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特許7306631粒子解析方法、機械学習装置、粒子解析装置、および粒子解析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】粒子解析方法、機械学習装置、粒子解析装置、および粒子解析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2252 20180101AFI20230704BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G01N23/2252
G01N21/17 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019199912
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071446
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】森田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】箕田 政顕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌章
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-235009(JP,A)
【文献】特開2010-060389(JP,A)
【文献】特開2013-238454(JP,A)
【文献】特開2015-148499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/2252
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置を用いて粒子を含む学習用の試料を撮影して、学習用の粒子像を取得する工程と、
前記分析装置を用いて、前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行う工程と、
前記元素分析の結果に基づいて、前記学習用の粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与する工程と、
前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する工程と、
観察装置を用いて粒子を含む粒子解析用の試料を撮影して、粒子解析用の粒子像を取得する工程と、
前記粒子解析用の粒子像を前記学習モデルに入力することによって、粒子の種類を特定する工程と、
を含む、粒子解析方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記分析装置は、元素分析装置が搭載された電子顕微鏡であり、
前記観察装置は、電子顕微鏡である、粒子解析方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記分析装置は、第1光学顕微鏡と、元素分析装置が搭載された電子顕微鏡と、を有し、
前記観察装置は、第2光学顕微鏡である、粒子解析方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記学習用の試料の撮影は、前記第1光学顕微鏡を用いて行われ、
前記元素分析は、前記電子顕微鏡を用いて行われ、
前記粒子解析用の試料の撮影は、前記第2光学顕微鏡を用いて行われる、粒子解析方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記粒子解析用の試料は、鉄鋼である、粒子解析方法。
【請求項6】
粒子を含む学習用の試料の撮影、および、前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行う分析装置と、
前記分析装置を用いて前記学習用の試料を撮影して取得した学習用の粒子像に、前記元素分析の結果に基づいて、粒子の種類を表すラベルを付与するラベル付与部と、
前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
を含む、機械学習装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記分析装置は、元素分析装置が搭載された電子顕微鏡である、機械学習装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記分析装置を制御する分析装置制御部を含み、
前記分析装置制御部は、
前記分析装置に前記学習用の試料の撮影を行わせる処理と、
前記分析装置に前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行わせる処理と、
を行う、機械学習装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記分析装置は、第1光学顕微鏡と、元素分析装置が搭載された電子顕微鏡と、を有している、機械学習装置。
【請求項10】
粒子を含む粒子解析用の試料の撮影を行う観察装置と、
前記観察装置を用いて前記粒子解析用の試料を撮影して取得した粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって、粒子の種類を特定する粒子解析部と、
を含み、
前記学習モデルは、
分析装置を用いて粒子を含む学習用の試料を撮影して学習用の粒子像を取得し、前記分析装置を用いて前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行い、前記元素分析の結果に基づいて前記学習用の粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与し、前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い生成された学習モデルである、粒子解析装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記観察装置は、光学顕微鏡、または電子顕微鏡である、粒子解析装置。
【請求項12】
請求項10または11において、
前記観察装置を制御する観察装置制御部を含み、
前記観察装置制御部は、前記観察装置に前記粒子解析用の試料の撮影を行わせる、粒子解析装置。
【請求項13】
機械学習装置と、
粒子解析装置と、
を含み、
前記機械学習装置は、
粒子を含む学習用の試料の撮影、および、前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行う分析装置と、
前記分析装置を用いて前記学習用の試料を撮影して取得した学習用の粒子像に、前記元素分析の結果に基づいて、粒子の種類を表すラベルを付与するラベル付与部と、
前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
を含み、
前記粒子解析装置は、
粒子を含む粒子解析用の試料の撮影を行う観察装置と、
前記観察装置を用いて前記粒子解析用の試料を撮影して取得した粒子解析用の粒子像を前記学習モデルに入力することによって、粒子の種類を特定する粒子解析部と、
を含む、粒子解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子解析方法、機械学習装置、粒子解析装置、および粒子解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼内部の粒子(介在物)の種類を特定する手法として、粒子解析が知られている。粒子解析では、例えば、電子顕微鏡で粒子の形状の情報を取得し、EDS検出器を用いて粒子の組成情報を取得する(例えば、特許文献1参照)。粒子の組成情報から、粒子の種類を特定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した粒子解析では、EDS検出器等を用いて元素分析を行い、粒子の組成情報を取得した。しかしながら、元素分析には時間がかかるため、短時間で粒子解析を行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る粒子解析方法の一態様は、
分析装置を用いて粒子を含む学習用の試料を撮影して、学習用の粒子像を取得する工程と、
前記分析装置を用いて、前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行う工程と、
前記元素分析の結果に基づいて、前記学習用の粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与する工程と、
前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する工程と、
観察装置を用いて粒子を含む粒子解析用の試料を撮影して、粒子解析用の粒子像を取得する工程と、
前記粒子解析用の粒子像を前記学習モデルに入力することによって、粒子の種類を特定する工程と、
を含む。
【0006】
このような粒子解析方法では、粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定するため、元素分析を行うことなく粒子解析ができる。したがって、粒子解析を短時間で行うことができる。
【0007】
(2)本発明に係る機械学習装置の一態様は、
粒子を含む学習用の試料の撮影、および、前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行う分析装置と、
前記分析装置を用いて前記学習用の試料を撮影して取得した学習用の粒子像に、前記元素分析の結果に基づいて、粒子の種類を表すラベルを付与するラベル付与部と、
前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
を含む。
【0008】
このような機械学習装置では、ラベルを付した粒子像を生成して機械学習を行い、学習モデルを生成することができる。そのため、このような機械学習装置では、例えばユーザーがラベル付けを行う必要がなく、容易に学習モデルを生成できる。
【0009】
(3)本発明に係る粒子解析装置の一態様は、
粒子を含む粒子解析用の試料の撮影を行う観察装置と、
前記観察装置を用いて前記粒子解析用の試料を撮影して取得した粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって、粒子の種類を特定する粒子解析部と、
を含み、
前記学習モデルは、
分析装置を用いて粒子を含む学習用の試料を撮影して学習用の粒子像を取得し、前記分析装置を用いて前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行い、前記元素分析の結果に基づいて前記学習用の粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与し、前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い生成された学習モデルである
【0010】
このような粒子解析装置では、粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定するため、元素分析を行うことなく粒子解析ができる。したがって、粒子解析を短時間で行うことができる。
【0011】
(4)本発明に係る粒子解析システムの一態様は、
機械学習装置と、
粒子解析装置と、
を含み、
前記機械学習装置は、
粒子を含む学習用の試料の撮影、および、前記学習用の試料中の粒子の元素分析を行う分析装置と、
前記分析装置を用いて前記学習用の試料を撮影して取得した学習用の粒子像に、前記元素分析の結果に基づいて、粒子の種類を表すラベルを付与するラベル付与部と、
前記ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する学習モデル生成部と、
を含み、
前記粒子解析装置は、
粒子を含む粒子解析用の試料の撮影を行う観察装置と、
前記観察装置を用いて前記粒子解析用の試料を撮影して取得した粒子解析用の粒子像を前記学習モデルに入力することによって、粒子の種類を特定する粒子解析部と、
を含む。
【0012】
このような粒子解析システムでは、粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定するため、元素分析を行うことなく粒子解析ができる。したがって、粒子解析を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る粒子解析システムの構成を示す図。
図2】第1情報処理装置の構成を示す図。
図3】第2情報処理装置の構成を示す図。
図4】粒子解析方法の一例を示すフローチャート。
図5】学習モデルを生成する工程の一例を示すフローチャート。
図6】学習用の試料像の一例を示す図。
図7】試料像から粒子を抽出する方法を説明するための図。
図8】粒子像の一例を示す図。
図9】分類条件の一例を示す表。
図10】粒子像にラベルを付与した結果を示す図。
図11】学習モデルを用いて粒子解析を行う工程の一例を示すフローチャート。
図12】学習モデルを用いた粒子解析を説明するための図。
図13】粒子解析の結果を示す表。
図14】第1情報処理装置の処理部の処理の一例を示すフローチャート。
図15】第2情報処理装置の処理部の処理の一例を示すフローチャート。
図16】第2実施形態に係る粒子解析システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1. 第1実施形態
1.1. 粒子解析システム
まず、第1実施形態に係る粒子解析システムについて図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る粒子解析システム100の構成を示す図である。
【0016】
粒子解析システム100では、試料中の粒子の種類を特定する粒子解析を行う。粒子解析の対象となる試料は、粒子の形状と粒子の種類(組成)とに相関があるものである。粒子解析の対象となる試料は、例えば、鉄鋼である。粒子解析システム100では、鉄鋼中の粒子(介在物)の種類を特定することができる。粒子の形状情報は、例えば、粒子を電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察することで得ることができる。粒子の形状情報は、粒子の面積、粒子の絶対最大長、粒子の幅、粒子の円形度、粒子のアスペクト比などの情報を含む。
【0017】
粒子解析システム100は、図1に示すように、機械学習装置2と、粒子解析装置4と、を含む。
【0018】
1.1.1. 機械学習装置
機械学習装置2は、学習用のデータセットを作成し、作成したデータセットを用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する。機械学習装置2は、分析装置10と、第1情報処理装置12と、を含む。
【0019】
分析装置10は、学習用の試料の撮影、および学習用の試料中の粒子の元素分析を行う。分析装置10は、例えば、元素分析装置が搭載された走査電子顕微鏡である。元素分析装置としては、例えば、EDS検出器を用いることができる。この場合、分析装置10では、試料像としてのSEM像と、粒子の元素分析の結果としてのEDSスペクトルと、を取得できる。SEM像は、走査電子顕微鏡で取得可能な像であり、例えば、2次電子像や、反射電子像を含む。試料像は、粒子の形状を確認しやすい反射電子像であることが望ましい。
【0020】
分析装置10で取得された試料像および元素分析の結果は、LAN等のネットワークを介して第1情報処理装置12に送られる。
【0021】
図2は、第1情報処理装置12の構成を示す図である。第1情報処理装置12は、処理部120と、操作部130と、表示部132と、記憶部134と、を含む。
【0022】
操作部130は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部120に出力する。操作部130の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
【0023】
表示部132は、処理部120によって生成された画像を表示する。表示部132の機
能は、LCD、CRT、操作部130としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0024】
記憶部134は、処理部120の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部134は、処理部120のワーク領域としても機能する。記憶部134の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
【0025】
処理部120(コンピュータ)の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部120は、分析装置制御部121と、粒子像生成部122と、スペクトル解析部123と、ラベル付与部124と、学習モデル生成部125と、を含む。
【0026】
分析装置制御部121は、分析装置10を制御する処理を行う。分析装置制御部121は、例えば、分析装置10に試料像の撮影を行わせる処理や、分析装置10に元素分析を行わせる処理を行う。
【0027】
粒子像生成部122は、分析装置10で試料を撮影することで得られた試料像を取得し、試料像から粒子を抽出して粒子像を生成する。また、粒子像生成部122は、試料像から抽出された粒子の位置情報を取得する。粒子の位置情報は、分析装置10の試料ステージ上での粒子の位置を特定するための情報である。
【0028】
分析装置制御部121は、粒子の位置情報に基づいて当該粒子に電子線が照射されるように分析装置10を制御する。これにより、分析装置10では、試料中の粒子に電子線が照射され、EDS検出器が粒子から発生したX線を検出する。この結果、粒子像に含まれる粒子の元素分析を行うことができる。
【0029】
スペクトル解析部123は、粒子の元素分析の結果としてのスペクトルを取得し、当該スペクトルに基づいて定量分析を行う。定量分析を行うことによって、粒子の組成情報が得られる。
【0030】
ラベル付与部124は、粒子の元素分析の結果に基づいて、粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与する。ラベル付与部124は、粒子の分類条件に従って粒子像にラベルを付与する。
【0031】
学習モデル生成部125は、ラベル付与部124でラベルが付与された粒子像を学習データとして機械学習を行い、粒子像から粒子の種類を特定するための学習モデルを生成する。
【0032】
1.1.2. 粒子解析装置
粒子解析装置4は、粒子解析用の試料像を撮影して粒子解析用の粒子像を取得し、粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定する。粒子解析装置4は、観察装置20と、第2情報処理装置22と、を含む。
【0033】
観察装置20は、粒子解析用の試料を撮影して、粒子解析用の試料像を取得する。観察装置20は、例えば、走査電子顕微鏡である。観察装置20では、試料像としてのSEM像を取得できる。観察装置20で取得する試料像は、粒子の形状を確認しやすい反射電子像であることが望ましい。
【0034】
観察装置20で取得された試料像は、LAN等のネットワークを介して第2情報処理装
置22に送られる。
【0035】
図3は、第2情報処理装置22の構成を示す図である。第2情報処理装置22は、処理部220と、操作部230と、表示部232と、記憶部234と、を含む。
【0036】
操作部230は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部220に出力する。操作部230の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
【0037】
表示部232は、処理部220によって生成された画像を表示する。表示部232の機能は、LCD、CRT、操作部230としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0038】
記憶部234は、処理部220の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部234は、処理部220のワーク領域としても機能する。記憶部234の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。記憶部234には、学習モデル生成部125で生成された学習モデルが記憶される。
【0039】
処理部220(コンピュータ)の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部220は、観察装置制御部221と、粒子像生成部222と、粒子解析部223と、を含む。
【0040】
観察装置制御部221は、観察装置20を制御する処理を行う。観察装置制御部221は、例えば、観察装置20に試料像の撮影を行わせる処理を行う。
【0041】
粒子像生成部222は、観察装置20で撮影された試料像を取得し、試料像から粒子を抽出して粒子解析用の粒子像を生成する。
【0042】
粒子解析部223は、学習モデル生成部125で生成された学習モデルを取得し、粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子像に含まれる粒子の種類を特定する。
【0043】
第1情報処理装置12と第2情報処理装置22とは、LAN等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0044】
1.2. 粒子解析方法
粒子解析システム100を用いた、粒子解析方法について説明する。図4は、粒子解析システム100を用いた、粒子解析方法を示すフローチャートである。
【0045】
粒子解析システム100を用いた粒子解析方法は、学習モデルを生成する工程S1と、学習モデルを用いて粒子解析を行う工程S2と、を含む。以下では、鉄鋼介在物の粒子解析を行う場合について説明する。
【0046】
1.2.1. 学習モデルの生成
図5は、学習モデルを生成する工程S1の一例を示すフローチャートである。
【0047】
まず、分析装置10を用いて、学習用の試料を撮影する(S10)。学習用の試料は、鉄鋼介在物を含む鉄鋼である。分析装置10を用いて学習用の試料を撮影することによって、学習用の試料像を取得できる。学習用の試料像は、例えば、反射電子像である。
【0048】
図6は、学習用の試料像I2の一例を示す図である。学習用の試料像I2は、分析装置10から第1情報処理装置12に送られる。
【0049】
次に、学習用の試料像I2から粒子を抽出して、学習用の粒子像を生成する(S11)。
【0050】
図7は、試料像から粒子を抽出する方法を説明するための図である。粒子の抽出は、図7に示すように、試料像I2において、所定の輝度以上を粒子、所定の輝度未満を母材として、試料像から粒子を識別することで行われる。なお、試料像から粒子を抽出する方法は、これに限定されず、公知の画像処理方法を用いてもよい。
【0051】
図8は、粒子像I4の一例を示す図である。図8には、9つの粒子像I4を示している。粒子像I4を生成する際には、粒子像I4に含まれる粒子の位置情報も取得する。
【0052】
次に、分析装置10を用いて、粒子の元素分析を行う(S12)。元素分析は、例えば、EDS分析である。本工程では、分析装置10において、粒子の位置情報に基づいて電子線を照射することによって粒子に電子線を照射し、粒子から発生したX線をEDS検出器で検出してEDSスペクトルを得る。
【0053】
次に、粒子の元素分析の結果としてのEDSスペクトルを取得し、当該EDSスペクトルに基づいて定量分析を行い、粒子の組成情報を取得する(S13)。
【0054】
次に、粒子の元素分析の結果に基づいて、粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与する(S14)。本工程では、粒子の分類条件に従って粒子像にラベルを付与する。
【0055】
図9は、分類条件の一例を示す表である。図9に示す例では、粒子の分類名(ラベル)として、シリケート系、タングステン系、および硫化物系が挙げられている。分類条件として、シリケート系は、Siが30mass%以上、かつ、Oが30mass%以上であること、タングステン系は、Wが50mass%以上であること、硫化物系は、Mnが30mass%以上、かつ、Sが30mass%以上であること、が挙げられている。
【0056】
すなわち、粒子の組成(すなわち定量分析の結果)が、Siが30mass%以上、かつ、Oが30mass%以上を満たせば、当該粒子を含む粒子像I4はシリケート系と分類される。また、粒子の組成が、Wが50mass%以上を満たせば、当該粒子を含む粒子像I4はタングステン系と分類される。また、粒子の組成が、Mnが30mass%以上、かつ、Sが30mass%以上を満たせば、当該粒子を含む粒子像I4は硫化物系と分類される。このようにして、粒子像I4にラベルが付与される。
【0057】
図10は、粒子像I4にラベルを付与した結果を示す図である。粒子の組成情報を用いて、図9に示す分類条件に従って粒子像I4にラベルを付与することによって、図10に示す結果が得られる。
【0058】
上述した学習用の試料像I2を撮影する工程S10、学習用の粒子像I4を生成する工程S11、粒子の元素分析を行う工程S12、粒子の組成情報を取得する工程S13、学習用の粒子像I4にラベルを付与する工程S14を、試料像の視野を変更しながら繰り返すことによって、学習用のデータの数を増やすことができる。これにより、多数の学習データからなる学習用のデータセットを生成できる。
【0059】
なお、学習の効果を高めるために、学習用のデータセットに粒子像I4を回転させたも
のを追加してもよいし、粒子像I4をぼかしたものを追加してもよいし、輝度やコントラストを変化させた粒子像I4を追加してもよい。また、例えば、分析装置10として、複数のチャンネルを有する多分割型反射電子検出器が搭載された走査電子顕微鏡を用いてもよい。この場合、1つの粒子像に対して、異なるチャンネルの検出信号で生成された複数の粒子像を得ることができる。当該複数の粒子像を学習用のデータセットに追加してもよい。
【0060】
次に、学習モデル生成部125が、ラベルが付与された学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する(S15)。学習モデルは、粒子像から粒子の種類を特定するためのモデルである。機械学習のアルゴリズムとしては、ニューラルネットワークを用いるが、相関関係があるデータに適した解析技術であれば機械学習のアルゴリズムは特に限定されない。
【0061】
以上の工程により、学習モデルを生成することができる。
【0062】
1.2.2. 学習モデルを用いた粒子解析
図11は、学習モデルを用いて粒子解析を行う工程S2の一例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、観察装置20を用いて、粒子解析用の試料を撮影する(S20)。粒子解析用の試料は、鉄鋼介在物を含む鉄鋼である。観察装置20を用いて粒子解析用の試料を撮影することによって、粒子解析用の試料像を取得できる。粒子解析用の試料像は、例えば、反射電子像である。粒子解析用の試料像は、観察装置20から第2情報処理装置22に送られる。
【0064】
次に、粒子解析用の試料像から粒子を抽出して、粒子解析用の粒子像を生成する(S21)。粒子解析用の粒子像を生成する工程S21は、上述した図5に示す学習用の粒子像を生成する工程S11と同様に行われる。粒子解析用の粒子像の倍率は、学習用の粒子像の倍率と同じであることが望ましい。すなわち、粒子解析用の粒子像のピクセルサイズと、学習用の粒子像のピクセルサイズが同じであることが望ましい。粒子解析用の粒子像のピクセルサイズが学習用の粒子像のピクセルサイズと異なる場合、粒子解析用の粒子像を拡大処理または縮小処理することによって、粒子解析用の粒子像のピクセルサイズを学習用の粒子像のピクセルサイズと同じにしてもよい。
【0065】
次に、粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって、粒子解析用の粒子像に含まれる粒子の種類を特定する(S22)。
【0066】
図12は、学習モデルを用いた粒子解析を説明するための図である。
【0067】
図12に示すように、粒子解析用の粒子像I6を、学習モデルに入力することによって、粒子像I6に含まれる粒子の種類を特定することができる。
【0068】
図13は、粒子解析の結果を示す表である。
【0069】
粒子解析の結果として、図13に示す例では、粒子の種類ごとに粒子の数を示した表を示している。図13に示す粒子解析の結果から、粒子解析用の試料に含まれる粒子の種類およびその数に関する情報を得ることができる。なお、粒子解析の結果の表し方は、特に限定されない。
【0070】
以上の工程により、粒子解析を行うことができる。
【0071】
1.3. 動作
1.3.1. 機械学習装置の動作
機械学習装置2では、上述した図5に示す各工程を自動で行うことができる。すなわち、機械学習装置2は、ラベルを付した粒子像を生成して学習用のデータセットを作成し、作成したデータセットを用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する。
【0072】
図14は、第1情報処理装置12の処理部120の処理の一例を示すフローチャートである。
【0073】
処理部120は、ユーザーが学習モデルを生成する処理を開始する指示を行ったか否かを判定する(S100)。処理部120は、操作部130を介して学習モデルを生成する処理を開始する操作情報が入力された場合に、処理を開始する指示があったと判定する。
【0074】
処理を開始する指示があったと判定した場合(S100のYes)、分析装置制御部121が分析装置10に学習用の試料を撮影させる(S102)。これにより、分析装置10が学習用の試料を撮影し、学習用の試料像が第1情報処理装置12に送られる。
【0075】
粒子像生成部122は、分析装置10で撮影された学習用の試料像I2を取得し、試料像I2から粒子を抽出して粒子像I4を生成する(S104)。また、粒子像生成部122は、試料像I2から抽出された粒子の位置情報を取得する。
【0076】
次に、分析装置制御部121は、分析装置10に粒子の元素分析を行わせる(S106)。分析装置制御部121は、分析装置10に、粒子の位置情報で特定された位置に電子線を照射させる。これにより、分析装置10では、試料中の粒子に電子線が照射され、粒子から発生したX線をEDS検出器で検出する。この結果、粒子の元素分析を行うことができる。粒子の元素分析の結果としてのスペクトルは、第1情報処理装置12に送られる。
【0077】
スペクトル解析部123は、粒子の元素分析の結果であるスペクトルを取得し、当該スペクトルに基づいて定量分析を行い、粒子の組成情報を取得する(S108)。
【0078】
ラベル付与部124は、粒子の元素分析の結果に基づいて、粒子像I4に粒子の種類を表すラベルを付与する(S110)。ラベル付与部124は、図9に示す粒子の分類条件に従って粒子像I4にラベルを付与する。これにより、学習データを生成できる。
【0079】
分析装置制御部121は、学習用の試料の測定領域の全視野を測定したか否かを判定する(S112)。分析装置制御部121は、測定領域の全視野を測定していないと判定した場合(S112のNo)、分析装置10の試料ステージを動作させて視野を移動させ(S114)、分析装置10に試料の撮影を行わせる(S102)。これにより、新たな学習用の試料像を取得できる。そして、処理部120は、ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110の処理を行い、学習データを生成する。
【0080】
処理部120は、測定領域の全視野を測定したと判定されるまで、ステップS102、ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、ステップS114の処理を繰り返す。これにより、測定領域に含まれる複数の粒子から学習データを生成することができる。この結果、学習用のデータセットに含まれる学習データ数を増やすことができる。
【0081】
測定領域の全視野を測定したと判定した場合(S112のYes)、学習モデル生成部
125が、生成された学習用のデータセットを用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する(S116)。
【0082】
以上の処理により、学習モデルを生成できる。生成された学習モデルは、第2情報処理装置22に送られ、記憶部234に記憶される。
【0083】
1.3.2. 粒子解析装置の動作
粒子解析装置4では、上述した図11に示す各工程を自動で行うことができる。すなわち、粒子解析装置4は、粒子解析用の粒子像を取得し、取得した粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定する。
【0084】
図15は、第2情報処理装置22の処理部220の処理の一例を示すフローチャートである。
【0085】
処理部220は、ユーザーが粒子解析を開始する指示を行ったか否かを判定する(S200)。処理部220は、操作部230を介して粒子解析を開始する操作情報が入力された場合に、処理を開始する指示があったと判定する。
【0086】
処理を開始する指示があったと判定した場合(S200のYes)、観察装置制御部221が観察装置20に粒子解析用の試料を撮影させる(S202)。これにより、観察装置20が粒子解析用の試料を撮影し、粒子解析用の試料像が第2情報処理装置22に送られる。
【0087】
粒子像生成部222は、観察装置20で撮影された粒子解析用の試料像を取得し、試料像から粒子を抽出して粒子解析用の粒子像を生成する(S204)。
【0088】
粒子解析部223は、粒子像生成部222が生成した粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定する(S206)。
【0089】
観察装置制御部221は、粒子解析用の試料の測定領域の全視野を測定したか否かを判定する(S208)。観察装置制御部221は、測定領域の全視野を測定していないと判定した場合(S208のNo)、観察装置20の試料ステージを動作させて視野を移動させ(S210)、観察装置20に試料の撮影を行わせる(S202)。これにより、新たな粒子解析用の試料像を取得できる。そして、処理部220は、ステップS204、ステップS206の処理を行い、粒子解析を行う。
【0090】
処理部220は、測定領域の全視野を測定したと判定されるまで、ステップS202、ステップS204、ステップS206、ステップS208、ステップS210の処理を繰り返す。これにより、測定領域内の粒子の粒子解析を行うことができる。
【0091】
測定領域の全視野を測定したと判定した場合(S208のYes)、粒子解析部223は、図13に示す粒子解析の結果を表示部232に表示させ、処理部220は処理を終了する。
【0092】
1.4. 効果
上記した粒子解析方法では、分析装置10を用いて粒子を含む学習用の試料を撮影して学習用の粒子像を取得する工程と、分析装置10を用いて学習用の試料中の粒子の元素分析を行う工程と、元素分析の結果に基づいて学習用の粒子像に粒子の種類を表すラベルを付与する工程と、ラベルが付与された前記学習用の粒子像を用いて機械学習を行い学習モデルを生成する工程と、観察装置20を用いて粒子を含む粒子解析用の試料を撮影して粒
子解析用の粒子像を取得する工程と、粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定する工程と、を含む。
【0093】
このように、上述した粒子解析方法では、粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定するため、元素分析を行うことなく、粒子の種類を特定することができる。したがって、粒子解析を短時間で行うことができる。
【0094】
機械学習装置2は、粒子を含む学習用の試料の撮影、および、学習用の試料中の粒子の元素分析を行う分析装置10と、分析装置10を用いて学習用の試料を撮影して取得した学習用の粒子像に、分析結果に基づいて、粒子の種類を表すラベルを付与するラベル付与部124と、ラベルが付与された学習用の粒子像を用いて機械学習を行い、学習モデルを生成する学習モデル生成部125と、を含む。そのため、機械学習装置2では、ラベルを付した粒子像を生成して学習用のデータセットを作成し、作成したデータセットを用いて機械学習を行い、学習モデルを生成することができる。したがって、機械学習装置2では、例えばユーザーがラベル付けを行う必要がない。よって、機械学習装置2を用いることで、容易に学習用のデータセットを作成できる。
【0095】
粒子解析装置4は、粒子を含む粒子解析用の試料の撮影を行う観察装置20と、観察装置20を用いて粒子解析用の試料を撮影して取得した粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定する粒子解析部223と、を含む。そのため、粒子解析装置4では、元素分析を行うことなく、粒子像から粒子の種類を特定することができる。したがって、粒子解析装置4では、短時間で粒子解析を行うことができる。
【0096】
粒子解析システム100は、機械学習装置2と、粒子解析装置4と、を含む。そのため、機械学習装置2によって容易に学習モデルを生成でき、粒子解析装置4によって元素分析を行うことなく短時間で粒子解析を行うことができる。
【0097】
1.5. 変形例
次に、上述した第1実施形態の変形例について説明する。以下では、上述した第1実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0098】
1.5.1. 第1変形例
上述した粒子解析システム100では、分析装置10がEDS検出器が搭載された走査電子顕微鏡である場合について説明したが、分析装置10は、試料の撮影と、粒子の元素分析と、を行うことができれば、その構成は特に限定されない。例えば、分析装置10は、走査電子顕微鏡や、透過電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡などの電子顕微鏡に各種元素分析装置が搭載されたものであってもよい。電子顕微鏡に搭載される元素分析装置としては、EDS検出器、WDS分光器、カソードルミネッセンス検出システムなどが挙げられる。また、分析装置10は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、オージェ電子分光装置などであってもよい。
【0099】
1.5.2. 第2変形例
学習用の試料および粒子解析用の試料として、レプリカ法で作製された試料を用いてもよい。
【0100】
レプリカ法は、試料表面の凹凸を樹脂などに転写して観察を行う試料作製法である。レプリカ法で作製された試料は、撮影用の試料として用いられる。元素分析を行うための元素分析用の試料としては、レプリカ法で作製された試料は用いない。
【0101】
例えば、試料が鉄鋼の場合、レプリカ法では、鉄鋼表面を樹脂に転写する。この場合、
撮影用の試料は、鉄鋼表面が転写された樹脂であり、元素分析用の試料は、鉄鋼となる。すなわち、学習用の試料の撮影は、鉄鋼表面が転写された樹脂を用いて行い、元素分析は、鉄鋼を用いて行う。
【0102】
学習用の試料としてレプリカ法で作製された試料を用いる場合、撮影用の試料の座標系と、元素分析用の試料の座標系と、を関連付ける必要がある。2つの座標の関連付けは、例えば、撮影用の試料と粒子解析用の試料にマーカーを付けることにより行うことができる。
【0103】
粒子解析用の試料としては、レプリカ法で作製した試料を用いることができる。
【0104】
1.5.3. 第3変形例
上述した実施形態では、粒子解析システム100が、分析装置10としての走査電子顕微鏡と観察装置20としての走査電子顕微鏡の2つの走査電子顕微鏡を有する場合について説明したが、分析装置10と観察装置20とが共通の走査電子顕微鏡であってもよい。
【0105】
1.5.4. 第4変形例
上述した実施形態では、粒子解析システム100は、2つの情報処理装置(第1情報処理装置12と第2情報処理装置22)を有していたが、第1情報処理装置12と第2情報処理装置22とを1つの情報処理装置で実現してもよい。
【0106】
2. 第2実施形態
2.1. 粒子解析システム
次に、第2実施形態に係る粒子解析システムについて、図面を参照しながら説明する。図16は、第2実施形態に係る粒子解析システム200の構成を示す図である。以下、第2実施形態に係る粒子解析システム200において、第1実施形態に係る粒子解析システム100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0107】
上述した粒子解析システム100では、分析装置10は元素分析装置を搭載した走査電子顕微鏡であり、観察装置20は走査電子顕微鏡であった。
【0108】
これに対して、粒子解析システム200では、図16に示すように、分析装置10は、光学顕微鏡10a(第1光学顕微鏡の一例)と、走査電子顕微鏡10bと、を含み、観察装置20は光学顕微鏡(第2光学顕微鏡の一例)である。
【0109】
分析装置10は、光学顕微鏡10aの試料ステージの座標と、走査電子顕微鏡10bの試料ステージの座標と、をリンクさせるシステムを備えている。例えば、光学顕微鏡10aの試料ホルダーと走査電子顕微鏡10bの試料ホルダーが共通化されており、分析装置制御部121は、それぞれの試料ステージの情報を管理している。これにより、光学顕微鏡10aで観察した箇所と同一箇所を、走査電子顕微鏡10bで観察および元素分析できる。
【0110】
2.2. 粒子解析方法
粒子解析システム200を用いた粒子解析方法は、粒子解析システム100を用いた粒子解析方法と同様に、学習モデルを生成する工程S1と、学習モデルを用いて粒子解析を行う工程S2と、を含む。以下、第1実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0111】
2.2.1. 学習モデルの生成
第2実施形態では、図5に示す学習用の試料を撮影する工程S10、粒子の元素分析を行う工程S12が、第1実施形態と異なる。
【0112】
分析装置10を用いて学習用の試料を撮影する工程S10では、光学顕微鏡10aを用いて学習用の試料を撮影する。これにより、学習用の試料像を取得する。学習用の試料像は、光学顕微鏡像である。
【0113】
学習用の試料像から粒子を抽出して学習用の粒子像を生成する工程S11は、学習用の試料像が光学顕微鏡像である点を除いて、第1実施形態と同様に行われる。
【0114】
分析装置10を用いて粒子の元素分析を行う工程S12では、元素分析装置を備えた走査電子顕微鏡10bを用いて元素分析を行う。本工程では、光学顕微鏡10aの試料ステージの座標と走査電子顕微鏡10bの試料ステージの座標とをリンクさせるシステムを用いて、走査電子顕微鏡10bの試料ステージ上での粒子の位置を特定し、粒子の元素分析を行う。これにより、EDSスペクトルを得ることができる。
【0115】
粒子の組成情報を取得する工程S13、学習用の粒子像にラベルを付与する工程S14、および学習用の粒子像を用いて学習モデルを生成する工程S15は、第1実施形態と同様に行われる。
【0116】
以上の工程により、学習モデルを生成することができる。
【0117】
2.2.2. 学習モデルを用いた粒子解析
第2実施形態では、図11に示す観察装置20を用いて粒子解析用の試料を撮影する工程S20が、第1実施形態と異なる。
【0118】
観察装置20を用いて粒子解析用の試料を撮影する工程S20では、光学顕微鏡を用いて粒子解析用の試料を撮影する。これにより、粒子解析用の試料像を取得する。粒子解析用の試料像は、光学顕微鏡像である。
【0119】
粒子解析用の試料像から粒子を抽出して粒子解析用の粒子像を生成する工程S21は、粒子解析用の試料像が光学顕微鏡像である点を除いて、第1実施形態と同様に行われる。
【0120】
粒子解析用の粒子像を学習モデルに入力することによって粒子の種類を特定する工程S22は、第1実施形態と同様に行われる。
【0121】
以上の工程により、粒子解析を行うことができる。
【0122】
2.3. 効果
第2実施形態では、分析装置10は、光学顕微鏡と、元素分析装置が搭載された電子顕微鏡と、を有し、観察装置20は、光学顕微鏡である。そのため、第2実施形態では、光学顕微鏡による粒子解析が可能となる。
【0123】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0124】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き
換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0125】
2…機械学習装置、4…粒子解析装置、10…分析装置、10a…光学顕微鏡、10b…走査電子顕微鏡、12…第1情報処理装置、20…観察装置、22…第2情報処理装置、100…粒子解析システム、120…処理部、121…分析装置制御部、122…粒子像生成部、123…スペクトル解析部、124…ラベル付与部、125…学習モデル生成部、130…操作部、132…表示部、134…記憶部、200…粒子解析システム、220…処理部、221…観察装置制御部、222…粒子像生成部、223…粒子解析部、230…操作部、232…表示部、234…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16