(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20230630BHJP
G01K 7/00 20060101ALI20230630BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230630BHJP
【FI】
A61B5/01 250
G01K7/00 Z
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2019193809
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-08-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月6日に発行された「The 7th International Conference on BioSensors,BioElectronics,BioMedical Devices,BioMEMS/NEMS & Applications(Bio4Apps 2018/2019)予稿集」にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月6日~8日(発表日:平成31年1月7日)に、Harbin Institute of Technologyにて開催された「The 7th International Conference on BioSensors,BioElectronics,BioMedical Devices,BioMEMS/NEMS & Applications(Bio4Apps 2018/2019)」にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「人工知能技術適用によるスマート社会の実現/健康、医療・介護分野/IoT・AI支援型健康・介護サービスシステムの開発と社会実装研究」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】海法 克享
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寿浩
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定システムであって、
時系列気温情報を取得する気温情報取得部と、
時系列湿度情報を取得する湿度情報取得部と、
前記鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する発汗情報取得部と、
前記鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する脈拍情報取得部と、
既知の鼓膜温度を示す情報を教師データとして、既知の鼓膜温度が得られた時点をそれぞれ含む時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とを学習データとして、それぞれ用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得部によって取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得部によって取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得部によって取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得部によって取得された時系列脈拍情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定部とを備える、
鼓膜温度推定システム。
【請求項2】
既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、前記既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報および時系列脈拍情報を少なくとも有する学習データとの組を用いることによって、前記鼓膜温度推定部の機械学習を行う学習部を更に備える、
請求項1に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項3】
前記鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報を取得する皮膚温度情報取得部を更に備え、
前記鼓膜温度推定部は、
前記時点を含む時系列皮膚温度情報を学習データとしてさらに用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得部によって取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得部によって取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得部によって取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得部によって取得された時系列脈拍情報と、前記皮膚温度情報取得部によって取得された時系列皮膚温度情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する、
請求項1に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項4】
既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、前記既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報および時系列皮膚温度情報を少なくとも有する学習データとの組を用いることによって、前記鼓膜温度推定部の機械学習を行う学習部を更に備える、
請求項3に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項5】
時系列照度情報を取得する照度情報取得部を更に備え、
前記鼓膜温度推定部は、
前記時点を含む時系列照度情報を学習データとしてさらに用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得部によって取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得部によって取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得部によって取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得部によって取得された時系列脈拍情報と、前記皮膚温度情報取得部によって取得された時系列皮膚温度情報と、前記照度情報取得部によって取得された時系列照度情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する、
請求項3に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項6】
既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、前記既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報および時系列照度情報を少なくとも有する学習データとの組を用いることによって、前記鼓膜温度推定部の機械学習を行う学習部を更に備える、
請求項5に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項7】
前記鼓膜温度推定対象者の時系列加速度情報を取得する加速度情報取得部を更に備え、
前記鼓膜温度推定部は、
前記時点を含む時系列加速度情報を学習データとしてさらに用いて学習された学習済みモデルと、前記気温情報取得部によって取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得部によって取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得部によって取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得部によって取得された時系列脈拍情報と、前記皮膚温度情報取得部によって取得された時系列皮膚温度情報と、前記照度情報取得部によって取得された時系列照度情報と、前記加速度情報取得部によって取得された時系列加速度情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する、
請求項5に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項8】
既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、前記既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報、時系列照度情報および時系列加速度情報を少なくとも有する学習データとの組を用いることによって、前記鼓膜温度推定部の機械学習を行う学習部を更に備える、
請求項7に記載の鼓膜温度推定システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の鼓膜温度推定システムと、
気温を検出し、時系列気温情報を出力する温度センサと、
湿度を検出し、時系列湿度情報を出力する湿度センサと、
前記鼓膜温度推定対象者の発汗量を検出し、時系列発汗情報を出力する発汗センサと、
前記鼓膜温度推定対象者の脈拍を検出し、時系列脈拍情報を出力する脈拍センサとを備え、
前記鼓膜温度推定対象者によって装着されるウェアラブルデバイス。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の鼓膜温度推定システムを備える熱中症リスク推定システム。
【請求項11】
鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定方法であって、
時系列気温情報を取得する気温情報取得ステップと、
時系列湿度情報を取得する湿度情報取得ステップと、
前記鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する発汗情報取得ステップと、
前記鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する脈拍情報取得ステップと、
既知の鼓膜温度を示す情報を教師データとして、既知の鼓膜温度が得られた時点をそれぞれ含む時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とを学習データとして、それぞれ用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得ステップにおいて取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得ステップにおいて取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得ステップにおいて取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得ステップにおいて取得された時系列脈拍情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定ステップとを備える、
鼓膜温度推定方法。
【請求項12】
コンピュータに、
時系列気温情報を取得する気温情報取得ステップと、
時系列湿度情報を取得する湿度情報取得ステップと、
鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する発汗情報取得ステップと、
前記鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する脈拍情報取得ステップと、
既知の鼓膜温度を示す情報を教師データとして、既知の鼓膜温度が得られた時点をそれぞれ含む時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とを学習データとして、それぞれ用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得ステップにおいて取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得ステップにおいて取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得ステップにおいて取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得ステップにおいて取得された時系列脈拍情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定ステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏期の猛暑による熱中症の発症数が増加している。熱中症は、外部環境の高温、高湿度化により身体の深部体温が上昇し、様々な症状を引き起こすことである。一般的に、深部体温は、直腸の温度を計測することによって得られるが、鼓膜の温度も深部体温と密接な関係があり、鼓膜の温度は、深部体温変化の指標として有用である。
従来から、外耳道温を測定する外耳道温測定器が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された外耳道温測定器は、外耳道入口に保持される保持部と、保持部から延設されて外耳道内空間に挿入される挿入部とを備えており、挿入部は、挿入部の先端に第1測温部を有する第1センサ線と、挿入部の先端から外耳道入口側へ所定距離離れた位置に第2測温部を有する第2センサ線とを備えている。
ところで、特許文献1に記載された技術では、鼓膜温度を計測するために、耳内にセンサを設置することが必要となる。聴覚は視覚とともに外部から情報を得るのに重要な器官であり、普段の生活において常時耳内にセンサを設置することは困難である。
【0003】
また、従来から、聴覚を遮らないデバイスで鼓膜温度を推定する手法が検討されている(非特許文献1参照)。非特許文献1に記載された手法では、身体の熱収支モデルを想定し、各部位での時間ごとの熱収支を計算することで深部体温を算出している。しかし、非特許文献1に記載された手法では、身体の熱指数や衣服の情報といった、腕時計デバイスでは計測不可能なパラメータがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】濱谷尚志、外2名、「多様な運動負荷を考慮した 装着型センサによる深部体温推定法の提案」、マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2016)シンポジウム、平成28年7月、p.1757-p.1768
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題点に鑑み、本発明は、耳内へのセンサの設置などを行う必要なく、鼓膜温度を高精度に推定することができる鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究において、少なくとも時系列気温情報と、時系列湿度情報と、鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と、鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報とを用いることにより、鼓膜温度推定対象者の耳内へのセンサの設置などを行う必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を高精度に推定できることを見い出したのである。
【0008】
本発明の一態様は、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定システムであって、時系列気温情報を取得する気温情報取得部と、時系列湿度情報を取得する湿度情報取得部と、前記鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する発汗情報取得部と、前記鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する脈拍情報取得部と、既知の鼓膜温度を示す情報を教師データとして、既知の鼓膜温度が得られた時点をそれぞれ含む時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とを学習データとして、それぞれ用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得部によって取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得部によって取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得部によって取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得部によって取得された時系列脈拍情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定部とを備える、鼓膜温度推定システムである。
【0009】
本発明の一態様は、前記鼓膜温度推定システムと、気温を検出し、時系列気温情報を出力する温度センサと、湿度を検出し、時系列湿度情報を出力する湿度センサと、前記鼓膜温度推定対象者の発汗量を検出し、時系列発汗情報を出力する発汗センサと、前記鼓膜温度推定対象者の脈拍を検出し、時系列脈拍情報を出力する脈拍センサとを備え、前記鼓膜温度推定対象者によって装着されるウェアラブルデバイスである。
【0010】
本発明の一態様は、前記鼓膜温度推定システムを備える熱中症リスク推定システムである。
【0011】
本発明の一態様は、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定方法であって、時系列気温情報を取得する気温情報取得ステップと、時系列湿度情報を取得する湿度情報取得ステップと、前記鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する発汗情報取得ステップと、前記鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する脈拍情報取得ステップと、既知の鼓膜温度を示す情報を教師データとして、既知の鼓膜温度が得られた時点をそれぞれ含む時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とを学習データとして、それぞれ用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得ステップにおいて取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得ステップにおいて取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得ステップにおいて取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得ステップにおいて取得された時系列脈拍情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定ステップとを備える、鼓膜温度推定方法である。
【0012】
本発明の一態様は、コンピュータに、時系列気温情報を取得する気温情報取得ステップと、時系列湿度情報を取得する湿度情報取得ステップと、鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する発汗情報取得ステップと、前記鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する脈拍情報取得ステップと、既知の鼓膜温度を示す情報を教師データとして、既知の鼓膜温度が得られた時点をそれぞれ含む時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とを学習データとして、それぞれ用いて学習された学習済みモデルと、少なくとも前記気温情報取得ステップにおいて取得された時系列気温情報と、前記湿度情報取得ステップにおいて取得された時系列湿度情報と、前記発汗情報取得ステップにおいて取得された時系列発汗情報と、前記脈拍情報取得ステップにおいて取得された時系列脈拍情報とに基づいて、前記鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する鼓膜温度推定ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耳内へのセンサの設置などを行う必要なく、鼓膜温度を高精度に推定することができる鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の鼓膜温度推定システムの概要の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示す学習部による鼓膜温度推定部の機械学習の一例を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の鼓膜温度推定システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】第7実施形態の鼓膜温度推定システムの概要の一例を示す図である。
【
図5】
図4に示す学習部による鼓膜温度推定部の機械学習の一例を説明するための図である。
【
図6】第7実施形態の鼓膜温度推定システムにおいて実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】学習部による鼓膜温度推定部の機械学習において用いられたデータの一例を示す図である。
【
図8】鼓膜温度推定対象者によって装着されるウェアラブルデバイスの一例を示す図である。
【
図9】学習部による鼓膜温度推定部の機械学習の一例を説明するための図である。
【
図10】本発明者等の研究における鼓膜温度の推定結果の推定精度の第1例を示す図である。
【
図11】本発明者等の研究における鼓膜温度の推定結果の推定精度の第2例を示す図である。
【
図12】本発明者等の研究における鼓膜温度の推定結果の推定精度の第3例を示す図である。
【
図13】第1から第8実施形態の鼓膜温度推定システムが適用された熱中症リスク推定システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの実施形態について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の鼓膜温度推定システム1の概要の一例を示す図である。
図1に示す例では、鼓膜温度推定システム1が、温度センサ1Aと、湿度センサ1Bと、発汗センサ1Cと、脈拍センサ1Dと、鼓膜温度推定装置10とを備えている。
温度センサ1Aは、気温を所定時間間隔(例えば5秒~1分間隔)で検出する。また、温度センサ1Aは、複数回分(例えば30回分)の検出結果を時系列気温情報として出力する。詳細には、温度センサ1Aは、上述した所定時間間隔で気温の瞬時値を検出するのではなく、上述した所定時間間隔で、気温の値を一定期間検出する。更に、その一定期間中の気温の時間平均が、上述した時系列気温情報として用いられる。
湿度センサ1Bは、例えば温度センサ1Aと同一の時間間隔で湿度(相対湿度)を検出する。また、湿度センサ1Bは、例えば温度センサ1Aと同一回数分の検出結果を時系列湿度情報として出力する。詳細には、湿度センサ1Bは、例えば上述した時間間隔で、例えば温度センサ1Aの検出期間と同一期間中、湿度の値を検出する。更に、その期間中の湿度の時間平均が、上述した時系列湿度情報として用いられる。
発汗センサ1Cは、例えば温度センサ1Aと同一の時間間隔で、鼓膜温度推定対象者の発汗量を検出する。また、発汗センサ1Cは、例えば温度センサ1Aと同一回数分の検出結果を時系列発汗情報として出力する。詳細には、発汗センサ1Cは、例えば上述した時間間隔で、例えば温度センサ1Aの検出期間と同一期間中、鼓膜温度推定対象者の発汗量を検出する。更に、その期間中の発汗量の時間平均が、上述した時系列発汗情報として用いられる。
脈拍センサ1Dは、例えば温度センサ1Aと同一の時間間隔で、鼓膜温度推定対象者の脈拍を検出する。また、脈拍センサ1Dは、例えば温度センサ1Aと同一回数分の検出結果を時系列脈拍情報として出力する。詳細には、脈拍センサ1Dは、例えば上述した時間間隔で、例えば温度センサ1Aの検出期間と同一期間中、鼓膜温度推定対象者の脈拍を検出する。更に、その期間中の脈拍の時間平均が、上述した時系列脈拍情報として用いられる。
【0017】
図1に示す例では、鼓膜温度推定システム1が温度センサ1Aと湿度センサ1Bと発汗センサ1Cと脈拍センサ1Dとを備えているが、他の例では、鼓膜温度推定システム1がそれらを備えておらず、鼓膜温度推定システム1の外部に配置されたそれらからのセンサデータが、鼓膜温度推定システム1に入力されてもよい。
【0018】
また、
図1に示す例では、鼓膜温度推定システム1が発汗センサ1Cを備えているが、他の例では、鼓膜温度推定システム1が発汗センサ1Cを備えていなくてもよい。この例では、湿度センサ(図示せず)が、鼓膜温度推定対象者の皮膚の表面に接して配置されている。つまり、この湿度センサが、この湿度センサと鼓膜温度推定対象者の皮膚の表面との間の部分の湿度を検出する。また、この例では、湿度センサ1Bが、
図1に示す例と同様に湿度の検出を行う(つまり、外部環境の湿度を検出する)。更に、この例では、湿度センサ(図示せず)と鼓膜温度推定対象者の皮膚の表面との間の部分の湿度と、湿度センサ1Bによって検出された外部環境の湿度との差分に基づいて、時系列発汗情報が生成される。
【0019】
図1に示す例では、鼓膜温度推定装置10が、時系列気温情報と時系列湿度情報と時系列発汗情報と時系列脈拍情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。具体的には、鼓膜温度推定装置10は、気温情報取得部11と、湿度情報取得部12と、発汗情報取得部13と、脈拍情報取得部14と、鼓膜温度推定部18と、学習部19とを備えている。
気温情報取得部11は、温度センサ1Aから出力された時系列気温情報を取得する。湿度情報取得部12は、湿度センサ1Bから出力された時系列湿度情報を取得する。発汗情報取得部13は、発汗センサ1Cから出力された時系列発汗情報を取得する。脈拍情報取得部14は、脈拍センサ1Dから出力された時系列脈拍情報を取得する。
上述したように、本発明者等は、少なくとも時系列気温情報と、時系列湿度情報と、鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と、鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報とを用いることによって、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を高精度に推定できることを見い出した。
そこで、
図1に示す例では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
詳細には、
図1に示す例では、学習部19が、既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報および時系列脈拍情報を有する学習データとの組を用いることによって、鼓膜温度推定部18の機械学習を行う。
【0020】
図2は
図1に示す学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習の一例を説明するための図である。
図2に示す例では、学習部19(
図1参照)が、鼓膜温度センサデータ(既知の鼓膜温度を示す情報)を教師データとして用いる。また、学習部19は、温度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報)と、湿度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列湿度情報)と、発汗センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列発汗情報)と、脈拍センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列脈拍情報)とを学習データとして用いる。つまり、学習部19は、上述した教師データと学習データとの組を用いる。詳細には、学習部19は、学習データとしての温度センサデータと湿度センサデータと発汗センサデータと脈拍センサデータとが、モデルに入力されると、教師データとしての鼓膜温度センサデータがモデルから出力されるように、モデルの学習を実行する。
更に、鼓膜温度推定部18(
図1参照)は、学習部19による学習済みのモデルを用いて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
詳細には、
図2に示す例では、温度センサデータ(気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報)と、湿度センサデータ(湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報)と、発汗センサデータ(発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報)と、脈拍センサデータ(脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報)とが、学習済みのモデルに入力される。更に、学習済みのモデルが、推定結果としての鼓膜温度を出力する。
【0021】
上述したように、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1では、時系列気温情報と、時系列湿度情報と、時系列発汗情報と、時系列脈拍情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度が推定される。そのため、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定対象者の耳内へのセンサの設置などを行う必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を得ることができる。
詳細には、
図2に示す例では、既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報および時系列脈拍情報を有する学習データとの組を用いることによって、鼓膜温度推定部18の機械学習が行われる。そのため、
図2に示す例では、例えば実験などにおいて時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報および時系列脈拍情報と鼓膜温度との関係を事前に得る必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定することができる。
【0022】
図3は第1実施形態の鼓膜温度推定システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図3に示す例では、ステップS11において、学習部19が、鼓膜温度推定部18の機械学習を行う。
次いで、ステップS12では、気温情報取得部11が、時系列気温情報を取得する。また、ステップS13では、湿度情報取得部12が、時系列湿度情報を取得する。また、ステップS14では、発汗情報取得部13が、鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する。また、ステップS15では、脈拍情報取得部14が、鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する。
次いで、ステップS16では、鼓膜温度推定部18が、ステップS12において取得された時系列気温情報と、ステップS13において取得された時系列湿度情報と、ステップS14において取得された時系列発汗情報と、ステップS15において取得された時系列脈拍情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
【0023】
<第2実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0024】
上述したように、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えているが、第2実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えていない。
詳細には、第2実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1において学習部19による機械学習が行われた後の鼓膜温度推定部18と同等の機能を有する。
そのため、第2実施形態の鼓膜温度推定システム1においても、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に、例えば実験などにおいて時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報および時系列脈拍情報と鼓膜温度との関係を事前に得る必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定することができる。
【0025】
<第3実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第3実施形態について説明する。
第3実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に構成されている。従って、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0026】
上述したように、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1は、温度センサ1Aと、湿度センサ1Bと、発汗センサ1Cと、脈拍センサ1Dと、鼓膜温度推定装置10とを備えている。
一方、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1は、温度センサ1Aと、湿度センサ1Bと、発汗センサ1Cと、脈拍センサ1Dと、皮膚温度センサ1F(
図4参照)と、鼓膜温度推定装置10とを備えている。皮膚温度センサ1Fは、例えば温度センサ1Aと同一の時間間隔で鼓膜温度推定対象者の皮膚温度を検出する。また、皮膚温度センサ1Fは、例えば温度センサ1Aと同一回数分の検出結果を時系列皮膚温度情報として出力する。詳細には、皮膚温度センサ1Fは、例えば上述した時間間隔で、例えば温度センサ1Aの検出期間と同一期間中、皮膚温度の値を検出する。更に、その期間中の皮膚温度の時間平均が、上述した時系列皮膚温度情報として用いられる。
【0027】
上述したように、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定装置10が、気温情報取得部11と、湿度情報取得部12と、発汗情報取得部13と、脈拍情報取得部14と、鼓膜温度推定部18と、学習部19とを備えている。
一方、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定装置10が、気温情報取得部11と、湿度情報取得部12と、発汗情報取得部13と、脈拍情報取得部14と、皮膚温度情報取得部16(
図4参照)と、鼓膜温度推定部18と、学習部19とを備えている。皮膚温度情報取得部16は、皮膚温度センサ1Fから出力された鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報を取得する。
【0028】
上述したように、第1実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
本発明者等は、鋭意研究において、時系列気温情報と時系列湿度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報と鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報とを用いる場合には、時系列気温情報と時系列湿度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報とを用いる場合よりも高精度に、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定できることを見い出した。
そこで、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報と、皮膚温度情報取得部16によって取得された時系列皮膚温度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
詳細には、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1では、学習部19が、既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報および時系列皮膚温度情報を有する学習データとの組を用いることによって、鼓膜温度推定部18の機械学習を行う。
【0029】
<第4実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第4実施形態について説明する。
第4実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第3実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に構成されている。従って、第4実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第3実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0030】
上述したように、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えているが、第4実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えていない。
詳細には、第4実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1において学習部19による機械学習が行われた後の鼓膜温度推定部18と同等の機能を有する。
そのため、第4実施形態の鼓膜温度推定システム1においても、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に、例えば実験などにおいて時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報および時系列皮膚温度情報と鼓膜温度との関係を事前に得る必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定することができる。
【0031】
<第5実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第5実施形態について説明する。
第5実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第3実施形態の鼓膜温度推定システム1とほぼ同様に構成されている。従って、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第3実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0032】
上述したように、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1は、温度センサ1Aと、湿度センサ1Bと、発汗センサ1Cと、脈拍センサ1Dと、皮膚温度センサ1Fと、鼓膜温度推定装置10とを備えている。
一方、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1は、温度センサ1Aと、湿度センサ1Bと、発汗センサ1Cと、脈拍センサ1Dと、照度センサ1E(
図4参照)と、皮膚温度センサ1Fと、鼓膜温度推定装置10とを備えている。照度センサ1Eは、例えば温度センサ1Aと同一の時間間隔で鼓膜温度推定対象者の周囲環境の照度を検出する。また、照度センサ1Eは、例えば温度センサ1Aと同一回数分の検出結果を時系列照度情報として出力する。詳細には、照度センサ1Eは、例えば上述した時間間隔で、例えば温度センサ1Aの検出期間と同一期間中、照度の値を検出する。更に、その期間中の照度の時間平均が、上述した時系列照度情報として用いられる。
【0033】
上述したように、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定装置10が、気温情報取得部11と、湿度情報取得部12と、発汗情報取得部13と、脈拍情報取得部14と、皮膚温度情報取得部16と、鼓膜温度推定部18と、学習部19とを備えている。
一方、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定装置10が、気温情報取得部11と、湿度情報取得部12と、発汗情報取得部13と、脈拍情報取得部14と、照度情報取得部15(
図4参照)と、皮膚温度情報取得部16と、鼓膜温度推定部18と、学習部19とを備えている。照度情報取得部15は、照度センサ1Eから出力された時系列照度情報を取得する。
【0034】
上述したように、第3実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報と、皮膚温度情報取得部16によって取得された時系列皮膚温度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
本発明者等は、鋭意研究において、時系列気温情報と時系列湿度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報と鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報と時系列照度情報とを用いる場合には、時系列気温情報と時系列湿度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報と鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報とを用いる場合よりも高精度に、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定できることを見い出した。
そこで、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報と、皮膚温度情報取得部16によって取得された時系列皮膚温度情報と、照度情報取得部15によって取得された時系列照度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
詳細には、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1では、学習部19が、既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報および時系列照度情報を有する学習データとの組を用いることによって、鼓膜温度推定部18の機械学習を行う。
【0035】
<第6実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第6実施形態について説明する。
第6実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第5実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に構成されている。従って、第6実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第5実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0036】
上述したように、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えているが、第6実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えていない。
詳細には、第6実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1において学習部19による機械学習が行われた後の鼓膜温度推定部18と同等の機能を有する。
そのため、第6実施形態の鼓膜温度推定システム1においても、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に、例えば実験などにおいて時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報および時系列皮膚温度情報と鼓膜温度との関係を事前に得る必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定することができる。
【0037】
<第7実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第7実施形態について説明する。
第7実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第5実施形態の鼓膜温度推定システム1とほぼ同様に構成されている。従って、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第5実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0038】
図4は第7実施形態の鼓膜温度推定システム1の概要の一例を示す図である。
図4に示す例では、鼓膜温度推定システム1が、温度センサ1Aと、湿度センサ1Bと、発汗センサ1Cと、脈拍センサ1Dと、照度センサ1Eと、皮膚温度センサ1Fと、加速度センサ1Gと、鼓膜温度推定装置10とを備えている。加速度センサ1Gは、例えば温度センサ1Aと同一の時間間隔で鼓膜温度推定対象者の加速度を検出する。また、加速度センサ1Gは、例えば温度センサ1Aと同一回数分の検出結果を時系列加速度情報として出力する。詳細には、加速度センサ1Gは、例えば上述した時間間隔で、例えば温度センサ1Aの検出期間と同一期間中、加速度の値を検出する。更に、その期間中の加速度の時間平均が、上述した時系列加速度情報として用いられる。
【0039】
図4に示す例では、鼓膜温度推定装置10が、気温情報取得部11と、湿度情報取得部12と、発汗情報取得部13と、脈拍情報取得部14と、照度情報取得部15と、皮膚温度情報取得部16と、加速度情報取得部17と、鼓膜温度推定部18と、学習部19とを備えている。加速度情報取得部17は、加速度センサ1Gから出力された鼓膜温度推定対象者の時系列加速度情報を取得する。
【0040】
上述したように、第5実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報と、皮膚温度情報取得部16によって取得された時系列皮膚温度情報と、照度情報取得部15によって取得された時系列照度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
本発明者等は、鋭意研究において、時系列気温情報と時系列湿度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報と鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報と時系列照度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列加速度情報とを用いる場合には、時系列気温情報と時系列湿度情報と鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報と鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報と鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報と時系列照度情報とを用いる場合よりも高精度に、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定できることを見い出した。
そこで、
図4に示す例では、鼓膜温度推定部18が、気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報と、湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報と、発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報と、脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報と、皮膚温度情報取得部16によって取得された時系列皮膚温度情報と、照度情報取得部15によって取得された時系列照度情報と、加速度情報取得部17によって取得された時系列加速度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
詳細には、
図4に示す例では、学習部19が、既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報、時系列照度情報および時系列加速度情報を有する学習データとの組を用いることによって、鼓膜温度推定部18の機械学習を行う。
【0041】
図5は
図4に示す学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習の一例を説明するための図である。
図5に示す例では、学習部19(
図4参照)が、鼓膜温度センサデータ(既知の鼓膜温度を示す情報)を教師データとして用いる。また、学習部19は、温度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報)と、湿度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列湿度情報)と、発汗センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列発汗情報)と、脈拍センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列脈拍情報)と、皮膚温度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列皮膚温度情報)と、照度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列照度情報)と、加速度センサデータ(既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列加速度情報)とを学習データとして用いる。つまり、学習部19は、上述した教師データと学習データとの組を用いる。詳細には、学習部19は、学習データとしての温度センサデータと湿度センサデータと発汗センサデータと脈拍センサデータと皮膚温度センサデータと照度センサデータと加速度センサデータとが、モデルに入力されると、教師データとしての鼓膜温度センサデータがモデルから出力されるように、モデルの学習を実行する。
更に、鼓膜温度推定部18(
図4参照)は、学習部19による学習済みのモデルを用いて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
詳細には、
図5に示す例では、温度センサデータ(気温情報取得部11によって取得された時系列気温情報)と、湿度センサデータ(湿度情報取得部12によって取得された時系列湿度情報)と、発汗センサデータ(発汗情報取得部13によって取得された時系列発汗情報)と、脈拍センサデータ(脈拍情報取得部14によって取得された時系列脈拍情報)と、皮膚温度センサデータ(皮膚温度情報取得部16によって取得された時系列皮膚温度情報)と、照度センサデータ(照度情報取得部15によって取得された時系列照度情報)と、加速度センサデータ(加速度情報取得部17によって取得された時系列加速度情報)とが、学習済みのモデルに入力される。更に、学習済みのモデルが、推定結果としての鼓膜温度を出力する。
【0042】
上述したように、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1では、時系列気温情報と、時系列湿度情報と、時系列発汗情報と、時系列脈拍情報と、時系列皮膚温度情報と、時系列照度情報と、時系列加速度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度が推定される。そのため、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定対象者の耳内へのセンサの設置などを行う必要なく、高精度な鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を得ることができる。
詳細には、
図5に示す例では、既知の鼓膜温度を示す情報である教師データと、既知の鼓膜温度が得られた時点を含む時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報、時系列照度情報および時系列加速度情報を有する学習データとの組を用いることによって、鼓膜温度推定部18の機械学習が行われる。そのため、
図5に示す例では、例えば実験などにおいて時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報、時系列照度情報および時系列加速度情報と鼓膜温度との関係を事前に得る必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を高精度に推定することができる。
【0043】
図6は第7実施形態の鼓膜温度推定システム1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6に示す例では、ステップS21において、学習部19が、鼓膜温度推定部18の機械学習を行う。
次いで、ステップS22では、気温情報取得部11が、時系列気温情報を取得する。また、ステップS23では、湿度情報取得部12が、時系列湿度情報を取得する。また、ステップS24では、発汗情報取得部13が、鼓膜温度推定対象者の時系列発汗情報を取得する。また、ステップS25では、脈拍情報取得部14が、鼓膜温度推定対象者の時系列脈拍情報を取得する。また、ステップS26では、皮膚温度情報取得部16が、鼓膜温度推定対象者の時系列皮膚温度情報を取得する。また、ステップS27では、照度情報取得部15が、時系列照度情報を取得する。また、ステップS28では、加速度情報取得部17が、鼓膜温度推定対象者の時系列加速度情報を取得する。
次いで、ステップS29では、鼓膜温度推定部18が、ステップS22において取得された時系列気温情報と、ステップS23において取得された時系列湿度情報と、ステップS24において取得された時系列発汗情報と、ステップS25において取得された時系列脈拍情報と、ステップS26において取得された時系列皮膚温度情報と、ステップS27において取得された時系列照度情報と、ステップS28において取得された時系列加速度情報とに基づいて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
【0044】
<第8実施形態>
以下、本発明の鼓膜温度推定システム、ウェアラブルデバイス、熱中症リスク推定システム、鼓膜温度推定方法およびプログラムの第8実施形態について説明する。
第8実施形態の鼓膜温度推定システム1は、後述する点を除き、上述した第7実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に構成されている。従って、第8実施形態の鼓膜温度推定システム1によれば、後述する点を除き、上述した第7実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様の効果を奏することができる。
【0045】
上述したように、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えているが、第8実施形態の鼓膜温度推定システム1は、学習部19を備えていない。
詳細には、第8実施形態の鼓膜温度推定システム1では、鼓膜温度推定部18が、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1において学習部19による機械学習が行われた後の鼓膜温度推定部18と同等の機能を有する。
そのため、第8実施形態の鼓膜温度推定システム1においても、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1と同様に、例えば実験などにおいて時系列気温情報、時系列湿度情報、時系列発汗情報、時系列脈拍情報、時系列皮膚温度情報、時系列照度情報および時系列加速度情報と鼓膜温度との関係を事前に得る必要なく、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定することができる。
【0046】
図7は学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習において用いられたデータの一例を示す図である。
図7に示す例では、学習部19(
図1参照)が、鼓膜温度センサデータ(既知の鼓膜温度を示す情報(2分25秒の時点における鼓膜温度36.73[℃]))を教師データとして用いた。
また、学習部19は、温度センサデータA(既知の鼓膜温度が得られた2分25秒の時点を含む時系列気温情報)として、0分00秒の時点の気温36.41[℃]、0分05秒の時点の気温36.8[℃]、…、1分35秒の時点の気温37.33[℃]、…、2分25秒の時点の気温37.01[℃]を用いた。つまり、学習部19は、30時点分の温度センサデータAを用いた。
更に、学習部19は、湿度センサデータB(既知の鼓膜温度が得られた2分25秒の時点を含む時系列湿度情報)として、0分00秒の時点の湿度51.25[%]、0分05秒の時点の湿度52.98[%]、…、1分35秒の時点の湿度49.59[%]、…、2分25秒の時点の湿度48.81[%]を用いた。つまり、学習部19は、30時点分の湿度センサデータBを用いた。
【0047】
また、学習部19は、照度センサデータC(既知の鼓膜温度が得られた2分25秒の時点を含む時系列照度情報)として、0分00秒の時点の照度2579.2[lx]、0分05秒の時点の照度2775.4[lx]、…、1分35秒の時点の照度2867.2[lx]、…、2分25秒の時点の照度5514.2[lx]を用いた。つまり、学習部19は、30時点分の照度センサデータCを用いた。
更に、学習部19は、皮膚温度センサデータD(既知の鼓膜温度が得られた2分25秒の時点を含む時系列皮膚温度情報)として、0分00秒の時点の皮膚温度34.4[℃]、0分05秒の時点の皮膚温度34.3[℃]、…、1分35秒の時点の皮膚温度34.2[℃]、…、2分25秒の時点の皮膚温度35.1[℃]を用いた。つまり、学習部19は、30時点分の皮膚温度センサデータDを用いた。
また、学習部19は、発汗センサデータE(既知の鼓膜温度が得られた2分25秒の時点を含む時系列発汗情報)として、0分00秒の時点の発汗量「3.3」、0分05秒の時点の発汗量「3.1」、…、1分35秒の時点の発汗量「1.5」、…、2分25秒の時点の発汗量「7.9」を用いた。つまり、学習部19は、30時点分の発汗センサデータEを用いた。
更に、学習部19は、脈拍センサデータF(既知の鼓膜温度が得られた2分25秒の時点を含む時系列脈拍情報)として、0分00秒の時点の脈拍99.6[回/分]、0分05秒の時点の脈拍101.6[回/分]、…、1分35秒の時点の脈拍103[回/分]、…、2分25秒の時点の脈拍84.8[回/分]を用いた。つまり、学習部19は、30時点分の脈拍センサデータFを用いた。
詳細には、学習部19が、上述した温度センサデータA、湿度センサデータB、照度センサデータC、湿度センサデータD、発汗センサデータEおよび脈拍センサデータFを学習データとして用いた。
【0048】
つまり、
図7に示す例では、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習において、5秒間隔で30回分検出された(つまり、2.5min分の)温度センサデータAと湿度センサデータBと照度センサデータCと皮膚温度センサデータDと発汗センサデータEと脈拍センサデータFとが、学習データとして用いられた。
また、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習において、2分25秒の時点(つまり、温度センサデータA、湿度センサデータB、照度センサデータC、皮膚温度センサデータD、発汗センサデータEおよび脈拍センサデータFも検出された時点)に鼓膜温度センサ(図示せず)によって検出された鼓膜温度36.73[℃]が、教師データとして用いられた。
上述したように、鼓膜温度推定部18は、学習部19による学習済みのモデルを用いて、鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する。
図7に示す学習が行われたモデルを用いて鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度を推定する場合には、例えば温度センサ1Aによって5秒間隔で30回分検出された温度センサデータと、例えば湿度センサ1Bによって5秒間隔で30回分検出された湿度センサデータと、例えば照度センサ1Eによって5秒間隔で30回分検出された照度センサデータと、例えば皮膚温度センサ1Fによって5秒間隔で30回分検出された皮膚温度センサデータと、例えば発汗センサ1Cによって5秒間隔で30回分検出された発汗センサデータと、例えば脈拍センサ1Dによって5秒間隔で30回分検出された脈拍センサデータとが、学習済みのモデルに入力される。更に、学習済みのモデルが、推定結果としての鼓膜温度を出力する。
【0049】
図7に示す例では、5秒間隔で30回分検出された(つまり、2.5min分の)データA~Fが学習データとして用いられているが、他の例では、1分間隔で30回分検出された(つまり、30min分の)データA~Fが学習データとして用いられてもよい。更に他の例では、検出間隔が、5秒あるいは1分とは異なる値に設定されてもよい。
【0050】
図8は鼓膜温度推定対象者によって装着されるウェアラブルデバイスAの一例を示す図である。詳細には、
図8(A)はウェアラブルデバイスAを表面側から見た概略的な斜視図であり、
図8(B)はウェアラブルデバイスAを裏面側から見た概略的な斜視図である。
図8に示す例では、ウェアラブルデバイスAが、腕時計型熱中症リスク低減デバイスとして機能する。ウェアラブルデバイスAは、腕時計機能部A1と、第7実施形態の鼓膜温度推定システム1とを備えている。
図8に示すAI(Artificial Intelligence)処理回路が、鼓膜温度推定システム1の鼓膜温度推定装置10として機能する。また、
図8に示す温湿度センサは、温度センサ1Aの機能と湿度センサ1Bの機能とを有する。温度センサ1Aは、例えば鼓膜温度推定対象者の周囲の物体表面温度を検出する機能を有する。湿度センサ1Bは、例えばウェアラブルデバイスA付近の温湿度を検出する機能を有する。
図8に示す例では、温湿度センサ(温度センサ1A、湿度センサ1B)と照度センサ1Eとが、ウェアラブルデバイスAの表面側に配置され、環境センサとして機能する。照度センサ1Eは、例えばウェアラブルデバイスA付近の照度を検出する機能を有する。
脈拍センサ1Dと皮膚温度センサ1Fと発汗センサ1Cと加速度センサ1Gとは、ウェアラブルデバイスAの裏面側に配置され、生体センサとして機能する。皮膚温度センサ1Fとしては、例えば鼓膜温度推定対象者の皮膚の表面温度を検出する赤外線センサが用いられる。発汗センサ1Cは、例えば鼓膜温度推定対象者付近の温湿度を検出する機能を有する。加速度センサ1Gは、例えばウェアラブルデバイスAの姿勢、運動状態などを検出する機能を有する。
図8に示す電源は、AI処理回路(鼓膜温度推定装置10)と、温湿度センサ(温度センサ1A、湿度センサ1B)と、照度センサ1Eと、脈拍センサ1Dと、皮膚温度センサ1Fと、発汗センサ1Cと、加速度センサ1Gとに電力を供給する。
【0051】
図9は学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習の一例を説明するための図である。
図9に示す例では、機械学習の手法として、ニューラルネットワークが用いられる。
詳細には、
図9に示す例では、学習データとして用いられる30時点分の温度センサデータAと湿度センサデータBとが温湿度センサによって測定される。また、学習データとして用いられる30時点分の照度センサデータCが照度センサによって測定される。更に、学習データとして用いられる30時点分の皮膚温度センサデータDが皮膚温度センサによって測定される。また、学習データとして用いられる30時点分の発汗センサデータEが発汗センサによって測定される。更に、学習データとして用いられる30時点分の脈拍センサデータFが脈拍センサによって測定される。
次いで、温度センサデータAと湿度センサデータBと照度センサデータCと皮膚温度センサデータDと発汗センサデータEと脈拍センサデータFとによってデータセットが生成される。次いで、生成されたデータセットのうちの、5時点分の温度センサデータAと湿度センサデータBと照度センサデータCと皮膚温度センサデータDと発汗センサデータEと脈拍センサデータFとを用いることによって、プーリング処理が行われる。
また、鼓膜温度センサによって、教師データとしての鼓膜温度が測定される。
次いで、学習データと教師データとを用いることによって、ニューラルネットワークの学習が行われる。ニューラルネットワークの学習では、推定される鼓膜温度と、鼓膜温度センサによって測定された鼓膜温度との比較が行われる。
ニューラルネットワークの学習の結果、ニューラルネットワークは、鼓膜温度を高精度に推定できるようになる。
本発明者等は、鋭意研究において、入力データを時間方向に拡張することによって鼓膜温度の推定精度が向上することを見い出した。この研究では、各種センサが、鼓膜温度推定対象者の腕周囲に配置された。
【0052】
図10は本発明者等の研究における鼓膜温度の推定結果の推定精度の第1例を示す図である。
図10の横軸は、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習に用いられた学習データとしての鼓膜温度(測定鼓膜温度)[℃]を示しており、
図10の縦軸は、鼓膜温度推定部18による推定結果としての鼓膜温度(推定鼓膜温度)[℃]を示している。
図10に示す研究では、1分間隔で30回分検出された(つまり、30min分の)センサデータA~Fと、30minの間に1回測定された鼓膜温度データとが、「1データセット」として使用された。
また、
図10に示す研究では、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習(ニューラルネットワークの学習)において、237個の「1データセット」が使用された。
鼓膜温度推定部18による推定では、25個の「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)が使用された。つまり、25回分の「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)が、学習後のニューラルネットワークに入力され、学習後のニューラルネットワークから、25回分の「1データセット」のそれぞれに対応する鼓膜温度の推定結果が出力された。すなわち、学習後のニューラルネットワークによって、「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)に基づく鼓膜温度の推定が25回行われた。
詳細には、学習後のニューラルネットワークによる鼓膜温度の推定では、上述した25個の「1データセット」として、ニューラルネットワークの学習に使用されなかったものが使用された。
図10に示す研究では、回帰係数「0.87」、R
2値「0.91」、誤差最大値「0.16[℃]」が得られた。
【0053】
図11は本発明者等の研究における鼓膜温度の推定結果の推定精度の第2例を示す図である。
図11の横軸は、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習に用いられた学習データとしての鼓膜温度(測定鼓膜温度)[℃]を示しており、
図11の縦軸は、鼓膜温度推定部18による推定結果としての鼓膜温度(推定鼓膜温度)[℃]を示している。
図11に示す研究では、5秒間隔で30回分検出された(つまり、2min30sec分の)センサデータA~Fと、2min30secの間に1回測定された鼓膜温度データとが、「1データセット」として使用された。
また、
図11に示す研究では、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習(ニューラルネットワークの学習)において、2117個の「1データセット」が使用された。
鼓膜温度推定部18による推定では、212個の「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)が使用された。つまり、212回分の「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)が、学習後のニューラルネットワークに入力され、学習後のニューラルネットワークから、212回分の「1データセット」のそれぞれに対応する鼓膜温度の推定結果が出力された。すなわち、学習後のニューラルネットワークによって、「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)に基づく鼓膜温度の推定が212回行われた。
詳細には、学習後のニューラルネットワークによる鼓膜温度の推定では、上述した212個の「1データセット」として、ニューラルネットワークの学習に使用されなかったものが使用された。
図11に示す研究では、回帰係数「0.94」、R
2値「0.97」、誤差最大値「0.18[℃]」、誤差標準偏差「0.05[℃]」が得られた。
【0054】
図12は本発明者等の研究における鼓膜温度の推定結果の推定精度の第3例を示す図である。
図12の横軸は、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習に用いられた学習データとしての鼓膜温度(測定鼓膜温度)[℃]を示しており、
図12の縦軸は、鼓膜温度推定部18による推定結果としての鼓膜温度(推定鼓膜温度)[℃]を示している。
図12に示す研究では、5秒間隔で30回分検出された(つまり、2min30sec分の)温度センサデータA、湿度センサデータB、発汗センサデータEおよび脈拍センサデータFと、2min30secの間に1回測定された鼓膜温度データとが、「1データセット」として使用された。
また、
図12に示す研究では、学習部19による鼓膜温度推定部18の機械学習(ニューラルネットワークの学習)において、2069個の「1データセット」が使用された。
鼓膜温度推定部18による推定では、207個の「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)が使用された。つまり、207回分の「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)が、学習後のニューラルネットワークに入力され、学習後のニューラルネットワークから、207回分の「1データセット」のそれぞれに対応する鼓膜温度の推定結果が出力された。すなわち、学習後のニューラルネットワークによって、「1データセット」(ただし、鼓膜温度データを除くもの)に基づく鼓膜温度の推定が207回行われた。
詳細には、学習後のニューラルネットワークによる鼓膜温度の推定では、上述した207個の「1データセット」として、ニューラルネットワークの学習に使用されなかったものが使用された。
図12に示す研究では、回帰係数「0.97」、R
2値「0.98」、誤差最大値「0.09[℃]」、誤差標準偏差「0.03[℃]」が得られた。
【0055】
図10~
図12に示す本発明者等の研究では、下記のニューラルネットワーク構造を使用した。
Input (30,6)
AveragePooling (5,6)
Swish
Affine (400)
BatchNormalization
SELU
BatchNormalization
SELU
Affine (100)
PReLU
Affine (1)
【0056】
図13は第1から第8実施形態の鼓膜温度推定システム1が適用された熱中症リスク推定システムBの一例を示す図である。
図13に示す例では、熱中症リスク推定システムBが、鼓膜温度推定システム1と、熱中症リスク推定部B1とを備えている。熱中症リスク推定部B1は、鼓膜温度推定システム1によって推定された鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度に基づいて、鼓膜温度推定対象者が熱中症になるリスクを推定する。熱中症リスク推定部B1は、例えば鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度が39[℃]以上である場合に、鼓膜温度推定対象者が熱中症になっていると推定する。熱中症リスク推定部B1は、例えば鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度が39[℃]未満である場合、例えば鼓膜温度推定対象者の鼓膜温度が高いほど、鼓膜温度推定対象者が熱中症になるリスクが高いと推定する。
例えば熱中症リスク推定システムBに備えられている鼓膜温度推定システム1として、ウェアラブルデバイスAに搭載された鼓膜温度推定システム1を用いることにより、ウェアラブルデバイスAの装着者は、耳内へのセンサの設置などを行う必要なく、熱中症になるリスクを手軽に把握することができる。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0058】
なお、上述した実施形態における鼓膜温度推定システム1が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1…鼓膜温度推定システム、10…鼓膜温度推定装置、11…気温情報取得部、12…湿度情報取得部、13…発汗情報取得部、14…脈拍情報取得部、15…照度情報取得部、16…皮膚温度情報取得部、17…加速度情報取得部、18…鼓膜温度推定部、19…学習部、1A…温度センサ、1B…湿度センサ、1C…発汗センサ、1D…脈拍センサ、1E…照度センサ、1F…皮膚温度センサ、1G…加速度センサ、A…ウェアラブルデバイス、A1…腕時計機能部、B…熱中症リスク推定システム、B1…熱中症リスク推定部