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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20230703BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20230703BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20230703BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 L
F28D15/02 102H
F28D15/04 E
F28D15/04 B
F28D15/04 H
F28D15/02 106Z
H01L23/46 B
H05K7/20 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019190325
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067370
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082309(JP,A)
【文献】特開2019-158307(JP,A)
【文献】特開2019-056511(JP,A)
【文献】特開2018-197631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、
前記蒸発器の内部及び前記液管の内部に設けられた多孔質体と、
を有し、
前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管は第1の主面を有し、
前記蒸発器及び前記液管の前記第1の主面の前記流路の直上又は直下に位置する第1の領域の少なくとも一部に凹部が形成されており、
前記第1の主面の前記流路の管壁の直上又は直下に位置する第2の領域と、前記蒸発器及び前記液管の前記第1の主面の前記多孔質体の直上又は直下に位置する第3の領域とには前記凹部が形成されていないことを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管は前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有し、
前記第2の主面の前記第1の領域の少なくとも一部に前記凹部が形成されており、
前記第2の主面の前記第2の領域と、前記第2の主面の前記第3の領域とには前記凹部が形成されていないことを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記凹部は、少なくとも前記蒸発器の前記第1の領域に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管、前記蒸気管及び前記多孔質体の各々は複数の金属層を積層してなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
複数の前記凹部が、点状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
複数の前記凹部が、平面視において当該凹部と重なる前記流路内を前記作動流体が流れる方向から直交した方向に延びる溝状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、前記蒸発器の内部及び前記液管の内部に設けられる多孔質体とを形成する工程において、
前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管に第1の主面を設け、前記蒸発器及び前記液管の前記第1の主面の前記流路の直上又は直下に位置する第1の領域の少なくとも一部に凹部を形成する工程を有し、
前記第1の主面の前記流路の管壁の直上又は直下に位置する第2の領域と、前記蒸発器及び前記液管の前記第1の主面の前記多孔質体の直上又は直下に位置する第3の領域とには前記凹部を形成しないことを特徴とするループ型ヒートパイプの製造方法。
【請求項8】
前記凹部を形成する工程は、
前記第1の主面を含む金属層を準備する工程と、
前記金属層の前記第2の領域となる部分と、前記金属層の前記第3の領域となる部分をマスクで覆いながら、前記金属層を前記第1の主面側からハーフエッチングする工程と、
を有することを特徴とする請求項に記載のループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ループ型ヒートパイプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
又、ループ型ヒートパイプの蒸発器や液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している。多孔質体には多数の細孔が形成されている。各細孔は、金属層の一方の面側に形成された有底孔と他方の面側に形成された有底孔とが部分的に連通して形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6400240号公報
【文献】特開2019-082309号公報
【文献】特開2015-094490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のループ型ヒートパイプでは、十分な放熱性能が得られない場合がある。
【0007】
本開示は、放熱性能を向上することができるループ型ヒートパイプ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態によれば、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、前記蒸発器の内部及び前記液管の内部に設けられた多孔質体と、を有し、前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管は第1の主面を有し、前記蒸発器及び前記液管の前記第1の主面の前記流路の直上又は直下に位置する第1の領域の少なくとも一部に凹部が形成されており、前記第1の主面の前記流路の管壁の直上又は直下に位置する第2の領域と、前記蒸発器及び前記液管の前記第1の主面の前記多孔質体の直上又は直下に位置する第3の領域とには前記凹部が形成されていないループ型ヒートパイプが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、放熱性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
図2】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
図3】第1の実施の形態における液管を例示する平面図である。
図4】第1の実施の形態における液管及び液管内の多孔質体を例示する断面図である。
図5】2層目から5層目までの各金属層における有底孔の配置を例示する平面図である。
図6】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の平面図である。
図7】第1の実施の形態における蒸発器及び蒸発器内の多孔質体を例示する断面図(その1)である。
図8】第1の実施の形態における蒸発器及び蒸発器内の多孔質体を例示する断面図(その2)である。
図9】第1の実施の形態における蒸気管を例示する平面図である。
図10】第1の実施の形態における蒸気管を例示する断面図である。
図11】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その1)である。
図12】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その2)である。
図13】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その3)である。
図14】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その4)である。
図15】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その5)である。
図16】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その6)である。
図17】第1の実施の形態の変形例における液管を例示する平面図である。
図18】第1の実施の形態の変形例における液管及び液管内の多孔質体を例示する断面図である。
図19】第2の実施の形態における液管を例示する平面図である。
図20】第2の実施の形態における蒸気管を例示する平面図である。
図21】第2の実施の形態の変形例における液管を例示する平面図である。
図22】第3の実施の形態における液管を例示する平面図である。
図23】第3の実施の形態における蒸気管を例示する平面図である。
図24】第3の実施の形態の変形例における液管を例示する平面図である。
図25】第4の実施の形態における液管を例示する平面図である。
図26】第4の実施の形態における蒸気管を例示する平面図である。
図27】第4の実施の形態の変形例における液管を例示する平面図である。
図28】凹部の形状を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの構造]
まず、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの構造について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
【0013】
図1を参照するに、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器10と、凝縮器20と、蒸気管30と、液管40とを有する。ループ型ヒートパイプ1は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器2に収容することができる。
【0014】
ループ型ヒートパイプ1において、蒸発器10は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器20は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器10と凝縮器20は、蒸気管30及び液管40により接続されており、蒸気管30及び液管40によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路50が形成されている。
【0015】
図2は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。図1及び図2に示すように、蒸発器10には、例えば4つの貫通孔10xが形成されている。蒸発器10に形成された各貫通孔10xと回路基板100に形成された各貫通孔100xにボルト150を挿入し、回路基板100の下面側からナット160で止めることにより、蒸発器10と回路基板100とが固定される。蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30及び液管40は、上面1aと、上面1aとは反対側の下面1bとを有する。上面1aは第1の主面の一例であり、下面1bは第2の主面の一例である。本開示において平面視とは、上面1a又は下面1bに垂直な方向から視ることをいう。
【0016】
回路基板100には、例えば、CPU等の発熱部品120がバンプ110により実装され、発熱部品120の上面が蒸発器10の下面1bと密着する。蒸発器10内の作動流体Cは、発熱部品120で発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。
【0017】
図1に示すように、蒸発器10に生成された蒸気Cvは、蒸気管30を通って凝縮器20に導かれ、凝縮器20において液化する。これにより、発熱部品120で発生した熱が凝縮器20に移動し、発熱部品120の温度上昇が抑制される。凝縮器20で液化した作動流体Cは、液管40を通って蒸発器10に導かれる。蒸気管30の幅Wは、例えば、8mm程度とすることができる。又、液管40の幅Wは、例えば、6mm程度とすることができる。
【0018】
作動流体Cの種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品120を効率的に冷却するために、蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。
【0019】
蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。
【0020】
なお、金属層は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。又、金属層の積層数は特に限定されない。
【0021】
液管40内に多孔質体が設けられている。図3は、第1の実施の形態における液管を例示する平面図であり、図4は、第1の実施の形態における液管及び液管内の多孔質体を例示する断面図である。図4は、図1及び図3のB-B線に沿う断面を示している。図4に示すように、液管40内には多孔質体60が設けられている。そして、多孔質体60の両側面と両側の管壁面60x(金属層62~65の内壁面)との間には作動流体Cが流れる流路50が形成されている。以下に、多孔質体60について詳説する。
【0022】
図5は、2層目から5層目までの各金属層における有底孔の配置を例示する平面図である。図5において、A-A線で示す部分が図4中の多孔質体60の断面に相当する。
【0023】
多孔質体60は、例えば、金属層62~65の4層が積層された構造とすることができる。金属層62~65は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層61~66の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層61~66は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。又、金属層の積層数は限定されず、5層以下や7層以上の金属層を積層してもよい。
【0024】
なお、図4及び図5において、金属層61~66の積層方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内の任意の方向をX方向、この平面内においてX方向と直交する方向をY方向としている(他の図も同様)。
【0025】
多孔質体60は、1層目(一方の最外層)の金属層61の下面及び6層目(他方の最外層)の金属層66の上面と接している。金属層61や金属層66には、孔や溝は形成されていない。これに対して、図4及び図5(a)に示すように、多孔質体60を構成する2層目の金属層62には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔62xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔62yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0026】
有底孔62xと有底孔62yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔62xと有底孔62yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔62xと有底孔62yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔62zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔62xと有底孔62yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔62xと有底孔62yとは、細孔を形成していない。
【0027】
有底孔62x及び62yは、例えば、直径が100μm~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。有底孔62x及び62yの深さは、例えば、金属層62の厚さの半分程度とすることができる。隣接する有底孔62xの間隔Lは、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。隣接する有底孔62yの間隔Lは、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。
【0028】
有底孔62x及び62yの内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、有底孔62x及び62yの内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。有底孔62x及び62yの内壁面の形状は、テーパ形状や垂直に限らない。例えば、有底孔62x及び62yの内壁面が湾曲面からなる凹形状とすることができる。湾曲面からなる凹形状としては、例えば、断面形状が略半円形や略半楕円形となる凹形状が挙げられる。細孔62zの短手方向の幅Wは、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。又、細孔62zの長手方向の幅Wは、例えば、50μm~150μm程度とすることができる。
【0029】
図4及び図5(b)に示すように、多孔質体60を構成する3層目の金属層63には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔63xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔63yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0030】
金属層63では、有底孔63xのみがX方向に配置された列と、有底孔63yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔63xと有底孔63yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔63zを形成している。
【0031】
但し、細孔63zを形成する隣接する有底孔63xと有底孔63yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔63zを形成する有底孔63xと有底孔63yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔63x及び63y、細孔63zの形状等は、例えば、有底孔62x及び62y、細孔62zの形状等と同様とすることができる。
【0032】
金属層62の有底孔62yと、金属層63の有底孔63xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層62と金属層63との界面には、細孔は形成されない。
【0033】
図4及び図5(c)に示すように、多孔質体60を構成する4層目の金属層64には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔64xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔64yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0034】
有底孔64xと有底孔64yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔64xと有底孔64yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔64xと有底孔64yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔64zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔64xと有底孔64yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔64xと有底孔64yとは、細孔を形成していない。有底孔64x及び64y、細孔64zの形状等は、例えば、有底孔62x及び62y、細孔62zの形状等と同様とすることができる。
【0035】
金属層63の有底孔63yと、金属層64の有底孔64xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層63と金属層64との界面には、細孔は形成されない。
【0036】
図4及び図5(d)に示すように、多孔質体60を構成する5層目の金属層65には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔65xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔65yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0037】
金属層65では、有底孔65xのみがX方向に配置された列と、有底孔65yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔65xと有底孔65yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔65zを形成している。
【0038】
但し、細孔65zを形成する隣接する有底孔65xと有底孔65yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔65zを形成する有底孔65xと有底孔65yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔65x及び65y、細孔65zの形状等は、例えば、有底孔62x及び62y、細孔62zの形状等と同様とすることができる。
【0039】
金属層64の有底孔64yと、金属層65の有底孔65xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層64と金属層65との界面には、細孔は形成されない。
【0040】
各金属層に形成された細孔同士は互いに連通しており、互いに連通する細孔は多孔質体60内に三次元的に広がっている。そのため、作動流体Cは、毛細管力により、互いに連通する細孔内を三次元的に広がる。
【0041】
多孔質体60を構成する有底孔の少なくとも一部は、流路50と連通している。これにより、作動流体Cが多孔質体60内に浸透することができる。又、多孔質体60は、液管40の略中央部に設けられているため、支柱としても機能する。これにより、例えば固相接合時の加圧により液管40が潰れることを防止できる。
【0042】
このように、液管40には多孔質体60が設けられており、多孔質体60は液管40に沿って蒸発器10の近傍まで延びている。これにより、多孔質体60に生じる毛細管力によって、液管40内の液相の作動流体Cが蒸発器10まで誘導される。
【0043】
その結果、蒸発器10からのヒートリーク等によって液管40内を蒸気Cvが逆流しようとしても、多孔質体60から液相の作動流体Cに作用する毛細管力で蒸気Cvを押し戻すことができ、蒸気Cvの逆流を防止することが可能となる。
【0044】
なお、液管40には作動流体Cを注入するための注入口(図示せず)が形成されているが、注入口は封止部材により塞がれており、ループ型ヒートパイプ1内は気密に保たれる。
【0045】
図3及び図4に示すように、液管40の上面1a及び下面1bは、流路50の直上又は直下に位置する第1の領域91と、流路50の管壁(金属層62w~65w)の直上又は直下に位置する第2の領域92と、多孔質体60の直上又は直下に位置する第3の領域93とを有する。液管40の上面1aは1層目の金属層61の上面61aであり、液管40の下面1bは6層目の金属層66の下面66aである。第1の領域91は、液管40の上面1a又は下面1bからの平面視において流路50と重なる。
【0046】
図3及び図4に示すように、液管40の上面1a、すなわち断面視において金属層61の上面61aに複数の凹部71が形成されている。複数の凹部71は、第1の領域91内に形成されている。言い換えれば、複数の凹部71は、流路50の直上に位置する金属層61の上面61aの第1の領域91内に形成されている。凹部71は、例えば、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔である。例えば、複数の凹部71が点状に形成されていてもよい。凹部71は、例えば、直径が50μm~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。凹部71の深さは、例えば、金属層61の厚さの半分程度とすることができる。隣接する凹部71の間隔は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。複数の凹部71が規則的に配置されていてもよく、複数の凹部71が不規則に配置されていてもよい。
【0047】
図4に示すように、液管40の下面1b、すなわち断面視において金属層66の下面66aに複数の凹部76が形成されている。複数の凹部76は、凹部71と同様に、第1の領域91内に形成されている(図示無し)。言い換えれば、複数の凹部76は、流路50の直下に位置する金属層66の下面66aの第1の領域91に形成されている。凹部76は、例えば、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔である。例えば、複数の凹部76が点状に形成されていてもよい。凹部76は、例えば、直径が50μm~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。凹部76の深さは、例えば、金属層66の厚さの半分程度とすることができる。隣接する凹部76の間隔は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。複数の凹部76が規則的に配置されていてもよく、複数の凹部76が不規則に配置されていてもよい。
【0048】
凹部71及び76の内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、凹部71及び76の内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。
【0049】
図3及び図4に示すように、凹部71及び76は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。すなわち、液管40の流路50の管壁の直上に位置する金属層61の上面61aの第2の領域92には、複数の凹部71は形成されない。また、液管40の流路50の管壁の直下に位置する金属層66の下面66aの第2の領域92には、複数の凹部76は形成されない。詳細は後述するが、ループ型ヒートパイプ1は、金属層同士の固相接合を通じて製造することができるが、凹部71及び76が形成されている部分には、外部からの圧力を十分に作用させにくい。第2の領域92において圧力が十分に作用しない場合、管壁の金属層同士の接合力が低くなり、十分な気密性を確保しにくくなるおそれがある。なお、上面1a及び下面1bの第2の領域92は、完全な平坦面である必要はない。例えば、固相接合の際に圧力が十分に作用できる程度の、例えばナノメートルオーダの凹部が第2の領域92に形成されていてもよい。
【0050】
図3及び図4に示すように、凹部71及び76は、平面視において多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。すなわち、液管40の多孔質体60の直上に位置する金属層61の上面61aの第3の領域93には、複数の凹部71は形成されない。また、液管40の多孔質体60の直下に位置する金属層66の下面66aの第3の領域93には、複数の凹部76は形成されない。第3の領域93において圧力が十分に作用しない場合、多孔質体60の金属層同士の接合力が低くなり、細孔の大きさがばらついて所望の毛細管力を確保しにくくなるおそれがある。なお、上面1a及び下面1bの第3の領域93は、完全な平坦面である必要はない。例えば、固相接合の際に圧力が十分に作用できる程度の、例えばナノメートルオーダの凹部が第3の領域93に形成されていてもよい。
【0051】
蒸発器10内には液管40と同様の多孔質体60が設けられている。図6は、蒸発器10及びその周囲の平面図である。図7及び図8は、蒸発器10及び蒸発器10内に設けられる多孔質体60を例示する断面図である。図7は、図6のE-E線に沿う断面を示し、図8は、図6のF-F線に沿う断面を示している。図6に示すX方向は、液管40の側から蒸気管30の側へ向かう長さ方向を示し、Y方向は、液管40の側から蒸気管30の側へ向かう長さ方向に直交する長さ方向を示す。
【0052】
図6に示す蒸発器10内の多孔質体60は、連結部60vと突起部60wを備えている。
【0053】
連結部60vは、平面視において、X方向の最も液管40側(蒸発器10に液管40が接続されている側)に設けられ、Y方向に延びている。連結部60vの液管40側の面の一部は、蒸発器10の管壁に接し、残りの一部は、液管40の流路内に設けられた多孔質体40tとつながっている。又、連結部60vの蒸気管30側の面の一部は、突起部60wと連結しており、残りの一部は空間80に接している。
【0054】
突起部60wは、平面視において、連結部60vから蒸気管30側に複数突起している。
【0055】
各々の突起部60wは所定間隔でY方向に並置されており、各々の突起部60wの蒸気管30側の端部は、蒸発器10の管壁から離間している。そして、各々の突起部60wの蒸気管30側の端部は互いに連結されていない。一方で、各々の突起部60wの液管40側の端部は、連結部60vを介して連結されている。言い換えれば、蒸発器10内の多孔質体60は、平面視において、連結部60vと複数の突起部60wとを有する櫛歯状に形成されている。
【0056】
蒸発器10内において、多孔質体60が設けられていない領域には空間80が形成されている。空間80は、蒸気管30の流路50とつながっている。空間80には作動流体Cの蒸気Cvが流れる。蒸発器10内の空間80は流路50でもある。
【0057】
液管40側から作動流体Cが蒸発器10に導かれ、多孔質体60に浸透する。蒸発器10内で多孔質体60に浸透した作動流体Cは発熱部品120で発生した熱により気化して蒸気Cvが生成され、蒸気Cvは蒸発器10内の空間80を通って蒸気管30へ流れる。なお、図6及び図8において、突起部60w(櫛歯)の数を7つとしたのは一例であり、突起部60w(櫛歯)の数は適宜決定することができる。突起部60wと空間80との接触面積が増えれば作動流体Cが蒸発しやすくなり、圧力損失を低減できる。
【0058】
蒸発器10内に設けられる多孔質体60は、液管40内に設けられる多孔質体60と原則的に同様である。例えば、金属層62~65に形成される有底孔及び細孔の位置は、図4図5と同様とすることができる。
【0059】
このように、蒸発器10には多孔質体60が設けられている。蒸発器10内の多孔質体60のうち、液管40寄りの部分には液相の作動流体Cが浸透する。この際、多孔質体60から作動流体Cに作用する毛細管力が、ループ型ヒートパイプ1内で作動流体Cを循環させるポンピング力となる。
【0060】
しかも、この毛細管力は蒸発器10内の蒸気Cvに対抗するため、蒸気Cvが液管40に逆流するのを抑制することが可能となる。
【0061】
また、図6図8に示すように、蒸発器10の空間80と重なる第1の領域91内でも、上面1aに複数の凹部71が形成され、下面1bに複数の凹部76が形成されている。上記のように、空間80には作動流体Cの蒸気Cvが流れ、蒸発器10内の空間80は流路50でもある。凹部71及び76は、平面視において蒸発器10の空間80の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ蒸発器10の上面1a及び下面1bに形成されている。言い換えれば、複数の凹部71は、空間80の直上に位置する金属層61の上面61aの第1の領域91に形成されている。また、複数の凹部76は、空間80の直下に位置する金属層66の下面66aの第1の領域91に形成されている。そして、蒸発器10の空間80の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60の直上に位置する金属層61の上面61aの第2の領域92及び第3の領域93には、複数の凹部71は形成されない。また、蒸発器10の空間80の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60の直下に位置する金属層66の下面66aの第2の領域92及び第3の領域93には、複数の凹部76は形成されない。
【0062】
図9は、第1の実施の形態における蒸気管30を例示する平面図であり、図10は、第1の実施の形態における蒸気管30を例示する断面図である。図10は、図1及び図9のD-D線に沿う断面を示している。図10に示すように、蒸気管30内には多孔質体60が設けられておらず、両側の管壁面60x(金属層62~65の内壁面)の間に作動流体Cの蒸気Cvが流れる流路50が形成されている。
【0063】
図9及び図10に示すように、蒸気管30の平面視において流路50と重なる第1の領域91内でも、上面1aに複数の凹部71が形成され、下面1bに複数の凹部76が形成されている。凹部71及び76は、平面視において蒸気管30の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ蒸気管30の上面1a及び下面1bに形成されている。言い換えれば、複数の凹部71は、蒸気管30の流路50の直上に位置する金属層61の上面61aの第1の領域91に形成されている。また、複数の凹部76は、蒸気管30の流路50の直下に位置する金属層66の下面66aの第1の領域91に形成されている。そして、蒸気管30の管壁(金属層62w~65w)の直上に位置する金属層61の上面61aの第2の領域92には、複数の凹部71は形成されない。また、蒸気管30の管壁(金属層62w~65w)の直下に位置する金属層66の下面66aの第2の領域92には、複数の凹部76は形成されない。
【0064】
蒸気管30と同様に、凝縮器20内には、多孔質体60は設けられておらず、両側の管壁面60x(金属層62~65の内壁面)の間に作動流体Cの蒸気Cvまたは、蒸気Cvが液化した作動流体Cが流れる流路50が形成されている。凝縮器20の平面視において流路50と重なる第1の領域91内でも、上面1aに複数の凹部71が形成され、下面1bに複数の凹部76が形成されている。凹部71及び76は、平面視において凝縮器20の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ凝縮器20の上面1a及び下面1bに形成されている。言い換えれば、複数の凹部71は、凝縮器20の流路50の直上に位置する金属層61の上面61aの第1の領域91に形成されている。また、複数の凹部76は、凝縮器20の流路50の直下に位置する金属層66の下面66aの第1の領域91に形成されている。そして、凝縮器20の管壁(金属層62w~65w)の直上に位置する金属層61の上面61aの第2の領域92には、複数の凹部71は形成されない。また、凝縮器20の管壁(金属層62w~65w)の直下に位置する金属層66の下面66aの第2の領域92には、複数の凹部76は形成されない。
【0065】
[第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法]
次に、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法について、多孔質体の製造工程を中心に説明する。図11図16は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図である。図11図13及び図15は、図4に対応する断面を示し、図12図14及び図16は、図10に対応する断面を示している。
【0066】
まず、図11(a)及び図12(a)に示す工程では、図1の平面形状に形成された金属シート620を準備する。そして、金属シート620の上面にレジスト層410を形成し、金属シート620の下面にレジスト層420を形成する。金属シート620は、最終的に金属層62となる部材であり、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から形成することができる。金属シート620の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。レジスト層410及び420としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0067】
次に、図11(b)及び図12(b)に示す工程では、金属シート620の多孔質体60を形成する領域(蒸発器10となる領域及び液管40となる領域)において、レジスト層410を露光及び現像して、金属シート620の上面を選択的に露出する開口部410xを形成する。又、レジスト層420を露光及び現像して、金属シート620の下面を選択的に露出する開口部420xを形成する。開口部410x及び420xの形状及び配置は、図5(a)に示した有底孔62x及び62yの形状及び配置に対応するように形成する。
【0068】
レジスト層410の露光及び現像の際には、金属シート620の流路50を形成する領域において、金属シート620の上面を選択的に露出する開口部410yも形成する。また、レジスト層420の露光及び現像の際には、流路50を形成する領域において、金属シート620の下面を選択的に露出する開口部420yも形成する。開口部410y及び420yの形状及び配置は、図4及び図10に示した流路50の形状及び配置に対応するように形成する。
【0069】
次に、図11(c)及び図12(c)に示す工程では、開口部410x及び410y内に露出する金属シート620を金属シート620の上面側からハーフエッチングすると共に、開口部420x及び420y内に露出する金属シート620を金属シート620の下面側からハーフエッチングする。これにより、金属シート620の上面側に有底孔62xが形成され、下面側に有底孔62yが形成されると共に、金属シート620を貫通する開口部620xが形成される。又、表裏でX方向に交互に配置された開口部410xと開口部420xとは、平面視で部分的に重複しているため、重複する部分が連通して細孔62zが形成される。金属シート620のハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0070】
次に、図11(d)及び図12(d)に示す工程では、レジスト層410及び420を剥離液により剥離する。これにより、金属層62が完成する。
【0071】
また、図13(a)及び図14(a)に示す工程では、図1の平面形状に形成された金属シート610を準備する。そして、金属シート610の上面にレジスト層310を形成し、金属シート610の下面にレジスト層320を形成する。金属シート610は、最終的に金属層61となる部材であり、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から形成することができる。金属シート610の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。レジスト層310及び320としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0072】
次に、図13(b)及び図14(b)に示す工程では、金属シート610の凹部71を形成する領域(第1の領域91)において、レジスト層310を露光及び現像して、金属シート610の上面を選択的に露出する開口部310zを形成する。開口部310zの形状及び配置は、図3及び図9に示した凹部71の形状及び配置に対応するように形成する。開口部310zが形成されたレジスト層310はマスクの一例である。
【0073】
次に、図13(c)及び図14(c)に示す工程では、開口部310z内に露出する金属シート610を金属シート610の上面側からハーフエッチングする。これにより、金属シート610の上面側に有底孔からなる凹部71が形成される。金属シート610のハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0074】
次に、図13(d)及び図14(d)に示す工程では、レジスト層310及び320を剥離液により剥離する。これにより、金属層61が完成する。
【0075】
次に、図15(a)及び図16(a)に示す工程では、金属層61と同様の方法により、金属層66を形成し、金属層62と同様の方法により、金属層63、64、及び65を形成する。金属層63、64、及び65に形成される有底孔及び細孔の位置は、例えば、図5に示した通りである。
【0076】
次に、図15(b)及び図16(b)に示す工程では、図15(a)及び図16(a)に示す順番で各金属層を積層し、加圧及び加熱により固相接合を行う。これにより、隣接する金属層同士が直接接合され、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40を有するループ型ヒートパイプ1が完成し、蒸発器10及び液管40に多孔質体60が形成される。また、蒸発器10に空間80が形成され、凝縮器20、蒸気管30及び液管40に流路50が形成される。その後、真空ポンプ等を用いて液管40内を排気した後、図示しない注入口から液管40内に作動流体Cを注入し、その後注入口を封止する。
【0077】
ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、固相接合によって隣接する金属層同士を良好に接合できるように、金属層61~66の全ての材料を同一にすることが好ましい。
【0078】
第1の実施の形態では、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30及び液管40の第1の領域91内で、上面1aに複数の凹部71が形成され、下面1bに複数の凹部76が形成されている。従って、上面1a及び下面1bが、凹部71及び76が形成されていない平坦面である場合と比較して、外気との接触面積が大きく、放熱効率を向上することができる。
【0079】
また、凹部71及び76は、平面視で第2の領域92及び第3の領域93には形成されていない。従って、ループ型ヒートパイプ1の製造において、各金属層を積層し、加圧及び加熱により固相接合を行う際に、第2の領域92及び第3の領域93のいずれにおいても、外部からの圧力を金属層の積層体に十分に作用させることができる。このため、管壁に十分な気密性を確保し、多孔質体に所望の毛細管力を確保することができる。
【0080】
〈第1の実施の形態の変形例〉
第1の実施の形態の変形例では、液管内で多孔質体が管壁に接するように設けられている例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0081】
図17は、第1の実施の形態の変形例における液管40を例示する平面図であり、図18は、第1の実施の形態の変形例における液管40及び液管40内の多孔質体を例示する断面図である。図18は、図1及び図17のB-B線に沿う断面を示している。図17及び図18に示すように、液管40内には多孔質体60が2箇所に設けられている。一方の多孔質体60は、液管40の一方の管壁と連続して形成され、他方の多孔質体60は、液管40の他方の管壁と連続して形成されている。そして、一方の多孔質体60の他方の多孔質体60に対向する面と、他方の多孔質体60の一方の多孔質体60に対向する面との間には作動流体Cが流れる流路50が形成されている。
【0082】
図17及び図18に示すように、2つの第3の領域93が2つの第2の領域92の間に位置し、2つの第3の領域93の間に第1の領域91が位置する。そして、第1の領域91内で、液管40の上面1aに複数の凹部71が形成され、液管40の下面1bに複数の凹部76が形成されている。凹部71及び76は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。言い換えれば、複数の凹部71は、液管40の流路50の直上に位置する金属層61の上面61aの第1の領域91に形成されている。また、複数の凹部76は、液管40の流路50の直下に位置する金属層66の下面66aの第1の領域91に形成されている。そして、液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60の直上に位置する金属層61の上面61aの第2の領域92及び第3の領域93には、複数の凹部71は形成されない。また、液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60の直下に位置する金属層66の下面66aの第2の領域92及び第3の領域93には、複数の凹部76は形成されない。
【0083】
他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0084】
変形例によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
なお、第1の実施の形態及びその変形例において、凹部71及び76の直径及び深さは均一でなくてもよい。例えば、第3の領域93に近く位置する凹部71及び76ほど、すなわち多孔質体60に近く位置する凹部71及び76ほど直径及び深さが小さくなっていてもよい。第3の領域93に近く位置する凹部71及び76ほど直径及び深さが小さい場合、第3の領域93の第1の領域91との境界近傍において、より確実に多孔質体60を構成する金属層に外部からの圧力を作用させやすくなる。
【0086】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態は、主に、凹部の形態の点で第1の実施の形態と相違する。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0087】
図19は、第2の実施の形態における液管40を例示する平面図である。第2の実施の形態では、複数の凹部71に代えて、第1の領域91内で、液管40の上面1a(金属層61の上面61a)に複数の凹部72が形成されている。凹部72は、例えば、当該凹部72と重なる流路50内を作動流体Cが流れる方向(Y方向)から直交した方向(X方向)に延びる溝状に形成されている。X方向とY方向が交差するときの角度は、適宜設定することができる。凹部72は、例えば、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底溝である。凹部72の幅は、例えば、50μm~300μm程度である。凹部72の深さは、例えば、金属層61の厚さの半分程度とすることができる。隣接する凹部72の間隔は、例えば、50μm~300μm程度とすることができる。凹部72の間隔は均一でもよく、不均一でもよい。
【0088】
図示は省略するが、複数の凹部76に代えて、第1の領域91内で、液管40の下面1b(金属層61の下面66a)に、凹部72と同様の形態の複数の凹部が形成されている。すなわち、これら凹部は、例えば、当該凹部と重なる流路50内を作動流体Cが流れる方向(Y方向)から直交した方向(X方向)に延びる溝状に形成されており、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底溝である。以下、凹部72と、第2の実施の形態において下面1bに形成された凹部とを総称して凹部72等という場合がある。
【0089】
凹部72等の内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、凹部72等の内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。
【0090】
図19に示すように、凹部72等は、液管40の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部72等は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0091】
蒸発器10においても、凹部71及び76に代えて、凹部72等が形成されていてもよい。凹部72等は、蒸発器10の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部72等は、平面視において蒸発器10の空間80の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ蒸発器10の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0092】
図20は、第2の実施の形態における蒸気管30を例示する平面図である。蒸気管30の平面視において流路50と重なる第1の領域91内でも、複数の凹部71に代えて、蒸気管30の上面1a(金属層61の上面61a)に複数の凹部72が形成されている。また、図示は省略するが、複数の凹部76に代えて、蒸気管30の下面1b(金属層66の下面66a)に、凹部72と同様の形態の複数の凹部が形成されている。凹部72等は、蒸気管30の上面1a及び下面1bの第2の領域92には形成されない。すなわち、凹部72等は、平面視において蒸気管30の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ蒸気管30の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0093】
凝縮器20においても、凹部71及び76に代えて、凝縮器20の平面視において流路50と重なる第1の領域91内で、凹部72等が形成されていてもよい。凹部72等は、凝縮器20の上面1a及び下面1bの第2の領域92には形成されない。すなわち、凹部72等は、平面視において凝縮器20の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ凝縮器20の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0094】
他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0095】
第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
〈第2の実施の形態の変形例〉
第2の実施の形態の変形例では、液管内で多孔質体が管壁に接するように設けられている例を示す。なお、第2の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0097】
図21は、第2の実施の形態の変形例における液管40を例示する平面図である。図21に示すように、第1の実施の形態の変形例と同様に、2つの第3の領域93が2つの第2の領域92の間に位置し、2つの第3の領域93の間に第1の領域91が位置する。そして、第1の領域91内で、液管40の上面1a(金属層61の上面61a)に複数の凹部72が形成されている。また、図示は省略するが、液管40の下面1b(金属層66の下面66a)には、凹部72と同様の形態の複数の凹部が形成されている。凹部72等は、液管40の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部72等は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0098】
他の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0099】
変形例によっても第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
なお、第2の実施の形態及びその変形例において、凹部72等の幅及び深さは均一でなくてもよい。例えば、第3の領域93に近く位置する部分ほど、すなわち多孔質体60に近く位置する部分ほど幅及び深さが小さくなっていてもよい。第3の領域93に近く位置する部分ほど幅及び深さが小さい場合、第3の領域93の第1の領域91との境界近傍において、より確実に多孔質体60を構成する金属層に外部からの圧力を作用させやすくなる。
【0101】
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態は、主に、凹部の形態の点で第1の実施の形態等と相違する。なお、第3の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0102】
図22は、第3の実施の形態における液管40を例示する平面図である。第3の実施の形態では、複数の凹部71に代えて、第1の領域91内で、液管40の上面1a(金属層61の上面61a)に凹部73が形成されている。凹部73は、平面視で互いに交差する複数の凹部73Aと複数の凹部73Bとを含む。凹部73Aは、例えば、当該凹部73Aと重なる流路50内を作動流体Cが流れる方向(Y方向)から直交した方向(X方向)に延びる溝状に形成されている。凹部73Bは、例えば、当該凹部73Aと重なる流路50内を作動流体Cが流れる方向(Y方向)と平行に延びる溝状に形成されている。凹部73は、例えば、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底溝である。凹部73A及び73Bの幅は、例えば、50μm~300μm程度である。凹部73A及び73Bの深さは、例えば、金属層61の厚さの半分程度とすることができる。隣接する凹部73Aの間隔及び隣接する凹部73Bの間隔は、例えば、50μm~300μm程度とすることができる。凹部73Aの間隔は均一でもよく、不均一でもよい。凹部73Bの間隔は均一でもよく、不均一でもよい。
【0103】
図示は省略するが、複数の凹部76に代えて、第1の領域91内で、液管40の下面1b(金属層66の下面66a)に、凹部73と同様の形態の凹部が形成されている。すなわち、この凹部は、例えば、平面視で互いに交差する複数の凹部を含み、これら複数の凹部は溝状に形成されており、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底溝である。以下、凹部73と、第3の実施の形態において下面1bに形成された凹部とを総称して凹部73等という場合がある。
【0104】
凹部73等の内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、凹部73等の内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。
【0105】
図22に示すように、凹部73等は、液管40の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部73等は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0106】
蒸発器10においても、凹部71及び76に代えて、凹部73等が形成されていてもよい。凹部73等は、蒸発器10の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部73等は、平面視において蒸発器10の空間80の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ蒸発器10の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0107】
図23は、第3の実施の形態における蒸気管30を例示する平面図である。蒸気管30の平面視において流路50と重なる第1の領域91内でも、複数の凹部71に代えて、蒸気管30の上面1a(金属層61の上面61a)に凹部73が形成されている。また、図示は省略するが、複数の凹部76に代えて、蒸気管30の下面1b(金属層66の下面66a)に、凹部73と同様の形態の凹部が形成されている。凹部73等は、蒸気管30の上面1a及び下面1bの第2の領域92には形成されない。すなわち、凹部73等は、平面視において蒸気管30の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ蒸気管30の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0108】
凝縮器20においても、凹部71及び76に代えて、凝縮器20の平面視において流路50と重なる第1の領域91内で、凹部73等が形成されていてもよい。凹部73等は、凝縮器20の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部73等は、平面視において凝縮器20の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ凝縮器20の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0109】
他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0110】
第3の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
〈第3の実施の形態の変形例〉
第3の実施の形態の変形例では、液管内で多孔質体が管壁に接するように設けられている例を示す。なお、第3の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0112】
図24は、第3の実施の形態の変形例における液管40を例示する平面図である。図24に示すように、第1の実施の形態の変形例と同様に、2つの第3の領域93が2つの第2の領域92の間に位置し、2つの第3の領域93の間に第1の領域91が位置する。そして、第1の領域91内で、液管40の上面1a(金属層61の上面61a)に凹部73が形成されている。また、図示は省略するが、液管40の下面1b(金属層66の下面66a)には、凹部73と同様の形態の凹部が形成されている。凹部73等は、液管40の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部73等は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0113】
他の構成は第3の実施の形態と同様である。
【0114】
変形例によっても第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0115】
なお、第3の実施の形態及びその変形例において、凹部73等の幅及び深さは均一でなくてもよい。例えば、第3の領域93に近く位置する部分ほど、すなわち多孔質体60に近く位置する部分ほど幅及び深さが小さくなっていてもよい。第3の領域93に近く位置する部分ほど幅及び深さが小さい場合、第3の領域93の第1の領域91との境界近傍において、より確実に多孔質体60を構成する金属層に外部からの圧力を作用させやすくなる。
【0116】
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態は、主に、凹部の形態の点で第3の実施の形態と相違する。なお、第4の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0117】
図25は、第4の実施の形態における液管40を例示する平面図である。第4の実施の形態では、凹部73に代えて、第1の領域91内で、液管40の上面1a(金属層61の上面61a)に凹部74が形成されている。凹部74は、平面視で互いに交差する複数の凹部74Aと複数の凹部74Bとを含む。凹部74は、平面視で凹部73を反時計周りに45度回転させた形態を有し、凹部74Aは回転前の凹部73Aに相当し、凹部74Bは回転前の凹部73Bに相当する。
【0118】
図示は省略するが、第3の実施の形態で液管40の下面1b(金属層66の下面66a)に形成されている凹部に代えて、第1の領域91内で、液管40の下面1b(金属層66の下面66a)に、凹部74と同様の形態の凹部が形成されている。すなわち、この凹部は、例えば、平面視で互いに交差する複数の凹部を含み、これら複数の凹部は溝状に形成されており、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底溝である。以下、凹部74と、第4の実施の形態において液管40の下面1b(金属層66の下面66a)に形成された凹部とを総称して凹部74等という場合がある。
【0119】
凹部74等の内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、凹部74等の内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。
【0120】
図25に示すように、凹部74等は、液管40の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部74等は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0121】
蒸発器10においても、凹部73等に代えて、凹部74等が形成されていてもよい。凹部74等は、蒸発器10の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部73等は、平面視において蒸発器10の空間80の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ蒸発器10の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0122】
図26は、第4の実施の形態における蒸気管30を例示する平面図である。第4の実施の形態では、蒸気管30の平面視において流路50と重なる第1の領域91内でも、凹部73に代えて、蒸気管30の上面1a(金属層61の上面61a)に凹部74が形成されている。また、図示は省略するが、第3の実施の形態で形成されている凹部に代えて、蒸気管30の下面1b(金属層66の下面66a)に、凹部74と同様の形態の凹部が形成されている。凹部74等は、蒸気管30の上面1a及び下面1bの第2の領域92には形成されない。すなわち、凹部74等は、平面視において蒸気管30の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ蒸気管30の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0123】
凝縮器20においても、凹部73等に代えて、凝縮器20の平面視において流路50と重なる第1の領域91内で、凹部74等が形成されていてもよい。凹部74等は、凝縮器20の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部74等は、平面視において凝縮器20の流路50の管壁(金属層62w~65w)と重ならないようにして、それぞれ凝縮器20の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0124】
他の構成は第3の実施の形態と同様である。
【0125】
第4の実施の形態によっても第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0126】
〈第4の実施の形態の変形例〉
第4の実施の形態の変形例では、液管内で多孔質体が管壁に接するように設けられている例を示す。なお、第4の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0127】
図27は、第4の実施の形態の変形例における液管40を例示する平面図である。図27に示すように、第1の実施の形態の変形例と同様に、2つの第3の領域93が2つの第2の領域92の間に位置し、2つの第3の領域93の間に第1の領域91が位置する。そして、第1の領域91内で、液管40の上面1a(金属層61の上面61a)に凹部74が形成されている。また、図示は省略するが、液管40の下面1b(金属層66の下面66a)には、凹部74と同様の形態の凹部が形成されている。凹部74等は、液管40の上面1a及び下面1bの第2の領域92及び第3の領域93には形成されない。すなわち、凹部74等は、平面視において液管40の流路50の管壁(金属層62w~65w)及び多孔質体60と重ならないようにして、それぞれ液管40の上面1a及び下面1bに形成されている。
【0128】
他の構成は第4の実施の形態と同様である。
【0129】
変形例によっても第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0130】
なお、第4の実施の形態及びその変形例において、凹部74等の幅及び深さは均一でなくてもよい。例えば、第3の領域93に近く位置する部分ほど、すなわち多孔質体60に近く位置する部分ほど幅及び深さが小さくなっていてもよい。第3の領域93に近く位置する部分ほど幅及び深さが小さい場合、第3の領域93の第1の領域91との境界近傍において、より確実に多孔質体60を構成する金属層に外部からの圧力を作用させやすくなる。
【0131】
なお、凹部の断面形状は、図4図7図8図10等に示すような角部を有する形状に限定されない。図28は、凹部の形状を例示する断面図である。例えば、図28(a)に示すように、凹部71に代えて、内壁面が湾曲面からなる凹形状の凹部75が金属層61に形成されていてもよい。また、凹部76に代えて、内壁面が湾曲面からなる凹形状の凹部77が金属層66に形成されていてもよい。内壁面が湾曲面からなる凹形状としては、例えば、断面形状が略半円形や略半楕円形となる凹形状が挙げられる。溝状の凹部についても、長手方向に垂直な断面の形状が、略半円形や略半楕円形となっていてもよい。
【0132】
液管40内のどの部位に多孔質体60を位置させるかは特に限定されない。ただし、液管40の管壁から間隔をおいて多孔質体60を設けることが好ましい。これは、管壁と多孔質体60との間に作動流体Cが流れる微細な流路50が形成され、作動流体Cが液管40内を流れやすくなるためである。
【0133】
多孔質体60の構成に関し、多孔質体60の最外層にも有底孔が形成されていてもよい。例えば、1層目の金属層61に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む複数の有底孔が形成されていてもよく、6層目の金属層66に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む複数の有底孔が形成されていてもよい。
【0134】
多孔質体60の構成に関し、隣接する金属層の界面にも細孔が形成されていてもよい。例えば、金属層62~65において、隣接する金属層間で有底孔が平面視で部分的に重複することで細孔が形成されていてもよい。
【0135】
また、多孔質体60を構成する細孔は、各金属層の両面側から形成した有底孔を部分的に連通させて構成された細孔に限定されない。例えば、多孔質体60を構成する細孔が、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された金属層同士を貫通孔が部分的に重複するように積層して構成された細孔であってもよい。
【0136】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0137】
1 ループ型ヒートパイプ
10 蒸発器
20 凝縮器
30 蒸気管
40 液管
50 流路
60 多孔質体
61~66 金属層
71、72、73、73A、73B、74、74A、74B、75、76、77 凹部
91 第1の領域
92 第2の領域
93 第3の領域
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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