(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】光送信装置及び光通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/548 20130101AFI20230704BHJP
H04B 10/61 20130101ALI20230704BHJP
【FI】
H04B10/548
H04B10/61
(21)【出願番号】P 2019184056
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
(72)【発明者】
【氏名】種村 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】田之村 亮汰
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/038654(WO,A1)
【文献】特表2010-521896(JP,A)
【文献】特開2013-145942(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020804(WO,A1)
【文献】特開2010-004245(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133472(WO,A1)
【文献】特開2008-148306(JP,A)
【文献】特開2018-098780(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1連続光を第1電気信号で位相変調することで第1変調光を出力する第1位相変調手段と、
第2連続光を第2電気信号で位相変調することで第2変調光を出力する第2位相変調手段と、
前記第1変調光と前記第2変調光とが偏波多重された偏波多重光を出力する出力手段と、を備え、
前記第1位相変調手段は、前記第1電気信号の振幅に応じて、前記第1連続光の位相のみを変化させて前記第1変調光を出力するマッハツェンダ変調器であり、
前記第2位相変調手段は、前記第2電気信号の振幅に応じて、前記第2連続光の位相のみを変化させて前記第2変調光を出力するマッハツェンダ変調器であり、
前記第1変調光及び第2変調光の振幅は、シンボル間の遷移時においても一定であることを特徴とする光送信装置。
【請求項2】
前記第1連続光及び前記第2連続光の偏波面は、互いに直交することを特徴とする請求項
1に記載の光送信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光送信装置と、光受信装置と、を含む光通信システムであって、
前記光受信装置は、
前記
光送信装置からの前記偏波多重光を第1偏波の第1信号光と前記第1偏波と直交する第2偏波の第2信号光に偏波分離する分離手段と、
前記第1偏波の成分を有する第1局所光及び前記第2偏波の成分を有する第2局所光を生成する生成手段と、
前記第1信号光と、前記第1局所光とを干渉させた第1干渉光を出力する第1干渉手段と、
前記第1信号光と、前記第1局所光の位相をπ/2だけシフトさせた光とを干渉させた第2干渉光を出力する第2干渉手段と、
前記第2信号光と、前記第2局所光とを干渉させた第3干渉光を出力する第3干渉手段と、
前記第2信号光と、前記第2局所光の位相をπ/2だけシフトさせた光とを干渉させた第4干渉光を出力する第4干渉手段と、
前記第1干渉光の光電変換を行う第1光電変換手段と、
前記第2干渉光の光電変換を行う第2光電変換手段と、
前記第3干渉光の光電変換を行う第3光電変換手段と、
前記第4干渉光の光電変換を行う第4光電変換手段と、
を備え
ていることを特徴とする光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光検波を行う光通信システム及び当該光通信システムの光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信容量の増大に対応するためにコヒーレント光検波技術及び偏波多重技術が利用されている。通常、偏波多重された信号光(以下、偏波多重光)のコヒーレント光検波には、4つのバランス型光検出器、つまり、8つのフォトダイオード(以下、PD)が使用される。非特許文献1は、偏波多重光のコヒーレント光検波に使用するPDを4つに削減するための構成を開示している。また、非特許文献2及び3は、信号光間のビートにより生じる雑音をデジタル処理で除去する構成を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Seb J.Savory,"Digital filters for coherent optical receivers", Opt.Express 16,804-817,2008年
【文献】Wei-Ren Peng,et al.,"Spectrally Efficient Direct-Detected OFDM Transmission Incorporating a Tunable Frequency Gap and an Iterative Detection Techniques",J.Lightwave Technol.27,5723-5735,2009年
【文献】Zhe Li,et al.,"SSBI Mitigation and the Kramers-Kronig Scheme in Single-Sideband Direct-Detection Transmission With Receiver-Based Electronic Dispersion Compensation",J.Lightwave Technol.35,1887-1893,2017年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バランス型光検出器は、2つのPDにより信号光間のビートによる雑音を相殺して出力するが、非特許文献1の構成では、バランス型光検出器に代えて1つのPDを使用するため、信号光間のビートによる雑音が出力される。非特許文献1では、局所光の振幅(強度)を信号光の振幅よりも強くすることで、信号光間のビートによる雑音が相対的に無視できる様になるとしているが、局所光の振幅にも上限があり、かつ、信号光についても前置増幅によりその振幅を強くする場合があるため、信号光間のビートによる雑音が無視できない場合が生じ得る。
【0005】
また、信号光間のビートによる雑音を抑制するために非特許文献2及び3に記載の技術を適用することも考えられるが、デジタル信号処理の処理負荷が重く、高速伝送においては現実的ではない。また、信号光間のビートによる雑音を抑制するためのデジタル信号処理回路が追加で必要となる。
【0006】
本発明は、光受信装置において信号光間のビートを除去できる様にする光送信装置及光通信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、光送信装置は、第1連続光を第1電気信号で位相変調することで第1変調光を出力する第1位相変調手段と、第2連続光を第2電気信号で位相変調することで第2変調光を出力する第2位相変調手段と、前記第1変調光と前記第2変調光とが偏波多重された偏波多重光を出力する出力手段と、を備え、前記第1位相変調手段は、前記第1電気信号の振幅に応じて、前記第1連続光の位相のみを変化させて前記第1変調光を出力するマッハツェンダ変調器であり、前記第2位相変調手段は、前記第2電気信号の振幅に応じて、前記第2連続光の位相のみを変化させて前記第2変調光を出力するマッハツェンダ変調器であり、前記第1変調光及び第2変調光の振幅は、シンボル間の遷移時においても一定であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、光受信装置において光信号間のビートを除去できる様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、非特許文献1に記載された光受信装置の構成図である。光受信装置は、送信側において第1偏波の信号光と、第1偏波とは直交する第2偏波の信号光とを偏波多重して生成された偏波多重光を受信する。偏波ビームスプリッタ(PBS)20は、受信する偏波多重光のX偏波成分とY偏波成分とを分離し、それぞれ、X偏波の信号光(以下、信号光X)と、X偏波と直交するY偏波の信号光(以下、信号光Y)とを出力する。なお、受信側におけるX偏波及びY偏波の方向は、送信側における第1偏波及び第2偏波の方向とは独立している。つまり、信号光X及びYは、それぞれ、第1偏波の信号光と第2偏波の信号光の両方の成分を含み得る。
【0012】
分岐部21は、信号光Xを2分岐し、信号光Xを合波部23及び24に出力する。分岐部22は、信号光Yを2分岐し、信号光Yを合波部25及び26に出力する。光源40は、連続光(局所光)を生成して分岐部41に出力する。なお、局所光の偏波面は、X偏波及びY偏波とは異なる様に調整される。つまり、局所光が、X偏波の成分とY偏波の成分の両方を有する様に局所光の偏波面は調整される。例えば、局所光のX偏波の成分とY偏波の成分の振幅を等しくするため、局所光の偏波面は、X偏波及びY偏波それぞれに対して45度となるように調整される。分岐部41は、局所光を4分岐し、その内の2つを、位相器42及び43に出力する。位相器42及び43は、それぞれ、局所光の位相をπ/2だけシフトさせ、位相シフト後の局所光を出力する。
【0013】
合波部23は、局所光と信号光Xを干渉させ、干渉光をPD27に出力する。合波部24は、位相シフト後の局所光と信号光Xを干渉させ、干渉光をPD28に出力する。合波部25は、局所光と信号光Yを干渉させ、干渉光をPD29に出力する。合波部26は、位相シフト後の局所光と信号光Yを干渉させ、干渉光をPD30に出力する。
【0014】
PD27~30は、それぞれ、入力される干渉光の光電変換を行って電気信号を出力する。PD27に入力される干渉光に含まれる局所光と、PD28に入力される干渉光に含まれる局所光の位相はπ/2だけ異なるため、PD27が出力する電気信号を信号光Xの実数成分(XI)とすると、PD28が出力する電気信号は信号光Xの虚数成分(XQ)になる。同様に、PD29が出力する電気信号を信号光Yの実数成分(YI)とすると、PD30が出力する電気信号は信号光Yの虚数成分(YQ)になる。PD27~PD30それぞれが出力する電気信号を、後段のMIMO処理部で処理することで、光受信装置は、第1偏波の信号光と第2偏波の信号光それぞれで搬送された情報の復調を行うことができる。
【0015】
従来の様なバランス型光検出器を使用する光受信装置においては、
図1のPD27~30が、それぞれ、2つのPDを有するバランス型光検出器に置き換えられる。バランス型光検出器の各PDは、それぞれ、信号光の二乗成分(信号光間のビート成分)と、局所光の二乗成分(局所光間のビート成分)と、信号光と局所光の積成分(局所光と信号光のビート成分)と、を含む電気信号を出力するが、2つのPDが出力する電気信号の差をとるため、信号光間のビート成分及び局所光間のビート成分は相殺され、復調に必要な信号光と局所光のビート成分のみが出力される。しかしながら、
図1の光受信装置においては、バランス型光検出器を1つのPDに置換するため、PD27~30が出力する電気信号は、復調に必要な信号光と局所光のビート成分に加えて、雑音となる信号光間のビート成分及び局所光間のビート成分を含むことになる。
【0016】
ここで、局所光の強度は、光受信装置において一定に制御でき、この場合、局所光間のビート成分は直流成分となり、光受信装置は、局所光間のビート成分を容易に除去できる。しかしながら、信号光の振幅が時間により変化する場合、信号光間のビート成分は直流成分にはならず復調に影響を及ぼし得る。このため、本実施形態では、光送信装置において信号光の振幅を一定とすることで、信号光間のビート成分を直流成分として、これにより、光受信装置において信号光間のビート成分を除去可能にする。
【0017】
図2は、本実施形態による光送信装置の構成図である。光源10は、連続光を生成してPBS11に出力する。PBS11は、連続光を偏波分離し、X偏波の連続光を光位相変調器12に入力し、X偏波とは直交するY偏波の連続光を光位相変調器13に入力する。なお、X偏波の連続光とY偏波の連続光の振幅を等しくするため、光源10が生成する連続光の偏波面は、X偏波及びY偏波それぞれに対して45度となる様に調整される。
【0018】
光位相変調器12は、X偏波の連続光を送信する情報に対応する電気信号で位相変調してX偏波の変調光を出力する。同様に、光位相変調器13は、Y偏波の連続光を送信する情報に対応する電気信号で位相変調してY偏波の変調光を出力する。偏波ビームコンバイナ(PBC)14は、X偏波の変調光とY偏波の変調光とを偏波多重し、偏波多重光を光伝送路に出力する。
【0019】
光位相変調器12及び13は、例えば、マッハツェンダ変調器であり、通過する連続光の位相を電気信号の振幅に応じて調整する。
図3は、光位相変調器12及び13による位相変調の説明図である。
図3に示す様に、光位相変調器12及び13は、連続光50の振幅を一定としたまま、その位相のみを変化させる。つまり、光位相変調器12及び13が出力する変調光を複素平面で表示すると、
図3の点線の円上のみを移動する。従来の様に、IQ変調器を使用して位相変調を行う場合、シンボル間の遷移時、振幅は変化するが、本実施形態による光位相変調器12及び13は、シンボル間の遷移時においても変調光の振幅を一定にするため、光受信装置のPD27~30が出力する電気信号に含まれる信号光間のビート成分は直流成分となり、光受信装置は、局所光間及び信号光間のビート成分を容易に除去して偏波多重光の復調を行うことができる。
【0020】
なお、本実施形態の光送信装置は、光源10が生成する局所光を偏波分離してX偏波とY偏波の連続光を生成していたが偏波多重する方法はこれに限定されない。例えば、光源10が生成する局所光を等振幅に2分岐して、それぞれ、光位相変調器により位相変調し、2つの位相変調器の一方の位相変調器が出力する変調光を、半波長板等でその偏波面を90度回転させて合波する構成であっても良い。また、光源10が生成する局所光を等振幅に2分岐して、半波長板等で一方の局所光の偏波面を90度回転させることにより、偏波面が互いに直交する2つの局所光を生成する構成であっても良い。
【0021】
また、本発明によると、
図2に示す光送信装置と、
図1に示す光受信装置と、を含む光通信システムが提供される。上述した様に、光送信装置は、信号光の振幅を一定にするため、
図1に示す、コヒーレント光検波のために4つのPDのみを使用する光受信装置を使用しても、信号光間のビート成分による雑音を容易に除去して精度良く復調することができる。
【0022】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
10:光源、11:光ビームスプリッタ、12、13:光位相変調器、14:光ビームコンバイナ