(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】パターン評価システム及びパターン評価方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/00 20060101AFI20230703BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G01B15/00 K
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2019090344
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】土肥 歩未
(72)【発明者】
【氏名】李 天明
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016174(JP,A)
【文献】特表2015-533256(JP,A)
【文献】特開2018-087699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00-15/08
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の内部に形成されたパターンの性状を評価するためのプログラムを格納するメモリから、前記プログラムを読み出して前記パターンの性状を評価する処理を実行するコンピュータサブシステムを備え、
前記コンピュータサブシステムは、
前記試料の画像を取得する処理と、
前記画像から信号波形を抽出する処理と、
前記信号波形の所定の領域における特徴量を算出する処理と、
前記特徴量と、前記特徴量の基準値とを比較する処理と、
前記比較する処理における比較結果に基づいて、前記パターンの性状を評価する処理と、を実行
し、
前記試料の内部に形成されたパターンは、前記試料の表面に対し複数のパターンが深さ方向に沿って重複して埋め込まれたパターン、又は前記試料の表面に対し深さ方向に延びるように形成されたパターンであり、
前記基準値は、前記試料の表面に対し複数のパターンが深さ方向に沿って重複して埋め込まれたパターン、又は前記試料の表面に対し深さ方向に延びるよう形成されたパターンの信号波形の特徴量であり、
前記コンピュータサブシステムは、前記パターンの性状として前記パターンの体積及び密度のいずれか1以上を評価する
ことを特徴とするパターン評価システム。
【請求項2】
前記コンピュータサブシステムは、前記パターンの性状を評価する処理において、前記特徴量と前記基準値との差分に基づいて、前記パターンの性状を評価することを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項3】
前記信号波形は、前記画像の輝度値のラインプロファイルであることを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項4】
前記コンピュータサブシステムは、
理想的なパターンの設計データに基づいたシミュレーションにより、前記理想的なパターンの信号波形の特徴量を算出し、前記基準値とする処理をさらに実行することを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項5】
前記コンピュータサブシステムは、
前記試料の複数の計測点における画像からそれぞれ信号波形を抽出する処理と、
それぞれの前記信号波形について所定の領域における特徴量を算出する処理と、
複数の前記特徴量の平均値を算出して、前記平均値に最も近い前記特徴量を前記基準値とする処理と、をさらに実行することを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項6】
前記コンピュータサブシステムは、
前記パターンの性状が既知の箇所における前記信号波形の特徴量を前記基準値とする処理をさらに実行することを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項7】
前記コンピュータサブシステムは、
前記試料の複数の計測点について前記特徴量と前記基準値とを比較して複数の比較結果を取得する処理と、
前記複数の比較結果から、前記試料内において前記パターンの性状が変化している箇所を特定する処理と、をさらに実行することを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項8】
前記コンピュータサブシステムは、
前記特徴量と前記基準値との比較結果に基づいて、前記パターンが製造仕様を満たしているかを判断する処理をさらに実行することを特徴とする請求項1記載のパターン評価システム。
【請求項9】
請求項1に記載のパターン評価システムは、
前記コンピュータサブシステムにより制御される荷電粒子ビーム照射サブシステムをさらに備え、
前記荷電粒子ビーム照射サブシステムは、
荷電粒子ビームを前記試料に照射する荷電粒子源と、
前記荷電粒子ビームを偏向して前記試料上を走査する偏向器と、
前記荷電粒子ビームの照射により前記試料から放出される放出粒子を検出する検出器と、を有し、
前記コンピュータサブシステムは、さらに、前記検出器の検出信号に基づいて前記画像を生成する処理を実行することを特徴とするパターン評価システム。
【請求項10】
前記試料は、深さ方向に配列した複数の前記パターンを有し、
前記荷電粒子ビーム照射サブシステムは、前記荷電粒子源及び前記偏向器により前記複数のパターンを含む領域に前記荷電粒子ビームを照射して、前記検出器により前記領域からの前記放出粒子を検出し、
前記コンピュータサブシステムは、前記検出器の検出信号に基づいて前記画像を生成する処理と、前記複数のパターンの性状を評価する処理を実行することを特徴とする請求項
9記載のパターン評価システム。
【請求項11】
前記試料は、深さ方向に配列した複数の前記パターンを有し、
前記コンピュータサブシステムは、
第1の加速電圧で前記荷電粒子ビームを前記試料に照射して得られた検出信号に基づいて、第1の画像を生成し、前記第1の画像から第1の信号波形を抽出する処理と、
第2の加速電圧で前記荷電粒子ビームを前記試料に照射して得られた検出信号に基づいて、第2の画像を生成し、前記第2の画像から第2の信号波形を抽出する処理と、
前記第1の信号波形と前記第2の信号波形との差分である第3の信号波形を取得する処理と、をさらに実行し、
前記特徴量を算出する処理において、前記第3の信号波形の所定の領域における特徴量を算出し、
前記比較する処理において、前記第3の信号波形の前記特徴量と前記基準値とを比較し、
前記パターンの性状を評価する処理において、前記深さ方向の所定の位置にある前記パターンの性状を評価することを特徴とする請求項
9記載のパターン評価システム。
【請求項12】
前記試料の表面に金属膜を形成する堆積装置をさらに備えることを特徴とする請求項
9記載のパターン評価システム。
【請求項13】
前記パターンが前記試料に設けられたホールパターンであり、
前記ホールパターンに第1の材料を充填する充填装置をさらに備えることを特徴とする請求項
9記載のパターン評価システム。
【請求項14】
内部にパターンが形成された試料の画像を取得することと、
前記画像の信号波形を抽出することと、
前記信号波形の所定の領域における特徴量を算出することと、
前記特徴量と、前記特徴量の基準値とを比較して、前記パターンの性状を評価することと、を含み、
前記試料の内部に形成されたパターンは、前記試料の表面に対し複数のパターンが深さ方向に沿って重複して埋め込まれたパターン、又は前記試料の表面に対し深さ方向に延びるように形成されたパターンであり、
前記基準値は、前記試料の表面に対し複数のパターンが深さ方向に沿って重複して埋め込まれたパターン、又は前記試料の表面に対し深さ方向に延びるよう形成されたパターンの信号波形の特徴量であり、
前記パターンの性状として前記パターンの体積及び密度のいずれか1以上を評価する
ことを特徴とするパターン評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パターン評価システム及びパターン評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の製造工程を管理するために、半導体基板上に形成されたパターンの寸法を計測してパターンの製造ばらつきや欠陥の発生をモニタリングし、製造の歩留まりを向上ことが求められている。半導体製品におけるパターンの寸法を計測する装置として、例えば測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)が用いられる。
【0003】
特許文献1には、試料表面の欠陥を検査する欠陥検査装置(走査型電子顕微鏡)において、電子ビームの光軸を挟んで対向する2方向の画像データの差分をとった差分画像を生成し、差分画像の輝度値に基づいて試料表面の凹凸を検出する際に、差分画像において凹凸を含む欠陥部と、凹凸が検出されない背景部とについてそれぞれ差分プロファイルを求め、欠陥部の差分プロファイルを積算した積分プロファイルから、背景部の差分プロファイルを積算した積分プロファイルを減算した積分プロファイルを求めることが記載されている(同文献の請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体製品におけるパターンの3次元化に伴い、深さ方向に配列した同一形状の複数の3次元パターンを測長SEMで計測して、製造工程を管理するニーズが増えている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の欠陥検査装置においては、試料表面のパターンについては計測できるものの、試料内部のパターンを計測して製造工程を管理することについては記載がなく、内部パターンの体積変化を計測して評価することができない。
【0007】
そこで、本開示は、試料の二次元情報から、試料の内部に形成されたパターンの性状を評価する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のパターン評価システムは、試料の内部に形成されたパターンの性状を評価するためのプログラムを格納するメモリから前記プログラムを読み出して前記パターンの性状を評価する処理を実行するコンピュータサブシステムを備え、前記コンピュータサブシステムは、前記試料の画像を取得する処理と、前記画像から信号波形を抽出する処理と、前記信号波形の所定の領域における特徴量を算出する処理と、前記特徴量と、前記特徴量の基準値とを比較する処理と、前記比較する処理における比較結果に基づいて、前記パターンの性状を評価する処理と、を実行することを特徴とする。
【0009】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、試料の二次元情報から、試料の内部に形成されたパターンの性状を評価することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るパターン評価システムの一例を示す概略構成図。
【
図2】第1の実施形態に係るパターン評価システムの一例を示す概略構成図。
【
図3】第1の実施形態に係る信号処理部及びコンピュータサブシステムの機能ブロック図。
【
図4】第1の実施形態に係る計測対象のパターンの一例を示す断面斜視図。
【
図5】
図4に示したパターンを上方から観察したSEM画像を示す模式図。
【
図6】
図5に示したSEM画像の輝度値をY方向に積算したラインプロファイルを示す図。
【
図7】輝度値のラインプロファイルからパターン寸法を算出する方法を説明する図。
【
図8】第1の実施形態に係るパターンの断面斜視図及びラインプロファイルを示す図。
【
図9】第1の実施形態に係るパターン評価方法の一例を示すフローチャート。
【
図10】計測データを記録したファイルのGUI画面を示す模式図。
【
図11】計測データを可視化して表示するためのGUI画面を示す模式図。
【
図12】計測データを管理するためのGUI画面を示す模式図。
【
図13】第2の実施形態に係る試料を示す断面斜視図。
【
図14】第2の実施形態に係るパターン評価方法の一例を示すフローチャート。
【
図15】加速電圧を設定するGUI画面を示す模式図。
【
図16】第3の実施形態に係る計測対象のパターンの一例を示す断面図。
【
図17】第4の実施形態に係る試料の一例を示す断面図及び試料を上方から観察したSEM画像を示す模式図。
【
図18】第4の実施形態に係るパターン評価方法の一例を示すフローチャート。
【
図19】第5の実施形態に係る信号処理部の機能ブロック図。
【
図20】第6の実施形態に係る計測対象の柱状パターンの一例を示す断面図。
【
図21】第6の実施形態に係る柱状パターンについて、シミュレーションにて算出したラインプロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
<パターン評価システムの構成>
図1は、第1の実施形態に係るパターン評価システムの一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、パターン評価システム1は、コンピュータサブシステム100、荷電粒子ビーム照射サブシステム101、コンピュータサブシステム502及びコンピュータサブシステム512を備える。
【0013】
荷電粒子ビーム照射サブシステム101(撮像ツール)は、例えば走査型電子顕微鏡の光学素子を含む鏡筒部であり、電子銃106、集束レンズ108及び109、偏向器110、対物レンズ111、ステージ113、偏向器115、検出絞り116、反射板117、検出器119及び121、シャッター130、ブランキング偏向器131及びブランキング用電極132を備える。集束レンズ108は、電子銃106から照射された電子ビーム107(荷電粒子ビーム)を集束し、集束レンズ109は、集束レンズ108を通過した電子ビーム107をさらに集束する。偏向器110は電子ビーム107を偏向し、対物レンズ111は電子ビーム107の集束する高さを制御する。
【0014】
以上のような荷電粒子ビーム照射サブシステム101の光学素子を通過した電子ビーム107は、ステージ113上に載置された試料112に照射される。試料112は、例えばウェハ上に所定の形状のパターンを有する層が複数積層された半導体製品である。
【0015】
電子ビーム107の照射によって試料112から放出される放出電子114(二次電子(Secondary Electron:SE)や反射電子(Backscattered Electron:BSE)等)は、偏向器115(二次電子アライナ)によって所定の方向に導かれる。偏向器115は所謂ウィーンフィルタであってもよく、電子ビーム107を偏向させることなく、放出電子114を所定の方向に選択的に偏向させてもよい。
【0016】
検出絞り116は、放出電子114を角度弁別し、反射板117に衝突させる。反射板117から放出される三次電子118(放出電子114の二次電子)は、ウィーンフィルタ等(不図示)によって検出器119に導かれる。検出器121は、検出絞り116への放出電子114の衝突によって発生する三次電子120(放出電子114の二次電子)を検出する。
【0017】
反射板117には、電子銃106から照射された電子ビーム107を通過させる開口が設けられており、該開口を十分小さくすることで、試料112に形成されたパターンの穴底又は溝底から鉛直上向きに放出された放出電子114を選択的に検出することができる。一方、偏向器115で放出電子114を偏向し、鉛直上向きに放出された放出電子114が反射板117の開口を通過しないようにすることもできる。また、反射板117と検出絞り116の間に設けられたエネルギーフィルタ122により、鉛直上向きに放出された放出電子114のエネルギーを選別することもできる。
【0018】
シャッター130は、電子ビーム107の通過を一部制限する。ブランキング偏向器131は、電子ビーム107を光軸外に偏向することによって試料112への電子ビーム107の到達を制限する。ブランキング用電極132は、ブランキング偏向器131によって偏向された電子ビーム107を受け止める。
【0019】
コンピュータサブシステム100は、荷電粒子ビーム照射サブシステム101の動作を制御するコンピュータシステムであり、全体制御部102、信号処理部103、入出力部104及びメモリ部105を備える。
【0020】
全体制御部102及び信号処理部103は、CPUやMPUなどのプロセッサにより構成することができる。全体制御部102は、荷電粒子ビーム照射サブシステム101に設けられた上記の光学素子を制御して、試料112の撮像に必要な処理を実行する。
【0021】
信号処理部103は、検出器119及び121からの検出信号の出力に基づいて、試料112のSEM画像を生成する。信号処理部103は、図示しない走査偏向器の走査と同期して、フレームメモリ等に検出信号を記憶させることで画像データを生成する。フレームメモリに検出信号を記憶する際、フレームメモリの走査位置に対応する位置に検出信号を記憶させることで、信号プロファイル(一次元情報)及びSEM画像(二次元情報)を生成する。走査偏向器による走査は任意の大きさ、位置、及び方向について可能である。
【0022】
図示は省略しているが、入出力部104は、パターンの設計寸法や製造条件等の設計データ(試料情報)、荷電粒子ビーム照射サブシステム101の動作開始の指示等をユーザーが入力するための入力デバイスと、これらを入力するためのGUI画面及び信号処理部103により生成されたSEM画像などを表示する表示デバイスと、を有する。入力デバイスは、例えばマウス、キーボード、音声入力装置など、ユーザーによりデータや指示を入力できるものであればよい。表示デバイスは、例えばディスプレイ装置である。入出力部104は、データの入力及び表示が可能なタッチパネルであってもよい。
【0023】
メモリ部105は、全体制御部102が荷電粒子ビーム照射サブシステム101の光学素子を駆動することによる撮像処理を実行するためのプログラムや、パターンの設計データ及び観察箇所の位置情報(試料情報)など、撮像処理に必要な各種データを格納する。
【0024】
コンピュータサブシステム100は、例えばネットワーク200により、コンピュータサブシステム502及びコンピュータサブシステム512と接続されている。コンピュータサブシステム502及び512も例えばネットワーク200により互いに接続されている。コンピュータサブシステム100、502及び512は、互いにデータや信号を送受信可能に構成される。
【0025】
コンピュータサブシステム502及び512の詳細については後述するが、コンピュータサブシステム502は、信号処理部103により生成されたSEM画像に基づいて、試料112に形成されたパターンの寸法計測及び性状評価を行うための処理を実行する。
【0026】
コンピュータサブシステム512は例えばシミュレータであり、パターンの設計データに基づいて理想的なパターンのSEM画像やその輝度値のラインプロファイルを生成し、コンピュータサブシステム502によるパターンの性状評価において参照される基準値を算出する。なお、本明細書において「理想的なパターン」とは、寸法、形状、体積及び密度などの性状が設計データ±所定の誤差の値の範囲にあるパターンを意味することとする。所定の誤差の値は、例えば半導体製品の製造ばらつきとして許容できる値であり、ユーザーが適宜設定することができる。
【0027】
図2は、第1の実施形態に係る他のパターン評価システム2を示す概略構成図である。パターン評価システム1と、パターン評価システム2とは、荷電粒子ビーム照射サブシステム101の構成が一部異なっているのみであり、本実施形態においてはいずれの構成を採用してもよい。
【0028】
図2に示すように、パターン評価システム2においては、検出器119が電子ビーム107の照射軸の外に配置され、放出電子114(放出粒子)が衝突する位置に検出面を有する。さらに、放出電子114を検出器119に導くための偏向器123(二次電子アライナ)が設けられている。
【0029】
検出器119の検出面に入射した放出電子114は、例えば検出面に設けられたシンチレータ(不図示)によって光信号に変換される。この光信号は、フォトマルチプライヤ等の増幅器によって増幅されると共に電気信号に変換され、検出器119の出力として信号処理部103に入力される。また、検出器119の直前にはエネルギーフィルタ122が設けられ、光軸近傍に通過軌道を持つ放出電子114をエネルギー弁別することができる。
【0030】
図3(a)は、信号処理部103及びコンピュータサブシステム502の機能ブロック図である。
図3(a)に示すように、信号処理部103は、SEM画像生成部501及びSEM画像記憶部500を備える。SEM画像生成部501は、荷電粒子ビーム照射サブシステム101の検出器119及び121が出力する検出信号を受信してSEM画像を生成する。SEM画像記憶部500は、例えばフレームメモリを含み、SEM画像生成部501が生成したSEM画像を記憶する。また、SEM画像生成部501は、生成したSEM画像をコンピュータサブシステム502に出力する。
【0031】
コンピュータサブシステム502は、輝度評価部503、演算部504、メモリ部505、表示部506及び入力部507を備える。輝度評価部503及び演算部504は、CPUやMPUなどのプロセッサにより構成することができる。
【0032】
輝度評価部503は、SEM画像生成部501からSEM画像を受信し、その輝度値のラインプロファイル(信号波形)を取得し、演算部504に出力する。
【0033】
演算部504は、輝度評価部503から受信したラインプロファイルに基づいて、試料112に形成されたパターンの寸法値を算出する。また、後述するように、演算部504は、ラインプロファイルのピーク(所定の領域)における特徴量を算出し、パターンの性状評価における基準値となる基準ラインプロファイルの特徴量と比較する。
【0034】
メモリ部505は、輝度評価部503及び演算部504における上記の処理を行うためのプログラムを格納し、また、演算部504による演算結果を保存する。
【0035】
表示部506は、演算部504による演算結果や、各種GUI画面等を表示する。入力部507は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスであり、表示部506に表示されたGUI画面からユーザーが試料情報などの各種データを入力するために用いられる。入力部507を設ける代わりに、例えば表示部506をタッチパネルとしてもよい。
【0036】
図3(b)は、コンピュータサブシステム512の機能ブロック図である。
図3(b)に示すように、コンピュータサブシステム512は、基準SEM画像生成部511、輝度評価部513、演算部514、メモリ部515、表示部516及び入力部517を備える。輝度評価部513及び演算部514は、CPUやMPUなどのプロセッサにより構成することができる。
【0037】
基準SEM画像生成部511は、理想的なパターンのSEM画像である基準SEM画像を生成し、輝度評価部513に出力する。基準SEM画像は、例えば、ユーザーにより入力部517から入力されたパターンの設計データ(試料情報)を用いたシミュレーションにより生成することができる。あるいは、基準SEM画像生成部511は、信号処理部103のSEM画像生成部501から複数の計測点におけるSEM画像を受信して、それらのSEM画像のうち最も理想的なパターンに近いSEM画像を基準SEM画像としてもよい。
【0038】
輝度評価部513は、基準SEM画像の輝度値のラインプロファイルである基準ラインプロファイル(基準信号波形)を取得する。
【0039】
演算部514は、基準ラインプロファイルのピークにおける特徴量を算出し、コンピュータサブシステム502の演算部504に出力する。基準ラインプロファイルの特徴量は、コンピュータサブシステム502によるパターン性状評価における基準値となる。なお、本明細書において、「基準ラインプロファイルの特徴量」を単に「基準値」という場合がある。
【0040】
メモリ部515は、輝度評価部513及び演算部514における上記の処理を行うためのプログラムを格納し、また、演算部514の演算結果を保存する。
【0041】
表示部516は、演算部514による演算結果や、各種GUI画面等を表示する。入力部517は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスであり、表示部516に表示されたGUI画面からユーザーが試料情報などの各種データを入力するために用いられる。入力部517を設ける代わりに、例えば表示部516をタッチパネルとしてもよい。
【0042】
なお、コンピュータサブシステム502及び512は、それぞれ複数のコンピュータサブシステムから構成されていてもよい。この場合、コンピュータサブシステムは、当該コンピュータサブシステム502及び512によって実行される1以上のコンポーネントを含んでいる。
【0043】
また、本実施形態においては、コンピュータサブシステム502及び512がそれぞれ別のシステムである例について説明したが、コンピュータサブシステム502及び512の各機能を1つのコンピュータサブシステムにより実行するように構成することもできる。
【0044】
さらに、コンピュータサブシステム502及び512の各機能を信号処理部103に組み込み、荷電粒子ビーム照射サブシステム101のモジュールとすることもできる。この場合、信号処理部103は、SEM画像記憶部500、SEM画像生成部501、輝度評価部503、演算部504、基準SEM画像生成部511、輝度評価部513及び演算部514を備える。メモリ部505及び515は、コンピュータサブシステム100のメモリ部105であってもよく、表示部506及び入力部507、並びに表示部516及び入力部517は、コンピュータサブシステム100の入出力部104であってもよい。
【0045】
なお、本実施形態においては荷電粒子ビーム照射サブシステム101が走査型電子顕微鏡である例について説明したが、これに限定されず、荷電粒子ビーム照射サブシステム101として集束イオンビーム装置等の他の荷電粒子線装置(荷電粒子ビーム照射サブシステム)を用いてもよい。
【0046】
<パターン評価方法>
半導体製品(試料)の量産管理に用いられる測長SEMは、試料表面のパターン形状を観察する場合、低加速電圧で電子ビームをパターンに入射し、パターンの表面近傍から得られる二次電子又は反射電子などの検出信号からパターンの輝度値のラインプロファイルを抽出し、ラインプロファイルに基づいて寸法を計測する。
【0047】
例えば製造工程の異なる複数の層が積層しており、深さ方向に埋設したパターンを計測する場合には、一般に、電子ビームを高加速でパターンに入射させて入射深度を深くする。これにより、電子ビームがパターンを通過したときに得られる二次電子又は反射電子の信号波形から、積層したパターン間に生じるずれ(オーバーレイ)を計測することが可能となる。
【0048】
本実施形態においても、深さ方向に埋設されたパターン(「内部パターン」という場合がある)の性状を評価するために、電子ビームを高加速電圧で試料に入射させる。
【0049】
図4は、試料中の計測対象のパターンの一例を示す断面斜視図である。なお、パターン4a~4c以外の試料の構成については、図示を省略している。また、試料の表面はZ軸正方向側にあることとする。
【0050】
図4(a)は、理想的なパターン4aを示す。パターン4aは、深さ方向に配列した2本のパターン7a及び8aを有し、いずれも直径(X方向の寸法)が10nmの円柱状に形成されている。
図4(b)に示すパターン4bにおいては、深さ方向に埋没したパターン8bの直径が7nmとなっており、表面に位置するパターン7bの直径(10nm)より小さくなっている。
図4(c)に示すパターン4cにおいては、深さ方向に埋没したパターン8cの直径が15nmとなっており、表面に位置するパターン7cの直径(10nm)より大きくなっている。
【0051】
図5は、
図4に示したパターン4a~4cを上方から観察したSEM画像5a~5cを示す模式図である。
図5(a)~(c)に示すように、SEM画像5a~5cからは、表面に位置するパターン7a~7cの形状は観察できるものの、試料内部のパターン8a~8cの形状を観察することは困難である。したがって、
図4のパターン8b及び8cのように内部パターンの体積が変化していても、試料表面から撮像したSEM画像の見た目から体積変化を検知することが難しい。
【0052】
そこで、SEM画像の見た目からは検知することが難しい内部パターンの体積変化をモニタリングするために鋭意検討したところ、パターン上に電子ビームを走査することによって得られる二次電子の信号量は、電子ビームが通過するパターンの体積量に依存することがわかった。したがって、電子ビームがパターンを通過したときに得られる信号波形から、内部パターンの体積変化を推定できる。
【0053】
図6は、
図5に示したSEM画像5a~5cの輝度値をY方向に積算したラインプロファイル6a~6cを示す図である。ラインプロファイル6a~6c(信号波形)は、それぞれSEM画像5a~5cに対応する。なお、ラインプロファイル6a~6cは、
図4に示したパターン4a~4cの設計寸法等の条件を実際にシミュレーションにて出力した結果を示している。
【0054】
図6に示すように、パターン4bのように内部パターンの形状(直径)が小さくなっている(電子ビームが通過するパターンの体積が小さくなる)ときは、ラインプロファイル6bのように、理想的なパターン4aのラインプロファイル6aと比較してラインプロファイルの形状が全体的に小さくなる。一方、パターン4cのように内部パターンの形状(直径)が大きくなっている(電子ビームが通過するパターンの体積が大きくなる)ときは、ラインプロファイル6cのように、理想的なパターン4aのラインプロファイル6aと比較してラインプロファイルのピークの裾付近の幅が広がっており、体積変化の影響があることが分かる。
【0055】
図7は、輝度値のラインプロファイルからパターン寸法を算出する一般的な方法を説明する図である。
図7には
図6のラインプロファイル6a~6cが示されている。
【0056】
まず、ラインプロファイル6aのピークの左半分及び右半分において、最も輝度値が低い部分201及び204をそれぞれ輝度値0%とし、最も輝度値が高い部分202及び205をそれぞれ輝度値100%とする。なお、ラインプロファイルのピークとは、最も輝度値が低い部分201及び204として設定した箇所の間の領域である。ピーク波形において輝度値が増加する部分(左側)及び輝度値が低下する部分(右側)はそれぞれパターンのエッジ部分に相当するため、輝度値50%の箇所203及び206をエッジの左右で算出し、その間をパターンのX方向の寸法値とする。
【0057】
ラインプロファイル6b及び6cについても上記と同様にして、ピークにおける輝度値50%の箇所の間(ピーク幅)をパターン4b及び4cの寸法値とすることができる。
【0058】
しかし、ラインプロファイル6b及び6cの輝度値50%におけるピーク幅は、いずれもラインプロファイル6aの輝度値50%におけるピーク幅とほぼ同じであるため、パターン4a~4cの寸法はすべて略同一であると判断されてしまう。このように、内部パターンの体積変化によるラインプロファイルの形状変化を検知する場合、ラインプロファイルの盛り上がりから閾値を設定してホワイトバンドから寸法を算出する一般的な方法は、設定する閾値によって寸法変化が観察できたりできなかったりすることや、最大輝度値がパターンごとに異なることなどから、効果的な方法とは言えない。
【0059】
図8(a)は、理想的なパターン14aを示す断面斜視図である。パターン14aは、深さ方向に配列した2本の水平ナノワイヤ17a及び18aを有する。水平ナノワイヤ17a及び18aの断面は略円形であり、直径が互いに等しくなっている。
図8(b)は、試料に形成されたパターン14bを示す概略斜視図である。パターン14bは、深さ方向に配列した2本の水平ナノワイヤ17b及び18bを有する。上方(試料の表面側)に位置する水平ナノワイヤ17bの断面は略円形であるのに対し、下方に位置する水平ナノワイヤ18bの断面は略楕円状になっており、内部パターンの体積変化が生じ、理想的なパターンではない場合を示している。
【0060】
図8(a)及び(b)に示す形状のパターン14a及び14bを実際に作成してSEM画像(不図示)を取得し、SEM画像から輝度値のラインプロファイルを抽出した。
図8(c)は、パターン14a及び14bのSEM画像から取得したラインプロファイル16a及び16bを示す図である。ラインプロファイル16a及び16bを比較すると、ラインプロファイル16bのピーク左側の裾付近の形状が、ラインプロファイル16aのピーク左側の裾付近の形状と異なっていることが分かる。このように、輝度値のラインプロファイルから、パターン14aの内部パターン形状が
図8(a)の水平ナノワイヤ18aのような形状になっており、パターン14bの内部パターン形状は
図8(b)の水平ナノワイヤ18bのようになっていると推定できる。
【0061】
そこで、本実施形態においては、パターンごとにラインプロファイル(信号波形)のピーク(所定の領域)における特徴量を算出し、理想的なパターンから得られるラインプロファイルのピークにおける特徴量(基準値)との差分を算出する。これにより、試料のSEM画像のラインプロファイル(二次元情報)から、深さ方向に埋没したパターンの体積変化を検知することができる。ラインプロファイルの特徴量の詳細については後述する。
【0062】
図9は、本実施形態に係るパターン評価方法を示すフローチャートである。本実施形態のパターン評価方法は、
図1のパターン評価システム1又は
図2のパターン評価システム2を用いて実施される。
【0063】
まず、ユーザーは、予めウェハカセット等の試料導入部(不図示)に試料112を導入しておく。ステップS1において、ユーザーが入出力部104によりパターン評価システムの動作開始の指示を入力すると、全体制御部102は、不図示の試料搬送機構を駆動して、試料112を試料導入部から取り出して荷電粒子ビーム照射サブシステム101に導入し、ステージ113に載置する(ウェハロード)。
【0064】
ステップS2において、全体制御部102は、ステージ113及びイメージシフト(不図示)を駆動して、計測対象のパターンに電子ビーム107を照射可能なように試料112を移動する。
【0065】
ステップS3において、全体制御部102は、荷電粒子ビーム照射サブシステム101の各光学素子を駆動して、所定の加速電圧で電子ビーム107を試料112に照射して、パターンをスキャンする。
【0066】
ステップS4において、荷電粒子ビーム照射サブシステム101の検出器119及び121は、検出した二次電子又は反射電子の信号を信号処理部103のSEM画像生成部501に出力する。信号処理部103のSEM画像生成部501は、二次電子又は反射電子を時系列に配列することで、SEM画像(二次元画像)を生成する。
【0067】
ステップS5において、コンピュータサブシステム502は、信号処理部103のSEM画像生成部501からSEM画像を受信し、輝度評価部503は、SEM画像の輝度を画像のY方向に積算し、ラインプロファイルを抽出する。
【0068】
ステップS6において、演算部504は、輝度評価部503からラインプロファイルを受信して、ラインプロファイルのピークにおける特徴量を算出する。
【0069】
ステップS7において、演算部504は、ラインプロファイルの特徴量をメモリ部505に記憶させる。また、演算部504は、ラインプロファイルの特徴量を計測データのファイルとして表示部506に出力する。なお、試料112内の複数の計測点でステップS2~S6を実施して、各計測点におけるSEM画像からラインプロファイルの特徴量を算出し、メモリ部505に記憶させ、表示部506に上記ファイルとして出力してもよい。
【0070】
ステップS8において、コンピュータサブシステム502は、コンピュータサブシステム512の演算部514から理想的なパターンの基準ラインプロファイルの特徴量を受信する。演算部504は、基準ラインプロファイルの特徴量と、ステップS6において算出したラインプロファイルの特徴量とを比較して、これらの特徴量の差分を算出する。また、演算部504は、特徴量の差分をメモリ部505に記憶させ、計測データのファイルとして表示部506に出力する。以下において、「ラインプロファイルの特徴量と基準ラインプロファイルの特徴量との差分」を単に「特徴量の差分」という場合がある。
【0071】
基準ラインプロファイルの特徴量(基準値)としては、コンピュータサブシステム512におけるシミュレーションで取得したパターンのラインプロファイルが、試料112を撮像したSEM画像のラインプロファイルと高さや幅等の形状がよく一致するのであれば、シミュレーションの結果を採用することができる。
【0072】
あるいは、基準ラインプロファイルの特徴量は、コンピュータサブシステム512により以下のように取得することもできる。まず、試料112面内の複数の計測点についてステップS2~S7を実施して、演算部504により複数の計測点におけるラインプロファイルの特徴量を取得する。演算部504は、複数の計測点におけるラインプロファイルの特徴量をコンピュータサブシステム512の演算部514に出力する。演算部514は、複数の計測点におけるラインプロファイルの特徴量の平均値を算出し、その平均値に最も近いラインプロファイルの特徴量を基準値として採用して、コンピュータサブシステム502の演算部504に出力する。
【0073】
さらに、基準ラインプロファイルの特徴量は、以下のように取得することもできる。まず、試料112面内の複数の計測点についてステップS2~S7を実施して、演算部504により複数の計測点におけるラインプロファイルの特徴量を取得する。次に、FIB装置などの加工装置を用いて各計測点について断面を形成し、形成された断面を荷電粒子ビーム照射サブシステム101により観察する。次に、コンピュータサブシステム512の演算部514により断面の画像に基づいて断面のパターン寸法を算出する。次に、演算部514は、各断面のパターン寸法を入力された設計データ等と比較し、最も理想的なパターンに近いパターンであった計測点におけるラインプロファイルの特徴量を基準値として採用して、コンピュータサブシステム502の演算部504に出力する。
【0074】
ステップS9において、演算部504は、特徴量の差分から、パターンが製造仕様を満たしているか確認する。
【0075】
製造仕様を満たしているか否かの判断において、演算部504は、例えば特徴量の差分と所定の閾値とを比較して、特徴量の差分が閾値未満(閾値以下としてもよい)であった場合に、パターンが製造仕様を満たしていると判断することができる。他の例として、演算部504は、複数の計測点について算出した特徴量の差分をヒストグラム化し、該ヒストグラムの3σを算出して、特徴量の差分が3σの範囲内にあるパターンが製造仕様を満たしていると判断するようにしてもよい。
【0076】
特徴量の差分と比較される所定の閾値は、例えばステップS1において試料112を導入する前に、あるいはステップS9において、ユーザーが入力部507などを用いて入力することによりメモリ部505に記憶され、演算部504により読み出される。また、ユーザーにより入力された設計データ(試料情報)に基づいて、演算部504が自動的に所定の閾値を算出するようにしてもよい。なお、上記所定の閾値はコンピュータサブシステム502によりアクセス可能な他の記憶媒体に記憶されていてもよく、また、コンピュータサブシステム100のメモリ部105又はコンピュータサブシステム512のメモリ部515に記憶されていてもよい。
【0077】
計測したパターンが製造仕様を満たしている場合(ステップS9においてYes)、ステップS10に移行し、演算部504はパターンの体積変化が無いと判断し、結果を表示部506に出力する。製造仕様を満たしていない場合(ステップS9においてNo)、ステップS11に移行し、演算部504はパターンの体積変化が生じていると判断し、結果を表示部506に出力する。
【0078】
このように、ラインプロファイルの特徴量を算出し、基準ラインプロファイルの特徴量との差分を算出して、特徴量の差分から、内部パターンが製造仕様を満たしているかを判断することができる。
【0079】
ラインプロファイルのピークにおける特徴量の詳細な算出方法について、
図7に示したラインプロファイル6aを用いて説明する。例えば、ラインプロファイルの特徴量を面積値とすると、面積値の算出方法は、以下の通りである。まず、ラインプロファイル6aのピークにおいて最も輝度値が低い部分201及び204を結んだ線分を面積の下底とし、1次の漸近線(
図7中の点線)を引く。次に、例えばガウシアン近似を用いるなどして、ピークのみを近似できるような関数でフィッティングする。次に、1次の漸近線とフィッティング関数(不図示)の間に挟まれている領域の積分を行うことで、ラインプロファイルの面積値とすることができる。
【0080】
ラインプロファイルの面積値の他の算出方法として、上記の1次の漸近線とフィッティング関数の間に挟まれた領域に存在する画像のピクセル数の和を算出し、ラインプロファイルの面積値とすることもできる。
【0081】
さらに、ラインプロファイルの面積値の他の算出方法は、以下の通りである。まず、ラインプロファイル6aのピークにおいて、最も輝度値が低い部分201及び204を結んだ線分を面積の下底とし、最も輝度値が高い部分202及び205を結んだ線分を上底として、それぞれ1次の漸近線を引く(
図7中の点線)。次に、ピークの前後の傾斜になっている部分においても1次の漸近線(不図示)を引く。このように生成した4つの漸近線で囲まれた領域に存在するピクセル数の和を算出し、面積値とすることができる。
【0082】
図7及び8から明らかなように、ラインプロファイルの面積値は、電子ビームが通過したパターンの体積に依存する。したがって、ラインプロファイルの特徴量として面積値を算出し、理想的なパターンのラインプロファイルの面積値との差分を取ることで、製造工程において内部パターンに体積変化が生じたか否かを判別することができる。また、複数の計測点について上記と同様の判断を行うことで、試料112の面内において体積変化が生じている場所を特定することもできる。
【0083】
また、ラインプロファイルの特徴量として、ピークの面積値のみならず、ラインプロファイルのピークの傾き、ラインプロファイルのピーク幅、ラインプロファイルのピークにおける輝度値の最大値と最小値との差などをそれぞれ特徴量としてもよい。
【0084】
図10~12を参照して、表示部506に表示されるGUI画面について説明する。まず、上述のステップS7及びS8におけるファイルの出力について説明する。
【0085】
図10(a)は、試料112内の各計測点における計測データを記録したファイル300を示す図である。ファイル300には、画像名301(Image Name)、試料112面内での計測地点302(Position X,Position Y)、計測データ303などが記されている。図示は省略しているが、計測データ303の項目として、演算部504により算出されるパターンの寸法値、ラインプロファイルの特徴量及び特徴量の差分が含まれる。
【0086】
図10(b)は、イメージオペレーション画面310を示す図である。イメージオペレーション画面310は、例えばユーザーが入力部507(例えばマウス)を用いてファイル300中のセル304をクリックすることにより表示される。イメージオペレーション画面310には、セル304にて選択した計測点におけるSEM画像311、Re-MSボタン312及びSaveボタン313が表示される。ユーザーがRe-MSボタン312をクリックすると、コンピュータサブシステム100の全体制御部102へ指示が送信され、荷電粒子ビーム照射サブシステム101を駆動して、同一の計測点について再度SEM画像を取得し、パターンの測長を実行することができる。また、再測長の結果をファイル300に反映する場合は、ユーザーはSaveボタン313をクリックする。再測長の結果を信号処理部103からコンピュータサブシステム502へ出力し、パターン性状を解析することもできる。
【0087】
図11は、計測データ303を可視化して表示するためのGUI画面を示す模式図である。
図11(a)は、計測データ303の可視化方法を選択するための選択画面350を示す。ユーザーが選択画面350の計測データボタン351をクリックすると、
図10(a)に示すファイル300(計測データ一覧)が表示される。
【0088】
図11(b)は、計測データ303に基づいて生成されたマップ画面380を示す。マップ画面380には、試料112(ウェハ)における計測データ303の分布であるウェハマップ381が表示されている。ウェハマップ381は、
図11(a)の選択画面350にあるマップボタン352をユーザーがクリックした際に、演算部504がファイル300に記録された情報を参照して生成する。
【0089】
マップ画面380のタブ382は、ウェハマップ381として可視化する計測データ303の項目をユーザーが選択するためのタブである。
図11(c)は、タブ382のクリックにより表示される画面であり、ユーザーがウェハマップ381として可視化を望む計測データ303の項目を選択肢として表示する。
【0090】
マップ画面380のRangeタブ384は、ウェハマップ381として計測データ303の分布を表示する範囲を選択するタブであり、Colorタブ385は、その時の色を選択するタブである。ユーザーがAutoボタン386をクリックすることにより、自動で各計測データに合った表示範囲や色を決定することも可能である。マップ画面380に可視化した結果(色や表示範囲など)をファイル300に追加記録する場合には、
図11(a)の選択画面350にあるSaveボタン354をクリックすることで保存する。
【0091】
図11(d)は、計測データ303に基づいて生成されたヒストグラム画面390を示す。ヒストグラム画面390には、計測データ303の統計的な分布であるヒストグラム391が表示されている。ヒストグラム391は、
図11(a)の選択画面350にあるヒストグラムボタン353をユーザーがクリックした際に、演算部504がファイル300に記録された情報を参照して生成する。タブ392は、ヒストグラム391として可視化する計測データ303の項目をユーザーが選択するためのタブであり、タブ382と同様の機能を有する。
【0092】
ヒストグラム画面390のRangeタブ393、Colorタブ394及びAutoボタン395についても、上述のマップ画面380のRangeタブ384、Colorタブ385及びAutoボタン386と同様である。ヒストグラム画面390に可視化した結果をファイル300に追加記録する場合には、
図11(a)の選択画面350にあるSaveボタン354をクリックすることで保存する。
【0093】
次に、上述のステップS9における判断のためのGUI画面について説明する。
図12は、計測データ303を管理するためのGUI画面400を示す模式図である。GUI画面400には、ある計測点におけるSEM画像330及びそのラインプロファイル320、計測データ303のマップ画面380及びヒストグラム画面390を表示することができる。
【0094】
GUI画面400のReadボタン411をクリックすると、可視化するデータファイルを選択することができ、選択したデータファイルはマップ画面380又はヒストグラム画面390に反映される。
図12に示すように、マップ画面380にはタブ403及び閾値入力画面405が設けられ、ヒストグラム画面390にはタブ404及び閾値入力画面406が設けられている。
【0095】
タブ403及び404は、上述のステップS9(
図9)において、製造仕様を満たしているか判断する手法を選択するためのタブである。例えば、タブ403又は404のRefを選択した場合、演算部504は、参照値と計測データ303との比較により上記判断を行う。参照値としては、例えば理想的なパターンの場合の値やシミュレーションで算出した値とすることができる。
【0096】
ユーザーは、閾値入力画面405及び406から計測データ303の閾値を設定することができる。閾値は、計測された特徴量と基準値との差分の閾値である。演算部504は、上述のステップS9(
図9)において上記閾値を参照し、閾値以上であったデータについて、製造仕様を満たしておらず、パターンの体積変化がある(不良)と判断することができる。
【0097】
タブ403及び404のFreを選択した場合、統計的処理により計測データ303を管理することができる。この場合、演算部504は、上述のステップS9において複数の計測点における特徴量の差分についてヒストグラムを作成し、その3σを算出する。3σの範囲内にあるデータのパターンについては、体積変化がなく製造仕様を満たしている(良)と判断し、3σの範囲外にあるデータのパターンについては、体積変化があり製造仕様を満たしていない(不良)と判断することができる。
【0098】
上述のステップS10及びS11(
図9)において、例えば
図12のマップ画面380及びヒストグラム画面390に示すように、製造仕様を満たしていないデータ407及び408の色を、製造仕様を満たしたデータと異なる色で表示してもよい。また、製造仕様を満たしていないデータ407又は408をクリックすることで、その場所の計測番号408、SEM画像330及びラインプロファイル320をGUI画面400にて表示させることもできる。
【0099】
このように、複数の計測点で得られたラインプロファイルの特徴量をウェハマップとして可視化することで、パターンの体積変化が生じている場所を絞ることが可能である。体積変化が生じた場所を絞ることができれば、断面観察を実施する場所を絞ることも可能である。
【0100】
なお、GUI画面400により管理される計測データ303として、ラインプロファイルの特徴量と基準値との差分である例を説明したが、パターンの寸法値などの他の計測データ303についても上記と同様にウェハマップやヒストグラムを作成して、製造仕様を満たしているかを判断することもできる。
【0101】
演算部504は、パターンの体積変化のある箇所やその寸法などの計測データをパターンの製造装置(露光装置やエッチング装置など)へフィードバックすることも可能である。これにより、半導体製品の製造工程における歩留まり向上に貢献することができる。
【0102】
<技術的効果>
従来、半導体製品のパターンを研究開発する段階において、パターンに体積変化が生じていないかを確認するために、FIB装置等を用いてパターンを加工し、断面をTEM装置やAFM装置を用いて観察している。この方法では、断面を1ヶ所観察するのに数時間を要してしまう。
【0103】
一方、本実施形態のパターン評価システムのように、SEM画像の情報(輝度値のラインプロファイルの特徴量)だけで内部パターンの性状を評価することにより、ウェハの複数箇所の観察を数分で実施することができるため、開発期間の短縮に貢献することができる。
【0104】
半導体製品のプロセス製造段階においても、ウェハ面内の複数の計測点でラインプロファイルの特徴量を取得し、基準値との差分やその3σをウェハマップにして可視化することで、露光装置やエッチング装置にフィードバックすることができる。これにより、半導体製品の製造工程における歩留まり向上に貢献することができる。
【0105】
また、半導体製品の量産段階においても同様に、計測に使用したラインプロファイルから特徴量を取得し、基準値との差分やその3σを算出することで、3σから外れた箇所を量産からはじくことができる。これにより、半導体パターンの量産不良を低減し、歩留まり向上に貢献することができる。
【0106】
[第2の実施形態]
<パターン評価システム>
第2の実施形態においては、試料の同一計測点において電子ビームの加速電圧を変更して2つのSEM画像を取得し、2つのSEM画像から得られるラインプロファイルの差分を算出する点で、第1の実施形態と異なっている。このように、差分ラインプロファイルを算出することで、深さを限定したパターンの評価を行うことができる。
【0107】
第2の実施形態のパターン評価システムの装置構成については、第1の実施形態と同様のものを採用できるため、説明を省略する。
【0108】
<試料>
図13は、第2の実施形態における試料を示す概略斜視図である。
図13に示すように、本実施形態の試料は、複数のパターン24が貫通したゲート28がウェハ27上に形成され、複数のパターン24は、X軸方向及び深さ方向(Z軸方向)に配列した水平ナノワイヤである。
【0109】
例えば、試料の同一計測点において加速電圧を1000V及び5000Vとして、上方から(Z軸正方向側から負方向側へ)電子ビームを照射すると、加速電圧1000Vにおいては第1の深さまで電子ビームが通過し、加速電圧5000Vにおいては第2の深さ(第1の深さ<第2の深さ)まで電子ビームが通過する。各加速電圧についてSEM画像のラインプロファイルを抽出すると、いずれのラインプロファイルにおいても、ゲート28及びパターン24の情報が混在する。電子ビームが通過したゲート28の体積は同じであるため、1000Vの加速電圧で得られたラインプロファイルと、5000Vの加速電圧で得られたラインプロファイルとの差分を取る。この差分ラインプロファイルは、試料において下方(第1の深さと第2の深さとの間)に位置するパターン24の体積についての情報を示すこととなる。したがって、加速電圧を変更し、差分ラインプロファイルについて解析することで、深さを限定したパターン24の体積変化を検知することができる。
【0110】
<パターン評価方法>
図14は、第2の実施形態に係るパターン評価方法を示すフローチャートである。ステップS21~S25については、第1の実施形態で説明した
図9のステップS1~S5と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
ステップS26において、全体制御部102は、ステップS25におけるラインプロファイルの取得が1回目であったか否かを判断する。1回目であった場合(Yes)、ステップS27に移行し、全体制御部102は、例えば入出力部104からのユーザーの入力に基づいて、加速電圧を変更する。その後、再びステップS23に戻り、同一の計測点においてステップS23~S25を実施する。
【0112】
2回目のステップS23~S25を実施した後、ステップS26において、全体制御部102は、ラインプロファイルの取得が2回目であると判断し(No)、ステップS28に移行する。
【0113】
ステップS28において、演算部504は、加速電圧毎に取得したラインプロファイルの差分を算出して差分ラインプロファイルとする。
【0114】
ステップS29において、演算部504は、差分ラインプロファイルについて、特徴量を算出する。
【0115】
ステップS30において、演算部504は、差分ラインプロファイルの特徴量をメモリ部505に記憶させる。また、演算部504は、差分ラインプロファイルの特徴量を計測データのファイルとして表示部506に出力する。なお、試料112内の複数の計測点でステップS22~S29を実施して、各計測点におけるSEM画像から差分ラインプロファイルの特徴量を算出し、メモリ部505に記憶させ、表示部506に上記ファイルとして出力してもよい。
【0116】
ステップS31において、コンピュータサブシステム502は、コンピュータサブシステム512の演算部514から理想的なパターンの基準ラインプロファイルの特徴量を受信する。演算部504は、基準ラインプロファイルの特徴量と、ステップS30において算出した差分ラインプロファイルの特徴量とを比較して、これらの特徴量の差分を算出する。演算部504は、特徴量の差分をメモリ部505に記憶させ、また、計測データのファイルとして表示部506に出力する。
【0117】
ステップS32~S34については、第1の実施形態で説明した
図9のステップS9~S11と同様であるため、説明を省略する。
【0118】
図15は、同一計測点の撮像において加速電圧を設定するGUI画面を示す図である。ステップS23において、ユーザーは、入出力部104を用いて、1回目に入射する電子ビームの加速電圧450を設定し、SETボタン451をクリックする。上述のステップS27において、ユーザーは、2回目に入射する電子ビームの加速電圧453を設定し、SETボタン454をクリックする。
【0119】
なお、1回目のパターンのスキャン(ステップS23)において設定される加速電圧と、ステップS27において変更される加速電圧の値は、全体制御部102により自動で設定されるようにしてもよい。この場合、例えばパターン24及びゲート28の設計寸法や、深さ方向のパターン24同士の間隔などの試料情報に基づいて、パターンの性状評価を行う深さを算出し、当該深さに電子ビームを照射できるような加速電圧に設定する。
【0120】
<技術的効果>
以上のように、第2の実施形態においては、同一計測点において加速電圧を変更してSEM画像を取得し、加速電圧毎のラインプロファイルの差分を取る構成を採用している。これにより、深さを限定したパターンの体積変化を検知することができる。
【0121】
[第3の実施形態]
<パターン評価システム>
第3の実施形態においては、パターンから得られる信号量を増加させるため、パターン表面に金属膜を塗布する工程を備える点で、第1の実施形態と異なっている。
【0122】
図16は、第3の実施形態に係る計測対象のパターンの一例を示す断面図である。
図16(a)に示すように、例えば半導体の突起であるパターン34bがウェハ31上に形成されている。ウェハ31上に形成される突起の理想的な断面形状は、パターン34a(
図16(a)中の点線)であるものの、製造工程において、パターン34bのように逆テーパ状に変化してしまったとする。この場合、パターン34a及び34bを上方から撮像したSEM画像においては、パターン34a及び34bが同様の形状であるように写ってしまう。
【0123】
パターン34aとパターン34bとは、電子ビームが通過する体積が異なるため、ラインプロファイルの形状は異なると想定される。しかしながら、理想的なパターン34aの体積と、形成されたパターン34bの体積との差が微小であると、得られるラインプロファイルの形状の変化も微小となるため、ラインプロファイルに基づいてパターンの体積が変化しているかを評価することが困難となる。そこで、本実施形態においては、計測前に予めパターン表面上に金属膜37を形成し、パターンから得られる信号量を増やすことで、より微細な体積変化を検知する。
【0124】
図16(b)は、パターン34b表面に金属膜37を形成した状態を示す断面図である。金属膜37は、堆積装置3を用いて、蒸着や原子層堆積法などの公知の方法により形成することができる。
【0125】
<パターン評価方法>
本実施形態のパターン評価方法は、まず、試料の表面に金属膜37を形成する工程を実施し、その後は第1の実施形態のパターン評価方法(
図9)と同様に、各工程を実施することができる。
【0126】
さらに、半導体製品(試料)の製造工程において、埋没しているパターンの表面にも金属膜を塗布する、もしくはパターンの内部に金属をドープさせることで、内部パターンからの信号量を増加させ、より微細な体積変化を検知することも可能である。
【0127】
近年、微細デバイスの更なる高性能化のため、ゲート材料として金属を用いるメタルゲートが注目されている。ゲート材料を金属材料とすることにより、電子ビームがゲートを通過したときに発生する信号量が増幅するため、ラインプロファイルの特徴量を用いて微小な体積変化を検知することができる。このように、パターン表面に金属膜を塗布する場合だけでなく、パターンの周囲が金属材料である場合においても、より微細な体積変化を検知することができる。
【0128】
<技術的効果>
以上のように、第3の実施形態のパターン評価システムは、試料表面に金属膜37を形成するための堆積装置3を備え、パターン表面に金属膜を塗布する工程を実施する。これにより、パターンから得られる信号量を増加させることができ、パターンのより微細な体積変化を検知することが可能となる。
【0129】
[第4の実施形態]
第1の実施形態においては、計測対象のパターンが試料内部に形成された水平ナノワイヤである例について説明したが、第4の実施形態においては、試料に形成されたホールパターンの体積の変化を検知する。
【0130】
<試料>
図17は、第4の実施形態における試料の一例を示す模式図である。
図17(a)は、ホールパターン44aの断面図を示し、
図17(b)は、ホールパターン44bの断面図を示している。
図17(a)に示すように、ホールパターン44aは、径が均一に形成された理想的なパターンであるのに対し、
図17(b)に示すように、ホールパターン44bは、Z方向中間部において径が広がっている。例えば3D-NANDの製造において、ドライエッチング等により積層体にホールパターンを形成する工程で、ホールパターンの表面の形状やエッチングガスの入射角度がバラつくと、
図17(b)のホールパターン44bのように内部にボーイング等の体積変化が生じてしまう。
【0131】
図17(c)は、ホールパターン44aが形成された箇所を撮像したSEM画像45aを示し、
図17(d)は、ホールパターン44bが形成された箇所を撮像したSEM画像45bを示している。
図17(c)及び(d)に示すように、試料の上方からのSEM画像45a及び45bにおいては、試料表面におけるホールパターン44a及び44bの形状を観察することはできるが、内部の形状を観察することができない。
【0132】
<パターン評価システム>
そこで、本実施形態において、計測前に予めホールパターンの内部を金属材料で満たして、SEM画像を取得し、ラインプロファイルを抽出する。金属材料を充填することで得られる信号量を大きくすることができ、これにより、ホールパターンの微細な体積変化を検知することができる。したがって、本実施形態のパターン評価システムは、試料に形成されたホールパターンを金属材料で充填するための充填装置をさらに備える。
図17(e)は、ホールパターン44b及び充填装置9を示す図である。
図17(e)に示すように、充填装置9は、例えばホールパターン44bの上方に配置される。
【0133】
<パターン評価方法>
図18は、第4の実施形態に係るパターン評価方法を示すフローチャートである。まず、ステップS41において、ユーザーは、充填装置9を用いて、ホールパターンの内部を金属材料で満たす。これにより、ホールパターン内部の金属材料の体積についての情報を含んだラインプロファイルを取得することが可能となる。ステップS42~S52は、第1の実施形態のパターン評価方法(
図9)におけるステップS1~S11と同様であるため、説明を省略する。
【0134】
なお、本実施形態においてホールパターンに充填される材料は、金属材料に限定されず、その他の材料であってもよい。
【0135】
<技術的効果>
以上のように、第4の実施形態においては、ホールパターンに金属材料を充填して、そのSEM画像からラインプロファイルを抽出し、特徴量を算出してホールパターンの体積変化を評価する。このように、ホールパターンの体積変化を評価し、その結果をエッチング装置や露光装置へフィードバックすることで、製造工程の歩留まり向上にも貢献することができる。
【0136】
[第5の実施形態]
<パターン評価システム>
第1の実施形態においては、荷電粒子ビーム照射サブシステム101により試料112を撮像したSEM画像を用いて、試料112に形成されたパターンの体積変化を検知する例を説明した。第5の実施形態においては、すでに取得済みのSEM画像を用いて、オフラインでパターンの体積変化を検知する例について説明する。すなわち、本実施形態のパターン評価システムは、荷電粒子ビーム照射サブシステム101を有さず、取得済みのSEM画像に基づいてパターンの性状の評価を行う点で、第1の実施形態と異なる。
【0137】
図19(a)は、第5の実施形態に係るコンピュータサブシステム602の機能ブロック図である。
図19(a)に示すように、コンピュータサブシステム602は、輝度評価部603、演算部604、メモリ部605、表示部606及び入力部607を備える。輝度評価部603及び演算部604は、CPUやMPUなどのプロセッサにより構成することができる。
【0138】
輝度評価部603は、SEM画像記憶部601から取得済みのSEM画像を受信し、輝度値のラインプロファイルを抽出し、演算部604に出力する。SEM画像記憶部601は、コンピュータサブシステム602によりアクセス可能なデータベースやデータセンタ等であり、過去に取得したSEM画像を格納する。
【0139】
演算部604、メモリ部605、表示部606及び入力部607については、第1の実施形態(
図3(a))のコンピュータサブシステム502の演算部504、メモリ部505、表示部506及び入力部507と同様であるので、説明を省略する。
【0140】
図19(b)は、第5の実施形態に係るコンピュータサブシステム612の機能ブロック図である。コンピュータサブシステム612は、コンピュータサブシステム602と不図示のネットワークにより接続されている。コンピュータサブシステム612は、基準画像生成部611、輝度評価部613、演算部614、メモリ部615、表示部616及び入力部617を備える。輝度評価部613及び演算部614は、CPUやMPUなどのプロセッサにより構成することができる。
【0141】
基準画像生成部611は、理想的なパターンのSEM画像である基準SEM画像を生成し、輝度評価部613に出力する。基準SEM画像は、例えば、ユーザーにより入力部617から入力された理想的なパターンの情報(設計値など)を用いたシミュレーションにより、基準SEM画像を生成する。あるいは、基準画像生成部611は、SEM画像記憶部601から複数のSEM画像を受信して、最も理想的なパターンに近いSEM画像を基準SEM画像としてもよい。
【0142】
輝度評価部613、演算部614、メモリ部615、表示部616及び入力部617については、第1の実施形態(
図3(b))のコンピュータサブシステム512の演算部514、メモリ部515、表示部516及び入力部517と同様であるので、説明を省略する。
【0143】
<パターン評価方法>
本実施形態のパターン評価方法においては、第1の実施形態(
図9)において説明したステップS1~S4を実施せず、ステップS5において、コンピュータサブシステム602がSEM画像記憶部601からSEM画像を受信する。その他のステップは第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0144】
<技術的効果>
以上のように、第5の実施形態のパターン評価システムにおいては、すでに取得済みのSEM画像からラインプロファイルの特徴量を取得し、基準ラインプロファイルの特徴量(基準値)との差分を算出して、パターンの性状を評価する構成を採用している。これにより、荷電粒子ビーム照射サブシステム101を必要としないため、パターン評価システムの大型化を避けることができる。
【0145】
[第6の実施形態]
<パターン評価システム>
第1の実施形態においては、計測対象のパターンが試料内部に形成された水平ナノワイヤであり、内部の水平ナノワイヤの体積変化を検知する例について説明したが、第6の実施形態においては、試料に形成された柱状パターンについて密度の変化を検知する。
【0146】
<試料>
図20は、第6の実施形態に係る計測対象の柱状パターンの一例を示す断面図である。
図20(a)は、理想的な柱状パターン64aを示し、
図20(b)は、内部に空洞67が生じた柱状パターン64bを示している。柱状パターン64aと柱状パターン64bとは、形状(大きさ)は略同一であるが、柱状パターン64bに空洞67が存在することにより、密度(体積)が異なっている。
【0147】
図21は、柱状パターン64a及び64bについて、シミュレーションにて算出したラインプロファイル66a及び66bを示す図である。
図21に示すように、理想的な柱状パターン64aから得られたラインプロファイル66aと、空洞がある柱状パターン64bから得られたラインプロファイル66bとを比較すると、ラインプロファイルのピーク部分において、輝度が最も高い部分にプロファイル形状の違いがあることが分かる。ラインプロファイル66bは、ラインプロファイル66aと比較して、ピークの高さが低くなっている。
【0148】
第1の実施形態(
図4~6)において説明したように、理想的なパターン4aに対して、パターン4bのように内部パターンの体積が小さくなっている場合に、パターン4bのラインプロファイル6bの形状がパターン4aのラインプロファイル6aの形状よりも全体として小さくなっている。
【0149】
一方、
図21に示すように、理想的なパターンの形状(寸法)と、計測対象のパターンの形状(寸法)とが略同一であり密度が異なっている場合は、電子ビームが通過するパターンの大きさ(表面積)は略同一であるため、得られるラインプロファイルの形状は、パターンのエッジに相当する箇所の傾きがパターンのトップまでほぼ同じであることがわかった。このように、パターンの大きさ(体積)が変化している場合(第1の実施形態)と、パターンの密度が変化している場合(第6の実施形態)とでは、ラインプロファイルの形状の変化の仕方が異なることがわかる。
【0150】
このように、ラインプロファイルの形状及びピーク高さを理想的なパターンの基準ラインプロファイルと比較することで、パターンの体積が変化しているか、あるいは密度が変化しているかを推定することができる。
【0151】
また、ラインプロファイルの特徴量としてピーク幅やピーク形状に近似したフィッティング関数の傾きを算出し、基準ラインプロファイルと比較することで、パターンの体積が変化しているか、あるいは密度が変化しているかを判断するようにしてもよい。なお、ラインプロファイルのピーク幅を複数のピーク高さにおいて算出して、基準ラインプロファイルの各ピーク高さにおけるピーク幅と比較してもよい。
【0152】
さらに、ラインプロファイルの特徴量として、ピーク面積、ピーク幅、ピーク高さ、ピークのフィッティング関数の傾きのうちいずれか1つ、あるいは2つ以上を算出して、パターンの性状(形状、体積、密度等)を解析してもよい。この場合、メモリ部505には、ラインプロファイルの特徴量の組み合わせからパターン性状にどのような変化が生じているかを判断するためのデータが記憶されている。
【0153】
観察したパターンのラインプロファイルの特徴量と、基準ラインプロファイルの特徴量との差が小さく、パターンの体積が変化しているか密度が変化しているかを判断できない場合は、パターンを切断した断面を透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)等の観察装置で観察すればよい。
【0154】
このように、製品の製造工程において形成されたパターンに体積変化が生じたか、密度変化が生じたかを特定して、その原因となった製造装置へフィードバックすることで、製品の歩留まりを向上することができる。
【0155】
<技術的効果>
以上のように、第6の実施形態においては、パターンのラインプロファイルの形状及びピーク高さと、基準ラインプロファイルの形状及びピーク高さとを比較する。これにより、パターンの寸法が変化していない場合においても、パターンの密度の変化を検知することができる。したがって、製造工程において密度のばらつきが発生した箇所や原因を特定して、製造工程を管理することができる。
【0156】
[変形例]
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【符号の説明】
【0157】
1、2…パターン評価システム、3…堆積装置、4、14、24、34、44、64…パターン、5、45…SEM画像、6、16、66…ラインプロファイル、9…充填装置、27…ウェハ、28…ゲート、31…ウェハ、37…金属膜、67…空洞、100、502、512、602、612…コンピュータサブシステム、101…荷電粒子ビーム照射サブシステム(走査型電子顕微鏡)、102…全体制御部、103…信号処理部、104…入出力部、105…メモリ部、106…電子銃、107…電子ビーム、108…集束レンズ、109…集束レンズ、110…偏向器、111…対物レンズ、112…試料、113…ステージ、114…放出電子、115…偏向器、116…検出絞り、117…反射板、118…三次電子、119…検出器、120…三次電子、121…検出器、123…偏向器、130…シャッター、131…ブランキング偏向器、132…ブランキング用電極、200…ネットワーク、500…SEM画像記憶部、501…SEM画像生成部、503、513、603、613…輝度評価部、504、514、604、614…演算部、505、515、605、615…メモリ部、506、516、606、616…表示部、507、517、607、617…入力部