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特許7306587光学系、光学機器および光学系の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】光学系、光学機器および光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/02 20060101AFI20230704BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
G02B13/02
G02B13/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022556375
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2021000726
(87)【国際公開番号】W WO2022085208
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020177211
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】村谷 真美
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓
(72)【発明者】
【氏名】三輪 哲史
(72)【発明者】
【氏名】小松原 陽子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晶乃
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116569(WO,A1)
【文献】特開2015-102733(JP,A)
【文献】特開2019-101183(JP,A)
【文献】特開2013-242449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、から構成され、
無限遠から近距離物体への合焦の際に、前記第2レンズ群が光軸に沿って像側から物体側へ移動され、隣接する各レンズ群の間隔が変化し、
または、
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、から構成され、
無限遠から近距離物体への合焦の際に、前記第2レンズ群が光軸に沿って物体側から像側へ移動され、隣接する各レンズ群の間隔が変化し、
前記第3レンズ群は、極点を有するレンズ面を少なくとも1つ有し、
以下の条件式を満足する光学系であって、
0.020 < Y/f < 0.120
0.010 < Bf/TL < 0.150
但し、
Y :像高
f :前記光学系の焦点距離
TL :前記光学系の光学全長
Bf :前記光学系のバックフォーカス
また、前記極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する光学系。
-1.00 < fR/fK < 0.60
但し、
fR :前記第3レンズ群の焦点距離
fK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離
【請求項2】
前記極点を有するレンズ面のうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1に記載の光学系。
0.02 < h/Y < 1.20
但し、
h :前記極点を有するレンズ面において光軸に最も近い前記極点の前記光軸からの高さ
【請求項3】
前記極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに正の屈折力を有する1つ以上の正レンズを有し、
前記1つ以上の正レンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1または2に記載の光学系。
-0.15< (Dh-Dc)/rK < 0.00
但し、
Dh :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの光軸上の厚さ
Dc :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの前記極点上の厚さ
rK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径
【請求項4】
前記極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに負の屈折力を有する1つ以上の負レンズを有し、
前記1つ以上の負レンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1または2に記載の光学系。
0.000< (Dh-Dc)/rK < 0.100
但し、
Dh :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの光軸上の厚さ
Dc :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの前記極点上の厚さ
rK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径
【請求項5】
以下の条件式を満足する請求項1-4のいずれか一項に記載の光学系。
0.020 < KML/TL < 0.140
但し、
KML:像面に最も近い前記極点を有するレンズ面から像面までの距離
【請求項6】
前記極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1-5のいずれか一項に記載の光学系。
0.70 < rK/Y < 1.10
但し、
rK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径
【請求項7】
前記極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1-6のいずれか一項に記載の光学系。
-0.40 < Bf/fK < 0.40
但し、
fK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離
【請求項8】
前記極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1-7のいずれか一項に記載の光学系。
25.00 < νdK < 70.00
但し、
νdK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズのd線を基準とするアッベ数
【請求項9】
以下の条件式を満足する請求項1-のいずれか一項に記載の光学系。
-0.50 < Bf/rR < 0.20
但し、
rR :最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
【請求項10】
前記極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足する請求項1-のいずれか一項に記載の光学系。
-2.00 < fK/f < 0.50
但し、
fK :前記極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離
【請求項11】
以下の条件式を満足する請求項1-10のいずれか一項に記載の光学系。
0.20 < TL/f < 1.10
【請求項12】
以下の条件式を満足する請求項1-11のいずれか一項に記載の光学系。
0.005 < Bf/f < 0.100
【請求項13】
以下の条件式をすべて満足するレンズZを少なくとも1つ有する請求項1-12のいずれか一項に記載の光学系。
ndLZ + (0.01425×νdLZ) < 2.12
νdLZ < 35.00
0.702 < θgFLZ + (0.00316×νdLZ)
但し、
ndLZ :前記レンズZのd線に対する屈折率
νdLZ :前記レンズZのd線を基準とするアッベ数
θgFLZ:前記レンズZの部分分散比であり、前記レンズZのg線に対する屈折率をngLZとし、前記レンズZのF線に対する屈折率をnFLZとし、前記レンズZのC線に対する屈折率をnCLZとしたとき、次式で定義される
θgFLZ = (ngLZ - nFLZ)/(nFLZ - nCLZ)
【請求項14】
以下の条件式を満足するレンズXを少なくとも1つ有する請求項1-13のいずれか一項に記載の光学系。
80.00 < νdLX
但し、
νdLX:前記レンズXのd線を基準とするアッベ数
【請求項15】
請求項1-14のいずれか一項に記載の光学系を有する光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系、光学機器および光学系の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真用カメラ、電子スチルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器に使用される光学系が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-072457号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の光学系は、複数のレンズ群を有し、複数のレンズ群は、合焦の際に各レンズ群の間隔が変化し、複数のレンズ群のうち最も像側に配置された最終レンズ群は、極点を有するレンズ面を少なくとも1つ有し、以下の条件式をすべて満足する。
0.020 < Y/f < 0.120
0.010 < Bf/TL < 0.150
但し、
Y :像高
f :光学系の焦点距離
TL :光学系の光学全長
Bf :光学系のバックフォーカス
【0005】
本開示の光学系の製造方法は、複数のレンズ群からなる光学系の製造方法であって、複数のレンズ群は、合焦の際に各レンズ群の間隔が変化し、複数のレンズ群のうち最も像側に配置された最終レンズ群は極点を有するレンズ面を少なくとも1つ有し、以下の条件式をすべて満足するように配置する。
0.020 < Y/f < 0.120
0.010 < Bf/TL < 0.150
但し、
Y :像高
f :光学系の焦点距離
TL :光学系の光学全長
Bf :光学系のバックフォーカス
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】無限遠物体合焦時における第1実施例の光学系の断面図である。
図2A】無限遠物体合焦時における第1実施例の光学系の諸収差図である。
図2B】近距離物体合焦時における第1実施例の光学系の諸収差図である。
図3】無限遠物体合焦時における第2実施例の光学系の断面図である。
図4A】無限遠物体合焦時における第2実施例の光学系の諸収差図である。
図4B】近距離物体合焦時における第2実施例の光学系の諸収差図である。
図5】無限遠物体合焦時における第3実施例の光学系の断面図である。
図6A】無限遠物体合焦時における第3実施例の光学系の諸収差図である。
図6B】近距離物体合焦時における第3実施例の光学系の諸収差図である。
図7】本実施形態の光学系を備えたカメラの模式図である。
図8】本実施形態の光学系の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本願の実施形態の光学系、光学機器および光学系の製造方法について説明する。
【0008】
本実施形態の光学系は、複数のレンズ群を有し、複数のレンズ群は、合焦の際に各レンズ群の間隔が変化し、複数のレンズ群のうち最も像側に配置された最終レンズ群は、極点を有するレンズ面を少なくとも1つ有し、以下の条件式をすべて満足する。なお、本開示において、極点とはレンズ面の接平面が光軸と垂直に交わる光軸上以外におけるレンズ面上の点のことをいう。
(1) 0.020 < Y/f < 0.120
(2) 0.010 < Bf/TL < 0.150
但し、
Y :像高
f :光学系の焦点距離
TL :光学系の光学全長
Bf :光学系のバックフォーカス
【0009】
本実施形態の光学系は、最終レンズ群が極点を有するレンズ面を有することで、軸上および軸外の諸収差を効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本実施形態の光学系は、条件式(1)の値を上限値より小さくすることで、像高に対するコマ収差などの軸外収差を良好に補正することができる。本実施形態の光学系では、条件式(1)の上限値を0.120に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.110、0.100、0.095、0.090、0.085、0.080、0.075、0.070、0.065、0.063、0.060、さらに0.058に設定することが好ましい。
【0011】
また、本実施形態の光学系は、条件式(1)の値を下限値より大きくすることで、適正な焦点距離での色収差を良好に補正することができる。本実施形態の光学系では、条件式(1)の下限値を0.020に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.025、0.028、0.030、0.033、さらに0.035に設定することが好ましい。
【0012】
本実施形態の光学系は、条件式(2)の値を上限値より小さくすることで、バックフォーカスが長くなりすぎず、光学系の大型化を回避することができる。本実施形態の光学系では、条件式(2)の上限値を0.150に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.120、0.100、0.090、0.085、0.080、さらに0.075に設定することが好ましい。
【0013】
また、本実施形態の光学系は、条件式(2)の値を下限値より大きくすることで、コマ収差などの軸外収差を良好に補正することができる。本実施形態の光学系では、条件式(2)の下限値を0.010に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.013、0.015、0.018、0.020、さらに0.022に設定することが好ましい。
【0014】
以上の構成により、小型で良好な結像性能を有する光学系を実現することができる。
【0015】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面のうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(3) 0.02 < h/Y < 1.20
但し、
h :極点を有するレンズ面において光軸に最も近い極点の光軸からの高さ
【0016】
本実施形態の光学系は、条件式(3)を満足することで、軸上収差と、コマ収差、歪曲収差、像面湾曲といった軸外収差とをバランスよく補正することができる。
【0017】
本実施形態の光学系では、条件式(3)の上限値を1.20に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を1.15、1.10、1.05、1.00、さらに0.95に設定することが好ましい。
【0018】
また、本実施形態の光学系では、条件式(3)の下限値を0.02に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.05、0.10、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、さらに0.50に設定することが好ましい。
【0019】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに正の屈折力を有する1つ以上の正レンズを有し、1つ以上の正レンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(4)-1 -0.15< (Dh-Dc)/rK < 0.00
但し、
Dh :極点を有するレンズ面を有するレンズの光軸上の厚さ
Dc :極点を有するレンズ面を有するレンズの極点上の厚さ
rK :極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径
【0020】
本実施形態の光学系は、条件式(4)-1を満足することで、像面湾曲を良好に補正し、射出瞳の位置を適正に制御することができる。
【0021】
本実施形態の光学系では、条件式(4)-1の上限値を0.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(4)-1の上限値を-0.03、-0.05、-0.08、さらに-0.10に設定することが好ましい。
【0022】
また、本実施形態の光学系では、条件式(4)-1の下限値を-0.15に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(4)-1の下限値を-0.13に設定することが好ましい。
【0023】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに負の屈折力を有する1つ以上の負レンズを有し、1つ以上の負レンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(4)-2 0.000< (Dh-Dc)/rK < 0.100
但し、
Dh :極点を有するレンズ面を有するレンズの光軸上の厚さ
Dc :極点を有するレンズ面を有するレンズの極点上の厚さ
rK :極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径
【0024】
本実施形態の光学系は、条件式(4)-2を満足することで、像面湾曲を良好に補正し、射出瞳の位置を適正に制御することができる。
【0025】
本実施形態の光学系では、条件式(4)-2の上限値を0.100に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(4)-2の上限値を0.095、0.090、0.085、0.080、さらに0.075に設定することが好ましい。
【0026】
また、本実施形態の光学系では、条件式(4)-2の下限値を0.000に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(4)-2の下限値を0.003、さらに0.005に設定することが好ましい。
【0027】
また、本実施形態の光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(5) 0.020 < KML/TL < 0.140
但し、
KML:像面に最も近い極点を有するレンズ面から像面までの距離
【0028】
本実施形態の光学系は、条件式(5)の値を上限値より小さくすることで、像面湾曲を良好に補正することができる。本実施形態の光学系では、条件式(5)の上限値を0.140に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を0.135、0.130、0.125、0.120、さらに0.118に設定することが好ましい。
【0029】
また、本実施形態の光学系は、条件式(5)の値を下限値より大きくすることで、周辺光量の減少を抑制することができる。本実施形態の光学系では、条件式(5)の下限値を0.020に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.025、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、さらに0.055に設定することが好ましい。
【0030】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(6) 0.70 < rK/Y < 1.10
但し、
rK :極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径
【0031】
本実施形態の光学系は、条件式(6)を満足することで、コマ収差、歪曲収差、像面湾曲といった軸外収差を良好に補正することができる。
【0032】
本実施形態の光学系では、条件式(6)の上限値を1.10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(6)の上限値を1.05、1.00、0.98、さらに0.95に設定することが好ましい。
【0033】
また、本実施形態の光学系では、条件式(6)の下限値を0.70に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(6)の下限値を0.73、0.75、0.78、0.80、さらに0.82に設定することが好ましい。
【0034】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(7) -0.40 < Bf/fK < 0.40
但し、
fK :極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離
【0035】
本実施形態の光学系は、条件式(7)を満足することで、射出瞳の位置を適正に制御し、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0036】
本実施形態の光学系では、条件式(7)の上限値を0.40に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(7)の上限値を0.38、0.35、0.33、さらに0.30に設定することが好ましい。
【0037】
また、本実施形態の光学系では、条件式(7)の下限値を-0.40に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(7)の下限値を-0.35、-0.30、-0.25、-0.20、-0.15、さらに-0.10に設定することが好ましい。
【0038】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(8) 25.00 < νdK < 70.00
但し、
νdK :極点を有するレンズ面を有するレンズのd線を基準とするアッベ数
【0039】
本実施形態の光学系は、条件式(8)を満足することで、色収差を良好に補正することができる。
【0040】
本実施形態の光学系では、条件式(8)の上限値を70.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(8)の上限値を68.00、66.00、さらに65.00に設定することが好ましい。
【0041】
また、本実施形態の光学系では、条件式(8)の下限値を25.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(8)の下限値を30.00、35.00、38.00、40.00、さらに42.00に設定することが好ましい。
【0042】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(9) -1.00 < fR/fK < 0.60
但し、
fR :最終レンズ群の焦点距離
fK :極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離
【0043】
本実施形態の光学系は、条件式(9)を満足することで、射出瞳の位置を適正に制御し、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0044】
本実施形態の光学系では、条件式(9)の上限値を0.60に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(9)の上限値を0.55、0.50、0.45、0.40、さらに0.35に設定することが好ましい。
【0045】
また、本実施形態の光学系では、条件式(9)の下限値を-1.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(9)の下限値を-0.98、-0.95、-0.93、さらに-0.90に設定することが好ましい。
【0046】
また、本実施形態の光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(10) -0.50 < Bf/rR < 0.20
但し、
rR :最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径
【0047】
本実施形態の光学系は、条件式(10)を満足することで、射出瞳の位置を適正に制御し、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0048】
本実施形態の光学系では、条件式(10)の上限値を0.20に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(10)の上限値を0.15、0.10、0.05、さらに0.02に設定することが好ましい。
【0049】
本実施形態の光学系では、条件式(10)の下限値を-0.50に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(10)の下限値を-0.48、-0.45、-0.43、-0.40、-0.38、さらに-0.35に設定することが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の光学系は、極点を有するレンズ面を有するレンズのうち少なくとも1つが以下の条件式を満足することが好ましい。
(11) -2.00 < fK/f < 0.50
但し、
fK :極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離
【0051】
本実施形態の光学系は、条件式(11)を満足することで、軸上収差とコマ収差、歪曲収差、像面湾曲といった軸外収差とをバランスよく補正することができる。
【0052】
本実施形態の光学系では、条件式(11)の上限値を0.50に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(11)の上限値を0.45、0.40、0.35、0.30、さらに0.28に設定することが好ましい。
【0053】
本実施形態の光学系では、条件式(11)の下限値を-2.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(11)の下限値を-1.95、-1.90、-1.85、-1.80、さらに-1.75に設定することが好ましい。
【0054】
また、本実施形態の光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(12) 0.20 < TL/f < 1.10
【0055】
本実施形態の光学系は、条件式(12)の値を上限値より小さくすることで、光学系の大型化を回避することができる。本実施形態の光学系では、条件式(12)の上限値を1.10に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(12)の上限値を1.08、1.05、1.03、さらに1.00に設定することが好ましい。
【0056】
また、本実施形態の光学系は、条件式(12)の値を下限値より大きくすることで、諸収差を良好に補正することができる。本実施形態の光学系では、条件式(12)の下限値を0.20に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(12)の下限値を0.25、0.30、0.35、0.40、0.43、さらに0.45に設定することが好ましい。
【0057】
また、本実施形態の光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(13)0.005 < Bf/f < 0.100
【0058】
本実施形態の光学系は、条件式(13)の値を上限値より小さくすることで、バックフォーカスが長くなりすぎず、光学系の大型化を回避することができる。本実施形態の光学系では、条件式(13)の上限値を0.100に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(13)の上限値を0.095、0.090、0.085、0.080、さらに0.075に設定することが好ましい。
【0059】
また、本実施形態の光学系は、条件式(13)の値を下限値より大きくすることで、射出瞳の位置が像面に近づきすぎず、コマ収差などの軸外収差を良好に補正することができる。本実施形態の光学系では、条件式(13)の下限値を0.005に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(13)の下限値を0.008、0.010、0.013、さらに0.015に設定することが好ましい。
【0060】
また、本実施形態の光学系は、以下の条件式をすべて満足するレンズZを少なくとも1つ有することが好ましい。
(14) ndLZ + (0.01425×νdLZ) < 2.12
(15) νdLZ < 35.00
(16) 0.702 < θgFLZ + (0.00316×νdLZ)
但し、
ndLZ :レンズZのd線に対する屈折率
νdLZ :レンズZのd線を基準とするアッベ数
θgFLZ:レンズZの部分分散比であり、レンズZのg線に対する屈折率をngLZとし、レンズZのF線に対する屈折率をnFLZとし、レンズZのC線に対する屈折率をnCLZとしたとき、次式で定義される
θgFLZ = (ngLZ - nFLZ)/(nFLZ - nCLZ)
【0061】
本実施形態の光学系は、このような構成を有することにより、諸収差を良好に補正することができる。
【0062】
本実施形態の光学系は、条件式(14)の値を上限値より小さくすることにより、ペッツバール和が小さくなりすぎず、像面湾曲を良好に補正することができる。また、条件式(14)の上限値を2.12に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(14)の上限値を2.10、さらに2.08にすることが好ましい。
【0063】
本実施形態の光学系は、条件式(15)の値を上限値より小さくすることにより、軸上色収差の2次分散を良好に補正することができる。また、条件式(15)の上限値を35.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(15)の上限値を33.50、32.50、31.00、30.00、さらに28.50にすることが好ましい。
【0064】
本実施形態の光学系は、条件式(16)の値を下限値より大きくすることにより、軸上色収差の2次分散を良好に補正することができる。また、条件式(16)の下限値を0.702に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(17)の上限値を0.705、0.708、0.710、0.712、0.714、さらに0.716にすることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態の光学系は、以下の条件式を満足するレンズXを少なくとも1つ有することが好ましい。
(18) 80.00 < νdLX
但し、
νdLX:レンズXのd線を基準とするアッベ数
【0066】
本実施形態の光学系は、条件式(18)満足するレンズXを有することで、色収差を良好に補正することができる。
【0067】
本実施形態の光学系では、条件式(18)の下限値を80.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(18)の下限値を83.00、85.00、88.00、90.00、さらに92.50にすることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態の光学系は、最も物体側に配置されたレンズ群が正の屈折力を有することが好ましい。
【0069】
以上の構成により、小型で良好な結像性能を有する光学系を実現することができる。
【0070】
本実施形態の光学機器は、上述した構成の光学系を有している。これにより、小型で良好な結像性能を有する光学機器を実現することができる。
【0071】
本実施形態の光学系の製造方法は、複数のレンズ群からなる光学系の製造方法であって、複数のレンズ群は、合焦の際に各レンズ群の間隔が変化し、複数のレンズ群のうち最も像側に配置された最終レンズ群は極点を有するレンズ面を少なくとも1つ有し、以下の条件式をすべて満足するように配置する。
(1) 0.020 < Y/f < 0.120
(2) 0.010 < Bf/TL < 0.150
但し、
Y :像高
f :光学系の焦点距離
TL :光学系の光学全長
Bf :光学系のバックフォーカス
【0072】
このような光学系の製造方法により、小型で良好な結像性能を有する光学系を製造することができる。
【0073】
(数値実施例)
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
【0074】
(第1実施例)
図1は無限遠物体合焦時における第1実施例の光学系の断面図である。
【0075】
本実施例の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを有している。
【0076】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL1と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL2と、両凸形状の正レンズL3と、両凹形状の負レンズL4と、両凸形状の正レンズL5と、両凹形状の負レンズL6と両凸形状の正レンズL7との接合正レンズとからなる。
【0077】
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8からなる。
【0078】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL9と両凹形状の負レンズL10との接合負レンズと、開口絞りSと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11と両凹形状の負レンズL12との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL13と、両凸形状の正レンズL14と、両凸形状の正レンズL15と像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL16との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL17と、両凹形状の負レンズL18とからなる。
【0079】
像面I上には、CCDまたはCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0080】
本実施例の光学系と像面Iとの間には、フィルタFL1が配置されている。
【0081】
本実施例の光学系は、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより合焦を行う。第2レンズ群G2は、無限遠に合焦している状態から近距離物体に合焦させる場合、像側から物体側に移動される。
【0082】
本実施例の光学系において、第3レンズ群G3が有するレンズのうち、正メニスカスレンズL11と負レンズL12との接合負レンズおよび負レンズL13は、像ブレを補正するために光軸と垂直な方向の成分を有するように移動可能な防振レンズ群として構成される。
【0083】
本実施例の光学系において、第3レンズ群G3に含まれる正メニスカスレンズL17の物体側のレンズ面および負メニスカスレンズL18の像側のレンズ面は極点を有する。正メニスカスレンズL17は極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに正の屈折力を有する正レンズに該当する。また、本実施例の光学系において、正レンズL5はレンズZに該当し、正メニスカスレンズL2および正レンズL3はレンズXに該当する。
【0084】
以下の表1に、本実施例の光学系の諸元の値を掲げる。表1において、fは無限遠合焦時における光学系の焦点距離、Fnoは無限遠合焦時における光学系のF値、TLは無限遠合焦時における光学系の光学全長、Bfは光学系のバックフォーカスを示す。
【0085】
[レンズ諸元]において、mは物体側から数えた光学面の順番、rは曲率半径、dは面間隔、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数を示す。また、[レンズ諸元]において、曲率半径r=∞は平面を示している。また、[レンズ諸元]において、「*」の付された光学面は非球面であることを示している。
【0086】
[非球面データ]において、ASPは非球面データに対応する光学面、Kは円錐定数、A4~A20は球面定数を示す。
【0087】
非球面は、光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数をKとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で表される。なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0である。また、「E-n」は「×10-n」を示す。
【0088】
(a) S(y) = (y2/r) / { 1 + (1-K×y2/r2)1/2
+ A4×y4 + A6×y6 + A8×y8 + A10×y10 + A12×y12
+ A14×y14 + A16×y16 + A18×y18 + A20×y20
【0089】
表1に記載される焦点距離f、曲率半径rおよびその他の長さの単位は「mm」である。しかし、光学系は比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
【0090】
以上に述べた表1の符号は、後述する他の実施例の表においても同様に使用する。
【0091】
(表1)
[全体諸元]
f 390.00
Fno 2.90
Bf 28.455
像高 21.700
TL 387.455
2ω 6.34

[レンズ諸元]
m r d nd νd θgF
1) 480.771 9.450 1.518600 69.89
2) -1180.201 18.368
3) 190.470 12.100 1.433837 95.16
4) 1088.433 88.972
5) 121.568 12.850 1.433837 95.16
6) -317.679 1.750
7) -279.152 2.600 1.737999 32.26
8) 211.486 38.050
9) 226.884 7.300 1.663820 27.35 0.632
10) -226.482 0.300
11) -382.831 1.900 1.749504 35.33
12) 64.198 8.350 1.437001 95.10
13) -3151.863 D13
14) 79.158 5.700 1.627496 59.24
15) 889.670 D15
16) 87.296 4.800 1.698950 30.13
17) -247.699 1.200 1.881003 40.14
18) 52.070 7.100
19> ∞ 7.032 (開口絞り)
20) -370.162 2.900 1.846663 23.78
21) -85.379 1.200 1.496997 81.61
22) 78.949 3.884
23) -106.294 1.200 1.593190 67.90
24) 126.247 7.883
25) 84.389 3.000 1.720467 34.71
26) -937.027 35.448
27) 126.616 7.600 1.595510 39.21
28) -67.347 1.200 1.945944 17.98
29) -126.151 22.187
*30) 111.791 6.100 1.612660 44.46
*31) -126.654 9.374
*32) -69.987 1.200 2.001003 29.13
*33) 240.688 6.450
34) ∞ 2.000 1.516800 63.88
35) ∞ 20.005

[非球面データ]
ASP:30面
K: -0.0945
A4 : 0.00E+00 A6 : -3.70E-06 A8 : 6.64E-10 A10: -4.66E-11 A12: 3.48E-14
A14: -1.08E-16 A16: -2.85E-20 A18: 4.77E-23 A20: 3.35E-26
ASP:31面
K: 2.8122
A4 : 0.00E+00 A6 : -4.69E-06 A8 : -1.35E-09 A10: -3.95E-11 A12: -1.64E-14
A14: 8.73E-17 A16: -6.66E-20 A18: -6.27E-23 A20: -2.46E-26
ASP:32面
K: 3.0000
A4 : 0.00E+00 A6 : -7.94E-06 A8 : 9.42E-09 A10: 1.32E-11 A12: 2.48E-15
A14: 9.89E-17 A16: 4.73E-29 A18: 6.43E-32 A20: -3.53E-25
ASP:33面
K: -1.0000
A4 : 0.00E+00 A6 : -8.82E-06 A8 : 1.08E-08 A10: 5.92E-12 A12: 4.61E-14
A14: -6.54E-17 A16: -3.08E-29 A18: -7.29E-32 A20: 3.36E-25

[各群焦点距離データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 379.315
G2 14 138.094
G3 16 -85.999

[可変間隔データ]
無限遠合焦時 近距離物体合焦時
D13 24.000 4.100
D15 4.000 23.900
【0092】
図2Aは無限遠物体合焦時における第1実施例の光学系の諸収差図であり、図2Bは近距離物体合焦時における第1実施例の光学系の諸収差図である。
【0093】
各収差図において、FNOはF値、Yは像高をそれぞれ示す。詳細には、球面収差図では最大口径に対応するF値の値を示し、非点収差図および歪曲収差図では像高の最大値を示し、コマ収差図では各像高の値を示す。dはd線、gはg線(波長435.8nm)をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。後述する他の実施例の諸収差図においても、本実施例の諸収差図と同様の符号を使用する。
【0094】
各収差図より、本実施例の光学系は、合焦時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0095】
(第2実施例)
図3は無限遠物体合焦時における第2実施例の光学系の断面図である。
【0096】
本実施例の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを有している。
【0097】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL1と、両凸形状の正レンズL2と、両凸形状の正レンズL3と、両凹形状の負レンズL4と、両凸形状の正レンズL5と、両凹形状の負レンズL6と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL7との接合負レンズとからなる。
【0098】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL8からなる。
【0099】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL9と、開口絞りSと、両凸形状の正レンズL10と両凹形状の負レンズL11との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL12と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13と、両凸形状の正レンズL14と両凹形状の負レンズL15との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL16と、両凹形状の負レンズL17と、両凹形状の負レンズL18とからなる。
【0100】
像面I上には、CCDまたはCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0101】
本実施例の光学系と像面Iとの間には、フィルタFL1およびFL2が配置されている。
【0102】
本実施例の光学系は、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより合焦を行う。第2レンズ群G2は、無限遠に合焦している状態から近距離物体に合焦させる場合、像側から物体側に移動される。
【0103】
本実施例の光学系において、第3レンズ群G3に含まれる負レンズL18の物体側のレンズ面は極点を有する。負レンズL18は極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに負の屈折力を有する負レンズに該当する。また、本実施例の光学系において、正レンズL5はレンズZに該当し、正レンズL2および正レンズL3はレンズXに該当する。
【0104】
以下の表2に、本実施例の光学系の諸元の値を掲げる。
【0105】
(表2)
[全体諸元]
f 588.00
Fno 4.09
Bf 24.200
像高 21.700
TL 458.000
2ω 4.14

[レンズ諸元]
m r d nd νd θgF
1) 318.082 10.293 1.518600 69.89
2) 2767.474 70.000
3) 250.000 11.741 1.433837 95.16
4) -2625.391 76.022
5) 117.178 13.094 1.433837 95.16
6) -358.058 0.243
7) -326.721 2.600 1.737999 32.26
8) 219.472 44.906
9) 136.873 7.129 1.663820 27.35 0.632
10) -279.195 0.100
11) -417.537 1.900 1.800999 34.97
12) 57.256 8.730 1.437001 95.10
13) 422.344 D13
14) 75.383 6.241 1.518230 58.82
15) -1118.853 D15
16) 121.757 1.200 1.497820 82.57
17) 42.268 8.586
18> ∞ 6.500 (開口絞り)
19) 153.272 5.178 1.808090 22.74
20) -85.972 1.200 1.772500 49.62
21) 74.810 3.582
22) -107.276 1.200 1.816000 46.59
23) 255.014 4.500
24) 45.618 4.111 1.698950 30.13
25) 130.848 35.282
26) 102.108 7.814 1.698950 30.13
27) -26.600 1.260 1.922860 20.88
28) 212.812 0.460
*29) 50.919 10.000 1.647690 33.72
*30) -30.632 0.100
31) -43.062 1.200 1.593190 67.90
32) 52.042 50.049
*33) -119.867 3.013 1.848500 43.79
*34)221837.780 6.000
35) ∞ 2.000 1.516800 64.13
36) ∞ 14.500
37) ∞ 1.600 1.516800 64.13
38) ∞ 0.100

[非球面データ]
ASP:29面
K: -3.5347
A4 : 0.00E+00 A6 : 3.84E-06 A8 : 6.41E-10 A10: -3.33E-12 A12: 1.1E-14
ASP:30面
K: 1.24E+00
A4 : 0.00E+00 A6 : 8.39E-06 A8 : 4.06E-09 A10: -3.49E-12 A12: 1.88E-14
ASP:33面
K: 2.32E+01
A4 : 0.00E+00 A6 : 6.44E-06 A8 : 2.40E-08 A10: -6.37E-11 A12: 5.19E-14
ASP:34面
K: -2.27E+29
A4 : 0.00E+00 A6 : 2.46E-06 A8 : 2.50E-08 A10: -5.95E-11 A12: 3.75E-14

[各群焦点距離データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 445.504
G2 14 136.523
G3 16 -44.174

[可変間隔データ]
無限遠合焦時 近距離物体合焦時
D13 31.468 17.198
D15 4.100 18.370
【0106】
図4Aは無限遠物体合焦時における第2実施例の光学系の諸収差図であり、図4Bは近距離物体合焦時における第2実施例の光学系の諸収差図である。
【0107】
各収差図より、本実施例の光学系は、合焦時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0108】
(第3実施例)
図5は無限遠物体合焦時における第3実施例の光学系の断面図である。
【0109】
本実施例の光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを有している。開口絞りSは、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に配置される。
【0110】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL2と、物体側に凸面を向け、像側のレンズ面に2種類の異なる材料を用いた密着複層型の回折光学素子GDが形成された負メニスカスレンズL3と、両凸形状の正レンズL4と両凹形状の負レンズL5との接合負レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL7と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8との接合正レンズとからなる。
【0111】
第2レンズ群G2は、両凹形状の負レンズL9からなる。
【0112】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と両凸形状の正レンズL11との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL12と両凹形状の負レンズL13との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL14と、両凸形状の正レンズL15と両凹形状の負レンズL16との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL17と両凹形状の負レンズL18との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL19と像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL20との接合正レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21とからなる。
【0113】
像面I上には、CCDまたはCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0114】
本実施例の光学系は、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより合焦を行う。第2レンズ群G2は、無限遠に合焦している状態から近距離物体に合焦させる場合、物体側から像側に移動される。
【0115】
本実施例の光学系において、第3レンズ群G3が有するレンズのうち、正レンズL12と負レンズL13との接合負レンズおよび負レンズL14は、像ブレを補正するために光軸と垂直な方向の成分を有するように移動可能な防振レンズ群として構成される。
【0116】
本実施例の光学系において、第3レンズ群G3に含まれる負メニスカスレンズL21の物体側および像側のレンズ面は極点を有する。負メニスカスレンズL21は極点を有するレンズ面を有するレンズであるとともに負の屈折力を有する負レンズに該当する。また、本実施例の光学系において、正メニスカスレンズL8はレンズZに該当する。
【0117】
以下の表3に、本実施例の光学系の諸元の値を掲げる。
【0118】
[回折光学面データ]では、回折光学面の位相形状ψを表す以下の式(b)における、n(回折光の次数)、λ0(設計波長)、C2~C4(位相係数)を示す。
【0119】
(b) ψ(h,n) = (2π/(n×λ0))×(C2h2+C4h4)
【0120】
(表3)
[全体諸元]
f 581.97
Fno 8.06
Bf 16.167
像高 21.600
TL 269.235
2ω 4.17

[レンズ諸元]
m r d nd νd θgF
1) 134.048 7.530 1.518600 69.89
2) 975.941 0.600
3) 93.756 8.246 1.518600 69.89
4) 332.255 9.686
5) 136.607 4.312 1.516800 64.13
6) 120.104 0.300 1.528300 36.18
7) 119.767 0.200 1.548900 51.30
8) 120.755 41.847
9) 88.622 5.436 1.518600 69.89
10) -416.992 2.000 1.903660 31.27
11) 41.602 5.323
12) 42.525 5.649 1.518600 69.89
13) 143.662 14.506
14) 47.751 2.000 1.903660 31.27
15) 28.892 4.794 1.663820 27.35 0.632
16) 112.282 11.734
17> ∞ D17 (開口絞り)
18) -1154.419 1.200 1.487490 70.32
19) 62.576 D19
20) 310.300 1.200 2.000690 25.46
21) 26.935 3.449 1.603420 38.03
22) -47.327 1.500
23) 48.394 3.086 1.672700 32.18
24) -44.128 1.100 1.497820 82.57
25) 26.495 2.410
26) -53.275 1.100 1.696800 55.52
27) 43.809 1.500
28) 24.114 4.701 1.603420 38.03
29) -25.443 1.200 1.497820 82.57
30) 29.757 8.994
31) 27.240 5.426 1.603420 38.03
32) -31.131 1.200 1.772500 49.62
33) 19.933 0.100
34) 20.086 7.524 1.603420 38.03
35) -18.471 1.200 1.922860 20.88
36) -83.172 44.826
*37) -82.638 4.000 1.516800 64.13
*38) -100.000 16.167

[非球面データ]
ASP:37面
K: 1.0000
A4 : 0.00E+00 A6 : 2.01E-05
ASP:38面
K: -3.4854
A4 : 0.00E+00 A6 : 1.93E-05 A8 : -8.37E-09 A10: 7.40E-11 A12: -1.81E-13

[回折光学面データ]
GD:7面
n λ0 C2 C4
1 587.6 -3.59E-05 -9.39E-10

[各群焦点距離データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 173.592
G2 18 -121.724
G3 20 -78.037

[可変間隔データ]
無限遠合焦時 近距離物体合焦時
D17 2.053 20.426
D19 31.136 12.840
【0121】
図6Aは無限遠物体合焦時における第3実施例の光学系の諸収差図であり、図6Bは近距離物体合焦時における第3実施例の光学系の諸収差図である。
【0122】
各収差図より、本実施例の光学系は、合焦時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0123】
上記各実施例によれば、小型で良好な結像性能を有する光学系を実現することができる。
【0124】
以下に、条件式一覧および各実施例の条件式対応値を示す。
【0125】
Yは像高であり、fは光学系の焦点距離であり、TLは光学系の光学全長であり、Bfは光学系のバックフォーカスである。hは極点を有するレンズ面において光軸に最も近い極点の光軸からの高さである。Dhは極点を有するレンズ面を有するレンズの光軸上の厚さであり、Dcは極点を有するレンズ面を有するレンズの極点上の厚さであり、rKは極点を有するレンズ面を有するレンズの有効半径である。
【0126】
KMLは像面に最も近い極点を有するレンズ面から像面までの距離である。fKは極点を有するレンズ面を有するレンズの焦点距離である。νdKは極点を有するレンズ面を有するレンズのd線を基準とするアッベ数である。fRは最終レンズ群の焦点距離である。rRは最も像側に配置されるレンズ面の曲率半径である。
【0127】
ndLZはレンズZのd線に対する屈折率であり、θgFLZはレンズZの部分分散比であり、レンズZのg線に対する屈折率をngLZとし、レンズZのF線に対する屈折率をnFLZとし、レンズZのC線に対する屈折率をnCLZとしたとき、次式で定義される。
θgFLZ = (ngLZ - nFLZ) / (nFLZ - nCLZ)
【0128】
νdLXはレンズXのd線を基準とするアッベ数である。
【0129】
[条件式一覧および条件式対応値]
条件式 : 第1実施例 第2実施例 第3実施例
(1) Y / f : 0.056 0.037 0.037
(2) Bf / TL : 0.073 0.053 0.060
(3) h / Y : 0.724 0.915 0.571
(4) (Dh-Dc) / rK : -0.105 0.073 0.009
(5) KML / TL : 0.073 0.053 0.060
(6) rK / Y : 0.943 0.924 0.838
(7) Bf / fK : 0.291 -0.171 -0.016
(8) νdK : 29.13 43.79 64.13
(9) fR / fK : -0.879 0.313 0.078
(10) Bf / rR : 0.118 0.000 -0.162
(11) fK / f : 0.251 -0.240 -1.717
(12) TL / f : 0.993 0.779 0.463
(13) Bf / f : 0.073 0.041 0.028
(14) ndLZ + (0.01425 * νdLZ) : 2.054 2.054 2.054
(15) νdLZ : 27.35 27.35 27.35
(16) θgFLZ + (0.00316 * νdLZ) : 0.718 0.718 0.718
(17) νdLX : 95.16 95.16
【0130】
上記各実施例は、本発明の一具体例を示しているものであり、本発明はこれらに限定されない。以下の内容は、本願の実施形態の光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
【0131】
また、上記各実施例の光学系を構成するレンズのレンズ面に、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。これにより、フレアやゴーストを軽減し、コントラストの高い光学性能を達成することができる。
【0132】
次に、本実施形態の光学系を備えたカメラを、図23に基づいて説明する。
図23は、本実施形態の光学系を備えたカメラの模式図である。
【0133】
カメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係る光学系を備えたレンズ交換式のいわゆるミラーレスカメラである。
【0134】
カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光され、撮像素子3に到達する。撮像素子3は、被写体からの光を画像データに変換する。画像データは、電子ビューファインダ4に表示される。これにより、アイポイントEPに眼を位置させた撮影者は、被写体を観察することができる。
【0135】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、画像データは不図示のメモリに記憶される。このようにして、撮影者はカメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0136】
ここで、カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例の光学系は、小型で良好な光学性能を有する光学系である。したがって、カメラ1は小型で良好な光学性能を実現することができる。なお、上記第2~第3実施例の光学系を撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0137】
最後に、本実施形態の光学系の製造方法の概略を、図8に基づいて説明する。
図8は、本実施形態の光学系の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【0138】
図8に示す本実施形態の光学系の製造方法は、複数のレンズ群からなる光学系の製造方法であって、以下のステップS1~S4を含む。
【0139】
ステップS1:複数のレンズ群を準備する。
【0140】
ステップS2:合焦の際に各レンズ群の間隔が変化するようにする。
【0141】
ステップS3:複数のレンズ群のうち最も像側に配置された最終レンズ群が、極点を有するレンズ面を少なくとも1つ有するようにする。
【0142】
ステップS3:光学系が以下の条件式をすべて満足するようにする。
(1) 0.020 < Y/f < 0.120
(2) 0.010 < Bf/TL < 0.150
但し、
Y :像高
f :光学系の焦点距離
TL :光学系の光学全長
Bf :光学系のバックフォーカス
【0143】
かかる本実施形態の光学系の製造方法によれば、小型で良好な結像性能を有する光学系を製造することができる。
【0144】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0145】
S 開口絞り
I 像面
1 カメラ
2 撮影レンズ
3 撮像素子
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8