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特許7304921PD1及びLAG3に特異的に結合する二重特異性抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】PD1及びLAG3に特異的に結合する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230630BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P37/04
A61P31/12
A61P35/00
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021180032
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2019554934の分割
【原出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2022033742
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】17165125.0
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー, イェンス
(72)【発明者】
【氏名】イムホフ-ユング, ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ペロ, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ゼーベル, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー, パトリック アレクサンダー アーロン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】Matthew J. Bernett et al.,Bispecific Checkpoint Combinations Promote T cell activation[online],2016年11月06日,インターネット<URL:https://investors.xencor.com/static-files/f388d30a-3d0d-4a69-9a43-876a3b38f79f>
【文献】Matthew Kraman et al.,A LAG-3/PD-L1 bispecific antibody inhibits tumor growth in two syngeneic colon carcinoma models[online],2016年11月13日,インターネット<URL:http://f-star.com/media/76065/Keystone-Symposium-FS118-poster-ONLINE.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体であって、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、前記二重特異性抗体が1+1フォーマットであり、
前記PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含み、
前記LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、
二重特異性抗体。
【請求項2】
二重特異性抗体が、IgGであるFcドメインを含み、Fcドメインが、Fc受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
Fcドメインが、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
Fc受容体が、Fcγ受容体である、請求項2又は3に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性抗体であって、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体。
【請求項8】
二重特異性抗体が、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
二重特異性抗体が、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含むFcドメインを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項1~9のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントとを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換わっている、請求項1~11のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっている、請求項11又は12に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
二重特異性抗体が、Fabフラグメントを含み、定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項1~13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項11~14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号97の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
配列番号96のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号97のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリヌクレオチドを含む原核生物又は真核生物の宿主細胞。
【請求項20】
二重特異性抗体の発現に適した条件で、請求項19に記載の宿主細胞を培養することと、培養物から二重特異性抗体を回収することとを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を製造する方法。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項22】
医薬として使用するための請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物であって、
(i)免疫応答の調節、例えば、T細胞活性の回復において、
(ii)T細胞応答の刺激において、
(iii)感染の処置において、
(iv)癌の処置において、
(v)癌の進行を遅らせることにおいて、又は
(vi)癌を患う患者の生存を延長することにおいて使用するための、二重特異性抗体又は医薬組成物。
【請求項24】
癌の処置に使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
慢性ウイルス感染の処置に使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項26】
二重特異性抗体は、癌免疫療法で使用するために化学療法剤、放射線及び/又は他の薬剤と組み合わせて投与される、癌の予防又は処置に使用するための請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項27】
二重特異性抗体は、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせて投与される、癌の予防又は処置に使用するための請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項28】
癌又は感染性疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項29】
癌又は慢性ウイルス感染を有する個体を処置するための医薬であって、有効量の請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項21に記載の医薬組成物を含む、医薬。
【請求項30】
個体において腫瘍細胞の成長を阻害するための医薬であって、前記腫瘍細胞の成長を阻害するために、有効量の請求項1~17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、特に、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸を含むFcドメインを更に含む二重特異性抗体に関する。本発明は更に、これらの分子を製造する方法、及びこれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌(がん)に対する防御における免疫系の重要性は、免疫系が異常細胞を検出し、破壊する能力に基づく。しかし、ある種の腫瘍細胞は、免疫抑制状態を作り出すことによって、免疫系から逃れることができる(Zitvogel et al.,Nature Reviews Immunology 6(2006),715-727)。T細胞は、抗ウイルス性及び抗腫瘍性の免疫応答において、重要な役割をもつ。抗原特異性T細胞の適切な活性化によって、そのクローン性増殖及びエフェクター機能の獲得が起こり、細胞毒性Tリンパ球(CTL)の場合には、CTLによって標的細胞を特異的に溶解することができる。T細胞は、全ての細胞内コンパートメント中のタンパク質に由来するペプチドの選択的な認識に関する能力、抗原発現細胞を直接的に認識し、死滅させる能力(細胞毒性Tリンパ球(CTL)としても知られている、CD8エフェクターT細胞による)、及び多様な免疫応答を調整し(CD4ヘルパーT細胞による)、獲得エフェクター機構と自然エフェクター機構とを統合する能力に起因して、内因性抗腫瘍免疫を治療的に操作するための努力に主に注目されている。T細胞の機能不全は、長期にわたる抗原曝露の結果として生じる。T細胞は、抗原存在下で増殖する能力を失い、漸進的にサイトカインを産生できなくなり、標的細胞1を溶解できなくなる。機能不全のT細胞は、疲弊したT細胞と呼ばれており、増殖することができず、抗原刺激に応答して細胞毒性及びサイトカイン分泌などのエフェクター機能を発揮することができない。更なる研究は、疲弊したT細胞は、阻害分子PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)の継続的な発現によって特徴付けられ、LCMV感染マウスにおいて、PD-1とPD-L1(PD-1リガンド)の相互作用の遮断によって、T細胞の疲弊を逆行させ、抗原特異的なT細胞応答を回復させることができることを特定した(Barber et al.,Nature 439(2006),682-687)。しかし、PD-1-PD-L1経路のみを標的としても、常にT細胞疲弊の逆行が常に起こるわけではなく(Gehring et al.、Gastroenterology 137(2009)、682-690)、このことは、他の分子がおそらくT細胞疲弊に関与していることを示している(Sakuishi、J.Experimental Med.207(2010)、2187-2194)。
【0003】
リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3又はCD223)は、IL-2依存性NK細胞株で発現する分子を選択的に単離するように設計された実験で、最初に発見された(Triebel F et al.,Cancer Lett.235(2006),147-153)。LAG3は、CD4に対して構造相同性を有し、4つの細胞外免疫グロブリンスーパーファミリー様ドメイン(D1~D4)を有する、固有の膜貫通タンパク質である。この膜の遠位にあるIgGドメインは、短いアミノ酸配列(他のIgGスーパーファミリータンパク質にはみられない、いわゆるエキストラループ)を含む。細胞内ドメインは、LAG3がT細胞機能に対して負の影響を与えることが必要とされる固有のアミノ酸配列(KIEELE、配列番号75)を含む。LAG3は、メタロプロテアーゼによって接続ペプチド(CP)で開裂され、可溶性形態を生成することができ、この形態は、血清中で検出可能である。CD4と同様に、LAG3タンパク質は、MHCクラスII分子に結合するが、アフィニティは、より高く、CD4とは別の部位で結合する(Huard et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(1997)、5744-5749)。LAG3は、T細胞、B細胞、NK細胞及び形質細胞様樹状細胞(pDC)で発現し、T細胞活性化に従ってアップレギュレーションする。LAG3は、T細胞の機能とT細胞のホメオスタシスを調節する。免疫不応答性であるか、又は機能不全を示す従来のT細胞の一部は、LAG3を発現する。LAG3T細胞は、腫瘍部位に、また、慢性ウイルス感染中に豊富に含まれる(Sierro et al Expert Opin.Ther.Targets 15(2011)、91-101)。LAG3は、CD8 T細胞の疲弊において、ある役割を果たすことが示されている(Blackburn et al.Nature Immunol.10(2009)、29-37)。従って、LAG3の活性をアンタゴナイズし、腫瘍に対する免疫応答を生成し、回復させるために使用可能な抗体が必要とされている。
【0004】
LAG3に対するモノクローナル抗体は、例えば、WO 2004/078928号に記載されており、CD223に特異的に結合する抗体と抗癌ワクチンとを含む組成物が請求されている。WO 2010/019570号は、LAG3に結合するヒト抗体(例えば、抗体25F7及び26H10)を開示する。US 2011/070238号は、臓器移植拒絶及び自己免疫疾患の治療又は予防に有用な細胞毒性抗LAG3抗体に関する。WO 2014/008218号は、抗体25F7と比較して、最適化された機能特性(すなわち、脱アミノ化部位の減少)を有するLAG3抗体を記載する。更に、LAG3抗体は、WO 2015/138920号(例えば、BAP050)、WO 2014/140180号、WO 2015/116539号、WO 2016/028672号、WO 2016/126858号、WO 2016/200782号及びWO 2017/015560号に開示される。
【0005】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1又はCD279)は、受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーであり、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAも含まれる。PD-1は、細胞表面受容体であり、活性化されたB細胞、T細胞及び骨髄細胞で発現している(Okazaki et al(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82;Bennett et al.(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1の構造は、1つの免疫グロブリン可変様の細胞外ドメインと、免疫受容体阻害性モチーフ(ITIM)及び免疫受容体チロシンに基づくスイッチモチーフ(ITSM)を含む細胞質ドメインとからなるモノマー型1膜貫通タンパク質である。活性化されたT細胞は、一時的にPD1を発現するが、PD1及びそのリガンドPDL1の持続的な超発現は、免疫の疲弊を促進し、ウイルス感染、腫瘍回避を持続させ、感染及び致死を増やす。PD1発現は、T細胞受容体による抗原認識によって誘発され、その発現は、主に、連続的なT細胞受容体シグナル伝達によって維持される。長期間抗原に曝露した後、PD1の遺伝子座は、再メチル化することができず、連続的な超発現を促進する。PD1経路をブロックすると、癌及び慢性ウイルス感染において、疲弊したT細胞の機能を回復させることができる(Sheridan、Nature Biotechnology 30(2012)、729-730)。PD-1に対するモノクローナル抗体は、例えば、WO 2003/042402号、WO 2004/004771号、WO 2004/056875号、WO 2004/072286号、WO 2004/087196号、WO 2006/121168号、WO 2006/133396号、WO 2007/005874号、WO 2008/083174号、WO 2008/156712号、WO 2009/024531号、WO 2009/014708号、WO 2009/101611号、WO 2009/114335号、WO 2009/154335号、WO 2010/027828号、WO 2010/027423号、WO 2010/029434号、WO 2010/029435号、WO 2010/036959号、WO 2010/063011号、WO 2010/089411号、WO 2011/066342号、WO 2011/110604号、WO 2011/110621号、WO 2012/145493号、WO 2013/014668号、WO 2014/179664号、WO 2015/112900号に記載されている。
【0006】
癌又は細菌、真菌又はウイルスなどの病原体に関連する疾患の処置に使用するためのPD1及びLAG3との免疫反応性を有する二重特異性Fcダイアボディは、WO 2015/200119号に記載される。しかし、PD1及びLAG3に同時に結合し、PD1及びLAG3を両方とも発現する細胞を選択的に標的化するだけではなく、LAG3の広範囲にわたる発現パターンが与えられる他の細胞に対してLAG3のブロックを避ける新規な二重特異性抗体を提供する必要がある。本発明の二重特異性抗体は、PD1及びLAG3を過剰発現するT細胞に対して、PD1及びLAG3を効率的にブロックするだけではなく、これらの細胞に対して非常に選択的であり、それによって、非常に活性なLAG3抗体を投与することによる副作用が避けられるだろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する少なくとも1つの第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関する。これらの二重特異性抗体は、より良い選択性を与え、潜在的に、抗PD1及び抗LAG3の組み合わせ戦略よりも有効性が高いため、有利である。これらの二重特異性抗体は、更に、シンク効果の低下(T細胞によるインターナリゼーションの低下によって示されるような)を示すことを特徴とし、これらの二重特異性抗体は、従来のT細胞に対して、Tregに対するよりも優先的に結合し、Treg抑制からT細胞エフェクター機能を守ることができ、腫瘍特異的なT細胞エフェクター機能の増加及びin vivoでの腫瘍根絶の増加を示す。
【0008】
一態様では、本発明は、二重特異性抗体であって、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
前記PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0009】
特に、二重特異性抗体であって、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0010】
一態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(b)
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(c)
(i)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(d)
(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(e)
(i)配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0011】
別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0012】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0013】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号29のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号36のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号44のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号45のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(e)配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0014】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号54のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号55のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号62のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号65のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0015】
更に、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0016】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0017】
別の態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号56のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号57のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0018】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、二重特異性抗体が提供される。特に、二重特異性抗体は、ヒト化抗体である。
【0019】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有するヒトIgG1サブクラスのドメインのFcドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0020】
更に、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含むFcドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。一態様では、二重特異性抗体であって、ホールにノブを入れる方法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットがノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットがホールを含む、二重特異性抗体が提供される。特に、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0021】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0022】
一態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換わっている、二重特異性抗体が提供される。特に、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっている、二重特異性抗体が提供される。
【0023】
別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fabフラグメントを含み、定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、二重特異性抗体が提供される。特に、二重特異性抗体であって、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、二重特異性抗体が提供される。
【0024】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
(a)配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号97の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号100の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(c)配列番号102の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号104の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(d)配列番号106の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号107の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0025】
より特定的には、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号100の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0026】
別の態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、FcドメインのC末端に融合するLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0027】
特に、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号144の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0028】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第3のFabフラグメントを含む、二重特異性抗体が提供される。一態様では、二重特異性抗体であって、それぞれLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つのFabフラグメントが同一である、二重特異性抗体が提供される。
【0029】
別の態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントが、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している、二重特異性抗体が提供される。
【0030】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
(a)配列番号118の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号119の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号120の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号121の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号122の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0031】
別の態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントの1つが、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している、二重特異性抗体が提供される。
【0032】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号145の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖とを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0033】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第4のFabフラグメントを含む、二重特異性抗体が提供される。一態様では、二重特異性抗体であって、それぞれPD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つのFabフラグメントが同一である、二重特異性抗体が提供される。
【0034】
別の態様では、二重特異性抗体であって、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントが、それぞれ、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介してそれぞれ融合している、二重特異性抗体が提供される。
【0035】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
(a)配列番号114の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号116の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号117の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0036】
更なる別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む短鎖Fab(scFab)とを含む、二重特異性抗体が提供される。特に、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むscFabは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している。
【0037】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
(a)配列番号123の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号119の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、又は
(b)配列番号124の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号121の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖、又は
(c)配列番号125の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0038】
更なる別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むVH及びVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。一態様では、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインのVHドメインは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合しており、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインのVLドメインは、重鎖のもう一方のC末端にペプチドリンカーを介して融合している。特定の態様では、二重特異性抗体であって、配列番号126の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号127の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号109の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0039】
本発明の別の態様によれば、本明細書で上に記載したような、二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。本発明は、更に、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、特に、発現ベクターと、本発明のポリヌクレオチドと、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む原核生物又は真核生物の宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物細胞、特に、哺乳動物細胞である。
【0040】
別の態様では、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を製造する方法であって、(a)宿主細胞を、前記二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換する工程と、(b)前記二重特異性抗体の発現に適した条件に従って、前記宿主細胞を培養する工程と、(c)培養物から前記二重特異性抗体を回収する工程とを含む、方法が提供される。本発明は、本発明の方法によって製造される二重特異性抗体も包含する。
【0041】
本発明は、更に、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体と、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0042】
更に本発明に包含されるのは、医薬として使用するための、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は前記二重特異性抗体を含む医薬組成物である。
【0043】
別の態様では、本発明は、本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物であって、
(i)免疫応答の調節、例えば、T細胞活性の回復において、
(ii)免疫応答又は機能の刺激において、
(iii)感染の処置において、
(iv)癌の処置において、
(v)癌の進行を遅らせることにおいて、
(vi)癌を患う患者の生存を延長することにおいて使用するための二重特異性抗体又は医薬組成物を提供する。
【0044】
一態様では、必要とする個体における疾患の処置に使用するための、本明細書で記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物を提供する。具体的な態様では、本発明は、癌の処置に使用するための、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物を提供する。更なる具体的な態様では、免疫応答の調節に使用するための、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。別の態様では、慢性ウイルス感染の処置に使用するための、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0045】
本発明はまた、本発明で使用するか、又は癌の処置に使用するための、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物も提供し、ここで、二重特異性抗体は、癌免疫療法に使用するために、化学療法剤、放射線及び/又は他の薬剤と組み合わせて投与される。特定の態様では、本発明で使用するか、又は癌の処置に使用するための、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物が提供され、ここで、二重特異性抗体は、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせて投与される。
【0046】
必要とする個体における疾患の処置のための医薬を製造するための、特に、癌を治療するための医薬を製造するための、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体の使用、及び個体において、ある疾患を治療する方法であって、前記個体に、治療有効量の本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を医薬的に許容される形態で含む組成物を投与することを含む方法も提供される。特定の態様では、疾患は、癌である。別の特定の態様では、疾患は、慢性ウイルス感染である。別の態様では、個体において免疫応答を調節する方法であって、治療有効量の本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を含む組成物を、医薬的に許容される形態で前記個体に投与することを含む方法が提供される。上の態様のいずれかにおいて、個体は、好ましくは哺乳動物であり、特にヒトである。
【0047】
本発明はまた、本発明で使用するか、又は癌の処置に使用するための、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物も提供し、ここで、二重特異性抗体は、癌免疫療法に使用するために、化学療法剤、放射線及び/又は他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0048】
更に、個体において腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、前記個体に、有効量の本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を投与し、腫瘍細胞の成長を阻害することを含む方法が提供される。個体は、好ましくは哺乳動物であり、特にヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A-C】本明細書に記載する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の異なるフォーマットの模式図。図1Aは、二重特異性1+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)を含み、LAG3結合ドメインは、正しい対形成を補助するために、アミノ酸変異を有するCH1ドメインとCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。Fc部分は、ホールにノブを入れる変異(黒色矢印によって示される)と、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほとんど完全に無効にする(白色領域によって示される)アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gとを含む。図1Bは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合Fabドメインとを有する、2+1フォーマットを示す。図1Cは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合FABドメインを含むが、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合一本鎖scFabドメインを含む、同様の2+1フォーマットを示す。図1Dには、2つの抗LAG3結合Fabドメインと、重鎖のC末端の1つにそれぞれ融合したPD1結合VH及びVLを含む、2+1フォーマットが示される。図1Eは、図1Dと同様の構築物を示すが、VHとVLとの間の操作されたジスルフィド結合を有し、図1Fは、フリン部位を有するバリアントが示されている。図1Gは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、各重鎖のC末端に融合した2つのPD1結合crossFabドメインとを含む、二重特異性2+2フォーマットを示す。図1Hには、二重特異性1+1フォーマットが示され(「trans」と呼ばれる)、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換を含む)を含み、LAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。Lag3ドメインは、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有する、CH1ドメイン及びCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。図1Iは、2+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)と、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有するCH1ドメイン及びCKドメインを含む1つのLAG3結合ドメイン(「帯電したバリアント」)とを含み、第2のLAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。
図1D-F】本明細書に記載する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の異なるフォーマットの模式図。図1Aは、二重特異性1+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)を含み、LAG3結合ドメインは、正しい対形成を補助するために、アミノ酸変異を有するCH1ドメインとCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。Fc部分は、ホールにノブを入れる変異(黒色矢印によって示される)と、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほとんど完全に無効にする(白色領域によって示される)アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gとを含む。図1Bは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合Fabドメインとを有する、2+1フォーマットを示す。図1Cは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合FABドメインを含むが、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合一本鎖scFabドメインを含む、同様の2+1フォーマットを示す。図1Dには、2つの抗LAG3結合Fabドメインと、重鎖のC末端の1つにそれぞれ融合したPD1結合VH及びVLを含む、2+1フォーマットが示される。図1Eは、図1Dと同様の構築物を示すが、VHとVLとの間の操作されたジスルフィド結合を有し、図1Fは、フリン部位を有するバリアントが示されている。図1Gは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、各重鎖のC末端に融合した2つのPD1結合crossFabドメインとを含む、二重特異性2+2フォーマットを示す。図1Hには、二重特異性1+1フォーマットが示され(「trans」と呼ばれる)、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換を含む)を含み、LAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。Lag3ドメインは、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有する、CH1ドメイン及びCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。図1Iは、2+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)と、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有するCH1ドメイン及びCKドメインを含む1つのLAG3結合ドメイン(「帯電したバリアント」)とを含み、第2のLAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。
図1G】本明細書に記載する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の異なるフォーマットの模式図。図1Aは、二重特異性1+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)を含み、LAG3結合ドメインは、正しい対形成を補助するために、アミノ酸変異を有するCH1ドメインとCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。Fc部分は、ホールにノブを入れる変異(黒色矢印によって示される)と、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほとんど完全に無効にする(白色領域によって示される)アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gとを含む。図1Bは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合Fabドメインとを有する、2+1フォーマットを示す。図1Cは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合FABドメインを含むが、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合一本鎖scFabドメインを含む、同様の2+1フォーマットを示す。図1Dには、2つの抗LAG3結合Fabドメインと、重鎖のC末端の1つにそれぞれ融合したPD1結合VH及びVLを含む、2+1フォーマットが示される。図1Eは、図1Dと同様の構築物を示すが、VHとVLとの間の操作されたジスルフィド結合を有し、図1Fは、フリン部位を有するバリアントが示されている。図1Gは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、各重鎖のC末端に融合した2つのPD1結合crossFabドメインとを含む、二重特異性2+2フォーマットを示す。図1Hには、二重特異性1+1フォーマットが示され(「trans」と呼ばれる)、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換を含む)を含み、LAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。Lag3ドメインは、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有する、CH1ドメイン及びCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。図1Iは、2+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)と、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有するCH1ドメイン及びCKドメインを含む1つのLAG3結合ドメイン(「帯電したバリアント」)とを含み、第2のLAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。
図1H-I】本明細書に記載する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の異なるフォーマットの模式図。図1Aは、二重特異性1+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)を含み、LAG3結合ドメインは、正しい対形成を補助するために、アミノ酸変異を有するCH1ドメインとCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。Fc部分は、ホールにノブを入れる変異(黒色矢印によって示される)と、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほとんど完全に無効にする(白色領域によって示される)アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gとを含む。図1Bは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合Fabドメインとを有する、2+1フォーマットを示す。図1Cは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合FABドメインを含むが、1つの重鎖のC末端に融合したPD1結合一本鎖scFabドメインを含む、同様の2+1フォーマットを示す。図1Dには、2つの抗LAG3結合Fabドメインと、重鎖のC末端の1つにそれぞれ融合したPD1結合VH及びVLを含む、2+1フォーマットが示される。図1Eは、図1Dと同様の構築物を示すが、VHとVLとの間の操作されたジスルフィド結合を有し、図1Fは、フリン部位を有するバリアントが示されている。図1Gは、CH1/CKに変異を含む2つの抗LAG3結合Fabドメインと、各重鎖のC末端に融合した2つのPD1結合crossFabドメインとを含む、二重特異性2+2フォーマットを示す。図1Hには、二重特異性1+1フォーマットが示され(「trans」と呼ばれる)、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換を含む)を含み、LAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。Lag3ドメインは、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有する、CH1ドメイン及びCKドメインを含む(「帯電したバリアント」)。図1Iは、2+1フォーマットを示し、ここで、PD1結合ドメインは、crossFab(VH/VLドメインの交換)と、正しい対形成を補助するためにアミノ酸変異を有するCH1ドメイン及びCKドメインを含む1つのLAG3結合ドメイン(「帯電したバリアント」)とを含み、第2のLAG3結合ドメインは、Fcホール鎖のC末端で、そのVHドメインと融合している。
図2A】同種異系成熟樹状細胞と共に培養されたヒトCD4 T細胞によって分泌される細胞毒性グランザイムB放出及びIL-2分泌に対するaLAG-3抗体の効果。図2Aでは、グランザイムB分泌に対する、本明細書に記載されるaLAG3抗体の効果を、図2Bでは、IL-2分泌に対するaLAG3抗体の効果を示す。
図2B】同種異系成熟樹状細胞と共に培養されたヒトCD4 T細胞によって分泌される細胞毒性グランザイムB放出及びIL-2分泌に対するaLAG-3抗体の効果。図2Aでは、グランザイムB分泌に対する、本明細書に記載されるaLAG3抗体の効果を、図2Bでは、IL-2分泌に対するaLAG3抗体の効果を示す。
図3】B細胞リンパ芽球様細胞株(ARH77)と共に培養されたヒトCD4 T細胞による細胞毒性グランザイムB放出に対する、aPD1抗体(0376)と組み合わせたaLAG3抗体の効果。aPD1抗体(0376)と組み合わせた異なるaLAG3抗体と、aPD1抗体(0376)単独の比較が示される。
図4】照射された同種異系PBMCと共に培養されたヒトCD4 T細胞によるグランザイムBのTreg抑制及びIFN-γ放出に対する、aPD1抗体(0376)と組み合わせたaLAG3抗体の効果。図4Aは、aPD1(0376)単独と比較したグランザイムB放出を示し、図4Bは、aPD1(0376)単独と比較したIFN-γ放出を示す。
図5A】組換えPD1Lag3細胞に対する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の結合によって生じる、同時結合及び受容体二量体化。抗体濃度に対し、化学発光(RUで測定)がプロットされる。図5A及び図5Bは、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体及び単一特異性抗LAG3抗体の比較を示す。二重特異性フォーマットのみが、化学発光を誘発することができた。競争実験を図5Cに示す。同じ二重特異性抗体が、aLAG3抗体(0156、MDX25F7)又は抗PD1抗体(0376)のいずれかの存在下で与えられる場合、シグナルは、ほとんど阻害された(PD1競争の場合)か、又は少なくとも顕著に低下した(Lag3)。更なる競争実験を図5Dに示す。二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体と、同じ抗PD1抗体(0376)及び組換えLAG3:Fcタンパク質(0160)との競争は、ほとんど、シグナルを無効にし、一方、同じaLAG3バインダー(0156)の存在は、部分的な阻害しか引き起こさず、2種類の更なる抗LAG3抗体0414及び0416は、シグナルを顕著に調整しなかった。
図5B】組換えPD1Lag3細胞に対する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の結合によって生じる、同時結合及び受容体二量体化。抗体濃度に対し、化学発光(RUで測定)がプロットされる。図5A及び図5Bは、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体及び単一特異性抗LAG3抗体の比較を示す。二重特異性フォーマットのみが、化学発光を誘発することができた。競争実験を図5Cに示す。同じ二重特異性抗体が、aLAG3抗体(0156、MDX25F7)又は抗PD1抗体(0376)のいずれかの存在下で与えられる場合、シグナルは、ほとんど阻害された(PD1競争の場合)か、又は少なくとも顕著に低下した(Lag3)。更なる競争実験を図5Dに示す。二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体と、同じ抗PD1抗体(0376)及び組換えLAG3:Fcタンパク質(0160)との競争は、ほとんど、シグナルを無効にし、一方、同じaLAG3バインダー(0156)の存在は、部分的な阻害しか引き起こさず、2種類の更なる抗LAG3抗体0414及び0416は、シグナルを顕著に調整しなかった。
図5C】組換えPD1Lag3細胞に対する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の結合によって生じる、同時結合及び受容体二量体化。抗体濃度に対し、化学発光(RUで測定)がプロットされる。図5A及び図5Bは、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体及び単一特異性抗LAG3抗体の比較を示す。二重特異性フォーマットのみが、化学発光を誘発することができた。競争実験を図5Cに示す。同じ二重特異性抗体が、aLAG3抗体(0156、MDX25F7)又は抗PD1抗体(0376)のいずれかの存在下で与えられる場合、シグナルは、ほとんど阻害された(PD1競争の場合)か、又は少なくとも顕著に低下した(Lag3)。更なる競争実験を図5Dに示す。二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体と、同じ抗PD1抗体(0376)及び組換えLAG3:Fcタンパク質(0160)との競争は、ほとんど、シグナルを無効にし、一方、同じaLAG3バインダー(0156)の存在は、部分的な阻害しか引き起こさず、2種類の更なる抗LAG3抗体0414及び0416は、シグナルを顕著に調整しなかった。
図5D】組換えPD1Lag3細胞に対する二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の結合によって生じる、同時結合及び受容体二量体化。抗体濃度に対し、化学発光(RUで測定)がプロットされる。図5A及び図5Bは、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体及び単一特異性抗LAG3抗体の比較を示す。二重特異性フォーマットのみが、化学発光を誘発することができた。競争実験を図5Cに示す。同じ二重特異性抗体が、aLAG3抗体(0156、MDX25F7)又は抗PD1抗体(0376)のいずれかの存在下で与えられる場合、シグナルは、ほとんど阻害された(PD1競争の場合)か、又は少なくとも顕著に低下した(Lag3)。更なる競争実験を図5Dに示す。二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体と、同じ抗PD1抗体(0376)及び組換えLAG3:Fcタンパク質(0160)との競争は、ほとんど、シグナルを無効にし、一方、同じaLAG3バインダー(0156)の存在は、部分的な阻害しか引き起こさず、2種類の更なる抗LAG3抗体0414及び0416は、シグナルを顕著に調整しなかった。
図6】異なるフォーマット(1+1対2+1)において、異なるaLAG3バインダーを用いた、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の同時結合の比較。図6Aは、構築物0799(1+1フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0416))の結合曲線を示す。構築物8311(1+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0416))の結合曲線を図6Bに示す。図6Cは、構築物0927(1+1フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線を示す。構築物8310(1+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線を図6Dに示す。
図7A-D】異なるフォーマット(2+1対2+2)において、異なるaLAG3バインダーを用いた、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の同時結合の比較。図7Aは、構築物8310(1+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線を示す。構築物8970(2+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線を図7Bに示す。図7Cは、構築物8311(1+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0416))の結合曲線を示す。構築物8984(2+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0416))の結合曲線を図7Dに示す。構築物0927(1+1フォーマットの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線と比較した、trans 1+1フォーマットにおける構築物0725(抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))と構築物0750(trans 1+2フォーマットにおける抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線は、図7Eに示される。これらの3構築物を、市販のPD1/LAG3コンボレポーターアッセイとも比較し、対応する結合曲線を図7Fに示す。
図7E-F】異なるフォーマット(2+1対2+2)において、異なるaLAG3バインダーを用いた、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の同時結合の比較。図7Aは、構築物8310(1+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線を示す。構築物8970(2+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線を図7Bに示す。図7Cは、構築物8311(1+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0416))の結合曲線を示す。構築物8984(2+2フォーマットでの抗PD1(0376)/抗LAG3(0416))の結合曲線を図7Dに示す。構築物0927(1+1フォーマットの抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線と比較した、trans 1+1フォーマットにおける構築物0725(抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))と構築物0750(trans 1+2フォーマットにおける抗PD1(0376)/抗LAG3(0414))の結合曲線は、図7Eに示される。これらの3構築物を、市販のPD1/LAG3コンボレポーターアッセイとも比較し、対応する結合曲線を図7Fに示す。
図8】フローサイトメトリーで測定する場合に、活性化T細胞に対する投与に対する添加から3時間後の、異なるフォーマットの二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体と親抗LAG3抗体のインターナリゼーション。図8Aは、実験の代表的なヒストグラムを示し、異なるフォーマットについてのインターナリゼーションの割合を図8Bに示す。
図9A】経時分析は、高度なインターナリゼーションを示す他のフォーマットと比較した時に、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体(0927)の1+1フォーマットの高い膜局在化を示す図9Aは、15分後、1時間後及び3時間後に共焦点顕微鏡によって検出されるような蛍光画像を示す。活性化したCD4細胞は、黒丸で示されている。TIM3抗体の蛍光画像は、強いインターナリゼーションの一例として示されている。画像の定量分析を図9Bに示す。
図9B】経時分析は、高度なインターナリゼーションを示す他のフォーマットと比較した時に、二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体(0927)の1+1フォーマットの高い膜局在化を示す図9Aは、15分後、1時間後及び3時間後に共焦点顕微鏡によって検出されるような蛍光画像を示す。活性化したCD4細胞は、黒丸で示されている。TIM3抗体の蛍光画像は、強いインターナリゼーションの一例として示されている。画像の定量分析を図9Bに示す。
図10】Tregと比較した、従来のT細胞に対する結合図10A~10Cは、従来のT細胞(黒色曲線)及びTreg(灰色領域)に対する結合を示す、1つの代表的なドナーからのデータを示す。抗LAG3抗体 0414(hu IgG1 PGLALA)の結合は、図10Aに示されており、図10B及び図10Cは、それぞれ、抗PD1抗体0376及び二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体(0927)の結合を示す。図10Dにおいて、従来のT細胞に結合した所与の分子の幾何蛍光平均強度を、同じサンプル中のTregに結合した所与の分子の値と比較したΔ値を示す。結果(メジアン)は、3人の異なるドナーによる3の独立した実験から得られる。
図11】PD1及びTregを同時にブロックすると、Treg抑制からTconvエフェクター機能が守られる。同時培養5日後のTconvによって分泌したグランザイムBのTregによる抑制の割合が示される。結果(メジアン)は、10人の異なるドナーによる10の独立した実験から得られる。Pは、二元配置ANOVAを用いて計算された。
図12】免疫原性黒色腫抗原ペプチドプールを用いて回収した後の黒色腫患者PBMC由来のCD4 T細胞によるグランザイムB及びIFN-γ分泌に対するPD-1及びLAG-3ブロックの効果。図12は、抗PD1(0376)単独、抗PD1(0376)とaLAG3(0414)の組み合わせ、及び1:1フォーマットの二重特異性抗体0927(抗PD1(0376)/抗LAG3(0414)によって生じる、グランザイムB及びIFN-γ放出に対する効果の比較を示す。示されるのは、12人の黒色腫患者PBMC由来のペプチドプール刺激されたCD4 T細胞に対し、グランザイムB及びIFNγ産生が何倍増加したかである。
図13】B細胞リンパ芽球様細胞株(ARH77)と共に培養されたヒトCD4 T細胞による細胞毒性グランザイムB放出に対する、aPD1/aLAG3二重特異性抗体の効果。本明細書に記載される異なる二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体を、治療又は臨床試験の標準で使用される抗体と比較する。
図14】膵臓腺癌BxPC3を用いてチャレンジ試験したヒト化マウスの有効性試験。CEACAM CD3 TCBと組み合わせた場合、従来のPD1抗体と比較すると、aPD1/aLAG3二重特異性抗体のみが、統計的に有意な腫瘍保護を与えた。BxPC3細胞を用いて皮下でチャレンジ試験され、CEACAM5-TCBと組み合わせた指定の分子で処理されたヒト化マウスにおける主要成長曲線が示されている。
図15】47日間にわたる腫瘍体積の測定(mm±SEM)は、それぞれの個々の動物について示されており、抗腫瘍応答の均一性を示している。腫瘍成長曲線は、図15Aではビヒクル群について、図15BではCEACAM5 CD3 TCB単独(2.5mg/kg)について、図15CではCEACAM5 CD3 TCBとニボルマブ(1.5mg/kg)との組み合わせについて、図15DではCEACAM5 CD3 TCBとペンブロリズマブ(1.5mg/kg)の組み合わせについて、図15EではCEACAM5 CD3 TCBとPD1/LAG3 0927の組み合わせについて(1.5mg/kg)、図15Fでは(3mg/kgの二重特異性抗体)について示されている。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
他の意味であると定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野で一般的に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切な場合にはいつでも、単数形で使用される用語は、複数形も含み、その逆に、複数系で使用される用語は、単数形も含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「抗原結合分子」との用語は、最も広い意味で、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、抗体、抗体フラグメント及び足場抗原結合タンパク質である。
【0052】
本明細書の「抗体」との用語は、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されないが、所望な抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含む。
【0053】
「モノクローナル抗体」との用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指す。すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。このようなバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。
【0054】
「単一特異性」抗体との用語は、本明細書で使用される場合、同じ抗原の同じエピトープにそれぞれ結合する1つ以上の結合部位を有する抗体を示す。「二重特異性」との用語は、抗体が、少なくとも2つの別個の抗原決定基、例えば、異なる抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに結合している抗体重鎖可変ドメイン(VH)と抗体軽鎖可変ドメイン(VL)の対によってそれぞれ形成される2つの結合部位に特異的に結合することができることを意味する。このような二重特異性抗体は、1+1フォーマットである。他の二重特異性抗体フォーマットは、2+1フォーマット(第1の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位と、第2の抗原又はエピトープに対する1つの結合部位とを含む)、又は2+2フォーマット(第1の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位と、第2の抗原又はエピトープに対する2つの結合部位とを含む)である。典型的には、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。
【0055】
「価数」との用語は、本出願で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の結合ドメインの存在を示す。この場合、「二価」、「四価」及び「六価」との用語は、抗原結合分子中のそれぞれ2個の結合ドメイン、4個の結合ドメイン及び6個の結合ドメインの存在を示す。本発明の二重特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」又は「多価」(例えば、「四価」又は「六価」)であってもよい。特定の態様では、本発明の抗体は、2つ以上の結合部位を有し、二重特異性である。すなわち、2個より多い結合部位が存在する場合であっても(すなわち、抗体は三価又は多価である)、抗体は、二重特異性であってもよい。
【0056】
「全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」との用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。「ネイティブ抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブIgGクラス抗体は、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖から構成される。N末端からC末端まで、それぞれの重鎖は、可変ドメイン(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)(重鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。同様に、N末端からC末端まで、それぞれの軽鎖は、可変ドメイン(VL)(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、その後に軽鎖定常ドメイン(CL)(軽鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。抗体の重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類の1つに割り当てられてもよく、このいくつかは、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)などのサブタイプに更に分けられてもよい。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類の1つに割り当てられてもよい。
【0057】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、交差Fabフラグメント、直鎖抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、抗体フラグメントから作られる多重特異性抗体、及びシングルドメイン抗体が挙げられる。特定の抗体フラグメントの総説としては、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)を参照。scFvフラグメントの総説としては、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照。また、WO 93/16185号及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号を参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期が長くなったFab及びF(ab’)2フラグメントの説明については、米国特許第5,869,046号を参照。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい2つの抗原結合ドメインを含む抗体フラグメントであり、例えば、EP 404,097号;WO 1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に記載される。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体フラグメントである。特定の実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA。例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照)。これに加え、抗体フラグメントは、VHドメインに特徴的な(すなわち、VLドメインと共に集合させることが可能な)、又はVLドメインに特徴的な(すなわち、機能的抗原結合部位にVHドメインと共に集合させることが可能な)一本鎖ポリペプチドを含み、それによって、全長抗体の抗原結合特性を与える。抗体フラグメントは、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0058】
インタクト抗体のパパイン消化により、2つの同一の抗原結合フラグメントが得られ、これは、それぞれ重鎖及び軽鎖可変ドメインと、更に、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む「Fab」フラグメントと呼ばれる。従って、本明細書で使用される場合、「Fabフラグメント」との用語は、軽鎖(CL)のVLドメイン及び定常ドメインを含む軽鎖フラグメントと、重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体フラグメントを指す。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が有機チオール基を有するFab’フラグメントである。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位(2つのFabフラグメント)と、Fc領域の一部とを含む、F(ab’)フラグメントが得られる。
【0059】
「cross-Fabフラグメント」又は「xFabフラグメント」又は「クロスオーバーFabフラグメント」との用語は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されたFabフラグメントを指す。クロスオーバーFab分子の2つの可能な鎖組成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の可変領域は、置き換わっており、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(VLVH)とも呼ばれる。一方、Fab重鎖及び軽鎖の定常領域が置き換わっている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)とで構成されるペプチド鎖と、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)とで構成されるペプチド鎖とを含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(CLCH1)とも呼ばれる。
【0060】
「一本鎖Fabフラグメント」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端への方向で、以下の順序の1つを有する。(a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、(b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、(c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又は(d)VL-CH1-リンカー-VH-CL。ここで、前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸、好ましくは32~50アミノ酸のポリペプチドである。前記一本鎖Fabフラグメントは、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合によって安定化される。これに加え、これらの一本鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabat番号付けによれば、可変重鎖の位置44及び可変軽鎖の位置100)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって、更に安定化されるだろう。
【0061】
「クロスオーバー一本鎖Fabフラグメント」又は「x-scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端への方向で、以下の順序の1つを有する。(a)VH-CL-リンカー-VL-CH1及び(b)VL-CH1-リンカー-VH-CL。ここで、VHとVLは、一緒に、ある抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成し、前記リンカーは、少なくとも30アミノ酸のポリペプチドである。これに加え、これらのx-scFab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabat番号付けによれば、可変重鎖の位置44及び可変軽鎖の位置100)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって、更に安定化されるだろう。
【0062】
「一本鎖可変フラグメント(scFv)」は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドを用いて接続された、抗体の重鎖(V)及び軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが豊富であり、溶解度のためにセリン又はトレオニンが豊富であり、VのN末端と、VのC末端とが接続していてもよく、又は逆に接続していてもよい。このタンパク質は、定常領域が除去され、リンカーが導入されているが、元々の抗体の特異性を保持している。scFv抗体は、例えば、Houston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)46-96)に記載されている。これに加え、抗体フラグメントは、VHドメインに特徴的な(すなわち、VLドメインと共に集合させることが可能な)、又はVLドメインに特徴的な(すなわち、機能的抗原結合部位にVHドメインと共に集合させることが可能な)一本鎖ポリペプチドを含み、それによって、全長抗体の抗原結合特性を与える。
【0063】
「足場抗原結合タンパク質」は、当該技術分野で既知であり、例えば、フィブロネクチン及び設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、抗原結合ドメインの代替的な足場として使用されてきた。例えば、Gebauer and Skerra,Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics.Curr Opin Chem Biol 13:245-255(2009)及びStumpp et al.,Darpins:A new generation of protein therapeutics.Drug Discovery Today 13:695-701(2008)を参照。本発明の一態様では、足場抗原結合タンパク質は、CTLA-4(エビボディ)、リポカリン(アンチカリン)、プロテインA由来分子、例えば、プロテインAのZ-ドメイン(アフィボディ)、A-ドメイン(アビマー/マキシボディ)、血清トランスフェリン(トランスボディ);設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)、抗体軽鎖又は重鎖の可変ドメイン(単一ドメイン抗体、sdAb)、抗体重鎖の可変ドメイン(ナノボディ、aVH)、VNARフラグメント、フィブロネクチン(アドネクチン)、C型レクチンドメイン(テトラネクチン);新規抗原受容体β-ラクタマーゼの可変ドメイン(VNARフラグメント)、ヒトγ-クリスタリン又はユビキチン(アフィリン分子);ヒトプロテアーゼ阻害剤のクニッツ型ドメイン、ミクロボディ、例えば、ノッチンファミリー由来のタンパク質、ペプチドアプタマー及びフィブロネクチン(アドネクチン)からなる群から選択される。CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連抗原4)は、主にCD4+T細胞で発現するCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは、可変ドメイン様のIg折りたたみを有する。抗体のCDRに対応するループは、異なる結合特性を与えるために、異種配列と置換されてもよい。異なる結合特異性を有するように操作されたCTLA-4分子も、エビボディとして知られている(例えば、US7166697B1号)。エビボディは、抗体(例えば、ドメイン抗体)の単離された可変領域とほぼ同じ大きさである。更なる詳細については、Journal of Immunological Methods 248(1-2)、31-45(2001)を参照。リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質などの小さな疎水性分子を運ぶ細胞外タンパク質のファミリーである。リポカリンは、剛性βシート二次構造を有し、円錐構造の開放端に多くのループがあり、このループは、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。アンチカリンは、160~180アミノ酸の大きさであり、リポカリンから誘導される。更なる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482:337-350(2000)、US7250297B1号及びUS20070224633号を参照。アフィボディは、抗原に結合するように操作することが可能な、Staphylococcus aureusのプロテインAに由来する足場である。ドメインは、約58アミノ酸の3つのラセン形の束からなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化によって作られている。更なる詳細について、Protein Eng.Des.Sel.2004,17,455-462及びEP 1641818A1号を参照。アビマーは、Aドメイン足場ファミリーに由来する複数ドメインタンパク質である。約35アミノ酸のネイティブドメインは、規定のジスルフィド結合した構造に適合する。多様性は、A-ドメインのファミリーによって示される天然の変動のシャッフリングによって作られる。更なる詳細については、Nature Biotechnology 23(12)、1556-1561(2005)及びExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6)、909-917(2007年6月)を参照。トランスフェリンは、モノマー血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、許容状態の表面ループへのペプチド配列の挿入によって異なる標的抗原に結合するように操作可能である。操作されたトランスフェリン足場の例としては、トランスボディが挙げられる。更なる詳細については、J.Biol.Chem 274、24066-24073(1999)を参照。設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)は、細胞骨格の内在性膜タンパク質の接着に介在するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリンリピートは、2つのαらせんとβターンとからなる33残基のモチーフである。単一のアンキリンリピートは、各反復の第1のαらせん及びβターンの中の残基をランダム化することによって異なる標的抗原に結合するように操作することができる。その結合界面は、モジュールの数を増やすことによって、増加させることができる(アフィニティ成熟方法)。更なる詳細については、J.Mol.Biol.332、489-503(2003)、PNAS 100(4)、1700-1705(2003)及びJ.Mol.Biol.369、1015-1028(2007)及びUS20040132028A1号を参照。
【0064】
一本鎖ドメイン抗体は、一本のモノマー性可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。第1の単一ドメインは、ラクダ由来の抗体重鎖の可変ドメインに由来した(ナノボディ又はVHフラグメント)。更に、単一ドメイン抗体との用語は、自律的なヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメ由来VNARフラグメントを含む。フィブロネクチンは、抗原に結合するように操作可能な足場である。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復単位の10番目のドメインの天然アミノ酸配列を有する骨格からなる。βサンドイッチの片方の端にある3つのループを、アドネクチンが目的の治療標的を特異的に認識することができるように操作することができる。更なる詳細について、Protein Eng.Des.Sel.18、435-444(2005)、US20080139791号、WO2005056764号及びUS6818418B1号を参照。ペプチドアプタマーは、定常足場タンパク質、典型的には、活性部位に挿入される拘束された可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrexA)からなるコンビナトリアル認識分子である。更なる詳細について、Expert Opin.Biol.Ther.5、783-797(2005)を参照。ミクロボディは、3~4のシステイン架橋を含む、25~50アミノ酸長の天然に存在するミクロタンパク質に由来し、ミクロタンパク質の例としては、KalataBI、コノトキシン及びノッチンが挙げられる。ミクロタンパク質は、ミクロタンパク質の全体的な折りたたみに影響を与えることなく、25アミノ酸までを含むように操作することができるループを有する。操作されたノッチンドメインの更なる詳細については、WO2008098796号を参照。
【0065】
参照分子と「同じエピトープに結合する抗原結合分子」は、競争アッセイにおいて、参照分子のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする抗原結合分子を指し、逆に、参照分子は、競争アッセイにおいて、抗原結合分子のその抗原に対する結合を50%以上ブロックする。
【0066】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合部位」との用語は、抗原決定基に特異的に結合する抗原結合分子の一部を指す。より特定的には、「抗原結合ドメイン」との用語は、ある抗原の一部又は全てに特異的に結合し、ある抗原の一部又は全てに対して相補的な抗体の一部を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、抗原の特定の部分のみに結合してもよく、この部分は、エピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、例えば、1つ以上の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)と、抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。一態様では、抗原結合ドメインは、その抗原に結合し、その機能をブロックするか、又は部分的にブロックすることができる。PD1及びLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインは、本明細書で更に定義するように、抗体及びそのフラグメントを含む。これに加え、抗原結合ドメインは、足場抗原結合タンパク質、例えば、設計された反復タンパク質又は設計された反復ドメインに基づく結合ドメインを含んでいてもよい(例えば、WO 2002/020565号を参照)。
【0067】
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」との用語は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分-抗原複合体を形成する、抗原結合部分が結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される配座構成)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞表面に、ウイルス感染した細胞表面に、他の疾患細胞表面に、免疫細胞表面に、血清中に遊離状態で、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)内に見出されてもよい。本発明の抗原として有用なタンパク質は、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意のネイティブ形態のタンパク質であってもよい。特定の実施形態では、抗原は、ヒトタンパク質である。本発明の特定のタンパク質について言及される場合、この用語は、「全長」の未処理のタンパク質、及び細胞の処理から得られるタンパク質の任意の形態を包含する。この用語は、タンパク質の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。
【0068】
「特異的に結合する」とは、その結合が抗原選択性であり、望ましくない相互作用又は非特異的な相互作用とは判別することができることを意味する。抗原結合分子が特定の抗原(例えば、PD-1)に結合する能力は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は当該技術分野で知られた他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore装置で分析される)(Liljeblad et al.,Glyco J 17、323-329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley、Endocr Res 28、217-229(2002))によって測定することができる。一実施形態では、無関係なタンパク質に対する抗原結合分子の結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗原結合分子の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、抗原に結合する分子は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10-7M以下、例えば、10-7M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。
【0069】
「アフィニティ」又は「結合アフィニティ」は、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)と、その結合対(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の合計強度を指す。特に示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合アフィニティ」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティを指す。分子Xのその結合対Yに対するアフィニティは、一般的に、解離定数(Kd)によって表すことができ、脱離速度定数と解離速度定数(それぞれkoff及びkon)の比である。したがって、速度定数の比率が同じである限り、等価なアフィニティが、異なる速度定数を含む場合がある。アフィニティは、本明細書に記載するものを含め、当該技術分野で一般的な方法によって測定することができる。アフィニティを測定する特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0070】
本明細書で使用される場合、ある抗体の「高アフィニティ」との用語は、標的抗原に対するKdが10-9M以下、更により特定的には10-10M以下の抗体を指す。「低アフィニティ」の抗体は、Kdが10-8以上の抗体を指す。
【0071】
「アフィニティ成熟した」抗体は、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の変更を有する抗体を指し、これに対して、親抗体は、このような変更を有しておらず、このような変更によって、抗原に対する抗体のアフィニティが向上する。
【0072】
「PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体」、「PD1及びLAG3に特異的に結合する二重特異性抗体」、「PD1及びLAG3に特異的な二重特異性抗原結合分子」又は「抗PD1/抗LAG3抗体」は、本明細書で相互に置き換え可能に使用され、PD1及びLAG3に、抗体がPD1及びLAG3を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように、十分なアフィニティで結合することが可能な二重特異性抗体を指す。
【0073】
「PD1」との用語は、プログラム細胞死タンパク質1としても知られ、1992年に最初に記述された288アミノ酸のI型膜タンパク質である(Ishida et al.,EMBO J.,11(1992),3887-3895)。PD-1は、T細胞制御因子の伸長したCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであり、2つのリガンドPD-L1(B7-H1、CD274)及びPD-L2(B7-DC、CD273)を有する。このタンパク質の構造は、細胞外IgVドメインと、その後に膜貫通領域と、細胞内尾部とを含む。細胞内尾部は、免疫受容体チロシン系阻害モチーフ及び免疫受容体チロシン系スイッチモチーフ中に位置する2つのリン酸化部位を含み、PD-1がTCRシグナルを負の方向に制御することを示唆している。このことは、リガンド結合の際の、PD-1の細胞質尾部に対するSHP-1及びSHP-2ホスファターゼの結合に一致している。PD-1は、ナイーブT細胞では発現しないが、T細胞受容体(TCR)が介在する活性化に従ってアップレギュレーションされ、活性化したT細胞及び疲弊したT細胞の両方で観察される(Agata et al.,Int.Immunology 8(1996)、765-772)。これらの疲弊したT細胞は、機能不全の表現型を有し、適切に応答することができない。PD-1は、比較的広い発現パターンを有するが、その最も重要な役割は、T細胞に対する共阻害受容体としての役割であろう(Chinai et al、Trends in Pharmacological Sciences 36(2015)、587-595)。したがって、現在の治療手法は、T細胞応答を向上させるために、PD-1とそのリガンドとの相互作用をブロックすることに集中している。「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、「PD1」、「PDCD1」、「hPD-1」及び「hPD-I」との用語は、相互に置き換え可能に使用することができ、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、PD-1と共通の少なくとも1つのエピトープを有するアナログを含む。ヒトPD1のアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号Q15116(配列番号128)に示される。
【0074】
「抗PD1抗体」及び「PD1に結合する抗原結合ドメインを含む抗体」との用語は、抗体が、PD-1を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように十分なアフィニティで、PD1(特に、細胞表面で発現するPD1ポリペプチド)に結合することが可能な抗体を指す。一態様では、無関係な非PD1タンパク質に対する抗PD1抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)によって、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いた表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する場合、PD1に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の態様では、ヒトPD1に結合する抗原結合タンパク質は、ヒトPD1に結合する結合アフィニティのK値が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。好ましい一実施形態では、結合アフィニティのそれぞれのK値は、PD1結合アフィニティについて、ヒトPD1の細胞外ドメイン(ECD)(PD1-ECD)を用い、表面プラズモン共鳴アッセイで決定される。「抗PD1抗体」との用語は、PD1及び第2の抗原に結合することが可能な二重特異性抗体も包含する。
【0075】
「LAG3」又は「Lag-3」又は「リンパ球活性化遺伝子-3」又は「CD223」との用語は、本明細書で使用される場合、特に示されていない限り、哺乳動物、例えば、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含め、任意の脊椎動物源由来の任意のネイティブLAG3を指す。この用語は、「全長」の未処理のLAG3と、細胞の処理から生じるLAG3の任意の形態を包含する。この用語は、LAG3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。好ましい一実施形態では、「LAG3」との用語は、ヒトLAG3を指す。例示的に処理された(シグナル配列を含まない)LAG3のアミノ酸配列を配列番号73に示す。例示的な細胞外ドメイン(ECD)LAG3のアミノ酸配列を配列番号74に示す。
【0076】
「抗LAG3抗体」及び「LAG3に結合する抗体」との用語は、抗体が、LAG3を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように十分なアフィニティで、LAG3に結合することが可能な抗体を指す。一態様では、無関係な非LAG3タンパク質に対する抗LAG3抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるLAG3に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、LAG3に結合する抗体は、解離定数(Kd)が、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。特定の態様では、抗LAG3抗体は、異なる種由来のLAG3の中で保存されているLAG3のエピトープに結合する。好ましい一実施形態では、「抗LAG3抗体」、「ヒトLAG3に特異的に結合する抗体」及び「ヒトLAG3に結合する抗体」は、結合アフィニティK値が1.0×10-8mol/L以下、一実施形態では、K値が1.0×10-9mol/L以下、一実施形態では、K値が1.0×10-9mol/L~1.0×10-13mol/Lである、ヒトLAG3抗原又はその細胞外素メイン(ECD)に特異的に結合する抗体を指す。この観点で、結合アフィニティは、標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIAcore(登録商標)、GE-Healthcare Uppsala、スウェーデン)を用いて、例えば、LAG3細胞外ドメインを用いて決定される。「抗LAG3抗体」との用語は、LAG3及び第2の抗原に結合することが可能な二重特異性抗体も包含する。
【0077】
「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、これらが結合する抗原の生体活性を阻害するか、又は減らす抗体である。いくつかの実施形態では、ブロッキング抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生体活性を実質的に、又は完全に阻害する。例えば、本発明の二重特異性抗体は、抗原刺激に対する機能不全状態から、T細胞による機能応答(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死)を回復するように、PD-1及びLAG3によるシグナル伝達をブロックする。
【0078】
「可変領域」又は「可変ドメイン」との用語は、抗原に対する抗原結合分子の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般的に、同様の構造を有し、それぞれのドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,第6版、W.H.Freeman and Co.,91ページ(2007)を参照。抗原結合特異性を与えるために、単一のVH又はVLドメインで十分な場合がある。
【0079】
「超可変領域」又は「HVR」との用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変性であり、及び/又は構造的に所定のループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、ネイティブの4本鎖抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。HVRは、一般的に、超可変ループ由来及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、CDRは、最も高い配列可変性を有し、及び/又は抗原認識に関与している。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)で生じる。(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)。)例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24-34、L2の50-56、L3の89-97、H1の31-35B、H2の50-65及びH3の95-102に存在する。(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)。)超可変領域(HVR)は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の一部を言及する際に、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。この特定の領域は、Kabat et al.、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)及びChothiaet al、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)によって記載され、ここで、この定義は、互いに対して比較したときに、重複するアミノ酸残基を含むか、又はアミノ酸残基の一部を含む。それにもかかわらず、抗体又はそのバリアントのCDRを指すためのいずれかの定義に対する適用は、本明細書に定義され、使用される用語の範囲内であることが意図される。上に引用した参考文献それぞれによって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基は、比較として、表Aにおいて、以下に記載している。特定のCDRを包含する実際の残基の番号は、CDRの配列及び大きさに依存して変わる。当業者は、日常的に、抗体の可変領域のアミノ酸配列が与えられれば、どの残基が特定のCDRを含むかを決定することができる。
Kabatet al.は、任意の抗体に適用可能な可変領域配列の番号付けシステムも定義した。当業者は、任意の可変領域配列に対し、配列自体を超える実験データに頼ることなく、「Kabat番号付け」のこのシステムを明確に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabat et al、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)に記載される番号付けシステムを指す。特に明記されない限り、抗体可変領域中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けに関する言及は、Kabat番号付けシステムに従う。
【0080】
VH中のCDR1を除き、CDRは、一般的に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRは、「特異性決定領域」、すなわち「SDR」も含み、SDRは、抗原と接触する残基である。SDRは、省略-CDR、すなわちa-CDRと呼ばれるCDRの領域内に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2及びa-CDR-H3)は、L1の31-34、L2の50-55、L3の89-96、H1の31-35B、H2の50-58及びH3の95-102のアミノ酸残基に存在する。(Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照。)特に示されない限り、HVR残基及び可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.に従って本明細書では番号付けされる。
【0081】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)中で以下の配列で現れる。FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0082】
本明細書の目的のために、「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク由来の軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に対して、配列が同一である。
【0083】
「キメラ」抗体との用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の供給源又は種に由来する抗体を指し、一方、重鎖及び/又は軽鎖の残りは、異なる供給源又は種に由来する。
【0084】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。5種類の主要なクラスの抗体IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)IgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgAに分けられてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0085】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特に、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合という観点で、本発明に係る特性を作り出すために、定常領域が、元々の抗体の定常領域から更に改変されるか、又は変更されているものである。
【0086】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞によって産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源から誘導される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。
【0087】
「モノクローナル抗体」との用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指す。すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。このようなバリアントは、一般的に、少量存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾詞「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように構築されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法、本明細書に記載するモノクローナル抗体を作るためのこのような方法及び他の例示的な方法を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0088】
「Fcドメイン」又は「Fc領域」との用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含む抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域とバリアントFc領域を含む。特に、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びている。しかし、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は、存在していてもよく、又は存在していなくてもよい。重鎖のアミノ酸配列は、常に、C末端リシンを伴って存在するが、C末端リシンを含まないバリアントは、本発明に含まれる。
【0089】
IgG Fc領域は、IgG CH2ドメインと、IgG CH3ドメインとを含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、おおよそのアミノ酸位置231のアミノ酸残基から、おおよそのアミノ酸位置340のアミノ酸残基まで延びている。一実施形態では、炭水化物鎖は、CH2ドメインに接続している。本発明のCH2ドメインは、ネイティブ配列CH2ドメイン又はバリアントCH2ドメインであってもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域中のCH2ドメインに対してC末端に残基の伸長部を含む(すなわち、IgGのおおよその位置341のアミノ酸残基から、おおよその位置447のアミノ酸残基まで)。本発明のCH3領域は、ネイティブ配列CH3ドメイン又はバリアントCH3ドメインであってもよい(例えば、その1つの鎖に導入された「突起部」(「ノブ」)を有し、その他の鎖に対応する導入された「空洞」(「ホール」)を有するCH3ドメイン、本明細書に参考として明確に組み込まれる米国特許第5,821,333号を参照)。このようなバリアントCH3ドメインを使用し、本明細書に記載される2つの同一ではない抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進してもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるような、EU番号付けシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0090】
「ホールにノブを入れる(knob-into-hole)」技術は、例えば、US 5,731,168号、US 7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、もっと大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換することによって構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補性空洞が、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的変異導入法によって、又はペプチド合成によって作成することができる。具体的な実施形態では、ノブ改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうち1つにアミノ酸置換T366Wを含み、ホール改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのうち他方の1つにアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。更に具体的な実施形態では、ノブ改変を含むFcドメインのサブユニットは、更に、アミノ酸置換S354Cを含み、ホール改変を含むFcドメインのサブユニットは、更に、アミノ酸置換Y349Cを含む。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fc領域の2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が生成し、それにより、ダイマーをさらに安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0091】
「免疫グロブリンのFc領域に等価な領域」は、天然に存在する免疫グロブリンのFc領域の対立遺伝子バリアント及び置換、付加又は欠失を生じるが、エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞毒性)に介在する免疫グロブリンの能力を実質的に低下させない変更を有するバリアントを含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生体機能を実質的に失うことなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から欠失されていてもよい。このようなバリアントは、活性に対して最小限の影響を有するように、当該技術分野で知られた一般的な規則に従って選択することができる(例えば、Bowie,J.U.et al.、Science 247:1306-10(1990)を参照)。
【0092】
「エフェクター機能」との用語は、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる。C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞活性化。
【0093】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域による係合の後に、エフェクター機能を発揮するために受容体を含む細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。特定の活性化Fc受容体は、ヒトFcγRIIIaである(UniProt寄託番号P08637,version 141を参照)。
【0094】
「ペプチドリンカー」との用語は、1つ以上のアミノ酸、典型的には、約2~20のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当該技術分野で知られているか、又は本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば、(GS)、(SG又はG(SGペプチドリンカーであり、ここで、「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4、特に、2の数字であり、すなわち、GGGGS(配列番号129)GGGGSGGGGS(配列番号130)、SGGGGSGGGG(配列番号131)及びGGGGSGGGGSGGGG(配列番号132)からなる群から選択されるペプチドであるだけではなく、配列GSPGSSSSGS(配列番号133)、(G4S)(配列番号134)、(G4S)(配列番号135)、GSGSGSGS(配列番号136)、GSGSGNGS(配列番号137)、GGSGSGSG(配列番号138)、GGSGSG(配列番号139)、GGSG(配列番号140)、GGSGNGSG(配列番号141)、GGNGSGSG(配列番号142)及びGGNGSG(配列番号143)を含む。特定の目的のペプチドリンカーは、(G4S)(配列番号129)、(GS)又はGGGGSGGGGS(配列番号130)、(G4S)(配列番号134)及び(GS)(配列番号135)、より特定的には(GS)又はGGGGSGGGGS(配列番号130)である。
【0095】
「~に融合する」又は「~に接続する」とは、構成要素(例えば、抗原結合ドメイン及びFcドメイン)が、ペプチド結合によって直接的に、又は1つ以上のペプチドリンカーを介して連結することを意味する。
【0096】
「アミノ酸」との用語は、本明細書中で使用される場合、アラニン(三文字コード:ala、一文字コード)A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リシン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα-アミノ酸の一群を示す。
【0097】
参照ポリペプチド(タンパク質)配列に対する「アミノ酸配列の同一性率(%)」は、配列をアラインメントし、最大の配列同一性率を達成するために、必要ならばギャップを導入した後、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合であると定義される。アミノ酸配列同一性率を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN.SAWI又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントするのに適切なパラメータを決定することができる。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて作られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって書かれたものであり、ソースコードは、U.S.Copyright Office(ワシントンD.C.、20559)のユーザドキュメンテーションにファイルされており、U.S.Copyright Registration番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア)から公的に入手可能であるか、又はソースコードからコンパイルされてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含め、UNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。ALIGN-2がアミノ酸配列比較に使用される状況では、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(又は、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、又は含む所与のアミノ酸配列Aと呼ぶことができる)は、以下のように計算される。
【0098】
分数X/Yの100倍。
【0099】
ここで、Xは、A及びBのこのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって同一性マッチとしてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の合計数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%に等しくないことが理解されるだろう。他の意味であると具体的に述べられていない限り、本明細書で使用されるアミノ酸配列同一性%の値は全て、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いる直前の段落に記載されるように得られる。
【0100】
特定の態様では、本明細書で提供される本発明の二重特異性抗体のアミノ酸配列バリアントが想定される。例えば、二重特異性抗体の結合アフィニティ及び/又は他の生体特性を改良することが望ましい場合がある。二重特異性抗体のアミノ酸配列バリアントは、分子をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって調製されてもよく、又はペプチド合成によって調製されてもよい。このような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴(例えば、抗原結合)を有する限り、最終構築物に到達するように行うことができる。置換による突然変異生成のための目的部位としては、HVR及びフレームワーク(FR)が挙げられる。保存的置換は、「好ましい置換」の見出しで表Bに与えられており、アミノ酸側鎖クラス(1)~(6)を参照しつつ、以下に更に記載される。アミノ酸置換は、目的の分子及び所望な活性(例えば、抗原結合の保持/向上、免疫原性の低下、又はADCC又はCDCの向上)についてスクリーニングされた産物に導入されていてもよい。
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされてもよい。
【0101】
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp,Glu;
(4)塩基性:His,Lys,Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly,Pro;
(6)芳香族:Trp,Tyr,Phe。
【0102】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うだろう。
【0103】
「アミノ酸配列バリアント」との用語は、親抗原結合分子(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基中にアミノ酸置換が存在する実質的なバリアントを含む。一般的に、更なる試験のために選択され、得られたバリアントは、親抗原結合分子と比較して、特定の生物学的特性の改変(例えば、改良)(例えば、アフィニティの増加、免疫原性の低下)を有し、及び/又は親抗原結合分子の特定の生物学的特性を実質的に保持しているだろう。例示的な置換バリアントは、アフィニティ成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づくアフィニティ成熟技術を用い、簡便に作成されてもよい。簡単に言うと、1つ以上のHVR残基は、変異しており、ファージディスプレイされ、特定の生体活性(例えば、結合アフィニティ)についてスクリーニングされたバリアント抗原結合分子である。特定の実施形態では、置換、挿入又は欠失は、このような変更が、抗原結合分子が抗原に結合する能力を実質的に減らさない限り、1つ以上のHVR内で起こってもよい。例えば、結合アフィニティを実質的に低下させない保存的変更(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中に作られてもよい。変異を標的とし得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science、244:1081-1085によって記載されるように、「アラニンスキャンニング突然変異生成」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)が同定され、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、抗体と抗原との間の接触点を同定するための、抗原-抗原結合分子複合体の結晶構造。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントは、所望な特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0104】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲を融合するアミノ末端及び/又はカルボキシル末端、及び1個又は複数のアミノ酸残基の配列な挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する二重特異性抗体が挙げられる。分子の他の挿入としては、二重特異性抗体の血清半減期を延ばすポリペプチドに対する、N末端又はC末端に対する融合が挙げられる。
【0105】
特定の態様では、本明細書で提供される二重特異性抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように変更される。分子のグリコシル化バリアントは、1つ以上のグリコシル化部位が作成されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を変えることによって、簡便に得られるだろう。例えば、Fcドメインに接続する炭水化物が変更されてもよい。哺乳動物細胞によって作られるネイティブ抗体は、典型的には、一般的に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297に対するN結合によって接続する、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖は、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸などの種々の炭水化物を含んでいてもよく、二分岐オリゴ糖構造の「幹」にあるGlcNAcに接続するフコースを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、特定の改良された特性を有するバリアントを作成するために、本発明の二重特異性抗体中のオリゴ糖改変が行われてもよい。一態様では、Fc領域に(直接的又は間接的に)接続するフコースを欠いた炭水化物構造を有する二重特異性抗体のバリアントが提供される。このようなフコシル化バリアントは、改良されたADCC機能を有していてもよい。例えば、米国特許公開第US 2003/0157108号(Presta,L.)又はUS 2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照。本発明の二重特異性抗体の更なるバリアントは、二分されたオリゴ糖を有するもの、例えば、Fc領域に接続した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されているものを含む。このようなバリアントは、フコシル化の低下及び/又はADCC機能の向上を有していてもよく、例えば、WO 2003/011878号(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)及びUS 2005/0123546号(Umanaet alを参照のこと。Fc領域に接続したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有するバリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改良されたCDC機能を有する場合があり、例えば、WO 1997/30087号(Patel et al.)、WO 1998/58964号(Raju、S.)及びWO 1999/22764号(Raju、S.)に記載される。
【0106】
特定の態様では、本発明の二重特異性抗体のシステイン操作されたバリアント、例えば、分子の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定的な実施形態では、置換された残基は、分子の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインと置換することによって、反応性チオール基は、抗体の接近可能な部位に位置しており、これを使用し、抗体を他の部分(例えば、薬物部分又はリンカー-薬物部分)に対して抱合させ、免疫抱合体を作成してもよい。特定の実施形態では、以下の残基の任意の1つ以上が、システインで置換されていてもよい。軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗原結合分子は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように作成されてもよい。
【0107】
特定の態様では、本明細書で提供される二重特異性抗体は、当該技術分野で知られており、容易に入手可能な、更なる非タンパク質性部分を含むように改変されてもよい。抗体の誘導体化に適した部分としては、限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中での安定性に起因して、製造時に利点があるだろう。このポリマーは、任意の分子量を有していてもよく、分岐していてもよく、又は分岐していなくてもよい。抗体に接続するポリマーの数は、さまざまであってもよく、1つより多いポリマーが接続する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、又は異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、改良される抗体の特定の特性又は機能、二重特異性抗体誘導体が規定の条件下で使用されるかなどを含む限定事項に基づいて決定することができる。
【0108】
別の態様では、放射線にさらされることによって選択的に加熱され得る、抗体と非タンパク質性部分の抱合体が提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam,N.W.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102(2005)11600-11605)。放射線は、任意の波長を有していてもよく、限定されないが、通常の細胞に有害ではないが、非タンパク質性部分を、抗体非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度まで加熱する波長を含む。
【0109】
「免疫抱合体」は、限定されないが、細胞毒性薬剤を含め、1つ以上の異種分子に抱合される抗体である。
【0110】
「ポリヌクレオチド」との用語は、単離された核酸分子又は構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合又は従来の結合以外の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)中に見出されるもの)を含んでいてもよい。「核酸分子」との用語は、任意の1つ以上の核酸セグメント、例えば、ポリヌクレオチド中に存在するDNA又はRNAフラグメントを指す。
【0111】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出された、核酸分子、DNA又はRNAを意図している。例えば、ベクターに含まれるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例としては、異種宿主細胞内に維持されるか、又は溶液中で精製される(部分的に、又は実質的に)、組換えポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、元々そのポリヌクレオチド分子を含む細胞に含まれているが、そのポリヌクレオチド分子が、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在するポリヌクレオチド分子を含む。単離されたRNA分子は、in vivo又はin vitroでの本発明のRNA転写物、及びポジティブ及びネガティブの鎖形態、二本鎖形態を含む。本発明に係る単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、更に、合成によって作られるこのような分子を含む。これに加え、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーターなどの制御要素であってもよく、又はこれらの制御要素を含んでいてもよい。
【0112】
本発明の参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも、例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドあたり5個までの点変異を含んでいてもよいことを除けば、参照配列に対して同一であることを意図している。言い換えると、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドの5%までが、欠失していてもよく、又は別のヌクレオチドで置換されていてもよく、又は参照配列中の全ヌクレオチドの5%までが、参照配列に挿入されていてもよい。参照配列のこれらの変更は、参照ヌクレオチド配列の5’又は3’末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこかで起こってもよく、参照配列中の残基中で個々に散在していてもよく、又は参照配列中の1つ以上の連続した基の中に散在していてもよい。実際の様式として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が、本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラム、例えば、ポリペプチドについて上に記載したもの(例えば、ALIGN-2)を用いて、従来通りに決定することができる。
【0113】
「発現カセット」との用語は、組換えによって、又は合成によって作られるポリヌクレオチドを指し、標的細胞内の特定の核酸の転写が可能な特定の一連の核酸要素を含む。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸フラグメントに組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも特に、転写される核酸配列とプロモーターとを含む。特定の実施形態では、本発明の発現カセットは、本発明の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む。
【0114】
「ベクター」又は「発現ベクター」との用語は、「発現構築物」と同義語であり、細胞に作動可能に会合する特定の遺伝子の発現を導入し、指令するために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及び導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターによって、安定なmRNAを大量に転写することができる。発現ベクターが標的細胞内に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質は、細胞内転写及び/又は翻訳機構によって産生される。一実施形態では、本発明の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのフラグメントを含む発現カセットを含む。
【0115】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」との用語は、相互に置き換え可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、これらは、継代数にかかわらず、初代の形質転換された細胞と、初代の形質転換された細胞から誘導された子孫を含む。子孫は、親細胞の核酸含有量と完全に同一でなくてもよいが、変異を含んでいてもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか、又は選択されるのと同じ機能又は生体活性を有する変異体子孫が本発明に含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗体を生成するために使用可能な任意の種類の細胞系である。特に、宿主細胞は、原核生物又は真核生物の宿主細胞である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。
【0116】
ある薬剤の「有効量」は、その薬剤が投与される細胞又は組織において、ある生理学的変化を引き起こすのに必要な量を指す。
【0117】
ある薬剤(例えば、医薬組成物)の「治療有効量」は、所望な治療結果又は予防結果を達成するのに有効な量、必要な投薬量及び必要な期間を指す。ある薬剤の治療有効量は、例えば、ある疾患の副作用をなくし、減らし、遅らせ、最低限にし、又は防ぐ。
【0118】
「個体」又は「被験体」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特に、個体又は被験体は、ヒトである。
【0119】
「医薬組成物」との用語は、その中に含まれる有効成分の生体活性を有効にし、製剤が投与される被験体に対して受け入れられないほど毒性である更なる構成要素を含まないような形態での製剤を指す。
【0120】
「医薬的に許容される賦形剤」は、医薬組成物中の成分であって、有効成分以外であり、被験体にとって毒性ではない成分を指す。医薬的に許容される賦形剤としては、限定されないが、バッファー、安定化剤又は防腐剤が挙げられる。
【0121】
「パッケージ添付文書」との用語は、治療製品の市販パッケージに通常含まれる指示を指すために用いられ、このような治療製品に関する適応症、使用、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む。
【0122】
本明細書で使用される場合、「処置」(及びその文法的な変形語、例えば、「処置する」又は「処置すること」)は、処置される個体において本来の経過を変える試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。所望な処置効果としては、限定されないが、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病的状態、転移の予防、疾患の進行率を下げる、疾患状態の軽減又は緩和、回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の分子を使用し、疾患の発生を遅らせるか、又は疾患の進行を遅らせる。
【0123】
「癌」との用語は、本明細書で使用される場合、増殖性疾患、例えば、リンパ腫、リンパ性白血病、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、肺胞細胞性肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部又は頸部の癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、消化器癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、陰門の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織の肉腫尿道の癌、陰茎癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎細胞癌腫、腎盂癌腫、中皮腫、肝細胞癌、胆管癌、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形性膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌腫、下垂体腺腫及びユーイング肉腫(上述のいずれかの癌の難治性態様を含む)、又は上述の癌の1つ以上の組み合わせを指す。
【0124】
本発明の二重特異性抗体
本発明は、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、生産性、安定性、結合アフィニティ、生体活性、特定のT細胞の特異的な標的化、標的化効率及び毒性の低下など、特に有利な特性を有する新規な二重特異性抗体を提供する。
【0125】
特定の態様では、T細胞表面に結合する際にインターナリゼーションの低下を示す、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。インターナリゼーションは、標的受容体がTCRシグナル伝達を阻害する準備ができた細胞表面で迅速に再発現しつつ、数時間以内に分解し得る分子の重要なシンクを表す。更なる態様では、Tregに対してよりも、従来のT細胞に対して優先的に結合する、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。このことは、ブロッキング抗体を用いたTreg上のLAG-3の標的化が、その抑制機能を増加させ、最終的に他のT細胞に対する正のブロッキング効果を覆い隠すことによって悪化し得るため、有利である。更なる態様では、Treg抑制からT細胞エフェクター機能を守ることができる、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。別の態様では、本明細書で提示されるアッセイで示されるように、腫瘍細胞株ARH77と共に培養すると、CD4 T細胞によるグランザイムB分泌を誘発することができる、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。更なる態様では、腫瘍特異的なT細胞エフェクター機能の増加を示し、及び/又はT細胞の細胞毒性効果を高める、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。別の態様では、in vivoで腫瘍根絶の増加を示す、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。
【0126】
A.PD1及びLAG3に結合する例示的な二重特異性抗体
一態様では、本発明は、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0127】
一態様では、二重特異性抗体は、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインは、エフェクター機能を低下させるか、又は無効にしさえする。特に、Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0128】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0129】
別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(b)
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(c)
(i)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(d)
(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(e)
(i)配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0130】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0131】
別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号80のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号81のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号82のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号83のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号84のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号85のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(b)
(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0132】
一態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号86のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号95のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0133】
別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号29のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号36のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号44のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号45のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(e)配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0134】
別の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号56のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号57のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号58のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号60のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0135】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)配列番号54のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号55のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号62のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号65のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0136】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0137】
一態様では、本発明の二重特異性抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0138】
更なる態様では、本発明の二重特異性抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0139】
別の態様では、本発明の二重特異性抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号62のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0140】
更なる別の態様では、本発明の二重特異性抗体は、配列番号86のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号87のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号62のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0141】
更なる別の態様では、本発明の二重特異性抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号95のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、配列番号62のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0142】
更なる態様では、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。特に、二重特異性抗体は、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0143】
一態様では、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、二価である。このことは、二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインとを含む(1+1フォーマット)ことを意味する。
【0144】
一態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。特定の態様では、Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換わっている。特定の態様では、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっている。
【0145】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、
(a)配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号97の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号100の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(c)配列番号102の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号104の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(d)配列番号106の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号107の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0146】
より特定的には、二重特異性抗体は、
(a)配列番号96のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号97のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号96のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号100のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(c)配列番号102のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号104のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(d)配列番号106のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号107のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む。
【0147】
より特定的には、二重特異性抗体は、配列番号96のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号100のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む。
【0148】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、FcドメインのC末端に融合するLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。特に、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントは、そのVHドメインを介し、FcドメインのC末端に融合している(trans 1+1フォーマット)。
【0149】
特定の態様では、二重特異性抗体は、配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号144の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む。より特定的には、二重特異性抗体は、配列番号96のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号144のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖とを含む。
【0150】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第3のFabフラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。特定の態様では、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している。
【0151】
この態様では、二重特異性抗体は、三価であり、LAG3に対する二価の結合と、PD1に対する一価の結合を有する。このことは、二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合する1個の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する2個の抗原結合ドメインとを含む(2+1フォーマット)ことを意味する。
【0152】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、
(a)配列番号118の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号119の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号120の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号121の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号122の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0153】
より特定的には、二重特異性抗体は、
(a)配列番号118のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号119のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101のアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号120のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号121のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99のアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号122のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号103のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105のアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖を含む。
【0154】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第3のFabフラグメントとを含み、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントの1つが、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している(trans 2+1フォーマット)、二重特異性抗体が提供される。
【0155】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号145の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖とを含む、二重特異性抗体が提供される。より特定的には、二重特異性抗体は、配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号145の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖とを含む。
【0156】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む短鎖Fab(scFab)とを含む、二重特異性抗体が提供される。特に、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むscFabは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している。
【0157】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、
(a)配列番号123の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号119の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、又は
(b)配列番号124の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号121の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖、又は
(c)配列番号125の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0158】
より特定的には、二重特異性抗体は、
(a)配列番号123のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号119のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖、又は
(b)配列番号124のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号121のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖、又は
(c)配列番号125のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号103のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。
【0159】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むVH及びVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。特に、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインのVHドメインは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合しており、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインのVLドメインは、重鎖のもう一方のC末端にペプチドリンカーを介して融合している。
【0160】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、配列番号126の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号127の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号109の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖とを含む、二重特異性抗体が提供される。より特定的には、二重特異性抗体は、配列番号126のアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号127のアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号109のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。
【0161】
更なる態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第3のFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第4のFabフラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0162】
この態様では、二重特異性抗体は、四価であり、LAG3に対する二価の結合と、PD1に対する二価の結合を有する。このことは、二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合する2個の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する2個の抗原結合ドメインとを含む(2+2フォーマット)ことを意味する。
【0163】
一態様では、本発明の二重特異性抗体は、
(a)LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つのFabフラグメントを含む抗体の2つの軽鎖と2つの重鎖と、
(b)PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つの更なるFabフラグメントとを含み、前記更なるFabフラグメントは、それぞれ、(a)の重鎖のC末端に対してペプチドリンカーを介して接続する。
【0164】
特定の態様では、ペプチドリンカーは、(GS)である。別の態様では、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つの更なるFabフラグメントは、クロスオーバーFabフラグメントであり、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっており、VL-CH鎖は、それぞれ、(a)の重鎖のC末端に対してペプチドリンカーを介して接続する。
【0165】
一態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントが、それぞれ、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介してそれぞれ融合している、二重特異性抗体が提供される。
【0166】
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、
(a)配列番号114の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号116の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号117の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0167】
より特定的には、二重特異性抗体は、
(a)配列番号114のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号101のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号116のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号99のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号117のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号105のアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖を含む。
【0168】
Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を下げるFcドメイン改変
特定の態様では、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、二重特異性抗体が、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させ、エフェクター機能を低下させるか、又は無効にする1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0169】
特定の態様では、1つ以上のアミノ酸改変は、本明細書で提示される抗体のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域バリアントを作成する。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置でアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含んでいてもよい。
【0170】
以下の章は、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン改変を含む、本発明の二重特異性抗原結合分子の好ましい態様を記載する。一態様では、本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、Fcドメインは、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインである。
【0171】
Fcドメインは、本発明の二重特異性抗体に、標的組織への良好な蓄積に寄与する長い血清半減期、望ましい組織-血液分布比を含め、望ましい薬物動態特性を与える。しかし、同時に、好ましい抗原を含む細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する本発明の二重特異性抗体の望ましくない標的化を引き起こす場合がある。したがって、特定的な実施形態では、本発明の二重特異性抗体のFcドメインは、ネイティブIgG Fcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 ドメインと比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの低下及び/又はエフェクター機能の低下を示す。より特定的には、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。
【0172】
1つのこのような態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)は、ネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の結合アフィニティを示し、及び/又はネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)は、Fc受容体に実質的に結合せず、及び/又はエフェクター機能を誘発しない。特定の態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。一態様では、Fc受容体は、阻害性Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、阻害性ヒトFcγ受容体、より特定的には、ヒトFcγRIIBである。一態様では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌のうち1つ以上である。特定の態様では、エフェクター機能は、ADCCである。一態様では、Fcドメインのドメインは、ネイティブIgG1 Fcドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に対して実質的に同様の結合アフィニティを示す。FcRnに対する実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、ネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)と比較して、FcRnに対して約70%より大きく、特に約80%より大きく、より特定的には約90%より大きい結合アフィニティを示す場合に達成される。
【0173】
特定の態様では、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティが低下し、及び/又はエフェクター機能が低下するように操作される。特定の態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティ及び/又はエフェクター機能を下げる1つ以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、同じ1つ以上のアミノ酸変異が存在する。一態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティを下げる。別の態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合アフィニティを、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に下げる。一態様では、操作されたFcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、操作されていないFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体と比較して、Fc受容体に対する結合アフィニティの20%未満、特に10%未満、より特定的には5%未満を示す。特定の態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。別の態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体は、阻害性Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、阻害性ヒトFcγ受容体、より特定的には、ヒトFcγRIIBである。いくつかの態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より特定的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も特定的には、ヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらそれぞれの受容体に対する結合が低下する。いくつかの態様では、相補性構成要素に対する結合アフィニティ(特定的にはC1qに対する結合アフィニティ)も低下する。一態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合アフィニティは、低下しない。FcRnに対する実質的に同様の結合(すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合アフィニティの保護)は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子)が、FcRnに対するFcドメインの操作されていない形態(又はFcのこの操作されていない形態を含む本発明の二重特異性抗原結合分子)の結合アフィニティの約70%を超える結合アフィニティを示す場合に達成される。Fcドメイン、又は前記Fcドメインを含む本発明の二重特異性抗原結合分子は、このようなアフィニティの約80%より大きく、更に約90%より大きいアフィニティを示してもよい。特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、エフェクター機能が低下するように操作される。エフェクター機能の低下としては、限定されないが、以下の1つ以上が挙げられ得る。
【0174】
補体依存性細胞傷害(CDC)の低下、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低下、NK細胞に対する結合の低下、マクロファージに対する結合の低下、単球に対する結合の低下、多形核細胞に対する結合の低下、直接的なシグナル伝達誘発性アポトーシスの低下、樹状細胞成熟の低下、又はT細胞プライミングの低下。
【0175】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。FcRに対する結合が向上又は減少した特定の抗体バリアントが記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO 2004/056312号及びShields,R.L.et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604。)
本発明の一態様では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の位置にアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235A(「LALA」)を含む。1つのこのような実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一態様では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。より具体的な態様では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sからなる群から選択される更なるアミノ酸置換を含む。より特定的な実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gを含む(「P329G LALA」)。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、PCT出願公開第WO 2012/130831 A1号に記載されるように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体の結合をほとんど完全になくす。前記文書は、このような変異Fcドメインを調製するための方法、及びFc受容体結合又はエフェクター機能などの特性を決定するための方法も記載する。このような抗体は、変異L234A及びL235Aを有するか、又は変異L234A、L235A及びP329Gを有するIgG1である(Kabat et alのEUインデックスによる番号付け、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991)。
【0176】
一態様では、本発明の二重特異性抗体は、(i)場合により変異P329G、L234A及びL235Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモダイマーFc領域、又は(ii)場合により変異P329G、S228P及びL235Eを有する、ヒトIgG4サブクラスのホモダイマーFc領域、又は(iii)場合により変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A及びH435Aを有するか、又は場合により変異P329G、L234A、L235A、H310A、H433A及びY436Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモダイマーFc領域、又は(iv)1つのFc領域ポリペプチドが変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヘテロダイマーFc領域、又は(v)両Fc領域ポリペプチドが、変異P329G、L234A及びL235Aを含み、1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヒトIgG1サブクラスのヘテロダイマーFc領域を含む(全て、KabatのEUインデックスによる位置)。
【0177】
一態様では、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである(Kabat番号付け)。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329Gを含む、IgG4 Fcドメインである。このアミノ酸置換は、in vivoでのIgG4抗体のFabアーム交換を減らす(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照)。したがって、一態様では、二重特異性抗体であって、(全て、KabatのEUインデックスによる位置)両Fc領域ポリペプチドが、変異P329G、S228P及びL235Eを含み、1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366Wを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びY349Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びS354Cを含むか、又は1つのFc領域ポリペプチドが、変異T366W及びS354Cを含み、他方のFc領域ポリペプチドが、変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを含む、ヒトIgG4サブクラスのヘテロダイマーFc領域を含む二重特異性抗体が提供される。
【0178】
半減期が長くなり、新生児Fc受容体に対する結合が向上した抗体は、胎児に対する成熟IgGの移動を担い(Guyer,R.L.et al.、J.Immunol.117(1976)587-593及びKim,J.K.et al.、J.Immunol.24(1994)2429-2434)、US 2005/0014934号に記載されている。これらの抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を向上させる1つ以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントとしては、以下の1つ以上のFc領域残基に置換を有するバリアントが挙げられる:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)。Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan,A.R.及びWinter,G.、Nature 322(1988)738-740;US 5,648,260号;US 5,624,821号;及びWO 94/29351号も参照。
【0179】
Fc受容体に対する結合は、例えば、ELISAによって、又はBIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な装置と組換え発現によって得られ得るFc受容体を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。適切なこのような結合アッセイを本明細書に記載する。又は、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子の結合アフィニティは、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株(例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞)を用いて評価されてもよい。Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能は、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するのに適したアッセイを本明細書に記載する。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例は、米国特許第5,500,362号、Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載される。又は、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA)のためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、Madison、WI))。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。これに代えて、又はこれに加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価されてもよい。
【0180】
以下の章は、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン改変を含む、本発明の二重特異性抗体の好ましい態様を記載する。一態様では、本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、Fcドメインは、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する抗体の結合アフィニティを低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。別の態様では、本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体に関し、Fcドメインは、エフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。特定の態様では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインである。
【0181】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン改変
本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインの2つのサブユニットの片方又はもう一方に融合した異なる抗原結合ドメインを含み、そのため、Fcドメインの2つのサブユニットは、2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれていてもよい。これらのポリペプチドの組換え同時発現及びその後の二量化によって、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組換え産生における本発明の二重特異性抗体の収率及び純度を高めるために、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインに、所望なポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有利である。
【0182】
したがって、特定の態様では、本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体に関し、ここで、Fcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も長いタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一態様では、前記改変は、FcドメインのCH3ドメインの中にある。
【0183】
具体的な態様では、前記改変は、いわゆる「ホールにノブを入れる」改変であり、Fcドメインの2つのサブユニットの1つに「ノブ」改変と、Fcドメインの2つのサブユニットの他の1つに「ホール」改変とを含む。したがって、本発明は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体に関し、ホールにノブを入れる方法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットがノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットがホールを含む。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0184】
ホールにノブを入れる技術は、例えば、US 5,731,168号、US 7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、もっと大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換することによって構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補性空洞が、大きなアミノ酸側鎖を、より小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作られる。
【0185】
したがって、一態様では、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置換え可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖容積を有するアミノ酸残基と置き換わり、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置換え可能である。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることによって、例えば、部位特異的変異導入法によって、又はペプチド合成によって作成することができる。具体的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、位置366のトレオニン残基が、トリプトファン残基と置き換わっており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(のCH3ドメイン)において、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換わっている(Y407V)。一態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置366のトレオニン残基が、セリン残基と置き換わっており(T366S)、位置368のロイシン残基が、アラニン残基と置き換わっている(L368A)。
【0186】
なお更なる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、更に、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換わっており(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、更に、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換わっている(Y349C)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が生成し、ダイマーをさらに安定化する(Carter(2001),J Immunol Methods 248,7-15)。特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0187】
しかし、EP 1 870 459号に記載される他のホールにノブを入れる技術も、これに代えて、又はこれに加えて使用することができる。一実施形態では、多重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインに変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインに変異D399K及びE357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0188】
一態様では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を含み、「ホール」鎖のCH3ドメインに変異T366S、L368A及びY407Vを含み、更に、「ノブ鎖」のCH3ドメインに変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインに変異D399K及びE357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0189】
一態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいて、変異Y349C及びT366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含むか、又は多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの1つにおいて、変異Y349C及びT366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、変異S354C、T366S、L368A及びY407Vを含み、更に、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいて、変異R409D及びK370Eを含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいて、変異D399K及びE357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0190】
代替的な態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変は、例えば、PCT出願公開第WO 2009/089004号に記載されるように、静電操縦効果に介在する改変を含む。一般的に、この方法は、2つのFcドメインサブユニットの界面に、ホモ二量体生成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量化が静電的に望ましいように、帯電したアミノ酸残基による1つ以上のアミノ酸残基の置き換えを含む。
【0191】
「ホールにノブを入れる技術」の他に、ヘテロ二量体化を推進するために多重特異性抗体の重鎖のCH3ドメインを改変するための他の技術は、当該技術分野で知られている。これらの技術、特に、WO 96/27011号、WO 98/050431号、EP 1870459号、WO 2007/110205号、WO 2007/147901号、WO 2009/089004号、WO 2010/129304号、WO 2011/90754号、WO 2011/143545号、WO 2012/058768号、WO 2013/157954号及びWO 2013/096291号に記載される技術は、二重特異性抗体と組み合わせて「ホールにノブを入れる」に対する代替として、本明細書で想定される。
【0192】
一態様では、二重特異性抗体において、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、EP 1870459号に記載される手法を用いる。この手法は、第1及び第2の重鎖の間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置への反対の電荷で帯電したアミノ酸の導入に基づく。
【0193】
したがって、この態様では、多重特異性抗体の三次構造において、第1の重鎖のCH3ドメインと第2の重鎖のCH3ドメインは、それぞれの抗体CH3ドメインの間に存在する界面を形成し、第1の重鎖のCH3ドメインのそれぞれのアミノ酸配列及び第2の重鎖のCH3ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ、抗体の三次構造中の前記界面内に位置する一連のアミノ酸を含み、界面に位置する一連のアミノ酸から、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、第1のアミノ酸が、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、界面に位置する一連のアミノ酸から、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、第2のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸によって置換されている。この態様の二重特異性抗体は、本明細書では、「CH3(+/-)操作された二重特異性抗体」とも呼ばれる(ここで、省略語「+/-」は、それぞれのCH3ドメインに導入されたのと反対の電荷に帯電したアミノ酸を表す)。
【0194】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、K、R及びHから選択され、負に帯電したアミノ酸は、E又はDから選択される。
【0195】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、K及びRから選択され、負に帯電したアミノ酸は、E又はDから選択される。
【0196】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、正に帯電したアミノ酸は、Kであり、負に帯電したアミノ酸は、Eである。
【0197】
一態様では、CH3(+/-)操作された二重特異性抗体において、1つの重鎖のCH3ドメイン中、位置409のアミノ酸RがDによって置換されており、位置のアミノ酸KがEによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置399のアミノ酸DがKによって置換されており、位置357のアミノ酸EがKによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0198】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、WO 2013/157953号に記載される手法を用いる。一実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、位置351のアミノ酸LがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0199】
別の態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがKによって置換されており、位置351のアミノ酸LがKによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。更に、以下の置換の少なくとも1つが他の重鎖のCH3ドメインに含まれる。位置349のアミノ酸YがEによって置換されており、位置349のアミノ酸YがDによって置換されており、位置368のアミノ酸LがEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一実施形態では、位置368のアミノ酸Lは、Eによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0200】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、WO 2012/058768号に記載される手法を用いる。一態様では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがYによって置換されており、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがAによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施形態では、上述の置換に加え、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置411(元々はT)、399(元々はD)、400(元々はS)、405(元々はF)、390(元々はN)及び392(元々はK)のアミノ酸の少なくとも1つが置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。好ましい置換は、以下である。
【0201】
- 位置411のアミノ酸Tを、N、R、Q、K、D、E及びWから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置399のアミノ酸Dを、R、W、Y及びKから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置400のアミノ酸Dを、E、D、R及びKから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置405のアミノ酸Fを、I、M、T、S、V及びWから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置390のアミノ酸Nを、R、K及びDから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
- 位置392のアミノ酸Kを、V、M、R、L、F及びEから選択されるアミノ酸で置換する(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0202】
別の態様では、二重特異性抗体が、WO 2012/058768)号に従って操作されており、すなわち、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置351のアミノ酸LがYによって置換されており、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがVによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。多重特異性抗体の別の実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがAによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがAによって置換されており、位置409のアミノ酸KがFによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。後者の上述の実施形態では、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置392のアミノ酸KがEによって置換されており、位置411のアミノ酸TがEによって置換されており、位置399のアミノ酸DがRによって置換されており、位置400のアミノ酸SがRによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0203】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、WO 2011/143545号に記載される手法を用いる。一態様では、両重鎖のCH3ドメイン中のアミノ酸改変は、位置368及び/又は409に導入される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0204】
一態様では、二重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、WO 2011/090762号に記載される手法を用いる。WO 2011/090762号は、「ホールにノブを入れる」(KiH)技術に従ったアミノ酸改変に関する。一実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがWによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがAによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置366のアミノ酸TがYによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置407のアミノ酸YがTによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0205】
一態様では、二重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、WO 2009/089004号に記載される手法を用いる。一実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置392のアミノ酸K又はNが、負に帯電したアミノ酸によって(一実施形態では、E又はDによって、好ましい一実施形態では、Dによって)置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置399のアミノ酸D、位置356のアミノ酸E又はD、又は位置357のアミノ酸Eが、正に帯電したアミノ酸によって置換されており(一実施形態では、K又はR、好ましい一実施形態では、Kによって置換されており、好ましい一実施形態では、位置399又は356のアミノ酸が、Kによって置換されている)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。更なる一実施形態では、上述の置換に加え、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置409のアミノ酸K又はRが、負に帯電したアミノ酸によって(一実施形態では、E又はDによって、好ましい一実施形態では、Dによって)置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。1つのなお更なる態様では、上述の置換に加えて、又は上述の置換に代えて、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置439のアミノ酸K及び/又は位置370のアミノ酸Kが、互いに独立して、負に帯電したアミノ酸によって(一実施形態では、E又はDによって、好ましい一実施形態では、Dによって)置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0206】
一態様では、多重特異性抗体の第1の重鎖と第2の重鎖のヘテロダイマー化を補助するために、WO 2007/147901号に記載される手法を用いる。一実施形態では、1つの重鎖のCH3ドメインにおいて、位置253のアミノ酸KがEによって置換されており、位置282のアミノ酸DがKによって置換されており、位置322のアミノ酸KがDによって置換されており、他の重鎖のCH3ドメインにおいて、位置239のアミノ酸DがKによって置換されており、位置240のアミノ酸EがKによって置換されており、位置292のアミノ酸KがDによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0207】
本明細書に報告されるような二重特異性抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよい。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基のうち1つ又は2つが除去された、短くなったC末端であってもよい。好ましい一態様では、重鎖のC末端は、PGで終わる短くなったC末端である。
【0208】
本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン-リシンジペプチドを含む(G446及びK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)。本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む二重特異性抗体は、C末端グリシン残基を含む(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0209】
Fabドメイン内の改変
一態様では、本発明は、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含み、Fcフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVHとVH又は定常ドメインCH1とCLのいずれかが置き換わっている、二重特異性抗体に関する。二重特異性抗体は、Crossmab技術に従って調製される。
【0210】
1つの結合アームにドメインの置き換え/交換を有する多重特異性抗体(CrossMabVH-VL又はCrossMabCH-CL)は、WO2009/080252号、WO2009/080253号及びSchaefer,W.et al、PNAS、108(2011)11187-1191に記載される。これらの多重特異性抗体は、明確に、第1の抗原に対する軽鎖と、第2の抗原に対する誤った重鎖のミスマッチにより生じる副産物を減らす(このようなドメインの置き換えがない手法と比較した場合)。
【0211】
特定の態様では、本発明は、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含み、Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHが、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換わっている互いに置き換わっている、二重特異性抗体に関する。特定の態様では、二重特異性抗体は、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっている、二重特異性抗体である。
【0212】
別の態様では、正しい対形成を更に向上させるために、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含む二重特異性抗体は、異なる帯電したアミノ酸置換(いわゆる「帯電した残基」)を含んでいてもよい。これらの改変は、交差しているか、又は交差していないCH1ドメイン及びCLドメインに導入される。これらの改変は、例えば、WO2015/150447号、WO2016/020309号及びPCT/EP2016/073408号に記載される。
【0213】
特定の態様では、本発明は、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含む二重特異性抗体に関し、Fabフラグメントの1つにおいて、定常ドメインCLでは、位置124のアミノ酸が、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換され(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1では、位置147及び213のアミノ酸が、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の態様では、二重特異性抗体は、TIM3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、二重特異性抗体である。
【0214】
特定の態様では、本発明は、二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する第2のFabフラグメントとを含み、CLドメインの1つにおいて、位置123のアミノ酸(EU番号付け)がアルギニン(R)と置き換わっており、位置124のアミノ酸(EU番号付け)がリシン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つにおいて、位置147(EU番号付け)及び位置213(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されている、二重特異性抗体に関する。特定の態様では、二重特異性抗体は、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントにおいて、位置123のアミノ酸(EU番号付け)が、アルギニン(R)によって置き換わっており、位置124のアミノ酸(EU番号付け)が、リシン(K)によって置換されており、CH1ドメインの1つにおいて、位置147(EU番号付け)及び位置213(EU番号付け)のアミノ酸が、グルタミン酸(E)によって置換されている、二重特異性抗体である。
【0215】
更なる態様では、二重特異性抗体は、二価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の軽鎖と第2の重鎖とを含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっている。
【0216】
(a)の抗体は、(b)で報告されるような改変を含まず、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0217】
(b)の抗体では、軽鎖内で、可変軽鎖ドメインVLが、前記抗体の可変重鎖ドメインVHによって置き換わっており、重鎖内で、可変重鎖ドメインVHが、前記抗体の可変軽鎖ドメインVLによって置き換わっている。
【0218】
一態様では、(i)(a)の第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸(Kabatによる番号付け)が、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、(a)の第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸(Kabat EUインデックスによる番号付け)が、負に帯電したアミノ酸によって置換されているか、又は(ii)(b)の第2の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸(Kabatによる番号付け)が、正に帯電したアミノ酸によって置換されており、(b)の第2の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸(Kabat EUインデックスによる番号付け)が、負に帯電したアミノ酸によって置換されている。
【0219】
別の態様では、(i)(a)の第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(好ましい一実施形態では、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており)、(a)の第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、又は(ii)(b)の第2の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabatによる番号付け)(好ましい一実施形態では、独立して、リシン(K)又はアルギニン(R)によって置換されており)、(b)の第2の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸又は位置213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0220】
一態様では、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸は、Kによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0221】
一態様では、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置123のアミノ酸は、Rによって置換されており、位置124のアミノ酸は、Kによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0222】
一態様では、第2の軽鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、Eによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0223】
一態様では、第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0224】
一態様では、第1の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、位置123のアミノ酸がRによって置換されており、位置124のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸が両方ともEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0225】
一態様では、第2の重鎖の定常ドメインCLにおいて、位置124及び123のアミノ酸がKによって置換されており、第2の軽鎖の定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸がEによって置換されており、第1の軽鎖の可変ドメインVLにおいて、位置38のアミノ酸がKによって置換されており、第1の重鎖の可変ドメインVHにおいて、位置39のアミノ酸がEによって置換されており、第2の重鎖の可変ドメインVLにおいて、位置38のアミノ酸がKによって置換されており、第2の軽鎖の可変ドメインVHにおいて、位置39のアミノ酸がEによって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0226】
一態様では、二重特異性抗体は、二価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の軽鎖と第2の重鎖とを含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっており、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換わっている。
【0227】
(a)の抗体は、(b)で報告されるような改変を含まず、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。(b)の抗体において、軽鎖内で、可変軽鎖ドメインVLは、前記抗体の可変重鎖ドメインVHによって置き換わっており、定常軽鎖ドメインCLは、前記抗体の定常重鎖ドメインCH1によって置き換わっており、重鎖内で、可変重鎖ドメインVHは、前記抗体の可変軽鎖ドメインVLによって置き換わっており、定常重鎖ドメインCH1は、前記抗体の定常軽鎖ドメインCLによって置き換わっている。
【0228】
一態様では、二重特異性抗体は、二価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の第1の軽鎖と第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2の軽鎖と第2の重鎖とを含み、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換わっている。
【0229】
(a)の抗体は、(b)で報告されるような改変を含まず、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。(b)の抗体において、軽鎖内で、定常軽鎖ドメインCLが、前記抗体の定常重鎖ドメインCH1によって置き換わっており、重鎖内で、定常重鎖ドメインCH1が、前記抗体の定常軽鎖ドメインCLによって置き換わっている。
【0230】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体、
(b)第2の抗原に対して特異的に結合する1つ、2つ、3つ又は4つの一本鎖Fabフラグメントとを含む、二重特異性抗体であり、
(b)の前記一本鎖Fabフラグメントは、(a)の前記全長抗体に対し、ペプチドリンカーを介し、前記全長抗体の重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端で融合する。
【0231】
一態様では、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の一本鎖Fabフラグメントは、全長抗体に対し、ペプチドリンカーを介し、前記全長抗体の重鎖又は軽鎖のC末端で融合する。
【0232】
一態様では、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、前記全長抗体の重鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0233】
一態様では、第2の抗原に結合する1つ又は2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、前記全長抗体の軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0234】
一態様では、第2の抗原に結合する2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、前記全長抗体の重鎖又は軽鎖のそれぞれのC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0235】
一態様では、第2の抗原に結合する2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、前記全長抗体のそれぞれの重鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0236】
一態様では、第2の抗原に結合する2つの同一の一本鎖Fab(scFab)フラグメントは、全長抗体に対し、前記全長抗体のそれぞれの軽鎖のC末端で、ペプチドリンカーを介して融合している。
【0237】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体と、
(b)
(ba)抗体重鎖可変ドメイン(VH)、又は
(bb)抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体定常ドメイン1(CH1)からなる、第1のポリペプチドであって、
前記第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーを介し、前記全長抗体の2つの重鎖の1つのC末端に対し、そのVHドメインのN末端と融合している、第1のポリペプチドと、
(c)
(ca)抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、又は
(cb)抗体軽鎖可変ドメイン(VL)及び抗体軽鎖定常ドメイン(CL)からなる第2のポリペプチドであって、
前記第2のポリペプチドは、ペプチドリンカーを介し、前記全長抗体の2つの重鎖の他方のC末端に対し、VLドメインのN末端と融合している、第2のポリペプチドとを含む、三価抗体であり、
第1のポリペプチドの抗体重鎖可変ドメイン(VH)と、第2のポリペプチドの抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、一緒に、第2の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを形成する。
【0238】
一態様では、(b)のポリペプチドの抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び(c)のポリペプチドの抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、以下の位置の間にジスルフィド結合を導入することによって、鎖間ジスルフィド架橋を介して接続され、安定化される。
【0239】
(i)重鎖可変ドメインの位置44から軽鎖可変ドメインの位置100まで、又は
(ii)重鎖可変ドメインの位置105から軽鎖可変ドメインの位置43まで、又は
(iii)重鎖可変ドメインの位置101から軽鎖可変ドメインの位置100まで(常に、Kabat EUインデックスに従って番号付け)。
【0240】
安定化のために非天然ジスルフィド架橋を導入するための技術は、WO 94/029350号、Rajagopal,V.,et al.、Prot.Eng.(1997)1453-1459;Kobayashi,H.,et al.、Nucl.Med.Biol.25(1998)387-393、及びSchmidt,M.,et al.、Oncogene 18(1999)1711-1721に記載される。一実施形態では、(b)及び(c)のポリペプチドの可変ドメインの間の任意要素のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置44と軽鎖可変ドメインの位置100との間にある。一実施形態では、(b)及び(c)のポリペプチドの可変ドメインの間の任意要素のジスルフィド結合は、重鎖可変ドメインの位置105と軽鎖可変ドメインの位置43との間にある(常に、Kabat EUインデックスに従って番号付け)。一実施形態では、一本鎖Fabフラグメントの可変ドメインVHとVLとの間に上述の任意のジスルフィド安定化を有しない三価の二重特異性抗体が好ましい。
【0241】
一態様では、二重特異性抗体は、三重特異性抗体又は四重特異性抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、及び/又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっている、前記抗体の第2の(改変された)軽鎖及び第2の(改変された)重鎖とを含み、
(c)1つ又は2つの更なる抗原(すなわち、第3及び/又は第4の抗原)に特異的に結合する1~4個の抗原結合ドメインは、ペプチドリンカーを介し、(a)及び/又は(b)の軽鎖又は重鎖のC末端又はN末端に融合している。
【0242】
(a)の抗体は、(b)で報告されるような改変を含まず、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0243】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、1つ又は2つの更なる抗原に特異的に結合する1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む。
【0244】
一態様では、抗原結合ドメインは、scFvフラグメント及びscFabフラグメントからなる群から選択される。
【0245】
一態様では、抗原結合ドメインは、scFvフラグメントである。
【0246】
一態様では、抗原結合ドメインは、scFabフラグメントである。
【0247】
一態様では、抗原結合ドメインは、(a)及び/又は(b)の重鎖のC末端に融合している。
【0248】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、1つの更なる抗原に特異的に結合する1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む。
【0249】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、第3の抗原に特異的に結合する2つの同一の抗原結合ドメインを含む。好ましい一実施形態では、このような2つの同一の抗原結合ドメインは、(a)及び(b)の重鎖のC末端に対し、同じペプチドリンカーを介して両方とも融合している。好ましい一実施形態では、2つの同一の抗原結合ドメインは、scFvフラグメント又はscFabフラグメントである。
【0250】
一態様では、三重特異性抗体又は四重特異性抗体は、(c)で、第4の抗原に特異的に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。一実施形態では、前記2つの抗原結合ドメインは、(a)及び(b)の重鎖のC末端に対し、同じペプチド接続部を介して両方とも融合している。好ましい一実施形態では、上述の2つの抗原結合ドメインは、scFvフラグメント又はscFabフラグメントである。
【0251】
一態様では、二重特異性抗体は、二重特異性の四価抗体であり、
(a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の2つの軽鎖及び2つの重鎖(及び2つのFabフラグメントを含む)と、
(b)第2の抗原に特異的に結合する抗体の2つの更なるFabフラグメントとを含み、前記更なるFabフラグメントは、両方とも、ペプチドリンカーを介し、(a)の重鎖のC末端又はN末端のいずれかに融合し、
Fabフラグメントにおいて、以下の改変が行われた。
【0252】
(i)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、又は(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、及び/又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっているか、又は
(ii)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっているか、又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっているか、又は
(iii)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっているか、又は定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっているか、又は
(iv)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっているか、又は
(v)(a)の両方のFabフラグメントにおいて、定常ドメインCLとCH1が互いに置き換わっており、(b)の両方のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている。
【0253】
一態様では、前記更なるFabフラグメントは、(a)の重鎖のC末端又は(a)の重鎖のN末端のいずれかにペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0254】
一態様では、前記更なるFabフラグメントは、(a)の重鎖のC末端にペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0255】
一態様では、前記更なるFabフラグメントは、(a)の重鎖のN末端にペプチドリンカーを介して、両方とも融合している。
【0256】
一態様では、Fabフラグメントにおいて、以下の改変が行われる。(a)の両Fabフラグメントにおいて、又は(b)の両Fabフラグメントにおいて、可変ドメインVLとVHが互いに置き換わっており、及び/又は定常ドメインVLとCH1が互いに置き換わっている。
【0257】
一態様では、二重特異性抗体は、四価抗体であり、
(a)第1の抗体の(改変された)重鎖であって、第1の抗原に特異的に結合し、第1のVH-CH1ドメイン対を含み、前記重鎖のC末端に、前記第1の抗体の第2のVH-CH1ドメイン対のN末端が、ペプチドリンカーを介して融合している、第1の抗体の(改変された)重鎖と、
(b)(a)の前記第1の抗体の2つの軽鎖と、
(c)第2の抗体の(改変された)重鎖であって、第2の抗原に特異的に結合し、第1のVH-CLドメイン対を含み、前記重鎖のC末端に、前記第2の抗体の第2のVH-CLドメイン対のN末端が、ペプチドリンカーを介して融合している、第2の抗体の(改変された)重鎖と、
(d)それぞれCL-CH1ドメインを含む、(c)の前記第2の抗体の2つの(改変された)軽鎖とを含む。
【0258】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖と、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、重鎖のN末端が、ペプチドリンカーを介して軽鎖のC末端に接続している、第2の全長抗体の重鎖及び軽鎖とを含む。
【0259】
(a)の抗体は、(b)で報告されるような改変を含まず、重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0260】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体、
(b)VH2ドメインとVL2ドメインとを含む第2の抗原に特異的に結合するFvフラグメントとを含み、両ドメインが、ジスルフィド架橋を介して互いに接続しており、
VH2ドメイン又はVL2ドメインのいずれかのみが、第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の重鎖又は軽鎖にペプチドリンカーを介して融合する。
【0261】
二重特異性抗体において、(a)の重鎖及び軽鎖は、単離された鎖である。
【0262】
一態様では、VH2ドメイン又はVL2ドメインのうち他方は、第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の重鎖又は軽鎖にペプチドリンカーを介して融合していない。
【0263】
本明細書で報告される全ての態様では、第1の軽鎖は、VLドメインとCLドメインとを含み、第1の重鎖は、VHドメインと、CH1ドメインと、ヒンジ領域と、CH2ドメインと、CH3ドメインとを含む。
【0264】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する2つのFabフラグメントと、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに置き換わっている、1つのCrossFabフラグメントと、
(c)第1のFc領域の重鎖と第2のFc領域の重鎖とを含む1つのFc領域を含む、三価抗体であり、
2つのFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に接続しており、CrossFabフラグメントのCLドメインのC末端は、Fabフラグメントの1つのVHドメインのN末端に接続している。
【0265】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する2つのFabフラグメントと、
(b)第2の抗原に特異的に結合し、CH1ドメインとCLドメインが互いに置き換わっている、1つのCrossFabフラグメントと、
(c)第1のFc領域の重鎖と第2のFc領域の重鎖とを含む1つのFc領域を含む、三価抗体であり、
第1のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、重鎖Fc領域ポリペプチドの1つのN末端に接続しており、CrossFabフラグメントのCLドメインのC末端は、他の重鎖Fc領域ポリペプチドのN末端に接続しており、第2のFabフラグメントのCH1ドメインのC末端は、第1のFabフラグメントのVHドメインのN末端に、又はCrossFabフラグメントのVHドメインのN末端に接続している。
【0266】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体、
(b)重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントを含むVH2ドメインとVL2ドメインとを含む第2の抗原に特異的に結合し、軽鎖フラグメント内で、可変軽鎖ドメインVL2が、前記抗体の可変重鎖ドメインVH2によって置き換わっており、重鎖フラグメント内で、可変重鎖ドメインVH2が、前記抗体の可変軽鎖ドメインVL2によって置き換わっている、Fabフラグメントとを含み、
重鎖Fabフラグメントは、全長抗体の重鎖の1つのCH1ドメインと、全長抗体のそれぞれのFc領域との間に挿入され、軽鎖FabフラグメントのN末端は、全長抗体の重鎖と対を形成する全長抗体の軽鎖のC末端に抱合され、その中に重鎖Fabフラグメントが挿入される。
【0267】
一態様では、二重特異性抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなる、全長抗体、
(b)重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントとを含むVH2ドメインとVL2ドメインとを含む第2の抗原に特異的に結合し、軽鎖フラグメント内で、可変軽鎖ドメインVL2が、前記抗体の可変重鎖ドメインVH2によって置き換わっており、重鎖フラグメント内で、可変重鎖ドメインVH2が、前記抗体の可変軽鎖ドメインVL2によって置き換わっており、Fabフラグメントの重鎖フラグメントのC末端は、前記抗体の重鎖の1つのN末端に抱合されており、Fabフラグメントの軽鎖フラグメントのC末端は、全長抗体の重鎖と対を形成する全長抗体の軽鎖のN末端に抱合されており、これに対し、Fabフラグメントの重鎖フラグメントが抱合されている、Fabフラグメントとを含む。
【0268】
ポリヌクレオチド
本発明は更に、本明細書に記載の二重特異性抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチド又はそのフラグメントを提供する。
【0269】
「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」との用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びホスフェート基で構成される。多くは、核酸分子は、塩基配列によって記述され、ここで、前記塩基は、核酸分子の一次構造(線形構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へと表される。ここで、核酸分子との用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、例えば、相補性DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線形又は環状であってもよい。これに加え、核酸分子との用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、及び一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。更に、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含んでいてもよい。誘導体化された糖又はホスフェート骨格結合又は化学修飾された残基を含む、天然に存在しないヌクレオチドの例としては、改変されたヌクレオチド塩基を含む。核酸分子は、例えば、宿主又は患者において、in vitro及び/又はin vivoで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適したDNA分子及びRNA分子も包含する。このようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、改変されていなくてもよく、又は改変されていてもよい。例えば、mRNAは、in vivoで抗体を産生するために被験体にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高めるように化学修飾されてもよい。(例えば、Stadler ert al、Nature Medicine 2017、2017年6月12日にオンラインで公開、doi:10.1038/nm.4356又はEP 2 101 823 B1号を参照。)
「単離された」ポリヌクレオチドは、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離されたポリヌクレオチドは、元々その核酸分子を含む細胞に含まれているが、その核酸分子が、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する核酸分子を含む。
【0270】
本発明の二重特異性抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドは、完全な抗原結合分子をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は同時発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。一緒に発現するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的な抗原結合分子を形成してもよい。例えば、免疫グロブリンの軽鎖部分は、免疫グロブリンの重鎖部分由来の別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。同時発現する場合、重鎖ポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと会合し、免疫グロブリンを形成する。
【0271】
いくつかの態様では、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載する本発明に係る二重特異性抗体に含まれるポリペプチドをコードする。
【0272】
一態様では、本発明は、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチドであって、前記PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHドメインと、(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2及び(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLドメインとを含む、単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0273】
B.組換え方法
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるように、組換え方法及び組成物を用いて製造されてもよい。これらの方法について、ある抗体をコードする1つ以上の単離された核酸が、提供される。
【0274】
2つの核酸が必要とされるネイティブ抗体又はネイティブ抗体フラグメントの場合、1つは軽鎖又はそのフラグメントのためのものであり、1つは重鎖又はそのフラグメントのためのものである。このような核酸は、VLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードする。これらの核酸は、同じ発現ベクター上、又は異なる発現ベクター上にあってもよい。4つの核酸が必要とされるヘテロダイマー重鎖を有する特定の二重特異性抗体の場合、1つは第1の軽鎖のため、1つは、ヘテロモノマーFc領域ポリペプチドを含む第1の重鎖のため、1つは第2の軽鎖のため、1つは、第2のヘテロモノマーFc領域ポリペプチドを含む第2の重鎖のためのものである。この4つの核酸は、1つ以上の核酸分子又は発現ベクターに含まれていてもよい。例えば、このような核酸は、第1のVLを含むアミノ酸配列及び/又は第1のヘテロモノマーFc領域を含む第1のVHを含むアミノ酸配列及び/又は第2のVLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体の第2のヘテロモノマーFc領域(例えば、抗体の第1及び/又は第2の軽鎖及び/又は第1及び/又は第2の重鎖)を含む第2のVHを含むアミノ酸配列をコードする。これらの核酸は、同じ発現ベクター又は異なる発現ベクターの上にあってもよく、通常、これらの核酸は、2つ又は3つの発現ベクター上に位置しており、すなわち、1つのベクターは、これらの核酸のうち、1つより多くを含んでいてもよい。これらの二重特異性抗体の例は、CrossMab及びT細胞二重特異性抗体である(例えば、Schaefer、W.et al、PNAS、108(2011)11187-1191を参照)。例えば、ヘテロモノマー重鎖の1つは、いわゆる「ノブ変異」(T366Wと、場合により、S354C又はY349Cのうち1つ)を含み、他方は、いわゆる「ホール変異」(T366S、L368A及びY407Vと、場合により、Y349C又はS354C)を含む(例えば、Carter,P.et al.、Immunotechnol.2(1996)73を参照)。
【0275】
一態様では、本明細書に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、PD1及びLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインのVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードする。更なる態様では、このような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。更なる態様では、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。あるこのような態様では、宿主細胞は、以下を含む(例えば、以下を用いて形質転換されている)。(1)アミノ酸配列をコードする第1の核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が抗体の第1のVLを含み、他方が第1のVHを含む、第1のベクターと、アミノ酸配列をコードする第2の核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が抗体の第2のVLを含み、他方が第のVHを含む、第2のベクター、又は(2)アミノ酸配列をコードする第1の核酸を含み、アミノ酸配列の一方が可変ドメイン(好ましくは軽鎖可変ドメイン)を含む第1のベクターと、アミノ酸配列をコードする核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が軽鎖可変ドメインを含み、他方が第1の重鎖可変ドメインを含む第2のベクターと、アミノ酸配列をコードする核酸対を含み、アミノ酸配列の一方が第2のベクターとはそれぞれ他の軽鎖可変ドメインを含み、他方が第2の重鎖可変ドメインを含む第3のベクター、又は(3)アミノ酸配列をコードする核酸を含み、アミノ酸配列の一方が抗体の第1のVLを含む第1のベクターと、抗体の第1のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターと、抗体の第2のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第3のベクターと、抗体の第2のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第4のベクター。一態様では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一態様では、二重特異性抗体を製造する方法が提供され、この方法は、上に提供されるように、抗体の発現に適した条件で、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することとを含む。
【0276】
本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体の組換え産生のために、二重特異性抗体をコードする核酸(例えば上述のもの)が、宿主細胞中の更なるクローニング及び/又は発現のために、単離され、1つ以上のベクターに挿入される。このような核酸は、従来の手順を用い(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離され、配列決定されてもよい。
【0277】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載する原核生物細胞又は真核生物細胞を含む。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びエフェクター機能が必要とされていない場合には、細菌中で産生されてもよい。細菌中の抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、US 5,648,237号、US 5,789,199号及びUS 5,840,523号を参照。(また、E,coli中の抗体フラグメントの発現を記載しているCharlton,K.A.,In:Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(編集),Humana Press,Totowa,NJ(2003),pp.245-254も参照。)発現後、抗体は、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されてもよい。
【0278】
原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、抗体をコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有する抗体を産生する。Gerngross,T.U.,Nat.Biotech.22(2004)1409-1414、及びLi,H.et al.,Nat.Biotech.24(2006)210-215を参照。
【0279】
(グリコシル化)抗体の発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。
【0280】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号及び第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術)を参照。
【0281】
脊椎動物細胞も、宿主として使用されてもよい。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al.、J Gen Virol 36(1977)59-74)に記載されるような293細胞又は293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、J.P.、Biol.Reprod.23(1980)243-252)に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al.、Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68、MRC 5細胞及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,G.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)、骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki,P.及びWu,A.M.、Methods in Molecular Biology、Vol.248、Lo,B.K.C.(編集)、Humana Press、Totowa,NJ(2004)、pp.255-268を参照。
【0282】
C.アッセイ
本明細書で提供されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、当該技術分野で既知の種々音アッセイによって、その物理/化学特性及び/又は生体活性について同定され、スクリーニングされるか、又は特性決定されてもよい。
【0283】
1.アフィニティアッセイ
対応する抗原に対する、本明細書で提供される二重特異性抗原結合分子、抗体及び抗体フラグメントのアフィニティは、Biacore(登録商標)装置(GE Healthcare)などの標準的な装置、受容体又は組換え発現によって得られ得るような標的タンパク質を用い、表面プラズモン共鳴(SPR)によって実施例に記載される方法に従って決定することができる。結合アフィニティを測定するための具体的な実例及び例示的な実施形態は、実施例2、8又は11に記載される。一態様によれば、Kは、BIACORE(登録商標)T100機(GE Healthcare)を用い、25℃で表面プラズモン共鳴によって測定される。
【0284】
2.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本発明の二重特異性抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの既知の方法によって、その抗原結合活性について試験される。対応する組換え抗原に、又は抗原発現細胞に対する、本明細書に提供される二重特異性抗体の結合は、実施例8及び11に記載されるELISAによって評価されてもよい。
【0285】
更なる態様では、新鮮な末梢血単核細胞(PBMCs)は、異なる末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、単球、NK細胞及びT細胞に対する結合を示すために、結合アッセイに使用される。
【0286】
別の態様では、2つの異なる受容体PD1及びLAG3の二量体化又は最後の結合/相互作用を示すために、細胞二量体化アッセイを使用し、これらの受容体は、両標的に対して二重特異性抗体を用いて切断するか、又は架橋する際に、酵素の2つのフラグメントと細胞質融合する。ここで、唯一1つの受容体のみが、酵素活性を示さない。この特異的な相互作用について、両受容体の細胞質ゾルC末端は、個々に、レポーター酵素の異種サブユニットに融合する。1つの酵素サブユニットのみがレポーター活性を示さなかった。しかし、両受容体に対する同時結合は、両受容体の局所的な細胞蓄積、2種類の異種酵素サブユニットの相補性を引き起こし、最終的に、基質を加水分解し、それによって、化学発光シグナルを生成する特異的で機能的な酵素が生成すると予想される(実施例11)。
【0287】
3.活性アッセイ
一態様では、生体活性を有する、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を同定するためのアッセイが提供される。生体活性としては、例えば、異なる免疫細胞、特にT細胞の活性化及び/又は増殖、免疫調整サイトカイン、例えば、IFNγ又はTNF-αの分泌、PD1経路のブロック、LAG3経路のブロック、腫瘍細胞の死滅を高める能力が挙げられるだろう。in vivo及び/又はin vitroでこのような生体活性を有する抗体も提供される。
【0288】
特定の態様では、本発明の抗体は、このような生体活性について試験される。一態様では、1つの個体(ドナーX)由来のリンパ球から、別の個体(ドナーY)由来のリンパ球までの活性化を測定する免疫細胞アッセイが提供される。混合リンパ球反応(MLR)を使用は、リンパ球エフェクター細胞に対するPD1経路をブロックする効果を示すことができる。このアッセイ中のT細胞は、本発明の二重特異性抗体存在下又は非存在下、活性化及びそのIFN-γ分泌について試験された。このアッセイは、実施例9に更に詳細に記載される。
【0289】
D.免疫抱合体
本発明はまた、1つ以上の細胞毒性剤、例えば、化学療法薬剤又は薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質 毒素、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素的に活性な毒素、又はそのフラグメント)、又は放射性同位体に抱合される本発明の二重特異性抗体を含む免疫抱合体を提供する。
【0290】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
特定の態様では、本明細書で提供されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体のいずれかは、生体サンプル中のPD1及びLAG3の両方の存在を検出するのに有用な場合がある。「検出する」との用語は、本明細書で使用される場合、定量的又は定性的な検出を包含する。特定の実施形態では、生体サンプルは、細胞又は組織、例えば、AML幹癌細胞を含む。
【0291】
一態様では、診断又は検出の方法で使用するための二重特異性抗体が提供される。更なる態様では、生体サンプル中のPD1及びLAG3の両方の存在を検出する方法が、提供される。特定の実施形態では、本方法は、PD1及びLAG3の両方に対する二重特異性抗体の結合について許容される条件で、生体サンプルと、本明細書に記載される二重特異性抗体とを接触させることと、二重特異性抗体と両抗原との間で複合体が生成するか否かを検出することとを含む。このような方法は、in vitro法又はin vivo法であってもよい。一実施形態では、二重特異性抗体は、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3抗体に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を用いた治療に適した被験体を選択するために使用され、例えば、PD1及びLAG3は、患者の選択のためのバイオマーカーである。
【0292】
特定の態様では、標識された二重特異性抗体が提供される。標識としては、限定されないが、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光、色素体、電子密度の高い、化学発光及び放射性標識)及び例えば、酵素反応又は分子相互作用によって間接的に検出される部分(例えば、酵素又はリガンド)が挙げられる。例示的な標識としては、限定されないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H及び131I、フルオロフォア、例えば、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘテロ環オキシダーゼ、例えば、ウリカーゼ及び過酸化水素を使用する酵素と連結し、染料前駆体を酸化するキサンチンオキシダーゼ、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識又は安定な遊離ラジカルが挙げられる。
【0293】
F.医薬組成物、製剤及び投与経路
更なる態様では、本発明は、例えば、以下の治療法のいずれかに使用するための、本明細書に提供されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体のいずれかを含む、医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に提示されるいずれかの二重特異性抗体と、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供される二重特異性抗体のいずれかと、少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、以下に記載するもの)とを含む。
【0294】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤に溶解又は分散した治療有効量の1つ以上の二重特異性抗体を含む。「医薬的又は薬理学的に許容される」との句は、一般的に、使用する投薬量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、すなわち、適切な場合、動物(例えばヒト)に投与したときに、有害なアレルギー反応又は他の不都合な反応を引き起こさない分子部分及び組成物を指す。少なくとも1つの二重特異性抗体と、場合により更なる有効成分とを含む医薬組成物の調製は、本明細書に参考として組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed.Mack Printing Company、1990に例示されるように、本開示の観点で、当該技術分野で既知である。特に、組成物は、凍結乾燥された製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される賦形剤」としては、当業者には知られているだろうが、任意及び全ての溶媒、バッファー、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張性剤、塩類、安定化剤及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0295】
非経口組成物としては、注射による(例えば、皮下、皮内、病変内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射による)投与のために設計されたものが挙げられる。注射のために、本発明の二重特異性抗体は、水溶液中で配合されてもよく、好ましくは、生理学的に適合するバッファー、例えば、Hanks溶液、Ringer溶液又は生理食塩水バッファー中で配合されてもよい。溶液は、配合剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び分散剤を含有していてもよい。又は、二重特異性抗体は、適切なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水を用いて使用前に構築するための粉末形態であってもよい。滅菌注射可能溶液は、必要な場合には以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の融合タンパク質を必要な量で、適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。一般的に、分散物は、種々の滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液、懸濁物又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の更なる所望な成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要な場合には適切に緩衝化されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造条件及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。内毒素の混入は、安全なレベルで、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきであることが理解される。適切な医薬的に許容される賦形剤としては、限定されないが、バッファー、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む;キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘度を上げる化合物(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストランなど)を含んでいてもよい。場合により、懸濁物は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含んでいてもよい。更に、活性化合物の懸濁物は、適切な油注射懸濁物として調製されてもよい。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪族油(例えば、ゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、エチルクリート(ethyl cleat)又はトリグリセリド)又はリポソームが挙げられる。
【0296】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションに封入されてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセルなどの成型物品の形態である。特定的な実施形態では、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせ)の組成物での使用によってもたらされてもよい。
【0297】
本発明の例示的な医薬的に許容される賦形剤は、更に、間質性薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)を含む。特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、rHuPH20を含め、米国特許公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載される。一態様では、sHASEGPを、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と合わせる。
【0298】
例示的な凍結乾燥した抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載される。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及び第WO2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジンバッファーを含む。
【0299】
既に記載した組成物に加え、二重特異性抗体は、デポー製剤として配合されてもよい。このような長く作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下又は筋肉内)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、二重特異性抗体は、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性の誘導体として、例えば、やや難溶性の塩として配合されてもよい。
【0300】
本発明の二重特異性抗体を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はタンパク質を医薬として使用可能な製剤へと加工するのを容易にする補助剤を用い、従来の様式で配合されてもよい。適切な製剤は、選択する投与経路によって変わる。
【0301】
二重特異性抗体は、遊離酸又は遊離塩基、中性又は塩形態で組成物に配合されてもよい。医薬的に許容される塩は、遊離酸又は遊離塩基の生体活性を実質的に保持する塩である。医薬的に許容される塩としては、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基と形成される酸付加塩、又は塩酸又はリン酸などの無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマンデル酸などの有機酸と形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムの水酸化物又は水酸化第二鉄などの無機塩基から誘導されてもよく、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカインなどの有機塩基から誘導されてもよい。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0302】
本発明の組成物は、処置される特定の徴候に必要な1種類より多い有効成分も含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。このような有効成分は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。
【0303】
in vivo投与に使用される製剤は、一般的に滅菌である。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。
【0304】
G.治療方法及び組成物
本明細書で提供されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体のいずれかは、治療方法で使用されてもよい。
【0305】
治療方法に使用するために、本明細書で既に定義された、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を、良好な診療行為と一致する様式で配合され、投薬され、投与されてもよい。この観点で考慮する因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、及び医学専門家には既知の他の因子が挙げられる。
【0306】
一態様では、医薬として使用するための、本明細書に定義されるようなPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。更なる態様では、ある疾患の処置において使用するための、特に、癌の処置において使用するための、本明細書に定義されるようなPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、処置方法で使用するための、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。一実施形態では、本発明は、必要とする個体における疾患の処置に使用するための、本明細書に記載されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体が提供される。特定の実施形態では、本発明は、個体に治療有効量の二重特異性抗体を投与することを含む、疾患を有する個体を処置する方法で使用するための、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を提供する。特定の実施形態では、処置される疾患は、癌である。別の態様では、治療される疾患は、感染性疾患、特に、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎)、HSV1(ヘルペス単純ウイルス1型)、CMV(サイトメガロウイルス)、LCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)又はEBV(エプスタイン・バールウイルス)などの慢性ウイルス感染である。処置が必要な被験体、患者又は個体は、典型的には、哺乳動物であり、より特定的には、ヒトである。
【0307】
更なる態様では、本発明は、必要な個体において、疾患の処置のための医薬の製造又は調整において、本明細書で既に定義した、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体の使用を提供する。一実施形態では、医薬は、疾患を有する個体に、治療有効量の医薬を投与することを含む、疾患を処置する方法で使用するためのものである。
【0308】
特定の態様では、処置される疾患は、増殖性障害、特に癌である。癌の例としては、膀胱癌、脳腫瘍、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、肛門癌、胃癌、前立腺癌、血液がん、皮膚癌、扁平細胞癌腫、骨がん及び腎臓癌が挙げられる。本発明のPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を用いて処置可能な他の細胞増殖障害としては、限定されないが、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、脳下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部領域及び泌尿生殖器系に位置する新生物が挙げられる。前癌状態又は病変及び癌転移も含まれる。特定の態様では、癌は、腎細胞癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳腫瘍、頭頸部癌からなる群から選択される。更なる態様では、癌は、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキン型及び非ホジキン型リンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病から選択される。別の態様では、処置される癌は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平癌腫、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠腫、頸部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮の癌腫、唾液腺の癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、白血病及び他のリンパ球増殖性障害、及び様々な種類の頭頸部癌から選択される。
【0309】
更なる態様では、処置される疾患は、感染性疾患、特に、慢性ウイルス感染である。「慢性ウイルス感染」との用語は、慢性ウイルスに罹患しているか、又は感染した被験体を指す。慢性ウイルス感染の例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス感染(HBV)、C型肝炎ウイルス感染(HCV)、ヘルペス単純ウイルス1(HSV1)、サイトメガロウイルス(CMV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)又はエプスタイン・バールウイルス(EBV)である。
【0310】
当業者は、多くの場合に、二重特異性抗体が、治癒を与えないが、部分的な利益のみを与える場合があることを容易に認識する。いくつかの実施形態では、いくつかの利益を有する生理学的変化も、治療利益であると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、生理学的変化を与える二重特異性抗体の量は、「有効量」又は「治療有効量」と考えられる。
【0311】
更なる態様では、本発明は、個体において疾患を処置する方法であって、前記個体に、治療有効量の本発明のPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体を投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、組成物は、前記個体に投与され、本発明の二重特異性抗体を医薬的に許容される形態で含んでいる。特定の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、癌である。特定の実施形態では、この方法は、更に、個体に、治療有効量の少なくとも1つの更なる治療薬剤(例えば、処置される疾患が癌である場合、抗癌剤)を投与することを含む。別の態様では、疾患は、慢性ウイルス感染である。上のいずれかの実施形態に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。
【0312】
疾患の予防又は処置のために、本発明のPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体の適切な投薬量は、(単独で使用されるとき、又は1つ以上の他の更なる治療薬剤と組み合わせて使用される場合)、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、融合タンパク質の種類、疾患の重篤度及び経過、二重特異性抗体が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前又は現在の治療介入、患者の病歴及び融合タンパク質に対する応答、及び主治医の判断によって変わる。投与の責任を担う医師は、いずれにしても、組成物中の有効成分の濃度、個々の被験体に適切な投薬量を決定する。限定されないが、種々の時間点にわたる単回又は複数回の投与、ボーラス投与、パルス注入を含む種々の投薬計画が本明細書で想定される。
【0313】
本明細書に定義されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、一度に、又は一連の処置にわたって、患者に適切に投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の二重特異性抗体が、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかによらず、患者に投与するための初期の候補投薬量であってもよい。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はさらに長く繰り返し投与する場合、状態に応じて、処置は、一般的に、疾患症状の所望な抑制が起こるまで続けられる。二重特異性抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の例では、投薬量はまた、投与あたり、約1μg/kg体重、約5μg/kg体重、約10μg/kg体重、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約350mg/kg体重、約500mg/kg体重から約1000mg/kg体重まで、又はもっと多く、又はその間の誘導可能な任意の範囲を含んでいてもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などが、上述の数に基づいて投与されてもよい。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)の1回以上の投薬を患者に投与してもよい。このような投薬量を、断続的に、例えば、毎週、又は3週間ごとに投与してもよい(例えば、患者は、約2~約20回、又は例えば約6回の融合タンパク質の投薬を受ける)。初期の高負荷用量の後、1回以上の低用量を投与してもよい。しかし、他の投薬レジメンが有用な場合がある。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0314】
本明細書で定義されるPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、意図した目的を達成するために有効な量で、一般的に使用されるだろう。疾患状態を処置又は予防するための使用のために、本発明の二重特異性抗体、又はその医薬組成物が、治療有効量で投与されるか、又は塗布される。治療有効量の決定は、特に、本明細書に与えられる詳細な開示の観点で、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0315】
全身投与の場合、治療有効投薬量は、in vitroアッセイ、例えば、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞培養物で決定されるようなIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、投薬量を動物モデルで配合してもよい。このような情報を使用し、ヒトにおける有用な用量をさらに正確に決定することができる。
【0316】
初期投薬量も、in vivoデータから、例えば、動物モデルから、当該技術分野で周知の技術を用いて概算することができる。当業者は、動物データに基づき、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0317】
治療効果を維持するのに十分な二重特異性抗体の血漿濃度を与えるように、投薬量及び投薬間隔は、個々に調節されてもよい。注射による投与に有用な患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿濃度は、各日に複数回投薬量を投与することによって達成されてもよい。血漿中の量は、例えば、HPLCによって測定されてもよい。
【0318】
局所投与又は選択的な取り込みの場合には、二重特異性抗体の有効な局所濃度は、血漿濃度と関係がない場合がある。当業者は、過度な実験を行うことなく、治療に有効な局所投薬量を最適化することができる。
【0319】
本明細書に記載の二重特異性抗体の治療に有効な投薬量は、実質的な毒性を引き起こすことなく、一般的に治療利益を与える。融合タンパク質の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物実験を使用し、LD50(集団の50%が致死に至る用量)及びED50(集団の50%が治療に有効である用量)を決定することができる。毒性と治療効果との間の投薬比は、治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す二重特異性抗体が好ましい。一実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトでの使用に適した投薬範囲を配合する際に使用することができる。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、全くない状態で、ED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、例えば、使用される投薬量、利用される投与経路、被験体の状態などの種々の因子に依存して、この範囲内で変動してもよい。実際の製剤、投与経路及び負う薬量は、患者の状態という観点で個々の医師によって選択されてもよい(例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれる、Fingl et al.,1975,The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1を参照。)
本発明の二重特異性抗体で処置される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに起因して、どのように、いつ投与を中止するか、中断するか、又は調整するかを知っている。逆に、主治医は、臨床応答が十分ではない場合(毒性を生じずに)、処置をもっと高レベルにするように調整することも知っている。目的の障害の管理において投与される投薬量の大きさは、処置される状態の重篤度、投与経路などに伴って変動する。状態の重篤度は、例えば、部分的には、標準的な診断評価方法によって評価されてもよい。更に、投薬量と、おそらく投薬頻度は、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変わる。
【0320】
他の薬剤及び処置
本明細書で上に記載したような、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体は、治療において、1つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本発明の二重特異性抗体は、少なくとも1つの更なる治療薬剤と一緒に投与されてもよい。「治療薬剤」との用語は、このような処置が必要な個体において、症状又は疾患を処置するために投与することが可能な任意の薬剤を包含する。このような更なる治療薬剤は、処置される特定の徴候に適した任意の有効成分を含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。特定の実施形態では、更なる治療薬剤は、別の抗癌剤である。
【0321】
本発明の一態様では、本発明で使用するか、又は癌の処置に使用するための、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は二重特異性抗体を含む医薬組成物も提供し、ここで、二重特異性抗体は、癌免疫療法に使用するために、化学療法剤、放射線及び/又は他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0322】
本発明の特定の態様では、本明細書に記載するPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、又は前記二重特異性抗体を含む医薬組成物は、癌の予防又は処置に使用するためのものであり、二重特異性抗体は、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせて投与される。一態様では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、(a)配列番号154のCDR-H1配列、配列番号155のCDR-H2配列及び配列番号156のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VCEA)及び/又は配列番号157のCDR-L1配列、配列番号158のCDR-L2配列及び配列番号159のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)、又は(b)配列番号162のCDR-H1配列、配列番号163のCDR-H2配列及び配列番号164のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VCEA)及び/又は配列番号165のCDR-L1配列、配列番号166のCDR-L2配列及び配列番号167のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含む、第2の抗原結合ドメインを含むT細胞活性化抗CD3二重特異性抗体である。一態様では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号160のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VCEA)及び/又は配列番号161のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含むか、又は配列番号168のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VCEA)及び/又は配列番号169のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含む第2の抗原結合ドメインを含む、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体である。
【0323】
更なる態様では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、Fc受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFcドメインを含む。特に、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含むIgG1 Fcドメインを含む。
【0324】
特定の態様では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号146の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号147の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号148の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、及び配列番号149の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチドを含む。更に特定の実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号146のポリペプチド配列、配列番号147のポリペプチド配列、配列番号148のポリペプチド配列及び配列番号149のポリペプチド配列を含む(CEA CD3 TCB)。
【0325】
更に具体的な態様では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号150の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号151の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、配列番号152の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチド、及び配列番号153の配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一のポリペプチドを含む。更に特定の実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号150のポリペプチド配列、配列番号151のポリペプチド配列、配列番号152のポリペプチド配列及び配列番号153のポリペプチド配列を含む(CEACAM5 CD3 TCB)。
【0326】
別の態様では、本明細書に記載される、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体、及びT細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。特定の態様では、医薬組成物は、疾患、特に癌の処置のための併用処置、逐次処置又は同時処置に使用するためのものである。より特定的には、組成物は、固形腫瘍の処置に使用されるためのものである。
【0327】
別の態様では、本発明は、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体又は抗FolR1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせて、本明細書に記載される、有効量のPD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む、二重特異性抗体を被験体に投与することを含む、個体において癌を治療するか、又は進行を遅らせるための方法を提供する。
【0328】
このような他の薬剤は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される融合タンパク質の量、障害又は処置の種類、上述の他の因子に依存する。二重特異性抗体は、一般的に、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0329】
上述のこのような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療薬剤が、同じ又は別個の組成物に含まれる)、及び別個の投与を包含し、この場合、二重特異性抗体の投与は、更なる治療薬剤及び/又はアジュバントの投与前、投与と同時及び/又は投与後に行われてもよい。
【0330】
H.製造物品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造物品は、容器と、容器に挿入されるか、又は容器に付随するラベル又はパッケージ添付文書とを備えている。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、静注溶液袋などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から作られてもよい。容器は、組成物をそれ自身で、又は状態を処置し、予防し、及び/又は診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保持しており、滅菌アクセス口を有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈用溶液袋又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書で既に定義したように、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体である。
【0331】
ラベル又はパッケージ添付文書は、その組成物が、選択した条件を処置するために使用されることを示す。更に、製造物品は、(a)中に組成物が入っており、組成物が、本発明の二重特異性抗体を含む、第1の容器と、(b)中に組成物が入っており、組成物が、更なる細胞毒性剤又はその他の治療薬剤を含む、第2の容器とを備えていてもよい。製造物品は、本発明のこの実施形態では、その組成物を特定の状態を処置するために使用可能であることを示すパッケージ添付文書を更に備えていてもよい。
【0332】
これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、医薬的に許容されるバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、Ringer溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。他のバッファー、希釈剤、フィルター、ニードル及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含んでいてもよい。
以下の番号付けされた項は、本発明の態様を記載する。
【0333】
1.二重特異性抗体であって、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
前記PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0334】
2.二重特異性抗体が、IgGであるFcドメイン、特に、IgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体に対する結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、項1に記載の二重特異性抗体。
【0335】
3.項1又は2に記載の二重特異性抗体であって、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、
(a)
(i)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(b)
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(c)
(i)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号31のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(d)
(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含むか、又は
(e)
(i)配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H1と、
(ii)配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H2と、
(iii)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H3とを含むVHドメインと、
(i)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-L1と、
(ii)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-L2と、
(iii)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0336】
4.項1~3のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号13のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0337】
5.項1~4のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号29のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号36のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号37のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号44のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号45のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(e)配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0338】
6.項1~4のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、
(a)配列番号54のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号55のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(b)配列番号62のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号63のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号65のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は
(d)配列番号66のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号67のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0339】
7.項1~5のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメイン、又は配列番号52のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号53のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0340】
8.項1~5のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号20のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号21のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0341】
9.項1~4又は6のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
PD1に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号10のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含み、
LAG3に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、配列番号56のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号57のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む、二重特異性抗体が提供される。
【0342】
10.二重特異性抗体が、ヒト化抗体又はキメラ抗体である、項1~5のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0343】
11.二重特異性抗体が、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を有する、ヒトIgG1サブクラスのFcドメインを含む、項1~10のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0344】
12.二重特異性抗体が、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変を含むFcドメインを含む、項1~11のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0345】
13.二重特異性抗体であって、ホールにノブを入れる方法に従って、Fcドメインの第1のサブユニットがノブを含み、Fcドメインの第2のサブユニットがホールを含む、項1~12のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0346】
14.Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(EU番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)、項1~13のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0347】
15.二重特異性抗体が、Fcドメインと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントとを含む、項1~14のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0348】
16.Fabフラグメントの1つにおいて、可変ドメインVL及びVHは、VHドメインが軽鎖の一部であり、VLドメインが重鎖の一部であるように互いに置き換わっている、項1~15のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0349】
17.PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第1のFabフラグメントにおいて、可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっている、項15又は16に記載の二重特異性抗体。
【0350】
18.二重特異性抗体が、Fabフラグメントを含み、定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、項1~17のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0351】
19.LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第2のFabフラグメントの定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸は、独立して、リシン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、定常ドメインCH1において、位置147及び213のアミノ酸は、独立して、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、項15~18のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0352】
20.項1~19のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
(a)配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号97の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号96の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号98の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号100の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(c)配列番号102の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号104の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(d)配列番号106の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号107の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0353】
21.二重特異性抗体が、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第3のFabフラグメントを含む、項1~19のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0354】
22.それぞれLAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つのFabフラグメントが同一である、項1~19又は21のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0355】
23.PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むFabフラグメントは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している、項1~19又は21又は22のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0356】
24.項1~19又は21~23のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
(a)配列番号118の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号119の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(b)配列番号120の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号121の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖、又は
(c)配列番号122の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、
配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0357】
25.二重特異性抗体が、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む第4のFabフラグメントを含む、項1~19又は21~23のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0358】
26.それぞれPD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む2つのFabフラグメントが同一である、項1~19又は21~23又は25のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0359】
27.PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントは、それぞれ、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介してそれぞれ融合している、項1~19又は21~23又は25又は26のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0360】
28.項1~19又は21~23又は25~27のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
(a)配列番号114の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(b)配列番号116の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第2の軽鎖、又は
(c)配列番号117の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの重鎖と、配列番号115の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの第1の軽鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0361】
29.二重特異性抗体が、Fcドメインと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む一本鎖Fab(scFab)とを含む、項1~14のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0362】
30.PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むscFabは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合している、項1~14又は29のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0363】
31.項1~14又は29又は30のいずれか1つに記載の二重特異性抗体であって、
(a)配列番号123の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号119の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号101の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む2つの軽鎖、又は
(b)配列番号124の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号121の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号99の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖、又は
(c)配列番号125の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号103の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号105の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の軽鎖を含む、二重特異性抗体が提供される。
【0364】
32.二重特異性抗体が、Fcドメインと、LAG3に特異的に結合する抗原結合ドメインをそれぞれ含む2つのFabフラグメントと、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインを含むVH及びVLドメインとを含む、項1~14のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0365】
33.PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインのVHドメインは、重鎖の1つのC末端にペプチドリンカーを介して融合しており、PD1に特異的に結合する抗原結合ドメインのVLドメインは、重鎖のもう一方のC末端にペプチドリンカーを介して融合している、項1~14又は32のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0366】
34.配列番号126の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第1の重鎖と、配列番号127の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第2の重鎖と、配列番号109の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの軽鎖を含む、項1~14又は32又は33のいずれか1つに記載の二重特異性抗体。
【0367】
35.項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド。
【0368】
36.項35に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター、特に、発現ベクター。
【0369】
37.項35に記載のポリヌクレオチドを含む原核生物又は真核生物の宿主細胞、又は項36に記載のベクター。
【0370】
38.二重特異性抗体の発現に適した条件で、項37に記載の宿主細胞を培養することと、培養物から二重特異性抗体を回収することとを含む、項1~34に記載の二重特異性抗体を製造する方法。
【0371】
39.項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体と、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0372】
40.医薬として使用するための項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体又は項39に記載の医薬組成物。
【0373】
41.項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体又は項39に記載の医薬組成物であって、
(i)免疫応答の調節、例えば、T細胞活性の回復において、
(ii)T細胞応答の刺激において、
(iii)感染の処置において、
(iv)癌の処置において、
(v)癌の進行を遅らせることにおいて、
(vi)癌を患う患者の生存を延長することにおいて使用するための二重特異性抗体又は医薬組成物を提供する。
【0374】
42.癌の予防又は処置に使用するための項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体又は項39に記載の医薬組成物。
【0375】
43.慢性ウイルス感染の処置に使用するための項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体又は項39に記載の医薬組成物。
【0376】
44.二重特異性抗体は、癌免疫療法で使用するために化学療法剤、放射線及び/又は他の薬剤と組み合わせて投与される、癌の予防又は処置に使用するための項1~34のいずれか1つに記載の二重特異性抗体又は項39に記載の医薬組成物。
【0377】
45.個体において腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、前記腫瘍細胞の成長を阻害するために、前記個体に有効量の請求項1~34のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を投与することを含む、方法。
【実施例
【0378】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上に提供した一般的な記載が与えられ、種々の実施形態が実施されてもよいことが理解される。
【0379】
材料及び一般的な方法
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)に与えられる。抗体鎖のアミノ酸は、上に定義したようなKabat(Kabat,E.A.,et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))による番号付けシステムに従って番号付けされ、参照される。
【0380】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用し、Sambrook,J.et al.、Molecular Cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記載されるように、DNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造業者の指示に従って使用した。
【0381】
遺伝子合成
望ましい遺伝子セグメントは、化学合成によって作られるオリゴヌクレオチドから調製した。600~1800bp長の遺伝子セグメントは、単一の制限エンドヌクレアーゼ開裂部位に隣接しており、PCR増幅を含め、オリゴヌクレオチドをアニーリングし、切断することによって整列させ、その後、所定の制限部位、例えば、KpnI/ SacI又はAscI/PacIを介し、pPCRScript(Stratagene)由来のpGA4クローニングベクター内でクローン化した。サブクローン化された遺伝子フラグメントのDNA配列は、DNAシークエンシングによって確認された。遺伝子合成フラグメントは、Geneart(レーゲンスブルク、ドイツ)での所与の仕様に従って並べられた。
【0382】
DNA配列決定
DNA配列は、MediGenomix GmbH(マルティンスリート、ドイツ)又はSequiserve GmbH(ファターシュテッテン、ドイツ)で行われた二本鎖シークエンシングによって決定された。
【0383】
DNA及びタンパク質配列分析及び配列データ管理
GCG(Genetics Computer Group、マディソン、ウィスコンシン)ソフトウェアパッケージバージョン10.2及びInfomaxのVector NT1 Advance suiteバージョン8.0を、配列作成、マッピング、分析、注釈及び図示のために使用した。
【0384】
発現ベクター
記載される抗体の発現のために、CMV-イントロンAプロモーターを用い、又は用いずに、cDNA組織化、又はCMVプロモーターを用いるゲノム組織化に基づく、細胞の一時的な発現(例えば、HEK293細胞における)のための発現プラスミドのバリアントが適用された。
【0385】
抗体発現カセット以外に、ベクターは、以下のものを含んでいた。
【0386】
-E.Coliにおいてプラスミドの複製を可能にする複製起源、
-E.Coliにおいてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子、
抗体遺伝子の転写ユニットは、以下の要素で構成されていた。
【0387】
-5’末端の固有の制限部位、
-ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期遺伝子及びプロモーター、
-次に、cDNA組織化の場合には、ントロンA配列、
-ヒト抗体遺伝子の5’-未翻訳領域、
-免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
-cDNAとして、又は免疫グロブリンエクソン-イントロン組織化を伴うゲノム組織化としてのヒト抗体鎖(野生型又はドメイン置き換えを含むもの)、
-ポリアデニル化シグナル配列を有する3’未翻訳領域、
-3’末端の固有の制限部位。
【0388】
以下に記載する抗体を含む融合遺伝子は、PCR及び/又は遺伝子合成によって作成され、それぞれのベクター中の固有の制限部位を用いて、核酸セグメントにしたがって接続することによって、既知の組換え方法及び技術によってアセンブリされた。サブクローン化された核酸配列は、DNAシークエンシングによって確認された。一時的なトランスフェクションのために、大量のプラスミドが、トランスフェクションされたE.Coli培養物(Nucleobond AX、Macherey-Nagel)からプラスミド調製によって調製された。
【0389】
細胞培養技術
標準的な細胞培養技術は、Current Protocols in Cell Biology(2000)、Bonifacino,J.S.、Dasso,M.、Harford,J.B.、Lippincott-Schwartz,J.及びYamada,K.M.(編集)、John Wiley&Sons,Inc.に記載されているように使用した。
【0390】
多重特異性抗体は、接着して成長するHEK293-EBNA中、又は以下に記載する懸濁物中で成長するHEK29-F細胞中、それぞれの発現プラスミドの一時的な同時トランスフェクションによって発現された。
【0391】
HEK293系における一時的なトランスフェクション
全ての抗体及び二重特異性抗体は、Freestyle system(ThermoFisher)を用い、293F細胞の一時的なトランスフェクションによって作成された。ここで、293F細胞をF17培地中で培養し、293Free(Novagene)でトランスフェクションし、VPA 4mMを用いて4時間後に供給し、16時間後にFeed 7と0.6%のグルコースを供給した。更に、Expi293F(商標)Expression System Kit(ThermoFisher)を使用した。ここで、Expi293F(商標)細胞をExpi293(商標)Expression Medium中で培養し、ExpiFectamine(商標)293 Transfection Kitを用い、製造業者の指示に従って移した。CH1/CL界面に更に導入された帯電したアミノ酸対を有するCrossMAbVh-VL二重特異性抗体の安定性及び純度の向上、凝集傾向の低下に起因して(更なる詳細については、それぞれの配列における位置を参照)、プラスミド比率の調節は使用されていない。従って、1+1 CrossMabについて、相対的なプラスミド比1:1:1:1、又は2+2 CrossMabについて1:1:1を、LC、HC、交差したLC及び交差したHCプラスミドの同時トランスフェクションに使用した。7日後に細胞上清を集め、標準的な方法によって精製した。
【0392】
タンパク質決定
精製された抗体及び誘導体のタンパク質濃度は、Pace、et al、Protein Science、1995、4、2411-1423に従って、アミノ酸配列に基づいて計算されるモル吸光係数を用い、280nmでの光学密度(OD)を決定することによって決定された。
【0393】
上清中の抗体濃度決定
細胞培養物上清中の抗体及び誘導体の濃度は、プロテインAアガロースビーズ(Roche)を用いた免疫沈降によって概算された。60μLのプロテインAアガロースビーズを、TBS-NP40(50mM Tris、pH7.5、150mM NaCl、1% Nonidet-P40)で3回洗浄した。その後、1~15mLの細胞培養物上清を、TBS-NP40中であらかじめ平衡状態にしたプロテインAアガロースビーズに適用した。室温で1時間インキュベートした後、ビーズを、Ultrafree-MC-フィルターカラム(Amicon)上で、0.5mL TBS-NP40で1回、0.5mLの2xリン酸緩衝化生理食塩水(2xPBS、Roche)で2回洗浄し、0.5mL 100mM クエン酸Na(pH5.0)で4回、簡単に洗浄した。結合した抗体を、35μlのNuPAGE(登録商標)LDS Sample Buffer(Invitrogen)を加えることによって溶出させた。サンプルの半分を、それぞれ、NuPAGE(登録商標)Sample Reducing Agentと合わせるか、又は還元しないまま放置し、70℃で10分間加熱した。その結果、5~30μlを、4~12%のNuPAGE(登録商標)Bis-Tris SDS-PAGE(Invitrogen)(非還元SDS-PAGE用のMOPSバッファー及び還元SDS-PAGE用のNuPAGE(登録商標)酸化防止剤ランニングバッファー添加剤(Invitrogen)を含むMESバッファーに適用し、クマシンブルーで染色した。
【0394】
細胞培養物上清中の抗体及び誘導体の濃度は、アフィニティHPLCクロマトグラフィーによって定量的に測定された。簡単に言うと、プロテインAに結合する抗体及び誘導体を含有する細胞培養物上清を、200mM KH2PO4、100mM クエン酸ナトリウム(pH7.4)中、Applied Biosystems Poros A/20カラムに適用し、Agilent HPLC 1100システムで、200mM NaCl、100mMクエン酸(pH2.5)を用いてマトリックスから溶出させた。溶出したタンパク質をUV吸光度及びピークエリア積算によって定量した。精製された標準IgG1抗体を、標準として与えた。
【0395】
又は、細胞培養物上清中の抗体及び誘導体の濃度は、サンドイッチ-IgG-ELISAによって測定された。簡単に言うと、StreptaWell High Bind Strepatavidin A-96ウェルマイクロタイタープレート(Roche)を、100μL/ウェルのビオチン化抗ヒトIgG捕捉分子F(ab’)2<h-Fcγ>BI(Dianova)で、0.1μg/mLで室温で1時間かけて、又は4℃で一晩かけてコーティングし、その後、200μL/ウェルのPBS、0.05% Tween(PBST、Sigma)を用いて3回洗浄した。細胞培養物上清を含有するそれぞれの抗体の100μL/ウェルのPBSでの希釈系列をウェルに加え、室温で、マイクロタイタープレート上、1~2時間インキュベートした。ウェルを200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄し、マイクロタイタープレートで、結合した抗体を、検出抗体として0.1μ/mLの100μlのF(ab’)2<hFcγ>POD(Dianova)で、室温で1~2時間かけて検出した。未結合の検出抗体を、200μL/ウェルのPBSTを用いて3回洗浄し、結合した検出抗体は、100μLのABTS/ウェルを加えることによって検出した。吸光度の決定は、Tecan Fluor Spectrometerで、測定波長405nm(参照波長492nm)で行った。
【0396】
タンパク質精製
タンパク質は、標準プロトコルを参照しつつ、濾過した細胞培養物上清から精製した。簡単に言うと、抗体を、Protein A Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出は、pH2.8で達成され、その後、サンプルをすぐに中和した。凝集したタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200、GE Healthcare)によって、PBS中、又は20mM ヒスチジン、150mM NaCl(pH6.0)中、モノマー抗体から分離された。モノマー抗体フラクションをプールし、例えば、MILLIPORE Amicon Ultra(30 MWCO)遠心分離濃縮器を用いて濃縮し(必要な場合)、凍結させ、-20℃又は-80℃で保存した。サンプルの一部を、例えば、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析法によるその後のタンパク質分析及び分析による特性決定のために提供した。
【0397】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、製造業者の指示に従って使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)及びNuPAGE(登録商標)MES(還元したゲル、NuPAGE(登録商標)酸化防止剤ランニングバッファー添加剤)又はMOPS(還元していないゲル)ランニングバッファーを使用した。
【0398】
分析サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態を決定するためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、HPLCクロマトグラフィーによって行われた。簡単に言うと、プロテインA精製抗体を、Agilent HPLC 1100システム又はSuperdex 200カラム(GE Healthcare)で、2×PBS中、Dionex HPLC-Systemで、300mM NaCl、50mM KHPO/KHPO(pH7.5)中、Tosoh TSKgel G3000SWカラムに適用した。溶出したタンパク質をUV吸光度及びピークエリア積算によって定量した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901を標準として与えた。
【0399】
質量分析法
この章は、その正しいアセンブリに重点をおいて、VH/VL置き換え(VH/VL CrossMab)を有する多重特異性抗体の特性決定を記載する。予想される一次構造を、脱グリコシル化したインタクトなCrossMabs及び脱グリコシル化した/消化したプラスミン、又は脱グリコシル化した/制限されたLysC消化したCrossMabのエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)によって分析した。
【0400】
VH/VL CrossMabsを、リン酸バッファー又はTrisバッファー中、タンパク質濃度1mg/mlで、37℃で17時間までの時間、N-グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化した。プラスミン又は制限されたLysC(Roche)消化を、100μgの脱グリコシル化したVH/VL CrossMabを用い、Trisバッファー(pH8)中、それぞれ、室温で120時間、また、37℃で40分間行った。質量分析の前に、サンプルを、Sephadex G25カラム(GE Healthcare)でのHPLCによって脱塩した。合計質量は、TriVersa NanoMate source(Advion)が取り付けられたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)でのESI-MSによって決定された。
【0401】
表面プラズモン共鳴(SPR)(BIACORE)を用い、それぞれの抗原に対する多重特異性抗体の結合及び結合アフィニティの決定。
【0402】
それぞれの抗原に対する、生成した抗体の結合は、BIACORE装置(GE Healthcare Biosciences AB、ウプサラ、スウェーデン)を用い、表面プラズモン共鳴によって観察された。それぞれのBiacore Evaluation Softwareを、センサグラムの分析及びアフィニティデータの計算に使用する。
【0403】
実施例1
抗PD-1抗体の作成
マウスの免疫付与
NMRIマウスを、100ugのベクターDNA(プラスミド15300_hPD1-fl)の皮内適用によって、全長ヒトPD-1をコードするプラスミド発現ベクターを用い、遺伝子的に免疫付与し、その後、エレクトロポレーション(1000V/cmの2スクエアパルス、持続時間0.1ms、間隔0.125s)し、その後、4スクエアパルスの287.5V/cm、持続時間10ms、間隔0.125sを行った。マウスは、0、14、28、42、56、70、84日に、6回の連続した免疫付与のいずれかを受けた。血液を36、78、92日目に採取し、血清を調製し、これをELISAによるタイター決定に使用した(以下を参照)。最大タイターを有する動物を、96日目に50ugの組換えヒトPD1ヒトFcキメラの静脈内注射によって促進させるために選択し、促進から3日後の骨髄腫細胞株への脾臓細胞の融合によって、モノクローナル抗体をハイブリドーマ技術によって単離した。
【0404】
血清タイターの決定(ELISA)
ヒト 組換えPD1ヒトFcキメラを、96ウェルNUNC Maxisorpプレートに0.3ug/ml、PBS中100ul/ウェルで固定化し、その後、PBS中の2% Crotein C、200ul/ウェルでプレートをブロックし、PBS中の0.5% Crotein C、100ul/ウェルで抗血清の段階希釈を二個ずつ適用し、HRP抱合されたヤギ抗マウス抗体(Jackson Immunoresearch/Dianova 115-036-071; 1/16 000)で検出した。全ての工程について、プレートを37℃で1時間インキュベートした。全ての工程の間に、プレートを、PBS中の0.05% Tween 20で3回洗浄した。BM Blue POD Substrate可溶性(Roche)を100ul/ウェルで加えることによって、シグナルを現像し、1M HCl、100ul/ウェルを加えることによって停止させた。吸光度を、リファレンスとしての690nmに対し、450nmで読み取った。タイターは、最大シグナルの半分値が得られる抗血清の希釈度であると定義された。
【0405】
実施例2
抗PD1抗体の特性決定/ヒトPD1に対する抗PD1抗体の結合
hu PD1のELISA
Nunc maxisorpストレプトアビジンでコーティングしたプレート(MicroCoat番号11974998001)を、25μl/ウェルのビオチン化PD1-ECD-AviHisでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗PD1サンプル又は参照抗体(ヒト抗PD1;Roche/マウス抗PD1;Biolegend;カタログ番号329912)を加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR,JIR109-036-088)/ヒツジ-抗マウスPOD(GE Healthcare;NA9310)を、1:2000/1:1000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Rocheカタログ番号11835033001)を加え、OD2-3になるまでインキュベートした。測定を370/492nmで行った。
【0406】
ELISAの結果は、以下のまとめた表1及び表2に、EC50値[ng/ml]として列挙している。
【0407】
PD1についての細胞ELISA
接着性CHO-K1細胞株は、全長ヒトPD1をコードするプラスミド15311_hPD1-fl_pUC_Neoを用いて安定にトランスフェクションされ、G418を用いた選択(プラスミドでのネオマイシン耐性マーカー)を、384ウェル平底プレート中、濃度0.01x10E6細胞/ウェルで接種し、一晩成長させた。
【0408】
次の日、25μl/ウェルのPD1サンプル又はヒト抗PD1(Roche)/マウス抗PD1(Biolegend;カタログ番号:329912)参照抗体を加え、4℃で2時間インキュベートした(インターナリゼーションを避けるため)。注意深く洗浄した後(1x90μl/ウェル PBST)、30μl/ウェルの0.05%グルタルアルデヒド(Sigma、カタログ番号G5882、25%)を1xPBSバッファーに希釈したものを加えることによってセルを固定し、RTで10分間インキュベートした。洗浄した後(3x90μl/ウェル PBST)、25μl/ウェルの二次抗体ヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR、JIR109-036-088)/ヒツジ-抗マウス-POD(GE NA9310)を検出のために加え、その後、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(3x90μl/ウェル PBST)、25μl/ウェルのTMB基質溶液(Roche 11835033001)を加え、OD1.0-2.0になるまでインキュベートした。プレートを370/492nmで測定した。
【0409】
細胞ELISAの結果は、以下の表2に、「EC50CHO-PD1」値[ng/ml]として列挙している。
【0410】
cyno PD1のELISA
Nunc maxisorpストレプトアビジンでコーティングしたプレート(MicroCoat番号11974998001)を、25μl/ウェルのビオチン化cynoPD1-ECD-Biotinでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗PD1サンプル又は参照抗体(ヒト抗PD1;Roche)を加え、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR,JIR109-036-088)を、1:1000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、11835033001)を加え、OD2-3になるまでインキュベートした。測定を370/492nmで行った。
【0411】
ELISAの結果は、以下のまとめた表1及び表2に、EC50値[ng/ml]として列挙している。
【0412】
PDリガンド1交換アッセイ
Nunc maxisorpストレプトアビジンでコーティングしたプレート(MicroCoat番号11974998001)を、25μl/ウェルのビオチン化PD1-ECD-AviHisでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗PD1サンプル又は参照抗体(マウス抗PD1;Biolegend;カタログ番号329912)を加え、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのPD-L1(組換えヒトB7-H1/PD-L1 Fc Chimera;156-B7,R&D)を加え、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR,109-036-088)を、1:1000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、11835033001)を加え、OD2-3になるまでインキュベートした。測定を370/492nmで行った。
【0413】
ELISAの結果は、以下のまとめた表1に、IC50値[ng/ml]として列挙している。
【0414】
PDリガンド2交換アッセイ
Nunc maxisorpストレプトアビジンでコーティングしたプレート(MicroCoat番号11974998001)を、25μl/ウェルのビオチン化PD1-ECD-AviHisでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗PD1サンプル又は参照抗体(マウス抗huPD1;Roche)を加え、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのPD-L2(組換えヒトB7-DC/PD-L2 Fc Chimera;1224-PL-100,R&D)を加え、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR,109-036-088)を、1:2000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB(テトラメチルベンジジン)基質(Roche、11835033001)を加え、OD2-3になるまでインキュベートした。測定を370/492nmで行った。
【0415】
ELISAの結果は、以下のまとめた表1に、IC50値[ng/ml]として列挙している。
【0416】
エピトープマッピングELISA/結合競争アッセイ
Nunc maxisorpプレート(Nunc番号464718)を、25μl/ウェルの捕捉抗体(ヤギ抗マウスIgG;JIR;115-006-071)でコーティングし、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、プレートを、2%BSAを含有するPBSバッファーを用い、シェーカー上で、RTで1時間かけてブロックした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlのマウス抗PD1サンプルを加え、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、捕捉抗体を、30μl/ウェルのマウスIgG(JIR;015-000-003)を用い、シェーカー上で、RTで1時間かけてブロックした。同時に、ビオチン化PD1-ECD-AviHisを、第2のサンプル抗体と共に、シェーカー上で、RTで1時間、プレインキュベートした。アッセイプレートを洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、PD1抗体ミックスをアッセイプレートに移し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのストレプトアビジンPOD(Roche、番号11089153001)を1:4000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、番号11089153001)を加え、OD1.5-2.5になるまでインキュベートした。測定を370/492nmで行った。エピトープ群は、参照抗体に対する階層クラスタリングによって定義された。
ヒト化抗PD-1抗体のBiacore特性決定
表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイを使用し、いくつかのマウスPD1バインダー及び市販のヒトPD1結合リファレンスとの間の結合の速度論的パラメータを決定した。抗ヒトFc IgGは、アミンカップリングによって、(Biacore)CM5センサチップの表面に固定された。次いで、サンプルを捕捉し、hu PD1-ECDをサンプルに結合させた。各分析サイクルの後、センサチップ表面を再生した。平衡定数及び動的速度定数は、このデータを1:1ラングミュアー相互作用モデルにフィッティングすることによって、最終的に得た。
【0417】
約2000応答単位(RU)の20μg/mlの抗ヒトIgG(GE Healthcare #BR-1008-39)を、pH5.0でBiacore T200中のCM5センサチップのフローセル1及び2(又は3及び4)で、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを用いることによって、連結した。
【0418】
サンプル及びランニングバッファーは、HBS-EP+(0.01M HEPES、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%(v/v)界面活性剤P20、pH7.4)であった。フローセル温度を25℃に設定し、サンプルコンパートメント温度を12℃に設定した。このシステムを、ランニングバッファーを用いて準備した。
【0419】
サンプルを濃度10nMで20秒間注入し、第2のフローセルに結合させた。次いで、ヒトPD1-ECD濃度の完全なセット(144nM、48nM、16nM、5.33nM、1.78nM、0.59nM、0.20nM及び0nM)を、各サンプルに120秒間注入し、その後、30/300秒の解離時間と、3M MgClを用いた2つの20秒の再生工程を行い、その中で、最後の1つは、ランニングバッファーを含む「注入後の余分の洗浄」を含んでいた。
【0420】
最後に、二重リファレンスを使用したデータを、Biacore T200 Evaluationソフトウェアを用い、1:1のLangmuir相互作用モデルにフィッティングした。得られたK、k及びkの値を表3に示す。
表3に示されるように、キメラPD1-0103の全てのヒト化態様(実施例6を参照して作成)は、親抗体(キメラPD1-0103)と同様の速度論的特性を示す。
【0421】
速度論
CM5センサシリーズSをBiacore 4000 Systemに取り付け、検出スポットを、製造業者の指示に従って、流体力学的に対処した。
【0422】
ポリクローナルウサギIgG抗体<IgGFCγM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)を、10000Ruで、フローセル1、2、3及び4の検出スポット1及び5に固定した。カップリングは、EDC/NHS化学によって、製造業者の指示に従って行われた。プローセル中の残りのスポットをリファレンスとして与えた。サンプルバッファーは、1mg/mlのカルボキシメチルデキストランを追加したシステムバッファーであった。
【0423】
一実施形態では、アッセイを25℃で行った。別の実施形態では、アッセイを37℃で行った。50nMの各マウスモノクローナル抗体を、10μl/分で1分間注入することによって、センサ表面で捕捉した。その後、それぞれの抗原を、4分間の解離段階の時間のために、100nM、2×33nM、11nM、4nM、1nM、システムバッファー0nMの濃度シリーズで、30μ/分で注射した。更に4分間、解離をモニタリングした。10mMグリシン(pH1.5)を30μ/分で3分間注射し、捕捉系を再生した。関連する速度論的データを、Biacore評価ソフトウェアを用い、製造業者の指示に従って計算した。
【0424】
エピトープマッピング
Biacore 4000装置をBiacore CAPセンサに取り付け、製造業者によって推奨されるように準備した。装置バッファーは、HBS-ET(10mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005%(w/v)Tween 20)であった。装置を25℃で操作した。
【0425】
全てのサンプルを、システムバッファーで希釈した。35kDaのビオチン化抗原PD1-ECD-AviHisを、200RUで、スポット1及び5において、フローセル1、2、3及び4における30μl/分での1分間の注入によって、CAPセンサ表面で捕捉した。スポット2、3及び4をリファレンスとして与えた。別の実施形態では、35kDaのビオチン化抗原PD1-ECD-AviHisを、同じ様式で、200RUで、CAPセンサ上で捕捉した。
【0426】
その後、一次抗体を、100nMで3分間、30μl/分で注射し、次いで、二次抗体を100nMで3分間、30μl/分で注射した。表面提示した抗原が全飽和になるまで、一次抗体を注射した。一次抗体と二次抗体の注入段階の終了時に、報告点「結合レート」(BL)を、それぞれの抗体の結合応答をモニタリングするために設定した。モル比(二次抗体結合応答「BL2」と一次抗体応答「BL1」との間の商)を計算した。抗体が、既に一次抗体によって複合体化している場合、このモル比を、二次抗体の抗原接近性の指標として使用した。
【0427】
この複合体を、製造業者が推奨するように、2Mグアニジン-HCL2分間、30μl/分の250mMのNaOH再生バッファーの注射によってセンサ表面から完全に除去し、その後、システムバッファーを1分間、30μl/分で注射した。
【0428】
実施例3
混合リンパ球反応(MLR)におけるサイトカイン産生に対する、異なる抗PD-1抗体の効果。
【0429】
(3A)混合リンパ球反応(MLR)は、1つの個体(ドナーX)由来のリンパ球から、別の個体(ドナーY)由来のリンパ球までの活性化を測定する免疫細胞アッセイである。混合リンパ球反応を使用し、リンパ球エフェクター細胞に対するPD1経路をブロックする効果を示した。このアッセイ中のT細胞は、抗PD1 mAn存在下又は非存在下、活性化及びそのIFNγ分泌について試験された。
【0430】
同種異系MLRを行うために、未知のHLA型を有する少なくとも4の健康なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を、Leukosep(Greiner Bio One、227 288)を用い、密度勾配遠心分離によって単離した。簡単に言うと、ヘパリン処理された血液サンプルを3倍体積のPBSで希釈し、希釈し多血液の25mlのアリコートを50mlのLeukosep管中で層状にした。800xgで15分間、室温で遠心分離処理した後(w/oの破壊)、リンパ球を含有するフラクションを集め、PBSで洗浄し、機能アッセイに直接使用するか、又は凍結媒体(10% DMSO、90%FCS)に1.0E+07細胞/mlで再懸濁させ、液体窒素中で保存した。個々の双方向MLR反応は、1:1刺激因子/応答因子比で、2人の異なるドナー由来のPBMCを混合し、異なる濃度範囲の精製された抗PD1モノクローナル抗体PD1-0050、PD1-0069、PD1-0073、PD1-0078、PD1-0098、PD1-0102、PD1-0103存在下、又は非存在下、37℃、5%COで6日間、平底96ウェルプレート中、少なくとも2個ずつ、一緒に培養することによって設定された。参照抗PD1抗体として、ニボルマブ(MDX-5C4又はMDX-1106としても知られる)又はペンブロリズマブ(MK-3475又はOrg 1.09Aとしても知られる)のいずれかのVHドメインとVLドメインを含む抗体を合成し、ヒトIgG1の骨格と共にクローン化した(変異L234A、L235A及びP329G(KabatのEUインデックス)を有する)。抗体なし、又はアイソタイプ制御抗体のいずれかを陰性コントロールとして使用し、rec hu IL-2(20EU/ml)を要請コントロールとして使用した。6日後、サイトカイン測定のため、100μlの培地を各培養物から採取した。IFN-γのレベルをOptEIA ELISAキット(BD Biosciences)を用いて測定した。
【0431】
結果を表4に示す(IFNγ分泌/放出)。抗PD1モノクローナル抗体は、濃度に依存する様式で、T細胞の活性化とIFNγ分泌を促進した。IFNγ分泌の増加率%の値を、任意のブロッキングmAb(基本的な同種異系刺激が誘発したIFNγ値をE-cとして)のMLR非存在下での付加と、20EU/mlのrec hu IL-2(陽性コントロール=100% IFNg値をE+cとして)を加えたMLRのIFNγ産生の関係で計算し、以下の式に従って計算した。相対刺激[%]=((実施例-E-c)/(E+c-E-c)*100
いくつかのPD1ブロッキング抗体PD1-0050、PD1-0069、PD1-0073、PD1-0078、PD1-0098、PD1-0102、PD1-0103は、インターフェロンガンマ(IFNγ)の分泌を向上させることによって、強い免疫調整活性を示した(データは、全ての抗体について示されていない)。
【0432】
(3B)更なる実験では、キメラPD1-0103(変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトIgG1アイソタイプ(KabatのEUインデックス))を評価した。PD1をキメラPD1-0103を用いてブロックすると、同種刺激初代ヒトT細胞によるIFN-γ分泌を強く向上させる。キメラPD1-0103は、参照抗PD1抗体よりも強力であった。比較のために、ニボルマブ(MDX-5C4又はMDX-1106としても知られる)又はペンブロリズマブ(MK-3475又はOrg 1.09Aとしても知られる)のいずれかのVHドメインとVLドメインを含む参照抗PD1抗体を合成し、ヒトIgG1の骨格と共にクローン化した(変異L234A、L235A及びP329G(KabatのEUインデックス)を有する)ものを使用した。
【0433】
(3C)更なる実験では、抗PD-1抗体PD1-0103(ヒト化抗体PD1-0103-0312、PD1-0103-0314、図2及び3、以下の実施例9も参照)のヒト化バリアントの免疫調整活性、(a)IFNγ放出(分泌)、(b)TNF-α放出(分泌)を、上に記載したMLRで評価した。キメラPD1-0103抗体及びそのヒト化態様の効果を、ニボルマブ(MDX5C4又はMDX-1106としても知られる)及びペンブロリズマブ(MK-3475又はOrg 1.09Aとしても知られる)のいずれかのVHドメイン及びVLドメインを含み、ヒトIgG1の骨格(変異L234A、L235A及びP329G(KabatのEUインデックス))を有する参照抗PD1抗体と比較した。MLR培養の6日後、50μlの上清を採取し、Bio-Plex Pro(商標)ヒトサイトカインTh1/Th2アッセイ(Bio-Rad Laboratories Inc.)を用い、複数のサイトカインを単一の培養物で測定した。(データは、全てのサイトカインについて示していない。)キメラPD1-0103抗体及びそのヒト化態様(PD1-0103_0312及びPD1-0103_0314)は、参照抗PD1抗体と比較して、T細胞活性化及びIFN-γ分泌の向上において、さらに強力であった。更に、キメラPD1-0103抗体及びそのヒト化バリアントは、抗原提示細胞によって腫瘍壊死因子α(TNFα)及びIL-12分泌が増加し、単球/マクロファージ又は抗原提示細胞がT細胞を刺激する能力が向上した。
【0434】
実施例4
同種異系成熟樹状細胞と共に培養されたヒトCD4 T細胞によって分泌される細胞毒性グランザイムB放出及びIFN-γ分泌に対する抗PD-1ブロックの効果。
【0435】
同種異系設定における抗PD-1処置の効果を更に観察するために、新しく精製したCD4 T細胞を5日間、単球由来の同種異系成熟樹状細胞(mDC)存在下、一緒に培養するアッセイを開発した。単球を、プラスチック接着し、その後、非接着細胞を除去する1週間前に、PBMCから単離した。次いで、GM-CSF(50ng/ml)及びIL-4(100ng/ml)を含有する培地中、単球由来の未成熟DCを5日間培養することによって、未成熟DCを単球から作成した。iDC成熟を誘発するために、TNF-α、IL-1β及びIL-6(それぞれ50ng/ml)を培地に更に2日間かけて加えた。次いで、フローサイトメトリー(LSRFortessa、BD Biosciences)によるMajor Histocompatibility Complex Class II(MHCII)、CD80、CD83及びCD86のその表面発現を測定することによって、DC成熟を評価した。
【0436】
最小混合リンパ球反応(mMLR)の日に、CD4 T細胞を、マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)によって、無関係なドナーから得られた10PBMCから濃縮した。培養前に、CD4 T細胞を、5μMのカルボキシ-フルオレセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。次いで、10CD4 T細胞を、ブロッキング抗PD1抗体(PD1-0103、キメラPD1-0103又はヒト化抗体PD1-0103-0312、PD1-0103-0313、PD1-0103-0314、PD1-0103-0315、0312、0313、0314、0315として省略されるもののいずれか)存在下又は非存在下、図に異なるように示されていない限り、10μg/mlの濃度で、成熟allo-DC(5:1)と共に96ウェルプレートに接種した。
【0437】
5日後、細胞培養物上清みを集め、これを使用し、ELISA(R&D systems.)によってIFN-γレベルを測定した。Golgi Plug(Brefeldin A)及びGolgi Stop(Monensin)存在下、細胞を37℃で更に5時間放置した。次いで、細胞を染色し、その表面を、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead fixable dye Aqua(Invitrogen)で染色した後、Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。細胞内染色は、グランザイムB(BD Bioscience)及びIFN-γ及びIL-2(両方ともeBioscience製)について実施した。
【0438】
全てのヒト化バリアントPD1-0103(ヒト化抗体PD1-0103-0312、PD1-0103-0313、PD1-0103-0314、PD1-0103-0315、0312、0313、0314、0315と省略される)は、グランザイムB及びインターフェロンガンマを向上させる際に、等しく良好であることがわかった(データは示していない)。
【0439】
実施例5
キメラPD1抗体誘導体
キメラPD1抗体を、抗PD1マウス抗体PD1-0098、PD1-0103の可変重鎖及び軽鎖領域をPCRによって増幅させ、これを重鎖発現ベクター内で、エフェクター機能を無効にし、変異L234A、L235A及びP329G(KabatのEUインデックス))(ロイシン234からアラニン、ロイシン235からアラニン、プロリン329からグリシン)を有するヒトIgG1骨格/ヒトCH1-ヒンジ-CH2-CH3を含み、ヒトC-κに対する融合タンパク質としての軽鎖発現ベクターを含む融合タンパク質としてクローン化することによって作成した。次いで、LC及びHCプラスミドをHEK293内で同時トランスフェクションし、抗体精製のための標準的な方法によって、上清から7日後に精製した。キメラPD1-抗体は、キメラchiPD1-0098(chiPD1-0098)及びキメラPD1-0103(chiPD1-0103)と改名された。比較のために、ニボルマブ(MDX-5C4又はMDX-1106としても知られる)又はペンブロリズマブ(MK-3475又はOrg 1.09Aとしても知られる)のいずれかのVHドメインとVLドメインを含む参照抗PD1抗体を合成し、ヒトIgG1の骨格と共にクローン化した(変異L234A、L235A及びP329G(KabatのEUインデックス)を有する)ものを使用した。
【0440】
実施例6
抗PD1抗体 PD-0103のヒト化バリアント(huMab PD-0103)の作成、発現及び精製、特性決定
マウス抗PD1抗体0103のVHドメイン及びVLドメインのヒト化
マウス抗PD1抗体PD1-0103(配列番号7及び8)のマウスVHドメイン及びVLドメインのアミノ酸配列に基づき、ヒト化抗PD1抗体バリアントを作成した。
【0441】
ヒト化VH-バリアントは、ヒト生殖細胞系列IMGT_hVH_3_23を、いくつかの変異を有するヒトJ-エレメント生殖細胞系列IGHJ5-01と組み合わせたものに基づいている。(配列番号9で得られる。)
VLのヒト化バリアントは、ヒト生殖細胞系列IMGT_hVK_4_1、IMGT_hVK_2_30、IMGT_hVK_3_11及びIMGT_hVK_1_39を、ヒトJ-エレメント生殖細胞系列IGKJ1-01と組み合わせたものに基づく。異なる変異によって、配列番号10~配列番号13のヒト化バリアントが得られた。
【0442】
PD1-0103の重鎖及び軽鎖の可変領域のヒト化アミノ酸配列は、DNAに逆翻訳され、得られたcNDAを合成し(GenArt)、次いで、エフェクター機能を無効にするLALA及びPG変異(ロイシン234からアラニン、ロイシン235からアラニン、プロリン329からグリシン)を有するヒトIgG1骨格/ヒトCH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む融合タンパク質として、重鎖発現ベクター内でクローン化するか、又は軽鎖発現ベクター内で、ヒトC-κに対する融合タンパク質としてクローン化した。次いで、LC及びHCプラスミドをHEK293内で同時トランスフェクションし、抗体精製のための標準的な方法によって、上清から7日後に精製した。得られたヒト化PD1抗体は、以下のように名付けられる。
ヒト化PD1-0103抗体バリアント及び親キメラPD1-0103は、上述のように特性決定した。結果を表6に示す。
ヒト化バリアントPD-0103-0312は、以下、aPD1抗体クローンPD1-0376と称される。
【0443】
実施例7
抗LAG3抗体の作成
ウサギの免疫付与
Rocheの専有品である、ヒト化抗体レパートリーを発現するトランスジェニックウサギを、LAG3を発現するプラスミドDNAを用いて免疫付与した。
【0444】
1セットの3匹のウサギを、全長ヒトLAG3をコードするプラスミド発現ベクター(15352_pIntronA_fl-hLag3_DNA-IMS)を用いて、400ugのベクターDNAの皮内適用、その後、エレクトロポレーション(5スクエアパルスの750V/cm、持続時間10ms、間隔1s)によって、遺伝子的に免疫付与した。ウサギは、0、14、28、49、70、98、126日目に、7回の連続免疫付与を受けた。血液(全血体積の概算値は10%)を、35、77、105、133日目に採取した。血清を調製し、これをELISAによるタイター決定に使用し(以下を参照)、末梢単核細胞を単離し、これを、以下のB細胞クローニングプロセスの抗原特異性B細胞の供給源として使用した。
【0445】
血清タイターの決定(ELISA)
ヒト組換えLAG3タンパク質を、96ウェルNUNC Maxisorpプレートで、2ug/ml、PBS中、100ul/ウェルで固定し、その後、PBS中の2% Crotein C、200ul/ウェルでプレートをブロックし、PBS中の0.5% Crotein C、100ul/ウェルで抗血清の段階希釈を2個ずつ適用し、検出した。検出は、(1)HRP抱合されたロバ抗ウサギIgG抗体(Jackson Immunoresearch/Dianova 711-036-152;1/16000)、又は(2)HRP抱合されたウサギ抗ヒトIgG抗体(Pierce/Thermo Scientific 31423;1/5000)、又は(3)ビオチン化ヤギ抗ヒトκ抗体(Southern Biotech/Biozol 2063-08、1/5000)及びストレプトアビジン-HRPのいずれかを用い、それぞれ、PBS中の0.5% Crotein C、100ul/ウェルで希釈した。全ての工程について、プレートを37℃で1時間インキュベートした。全ての工程の間に、プレートを、PBS中の0.05% Tween 20で3回洗浄した。BM Blue POD Substrate可溶性(Roche)を100ul/ウェルで加えることによって、シグナルを現像し、1M HCl、100ul/ウェルを加えることによって停止させた。吸光度を、リファレンスとしての690nmに対し、450nmで読み取った。タイターは、最大シグナルの半分値が得られる抗血清の希釈度であると定義された。
【0446】
ウサギ末梢血単核細胞(PBMC)の単離
免疫付与されたトランスジェニックウサギから血液サンプルを採取した。EDTAを含有する全血を、1×PBS(PAA、Pasching、オーストリア)で2倍に希釈した後、製造業者の仕様に従って、哺乳動物リンパ球(Cedarlane Laboratories、バーリントン、オンタリオ、カナダ)を用い、密度遠心分離を行った。PBMCを1×PBSで2回洗浄した。
【0447】
EL-4 B5培地
10% FCS(Hyclone、Logan、UT、USA)、2mMグルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(PAA、パッシング、オーストリア)、2mMピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES(PAN Biotech、アイデンバッハ、ドイツ)及び0.05mM b-メルカプトエタノール(Gibco、ペイズリー、スコットランド)を追加したRPMI 1640(Pan Biotech、アイデンバッハ、ドイツ)を使用した。
【0448】
タンパク質抗原を用いたプレートのコーティング
滅菌細胞培養6-ウェルプレートを、炭酸バッファー(0.1M 炭酸水素ナトリウム、34mM 炭酸水素二ナトリウム、pH9.55)中、ヒトFc部分に抱合されたヒトLAG3 ECD(2μg/ml)で、4℃で一晩かけてコーティングし、使用前に、滅菌PBSでプレートを3回洗浄した。
【0449】
細胞の疲弊
(a)CHO細胞のコンフルエント単層で覆われた滅菌6-ウェルプレート(細胞培養グレード)を使用し、非特異的な接着及び非特異的な結合リンパ球によって、マクロファージ/単球を枯渇させた。
【0450】
(b)ブランク滅菌6-ウェルプレート(細胞培養グレード)を用い、マクロファージ、単球及び他の細胞を非特異的な接着によって枯渇させた。
【0451】
PBMCサンプルの半分を(a)に使用し、半分を(b)に使用した。
【0452】
各ウェルを、最大で4mlの培地と、免疫付与したウサギ由来の6x106 PBMCとで満たし、インキュベータ中、37℃で1時間かけて結合させた。上清中の細胞(末梢血リンパ球(PBL))を抗原パニング工程に使用した。
【0453】
LAG3抗原上でのB細胞の濃縮。
【0454】
タンパク質抗原:LAG3-ECD-huFcタンパク質でコーティングした6ウェル組織培養プレートを、ブランク6ウェルプレートを用いた疲弊工程からの培地4mlあたり、6×10PBLまでを用いて接種し、インキュベータ中、37℃で1時間結合させた。非接着細胞を、1×PBSでウェルを1~2回、注意深く洗浄することによって除去した。得られた粘着性細胞を、インキュベータ中、トリプシンによって37℃で10分間かけて脱離させた。EL-4 B5培地を用い、トリプシン化を止めた。免疫蛍光染色まで、細胞を氷上で保存した。
【0455】
細胞表面抗原:ヒトLAG3-陽性CHO細胞の単層で覆われた6ウェル組織培養プレートに、6×10までのPBLを、CHOで覆われた6ウェルプレートを使用して、枯渇工程からの培地4mlあたり接種し、インキュベータ中、37℃で1時間結合させた。非接着細胞を、1×PBSでウェルを1~2回、注意深く洗浄することによって除去した。得られた粘着性細胞を、インキュベータ中、トリプシンによって37℃で10分間かけて脱離させた。EL-4 B5培地を用い、トリプシン化を止めた。免疫蛍光染色まで、細胞を氷上で保存した。
【0456】
免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー
抗IgG FITC(AbD Serotec、デュッセルドルフ、ドイツ)及び抗huCk PE(Dianova、ハンブルグ、ドイツ)抗体を、単一細胞選別に使用した。表面染色のために、枯渇及び濃縮工程からの細胞を、PBS中、抗IgG FITC及び抗huCk PE抗体と共にインキュベートし、4℃、暗状態で45分間インキュベートした。染色した後、PBMCを、氷冷したPBSを用い、2倍量で洗浄した。最後に、PBMCを氷冷したPBSに再懸濁させ、すぐにFACS分析を行った。死んだ細胞と生きている細胞とを区別するためのFACS分析の前に、濃度5μg/mlのヨウ化プロピジウム(BD Pharmingen、サンディエゴ、CA、USA)を加えた。コンピュータ及びFACSDivaソフトウェア(BD Biosciences、USA)を取り付けたBecton Dickinson FACSAriaを、単一細胞選別のために使用した。
【0457】
B細胞培養
ウサギB細胞の培養は、Seeber et al.(S Seeber et al.PLoS One 9(2)、e86184.2014、2月4日)によって記載される方法によって行われた。簡単に言うと、単一選別されたウサギB細胞を、96ウェルプレート中、Pansorbin細胞(1:100000)(Calbiochem(Merck)、ダルムシュタット、ドイツ)、5%ウサギ胸腺細胞上清(MicroCoat、ベルンリート、ドイツ)及びγ照射されたマウスEL-4 B5胸腺腫細胞(5×10e5細胞/ウェル)を含む200μl/ウェルのEL-4 B5培地と共に、インキュベータ中、37℃で7日間インキュベートした。B細胞培養の上清をスクリーニングのために取り出し、残った細胞をすぐに集め、100μlのRLTバッファー(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)中、-80℃で凍結させた。
【0458】
LAG3抗体のVドメインの単離
VドメインのPCR増幅
全RNAを、NucleoSpin 8/96 RNAキット(Macherey&Nagel;740709.4、740698)を用い、製造業者のプロトコルに従って、B細胞溶解物から調製した(RLTバッファー-Qiagen-カタログ番号79216に再懸濁させた)。RNAを、60μlのRNaseを含まない水で溶出させた。6μlのRNAを使用し、Superscript III First-Strand Synthesis SuperMix(Invitrogen18080-400)及びオリゴdTプライマーを用い、製造業者の指示に従って、逆転写反応によってcDNAを作成した。全ての工程をHamilton ML Star Systemで行った。4μlのcDNAを使用し、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖可変領域(VH及びVL)を、AccuPrime Supermix(Invitrogen12344-040)を用い、重鎖にはプライマーrbHC.up and rbHC.do、軽鎖にはBcPCR_FHLC_leader.fw and BcPCR_huCkappa.revを用い、最終体積50μlで増幅させた(表7)。全ての順方向プライマーは、(それぞれVH及びVLの)シグナルペプチドに特異的であり、一方、逆方向プライマーは、(それぞれVH及びVLの)定常領域に特異的であった。RbVHのPCR条件は、以下のとおりであった。94℃で5分間で熱い状態で開始、94℃で20秒、70℃で20秒、68℃で45秒を35サイクル、最後に68℃で7分間伸長。HuVLのPCR条件は、以下のとおりであった。94℃で5分間で熱い状態で開始、94℃で20秒、52℃で20秒、68℃で45秒を40サイクル、最後に68℃で7分間伸長。
8μlの50μl PCR溶液を、48E-Gel 2%(Invitrogen G8008-02)に入れた。陽性PCR反応を、NucleoSpin Extract IIキット(Macherey&Nagel;740609250)を用い、製造業者のプロトコルを用いて洗浄し、50μl溶出バッファーで溶出させた。全ての洗浄工程をHamilton ML Starlet Systemで行った。
【0459】
ウサギモノクローナル二価抗体の組換え発現
ウサギモノクローナル二価抗体の組換え発現のために、オーバーハング方法によって、VH又はVLをコードするPCR産物を、cDNAとして発現ベクターへとクローン化した(RS Haun et al.、Biotechniques(1992)13、515-518;MZ Li et al.、Nature Methods(2007)4、251-256)。発現ベクターは、イントロンAを含む5’CMVプロモーターと、3’BGH ポリアデニル化配列とからなる発現カセットを含んでいた。発現カセットに加え、プラスミドは、pUC18由来の複製と、E.Coli中のプラスミド増幅について、アンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子を含んでいた。塩基性プラスミドの3つのバリアントを使用した。1つのプラスミドは、VL領域を受け入れるためのヒトκLC定量領域を含みつつ、VH領域を受け入れるように設計されたウサギIgG定常領域を含んでいた。κ又はγ定常領域及びVL/VH挿入物をコードする線形発現プラスミドは、重複するプラスミドを用い、PCRによって増幅された。精製されたPCR産物を、T4 DNA-ポリメラーゼと共にインキュベートし、一本鎖オーバーハングを作成した。dCTP添加によって反応を止めた。
【0460】
次の工程で、プラスミドと挿入物を合わせ、部位特異的な組換えを誘発するrecAと共にインキュベートした。組換えプラスミドをE.Coli内で形質転換した。次の日、成長したコロニーを取り出し、プラスミド調製、制限分析及びDNAシークエンシングによって、正しい組換えプラスミドについて試験した。
【0461】
抗体発現のために、単離されたHC及びLCプラスミドは、HEK293細胞に一時的に同時トランスフェクトされ、上清を1週間後に集めた。
【0462】
実施例8
抗LAG3抗体の特性決定
ヒトLag3のELISA
Nunc maxisorpプレート(Nunc 464718)を、25μl/ウェルの組換えヒトLAG-3 Fcキメラタンパク質(R&D Systems、2319-L3)を用い、タンパク質濃度800ng/mlでコーティングし、4℃で一晩、又は室温で1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、各ウェルを、90μlのブロッキングバッファー(PBS+2% BSA+0.05% Tween 20)と共に、室温で1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗Lag3サンプルを濃度1~9μg/ml(OSEPバッファー中1:3希釈)で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ抗ヒトIg κ鎖抗HRP抱合体(Milipore、AP502P)を1:2000希釈状態で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、番号11835033001)を加え、2~10分間インキュベートした。測定をTecan Safire 2装置で、370/492nmで行った。
【0463】
細胞表面Lag3結合ELISA
25μl/ウェルのLag3細胞(Lag3を発現する組換えCHO細胞、10000細胞/ウェル)を、組織培養処理された384ウェルプレート(Corning、3701)に接種し、37℃で1日間又は2日間インキュベートした。培地を除去した次の日、25μlの抗Lag3サンプル(OSEPバッファー中1:3希釈、6~40nMの濃度で開始)を加え、4℃で2時間インキュベートした。洗浄した後(PBST中で1x90μl)、30μl/ウェルのグルタルアルデヒドを、最終濃度0.05%(Sigmaカタログ番号G5882)に室温で10分間添加することによって、細胞を固定した。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ抗ヒトIg κ鎖抗HRP抱合体(Milipore、AP502P)を1:1000希釈状態で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、番号11835033001)を加え、6~10分間インキュベートした。測定をTecan Safire 2装置で、370/492nmで行った。
【0464】
抗LAG3抗体のSPR(Biacore)特性決定
表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイを使用し、二価フォーマット中の抗Lag3抗体間の結合の速度論的パラメータを、又は一価Fabフラグメント及びヒトFcタグ化ヒトLag3細胞外ドメイン(ECD)として、25℃で決定した。
【0465】
したがって、C1バイオセンサチップの2つのフローセルを、酢酸バッファー(pH4.5)中、25μg/mlまで希釈し、「固定化ウィザード」を使用して、ニュートラアビジンを固定することによってBiacore T200で調製した。これにより、約1900RUの固定化レベルが得られた。次いで、CaptureSelect(商標)ビオチン抗IgG-Fc(ヒト)抱合体を、ランニングバッファー(HBS-EP+、GE Healthcare)中の20μg/ml希釈を用い、ニュートラアビジンに結合した。
【0466】
この方法自体は、サイクルあたり、4つの命令からなっていた。第1の命令:約46RUのhuLag3-Fcの捕捉(20s、10μl/分)。第2の命令:120秒間サンプルを注入し、その後、流速30μ/分で、1200秒解離させる。第3及び第4の命令;グリシン-HCl(pH1.5)を30秒間注入することによって、再生。次いで、各抗体Fabフラグメントの希釈系列(3.13nM~200nM、ランニングバッファーでの2倍希釈)及び更なるブランクサイクルを、既に記載した方法を用いて測定した。次いで、Biacore T200 Evaluationソフトウェアを利用し、捕捉レベルが完全には再現可能でないため、「ローカル」に設定されたRmaxフィットパラメータ1:1のLangmuirフィッティングを適用することによって、速度値を得た。結果(K値及びkd値)を表8に示す。
【0467】
エピトープマッピング
エピトープビニングを、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイを用いて行った。従って、aLag3バインダーは、Biacore T200装置で、huLag3に結合した。次いで、既に生成しているaLag3バインダー-huLag3複合体に対する他のバインダーの接近可能性を評価した。
【0468】
SA CAPキット(GE Healthcare)を用い、このアッセイを行った。特に記載されていない場合、アッセイは、SA CAP Kitマニュアルに従って行われた。この実行には、1サイクル型のみが含まれていた。ハイブリダイゼーション後、ビオチン化したhuFcタグ化huLag3の10nMの希釈によって、流速10μl/分で20秒間、センサチップにストレプトアビジンを結合させた。次いで、ランニングバッファーで希釈した第1の200nMのサンプルを、流速30μl/分で180秒間注入し、直後に、第2のサンプルを同じ条件で注入した。次いで、表面を再生した。
【0469】
次いで、サンプルを、同様の競争パターンを有する異なるエピトープ群に割り当てた。第1及び第2のサンプルとしてバインダーを注入したときに観察された最大値のすぐ上である閾値6.1RUを用い、第2の注入の相対的な応答に基づき、第1の粗い分類を行なった。全ての値及び決定は、センサグラムの視覚観察によって、最終的に検証された。
【0470】
結果を表8に示す。3つの主要なエピトープパターン(E1、E2及びE3)を同定した。aLag3-0416及びヒト化BAP 050は、同じ群を共有しているが、互いに完全に阻害することはなく、これらは、サブグループE2b及びE2cに割り当てられた。
【0471】
組換えcyno Lag3陽性HEK細胞に対するウサギ由来の抗Lag3抗体の結合
表面でヒトLag3を組換え発現するHEK細胞を用いた結合分析に加え、カニクイザルLag3陽性HEK細胞に対する結合も評価した。この実験のために、あらかじめcyno-LAG-3で一時的にトランスフェクションされ、凍結させたHEK293F細胞を解凍し、遠心分離処理し、PBS/2%FBSに再び懸濁させた。1.5x10細胞/ウェルを96ウェルプレートに接種した。抗Lag3抗体を、最終的な正規化された濃度が10μg/mlになるように加えた。コントロールとして参照するために、自己蛍光及び陽性コントロール(Medarex 25F7)及びアイソタイプコントロール(Sigma製huIgG1、カタログ番号I5154、データは示していない)抗体を調製し、この実験で測定した。HEK細胞を、示した抗体と共に氷上で45分間インキュベートし、2%FBSを含有する氷冷PBSバッファー200μlで2回洗浄した後、二次抗体(APC標識されたヤギ抗ヒトIgG-κ、Invitrogen、カタログ番号MH10515)を加え(FACS-Puffer/ウェルで1:50に希釈した)、更に、氷上で30分間インキュベートした。細胞を、再び、200μlの氷冷したPBS/2%FBSバッファーで2回洗浄した後、サンプルを、最終的に、150μlのFACSバッファーに再懸濁させ、FACS CANTO-II HTS Moduleで結合を測定した。
【0472】
結果:以下の表に示すのは、cynoLAG3を発現するHEK293細胞に対する異なる抗Lag3抗体の結合及び交差反応性、陽性細胞又はシグナル強度のGeoMeanの%の単位で与えられる結合である。
(活性化した)カニクイザルPBMC/Lag3を発現するT細胞に対するウサギ由来の抗Lag3の結合
組換えLag3タンパク質及び哺乳動物細胞で組換え発現したLag3に対する結合の後、活性化されたカニクイザルT細胞で発現したLag3に対する結合も評価した。
【0473】
カニクイザルT細胞又はPBMCの細胞表面で発現するLag3に対する、新しく作成した抗Lag3抗体(Rocheのトランスジェニックウサギ由来)の結合特徴を、FACS分析によって確認した。Lag3は、ナイーブT細胞では発現しないが、活性化及び/又は疲弊したT細胞ではアップレギュレーションされる。従って、カニクイザル末梢血単核細胞(PBMC)を、新しいカニクイザル血液から調製し、次いで、CD3/CD28前処理(1μg/ml)によって、2~3日間かけて活性化させた。その後、活性化した細胞を、Lag3発現について分析した。簡単に言うと、1-3×10の活性化された細胞を、指定の抗体Lag3抗体及びそれぞれのコントロール抗体を最終濃度10μg/mlで用い、氷上、30~60分間かけて染色した。結合した抗Lag3抗体を、蛍光色素が抱合された抗ヒトIgG又は抗ウサギIgG二次抗体によって検出した。染色後、細胞をPBS/2%FCSで2回洗浄し、FACS Fortessa(BD)で分析した。
【0474】
結果:以下の表は、活性化したカニクイザルPBMC中、Lag3陽性細胞の割合をまとめたものである。
活性化されたカニクイザルT細胞で、全てのウサギ抗Lag3抗体は、Lag3細胞に対して顕著な結合を示した。ここで、全ての新しく生成した抗体は、ヒト抗Lag3参照抗体(例えば、MDX25F7、BMS-986016)と比較して、陽性細胞の割合の増加を示した。
【0475】
ヒトA375腫瘍細胞で発現するMHC-IIに対するLAG-3結合の阻害(ELISAによる)
25μl/ウェルのA375細胞(10000細胞/ウェル)を、組織培地で処理した384ウェルプレート(Corning、3701)に接種し、37℃で一晩インキュベートした。抗Lag3抗体を、3μg/mlの抗体濃度で出発して、1:3の希釈律で、細胞培地中、ビオチン化Lag3(250ng/ml)を用い、1時間かけてプレインキュベートした。接種した細胞を含むウェルから培地を取り出した後、25μlの抗体Lag3プレインキュベート混合物をウェルに移し、4℃で2時間インキュベートした。洗浄した後(PBST中で1x90μl)、30μl/ウェルのグルタルアルデヒドを、最終濃度0.05%(Sigmaカタログ番号G5882)に室温で10分間添加することによって、細胞を固定した。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのポリ-HRP40-ストレプトアビジン(Fitzgerald、65R-S104PHRPx)を1:2000又は1:8000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、番号11835033001)を加え、2~10分間インキュベートした。測定をTecan Safire 2装置で、370/492nmで行った。
【0476】
ヒトA375腫瘍細胞で発現するMHC-IIに対するLAG-3結合の阻害(FACS分析による)
アッセイ原理:抗Lag3抗体のアンタゴニスト機能を調べるために、MHCII:Lag3競争アッセイを行った。MHCIIヒトA375細胞を、抗Lag3抗体と共にプレインキュベートしつつ、又はせずに、社内で作成したビオチン化Lag3:Fc融合タンパク質を用いて染色した。この分析を、FACS競争実験で試験した。A375細胞(ATCC、番号CRL-1619)を、EBSS(PAN、カタログ番号P04-00509)、10% FBS、2mM L-グルタミン、1×NEAA及び1×ピルビン酸ナトリウムを追加したEM Eagle培地中、2~3継代培養した。25μl中、最終濃度が20μg/mlになるように(96ウェルU字底プレート)、全ての抗体をFACSバッファーで希釈した。25μlの社内で作成したビオチン化組換えLAG-3:Fc融合タンパク質を、最終濃度10μg/mlになるまで、培地に、又は抗Lag3抗体又はコントロールに加え、室温で30分間、プレインキュベートした。A375細胞をPBSで洗浄し、PBS中、3x10細胞/mlになるように調節した。96ウェルV型底プレートに、ウェルあたり100μlを接種した。プレートを遠心分離処理し、上清を除去した。次いで、あらかじめインキュベートしたLAG-3:Fc融合タンパク質/抗体ミックス(50μl/ウェル)をセルに加え、室温で1時間インキュベートした。この後、細胞を200μlのFACSバッファーで洗浄した。細胞MHCIIに結合したビオチン化Lag3:Fcタンパク質を検出するために、APC抱合したヤギ抗ビオチン抗体を、3μl/サンプルで使用し(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-090-856)、更に10~15分間インキュベートした。染色後、細胞を再び洗浄し、次いで、150μl FACSバッファー(PBS/2% FBS)をU字底プレートに移し、FACS Canto-IIで、HTSモジュールを用いて分析した。
【0477】
2つの抗Lag3抗体(クローン25F7及び26H10;Medarex)は、陽性コントロールとして与えられ、ヒト IgG1(Sigma、カタログ番号I5154)を適切なアイソタイプコントロールとして与えた。全ての抗体を10μg/mlの最終濃度で使用した。
【0478】
結果:以下の表に示すのは、細胞上のMHC-IIに対するLag3タンパク質結合の阻害率を示すFACS分析の結果である(ブロッキング抗体非存在下の最大値を参照しつつ、結合シグナルの減少として計算される)。
これらのデータは、Lag3との機能的相互作用と、全ての試験した抗体の細胞相互作用のブロックを裏付けている。
【0479】
標準的なLAG3 Blockade Bio/Reporterassayにおける新規な抗Lag3抗体の中和能力。
【0480】
in vitroで、抑制されたT細胞応答を回復する際に、新規な抗Lag3抗体の中和能力を調べるために、市販のレポーターシステムを使用した。このシステムは、Lag3NFAT Jurkatエフェクター細胞(Promega、カタログ番号CS194801)、MHC-IIRaji細胞(ATCC、番号CLL-86)及び超抗原からなっていた。簡単に言うと、このレポーター系は、以下の3つの工程に基づく。(1)超抗原によって誘発されるNFAT細胞の活性化、(2)MHCII(Raji細胞)とLag3NFAT Jurkatエフェクター細胞との相互作用を阻害する活性化シグナルの阻害、(3)Lag3アンタゴニスト/中和aVH-Fc融合構築物によるNFAT活性化シグナルの回復。
【0481】
この実験のために、Raji及びLag-3Jurkat/NFAT-luc2エフェクターT細胞を、提供者によって記載されるように培養した。いくつかの抗Lag3及び参照抗体の段階希釈(40pg/ml~50μg/ml)を、平らな白色底96ウェル培養プレート(Costar、カタログ番号3917)中、アッセイ培地(RPMI 1640(PAN Biotech、カタログ番号#P04-18047)、1%FCS)中で調製した。1×10Lag3NFAT-Jurkat細胞/ウェル)を抗体溶液に加えた。この工程の後で、2.5×10Raji細胞/ウェルを、Jurakt細胞/抗体ミックス及び50ng/mlの最終濃度のSED超抗原(Toxin technology、カタログ番号DT303)に加えた。37℃及び5%COで6時間インキュベートした後、Bio-Glo基質(Promega、番号G7940)を室温まで加温し、75μlをウェルあたり加え、5~10分間インキュベートした後、製造業者の推奨に従って、Tecanインフィニットリーダーで全体的な発光を測定した。
【0482】
表に示されるのは、SED刺激の際の異なる抗Lag3抗体によるNFATルシフェラーゼシグナルMHCII/Lag3が介在する抑制の回復である(EC50値として与えられる)。
実施例9
抗LAG3抗体の機能特性決定
表13は、本明細書で記載する異なるアッセイで、異なる抗LAG3抗体(単独、又は抗PD1抗体と組み合わせて)の生体活性及び効果をまとめている。
同種異系成熟樹状細胞と共に培養されたヒトCD4 T細胞によって分泌される細胞毒性グランザイムB放出及びIL-2分泌に対するPD-1及びLAG-3ブロックの効果。
【0483】
抗LAG-3ブロッキング抗体を、同種異系設定で抗PD-1と組み合わせてスクリーニングするために、新しく精製したCD4 T細胞を、単球由来同種異系成熟樹状細胞(mDC)と5日間、同時に培養するアッセイを開発した。単球を、プラスチック接着し、その後、非接着細胞を除去する1週間前に、PBMCから単離した。次いで、GM-CSF(50ng/ml)及びIL-4(100ng/ml)を含有する培地中、未成熟DCを5日間培養することによって、未成熟DCを単球から作成した。iDC成熟を誘発するために、TNF-α、IL-1β及びIL-6(それぞれ50ng/ml)を培地に更に2日間かけて加えた。次いで、フローサイトメトリー(LSRFortessa、BD Biosciences)によるMajor Histocompatibility Complex Class II(MHCII)、CD80、CD83及びCD86のその表面発現を測定することによって、DC成熟を評価した。
【0484】
最小混合リンパ球反応(mMLR)の日に、CD4 T細胞を、マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)によって、無関係なドナーから得られた10PBMCから濃縮した。培養前に、CD4 T細胞を、5μMのカルボキシ-フルオレセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識した。次いで、10CD4 T細胞を、ブロッキング抗PD-1抗体aPD1(0376)(=PD1-0103-0312、本明細書で上に記載したような、又はPCT出願PCT/EP2016/073248に記載)のみ、又はキメラ抗LAG-3抗体(aLAG(0418)に対するaLAG3(0403))又は参照抗体(ヒト化BAP050(LAG525)及びBMS 986016)を濃度10μg/mlで組み合わせて、成熟allo-DC(5:1)と共に96ウェルプレートに接種した。DP47は、FcγRによる認識を避けるためにFc部分にLALA変異を有する非結合性ヒトIgGであり、これを陰性コントロールとして使用した。
【0485】
5日後、細胞培養上清を集め、これを使用し、ELISA(R&D systems)によりIL-2レベルを測定し、Golgi Plug(Brefeldin A)及びGolgi Stop(Monensin)の存在下、細胞を37℃で更に5時間放置した。次いで、細胞を染色し、その表面を、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead fixable dye Aqua(Invitrogen)で染色した後、Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。細胞内染色は、Granzyme B(BD Bioscience)及びIFN-γ(eBioscience)について実施した。結果を図2A及び2Bに示す。
【0486】
B細胞リンパ芽球様細胞株(ARH77)と共に培養されたヒトCD4 T細胞による細胞毒性グランザイムB放出に対する、PD-1とLAG-3のブロックの効果。
【0487】
機能試験において、PD-1ブロックに対するLAG-3の拮抗作用の寄与をより良く特性決定するために、CD4 T細胞を、腫瘍細胞株ARH77、mDCよりもPDL-1の発現レベルが低いB細胞リンパ芽球様細胞株と共に一緒に培養した。実験設定及び読み取りの残りは、mMLRから変化しないままであった。抗LAG-3抗体(aLAG3(0414)及びaLAG3(0416)、mMLRにおいてIL-2とグランザイムBを一緒に分泌する能力に基づいて選択される)を、抗PD-1抗体と組み合わせると、図3に示されるように、参照抗LAG-3抗体((ヒト化BAP050(LAG525)及びBMS 986016))(P<0.05)及び抗PD-1のみ(P<0.01)よりも、CD4 T細胞によるグランザイムB分泌が、より有意に増加した。
【0488】
照射された同種異系PBMCと共に培養されたヒトCD4 T細胞によるグランザイムBのTreg抑制及びIFN-γ放出に対する、PD-1及びLAG-3ブロックの効果。
【0489】
制御性T細胞(Treg)抑制アッセイに関与する機能的試験では、マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)によって、2つのサンプルに分けた同じドナー由来のPBMC(1つはCD4 T細胞に豊富に含まれており、他方はTregに豊富に含まれている)は、CD4CD25CD127T細胞として定義される。2種類の集合を精製したら、CD4 T細胞を5μMのカルボキシ-フルオレセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、一方、Tregは、FACSで後で区別することができるように、5μMの細胞-トレース-バイオレット(CTV)で標識した。
【0490】
次いで、CD4 T細胞(10)及びTreg(10)を96ウェルプレート中、無関係なドナー由来の照射されたCD4が枯渇したPBMC(10)と共に、抗LAG-3抗体(aLAG3(0414)及びaLAG3(0416)又は参照抗LAG-3抗体(ヒト化BAP050(LAG525)及びBMS 986016)存在下又は非存在下、濃度10μg/mlで抗PD-1抗体aPD1(0376)と組み合わせて、1:1の比率で一緒に培養した。TregによるCD4 T細胞エフェクター機能の抑制の大きさを概算するためのコントロールとして、CD4 T細胞(10)を、Treg非存在下、照射されたPBMC(10)と共に培養した。
【0491】
5日後、細胞培養上清を集め、これを後で使用し、ELISA(R&D systems)によりIFN-γレベルを測定し、Golgi Plug(Brefeldin A)及びGolgi Stop(Monensin)の存在下、細胞を37℃で更に5時間放置した。次いで、細胞を染色し、その表面を、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead fixable dye Aqua(Invitrogen)で染色した後、Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。細胞内染色は、Granzyme B(BD Bioscience)及びIFN-γ(eBioscience)について実施した。結果を図4A及び4Bに示す。
【0492】
抗LAG-3抗体(aLAG3(0414)及びaLAG3(0416)を、抗PD-1抗体aPD1(0376)(=PD1-0103-0312、PCT出願PCT/EP2016/073248号から)と組み合わせると、抗PD-1のみ存在下(P<0.05)、又はチェックポイント阻害剤非存在下(P<0.001)、Tconvよりも有意に多い量のグランザイムBの分泌によって示されるように、制御T細胞の密な制御からTconvを守ることが誘発された。抗PD-1と組み合わせた参照抗LAG-3抗体(ヒト化BAP050(LAG525)及びBMS 986016)は、Treg抑制からTconvエフェクター機能を顕著に守らなかった。その差が、たった4人のドナーを用い、統計的有意性に達しなかったとはいえ、IFN-γについて、同様の結果が得られた。
【0493】
免疫原性黒色腫抗原ペプチドプールを用いて回収した後の黒色腫患者PBMC由来のCD4 T細胞によるグランザイムB及びIFN-γ分泌に対するPD-1及びLAG-3ブロックの効果。
【0494】
黒色腫患者PBMCが、検出可能な数の腫瘍抗原に特異的なT細胞を含むことは既に記載されている。したがって、POCのために、免疫原性黒色腫に関連する抗原ペプチドプールを用いて一晩再刺激した黒色腫患者PBMCに対して、抗LAG-3抗体(0414)及び抗PD-1、又は抗PD-1単独を試験した。
【0495】
飽和濃度(10μg/ml)の抗PD-1のみ(0376)存在下又は非存在下、抗LAG-3(aLAG3(0414)=(0414)、10μg/ml)抗体と組み合わせて、室温でインキュベートした黒色腫患者由来の10~10PBMC。次いで、MAGEA1、MAGEA3、MAGEA4、Melan-A/MART-1、NYESO-1、メラニン細胞タンパク質Pmel 17 gp100、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質2などの免疫原性腫瘍関連抗原のプールを用い、タンパク質輸送阻害剤Golgi Plug(ブレフェルジンA)及びGolgi Stop(モネンシン)存在下、T細胞を、一晩かけて再刺激した。
【0496】
次いで、細胞を染色し、その表面を、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead fixable dye Aqua(Invitrogen)で染色した後、Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。細胞内染色は、グランザイムB(BD Bioscience)及びIFN-γ(eBioscience)について実施した。
【0497】
抗LAG-3と抗PD-1抗体の組み合わせ(P<0.01及びP<0.001)は、有意に(P<0.01及びP<0.0001)、腫瘍抗原特異的なT細胞エフェクター機能(すなわち、グランザイムB一部IFN-γ分泌)を向上させた。一方、PD-1のみをブロックすると、なんら効果を示さなかった(データは示していない)。
【0498】
実施例10
二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の作成及び製造
10.1 1つの結合アームにVH/VLドメイン交換/置き換えを有し、CH1/CL界面に一本鎖の帯電したアミノ酸置換を有する、PD1及びLAG3に結合する二重特異性抗体(CrossMAbVh-VL)の製造及び発現
ヒトPD1及びヒトLAG3に結合する多重特異性抗体は、従来の分子生物学技術による一般的な方法の章に記載されるように作成され、上述のExpi293F細胞の293Fにおいて、一時的に発現した。多重特異性1+1CrossMAbVh-Vl抗体も、WO 2009/080252号に記載されている。多重特異性抗体は、表14に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。1+1CrossMAbVh-Vl二重特異性抗体の模式的な構造を図1Aに示す。
全ての構築物について、ホールにノブを入れるヘテロ二量体化技術を、第1のCH3ドメインにおける典型的なノブ(T366W)置換及び第2のCH3ドメインにおける対応するホール置換(T366S、L368A及びY410V)(及び2つの更なる導入されたシステイン残基S354C/Y349’C)と共に使用した(上に記載するそれぞれの対応する重鎖(HC)配列に含まれる)。
【0499】
10.2 PD1及びLAG3に結合し、2つの結合アームにCH1/Ckドメイン交換/置き換え(2+2CrossMabCH1/Ck)を有し、他方のCH1/CL界面に帯電したアミノ酸置換を有する、多重特異性抗体の製造及び発現。
【0500】
この例では、ヒトPD1及びヒトTIM3に結合する多重特異性抗体は、従来の分子生物学技術による一般的な方法の章に記載されるように作成され、上述のExpi293F細胞の293Fにおいて、一時的に発現した。多重特異性2+2CrossMAbCH1/Ck抗体は、WO 2010/145792号にも記載される。多重特異性抗体は、表15に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。2+2CrossMAbCH1/Ck二重特異性抗体の模式的な構造を図1Aに示す。
10.3 PD1及びLAG3に結合し、1つの結合アームにCH1/Ckドメイン交換/置き換え(2+1CrossMabCH1/Ck)を有し(Fcノブ重鎖のC末端に融合したPD1 crossFab)、他方のCH1/CL界面に帯電したアミノ酸置換を有する、多重特異性抗体の製造及び発現。
【0501】
この例では、ヒトPD1及びヒトTIM3に結合する多重特異性抗体は、従来の分子生物学技術による一般的な方法の章に記載されるように作成され、上述のExpi293F細胞の293Fにおいて、一時的に発現した。多重特異性2+1CrossMAbCH1/Ck抗体は、WO2013/026831号にも記載される。多重特異性抗体は、表16に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。2+1CrossMAbCH1/Ck二重特異性抗体の模式的な構造を図1Bに示す。
又は、Fcノブ重鎖のC末端に融合したPD1 crossFabが、一本鎖Fab(scFab)によって置き換わっていてもよい。このようなscFabを含む多重特異性2+1抗体は、WO2010/136172号にも記載されており、表17に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。Fcノブ重鎖のC末端に融合したscFabを有する2+1二重特異性抗体の模式的な構造を図1Cに示す。
10.4 PD1及びLAG3に結合し、重鎖のC末端にそれぞれ融合したVH/VLを有する、多重特異性抗体(2+1PRITフォーマット)の製造及び発現。
【0502】
この例では、ヒトPD1及びヒトTIM3に結合する多重特異性抗体は、従来の分子生物学技術による一般的な方法の章に記載されるように作成され、上述のExpi293F細胞の293Fにおいて、一時的に発現した。この種の多重特異性2+1抗体は、WO 2010/115589号にも記載されている。多重特異性抗体は、表18に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。2+1 PRIT型二重特異性抗体の模式的な構造を図1Dに示す。
10.5 PD1及びLAG3に結合し、VH/VLドメイン交換/置き換え(1+1CrossMabVH/VLtransフォーマット)を1つの結合アームに有し、帯電したアミノ酸置換をFcホール重鎖のC末端に融合するLAG3 FabのCH1/CL界面に有する、多重特異性抗体の製造及び発現。
【0503】
ヒトPD1及びヒトLAG3の両方に結合する多重特異性抗体が製造され、LAG3 Fabは、重鎖の1つ、好ましくは、Fcホール重鎖のC末端に、その可変重鎖ドメインを介して融合する。この分子は、従来の分子生物学技術による一般的な方法の章に記載されるように作成され、上述のExpi293F細胞の293Fにおいて、一時的に発現した。多重特異性抗体は、表19に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。1+1CrossMAbVH/VLtrans型二重特異性抗体の模式的な構造を図1Hに示す。
10.6 PD1及びLAG3に結合し、VH/VLドメイン交換/置き換え(2+1CrossMabVH/VLtransフォーマット)を1つの結合アームに有し、帯電したアミノ酸置換を2つのLAG3 FabのCH1/CL界面に有し、その1つが、Fcホール重鎖のC末端に融合する、多重特異性抗体の製造及び発現。
【0504】
ヒトPD1に一価で結合し、ヒトLAG3に二価で結合する多重特異性抗体が製造され、LAG3 Fabは、重鎖の1つ、好ましくは、Fcホール重鎖のC末端に、その可変重鎖ドメインを介して融合する。この分子は、従来の分子生物学技術による一般的な方法の章に記載されるように作成され、上述のExpi293F細胞の293Fにおいて、一時的に発現した。多重特異性抗体は、表20に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現プラスミドを用いて発現した。2+1CrossMAbVH/VLtrans型二重特異性抗体の模式的な構造を図1Iに示す。
10.7 PD1及びTIM3に結合する多重特異性抗体の精製及び特性決定
上のように発現した多重特異性抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせによって、上清から精製した。全ての多重特異性抗体は、良好な収率で製造することができ、安定である。得られた生成物を、質量分析法によって属性について特性決定し、SDS-PAGEによって純度、モノマー含有量及び安定性などの分析特性を特性決定した。
【0505】
質量分析法
予想される一次構造を、脱グリコシル化したインタクトなCrossMabs及び脱グリコシル化した/消化したプラスミン、又は脱グリコシル化した/制限されたLysC消化したCrossMabのエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)によって分析した。
【0506】
CH1/Ck CrossMabsを、リン酸バッファー又はTrisバッファー中、タンパク質濃度1mg/mlで、37℃で17時間までの時間、N-グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化した。プラスミン又は制限されたLysC(Roche)消化を、100μgの脱グリコシル化したCH1/Ck CrossMabを用い、Trisバッファー(pH8)中、それぞれ、室温で120時間、また、37℃で40分間行った。質量分析の前に、サンプルを、Sephadex G25カラム(GE Healthcare)でのHPLCによって脱塩した。合計質量は、TriVersa NanoMate source(Advion)が取り付けられたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)でのESI-MSによって決定された。
【0507】
多重特異性抗体の安定性
抗体構築物の安定性を評価するために、熱安定性及び凝集開始温度を、以下の手順に従って評価する。指定の抗体のサンプルを、濃度1mg/mLで、20mMのヒスチジン/塩化ヒスチジン、140mMのNaCl(pH6.0)中で調製し、10μLのマイクロキュベットアレイに移し、サンプルを0.1℃/分の速度で25℃から90℃まで加熱しつつ、266nmレーザで励起させたときの静的光散乱データ及び蛍光データを、Optim1000装置(Avacta Inc.)で記録した。
【0508】
凝集開始温度(Tagg)は、散乱光強度が増加し始める温度であると定義される。融点(T)は、蛍光強度対波長のグラフの変曲点として定義される。
【0509】
実施例11
二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の特性決定
11.1 結合Elisa
hu PD1のELISA
Nunc maxisorpストレプトアビジンでコーティングしたプレート(MicroCoat番号11974998001)を、25μl/ウェルのビオチン化PD1-ECD-AviHisで、濃度500ng/mlでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗PD1抗体サンプルを、濃度を増加させつつ加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR,JIR109-036-098)を、1:5000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、11835033001)を加え、OD2-3になるまでインキュベートした。測定を370/492nmで行った。
【0510】
ヒトPD1の細胞ELISA
接着性CHO-K1細胞株は、全長ヒトPD1をコードするプラスミド15311_hPD1-fl_pUC_Neoを用いて安定にトランスフェクションされ、G418を用いた選択(プラスミドでのネオマイシン耐性マーカー)を、384ウェル平底プレート中、濃度0.01x10E6細胞/ウェルで接種し、一晩成長させた。
【0511】
次の日、25μl/ウェルのPD1サンプル又はヒト抗PD1(Roche)/マウス抗PD1(Biolegend;カタログ番号:329912)参照抗体を加え、4℃で2時間インキュベートした(インターナリゼーションを避けるため)。注意深く洗浄した後(1x90μl/ウェル PBST)、30μl/ウェルの0.05%グルタルアルデヒド(Sigma、カタログ番号G5882、25%)を1xPBSバッファーに希釈したものを加えることによってセルを固定し、RTで10分間インキュベートした。洗浄した後(3x90μl/ウェル PBST)、25μl/ウェルの二次抗体ヤギ-抗ヒトH+L-POD(JIR、JIR109-036-088)/ヒツジ-抗マウス-POD(GE NA9310)を検出のために加え、その後、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(3x90μl/ウェル PBST)、25μl/ウェルのTMB基質溶液(Roche 11835033001)を加え、OD1.0-2.0になるまでインキュベートした。プレートを370/492nmで測定した。
【0512】
細胞ELISAの結果は、以下の表21に、「EC50CHO-PD1」値[nM]として列挙している。
【0513】
ヒトLag3のELISA
Nunc maxisorpプレート(Nunc 464718)を、25μl/ウェルの組換えヒトLAG-3 Fcキメラタンパク質(R&D Systems、2319-L3)を用い、タンパク質濃度800ng/mlでコーティングし、4℃で一晩、又は室温で1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、各ウェルを、90μlのブロッキングバッファー(PBS+2% BSA+0.05% Tween 20)と共に、室温で1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μlの抗Lag3サンプルを濃度1~9μg/ml(OSEPバッファー中1:3希釈)で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ抗ヒトIg κ鎖抗HRP抱合体(Milipore、AP502P)を1:2000希釈状態で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、番号11835033001)を加え、2~10分間インキュベートした。測定をTecan Safire 2装置で、370/492nmで行った。
【0514】
細胞表面Lag3結合ELISA
25μl/ウェルのLag3細胞(Lag3を発現する組換えCHO細胞、10000細胞/ウェル)を、組織培養処理された384ウェルプレート(Corning、3701)に接種し、37℃で1日間又は2日間インキュベートした。培地を除去した次の日、25μlの抗Lag3サンプル(OSEPバッファー中1:3希釈、6~40nMの濃度で開始)を加え、4℃で2時間インキュベートした。洗浄した後(PBST中で1x90μl)、30μl/ウェルのグルタルアルデヒドを、最終濃度0.05%(Sigmaカタログ番号G5882)に室温で10分間添加することによって、細胞を固定した。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのヤギ抗ヒトIg κ鎖抗HRP抱合体(Milipore、AP502P)を1:1000希釈状態で加え、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、番号11835033001)を加え、6~10分間インキュベートした。測定をTecan Safire 2装置で、370/492nmで行った。細胞ELISAの結果は、以下の表21に、「EC50CHO-LAG3」値[nM]として列挙している。
【0515】
ヒトA375腫瘍細胞で発現するMHC-IIに対するLAG-3結合の阻害(ELISAによる)
25μl/ウェルのA375細胞(10000細胞/ウェル)を、組織培地で処理した384ウェルプレート(Corning、3701)に接種し、37℃で一晩インキュベートした。抗Lag3抗体を、3μg/mlの抗体濃度で出発して、1:3の希釈律で、細胞培地中、ビオチン化Lag3(250ng/ml)を用い、1時間かけてプレインキュベートした。接種した細胞を含むウェルから培地を取り出した後、25μlの抗体Lag3プレインキュベート混合物をウェルに移し、4℃で2時間インキュベートした。洗浄した後(PBST中で1x90μl)、30μl/ウェルのグルタルアルデヒドを、最終濃度0.05%(Sigmaカタログ番号G5882)に室温で10分間添加することによって、細胞を固定した。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのポリ-HRP40-ストレプトアビジン(Fitzgerald、65R-S104PHRPx)を1:2000又は1:8000希釈状態で添加し、シェーカー上で、RTで1時間インキュベートした。洗浄した後(PBSTバッファーを用いて3x90μl/ウェル)、25μl/ウェルのTMB基質(Roche、11835033001)を加え、2~10分間インキュベートした。測定をTecan Safire 2装置で、370/492nmで行った。阻害ELISAの結果は、以下の表21に、「IC50MHCII/ELISA」値[nM]として列挙している。
11.2 結合Biacore
PD1及びLAG3に結合する多重特異性抗体の抗原結合特性
多重特異性抗体のそれぞれの標的抗原(すなわち、PD1及びTIM3)に対する結合をBiacore(登録商標)によって評価した。
【0516】
PD1結合は、以下の手順に従って評価することができる。
【0517】
抗ヒト Fc IgGは、アミンカップリングによって、(Biacore)CM5センサチップの表面に固定された。次いで、サンプルを捕捉し、hu PD1-ECDをサンプルに結合させた。各分析サイクルの後、センサチップ表面を再生した。平衡定数及び動的速度定数は、このデータを1:1ラングミュアー相互作用モデルにフィッティングすることによって、最終的に得た。
【0518】
約10,000応答単位(RU)の20μg/mlの抗ヒトIgG(GE Healthcare 番号BR-1008-39)を、GE Healthcareによって供給されるアミンカップリングキットを用い、Biacore T200中のCM5 センサチップの全てのフローセルに連結した。サンプル及びランニングバッファーは、HBS-EP+(0.01M HEPES、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%(v/v)界面活性剤P20、pH7.4)であった。フローセル温度を25℃に設定し、サンプルコンパートメント温度を12℃に設定した。このシステムを、ランニングバッファーを用いて準備した。
【0519】
異なるサンプルを濃度10nMで15秒間注入し、フローセル2、3及び4に連続して結合させた。次いで、ヒトPD1-ECD濃度の完全なセット(300nM、100nM、2×33.3nM、11.1nM、3.7nM、1.2nM及び2×0nM)を、各サンプルに300秒間注入し、その後、10/600秒の解離時間と、3M MgClを用いた2つの30秒の再生工程を行い、その中で、最後の1つは、ランニングバッファーを含む「注入後の余分の洗浄」を含んでいた。最後に、二重リファレンスを使用したデータを、Biacore T200 Evaluationソフトウェアを用い、1:1のLangmuir相互作用モデルにフィッティングした。
【0520】
LAG3結合は、以下の手順に従って評価した。
【0521】
GE Healthcareによって提供されるBiacore SA CAP Kitを使用し、このアッセイを行った。速度値を、HBS-EP+(Ge Healthcare)バッファー中、25℃で得た。
【0522】
SA CAP Chipを、CAP Kitのマニュアルに示されているとおり、Biacore T200に取り付けた。この実行方法は、4つの命令を含んでいる。第1に、CAP試薬を10μl/分の流速で300秒間注入し、「一般的な」命令を用い、固定された一本鎖DNAをハイブリダイズした。この命令は、その後に、ランニングバッファー中の1μg/mlのビオチン化Fcタグ化ヒトLag3細胞外ドメインの希釈の15秒の長さの注入がある。この結果、捕捉レベルは約50RUである。シングルサイクル命令を使用し、5種類の異なるサンプル濃度(100nM~6.25nM、2倍希釈)を注入し、その後、1200秒の長さの解離段階を行った。次いで、チップを、SA CAP Kitマニュアルに記載されるように再生した。
【0523】
最後に、得られた曲線を、Biacore T200 Evaluationソフトウェアバージョン3.0を用いて評価した。
【0524】
結果:この相互作用は、1:1のLangmuir結合モデルにはフィッティングしなかった。0799及び0927以外の全てのサンプルが、2つのLag3結合部分を有し、そのため、親和性を示すからである。0799及び0927は、小さな誤って対形成した二価サンプル集合を含んでおり、これらはある程度の親和性も示した。
【0525】
したがって、センサグラムは、そのオフレートのみに従ってランク分けされた。これは、単一サイクルの速度曲線の視覚的な比較によって行われた。これを行うことによって、0416-Lag3 ECD複合体は、このサンプルセット中の他のものよりも安定であることが示された。一価<Lag3>Crossmabフォーマット(0799)も、この実験の他のサンプルよりも遅いオフレートを示す。
【0526】
更に、この実験で観察したものの中で、アフィンLag3-0414/Lag3-0927-Lag3 ECD複合体が、これらの中で最も弱いことがわかった。0414及び0416のアフィン結合部分は、これらの一価CrossMabの相手方である0927及び0799のアフィン部分におおよそ匹敵している。結果を表22に示す。
形質変換体の親和性評価を、1+1二重特異性抗体0927及び0799と比較した。
【0527】
二重特異性分子(サンプル)及びその個々の標的と、PD1とLAG3の組み合わせ(検体)との解離定数を決定し、同時に全ての価数を有する結合によって与えられる親和性の増加を評価した。
【0528】
Biacore 8Kでの測定の前に、CM5センサチップを、GE Healthcareによって与えられる標準的なアミンカップリングキットを用いて調製した。サンプルのFc部分における特異的な変異(すなわち、PGLALA変異を保有するFc部分)に対して指向する社内で製造した抗体は、ここでは、抗PGLALA抗体と呼ばれ(このような抗体は、WO 2017/072210号に記載される)は、酢酸バッファー(pH5.0)中、濃度50μg/mlになるまで希釈した。これを全てのフローセル及びチャンネルに流速8μl/分で1200秒かけて連結し、約19000RUの結合応答を得た。
【0529】
HBS-EPバッファー(GE HC)を、センサチップ調製及び主要な実施のランニングバッファーとして使用した。17秒の長さのサンプル注入、その後、10mMのNaOH溶液を利用する再生工程からなるスタートアップ後、分析を開始した。第1の工程において、異なるサンプルを、流速10μl/分で17秒間注入することによって、センサチップ表面にある個々のチャンネルのフローセル2上の抗PGLALA抗体によって捕捉した。第2に、3種類の検体の1つ(PD1、LAG3-Fc、2+2 PD1/LAG3-Fc融合物)を、両方のフローセルに流速50μl/分で200秒間注入し、その後、1000秒の長さ(LAG3-Fcの場合には600秒)の解離段階を行った。最後に、抗PGLALA抗体/サンプル複合体は、10mMのNaOHの2回の連続した注入(長さ30秒間)によって溶解した。それぞれの個々の速度決定因子は、異なる検体濃度を用いた4サイクルからなっていた(0nM、5nM、25nM及び100nM)。
【0530】
得られたデータを、Biacore 8K Evaluation Softwareを用いて評価した。1:1解離フィッティングを適用し、得られたkd値を、分単位で複合体の半減期に変換した。PD1/Lag3-Fc融合抗原結合分子とその主な個々の寄与因子(PD1又はLag3のいずれか)の親和性結合間の差が計算され、多価二重特異性抗体による安定性の増加を記述する3つのカテゴリーの1つに選別された(表23)。
11.3 二重特異性抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の同時係合の後の細胞PD1及びLAG3の二量体化。
【0531】
二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体を、実施例10に記載したように、種々のフォーマットで作成した。2種類の異なる受容体の二量体化又は最後の結合/相互作用を示すために、この細胞アッセイを使用し、これらの受容体は、両標的に対して二重特異性抗体を用いて切断するか、又は架橋する際に、酵素の2つのフラグメントと細胞質融合する。ここで、唯一1つの受容体のみが、酵素活性を示さない。この特異的な相互作用について、両受容体の細胞質ゾルC末端は、個々に、レポーター酵素の異種サブユニットに融合する。1つの酵素サブユニットのみがレポーター活性を示さなかった。しかし、両受容体に対する抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の同時結合は、両受容体の局所的な細胞蓄積、2種類の異種酵素サブユニットの相補性を引き起こし、最終的に、基質を加水分解し、それによって、化学発光シグナルを生成する特異的で機能的な酵素が生成すると予想される。
【0532】
二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の架橋効果を分析するために、10,000 PD1LAG3ヒトU2OS細胞/ウェルを、白い平底96ウェルプレート(costar、カタログ番号3917番)に接種し、アッセイ培地中、一晩培養した。次の日に、細胞培地を捨て、新しい培地と交換した。抗体又はリガンド希釈物を調製し、滴定量の指定の(二重特異性)抗体を加え、37℃で2時間インキュベートした。次いで、基質/バッファーミックス(例えば、PathHunterFlash検出試薬)を加え、再び1時間インキュベートした。同時結合及び二量体化の際に誘発される化学発光を測定するために、Tecanインフィニットリーダーを使用した。
【0533】
結果を図5A及び5Bに示す。抗体濃度に対し、化学発光(RUで測定)がプロットされる。単一特異性(二価)抗LAG3抗体は、化学発光シグナルを誘発することはできなかったが、一方、全ての二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体は、濃度に依存する様式で、化学発光シグナルを誘発した。
【0534】
同時結合(及び発光シグナルの誘発)の特異性を示すために、競争実験を行った。既に示したように、二重特異性抗体(1252)を用いた処置は、用量に依存する様式で発光シグナルを誘発した(図5C)。同じ二重特異性抗体が、aLAG3抗体(0156、MDX25F7)又は抗PD1抗体(0376)のいずれかの存在下で与えられる場合、シグナルは、ほとんど阻害された(PD1競争の場合)か、又は少なくとも顕著に低下した(LAG3)。両方の親抗体は、二重特異性抗体(1252、2+1 LAG3/PD1-フォーマット)に含まれるのと同じバインダーである。競争する抗体は、それぞれ20μg/mlの一定濃度で与えられた。
【0535】
更なる実験の結果を図5Dに示す。以前の競争実験と同様に、親aLAG3(0156)又はPD1抗体(0376、それぞれ、10μg/mlで一定)を用いたインキュベートは、発光シグナルによって測定される場合、PD1 Lag3二重発現細胞に対する二重特異性抗体(1252、二重特異性aLAG3-0156及びPD1-0376の2+1フォーマット)の結合特性に影響を与えた。抗PD1抗体(0376)と、また、組換えLAG3:Fcタンパク質(0160)との競争は、シグナルをほとんど無効化し、一方、単一のaLAG3バインダー(0156)のみが存在すると、部分的な阻害のみが起こる。2つの更なる抗LAG3抗体0414及び0416は、0156以外の異なるエピトープに結合しており、これらはシグナルを有意に調整しなかったため、aLAG3バインダーを含む二重特異性抗体(0156)との結合と競争しなかった。
【0536】
更なる実験では、異なるaLAG3バインダー(0414対0416)及び異なるフォーマット(1+1対2+1)を含む二重特異性抗LAG3/抗PD1抗体の同時結合を比較した(図6A~6D)。既に記載したとおり、いくつかの抗LAG3/抗PD1二重特異性抗体を、1+1 CrossMabフォーマット(0799及び0927)又は2+1フォーマット(2つのLag3結合アームと1つのPD1 crossFabフラグメントが融合したC末端:8311及び8310)のいずれかで試験した。図6A及び図6Bにおいて、バインダーaLAG3-0416を有する構築物についての曲線(吸光度対濃度)が、図6C及び図6Dにおいて、aLAG4-0414を有する対応する構築物についての曲線が示される。試験した全ての構築物は、細胞に結合し、化学発光を誘発することができた。結合曲線について計算したEC50値を以下の表24に示す。
別の実験では、異なるaLAG3バインダー(0414対0416)及び異なるフォーマット(2+1対2+2)を含む二重特異性抗LAG3/抗PD1抗体の同時結合を比較した(図7A~7D)。抗LAG3/抗PD1二重特異性抗体を、2+1フォーマット(2つのLAG3結合アームと1つのPD1 crossFabフラグメントが融合したC末端:8311及び8310)又は2+2 crossmabフォーマット(2つのLAG3結合アームと2つのPD1 crossFabフラグメントが融合したC末端:8970及び8984)のいずれかで試験した。図7A及び図7Bにおいて、バインダーaLAG3-0414を有する構築物についての曲線(吸光度対濃度)が、図7C及び図7Dにおいて、aLAG4-0416を有する対応する構築物についての曲線が示される。試験した全ての構築物は、細胞に結合し、化学発光を誘発することができた。結合曲線について計算したEC50値を以下の表25に示す。
更なる実験では、伝統的な1+1CrossMAbVh-VLフォーマットにおける二重特異性抗LAG3/抗PD1抗体PD1/LAG3 0927の同時結合を、1+1 transフォーマット(PD1/LAG3 0725)及び2+1 transフォーマット(PD1/LAG3 0750)における二重特異性抗LAG3/抗PD1抗体と比較した。この実験のために、この方法に対し、以下の変更を適用した。異なる抗LAG3/抗PD1抗体フォーマットの架橋効果を分析するために、7500 PD1LAG3ヒトU2OS細胞/ウェルを、白色平底96ウェルプレートに、非段階希釈の抗体(最終濃度が0.29pM~5484pM)と共に接種し、COインキュベータ中、37℃で20時間インキュベートした。次に、アッセイプレートを、室温まで平衡状態にし、基質/バッファーミックス(PathHunterFlash検出試薬、Discoverx)を加え、再び4時間インキュベートした。同時結合及び二量体化の際に誘発される化学発光を測定するために、SpectraMax Lプレートリーダー(Molecular Devices)を使用した。
【0537】
図7Eにおいて、PD1-LAG3二重特異性抗体1+1 CrossMab(0927)、N末端にaPD1を有し、C末端にaLAG3を有する1+1 trans CrossMab(0725)及びN末端にaPD1を有し、N末端とC末端にaLAG3を有する2+1 trans CrossMab(0750)の用量応答曲線(発光対濃度)を示している。PD1/LAG3 0927と比較し、PD1/LAG3 0725のPD1 LAG3受容体架橋効果は、明確に高く、一方、PD1/LAG3 0750については、わずかに低い。
【0538】
11.4 PD-1及びLAG-3コンボレポーターアッセイにおける二重特異性抗LAG3/抗PD1 trans CrossMabバリアントの測定。
【0539】
in vitroで、抑制されたT細胞応答を回復する際に、異なる抗PD1-LAG3抗体フォーマットの中和能力を調べるために、市販のレポーターシステムを使用した。PD1及びLAG3コンボバイオアッセイは、PD1、LAG3及びT細胞受容体(TCR)を発現するレポーター細胞、MHC-II及びPDL1を発現する腫瘍細胞及びTCRを活性化する抗原からなる。
【0540】
エフェクター細胞は、NFAT応答要素(NFAT-RE)によって促進されるヒトPD1、ヒトLAG3、ヒトTCR及びルシフェラーゼレポーターを発現するJurkat T細胞である。標的細胞は、ヒトPD-L1を発現するA375細胞である。簡単に言うと、このレポーター系は、以下の3つの工程に基づく。(1)TCRを活性化する抗原によって誘発されるNFAT細胞活性化、(2)MHCII(A375細胞)及びLAG3(JurkaT細胞)と、PD-L1(A375細胞)及びPD1(JurkaT細胞)との間の相互作用によって介在される、活性化シグナルの阻害、(3)PD1及びLAG3アンタゴニスト/中和抗体によるNFAT活性化シグナルの回復。
【0541】
この実験のために、ウェルあたり1×10A375標的細胞を、96ウェル平底アッセイプレート中、TCR活性化抗原(Promega)と共に、COインキュベータ中、37℃で一晩インキュベートした。次に、プレートから培地を取り出し、段階希釈(最終アッセイ濃度が0.01nMから857nMまで)の抗LAG3/抗PD1抗体及びウェルあたり5×10Jurkatエフェクター細胞を加えた。COインキュベータ中、37℃で6時間インキュベートした後、アッセイプレートを室温まで平衡状態にし、80μlのONE-Glo Ex基質(Promega)を各ウェルに加えた。10分間インキュベートした後、発光をSpectraMax Lプレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。両受容体に対する抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体の同時結合は、両受容体の局所的な細胞蓄積、2種類の異種酵素サブユニットの相補性を引き起こし、最終的に、基質を加水分解し、それによって、化学発光シグナルを生成する特異的で機能的な酵素が生成すると予想される。図7Fにおいて、抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体1+1 CrossMab(0927)、N末端にaPD1を有し、C末端にaLAG3を有する1+1 trans CrossMab(0725)及びN末端にaPD1を有し、N末端とC末端にaLAG3を有する2+1 trans CrossMab(0750)の用量応答曲線(発光対濃度)を示している。0927及び0725が、PD1及びLAG3のそれぞれのリガンドとの相互作用をブロックすることによって、レポーター細胞活性化を回復させる能力は、匹敵するものであり、一方、0750については、高い。これは、表26に列挙されるEC50値によって更に示される。
実施例12
二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体の機能特性決定
12.1 T細胞表面に結合したときのインターナリゼーションの低下
フローサイトメトリーによる受容体インターナリゼーションの測定
受容体インターナリゼーションは、標的受容体がTCRシグナル伝達を阻害する準備ができた細胞表面で迅速に再発現しつつ、数時間以内に分解し得る分子の重要なシンクを表す。したがって、フローサイトメトリーによって、構築物が結合した際の受容体インターナリゼーションを評価し、4℃で異なる二重特異性抗体で染色したサンプルを、4℃で染色した後に37℃で3時間インキュベートしたサンプルと比較するためのリファレンスとして使用した。
【0542】
3日間、ポリクローナル的に活性化されたCD4 T細胞は、すでに1μg/mlのプレートに結合した抗CD3及び1μg/mlの可溶性抗CD28抗体と共に培養されており、抗LAG3又は抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体のいずれか存在下で(2個ずつ)、4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、2つの群に分け、1つは、37℃で更に3時間インキュベートし、他方は、BD Cell Fixで固定する前に、標識された二次抗体(eBioscience)ですぐに染色した。3時間インキュベートした後、第2群の細胞も、固定前に、標識された二次抗体で染色した。染色後、集める前に、細胞をPBS/2%FCSで2回洗浄した。
【0543】
細胞をLSRFortessa(BD Biosciences)で獲得し、細胞表面の検出可能な抗体の発現レベルを、2群間で比較した。結果を図8Bに示す。3時間後、全ての二重特異性フォーマット及び単一特異性二価aLAG-3抗体がインターナリゼーションされていたが、1+1フォーマット(PD1/LAG3 0799及びPD1/LAG3 0927)の二重特異性抗PD1/抗LAG3抗体は、最もインターナリゼーションされていなかったことを観察した。
【0544】
蛍光共焦点顕微鏡による、抗体の局在化及びインターナリゼーションの視覚化。
【0545】
活性化されたCD4陽性細胞をCMFDA(Invitrogen)で染色し、Retronectin(Takara Bio)で処理された丸いカバースリップの上に置いた。細胞を37℃で4時間かけて接着させた後、蛍光タグ化抗体(1μg/mL:a-LAG3(1256)、1+1 PD1/LAG3二重特異性抗体(0927)、PD1-LAG3 1+2二重特異性抗体(8310)及びAlexa 647で標識されたPD1-LAG3 2+2二重特異性抗体(8970))を、異なる時間(15分、1時間及び3時間)、成長培地に直接加えた。冷PBS(Lonza)を使用して反応を停止させ、未結合抗体を洗い流した。次いで、細胞を、Cytofix(BD)を用いて4℃で20分間固定し、PBS(Lonza)で2回洗浄した。次いで、カバースリップを移し、Fluoromount G(eBioscience)を用いてガラススライドに取り付け、イメージングの前に、暗状態で、4℃で一晩保持した。(A)蛍光画像を図9Aに示す。白色シグナルは、標識された抗体の局在化を表す。(B)高度に標的化された細胞の膜ROIからの蛍光シグナルの強度を、同じ細胞の細胞質ROIからの蛍光シグナルの強度によって割り算し、Box Chartに示される比率を得た。サンプルを比較するために、一元配置ANOVA分析の未修正のFisher LSDを使用した(*=p<0.05;**=p<0.01)。結果を図9Bに示す。経時間分析は、TIM3抗体(コントロールとして使用される)の細胞内クラスター化と比較すると、二重特異性抗体及びLAG3抗体において、より高度に膜局在化していることを示す。3時間後、全ての二重特異性フォーマット及び単一特異性二価aLAG-3抗体が、唯一の例外である1+1 PD1/LAG3二重特異性抗体(0927)を除き、インターナリゼーションされていることを観察した(図9A)。
【0546】
Zeiss製の倒立LSM 700に60倍の油浸対物レンズを取り付け、蛍光共焦点顕微鏡法を実施した。画像は、顕微鏡に連結したZenソフトウェア(Zeiss)を用いて集めた。画像の分析を、Imaris Software(Bitplane;Oxford Instrument)を用いて行い、統計分析を、GraphPad Prism(Graphpad Software)によって行った。
【0547】
12.2 Tregと比較した、従来のT細胞に対する結合
リードPD1-LAG3 BsAbの所望な特性は、Treg上のLAG3は、その抑制機能を負に制御するようであるため、Tregよりも従来のT細胞に対して優先的に結合する能力である。したがって、ブロッキング抗体を用いたTreg上のLAG3の標的化は、その抑制機能を増加させ、最終的に他のT細胞に対する正のブロッキング効果を覆い隠すことによって悪化し得る。したがって、一緒に培養した、活性化された従来の制御T細胞に対する、異なる抗PD1/抗LAG3二重特異性抗体フォーマットの競争結合を評価した。
【0548】
制御T細胞(Treg)及び従来のT細胞(Tconv)を、健康なドナーPBMC(Miltenyi)から選別し、5mM CellTraceViolet又はCFSE膜染料でそれぞれ標識し、1:1の比率で、1μg/mlのプレートに結合した抗CD3及び1μg/mlの可溶性抗CD28抗体と共に3日間培養した。3日目に、BD Cell Fixで固定され、LSRFortessa(BD Biosciences)で獲得された、直接的に標識された抗PD1、抗LAG3又は二重特異性抗体と共に、細胞を4℃で30分間インキュベートした。
【0549】
単一特異性抗LAG3親抗体は、Treg及び従来のT細胞に等しく十分に結合するが(図10A)、抗PD1の相当物は、Tregに対するよりも、エフェクターT細胞上でPD1の発現レベルが高いため、従来のT細胞に優先的に結合する(図10B)。興味深いことに、1+1フォーマットのPD1/LAG3二重特異性抗体(0927)も、Tregに対するよりも、従来のT細胞に対して優先的に結合する能力を保持していた(図10C)。この従来のT細胞に対する優先的な結合は、Tregに対するシグナルに対し、従来のT細胞に対するシグナルの差(Δ)を示すことによっても、視覚化することができる(図10D)。2+1及び2+2フォーマットは、エフェクターT細胞に対する親和性による選択性を示さず、単一特異性抗LAG3抗体に対する結合に匹敵するものである。
【0550】
12.3 照射された同種異系PBMCと共に培養されたヒトCD4 T細胞によるグランザイムBのTreg抑制及びIFN-γ放出に対する、PD-1及びLAG-3ブロックの効果。
【0551】
二重特異性抗体フォーマットの結合特性の差が、TregよりもTconvに対して機能的な利点を与えるかどうかを更に試験した。制御性T細胞(Treg)抑制アッセイに関与する機能的試験では、マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec)によって、2つのサンプルに分けた同じドナー由来のPBMC(1つはCD4 T細胞に豊富に含まれており、他方はTregに豊富に含まれている)は、CD4CD25CD127T細胞として定義される。2種類の集合を精製したら、CD4 T細胞を5μMのカルボキシ-フルオレセイン-スクシンイミジルエステル(CFSE)で標識し、一方、Tregは、FACSで後で区別することができるように、5μMの細胞-トレース-バイオレット(CTV)で標識した。
【0552】
次いで、CD4 T細胞(10)及びTreg(10)を、96ウェルプレート中、1:1の比率で無関係なドナー由来の照射されたPBMC(10)と一緒に、本願発明者らの抗LAG3抗体(リード0414及びバックアップ0416)又は競争相手である抗LAG3抗体(BMS-986016及びヒト化BAP050)の存在下又は非存在下、本願発明者らの抗PD1抗体と濃度10μg/mlで組み合わせて、培養した。TregによるCD4 T細胞エフェクター機能の抑制の大きさを概算するためのコントロールとして、CD4 T細胞(10)を、Treg非存在下、照射されたPBMC(10)と共に培養した。
【0553】
5日後、細胞培養上清を集め、これを後で使用し、ELISA(R&D systems)によりIFN-γレベルを測定し、Golgi Plug(Brefeldin A)及びGolgi Stop(Monensin)の存在下、細胞を37℃で更に5時間放置した。次いで、細胞を染色し、その表面を、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead fixable dye Aqua(Invitrogen)で染色した後、Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。細胞内染色は、Granzyme B(BD Bioscience)及びIFNγ(eBioscience)について実施した。結果を図11に示す。
【0554】
本願発明者らのPD1/LAG-3二重特異性抗体(0927)は、親抗PD1抗体又はペンブロリズマブのみ存在下(P<0.05)、又はチェックポイント阻害剤非存在下(P<0.001)、Tconvよりも有意に多い量のグランザイムBの分泌によって示されるように、制御T細胞の密な制御からTconvを守ることが誘発された。ニボルマブと組み合わせた競争相手抗LAG3抗体BMS-986016は、Treg抑制からTconvエフェクター機能を顕著に守らなかった。
【0555】
12.4 B細胞リンパ芽球様細胞株(ARH77)と共に培養されたヒトCD4 T細胞による細胞毒性グランザイムB放出に対する、PD-1/LAG-3二重特異性抗体の効果。
【0556】
腫瘍細胞株ARH77と一緒に培養される場合、抗PD-1及び抗LAG-3親抗体の組み合わせと比較して、また、治療標準で使用される抗PD1抗体と比較して、本願発明者らの異なる二重特異性抗体フォーマットが、CD4 T細胞によるグランザイムB分泌を誘発する能力を評価した。
【0557】
合計で6フォーマットを試験し、3フォーマットは、抗PD1(0376)及び抗LAG3(hu 1256、chi 0414)抗体から作られ、3つの更なるフォーマットは、抗PD1(0376)及び抗LAG-3(hu1257、chi 0416)抗体から作られていた。
【0558】
図13からわかるだろうが、抗LAG3(IgG1 PGLALAとしてのhu 1256、抗LAG3 0414)及び抗PD1(0376)、及び親抗体の組み合わせから作られる2つの二重特異性フォーマットである1+1(0927)及び2+2(8970)は、未処理のCD4 T細胞と比較すると、CD4 T細胞によるグランザイムBの分泌を有意に高めた(それぞれ、P=0.0005、P=0.01及びP=0.0001)。対応する2+1フォーマット(8310)は、同様の傾向を示したが、統計的有意性には達しなかった(P=0.07)。
【0559】
抗LAG-3(IgG1 PGLALAとしてのhu 1257、抗LAG3 0416)と、抗PD1(0376)とを合わせることによって作られた二重特異性抗体に関し、1+1フォーマット(0799)及び2+2(8984)は、未処理のCD4細胞と比較したとき、グランザイムB陽性CD4 T細胞の数を有意に増やした(それぞれ、P=0.0032及びP=0.0064)。
【0560】
ニボルマブもペンブロリズマブも、チェックポイント阻害剤非存在下で培養した細胞と比較すると、CD4 T細胞による、より多くのグランザイムB分泌を有意に促進しなかった。(図13。)
12.5 免疫原性黒色腫抗原ペプチドプールを用いて回収した後の黒色腫患者PBMC由来のCD4 T細胞によるグランザイムB及びIFN-γ分泌に対するPD-1及びLAG-3ブロックの効果。
【0561】
黒色腫患者PBMCが、検出可能な数の腫瘍抗原に特異的なT細胞を含むことは既に記載されている。したがって、概念の証明のために、抗LAG-3抗体(0414)及び抗PD-1(0376)の組み合わせと、1+1(0927)フォーマットでの誘導される二重特異性抗体又は抗PD-1単独を、免疫原性黒色腫に関連する抗原ペプチドプールを用いて一晩再刺激した黒色腫患者PBMCについて試験した。
【0562】
飽和濃度(10μg/ml)の抗PD-1のみ(0376)存在下又は非存在下、抗LAG-3(0414、10μg/ml)抗体と組み合わせて、又は二重特異性1+1フォーマット(0927、20μg/ml)抗体として、室温でインキュベートした黒色腫患者由来の10~10PBMC。次いで、MAGEA1、MAGEA3、MAGEA4、Melan-A/MART-1、NYESO-1、メラニン細胞タンパク質Pmel 17 gp100、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質2などの免疫原性腫瘍関連抗原のプールを用い、タンパク質輸送阻害剤Golgi Plug(ブレフェルジンA)及びGolgi Stop(モネンシン)存在下、T細胞を、一晩かけて再刺激した。
【0563】
次いで、細胞を染色し、その表面を、抗ヒトCD4抗体及びLive/Dead fixable dye Aqua(Invitrogen)で染色した後、Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。細胞内染色は、グランザイムB(BD Bioscience)及びIFN-γ(eBioscience)について実施した。
【0564】
抗LAG-3及び抗PD-1抗体の組み合わせ(P<0.01及びP<0.001)と、二重特異性抗体は、両方とも、有意に(P<0.01及びP<0.0001)、腫瘍抗原特異的なT細胞エフェクター機能(すなわち、グランザイムB及びIFN-γ分泌)を高め、一方、PD-1ブロックのみだと、効果を示さなかった(図12)。
【0565】
実施例13
PD1/LAG3二重特異性抗体とCEACAM5 CD3 TCBのin vivoでの併用療法による、強力な抗腫瘍効果。
【0566】
TCB分子は、WO 2014/131712 A1号又はWO 2016/079076 A1号に記載される方法に従って調製された。この実験で使用される抗CEA/抗CD3二重特異性抗体(CEA CD3 TCB又はCEA TCB)の調製は、WO 2014/131712 A1号の実施例3に記載される。CEA CD3 TCBは、「2+1 IgG CrossFab」抗体であり、2つの異なる重鎖と、2つの異なる軽鎖とで構成される。2つの異なる重鎖のアセンブリを促進するために、CH3ドメイン中の点変異(「ホールにノブを入れる」)を導入した。2つの異なる軽鎖の正しいアセンブリを促進するために、CD3結合FabにおけるVHドメインとVLドメインの交換を行った。2+1は、その分子が、CEAに特異的な2つの抗原結合ドメインと、CD3に特異的な1つの抗原結合ドメインを有することを意味する。CEA CD3 TCBは、配列番号146、配列番号147、配列番号148及び配列番号149のアミノ酸配列を含む。CEACAM5 CD3 TCBは、同じフォーマットを有するが、別のCEAバインダーを含み、軽鎖の正しい対形成を補助するために、CD3バインダーのCHドメイン及びCLドメインに点変異を含む。CEACAM5 CD TCBは、配列番号150、配列番号151、配列番号152及び配列番号153のアミノ酸配列を含む。
【0567】
(a)実験材料及び方法
PD1/LAG3二重特異性抗体0927を、1.5mg/kg又は3mg/kgの濃度で、ヒト膵臓BXPC3癌モデルにおけるヒトCEACAM5 CD3 TCBと組み合わせて試験した。BXPC3細胞を、NSGヒト化マウスにおいて、マウス線維芽細胞株(3T3)と共に皮下に同時移植した。
【0568】
BXPC3細胞株の調製:BXPC3細胞(ヒト膵臓癌細胞)は、元々、ECACC(European Collection of Cell Culture)から得られ、増殖後、Glycart internal cell bankに寄託された。BXPC3細胞を、10%FCS(PAA Laboratories、Austria)、1% Glutamaxを含有するRPMI中で培養した。5%COで、水飽和した雰囲気中、37℃で細胞を培養した。
【0569】
完全ヒト化マウスの製造:実験開始時に4~5週齢の雌NSGマウス(Jackson Laboratory)を、特定の病原体のいない条件に維持し、1日のサイクルは、関連するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明状態/12時間暗状態であった。この実験研究プロトコルは、地方政府によってまとめられ、承認された(P 2011/128)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。連続的な健康モニタリングは、定期的に行われた。NSGマウスに、15mg/kgのブスルファンを腹腔内注射し、1日後、臍帯血から単離した1x105のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入から14~16週後、マウスを舌下で出血させ、首尾良いヒト化のために、血液をフローサイトメトリーによって分析した。効率的に移植されたマウスは、そのヒトT細胞の頻度に従って、異なる処置群に無作為に分けられた。
【0570】
有効性実験:完全にヒト化したHSC-NSGマウスを、1:1比率で、マトリゲル存在下、0日目に1×10BXPC3細胞(ヒト膵臓癌腫細胞株、CEACAM5を発現する)を用いて皮下チャレンジ試験した。全実験期間中、腫瘍をカリパスによって週に2~3回測定した。15日目に、マウスを腫瘍サイズについて無作為に分け、平均腫瘍サイズは250mmであり、週に1回計画された治療(ビヒクル(ヒスチジンバッファー)、抗PD1(0376)、ニボルマブ、ペンブロリズマブ又は抗PD1-LAG3 0927)を開始し、最大400μlの腹腔内注射を与えた。カリパスを用いて腫瘍成長を週に2~3回測定し、腫瘍体積を以下のように測定した。
【0571】
:(W/2)×L (W:幅、L:長さ)
試験は47日目に終了した。
【0572】
(b)結果
47日間にわたる腫瘍体積の測定(mm±SEM)は、マウスのそれぞれの処置群内で、平均体積として図14に示される。CEACAM5-TCBのみを用いた処置は、未処理ビヒクル群と同一の疾患進行を示した。逆に、ニボルマブ及びペンブロリズマブは、腫瘍成長を減少させたが、腫瘍成長制御には達していなかった。驚くべきことに、PD1/LAG3二重特異性抗体0927は、濃度3mg/kgで、全ての処置された動物において、腫瘍成長を完全に抑制し、PD-1に加えてLAG-3を同時にブロックする相乗効果を示している。
【0573】
図15A~15Fにおいて、47日間にわたる腫瘍体積の測定(mm±SEM)は、それぞれの個々の動物について示されており、各群において、抗腫瘍応答の均一性を示している。
【0574】
統計的有意性は、CEACAM5 CD3 TCB単一処置に対してDunnett方法を用いることによって計算された。複数比較のための群の平均の有意な差について試験するために、Dunnett方法を用い、分散の標準的な分析(ANOVA)を自動的に行う。Dunnett方法は、平均が、コントロール群の平均とは異なるかどうかを試験する。
【0575】
得られたTGI及びTCRの値を表28に示す(TGIは、腫瘍成長阻害を意味し、TGI>100は、腫瘍退縮を意味し、TGI=100は、腫瘍の均衡状態であると定義され、TCRは、コントロールに対する処置の比率を意味し、TCR=1は、効果がないことを意味し、TCR=0は、完全な退縮であると定義される)。
コントロールとの比較は、Dunnett方法を用い、p値として更に示される。
【0576】
CEACAM5 CD3 TCBを用いた処置は、膵臓癌という観点で、腫瘍成長を制御することができない。しかし、二重特異性抗体抗PD1/LAG3 0927との組み合わせによって、用量特異的な様式で、腫瘍に対して強い影響を生じる。統計分析は、抗PD1/LAG3 0927との組み合わせは、抗PD1抗体であるニボルマブ及びペンブロリズマブとの組み合わせとは異なり、両方の濃度で、腫瘍成長の制御において、単一処理と比較すると、統計的有意差が得られ、PD1のみの阻害よりも二重特異性抗PD1/LAG3抗体が優れていることを示唆しており、腫瘍成長を均衡状態にする。
図1A-C】
図1D-F】
図1G
図1H-I】
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A-D】
図7E-F】
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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