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特許7305661モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法
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  • 特許-モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法 図1
  • 特許-モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法 図2
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  • 特許-モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 295/02 20060101AFI20230703BHJP
   C07C 41/42 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 43/13 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 213/10 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 217/28 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C07D295/02
C07C41/42
C07C43/13 Z
C07C213/10
C07C217/28
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020544449
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2019053273
(87)【国際公開番号】W WO2019162121
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】18158097.8
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18158951.6
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ブスマン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ コッホ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ハイリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム プフェッフィンガー
(72)【発明者】
【氏名】イェルク パストレ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン-ペーター メルダー
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/037587(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/037589(WO,A1)
【文献】特表2010-504938(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102002019(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、C07C、C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応により得られた、モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法において、アンモニア、水、ADGおよびDEGを蒸留により分離し、得られたMOおよびMOE含有流を蒸留塔K40に供給し、その内部にて、20~2000mbarの頂部圧力で、底部を介して、MO、MOE、および128℃以上の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を分離し、頂部を介して、128℃以下の沸点を有する有機生成物を分離し、側方抜出部を介してMOを分離し、K40に、前記底部を加熱するために、1~10barの圧力を有する加熱蒸気が供給される蒸発器が備えられていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
アンモニア、水、ADGおよびDEGを蒸留により分離するために、アンモニアを、第一の蒸留塔K10内で頂部を介して分離し、
K10の底部搬出物を、第二の蒸留塔K20に供給し、その内部で、水および有機生成物を、頂部を介して45~198℃の頂部温度および0.1~15barの頂部圧力で分離し、
K20の底部搬出物を、第三の蒸留塔K30に供給し、その内部で、MO、MOE、および140℃未満の沸点(1.013bar)を有する有機生成物(MOおよびMOE含有流)を、頂部または側方抜出部を介して分離し、ADG、DEG、および190℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、底部を介して分離する
ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応を、水素および不均一系水素化触媒の存在下で行い、
- 転化率が、DEGを基準として、40~75%であり、
- 前記反応を、100~300barの圧力および170℃~220℃の温度で行い、
- DEGに対するアンモニアのモル比が、4~10であり、
- 触媒空間速度が、触媒1リットル(床体積)および1時間あたり、ジエチレングリコール(DEG)0.05~5kgである
ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記塔K20で頂部を介して分離された水および有機生成物含有流を、部分的に前記塔K10のフィードまたは缶出物に返送することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記塔K20で頂部を介して分離された前記水および有機生成物含有流を、蒸留塔K50に供給し、その内部で、N-エチルモルホリン水溶液(E-MO水溶液)を、頂部または液体側方抜出部を介して分離し、水を、底部を介して分離することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
K30の底部搬出物を、蒸留塔K60に供給し、その内部で、ADGを、前記側方抜出部において分離し、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、頂部を介して分離し、255℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、底部を介して分離することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項7】
K60で前記側方抜出部において分離されたADG含有流を、蒸留塔K70に供給し、その内部で、ADGを、側方抜出部を介して分離し、224.8℃以上の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、底部を介して分離し、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、頂部を介して分離することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記塔K60が隔壁塔(TK)であることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記塔K60および/またはK70で頂部を介して分離された1つ以上の前記ADG含有流を、完全または部分的に塔K80に供給し、その内部で、ADGおよび224.8℃以上の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、底部を介して分離し、224.8以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を、頂部を介して分離することを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記塔K60で底部を介して分離された有機生成物含有流を、蒸発器V2に供給し、その内部で、モルホリンアミノジグリコール、モルホリンジグリコールおよびDEGを、気体状で分離することを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
DEGとアンモニアとの前記反応を、反応器C1内で行い、DEGおよびアンモニアを、C1に入る前に、2~50barの圧力を有する加熱蒸気が供給される熱交換器W2により加熱することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記塔K10、K20、K30、K50、K60およびK70に、前記底部を加熱するために、2~50barの圧力を有する加熱蒸気が供給される蒸発器がそれぞれ備えられていることを特徴とする、請求項2、5、6および7、ならびに任意で請求項3、4および8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記塔K40のための加熱蒸気が、熱交換器内での加熱蒸気の凝縮で生じる凝縮物の減圧式蒸発により得られ、前記加熱蒸気が、前記熱交換器内でのその凝縮の前に、2~50barの圧力を有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記熱交換器が、前記熱交換器W2であるか、または前記塔K10、K20、K30、K50、K60もしくはK70のうちの1つの前記蒸発器であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
DEGとアンモニアとの前記反応の反応混合物を、前記塔K10への供給前に、蒸発器V1に供給し、その内部で、アンモニアの一部を、気体状で分離することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項16】
1~10barの圧力を有する加熱蒸気を、前記蒸発器V1に供給することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記蒸発器V1のための加熱蒸気が、熱交換器内での加熱蒸気の凝縮で生じる凝縮物の減圧式蒸発により得られ、前記加熱蒸気が、前記熱交換器内でのその凝縮の前に、2~50barの圧力を有することを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記熱交換器が、前記熱交換器W2であるか、または前記塔K10、K20、K30、K50、K60もしくはK70のうちの1つの前記蒸発器であることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式:
【化1】
のジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応により得られた、モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール[=2-メトキシエタノール=メチルグリコール](MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法に関する。
【0002】
アミノジグリコール(ADG)[=2-(2-アミノエトキシ)エタノール=2,2’-アミノエトキシエタノール、式
【化2】
]およびモルホリンは、特に、溶剤、安定剤として、キレート剤、合成樹脂、医薬品、阻害剤および界面活性物質の合成のために使用される。N-エチルモルホリン(E-MO)は、特にポリウレタンフォームの製造のための触媒として使用される。
【0003】
ADGおよびモルホリンの製造に関して、文献には数多くの方法が記載されている。
【0004】
Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th Edition, 2000 electronic release, Wiley-VCH Verlag, ’aliphatic amines’章の項目’cyclic amines’には、水素圧下、かつコバルトまたはニッケル触媒(引用:欧州特許出願公開第696572号明細書(BASF AG)、西独国特許出願公開第1049864号明細書)または他の触媒(引用:独国特許出願公開第3002342号明細書、独国特許出願公開第3125662号明細書(BASF AG)、米国特許第3155657号明細書)の存在下でのDEGのアミノ化によるADGおよびMOの合成が記載されている。
【0005】
先願の2005年9月30日付のドイツ連邦共和国特許出願番号第102005047458.6号および先願の2006年2月6日付の欧州(後続)特許出願番号第06101339.7号(BASF AG)は、DEGとアンモニアとを、特定の銅、ニッケルおよびコバルト不均一系触媒の存在下にて反応させること、ならびに一般的に多段蒸留により後処理することによる、ADGおよびモルホリンの製造法に関する。
【0006】
国際公開第2008/037589号および国際公開第2008/037590号(どちらもBASF AG)のどちらの特許出願も、ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応により得られた、モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニアおよび水を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法に関する。
【0007】
国際公開第2008/037587号(BASF AG)も同様に、ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応により得られた、モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニアおよび水を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法に関する。具体的には、2.2bar(絶対圧)での粗モルホリンの蒸留が開示されている。
【0008】
国際公開第2008/037659号は、エレクトロニクス品質のADGの製造法に関する。
【0009】
中国特許出願公開第102002019号明細書には、モルホリンからメトキシエタノールを取り出すための蒸留法が記載されている。そのために、水蒸気が、相応する蒸留塔に供給される。その際、メトキシエタノールと水との共沸混合物の形成が利用される。
【0010】
中国特許出願公開第104262173号明細書および中国特許出願公開第104262177号明細書には、どちらにも、DEGとアンモニアとを反応させる方法が記載されている。中国特許出願公開第104262177号明細書には、得られる混合物を後処理する方法がさらに記載されている。
【0011】
モルホリンおよびモノアミノジグリコールの合成は、多数の副成分の形成が顕著である。未反応の出発物質、有用生成物および副生成物の分離は、蒸留により行われるため、装置およびエネルギー面での相当な費用が生じる。
【0012】
それらの沸点が互いに近いことから、特にモルホリンおよびメトキシエタノールの分離は困難である。さらに、近年、モルホリンの純度に対する要件がますます高まっている。
【0013】
本発明の課題は、従来技術の1つ以上の欠点を克服しつつ、モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水、およびメトキシエタノール、および場合によってN-エチルモルホリン(E-MO)、および場合によって1,2-エチレンジアミン(EDA)、および場合によって224.8℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を含有する混合物を分離するための、改善された経済的な、特にエネルギー効率の良い方法を見出すことであった。その際、個々の有機成分(アミン)、特にMOおよびADGおよび場合によってE-MOは、高い純度および品質(例えば色調品質)で生じることが望ましい。
【0014】
よって、ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応により得られた、モルホリン(MO)、モノアミノジグリコール(ADG)、アンモニア、水およびメトキシエタノール(MOE)を含有する混合物を連続的に蒸留により分離するための方法において、アンモニア、水、ADGおよびDEGを蒸留により分離し、得られたMOおよびMOE含有流を蒸留塔K40に供給し、その内部にて、20~2000mbarの頂部圧力で、底部を介して、MO、MOE、および128℃以上の沸点(1.013bar)を有する有機生成物を分離し、頂部を介して、128℃以下の沸点を有する有機生成物を分離し、側方抜出部を介してMOを分離し、K40に、前記底部を加熱するために、1~10barの圧力を有する加熱蒸気が供給される蒸発器が備えられていることを特徴とする方法が見出された。
【0015】
驚くべきことに、本発明による圧力範囲において、MOEの著しく改善された分離が可能であると分かった。本発明による蒸留条件で、MOEおよびMOは、底部を介して取り出すことが可能な高沸点共沸混合物を形成すると想定される。よって、例えば、MOEを水/MOE共沸混合物として取り出すためにさらに水蒸気をK40に供給することを省略することができる。
【0016】
さらに、K40を、1~10barの低い圧力しか有しない加熱蒸気を用いて運転することができると分かった。この圧力は、好ましくは1~8bar、特に好ましくは1~6bar、極めて特に好ましくは2~5bar、または2~3barでさえある。さらに、そのような加熱蒸気は、下記のように、熱交換器内での加熱蒸気の凝縮で生じる凝縮物の減圧式蒸発により得ることが可能であり、加熱蒸気は、熱交換器内でのその凝縮の前に、2~50barの圧力を有することが分かった(下記参照)。
【0017】
特に記載されていない限り、各蒸留塔および蒸発器内の圧力の数値ならびに加熱蒸気の数値は、絶対圧に関連する。
【0018】
特に記載されていない限り、各蒸留塔内の圧力についての以下の数値は、頂部圧力に関連する。
【0019】
DEGとアンモニアとの反応は、反応器C1内で行われることが一般的であり、DEGおよびアンモニアは、C1に入る前に、2~50bar、好ましくは3~45bar、特に好ましくは4~40barの圧力を有する水蒸気が供給される熱交換器W2により加熱される。
【0020】
DEGとアンモニアとの反応は、水素および不均一系水素化触媒(以下、触媒とも称する)の存在下で行われることが一般的である。その際、水素は、高圧分離器を介して循環ガスとして反応器に返送されることが好ましい。
【0021】
DEGとアンモニアとの反応においては、特に実施形態(A)および(B)が好ましい。以下で、まず実施形態(A)について、続いて実施形態Bについて説明する。
【0022】
好ましい実施形態(A)において、転化率は、DEGを基準として、好ましくは40~90%(例えば40~75%)、好ましくは50~80%、特に好ましくは50~75%、または50~70%でさえある。
【0023】
ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応は、水素および不均一系水素化触媒の存在下で行われることが好ましく、ここで、
- 転化率は、DEGを基準として、40~90%(例えば40~75%)、好ましくは50~80%、特に好ましくは50~75%、または50~70%でさえあり、
- 反応は、100~300barの圧力および170℃~220℃の温度で行われ、
- DEGに対するアンモニアのモル比は、4~10であり、
- 触媒空間速度は、触媒1リットル(床体積)および1時間あたり、ジエチレングリコール(DEG)0.05~5kg、好ましくは0.1~2kgである。
【0024】
先の段落に挙げた不均一系水素化触媒は、Cu、Niおよび担体としての酸化アルミニウムを含有することが好ましい。特に好ましい不均一系水素化触媒において、触媒の触媒活性物は、水素による処理の前に、アルミニウム、銅、ニッケルおよびコバルトの酸素含有化合物を含有し、SnOとして計算して0.2~5.0重量%の範囲で、スズの酸素含有化合物を含有する。このタイプの触媒は、例えば国際公開第2011/067199号(BASF SE)に記載されている。特に、その触媒活性物が、水素による還元の前に、
Alとして計算して15~80重量%の範囲のアルミニウムの酸素含有化合物、
CuOとして計算して1~20重量%の範囲の銅の酸素含有化合物、
NiOとして計算して5~35重量%の範囲のニッケルの酸素含有化合物、
CoOとして計算して5~35重量%の範囲のコバルトの酸素含有化合物、および
SnOとして計算して0.2~5.0重量%の範囲のスズの酸素含有化合物
を含有する触媒が使用される。
【0025】
本発明による方法において使用される混合物の製造は、国際公開第2011/067199号(BASF SE)に従って行われることが特に好ましい。
【0026】
最大75%の転化率における実施形態(A)は、ADG主体の操作に相応する。すなわち、相応してモルホリン(MO)よりも多くのADGが形成される。
【0027】
別の好ましい実施形態(B)においては、担体としての酸化アルミニウム上にCuおよびNiを含む触媒、例えば、特に欧州特許出願公開第70397号明細書(BASF AG)に記載のものが使用される。このタイプの触媒は、欧州特許出願公開第514692号明細書および欧州特許出願公開第167872号明細書(どちらもBASF AG)にも記載されている。
【0028】
ここで特に好ましい触媒において、触媒の触媒活性物は、水素による処理の前に、25~65重量%の範囲の酸化アルミニウム(Al)、CuOとして計算して30~60重量%の範囲の銅の酸素含有化合物、およびNiOとして計算して5~15重量%の範囲のニッケルの酸素含有化合物を含有する。
【0029】
この場合、ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応にとって好ましい反応器内温度は、190~235℃の範囲にある。等温で反応器を操作することが好ましい。
【0030】
ジエチレングリコール(DEG)とアンモニアとの反応にとって好ましい圧力は、20~30barの範囲にある。
【0031】
DEGに対するアンモニアのモル比は、1:1~50:1の範囲にあることが好ましい。DEG転化率は、80~98%の範囲にあることが好ましい。
【0032】
触媒空間速度は、触媒1リットル(床体積)および1時間あたり、ジエチレングリコール(DEG)0.01~2kg、好ましくは0.05~0.5kgの範囲にあることが一般的である。
【0033】
実施形態(B)は、MO主体の操作に相応する。すなわち、相応してADGよりも多くのモルホリン(MO)が形成される。
【0034】
実施形態(A)による反応は、実施形態(B)による反応よりも好ましい。
【0035】
好ましくは、アンモニア、水、ADGおよびDEGを蒸留により分離するために、アンモニアが、第一の蒸留塔K10内で頂部を介して分離され、K10の底部搬出物が、第二の蒸留塔K20に供給され、その内部で、水および有機生成物が、頂部を介して45~198℃の頂部温度および0.1~15barの頂部圧力で分離され、K20の底部搬出物が、第三の蒸留塔K30に供給され、その内部で、MO、MOE、および140℃未満の沸点(1.013bar)を有する有機生成物(MOおよびMOE含有流)が、頂部または側方抜出部を介して分離され、ADG、DEG、および190℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、底部を介して分離される。
【0036】
塔K40内で底部を介して分離された有機生成物は、メトキシエタノール(MOE)の含量が高いことから、廃棄、例えば焼却されることが一般的である。
【0037】
塔K10は、3~30の範囲、特に5~20の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K10は、5~30bar、特に10~20barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0038】
塔K10の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の上側に存在することが好ましい。
【0039】
塔K20は、25~70の範囲、特に30~60の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K20は、0.1~10bar、特に0.8~7barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0040】
塔K20の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の中央に存在することが好ましい。
【0041】
塔K20内にて、水が分離されることが好ましい。この水とともに、底部生成物であるモルホリンよりも部分的に高い沸点を有する有機生成物が、極小共沸混合物として頂部を介して分離されることが好ましい。
【0042】
ADG主体の操作(上記参照)の場合、塔K10およびK20の底部に、多くの高沸点物質(特にADGおよびDEG)が存在し、それにより相応して高い底部温度が生じるという問題がある。これは特に、元々MO主体の操作を念頭に置いて設計された既存の設備にとって問題となる。これは、ADGに比べて相応して多くのモルホリンが製造される操作であると理解される。ここで、高沸点成分であるDEGおよびADGの量は、結果として、ADG主体の操作の場合よりも著しく少ない。そのような設備がADG主体で運転されることが望まれる場合、高沸点成分であるDEGおよびADGの含量がより多いことから、50barまでの圧力を有することが一般的な従来的に(そのような設備のために)利用可能な加熱蒸気が、K10およびK20の底部に十分に熱を供給するのにもはや十分ではないという問題が生じることがある。さらに、高い底部温度により引き起こされる、生成物品質の低下の問題がある。それから、相応して高い圧力(例えば50bar超)を有する加熱蒸気は、特にそれに必要なエネルギーの面で、製造に非常に費用がかかるという欠点もある。
【0043】
よって、塔K20で頂部を介して分離された水および有機生成物含有流は、部分的に塔K10のフィードまたは缶出物に返送されることが好ましい。好ましくは10~80重量%、特に好ましくは20~70重量%が返送される。
【0044】
同様に、塔K30で頂部を介して分離されたMOおよびMOE含有流、ならびに/またはK40の側方抜出部で得られる流(モルホリン)は、部分的に塔K20のフィードに返送されることが好ましい。合計20~90重量%、特に好ましくは25~80重量%のK30および/またはK40からの返送流が返送されることが好ましい。双方の塔からの返送の場合、先の文のパーセントの記載は、K30から頂部において得られた流と、K40から側方抜出部において得られた流との合計に関連する。K30および/またはK40からのそのような返送は、塔K20内の圧力が1.5~10barまたは2~7barの範囲にある場合、特に有利である。
【0045】
各返送により、K10およびK20内の底部温度が下がる。よって、生成物品質が改善され、前述の蒸留塔が、従来的に利用可能な加熱蒸気を用いて運転可能になる。よって、K10およびK20の蒸発器に供給される加熱蒸気は特に、これらの塔について以下に記載した(好ましい)範囲に応じた圧力を有する。
【0046】
塔K30は、5~25の範囲、特に7~20の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K30は、0.01~5bar、特に0.1~2.5barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0047】
塔K30の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の上側に存在することが好ましい。代替的な実施形態において、側方抜出部は、好ましくは1~8の理論分離段、特に2~6の理論分離段の分だけ、供給箇所の上方に存在する。
【0048】
塔K40は、10~80の範囲、特に15~60の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K40は、30~1500mbar、特に好ましくは50~800mbar、極めて特に好ましくは80~750mbar、例えば100~500mbar、または100~450mbarの範囲でさえある圧力で運転されることが好ましい。
【0049】
塔K40の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の上側または中央、特に中央に存在することが好ましい。反対側のMO側方抜出部は、1~30の理論分離段、特に2~25の理論分離段の分だけ、供給箇所の下方に存在することが好ましい。塔K40内では、128℃以下の沸点(1.013bar)、好ましくは128℃未満の沸点(1.013bar)を有する有機生成物、例えばEDAが、頂部を介して分離され、128℃以上の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、底部を介して分離される。
【0050】
塔K40内で頂部を介して分離された有機生成物、特にEDAは、完全または部分的に塔K20へのフィードに返送されることが有利であり得る。
【0051】
さらなる実施形態においては、頂部留出物をさらに蒸留により精製することにより、純粋なEDAを有用生成物として得ることができる。
【0052】
特定の実施形態において、塔K20で頂部を介して分離された水および有機生成物含有流は、塔K50に供給され、その内部で、N-エチルモルホリン水溶液(E-MO水溶液)が、頂部または液体側方抜出部を介して分離され、その際、液体側方抜出部が、理論分離段数を基準として、塔の三分の一の上側に存在することが好ましく、また水が、底部を介して分離される。
【0053】
塔K50は、10~50の範囲、特に15~40の範囲の理論分離段を有することが好ましい。
【0054】
塔K50は、0.1~16bar、特に0.2~8barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0055】
塔K50の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の上側または中央、特に中央に存在することが好ましい。
【0056】
N-エチルモルホリン水溶液は、純粋なE-MOを得るために、まず脱水される。脱水剤としては、苛性ソーダ液が、例えば、40~60重量%の水溶液、特に50重量%の水溶液として使用されることが好ましい。苛性ソーダ液による脱水は、連続的に抽出塔内で実施されることが好ましい。抽出温度は、25~60℃、特に30~55℃であることが好ましい。ここで、苛性ソーダ液は、15~35重量%、特に20~30重量%に希釈される。
【0057】
相分離後に、有機相は、連続的または非連続的な蒸留で後処理される。蒸留は、非連続的に蒸留窯内で実施されることが好ましい。ここで、頂部生成物は連続的に生じ、場合によってエチルアミン、場合によってエタノールが、水性共沸混合物として、場合によってN-メチルモルホリンが水性共沸混合物として、場合によって水不含のN-メチルモルホリンおよび有用生成物であるN-エチルモルホリン(E-MO)が生じる。
【0058】
好ましい実施形態において、K30の底部搬出物は、蒸留塔K60に供給され、その内部で、ADGが、側方抜出部において分離され、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、頂部を介して分離され、255℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、底部を介して分離される。
【0059】
塔K60は、20~80の範囲、特に30~70の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K60は、0.005~1bar、特に0.01~0.7barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0060】
塔K60の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の中央または下側、特に中央に存在することが好ましい。反対側のADG側方抜出部は、1~30、特に2~20の理論分離段の分だけ、供給箇所の上方に存在することが好ましい。
【0061】
好ましい実施形態において、塔K60内で頂部を介して分離された有機生成物、例えばN-(2-アミノエチル)モルホリン、2-(2-アミノエトキシ)エチルアミンは、DEGとアンモニアとの反応に返送される。
【0062】
個々の成分が製造設備の循環中に蓄積するのを回避するために、塔頂部で分離された留出物の部分流が排出されることが好ましい。返送流の割合は、塔頂部で分離された留出物の好ましくは40~100重量%、特に好ましくは50~100重量%である。
【0063】
塔K60で側方抜出部において分離されたADG含有流は、塔K70に供給され、その内部で、ADGが、側方抜出部を介して分離され、224.8℃以上の沸点(1.013bar)、特に235℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、底部を介して分離され、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、頂部を介して分離されることが好ましい。
【0064】
塔K70は、10~80の範囲、特に20~70の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K70は、0.005~1bar、特に0.01~0.7barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0065】
塔K70の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の上側または中央、好ましくは中央に存在することが好ましい。反対側のADG側方抜出部は、1~30、特に2~25の理論分離段の分だけ、供給箇所の上方に存在することが好ましい。
【0066】
塔K70内で底部を介して分離された生成物、例えば、DEG、モルホリルアミノジグリコール、モルホリノジグリコールは、DEGとアンモニアとの反応に返送されることが好ましい。(モルホリルアミノジグリコール=4-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)モルホリン、C18;モルホリノジグリコール(モルホリニルエトキシエタノール)CAS番号3603-45-0、C17NO)。
【0067】
塔K70内で頂部を介して分離された生成物、例えば、ADG、N-(2-アミノエチル)モルホリン、2-(2-アミノエトキシ)エチルアミンは、DEGとアンモニアとの反応に返送されることが好ましい。
【0068】
返送流の割合は、塔頂部で分離された留出物の好ましくは80~100重量%、特に好ましくは95~100重量%である。
【0069】
さらなる特に好ましい実施形態において、塔K60は隔壁塔(TK)である。
【0070】
隔壁塔(TK)は、塔の長手方向に隔壁(T)を有し、上方の共通の塔領域(1)、下方の共通の塔領域(6)、濃縮部(2)とストリッピング部(4)とを有する供給部(2,4)、ならびに濃縮部(3)とストリッピング部(5)とを有する排出部(3,5)を形成し、その際、K30の底部搬出物の供給が、供給部の理論分離段数を基準として、供給部(2,4)の三分の一の上側または中央、特に三分の一の上側で行われ、255℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物の排出が、底部を介して行われ、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物の排出が、頂部を介して行われ、ADGの排出が、塔領域1から行われ、かつ任意で、特定の実施形態において好ましくは、224.8℃以上の沸点(1.013bar)、特に235℃超の沸点(1.013bar)を有する蒸気状の有機生成物、例えばDEGの排出が、排出部の理論分離段数を基準として、排出部(3,5)(側方抜出部)の三分の一の上側または中央、特に三分の一の上側から行われることが好ましい。
【0071】
塔K60内で蒸気側方抜出部を介して分離された有機生成物、例えばDEGは、DEGとアンモニアとの反応に返送されることが好ましい。
【0072】
さらなる有利な実施形態において、隔壁塔(TK)は、塔の長手方向に隔壁(T)を有し、上方の共通の塔領域(1)および(2)、濃縮部(3)とストリッピング部(4)とを有する供給部(3,4)、ならびに部(5)を形成し、その際、隔壁Tは塔の底まで形成されており、その際、K30の底部搬出物の供給が、供給部の理論分離段数を基準として、供給部(3,4)の三分の一の上側または中央、特に三分の一の上側で行われ、DEGおよび224.8℃以上の沸点(1.013bar)、好ましくは235℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物の排出が、部5の下方の底部を介して行われ、255℃超の沸点(1.013bar)を有する有機生成物(高沸点物質=HS)の排出が、部3および4の下方の底部を介して行われ、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物の排出が、頂部を介して行われ、ADGの排出が、上方の共通の塔領域(1)および(2)(側方抜出部)の中央部から行われる。
【0073】
隔壁塔K60は、30~100の範囲、特に40~90の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K60は、0.005~1bar、特に0.01~0.7barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0074】
部分領域3,4および5もしくは2,3,4および5から、またはそれぞれそれらの部分から成る、隔壁(T)により分割された塔TKの部分領域には、規則充填物、不規則充填物および/またはトレイが設けられていることが好ましい。これらの部分領域における隔壁は、断熱的に構成されていることが好ましい。
【0075】
好ましい実施形態において、塔K60内で頂部を介して分離された有機生成物、例えばN-(2-アミノエチル)モルホリン、2-(2-アミノエトキシ)エチルアミンは、排出されずに、DEGとアンモニアとの反応に返送される。
【0076】
底まで隔壁Tが形成された塔K60において、部5の下方の底部を介して分離された有機生成物、例えばDEGは、DEGとアンモニアとの反応に返送されることが好ましい。
【0077】
返送流の割合は、塔頂部で分離された留出物の好ましくは80~100重量%、特に好ましくは95~100重量%である。
【0078】
特定の実施形態において、本発明による方法は、隔壁塔(TK)が使用される場合、2つまたは3つの塔の接続(K60~K70またはK80)に比べて熱需要がわずかであることにより、ならびに塔の数が減ることにより有利である。
【0079】
本発明による方法の特定の実施態様において、塔K60および/またはK70で頂部を介して分離された1つ以上のADG含有流は、完全または部分的に塔K80に供給され、その内部で、ADGおよび224.8℃以上の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、底部を介して分離され、224.8℃以下の沸点(1.013bar)を有する有機生成物が、頂部を介して分離される。
【0080】
底部において生じるADGは、有用生成物として使用することが可能である。
【0081】
塔K80内で、特に純粋な形態のADGが、側方抜出部を介してさらに分離される。この場合、塔K80内で底部を介して分離された生成物は、塔K60および/またはK70のフィードに返送されることが好ましい。
【0082】
塔K80内で頂部を介して分離された生成物は、DEGとアンモニアとの反応に返送されることが好ましい。
【0083】
個々の成分が製造設備の循環中に蓄積するのを回避するために、塔頂部で分離された留出物の部分流が排出されることが好ましい。返送流の割合は、塔頂部で分離された留出物の好ましくは0~100重量%、特に好ましくは0~50重量%である。
【0084】
塔K80は、10~80の範囲、特に15~60の範囲の理論分離段を有することが好ましい。塔K80は、0.005~3bar、特に0.01~2barの範囲の圧力で運転されることが好ましい。
【0085】
塔K80の供給箇所は、理論分離段数を基準として、三分の一の上側または中央、好ましくは上側に存在することが好ましい。反対側のADG側方抜出部は、1~30、特に2~25の理論分離段の分だけ、供給箇所の下方に存在することが好ましい。
【0086】
好ましい実施形態において、塔K60で底部を介して分離された有機生成物含有流は、蒸発器V2に供給され、その内部で、モルホリンアミノジグリコール、モルホリンジグリコールおよびDEGが、気体状で分離される。これらは、例えばジモルホリンジエチルエーテル(DMDEE)の製造に使用することが可能である。蒸発器V1は、2~25mbarの圧力で運転されることが好ましい。蒸発器V2としては、それぞれ、自然対流式蒸発器、強制循環式蒸発器、強制循環減圧式蒸発器、流下薄膜式蒸発器、ロバート式蒸発器、釜型蒸発器、薄膜式蒸発器または上昇薄膜式蒸発器を使用することができる。それぞれ、自然対流式蒸発器、強制循環式蒸発器、強制循環減圧式蒸発器、流下薄膜式蒸発器、ロバート式蒸発器または釜型蒸発器を使用することが好ましい。薄膜式蒸発器が特に好ましい。
【0087】
塔K10~K80に、底部を加熱するために、蒸発器が備えられていることが一般的である。蒸発器としては、それぞれ、自然対流式蒸発器、強制循環式蒸発器、強制循環減圧式蒸発器、流下薄膜式蒸発器、ロバート式蒸発器、釜型蒸発器、薄膜式蒸発器または上昇薄膜式蒸発器を使用することができる。それぞれ、自然対流式蒸発器、強制循環式蒸発器、強制循環減圧式蒸発器、流下薄膜式蒸発器、ロバート式蒸発器または釜型蒸発器を使用することが好ましい。
【0088】
蒸留塔K10、K20、K30、K50、K60およびK70に、底部を加熱するために、2~50bar、好ましくは3~45bar、特に好ましくは4~40barの圧力を有する加熱蒸気が供給される蒸発器が備えられていることが好ましい。
【0089】
本発明による方法は、特定の実施形態において、以下の集熱措置によりさらに有利である:
K80の蒸気からの熱を、K50内で集積することができる。
K70の蒸気からの熱を、K50および/またはK80、好ましくはK50内で集積することができる。
K60の蒸気からの熱を、K50内で集積することができる。
K40の蒸気からの熱を、K20、K50および/またはK80内で集積することができる。
隔壁塔K60の蒸気からの熱を、K50内で集積することができる。
【0090】
この集熱を以下のように実施することができる:
生じる蒸気の熱を最大限利用し得るためには、伝熱媒体を省略することが好ましく、蒸気流を、加熱蒸気ではなく、相応する蒸発器内で直接凝縮させることが好ましい。先に挙げた蒸発器が好ましい。残りの蒸気は、後凝縮器内でその都度液化されることが好ましい。
【0091】
さらに、分離すべき混合物の合成からの反応熱を、特に沸騰冷却(Siedekuehlung)(水蒸気)により排出し、蒸留で集積することが有利である。合成においては、特に実施形態(A)および(B)、特に実施形態(A)が好ましい。
【0092】
この場合、反応熱を、塔K20、K50、K30、K40、K70および/またはK80内で、好ましくは塔K20、K40および/またはK80内で集積することができる。
【0093】
集熱に関するさらなる好ましい実施形態において、塔K40のための加熱蒸気は、熱交換器内での加熱蒸気の凝縮で生じる凝縮物の減圧式蒸発により得られ、加熱蒸気は、熱交換器内でのその凝縮の前に、2~50bar、好ましくは3~45bar、特に好ましくは4~40barの圧力を有する。この場合、熱交換器に供給される加熱蒸気の圧力は、減圧式蒸発により得られK40の蒸発器に供給される加熱蒸気の圧力よりも必然的に大きい。このタイプの集熱は、塔を本発明の低い圧力で運転することにより可能になる。本発明によると、塔K40のための加熱蒸気は、完全または部分的に、相応する凝縮物の減圧式蒸発により得ることが可能である。必要な残りの熱の一部を、グリッドからの水蒸気(圧力範囲:1~10bar)によりもたらすことが可能である。通常、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、極めて特に好ましくは少なくとも80%、または少なくとも90%でさえある必要な加熱蒸気が、減圧式蒸発により得られる。同様に、加熱蒸気を完全に減圧式蒸発により得ることも可能である。
【0094】
減圧式蒸発は、技術的には、熱交換器内で凝縮された蒸気が減圧されて適切な釜へと(部分的に)送られるように実現されることが一般的である。それにより、凝縮物は蒸発し、改めて加熱蒸気として利用可能になる。そのようにして得られた加熱蒸気は、最初に熱交換器内に供給されたものよりも低い圧力を必然的に有する。
【0095】
熱交換器としては、基本的に、相応する圧力を有する加熱蒸気を用いて運転されるあらゆる任意の熱交換器が考えられる。よって、これは、本発明による方法に属する熱交換器である必要はない。これは、熱交換器W2(下記参照)であるか、または塔K10、K20、K30、K50、K60もしくはK70のうちの1つの蒸発器であることが好ましい。さらに、本発明は、集熱がちょうど1つの熱交換器(例えばK10)で行われるように限定されてはいない。K40で必要とされる熱量に応じて、K40への集熱を2つ以上の熱交換器(例えば、K10およびK20)から行うことも可能である。同様に、なおも必要とされる残りの熱を、先に記載のように、グリッドからの水蒸気によりもたらすことが可能である。
【0096】
好ましい実施形態において、DEGとアンモニアとの反応の反応混合物は、塔K10への供給前に、蒸発器V1に供給され、その内部で、アンモニアの一部、好ましくは供給流中に含有されるアンモニアの20~80重量%が、気体状で分離される。蒸発器V1は、14~25barの圧力で運転されることが好ましい。先でV2について挙げたものと同じ蒸発器を使用することができる。V2は、釜型蒸発器であることが極めて特に好ましい。
【0097】
蒸発器V1には、1~10bar、好ましくは1~8bar、特に好ましくは1~6bar、または2~5barもしくは2~3barでさえある圧力を有する加熱蒸気が供給されることが好ましい。
【0098】
特に好ましい実施形態において、蒸発器V1のための加熱蒸気は、熱交換器内での加熱蒸気の凝縮で生じる凝縮物の減圧式蒸発により得られ、加熱蒸気は、熱交換器内でのその凝縮の前に、2~50bar、3~45bar、特に好ましくは4~40barの圧力を有する。この場合、熱交換器に供給される加熱蒸気の圧力は、減圧式蒸発により得られ蒸発器V1に供給される加熱蒸気の圧力よりも必然的に大きい。本発明によると、蒸発器V1のための加熱蒸気は、完全または部分的に、相応する凝縮物の減圧式蒸発により得ることが可能である。必要な残りの熱の一部を、グリッドからの水蒸気(圧力範囲:1~10bar)によりもたらすことが可能である。通常、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、極めて特に好ましくは少なくとも80%、または少なくとも90%でさえある必要な加熱蒸気が、減圧式蒸発により得られる。同様に、加熱蒸気を完全に減圧式蒸発により得ることも可能である。
【0099】
熱交換器としては、基本的に、相応する圧力を有する加熱蒸気を用いて運転されるあらゆる任意の熱交換器が考えられる。よって、これは、本発明による方法に属する熱交換器である必要はない。熱交換器は、熱交換器W2であるか、または塔K10、K20、K30、K50、K60もしくはK70のうちの1つの蒸発器であることが好ましい。さらに、本発明は、集熱がちょうど1つの熱交換器(例えばK10)で行われるように限定されてはいない。V1で必要とされる熱量に応じて、V1への集熱を2つ以上の熱交換器(例えば、K10およびK20)から行うことも可能である。同様に、なおも必要とされる残りの熱を、先に記載のように、グリッドからの水蒸気によりもたらすことが可能である。
【0100】
そうでなければ、この場合、K40への集熱について先に述べたことが、相応して当てはまる。
【0101】
K40および蒸発器V1の双方に集熱が行われるそのような実施形態において、減圧式蒸発により得られる加熱蒸気は、同じ熱交換器および異なる熱交換器のどちらに由来していてもよい。例えば、K40およびV1への集熱を、K10の蒸発器のみから行ってもよい。同様に、K40への集熱は、K10の蒸発器から行うことが可能であり、V1への集熱は、K20の蒸発器から行うことが可能である。
【0102】
本発明による方法は、
99.5重量%以上、特に99.6重量%以上、例えば99.65~99.95重量%の純度、
0.20重量%以下、特に0.10重量%以下、例えば0.01~0.08重量%のN-エチルモルホリン(E-MO)含量、
0.30重量%以下、特に0.20重量%以下、例えば0.05~0.15重量%の1,2-エチレンジアミン(EDA)含量、
0.3重量%未満、特に0.10重量%以下、特に0.04重量%~0.1重量%の2-メトキシエタノール(MOE)含量、および
0.05重量%以下、特に0.04重量%以下、例えば0.01~0.03重量%の水含量
を有するモルホリン(MO)の製造に特に有利である。
【0103】
これは、
10以下、特に8以下、例えば2~7のAPHA色数、および
15mg/L以下、特に5mg/L以下、極めて特に1mg/L以下、例えば0.1~0.9mg/L以下の塩化物含量
を有するモルホリン(MO)の製造に極めて特に有利である。
【0104】
本発明による方法は、さらに、
98.00重量%以上、特に98.30重量%以上、例えば98.50~99.50重量%の純度、
0.40重量%以下、特に0.10重量%以下、例えば0.01~0.08重量%のDEG含量、
0.20重量%以下、特に0.10重量%以下、例えば0.01~0.08重量%の水含量、および
20以下、特に15以下、極めて特に10以下、例えば2~8のAPHA色数
を有するモノアミノジグリコール(ADG)の製造に特に有利である。
【0105】
本発明による方法は、さらに、
98.50重量%以上、特に99.00重量%以上、例えば99.50~99.90重量%の純度、
0.30重量%以下、特に0.20重量%以下、例えば0.05~0.15重量%の水含量、および
50以下、特に20以下、極めて特に10以下、例えば2~8のAPHA色数
を有するN-エチルモルホリン(E-MO)の製造に特に有利である。
【0106】
APHA色数は、DIN EN 1557により測定される。含水量は、DIN 51777(K. Fischer)により測定される。塩化物含量は、イオンクロマトグラフィーを用いて、以下の方法により測定される(化学的サプレッションによる伝導性の検出):
試料の用意:約2gの試料をメスフラスコ(10ml)内に量り入れ、溶離液を標線まで充填
測定条件:
イオンクロマトグラフィーシステム:Metrohm Modulares System (733)
プレカラム:例えばDIONEX AG12;分離カラム:例えばDIONEX AS12
溶離液:例えば水中で2.7mmolのNaCO、0.28mmol/lのNaHCO
流量:1ml/分;計量供給体積:100μl
検出:化学的サプレッションによる伝導性
サプレッサー:Metrohm Modul 753
再生液:高純水中の50mmolのHSO(約0.4ml/分の流量)
校正:外部、標準添加実験により検査
測定限界:試料中で0.1mg/kg塩化物。
【0107】
有用生成物であるモルホリンにおいて、モルホリン、1,2-エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、2-メトキシエタノールの含量を、GCを用いて測定する(GC条件:30m DB-1;温度プログラム:初期温度60℃、加熱速度4℃/分、最終温度190℃)。
【0108】
有用生成物であるADGにおいて、ADGおよびDEGの含量を、GCを用いて測定する(GC条件:30m DB1;温度プログラム:初期温度100℃、加熱速度8℃/分、最終温度250℃)。
【0109】
以下で、本方法の特に好ましい実施形態(図5参照)について説明する。
【0110】
ジグリコール(DEG)を、塔K70の底部生成物(主成分:ジグリコールおよびモルホリルADG)ならびに塔K60およびK70からの頂部生成物(主成分:アミノジグリコール、(2-アミノエチル)モルホリンおよび2-(2-アミノエトキシ)エチルアミン)と混合し、連続的に熱交換器W1に供給する。液体アンモニアを、塔K10から返送されたアンモニアと混合し、連続的に熱交換器W1に供給する。双方の流を、熱交換器W1の前で、主に水素からなる循環ガスと混合する。圧縮器D1を用いて、循環ガスを、合成出口に存在する高圧分離器B1から導き寄せる。熱交換器W1から、混合物を加熱器W2により加熱し、反応器C1に送る。そこにある固定床触媒上で、ジグリコールがアミノジグリコールおよびモルホリンになる反応が起こる。その後、反応器搬出物を、熱交換器W1、W3および空気冷却器W4内で冷却する。高圧分離器B1内で、気相および液相への分離が行われる。気相は、先に記載のように、循環ガスとして熱交換器W1に導かれる。
【0111】
液相を減圧して、高圧分離器B1から中圧分離器B2に送る。そこで放出されるいわゆる発泡ガスを、NH回収のために吸収器に導く。補うべき水素量をグリッドから取り出し、合成フィードに供給する。
【0112】
その後、反応混合物は、中圧分離器B2から熱交換器W3を介して蒸発器V1に到達する。
【0113】
アンモニア分離(V1およびK10)
V1内で、アンモニアの一部が反応混合物から分離される。塔K10内で、残りのアンモニアが留去され、反応器入口に返送される。さらに、K20の頂部生成物の一部が塔K10に供給される。K10の蒸発器内で凝縮された加熱蒸気が、減圧式蒸発により再度蒸発させられ、続いて蒸発器V1に供給される。
【0114】
水分離(K20)
塔K20内で、反応水が分離される。主に水を含有し、かつ少しの低沸点物質(主にエチルモルホリン)を含有する留出物が、塔K50に導かれる。さらに、モルホリン精留K40の頂部生成物(主成分:1,2-エチレンジアミン、モルホリンおよび水)と、K30の頂部生成物の一部とが、塔K20に供給される。K20の十分に水不含の缶出物(主成分:モルホリン、アミノジグリコール、ジグリコールおよび高沸点残留物)が、減圧されて塔K30に送られる。K20の蒸発器内で凝縮された加熱蒸気が、減圧式蒸発により再度蒸発させられ、続いて塔K40の蒸発器に供給される。
【0115】
LS/HS分離(K30)
塔K30内で、塔K20の底部抜出分が、低沸点物質留分(主成分:モルホリン)と、高沸点物質留分(主成分:アミノジグリコール、ジグリコールおよび高沸点残留物)とに分離される。缶出物は、塔K60に供給される。凝縮物は、塔K40に供給される。
【0116】
モルホリン精留(K40)
塔K40内で、モルホリンが気体側方抜出部において分離される。頂部留出物(主成分:1,2-エチレンジアミン、モルホリンおよび水)は、K20に返送されるか、またはエチレンジアミンの濃縮後に非連続的に容器を介して排出される。塔K40の缶出物(高沸点副成分を有するモルホリンおよびメトキシエタノール)は焼却される。K40の蒸発器は、K10の蒸発器内で凝縮された加熱蒸気の減圧式蒸発により得られる加熱蒸気を用いて運転される。
【0117】
エチルモルホリン蒸留(K50)
塔K50内で、N-エチルモルホリンが、水との共沸混合物としてフィードから分離される。塔の缶出物は排出される。
【0118】
残留物分離(K60)
塔K60内で、アミノジグリコールおよびジグリコールが、液体側方抜出分としてフィードから一緒に分離され、塔K70に送られる。塔の留出物(主成分:アミノエトキシエチルアミン、アミノエチルモルホリン、アミノジグリコール)は、反応器入口に返送される。塔の缶出物は、蒸発器(V2)に供給され、そこで、モルホリンアミノジグリコール(MADG)、モルホリンジグリコール(MDG)およびジエチレングリコール(DEG)が分離される。
【0119】
アミノジグリコール蒸留(K70)
塔K70内で、アミノジグリコールが、側方抜出部でフィードから分離される。塔の凝縮物(主成分:アミノジグリコール、(2-アミノエチル)モルホリンおよび2-(2-アミノエトキシ)エチルアミン)は、反応器入口に返送される。塔の缶出物も同様に、反応器入口に返送される。
【0120】
図について:
図1は、特に、7塔接続によるMOおよびADGの本発明による取得を示す。さらに、減圧式蒸発によるK10の蒸発器からK40の蒸発器への加熱蒸気(HD)の集熱が例示的に図示されている。さらに、塔K10のフィードへのK20の頂部生成物の部分的な返送、および塔K20のフィードへのK30の頂部生成物の部分的な返送が図示されている。
【0121】
図2は、特に、7塔接続の塔K60~K70の、隔壁塔(TK)による代替を示す。さらに、減圧式蒸発によるK10の蒸発器からK40の蒸発器への加熱蒸気(HD)の集熱が例示的に図示されている。さらに、塔K10のフィードへのK20の頂部生成物の部分的な返送、および塔K20のフィードへのK30の頂部生成物の部分的な返送が図示されている。
【0122】
図3は、特に、隔壁(T)が塔の底部まで形成されている、隔壁塔K60の特定の実施形態を示す。さらに、減圧式蒸発によるK10の蒸発器からK40の蒸発器への加熱蒸気(HD)の集熱が例示的に図示されている。さらに、塔K10のフィードへのK20の頂部生成物の部分的な返送、および塔K20のフィードへのK30の頂部生成物の部分的な返送が図示されている。
【0123】
図4は、特に、8塔接続によるMOおよびADGの本発明による取得を示す。さらに、減圧式蒸発によるK10の蒸発器からK40の蒸発器への加熱蒸気(HD)の集熱が例示的に図示されている。さらに、塔K10のフィードへのK20の頂部生成物の部分的な返送、および塔K20のフィードへのK30の頂部生成物の部分的な返送が図示されている。
【0124】
図5は、本発明による方法の、先に説明された特に好ましい実施形態を示す。
【0125】
HD=加熱蒸気、HS=高沸点物質、LS=低沸点物質、MS=中沸点物質、BBA=処理を要する廃水。
【0126】
減圧式蒸発による集熱は、図1図5において破線で図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0127】
図1】7塔接続によるMOおよびADGの本発明による取得を示す図である。
図2】7塔接続の塔K60~K70の、隔壁塔(TK)による代替を示す図である。
図3】隔壁(T)が塔の底部まで形成されている、隔壁塔K60の特定の実施形態を示す図である。
図4】8塔接続によるMOおよびADGの本発明による取得を示す図である。
図5】本発明による方法の、先に説明された特に好ましい実施形態を示す図である。
【0128】
実施例
以下の例は、Aspen Technology, Inc社のソフトウェアAspen Plusにより得られたシミュレーションの結果に基づく。個々の反応生成物についてのプログラム中で使用される熱力学的パラメーターは、公開済の熱力学的データまたは独自の測定に基づく。挙げられている使用される蒸留塔の特定およびシミュレーションは、ソフトウェアに含まれる一般的なルーチンにより行った。
【0129】
シミュレーションモデルを最適化するために、シミュレーションした結果を、存在すれば実験結果と比較し、シミュレーションモデルを実験結果に対して調整し、それにより、シミュレーションと実験データとの間の良好な一致を得ることができた。
【0130】
以下の例を、最適化されたシミュレーションを用いて計算した。
【0131】
特に記載されていない限り、ここに挙げられている例の圧力の値はすべて、絶対圧に関連する。
【0132】
例1(モルホリンの精留)
【表1-1】
【表1-2】
略語:
1,2-EDA:1,2-エチレンジアミン
E-MO:N-エチルモルホリン
AEOEA:アミノエトキシエチルアミン
【0133】
結果の考察:
上記の表には、2.2bar、500mbarおよび200mbarの圧力でのモルホリンの精留の結果が示されている。本発明による圧力範囲(200および500mbar)では、メトキシエタノールの著しく改善された分離性が可能である。例えば、純粋なモルホリン中のメトキシエタノール含量が、0.03重量%だけであるのに対して、本発明によらない圧力(2.2bar)では、著しくより高く、すなわち0.13重量%までである。
【0134】
本発明による圧力範囲で動作することにより、蒸発器内のエネルギー必要量が、2.2barでの845kWから、500または200mbarでの1588kWまたは1085kWに上昇する。同時に、底部温度が低下していることから、より低い圧力を有する加熱蒸気を用いて蒸発器を運転することが可能である。例えば、底部の加熱に使用される加熱蒸気は、2.2barの頂部圧力の場合、16bar以上の圧力を有することが一般的である。本発明によるより低い頂部圧力の場合、1~10barの圧力を有する加熱蒸気で十分である。そのような加熱蒸気は、特に集熱(減圧式蒸発)が使用される場合、よりエネルギー効率良く生成することが可能である。
【0135】
例2(それぞれ返送ありおよび返送なしのK10およびK20):
以下に示される1つ目の表には、塔K20で頂部を介して分離される流のK10への返送についてのシミュレーション結果が示されている。
【0136】
以下に示される2つ目の表には、塔K30で頂部を介して分離される流の返送について、またはK40の側方抜出部で得られる流(モルホリン)のK20への返送についてのシミュレーション結果が示されている。
【0137】
示される結果から、相応する返送により、K10またはK20の底部の温度が下がることが分かる。
【0138】
K10の場合、底部温度が、236.5℃から227℃へと低下する。
【0139】
K20の場合、底部温度が、254℃から228℃へと低下する。
【0140】
【表2-1】
【表2-2】
表1および表2で使用される略語:
M-MO:メチルモルホリン
Et-MO:エチルモルホリン
1,2-EDA:1,2-エチレンジアミン
AEOEA:アミノエトキシエチルアミン
AE-MO:アミノエチルモルホリン
ADG:アミノジグリコール
DEG:ジエチレングリコール
MS:中沸点物質
HS:高沸点物質
図1
図2
図3
図4
図5