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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230704BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230704BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
C08L23/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019115500
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021000758
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】川岸 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】薄井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124818(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087990(WO,A1)
【文献】特開2018-202615(JP,A)
【文献】特開2010-234660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
C08L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とする表面層(A)、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とする中間層(B)及びプロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とするヒートシール層(C)が積層された積層フィルムであって、前記表面層(A)が、プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体及びプロピレン-α-オレフィン共重合体を含有し、前記表面層(A)に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン単独重合体の含有量が20~90質量%で前記プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量が10~80質量%であり、前記中間層(B)が、エチレン系樹脂として直鎖低密度ポリエチレンを含有し、前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の前記直鎖低密度ポリエチレンの含有量が60質量%以上であり、
前記ヒートシール層(C)が、さらにエチレン-1-ブテン共重合体を含有することを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記ヒートシール層(C)が、プロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とする層である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記表面層(A)と中間層(B)との間に、プロピレン単独重合体を主たる樹脂成分とする中間層(D)を含有する請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記中間層(B)に含まれる直鎖低密度ポリエチレンの密度が0.900~0.940g/cmである請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記積層フィルムの総厚みが15~100μmの範囲である請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ヒートシール層(C)に含まれるエチレン-1-ブテン共重合体の含有量が、前記ヒートシール層(C)に含まれる樹脂成分中の3~20質量%である、請求項1~5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
95度、30分の条件でボイル殺菌処理した後のMD方向の引裂強度が3.0N以下であり、また、MD/CDで表されるMD方向の引裂強度とCD方向の引裂強度の比が100%以下である請求項1~6のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の積層フィルムを用いた包装材。
【請求項9】
ボイル用途に使用される請求項8に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医療品等の包装材に使用する積層フィルムに関し、より詳細には、低温下での耐衝撃性に優れた包装材に使用する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されているポリプロピレン系樹脂を主体とするフィルムは剛性が高く、表面光沢度も高いことから、食品や医療品等の包装材として幅広く使用されている。しかし、ポリプロピレン系樹脂のみでは耐衝撃性が充分に得られない場合があることから、ポリプロピレン系樹脂層に、直鎖低密度ポリエチレンを積層し耐衝撃性を向上させた積層フィルムなどが使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-276373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記積層フィルムは、特定のポリプロピレン系樹脂層間に、直鎖低密度ポリエチレンからなる中間層を設けることで、好適な密封性、耐衝撃性等を実現することが開示されている。
【0005】
しかし、開封時の裂け性、特にボイル後の裂け性については、何ら考慮されておらず、好適なヒートシール性や耐衝撃性と共に、優れた裂け性を有する積層フィルムが求められていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、良好なヒートシール性や耐衝撃性を有し、かつ、好適な裂け性を実現できる積層フィルムを提供することにある。さらには、高温ボイル後に特に優れた裂け性を実現できる積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とする表面層(A)、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とする中間層(B)及びプロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とするヒートシール層(C)が積層された積層フィルムであって、前記表面層(A)が、プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体及びプロピレン-α-オレフィン共重合体を含有し、前記表面層(A)に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン単独重合体の含有量が20~90質量%で前記プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量が10~80質量%であり、前記中間層(B)が、エチレン系樹脂として直鎖低密度ポリエチレンを含有し、前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の前記直鎖低密度ポリエチレンの含有量が60~100質量%である積層フィルムにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、良好なヒートシール性と耐衝撃性を有し、開封時には一方向に容易に裂けやすい好適な裂け性を有することから、食品や医療品等の各種の包装材として好適に使用できる。また、高温ボイル後も引き裂き強度の大幅な上昇を生じることなく、好適な裂け性を保持、向上できることから、加温する食品や加熱殺菌する医療器具等に使用するボイル用の包装材として特に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層フィルムは、プロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とする表面層(A)、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とする中間層(B)及びプロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とするヒートシール層(C)が積層された積層フィルムであり、前記表面層(A)がプロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体及びプロピレン-α-オレフィン共重合体を含有し、前記中間層(B)がエチレン系樹脂として直鎖低密度ポリエチレンを含有する。さらに、前記表面層(A)に含まれる樹脂成分中の前記プロピレン単独重合体の含有量が20~90質量%で、前記プロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量が10~80質量%であり、前記中間層(B)に含まれる樹脂成分中の前記直鎖低密度ポリエチレンの含有量が60~100質量%である。
【0010】
[表面層(A)]
本発明の積層フィルムの表面層(A)は、プロピレン系樹脂を主たる樹脂成分とする層であり、当該プロピレン系樹脂を主たる樹脂成分として含有することで、好適な剛性や耐熱性、表面性(外観)の積層フィルムを得やすくなる。本発明においては、当該プロピレン系樹脂として、プロピレン単独重合体及びプロピレン-α-オレフィン共重合体を含有する。プロピレン系樹脂として、これら樹脂を含有することで、良好な耐衝撃性を有しつつ、容易に裂けやすく且つ方向性(異方性)を持った好適な裂け性、特にボイル後の好適な裂け性を実現できる。
【0011】
表面層(A)に含まれる樹脂成分中のプロピレン単独重合体の含有量は、20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上とすることがより好ましく、40質量%以上とすることが特に好ましい。上限は90質量%以下とすることが好ましく、85質量%以下とすることがより好ましく、80質量%以下とすることが特に好ましい。プロピレン単独重合体の含有量を上記範囲とすることで、引き裂き時にねばりが生じにくい容易な裂け性と、引き裂き時に直線的に裂けやすい方向性を持った裂け性とを実現しやすくなる。
【0012】
表面層(A)に含まれる樹脂成分中のプロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量は、10~80質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが特に好ましい。プロピレン・エチレン共重合体の含有量を当該範囲とすることで好適なヒートシール性を得やすくなる。
【0013】
表面層(A)に含まれる樹脂成分中のプロピレン系樹脂の含有量は60質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、90質量%以上とすることがさらに好ましい。また、表面層(A)に含まれる樹脂成分がプロピレン系樹脂のみからなるものであることも好ましい。特に、表面層(A)に含まれる樹脂成分中のプロピレン単独重合体及びプロピレン-α-オレフィン共重合体の総量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、表面層(A)に含まれる樹脂成分がこれら樹脂のみからなるものであることも好ましい。当該含有量とすることで、好適な耐衝撃性や裂け性と共に、優れた剛性や耐熱性、表面性を得やすくなる。
【0014】
表面層(A)に使用するプロピレン単独重合体としては、成形が容易であることから、MFR(230℃、21.18N)が、1.0~20.0g/10分以下であることが好ましく、3.0~15.0g/10分であることがより好ましく、5.0~10.0g/10分であることがさらに好ましい。
【0015】
プロピレン単独重合体の融点は、好適な成形性、包装適性を得やすいことから、155~170℃であることが好ましく、158~165℃であることがより好ましい。
【0016】
表面層(A)に使用するプロピレン単独重合体は一種のプロピレン単独重合体を使用しても、複数種のプロピレン単独重合体を使用してもよい。複数使用する場合には、使用するプロピレン単独重合体の含有量の総量を上記範囲とすることが好ましい。
【0017】
表面層(A)に使用するプロピレン-α-オレフィン共重合体としては、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体を好ましく使用できる。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が例示でき、なかでもエチレンが好ましい。
【0018】
プロピレン-α-オレフィン共重合体としては、好適な成形性を得やすいことから、そのMFR(230℃、21.18N)が、1.0~20.0g/10分以下であることが好ましく、3.0~15.0g/10分であることがより好ましく、5.0~10.0g/10分であることがさらに好ましい。
【0019】
プロピレン-α-オレフィン共重合体の融点は、好適なヒートシール性を得やすいことから、120~150℃であることが好ましく、130~140℃であることがより好ましい。
【0020】
表面層(A)に使用するプロピレン-α-オレフィン共重合体は一種の共重合体を使用しても、複数種の共重合体を使用してもよい。複数使用する場合には、使用するプロピレン-α-オレフィン共重合体の含有量の総量を上記範囲とすることが好ましい。
【0021】
また、表面層(A)中に、プロピレン系樹脂以外の樹脂を使用する場合には、包装フィルムに使用される各種オレフィン系樹脂等を使用でき、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を使用できる。
【0022】
当該プロピレン系樹脂以外の樹脂や、上記プロピレン系樹脂以外の他のプロピレン系樹脂の含有量は、その総量が、表面層(A)中に含まれる樹脂成分中の20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。含有量の下限は特に制限されるものではないが、当該他のポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、1質量%以上とすることが好ましい。
【0023】
表面層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。これら添加剤を使用する場合には、表面層(A)に使用する樹脂成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは0.01~1質量部程度で使用する。
【0024】
[中間層]
本発明の積層フィルムの中間層(B)は、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とする層であり、当該エチレン系樹脂を主たる樹脂成分として含有することで、好適な耐衝撃性を得やすくなる。本発明においては、当該エチレン系樹脂として、直鎖低密度ポリエチレンを含有することで、得られる積層フィルムの好適な耐衝撃性を実現できる。
【0025】
中間層(B)に含まれる樹脂成分中の直鎖低密度ポリエチレンの含有量は、60質量%以上とすることが好ましく、65質量%以上とすることがより好ましく、75質量%以上とすることが特に好ましい。上限は特に制限されず、中間層(B)に含まれる樹脂成分が直鎖低密度ポリエチレンのみであることも好ましいが、他のエチレン系樹脂と併用する場合には、90質量%以下とすることが好ましく、80質量%以下とすることがより好ましく、70質量%以下とすることが特に好ましい。直鎖低密度ポリエチレンの含有量を上記範囲とすることで、好適な裂け性を損なうことなく良好な耐衝撃性を実現できる。
【0026】
中間層(B)に使用する直鎖低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm以上であることが好ましく、0.905g/cm以上であることがより好ましく、0.915g/cm以上であることがさらに好ましい。また、密度が0.940g/cm以下であることが好ましく、0.935g/cm以下であることがより好ましく、0.930g/cm以下であることがさらに好ましい。使用する直鎖状低密度ポリエチレンの密度を上記範囲とすることで、良好な裂け性と好適な耐衝撃性を兼備しやすくなる。
【0027】
直鎖状低密度ポリエチレンのMFR(190℃、21.18N)は、1.0~15.0g/10分であることが好ましく、2.0~10.0g/10分であることがより好ましく、3.0~7.0g/10分であることがさらに好ましい。MFRを当該範囲とすることで、好適な成形性と、ボイル後に良好な裂け性を得られやすくなる。
【0028】
直鎖低密度ポリエチレンは複数併用してもよく、複数使用する場合には、使用する直鎖状低密度ポリエチレンの含有量の総量を上記範囲とすることが好ましい。
【0029】
中間層(B)に含まれる樹脂成分中のエチレン系樹脂の含有量は60質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、90質量%以上とすることがさらに好ましい。また、中間層(B)に含まれる樹脂成分がエチレン系樹脂のみからなるものであることも好ましい。当該含有量とすることで、好適な耐衝撃性や裂け性を得やすくなる。
【0030】
直鎖低密度ポリエチレンに他のエチレン系樹脂を併用する場合には、当該エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状中密度ポリエチレン(LMDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が例示できる。これらポリエチレン系樹脂は、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも好適な耐衝撃性を得やすいことから、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレンを好ましく使用できる。
【0031】
また、中間層(B)中に、エチレン系樹脂以外の樹脂を使用する場合には、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体等のプロピレン系樹脂を使用できる。
【0032】
当該エチレン樹脂以外の樹脂の含有量は、中間層(B)中に含まれる樹脂成分中の20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。含有量の下限は特に制限されるものではないが、当該他のポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、1質量%以上とすることが好ましい。
【0033】
なお、中間層(B)においても上記表面層(A)にて例示したような添加剤を適宜使用してもよい。好ましい使用量も上記表面層(A)と同様である。
【0034】
[ヒートシール層(C)]
本発明の積層フィルムに使用するヒートシール層(C)は、ポリプロピレン系樹脂を主成分として含有する。ヒートシール層としてポリプロピレン系樹脂を使用することで、積層フィルムの耐熱性を向上できると共に、包装容器との好適な密着性を確保しやすくなる。当該ポリプロピレン系樹脂としては、上記表面層(A)において例示したポリプロピレン系樹脂と同様のものを好適に使用できる。
【0035】
なかでも、ヒートシール層(C)に使用するポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン-1等のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられ、共重合体としてはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれもが使用できる。なかでも好ましいものとしては、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1ランダム共重合体等が挙げられる。これらプロピレン系樹脂は単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0036】
ヒートシール層(C)に使用するポリプロピレン系樹脂としては、融点が115~150℃であることが好ましく、120~145℃であることがより好ましい。当該融点のポリプロピレン系樹脂を使用することで、好適な耐熱性とシール開始温度が得られる。
【0037】
ヒートシール層(C)に使用するポリプロピレン系樹脂としては、230℃でのメルトフローレートが1.0~20.0g/10minであることが好ましく、3.0~15.0g/10minであることが好ましく、5.0~10.0g/10minであることがより好ましい。メルトフローレートを当該範囲とすることで、好適な押出成形性を得やすくなる。
【0038】
ヒートシール層(C)に中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、ヒートシール層(C)に含まれる樹脂成分中の60質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であれば、好適な耐熱性を維持しやすくなる。
【0039】
ヒートシール層(C)には、上記ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂として、柔軟性の高いエラストマーを併用することも好ましい。当該エラストマーとしては、オレフィン系エラストマーを好ましく使用できる。当該オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-オクテン共重合体エラストマー、プロピレン-ブテン共重合体エラストマー等を使用でき、なかでも、エチレン-ブテン共重合体エラストマーが好ましく使用できる。またここで使用するエチレン-1-ブテン共重合体は、密度0.884~0.910g/cm、MFR(190℃、21.18N)が1.0~15.0g/10分であることが好ましい。密度とMFRを当該範囲とすることで、好適なヒートシール性及びボイル後に良好な裂け性を得られやすくなる。
【0040】
エチレン-1-ブテン共重合体の含有量としては、ヒートシール層(C)に含まれる樹脂成分中の30質量%以下とすることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。この範囲であれば、好適な耐熱性、良好なヒートシール性、及びボイル後の裂け性を確保しやすくなる。
【0041】
ヒートシール層(C)には、上記以外の他の樹脂を併用してもよい。当該他の樹脂としては、上記表面層(A)において例示したポリプロピレン系樹脂以外の他の樹脂と同様のものを好適に使用できる。
【0042】
ヒートシール層(C)中の当該他の樹脂の含有量は、ヒートシール層(C)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。この範囲であれば、耐熱性を維持しやすく、好適なシール強度が得やすくなる。
【0043】
ヒートシール層(C)中にも、上記表面層(A)と同様に、適宜添加剤を使用してもよい。
【0044】
[中間層(D)]
本発明の積層フィルムにおいては、表面層(A)と中間層(B)との間に、さらに中間層(D)を設けることも好ましい。当該中間層(D)としては、表面層(A)と中間層(B)との層間強度を確保しやすく、好適な剛性を得やすいことから、プロピレン単独重合体を主たる樹脂成分とする樹脂層とすることが好ましい。
【0045】
中間層(D)に含まれる樹脂成分中のプロピレン単独重合体の含有量は40質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、90質量%以上とすることがさらに好ましい。また、中間層(D)に含まれる樹脂成分がエチレン系樹脂のみからなるものであることも好ましい。当該含有量とすることで、好適な耐衝撃性や裂け性を得やすくなる。
【0046】
中間層(D)中には、上記プロピレン単独重合体と併用して、柔軟性の高いエラストマーを併用することも好ましい。当該エラストマーとしては、オレフィン系エラストマーを好ましく使用できる。当該オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-オクテン共重合体エラストマー、プロピレン-ブテン共重合体エラストマー等を使用でき、なかでも、エチレン-ブテン共重合体エラストマーが好ましく使用できる。またここで使用するエチレン-1-ブテン共重合体は、密度0.884~0.910g/cm、MFR(190℃、21.18N)が1.0~15.0g/10分であることが好ましい。MFRを当該範囲とすることで、好適な成形性を得やすくなる。
【0047】
エチレン・1-ブテン共重合体の含有量としては、中間層(D)に含まれる樹脂成分中の40質量%以下とすることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。この範囲であれば好適な層間強度を確保しやすくなる。
【0048】
中間層(D)には、上記以外の他の樹脂を併用してもよい。当該他の樹脂としては、ポリプロピレン単独重合体以外のプロピレン系樹脂や、上記表面層(A)において例示したポリプロピレン系樹脂以外の他の樹脂と同様のものを好適に使用できる。
【0049】
中間層(D)中の当該他の樹脂の含有量は、中間層(D)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
中間層(D)中にも、上記表面層(A)と同様に、適宜添加剤を使用してもよい。
【0051】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、上記表面層(A)、中間層(B)及びヒートシール層(C)が積層された構成により、良好なヒートシール性、好適な耐衝撃性、開封時には一方向に容易に裂けやすい好適な裂け性を実現できる。特に、高温ボイル後も引き裂き強度の大幅な上昇を生じることなく、好適な裂け性を実現できる。
【0052】
本発明の積層フィルムは、フィルムの厚さが15~100μmのものが好ましく、より好ましくは20~50μmである。フィルムの厚さがこの範囲であれば、優れた耐衝撃性、剛性、シール性、包装機械適性等を得やすくなる。
【0053】
また、各層の厚みは、表面層(A)の厚みとしては、5~35μmであることが好ましく、7~18μmであることがより好ましい。中間層(B)の厚みは7~45μmであることが好ましく、9~23μmであることがより好ましい。ヒートシール層(C)の厚みは3~20μmであることが好ましく、4~10μmであることがより好ましい。
【0054】
中間層(D)を設ける場合には、表面層(A)と中間層(D)の総厚みが、上記表面層(A)の厚みとして記載した範囲となるよう調整すればよい。また表面層(A)と中間層(D)の厚み比率は30/70~70/30とすることが好ましく、60/40~60/40とすることがより好ましい。
【0055】
本発明の積層フィルムは、内容物保護の観点からシール層同士でのシール強度が5N/15mm以上であることが好ましく、7N/15mm以上であることが好ましい。
【0056】
本発明の積層フィルムは、フィルムインパクト法によって測定される衝撃強度が0.4J以上である事が好ましく、0.5J以上であることがより好ましい。当該衝撃強度は、30μmの積層フィルムを0℃下に状態調整した後に測定した衝撃強度である。
【0057】
本発明の積層フィルムは、引裂強度がMD方向で3.0N以下であることが好ましく、2.0N以下であることがより好ましい。また、MD/CDで表されるMD方向の引裂強度とCD方向の引裂強度の比が100%以下であることが好ましい。また、ボイル槽にて95度、30分の条件でボイル殺菌処理後のMD方向の引裂強度及びMD/CDで表される引裂強度の比が、上記範囲であることが好ましい。さらに、ボイル前のMD方向の引裂強度と、ボイル後のMD方向の引裂強度の比(ボイル後/ボイル前)が100%以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表面層(A)、中間層(B)、ヒートシール層(C)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(C)の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた積層フィルムが得られるので好ましい。
【0059】
本発明の積層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の積層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
【0060】
さらに、印刷インキとの接着性や、ラミネート用シーラントフィルムとして使用する場合のラミネート適性を向上させるため、前記樹脂層(A)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0061】
本発明の積層フィルムからなる包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、包装容器等が挙げられる。
【0062】
前記包装袋は、本発明の積層フィルムのヒートシール層(C)同士を重ねてヒートシール、あるいは表面層(A)とヒートシール層(C)とを重ね合わせてヒートシールすることにより形成した包装袋であることが好ましい。例えば当該積層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装袋を形成することも可能である
【0063】
また、ヒートシール層(C)とヒートシール可能な別のフィルムを重ねてヒートシールすることにより包装袋・容器を形成することも可能である。その際、使用する別のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA等のフィルムを用いることができる。
【0064】
本発明の積層フィルムを用いた包装材には、初期の引き裂き強度を弱め、開封性を向上するため、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成することが好ましい。
【実施例
【0065】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0066】
(実施例1)
表面層(A)、中間層(B)、及びヒートシール層(C)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂混合物を調整した。各層を形成する樹脂混合物を3台の押出機に各々供給し、表面層(A)/中間層(B)/ヒートシール層(C)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが10μm/14μm/6μmとなるように、押出温度250℃、Tダイ温度250℃の設定で共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):プロピレン単独重合体[密度:0.900g/cm、MFR:8.0g/10分、以下「HOPP(1)」]80質量部、プロピレン-エチレンランダム共重合体(1)[密度:0.90g/cm、MFR:7.5g/10分、以下「RCOPP(1)」)]20質量部の樹脂混合物。
中間層(B):直鎖状低密度ポリエチレン(1)[密度:0.910g/cm、MFR:2.6g/10分、以下「LLDPE(1)」]100質量部。
ヒートシール層(C):プロピレン-エチレン共重合体(2)[密度:0.900g/cm、MFR:7.8g/10分、以下「RCOPP(2)」]63質量部、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体[密度:0.900g/cm、MFR:5.4g/10分]27質量部、エチレン-1-ブテン共重合体[密度0.886g/cm、MFR4.0g/10分]10質量部の樹脂混合物。
【0067】
(実施例2)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):直鎖低密度ポリエチレン(2)[密度:0.916g/cm、MFR:2.6g/10分、以下「LLDPE(2)」]100質量部。
【0068】
(実施例3)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):直鎖低密度ポリエチレン(3)[密度:0.919g/cm、MFR:2.6g/10分、以下「LLDPE(3)」]100質量部。
【0069】
(実施例4)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):直鎖低密度ポリエチレン(4)[密度:0.922g/cm、MFR:2.6g/10分、以下「LLDPE(4)」]100質量部。
【0070】
(実施例5)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):直鎖低密度ポリエチレン(5)[密度:0.927g/cm、MFR:2.6g/10分、以下「LLDPE(5)」]100質量部。
【0071】
(実施例6)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):直鎖低密度ポリエチレン(6)[密度:0.910g/cm、MFR:1.4g/10分、以下「LLDPE(6)」]100質量部。
【0072】
(実施例7)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):直鎖低密度ポリエチレン(7)[密度:0.910g/cm、MFR:5.6g/10分、以下「LLDPE(7)」)100質量部。
【0073】
(実施例8)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0074】
(実施例9)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0075】
(実施例10)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例3と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0076】
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例4と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0077】
(実施例12)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例5と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0078】
(実施例13)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例6と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0079】
(実施例14)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例7と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)50質量部、RCOPP(1)50質量部の樹脂混合物。
【0080】
(実施例15)
表面層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例3と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):HOPP(1)20質量部、RCOPP(1)80質量部の樹脂混合物。
【0081】
(比較例1)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):LLDPE(3)」50質量部、RCOPP(2)50質量部の樹脂混合物。
【0082】
(比較例2)
中間層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
中間層(B):LLDPE(3)」30質量部、RCOPP(2)70質量部の樹脂混合物。
【0083】
(比較例3)
表面層(A)、ヒートシール層(C)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、表面層(A)/中間層(B)/ヒートシール層(C)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが7.5μm/15μm/7.5μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):RCOPP(1)100質量部。
ヒートシール層(C):RCOPP(1)100質量部。
【0084】
(比較例4)
表面層(A)、ヒートシール層(C)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、表面層(A)/中間層(B)/ヒートシール層(C)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが7.5μm/15μm/7.5μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):RCOPP(2)100質量部。
ヒートシール層(C):RCOPP(2)100質量部。
【0085】
(比較例5)
表面層(A)、ヒートシール層(C)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、表面層(A)/中間層(B)/ヒートシール層(C)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが7.5μm/15μm/7.5μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
表面層(A):RCOPP(3)100質量部。
ヒートシール層(C):RCOPP(3)100質量部。
【0086】
上記実施例及び比較例で得られた積層フィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示した。
【0087】
[耐衝撃性試験]
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを、95度、30分の条件でボイル殺菌処理した後、幅10cm、長さ30cmの試験片に加工した。当該試験片を、0℃環境に調整した恒温室内で3時間静置保管した後に、テスター産業製BU-302型フィルムインパクトテスターを用い、その振り子の先端に1.5インチのヘッドを取り付けた条件でフィルムインパクト法により各試験片の衝撃強度を測定し、下記基準にて評価した。
◎:衝撃強度が0.50Jを超える
○:衝撃強度が0.40J以上0.50J以下
×:衝撃強度が0.40J未満
【0088】
[裂け性評価]
上記[耐衝撃性試験]と同様にして得られたボイル殺菌処理後の積層フィルムをJIS K7128-1(トラウザー法)に従い、23℃、50%Rhの恒温室内において、株式会社エー・アンド・デイ社製のテンシロン万能試験機用いてMD(流れ)方向の引き裂き強度、CD(幅)方向の引裂き強度を測定した。測定結果に基づき、易引き裂き性及び直進カット性(引き裂き異方性)を下記基準にて評価した。
(易引き裂き性)
◎:MD方向の引き裂き強度が2N以下
○:MD方向の引き裂き強度が2Nを超え、3N以下
△:MD方向の引き裂き強度が3Nを超え、4N以下
×:MD方向の引き裂き強度が4Nを超える
(直進カット性)
◎:CD方向とMD方向の引き裂き強度の差(CD-MD)が5N以上
○:CD方向とMD方向の引き裂き強度の差が4N以上、5N未満
△:CD方向とMD方向の引き裂き強度の差が2N以上、4N未満
×:CD方向とMD方向の引き裂き強度の差が2N未満
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
上記表から明らかなとおり、実施例1~15の本発明の積層フィルムは、ボイル処理後の0℃の低温環境下において優れた耐衝撃性を有すると共に、流れ(MD)方向に関して良好な易カット性と直進カット性を有するものであった。一方、比較例1~6の積層フィルムは、ボイル処理後で耐衝撃性及び良好な裂け性と直進カット性を兼備できないものであった。