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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230630BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20230630BHJP
   C08L 77/12 20060101ALI20230630BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230630BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K9/00
C08L77/12
C08K3/04
C08G63/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020525506
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2019022585
(87)【国際公開番号】W WO2019240013
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018113023
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】梅本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】劉 明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久義
(72)【発明者】
【氏名】久米 篤史
(72)【発明者】
【氏名】田口 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079597(WO,A1)
【文献】特開2019-112576(JP,A)
【文献】特開2019-112577(JP,A)
【文献】特開2004-051937(JP,A)
【文献】特開2005-144628(JP,A)
【文献】特開2006-057005(JP,A)
【文献】特開2006-274486(JP,A)
【文献】特開2008-169265(JP,A)
【文献】特開2008-297401(JP,A)
【文献】特開2012-025930(JP,A)
【文献】特開2012-201878(JP,A)
【文献】特開2017-213539(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種の液晶ポリマーと、フーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm -1 の最大ピークが、2800~3000cm -1 の最大ピークよりも高いナノダイヤモンド粒子とを、前記液晶ポリマー100重量部に対してナノダイヤモンド粒子を0.001~5重量部の割合で含有する組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリマーが下記構成を有する、請求項1に記載の組成物。
液晶ポリマーを構成する全構成単位における、
下記式(I)で示される構成単位の含有量が50~100モル%、
下記式(II)で示される構成単位の含有量が0~25モル%、
下記式(III)で示される構成単位の含有量が0~25モル%である
【化1】
(式中、Ar1~Ar3は同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニリレン基を示す。X、Yは、同一又は異なって、-O-、又は-NH-を示す)
【請求項3】
ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
電子スピン共鳴法により測定される、320℃におけるラジカル発生量が2×1016~2×1018spins/gである、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
電子スピン共鳴法により測定される、400℃におけるラジカル発生量が、25℃におけるラジカル発生量の3.0倍以下である、請求項1~の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の組成物の固化物から成る成形体。
【請求項7】
フーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm -1 の最大ピークが、2800~3000cm -1 の最大ピークよりも高いナノダイヤモンド粒子を含む、液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種の液晶ポリマー用酸化防止剤。
【請求項8】
昇温速度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度が450℃以上である、請求項に記載の酸化防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマーとナノダイヤモンド粒子を含む組成物に関する。本願は、2018年6月13日に日本に出願した、特願2018-113023号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は熱や光に曝されることにより酸化劣化して、脆化したり、黄変したりすることが問題である。それを防止するため、樹脂に酸化防止剤を添加することが行われている。例えば、特許文献1には、熱可塑性エラストマーと酸化防止剤とを含む耐熱熱可塑性組成物が記載され、前記酸化防止剤として、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を使用できることが記載されている。
【0003】
一方、液晶ポリマーは融点が300℃以上と高く、高温環境下(例えば150℃以上、300℃未満の高温環境下)でも形状を安定的に維持することができる(例えば、高温環境下でも歪みの発生を抑制して、形状を精度良く維持することができる)。すなわち、耐熱性に優れる。
【0004】
そして、液晶ポリマーを成形するには、液晶ポリマーの融点以上の温度で加熱することが必要であるが、融点以上の温度で加熱することによって液晶ポリマーが酸化劣化し易いことが問題であった。これは、液晶ポリマーに酸化防止剤を添加しても、成形の際の高温加熱によって酸化防止剤が揮発若しくは熱分解してしまい、所期効果が得られないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-116856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、液晶ポリマーと耐熱性に優れた酸化防止剤とを含む組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、液晶ポリマーの成形温度以上の温度に耐熱性を有する酸化防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ナノダイヤモンド粒子は耐熱性に優れ、酸素雰囲気下において400℃まで加熱しても揮発したり分解したりすることがないこと、及び、ナノダイヤモンド粒子を液晶ポリマーに添加すると、ナノダイヤモンド粒子がパーオキシラジカルをトラップすることにより、高温環境下における液晶ポリマーの酸化劣化を防止する効果が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種の液晶ポリマーと、ナノダイヤモンド粒子とを、前記液晶ポリマー100重量部に対してナノダイヤモンド粒子を0.001~5重量部の割合で含有する組成物を提供する。
【0009】
本発明は、また、前記液晶ポリマーが下記構成を有する前記組成物を提供する。
液晶ポリマーを構成する全構成単位における、
下記式(I)で示される構成単位の含有量が50~100モル%、
下記式(II)で示される構成単位の含有量が0~25モル%、
下記式(III)で示される構成単位の含有量が0~25モル%である
【化1】
(式中、Ar1~Ar3は同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニリレン基を示す。X、Yは、同一又は異なって、-O-、又は-NH-を示す)
【0010】
本発明は、また、ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である前記組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、ナノダイヤモンド粒子のフーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm-1の最大ピークが、2800~3000cm-1の最大ピークよりも高い前記組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、電子スピン共鳴法により測定される、320℃におけるラジカル発生量が2×1016~2×1018spins/gである前記組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、電子スピン共鳴法により測定される、400℃におけるラジカル発生量が、25℃におけるラジカル発生量の3.0倍以下である前記組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記組成物の固化物から成る成形体を提供する。
【0015】
本発明は、また、ナノダイヤモンド粒子を含む熱可塑性樹脂用酸化防止剤を提供する。
【0016】
本発明は、また、昇温速度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度が450℃以上である前記熱可塑性樹脂用酸化防止剤を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組成物は液晶ポリマーと共にナノダイヤモンド粒子とを含み、ナノダイヤモンド粒子が液晶ポリマーの酸化劣化の原因となるパーオキシラジカルを捕捉する作用を発揮する。そのため、本発明の組成物を高温で加熱しても、液晶ポリマーが酸化劣化するのを抑制することができ、酸化劣化により液晶ポリマーの靱性が低下し、脆化するのを防止することができ、酸化劣化による黄変を抑制して色相を良好に保持することができる。
また、本発明の組成物の溶融物は流動性に優れると共に、固化に伴う収縮が小さく、反りの発生を抑制することができる。そのため、所望の形状の成形体を精度良く製造することができる。
さらに、本発明の組成物の成形体は、高温環境下(例えば150℃以上、400℃未満の高温環境下)でも物性の低下(例えば、靱性低下、脆化等)を長期に亘って抑制することができる。従って、高温での長期使用に耐える。
本発明の組成物は上記特性を備えるため、例えば、プリント基板実装用部品、コネクタ・ボビン・光ピックアップ部品のケース、マイクロモーター部品などの電気・電子部品材料;コンプレッサー部品、ショックアブソーバー部品等の自動車部品材料として好適に使用することができる。
【0018】
また、本発明の酸化防止剤は、酸化防止効果(若しくは、パーオキシラジカル捕捉効果)と耐熱性とを兼ね備えるナノダイヤモンド粒子を主成分として含有する。そのため、成形温度が300℃以上となるような高融点熱可塑性樹脂の酸化防止剤(若しくは、パーオキシラジカル捕捉剤)として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で得られたND1のFT-IRデータを示す図である。
図2】実施例2で得られたND2のFT-IRデータを示す図である。
図3】実施例3で得られたND3のFT-IRデータを示す図である。
図4】実施例4で得られたND4のFT-IRデータを示す図である。
図5】ESR測定により求めた、実施例8及び比較例1で得られた組成物の、温度とラジカル発生量の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[組成物]
本発明の組成物は、液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種の液晶ポリマーと、ナノダイヤモンド粒子(以後、「ND粒子」と称する場合がある)とを、前記液晶ポリマー100重量部に対してナノダイヤモンド粒子を0.001~5重量部の割合で含有する。
【0021】
(液晶ポリマー)
本発明における液晶ポリマーは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明の液晶ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0022】
本発明における液晶ポリマーは、液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種の液晶ポリマーである。
【0023】
前記液晶ポリマーとしては、例えば、下記式(I)示される構成単位を少なくとも含有し、下記式(II)で示される構成単位及び/又は下記式(III)で示される構成単位を含んでいてもよい液晶ポリマーが挙げられる。
【化2】
(式中、Ar1~Ar3は同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニリレン基を示す。X、Yは、同一又は異なって、-O-、又は-NH-を示す)
【0024】
前記式中のAr1~Ar3が置換基として有していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0025】
置換基として有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
【0026】
置換基として有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6~14(とりわけ、炭素数6~10)のアリール基が挙げられる。
【0027】
液晶ポリマーを構成する全構成単位における、
式(I)で示される構成単位の含有量は、例えば50~100モル%である。
式(II)で示される構成単位の含有量は、例えば0~25モル%である。
式(III)で示される構成単位の含有量は、例えば0~25モル%である。
【0028】
液晶ポリマーを構成する全構成単位に対して上記式(I)で表される構成単位と上記式(II)で表される構成単位と上記式(III)で表される構成単位の含有量(合計含有量)は、例えば70モル%以上であり、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0029】
また、前記液晶ポリマーは、下記式(VI)で示される構成単位の含有量が、液晶ポリマーを構成する全構成単位の例えば30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下、とりわけ好ましくは1モル%以下である。下記式(VI)で示される構成単位の含有量が上記範囲を上回ると、ND粒子による酸化防止効果が得られにくくなる傾向がある。
【化3】
(式中、Ar4~Ar6は同一又は異なって、ハロゲン原子、アルキル基、及びアリール基から選択される少なくとも1種の置換基を有していてもよい、フェニレン基、ナフチレン基、又はビフェニリレン基を示す)
【0030】
液晶ポリマーとしては、より具体的には、下記(1)~(5)の態様が挙げられる。さらに下記構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、からなるポリエステル;
(3)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(c)芳香族ジオール及びその誘導体の1種又は2種以上と、からなるポリエステル;
(4)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、
(c)芳香族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、からなるポリエステルアミド;
(5)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、
(c)芳香族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(d)芳香族ジオール及びその誘導体の1種又は2種以上と、からなるポリエステルアミド
【0031】
液晶ポリマーを構成するモノマーの好ましい具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0032】
液晶ポリマーは、特に限定されず公知の方法で調製することができ、例えば、直接重合法やエステル交換法が挙げられる。前記直接重合法では、上記モノマー(又はモノマー混合物)を、溶融重合、溶液重合、スラリー重合、固相重合法、又はこれらの2種以上の組み合わせ(好ましくは、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせ)に付すことによって製造することができる。
【0033】
直接重合法では、上記モノマーがエステル形成能を有する化合物である場合は、そのまま重合に用いることができるが、上記モノマーがエステル形成能を有さない化合物である場合は、予めアシル化剤(例えば、無水酢酸等の無水カルボン酸)等を用いてエステル形成能を有する誘導体に変性されたものを用いることが好ましい。
【0034】
上記モノマーの重合は触媒の存在下で行うことが好ましい。前記触媒としては、例えば、金属塩系触媒、有機化合物系触媒等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記金属塩系触媒としては、例えば、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等が挙げられる。
【0036】
前記有機化合物系触媒としては、例えば、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0037】
前記触媒の使用量は、モノマー100重量部に対して、例えば0.0001~0.01重量部程度である。
【0038】
上記モノマーの重合温度は、例えば200~400℃である。
【0039】
上記モノマーの重合反応時の雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。また、上記モノマーの重合反応は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことができる。
【0040】
上記方法で得られた液晶ポリマーは、更に、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。加熱温度は、例えば230~350℃、好ましくは260~330℃であり、最終到達圧力は例えば10~760Torr(即ち、1330~101080Pa)である。
【0041】
前記液晶ポリマーの融点若しくは軟化点は、例えば250℃以上、好ましくは270℃以上である。尚、前記液晶ポリマーの融点若しくは軟化点の上限は、例えば400℃である。
【0042】
前記液晶ポリマーの溶融粘度として、液晶ポリマーの融点若しくは軟化点よりも10~30℃高いシリンダー温度において、せん断速度1000sec-1の条件下で測定した溶融粘度は、例えば5~100Pa・s、好ましくは10~60Pa・s、特に好ましくは15~50Pa・sである。尚、「液晶ポリマーの融点若しくは軟化点よりも10~30℃高いシリンダー温度」とは、液晶ポリマーを、溶融粘度の測定が可能な程度にまで溶融することができるシリンダー温度を意味しており、融点若しくは軟化点よりも何℃高いシリンダー温度とするかは、前記温度範囲内(すなわち、10~30℃の範囲内)において、液晶ポリマーの種類に応じて適宜選択することができる。
【0043】
(ナノダイヤモンド粒子)
ND粒子の一次粒子径(D50、メディアン径)は10nm以下であり、好ましくは8nm以下、特に好ましくは7nm以下、最も好ましくは6nm以下である。ND粒子の粒子径の下限は、例えば2nmである。
【0044】
前記ND粒子は、その表面にカルボニル基(C=O基)を有することが、酸化防止効果(特に、液晶ポリマーの酸化防止効果)に優れる点で好ましい。本発明におけるND粒子は、その表面にカルボニル基以外にも他の官能基(例えば、C-H基等)を有していてもよいが、他の官能基よりもカルボニル基を多く有することが好ましい。
【0045】
前記ND粒子の表面官能基は、赤外吸収スペクトルによって確認することができる。例えば、赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm-1の最大ピーク(例えば、図1中のP1)が、2800~3000cm-1の最大ピーク(例えば、図1中のP2)よりも高い場合(詳細には、1712cm-1付近にC=Oに由来する吸収ピーク、2915cm-1付近にC-Hに由来する吸収ピークが見られ、1712cm-1の吸収ピークが、2915cm-1の吸収ピークよりも高い場合)、そのND粒子は表面官能基としてカルボニル基を他の官能基よりも多く有することが分かる。尚、赤外吸収スペクトルは、FTIR[フーリエ変換赤外分光光度計;FT/IR-4200typeA(日本分光(株)製)]を使用して測定することができる。
【0046】
前記ND粒子は、例えば以下に詳述する爆轟法で製造することができるが、本発明におけるND粒子はこの方法で製造されるものに限定されない。
【0047】
(生成工程)
成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は例えば0.5~40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの重量比(TNT/RDX)は、例えば40/60~60/40の範囲である。
【0048】
生成工程では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってND粒子が生成する。生成したND粒子は、隣接する一次粒子ないし結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体を成す。
【0049】
生成工程では、次に、室温において24時間程度放置して放冷し、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粒子粗生成物(上述のようにして生成したND粒子の凝着体および煤を含む)をヘラで掻き取り、回収する。以上のような方法によって、ND粒子の粗生成物を得ることができる。
【0050】
(酸処理工程)
酸処理工程は、生成工程を経て得られたND粒子の粗生成物に混入する金属性不純物を除去する工程であり、前記ND粒子の粗生成物を水中に分散して得られるND粒子の粗生成物分散液に、酸を添加して前記金属性不純物を酸に溶出させ、その後、金属性不純物が溶出した酸を分離・除去することで、金属性不純物を除去することができる。この酸処理に用いられる酸(特に、強酸)としては鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、王水等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸処理に使用される酸の濃度は例えば1~50重量%である。酸処理温度は例えば70~150℃である。酸処理時間は例えば0.1~24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。金属性不純物が溶出した酸を分離・除去する方法としては、例えばデカンテーションにより行うことが好ましい。また、デカンテーションの際には、固形分(ND粒子を含む)の水洗を行うことが好ましく、特に、沈殿液のpHが例えば2~3に至るまで、水洗を反復して行うことが好ましい。
【0051】
(酸化処理工程)
酸化処理工程は、酸化剤を用いてND粒子粗生成物からグラファイトを除去する工程である。爆轟法で得られるND粒子粗生成物にはグラファイト(黒鉛)が含まれるが、このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちND粒子結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ND粒子粗生成物からグラファイトを除去することができる。また、酸化剤を作用させることにより、ND粒子表面にカルボキシル基や水酸基などの酸素含有基を導入することができる。
【0052】
この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、硝酸、及びこれらの混合物や、これらから選択される少なくとも1種の酸と他の酸(例えば硫酸等)との混酸、及びこれらの塩が挙げられる。本発明においては、なかでも、混酸(特に、硫酸と硝酸との混酸)を使用することが、環境に優しく、且つグラファイトを酸化・除去する作用に優れる点で好ましい。
【0053】
前記混酸における硫酸と硝酸との混合割合(前者/後者;重量比)は、例えば60/40~95/5であることが、常圧付近の圧力(例えば、0.5~2atm)の下でも、例えば130℃以上(特に好ましくは150℃以上。尚、上限は、例えば200℃)の温度で、効率よくグラファイトを酸化して除去することができる点で好ましい。混合割合の下限値は、好ましくは65/35、特に好ましくは70/30である。また、混合割合の上限値は、好ましくは90/10、特に好ましくは85/15、最も好ましくは80/20である。
【0054】
混酸における硝酸の割合が上記範囲を上回ると、高沸点を有する硫酸の含有量が少なくなるため、常圧付近の圧力下では、反応温度が例えば120℃以下となり、グラファイトの除去効率が低下する傾向がある。一方、混酸における硝酸の割合が上記範囲を下回ると、グラファイトの酸化に大きく貢献する硝酸の含有量が少なくなるため、グラファイトの除去効率が低下する傾向がある。
【0055】
酸化剤(特に、前記混酸)の使用量は、ND粒子粗生成物1重量部に対して例えば10~50重量部、好ましくは15~40重量部、特に好ましくは20~40重量部である。また、前記混酸中の硫酸の使用量は、ND粒子粗生成物1重量部に対して例えば5~48重量部、好ましくは10~35重量部、特に好ましくは15~30重量部であり、前記混酸中の硝酸の使用量は、ND粒子粗生成物1重量部に対して例えば2~20重量部、好ましくは4~10重量部、特に好ましくは5~8重量部である。
【0056】
また、酸化剤として前記混酸を使用する場合、混酸と共に触媒を使用しても良い。触媒を使用することにより、グラファイトの除去効率を一層向上することができる。前記触媒としては、例えば、炭酸銅(II)等を挙げることができる。触媒の使用量は、ND粒子粗生成物100重量部に対して例えば0.01~10重量部程度である。
【0057】
酸化処理温度は、例えば100~200℃である。酸化処理時間は、例えば1~24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。
【0058】
このような酸化処理の後、例えばデカンテーションにより上澄みを除去することが好ましい。また、デカンテーションの際には、固形分の水洗を行うことが好ましい。水洗当初の上澄み液は着色しているが、上澄み液が目視で透明になるまで、当該固形分の水洗を反復して行うことが好ましい。
【0059】
(乾燥工程)
本方法では、次に、乾燥工程を設けることが好ましい。例えば、上記工程を経て得られたND粒子含有溶液から噴霧乾燥装置やエバポレーター等を使用して液分を蒸発させた後、これによって生じる残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させる方法が挙げられる。加熱乾燥温度は、例えば40~150℃である。このような乾燥工程を経ることにより、ND粒子が得られる。
【0060】
(加熱酸化工程)
本方法では、次に、加熱酸化工程を設けることが好ましい。加熱酸化工程は、上記工程を経て得られたND粒子を、酸素を含有する気体の雰囲気下で加熱して酸化することにより、その表面にC=O基を有するND粒子を得る工程である。
【0061】
加熱酸化工程の反応雰囲気は、酸素を含む気体であれば特に限定されない。本発明においては、なかでも、酸素を窒素などの不活性ガスで希釈したものを使用することが安全性の面で好ましく、酸素の濃度は、例えば0.01~30v/v%、好ましくは0.1~25v/v%、とりわけ好ましくは0.5~10v/v%である。
【0062】
加熱酸化工程における加熱温度は、ND粒子の耐熱性を考慮して適宜設定することができ、200~800℃が好ましく、より好ましくは350~700℃、さらに好ましくは400~600℃、とりわけ好ましくは430~500℃である。加熱温度が上記範囲内である場合、ND粒子の酸化が抑制されるとともに、非ダイヤモンド炭素が選択的に酸化され、表面にC=O基を多く有し、酸化防止効果に優れるND粒子が得られる。
【0063】
加熱酸化工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば0.1~15時間が好ましく、より好ましくは0.5~12時間、さらに好ましくは1~10時間である。加熱時間が上記範囲内である場合、ND粒子の酸化が抑制されるとともに、非ダイヤモンド炭素が選択的に酸化され、表面にC=O基を多く有し、酸化防止効果に優れるND粒子が得られる。
【0064】
尚、前記加熱酸化工程における圧力は、特に限定されないが、0.01~5.0atmが好ましく、より好ましくは0.1~1.5atm、さらに好ましくは0.2~1.2atmである。
【0065】
(組成物の製造方法)
本発明の組成物は、例えば、液晶ポリマーとND粒子とを、前記液晶ポリマーの融点(若しくは、軟化温度)以上の温度で溶融混練することにより製造することができる。
【0066】
本発明の組成物におけるND粒子の含有量は、液晶ポリマー100重量部に対して0.001~5重量部であり、好ましくは0.01~3重量部、特に好ましくは0.1~1重量部である。
【0067】
本発明の組成物は不揮発分として液晶ポリマーとND粒子とを含有する。本発明の組成物は前記成分以外にも他の成分(例えば、充填剤、安定剤、滑剤、顔料、結晶核剤、消泡剤、シランカップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、難燃剤、紫外線吸収剤、消色剤、着色剤、密着性付与剤等)を1種又は2種以上含有しても良いが、組成物に含まれる不揮発分全量に占める上記ND粒子と液晶ポリマーの合計含有量は、例えば10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
【0068】
前記充填剤には、繊維状、粉粒状、若しくは板状の、無機又は有機充填剤が含まれる。
【0069】
前記繊維状充填剤としては、例えば、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、カーボン繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウォラストナイト等の珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等)の繊維状物等の無機質繊維状物質;ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質等が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。
【0070】
粉粒状充填剤としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩;カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイト等の硅酸塩、フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0071】
板状充填剤としては、例えば、マイカ、ガラスフレーク、タルク、各種金属箔等が挙げられる。
【0072】
ND粒子は、液晶ポリマー中に生成したパーオキシラジカルを捕捉する効果を発揮する。本発明の組成物は、前記特性を有するND粒子を含有するため、高温環境下でもパーオキシラジカルがND粒子に捕捉されることによりラジカル発生量(若しくは、パーオキシラジカル発生量)の増加が抑制され、発生したパーオキシラジカルによる酸化劣化によって液晶ポリマーの靱性が低下し、脆化するのを防止することができ、酸化劣化による黄変を抑制して色相を良好に保持することができる。
【0073】
本発明の組成物の、電子スピン共鳴法(ESR)により測定される、25℃におけるラジカル発生量は、例えば2×1016~2×1018spins/g、好ましくは1×1017~10×1017spins/g、特に好ましくは2×1017~5×1017spins/gである。
【0074】
本発明の組成物の、電子スピン共鳴法(ESR)により測定される、320℃におけるラジカル発生量は、例えば2×1016~2×1018spins/g、好ましくは5×1016~10×1017spins/g、特に好ましくは1×1017~5×1017spins/gである。
【0075】
本発明の組成物の、電子スピン共鳴法(ESR)により測定される、400℃におけるラジカル発生量は、例えば2×1016~2×1018spins/g、好ましくは1×1017~10×1017spins/g、特に好ましくは2×1017~10×1017spins/gである。
【0076】
本発明の組成物のラジカル発生量が上記範囲を上回る場合は、パーオキシラジカルによる液晶ポリマーの酸化劣化を防止することが困難となるため、溶融成形性やポリマー機械物性に悪影響を与えない範囲でパーオキシラジカル捕捉剤を添加してもよい。一方、ラジカル発生量が上記範囲を下回る場合は、パーオキシラジカルの寿命は短く、酸素由来の酸化反応が活発となるため、得られる固化物の物性が低下(例えば、靱性が低下して脆化する等)する傾向がある。
【0077】
本発明の組成物は、ND粒子が液晶ポリマー中に生成したパーオキシラジカルを捕捉する効果を発揮するため、高温環境に曝しても、液晶ポリマーの酸化劣化を引き起こすラジカル発生量の増加が抑制され、電子スピン共鳴法(ESR)により測定される、400℃におけるラジカル発生量は、25℃におけるラジカル発生量の例えば3.0倍以下、好ましくは2.5倍以下、特に好ましくは2.2倍以下である。ラジカル発生量の増加が上記範囲を上回る場合は、ND粒子によるラジカル捕捉効果が不十分(パーオキシラジカルの安定化が不十分)であり、液晶ポリマーの酸化劣化を防止する効果は得られにくくなる傾向がある。
【0078】
本発明の組成物は、パーオキシラジカルを捕捉する効果を備えたND粒子を含有するため耐熱性に優れ、高温環境に曝しても酸化劣化を防止することができ、昇温速度10℃/分(空気中)で、50℃から370℃まで昇温した場合の重量減少率は、例えば2.5重量%以下、好ましくは2.0重量%未満、特に好ましくは1.8重量%以下である。
【0079】
本発明の組成物は、液晶ポリマーと共に、耐熱性に優れ、且つ酸化防止効果に優れたND粒子を含有するため、当該組成物を、組成物中に含まれる液晶ポリマーが溶融する温度で加熱しても、ND粒子は分解することなく、優れた酸化防止効果(若しくは、ラジカル捕捉効果)を発揮することができ、液晶ポリマー中に生成したラジカルを捕捉する効果を発揮する。これにより、ラジカルによる液晶ポリマーの酸化劣化を防止して、液晶ポリマーの黄変を抑制することができる。
【0080】
従って、本発明の組成物は、例えば、プリント基板実装用部品、コネクタ・ボビン・光ピックアップ部品のケース、マイクロモーター部品などの電気・電子部品材料;コンプレッサー部品、ショックアブソーバー部品等の自動車部品材料として好適に使用することができる。
【0081】
[成形体]
本発明の成形体は、上記組成物の固化物から成る。本発明の成形体は、例えば、上記組成物の溶融物を、所望の形状の反転形状の凹部を有する金型に充填し、その後、冷却して上記組成物を固化させることにより製造することができる。
【0082】
上記組成物の溶融は、これに含まれる液晶ポリマーの融点若しくは軟化点以上の温度で加熱することにより行われる。また、上記組成物は、これに含まれる液晶ポリマーの融点若しくは軟化点より低い温度まで冷却することにより固化し、固化物を形成する。
【0083】
上記組成物の成形は、例えば、射出成形法、押出射出成形法等の溶融成形法により行うことができる。
【0084】
このようにして得られる成形体は色相が良好であり、外観に優れる。また、耐熱性に優れ、成形体を構成する液晶ポリマーの融点若しくは軟化点より低い温度では、長期に亘って機械特性(靱性等)の低下を抑制することができる。すなわち、高温での長期使用に耐える。そのため、耐熱性が求められる車載用途に好適に使用することができる。
【0085】
従って、本発明の成形体は、例えば、プリント基板実装用部品、コネクタ・ボビン・光ピックアップ部品のケース、マイクロモーター部品などの電気・電子部品;コンプレッサー部品、ショックアブソーバー部品等の自動車部品として好適に使用することができる。
【0086】
[酸化防止剤]
本発明の酸化防止剤は、ND粒子(好ましくは、上述のND粒子)を含むことを特徴とする。本発明の酸化防止剤は、熱可塑性樹脂用の酸化防止剤として好適に使用することができる。
【0087】
本発明の酸化防止剤は耐熱性に優れ、昇温速度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度は、例えば450℃以上(例えば450~600℃)、好ましくは500℃以上である。尚、5%重量減少温度は、例えば、TG/DTA(示差熱・熱重量同時測定)により測定できる。
【0088】
本発明の酸化防止剤は耐熱性に優れるため、例えば250℃以上(例えば250~550℃)、好ましくは300℃以上、特に好ましくは320℃以上の高い融点(若しくは、軟化温度)を有する熱可塑性樹脂用の酸化防止剤として使用することができる。
【0089】
本発明の酸化防止剤が、表面官能基としてカルボニル基を含有するND粒子を含む場合は、熱可塑性樹脂の中でも特に液晶ポリマー(とりわけ好ましくは、液晶ポリエステル及び/又は液晶ポリエステルアミド)用の酸化防止剤として好適に使用することができる。高温環境下において、液晶ポリマーは、そのエステル結合又はアミド結合部位がラジカルによって分解されることで酸化劣化が進行するが、前記ND粒子がパーオキシラジカルを捕捉することにより、液晶ポリマーのエステル結合及びアミド結合部位の酸化劣化が抑制されて安定化されるためである。
【0090】
本発明の酸化防止剤は、ND粒子以外にも他の成分を含有していても良いが、酸化防止剤全量における上記ND粒子の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。ND粒子の含有量が前記範囲を下回ると、本発明の効果が得られにくくなる傾向がある。
【実施例
【0091】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0092】
調製例1(液晶ポリマー(LCP1)の調製)
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃まで上昇させて、その温度で1時間反応させた。その後、更に325℃まで3.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から液晶ポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット状液晶ポリマーを得た。
得られた液晶ポリマーの融点は280℃、300℃における溶融粘度は44.0Pa・sであった。
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);1660g(73モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA);837g(27モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1714g
【0093】
調製例2(液晶ポリマー(LCP2)の調製)
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃まで上昇させて、その温度で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から液晶ポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット状液晶ポリマーを得た。得られたペレット状液晶ポリマーには、更に、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行った。
得られた液晶ポリマーの融点は336℃、350℃における溶融粘度は19.0Pa・sであった。
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);1380g(60モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA);157g(5モル%)
テレフタル酸(TA);484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);388g(12.5モル%)
4-アセトキシアミノフェノール(APAP);126g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
【0094】
調製例3(液晶ポリマー(LCP3)の調製)
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃まで上昇させて、その温度で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから30分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部から液晶ポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット状液晶ポリマーを得た。得られたペレット状液晶ポリマーには、更に、窒素気流下、300℃で8時間の熱処理を行った。
得られた液晶ポリマーの融点は352℃、380℃における溶融粘度は23.0Pa・sであった。
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);37g(2モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA);1218g(48モル%)
テレフタル酸(TA);560g(25モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);628g(25モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1432g
【0095】
[融点]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
【0096】
[溶融粘度測定]
液晶ポリマーの溶融粘度は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ(ピストン径:10mm)を使用し、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて以下の条件で、ISO11443に準拠して測定した。
シリンダー温度:
液晶ポリマーがLCP1の場合:300℃
液晶ポリマーがLCP2の場合:350℃
液晶ポリマーがLCP3の場合:380℃
せん断速度:1000sec-1
【0097】
実施例1(酸化防止剤(ND1)の合成)
成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器(鉄製、容積は15m3)の内部に設置して容器を密閉した。爆薬としては、TNTとRDXとの混合物(TNT/RDX=50/50)0.50kgを使用した。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粒子粗生成物(上記爆轟法で生成したND粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ND粒子粗生成物を回収した。
【0098】
上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたND粒子粗生成物に対して酸処理を行った。具体的には、当該ND粒子粗生成物200gに6Lの10重量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で、85~100℃で1時間の加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND粒子凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
【0099】
次に、酸化処理を行った。具体的には、酸処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ND粒子凝着体を含む)に、12Lの98重量%硫酸水溶液と1Lの97重量%硝酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下、140~160℃で48時間の加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND粒子凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
【0100】
酸化処理後のデカンテーションを経て得た沈殿液(ND粒子凝着体を含む)をエバポレーターを用い蒸発乾固して、ND粒子粉体(ND1、D50=4.2nm)を得た。FT-IRでは、図1に示すとおり、1700~1850cm-1の範囲では1730.15cm-1に表面官能基におけるケトン基(C=O)に由来する吸収ピーク、また2915cm-1付近に表面官能基におけるC-Hに由来する吸収が見られた。1730.15cm-1の吸収ピークは、2915cm-1付近の吸収ピークよりも高かった。
【0101】
ND粒子粉体(ND1)の、TG/DTA(示差熱・熱重量同時測定)により測定した、昇温速度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度は523℃であった。
【0102】
実施例2(酸化防止剤(ND2)の合成)
ガス雰囲気炉(商品名「ガス雰囲気チューブ炉 KTF045N1」,光洋サーモシステム(株)製)を使用して加熱酸化工程を行った。
具体的には、上述のようにして得られたND1(4.5g)をガス雰囲気炉の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から酸素と窒素との混合ガス(酸素濃度:4体積%)へと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度400℃まで昇温させた。昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い380℃までは10℃/分とし、その後、380℃から加熱設定温度までは1℃/分とした。そして、炉内の温度条件を400℃に維持しつつ、炉内のND粒子粉体について酸素酸化処理を行った。処理時間は3時間とした。以上のようにして、ND粒子粉体(ND2)を得た。加熱酸化工程に付される前のND粒子粉体の量に対する加熱酸化工程を経た後のND粒子粉体の量の割合(収率)は96%であった。FT-IRでは、図2に示すとおり、1776.44cm-1に表面官能基におけるケトン基(C=O)に由来する吸収ピークが見られた。尚、2800~3000cm-1には目立った吸収ピークは見られなかった。
【0103】
実施例3(酸化防止剤(ND3)の合成)
加熱酸化工程の加熱設定温度を475℃に変更した以外は実施例2と同様にしてND粒子粉体(ND3)を得た。尚、昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い455℃までは10℃/分とし、その後、455℃から加熱設定温度までは1℃/分とした。
加熱酸化工程に付される前のND粒子粉体の量に対する加熱酸化工程を経た後のND粒子粉体の量の割合(収率)は70%であった。FT-IRでは、図3に示すとおり、1800cm-1付近に表面官能基におけるケトン基(C=O)に由来する吸収ピークが見られた。尚、2800~3000cm-1には目立った吸収ピークは見られなかった。
【0104】
実施例4(酸化防止剤(ND4)の合成)
実施例1と同様の方法で得られたND1(4.5g)をガス雰囲気炉の炉心管内に静置し、炉心管に窒素ガスを流速1L/分で30分間通流させ続けた後、通流ガスを窒素から水素と窒素との混合ガスへと切り替えて当該混合ガスを流速1L/分で炉心管に通流させ続けた。混合ガス中の水素濃度は2体積%である。混合ガスへの切り替えの後、炉内を加熱設定温度800℃まで昇温させた。昇温速度については、加熱設定温度より20℃低い780℃までは10℃/分とし、その後、780℃から加熱設定温度までは1℃/分とした。そして、炉内の温度条件を800℃に維持しつつ、炉内のND粒子粉体について水素還元処理を行った。処理時間は5時間とした。このようにして、ND粒子粉体(ND4)を得た。
加熱還元処理に付される前のND粒子粉体の量に対する加熱還元処理を経た後のND粒子粉体の量の割合(収率)は93%であった。FT-IRでは、図4に示すとおり、2940cm-1付近に表面官能基におけるC-Hに由来する吸収ピークが見られ、1710cm-1付近の表面官能基におけるケトン基(C=O)に由来する吸収ピークはほとんど見られなかった。
【0105】
<FT-IR測定>
フーリエ変換赤外分光光度計(商品名「FT-720」、(株)堀場製作所製)に、加熱真空撹拌反射(商品名「Heat Chamber Type-1000℃」、(株)エス・ティ・ジャパン製)を取り付けた装置を用いて測定した。ND粒子の吸着水を除去するために、真空度2×10-3Pa条件下、150℃で1分間加熱後にFT-IR測定を実施した。
【0106】
実施例5~10、比較例1~3
下記表1に示す処方にて各成分を混合し、(株)東洋精機製作所製プラストミルを用いて、下記のシリンダー温度で30分間溶融混練して組成物を得、得られた組成物の耐熱性を下記方法で評価した。
シリンダー温度:
液晶ポリマーとしてLCP1を含有する場合:300℃
液晶ポリマーとしてLCP2を含有する場合:350℃
液晶ポリマーとしてLCP3を含有する場合:370℃
【0107】
<重量減少率>
得られた組成物を、TAインスツルメント製熱重量測定装置を用いて、乾燥空気毎分60mLフロー下、室温から370℃まで毎分10℃で昇温し、370℃到達後、2時間保持して、室温及び370℃における組成物の重量を測定し、下記式から重量減少率を算出した。
重量減少率=370℃における重量/室温における重量×100(%)
【0108】
<ESRによるラジカル発生量の測定>
実施例8及び比較例1で得られた組成物を各50mgはかり取り、ESR試料管(内径約3.5mmφの石英管)に入れ、昇温ESR測定を下記条件下、下記解析方法で実施した。結果を図5に示す。
【0109】
測定装置:JES-FE3T(日本電子(株)製)
付属装置:高温キャビティ(日本電子(株)製)
測定条件
測定温度:室温~設定温度
中心磁場:3278G付近
磁場掃引範囲:500G
変調:100kHz,1G
マイクロ波:9.21GHz,1mW
掃引時間:120s×1time
時定数:100ms
データポイント数:4095points
キャビティ:TE011,円筒型
【0110】
解析方法:
高温測定用の装置を使用し、昇温に伴うラジカル量の変化、g値、線幅の変化を調べた。本装置では、Mnマーカーを同時測定し、マーカーの信号を基準にてg値の算出及び検出感度の補正を行った。
合成空気[21%O2(N2バランス)]を30mL/minで流通させた雰囲気で昇温ESR測定(昇温速度:10℃/min)を行った。ラジカルの定量は、炭素上の不対電子がすべて局在電子(常磁性体)であることを仮定して行った。すなわち、局在スピンの信号強度は絶対温度の逆数(1/T)に比例するため、各温度における信号強度を室温での信号強度に換算し、室温で測定した標準試料の信号強度と比較して不対電子数を算出した。
【0111】
【表1】
【0112】
表1より、本発明の組成物は、熱によるラジカル発生量の増加が抑制され、液晶ポリマーの酸化劣化が抑制されることが分かった。
【0113】
実施例11~13、比較例4~5(成形体の作製)
下記表2に示す処方で各成分を混合し、二軸押出機(商品名「TEX30α」、(株)日本製鋼所製)を用い、下記のシリンダー温度にて溶融混練して組成物を得た。尚、ミルドガラスファイバーとしては、日東紡(株)製のPF70E001を使用した。
シリンダー温度:
液晶ポリマーとしてLCP1を含有する場合、300℃
液晶ポリマーとしてLCP2を含有する場合、350℃
【0114】
得られた組成物を、成形機(商品名「TR-100EH」、(株)ソディック製)を用いて、以下の成形条件で成形し、50mm×5mm×0.8mmの成形体を得た。
〔成形条件〕
金型温度:80℃
射出速度:200mm/sec
保圧:50MPa
【0115】
<ヒートエージング試験>
得られた成形体を熱風恒温槽(商品名「EPEC-18」、(株)いすゞ製作所製)内に空気雰囲気下、2000時間、260℃で静置した。その後、槽内から取り出して、ヒートエージング試験後の成形体を得た。
【0116】
ヒートエージング試験前、及びヒートエージング試験後の成形体について、テンシロン万能試験機(商品名「RTC-1325A」、(株)オリエンテック製)を用いて、以下の試験条件にて三点曲げ試験を行って、成形体が破断するまでの曲げ歪(%)を下記式(1)から算出し、靱性の保持率を下記式(2)から算出した。
破断曲げ歪(%)=600×[たわみ(mm)]×[試験片厚み(mm)]/[支点間距離(mm)] (1)
靱性保持率(%)=[ヒートエージング2000時間の破断曲げ歪(%)]/[ヒートエージング0時間における破断曲げ歪(%)]×100 (2)
【0117】
〔三点曲げ試験条件〕
試験速度:1mm/min
支点間距離:12.8mm
圧子半径:0.5mm
支持台半径:2mm
【0118】
【表2】
【0119】
表2より、実施例で得られた成形体は、酸化による樹脂の劣化が抑制され、高温環境下に長時間曝しても樹脂の靱性が保持されていることがわかる。
【0120】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 液晶ポリエステル及び液晶ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種の液晶ポリマーと、ナノダイヤモンド粒子とを、前記液晶ポリマー100重量部に対してナノダイヤモンド粒子を0.001~5重量部の割合で含有する組成物。
[2] 前記液晶ポリマーが下記構成を有する、[1]に記載の組成物。
液晶ポリマーを構成する全構成単位における、
式(I)で示される構成単位の含有量が50~100モル%、
式(II)で示される構成単位の含有量が0~25モル%、
式(III)で示される構成単位の含有量が0~25モル%である
[3] 液晶ポリマーを構成する全構成単位に対する、式(I)で表される構成単位と式(II)で表される構成単位と式(III)で表される構成単位の合計含有量が占める割合が70モル%以上である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 液晶ポリマーを構成する全構成単位に対する、式(VI)で示される構成単位の含有量が占める割合が30モル%以下である、[1]~[3]の何れか1つに記載の組成物。
[5] 液晶ポリマーの融点若しくは軟化点が250~400℃である、[1]~[4]の何れか1つに記載の組成物。
[6] 下記液晶ポリマーの溶融粘度が5~100Pa・sである、[1]~[5]の何れか1つに記載の組成物。
液晶ポリマーの溶融粘度:液晶ポリマーの融点若しくは軟化点よりも10~30℃高いシリンダー温度において、せん断速度1000sec-1で測定した溶融粘度である。
[7] ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、[1]~[6]の何れか1つに記載の組成物。
[8] ナノダイヤモンド粒子のメディアン径が10nm以下である、[1]~[7]の何れか1つに記載の組成物。
[9] ナノダイヤモンド粒子が、表面にカルボニル基を有するナノダイヤモンド粒子である、[1]~[8]の何れか1つに記載の組成物。
[10] ナノダイヤモンド粒子のフーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm-1の最大ピークが、2800~3000cm-1の最大ピークよりも高い、[1]~[9]の何れか1つに記載の組成物。
[11] 電子スピン共鳴法により測定される、25℃におけるラジカル発生量が2×1016~2×1018spins/gである、[1]~[10]の何れか1つに記載の組成物。
[12] 電子スピン共鳴法により測定される、320℃におけるラジカル発生量が2×1016~2×1018spins/gである、[1]~[11]の何れか1つに記載の組成物。
[13] 電子スピン共鳴法により測定される、400℃におけるラジカル発生量が、25℃におけるラジカル発生量の3.0倍以下である、[1]~[12]の何れか1つに記載の組成物。
[14] 空気中にて、昇温速度10℃/分で、50℃から370℃まで昇温した場合の重量減少率が2.5重量%以下である、[1]~[13]の何れか1つに記載の組成物。
[15] [1]~[14]の何れか1つに記載の組成物の固化物から成る成形体。
[16] ナノダイヤモンド粒子を含む、熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[17] ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、[16]に記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[18] ナノダイヤモンド粒子のメディアン径が10nm以下である、[16]又は[17]に記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[19] ナノダイヤモンド粒子が、表面にカルボニル基を有するナノダイヤモンド粒子である、[16]~[18]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[20] ナノダイヤモンド粒子のフーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm-1の最大ピークが、2800~3000cm-1の最大ピークよりも高い、[16]~[19]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[21] 融点若しくは軟化温度が250℃以上である熱可塑性樹脂用酸化防止剤である、[16]~[20]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[22] 昇温速度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度が450℃以上である、[16]~[21]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[23] ナノダイヤモンド粒子の含有量が酸化防止剤全量の60重量%以上である、[16]~[22]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤。
[24] ナノダイヤモンド粒子の、熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[25] ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、[24]に記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[26] ナノダイヤモンド粒子のメディアン径が10nm以下である、[24]又は[25]に記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[27] ナノダイヤモンド粒子が、表面にカルボニル基を有するナノダイヤモンド粒子である、[24]~[26]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[28] ナノダイヤモンド粒子のフーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm-1の最大ピークが、2800~3000cm-1の最大ピークよりも高い、[24]~[27]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[29] ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、[24]~[28]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[30] ナノダイヤモンド粒子のメディアン径が10nm以下である、[24]~[29]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[31] ナノダイヤモンド粒子が、表面にカルボニル基を有するナノダイヤモンド粒子である、[24]~[30]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[32] ナノダイヤモンド粒子のフーリエ変換赤外分光光度計による赤外吸収スペクトルにおいて、1700~1850cm-1の最大ピークが、2800~3000cm-1の最大ピークよりも高い、[24]~[31]の何れか1つに記載の熱可塑性樹脂用酸化防止剤としての使用。
[33] ナノダイヤモンド粒子を用いて熱可塑性樹脂用酸化防止剤を製造する、熱可塑性樹脂用酸化防止剤の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5