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特許7304592金属酸化物、酸素吸脱着装置、酸素濃縮装置及び金属酸化物の製造方法
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  • 特許-金属酸化物、酸素吸脱着装置、酸素濃縮装置及び金属酸化物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】金属酸化物、酸素吸脱着装置、酸素濃縮装置及び金属酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/02 20060101AFI20230630BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20230630BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20230630BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20230630BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C01G45/02
C01B13/02 A
B01J20/08 C
B01J20/10 C
B01D53/14 311
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021543003
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032368
(87)【国際公開番号】W WO2021039904
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2019158461
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム「高速酸素吸脱着材料による革新的排熱利用酸素製造装置の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 怜
(72)【発明者】
【氏名】山原 圭二
(72)【発明者】
【氏名】本橋 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美和
(72)【発明者】
【氏名】田村 紗也佳
(72)【発明者】
【氏名】井関 知宏
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079090(JP,A)
【文献】特開2018-070396(JP,A)
【文献】HUANG, Xiubing et al,Oxygen storage capacity and thermal stability of brownmillerite-type Ca2(Al1-xGax)MnO5+δ oxides,Journal of Alloys and Compounds,2019年,810,151865,DOI: 10.1016/j.jallcom.2019.151865
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 45/02
C01B 13/02
B01J 20/08
B01J 20/10
B01D 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物であって、
該ブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶の(020)面に欠陥を有し、
酸素放出相の状態での粉末X線回折測定により得られる回折パターンにおいて、(141)面のピーク強度を100としたときの前記(020)面のピーク強度が、15.0以下である、金属酸化物。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn以外の3d遷移金属元素
0≦x≦2
0<y≦2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
【請求項2】
前記式(1)のAが、少なくともSrを含有する、請求項に記載の金属酸化物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属酸化物の製造方法であって、
下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物を、酸素分圧0.1kPa以上20.9kPa未満の雰囲気下で加熱する加熱工程を有する、金属酸化物の製造方法。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn以外の3d遷移金属元素
0≦x≦2
0<y<2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属酸化物を備えた、酸素吸脱着装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金属酸化物を備えた、酸素濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物、酸素吸脱着装置、酸素濃縮装置及び金属酸化物の製造方法に関する。
本願は、2019年8月30日に日本で出願された特願2019-158461号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
CaAlMnO5+δで表される金属酸化物は、ブラウンミラライト型と呼ばれるAの結晶構造をとり、多量の酸素を吸着・脱着できる金属酸化物である。この金属酸化物は、エネルギー生産や環境保護に関わる分野での研究が進められており、特に酸素吸脱着能を利用した大気からの酸素ガス濃縮器、ならびに酸素ガス製造システムへの適用に向け研究がなされている。近年では、装置実用化に向け、酸素ガス製造の運転温度を低下させるために、金属酸化物が酸素を吸着・脱着できる温度を下げる試みが行われている。
特許文献1には、CaAlMnO5+δの金属酸化物において、Caの一部をCa以外のアルカリ土類金属元素で置換し、さらに、Mnの一部をAl、Fe、Co又はGaで置換することにより、酸素の吸着・脱着が可能な温度を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-121829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、CaAlMnO5+δで表される金属酸化物において、該金属酸化物の構成元素以外の元素での置換を行うことにより、酸素の吸着・脱着が可能な温度を制御する研究が進められてきた。しかしながら、その他の手段によって酸素の吸着・脱着が可能な温度を変化させる検討は行われていない。
本発明の課題は、酸素の吸着・脱着が可能な温度を変化させることができる新たな金属酸化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、ブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶の(020)面に欠陥を有すること、及び/又はブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶のb軸長を特定の範囲内に調整することにより、酸素の吸着・脱着が可能な温度を変化させることができる金属酸化物を提供できることを見出し、本発明を達成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物であって、
該ブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶の(020)面に欠陥を有する、金属酸化物。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y≦2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
[2]
酸素放出相の状態での粉末X線回折測定により得られる回折パターンにおいて、(141)面のピーク強度を100としたときの前記(020)面のピーク強度が23.0未満である、[1]に記載の金属酸化物。
[3]
下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物であって、
空気気流下における酸素吸脱着の相転移温度が530℃以下である、金属酸化物。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y≦2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
[4]
前記ブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶のb軸長が14.500Å以上14.920Å以下である、[3]に記載の金属酸化物。
[5]
前記式(1)のAが、少なくともSrを含有する、[1]~[4]の何れかに記載の金属酸化物。
[6]
金属酸化物の製造方法であって、
下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物を、酸素分圧0.1kPa以上20.9kPa未満の雰囲気下で加熱する加熱工程を有する、金属酸化物の製造方法。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y<2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
[7]
[1]~[5]の何れかに記載の金属酸化物を備えた、酸素吸脱着装置。
[8]
[1]~[5]の何れかに記載の金属酸化物を備えた、酸素濃縮装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酸素の吸着・脱着が可能な温度を変化させることができる新たな金属酸化物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1~3及び比較例1における金属酸化物の粉末X線回折測定のXRDパターンである。
図2】実施例1~3及び比較例1における本焼成雰囲気中の酸素濃度と金属酸化物のb軸長との関係を示すグラフである。
図3】実施例1~3及び比較例1における金属酸化物のSEM観察像(図面代用写真)である。
図4】実施例1~3及び比較例1における熱重量分析の結果を示すグラフである。
図5】実施例1~3及び比較例1における本焼成雰囲気中の酸素濃度と相転移温度との関係を示すグラフである。
図6】実施例1~3及び比較例1における、金属酸化物結晶のb軸長と相変転移温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0010】
<1.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物>
<1-1.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の組成>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物であって、該ブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶の(020)面に欠陥を有する。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y≦2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
【0011】
ブラウンミラライト型結晶構造とは、Aの結晶構造を基本とし、特開2011-121829号公報の図1に示される構造(該図1の金属酸化物の組成は、CaAlMnO5+δである。)を有する結晶構造であり、Al及びMnが、それぞれ、四面体配位及び八面体配位を形成して交互に積層する。低温かつ酸化雰囲気中では、Al四面体層に過剰酸素を取り込み、最大で0≦δ≦0.5の酸素不定性比を示す。
【0012】
本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中のAは、1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素(第2族元素)であれば特段制限されず、Be、Mg、Sr、Ba、Raが挙げられる。これらの中でも、最大酸素吸着量、および作動温度の観点から、Mg、Sr、Baが好ましく、Mg及びSrがより好ましく、Srが特に好ましい。
本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中のxは、0≦x≦2の範囲を満たせば特段制限されないが、資源的に豊富なCaの含有量が多い方がコストの面で有利であり、また、1モル当たりの質量が軽くなる観点から、0≦x≦0.5であることが好ましく、0≦x≦0.3であることがより好ましく、0≦x≦0.2であることが特に好ましく、x=0であることが最も好ましい。
なお、Aとして2種以上の元素を用いた場合、例えば、Sr及びBaを用いた場合、AをSrx1Bax2と表すことができ、x1+x2=xとなる態様で用いることができる。
【0013】
本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中のEは、1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素であれば特段制限されない。Mn以外の3d遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、又はZnが挙げられ、Al以外の土類金属元素としては、Ga、In、又はTlが挙げられる。これらのうち、酸素の吸着・脱着特性の発現の観点、および原料コストの観点からは、Eは、3d遷移金属元素であることが好ましい。3d遷移金属元素の中でも、Eは、Ti、V、Cr、Fe、Co、又はNiであることが好ましく、Fe、Co、又はNiであることがより好ましく、Feであることが特に好ましい。また、酸素吸着・脱着温度を低温化する観点からは、Eは、土類金属元素であることが好ましい。土類金属元素の中でも、Eは、Ga、In、又はTlであることが好ましく、Gaであることがより好ましい。上述した3d遷移金属元素及び土類金属元素のうち、上記式(1)中のAlは、Gaに置換されることが特に好ましい。
【0014】
本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中のy及びzは、0<y≦2、0≦z<2、0<y+z≦2の範囲を満たせば特段制限されない。酸素の吸着・脱着特性の発現の観点からは、0.25≦y≦1.75であることが好ましく、0.5≦y≦1.5であることがより好ましく、0.75≦y≦1.25であることがさらに好ましく、y=1であることが特に好ましい。また、0.25≦z≦1.75であることが好ましく、0.5≦z≦1.5であることがより好ましく、0.75≦z≦1.25であることがさらに好ましく、z=1であることが特に好ましい。さらに、y=1であり、かつ、z=1であることが最も好ましい。
【0015】
Eとして2種以上の元素を用いた場合、例えば、Fe及びCoを用いた場合、E2-y-zをFe(2-y-z)aCo(2-y-z)bと表すことができ、(2-y-z)a+(2-y-z)b=(2-y-z)となる態様で用いることができる。
また、本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中、0.8≦w≦1.2である。これは、MnやAlのサイトに入る元素の総モル量は、CaとAのモル数の合計を2.0としたときに1.6以上2.4以下、つまりストイキオメトリ組成から2割程度の範囲ずれていてもよいことを示している。上記wの条件を満たせば、酸素の吸着・脱着特性は十分に得られるが、好ましくは0.85≦w≦1.15であり、より好ましくは0.9≦w≦1.1である。
【0016】
本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中のδは、0≦δ≦0.5の範囲を満たせば特段制限されない。金属酸化物が、CaAlMnO5+δで表される場合において、δ=0(CaAlMnO)の場合の結晶構造は、特開2011-121829号公報の図2(a)に示される構造となる。また、δ=0.5(CaAlMnO5.5)の場合の結晶構造は、上記文献の図2(b)に示される構造となる。
ブラウンミラライト型の結晶構造は、二次元的な酸素イオンパスとなる酸素欠損層を含んでおり、この酸素欠乏層が、より穏和な環境での酸素の吸着・脱着に大きく寄与していると考えられる。また、δは、雰囲気や温度等の外部環境に応じ、0~0.5の範囲で、連続的に変化する。
【0017】
なお、本発明の第1の実施形態において、上記式(1)中のAはCaサイトに置換しており、EはMnサイト又はAlサイトに置換している。ただし、本発明の効果を損なわない範囲で、AがMnサイト又はAlサイトに置換していてもよく、EがCaサイトに置換していてもよく、A及びE以外の不可避不純物元素のイオンがCaサイト、Mnサイト、又はAlサイトに置換していてもよい。また、Ca、Mn、Alが、他のサイトに置換していてもよい。
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲でドーパントを含有してもよく、ドーパントを含有していなくてもよい。ドーパントとしては、例えば周期表の15族の半金属元素であるBi、As、又はSbが挙げられる。これらのうち、AsやSbよりも酸素の吸着・脱着温度を下げることができ、かつ、毒性が少ないという観点から、Biが好ましい。
【0019】
本発明の第1の実施形態では、ドーパントの含有量を調整することによっても、酸素の吸着・脱着が可能な温度を制御することができる。ドーパントの含有量、すなわち、前記式(1)中のCa、A、Mn、Al、及びEのモル量の合計に対する、ドーパントの合計のモル量は、酸素の吸着・脱着温度低減の観点から、0.25モル%以上であることが好ましく、0.50モル%以上であることがより好ましく、1.0モル%以上であることが特に好ましく、また、25モル%以下であることが好ましく、12.5モル%以下であることがより好ましく、5.0モル%以下であることがさらに好ましく、3.0モル%以下であることが特に好ましい。
また、Biをドープする場合、ドープしない場合よりも、金属酸化物の酸素の吸着・脱着が可能な温度が低下するため好ましい。
これらの組成は、ICP又はEDXにより定量することができる。組成分析の精度を高める点ではICPが好ましく、簡易に組成が求められる点ではEDXが好ましい。
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、エネルギー生産や環境保護に関わる分野で用いることができ、例えば、酸素ガスを濃縮する際の触媒、燃料電池の正極材料等として利用することができる。
【0021】
<1-2.面欠陥>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、ブラウンミラライト型マンガン酸化物の結晶の(020)面に欠陥を有する。このように、結晶中の特定面に欠陥構造が導入されていることにより、金属酸化物の相転移温度をより低温域に制御することができる。
ここで、本明細書において、相転移温度とは、50%酸素吸着温度と50%酸素脱離温度との中間温度をいう。50%酸素吸着温度とは、降温過程の最大酸素吸着量を100質量%とした場合において、金属酸化物中の酸素吸着量が50質量%に増加した時点の温度である。一方、50%酸素脱着温度とは、昇温過程の最大酸素吸着量を100質量%とした場合において、金属酸化物中の酸素吸着量が50質量%に減少した時点の温度である。つまり、相転移温度とは、酸素の吸着・脱着の双方を有効に発現可能な温度であり、酸素吸脱着材料として利用できる動作温度の目安となる。すなわち、上記相転移温度を評価することによって、酸素吸脱着装置や酸素濃縮装置等の設計に反映することができる。
【0022】
本発明の第1の実施形態の特徴は、上述した金属酸化物の結晶相が、(020)面に欠陥を有することにある。すなわち、本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、上記一般式(1)で表されることに加えて、該結晶相の(020)面に欠陥を有することに一つの特徴がある。結晶の(020)面中の欠陥導入は、以下に述べるように、粉末X線回折(XRD)測定により評価することができる。ここで、面欠陥の評価は、不活性雰囲気中、700℃以上800℃以下での加熱を行うことにより、金属酸化物を酸素放出相の状態(すなわち、酸素脱着状態)にした上で行われる。(020)面へ欠陥が導入された場合、XRD測定によって得られた回折パターン中、(020)面へ帰属される回折線の強度が、欠陥導入に応じて減少することが確認できる。より具体的には、最もピーク強度が高い(141)面に帰属される回折線に対する(020)面に帰属される回折線の相対強度比を算出することで、(020)面への欠陥導入を確認できる。換言すれば、相対強度比とは(141)面のピーク強度を100としたときの(020)面のピーク強度を指す。上記より算出した相対強度比が、23.0未満である場合、(020)面へ欠陥が導入されているものとする。かかる相対強度比が小さいほど、(020)面への欠陥の導入量が多い。より具体的には、(020)面への欠陥の導入量増加及びそれに伴う相転移温度低温化の観点から、相対強度比は、好ましくは15.0以下、より好ましくは12.0以下、さらに好ましくは6.0以下、特に好ましくは4.0以下である。なお、相対強度の下限は特に制限されず、通常0超である。
【0023】
一方、相対強度比が23.0以上である場合は、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物であるものとして定義する。ただし、本明細書において、金属酸化物の格子定数、酸素吸着量、相転移温度等の各種評価における基準物質として言及する「(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物」は、<4.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>の項目で述べる加熱工程を真空雰囲気下、又は不活性雰囲気下で行うことにより得られたブラウンミラライト型マンガン酸化物を指すものとする。
【0024】
<1-3.格子定数>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の結晶の格子定数は、特段制限されないが、後述する本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の格子定数であることが好ましい。すなわち、本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の好適な態様において、結晶の格子定数は、下記の通りである。なお、格子定数の評価は、不活性雰囲気中、700℃以上800℃以下での加熱を行うことにより、金属酸化物を酸素放出相の状態(すなわち、酸素脱着状態)にした上で、XRD測定により行われる。
a軸長は、通常5.400Å以上、好ましくは5.410Å以上、また、通常5.465Å以下、好ましくは5.460Å以下、より好ましくは5.440Å以下、さらに好ましくは5.435Å以下である。本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物のa軸長は、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物のa軸長と大差はない。より詳細には、本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物のa軸長は、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物のa軸長に対し、通常98.0%以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは98.9%以上、また、通常100.0%以下、好ましくは99.9%以下、より好ましくは99.5%以下、さらに好ましくは99.4%以下である。
b軸長は、通常14.500Å以上、好ましくは14.750Å以上であり、また、通常15.000Å未満、好ましくは14.950Å以下、より好ましくは14.920Å以下、さらに好ましくは14.900Å以下、特に好ましくは14.880以下、最も好ましくは14.850Å以下である。b軸上が上記範囲内であることにより、金属酸化物の相転移温度を低下させることができる。また、後述する実施例で示すように、b軸長は、a軸長やc軸長よりも面欠陥の影響を受け易く、面欠陥の導入量が多くなるにつれて短くなる。しかるに、本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物のb軸長は、面欠陥の導入量にもよるが、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物のb軸長に対し、通常96.6%以上、好ましくは98.3%以上、また、通常100%未満、好ましくは99.7%以下、より好ましくは99.5%以下、さらに好ましくは99.4%以下、特に好ましくは99.0%以下である。なお、面欠陥の導入量の増加によるb軸の減少に伴い、格子体積も小さくなる。
c軸長は、通常5.239Å以上、好ましくは5.240Å以上、より好ましくは5.245Å以上、さらに好ましくは5.250Å以上、また、通常5.270Å以下、好ましくは5.260Å以下である。本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物のc軸長は、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物のc軸長と大差はない。より詳細には、本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物のc軸長は、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物のc軸長に対し、通常99.0%以上、好ましくは100.0%以上、より好ましくは100.2%以上、また、通常101.0%以下、より好ましくは100.6%以下、さらに好ましくは100.5%以下である。
【0025】
<1-4.平均一次粒子径>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の平均一次粒子径は、特に制限されない。酸素吸脱着速度の観点から、体積基準の平均一次粒子径で、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。一方、粒子径の減少により比表面積が増加し、酸素の吸脱着速度が向上するため、平均一次粒子径の下限を設けることは要しないが、取り扱い性の観点から、通常1nm以上である。
【0026】
平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば5000~100000倍の倍率のSEM写真、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0027】
<1-5.比表面積>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の比表面積は、特に制限されない。酸素吸脱着速度の観点から、0.1m/g以上であることが好ましく、1m/g以上であることがより好ましく、10m/g以上であることが特に好ましい。一方、比表面積が高いほど酸素の吸脱着速度が向上するため、比表面積の上限を設けることは要しないが、通常200m/g以下である。
【0028】
比表面積はBET法により測定でき、例えば、マイクロメリティックス社製 トライスターII3000を用いて測定することができる。具体的には、金属酸化物を150℃で1時間減圧乾燥した後、窒素ガス吸着によるBET多点法(相対圧0.05~0.30の範囲において5点)により測定することができる。
【0029】
<1-6.形状>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、その取扱い性を向上させたり、装置への充填時の強度や、ガスの流通しやすさを考えて、造粒したり、あるいは適当な形状に成形したりして用いてもよい。
【0030】
<2.本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物>
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物は、ブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物であって、空気気流下における酸素吸脱着の相転移温度が530℃以下である。
【0031】
<2-1.本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の組成>
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物は、下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物である。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y≦2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
【0032】
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の組成、すなわち、上記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物の組成の説明としては、<1-1.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の組成>の項目における、式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物からなる金属酸化物の組成の説明を援用する。
【0033】
<2-2.本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の相転移温度>
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物においては、空気気流下における酸素吸脱着の相転移温度が530℃以下である。この相転移温度の定義としては、<1-2.面欠陥の組成>の項目における相転移温度の説明を援用する。
この相転移温度が530℃以下であることによって、金属酸化物を利用した酸素吸脱着装置酸素濃縮装置の運転温度を低下させることができ、これらのエネルギー原単位の低減に寄与できるとともに、これら装置の耐熱性や耐久性の問題を解消させることができる。金属酸化物の相転移温度は、好ましくは500℃以下であり、より好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは450℃以下である。金属酸化物の相転移温度は、特に制限されず、通常300℃程度以上である。
【0034】
<2-3.格子定数>
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の結晶の格子定数は、下記の通りである。なお、格子定数の評価は、不活性雰囲気中、700℃以上800℃以下での加熱を行うことにより、金属酸化物を酸素放出相の状態(すなわち、酸素脱着状態)にした上で、XRD測定により行われる。
a軸長は、通常5.400Å以上、好ましくは5.410Å以上、また、通常5.465Å以下、好ましくは5.460Å以下、より好ましくは5.440Å以下、さらに好ましくは5.435Å以下である。本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物のa軸長は、b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物のa軸長と大差はない。より詳細には、本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物のa軸長は、b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物のa軸長に対し、通常98.0%以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは98.9%以上、また、通常100.0%以下、好ましくは99.9%以下、より好ましくは99.5%以下、さらに好ましくは99.4%以下である。
b軸長は、通常14.500Å以上、好ましくは14.750Å以上であり、また、通常15.000Å未満、好ましくは14.950Å以下、より好ましくは14.920Å以下、さらに好ましくは14.900Å以下、特に好ましくは14.880以下、最も好ましくは14.850Å以下である。b軸上が上記範囲内であることにより、金属酸化物の相転移温度を低下させることができる。本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物のb軸長は、b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物のb軸長に対し、通常96.6%以上、好ましくは98.3%以上、また、通常100%未満、好ましくは99.7%以下、より好ましくは99.5%以下、さらに好ましくは99.4%以下、特に好ましくは99.0%以下である。
c軸長は、通常5.239Å以上、好ましくは5.240Å以上、より好ましくは5.245Å以上、さらに好ましくは5.250Å以上、また、通常5.270Å以下、好ましくは5.260Å以下である。本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物のc軸長は、b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物のc軸長と大差はない。より詳細には、本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物のc軸長は、b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物のc軸長に対し、通常99.0%以上、好ましくは100.0%以上、より好ましくは100.2%以上、また、通常101.0%以下、より好ましくは100.6%以下、さらに好ましくは100.5%以下である。
【0035】
なお、本明細書において、金属酸化物の格子定数、酸素吸着量、相転移温度等の各種評価における基準物質として言及する「b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物」は、<5.本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>の項目で述べる加熱工程を真空雰囲気下、又は不活性雰囲気下で行うことにより得られたブラウンミラライト型マンガン酸化物を指すものとする。
【0036】
<2-4.その他物性>
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の平均一次粒子径、比表面積、及び形状の説明としては、それぞれ、<1-4.平均一次粒子径>、<1-5.比表面積>、及び<1-6.形状>の説明を援用する。
【0037】
<3.金属酸化物の評価>
<3-1.金属酸化物の組成分析>
以下の方法により、本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物中の各元素の含有量を測定することにより、金属酸化物の組成を分析することができる。
【0038】
<3-1-1.金属元素の分析>
本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物(Ca2-x)(MnAl2-y-z)O5+δ中の金属元素の組成、つまり、(Ca2-x)(MnAl2-y-z)の組成を求めるための測定方法は特段制限されないが、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析(ICP分析)により測定することができる。プラズマ発光分光分析装置としては、例えば、JOBIN YVON社製のICP-AES「JY46P型」を用いることができる。
【0039】
<3-1-2.酸素元素の分析>
本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物(Ca2-x)(MnAl2-y-z)O5+δ中の酸素元素の組成、つまり、O5+δの組成を求めるための測定方法は、特段制限されないが、例えば、ヨウ素滴定により測定することができる。
【0040】
<3-2.粉末X線回折測定>
粉末X線回折(XRD)測定により、本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物の結晶の結晶構造、面欠陥、及び格子定数を評価することができる。当該測定の方法は特段制限されないが、例えば、UltimaIV Protectus(rigaku社製)を用い、下記の条件で測定することができる。
線源:CuKα(λ=1.541836Å)
測定範囲:2θが10°から90°の角度
測定間隔:0.02°
測定速度:5°/min
電圧:40kV
電流:40mA
【0041】
<3-3.SEM観察及びSEM-EDX>
上述したように、SEMを用いることにより、本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物の平均粒子径を評価することができる。
また、本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物が置換元素やドーパントを含有する場合は、SEM-EDXを用いることにより、金属酸化物中のドーパントの分布状態を評価することができる。SEM-EDXの測定条件は特段制限されないが、例えば、装置としてEMAX X-act(HORIBA製)を用い、加圧電圧15kVにおいて、含有元素についてのマッピングを行うことで測定できる。
【0042】
<3-4.TG>
熱重量分析(TG)装置を用いることにより、本発明の第1又は第2の金属酸化物の酸素吸着量、及び相転移温度の測定を行うことができる。TGの測定条件は特段制限されないが、例えば、装置としてTG-8120(Rigaku社製)を用い、空気気流下(酸素分圧101kPa、流量400ml/min)、室温(25℃)から800℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、次いで800℃から室温まで降温速度5℃/minで降温させ、その間の重量変化を計測することにより測定できる。
【0043】
<4.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物は、下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物を、酸素分圧0.1kPa以上20.9kPa未満(ゲージ圧)の雰囲気下で加熱する加熱工程を経ることにより製造することができる(以下、加熱工程を経る前のブラウンミラライト型マンガン酸化物を「ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)」と称することがある。)。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y<2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
【0044】
まず、ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)の製造方法について説明する。ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)は、公知の金属酸化物の製造方法により製造することができる。公知の金属酸化物の製造方法としては、例えば、特開2011-121829号公報に記載の方法が挙げられる。ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)の製造方法の一例を以下に示す。
【0045】
出発原料として、カルシウム含有化合物、アルミニウム含有化合物、マンガン含有化合物、並びに必要に応じてA含有化合物、E含有化合物、及びドーパント元素含有化合物を、純水に溶解して硝酸塩水溶液(水溶液A)を調製する。また、クエン酸を純水に溶解して、クエン酸水溶液(水溶液B)を別途調製する。
次いで、撹拌下の水溶液Aに、水溶液Bを加え、得られた混合溶液を加熱し、金属クエン酸錯体を前駆体として得る。この得られた前駆体を加熱(一次仮焼成)し、有機物を燃焼させた黒色粉末を得る。この得られた黒色粉末を粉砕した後、より高温での加熱(二次仮焼成)を行うことで、式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)が得られる。
なお、上記のように、原料を溶液に溶解させる方法を採用する場合、前記カルシウム含有化合物、アルミニウム含有化合物、マンガン含有化合物、並びにA含有化合物、E含有化合物、及びドーパント元素含有化合物としては、塩化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、酢酸塩、炭酸塩、水酸化物等が挙げられ、生成物の組成制御の観点から、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩であることが好ましく、特に硝酸塩であることが好ましい。上記出発原料がこれら塩である場合、金属酸化物の製造に伴う副生成物は、窒素、酸素、塩素、炭素、硫黄等を含有するガス、および水であるため、容易に系外に排除できる。
【0046】
次に、加熱工程について説明する。加熱工程では、ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)を、酸素分圧0.1kPa以上20.9kPa未満の条件下で加熱(本焼成)することで、ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)の(020)面に欠陥が導入される。このように結晶に面欠陥が導入された金属酸化物は、(020)面に欠陥を有しないブラウンミラライト型マンガン酸化物と比較して低い相転移温度を示す。例えば、後述する実施例で示すように、酸素分圧1.0kPa、2.0kPa、又は5.0kPaで本焼成を行って得られるCaAlMnO5+δの相転移温度は、真空条件下(すなわち、酸素分圧0kPa)で本焼成を行って得られるCaAlMnO5+δの相転移温度と比較して、それぞれ、約30℃、約69℃、又は約102℃低い。このように低い相転移温度を有する金属酸化物は、酸素の吸着・脱着に必要なエネルギーを低減することができるだけでなく、一般的な酸素吸脱着装置、酸素濃縮装置等に使用する場合には、金属酸化物を充填するカラム(例えば、ステンレス管)の耐熱温度未満での酸素の吸脱着が可能であるため、実用性が高い。
【0047】
本焼成の際の酸素分圧は、上述の通り、通常0.1kPa以上20.9kPa未満である。酸素分圧を上記範囲内とすることで、面欠陥が十分に導入されるため、相転移温度を低下させることができる。さらに、最大酸素吸着量の低下を抑制する観点からは、酸素分圧は、好ましくは10.0kPa以下、より好ましくは5.0kPa以下、さらに好ましくは2.0kPa以下である。相転移温度をより低下させる観点からは、酸素分圧は、好ましくは0.5kPa以上、より好ましくは1.0kPa以上、さらに好ましくは2.0kPa以上である。
【0048】
本焼成の条件は、酸素分圧が上述の範囲内である限り、その他の条件は特段制限されないが、本焼成を行う雰囲気(以下、「本焼成雰囲気」と称することがある。)は、不純物相低減の観点から、酸素-不活性ガス混合雰囲気、又は酸素含有減圧雰囲気であることが好ましい。ここで、酸素含有減圧雰囲気とは、例えば、加熱炉内が全圧10.0kPaの純酸素ガス雰囲気の場合、全圧と酸素分圧とが等しくなり、酸素分圧10.0kPa雰囲気となる。あるいは、例えば、大気を導入した加熱炉を全圧10.0kPaへ減圧した場合は、酸素分圧が2.1kPaとなる。本焼成雰囲気が酸素含有減圧雰囲気の場合、減圧雰囲気下で焼成するための製造設備が必要となるため、設備費や減圧処理に要する電力使用の観点から、本焼成雰囲気が大気圧程度となるよう、酸素と不活性ガスとが混合された酸素-不活性ガス混合雰囲気下で本焼成を行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス;ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガス;等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、不活性ガスは、窒素ガスであることが好ましい。
【0049】
なお、酸素-不活性ガス混合雰囲気下、大気圧(100kPa)で本焼成を行う場合、本焼成雰囲気を、酸素分圧に代え、酸素濃度で表すことがある。この場合、本焼成雰囲気における酸素濃度は、通常0.1体積%以上20.9体積%未満であり、最大酸素吸着量を増加させる観点からは、好ましくは10.0体積%以下、より好ましくは5.0体積%以下、さらに好ましくは2.0体積%以下である。また、酸素濃度は、相転移温度を低下させる観点からは、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1.0体積%以上、さらに好ましくは2.0体積%以上である。
【0050】
加熱工程において、本焼成における焼成温度は特段制限されないが、不純物相低減の観点から、800℃以上であることが好ましく、850℃以上であることがより好ましく、900℃以上であることが特に好ましい。また、高温焼成に伴う焼結による比表面積の低下を抑制する観点から、1300℃以下であることが好ましく、1250℃以下であることがより好ましく、1200℃以下であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物のb軸長を上述の好適な範囲内とする場合、b軸長を調整する方法としては、例えば、後述する<5.本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>における加熱工程が挙げられる。かかる加熱工程は、本発明の第1の実施形態における加熱工程と同様の条件下での本焼成により行われる。そのため、ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)の結晶の(020)面に欠陥を導入するための加熱工程によって、b軸長を14.500Å以上15.000Å未満に調整することも可能である。すなわち、本実施形態においては、b軸長を調整するための工程を別途備えることなく、b軸長を上記範囲内に調整することができる。
【0052】
<5.本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>
本発明の第2の実施形態に係る金属酸化物は、下記式(1)で表されるブラウンミラライト型マンガン酸化物を、酸素分圧0.1kPa以上20.9kPa未満(ゲージ圧)の雰囲気下で加熱する加熱工程を経ることにより製造することができる(以下、加熱工程を経る前のブラウンミラライト型マンガン酸化物を「ブラウンミラライト型マンガン酸化物(II)」と称することがある。)。
(Ca2-x)(MnAl2-y-z5+δ (1)
上記式(1)において、
A:1種又は2種以上のCa以外のアルカリ土類金属元素
E:1種又は2種以上のMn及びAl以外の3d遷移金属元素又は土類金属元素
0≦x≦2
0<y<2、0≦z<2、0<y+z≦2
0≦δ≦0.5
0.8≦w≦1.2
を表す。
【0053】
ブラウンミラライト型マンガン酸化物(II)の製造方法の説明としては、<4.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>における、ブラウンミラライト型マンガン酸化物(I)の製造方法の説明を援用する。
【0054】
以下、加熱工程について説明する。ブラウンミラライト型マンガン酸化物(II)の結晶は、b軸長が15.000Å以上であるところ、ブラウンミラライト型マンガン酸化物(II)を酸素分圧0.1kPa以上20.9kPa未満の条件下で加熱(本焼成)することで、空気気流下における酸素吸脱着の相転移温度が530℃以下のブラウンミラライト型マンガン酸化物を得ることができ、好ましくはb軸長が14.500Å以上14.920Å以下のブラウンミラライト型マンガン酸化物を得ることができる。このように結晶のb軸長が調整された金属酸化物は、b軸長が15.000Å以上のブラウンミラライト型マンガン酸化物と比較して低い相転移温度を示す。例えば、後述する実施例で示すCaAlMnO5+δの相転移温度は、b軸長が15.008ÅのCaAlMnO5+δの相転移温度と比較して、30℃以上低い。このように低い相転移温度を有する金属酸化物は、酸素の吸着・脱着に必要なエネルギーを低減することができるだけでなく、一般的な酸素吸脱着装置、酸素濃縮装置等に使用する場合には、金属酸化物を充填するカラム(例えば、ステンレス管)の耐熱温度未満での酸素の吸脱着が可能であるため、実用性が高い。
【0055】
本焼成の際の酸素分圧は、上述の通り、通常0.1kPa以上20.9kPa未満である。酸素分圧を上記範囲内とすることで、金属酸化物のb軸長が上記範囲内に制御されるため、相転移温度を低下させることができる。さらに、最大酸素吸着量を増加させる観点からは、酸素分圧は、好ましくは10.0kPa以下、より好ましくは5.0kPa以下、さらに好ましくは2.0kPa以下である。相転移温度をより低下させる観点からは、酸素分圧は、好ましくは0.5kPa以上、より好ましくは1.0kPa以上、さらに好ましくは2.0kPa以上である。
【0056】
本焼成の際の酸素分圧は、金属酸化物のb軸長に与える影響が大きく、酸素分圧が上記範囲内において高いほどb軸長が短くなる傾向がある。一方、a軸長及びc軸長は、酸素分圧を上記範囲内で変化させても、大きく変化しない。そのため、酸素分圧の増加によるb軸長の減少に伴い、格子体積も小さくなる。
【0057】
本焼成における酸素濃度、本焼成雰囲気、及び焼成温度等の条件は、<4.本発明の第1の実施形態に係る金属酸化物の製造方法>の項目中の本焼成における条件と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0058】
<6.酸素吸脱着装置>
本発明の第3の実施形態に係る酸素吸脱着装置は、本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物を用いた酸素吸脱着装置である。
酸素吸脱着装置の態様は、特段制限されないが、例えば、酸素吸着が生じる温度以下で金属酸化物に酸素を吸着させ、酸素脱着が生じる温度以上で金属酸化物から酸素を脱着させる態様とすることができる。製品酸素量の観点から、金属酸化物に酸素を吸着させる温度は、300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることが特に好ましく、また、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、600℃以下であることが特に好ましい。さらには、運転温度を低下させて実用性の向上、装置寿命の長期化等を図る観点から、金属酸化物に酸素を脱着させる温度は、580℃以下であることが好ましく、550℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましく、450℃以下であることが特に好ましい。
【0059】
また、上記のように温度の上下動を利用した態様のみでなく、例えば、300℃以上700℃以下において、酸素分圧が0kPaより大きく100kPa以下となる範囲で前記金属酸化物に酸素を吸着させ、酸素分圧100kPa未満かつ酸素吸着時より酸素分圧が低い圧力下で前記金属酸化物から酸素を脱着(放出)させる、酸素分圧の上下動による酸素吸脱着を利用した態様とすることができる。この場合、酸素吸着量の観点から、酸素を吸着させる酸素分圧は5kPa以上であることが好ましく、10kPa以上であることがより好ましく、15kPa以上であることが特に好ましい。また、酸素脱着量の観点から酸素を脱着させる酸素分圧は吸着時の酸素分圧との差が大きいほど好ましい。
【0060】
<7.酸素濃縮装置>
本発明の第4の実施形態に係る酸素濃縮装置は、本発明の第1又は第2の実施形態に係る金属酸化物を用いた酸素濃縮装置である。
酸素濃縮装置の態様は、特段制限されないが、例えば、酸素吸着が生じる温度以下で金属酸化物に酸素を吸着させ、酸素吸着が生じる温度以上で金属酸化物から酸素を脱着させることにより、酸素を濃縮する態様とすることができる。製品酸素量の観点から、金属酸化物に酸素を吸着させる温度は、300℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることが特に好ましく、また、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、600℃以下であることが特に好ましい。さらには、運転温度を低下させて実用性の向上、装置寿命の長期化等を図る観点から、金属酸化物に酸素を脱着させる温度は、580℃以下であることが好ましく、550℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましく、450℃以下であることが特に好ましい。
【0061】
また、上記のように温度の上下動を利用した態様のみでなく、例えば、300℃以上700℃以下において、酸素分圧が0kPaより大きく100kPa以下となる範囲で前記金属酸化物に酸素を吸着させ、酸素分圧100kPa未満かつ酸素吸着時より酸素分圧が低い圧力下で前記金属酸化物から酸素を脱着(放出)させる、酸素分圧の上下動による酸素吸脱着を利用した態様とすることができる。この場合、酸素吸着量の観点から、酸素を吸着させる酸素分圧は5kPa以上であることが好ましく、10kPa以上であることがより好ましく、15kPa以上であることが特に好ましい。また、酸素脱着量の観点から酸素を脱着させる酸素分圧は吸着時の酸素分圧との差が大きいほど好ましい。
【実施例
【0062】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
<実施例1>
出発原料として、硝酸カルシウム四水和物、硝酸アルミニウム九水和物、及び硝酸マンガン(II)六水和物を、モル比でCa:Al:Mn=2:1:1となるように秤量し、純水に溶解して、硝酸塩水溶液を調製した(水溶液A)。総金属モル量の1.0倍モル以上のクエン酸一水和物を秤量し、純水に溶解して、クエン酸水溶液を作製した(水溶液B)。撹拌下の水溶液Aに、水溶液Bを全量添加し、その後50℃以上の温度で加熱し、ゲル状の前駆体とした。得られた前駆体を大気雰囲気下450℃で1時間加熱(一次仮焼成)することにより、有機物を燃焼させ黒色粉末を得た。得られた黒色粉末を乳鉢と乳棒で粉砕した後、アルミナ製坩堝へ移し、大気雰囲気下のマッフル炉中、900℃で焼成(二次仮焼成)した。
【0064】
次いで、気密性の高い電気炉を用い、酸素1.0体積%-窒素99体積%混合雰囲気中、大気圧下で、1000℃での加熱(本焼成)を行った。その後、雰囲気を窒素に保ったまま室温まで冷却し電気炉から処理物を取り出すことで、粉末状の金属酸化物(CaAlMnO5+δ)を得た。
【0065】
<実施例2>
本焼成雰囲気を酸素2.0体積%-窒素98体積%混合雰囲気に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粉末状の金属酸化物(CaAlMnO5+δ)を得た。
【0066】
<実施例3>
本焼成雰囲気を酸素5.0体積%-窒素95体積%混合雰囲気に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粉末状の金属酸化物(CaAlMnO5+δ)を得た。
【0067】
<比較例1>
本焼成雰囲気を真空雰囲気へ変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粉末状の金属酸化物(CaAlMnO5+δ)を得た。
【0068】
<粉末X線回折測定>
実施例1~3及び比較例1で得た金属酸化物を、窒素雰囲気下700℃で12時間焼成することにより酸素放出相の状態とし、粉末X線回折測定を行った。測定範囲は2θが10°から60°の角度で行った。使用した装置とX線の条件は、以下の通りである。
装置:UltimaIV Protectus(Rigaku社製)
線源:CuKα(λ=1.541836Å)
測定範囲:2θが10°から90°の角度
測定間隔:0.02°
測定速度:5°/min
電圧:40kV
電流:40mA
長手制限スリット:10mm
入射スリット:1°
発散スリット:1°
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
【0069】
実施例1~3及び比較例1で得た金属酸化物のXRDパターンを図1に示す。いずれのXRDパターンにおいても、強度の強い全ての回折線を、Orthorhombicのブラウンミラライト型と同じ単位格子の回折線に帰属することができ、明確な不純物ピークは確認されなかった。
また、図1により、本焼成雰囲気中の酸素濃度が0体積%から5.0体積%に増加するにつれて、2θ=12°付近の(020)面に帰属される回折ピークの強度が減少することが示された。より具体的には、比較例1、実施例1、実施例2及び実施例3で得た金属酸化物のXRDパターンにおいて、(141)面に帰属される回折線に対する(020)面に帰属される回折線の相対強度比は、それぞれ、23.8、11.8、5.81及び3.72であることが確認された。すなわち、実施例1~3で得た金属酸化物は、結晶の(020)面に欠陥を有していることが確認された。
【0070】
XRD測定より求めた、各金属酸化物の結晶のa軸長、b軸長、c軸長、及び格子体積を表1に示す。特にb軸長に大きな変化が見られ、本焼成雰囲気中の酸素濃度が0体積%から5.0体積%に増加するにつれて、b軸長が減少することが確認された。また、本焼成雰囲気中の酸素濃度とXRD測定より求めたb軸長との関係を図2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<SEM観察>
実施例1~3及び比較例1で得た金属酸化物を、窒素雰囲気下700℃で12時間焼成することにより酸素放出相の状態とし、SEM(SU8010、HITACHI社製)観察試料台上のカーボンテープに乗せ、Au-Pt蒸着を行いSEM観察用サンプルとした。5kVの加速電圧下においてSEM観察(倍率10000倍)を行った。実施例1~3及び比較例1で得た金属酸化物のSEM観察像を図3に示す。
いずれの金属酸化物の粒子も数百nm~数μm程度の一次粒径を有する不定形粒子であり、焼成雰囲気による粒子サイズ、粒子概形への大きな影響は確認されなかった。
【0073】
<TGを用いた酸素吸着量、及び相転移温度の測定>
実施例1~3及び比較例1で得た各試料の酸素吸着量及び相転移温度を、TG(Thermoplus2 TG-8120、Rigaku社製)により測定した。TG測定の際は、空気気流下、実施例1~3及び比較例1の試料約20mgを室温(25℃)から800℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、次いで800℃から25℃まで降温速度5℃/minで降温させ、その間の重量変化を計測した。なお、測定の前に吸着した酸素や水分等を除去する目的で、窒素雰囲気下、800℃でのリフレッシュ処理を行った後に、酸素吸脱着挙動の評価を行った。
【0074】
TG測定により得られたグラフを図4に示す。いずれの試料においても昇温過程で酸素の吸着に起因する重量増加が確認された。一方で、昇温を続けると、やがて重量が減少に転じることが確認された。これは、試料温度の上昇に伴って酸素吸着相から酸素放出相への相転移が生じ、吸着していた酸素を脱着したためである。降温過程では、再度特定の温度から急激な重量増加が確認され、酸素放出相から酸素吸着相への相転移による酸素吸着が生じていることが確認された。
【0075】
表2にTG測定から求めた最大酸素吸着量、50%酸素吸着温度、50%酸素脱着温度、及び50%酸素吸着温度と50%酸素脱着温度との中間温度、すなわち相転移温度を示す。
【0076】
【表2】
【0077】
本焼成雰囲気中の酸素濃度と相転移温度との関係を図5に示す。図5から、本焼成雰囲気中の酸素濃度が0体積%から5.0体積%に増加するにつれて、相転移温度が低下することが確認された。
【0078】
上記XRD測定から求めたb軸長と相転移温度との関係を図6に示す。図6から明らかなように、相転移温度とb軸長には強い相関性があり、b軸長を変化させることにより、金属酸化物の相転移温度の制御が可能であることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6