(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送装置を有する検体分析システム
(51)【国際特許分類】
B65G 54/02 20060101AFI20230630BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B65G54/02
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2020025056
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】星 遼佑
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓之
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 武司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】神原 克宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-100161(JP,A)
【文献】特開2011-199936(JP,A)
【文献】特開2017-77971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなる第1ティースと、前記第1ティースに接続し、磁性体からなる第1コアと、前記第1コアの周囲に形成される第1巻線と、を有する第1電磁石部と、
前記第1電磁石部に隣接して設置され、磁性体からなる第2ティースと、前記第2ティースに接続し、磁性体からなる第2コアと、前記第2コアの周囲に形成される第2巻線と、を有する第2電磁石部と、を有し、
前記第1電磁石部の前記第1ティースと前記第2電磁石部の前記第2ティースとの間に、磁性体からなる磁気結合部を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載する搬送装置であって、
前記第1電磁石部及び前記第2電磁石部は、磁性体からなる電磁石部固定ベースに、整列して設置されることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載する搬送装置であって、
前記第1ティースは、前記第1コアの上部に接続し、前記第1コアの下部は、前記電磁石部固定ベースに接続し、前記第2ティースは、前記第2コアの上部に接続し、前記第2コアの下部は、前記電磁石部固定ベースに接続することを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載する搬送装置であって、
前記第1電磁石部と前記第2電磁石部とは、上部で前記磁気結合部により磁気的に接続され、下部で前記電磁石部固定ベースにより磁気的に接続されることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載する搬送装置であって、
前記第1ティースと前記第2ティースと前記磁気結合部とが、一体に形成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載する搬送装置であって、
前記第1コアと前記第1ティースとは、別体に形成され、前記第2コアと前記第2ティースとは、別体に形成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載する搬送装置であって、
被搬送体が移動する搬送平面を有し、
前記第1ティースと前記第2ティースと前記磁気結合部とが、前記搬送平面に埋め込まれることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載する搬送装置であって、
被搬送体が移動する搬送平面を有し、
前記第1ティースと前記第2ティースと前記磁気結合部とは、前記搬送平面と前記第1コア及び前記第2コアとの間に設置されることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載する搬送装置であって、
電磁石部を、複数個、整列して設置し、複数の搬送路を設置し、前記搬送路に応じて、ティースの形状及び/又は前記磁気結合部の形状を変更することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項1に記載する搬送装置であって、
電磁石部を、複数個、整列して設置し、
X方向に隣接するティース間に設置される磁気結合部と、Y方向に隣接するティース間に設置される磁気結合部と、有することを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
請求項10に記載する搬送装置であって、
XY方向に隣接するティース間に設置される磁気結合部を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項12】
請求項1に記載する搬送装置であって、
前記第1ティースの直径は、前記第1コアの直径よりも大きく、前記第2ティースの直径は、前記第2コアの直径よりも大きいことを特徴とする搬送装置。
【請求項13】
請求項1に記載する搬送装置であって、
前記第1ティースの形状及び前記第2ティースの形状が、円形形状であることを特徴とする搬送装置。
【請求項14】
請求項1に記載する搬送装置であって、
前記第1ティースの形状及び前記第2ティースの形状が、矩形形状であることを特徴とする搬送装置。
【請求項15】
請求項1に記載する搬送装置を有することを特徴とする検体分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び搬送装置を有する検体分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査のための検体分析システムは、血液、血漿、血清、尿、その他の体液などのサンプル(以下「検体」と称する)に対して、指示された分析項目を検査するシステムである。
【0003】
検体分析システムは、所定の機能を有する装置を、複数接続し、各装置は、各分析項目を検査する。そして、検体分析システムは、検査室の業務合理化のため、生化学、免疫、血液、細菌などの複数の分析を実行する検体分析装置と分析に必要な前処理を実行する検体前処理装置とを搬送装置で接続し、1つのシステムとして、使用する。
【0004】
一方、医療の高度化により、検体分析の重要性が高まっている。そして、検体分析システムの分析処理能力の向上のため、検体の高速搬送、大量同時搬送、複数方向への搬送が要望されている。
【0005】
このような本技術分野の背景技術として、特開2017-77971号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、各々が、少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を有し、試料容器を搬送するように適合された、いくつかの容器キャリアと、容器キャリアを搬送するように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置され、容器キャリアに磁力を印加することにより、搬送平面上で容器キャリアを移動させるように適合された、いくつかの電磁アクチュエータと、を有する研究室試料配送システムが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、容器キャリアと、搬送平面と、磁気アクチュエータと、を有する研究室試料配送システム(検体分析システム)が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1には、搬送平面上で容器キャリアを移動させる際に、容器キャリア(以下、「被搬送体」と称する)を移動させる推力に脈動が発生する、との課題については記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、被搬送体を移動させる推力の脈動を低減し、搬送中の被搬送体の振動を低減し、安定した搬送を実現する搬送装置及び搬送装置を有する検体分析システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、本発明の搬送装置は、磁性体からなる第1ティースと、第1ティースに接続し、磁性体からなる第1コアと、第1コアの周囲に形成される第1巻線と、を有する第1電磁石部と、第1電磁石部に隣接して設置され、磁性体からなる第2ティースと、第2ティースに接続し、磁性体からなる第2コアと、第2コアの周囲に形成される第2巻線と、を有する第2電磁石部と、を有し、第1電磁石部の第1ティースと第2電磁石部の第2ティースとの間に、磁性体からなる磁気結合部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被搬送体を移動させる推力の脈動を低減し、搬送中の被搬送体の振動を低減し、安定した搬送を実現する搬送装置及び搬送装置を有する検体分析システムを提供することができる。
【0012】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を模式的に説明する斜視図である。
【
図2】実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を模式的に説明する断面図である。
【
図3】電磁石部Aと電磁石部Bとの間における推力及びディテントを説明する説明図である。
【
図4】ティース20Aとティース20Bとの間に磁気結合部23を設置した場合の推力特性の変化を説明する説明図である。
【
図5】実施例2に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図である。
【
図6】実施例2に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する断面図である。
【
図7】実施例2に記載する搬送装置1を模式的に説明する分解斜視図である。
【
図8】実施例3に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する断面図である。
【
図9】実施例4に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する断面図である。
【
図10A】実施例5に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図である。
【
図10B】実施例5に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【
図11】実施例6に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する説明図である。
【
図12】実施例8に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【
図13】実施例9に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【
図14】実施例10に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【
図15】実施例11に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【
図16A】実施例12に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図である。
【
図16B】実施例12に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【
図17】実施例6に記載する搬送装置1の搬送平面50を加えた構成を模式的に説明する説明図である。
【
図18】実施例1に記載する搬送装置1を有する検体分析システムの概略構成を模式的に説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0015】
まず、実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を模式的に説明する。
【0016】
図1は、実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を模式的に説明する斜視図である。
【0017】
図2は、実施例1に記載する搬送装置1の概略構成を模式的に説明する断面(XZ断面)図である。
【0018】
搬送装置1は、搬送平面(説明の都合上、図示せず)上で、永久磁石10を有する被搬送体(説明の都合上、図示せず)を移動させる装置であり、被搬送体を移動させるための推力を発生させる装置である。なお、被搬送体には、検体が注入される試料容器が設置される。
【0019】
搬送装置1は、複数の電磁石部を有する。電磁石部は、磁性体からなる電磁石部固定ベース30に、整列して設置(固定)される。
【0020】
第1電磁石部(電磁石部A)は、磁性体からなる第1ティース(ティース20A)と、ティース20Aに接続し、磁性体(強磁性体)からなる第1コア(コア22A)と、コア22Aの周囲(外周側)に形成される第1巻線(巻線21A)と、コア22Aに接続し、磁性体からなり、電磁石部固定ベース30に接合する第1接合部(接合部24A)と、を有する。
【0021】
ティース20Aは、コア22Aの上部に接続し、接合部24Aはコア22Aの下部に接続する。つまり、コア22Aの下部(接合部24Aを含む)は、電磁石部固定ベース30に接続する。
【0022】
また、電磁石部Aに隣接して設置される第2電磁石部(電磁石部B)は、磁性体からなる第2ティース(ティース20B)と、ティース20Bに接続し、磁性体(強磁性体)からなる第2コア(コア22B)と、コア22Bの周囲(外周側)に形成される第2巻線(巻線21B)と、コア22Bに接続し、磁性体からなり、電磁石部固定ベース30に接合する第2接合部(接合部24B)と、を有する。
【0023】
ティース20Bは、コア22Bの上部に接続し、接合部24Bはコア22Bの下部に接続する。つまり、コア22Bの下部(接合部24Bを含む)は、電磁石部固定ベース30に接続する。
【0024】
ここで、「隣接して」とは、例えば、永久磁石10を有する被搬送体の進行方向で、隣り合うことを意味する場合がある。
【0025】
なお、コア22とティース20とは、一体に形成されても、別体に形成されてもよいが、別体に形成されることが好ましい。また、コア22と接合部24とは、一体に形成されることが好ましい。接合部24は、電磁石部固定ベース30に、ねじ止め(ねじを切って、ねじ込むこと)や圧入により設置されることが好ましい。また、電磁石部固定ベース30と接合部24とコア22とが一体に形成されてもよい。また、電磁石部固定ベース30への接合部24の設置方法は、ねじ止めや圧入に限定されるものではなく、他の設置方法であってもよい。
【0026】
また、巻線21は、コア22に直接的に巻かれてもよいし、巻線21をボビンなどに巻き、巻線21が巻かれたボビンなどをコア22に挿入してもよい。
【0027】
また、ティース20の直径(ティース20の断面積:XY断面の面積)は、コア22の直径(コア22の断面積:XY断面の面積)よりも大きいことが好ましい。そして、ティース20の直径は、巻線21の外径よりも小さく、巻線21の内径よりも大きいことが好ましい。また、コア22の直径は、接合部24の直径よりも大きいことが好ましい。
【0028】
電磁石部は、巻線21に電流を流し、電磁石部を励磁することにより、磁力が発生する。そして、永久磁石10を有する被搬送体(以下、永久磁石10と省略して説明する)を、電磁石部A(位置0(p.u.))から電磁石部B(位置20(p.u.))へ(X方向へ)移動させる場合には、電磁石部Bを励磁し、電磁石部Aから電磁石部Bへの推力を発生させる。これにより、永久磁石10は、電磁石部Aから電磁石部Bへ移動する。
【0029】
つまり、永久磁石10をX方向へ移動させるためには、巻線21Bに電流を流し、X方向への推力を発生させる。巻線21Bに電流を流すことにより、永久磁石10は、ティース20Bに引き寄せられ、位置20(p.u.)に移動する。
【0030】
逆に、永久磁石20を位置20(p.u.)から位置0(p.u.)へ(-X方向へ)移動させる場合には、巻線21Aに電流を流すことにより、-X方向への推力が発生し、永久磁石10は、ティース20Aに引き寄せられ、位置0(p.u.)に移動する。
【0031】
つまり、永久磁石10の搬送経路に応じて、搬送経路に位置する電磁石部を、順次励磁することにより、永久磁石10を、搬送経路に応じて、移動させることができる。
【0032】
また、搬送装置1は、ティース20Aとティース20Bとの間に、磁性体からなる磁気結合部23を有する。
【0033】
このように、電磁石部Aと電磁石部Bとは、上部(+Z方向)では磁気結合部23により磁気的に接続され、下部(-Z方向)では電磁石部固定ベース30により磁気的に接続される。
【0034】
なお、永久磁石10と永久磁石10に対向するティース20との間には、非磁性体からなる搬送平面が設置される。つまり、搬送平面は、電磁石部の上方に設置され、永久磁石10は、搬送平面上を移動する。そして、電磁石部固定ベース30上に、複数個の電磁石部を整列して設置することにより、X方向及び/又はY方向に、永久磁石10を広範囲に移動させることができる。
【0035】
なお、実施例1では、永久磁石10として、希土類磁石やフェライト磁石などの永久磁石を使用する。しかし、永久磁石に限定されるものではなく、軟磁性体を使用してもよく、また、永久磁石と軟磁性体との組み合わせを使用してもよい。
【0036】
次に、電磁石部Aと電磁石部Bとの間における推力及びディテントを説明する。
【0037】
図3は、電磁石部Aと電磁石部Bとの間における推力及びディテントを説明する説明図である。
【0038】
図3は、磁気結合部23を設置しない場合であって、巻線21Bに、X方向への推力が発生するように、電流を流した場合に発生するX方向の推力特性(電流あり)と、巻線21Bに電流を流さない場合であっても発生するX方向の推力特性(電流なし)と、の関係を示す。なお、巻線21Bに電流を流さない場合であっても発生するX方向の推力特性を、特に、以下「ディテント」と呼称する。
【0039】
図3に示すように、永久磁石10とティース20Aとが対向する位置(位置0(p.u.))及び永久磁石10とティース20Bとが対向する位置(位置20(p.u.))と、永久磁石10とティース20Aとが対向しない位置及び永久磁石10とティース20Bとが対向しない位置と、の間には、永久磁石10とティース20Aとの間に発生する引力及び永久磁石10とティース20Bと間に発生する引力により、推力及びディテントに脈動が発生する。
【0040】
つまり、永久磁石10の位置により、電磁石部の磁気回路のパーミアンスが変化し、推力に脈動が発生する。
【0041】
なお、永久磁石10に軟磁性体を使用する場合には、ディテントに脈動は発生しない。しかし、巻線21Bに電流を流した場合には、軟磁性体の位置により、電磁石部の磁気回路のパーミアンスが変化し、推力に脈動が発生する。
【0042】
永久磁石10を移動させる場合、つまり、検体を搬送する場合、開栓状態で検体を搬送する場合がある。この場合、推力に脈動が発生すると、検体の飛散などが発生する可能性がある。このため、搬送装置1は、可能な限り、推力の脈動を低減する必要がある。
【0043】
そこで、推力の脈動を低減するため、ティース20Aとティース20Bとの間に、磁気結合部23を設置する。ティース20A及びティース20Bと磁気結合部23とは磁気的に接続される。なお、実施例1では、ティース20A及びティース20Bと磁気結合部23とは、構造上、別体に形成される。ティース20A及びティース20Bと磁気結合部23とが、一体に形成されてもよい。
【0044】
そして、電磁石部Aと電磁石部Bとは、上部(永久磁石10に対向する側)で磁気結合部23により磁気的に接続され、下部(永久磁石10に対向する側と反対の側)で電磁石部固定ベース30により磁気的に接続される。
【0045】
次に、ティース20Aとティース20Bとの間に磁気結合部23を設置した場合の推力特性の変化を説明する。
【0046】
図4は、ティース20Aとティース20Bとの間に磁気結合部23を設置した場合の推力特性の変化を説明する説明図である。
【0047】
図4において、
(1)磁気結合部23なしの場合は、ティース20の直径(8mm:巻線21の内径よりも小さい)ものを使用し、ティース20Aとティース20Bとの間に磁気結合部23を設置していない場合(比較例)の実験結果である。
(2)磁気結合部23あり(A)の場合は、ティース20の直径(8mm:巻線21の内径よりも小さい)ものを使用し、ティース20Aとティース20Bとの間に、厚さ(Z方向寸法)1.0mm、幅(Y方向寸法)1.0mmの磁気結合部23を設置した場合の検討結果である。
(3)磁気結合部23あり(B)の場合は、ティース20の直径(14mm:巻線21の内径よりも大きい(
図2参照))ものを使用し、ティース20Aとティース20Bとの間に、厚さ(Z方向寸法)0.5mm、幅(Y方向寸法)1.0mmの磁気結合部23を設置した場合の実験結果である。
(4)磁気結合部23あり(C)の場合は、ティース20の直径(14mm:巻線21の内径よりも大きい(
図2参照))ものを使用し、ティース20Aとティース20Bとの間に、厚さ(Z方向寸法)1.0mm、幅(Y方向寸法)1.0mmの磁気結合部23を設置した場合の実験結果である。
【0048】
図4に示すように、永久磁石1を移動させる場合、(2)では、比較例に比較して、推力は低下するものの、電磁石部の磁気回路のパーミアンスの変化が小さくなり、推力の脈動を低減することができる。
【0049】
更に、(3)では、比較例に比較して、推力もほぼ同等に維持し、電磁石部の磁気回路のパーミアンスの変化が小さくなり、推力の脈動を低減することができる。
【0050】
更に、(4)では、比較例に比較して、推力は若干低下するものの、電磁石部の磁気回路のパーミアンスの変化が小さくなり、推力の脈動を大きく低減することができる。
【0051】
なお、磁気結合部23の断面積(YZ断面の面積)が大きくなる((3)と(4)との比較)と、永久磁石10に作用する磁束が減少し、推力が低下することが分かる。そこで、磁気結合部23の断面積は、0.5mm2以上1.0mm2以下とすることが好ましい。これにより、推力を大きく低下させることなく、推力の脈動を低減することができる。
【0052】
また、ティース20の厚さと磁気結合部23の厚さとが同じ場合には、磁気結合部23の幅は、ティース20の直径の1/10~1/15が好ましい。これにより、推力の低下を抑制しつつ、推力の脈動を低減することができる。
【0053】
また、ティース20の直径を大きくすることにより、推力の低下を抑制することができる。そして、磁気結合部23を、電磁石部の上部(永久磁石10に対向する側)に設置することにより、ティース20の直径を大きくすることができる。これにより、推力を大きくすることができると共に、推力の脈動を低減することができる。
【0054】
更に、電磁石部の下部(永久磁石10に対向する側と反対の側)に、電磁石部固定ベース30が接続されることにより、磁気結合部23と共に、ティース20A、磁気結合部23、ティース20B、コア22B、接合部24B、電磁石部固定ベース30、接合部24A、コア22A、ティース20Aの磁気回路(閉磁路)を構成することができる。
【0055】
このように、実施例1によれば、永久磁石10を移動させる場合、推力の脈動を低減(各位置における推力の変化を小さく)することができ、検体の飛散などの発生を低減することができる。そして、永久磁石10を、永久磁石10を移動させたい方向に、大きい推力で、安定して移動させることができる。
【0056】
また、実施例1によれば、推力を大きくするために、コア22の断面積(XY断面の面積)を大きくする必要がなく、巻線21の空間が減少することもない。そして、巻線21をコア22に巻く際や巻線21が巻かれたボビンなどをコア22に挿入する際の、巻線21の設置の作業性が悪化することもない。
【0057】
実施例1に記載する搬送装置は、磁性体からなるティース20A(第1ティース)と、ティース20Aに接続し、磁性体からなるコア22A(第1コア)と、コア22Aの周囲に形成される巻線21A(第1巻線)と、を有する電磁石部A(第1電磁石部)と、電磁石部Aに隣接して設置され、磁性体からなるティース20B(第2ティース)と、ティース20Bに接続し、磁性体からなるコア22B(第2コア)と、コア22Bの周囲に形成される巻線21B(第2巻線)と、を有する電磁石部B(第2電磁石部)と、を有し、電磁石部Aのティース20Aと電磁石部Bのティース20Bとの間に、磁性体からなる磁気結合部23を有する。
【0058】
このように、実施例1に記載する搬送装置1は、最下部に格子状の電磁石部固定ベース30を設置し、電磁石部固定ベース30に、第1電磁磁石部(接合部24と一体に形成されたコア22、巻線21、ティース20を有する)と、第2電磁磁石部(接合部24と一体に形成されたコア22、巻線21、ティース20を有する)と、を設置する。
【0059】
そして、第1電磁石部のティース20と第2電磁石部のティース20との間に磁気結合部23を設置し、ティース20と磁気結合部23とを形成する部材の上方に、搬送平面を設置する。搬送平面50上を永久磁石10が移動する。
【0060】
これにより、実施例1によれば、永久磁石10を移動させる推力の脈動を低減し、永久磁石10の移動中の、永久磁石10の振動を低減し、安定した移動を実現することができる。
【0061】
次に、実施例1に記載する搬送装置1を有する検体分析システムの概略構成を模式的に説明する。
【0062】
図18は、実施例1に記載する搬送装置1を有する検体分析システムの概略構成を模式的に説明するブロック図である。
【0063】
検体分析システム100は、分析に必要な前処理を実行する検体前処理装置200と、複数の分析を実行する検体分析装置300と、検体前処理装置200と検体分析装置300との間に設置される搬送装置1と、を有する。
【0064】
これにより、検体前処理装置200から検体分析装置300へ、検体が搬送される際には、特に、搬送装置1において永久磁石10を移動させる際には、推力の脈動を低減することができる。
【実施例2】
【0065】
次に、実施例2に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0066】
図5は、実施例2に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図である。
【0067】
実施例2に記載する搬送装置1は、電磁石部を、5列(X方向)×5列(Y方向)の25個が、整列して設置される。つまり、永久磁石10は、X方向にティース5つ分及びY方向にティース5つ分の範囲で移動することができる。なお、永久磁石10の移動動作の原理や搬送装置1の基本的な構成は、実施例1と同様である。
【0068】
また、搬送装置1は、X方向では、円形形状のティース20Aと円形形状のティース20Bとの間に磁気結合部23Aを有し、Y方向では、円形形状のティース20Bと円形形状のティース20Cとの間に磁気結合部23Bを有する。搬送装置1は、永久磁石10を、X方向及びY方向の何れの方向にも移動させる。
【0069】
つまり、搬送装置1は、電磁石部を、複数個、整列して設置し、X方向に隣接するティース20間に設置される磁気結合部23Aと、Y方向に隣接するティース20間に設置される磁気結合部23Bと、有する。
【0070】
25個の電磁石部は、各電磁石部の下部で、格子状に形成される電磁石部固定ベース30に、整列して設置される。
【0071】
このように、磁気結合部23A及び磁気結合部23Bを設置することにより、永久磁石10は、X方向及びY方向の何れの方向に移動する場合であっても、推力の脈動を低減することができる。更に、各ティースが、X方向及びY方向において、磁気結合部23により接続されるため、電磁石部の磁気回路の剛性が向上し、X方向及びY方向において、推力の脈動を低減することができる。また、巻線21に流した電流の変化により発生する脈動による永久磁石10の振動や騒音などを低減することができる。
【0072】
図6は、実施例2に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する断面(XZ断面)図である。
図6は、
図5に示す点線Eで、磁気回路を切り取った断面(XZ断面)図を示す。
【0073】
実施例2では、ティース20Aとティース20Bとの間に設置される磁気結合部23Aは、ティース20Aとティース20Bと一体に形成され、ティース20Bとティース20Cとの間に設置される磁気結合部23Bは、ティース20Bとティース20Cと一体に形成される。このように、実施例2では、ティース20と磁気結合部23とが一体に形成される。
【0074】
また、実施例2では、コア22とティース20とは別体に形成され、コア22と接合部24とは一体に形成される。そして、接合部24は、電磁石部固定ベース30に、圧入により設置される。
【0075】
このように、コア22とティース20とを別体に形成することにより、容易に巻線21を組み立てることができる。
【0076】
次に、実施例2に記載する搬送装置1を模式的に分解して説明する。
【0077】
図7は、実施例2に記載する搬送装置1を模式的に説明する分解斜視図である。
【0078】
搬送装置1は、以下の製造工程により、製造される。
(1)格子状に形成された電磁石部固定ベース30を設置する。
(2)電磁石部固定ベース30に、一体に形成された接合部24とコア22とを剣山状に(整列して直立して)設置する。なお、実施例2では、接合部24は、電磁石部固定ベース30に、圧入により設置される。
(3)剣山状に設置されたコア22に、巻線21を設置する。なお、実施例2では、巻線21をボビンなどに巻き、巻線21が巻かれたボビンなどをコア22に挿入する。
(4)巻線21が設置されたコア22に、一体に形成されたティース20と磁気結合部23とを、コア22に被せるように、設置する。
【0079】
例えば、ティース20とコア22とを一体に形成した場合には、ティース20とコア22とは、XZ断面で、T字形状になる。T字形状のコア22に巻線21を設置する場合には、巻線21の設置の作業性が悪化する場合がある。
【0080】
このため、コア22とティース20とを別体に形成し、一体に形成されたティース20と磁気結合部23とを、コア22に被せるように、設置する。これにより、巻線21の設置の作業性が悪化することがない。
【0081】
これにより、電磁石部固定ベース30に一体に形成された接合部24とコア22とを設置し、コア22に巻線21を設置し、コア22に一体に形成されたティース20と磁気結合部23とを設置するとの、一連の製造工程により、搬送装置1を製造することができる。
【0082】
また、コア22とティース20とを別体に形成することにより、コア22の直径よりもティース20の直径を、容易に大きくすることができる。つまり、コア22の直径よりもティース20の直径を大きくすることにより、推力を大きくすることができる。
【0083】
このように、実施例2によれば、磁気結合部23を設置することにより、推力の脈動を低減する。そして、コア22とティース20とを別体に形成することにより、コア22の直径よりもティース20の直径を大きくし、推力を大きくし、磁気結合部23の設置による推力の低下を抑制することができる。また、巻線21の設置の作業性を悪化させることもない。更に、ティース20と磁気結合部23とを一体に形成することにより、ティース20と磁気結合部23とを形成する部材の剛性を向上させることができる。
【0084】
また、コア22とティース20とを別体に形成することにより、例えば、推力特性への影響が大きい、ティース20と磁気結合部23との製造精度を確保することができれば、コア22や電磁石部固定ベース30の加工精度や組み立て精度に多少のばらつきがあったとしても、推力特性への影響を小さくすることできる。
【0085】
また、コア22とティース20とを別体に形成することにより、例えば、ティース20と磁気結合部23との位置精度を確保することができれば、推力特性への影響が小さい、コア22や電磁石部固定ベース30の加工精度や組み立て精度を緩和することができる。
【実施例3】
【0086】
次に、実施例3に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0087】
図8は、実施例3に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する断面(XZ断面)図である。なお、永久磁石10の移動動作の原理や搬送装置1の基本的な構成は、実施例1と同様である。
【0088】
実施例3に記載する搬送装置1は、コア22とティース20とは別体に形成され、コア22と接合部24とは一体に形成される。そして、接合部24は、電磁石部固定ベース30に、圧入により設置される。そして、コア22に、巻線21が挿入される。
【0089】
コア22Aの上部には、ティース20Aが設置され、コア22Bの上部には、ティース20Bが設置され、ティース20Aとティース20Bとの間には、磁気結合部23が設置される。なお、実施例3では、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とは、別体に形成される。しかし、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とが、一体に形成されてもよい。また、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とは同じ厚さであることが好まし。
【0090】
そして、実施例3では、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とは、永久磁石10が移動する搬送平面50に埋め込まれる。なお、搬送平面50は、非磁性体(例えば、樹脂など)で形成される。
【0091】
例えば、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とを、個別に製造し、射出成型などで搬送平面50を形成する際に、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とを、搬送平面50に埋め込み、形成する。
【0092】
これにより、実施例3では、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とが埋め込まれた搬送平面50を変更することにより、容易に推力特性を変更することができる。
【実施例4】
【0093】
次に、実施例4に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0094】
図9は、実施例4に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する断面(XZ断面)図である。なお、永久磁石10の移動動作の原理や搬送装置1の基本的な構成は、実施例1と同様である。
【0095】
実施例4に記載する搬送装置1は、コア22とティース20とは別体に形成され、コア22と接合部24とは一体に形成される。そして、接合部24は、電磁石部固定ベース30に、圧入により設置される。そして、コア22に、巻線21が挿入される。
【0096】
コア22Aの上部には、ティース20Aが設置され、コア22Bの上部には、ティース20Bが設置され、ティース20Aとティース20Bとの間には、磁気結合部23が設置される。なお、実施例4では、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とは、一体に形成される。しかし、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とが、別体に形成されてもよい。また、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とは同じ厚さであることが好まし。
【0097】
そして、実施例4では、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とは、永久磁石10が移動する搬送平面50とコア22A及びコア22Bとの間に設置される。つまり、搬送平面50は、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23との上方に設置される。なお、搬送平面50は、非磁性体(例えば、樹脂など)で形成される。
【0098】
特に、実施例4では、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とを、板状に一体に形成する。
【0099】
これにより、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とを、プレスなどで容易に形成することができる。また、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とを形成する板状の部材の剛性を向上させることができ、作業時における部材の変形を防止し、部材のハンドリングを容易にする。
【0100】
また、ティース20Aとティース20Bと磁気結合部23とを形成する板状の部材を、例えば、電磁鋼板などで構成し、Z方向に複数枚を重ねて、必要な推力特性を得ることができる。また、Z方向に重ねる枚数を変更し、推力特性を変更することもできる。
【0101】
また、実施例4によれば、搬送平面50が摩耗した場合であっても、搬送平面50を容易に交換することができる。
【実施例5】
【0102】
次に、実施例5に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0103】
図10Aは、実施例5に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図である。
【0104】
図10Bは、実施例5に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【0105】
実施例5に記載する搬送装置1は、実施例2に記載する搬送装置1に比較して、コア22の上部に設置されるティース20の直径が複数種類(実施例5では2種類)ある点、及び、ティース20とティース20との間に設置される磁気結合部23の幅が複数種類(実施例5では2種類)ある点が、相違する。
【0106】
図10Aに示す点線A、点線B、点線C、点線D、点線Eは、永久磁石10が移動する搬送路(搬送ライン)である。
【0107】
搬送路A、搬送路Bに設置されるティース20Eの直径は、搬送路C、搬送路D、搬送路Eに設置されるティース20Fの直径よりも大きい。
【0108】
また、搬送路A、搬送路Bに設置される磁気結合部23Eの幅は、搬送路C、搬送路D、搬送路Eに設置される磁気結合部23Fの幅よりも細い。
【0109】
このように、一つの搬送装置1において、搬送路の特徴に応じて、ティース20の直径や磁気結合部23の幅を変更する。
【0110】
搬送装置1の推力特性は、ティース20の直径(形状)や磁気結合部23の幅(形状)により、変化する。つまり、巻線21、コア22、接合部24、電磁石部固定ベース30が同一であっても、ティース20の直径や磁気結合部23の幅を変更することにより、推力の脈動の低減効果や推力の低下の抑制効果(推力の促進効果)を変更することができる。また、巻線21、コア22、接合部24、電磁石部固定ベース30の設計自由度も増加する。
【0111】
例えば、推力の脈動の低減効果の大きい搬送路と推力の脈動の低減効果の小さい搬送路とを設置することができ、推力の促進効果の大きい搬送路と推力の促進効果の小さい搬送路とを設置することができる。
【0112】
実施例5では、推力の脈動の低減効果の大きい搬送路であって、推力の促進効果の小さい搬送路(搬送路の特徴(イ))は、搬送路C、搬送路D、搬送路Eであり、推力の脈動の低減効果の小さい搬送路であって、推力の促進効果の大きい搬送路(搬送路の特徴(ロ))は、搬送路A、搬送路Bである。
【0113】
つまり、搬送装置1は、電磁石部を、複数個、整列して設置し、複数の搬送路を設置し、搬送路の特徴に応じて、ティース20の形状及び/又は磁気結合部23の形状を変更することができる。
【0114】
このように、実施例5によれば、一つの搬送装置1において、搬送路の特徴が相違する搬送路を有する搬送装置1を提供することができる。例えば、搬送路の特徴(イ)を有する搬送路では、開栓状態で検体を低速で搬送し、搬送路の特徴(ロ)を有する搬送路では、閉栓状態で検体を高速で搬送する。
【実施例6】
【0115】
次に、実施例6に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0116】
図11は、実施例6に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する説明図である。
【0117】
図11(a)は、実施例6に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図であり、11(b)は、実施例6に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図であり、
図11(c)は、実施例6に記載する搬送装置1を模式的に説明する分解斜視図である。
【0118】
実施例4に記載する搬送装置1は、実施例2に記載する搬送装置1に比較して、以下の点が相違する。
(1)ティース20の直径とコア22の直径とが同一である点。
(2)搬送路には、X方向及びY方向に9個の電磁石部を有し、搬送路と搬送路との間には、X方向及びY方向に5個の電磁石部を有する点。
(3)搬送路と搬送路との間に設置される電磁石部は、一つ置きに、設置される点。
【0119】
(1)により、上方から巻線21の状態を容易に俯瞰することができる。つまり、巻線21に絶縁不良などの不具合が発生した場合に、目視で確認することができ、不具合が発生した巻線21を容易に断定することができる。
【0120】
そして、ティース20と磁気結合部23とは一体に形成されるため、ティース20と磁気結合部23とを、容易に取り外すことができ、不具合が発生した巻線21を、容易に交換することができる。
【0121】
(2)及び(3)により、例えば、隣り合う搬送路を同時に移動する二つの永久磁石10がある場合に、二つの永久磁石10の間で、干渉させないようにそれぞれの永久磁石10を移動させることができる。特に、一つの搬送装置1において、搬送路の特徴が相違する搬送路を有する場合に、有効である。
【0122】
図17は、実施例6に記載する搬送装置1の搬送平面50を加えた構成を模式的に説明する説明図である。
【0123】
図17(a)は、実施例6に記載する搬送装置1の搬送平面50を加えた構成を模式的に説明する斜視図であり、
図17(b)は、実施例6に記載する搬送装置1を模式的に説明する分解斜視図である。
【0124】
図17に示すように、ティース20と磁気結合部23とを形成する部材の上方には、搬送平面50が設置される。そして、搬送平面50上を永久磁石10が移動する。
【実施例7】
【0125】
実施例7に記載する搬送装置1は、実施例6に記載する搬送装置1に比較して、コア22の直径よりもティース20の直径を大きくする点が、相違する。
【0126】
そして、実施例7に記載する搬送装置1は、実施例6に記載する搬送装置1と同様に、電磁石部が格子状に設置され、5×5の搬送路(X方向に5つの搬送路及びY方向に5つの搬送路)を有する。
【0127】
また、実施例7に記載する搬送装置1は、実施例6に記載する搬送装置1と同様に、搬送路と搬送路との間に設置される電磁石部も、ティース20と、ティース20に接続するコア22と、コア22の周囲に形成される巻線21と、コア22に接続し、電磁石部固定ベース30に接合する接合部24と、を有する。
【0128】
これにより、例えば、隣り合う搬送路を同時に移動する二つの永久磁石10がある場合に、二つの永久磁石10の間で、干渉させないようにそれぞれの永久磁石10を移動させることができる。特に、一つの搬送装置1において、搬送路の特徴が相違する搬送路を有する場合に、有効である。更に、推力を大きくすることができる。
【0129】
なお、搬送装置1は、永久磁石10を、X方向、Y方向、及びXY方向に移動させることができる。
【実施例8】
【0130】
次に、実施例8に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0131】
図12は、実施例8に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【0132】
実施例8に記載する搬送装置1は、実施例7に記載する搬送装置1に比較して、ティース20の形状と磁気結合部23の形状とが相違する。
【0133】
つまり、実施例7では、ティース20は円形形状であり、磁気結合部23は直線形状であるが、実施例8では、ティース20は概ね円形形状であるものの、磁気結合部23は曲線形状である。
【0134】
磁気結合部23を曲線形状にすることにより、永久磁石10が移動する際の、電磁石部の磁気回路のパーミアンスの変化をなだらかにすることができ、推力の脈動を低減することができる。このように、磁気結合部23の形状を変化させることにより、電磁石部の磁気回路のパーミアンスの変化を調整することができ、推力の脈動を低減することができる。
【0135】
なお、特に、実施例8では、コア22とティース20とは、別体に形成されることが好ましい。
【実施例9】
【0136】
実施例9に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0137】
図13は、実施例9に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【0138】
実施例9に記載する搬送装置1は、実施例7に記載する搬送装置1に比較して、ティース20の形状が相違する。
【0139】
つまり、実施例7では、ティース20は円形形状であるが、実施例9では、ティース20は矩形形状(実施例9では正方形)である。そして、矩形形状の角部で、磁気結合部23と接続する。
【0140】
ティース20を矩形形状にし、矩形形状の角部で、磁気結合部23と接続することにより、永久磁石10が円形形状の場合、円形形状の永久磁石10と矩形形状のティース20との対向面の変化量を一定(なだらか)にすることができる。これにより、電磁石部の磁気回路のパーミアンスの変化を一定(なだらか)にすることができ、推力の脈動を低減することができる。
【0141】
なお、実施例9では、ティース20の形状を矩形形状にするが、これに限定されるものではなく、多角形状にしてもよい。
【0142】
また、特に、実施例9では、コア22とティース20とは、別体に形成されることが好ましい。
【実施例10】
【0143】
次に、実施例10に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0144】
図14は、実施例10に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【0145】
実施例10に記載する搬送装置1は、実施例7に記載する搬送装置1に比較して、ティース20の形状と磁気結合部23の形状とが相違する。
【0146】
つまり、実施例7では、ティース20は円形形状であり、磁気結合部23は直線形状であるが、実施例10では、ティース20は概ね矩形形状(実施例10では概ね正方形)であり、磁気結合部23は曲線形状である。そして、矩形形状の辺部で、磁気結合部23と接続する。
【0147】
ティース20を矩形形状にし、矩形形状の辺部で、磁気結合部23と接続することにより、X方向に永久磁石10が移動する場合、及び、Y方向に永久磁石10が移動する場合に加え、XY方向に永久磁石10が移動する場合であっても、推力の脈動を低減することができる。
【0148】
X方向に永久磁石10が移動する場合、及び、Y方向に永久磁石10が移動する場合は、ティース20とティース20との間に磁気結合部23を設置するため、推力の脈動を低減することができる。
【0149】
一方、XY方向に永久磁石10が移動する場合(例えば、ティース20Gからティース20Hへ永久磁石10が移動する場合)は、X方向やY方向に永久磁石10が移動する場合(例えば、ティース20Gからティース20Iへ永久磁石10が移動する場合やティース20Iからティース20Hへ永久磁石10が移動する場合)に比較して、永久磁石10の移動距離が、概ねルート2倍になる。つまり、永久磁石10がXY方向に移動する場合は、永久磁石10がX方向やY方向に移動する場合に比較して、永久磁石10の移動距離が大きくなり、大きな推力が必要となる。
【0150】
そこで、実施例10では、ティース20を矩形形状にし、矩形形状の対角線上に、矩形形状の角部がくるように、ティース20を設置する。
【0151】
永久磁石10が、矩形形状の対角線上を移動することにより、永久磁石10がXY方向に移動する場合であっても、永久磁石10とティース20とが対向する面積を大きくすることができ、推力の脈動を低減することができる。
【0152】
なお、実施例10では、ティース20の形状を矩形形状にするが、これに限定されるものではなく、多角形状にしてもよい。
【0153】
また、特に、実施例10では、コア22とティース20とは、別体に形成されることが好ましい。
【実施例11】
【0154】
次に、実施例11に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0155】
図15は、実施例11に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【0156】
実施例11に記載する搬送装置1は、実施例7に記載する搬送装置1に比較して、ティース20の形状が相違する。
【0157】
つまり、実施例7では、電磁石部の設置位置で、ティース20の形状を変化させないが、実施例11では、電磁石部の設置位置で、ティース20の形状を変化させる。
【0158】
実施例11では、以下の6種類のティース20の形状を有する。例えば、(1)X方向とY方向との2箇所で磁気結合部23と接続するティース20、(2)X方向の2箇所で磁気結合部23と接続するティース20、(3)Y方向の2箇所で磁気結合部23と接続するティース20、(4)X方向の2箇所とY方向の1箇所で磁気結合部23と接続するティース20、(5)X方向の1箇所とY方向の2箇所で磁気結合部23と接続するティース20、(6)X方向の2箇所とY方向の2箇所で磁気結合部23と接続するティース20、である。
【0159】
なお、(2)と(3)とはティース20が直線上に設置される位置であり、(4)と(5)とはティース20がT字状に設置される位置であり、(6)はティース20が十字状に設置される位置である。
【0160】
このように、電磁石部の設置位置で、ティース20の形状を変化させることができる。これにより、電磁石部の設置位置で、推力特性を変更することができる。
【0161】
また、特に、実施例11では、コア22とティース20とは、別体に形成されることが好ましい。
【実施例12】
【0162】
次に、実施例12に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する。
【0163】
図16Aは、実施例12に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する斜視図である。
【0164】
図16Bは、実施例12に記載する搬送装置1の構成を模式的に説明する上面図である。
【0165】
実施例12に記載する搬送装置1は、実施例7に記載する搬送装置1に比較して、磁気結合部23の設置位置が相違する。
【0166】
つまり、実施例7では、ティース20とティース20との間であって、X方向及びY方向に、磁気結合部23が設置されるが、実施例12では、更に、XY方向にも磁気結合部23が設置される。このように、搬送装置1は、X方向の磁気結合部23Aと、Y方向の磁気結合部23Bと、XY方向の磁気結合部23Cと、を有する。
【0167】
つまり、搬送装置1は、電磁石部を、複数個、整列して設置し、X方向に隣接するティース20間に設置される磁気結合部23Aと、Y方向に隣接するティース20間に設置される磁気結合部23Bと、XY方向に隣接するティース20間に設置される磁気結合部23Cと、を有する。
【0168】
XY方向の磁気結合部23Cを設置することにより、永久磁石10がXY方向へ移動する際の、推力の脈動を低減することができる。
【0169】
更に、これにより、ティース20と磁気結合部23とを形成する部材の剛性を向上させることができる。つまり、X方向の磁気結合部23Aと、Y方向の磁気結合部23Bと、XY方向の磁気結合部23Cとにより、ティース20と磁気結合部23とを網目状に接続することができるためである。
【0170】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0171】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【符号の説明】
【0172】
1…搬送装置
10…永久磁石
20…ティース
21…巻線
22…コア
23…磁気結合部
24…接合部
30…電磁石部固定ベース
50…搬送平面
100…検体分析システム
200…検体前処理装置
300…検体分析装置