ全体の許容変動空間を定義する、実施形態7から14のいずれかに記載の方法。
16.a)対応する制御目標値に対する前記性能パラメータの局所的偏差と、b)対応する許容変動空間の局所的エッジとの間の最小距離を、最適化空間にわたって最大化することを含む、実施形態15に記載の方法。
17.前記最適化ステップは、前記最適化データを使用して、前記リソグラフィ装置の少なくとも1つの制御パラメータの最適化のためのメリット関数の重み付けを決定することを含む、実施形態1から16のいずれかに記載の方法。
18.前記少なくとも1つの制御パラメータは、前記リソグラフィ装置の基板ステージおよび/またはレチクルステージの制御に関連し、それにより前記レチクルステージに対する前記基板ステージの相対位置を制御する、実施形態17に記載の方法。
19.前記少なくとも1つの制御パラメータは、前記リソグラフィ装置の投影システムの制御に関連する、実施形態17に記載の方法。
20.前記基板固有計測データは、基板高さ変動データを含む、実施形態1から20のいずれかに記載の方法。
21.前記基板固有計測データは、モデル化および/またはフィルタリングされた計測データを含む、実施形態1から20のいずれかに記載の方法。
22.前記基板固有計測データは、連続基板マップを含み、前記連続基板マップは、センサノイズ、センサ較正ドリフト、センサデータフィルタリングアーチファクト、スパースサンプリング制限および/または基板にわたるプロセスパラメータの変動をマッピングするサンプリングされた基板マップの有限センサスポットサイズ、の1つ以上を補正するモデルを含む、実施形態1から21のいずれかに記載の方法。
23.前記基板固有計測データは、パターニングデバイス高さ変動データを含む、実施形態1から22のいずれかに記載の方法。
24.前記基板固有計測データは、オフライン基板計測データを含む、実施形態1から23のいずれかに記載の方法。
25.前記オフライン基板固有計測データは、マイクロトポロジデータ、レベルセンサプロセス依存データ、層厚プロファイルデータ、全体的基板形状および基板曲げデータのうちの1つ以上を含む、実施形態24に記載の方法。
26.前記最適化データは、
前記基板ステージおよび/または前記レチクルステージおよび/またはレンズ収差インパクトの、
移動平均エラー、および
エラーの時間移動標準偏差、
の好ましい比率を含む、実施形態1から25のいずれかに記載の方法。
27.前記最適化データは、前記性能パラメータの推定データを含む、実施形態1から26のいずれかに記載の方法。
28.前記最適化データは、以前に基板に提供された製品構造からの少なくとも1つの性能パラメータの測定に関する測定データを含む、実施形態1から27のいずれかに記載の方法。
29.前記基板固有計測データは、前記基板ステージおよび前記レチクルステージの一方または両方の位置に関するアライメントデータを含む、実施形態1から28のいずれかに記載の方法。
30.前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、放射システム出力帯域幅、および基板ステージおよび/またはレチクルステージ位置決めにおけるエラーのコントラスト移動標準偏差のうちの1つを含み、前記最適化ステップは、前記性能パラメータを最適化するように前記リソグラフィ装置の制御を最適化することを含む、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
31.前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、放射システム出力帯域幅、レンズ収差からのコントラスト、および基板ステージおよび/またはレチクルステージの位置決めにおけるエラーのコントラスト移動標準偏差の2つ以上を含み、前記最適化ステップは、前記リソグラフィプロセスの前記性能パラメータおよび/または関連する性能パラメータのそれぞれを最適化するように、前記リソグラフィ装置の制御を共最適化することを含む、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
32.前記関連する性能パラメータは、エッジ配置エラーを含む、実施形態31に記載の方法。
33.各プロセスパラメータは、多次元プロセスウィンドウの関連するプロセスウィンドウ軸を有し、当該方法は、プロセスウィンドウ軸の1つ以上を局所的に制限し、それにより、1つ以上の他のプロセスウィンドウ軸の設定点をシフトする、実施形態31または32に記載の方法。
34.前記基板固有計測データは、レンズ収差プロファイルをさらに含み、前記共最適化制御ステップは、前記レンズ収差プロファイルを使用して、前記リソグラフィ装置内のレンズ制御および/または前記関連する性能パラメータを最適化することを含む、実施形態31,32,または33に記載の方法。
35.前記最適化された制御に従って前記リソグラフィプロセスを制御することを含む、実施形態1から34のいずれかに記載の方法。
36.前記リソグラフィプロセスは、集積回路を製造するための製造プロセスの一部を形成する、基板上の単一層の露光を含む、実施形態1から35のいずれかに記載の方法。
37.リソグラフィプロセスで基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置を制御するための最適化データを決定する処理装置であって、
当該処理装置は、前記リソグラフィプロセスにおいて前記基板に適用される前記製品構造および/またはそれらの配置に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定および/またはシミュレーションされたデータを含む最適化データを決定するように構成され、前記最適化データは、前記リソグラフィプロセス中の前記リソグラフィ装置の制御を最適化する際に、基板固有計測データと組み合わせて前記リソグラフィ装置によって使用可能であり、前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、コントラスト放射システム出力帯域幅、および前記リソグラフィ装置の基板ステージおよび/またはレチクルステージ位置決めにおけるエラーのコントラスト移動標準偏差を含み、
当該処理装置は、前記最適化データを前記リソグラフィ装置に送信するよう構成される、処理装置。
38.前記少なくとも1つの性能パラメータはレンズ収差をさらに含む、実施形態37に記載の処理装置。
39.リソグラフィプロセスに対してオフラインで前記最適化データを決定するように動作可能である、実施形態37または38に記載の処理装置。
40.前記最適化データは、パターニングデバイスに関連付けられ、前記リソグラフィプロセスで前記基板に適用されるデバイスパターンを定義するデバイスレイアウトデータを含む、実施形態37から39のいずれかに記載の処理装置。
41.前記最適化データは、前記ダイの少なくとも1つの層に少なくとも1つの欠陥があると推定されるためどのダイが機能しないと見なされるかを示すデッドダイデータを含む、実施形態37から40のいずれかに記載の処理装置。
42.前記最適化データは、前記少なくとも1つのプロセスパラメータの1つまたは複数に関連する最適なパラメータ値データを含む、実施形態37から41のいずれかに記載の処理装置。
43.前記最適なパラメータ値データは、フィールド全体および/またはダイ全体の最適な焦点設定を表す最適な焦点マップを含む、実施形態42に記載の処理装置。
44.前記最適な焦点マップは、関連する製品レイアウトデータに従ってダイ内の予想される高さ変動を表すマイクロトポロジデータを含む、実施形態43に記載の処理装置。
45.前記最適なパラメータ値データは、フィールド全体および/またはダイ全体の最適なエネルギー設定を表す最適なエネルギーマップを含む、実施形態42、43または44に記載の処理装置。
46.前記最適化データは、前記少なくとも1つのプロセスパラメータの1つまたは複数の臨界データを含み、前記臨界データは、プロセスパラメータに関するフィールド全体および/またはダイ全体の許容変動空間を定義する、実施形態42から45のいずれかに記載の処理装置。
47.前記最適化データは、
前記基板ステージおよび/または前記レチクルステージおよび/またはレンズ収差インパクトの、
移動平均エラー、および
エラーの時間移動標準偏差、
の好ましい比率を含む、実施形態37から46のいずれかに記載の方法。
48.前記最適化データは、前記性能パラメータの推定データを含む、実施形態37から47のいずれかに記載の処理装置。
49.前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、またはエッジ配置エラーのうちの1つを含む、実施形態37から48のいずれかに記載の処理装置。
50.リソグラフィプロセスで基板に製品構造を提供するように構成されたリソグラフィ装置であって、
前記基板を保持するための基板ステージと、
パターニングデバイスを保持するためのレチクルステージと、
前記基板に製品構造を提供する前に、基板固有計測データを測定するように動作可能な計測システムと、
最適化データおよび前記基板固有計測データに基づいて、前記リソグラフィプロセス中に当該リソグラフィ装置の制御を最適化するように動作可能なプロセッサであって、前記最適化データは、前記リソグラフィプロセスで前記基板に適用される前記製品構造および/またはそれらの配置に関連する少なくとも1つの性能パラメータの測定および/またはシミュレーションされたデータを含む、プロセッサと、
を備える、リソグラフィ装置。
51.前記基板固有計測データは、前記基板の特性、前記パターニングデバイスの特性、前記基板ステージおよび前記レチクルステージの一方または両方の位置、または前記パターニングデバイス上のパターンを前記基板に転写するための放射ビームを提供する放射システムの特性、のうちの1つまたは複数を表す、実施形態50に記載のリソグラフィ装置。
52.前記プロセッサは、前記基板固有計測データの決定と前記基板への製品構造の提供との間の当該リソグラフィ装置の制御を最適化するように動作可能である、実施形態50または51に記載のリソグラフィ装置。
53.オフライン処理装置から前記最適化データを受信するように動作可能である、実施形態52に記載のリソグラフィ装置。
54.前記計測システムは、前記基板固有計測データを各基板について別々に測定するように動作可能であり、
前記プロセッサは、その基板の対応する基板固有計測データに基づいて、各基板について当該リソグラフィ装置の制御を個別に最適化するように動作可能である、
実施形態50から53のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
55.前記最適化データは、パターニングデバイスに関連し、前記基板に適用されるデバイスパターンを定義するデバイスレイアウトデータを含む、実施形態50から54のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
56.前記プロセッサは、前記最適化制御が、対応する制御目標値からの前記性能パラメータの最大偏差を最小化すること、および/または、前記プロセスパラメータの対応する許容変動空間のエッジからの前記性能パラメータの距離を最大化すること、を含むように構成される、実施形態50から55のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
57.前記プロセッサは、前記最適化制御が、ダイが機能することを示す仕様内であると推定される、基板上に設けられたダイの数を最大化することを含むように構成される、実施形態56に記載のリソグラフィ装置。
58.前記プロセッサは、前記最適化制御が、欠陥を含まないダイの数を最大化することを含むように構成される、実施形態57に記載のリソグラフィ装置。
59.前記最適化データは、前記ダイの少なくとも1つの層に少なくとも1つの欠陥があると推定されるためどのダイが機能しないと見なされるかを示すデッドダイデータを含む、実施形態57または58に記載のリソグラフィ装置。
60.前記最適化データは、前記少なくとも1つのプロセスパラメータの1つまたは複数に関連する最適なパラメータ値データを含み、前記制御目標値は、前記最適なパラメータ値データから導出されるか、または定義される、実施形態56から59のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
61.前記最適なパラメータ値データは、フィールド全体および/またはダイ全体の最適な焦点設定を表す最適な焦点マップを含む、実施形態60に記載のリソグラフィ装置。
62.前記最適な焦点マップは、関連する製品レイアウトデータによるダイ内の予想される高さ変動を表すマイクロトポロジデータを含む、実施形態61に記載のリソグラフィ装置。
63.前記最適なパラメータ値データが、フィールド全体および/またはダイ全体の最適なエネルギー設定を表す最適なエネルギーマップを含む、実施形態60、61、または62に記載のリソグラフィ装置。
64.前記最適化データは、前記少なくとも1つのプロセスパラメータの1つまたは複数の臨界データを含み、前記臨界データは、プロセスパラメータに関してフィールド全体および/またはダイ全体の許容変動空間を定義する、実施形態56から63のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
65.前記プロセッサは、a)対応する制御目標値に対する前記性能パラメータの局所的偏差と、b)対応する許容変動空間の局所的エッジとの間の最小距離を、最適化空間にわたって最大化するように構成される、実施形態64に記載のリソグラフィ装置。
66.前記プロセッサは、前記最適化制御が、前記最適化データを使用して、当該リソグラフィ装置の少なくとも1つの制御パラメータの最適化のためのメリット関数の重み付けを決定することを含むように構成される、実施形態50から65のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
67.前記少なくとも1つの制御パラメータは、前記基板ステージおよび/または前記レチクルステージの制御に関連し、それにより、前記レチクルステージに対する前記基板ステージの相対位置を制御する、実施形態66に記載のリソグラフィ装置。
68.当該リソグラフィ装置は、前記パターニングデバイスによってパターニングされた放射ビームを前記基板に投影するための投影システムをさらに含み、
前記少なくとも1つの制御パラメータは、前記投影システムの制御に関する、
実施形態66に記載のリソグラフィ装置。
69.前記基板固有計測データは基板高さ変動データを含む、実施形態50から68のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
70.前記基板固有計測データは、モデル化および/またはフィルタリングされた計測データを含む、実施形態50から69のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
71.前記基板固有計測データは、オフライン基板計測データを含む、実施形態50から70のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
72.前記オフライン基板固有計測データは、マイクロトポロジデータ、レベルセンサプロセス依存データ、層厚プロファイルデータ、基板全体形状データおよび基板曲げデータのうちの1つ以上を含む、実施形態71に記載のリソグラフィ装置。
73.前記基板固有計測データは、連続基板マップを含み、前記連続基板マップは、センサノイズ、センサ較正ドリフト、センサデータフィルタリングアーチファクト、スパースサンプリング制限および/または基板にわたるプロセスパラメータの変動をマッピングするサンプリングされた基板マップの有限センサスポットサイズ、の1つ以上を補正するモデルを含む、実施形態50から72のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
74.前記最適化データは、
前記基板ステージおよび/または前記レチクルステージおよび/またはレンズ収差インパクトの、
移動平均エラー、および
エラーの時間移動標準偏差、
の好ましい比率を含む、実施形態50から73のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
75.前記最適化データは、前記性能パラメータの推定データを含む、実施形態50から74のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
76.前記基板固有計測データは、前記基板ステージおよび前記レチクルステージの一方または両方の位置に関するアライメントデータを含む、実施形態50から75のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
77.前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、放射システム出力帯域幅、および基板ステージおよび/またはレチクルステージ位置決めにおけるエラーのコントラスト移動標準偏差のうちの1つを含み、
前記プロセッサは、前記最適化制御が、前記性能パラメータを最適化するように当該リソグラフィ装置の最適化制御を含むように構成される、
実施形態50から76のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
78.前記少なくとも1つの性能パラメータは、焦点、線量、オーバーレイ、放射システム出力帯域幅、レンズ収差からのコントラスト、および基板ステージおよび/またはレチクルステージの位置決めにおけるエラーのコントラスト移動標準偏差の2つ以上を含み、
前記プロセッサは、前記最適化制御が、前記リソグラフィプロセスの前記性能パラメータおよび/または関連する性能パラメータのそれぞれを最適化するように、当該リソグラフィ装置の制御を共最適化することを含むように構成される、
実施形態50から76のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
79.前記関連する性能パラメータは、エッジ配置エラーを含む、実施形態78に記載のリソグラフィ装置。
80.前記基板固有計測データは、レンズ収差プロファイルをさらに含み、
前記プロセッサは、前記共最適化制御が、前記レンズ収差プロファイルを使用して、当該リソグラフィ装置内のレンズ制御および/または前記関連する性能パラメータを最適化することを含むように構成される、実施形態78または79に記載のリソグラフィ装置。
81.前記処理装置は、前記リソグラフィ装置上の前記リソグラフィプロセスを制御するための前記最適化データを決定するように動作可能である、実施形態37から49のいずれかに記載の処理装置、および実施形態50から80のいずれかに記載のリソグラフィ装置。
82.適切な装置上で実行されたときに、実施形態1から36のいずれかの方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラム。
83.実施形態82のコンピュータプログラムを含む、非一過性のコンピュータプログラムキャリア。
【0065】
この開示の範囲内で、許容変動空間またはプロセスウィンドウの言及は、記載されているようなオーバーラップ・プロセスウィンドウおよび/またはN次元のプロセスウィンドウを含み得る(例えば、軸は、焦点、線量、オーバーレイ、コントラストなどの1つ以上を含み得る)。一実施形態では、プロセスウィンドウ追跡を使用することができる。これは、プロセスウィンドウの軸の1つ(または複数)を局所的に制限することで、別の1つまたは複数の軸の設定点をシフトする。プロセスウィンドウ追跡は、参照により本明細書に組み込まれるWO2016202559号に記載されている。すべての場合において、プロセスウィンドウ(またはより一般的には臨界メトリック)は、プロセスウィンドウ情報を決定するために、製品情報またはレチクル設計情報(露光される構造に関する)および/またはシミュレーションされた設計情報から決定される。
【0066】
リソグラフィ装置に関連して使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(たとえば、約365、355、248、193、157または126nmの波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射および極紫外線(EUV)放射(例えば、5~20nmの範囲の波長を有する)、並びにイオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームを包含する。
【0067】
「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気および静電光学部品を含む様々なタイプの光学部品のいずれか1つまたは組み合わせを指すことができる。
【0068】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的性質を十分に明らかにしているので、他者は、過度の実験なしに、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、具体的な実施形態に当該分野における知識の範囲内で容易に修正及び/又は適応できる。したがって、そのような適応及び変更は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味及び範囲内にあることを意図している。本明細書の用語又は用語は、本明細書の用語又は用語が教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく例による説明の目的のためであることを理解されたい。
【0069】
本発明の広さ及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。