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特許7306915セラミックス基板、静電チャック、静電チャックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】セラミックス基板、静電チャック、静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230704BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20230704BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230704BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20230704BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L23/12 C
H01L23/12 D
C04B41/88 C
H02N13/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019147509
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2020043336
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018165830
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知剛
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-290635(JP,A)
【文献】特開2017-059771(JP,A)
【文献】特開2001-230287(JP,A)
【文献】特開平04-331779(JP,A)
【文献】特開2003-289027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 23/13
H01L 23/12
C04B 41/88
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、
前記基板本体に内設された導電体パターンと、
を有し、
前記基板本体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、
前記導電体パターンは、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体であり、
前記基板本体は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であること、
を特徴とするセラミックス基板。
【請求項2】
ニッケルは、前記導電体パターンに局在していることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項3】
前記セラミックス基板は、半導体装置用パッケージに用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス基板。
【請求項4】
基板本体と、
前記基板本体に内設された静電電極と、
を有し、
前記基板本体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、
前記静電電極は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体であり、
前記基板本体は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であること、
を特徴とする静電チャック。
【請求項5】
ニッケルは、前記静電電極に局在していることを特徴とする請求項4に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記静電電極は、前記タングステンに対して酸化ニッケルの添加量が0.2~1.0wt%である導電性ペーストを焼成した焼成体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記静電電極は、前記タングステンに対して酸化アルミニウムの添加量が0.2~3.0wt%、二酸化ケイ素の添加量が0.2~3.0wt%である導電性ペーストを焼成した焼成体であることを特徴とする請求項4~6の何れか一項に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記基板本体は、相対密度が98%以上であることを特徴とする請求項4~の何れか一項に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記基板本体は、酸化アルミニウムの平均粒子径が1.0μm~3.0μmであることを特徴とする請求項4~の何れか一項に記載の静電チャック。
【請求項10】
基板本体と、前記基板本体に内設された静電電極とを有する静電チャックの製造方法であって、
焼結助剤を含まない酸化アルミニウムと、有機材料の混合物からなるグリーンシートの上面に、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加した導電性ペーストにより導電体パターンを形成する工程と、
前記グリーンシート及び前記導電体パターンを焼成して前記基板本体及び前記静電電極を形成する工程と、を有し、
前記基板本体は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であること、
を特徴とする静電チャックの製造方法。
【請求項11】
前記導電性ペーストは、前記タングステンに対して酸化ニッケルの添加量が0.2~1.0wt%であること、を特徴とする請求項10に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項12】
前記導電性ペーストは、前記タングステンに対して酸化アルミニウムの添加量が0.2~3.0wt%、二酸化ケイ素の添加量が0.2~3.0wt%であること、を特徴とする請求項10又は11に記載の静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セラミックス基板、静電チャック、静電チャックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の基板を処理する半導体製造装置は、半導体ウェハを保持する静電チャックを有している。半導体製造装置は、たとえばCVD装置やPVD装置等の成膜装置、プラズマエッチング装置などである。静電チャックは、セラミックス基板の載置台と載置台内に配置された導体パターンとを有し、導体パターンを静電電極として載置台上の基板を保持する。導体パターンは、例えばタングステン等の高融点材料を含む導電性ペーストを用い、セラミックス基板と同時に焼成して形成される(例えば、特許文献1,2参照)。なお、半導体装置用のセラミックス基板も同様にして形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-331779号公報
【文献】特開平6-290635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の静電チャックは、グリーンシートに導電性ペーストを印刷し、グリーンシートと導電性ペーストとを同時に焼結して形成される。一例として、酸化アルミニウム(アルミナ)を主成分とするセラミックス(アルミナセラミックス)のグリーンシートとタングステンの導電性ペーストを挙げた場合、一般的にアルミナセラミックスには、焼結助剤(例えば、シリカ、マグネシア、カルシア、イットリア、等)が含まれることが多い。このように焼結助剤を含むセラミックスは、使用環境の温度上昇に伴って絶縁抵抗の値が低下し易い。そこで、絶縁抵抗の温度依存性の小さい、焼結助剤を含まないアルミナセラミックスが望まれる。しかし、焼成時に液相となる焼結助剤がないため、導体であるタングステンとの接合強度が得られない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、セラミックス基板は、基板本体と、前記基板本体に内設された導電体パターンと、を有し、前記基板本体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、前記導電体パターンは、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体であり、前記基板本体は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上である
【0006】
本発明の一観点によれば、静電チャックは、基板本体と、前記基板本体に内設された静電電極と、を有し、前記基板本体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、前記静電電極は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体であり、前記基板本体は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上である
【0007】
本発明別の一観点によれば、基板本体と、前記基板本体に内設された静電電極とを有する静電チャックの製造方法であって、焼結助剤を含まない酸化アルミニウムと、有機材料の混合物からなるグリーンシートの上面に、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加した導電性ペーストにより導電体パターンを形成する工程と、前記グリーンシート及び前記導電体パターンを焼成して前記基板本体及び前記静電電極を形成する工程と、を有し、前記基板本体は、前記酸化アルミニウムの純度が99.5%以上である
【発明の効果】
【0008】
本発明の一観点によれば、高純度の酸化アルミニウムからなるセラミックスに形成された電極を有するセラミックス基板、静電チャック、静電チャックの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態の静電チャックの概略断面図。
図2】静電チャックの概略平面図。
図3】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図4】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図5】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図6】静電チャックの製造工程を示す斜視図。
図7】(a)は引掻試験を示す斜視図、(b)は剥離試験を示す斜視図。
図8】各サンプルの添加量、抵抗率、焼結性及び密着性の評価結果を示す説明図。
図9】(a)(b)はサンプルのセラミックス及び電極を示す断面写真。
図10】サンプルのSE像(二次電子像)を示す断面写真。
図11】酸素の分析結果を示す断面写真。
図12】タングステンの分析結果を示す断面写真。
図13】ニッケルの分析結果を示す断面写真。
図14】アルミニウムの分析結果を示す断面写真。
図15】ケイ素の分析結果を示す断面写真。
図16】試験結果を示す説明図。
図17】セラミックスの温度と抵抗値の関係を示す説明図。
図18】第二実施形態の半導体用パッケージの概略断面図。
図19】半導体用パッケージの概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図では、理解を容易にするために、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0011】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態の静電チャックの概略断面を示す。
図1に示すように、静電チャック1は、ベースプレート10と、ベースプレート10の上に配置された載置台20とを有している。載置台20は、たとえばシリコーン樹脂などの接着剤によりベースプレート10の上面に固定されている。なお、ベースプレート10に対して載置台20をネジにより固定してもよい。
【0012】
ベースプレート10の材料はたとえば、アルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材との複合材料等である。たとえば、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好であることなどの点から、アルミニウム又はその合金を使用し、その表面にアルマイト処理(絶縁層形成)を施したものが使用される。ベースプレート10には、たとえば載置台20の上面に載置される基板Wを冷却する冷媒(ガス、冷却水等)の供給路を設けることもできる。基板Wは、たとえば半導体ウェハである。
【0013】
載置台20は、基板本体21と、基板本体21に内設された静電電極22及び発熱体23とを有している。
基板本体21は、基板Wの形状に応じて円盤状に形成されている。基板本体21は、酸化アルミニウム(Al)からなるセラミックスである。「酸化アルミニウムからなるセラミックス」とは、酸化アルミニウム以外の無機成分を添加していないセラミックスを意味する。セラミックスからなる基板本体21は、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であることが好ましい。純度が99.5%以上であることは、焼結助剤を添加することなく形成されることを示す。また、純度が99.5%以上であることは、製造工程等において意図しない不純物を含む場合もあることを意味している。基板本体21は、相対密度が98%以上であることが好ましい。基板本体21は、酸化アルミニウムの平均粒子径が1.0μm以上、3.0μm以下であることが好ましい。
【0014】
載置台20を作製する方法としては、グリーンシートで静電電極22用の金属材料及び発熱体23用の電熱材料をそれぞれ挟み、その積層体を焼結することにより、基板本体21に静電電極22及び発熱体23が内設された載置台20を得ることができる。
【0015】
静電電極22は、膜状に形成された導電体である。本実施形態の静電電極22は双極タイプのものであり、第1静電電極22aと第2静電電極22bを有している。なお、静電電極22として、1つの静電電極からなる単極タイプのものが使用されてもよい。静電電極22の材料としては、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO)を添加した導電性ペーストが使用される。
【0016】
発熱体23は、第1静電電極22a及び第2静電電極22bの下に配置されている。発熱体23は、膜状に形成された導電体である。発熱体23は、基板本体21を平面的に複数の領域(ヒータゾーン)を独立して加熱制御することが可能な複数のヒータ電極として設けられる。なお、発熱体23が1つのヒータ電極として設けられてもよい。発熱体23の材料としては、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO)を添加した導電性ペーストが使用される。
【0017】
図2に示すように、静電チャック1は、円盤状のベースプレート10の上に載置台20が配置され、載置台20の周囲においてベースプレート10の周縁部が露出している。ベースプレート10の周縁部には、半導体製造装置のチャンバに取り付けるための取付孔11が周縁部に沿って配列されている。また、載置台20及びベースプレート10は、中央部に複数(図1では3つ)のリフトピン用開口部12を有している。リフトピン用開口部12には、基板Wを上下方向に移動するリフトピンが挿通される。リフトピンで基板を載置台より上昇させることにより、搬送装置による基板Wの自動搬送が可能になる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の静電チャック1では、載置台20の上に基板Wが載置される。そして、第1静電電極22aにプラス(+)の電圧が印加され、第2静電電極22bにマイナス(-)の電圧が印加される。これにより、第1静電電極22aにプラス(+)電荷が帯電し、第2静電電極22bにマイナス(-)電荷が帯電する。これに伴って、第1静電電極22aに対応する基板Wの部分Waにマイナス(-)電荷が誘起され、第2静電電極22bに対応する基板Wの部分Wbにプラス(+)電荷が誘起される。
【0019】
基板Wと静電電極22とその間に配置される載置台20(基板本体21)のセラミックス部24とをコンデンサとみなした場合、セラミックス部24が誘電層に相当する。そして、セラミックス部24を介して静電電極22と基板Wとの間に発生したクーロン力によって基板Wが載置台20の上に静電吸着される。そして、発熱体23に所定の電圧が印加されて載置台20が加熱される。載置台20の温度により、基板Wが所定の温度に制御される。静電チャック1の加熱温度は、50℃~200℃、例えば150℃に設定される。
【0020】
(製造方法)
次に、上記の載置台20の製造方法を説明する。
先ず、図3に示すように、セラミックス材料と有機材料からなるグリーンシート51~53を準備する。各グリーンシート51~53は、矩形板状に形成されている。各グリーンシート51~53のセラミックス材料は酸化アルミニウムからなり、焼結助剤を含まない。
【0021】
グリーンシート51は、有機成分が除去されセラミックス材料が焼結し、緻密化することにより、図1に示す基板Wが搭載される部分の基板本体21となるものである。グリーンシート52は、焼成されることにより、図1に示す静電電極22を形成するためのものであり、静電電極22と発熱体23の間の部分の基板本体21となるものである。グリーンシート53は、焼成されることにより、図1に示す発熱体23を形成するためのものであり、ベースプレート10に接着される部分の基板本体21となるものである。
【0022】
次いで、グリーンシート52の上面に、例えば印刷法(スクリーン印刷)により、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素と有機材料とを混合した導電性ペーストを用いて導電体パターン54を形成する。この導電体パターン54は、後述する工程において焼成されることにより、図1に示す静電電極22となるものである。なお、導電体パターン54は、上述のグリーンシート51の下面に形成されてもよい。
【0023】
導電体パターン54の形成に用いられる導電性ペーストは、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素と有機材料とを混合したものである。酸化ニッケルの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上、1.0wt%以下であることが好ましい。酸化ニッケルは、タングステンの焼結性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、5wt%以上添加すると、タングステンの結晶が大きくなりすぎ、基板本体21との十分な密着が得られない。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、タングステンの平均粒径は、0.5μm以上、3.0μm以下であることが好ましい。同様に、酸化ニッケルの平均粒径は、5.0μm以上、15.0μm以下であることが好ましい。
【0024】
酸化アルミニウムの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上、3.0wt%以下であることが好ましい。酸化アルミニウムは、静電電極22と酸化アルミニウムからなるセラミックスの基板本体21との密着性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、3.0wt%より多く添加すると、焼結性が低下する。また、抵抗率が増加する。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、酸化アルミニウムの平均粒径は、1.0μm以上、4.0μm以下であることが好ましい。
【0025】
二酸化ケイ素の添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上、3.0wt%以下であることが好ましい。二酸化ケイ素は、焼成時に液相となり、タングステンの焼結性、及び基板本体21との密着性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、3.0wt%より多く添加すると、焼結性、密着性が低下する。また、抵抗率が増加する。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、二酸化ケイ素の平均粒径は、1.0μm以上、12.0μm以下であることが好ましい。
【0026】
次いで、グリーンシート53の上面に、例えば印刷法(スクリーン印刷)により、導電性ペーストを用いて導電体パターン55を形成する。導電体パターン55を形成する導電性ペーストは、上述の導電体パターン54を形成する導電性ペーストと同じ材料の導電性ペーストを用いることができる。この導電体パターン55は、後述する工程において焼成されることにより、発熱体23となるものである。なお、導電体パターン55は、上述のグリーンシート52の下面に形成されてもよい。
【0027】
次いで、図4に示すように、各グリーンシート51~53が積層されて構造体71aが形成される。各グリーンシート51~53は、加熱しながら加圧することにより、互いに接着される。
【0028】
次いで、図5に示すように、構造体71aの周囲を切断して円盤状の構造体71bが形成される。
次いで、構造体71bを焼成して、図6に示すセラミックス基板72aが得られる。焼成する際の温度は、例えば、1600℃である。このセラミックス基板72aは、図3図4に示す導電体パターン54,55を焼結して得られた静電電極22及び発熱体23(図1参照)を内蔵する。このようなセラミックス基板72aに対して各種の加工が施される。
【0029】
例えば、セラミックス基板72aは、上下両面が研磨されて載置面と接着面とが形成される。また、セラミックス基板72aは、図1に示すリフトピン用開口部12が形成される。
【0030】
以上の工程により、載置台20が得られる。
(作用)
(サンプルの作製)
図7(a)に示すサンプル80を作製した。サンプル80は、セラミックス基板81と、セラミックス基板81の上面の導電体パターン82を有している。セラミックス基板81は、酸化アルミニウムからなるセラミックスである。また、セラミックス基板81は、焼結助剤を含まない原料組成であり、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上である。導電体パターン82は、タングステンからなる導電性ペースト、又はタングステンを主成分として酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素の添加量を調整した導電性ペーストにより形成された。グリーンシート上に導電性ペーストを印刷し、一体を同時に焼成してサンプル80を形成した。焼成されたセラミックス基板81において、酸化アルミニウムの平均粒径は1.0~3.0μmである。
【0031】
剥離試験に際し、図7(b)に示すように、サンプル80の導電体パターン82の上面に、銅を含む銀ロウを介してコバール製のリング83を加熱接合する。引張試験装置により、セラミックス基板81を固定してリング83の一端を上方に引き上げ、導電体パターン82がセラミックス基板81から剥離した際の試験力を記録する。
【0032】
図8は、本願発明者が作製したサンプル80の導電体パターン82を形成する導電性ペーストに添加した酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)の添加量[wt%]、導電体パターン82の抵抗率[Ωm]、導電体パターン82の焼結性及び密着性の評価結果を示す。作製したサンプル80の導電体パターン82について、引掻試験(スクラッチテスト)により焼結性を評価し、剥離試験により密着性を評価した。なお、以下の説明において、No.1~No.20のサンプルを、サンプル1~20として説明する。
【0033】
サンプル1は、タングステンよりなり、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加しない、つまり無添加の導電性材料を用いて形成した導電体パターン82を含む。このサンプル1において、導電体パターン82の抵抗率は2.85E-07[Ωm](Eは指数)であった。なお、タングステンの抵抗率は、5.29E-08[Ωm]である。
【0034】
焼結助剤を含まない酸化アルミニウムのグリーンシートに対して、タングステンのみからなる導電性ペーストを印刷し、グリーンシート及び導電性ペーストを焼成して得られるサンプル1では、グリーンシート及び導電性ペーストに液相成分を含まないため、導電性ペーストに含まれるタングステンの焼成が進まず、導電体パターン82の強度が得られない。また、セラミックス基板81と導電体パターン82との密着が得られない。
【0035】
サンプル2~20は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加した導電性ペーストを用いて形成した導電体パターンを含む。
サンプル3~12,14~20は、上述の好適な組成(含有量)の導電性ペーストを用いた導電体パターン82を含むサンプルである。これらのサンプル3~12,14~20は、導電体パターン82の焼結性、及びセラミックス基板81と導電体パターン82との密着性が良好「○」であった。
【0036】
サンプル2では、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素の添加量がそれぞれ0.1wt%の導電性ペーストを用いている。サンプル13では、酸化ニッケルの添加量が0.1wt%、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素の添加量がそれぞれ1wt%の導電性ペーストを用いている。酸化ニッケルの添加量が少ない(0.1wt%)ため、タングステンの焼結性が低く、評価を不良「×」とした。
【0037】
なお、焼結性が良好ではない導電体パターン82(「×」を付したサンプル1,2,13)では、剥離試験のための試験片を導電体パターン82に接続できないため、その引張試験による密着性の評価を行っていない。
【0038】
図9(a)は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケルを0.5wt%、酸化アルミニウムを2.0wt%、二酸化ケイ素を2.0wt%添加した導電性ペーストを、上述のセラミックス基板81を形成するグリーンシートの表面に印刷し、一体を同時に焼成したサンプルのSEM断面写真を示す。図9(a)において、中央部分が導電体パターン82であり、導電体パターン82の下側がセラミックス基板81である。このサンプルでは、良好な焼結性の導電体パターン82が確認できる。
【0039】
図9(b)は、タングステンよりなり、無添加の導電性材料を用いて導電体パターン82を形成したサンプルのSEM断面写真を示す。このサンプルでは、焼結性が低い導電体パターン82となり、強度も低い。
【0040】
図9(a)に示すサンプルについて、EPMA(electron probe microanalyzer)により分析した。
図10は、分析したサンプルのSE像(二次電子像)を示す。
【0041】
図11は、酸素の分析結果を示す。酸素は、セラミックス基板81と導電体パターン82の両方に存在している。酸素は、後述のアルミニウム又はケイ素とほぼ同位置に存在しているため、アルミニウム及びケイ素は焼成後も酸化物として存在していることが分かる。
【0042】
図12は、タングステンの分析結果を示す。タングステンは、導電体パターン82に局在し、セラミックス基板81に拡散していない。導電体パターン82の良好な焼結性及びセラミックス基板81の良好な電気特性を得るために、タングステンは導電体パターン82にのみ存在することが好ましい。
【0043】
図13は、ニッケルの分析結果を示す。ニッケルは、導電体パターン82に局在し、セラミックス基板81に拡散していない。導電体パターン82の良好な焼結性及びセラミックス基板81の良好な電気特性を得るために、ニッケルは導電体パターン82にのみ存在することが好ましい。
【0044】
図14は、アルミニウムの分析結果を示す。アルミニウムは、導電体パターン82とセラミックス基板81の両方に存在している。このため、導電体パターン82とセラミックス基板81との密着強度が向上していると考えられる。
【0045】
図15は、ケイ素の分析結果を示す。ケイ素は、導電体パターン82とセラミックス基板81の両方に存在している。特にセラミックス基板81において、ケイ素は、導電体パターン82とセラミックス基板81との界面から10μm以内の範囲にのみ存在し、それ以遠には存在していないことが確認された。このため、セラミックス基板81の電気特性を劣化させることなく導電体パターン82とセラミックス基板81との密着強度が向上していると考えられる。
【0046】
なお、酸化ケイ素の代わりに酸化マグネシウムを用いた場合、上記に近い分布が得られる。しかし、セラミックス基板81側へのマグネシウムの拡散量が多く、酸化ケイ素を用いた場合と比べて導電体パターン82とセラミックス基板81との接合強度が弱いことが確認されている。
【0047】
図16に示す各バーB1,B2,B3は、次に説明するサンプルの導電体パターンについて、剥離試験により密着強度を確認したときの試験力[N]の範囲を示す。バーB1は、無添加の導電性ペーストを用いて形成した導電体パターンの試験結果を示す。バーB2は、酸化ニッケルを0.5wt%、酸化アルミニウムを1.0wt%、二酸化ケイ素を1.0wt%添加した導電性ペーストを用いて形成した導電体パターンの試験結果を示す。バーB3は、酸化ニッケルを0.5wt%、酸化アルミニウムを2.0wt%、二酸化ケイ素を2.0wt%添加した導電性ペーストを用いて形成した導電体パターンの試験結果を示す。酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を添加することにより、導電体パターンの密着強度を向上できる。さらに、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素の含有量を多くすることにより、導電体パターンの密着強度をより向上できる。
【0048】
図17において、実線は、焼結助剤を含まない酸化アルミニウムのグリーンシートを焼成したセラミックス(以下、無添加セラミックス)の温度と抵抗値の関係を示し、一点鎖線は、焼結助剤を含む組成のグリーンシートを焼成したセラミックス(以下、添加セラミックス)の温度と抵抗値の関係を示す。無添加セラミックスでは、温度に対する抵抗値の変化が少なく、添加セラミックスでは、無添加セラミックスと比較し、温度に対する抵抗の変化が大きい。つまり、無添加セラミックスは、絶縁抵抗の温度依存性が低い。静電チャック用のセラミックスに求められる特性としては、使用環境の温度が上昇しても、絶縁抵抗の低下が少ないことが求められる。このような特性の無添加セラミックスは、静電電極22を含む基板本体21として有効である。
【0049】
(他の比較例)
・焼結性の確認。
酸化ニッケルの含有量を5wt%とした導電性ペーストを、焼結助剤を含まないグリーンシート上に印刷し、一体を同時に焼成したサンプルを作製し、そのサンプルのSEM(scanning electron microscope)及びEDX(energy dispersive X-ray spectrometry)による断面写真を取得した。この断面写真では、焼成後の電極において、タングステンの結晶が大きくなり過ぎる。このようなタングステンの結晶は、セラミックス基板から剥離し易い。
【0050】
・導電体パターンの抵抗率の確認。
酸化ニッケル、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素を無添加とした導電性ペーストを、焼結剤を含まないグリーンシート上に印刷し、一体を同時に焼成してサンプルを作製した。このサンプルでは、導電体パターンの抵抗率は2.85E-07[Ωm]であった。
【0051】
酸化ニッケルの含有量を1wt%、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素の含有量をそれぞれ3wt%とした導電性ペーストを、焼結剤を含まないグリーンシート上に印刷し、一体を同時に焼成したサンプルを作製した。このサンプルでは、導電体パターンの抵抗率は2.84E-07[Ωm]であり、上述のサンプルと同程度の抵抗率が得られた。
【0052】
酸化ニッケルの含有量を1wt%、酸化アルミニウムの含有量を10wt%、二酸化ケイ素を無添加とした導電性ペーストを、焼結剤を含まないグリーンシート上に印刷し、一体を同時に焼成してサンプルを作製した。このサンプルでは、導電体パターンの抵抗率は1.24E-06[Ωm]であり、抵抗率は増加した。
【0053】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)静電チャック1の載置台20は、基板本体21と、基板本体21に内設された静電電極22を含む。基板本体21は、酸化アルミニウム(Al)からなるセラミックスである。静電電極22は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)を含む焼成体である。このような構成の静電電極22とすることにより、基板本体21のセラミックスの特性を低下させることなく、静電電極22を含む載置台20を得ることができる。
【0054】
(2)酸化ニッケルにより、タングステンの焼結性が向上する。酸化アルミニウムと二酸化ケイ素により、セラミックスとタングステンとの密着性が向上する。従って、焼結助剤を用いる必要がないため、セラミックスの特性を低下させることなく、静電電極22を含む載置台20を得ることができる。
【0055】
(3)基板本体21のセラミックスは、純度が99.5%以上である。このような基板本体21は、絶縁抵抗の温度依存性が少なく、温度上昇に対する絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0056】
(4)基板本体21のセラミックスは、相対密度が98%以上である。このような基板本体21は、表面及び内部の気孔が少ない。気孔は、基板本体21の吸着に影響する。従って、高い相対密度の基板本体21は、静電チャック1として特性上好ましいものとなる。
【0057】
(第二実施形態)
図18は、第二実施形態の半導体装置用パッケージの概略断面、図19は、半導体用パッケージの概略平面を示す。
【0058】
図18に示すように、半導体装置用パッケージ100は、セラミックス基板110と、放熱板150と、外部接続端子160とを有し、放熱板150はセラミックス基板110にろう付けされている。
【0059】
セラミックス基板110は、積層された複数(本実施形態では4つ)のセラミックス基材111,112,113,114と、タングステンからなる配線パターン121,122,123、124と、セラミックス基材112,113,114を貫通するビア132,133,134を有している。ビア132は、配線パターン121,122を互いに接続し、ビア133は、配線パターン122,123を互いに接続し、ビア134は配線パターン123,124を互いに接続する。このセラミックス基板110は、セラミックス基材111~114から構成される基板本体と、タングステンからなる配線パターン121~124とを有している。
【0060】
図18及び図19に示すように、セラミックス基板110には、セラミックス基材112,113,114の中央部を貫通して半導体素子200を搭載するキャビティ170が設けられている。配線パターン121は、キャビティ170を囲むように、セラミックス基材112の上面に配設されている。セラミックス基材111には、配線パターン121を露出する開口部111Xが形成されている。
【0061】
セラミックス基材111~114は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、配線パターン121~124及びビア132~134は、タングステンを主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である。そして、このセラミックス基板110は、第一実施形態の載置台20と同様の製造方法により製造することができる。
【0062】
半導体装置用パッケージ100において、半導体素子200は放熱板150に搭載される。半導体素子200のパッドは、ボンディングワイヤ等によってセラミックス基板110の配線パターン121と電気的に接続される。これにより、半導体素子200は、配線パターン121~124とビア132~134とを介して外部接続端子160に接続される。
【0063】
このような半導体装置用パッケージ100では、第一実施形態と同様に、基板本体となるセラミックス基材111~114の特性を低下させることなく、配線パターン121~124を含むセラミックス基板110を得ることができる。そして、このセラミックス基板110において、セラミックス基材111~114と配線パターン121~124との密着性を向上できる。
【0064】
(別の形態)
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記第一実施形態に対し、静電チャックに含まれる部材や配置を適宜変更してもよい。
【0065】
・上記第一実施形態に対し、発熱体23は、載置台20とベースプレート10との間に配設されてもよい。また、発熱体23は、ベースプレート10に内設されてもよい。また、発熱体23は、静電チャックの下に外付けされてもよい。
【0066】
・上記第一実施形態及び変更例の静電チャックは、半導体製造装置、たとえばドライエッチング装置(たとえば平行平板型の反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置)に適用される。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,1b 静電チャック
20,20a 載置台
21 基板本体
22 静電電極
100 半導体装置用パッケージ
110 セラミックス基板
111~114 セラミックス基材
121~124 配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
図19